第56回金融審議会総会・第44回金融分科会合同会合議事録
日時:
令和8年2月3日(火曜)9時30分~11時05分
場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室 及び オンライン形式
議題:
- (1)開会
- (2)挨拶
- (3)諮問事項にかかる報告
- (4)討議
- (5)閉会
出席者:
- 【委員】
- 神作裕之(会長)、岩下直行、翁百合(オンライン)、加藤貴仁、川口恭弘(オンライン)、河村芳彦、北尾早霧(オンライン)、河野康子(オンライン)、小林いずみ、小原成朗(オンライン)、佐古和恵、野澤康隆、星岳雄、松井智予、山本眞弓
- 【日本銀行】
- 服部企画局審議役
- 【金融庁】
- 伊藤長官、三好金融国際審議官、堀本総合政策局長、今野総合政策局総合政策課長、井上企画市場局長、新発田審議官、八幡審議官、山下参事官、繁本企画市場局総務課長、横山企画市場局信用制度参事官、齊藤企画市場局市場課長、小長谷企画市場局企業開示課長、西沖企画市場局総務課企画調査室長兼保険企画室長、石田監督局長、田部参事官、齋藤証券取引等監視委員会事務局長、野崎公認会計士・監査審査会事務局長
- 【財務省】
- 髙橋大臣官房信用機構課長
議事録:
○神作会長
おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第56回金融審議会総会・第44回金融分科会の合同会合を開催いたします。
皆様方におかれましては、お忙しいところを御参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の会議は、対面とオンラインを組み合わせた、ハイブリッド方式で開催しております。会議の模様は、ウェブ上でライブ中継をさせていただいております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でございます。
開会に当たりまして、最初に伊藤長官から御挨拶を頂戴いたします。
伊藤長官、どうぞよろしくお願いいたします。
○伊藤長官
おはようございます。金融庁長官の伊藤でございます。神作会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、日頃より、金融審議会及び金融制度・金融行政の発展のために御尽力いただき、誠にありがとうございます。開催に当たり、一言、御挨拶を申し上げます。
政府では、我が国の経済・社会情勢が大きく変化している中、官民連携を強化し、力強い日本経済を取り戻すための取組みを進めております。また、日本の成長戦略の加速のためには、金融の力が不可欠と位置づけております。こうした中、金融庁といたしましては、貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」の取組みをはじめとして、日本経済の潜在力を解き放つとともに、国民の豊かさを向上させるための施策を着実に推進することが重要と考えております。
このような考えの下、今後の金融行政では、金融機関が、資金繰り支援に留まらない、事業者支援、地域経済の活性化に取り組むことを促すほか、金融のデジタル化等の進展に対応した暗号資産に関する制度整備や、金融システムの安定・信頼の確保に向けた、不公正取引規制等の強化に努めてまいります。さらに、サステナビリティ情報の開示・保証に係る制度整備や、スタートアップ企業等への成長資金の供給拡大に資する、企業情報開示制度の見直しにも取り組んでまいります。
本日の金融審議会では、昨年6月の総会等で金融担当大臣より行われた諮問を受けて設置いただいた、「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」、「市場制度ワーキング・グループ」、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」及び「ディスクロージャーワーキング・グループ」から、検討結果を頂戴することとしております。それぞれの検討結果に基づいて、委員の皆様に御審議いただいた上、金融審議会としての御報告をいただければと思います。私どもといたしましては、この場での御議論、また、これまでの御議論をしっかりと受け止め、必要な対応を進めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○神作会長
どうもありがとうございました。それでは、ここでカメラの方々には御退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○神作会長
議事に入ります前に、昨年6月の前回の総会以降、委員の御異動がございましたので、御報告申し上げます。
冨田珠代委員が金融審議会委員を御退任されまして、新たに小原成朗委員が任命されました。小原委員におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速、議事に入らせていただきます。
まず、本日の会議についての留意事項を申し上げます。御発言を希望される際は、対面で御出席いただいている方々は、ネームプレートを立てていただくよう、お願いいたします。オンラインで御出席の委員の方々におかれましては、オンライン会議のチャットの機能を用いて、全員宛てにメッセージでお名前と発言御希望の旨を御送信いただきますよう、お願い申し上げます。それらを確認させていただき、私のほうで御指名をさせていただきますので、御自身のお名前をおっしゃっていただいた上で、御発言をお願いいたします。
総会委員の皆様の名簿につきましては、配付した会議資料を適宜御参照ください。
本日の出席状況でございますけれども、上田委員、山本和彦委員、渡辺委員が御欠席、翁委員、川口委員、北尾委員、河野委員、小原委員は、オンラインで御参加と承っております。
次に、本日の議事の流れについて、御案内申し上げます。最初に、諮問事項に係る報告として、5つのワーキング・グループの報告書について、御説明いただきます。その後、皆様に御討議をお願いしたいと存じます。
それでは、早速でございますけれども、初めに、「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」の報告書につきまして、横山信用制度参事官から御説明いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○横山信用制度参事官
信用制度参事官の横山です。よろしくお願いいたします。
人口減少・少子高齢化が進行する中で地域が持続的に発展していくため、地域金融の地域経済に貢献する力、言わば地域金融力のさらなる発揮が求められております。「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」は、こうした中で地域金融機関等が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるよう、地域金融力の強化に必要な方策について検討を行うために設置されました。本ワーキング・グループは、2025年9月から4回にわたって御審議いただき、12月にその内容を報告書として取りまとめていただいております。その概要を、お手元の資料1-1に沿って、御紹介いたします。
資料1-1の1ページ目は、地域金融力の強化の考え方でございます。人口減少・少子高齢化が進行し、地域企業の人手・後継者不足も深刻化しております。こうした中で、地域金融には、地域企業を資金繰り支援等で下支えすることにとどまらず、内外のプレイヤーと連携しつつ、中堅・中小企業による研究開発や設備投資、事業買収などを、戦略面・ファイナンス面で後押しし、成長につなげること、企業のM&A・事業承継や事業再生、経営人材確保、DXを支援すること、官民連携のまちづくりの参画などを通じ、地域課題の解決に資すること等を通じて、地域金融力を発揮することが強く期待されております。そうしたことを踏まえて、地域金融機関をはじめとする様々なプレイヤーが連携して地域金融力を発揮していくための政策を総動員するということでございます。
2ポツ目でございますが、地域金融機関は、十分な経営体力・収益基盤を確保して地域金融力を発揮することが求められておりますが、その役割を将来にわたって果たしていく上での課題に直面しております。具体的には、サイバー攻撃やマネロンへの対応のコストが増大し、高度なシステムや専門人材確保の必要性も高まっている。預金減少に直面する地域金融機関では、中長期的に経営の選択肢が狭まる可能性がある。さらに、大規模な自然災害や新たな感染症の蔓延等が生じれば、経営基盤が大きく損なわれるおそれがある。このような課題を踏まえつつ、地域金融機関が地域社会からの期待に応え続けていくための環境整備に取り組むということでございます。
2枚目は、報告書の概要でございまして、大きく2つの柱から成っておりますけれども、1つ目は地域企業の価値向上への貢献・地域課題への解決ということで、具体的な施策について、時間の関係上、一つ一つは紹介できませんが、1番目から10番目までに掲げられている項目について施策が列挙されております。
2つ目は地域金融力発揮のための環境整備で、こちらについては、特に2番目の金融機能強化法の資本参加制度・資金交付制度の期限延長・拡充等ということで、これらの制度が今年の3月末に期限を迎えるわけですけれども、これらの期限の延長や制度の拡充をまとめていただいております。
本日はこの報告書について御了承いただきたいと考えておりますけれども、当庁において取組みを進めていくべき内容につきましては、この報告書に沿ってさらに具体化をする形で、昨年12月19日に、「地域金融力強化プラン」という形で、当庁として策定・公表をしております。今後はこれを推進していきたいと考えておりまして、特に先ほど申し上げた金融機能強化法の改正については、来る特別国会に改正法案を提出することを予定しております。
私からは、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」及び「市場制度ワーキング・グループ」の2つの報告書につきまして、齊藤市場課長から御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
○齊藤市場課長
市場課長の齊藤でございます。
まず、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の報告書について、御説明させていただければと思います。お手元の資料2-1を御覧いただければと思います。
当ワーキング・グループにつきましては、昨年7月以降、6回にわたり御審議いただきまして、同年12月に報告をまとめていただいております。以下、報告の概要を御説明させていただきます。
まず、一番上の四角でございますが、暗号資産は、現在、決済手段の観点から資金決済法で規制されておりますけれども、足下では投資対象化が進展しております。そうした中で、暗号資産をめぐる喫緊の課題としまして、情報提供の充実、適正な取引の確保・無登録業者への対応、投資アドバイス等に係る不適切行為への対応、価格形成・取引の公正性の確保、セキュリティの確保、こうした課題が指摘されているところでございます。
上記課題に対応するため、暗号資産の特性に応じた金融商品としての規制を整備することにより、利用者保護の充実を図るべきであるとされました。また、規制見直しの趣旨といたしまして、暗号資産投資につきましては、お墨付きを与えるものではないことを明確にしつつ、健全な取引環境を整備すべきことが強調されております。
さらに、規制見直しに当たっての留意点といたしまして、今般の規制見直しは、利用者保護と取引環境整備を図る必要性が高い我が国の暗号資産交換業者での取引を主眼に置くものであり、その規制見直しが及ぶ範囲はグローバルな暗号資産取引の一部に過ぎないという暗号資産の実情を念頭に置く必要があるということ。そして、今後も国際的な連携を図りながら対応を検討していくことが期待されることが、指摘されております。
規制見直しの概要は、下の箱でございます。1ポツ、根拠法令の見直しといたしまして、暗号資産の規制法を資金決済法から金商法へ変更する。また、暗号資産の特性に鑑みまして、有価証券とは異なる金融商品として金商法に位置づけるということでございます。
2ポツ以降につきましては、次のページ以降で御説明できればと思います。
次の2ページ目でございます。情報提供規制の概要でございます。暗号資産を2つの類型に分けております。まず、発行者がいる暗号資産、中央集権型暗号資産でございます。発行者が資金調達を行う場合には、利用者に対する情報提供義務を課す。そして、発行者による資金調達を伴わず、暗号資産交換業者が独自に取り扱う場合には、当該暗号資産交換業者による情報提供義務を課すとされております。
上記以外の暗号資産、ビットコインなどでございますけれども、こうした暗号資産につきましては、暗号資産交換業者による情報提供義務を課すこととされております。
下側の四角でございますけれども、上記の情報提供に加えまして、継続情報提供として、暗号資産の取引判断に重大な影響を及ぼす事象が発生した場合の適時情報提供等の義務を課す。また、情報の正確性の確保及び利用者保護の観点から、虚偽記載や不提供への罰則・民事責任・課徴金の規定を整備する。暗号資産交換業者及び自主規制機関によるチェック機能の強化。特に、審査の中立性・独立性を強化するため、自主規制機関に独立委員会または独立組織を設置すること。そして、中央集権型暗号資産の発行者による資金調達について、監査法人の財務監査が行われていない場合には、投資上限を設定すべきであるとされております。
ページをおめくりください。業規制の概要でございます。基本的な方向性として、第一種金商業に相当する規制を適用し、現行の資金決済法の安全管理措置、原則コールドウォレット等での管理といったものでございますけれども、こうした規制については、金商法に同様の規制を設けるべきであること。無登録業者による違法な勧誘を抑止するため、より厳格な規制の枠組みを設けるべきであること。また、暗号資産を投資対象とする投資運用行為や投資助言行為を規制対象とするということ。暗号資産が詐欺的な投資勧誘の支払手段として利用されることを未然に防ぐ措置を講じるべきであることが示されております。
主な規制等の概要は、真ん中から下の箱でございます。業務管理体制の整備としまして、取り扱う暗号資産の審査体制、顧客適合性確保のための確認体制、売買審査体制を強化すべきであること。利用者財産の管理といたしまして、サプライチェーン全体を含めた包括的なセキュリティ対策を強化すべきであること。また、重要なシステムの提供者に対する規制を導入すべきであるということ。責任準備金といたしまして、不正流出事案が生じた場合の顧客への補償原資として責任準備金を積み立てるべきであることが指摘されております。
右側に行きまして、銀行・保険会社における取扱いといたしまして、銀行・保険会社本体による暗号資産の発行・売買等は、引き続き慎重な検討が必要。投資目的での暗号資産の保有は、十分なリスク管理・態勢整備等が行われている場合には認める。銀行・保険会社の子会社については、今般の金商業規制の下で暗号資産の発行・売買等も可能とする。一番右下でございますけれども、サイバーセキュリティに関する取組みといたしまして、こうしたサイバーセキュリティは、自助・共助・公助の組合せで対処すべき課題であり、特に業界共助の取組みの発展が不可欠であり、当局として後押しすべきとされております。
最後、4ページ目でございます。不公正取引規制についてでございます。現行の金商法では、暗号資産についても、有価証券と同様に、不公正取引の禁止に関する一般規制や偽計・相場操縦行為等の禁止規制が整備されておりますけれども、インサイダー取引を直接規制する規定は設けられていない状況でございます。国際的な情勢を踏まえ、取引の公正を確保する観点から、暗号資産のインサイダー取引規制を整備すべきであるとされております。具体的には、下の表に記載のとおりでございますけれども、上場有価証券等のインサイダー取引規制の枠組みをベースにしつつ、暗号資産の性質を踏まえた規定ぶりとすべきとされております。
下から2つ目の四角でございますけれども、暗号資産に係る不公正取引についても、証券取引等監視委員会の犯則調査権限・課徴金制度を創設すべきであること。不公正取引規制に対する実効的なエンフォースメントのため、暗号資産交換業者による売買審査や、自主規制機関・証券取引等監視委員会による市場監視体制の強化・整備をすべきであること。こういった報告の内容になっております。
続きまして、「市場制度ワーキング・グループ」の報告書につきまして、御説明させていただければと思います。資料3-1を御覧いただければと思います。
「市場制度ワーキング・グループ」につきましては、昨年9月以降、3回にわたり御審議いただきまして、同年12月に報告をまとめていただいております。
上の箱でございますが、有価証券の不公正取引等について、不正と考えられるものの、既存の法令では違反行為として捕捉できない事例や、違反行為として捕捉できるけれども、課徴金の額が低く、抑止効果として不十分な事例が生じていること等への制度的対応を行うものということでございます。
まず、(1)といたしまして、インサイダー取引規制の対象者の範囲拡大等でございます。公開買付けに係るインサイダー取引規制の対象者として、現行法では、公開買付けをする者(買う側)の関係者は広範に規制対象者とされておりますけれども、公開買付けの対象企業(買われる側)の関係者は、その役職員のみが規制対象者とされております。近年の事例を踏まえまして、公開買付けの対象企業(買われる側)と契約を締結・交渉している者なども追加すべきというものでございます。
(2)の課徴金制度の見直しのうち、算定方法の見直しについてでございます。1つ目の項目が、公開買付けに係るインサイダー取引の課徴金の水準を引き上げることについてでございます。近時の事例を踏まえまして、公開買付けのプレミアム分、つまり、一般的・平均的にTOB公表前から株価がどの程度上昇しているかでございますが、例えば、公表前の価格の50%増し等、そういったプレミアムを考慮したものにすることが考えられるとされております。
続いて、大量保有報告制度違反に係る課徴金の水準の引上げについてでございます。近時の大量保有報告書等の提出による市場価格への影響を再調査することにより、課徴金の水準を引き上げることが考えられるとされております。具体的には、現行は価格変動分として0.1%を勘案しておりますけれども、それを例えば7%とするといったものでございます。
また、高速取引行為(HFT)による相場操縦に対する課徴金の算出方法の適正化でございます。マイクロ秒単位で高速・高頻度に注文を繰り返して薄利の取引を大量に行うというHFTの傾向を踏まえまして、端数の切捨処理の基準値を現行の1万円未満から1円未満に変更するといったものでございます。
右上、(3)課徴金制度の見直しのうち対象の拡大等についてでございます。まず、他人名義口座の提供を受けるなどして不公正取引を行う者に対し、抑止力を高める観点から、課徴金の水準を引き上げるものでございます。例えば、現行法上、違反行為を繰り返した場合には課徴金の額を違反行為による利得相当額の1.5倍としていること等を参考に、引き上げることが適当とされております。次に、口座提供等の協力行為を行った者に対しても課徴金を創設するものでございます。例えば、インサイダー取引規制に係る情報伝達規制では、情報受領者が行ったインサイダー取引に係る利得相当額の半額を課徴金の額としていることなども参考に、課徴金制度を創設することが適当とされております。また、課徴金減算制度につきまして、独禁法の制度を参考に、証券取引等監視委員会の調査開始後における協力度合いに応じて減算する制度を導入すべきとされております。
(4)調査権限等の拡充についてでございます。金融市場のグローバル化、相互関連性の進展等を踏まえまして、IOSCOのEMMoUへの署名要件の一つとして、当局に出頭を求める権限が必要であるとされていることへの対応でございます。外国規制当局からの協力要請に応じて行う調査権限に、報告徴収の権限に加えまして、出頭を求める権限を追加することが適当とされました。また、近年の事案を踏まえまして、金融商品取引業の無登録業者に対する証券取引等監視委員会の犯則調査権限を追加するということでございます。
(5)その他の論点としまして、昨年5月に成立しました刑訴法の改正で刑事訴訟手続のデジタル化が進むことになりましたけれども、それと同様の犯則調査手続のデジタル化を行うべきであるということ。また、近年の金商業者の登録取引事案におきまして、役員が不在となるなど、顧客財産の返還を行う者がいなくなった事案が発生していることを踏まえまして、金融商品取引業者の退出時における顧客財産の返還に関する制度を創設することが適当とされました。
私からのご説明は以上になります。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、「サステナビリティ情報の開示と保証に関するワーキング・グループ」及び「ディスクロージャーワーキング・グループ」の2つの報告書につきまして、小長谷企業開示課長から御説明いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○小長谷企業開示課長
企業開示課長の小長谷でございます。資料4-1に沿って、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の報告の概要を御説明いたします。
おめくりいただきまして、右下のページ数、1ページを御覧ください。背景・課題欄にございますとおり、気候変動への取組みといった、いわゆる企業のサステナビリティ情報につきましては、本邦では既に2023年3月期より上場企業等による開示が義務づけられております。もっとも、現時点では上場企業等がサステナビリティ情報を開示する上での具体的な基準は規定されておらず、比較可能性や有用性を向上させる必要性が指摘されております。また、現在、有価証券報告書で開示されているサステナビリティ情報については、会計監査のような第三者によるチェックが制度的に義務づけられていないため、第三者保証を導入することで、信頼性を確保し、投資者保護を図る必要性が指摘されているところでございます。
こうした指摘を踏まえまして、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の報告では、開示基準の適用という欄にございますとおり、プライム市場上場企業を対象として、時価総額の大きな企業から順次、本邦のサステナビリティ基準委員会が定めたSSBJ基準に準拠して有価証券報告書を作成することを義務づけることが適当とされております。具体的なスケジュールとしては、時価総額3兆円以上の企業については2027年3月期から、3兆円未満1兆円以上の企業については2028年3月期から、1兆円未満5,000億円以上の企業については2029年3月期から、SSBJ基準の適用を開始することが提言されております。これより時価総額が小さいプライム市場上場企業への適用につきましては、注1にございますとおり、企業による開示状況や投資家のニーズなどを踏まえて、今後検討していくこととされております。
第三者保証についてでございますが、保証という欄にございますとおり、SSBJ基準の適用義務化の開始時期の翌年から義務づけることが適当とされております。具体的には、このページの下側にある図にございますとおり、例えば、時価総額3兆円以上の企業であれば、先ほど申し上げたとおり2027年3月期からSSBJ基準の適用が義務化されますので、その翌年の2028年3月期から第三者保証を義務化するということになります。
また、保証という欄の2つ目の四角にございますとおり、第三者保証を提供する者、ここでは保証業務実施者と呼んでおりますが、この保証業務実施者につきましては、金融商品取引法の下で登録制に従うこととして、金融商品取引法に定める登録要件を満たす者であれば、監査法人、あるいは監査法人以外のいずれであっても、登録可能とすることが適当とされております。
以上が、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の報告の概要でございます。
次に、資料5-1に沿って、「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告の概要を御説明いたします。
スライドの1ページを御覧ください。「ディスクロージャーワーキング・グループ」で審議された事項は、大きく2点ございまして、1点目は、スタートアップ・成長企業への資金供給の促進という論点。2点目は、先ほど御説明したサステナビリティ情報の開示に関連するものですが、セーフハーバー・ルールの創設という論点でございます。スタートアップ・成長企業への資金供給の促進に対応する施策が、このスライドの右側にある1番から3番になっております。また、セーフハーバー・ルールの創設は、このスライドの4番が該当しております。この後のスライドで、順を追って御説明いたします。
スライドの2ページを御覧ください。スタートアップ・成長企業への資金供給促進策の1つ目は、有価証券届出書の提出免除基準を現行の1億円から5億円に引き上げることでございます。また、これと併せて、現在、1億円以上5億円未満の一定の要件を満たす資金調達について利用可能とされている、簡易な様式による有価証券届出書の提出制度、いわゆる少額募集制度につきましては、右側にございますとおり、金額基準を5億円以上10億円未満に引き上げた上で、引き続き利用可能とすることが適当とされております。
次に、スライドの3ページを御覧ください。スタートアップ・成長企業への資金供給促進策の2つ目は、プロ投資家を相手方とする資金調達手段の見直しでございます。プロ投資家のみを相手方として株式の売買を行う場としては、日本証券業協会が運営するJ-Ships制度ですとか、東証が運営するTOKYO PRO Marketがございますけれども、いずれも取引の実績は限定的となっております。その要因の一つとして、プロ投資家の裾野が狭いということが指摘されているところでございます。年収や取引経験など、一定の要件を満たす個人投資家は、証券会社に申請をすることでプロ投資家に移行する、いわゆる「プロ成り」することができるのですが、移行手続が煩雑であるといった理由により、プロ投資家に移行していない個人投資家が相当数存在するものと考えられます。このため、プロ投資家になる要件は満たすものの、その移行手続を行っていない個人投資家、ここで言うところの潜在的特定投資家についても、先ほど申し上げたJ-Ships制度やTOKYO PRO Marketといった、プロ投資家のみが参加可能な有価証券売買の場に参加することを可能とすることが提言されております。
なお、このスライドの中ほどのボックスにございますとおり、証券会社が潜在的特定投資家を相手方として勧誘行為を行う場合には、一般投資家、いわゆるアマ投資家を相手方として勧誘行為を行う場合と同様に、適合性原則や説明義務といった行為規制に服することが予定されております。このため、潜在的特定投資家が行為規制上の保護を受けることを希望するためプロ投資家への移行手続を取っていない場合であっても、本人の求める水準の投資家保護を引き続き確保することができるものと考えられます。
スタートアップ・成長企業への資金供給促進策の3つ目は、このスライドの下側にございます、株式報酬に係る開示規制の見直しでございます。現行法の下では、企業が自社及びその子会社の役職員に対して自社の株式やストックオプションを交付する場合については、有価証券届出書の提出を免除する特例措置がございます。ただし、この特例措置は、株式については上場株式に限定されております。「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告では、この特例措置を非上場会社や日本市場に上場していない外国の会社が発行する株式にも拡大することが提言されております。
スライドの4ページを御覧ください。「ディスクロージャーワーキング・グループ」の審議事項のもう1つの柱である、セーフハーバー・ルールの創設についてでございます。先ほど「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の報告の際に御説明しましたとおり、本邦では来年の3月期から時価総額に応じてSSBJ基準によるサステナビリティ情報の開示をプライム市場上場企業に対して義務づけていくことが予定されております。このサステナビリティ情報については、財務情報と比較すると不確実性が高く、その開示に当たって、将来情報、見積り情報、あるいは企業の統制の及ばない第三者から取得した情報などが必要となるという特性がございます。こうした不確実性を有する情報について事後的に金融商品取引法上の虚偽記載に対する責任を問われることを恐れるあまり、有価証券報告書での積極的な情報開示が避けられることになれば、投資判断に有用な情報が提供されないこととなってしまうのではないかといった問題・懸念が指摘されております。そこで、「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告では、将来情報等の前提となる事実を事前に開示しているなど、一定の要件を満たす場合には、将来情報等の虚偽記載に対する金融商品取引法上の民事責任及び行政責任を負わないこととする、いわゆるセーフハーバー・ルールを創設することが提言されております。
「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」及び「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告の概要についての御説明は、以上でございます。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、討議に入りたいと存じます。各ワーキング・グループの報告書に関しまして、御質問や御意見等がございましたら、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、岩下委員、どうぞ。
○岩下委員
どうもありがとうございます。本日いただきました各ワーキング・グループの報告・提言は、地域金融であるとか、市場制度であるとか、開示制度といった、分野は異なりますけれども、いずれも我が国金融システムの信認の基盤をいかに強化していくかという、共通の課題に向き合った議論だったと理解しています。金融仲介機能、市場の公正性、情報の信頼性といった、基礎的な部分を着実に整備していくことが制度の土台であることを改めて確認する内容であったと受け止めておりまして、各報告書の整理について、基本的な方向に異論はございません。
ただ、私自身が参加させていただきました「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」で取り扱うテーマは、もちろんこの報告書も異論があるわけではございませんが、今の整理からすると、若干、趣を異にしているので、それについて少しだけ付言をさせていただきたいと思います。
本日御報告されている他の分野は、いずれも信認を制度的に支える仕組みをどのように強化するかというのを主題にしているのに対して、暗号資産というのは秘密鍵の保有のみを基盤として資産の支配権が決まり、取引相手とか仲介者の信用に依存しない――これを業界用語ではトラストレスと言うわけですが――そういう仕組みであるということを標榜して発展してきたものです。信認を制度で構築する従来の金融システムとは設計思想そのものが異なる存在です。もっとも、実際の暗号資産市場は必ずしもその理念どおりに機能しているわけではありません。本ワーキング・グループの審議を行った昨年夏から秋にかけて、ビットコインは史上最高値を更新し、暗号資産の市場規模も4兆ドルを超えて急速に拡大し、米国のGENIUS法も成立してステーブルコインに対する期待が高まって、その量も拡大するなど、社会的な期待や熱狂が大いに盛り上がった時期でした。しかし、足元では、暗号資産市場は相場が急落しておりまして、市場規模はピーク時と比べて40%ぐらい減少しているんですね。ステーブルコインの残高も、ずっと増え続けてきたんですが、ここにきて若干の減少に転じるなど、市場の雰囲気がかなり面変わりしている感じがします。こうした価格変動の中心は、先ほど報告書の御説明にもありましたとおり、グローバルな取引所やオンチェーンの市場といった、我が国から直接コントロールできないところで起こっていることです。また、相場が大きく下落したときにサーキットブレーカーのような安定装置であるとか、様々な制度的な支援もない中で、価格が連続的に下落していく様子を見ますと、この市場は我が国の制度の射程の外側でグローバルに動いているということを改めて実感するところです。
ステーブルコインについては、以前の金融審議会で議論が盛り上がった記憶がありますが、米国のGENIUS法、欧州のMiCA、日本の資金決済法など、各国の規制はできたわけですけど、それに適合したステーブルコインというのは実はまだほとんど発行されておりません。一方で、制度の外側で発行されているステーブルコインというのが、既に英国で発行される銀行券の発行総額に匹敵する規模にまで拡大しているという現実があります。結局のところ、発行体や取引基盤に対する不透明な信認といいますか、そういうものに依存しつつ、制度の外側で巨額の資金移動が行われているという実態がありますので、既存の信用秩序との間に少なからぬ緊張関係を生じさせており、それを軽視することはできないと考えます。
暗号資産市場は、従来、周辺的な市場と見られていましたが、近年は若干、状況は変化しています。米国のETFを経由した資金の流出入が双方の市場に影響を与えたり、暗号資産を大量保有する企業の株価がその価格変動に左右されたり、リスクの波及経路は確実に多様化してきています。暗号資産固有のボラティリティが規制の空白を経由して伝統的金融市場に波及しつつあるという現状は、冷静に見極めるべき課題だと考えています。こうした接続が拡大してしまうと、マネー・ロンダリング対策などの制度的な枠組みの実効性にも影響しますし、金融システム全体の信認を損ないかねないという懸念もあります。そうなりますと、暗号資産を国内規制に持ち込めば国内金融市場が安定するという過度な期待を持つことは残念ながらできないわけでありまして、制度の射程は本質的に限定的であるという事実を前提に、我が国として実効性の及ぶ範囲で着実に規制を及ぼしていくという現実的かつ慎重な姿勢が基本になると思います。この点で、本日、報告された「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の報告書は、いわゆる制度万能論に陥ることなく、価格形成や流動性の中心がグローバル市場にあるという構造的限界を踏まえた上で、実効性のある部分から着実に対応するという抑制的かつ現実的な整理を行ったものと受け止めており、妥当なものだと評価しています。今後も、こうした射程と限界を見誤らず、冷静に制度整備を進めていくことが重要だと考えています。
私からは、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の北尾委員、どうぞ御発言ください。
○北尾委員
ありがとうございます。政策研究大学院大学の北尾です。私からは、地域金融力の点と情報開示(ディスクロージャー)について、2つ、コメントさせていただきます。
地域金融の方ですけれども、以前から申し上げていますとおり、地域金融力を支援することで成長を促進する方向性というのは非常に共感するところですが、人口減少によって金融が幾ら頑張っても停滞が避けられない地域も存在するので、地域の人口動態を見ながら金融に何がどこまで担えるのかを検証し、継続的に制度設計の見直しと検証をしていくことが重要かと思います。制度設計においては、地域の成長の足かせになっている点は何なのかを常に動態的に見ていく必要があるかと思います。また、資本参加制度や資金交付制度など、具体的な政策の検証ということでは、前回の資料にもあったように、事後調査を行っていただいたことは大変評価できて、ありがたく思っております。ただ、介入効果の検証については、学術的な研究成果や手法を活用するなどして、これからも精緻化を継続していくことが重要かと思います。地域経済の活性化に関わる複数の政策が同時進行しているので、金融機関を通じた貢献の識別が鍵になるかと思います。政策を総動員していくというところも非常に良いですが、今後、金融庁として支援の必要性の強度に基づいて各政策の濃淡を明示的に示していくということも、一考に値するかと思います。
情報開示(ディスクロージャー)については、細かい点についてのコメントはありませんが、少し幅広な点からコメントです。開示規制の緩和というのは、今日も強調されていたように、開示負担を軽減して資金調達を容易にするという一方で、情報量の低下によって資本の配分にどう影響しているかということに気を配る必要もあります。制度変更の評価というのは、どれだけ資金が多く集まったかということだけではなく、リスクマネーの供給がどれだけ増えて、資本配分が改善して、生産性の高い企業に資金がうまく向かっていったかで評価されるべきであって、こうした観点からもマクロ的な効果を継続的に検証する枠組みを併せて検討することが必要なのかと思いました。
あと1点、細かい点になりますが、資金調達における開示基準のカットオフは全て名目で固定されていますが、インフレや名目成長を考慮した自動調整の仕組みがないと、税や社会保障のように自動調整は一般的ではないと思いますが、成長段階にある企業にとってブラケットクリープ的な重い開示基準を負うことになりかねないと思います。中長期的には物価や名目GDPに連動した調整のあり方を検討することも一つかなと感じました。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の河野委員、どうぞ御発言ください。
○河野委員
ありがとうございます。日本消費者協会の河野です。本日の審議事項5点についての御説明、ありがとうございました。私は、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」と「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」の議論に参加させていただきましたが、現状の実態把握に加えて、市場を取り巻く多方面のステークホルダーの皆様に対して配慮した内容であり、時宜に応じた課題認識と政策の方向性が整理されているというふうに受け止めております。今後、各施策が具体化され、早い時期に社会実装されることに賛同いたします。
その上で、2点申し上げます。まず、暗号資産制度や市場制度の検討の中で示された、消費者が安心安全に取引できる環境、つまり、健全な市場を整備するためには、具体化の際に無登録事業者への法定刑引上げによる罰則強化をぜひとも実現していただきたいと思っております。今般、日弁連等からも意見書が提出されているというふうに存じますけれども、デジタル技術進展と相まって、この分野の消費者被害は莫大な金額に膨らんでいます。また、金融・保険業界においては、一見、真っ当に事業を営んでいると思われる事業者においてさえ、驚くような不正事案が現実に起きています。貯蓄から投資へという大きな方向性に異論はございませんが、消費者、利用者の保護を大事に考えてくださるのであれば、ぜひ、不正行為への抑止力として、罰則強化の実現を要望したいと思っております。
2点目は、今後に向けての政策検討においてのお願いです。この間、消費者庁を中心に、消費者を取り巻く外部環境の変化が消費生活に及ぼす影響について包括的な整理が行われました。公表されている消費者保護制度におけるパラダイムシフトに関する報告書では、超高齢化、デジタル化、コミュニティの希薄化、消費社会の複雑化・個別化、飛躍的な技術革新、取引基盤提供者の役割の拡大など、従前と比べて外部環境が大きく変化しており、消費者ならば誰しもがこうした変化の影響を受けて、多様な脆弱性を有するという認識の下で、現代社会に適応する規律を整備することが求められています。今回の5つのワーキングでの検討が国内外の変化のスピードや社会の動きに対して後手に回っていないのか、その上で、今の時代を生きる消費者がどのような社会的な規律を必要とし、また、自己防衛手段を持ち得るのか、大きな転換点を迎えているというふうに思っています。金融ビジネス、金融サービスの世界においても、そうした視点での政策の検証とブラッシュアップを怠らないよう、金融庁はじめ、事業者団体の皆様など、関係各所に心からお願いするところでございます。
私からは、以上です。ありがとうございました。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の川口委員、どうぞ御発言ください。
○川口委員
今回の各ワーキングの報告内容について、特に私のほうで異論はございません。せっかくの機会ですので、2つの報告について、簡単なコメントをいたします。
まず、「市場制度ワーキング・グループ」の報告では、論点とされましたインサイダー取引規制の対象者や課徴金の算定方法について、取引者や取引ごとにピンポイントの規制のあり方が示されました。先ほど述べましたようにその内容に異論はありませんけれども、例えば、インサイダー取引規制で第二次情報受領者まで規制の対象にするのか、課徴金の算定を利得相当額に限定することの是非といった、規制の根本に関わる問題について改めて議論がなされたということは、非常に意義があったと思います。課徴金制度が創設された当初、規制対象は利得相当額の算定が比較的容易であったものでした。その後、金商法の規制のなかで、多くが対象になりまして、課徴金は金融庁の規制の大きなよりどころになっています。ただ、規制範囲が広がったことで利得相当額の算定が困難なものも少なくなく、ある意味、無理やりそれを決めているというものも見受けられます。
他方で、抑止効果が重要というのもよく分かるのですけども、そのために金額を引き上げるだけでよいのかという問題もあります。抑止効果がより求められる悪質な行為については、例えば刑事罰の適用もあります。
また、課徴金の納付命令と刑事罰というのは、制度上は両方適用可能ですけれども、実際にはすみ分けがなされています。しかし、そのすみ分けの基準も、必ずしも明らかではありません。刑事手続を経ずに行政処分として重い制裁を科すことの是非も問題になるかと思います。
一方で、金額を規制当局が決めるということになりますと、そのためのリソースも問題になってきます。このように多くのことを総合的に検討しなければならないので、今回の報告書では、「抜本的な見直しは将来の課題」とされていることは理解できます。ただ、課徴金の性格は既に検討すべき時期に来ているのではないかと思っておりまして、将来の課題の「将来」があまり遠くないことを願っています。
課徴金制度は、独禁法が最初でして、金商法が2番目であったと思いますけども、最近はさらに多くの法律でエンフォースの手段として使われるようになってきました。課徴金の在り方というのは、これらについて共通の課題ではないかと思います。実現可能かどうか分からないですけれども、各省庁横断的に検討する機会があってよいのではないかとも思います。
次に、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の報告です。近年、暗号資産が投資の対象とされているという現状から、投資物件を規制する金商法で対処するという方向性は、十分に理解できます。他方で、報告書にもありますように、これまで金商法が主として規制対象としてきた「有価証券」などと比較して、暗号資産は異なる側面があります。金商法という法律は、従来は、資金を拠出して、場合によってはそれを他人に預けて、その収益の分配に預かる者を投資者として保護する法律だと言われてきました。近年は、市場法であることを強調し、資源の効率的な運用・配分を目的とするという見解も有力です。これらの目的のために情報開示を充実させ、詐欺的な行為を禁止することが必要と説かれてきました。これに対して、暗号資産は、企業の資金調達に用いられるものではなく、資源の効率的な配分とも、あまり関係がありません。さらに、収益の分配も期待できません。暗号資産の取引については、既に一定のものは金商法上の規制対象となっているのですけれども、今回は規制を全面的に金商法に委ねるという点で、大きな改正であります。先ほど述べた性格の違いから、報告書にありますように、従来の有価証券とは別のものとして規制をするというのは正しい方向でありますけれども、同じ金商法という法律で規制することにより、金商法の保護対象はどのような投資者なのか、規制理念はどこにあるのかといった、根本的な問いを改めて検討する必要があるかという印象を持ちました。その意味では、金商法1条の目的規定にも手を加える必要があるのかもしれません。金商法の保護法益は何かというようなものは我々研究者の仕事なのかもしれないですけれども、今後、立案担当者にとりましても、新しい投資物件が出てきた際に、どの法律で規制するのか、金商法の対象にするのかといった問題を考える上において、保護法益というのは、重要な、不可欠な視点であると思います。
私からは以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、会場に戻りまして、河村委員、どうぞ御発言ください。
○河村委員
私は、去年の6月から会社が変わっておりまして、日立製作所から、今は、キオクシア、半導体のメモリの会社におります。仕事柄、若干、地方の金融機関と接することがありますので、最初のテーマの地域金融力に関してのことにつきまして、コメントを申し上げます。
後で申し上げる、こういう方向はどうかということは、どういう問題意識が出発かというと、今の金融、具体的には、送金とか、決済とか、あるいは融資をするという、いわゆる社会インフラ的な金融の延長線上では非常に難しいということがありますので、思い切って、業態の転換はもちろん、金融機関はインフラなのでできませんけれども、別の機能をどこかつくっていかないと、なかなか難しいということを申し上げます。
地域の金融機関が直面している問題というのは非常に複雑でして、ワンストップのソリューションはないと思うんですね。私がお付き合いしている中では4つくらいの問題がすぐ出てくるんですけど、一つは、ここの報告書にも出ておりますが、収益構造が急速に悪化しております。貸出しができないとか、金利が低かったので収益性が低下するとか、一方で、手数料ビジネスに出ようと思っても、市場が大きく動きますので、なかなかできない。そういう中で、金利が上がっていきますので、特に長期債を持っている金融機関が大きな評価損を出しているので、非常に収益構造がフラジャイルになっているという問題が1つあります。これがビジネスの基盤でありますので、ここが弱っている。
それから、もう1つは、いろいろ御指摘があります、地域経済の問題ですね。中小企業の収益が悪化している。倒産がある。したがって、金融機関は引当金を積まなきゃいけないので、ここがまた大きな足かせになっている。
3つ目は、競争の問題があって、これは、メガバンク、ネット銀行、異業種ですね。具体的には、フィンテックとか、証券とか、ノンバンクの参入があって、現場では金利の競争が起こっているわけですね。非常に難しいと。だから、今日も独禁法の特例問題に言及されていましたが、再編をどうしていくかということが大きなテーマになっているけれども、なかなかできないということがある。
4つ目、これが一番大きな問題ですけど、やっぱりガバナンスと人材の問題があります。DXとか、人工知能の活用、AI問題が言われていますけど、地方の金融機関においては、組織文化的に、あるいはスキルの面で、これへの転換が非常に難しいという現実があります。したがって、伝統的な担保主義とか保証金融、どうしてもそういうところに入っていきがちで、ここで議論されているような、事業金融とか、コンサル型の金融とかっていうことに行こうと思っても、圧倒的に専門の人材がいない。
このような4つぐらいの非常に大きい問題に直面しておりまして、これが複雑骨折しているわけですよね。だから、ワンストップの出口がなかなかないので、じゃあどうするかということなんですが、冒頭申し上げたように、金融機関の枠組みは超えられないけど、これだけに依拠していると大きな業態変革はできないので、1個、別のコンセプトをつくって、例えば、地域の経済に高度な機能で伴走するような支援機能を強化するようなことをやる必要があるんじゃないか。具体的には、有望プロジェクトの発掘であるとか、M&Aの支援であるとか、あるいは、事業の承継問題だとか、DX、人材開発、インパクト投資、ローン、それから、今日、ここにもありましたが、まちづくりへの貢献とか、最後は金融が動くんですけど、そういうことをやる。例えば、概念的には、総合事業企画・開発支援機能をどういうふうに実装するかということが非常に大事になってきております。そのためには、当局のいろんな支援とか、あるいは、場合によっては色々なリスクマネーの供給があると思いますが、そのときに一番大事なのは、KPIを設定して、3年間でこういうふうにやってくれということで、きちんとモニターするというようなことをしながら、そういう大きな業態変革をサポートしていくような仕組みが要るかなという感じがいたしました。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、野澤委員、どうぞ御発言ください。
○野澤委員
野澤です。まず、初めに、レポートにつきましては、異議はございません。各分野とも多面的によく検討されていて、早期に実現をしていただきたいと思います。
その上で、地域金融力強化につきまして、2つ、意見を申し上げたいと思います。まず、1つ目は、レポートの前半にございます、地域課題解決の施策といった点についてであります。記載されている施策は、外部のプレイヤーとの連携を活用しながら、それぞれ金融機関が置かれた状況に応じてということではございますけれども、いわゆる投資銀行業務であったり、M&A、エクイティファンドのような機能も担えるようにすることが一つ大きな柱になっていると理解しております。そうした業務の中には、地域金融機関がこれまで取り組んでいる業務も多くありますけれども、銀行員がそういう業務を主体的に、なおかつ競争力のあるレベルで行えるようになるには、実践経験を含め、相当の時間が必要であると思います。そうしたビジネスについて、目標を掲げてそれを達成していくということは大変重要なわけではありますけれども、過度なプレッシャーがかかると、結局はお客様にしわ寄せがいってしまうことになると思います。そういうことを踏まえますと、先ほどの河村委員の意見と少し重なりますけれども、結果だけではなくて、その業務を担う人材の育成状況や、育成する体制といったところを金融庁の方にもよく見ていただきたいというのが、1つ目でございます。
それから、2つ目は、後半の環境整備についてでございます。今回の資本参加制度と資金交付制度の期限の延長・拡充は、これまでの実績や今後の地域金融機関の経営環境を考えますと、妥当なものだと思います。資金交付制度の拡充に関しましては、地域金融機関の二極化がこれからも進んでいくということを踏まえますと、合併・経営統合を伴わない事務システムの共同化に対しても資金支援をすることですとか、給付の対象を拡大するとともに、上限額や補助率を引き上げて合併や経営統合へのインセンティブを高めていることは、地域金融力を底支えする、守るといった観点から、今後の備えとして大変意義のあることだと思います。
それから、今回、早期警戒制度についても見直されるということでございますけれども、今後の経営環境をバラ色に描けるような地域金融機関は多くない、もう少し言えば、ほとんど無いのではないかと思います。自分の銀行の営業エリアの人口動態や顧客基盤、それから、バランスシートやP/L、これがこれからどうなっていくかを考えておくことは、金融機関の経営にとりまして、また、地域金融力にとっても極めて重要で、この重要性は増していると思います。そう考えますと、できるだけ多くの地域金融機関に、5年、10年、あるいは20年先の姿を自ら描いて考えてもらい、それをベースにして地域金融機関と金融庁との間で双方向の議論をしていくといったことが有効になってくるのではないかと思います。
私からは、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、星委員、どうぞ御発言ください。
○星委員
どうもありがとうございます。
最初に岩下委員がおっしゃったように、いろんな報告書がありますけれども、これは全て、信認を支えるためにどうするかと、そういう方向性を持っているということは、そのとおりだと思います。その意味で、私もそれぞれの報告書に異議はありません。
一つ、「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」の報告書に関して、既に、北尾委員、河村委員、野澤委員からいろいろコメントがありまして、それと重なるところもありますけれども、この報告書に書いてあるような金融行政を実現していくために注意しなければいけないことがあると思いますので、指摘したいと思います。
まず、この報告書で指摘されているように、地域経済での今の最重要課題というのは、北尾委員の言葉で言えば最も地域の足かせになっているものは、地域社会を支える担い手の不足ということだと思います。これは、野澤委員も、河村委員もおっしゃったことで、金融機関自身もそういった人材不足ということに悩んでいます。こういう経済において金融の最も重要な役割というのは、資金の供給量を増やしていくこととか、そういうことではなくて、希少な資源、特に人的資源を効率的に配分するということです。これは、デフレの時代とは全く違った役割で、その前の高度成長期とはもっと違った役割です。人手不足の中で人的資源を効率的に配分していくためには、企業の参入・退出を含むような産業の再編というのが必要になります。これは金融機関自身にも必要になってくるというのは、河村委員、野澤委員がおっしゃったことに関わります。この報告書では必ずしも強調されてないのですが、地域金融機関として、こういった産業の再編、それから、自分自身の再編というものを先送りしない、むしろ後押しするような方に向かっていく、そういったことが地域金融力の強化ということに重要だということを念頭に置くことが必要だと思います。
それから、2番目は、ちょっと細かい点ですが、地域活性化に向けた取組事例集というのを作るということ、これは非常に重要だと思います。ただ、こういった事例集というのを作ると、成功例だけを集めてしまうという問題がよくあります。成功例よりも、むしろ失敗例から学ぶことの方が大きいということがあるので、うまくいきそうに思ったのにうまくいかなかったような例を集めていくというのが重要ではないかと思います。
それから、皆さんもおっしゃっていますが、資本参加制度、資金交付制度の期限延長については、意義のあることだとは思います。この点は北尾委員が強調されたことですが、今までやってきたことがどれぐらいの政策効果を生んでできたのか、その効果をもっと上げるためにはどうすればいいのか、そういったことをきちんと検証していくというのがEBPMの観点からも重要だと思いますので、ぜひやっていただきたいと思います。
最後に、これも細かい点で、野澤委員がおっしゃったことに重なりますが、早期警戒制度の見直しについてです。報告書の中には非常にいい指摘があると思うので、そこを読み上げます。「地域金融機関の収益性や健全性に与える影響について、個別の地域金融機関の状況も十分踏まえつつ、将来の人口動態や金利変動等について定量的なデータに基づいた説得性のあるシナリオに基づいて深度ある検証をし、地域金融機関との間で将来の経営状況について認識の共有を図りながら、早期警戒制度の実効性を高めていく」。これは、すごくよく書かれていて、非常に重要なことだと思いますので、確実にやっていただきたいと思います。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、小林委員、どうぞ御発言ください。
○小林委員
ありがとうございます。私も、今回、提案いただいています5つの案に関しては、特段の異論はありません。各ワーキングで深い議論をされた結果と拝察いたします。
私からは、暗号資産と地域金融力強化について、短いコメントをさせていただきます。
暗号資産につきましては、最初に岩下委員がかなり細かく御説明くださったように、私も同じ懸念を抱いておりまして、暗号資産そのものはこれまでの金融商品とは根本的に違うものだという視点で対応していく必要があると思います。それは、商品として違うだけではなくて、事業者が見えないということ。それから、それを使う世代も、これまでの金融商品を扱ってきた世代とは全く違う発想の若い世代が使っているということを考える必要があると思います。その上で、今回は金商法の対象とするということで、私もこれには賛同いたしますけれども、暗号資産という商品を考えると、そもそもの哲学が違うかもしれないということも踏まえて、今後、これは日本だけでできることではないですが、暗号資産というものにどういう制度・規制をつくっていくのが妥当なのかについては、今回の金商法の対象ということだけではなく、根本的にどうあるべきかということを検証し続けていただきたいと思います。
2点目は地域金融力強化についてです。これも皆さんから既に発言がありましたように、私も地域金融機関の役割が重要だということは理解しますけれども、ここで提案されているような施策を実際に行える人材をどう確保するのかというのが最も大きな課題であると思います。これについては、地域金融機関だけではなくて、例えば、中央の大手の金融機関ですとか、外資、コンサル、あるいは、各地域における事業者等も含めて、人材確保の機能や育成の仕方について、幅広く実効的な議論を今後進めていく必要があると考えます。
この2点につきましては、既に皆さんからも多く声が上がっていますので、本当に今回の審議会においての重要な課題だというふうに認識しております。
あと、追加で、小さい点ですけれども、今回、スタートアップの資金調達支援を進める施策というのが導入されている一方で、スタートアップに要求する開示を緩めるということですが、スタートアップの負担ということを考えますと、確かに、現状の開示基準というのがかなり大きな負担になるというのは理解する一方で、スタートアップの事業者というのは、金融、あるいはガバナンスについての知見がまだまだ十分ではないという実態があります。開示を緩めるということと、企業として、投資を受ける側としてのガバナンス、それから、事業に対する熱意等も含めてしっかりとモニターし、そして、監督をする体制と抱き合わせで初めて今回提案されている資金調達支援や開示の柔軟性というのが実行されると思います。その辺りをいかに担保していくのか。これは必ずしも金融庁だけの仕事ではありませんけれども、今後、しっかりと対応していく必要があるのではないかと思います。
最後に、これはワーキングの方でも申し上げましたけれども、特定投資家私募制度についてですが、現状、ほとんど活用されていないということです。活用されていない原因がどこにあるのかということが明確ではない状態で、今回、対象を広げるということですので、これは、適宜、活用状況をモニタリングして、本当の課題なのかということを改めて調べて、今後の対応につなげていただきたいと思います。
以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、加藤委員、どうぞ御発言ください。
○加藤委員
加藤でございます。私も、5つのワーキング・グループの報告書に異存はございません。
私からは、2点、意見を述べます。第1点目は、私も審議に参加させていただきました、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」と「ディスクロージャーワーキング・グループ」についてです。これらのワーキング・グループで審議された事項の中には、既存の制度がいかに新しい現象や問題を受け止めるかというものが含まれておりました。そして、審議の中で、既存の制度の中には、その基本構造自体に改善の余地があるのではないかという、問題提起や批判もありました。そのような例として、金融商品取引法に基づくインサイダー取引規制、現在の有価証券に関するインサイダー取引規制のあり方に対する問題提起がありました。また、同じく金融商品取引法に基づく虚偽記載などに関する民事責任についても問題提起があったと記憶しております。審議の中で提起された問題提起や批判について、その中には、今後、真正面から向き合っていかなければいけないものも含まれているかと思います。このような作業は研究者の責務であることも理解しておりますけれども、金融行政としても、今回新しく制度整備が提言されたものに加えて、現在の制度自体の合理性の検証も絶えず進めていただければと思います。
2点目は、これは5つのワーキング・グループのほとんどと関係する点ですが、金融庁以外の官庁が所管する規制・法制度との連携の必要性を意識する必要があると思います。例えば、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の報告では、「暗号資産が詐欺的な投資勧誘の支払手段として利用されることを未然に防ぐ措置を講じる」ということが提言されておりました。これは非常に重要な提言だと思っております。岩下委員が御指摘されたとおり、暗号資産が違法な取引の決済手段として使われる可能性は、法律上の位置づけが変更になっても変わりません。投資対象として位置づけられたとしても、変わらないということです。したがって、この点については、警察庁や消費者行政との有機的な連携を進めていく必要があると思っております。
また、「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」の報告書では、中小企業のM&Aについての地域金融機関の役割が指摘されておりました。これは、報告書でも言及がありましたけれども、中小企業庁が進めている施策との関係で問題となる領域でもありますので、こちらもやはり有機的な連携が必要な分野であろうと思います。
最後に、「市場制度ワーキング・グループ」の報告では、大量保有報告制度違反に係る課徴金の水準を引き上げるということが提言されておりました。これについては、異論はございません。大量保有報告制度違反のエンフォースメントが弱いのではないかという問題は、実務からの指摘も頻繁になされており、実際にもそうであると思います。この大量保有報告制度のエンフォースメント等の問題については、現在、会社法改正の審議とも密接に関係しております。大量保有報告制度の問題は、会社法と金融商品取引法にまたがります。したがって、今後、会社法の様々な制度整備と金融商品取引法及び金融行政側の有機的な連関がより一層求められていく分野であるため、この点を意識して制度の運用などを進めていく必要があるかと思います。
私の意見は、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、松井委員、どうぞ御発言ください。
○松井委員
ありがとうございます。私も、本日、こちらで御提案されている報告書について、異存はございません。
私からは、地域金融力強化とサステナビリティの2点について、発言をさせていただきます。
まず、地域金融力強化につきまして、このレポートの中では、特に後半のⅢに書かれている環境整備の諸施策というのは、実質的には、金融庁のお仕事、監督の内容ということになるであろうと理解しております。このレポートの大きなテーマというのは、人口減少という環境の下で、金融機関の健全性を保ちつつ、民間の出資と公的資金、例えば、資本参加や資金交付などを振り分け、また、健全性や市況に応じながら、徐々にシフト、どうやってシフトするのかということについて取り組むということであると考えております。これによって、最終的には信頼を担保しながら金融機関の再編・再配分を進めていくということであろうと思います。この実施には、M&A含め、金融機関の全般的な経営に目配りをする必要があり、従来的な金融規制を超えた根本的な監督ということが前提になると考えております。国が金融機関を経営するというわけではありませんので、人口減少という不可避な課題について、民間とのよい連携を保ちつつ、適切な運営がなされていくということが重要だと考えております。
2点目は、サステナビリティですけれども、今般の報告を通じまして、実施スケジュール、あるいは、これの適用範囲でありますとか、こういった一応の外形というものを作っていくことができたと考えております。今後、実施準備を行っていくということかと思いますが、このレポートで重要な点として、有価証券報告書の提出期限を3か月から延長していないという点が挙げられるかと思います。今回、非財務の情報と一体の開示、あるいは会社法開示との一体化といったようなことが検討の中に書かれておりましたが、こういったことを考えたときに、実務としては総会スケジュールを変えずに総会後開示ということもできるようにしてほしいといったようなことを要望するということも考えられますけれども、投資家の視点からは総会前開示が望ましいわけですし、会社法上の計算書類というのは事前に監査し承認するということが必要ですので、今後、現在のような、3月末に一斉に決算し、6月末に一斉に総会をするというスケジュールについて、実務の側で、徐々に柔軟化したり、あるいは、どのような対応ができるかということについて考えていっていただくということが、会計実務の負荷の分散でありますとか、業務の実質化ということを通じて、制度のロバストネス、あるいはサステナビリティに資するのではないかというふうに考えております。
私からは、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の小原委員、どうぞ御発言ください。
○小原委員
発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私から、2点、意見を申し上げます。
1点目は、「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」の報告書についてでございます。地域金融力の強化、もしくは地域金融力発揮のための環境整備、そして、業務改善の取組みとして兼業・副業というものが記載されてございますけれども、報告書に記載のとおり、「希望する職員の兼業・副業が可能となるよう」ということを重視していただきたいと思います。兼業・副業は労働者自身の自由意思により従事することが前提でございまして、各地域金融機関の実情に応じて個別労使で慎重に協議を重ねて取り組むべきものと考えてございます。また、兼業・副業を行う場合には、本業と合わせて過重労働となることや、健康障害につながることが懸念されますので、報告書に記載の「環境整備」として、兼業・副業先の労働時間を適正に把握するとともに、働き過ぎを防止するための健康確保措置が確実に行われる必要があると考えます。地域金融機関への周知徹底と、厚生労働省と連携した取組みをお願いしたいと思います。
続きまして、「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の報告書について、意見を述べたいと思います。今回の規制の見直しは、暗号資産の投資対象化の進展や、詐欺的な投資勧誘が生じていることを踏まえ、利用者保護の充実を図ることにあると理解してございます。規制見直しを「金融庁が暗号資産投資についてお墨付きを与えた」と誤認し、詐欺的な投資勧誘等の被害者増加の一因となることは、あってはならないことだと考えます。報告書の記載のとおり、暗号資産投資についてお墨付きを与えるものではないことを明確に示すとともに、暗号資産には本質的に規制し切れない領域が残ることについても周知徹底いただけるように、お願いいたします。
私からは、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の翁委員、御発言ください。
○翁委員
翁でございます。本日はオンラインで失礼いたします。
私も今回の報告書には全部賛同しておりますが、地域金融力の報告と、市場制度、ディスクロージャーについて、少しずつコメントさせていただきたいと思います。
地域金融力につきましては、議論にも参加させていただきましたが、今回、人口が減少する中で地域金融機関に求められる役割が大きく変わっていると。すなわち、伝統的資金仲介機能にとどまらず、専門家ネットワークを活用して、地域の取引先企業に寄り添いながら、早期から経営課題の対応を支援していく。そして、地域経済の持続可能性を支える知識集約型の総合支援機関へと拡張しつつあるということだと思っております。その意味で、今まで何人かの委員の方がおっしゃいましたけれども、そのための人的資本とか知識基盤の強化というのは、今後ますます重要だと思っております。例えば、1月に経産省から公表された2040年の就業構造推計によりますと、AI・ロボットの利活用の進展で、2040年には、関東の1都3県を筆頭に、ほとんどの地域で事務職が大幅に余剰となる一方、AIの利活用人材を含む専門人材や現場人材が、関東の1都3県以外を筆頭に、ほとんどの地域で大きく不足するといった見通しが示されています。単に人口減少ということだけでなく、その対応としてのAIの実装とかが地域経済や地域企業にどのような変化をもたらすのかというようなことを、地域金融機関自らが、アンテナを広く張って、複合的に視野に入れながら、取引先企業の経営支援を求められていくということではないかと思っております。
あと、資金交付制度についてでございますけども、独禁法の廃止期限が2030年に迫っておりますので、しっかりとこれを意識した運用をぜひお願いしたいと思っております。また、資本参加制度も資金交付制度も、金融機関側のディシプリンというのが極めて大事だと思っておりますので、金融庁としても、その審査、決定、モニタリングといったことをしっかりお願いしたいと思っています。これは制度の信頼性につながるものだと思っております。また、先ほどから御指摘ありますように、その経済的効果の検証というのも、しっかりお願いしたいと思っております。
それから、これも御指摘ありましたけども、ここのところ金利が大きく上昇してきております。こういったことを考えますと、長期債を多く保有する中小金融機関の経営状況について、早期警戒制度を活用しながら、しっかりモニタリングしていただくことが大事になってきていると思っております。
「市場制度ワーキング・グループ」については、エンフォースメント強化という方向で、賛同しております。日本の金融規制は詳細な事前規制に依拠するモデルから、原則に基づく枠組みと事後的な責任の組合せへと中期的に重心を移してきておりますが、そのような枠組みの下では、ルール遵守の実効性をいかに確保するか、エンフォースメント強化が制度設計上の中核的な課題であると思っております。例えば、株式の大量保有報告書などについては、これまでもルール違反が多く指摘されてきております。エンフォースメント強化ということは、フェアで市場規律が適切に機能するためのマーケットを実現し、市場の透明性や信頼性を上げるという点でも非常に重要ですので、引き続き、お取り組みいただきたいと思っております。
最後に、ディスクロージャー制度についてもコメントしたいと思いますが、全体として、スタートアップを中心に開示のレベルを引き下げる方向でございます。そのこと自体は賛同いたしますし、今後も、政府全体の取組みになると思いますけれども、有価証券報告書と事業報告の一本化、統合報告書などの役割分担なども含めて、開示制度の合理化について検討が重ねられていくことを期待しております。
一方で、開示の量の拡大から、質の向上への転換が重要であるというふうに考えております。企業の投資判断に必要な情報が適切に説明されていくというようなことについては、引き続き非常に重要な課題でありますので、そういったこともぜひ取り組んでいっていただきたいと思っております。
以上でございます。
○神作会長
どうもありがとうございました。
続きまして、会場に戻りまして、山本委員、どうぞ御発言ください。
○山本(眞)委員
山本です。まず、「地域金融力の強化に関するワーキング・グループ」の報告書ですが、自分もメンバーとして議論に参加させていただいて、今日、委員の皆さんがこれまで指摘してくださったとおり、地域金融機関はどれだけ地域金融力に力を注げるのかというところは、私はワーキングの中でもずっと気になっていたところですので、地域金融機関が地域社会からの期待に応え続けていくことができるような環境整備にぜひ力を注いでいただきたいというふうに思っています。星委員がおっしゃってくださって、私もそうだなと思うのは、ワーキングでも申し上げたかもしれないんですけど、例えば、事例集を出すと、成功のことばっかり書いてあって、失敗した人のことは書いてない。それだと、例えば体力がない地域金融機関にとっては、そんなことをやっているんだね、でも、自分は関係ありませんみたいなふうに受け取られてしまって、何の意味もなくなってしまうんじゃないかと思います。規模の小さな金融機関も意欲を持って前向きに、地域金融力の強化・発展のためにプレイヤーになるぞみたいな、そういう気持ちになるように、今日、皆さんが御指摘いただいたように、人材とか、ノウハウとか、伴走者とか、いろんな工夫をもっともっと具体的に、現実的なことを考えて知恵を絞っていただきたいなと思いますので、これからもよろしくお願いします。
それから、暗号資産制度や市場制度ワーキングの報告書についてですが、この両者とも、言わば、これらの負の部分というんですか、暗号資産とか有価証券取引での負の部分について注目して、考えてくださっている。つまり、利用者保護をいかに図るかという点に注目していただいているということで、これについて検討を深めていただいたなというふうに感じております。
今まで皆さん御指摘いただいているので、1点だけ、私はすごくお願いしたいのですが、「市場制度ワーキング・グループ」のⅤのその他の論点で取り上げていただいた管理人制度というものについては、ぜひ実現していただきたいです。現場を見ている私にとっては、相手方が不在になってしまって打つ手がないというのは一番やりきれない事態ですので、ぜひ、これについては実現を図っていただきたいなというふうに思います。
それから、「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告書で、今までどなたもおっしゃってないのですが、セーフハーバー・ルールを採用していくということについては、開示を促すという意味で意味があると思いますけれども、報告書にも書いていただいていますが、適用範囲について、将来情報等、具体的に検討するということで方向性を示していただいたので、これは情報開示の充実にすごく有効だと思いますから、注の中にも、今後、ガイドラインでも明確化を図るというようなことも書いてあったので、ぜひ、それは具体的に進めていただいて、分かりやすいような形で皆さんに示していただければいいかなあというふうに思います。
いずれにしろ、どの報告書についても異論はございませんので、引き続き、よろしくお願いいたします。
○神作会長
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、佐古委員、どうぞ御発言ください。
○佐古委員
発言の機会をありがとうございます。私も、今回の提出の報告書に関しては、異論はございません。特に「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」は、様々な観点からの意見が飛び交って、本当に充実した議論ができたと思います。一方、事務局の心労は大きなものだったかと思います。取りまとめてくださって、ありがとうございます。
私からは、デジタル化の推進について、2点申し上げたいと思います。日本社会全体でデジタル化を進めて業務を効率よく進めていくということは大変望ましいことで、そのハブを地域に密着して生活者から顔の見える地方金融機関に担っていただけることは、大変ありがたいことだなと思っております。
一方で、そういうハブとなる性質の方には信頼が重要になると思いますので、昨今の信頼を損ねるようなニュースには心を痛めておりまして、地方に限らず、そのような不正が起きにくいようなリーダーシップを金融庁にはお願いしたいと思っております。それが1点目でございます。
2点目です。今の話とも関連するんですけれども、今、不正が発覚した後に大きな課徴金を取ってモニタリングを強化するぞという方向が多いと思うんですが、不正をしようと思ってもできないような仕組みというのを、新たにデジタルの力を活用して導入することをぜひ御検討いただきたいと思っております。異なる会議体の話で大変恐縮なんですけれども、昨年秋に警察庁の金融サービスを悪用したマネー・ロンダリングへの対策に関する懇談会というのに参加させていただきました。このときは銀行口座の不正利用が議論の中心だったんですけれども、やはり罰則を強めて犯罪を抑止しようというところに議論は行ったんですが、ITを専門とする私からは、ITの力でそれを未然に防げるのではないかと思って、発言させていただきました。例えば、銀行口座番号の仕組みそのものを変えるということができるのではないかと思いました。今は、口座番号を知っていれば、誰でもそこに振込ができてしまうので、バイト代を入れるから口座番号を教えてと言われて渡した口座番号が犯罪に利用されてしまうという事例があるとお伺いしました。確かに、紙に口座番号を書いて渡して手入力していた時代には口座番号というのはコンパクトであることが重要だったかと思うんですけれども、今や、スマホやパソコンから入力する場合だと、口座番号の桁数というのはそんなに短くなくてもいい。口座番号をもっと複雑な数字にして、例えば、送信者ごとに違う口座番号をその都度作って、僕のバイト代はここに振り込んでと言うと、この口座番号はその人が意図した相手じゃないと送金できないようにアクセス制御をがっちりした形にすると、意図しない犯罪に利用されないのではないかと思いました。今のは単なる思いつきで、どれだけ実効性があって、現在の銀行の業務と親和性があるのか分からないんですけれども、このように、今まで紙の時代に常識だった仕組みとは違うものをITの力を使って再検討すれば、ほかの事例にも有効なことがあるのではないかと考えましたので、ぜひ御検討いただければと思います。
私からは、以上です。
○神作会長
どうもありがとうございました。
本日御参加いただいた全ての委員の方から御発言をいただきまして、大変ありがとうございました。若干、時間の余裕がございますので、もし、ほかの委員の皆様の御発言を聞いて、さらに発言をしたいということがございましたら、御遠慮なく御発言いただければと存じます。いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
ありがとうございます。この5つの報告については、全ての委員の方から賛同していただいたと承りました。報告書の内容について御賛同はいただきましたけれども、実施に向けての注意点ですとか、あるいは中長期的な課題等についても、貴重な御意見をいただいたと思います。誠にありがとうございます。
本日御説明いただきました5つのワーキング・グループの報告書について、これを金融審議会として御了承いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神作会長
ありがとうございます。それでは、この5つの報告を金融審議会として了承するということとさせていただきます。どうもありがとうございました。
以上で、本日の予定の議事は全て終了いたしました。これにて金融審議会の総会及び金融分科会の合同会合を終了いたしますが、本日の議事の模様につきましては、本日午後に事務局から記者レクを行います。
今後の日程などに関しましては、後日、事務局より御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
皆様方におかれましては、本日は、大変お忙しい中を御参加いただき、誠にありがとうございました。
―― 了 ――
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