第54回金融審議会総会・第42回金融分科会合同会合議事録
1.日時:
令和7年2月19日(水曜)10時30分~12時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室 及び オンライン形式
○繁本総務課長
それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第54回金融審議会総会、第42回の金融分科会の合同会合を開催いたします。
皆方には、お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。また、金融審議会委員への御就任をお引き受けくださいまして、誠にありがとうございます。
この後、新会長を選任していただきますが、それまでは事務局のほうで議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
また会場で御参加の委員の皆様は、マイクを近づけて発言すると、若干ハウリングを起こすようでございますので、今の私のように少し離れた形で御発言いただければ幸いでございます。
早速ですが、本日は瀬戸内閣府副大臣に御出席いただいておりますので、開会に当たりまして、副大臣より御挨拶を頂きたく思います。では、副大臣、よろしくお願いいたします。
○瀬戸副大臣
皆さん、おはようございます。昨年11月に発足しました、第2次石破内閣におきまして金融担当の内閣府副大臣を務めております、瀬戸隆一でございます。
委員の皆様には、新任、再任を含め、委員への就任を御快諾いただきまして、また、お忙しい中、金融審議会総会に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。開会に当たり、一言、御挨拶を申し上げます。
石破政権では、デフレ経済からの脱却を確かなものとし、賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行を確実なものとするため、様々な取組みを進めているところであります。金融庁としても資産運用立国をはじめ、こうした動きを金融面から支えていくための取組みを着実に実施していくことが重要と考えています。
昨年の8月の金融審議会総会において、金融担当大臣より2つの諮問を行いました。1点目は、損害保険業界における保険金不正請求事案等の一連の不適切事案を受け、顧客本位の業務運営と健全な競争環境の実現を通じ、保険の信頼の確保や健全な発展を図るための方策について検討を行うことであり、2点目は、送金・決済・融資サービスの利用者、利用形態の広がりや、新たな金融サービスの登場を踏まえ、利用者保護等に配慮しつつ、適切な規制のあり方について検討を行うことであります。
その後、それぞれの諮問に対して、ワーキング・グループにおいて幅広い観点から御議論を頂きましたが、各ワーキング・グループの報告書で示された御提言は、いずれも金融ビジネスの健全な発展を目指すものという意味で、我が国経済の持続的な成長に資するものと考えております。
また、ワーキング・グループ以外における検討としましては、昨年5月に成立した公益信託に関する法律に関し、来年4月からの同法の円滑な施行に向け、新しい公益信託制度と金融庁が所管する信託業法との関係について事務方で整理を行いましたので、この結果についても御説明いただきます。
本件は、先ほど申し上げました2つのワーキング・グループの報告書及び新しい公益信託制度に係る信託業法の適用の整理について、委員の皆様に御審議を頂きます。私どもとしましては、この場での御議論をしっかりと受け止めまして、必要な対応を進めてまいりたいと思っております。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○繁本総務課長
ありがとうございました。
なお、瀬戸副大臣は公務のため、ここで御退席と伺っております。副大臣、どうもありがとうございました。
○瀬戸副大臣
どうぞよろしくお願いします。
(瀬戸副大臣退室)
○繁本総務課長
それでは、カメラの方々は御退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○繁本総務課長
引き続き、議事を進めさせていただきます。
まず本日の会議について、留意事項を申し上げます。会議は対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式で開催しております。また、会議の模様は、ウェブ上でライブ中継をさせていただいております。
御発言を希望される際は、対面で御出席いただいている方々は挙手、またはお手元のネームプレートを立てていただくようにお願いいたします。オンラインで御出席の方々は、オンライン会議のチャットで全員宛てに、メッセージでお名前と発言希望の旨を送信していただくようお願いいたします。そちらを確認して、進行役から指名させていただきますので、御自身のお名前を名のっていただいた上で、御発言をお願いいたします。
さて、本日の総会は本年1月25日付で委員の改選の後、初めての会合でございます。総会委員の皆様の名簿につきましては、配付した会議資料を適宜御参照ください。なお、本日は北尾委員、渡辺委員は御欠席と承っております。
それでは、1月25日付で再任された方以外の新しく就任された委員が3名いらっしゃいます。3名の委員に一言ずつ御挨拶を頂戴したいと思います。50音順で、まずは上田委員からお願いいたします。
○上田委員
上田でございます。よろしくお願いいたします。私は、長年金融機関におきまして資本市場制度、コーポレートガバナンス・コード等について研究をしておりました。その後、今は大学のほうに軸足を移しております。専門分野は金融資本市場制度、コーポレートガバナンス、とりわけ、資本市場から見たコーポレートガバナンスやスチュワードシップといった分野について研究をしております。どうぞ皆様、よろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
ありがとうございました。
続いて、神作委員、お願いいたします。
○神作委員
学習院大学の神作でございます。商法を専攻しております。大学では、これまで商法のほか、金融法、金融商品取引法、あるいは信託法などを担当してまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
ありがとうございます。
最後に野澤委員、お願いいたします。
○野澤委員
浜銀総合研究所の野澤と申します。よろしくお願いいたします。経歴といたしましては、私は横浜銀行が長く、横浜銀行のほかは経営統合いたしました第二地方銀行の東日本銀行、それから持株会社でございます、コンコルディア・フィナンシャルグループの経営に携わってまいりました。業務としては、経営企画、リスク管理、市場部門といったところを経験してきてございます。また、現在はトパーズ・リージョナル・パートナーズというPEファンドにも関与してございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
野澤委員、ありがとうございました。
続きまして、金融審議会会長及び金融分科会会長をお決めいただきます。金融審議会令第4条第1項及び第5条第3項の規定によりまして、委員の互選により選任することとされております。委員の皆様の御意見を伺いたいと思いますが、御意見はいかがでしょうか。翁委員、お願いいたします。
○翁委員
金融審議会での御経験や御見識を踏まえまして、神作委員を会長及び分科会長に推薦したいと思います。よろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
翁委員、ありがとうございます。ほかの委員からの御意見はいかがでしょうか。岩下委員、お願いいたします。
○岩下委員
私も同意見で、神作委員を推薦したいと思います。
○繁本総務課長
ありがとうございます。河村委員、お願いいたします。
○河村委員
私も皆様と同じ意見で、神作委員にお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
オンラインのほうで、加藤委員から御発言の希望がございます。加藤委員、お願いいたします。
○加藤委員
加藤でございます。私も神作委員を推薦いたします。よろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
ありがとうございます。
いかがでしょうか。皆様、4名の委員の方から神作委員を推薦するという御発言がございました。ほかに御発言はよろしいでしょうか。
それでは、金融審議会会長及び金融分科会会長には、神作委員に御就任いただくということで、皆様、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○繁本総務課長
それでは、御異論がないようですので、神作委員の御承諾をもちまして金融審議会会長及び金融分科会会長への御就任をお願いしたいと思いますが、神作委員、御就任いただけますでしょうか。
○神作委員
謹んでお引き受けさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○繁本総務課長
ありがとうございます。それでは、神作委員には恐縮でございますけれども、こちらの会長席のほうにお移りいただくようお願いいたします。
それでは、これ以降の議事進行は神作新会長にお願いしたいと存じます。神作会長、よろしくお願いいたします。
○神作会長
神作でございます。会長を拝命させていただくに当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。
私は、先月まで当委員会の専門委員を拝命しておりました。このたび、金融審議会の委員に就任するとともに会長を拝命することとなり、身の引き締まる思いでございます。
金融審議会は、大臣及び長官の諮問に応じて、国内金融に関する制度等の改善に関する事項、その他の重要事項を調査・審議し、その報告を基礎として、毎年のように金融商品取引法や銀行法、資金決済法などの重要な金融監督法が改正されてまいりました。
早急に検討すべき点が山積しているだけではなく、フィンテックの進展、金融業及び金融サービスへの生成AIの利用の開始、サステナビリティ要素の重視、高齢化の進展など、社会・経済・技術の変化を受けて金融をめぐる諸制度についても、基本的なところから検討を要する大きな課題も存在していると思われます。
そのような中、私自身は誠に非力ではございますが、委員の皆様に活発で建設的な御審議を頂き、よりよい報告や調査ができるよう、司会進行役を務めさせていただく所存でおります。委員の皆様におかれましては、何とぞ、よろしくお願いいたします。
以上、簡単ではございますが、御挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事に入らせていただきます。まず、議事運営についてでございますけれども、金融審議会議事規則及び金融分科会議事規則にのっとって執り行ってまいりたいと存じます。会議は、原則として公開とさせていただきますので、御承知おきいただければと存じます。議事録は金融庁のホームページで、後日、公開させていただく予定です。
また万が一、私が会議に出席できないような場合の会長代理及び分科会長代理につきましては、大変恐縮に存じますけれども私に御一任を頂き、その都度、御指名をさせていただきたいと存じますけれども、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
○神作会長
どうもありがとうございます。
次に各部会の部会長は、会長が指名させていただくということになっておりますところ、自動車損害賠償責任保険制度部会及び公認会計士制度部会の部会長につきましては、特に御異論がなければ、私自身が務めさせていただくことといたしたいと存じますが、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
○神作会長
どうもありがとうございます。
それでは、本日の議事の流れについて御案内申し上げます。最初に諮問事項に係る報告として、「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」及び「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」より、報告書について御説明がございます。その後、事務局より新しい公益信託制度に関する信託業法の適用の整理について説明を頂きます。その後で、全体について皆様に御討議をお願いしたいと考えております。
それでは、まず「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」に関しまして、専門委員の洲崎先生が座長を務めて取りまとめられた報告書について、事務局の赤井保険企画室長から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○赤井保険企画室長
保険企画室の赤井でございます。よろしくお願いいたします。私のほうから、「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の報告書の概要について、御説明をさせていただきます。資料1を御覧いただければと思います。
「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」でございますが、昨今の損害保険業界における保険金不正請求事案や保険料調整行為事案を踏まえまして、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現することにより、保険市場に対する信頼の確保、健全な発展を図るために必要な方策について検討するために設置されたものでございます。
本ワーキング・グループは、2024年9月から6回にわたって御審議を頂き、12月にその内容を報告書として、取りまとめていただいております。この概要を、お手元の資料1に沿って御紹介をさせていただきます。
まず1枚目ですけれども、顧客本位の業務運営の徹底に向けた施策です。これは、今般の保険金不正請求事案の再発を防止するためのものでございます。今般の事案におきましては、損保会社が自社に大きな収益をもたらす大規模な代理店や、顧客に推奨する商品を切り替えることで、各保険会社の販売シェアを容易に左右できる乗合代理店に対しては、保険会社の営業上の配慮が働き、保険代理店に対する適切な管理・指導が行われていなかったといった問題が明らかになっております。
このため、まずは一番上の枠、大規模な乗合代理店に対する体制整備の強化として、一番上の四角ですけれども、特に規模の大きな保険代理店に対して、内部管理体制の強化、例えば、法令等遵守責任者の設置、苦情処理体制の整備といったことを求めていくこととされております。
また、その下の四角ですけれども、こうした代理店のうち、今般の事案のような保険金から修理費等の支払いを受ける事業を兼業する者に対しては、保険金の不正請求といった不当なインセンティブにより顧客の利益、または信頼を害することを防止するための体制整備を求めることとされております。
さらには、その下の四角ですが、こうした代理店に対しては、当局による定期的なヒアリング等を通じたモニタリングにより、体制整備の実効性を確保することとされております。
次にその下の枠ですけれども、保険代理店の体制整備を強化するだけではなく、保険代理店に対する、保険会社の指導等の実効性を確保することも重要であると考えております。具体的には、保険会社において保険金支払管理部門と営業部門を分離する。また保険金関連事業を兼業する全ての委託先の保険代理店について、不当なインセンティブにより、顧客の利益又は信頼を害するおそれのある取引を特定して、それを適切に管理するための方針を策定・公表する。さらには、委託先である特に規模の大きな保険代理店の法令等遵守態勢を検証する管理責任者の設置等を求めることとされております。
このほか、乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保、損害保険分野における自主規制のあり方が提案されております。
次に、2枚目の健全な競争環境の実現に向けた施策ですが、これは、今般の保険料調整行為事案への対応になります。独禁法上の課題への対応は別途検討されておりますけれども、ここに書かれている各種の施策についても、今般の事案の遠因になっていたものへの対応というふうに捉えております。
まずは左上の保険仲立人の活用促進です。保険仲立人といった制度は、1995年の保険業法改正時に販売チャネル多様化を通じた販売面での競争促進といった観点から新設されたものでありますけれども、近年、この保険仲立人の活用というものは伸び悩んでいるという状況にあります。
このため、仲立人の活用を促進する観点から1つ目の四角ですけれども、企業向け保険において、保険仲立人が顧客からも手数料を受領できるように見直す、その下、保険仲立人に義務付けられる供託金の金額を引き下げる、さらにはその下ですけれども、保険仲立人と保険代理店の協業を認める。こういった措置が提言されております。
次に、その下の枠でありますけれども、保険会社による保険契約者等への過度な便宜供与の禁止です。企業向けの保険市場では、企業が保険商品を選ぶ際、保険本来の要素ではなく、保険会社からの便宜供与の実績が契約に重要な影響を及ぼしているといったことが明らかになっております。こうした便宜供与は、取引の公平性をゆがめてしまうだけではなくて、保険商品・サービスの内容で競争することが求められる保険会社の活力を失わせてしまうおそれがあると考えております。
このため、保険会社等による保険契約者等への過度な便宜供与を禁止するため、保険業法上の特別の利益の提供として禁止される行為に、過度な便宜供与を追加する、この特別の利益の受け手に保険契約者のグループ企業を追加することとされております。
次に、右上の企業内代理店に関する規制の再構築であります。企業内代理店は事業会社が企業グループに有する保険代理店でありますけれども、保険料の実質的な割引の防止、保険代理店としての自立の促進といったことを目的として、特定契約比率規制といったものが設けられていますが、これが十分に機能していない実態があると指摘されております。
このため、保険料の実質的な割引を防止するための手数料の適正化や、保険代理店としての自立の促進を目的とした一定の体制整備といったことが実現するよう、規制の枠組みを見直すこととされております。
このほか、損保会社における火災保険の赤字構造の改善といった施策が提言されております。
この報告書において具体的な対応策を示した施策については、順次実施をしていきたいと考えております。
保険に関しての説明は、以上となります。
○神作会長
御説明、どうもありがとうございました。
続きまして、「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」に関しまして、専門委員の森下先生が座長を務めて取りまとめられました報告書について、事務局の三浦信用制度参事官から御説明をお願いいたします。
○三浦信用制度参事官
信用制度参事官の三浦でございます。それでは、「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」の報告の概要という、今の資料2-1に沿いまして御説明させていただきます。
まず先ほど、副大臣からも案内のございましたとおり、昨年の8月26日の金融審議会総会において、金融担当大臣より、送金・決済・与信サービスの利用者・利用形態の広がりや、新たな金融サービスの登場を踏まえ、利用者保護等に配慮しつつ、適切な規制のあり方について検討を行うこと、との諮問が行われました。
それを受けまして、金融審議会に「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」を設置し、昨年9月から7回にわたり御審議いただいたものでございます。
今、御覧になっている資料2-1の左上にありますとおり、まず1つ目のテーマとしては、資金移動業に関して、破綻時における利用者資金の返還方法の多様化についてです。こちらは、資金移動業者の破綻時には、供託手続を通じて国が各利用者に対して保全された資金の還付手続きを実施することとされております。こちらによって、国が関与するということで確実に利用者に資金をお返しすることができる一方で、その還付手続に最低170日の期間を要するというようなこととなっております。
より迅速に資金をお返しするというような観点から、新たに以下の返還方法、つまり、①銀行等による保証の場合は、その供託を経由する返還方法に加え、保証機関による直接返還、②信託の場合、既存の供託を経由する返還方法に加え、信託会社等による直接返還といった選択肢を設けるべきということで、御審議いただいたところでございます。
その次に、第一種資金移動業の滞留規制の緩和でございます。こちらは、100万円を超える高額送金が可能な第一種資金移動業に課せられる、極めて厳格な滞留規制について、利用者の利便性等の観点から課題があるという指摘がございました。
こちらについても御審議いただきまして、滞留規制の趣旨を踏まえつつ、利用者利便を向上させる観点から、①上記の破綻時における利用者資金の新たな返還方法を採用する場合には、利用者資金の最長2か月の滞留を認める、また、②送金日を指定するのみならず、いついつまでといったような形で、送金期限の指定も認めてはどうかというような形で、御提言いただいたところでございます。
次、右上のクロスボーダー収納代行への規制のあり方でございます。収納代行は、国内では特段の規制はかかっていませんが、一方でクロスボーダー、いわゆる国境を越える収納代行ビジネスにおいて、一部の海外オンラインカジノや、海外出資金詐欺等に用いられる事例が存在しているというようなことがございます。
また、金融安定理事会、FSBの勧告においても、いわゆるリスクに合った、規制とリスクの整合的な規制をちゃんと適用すべきだというような勧告もございます。こういったことも踏まえて、下の四角にございますとおり、商品・サービスの取引成立に関与しない者が行うクロスボーダー収納代行については、基本的には、資金移動業の規制を適用すべきという御提言を受けたものでございます。
右下、前払式支払手段、プリペイドカードの寄附への利用ということでございます。こちらは、前払式支払手段は一般的な送金手段として認められていないということから、寄附に利用することができないとされております。ただ一方で、寄附文化の醸成等々については、それは進めていくべきというような議論もございました。さらには一方で、マネロンや詐欺等のリスクにもちゃんと留意しなければならないということで、誰にいくらでもというような形では、なかなか難しいのですが、一方で寄附金事業者を国・地方公共団体や認可法人等として、1回当たり数万円を上限にということで、プリカによる寄附を認めるべきとの御提言をいただいたところでございます。次のスライドをお願いいたします。
暗号資産に関してでございます。まず、暗号資産交換業者等の破綻時等の資産の国外流出防止でございます。こちらは、ちょうど2022年11月にグローバルで暗号資産ビジネスを行っていましたFTXの破綻をきっかけに、当時日本の子会社であったFTX Japanに対して、金融商品取引法に基づいて資産の国内保有命令というものを含めた行政処分を発出しました。ただ、これは彼らがたまたま暗号資産デリバティブ取引を行っていたからできたことであって、もしも暗号資産の現物取引しかやっていなかった場合、すなわち金融商品取引法ではなくて資金決済法のみで規制していた場合には、資金決済法には国内保有命令の規定がないことから、こういった命令が発出できなかったというようなことがございました。こういった事情を受けまして、下の四角にありますとおり、国内利用者への資産の返還を担保するため、暗号資産交換業者等に対して、資産の国内保有命令を発出することができるようにすべきという御提言をいただいたところでございます。
その下、暗号資産等に係る事業実態を踏まえた規制のあり方でございます。こちらは、暗号資産交換業者の登録を取れば売買もできますし、交換業者の媒介もでき、様々なビジネスができますが、ただ、ニーズとしては、そこまでするのではなくて、暗号資産等の売買・交換の媒介のみを行いたいというようなケースが多々ございます。ただし、現行の法制ですと、そうした媒介のみを行う場合であっても暗号資産交換業者等として登録し、フルパッケージで規制がかかってくるというようなことで、やりたいビジネスと規制の重さにミスマッチがあるのではないかという御指摘がございました。
そういったことも踏まえて御議論をいただいて、結論としては、暗号資産等の売買等の媒介のみを事業として行う新たな「仲介業」というカテゴリーを創設し、必要限度での規制を適用すべきということでございます。
必要限度での規制というのは、例えば、説明義務や広告規制というものについては、お客さんに接するということからしっかりとかけていく必要がある一方で、利用者の資産を預からないということであれば、必ずしも財務の規制は不要でありますし、利用者と利用者をつなぐのではなくて、交換業者と利用者をつなぐというようなことですので、必ずしもマネー・ローンダリング規制をパイプ役たる仲介業にかける必要はないだろうということで、そういった必要限度の規制を適用する、新たなカテゴリーの仲介業を創設してはどうかという御提言を受けました。
次に右上のステーブルコイン、電子決済手段でございます。こちらについては、特定信託受益権、いわゆる3号電子決済手段の発行見合い金の管理・運用方法の柔軟化について御議論いただきました。こちらは、現行の資金決済法においては、特定信託受益権の発行見合い金について、全額、銀行等への要求払預貯金で管理することが求められています。こちらについては、ステーブルコインは1コイン=1円となっておりますので、いつでも法定通貨にちゃんと換えられるという意味でのステーブルさが求められていることによるものですが、ただ、日本はこういった規制を先駆けて導入した一方で、米国や欧州ではもう少し、例えば、短期国債を運用として認めているとか、そういった状況にございますので、国際競争力の観点からも一定程度、緩和してはどうかということで御議論いただき、結果としては、満期・残存期間3か月以内の日本国債、米ドル建ての場合は米国債と、一定の定期預金による運用を認めるべき、ただし、その組入れ比率は50%を上限とするということで御提言をいただいたものでございます。
次に特定信託受益権におけるトラベルルールの適用です。こちらも同じく、いわゆる3号ステーブルコインですけども、特定信託受益権について、受益権原簿がない場合は、信託会社等の保有者の情報を把握することができないとされております。こうした状況に鑑みて、受益権原簿がない特定信託受益権については、トラベルルールの適用等を通じて、いわゆる電子決済手段等取引業者等に送付人及び受取人の情報を把握させ、適切に監督すべきという御提言をいただいたところでございます。
こちらの資料2-1のほうにはないのですが、そのほかに報告書の中では、その他の論点として、報告書の、具体的には21ページ、22ページにおいて、「立替サービス」の貸付け該当性、さらには、外国の金融機関が国内で組成されるシローン参加する場合の貸金業法の規制についても御議論いただいたところでございます。
詳細は省略いたしますが、立替サービスについては、本当に様々な法的構成やスキームも存在することから、なかなか金融法制で一律に何かを決めて判断するということは困難であるというような御議論がある一方で、適切な利用者保護の観点からは、サービスを提供する事業者にとっての予測可能性を確保し、サービスの健全な発展を促す観点から、貸付け該当性について一定の判断枠組みを示してはどうか、という御議論をいただいたものでございます。
いわゆる外国の金融機関等によるシローンについては、こちらについても様々な意見がありましたが、こういったシローンに関しての規制は、引き続き検討を行っていくことが重要と整理されました。一方で、こちらは、そもそも貸金業法が柔構造化されていないことに起因しているということもあるので、リスクに応じた適切な規制が課せられるよう、貸金業法の柔構造化についても、今後は中長期的に検討を深めていくことが望ましいといったようなことで、御提言をいただいたところでございます。
私からの説明は以上です。
○神作会長
御説明どうもありがとうございました。
次の議題でございます。新しい公益信託制度に関する信託業法の適用の整備につきましても、三浦信用制度参事官から御説明をお願いいたします。
○三浦信用制度参事官
それでは、今、御覧になっている資料3-1について、まずご説明させていただきます。こちらは、公益信託に関する法律、昨年の通常国会で内閣府のほうから出した法律になりますが、まずこちらについての資料になります。
まずそもそもこの公益信託に関する法律では、新しい公益信託法のポイントとしては、従来の主務官庁制度というのを廃止し、公益法人と共通の行政庁、すなわち内閣府と都道府県が公益信託の認可・監督を行うということと、あとは公益法人と同様に、公益信託の認可基準とガバナンス等を法定するということが定められました。こうした新しい制度の下、公益法人やNPO法人、自然人といった新たな担い手による公益信託の活用を通じて、民間公益の活性化が図られるということが期待されているところでございます。
次に資料3-2をお願いします。こうした、まずは新しい公益信託制度が、今後、令和8年4月から開始されるということになっております。中央のところに新しい公益信託の仕組みを図示してございますが、この公益信託は公益のみを目的とする、受益者がいない信託というようなことでございます。つまり、委託者から寄附された財産を受託者が管理し、公益活動に活用するということです。
新しい制度では、金銭以外の財産が信託されることも可能であり、奨学金の給付といった経済的支援のほか、例えば、信託された建物を使って学生寮を運営するといったような、公益信託を活用した様々な形の公益活動の展開が見込まれています。
一方で、右側の信託業法というところにございますとおり、金融庁では、信託業者を規律する信託業法を所管しており、信託の引受けを業として営む者は、同法の規制対象になります。規制の内容としては、信託業を原則免許制として、信託業を営む者に株式会社であることや、最低資本金を求めるといった参入規制がございます。また、受託者による信託に係る不当勧誘の禁止等の行為規制もかかっております。さらには、信託業者に対する検査・監督権限も我々のほうにあるという話で規定されており、こうした措置を通じて信託の委託者、受益者の保護を図っているところです。
公益信託に関しては、現在、左側に書いている新公益信託法と、あとは右側の信託業法の両方が適用される状況という形になっております。この点、新しく公益信託に取り組もうとする場合、例えば、株式会社ではない公益法人等が、公益信託の担い手になることができないということになっています。
このような点を踏まえまして、政府としても令和6年6月に閣議決定された、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版において、公益信託制度に関しては、信託業法との整備を進めるという形の提言をいただいているところです。
この閣議決定を受け、私ども金融庁としては、信託業法の目的である委託者保護の観点を踏まえつつ、公益信託の円滑な活用がなされるように、新しい公益信託制度における信託業法の規制の適用のあり方を内閣府と協議してきたところ、新しい公益信託法においては、公益信託の認可は受託者に付与される資格ではなく、信託一本一本ごとに行政庁の審査を受けて付与されるものであり、また、公益信託の受託者の資質として、公益信託業務を適正に処理するための技術的能力や経理的基礎の有無を審査するとともに、受託者による公益信託の委託者、つまり寄附者に対する不当勧誘を禁止していること。また、不適切な公益信託や、受託者に対しては行政庁による検査・監督上の措置が講じられることといったところから、信託業法で規制せずとも、新公益信託法に基づき、委託者保護が図られつつ、公益信託の活用が見込まれるものと考えております。
このため、公益信託の引受けについて、信託業法の適用を除外する等の措置を講ずるための信託業法改正案を、本国会に提出したいと考えてございます。
以上が御報告でございます。御清聴ありがとうございました。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、討議に入りたいと存じます。先ほど御説明を頂きました「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」、及び、「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」の報告書、並びに、新しい公益信託制度に関する信託業法の適用の整理に関しまして、御質問や御意見等がございましたら、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。それでは、星委員、お願いいたします。
○星委員
ありがとうございました。「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の報告書について、2点コメントと、それから1点、質問をしたいと思います。
最初に1番目のコメントですけれども、この報告書の中で最初に顧客本位の業務運営の徹底というのを出されたというのは、非常にいいところだと思います。それが最重要だと思いますので。今回の保険金不正請求事案というのは、顧客本位の業務運営を本当に徹底していれば起こらなかったことだと思いますので、これを最初に持ってきたというのは、非常に高く評価できると思います。
それから、質問のほうですけれども、そういった最近の保険金不正請求事案とかを受けて、現在、保険仲立人の活用というのはどうなっているのでしょうか。なかなか活用されていないという指摘がありましたけれども、こういったスキャンダルがあると使おうかとかいう話が出てくるのかと思うんですけれども、その辺の状況はどうなっているのか教えていただければと思います。
それからもう一つのコメントですけれども、火災保険の赤字構造の改善等ということで、これは保険金不正請求事案に絡めて議論されています。火災保険のほうが赤字なので、ほかのところでちょっとまずいことをやってしまったという、そういう文脈になっているわけですが、これは個人的な感想ですが、単なる言い訳で、赤字でこっちがもうからなかったから、ほかのところでまずいことをやったというのは、顧客本位の業務運営以前の問題で、もう問題にならないぐらいの言い訳じゃないかと思います。
ただ、火災保険の赤字構造ということ自体は、もっと深い問題があって、これは保険金不正請求とかにかかわらず考えなければいけない問題じゃないかと思います。ここで考えられている改善策というのは、簡単にいうと、データを集めて保険料率をきちんとすると赤字が解消されるような話をしているのですが、そうでしょうか。
一番簡単なレベルからいうと、こういった情報を集めるのにもコストがかかるわけで、その情報を集めるコストが、個々の会社でやっていれば高いけれども、全体でやれば何とか赤字構造が変わるような、そういうコレクティブアクションの状態にあるという可能性はありますが、そうではないんじゃないでしょうか。火災保険の赤字構造というのは、これは日本だけではなくて、世界的にいろいろ自然災害の増加とかで起こってきていることなので、もっと深い問題があるのだろうと思います。
その深い問題というのは、一番簡単に言ってしまえば、今、環境が変わってくる前に決まっている企業のロケーションとか、あるいは住宅のロケーションとかいうことを与件とすると、黒字になるような保険の提供というのはできないという状態になっている、ということだと思います。そうするとそれを解消するためには、ロケーションとか、それからどこに家を建てるとか、そういったところまで変わらないと問題が解決しない。、そういう深い問題があると思いますので、これを金融審議会でやるのかどうか分かりませんけれども、深く考えなきゃいけない問題じゃないかと思っております。
それがコメントと質問ですけれども、最後はちょっとまた個人的な感想を言いますと、この会場を見ていると、向かいに並んでいる方々はみんな男性の方々ばかりだと気が付きます。金融庁というのは、ほかの省庁に比べると、もうちょっと進んでいるのかなと思ったんですけれども、ちょっと今日は意外でした。個人の感想です。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。1点、保険仲立人の利用の最近の状況について御質問があったかと思います。よろしくお願いいたします。
○赤井保険企画室長
保険仲立人に関しては、1995年の法改正で新たに新設されたもので、代理店との違いとしては、代理店は保険会社から委託を受けて保険募集を行う一方で、仲立人は顧客から委託を受けて保険募集を行う、こういった違いがあります。
ただ、そういった違いがある中で、足元まではなかなか活用が進んでいない状況にあって、具体的には、登録事業者数は50社強、取扱金額も全体の1%に満たないといった状況にあって、なかなか仲立人の活用が進んでいないという状況にございます。
今般、保険代理店というチャネルで様々な問題が起こったこともあり、我々としても、顧客から委託を受けて保険募集を行うといった、仲立人の活用を促進するといったことも重要じゃないかと考えまして、各種の規制緩和の措置を講じてはどうかと考えております。
最近の仲立人の活動状況に関する詳細なデータを把握しているわけではありませんけれども、仲立人協会と話をしている限りでは、仲立人の登録を希望する事業者数が非常に増えてきているということは聞いてございます。
○神作会長
よろしゅうございますか。ありがとうございます。
星委員の最後の御感想について、長官からコメントをいただきます。長官、よろしくお願いいたします。
○井藤長官
すみません。女性がこちら側にいないというのは、私も忸怩たる思いはあるのですが、中央省庁は、女性をしばらく、そんなに割合的には多く採用していない時期が、私ぐらいの世代からしばらく続いておりましてこういう状況になっているのですが、ただ、金融庁は発足以来、独自の採用を始めたのが、発足当初の平成11年からなのですが、女性を相当な割合で採用していまして、今日、説明者となった三浦参事官の世代やそれ以降の世代を含めて、かなり女性職員が管理職としても活躍しておりますので、だんだんこちらの景色も変わっていくと思いますので。
○星委員
二、三年でかなり変わる。
○井藤長官
二、三年かどうかはあれですけど、10年後には相当。ただ、その間も女性に、本当に金融庁においては、分け隔てなく活躍していただいておりますので、乞う御期待いただければと考えております。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、岩下委員、御発言をお願いいたします。
○岩下委員
どうもありがとうございます。本日の審議にかかりました諮問事項に関する2つの報告書につきましては、先程の星委員が御指摘された点も含めて、まだいろいろな課題が残されていると理解しておりますけれども、今回の報告書としては、適切な審議を踏まえた上で現状の問題点等への対応策について一定の方向性を示しているので、私としては、両報告書とも承認することで問題ないと考えております。
その上で、私もワーキング・グループに参加させていただきました、資金決済制度に関するワーキング・グループの報告書について、1点だけ、私から付言というか、コメントのようなものをさせていただきます。
こちらの報告書の本文の14ページに暗号資産等に関する事業実態を踏まえた規制のあり方という章がございます。こちらで暗号資産仲介業の創設というものが、提案されています。ただ、このページの本文の1行目辺りを読んでいただきますと、いきなりアンホステッド・ウォレットという、あまり一般にはなじみのない言葉が登場します。
こちらの点について、若干だけ付言させていただきますと、このアンホステッド・ウォレットを利用した暗号資産取引というのは、例えていうならば、銀行との預金取引に係る現金のようなものです。一般の個人や法人が資金を銀行の預金に預けている限りは、銀行のマネー・ローンダリング防止の監視下にあるわけですが、これを一旦、現金として引き出してしまうと、その追跡が極めて困難になるというのは、よく知られていることだと思います。ただし、現金の場合は物理的な搬送が伴いますので、大金を動かすのは、実質的な困難さがあると言えます。
一方、暗号資産ですが、暗号資産交換業が顧客から預かる資産の総額は、昨年の11月時点で4兆円に達するという報告が協会から出ています。この資産を暗号資産交換業者が預かっている限りにおいては、先ほどの銀行の預金と同じように、マネー・ローンダリングの規制の対象に一応かかっているということになるわけですが、これがアンホステッド・ウォレット、つまり自己管理型のウォレットに移されてしまいますと、その先の監視の仕組みは働きません。
ランサムウェアの身代金の支払いであるとか、様々なサイバー犯罪における資金洗浄であるとか、昨年発生した大手暗号資産交換業者からの資金流出であるとか、そういう犯罪に利用されているのは、いずれもこのアンホステッド・ウォレットを経由した取引によって行われていると認識しております。
これを考えると、必ずしもアンホステッド・ウォレットの利用を推進したいとか、拡張したいと思うわけではないのですが、一方で、ここに書かれているとおり、例えばゲームアプリやNFT取引のために、アンホステッド・ウォレットを必要とするケースがあります。そのためにアンホステッド・ウォレットで暗号資産を売買するための媒介を行っている業者さんがいらっしゃるわけです。
そういう方々は、現状、何の規制もない下でそれをやっているわけですが、この状態を放置すると、当局が管理できないまま拡大してしまうことが危惧されます。このため、このアンホステッド・ウォレットの利用を前提とした取引も含めて、新しく創設される暗号資産仲介業において登録制を設けて、一定の制御の下に入れようという提案が報告書には書かれています。
ただ、払出しされてしまった現金が管理できないように、アンホステッド・ウォレットに移された暗号資産については、業規制を設けても実効的な監督が困難であるため、今後はよりしっかりとした国際的な取組みなどの中で、必要なマネー・ローンダリング規制を考えていくべきだろうという結論になったと、私は理解しております。
今回の議論というのは、暗号資産が不正な利用をされてしまうということを必ずしも防止できないばかりか、その裾野を広げてしまうリスクがあるわけですが、ただそうはいっても、無規制の状態を放置するよりも、リスク管理の観点から一定のルールの下に置くことが望ましいとの判断に基づくものであったと考えております。金融庁がこのような取引を推奨していると誤解を招かないように慎重に取り進めていただき、引き続き、暗号資産を取り巻くリスクと規制のバランスについて、慎重に検討を進めていくべきだと考えます。
私からは以上です。
○神作会長
どうも御意見ありがとうございました。
それでは続きまして、オンラインで御参加いただいております川口委員、加藤委員、河野委員に御発言いただいた後、また会場に戻りまして、小林委員に御発言を頂きたいと思います。それでは、川口委員、御発言ください。
○川口委員
川口でございます。ありがとうございます。私からは、2点コメントをさせていただきます。
まず保険のワーキング・グループについてです。今般の保険金不正請求事案を踏まえて、保険法の専門家でも知らなかったことがいっぱい出てきたと聞いておりますけども、問題が生じた背景の洗い出しと、再発防止に向けた取組みの提言が適切になされており、内容に異存はございません。論点が多岐にわたるのですけれども、その中で私からは、先ほどもありましたが、保険仲立人の活用、そしてその報酬のあり方について、一言、申し上げます。
仲立人の報酬については、商法上に、契約が締結された際に、契約の当事者双方が等しい割合で負担をするという規定があります。大学の講義でも、そのように説明します。しかし、保険仲立人については、媒介を依頼した顧客ではなく、契約の相手方である保険会社のみが報酬を支払う仕組みになっていました。仲立人は当事者から独立して、中立的な立場で媒介を行うと説明されながら、報酬が保険会社から支払われるということに、制度創設の当初から違和感がありました。
もちろん、当事者で合意をして、保険会社が支払うと言えば、それで問題はないのですけれども、監督指針で、この実務が定められていたということでした。ただ、これは日本特有のものではなく、保険仲立人を創設した際に、海外の保険ブローカーの制度の調査が行われまして、保険会社が報酬を支払っているケースが多いというのが、参考になったと理解しております。
しかし、これは必然の話では当然ないわけでありまして、むしろ顧客のほうから依頼をしておきながら、そして保険契約を探してくださいと言っているのに、保険会社からのみ報酬を受け取るというのは、やはり顧客本位の業務運営のあり方からは、問題があったのではないかと思います。利益相反の危険は、誠実義務で対処すれば良いのではないかという議論もあり得るかもしれませんけれども、これは本末転倒な気がいたします。その意味で開示を前提としまして、顧客からも報酬を受け取ることができる制度とする今回の報告書の方向性に賛成いたします。
もう一つは、公益信託について、感想程度のものですがコメントがあります。主務官庁の許認可権限を廃止するという点につきましては、公益法人の改正をしたときに、それをなくしており、公益信託についても課題とされていましたので、既定路線かと思います。
公益信託が公益法人と比べて、なぜ利用件数が圧倒的に少ないのか、その理由はよく分からないのですけども、その1つに信託業法上、取扱いが免許業者でなければならず、事実上、業務の対象が限られていたということが言われることもあります。この点、ほかにも開放するという方向性は、評価できると思います。
今回の一連の改正によりまして、公益法人と公益信託の規制上の差というのが大きく取り除かれたわけです。そういう意味で参入は容易になったのですが、公益法人が先行しているという状況で、今後、公益信託の利用が促進されるためには、公益信託でしかできないものは何なのか、アピールするものは何なのか。こういうことを具体的に示せるかが、重要になってくると思います。今回、金融庁は権限を手放したということで、その管轄外の話なのかもしれないですが、そのような感想を持ちました。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、加藤委員、御発言ください。
○加藤委員
加藤でございます。資金決済制度などに関するワーキング・グループ報告について、1点コメントをいたします。
私は、本ワーキング・グループの審議に参加する機会を頂きましたが、比較的新しいサービスを資金決済法や貸金業法の規制対象とするべきかなど、意見が鋭く対立する場面もありました。そのような意見対立が生じた理由として、規制の必要性を基礎づける要素と、具体的な既存の規制の内容との間に、若干のずれが生じている可能性を挙げることができるように思われます。
情報通信技術の発展により、様々な新しい金融サービスが生み出されています。このようなサービスが、伝統的なサービスと同じリスクを、利用者や金融システムにもたらすのであれば、そのようなリスクに対応した規制が必要であると考えます。しかし、サービスを提供する仕組みの設計や具体的な提供の方法が異なるため、既存の規制をそのまま適用することが、妥当ではない場合もあるように思われます。金融サービスの発展に応じて規制の方法や枠組みの見直しも、継続的に行っていく必要があると考えます。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、河野委員、御発言ください。
○河野委員
日本消費者協会の河野でございます。今回の答申案2点につきましては、丁寧な議論の上での取りまとめと承知しておりまして賛同いたしますし、また、早期の措置をお願いしたいと思っております。
まず損害保険業に関する制度等の検討ですけれども、この検討をせざるを得なくなった状況を振り返りますと、利用者の立場で強く感じたのは、日頃、疑うことなく利用していた各種サービスにおいて、いつの間にか制度運用や解釈が甘くなり、今回の措置が講じられた損保業界のように、組織的な不正が起きてしまったことに対する不安感や不信感でございます。
銀行サービスにおいても、貸金庫からの窃取や、株取引においても、職員のインサイダー取引など、利用者や社会からの信頼を大きく損なうような事案も報道されておりまして、改めてなんですけれども、業界を挙げて、法令順守と顧客本位の業務運営の徹底を強く求めたいと思っております。
2つ目の資金決済制度等に関する答申についても、取るべきとされた対策が、できるだけ早く機能するように法改正等を進めていただくと同時に、このフィンテック分野のビジネスの円滑化を妨げることなく、ビジネスの広がりに伴う潜在的なリスクへ備えるためにも、さらに実態把握を進めていただいて、当局がビジネスの全体概要を把握できるという視点で、しっかりと関与を行ってほしいというふうに考えております。
また、主に事業者側に対する規制当局の判断が示されたわけですけれども、デジタルを活用した便利な仕組みの背景にある様々なリスクについて、金融教育の場などを通じて、利用者側に対しても適切な自己防衛ができるように、啓発・広報等に力を入れていただければと思っております。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは会場に戻りまして、小林委員、山本和彦委員、河村委員の順に御発言をお願いいたします。初めに、小林委員、御発言ください。
○小林委員
御説明ありがとうございました。私からは、ほぼ感想ですが3点申し上げたいと思います。
まず1点目は、損害保険業に関する制度ワーキング・グループからの報告についてです。私自身も損害保険ワーキング・グループのメンバーでしたが、今回は特に仲立人の活用の促進ということで、幾つか改正がされるということです。これらの変更によって、本当に仲立人が活用されるのかどうかということについては、まだまだ分からないと思います。ぜひ、仲立人という役割が、市場においてより活用されるように、今回の改正で終わることなく、本当に活用の促進につながっているのかどうかということを適宜検証していただいて、もしそれが進んでいないということであれば、新たな見直しを行っていただきたいと思います。
2点目は、暗号資産・電子決済等についてです。既に加藤委員がおっしゃいましたように、この分野については、これまでの技術とは全く違う世界のサービスが、どんどん生まれてきております。今回は既存の制度、規制の範囲の中で修正をしていくわけですけれども、そもそも根本的に、これまでの既存の金融規制で今後も対応できるのかどうかということについては、改めてどこかの時点でしっかりと見直しをしていく必要があると思います。
これは、日本だけでできることではなく、国際的な法規制の枠組みで対応する必要があることだと思いますが、ぜひ、日本からも声を大きくして、よりよい消費者にとってのサービス、そして安全なサービスが提供できるような制度を構築していただきたいと思います。
それから3点目の公益信託の活用を促すという点につきましては、日本にも寄附文化というのが進展してきている中で、非常によいタイミングと思います。一方で、今回は受託者になる自然人ですとか、あるいはNPO法人に対する財務・経理についての監督というところについては、かなり注力をしているようですが、根本的なガバナンスの仕組みとか、あるいは利益相反といった、ガバナンスに関わる点について、本当に公益信託を担うものと同じような知識、あるいは意識を持っているかというと、必ずしもそうではないと思います。その辺りも含めて受託者の監督、信託管理人の役割というのを、しっかりと果たしていただく必要があるのではないかと思います。
以上、3点です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、山本和彦委員、お願いいたします。
○山本(和)委員
それでは、私は「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」の報告について、2点コメントをさせていただきます。
1点目は、破綻時における利用者資金の返還方法の多様化という、資金移動業に関する規定についてです。従来の供託方式というのが、利用者への還付手続に時間がかかるという問題があったということで、利用者保護を充実させるという観点から新たな方式を認めるということ、それ自体については賛成できるところかと思います。
ただ、問題点があるとすれば、その方法の選択が事業者側に委ねられているという点かと思います。この新たな方法を取るときのコスト、あるいは手間等の観点から、この本当に新たな選択肢というのが、適切に利用されるのかという点が問題かなと思っております。
また、このサービスの利用の形態によっても、例えば、高額の利用が比較的多い事業者の場合と、日常の少額決済に多用されているサービスの場合とでは、利用者保護の適切な方法というものも異なってくる可能性もあるように思います。この点、ワーキング・グループでも種々議論があったものと承知をしておりますけれども、今回の制度が実際につくられた後、新たな方法の選択の状況というのを適切にモニターいただいて、利用者保護の目的が適切に達成されるよう、引き続き検討していく必要があるのではないかと考えております。
第2点は、暗号資産について、暗号資産交換業者等の破綻時等の資産の国外流出防止の点であります。この点、国内利用者への資産の返還を担保するため、資産の国内保有命令を発出することができるようにすること。これは、金融商品取引業者の登録を受けている暗号資産交換業者とパラレルな規定を設けようということでありまして、基本的に正当なものと思います。
ただ、これも問題は、その実効性にあるのかなと思っております。これらの業者の有する主たる資産と思われる暗号資産等のデジタル資産を考えるときに、そもそもその所在というのを、どのように特定するかという問題もあろうかと思いますが、いずれにしてもその所在を移転させるということは、有体財産等と比較して極めて容易であって、特に破綻の直前というのは、そのような策動が行われるおそれが高いのではないかと思います。
そこで、こういう国内保有命令をつくって、それを実効化していくためには、まずもって迅速にこのような命令を発令する等の対応をしていただく必要があり、監督当局によって、しっかりとしたモニターと、スピーディーな対応に期待したいと思いますし、さらに究極的には、外国の監督当局、あるいはさらに裁判所等も含めて、その間の協力と国内利用者の保護を図っていくということが必要かと思います。
最初の点も含めて破綻処置については、今回はこういう予防的対応といいますか、実際の事案が起こる前に適切な枠組みをつくっていただくということは、高く評価できるところではないかと考えておりますので、せっかくつくられたこのような制度が、実効的に機能するように期待したいと思います。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、河村委員、御発言をお願いいたします。
○河村委員
私は日立から来ておりまして、事業会社なものですから、その観点からややミクロ的にことを、この保険のことで申し上げます。2点あります。
1つは、ちょっとこれは調べてみたほうがいいと、私もちょっと調べようと思っていて、まだできていないんですけれども、保険会社と大規模乗合代理店の間の資本関係というのがどうなっているのかということは、これは結構大きな資源配分上の問題だと思うんですね。普通の代理店の考え方というのは、保険会社と代理店というのは、普通はアームズ・レングスの関係でやらなきゃいけないわけですが、資本関係が少しならいいんですけど、かなり大規模な資本関係になっていると、アームズ・レングスの効果が薄れてきまして、むしろ一体になってしまって、もっと悪い言葉でいうとグルになっていろんなことをやってしまうという可能性がありますので、ここの保険会社の本体と代理店との資本関係に、どういうふうにアドレスしていくかという問題が1個あると思います。
それから2つ目のポイントは、保険会社の業務というのは、保険業と資産の運用でありますけど、実はそれ以外のところの仕事が物すごく増えているという印象を持っております。具体的には、介護に大変な勢いで入っていて老人ホームを買収したり、あるいはITサービスをやって、IT子会社が非常に大きな展開をしていたり、あるいは不動産業もやっている会社がありますよね。特に駐車場なんていうのは、自動車保険と一体ですから、そういうことをやっていると。ここについて、実はこことさっきの代理店との関係が非常に不透明になっていまして、保険会社本体が、今、申し上げたような仕事をやろうと思っても手足がないものですから、結局、代表代理店に投げて動いてくれというようなことをやっている節があります。
したがって、この資本関係の問題と、それから本来は規制がきちんと入っている保険業と資産運用以外のところの事業が増えているので、そことの関係を、一度アドレスというか、コンファームしたほうがいいような感じがします。
以上です。
○神作会長
御指摘どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の松井委員、御発言をお願いいたします。
○松井委員
今般、私も損害保険ワーキング・グループに所属しておりましたけれども、不正請求事案を契機といたしまして、不正請求の問題だけを議論するのではなく、インセンティブ構造によって問題が相互に絡み合う分野全体に改めて光が当たり、またいろいろと活発に議論いたしましてこの報告取りまとめに至りましたことは、非常によかったと思っております。しかし、インセンティブ構造が変わらない限り、取引仕法を引き続き実質的に維持することが業界としては合理的になってしまうため、モニタリングを続けていただければと思っております。
もう一つですけれども、公益信託については、文化行政ともつながりの深い分野での改正の御提案と考えております。この分野では、各地に存在する文化施設の運営を担う主体に課される役割に、教育のほか、地域振興であるとか、観光とか、あるいは防災であるとか、様々な目的が相乗りしがちなところです。そうすると、今まではマネジメント能力が必ずしも十分でなかった団体も多いところ、財務能力につきましては引き続き、こちらの法律で見ていくということになっているのですけれども、他方で何の機能を維持していくための財務能力を求めるのかという点については、文化政策に様々な要請が上乗せされている実情を踏まえますと、いろいろと今後は運営上問題が出てきたり、あるいは、破綻するところなども出てくる可能性があるかと思っております。目的が曖昧であればそうした主体の管理や救済の方針をどうするかも曖昧になるため、そうなる前のガバナンスについても、他の委員もおっしゃっておりましたけれども、非常に注意が必要な分野ではないかと考えております。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、会場に戻りまして、上田委員、翁委員、山本眞弓委員の順番で御発言をお願いいたします。ご指名が逆になってしまいましたか。失礼いたしました。それでは、翁委員、よろしければ初めにご発言ください。
○翁委員
ありがとうございます。資金決済制度等のワーキング・グループの報告について、コメントをさせていただきます。
今回は、破綻時における利用者資金の返還方法の多様化、それから、第一種資金移動業の滞留規制の緩和というのが、方向として返還方法の選択肢を設け、また、新たな返還方法を採用する場合に、最長2か月の滞留を認めるというような方向が出されたという結論については、利用者保護と、それから利用者の利便性確保という観点を両立しようという方向で議論がされたと思っておりますので、非常によいと思っております。
先ほど、山本委員からも御指摘がありましたけれども、こういった選択肢が選択されるようになっていくということが大事でございます。また資金移動業者も、だんだん規模も大きくなっておりますし、インターオペラビリティーなども出てきておりますので、しっかりとこういった事業者に対するモニタリングをしていくことも大事ではないかと思っております。
また、暗号資産、ステーブルコインにつきましては、特に特定信託受益権の発行見合い金のところでございますけれども、従来は全額要求払預金で管理されることになっていたのが、今回は国際的な動きも見まして、3か月以内の日本国債や定期預金というものも認められるということになったという方向も、適切であると思っております。
日本の競争力という観点を御指摘になっておられましたけれども、もともと要求払預金は、日本と海外ではセーフティーネットのカバーが全然違っていて、そのコストは、最終的には、預金者が負担しているという面もあります。かなりセーフティーネットのカバーが違うところでこの制度が設計されていることについて、私は問題意識を持っていました。したがって、こういう点も解決する方向ではないかというように感じております。
いずれにせよ、この分野は、皆様が御指摘のように利用者ニーズも多様化していますし、金融がどんどん産業に密接に組み込まれるようになってきているサービスが大きくなってきております。技術革新も早いですので、この分野のサービスの健全な発展のために、海外の動きもフォローしつつ、金融庁としても幅広い視野で取り組んでいただきたいと思っております。
以上でございます。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、上田委員、お願いいたします。
○上田委員
ありがとうございます。私は、本日が新任で参加させていただいており、必ずしも過去の御議論に精通しているわけではありませんので、若干、感想めいたところになるかもしれませんがお許しください。諮問の3点について、それぞれ簡単にコメントさせてください。
まず、損害保険業に関するワーキング・グループ報告書についてです。本報告書の背景となった不正請求事案は、社会的インパクトも大変大きくて、金融庁の領域を超えて社会全体の問題と認識されていたかと思います。
特に金融庁のこれまでの政策との関係でいいますと、推進と定着を進められていた顧客本位の業務運営、これが損保の一番本質的なところで問題があったというのは、かなりショッキングな状況でありました。そういった点について、このワーキング・グループの報告書を契機として、例えば、業界とか会社におけるカルチャーとエシックス、インテグリティーという、一番本質の部分が改善されるということになれば、大変喜ばしいことだとは思っております。そこを期待しております。
ガバナンスの観点からいいますと、他方でこれも金融庁が進めてこられた政策保有株式、これが何らかの背景になったのではないかというような面にも焦点が当てられたかと思います。ハードルが高かった分、政策保有株式の解消というものも進んでいると聞いております。こういうことで、競争環境の健全化というものが進むということで、これは望ましいことと思っております。
他方、損害保険会社の事業そのものに目を向けますと、自然災害でありますとか、気候変動等の環境が大変厳しくなっているということで、例えば、再保険マーケットとの交渉等の事業環境全体が相当厳しくなっているのではないかと推測しています。損害保険というのは、社会経済を支える本当のインフラの部分であろうかと思います。
もちろん今回のような問題はあってはならないのですが、他方、こういう状況に追い込んだような環境の変化や厳しさがあるとすれば、そういったところにも目を向けていく必要があるのかと思います。ステークホルダーの信頼を維持しつつ、他方では健全で、そしてサステナブルな保険会社の事業運営そのものも考慮していくというバランスが求められているのかと思いました。
次に資金決済制度に関するところです。ここも、ほかの先生方から突っ込んだ御説明があって、今、なるほどなと思いながら伺っていたところでございます。ただ、伺っていますと、新しい決済の仕組みができて、それが金融の枠内に入ってくるという中で、利用者保護やマネロン等の不正の防止を大前提に置きつつ、社会がこういう決済方法を含めて変化する中で、適格性のある事業者が健全なビジネスを行えるような環境整備というものの検討が必要であり、そのバランスが重要と思いました。
今回の報告書は、完全とはいえなくても、事業者側の要望等も踏まえたものになっているのかなと思いながら拝読したところでございます。バランスが難しい分野とは思いますけれども、事業環境、あるいは新しいものが出てくるという社会の環境が変わる中で、金融制度が後れを取らないよう、今後もお取り組みされることを期待します。
最後の公益信託についてです。皆様も御案内のとおりですが、信託制度は、我が国では業としての信託会社というところで進められてきて、一方で公益信託というのは、いわゆる信託というものの成り立ちに近い、本質的な信託の活用かと思っております。新しい制度の下で、より社会に根差した柔軟な信託制度の活用というのがあれば、これは大変望ましいことかと思います。
ただ他方では、ステークホルダー保護という観点から、高度なガバナンス、モニタリングは欠かせないと思っております。したがって、新しい公益信託制度の保護に、こういった論点がしっかりと組み込まれているとすれば、信託業法の適用を除外するという方向性についても、その方向性で問題なく運営できるということであれば、よろしいのかなと思いました。
こういった3点が本日の諮問事項であったかと思いますけれども、いずれもしっかり御議論されておられて、方向性についても、私は納得感を持って伺っておりましたので、承認の方向で賛同させていただければと存じます。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、山本眞弓委員、お願いいたします。
○山本(眞)委員
損害保険業等に関するワーキング・グループの報告書について、2点質問と1点お願いをさせてください。
まず質問の1点目は、最初の説明の資料1-1でいくと、1枚目の一番右下の損害保険分野における自主規制のあり方の整理ということです。自主規制は、もし本当に本気で取り組んでいただければ、かなり当事者の意識向上にもなるし、とてもいいことだと思います。ただ、報告書を読ませていただくと、いろんな問題がこれをやるにはあるようですが、一応、いろんな効果を検証した上で、要否を改めて検討するというふうにまとめていただいていますけれども、どのぐらいのタイムスケジュールというかをイメージされているのかなと。これは、検討すると書いたまま放り出されてしまうと困るなとちょっと思ったので、1つ質問をさせていただきます。
2つ目の質問は、2ページ目の保険仲立人の活用促進の点です。今まで各委員の方が御発言されていたように、仲立人の活用が期待されているという状況にあると思うんですけれども、この活用促進の一番下のところに、保険仲立人が不祥事件を起こした場合、当局にその旨を届け出る義務を課すというふうに書いてあって、これも報告書を読ませていただくと、どうもこの誰に義務を課すのかというのをちょっと不思議に思って、これはどうも保険仲立人御本人に義務を課すのかなと読んだのですが、不祥事件を起こした仲立人が届出をするのかなと、ちょっと非常にそこに不思議な感じを、どういう形でそれを担保するのかなとちょっと思ったので、その辺りは制度設計をされるときに、やり方というかを御検討されたほうがいいかなと思いました。
それからお願いが1個ありまして、また1ページ目に戻って、大規模乗合代理店に対する体制整備の強化は、本当にきちっと検討していただいて、これが実現できればかなり効果があるだろうと思うのですが、四角の3つ目の定期的なヒアリング等を通じたモニタリングをするという。もちろんしっかりやっていただきたいし、それによって体制整備の実効性を確保するというのも、もちろんとてもいいことなんですけど、定期的なヒアリングを、どんなツールでやるのかちょっと分かりませんけれども、いつも同じことを言ってしまうのですが、ともするとこういうのって形式的になってしまって、ただ同じことを聞いて「はいはい」と言ってやっていますとか、丸がついて終わってしまうと、全く意味がないような気がするので、ぜひ、実効性が担保されるようなヒアリングの方法を工夫していただきたいと思いますので、それをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○神作会長
どうもありがとうございました。「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の報告について、2点御質問をいただいたかと思います。よろしくお願いいたします。
○赤井保険企画室長
1点目の自主規制機関の話ですけれども、こちらは、このワーキング・グループを開催する前に有識者会議を当庁で開催しておりまして、その中で代理店の業務品質を高めていくために、損害保険業界の中にも自主規制といった枠組みを、例えば、日証協等と同様の枠組みをつくっていくべきではないかといった御意見があったことを踏まえて、このワーキング・グループで議論したものでございます。
ワーキング・グループでの議論としては、やはり損害保険代理店は非常に数が多い、現在は15万店ありますけれども、これをなかなか自主規制機関であったとしても、モニタリングしていくというのは非常に難しいのではないか。あるいは、兼業代理店は事業の実態が一様ではないということもあります。こういった事情がある中で、なかなか実効性を確保することが難しいのではないかといったことが意見としてありました。
また、委員の御指摘にもありましたけれども、足元で代理店の業務品質を確保していこうという取組みとしては、現在、損保業界の中でも検討が進んでいるところでございます。具体的には、中立的な第三者が代理店の業務品質をしっかりと評価する、そういった枠組みをつくろうとしているということであります。
さらには、損保業界においては、代理店の従業員の品質を高めるための教育制度もしっかりやっていこうという取組みを進めておりますので、我々としては、こういった損保業界における取組みというものの効果を、まずはしっかりと見ていくということ、それでも業務品質が高まっていかないという場合には、この自主規制機関といった枠組みを改めて検討していこうということを、報告書で書かせていただいたということでございます。
この検討のタイムスケジュールでありますけれども、我々もこの報告書の内容、あるいは有識者会議での報告書の内容というものは、しっかりとフォローアップしていかないといけないと思っておりますので、具体的に、じゃあ何年後ですかということはちょっと今のところは申し上げられないんですけれども、業界とも連携しながら、フォローアップを進めていく枠組みの中で、こういった自主規制機関の議論についても、しっかりと検討を続けていきたいと考えております。
2点目の仲立人の不祥事件届出の話ですけれども、こちらは委員の御指摘のとおり、直接の義務の主体は仲立人でございます。この実効性をどう担保していくのかという点でありますけれども、一義的には、金融庁がしっかりとモニタリングをしていくということが考えられますが、法律の措置を講ずるときに過料のようなものを課すことを通じて、実効性を確保していくことが考えられます。
○神作会長
よろしゅうございますか。
それでは、オンラインで御参加いただいております、佐古委員、それからその後、会場に戻りまして、野澤委員から御発言を頂きたいと思います。それでは、佐古委員、御発言をお願いいたします。
○佐古委員
佐古です。本日はそちらにお伺いできず、申し訳ありません。今回の報告に対しては、賛成させていただきます。
以下は、拝見してのコメントなんですけれども、先ほどの河野委員の発言にかなり同意するところが大きくて、今回の検討の発端になった事件や、最近の銀行の貸金庫の案件など、今も実効性というお話がありましたけれども、従来どおりの本人の申告に基づく紙ベースの管理やモニタリングで、本当に期待される利用者保護が実現できるのかというところに、かなり懸念を持ちながら拝見させていただきました。デジタルはデジタルで、また新たなリスクもあるんですけれども、今まで紙では実現できなかった検証可能性という機能を、本人申告じゃなくて、本当にそうだねというのを第三者が検証できる形で、確認できるという機能を新たに提供してくれるものではあるので、実効性担保に向けて、併せて活用を視野に入れていただければと思っております。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、野澤委員、御発言ください。
○野澤委員
まず初めに、報告書のほうを2つ拝見いたしましたけれども、課題などが、かなりきれいに整理されておりますので、これを前に進めていっていただきたいと思います。その上で、現場的なところから、2つ感想のようなことをお伝えさせていただきたいと思います。
まず1つが、損害保険のほうの顧客本位という業務運営のところですけれども、今回は保険会社とその代理店に相互牽制機能、あるいは3ディフェンスラインのような、そういう仕組みを改めて整理をしたり、持つようにされるということ、これは過度な営業重視にならないというようにすることであったり、あるいは、お客様の利益を守るということにつながる、このベースができるんじゃないかなと思います。
ただ、よく言われますように、ベースができても、魂を入れないと意味がないということなのだと思うんですね。先ほどの山本委員の発言にもありましたように、この報告書を拝見していると、当局のモニタリングが最後の砦というような意味合いが非常に強く感じ取られるんですけれども、やはり一番大切なのは、保険代理店であったり保険会社の経営が、今回の趣旨というものをしっかりと理解するということが、一番大切なのだろうと。しかも、人も変わりますので、それを定期的にしっかりと伝えていくという、そこのところが一番重要かなと感じた次第です。
ただ、当局のモニタリングが、非常に強調されるわけですけれども、そこはぜひ効率的にやっていただきたいなと。これは、当局にとってもそうだと思いますし、モニタリングを受けるサイドにとっても効率的というのは、必要不可欠なのだろうと思います。
それから2つ目が、新しい公益信託ということなんですけれども、私の経験の中では、身寄りのない高齢者の方で相当の御資産をお持ちの方が、数字は把握をしておりませんけれどもかなりいらっしゃると。そういう方の中には、自分の資産を何とか役立てたいなというような方もいらっしゃいますので、この公益信託というものが使いやすくなるというのは、非常に委託者となる本人の意思にもかないますし、世の中のためにもなるということで、いい方向に行くなと感じます。ただ一方で、やはり高齢者の方が委託者側になるとすれば、この方をどうやって保護をしていくかといったところは、しっかりと見ていっていただきたいと感じる次第です。
また、この資料の3-2の中で、委託者と受託者というふうな図がありますけれども、高齢の委託者は、別に委託者は高齢者ばかりではないと思いますけれども、高齢の方が自分の資産をどうしたらいいか、これを相談するということそのものが、かなりハードルが高いことだと思いますので、やはり信頼のできるような、相談できる機関といったものがあって、その機関が、委託者とのマッチングをうまくしていくというような仕組みがあると、よりよくなっていくのではないかと感じた次第です。
以上でございます。
○神作会長
御意見をどうもありがとうございました。ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。よろしいでしょうか。委員の皆様より、多数の貴重な御意見を頂き、誠にありがとうございました。
それでは最後になりますけれども、先ほど御説明頂きました「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」及び、「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」の報告書につきまして、これらを金融審議会の報告として御了承いただくということとさせていただきたいと存じます。御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神作会長
どうもありがとうございます。
以上で、本日の予定の議事は全て終了いたしました。これにて、金融審議会総会、金融分科会の合同会合を終了いたします。
本日の議事の模様につきましては、この後、事務局から記者レクを行います。今後の日程などに関しましては、後日、事務局より御連絡させていただきますので、御対応をよろしくお願いいたします。
皆様方、本日は大変お忙しい中、御参加いただき誠にありがとうございました。
―― 了 ――
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