第55回金融審議会総会・第43回金融分科会合同会合議事録
日時:
令和7年6月25日(水曜)10時00分~12時00分
場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室 及び オンライン形式
○神作会長
おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第55回金融審議会総会・第43回金融分科会合同会合を開催いたします。
皆様方には、お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議は対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド方式で開催しております。会議の模様は、ウェブ上でライブ中継をさせていただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて、後日公開させていただく予定でおります。
開会に当たりまして、最初に井藤長官から御挨拶と、加藤金融担当大臣からの新たな諮問についてお話を頂きます。それでは、井藤長官、どうぞよろしくお願いいたします。
○井藤長官
皆さん、おはようございます。金融庁長官の井藤でございます。神作会長をはじめ委員の皆様におかれましては、日頃より金融審議会において貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございます。開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
政府では、成長と分配の好循環が動き始めてきた中、引き続き、デフレ脱却を確かなものとし、国民一人一人が賃金・所得の増加を実感できるよう、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとするための取組みを進めております。
こうした中、金融庁としては、貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」をはじめとして、成長型経済への移行に金融面から貢献するための取組みを着実に推進してまいります。
このような考えを踏まえ、金融審議会においては、新たな諮問事項として4点の検討をお願いしたいと考えております。
1つ目は、暗号資産を巡る制度のあり方についてです。金融庁では、国内外の投資家において、暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じていることを踏まえ、昨年来、暗号資産のあり方の検証を通じて論点の整理を行ってまいりました。その検証結果も踏まえつつ、暗号資産に関する制度整備に向けた検討が必要と考えております。
2つ目は、不公正取引規制の強化等についてです。政府が掲げる「資産運用立国」の推進に当たり、資本市場の信頼を確保し、投資家保護が適切に図られることが重要です。このため、資本市場の信頼を損ないかねない不公正取引等への十分な抑止力が発揮されるよう、不公正取引等の違反事案に対する課徴金のあり方等を含め、検討を進める必要性が高まってきております。
3つ目は、企業情報の開示のあり方についてです。サステナビリティ情報の開示と保証のあり方については、既に金融審議会のワーキンググループで議論していただいているところですが、これに加え、スタートアップの資金調達ニーズの高まりなどの環境変化を踏まえた制度の見直しの余地がないかといった点も含め、投資判断に資する企業情報開示のあり方や、その実現に向けた検討が必要と考えております。
4つ目は、地域金融力の強化についてです。地方創生の観点から、地域金融機関が地域経済に貢献する力、いわゆる「地域金融力」を強化することは重要です。このため、地域金融力の発揮のための方策や、地域金融機関の金融機能強化のための資本参加制度や資金交付制度の期限延長・拡充を含む環境整備等に向けた検討が必要と考えております。御検討いただいた結果も踏まえ、今後、関連施策をパッケージ化した「地域金融力強化プラン」を年内に策定し、強力に推進してまいります。
以上4点につき、加藤勝信金融担当大臣より諮問いたします。委員の皆様には、幅広い観点から御審議をお願いしたいと思います。
それでは、諮問文を読み上げさせていただきます。
2025年6月25日
金融審議会
会長 神作裕之 殿
金融担当大臣 加藤 勝信
金融庁設置法第7条第1項第1号により下記のとおり諮問する。
記
- 暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討
国内外の投資家において暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じていることを踏まえ、利用者保護とイノベーション促進の双方に配意しつつ、暗号資産を巡る制度のあり方について検討を行うこと。
- 不公正取引規制の強化等に関する検討
昨今の資本市場を巡る諸問題を踏まえ、我が国市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼を確保し、利用者保護を図るとともに、市場機能が十全に発揮されるよう、不公正取引規制の強化等について検討を行うこと。
- 企業情報の開示のあり方に関する検討
スタートアップ等の資金調達ニーズの高まり、非財務情報の開示の拡充等、情報開示を巡る環境変化を踏まえ、投資判断に資する企業情報の開示のあり方やその実現に向けた環境整備について幅広く検討を行うこと。
- 地域金融力の強化に関する検討
地域における趨勢的な人口減少その他の環境変化の中で、地域金融機関等が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるように地域金融力の強化に必要な方策について検討を行うこと。
以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○神作会長
どうもありがとうございました。それでは、ここで、カメラの方々は御退室をお願いいたします。
(報道関係者 退室)
○神作会長
それでは、議事に入らせていただきます。
まず本日の会議について、留意事項を申し上げます。御発言を希望される際は、対面で御出席いただいている方々は、ネームプレートを立てていただくようお願いいたします。オンラインで御出席の方々は、オンライン会議のチャットで全員宛てに、メッセージでお名前と発言希望の旨を送信していただくようお願いいたします。そちらを確認させていただき、私のほうで御指名させていただきますので、御自身のお名前をおっしゃっていただいた上で御発言をお願いいたします。
総会委員の皆様の名簿につきましては、配付した会議資料を適宜御参照ください。本日の出席状況についてでございますけれども、河野委員、冨田委員、松井委員、山本眞弓委員が御欠席と伺っております。
次に、本日の議事の流れについて御案内申し上げます。最初に、ただいま頂きました諮問事項につきまして、事務局から補足説明を頂きます。その後、それらの内容について皆様で御討議をお願いしたいと存じます。
それでは、初めに、暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討につきまして、齊藤市場課長から御説明をしていただきます。齊藤課長、どうぞよろしくお願いいたします。
○齊藤市場課長
市場課長の齊藤でございます。私のほうから、暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討につきまして補足説明をさせていただければと思います。右肩に資料1と書いている資料を御覧いただければと思います。
1枚おめくりいただきまして、暗号資産の取引の状況等について、ここから数枚のスライドを用意しております。まず、1ページ目、左側の棒グラフでございます。2025年1月時点におきまして、暗号資産の日本国内における利用者口座数は、延べ1,200万口座を超えている状況でございます。利用者預託金残高も5兆円を超える状況になっておりまして、これは足元はFXよりも多い状況になっているところでございます。
右側はグローバルなファンドフローの図でございます。青字がETFへのフロー、赤がETF以外へのフローでございます。御覧いただきますとおり、近年、暗号資産への資金流入が大きく拡大しておりまして、特にETFを通じた資金流入が増加しているところでございます。
続きまして、2ページ目を御覧いただければと思います。暗号資産の取引状況等についてでございます。こちらは金融庁で行っております顧客意識調査結果ということで、昨年7月5日に公表しているものでございます。この中で、投資経験者の中で保有している金融商品はどういうものですかという質問がございます。赤で囲っているところでございますけれども、暗号資産につきましては、投資経験者の7.3%の方が既に暗号資産を保有している状況ということで、右側を御覧いただきますと、円建て社債やFXよりも保有率が高くなっている状況でございます。
続きまして、3ページ目を御覧いただければと思います。上側は、日本の機関投資家への意識調査で、機関投資家の運用担当者にアンケートした内容でございます。回答者の62%が、暗号資産を分散投資の機会として捉えているといった状況、また、回答者の54%が、今後3年間において暗号資産への投資意向があるということで、機関投資家の暗号資産へのニーズも高まってきている状況かと存じております。
また、下側は昨年11月末の報道でございますが、米国において、暗号資産、ビットコインを組入れたETFを保有する機関投資家の裾野が拡大しているということでございます。この新聞社の調べでは、昨年の11月末時点で1,200社を超えているということで、公的年金など、長期保有を前提とする投資家におきましても、インフレ耐性のある資産として暗号資産へ投資する動きが増えているということが指摘されているところでございます。
次の4ページ目を御覧ください。こうした投資対象としての認識が広まっている反面でございますけれども、暗号資産等に関する苦情相談も増えている状況でございます。金融庁の金融サービス利用者相談室におきましては、継続的に暗号資産投資の勧誘に係る相談等が寄せられている状況でございます。足下月平均300件以上、そういった相談が寄せられているところでございます。
5ページ目をお願いいたします。主な暗号資産であるビットコインやイーサリアム等の価格の推移をチャートにしているものでございます。青の折れ線がビットコインで、赤がイーサリアムでございます。御覧いただきますように、伝統的な金融商品よりも非常にボラティリティが高い状況にあることが見て取れるかと存じます。
次のページをお願いいたします。こういった現状を踏まえまして、金融庁におきましては、暗号資産に関する制度のあり方等の検証を行ってまいりました。その検証結果につきまして、ディスカッション・ペーパーの形で、本年4月10日に公表させていただいております。その概要は、このページと次のページでまとめさせていただいております。
(1)は、今申し上げた取引の状況でございます。
(2)の下側で、こういった状況を踏まえまして、暗号資産投資をめぐる喫緊の課題ということで、4点ほど指摘させていただいております。左側①といたしまして、情報開示・提供が不十分ではないかということ。②といたしまして、利用者保護・無登録業者への対応をもっと強化すべきではないかということ。③といたしまして、現行の規制の対象とはなっていない投資運用、あるいはアドバイス、そういった行為への対応も必要ではないかということ。④といたしまして、価格形成・取引の公正性の確保ということで、インサイダー取引も含めて対応していく必要があるのではないかということ。こういったことを指摘させていただいているところでございます。
次のページでございます。そうした課題意識を踏まえまして、規制見直しの基本的な考え方としまして、こういった諸課題につきましては、伝統的に金商法が対処してきた問題と親和性があるのではないか。金商法の仕組みやエンフォースメントを活用することも選択肢の1つではないかと指摘させていただいております。その上で、規制見直しの検討を行う場合には、暗号資産の性質に応じた規制とする観点や、取引の実態等にも着目し、暗号資産を2つの類型に分けて検討することが考えられるのではないかということを指摘させていただいております。また、暗号資産が株式等の典型的な有価証券とは異なる特性を有するということも踏まえて、適切な規制のフレームワークを検討する必要があるのではないかということを指摘させていただいております。
暗号資産の2つの分類についてでございますが、その下に書いております資金調達を行って事業活動をするような暗号資産の類型が①、それ以外が②としております。①の資金調達をするような類型につきましては、資金調達を行う発行者に対して、正確な情報開示等を義務づけることが考えられるのではないかといったことを指摘させていただいております。
下側の業規制につきましても、より実効的かつ厳格な規制の枠組みが必要ではないか、また、投資運用行為や投資助言行為を規制対象とすることが適当ではないかといった指摘を致しております。また、市場開設規制につきましては、暗号資産取引は株式等の取引とは異なりまして、様々な取引所で売買でき、またピア・ツー・ピアでも取引できますので、取引所の価格形成機能は限定的であり、現時点では厳格な規制を課す必要性は低いのではないかということを指摘させていただいております。
また、インサイダー取引につきましても、規制のあり方について検討を深めていく必要があるということ、また、業界及び当局の市場監視体制の向上も重要ではないかといった指摘をさせていただいております。
こういった内容のディスカッション・ペーパーを公表し、パブリックコメントに付したところでございます。頂きましたコメントにつきましては、おおむね方向性については賛同いただいているものと承知しております。このため、具体的な暗号資産をめぐる制度のあり方についての検討を、金融審議会でお願いできればと考えているところでございます。
私からは以上になります。
○神作会長
御説明どうもありがとうございました。
続きまして、諮問事項の2つ目の不公正取引規制の強化等に関する検討につきましても、齊藤市場課長から御説明をお願いいたします。
○齊藤市場課長
続きまして、右肩に資料2と記載している資料を御覧いただければと思います。不公正取引規制の強化等に関する検討についての補足説明をさせていただければと思います。
1枚おめくりいただきまして、1ページ目でございます。背景といたしまして、近年の証券取引等監視委員会における不公正取引等に関する調査・検査の過程におきまして、不正と考えられるものの、既存の法令では違反行為として捕捉できないといった事例でありますとか、違反行為として捕捉できるけれども課徴金の額が低く抑止効果が十分ではないといった事例が認められるということでございます。
こういった事例を踏まえまして、証券取引等監視委員会からは、6月20日に内閣総理大臣及び金融庁長官宛てに建議を頂いているところでございます。市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼を確保するためには、不正・違反行為に対する抑止を十分に図ることが重要と考えます。不公正取引規制の強化等について検討していただきたいと考えているところでございます。
また、その他でございますけれども、昨今の資本市場をめぐる諸問題を踏まえた課題につきましても、必要に応じて御検討いただければと考えているところでございます。
建議の概要は、下側に記載しておりますように、大きく3つの種類がございます。建議1といたしまして、インサイダー取引規制における関係者の範囲について。また、建議2といたしまして、課徴金の適用範囲及び算定基準について。また、建議3といたしまして、効果的・効率的な検査・調査の実施のための措置についてということでございます。
概要につきまして、次のページとその次のページでまとめております。2ページ目を御覧いただければと思います。まず、公開買付者等関係者に係るインサイダー取引規制の対象者の範囲の拡大についてでございます。現行のインサイダー取引規制は、会社関係者によるインサイダー取引規制と、公開買付者等関係者によるインサイダー取引規制と2種類設けられているところでございます。規制対象となる内部者につきましては、法令上、限定列挙されているところでございます。例えば公開買付者でありますとか、その対象企業でありますとか、公開買付者の契約締結先といった対象者が内部者として限定列挙されているところでございますけれども、監視委員会の調査・検査の中で生じている事例といたしまして、公開買付けの対象企業の契約先から情報が漏れて取引が行われるケースがあるということでございます。TOBの場合は事前交渉を行うケースが一般的であり、そうした事前交渉で公開買付けについて対象企業が知った場合に、対象企業におきましても、どう対応するかということについて外部のアドバイザー等の助言を求めることが多くございます。そういった場合に、この外部のアドバイザーは、対象企業の契約締結先になるわけでございますけれども、こういった先が内部者に入ってないため、現行の内部者の範囲が狭いのではないかという問題意識でございます。
2つ目が、他人名義口座の提供を受けるなどして行った不公正取引に係る課徴金についてでございます。自己名義で不公正取引を行うと発覚しやすいため、他人口座を使った違反行為が多く発生している状況でございます。そして、その口座を提供する他人、協力者についても、違反行為に使われるということを認識しているケースもあるということでございます。そうしたいわゆる幇助犯的な協力者につきましても課徴金を課すことなどを検討すべきではないかというものでございます。
3点目といたしまして、大量保有報告制度違反に係る課徴金についてでございます。大量保有報告制度は、上場会社の株式を5%超保有する場合に提出が義務づけられている報告書でございます。現行法上、課徴金額は、対象企業の時価総額の10万分の1と規定されております。しかし、これまでの事例では、御覧のように10万、20万、30万と、かなり低い金額の課徴金額となっており、株の買い集めを行おうとする者に対する抑止力が低いのではないかという問題意識でございます。
4点目といたしまして、高速取引行為、いわゆるHFTでございますけれども、HFT業者による相場操縦に係る課徴金でございます。高速取引行為による注文を通じて相場操縦を行う事案が発生しているところでございます。HFTにつきましては、アルゴリズムを用いて高速、高頻度かつ自動的に行うという高速取引行為の特性を踏まえた課徴金額の算定方法を設けていくべきではないかというものでございます。現行、違反行為による注文、取引を全て認定した上で、利益を算定して課徴金額を算定していくことになっております。これが大量・少額の取引を行うHFTの違反行為を認定するに当たっては、実務上難しい問題があるという問題意識でございます。
次のページをおめくりいただければと思います。公開買付者等関係者に係るインサイダー取引規制の課徴金についてでございます。近年、公開買付者等関係者に係るインサイダー取引規制の違反事例が多く発生しております。こういった行為に対する抑止力を高めていくために、課徴金額の水準を引き上げていくべきではないかということでございます。
続きまして、課徴金の減算制度の見直しについてでございます。現行は、有価証券報告書の虚偽記載等につきまして、証券取引等監視委員会の調査開始前に違反事実の報告を行った場合には、課徴金の減算が認められているところでございます。一方で、調査開始前に違反事実の報告を行っておきながら、調査開始後に調査に対して協力的でなくなることも想定されるということでございます。調査の実効性を高めるために、独禁法にもこういった制度があるようでございますけれども、調査開始後の減算制度についても設けるべきではないかといった問題意識でございます。
続きまして、検査等対象者の出頭命令の範囲拡大についてでございます。現行法では、不公正取引等の事件関係人に対しては出頭を命ずる権限が設けられておりますが、これを拡大すべきではないかということでございます。証券取引等監視委員会の検査対象となる金商業者、上場会社等が多様化していることを踏まえ、現行ですと任意調査でございますので、調査に協力してくれない事案も生じているところと承知しています。こういった行為への対応が必要ではないかということ。また、証券取引のグローバル化の進展を踏まえまして外国当局と調査協力をしていくことが必要でございます。これは相互主義が原則でございますので、多くの外国当局で出頭命令の権限がある一方で、我が国にはその権限がないということになりますと、我が国からの調査協力に応じてもらえなくなる可能性もあるということで、出頭命令の権限を追加するといった措置が必要ではないかということでございます。
最後に、無登録業者に対する犯則調査権限の創設ということでございます。現行、証券取引等監視委員会の犯則調査の対象範囲は、開示規制違反、また不公正取引規制違反等になっているところでございます。一方で、無登録の金融商品取引業と不公正取引の複合型の事案も生じているところでございます。例えば、運用すると称して金銭を拠出させ、それをもって不公正取引を行うといった事案も生じているところでございます。こういった事案に適切に対応するために、無登録業に対する証券取引等監視委員会の犯則調査権限の創設等を検討すべきではないかという問題意識でございます。
次のページでございますけれども、こういった問題意識に基づきまして、先般閣議決定された新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画におきましても、抑止効果が発揮されるよう検討していくということが示されているところでございます。こういった観点から、御議論いただければと考えているところでございます。
以上でございます。
○神作会長
御説明どうもありがとうございました。
続きまして、諮問事項の3つ目の企業情報の開示のあり方に関する検討につきまして、野崎企業開示課長から御説明をお願いいたします。
○野崎企業開示課長
では、企業開示課の野崎と申します。よろしくお願いします。私のほうから、資料3に沿って御説明させていただければと思います。
本日、3項目ございますけれども、まず、1つ目の有価証券届出書の提出免除基準の検討につきまして、2ページ目を御覧いただければと思います。まず、50人以上の一般投資家を対象とする新規発行有価証券の勧誘行為は募集に該当し、調達金額が1億円以上であれば、有価証券届出書の提出が必要となっております。左下の図の赤枠部分でございます。その後、継続的に有価証券報告書等の提出も必要ということになってございます。1億円のバーにつきましては、投資者保護に留意しつつ、スタートアップ・成長企業への投資をさらに促進する観点から、資金調達に要する情報開示のコストも踏まえまして、引上げ等について検討する必要性が指摘されているところでございます。
さらに募集に該当しない勧誘につきまして、私募という枠組みで、左下の少人数私募と、あと右下の図の適格機関投資家や特定投資家向けの勧誘について、こちらは有価証券届出書の提出は不要とされてございます。ただし特定投資家私募につきましては、特定証券情報の提供・公表が求められておりまして、注3に記載してございますけれども、こちらは簡素なものとなっているというところでございます。また、特定投資家私募につきましては、注4に記載してございますけれども、さらなる制度の活用に向けた対応も既に進めているというところでございます。
次に、2つ目の項目でございます。虚偽記載等に対する責任のあり方、いわゆるセーフハーバー・ルールの検討でございまして、4ページを御覧いただければと思いますけれども、こちらに記載してございますように、現在サステナビリティ情報の開示保証制度の導入に向けた議論をワーキンググループで進めておりまして、プライム市場の上場企業の時価総額の大きいところから段階的に国際基準と整合性の確保された日本のサステナビリティ開示基準、SSBJ基準を義務づけるとともに、保証制度の導入についても検討を進めているところでございます。サステナビリティ開示基準におきましては、様々な情報がある、将来情報も含まれていますけれども、5ページにございますように、いわゆるScope3GHG排出量と呼ばれる、バリューチェーンから発生する温室効果ガス排出量の開示が求められるということでございまして、自社のみならず、左下の図にございますように、上流、下流からのデータの集計が必要となるということでございます。ただし、こちらは全て実測値である必要はなくて、一定の仮定を含む見積りの方法によることも認められているというところでございます。
6ページでございますけども、こうした将来情報ですとかバリューチェーン情報の開示が求められてくるサステナビリティ情報の開示につきましては、上から2つ目のブロックの黒ポチ2つございますけれども、まず、1つ目のように、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るリスク及び機会に関する重要性のある情報の開示というものが求められますので、その範囲は会社によって様々になってくるということでございます。
2つ目の黒ポチでございますけれども、サステナビリティ情報というものは、定性情報や見積りを含む将来情報が多く含まれるほか、先ほど申し上げたようにバリューチェーンからの情報のように、自社の統制が及ばない第三者から入手した情報の開示も求められているというところでございます。こうした中、こうした特性を踏まえずに、従来どおりの枠組みの中で有価証券報告書の記載事項と位置づけてしまうと、企業において、結果的に虚偽記載の責任を問われることを恐れるあまり、有価証券報告書での積極的な情報開示を避けようとすることが懸念されると。こうなってしまうと有用な投資情報を提供するという、有価証券報告書の趣旨が損なわれるということにもなりかねないということでございます。
有価証券報告書の開示の充実と責任の範囲の明確化のための環境整備を併せて行っていくということが必要というふうに考えてございまして、具体的には、一定の要件の下で、虚偽記載等の責任が問われない範囲を明確化する、いわゆる一番下でございますが、セーフハーバーの具体的な内容ですとか、適用要件・適用範囲の検討が必要かというふうに考えてございます。
最後の3つ目の項目は8ページをお開きいただければと思いますけれども、これを機に有価証券報告書全体の記載事項を整理して、より投資家の利便性向上と企業側の作成負担の軽減に資するような見直しを行ってはどうかという点と、あと2つ目でございますけれども、株式報酬に関しまして、自社の発行する上場株券を交付する場合のほか、スタートアップ等の非上場会社の場合などについても、有価証券届出書の提出免除の特例措置を認めることについてどう考えるのかと、こういった点についても併せて検討することが必要かというふうに考えてございます。
私からは以上でございます。
○神作会長
御説明どうもありがとうございました。
それでは、最後に、諮問事項の4つ目の地域金融力の強化に関する検討につきまして、三浦信用制度参事官から御説明をお願いいたします。
○三浦信用制度参事官
信用制度参事官の三浦でございます。それでは、資料4「地域金融力の強化に関する検討について」を御覧ください。
まずはスライド1になります。こちらは本年5月14日に行われた新しい資本主義実現会議において、加藤金融担当大臣から御説明いただいた資料になります。ここでは趨勢的な人口減少・高齢化の中で地域が持続的に発展していくため、地域金融機関は、いわゆる単なる融資、金貸しにとどまらず、地域企業のM&A支援やDX支援などを含めて地域経済に貢献する力、すなわち地域金融力のさらなる発揮が求められていること、政府・金融庁としては、そのために必要な関連施策を地域金融力強化プランとして年内に策定し、推進していく旨が記載されております。
次のスライド2をお願いします。ここでは、先ほど述べた「地域金融力強化プラン」について、新資本主義の実行計画及び地方創生2.0基本構想といった閣議決定文書においても盛り込まれているということが示されております。次のスライド3、お願いします。
こちらのページにおいては、これまで申し上げてきた背景、すなわち地域金融力の担い手として期待される地域金融機関等が、その役割を十分に発揮できるための環境整備を進める必要があるということを踏まえて、今後、金融審議会・地域金融力の強化に関するワーキンググループを設置の上、主に以下3点について御検討、御審議いただきたいと考えてございます。
まずは1番、地域金融力の発揮です。人口減少やその他の環境変化、例えば金利環境などが変わってくる中で、地域経済のさらなる活性化に向けた地域金融のあり方や地域金融力を推進していくための方策について検討するものです。
次に2番、地域金融機関の経営基盤強化になります。地域金融機関の再編に係る一定の必要経費を交付する資金交付制度及びこれまで震災やコロナといった危機時においても、金融機関がその機能を維持するために国が資本参加を行う資本参加制度が、2026年3月末に申請期限を迎えることになっております。これらの制度の期限延長・拡充を検討するものでございます。特に資本参加制度については、大規模地震等、将来起こり得る危機にも機動的に対応ができるように、大規模災害時等における特例制度の要否を検討したいというふうに考えてございます。更に、これらの検討の際には、最近の不祥事案を踏まえて、資本参加先の地域金融機関の適切な経営管理、業務運営をいかにして確保していくかについても、併せて検討する必要があると考えております。
最後に3番、その他(地域金融機関の財務の健全性や当局におけるモニタリング態勢のあり方)になります。これは人口減少や金利環境の変化といった中でも、持続的に地域金融力を発揮できるように、財務の健全性を確保するための対応のあり方、さらには地域金融機関が地域金融力を発揮していただくための環境整備の1つとして、中小金融機関等の実態等を踏まえた監督・モニタリングのあり方を検討するものでございます。
次のスライド4は参考資料ですが、金融機能強化法の概要と、これまでの活用実績をまとめております。詳細な説明は割愛いたしますが、資本参加制度については、現在一番上の本則と2段目のコロナ特例が現在も申請可能となっております。本則が24件、約4,675億円、コロナ特例が3件、約416億円活用されておりますが、来年の3月までに申請期限が切れるという予定でございます。一番下の資金交付制度につきましては、令和3年7月から開始されましたが、これまでの活用実績は7件、約150億円となっており、こちらも来年3月末に申請期限が到来するということでございます。
資料の説明は以上になります。
○神作会長
御説明どうもありがとうございました。それでは、討議に入りたいと存じます。大臣から4つの諮問事項を頂き、また、それについて事務局から補足説明を頂きました。諮問事項及び補足説明に関しまして、御質問や御意見等がございましたら、どなたからでも結構でございますのでお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、川口委員、どうぞ御発言ください。
○川口委員
ありがとうございます。諮問事項に応じて、4つのワーキングで検討するということに、特に異論はございません。
暗号資産について、これまで資金決済法で対応がなされてきましたが、先ほどもあったように、金商法で対処してきた問題と親和性があるのはそのとおりと思いまして、今回、金融審議会のワーキングで検討されるというのは適切と思います。
他方で、例えば、暗号資産についてインサイダー取引規制を及ぼすという点については、従来から議論があったわけです。ただ、特に発行者が観念できないものについて、従来の金商法の枠組みですと、内部者、内部情報を基本とするルールですので、そのままでは適用がなかなか難しく、立法化が見送られてきた経緯がありました。先ほど、海外のものをいろいろ参考にしながらというご紹介がありました。従来の金商法の枠組みだけでは難しく、いろいろな工夫が必要な難問ですが、ワーキンググループでの成果を期待したいと思います。
不公正取引の規制の強化については、課題は多くあると思いますが、特に、課徴金の見直しが重要と考えます。課徴金の性格は、刑事罰との差別化から利得相当額の吐き出しと従来から位置づけられており、その対象も、当初は利得相当額の算定が容易なもの、確か、4つでしたか、に限定されていました。これから、規制の対象が拡大をし、金融庁の規制の重要なツールになっています。ただ、そこでは、利得相当額の算定が困難と思われるようなものを、かなり無理にバーチャルで算定しているという状況です。さらに、もともと利益の吐き出しだけで抑止効果があるのかという疑念もありました。課徴金をツールとした規制強化の方向性が打ち出されたということは十分に理解できます。
ただ気になりますのは、課徴金制度は、先ほど言いましたように非常に幅広いものに適用されるものになっており、さらに、これを広げていこうということなのですけど、その際に、抑止効果を高めるために課徴金の額を増やすということになると、制度の趣旨を再検討する必要が出てくるのではないかと思います。必要な部分について強化をしていくというのは理解できるのですけど、これは、本質的に課徴金制度のあり方全体に関わる問題ではないかと考えます。検討に反対しているわけではありませんが、その点の議論が重要かと思います。
企業情報の開示については、有価証券報告書の記載事項を整理するということも賛成です。例えばコーポレートガバナンスの状況などについて、分かりやすい記述を求めるというものになっていますが、有価証券報告書の記載内容も、記載上の注意を含めまして、非常に複雑で量も多くなっていますので、再検討するという方向性は支持できます。
最後に、本件と離れるのかもしれないのですが、せっかくの機会ですので、企業負担ということであれば、インターネットを利用した間接開示が普及しているということから、直接開示との関係も、見直しても良いのではないかと思っています。これまでも、公開買付けの規制については、直接開示と間接開示の調整が一部実現しています。開示制度全般についても、両者の関係を、そろそろ整理するのが良いのではないかと思います。
なお、有価証券報告書の総会前開示が話題になっています。金商法と会社法の交錯場面ですが、開示制度についても、金商法と会社法上の制度の調整も検討課題になると思います。所管官庁が違うため、難しいところはあるかもしれませんが、将来的な課題として、ここであげさせていただきます。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、翁委員、御発言ください。
○翁委員
ありがとうございます。まず、不公正取引規制につきましては、この議論の内容、規制の強化、課徴金の引上げについては大変大事な方向であり、深めていっていただきたいと思いますが、同時に金融庁としても、違反行為の抑止力を高めるという観点から、どうやってエンフォースメントをしっかりと強化していくかについても検討を深めていただければと思います。
今回、大量保有報告制度違反への対応、課徴金の引上げが提案されていますけれども、こういったことについてもしっかりエンフォースメントを強化していくことが大事であると思っています。最近アクティビストの活動も活発化しておりますけれども、当局のエンフォースメントが弱いと、企業サイドがアクティビストに対応することや、投資家との対話をすることも難しくしてしまうと思っております。その意味で、規制の実効性をいかに確保するかについても、並行的に議論いただければというふうに思っております。
2つ目のサステナビリティ情報の虚偽記載等に係るセーフハーバーの適用範囲につきましては、御提案のとおり、サステナビリティ情報等につきましては、相対的に不確実性の高い情報が多いということも踏まえて、合理的なものを考えていく必要があると思っております。これによって、むしろ開示の充実を図っていくという方向に賛同しております。
また、同時に、ここに書かれております、企業にとっての有価証券報告書の記載事項のうち、相対的に有用性が低くなっている事項を検証して整理を行っていくというのも非常に重要な取組みであり、これによって投資家との対話の充実や、企業の作成負荷の軽減を図っていくということは大事だと思っております。
また、サステナビリティ開示につきまして、ISSBで人的資本の分野についてもリサーチプロジェクトが始まっておりますけれども、国際的な議論への貢献もしながら、日本としてもしっかり取り組んでいただいて、特に今、日本では人手不足が本当に深刻化しておりまして、人的資本への投資の取組みをビジネスモデルや経営戦略と結びつけて開示していくということは極めて重要な取組みだと思っておりますので、ぜひこちらもしっかりと検討を深めていただきたいなと思っております。
最後に、地域金融力の強化でございますけれども、地銀、信用金庫、信用組合など、地域金融機関が多くの中小企業や小規模事業者の経営改善のために努力することが、自らの経営の存続にも関わる非常に重要な課題だと思っておりますし、今後、人手不足で大変な状況になっている日本経済にとっても極めて重要だと思っております。これは新しい資本主義実行計画でも明記されておりますけれども、省力化投資とか、またリスキリング、こういったことをやる必要があることを周知していくというのも多くの地域金融機関の役割でありますし、これをしっかりと全国的に進めていくことが大事だと思っております。
さらに事業承継のみならず、早期事業再生やM&Aが必要となっている企業も大変多いという状況かと思っておりますので、これもしっかりといろいろなステークホルダーと連携して役割を果たしていってほしいと思っております。
今回、地域金融力の強化は、公的資金と結びつけた議論かと思っていますけれども、同時に今申し上げたような課題も、全ての地域金融機関に大事なことだと思っておりますので、監督指針の見直しも含めてしっかり議論を深めていただきたいと思います。
あと、ここに書いてございますように、公的資金を投入しながら不祥事が起こっている金融機関が存在していることは大変問題でありますので、監督・モニタリングもどうやっていくかということの議論が必要ですが、そもそものガバナンス、これについてもしっかりと強化を図っていただくという方向で議論が深まることを期待しております。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
ここで、オンラインで御参加の星委員に御発言を頂きたいと思います。星委員、中途で退室されると伺っておりますので、どうぞ御発言ください。
○星委員
ありがとうございます。地域金融力の強化ということで、今、翁委員もおっしゃいましたが、そこについて2点ほどコメントさせていただきたいと思います。
資料4の1ページ目にあるように、地域金融力というのは、地域金融がここで掲げられているような様々な機能を発揮して地域経済に貢献する力ということで、地域金融力を強化するということは、現存するいわゆる地域金融機関を助けていくということとは違うということ、これを強調しなければいけないと思います。このスライドでも、地域金融機関や「その他の主体」ということを言っていまして、その他の主体、これはまだ地域金融に関わる事業に参入していない主体というのも含むと思います、そうした主体も地域金融力を強化するような競争に参加していける「環境整備」、これが重要になってくる、そこを確認すべきだと思います。
もう1点はその次のページですが、地方創生2.0と言っています。しかし、地域金融力の強化というのは以前から言われてきたところで、そのための政策も金融庁の政策も含めていろんなことを打ち出してきているわけです。それがどうしてまだ目覚ましい効果というのを上げてないのか、言ってみれば地方創生1.0というのがなぜうまくいかなかったのか、そうしたことを地域金融に関する政策についてもう一度精査するということが、今後の政策を議論していくというときの前提条件になるかと思います。例えば、最後のスライドには金融機能強化法の活用実績というのがまとめられているわけですが、こうした取組みがそれぞれどのような効果を持ったのか、それをもう一度確認する、そういうところから始めるべきかと思います。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、会場に戻りまして、加藤委員、御発言ください。
○加藤委員
加藤でございます。私からは、諮問事項の2、不公正取引規制の強化などに関する検討について意見を述べます。
まず、資料の2の2ページにあります主な検討事項の1、公開買付者など関係者に係るインサイダー取引規制の対象者の範囲の拡大について、意見を述べます。御提示いただいた問題を解決する方向で、制度整備を検討することには異存はありません。ただ、その際、公開買付けに関する情報が公表される前に、対象会社の市場価格が不自然な変動をしていると言えるような事情がどれくらいあるのか、そのような変動がどのような属性を持つ投資家の取引によって引き起こされているのかを併せて検討することが、インサイダー取引規制の対象者の拡大が必要な範囲を考える際に有益な資料になると思いました。
2点目は、資料の2の3ページ、公開買付者など関係者に係るインサイダー取引規制の課徴金についてです。こちらは川口委員とほぼ同じ意見ですが、課徴金の額が違法行為抑止の観点から低過ぎるという問題は、公開買付者など関係者に係るインサイダー取引規制以外にも存在するように思われます。この問題を考える際には、金商法が課徴金制度を導入する際には、独占禁止法における制度が既に存在しており、それを参考にしていたことを忘れるべきではないと思います。金商法が課徴金制度を導入して以降、独占禁止法における課徴金制度は発展しています。そのような独占禁止法における課徴金制度の発展の中で、金商法の課徴金制度に組み入れることができるものとできないものがあるのかも、検討していくことが望ましいと考えます。
3点目は、諮問事項の2のみに関わるわけではありませんが、昨今、個人投資家による投資活動が非常に活発になっております。個人投資家の皆様が投資に関する情報を収集する際には、やはりSNSを非常に使うのではないかと思います。そうしますと、SNSにおける投資に関する情報環境が今どうなっているのかということは、不公正取引規制の問題、さらに言えば個人投資家の保護の話に関連する非常に重要な問題であると思います。
その一方で、金融商品取引業者の皆様の中には、SNSを使って個人投資家などに有用な投資情報を提供するということを試みられていらっしゃる例もあると聞いております。ただ、その際には、募集や勧誘に関する規制の中に若干、不明確という言葉が適切かどうか分かりませんけれども、少し分かりにくい部分があり、SNSを使った投資商品の情報提供に対してどのような規制が適用されるのかということについて、明確化が必要な部分があり得るのではないかと思います。
私の意見は以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、小林委員、御発言ください。
○小林委員
発言の機会を頂きありがとうございます。私は各4点について、一言ずつコメントを申し上げたいと思います。原則的には、御提案のワーキング、全て設置することに賛成です。
暗号資産につきましては、金商法をベースにという点は妥当と思いますが、暗号資産の取引量が増えてきているとはいえ、不正のパターンも含めていろいろな事故のケースが必ずしも多くはないので、今後各事象に柔軟に対応できるような体制にしていくべきと考えます。また暗号資産はネットの世界の話ですので、必ずしも金商法の考え方、現存の金融規制の概念で網羅できることだけではないと思います。その辺については柔軟に、新たな規制のあり方を検討していただきたいと思います。
2点目の不公正取引については、私は課徴金の拡大ということには基本賛成です。しかし、独禁法の課徴金を増やすときに議論されたのは、必ず減算制度(独禁法では減免制度)と併せてセットで議論されました。不正取引の規制というのは、あくまでも抑止力であるということが目的と考えますと、今回の課徴金の金額増額、あるいは課徴金範囲の拡大ということと、減算制度というのを組み合わせてセットで議論していくべきであると考えます。
3点目の企業開示のあり方については、特に非財務情報の開示においては不確実性が高い情報であるということから、セーフハーバー・ルールの設置が必須であると思います。また、有報の見直しについては、総会前開示が推奨されています。現実、今回も総会前開示が増えたとはいえ、実際にはそのほとんどが総会の1日前の開示というのでは、総会前開示の本来の目的が達成されているとはいえません。企業の負担を考えますと、有報の内容、本当に重要な内容を開示する、その「重要性のある部分」というのを再定義していくことが非常に重要だと思いますし、また開示ついては、他の省庁の要求する開示と併せて総合的に開示の内容、そして、企業の負担軽減と合わせて議論していくべきと思います。
最後の地域金融力の強化については、まず、現状では、地域金融機関の数、それから種類が、本当に人口減少していく中で必要なのかということを念頭に置く必要があると思います。合わせてそれぞれの金融機関の役割が、市場競争の中で徐々に越境が行われていくようになってきていると思います。金融機関それぞれの役割を改めて見直し、地域における金融のエコシステムのあるべき姿を提示していくことも必要と思います。
一方で、金融難民を生まないこと。特に地方では高齢化が進んでおりますので、統合や様々な合理化によって、一方で金融難民が生まれてしまう可能性があります。この点も念頭に置いてどういうモデルをつくっていくのか議論いただきたいと思います。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、河村委員、御発言ください。
○河村委員
地方の金融機関の問題と、それから、情報の開示の問題、2つのテーマで申し上げます。
最初に地方の金融機関の問題は、具体的には地銀の問題とか信用金庫の問題になってきますけれども、人工知能の問題を、AIの問題をどういうふうに入れ込んでいくかということは非常に大きなテーマになっていると思うんです。都銀の典型ですけれども、銀行業務の業態が人工知能によって大きく変わってきております。審査とか融資のような伝統的な業務に加えて、投資判断とか、あるいはプロジェクトのコーディネーションとか、いろんな大事な経営判断のサポート業務を人工知能がやっていると。これは金融機関全般に伝播してくる問題なんですが、地銀とか信用金庫においては、これに対して投資をする余力がないんです。信用金庫だから人海戦術でといっても、さっきお話がありましたように、もう人はいませんのでどうしてもこういうところへ行くしかないんですけれども、こういう人工知能投資、IT投資がもう限界でできない。一方で、大きな流れで金融機関の業態が人工知能によって変わってきているんで、この投資をどういうふうにして補完できるか、サポートできるかというような議論が少しあったほうがいいと思います。
地銀でも、静岡銀行とか今日、野澤さんいらっしゃっていますけど、浜銀のようなところは単独でできますけど、そういう地銀、それから信用金庫はほとんど数えるほどで、基本的には人工知能の問題と金融機関の営業力というか、コンサルティング機能というか、地域の活性化機能というか、そういうものというのは深く関係していますので、一度議論をなさって、どういうサポートができるか。結論から言うと単独ではできないんで、合従連衡でやるしかないと思うんですけれども、そういうことを後押しできる制度ができるか、そういう議論が1個あったほうがいいかなと思いました。
それから、開示の問題は、ちょうど今、株主総会が今週ピークになっているんですが、私も数社関係しておりまして、非常にびっくりしていますのは、上場会社が2,000社あるとして、PER1割っている会社が500か600ある。ほとんどの会社がアクティビストが株付をしております。アクティビストというのは会社によって物すごくビヘイビアが違っていまして、例えば今、非常に頑張っているというか相当影響力を持っているシンガポールのエフィッシモというのは、市場関係者にキャンペーンをしないものですから、得体が分からないんです。どういうことを株を持ってやろうとしているのかが分からないんで、突然株主提案とか、突然総会でいろんな議論があるというんで非常に混乱が起こっているんです。一方で、3Dとかオアシスのようなところは相当キャンペーンをやっていますので、行動がよく分かるんです。したがって、今日のこの開示の問題と直接には関係ないかも分かりませんけれども、アクティビストがどういう投資行動をしているのかというのは、実は一般投資家にも大きな影響がありますので、アクティビストの投資行動をどういうふうに開示していくか、見ていくかということも1つの論点としてあると思います。
以上です。ありがとうございました。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、野澤委員、御発言ください。
○野澤委員
野澤です。私もまず初めに申し上げますと、諮問いただきました4つのワーキンググループを設置するということに関しましては、賛成でございます。その上で、暗号資産と地域金融力について少しコメントさせていただきたいと思います。
まず、暗号資産についてでありますけれども、規制のあり方を見直しされて、金商法上の金融商品として整理できるということであれば、既に取引をしている金融機関で、ETFという形で個人の方も買えるようになるということ。個人にとりましても機関投資家にとりましても、運用する商品の選択肢が広がるということでございますので、それに伴ってマーケットも厚くなっていくということであれば、非常にいい流れが期待できるんじゃないかなというふうに考えます。
1つ気になるのが実は税の面でございまして、今、暗号資産を取引されている富裕層の方、こうした方は非常に大きなボラティリティに耐え得るような余裕資金を持たれて取引をされている。こうした富裕層の方が、結果として一番得をしてしまうということにならないのか、言ってみると税の不公平というものが促進されてしまうようなことがないのかといったところが気になる点でございます。もちろんこのワーキンググループの本筋の議論ではないのかもしれませんけれども、そういったところも視野に入れて御議論をいただければというのがコメントでございます。
それから、地域金融力についてということなんですけれども、これは御説明をいただいた方向でしっかりと議論を深めていただきたいというふうに思います。先ほど星委員のほうから、地域金融力というのは今の既存の金融機関を助けるような話ではないんだというようなお話もございましたけれども、やっぱり地域で預金や貸出、大きなシェアを持っている地域金融機関、こういう機関が地域金融力を発揮していくためには、現在の資本参加制度、あるいは資金交付制度というのは、これからますます必要になってくるのではないかというふうに思います。そういう意味では、ぜひ内容を拡充していっていただきたいなと、使いやすい制度にしていっていただきたいというふうに思います。
それから、御説明の中で、関連施策をパッケージ化した「地域金融力強化プラン」というのを策定されるということでありますけれども、こういう中にあっては、単に商品の品ぞろえを1つ増やすとか2つ増やす、あるいは減らすというようなことではなく、やっぱり環境変化に応じたビジネスモデルを変革する、そういう後押しをしていただくような仕組みであったり、仕掛けというのを御議論いただければというふうに思います。
それから、最後ですけれども、やっぱり国のお金を使わせていただくというのは、他の業種にはない、大変ありがたい仕組みでありますので、そういう意味ではやはり資金を使わせていただく金融機関には、より一層高い規律が求められてしかるべきだというふうに思いますので、この辺りもしっかりとした議論をしていただきたいというふうに思います。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで御参加いただいております岩下委員、北尾委員、渡辺委員、山本和彦委員の順番で御発言ください。岩下委員、お願いいたします。
○岩下委員
どうもありがとうございます。私からは、本日の4つの諮問事項のうちの第1番、暗号資産に関する部分について発言をさせていただきたいと思います。
これまでも御意見をいろいろとお伺いしたわけですけれども、今回、事務局から御提案いただきましたのは、暗号資産に、現在の資金決済法の規制に加えて金融商品取引法の規制を入れることを検討するというテーマであるかと思います。
暗号資産の話というのはなかなか難しくて、例えば、今朝の時点でコインマーケットキャップという暗号資産評価サイトにいきますと、1,750万種類の暗号資産が上場というか、価格が表示されています。ビットコインとかイーサリアムというのはその中の1つですが、ビットコインだけで暗号資産の時価総額全体の65%ぐらいを占めています。
また、先ほどお話のあったように、日本の国内でも巨額の資金が投資されていて、既に個人投資家における投資の6%、7%という水準になっているということは事実だと思います。ただし、これらの多くは、実は暗号資産を生の形で持ってはおらず、暗号資産交換業者に預けて持っている訳です。つまり、暗号資産そのものを自分で保有しているのではなくて、間接的な投資をしている。例えるなら、国債の直接保有と、証券会社等を用いた間接保有のようなイメージを持っていただければと思いますが、そういう形で保有している投資家が多いのです。一方で、メジャーな暗号資産投資家や交換業者は直接取引をしています。つまり、暗号資産の種類の違い、保有形態の違いという2つの軸でそれぞれ違いがあります。
暗号資産に直接投資することをオンチェーン取引と呼びますが、この保有形態の投資家の人たちの行動というのは、相場に非常に大きな影響を与えます。オンチェーン取引は、中央管理者が居ない、暗号の秘密鍵を持っている人であれば誰でも取引が可能である、匿名性が高い、といった性格を持ちます。法人や個人がどこの誰かには関係なく、情報さえ持っていれば取引が可能なので、現在の金融制度との相性が悪いのです。通常、金融制度というものは、金融取引を行う法人なり個人なりを想定して規制が行われます。しかし、オンチェーン取引型の暗号資産は、取引を行った主体が特定できないという意味で、制度の外側に位置する性格を持つものであり、非常に規制がしにくいという問題がありました。
2017年の資金決済法改正は、そういう困難を何とか乗り越えて、FATFの要請を日本として果たしたという意味では、画期的な規制の導入だったと思います。ただそうは言ってもなかなか規制を現実に適合させることは難しかった。当時も今も、暗号資産は街中では一切取引に利用されておらず、暗号資産で物を買うことはほぼできません。にもかかわらず、資金決済法上の定義規定では、「物品の購入に使える電子的な価値であって、通貨建てでないもの」という規定になっています。そもそもそこ自体にかなり無理があるわけです。
今回の議論の対象は、ビットコインやイーサリアムといったメインストリームの暗号資産の規制上の取扱いは基本的に現在のままにして、新たに規制対象を追加するということです。追加するのは、いわゆるICOとかIEOとかといった企業の資金調達のために使われる暗号資産です。日本国内でもIEOは昨年数件出ていますが、そういう暗号資産を日本国内で発行することを認めるのであれば、金融商品取引法的な規制を全く除いてしまうことのリスクのほうが大きいという議論であって、それはそのとおりだと私も思います。
暗号資産は金融制度の外側にあって、既存の金融規制の適用や執行が及びにくい特性を持つものです。サイバー攻撃によって巨額の資金が流出するとか、あるいは犯罪や脱税に使われるとか、抜き取られた資産が犯罪集団に利用されるとか、そういう問題をたくさん抱えています。そういうものを、例えば株とか社債とか国債とかと並ぶ形で金融制度の枠の中に入れることは、もともと私は無理ではないかと考えています。その一方で、投資家が現実に投資をしている、それなりの巨額のお金が動いているという実態がある以上、そこの中でリスクの抑制と誤認の防止という観点から、きちんとした仕組みを入れる必要があることも事実です。
そうなると、現在、資金決済法でやむなく、かなり無理をして規制していることを考えれば、株式に似たような性格を持っているものについては、そこが規制の尻抜けにならないようにしっかりと規制することも必要です。今回の提案は、暗号資産全体を金融商品取引法で規制しようということではなくて、暗号資産の基本的な規制は日本国内では取りあえず今のままとして置くという前提だと思いますが、それに加えて、特定の企業が暗号資産を用いて資金調達を行おうとすることについては、それが金融商品取引法の脱法行為になってはいけないので、それについてきちんとしたルールを定めることにしましょうという趣旨の変更だと私は理解しています。
このような方向性は、全体としては正しいことであって、そのように整備していくことによって不正や誤解を排除することができるという意味では価値のある議論だと思いますので、ぜひこの方向で議論を進めていただくべきだと考えております。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、北尾委員、御発言ください。
○北尾委員
ありがとうございます。私のほうからは、1の暗号資産、それから、地域金融の拡充について少しコメントさせていただきます。
地域金融のほうなんですけれども、星委員からもコメントがあった点と重なる点もありますが、この背景、最終的な目的は、地域経済の活性化と理解しています。その目的に鑑みて、本当に必要な支援なのかというのは常に考えながら進めていく必要があるのかと思いました。安い、すなわち低金利の資金とか資本が、本当に地域経済の活性化の足かせになっているのか、資金があれば成長につながるような投資機会を逃さずに済んだ現状があるのか、また、M&Aをすれば、それによって成長軌道に戻すことができるのかといったことを見極めていく必要があり、やはり国民の税金でリスクを取って行う以上、意識していく必要があるのかなと思います。
また、実際に案件を行うのであれば、事後に資金供給による効果検証が可能なように、事前にきちんと計画を立ててデータを集めていくといったことも非常に重要になるのではないかと思います。例えば、ボーダーで資金交付を受けることができた、あるいは受けることができなかった金融機関とか、その支援先の企業をフォローアップしていくことも大事かと思います。もちろん民間的な視点だけで純粋に利益が上がればいいというだけではないと思いますけれども、政府の資金を注ぐということで期待される効果は何なのか、それを後で検証するために、どういったフォローアップをしていく必要があるのかということを、中長期的に幅広くフォローしていくことがEBPMの観点からも重要なのではないかと思います。
暗号資産については、口座が急増しているという表を示していただきましたけれども、名寄せはできていないので人数ではないと理解しております。もう少しどういう人が参加していて、働きかけとか規制によって守るべき人なのかということをきちんと把握していくことが重要かと思います。規制を否定するわけではもちろんないですが、こういった目立つ個人が大きな被害を受ける詐欺があったからといったようなことをモチベーションとして、全ての市場参加者に影響を及ぼすようなマクロ的、あるいは供給側全体への規制を決めるというのは慎重にすべきかと思います。需要サイドとか、投資家側のリテラシーというのが問題なのであれば、注意喚起をする、被害に遭いやすいタイプの個人投資家にアプローチする際には、広告とか販売手法とか、そういったことで規制強化するなど、全般的な市場の発展を阻まないで、弱いところを効率的に守る規制を考えることが重要ではないかと思います。
特に金融リテラシーの高い参加者を中心とした、非常に流動的な市場かと思いますので、規制をかけることによって市場が縮小したり競争が鈍化したり、市場の発展に伴って期待できるようなブロックチェーン技術発展の鈍化とか、そういった副作用が起きると考えられるので、そういったトレードオフを、これも中長期的な観点から事前に考えて進めていくべき案件かと思います。特に競合市場である海外での規制状況というのを注視しながら進めていくべきことかと思います。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の渡辺委員、御発言ください。
○渡辺委員
ありがとうございます。いずれの諮問事項も重要なものだと思います。私は、不公正取引規制の話と、地域金融力の強化についてコメントさせていただきます。
不公正取引規制の強化の話の課徴金のところについて、私は抑止力が十分に働くような実効性のある課徴金を設定する必要があると思っています。先ほど課徴金額をどのように考えるのかというような論点があり、私自身は法的な論点や制度的な議論やこれまでの経緯というのを全く存じ上げずにかなり乱暴な議論になってしまうかと思うんですけれども、法と経済学的な観点から考えると、利益相当額を吐き出すだけでは、十分な抑止効果は必ずしも期待できないと考えます。不公正な取引をする際には、見つかる確率と、その際のペナルティーの大きさを掛けたものと、それから得られる利益というのをてんびんにかけて考えた上でそのような行動をするわけですから、きちんと抑止効果を期待する設計にするということであれば、これまでの経緯や論点は全部すっ飛ばした乱暴な議論ではあるんですけれども、利益相当額を明確に上回る懲罰的な金額にするということでなければ、十分な抑止効果は得られないのではないかというふうに考えます。
それから、もう一つは地域金融力の強化に関してです。今、星委員と北尾委員からもコメントありましたけれども、公的な資金で支援するのであれば、EBPMの観点から効果検証をきちんとするというのは必須であると私自身も考えます。これは全く同じ論点なので、これ以上は付け加えません。
もう一つは、地域金融力の強化について、地域金融力の強化自体は重要なことだと思う一方で、地域金融力の強化というのは、地域金融機関の経営支援ということとはイコールではないと思います。通常の企業であれば、経営力の強化というのは市場での競争に直面することによって自発的に行われることだと思いますし、地域金融機関にとっても、そういう側面は必ずあるんだと思います。重要なのは、地域の金融サービスの利用者にとって、競争的な価格で価値のある金融サービスが提供されることだと思いますので、この観点から、地域金融機関の間の競争の重要性についてきちんと議論をしていただけるといいのではないかなと、その論点を必ず付け加えていただく必要があるんじゃないかと思っています。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の山本和彦委員、お願いいたします。
○山本(和)委員
ありがとうございます。私からは第4点、地域金融力の強化に関する検討について意見を申し述べたいと思います。
現在、あるいは将来の日本社会、日本経済において、この問題が極めて重要な課題であることは、既に翁委員等から御指摘があったとおりかと思います。そしてこの点につきまして、これまでありました金融機能強化法というものが、一定の機能を果たしてきたと評価できるのではないかと私は認識をしております。
私自身、金融機能強化法に基づく金融機能強化審査会の会長を務めた経験がありますが、そこで見聞した多くの地方銀行の経営強化計画において、マッチング等の本業支援であるとか、事業承継、事業再生に対する様々な取組みなど、地域経済に寄与する様々な工夫や好事例が実践、展開されていることを実感できました。その意味で、地域金融機関に対する資金交付制度や資本参加制度の期限の延長、あるいはその拡充を検討していただくということは、ぜひ必要なことではないかと思っております。
加えて大規模災害の特例につきましても、東日本大震災の対応で、これが大きな役割を果たしたことは言うまでもありません。これからの様々な災害にタイムラグなしに、適時適切に対応できるということは重要なのではないかというふうに思います。その際には、やや手前みそではありますけれども、この金融機能強化審査会の役割というものは非常に重要ではないかというふうに考えております。私の経験でも、この審査会において、様々なバックグラウンドを有する委員から有益な議論が展開され、あるいは委員と各行の頭取との対話の中で、経営強化計画の裏にある個々の金融機関の本気度といったようなものが浮き彫りになる場面もありました。
今回報道されている不祥事案としては、信用組合など、現行法では審査会の枠外に置かれているような事案もあったかと思いますけれども、そのような場面も含めて、ぜひこの審査会の機能を強化・充実していくことをお考えいただければと思っている次第であります。
いずれにせよ星委員御指摘のとおり、これまでの強化法に基づく資本参加等の地域経済に与えた実際の効果等につきまして、実証的にしっかりと検証いただく必要はあるかと思いますけれども、ぜひ積極的な観点から、この問題について御検討いただければというふうに思っております。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、会場に戻りまして、佐古委員、御発言ください。
○佐古委員
発言の機会をありがとうございます。おおむねこの4つの案件に関しては賛同しております。その上で、1点目の暗号資産について少し補足させてください。
先ほど岩下委員からもあったように、暗号資産と一口に言ってもいろいろなものがあると思っています。今回、勉強会で類型を1と2ということに分けておりまして、今までの制度に親和性のいいものを類型1にして、そこで適切な規制を行っていくということだと理解をしております。
その一方で、こういうデジタルな技術が関わってきますと、今までの制度とはかなり毛色の変わったことを懸念しなくてはいけないことが多いのではないかと思っております。別件でHFTの話がありましたけれども、デジタルになってきますと、やはりボリュームだったり速さだったりが桁違いに違うという点で、その制度をいろいろ見直していく必要があるかと思っております。
その点で、ちょっと話はそれるかもしれないんですけれども、懸念していることを1つお伝えさせていただきます。昨今、証券会社のアカウントのハッキングがありました。NISAや新NISAということで、今まで証券会社とあまり関わりのなかった一般市民も口座を持ちはじめたところで今回の報道があり、私はとても心を痛めています。ハッキングということで資産がなくなっただけではなくて、集めた資産を使って株価操作も行われていたんじゃないかという報道があったと聞いております。その点に関しては、本当に一般市民が、自分が持っている口座をどう安全に管理できるのかということを、例えば本当の金融機関であれば、ちゃんとそれなりのデジタル署名がついて、一般市民もスパムメールとそうじゃないものが判別できるような技術を入れるとか、そういうこともぜひ今後検討していただければと思っております。
私からは以上でございます。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで御参加の上田委員、御発言ください。
○上田委員
上田でございます。御指名ありがとうございます。また、資料の作成もありがとうございました。まず、諮問事項に基づく4つのワーキンググループでの御議論ということについては賛同させていただきます。その上で、2つの点についてコメントをさせてください。
まず、不公正取引規制の強化に関する検討でございます。インサイダー取引規制のところについては、昨今事案も多く摘発、公表されておりますけれども、これはまずもって証券取引等監視委員会がしっかり機能されているということであろうと感じているところです。他方で資本市場の視点から見ますと、課徴金の低さとか、あるいはタイミングの遅さというところから、実効性、特に抑止力というものについては十分発揮できてないのではないかなとも感じているところです。先ほど別の委員からも御指摘ございましたように、アクティビストの活動が今、大変活発化しています。企業も、機関投資家も個人投資家も含めたその他の投資家に対して、アクティビストの影響が大きくなってその活動の状況を気にしているという状況です。企業から見るとアクティビストはうっとうしい存在かもしれませんが、その多くは一応ルールを守って活動されているわけです。しかしながら、中にはルールを守らないというのは言い過ぎかもしれませんが、そのはざまで活動しているアクティビストがいるのも事実でございまして、こういう場合には不公正な市場利用による利益獲得ということで、ひいては市場の信頼性や参加者全体の利益に関わるところでございます。したがって、この点についてはしっかりと制度を強化していくという点が必要です。
本日は直接には議論にはなっていない点でありますけれども、別途議論されている実質株主の透明性といったところも含めて、市場全体を見渡した公正性、信頼性確保、透明性確保といった整備を全体として目的を持ってお進めいただきたいと思います。
また、M&Aのアドバイザーの責任については、本件の御説明あった内容は当然と思いつつ、一方でまた別件で、実際見聞きしているものとして、事案が当事者間同士で水面下で議論している中で、例えば証券会社等の自己勘定部分が増えているとか、あるいは関連会社の持分が増えているとか、こういうケースもいまだ見られたりしますので、この辺り含めてモニタリングの強化といったところも、併せてさらに一歩進んでいただきたいと思っております。
課徴金の規模と罰則との位置づけの整理というのも必要になってくるかとは思いますが、やはり重要なのは抑止効果を確保できるかといった点からのエンフォースメントの強化、これをしっかりお進めいただきたいと思います。
次に、企業情報の開示に関する部分についてです。有価証券報告書の開示内容、スケジュール面で企業の負担が増加しているという、これは多くの委員が御指摘のとおりかと思います。開示内容が従来の財務に加えて、サステナビリティや人的資本という非財務の重要性が高まってきて、さらにグローバル視点でのレベルが求められているということになっています。重要なのは、企業の開示意欲を減退させることがないような、負担は必要ないとしても、過度なものにはならないようなところのやっぱり制度整備というのは必要かなと思っています。
サステナビリティ情報とは本質的に定性情報あるいは将来情報が重要であり、また、Scope3のように企業がコントロールできない情報なども、大変重要な意味を持ちます。そういう意味で、セーフハーバー・ルールの検討は必要と考えます。スケジュール的なところを見ると、時価総額3兆円以上の会社から開示の義務化が迫っておりますので、ここは急ぎ御対応いただきたいと思います。
あわせて本日はここには掲示されておりませんけれども、今サステナビリティ情報については保証の制度整備も進められていると思います。ステークホルダー間でかなり意見の対立があると認識しておりますが、情報利用者の視点、あるいは情報開示の信頼性確保という市場全体を見渡した質向上という視点から、制度整備を進めていただきたいと思います。
また、有価証券報告書のスケジュールについても、総会前の開示というものが要請されていることで、株主総会を巡る他のルール、全体的なシステムの見直しということが必要になっているかと思います。本日の議論というのは第一義的には、金融商品取引法の世界の話かと思いますけれども、本質的には上場会社の情報開示のあり方、株主総会のあり方ということで、会社法との整理というものも必要になろうかと思います。したがいまして、政府、市場当局等の関係機関の皆様方において、しっかりと全体を見渡した御議論をお願いしたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
○神作会長
どうもありがとうございました。
本日御参加くださった委員の皆様から御発言を頂きました。大変ありがとうございました。まだ多少時間の余裕がございますので、先ほど来の委員の皆様の御意見を聞いて、さらに御発言がございましたら承りたいと思います。御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
委員の皆様より、多くの貴重な御意見を頂きまして、大変ありがとうございました。4つの諮問についてワーキンググループを立ち上げて検討するということについて、御賛同いただいたと承りました。
最後になりますが、本日、大臣から頂戴いたしました諮問につきまして、それぞれワーキンググループを設置し、具体的な検討を進めてまいりたいと存じます。
まず、暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討を行うワーキンググループの座長は、森下専門委員にお願いをしたいと存じます。本日、森下専門委員はこの場にはいらっしゃいませんけれども、本件につきましては、御本人から事前に御了解を頂いております。
次に、不公正取引規制の強化等に関する検討を行うワーキンググループ及び企業情報の開示のあり方に関する検討を行うワーキンググループの座長につきましては、大変僭越ではございますけれども、また、お認めいただけるという条件の下ではございますけれども、私が務めさせていただければと考えております。
最後、4つ目の地域金融力の強化に関する検討を行うワーキンググループの座長、それから、4つのワーキンググループのその他のメンバー及び各ワーキンググループの名称等につきましては、大変恐縮ではございますけれども、私に御一任を頂ければ大変ありがたく存じます。
そのような形でこれから進めさせていただくということで御承認いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日予定された議事は全て終了いたしました。これにて金融審議会総会及び金融分科会の合同会合を終了いたします。
本日の議事の模様につきましては、この後、事務局から記者レクを行います。今後の日程などに関しましては、後日、事務局より御連絡をさせていただきますので、御対応のほどよろしくお願いいたします。
本日は、大変お忙しいところ御参加いただき、誠にありがとうございました。
―― 了 ――
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- 所管
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企画市場局総務課(庁内用3645、3520)