金融審議会「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」(第2回)議事録
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1.日時:
令和7年3月21日(金曜日)9時30分~12時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
【堀江座長】
おはようございます。それでは、これから金融審議会サステナビリティ情報の保証に関する専門グループの第2回の会合を開催させていただきます。
皆様、御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、本日の会議は、一部の委員の方々はオンラインにて御出席いただいております。本日の会議の模様も、前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきたいと思います。
なお、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公表させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
また、本日の出席状況でございますけれども、阪委員、田辺委員、弥永委員、オブザーバーの関西経済連合会、日本労働組合総連合会は御欠席と伺っております。
会議を始める前に、事務局から留意事項がございますので、よろしくお願いいたします。
【犬塚開示業務室長】
事務局を務めさせていただきます犬塚でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、発言を御希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される歳には、冒頭にお名前をお願いいたします。
なお、対面での御参加の委員におかれましては、目の前にございますネームプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。その後、事務局が手持ちマイクをお持ちいたしますので、そちらのマイクを御使用いただけますと幸いでございます。
【堀江座長】
それでは、早速、議事に移らせていただきたいと思います。本日は事務局より資料の説明をした後、質疑応答、討議という順番で進めさせていただきます。
それでは、事務局の金融庁から資料について説明をお願いいたします。
【犬塚開示業務室長】
それでは、資料に基づいて御説明させていただきます。
まず、資料1ページ目を御覧ください。1点目が前回御議論いただきました規律の在り方、2点目が、新しい論点といたしまして、自主規制機関の役割や、それを踏まえた保証制度の全体像、3点目が任意の保証に関する論点、最後は本日御議論いただきたい事項となっております。
2ページ目を御覧ください。前回頂戴した御意見をまとめたものになります。保証業務実施者に対する規律の在り方について御議論いただきましたが、上から1つ目のポツのように、監査人と同水準の品質管理が求められるといった御意見があった一方で、上から4つ目のように、財務情報とサステナビリティ情報は性格が相応に違う情報であるとの御意見、または、上から8番目のように、監査と保証の相違点等について議論することが重要との御意見などを頂戴したところでございます。こうした御意見を踏まえまして、次のページ以降で検討の考え方を整理させていただきました。
まず、財務情報とサステナビリティ情報の違いについて整理しております。4ページ目を御覧ください。財務情報もサステナビリティ情報も、ともに定量・定性情報、過去・将来予測情報を含むものではございますけれども、COSOが公表しているガイダンスでは、財務情報は定量情報、過去情報が多いのに対して、サステナビリティ情報は定性・記述的情報、将来予測情報が多いといった特徴が挙げられております。
5ページ目を御覧ください。先日、SSBJよりサステナビリティ開示基準が公表されました。その中では、サステナビリティ関連財務開示における開示情報について、短期、中期または長期にわたり、企業のキャッシュフロー、当該企業のファイナンスへのアクセスまたは資本コストに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報とされております。
次に、現行実務とサステナビリティ保証業務の違いについて整理しております。8ページ目を御覧ください。それぞれ目的、開示基準、保証基準などが異なっているというところでございますが、その中でも保証の対象について、現行実務では主にScope1、2排出量といったサステナビリティ関連の定量情報となっているのに対しまして、有価証券報告書における保証では、サステナビリティ関連財務開示、つまり財務に影響を与えるサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報となっており、その対象範囲は広いものとなっております。
9ページ目を御覧ください。資料左側でございますけれども、サステナビリティ関連財務開示のプロセスを示したものになります。一般的にサステナビリティ情報のテーマは多岐にわたりますので、その全てを開示するということになると、企業の負担につながりますし、投資家も必要な情報にアクセスしづらい状況になってしまいます。そのため、実際に企業が開示を行うに当たりましては、企業の見通しに影響を与えるサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別しまして、投資家の意思決定に影響を与える重要性、マテリアリティのある情報に絞り込むことが求められております。こうしたサステナビリティ関連財務開示に対して保証を行う際には、重要性(マテリアリティ)のある情報に絞り込むプロセスについて、重要な情報が漏れていないかなどの観点から保証業務実施者が確認する必要があると考えられます。保証業務実施者には、サステナビリティに関する知見は当然のこと、こうしたプロセスを確認する能力を有していることが重要になってくると考えられます。
次に、財務諸表監査とサステナビリティ保証業務の違いについて整理しております。12ページ目を御覧ください。まず、保証業務の概念についてですが、企業会計審議会が取りまとめた意見書では、保証業務とは、主題に責任を負う者が表明する情報について、想定利用者の信頼の程度を高めるため、業務実施者が自ら入手した証拠に基づき基準に照らして判断した結果を結論として報告する業務というふうに定義づけられております。この保証業務を財務諸表監査との関係で図示しているのが次の13ページ目になります。図のとおり、財務諸表監査は保証業務の一部であるという関係性を示しております。
14ページ目を御覧ください。監査とサステナビリティ保証の流れを比較したものになります。特に④リスク対応手続の箇所を御覧いただくと、重要な虚偽表示リスクのレベルに応じた手続について、監査では、立会、残高確認、証憑突合等が想定されておりますが、保証では、質問、分析的手続等が想定されております。次の15ページ目で、リスク対応手続の具体的な事例についてそれぞれ挙げさせていただいております。
18ページ目を御覧ください。検討の考え方になります。前回、保証業務実施者の規律の在り方を検討するに当たって、上場会社等監査人登録制度を参考にしてはどうかと提案させていただきました。今回この基本的な考え方に加えまして、ただいま御説明いたしました相違点等に留意する必要があると考えております。
19ページ目を御覧ください。先月公表されました欧州のオムニバス法案のポイントになります。サステナビリティ保証については変更点が2点提案されているところでございます。1点目が保証水準について、合理的保証への移行の可能性を否定している点、2点目は、保証基準の採択について期限を設けないということとし、その代わりに対象を絞った保証ガイドラインを公表することとしている点になります。本法案はこれから欧州で議論される予定でございますので、今後見直しの可能性もございますけれども、引き続き、その動向については注視していきたいというふうに考えております。
少し飛びまして、25ページ目を御覧ください。前回頂戴した意見、また、先ほど御説明いたしました相違点等を踏まえまして、登録制度や義務・責任などを検討するに当たって考慮すべき事項を整理させていただきました。
まず、監査とサステナビリティ保証で共通する点としては、開示される情報は投資判断に必要とされるものであり、その信頼性確保は資本市場が適切にその機能を発揮するために不可欠な要素であるという点でございます。こうした観点から、例えば守秘義務、同時提供の禁止、品質管理体制の確保、専門分野の知識の維持・向上といった点については、監査とサステナビリティ保証で異なるものではないと考えられます。他方で、監査とは異なるサステナビリティ保証の特徴を踏まえまして、例えば、保証業務実施者に過度な責任を負わせない措置を検討すること、資格制度の要否については将来の検討課題とすること、業務管理体制として、職業的専門家としての能力・経験等を有する者を備えること、現行の実務経験者の知見を活用すること、保証基準の策定に当たって関係者から幅広い意見を求めることといった点について考慮してはどうかと考えております。
次に、27ページ目を御覧ください。自主規制機関の役割に関する論点になります。有価証券報告書におけるサステナビリティ保証業務は、社会的に重要な公益性の高い業務でありまして、その信頼性確保が必要となりますが、現状では実務が確立されておらず、発展途上の段階にあるというふうに認識しております。こうした保証業務に対する信頼性を確保する上で、実務に関する専門知識を維持・向上させ、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる自主規制を活用することが有用ではないかというふうに考えられます。このような観点から、サステナビリティ保証業務についても自主規制機能を発揮してもらうべく、自主規制機関を保証制度の枠組みに取り入れるべきと考えられます。その場合、自主規制機関の役割といたしまして、例えば保証業務の質の維持・向上、従事者の知識・能力の向上、従事者における高い倫理感の醸成・保持について担うこととしてはどうかと考えております。
29ページ目を御覧ください。これまでに御議論いただきましたサステナビリティ保証制度の全体像を整理したものになります。
次に、31ページ目を御覧ください。任意の保証に関する論点になります。法令により義務化されるサステナビリティ保証以外を任意の保証と呼ばせていただきますけれども、企業が任意の保証を受けること自体は企業の自由な判断に委ねられるものになります。ただし、任意の保証は、必ずしも法令により義務化される保証と同水準の質が担保されているわけではございませんので、有価証券報告書に任意の保証を受けた旨の記載をする場合には、投資家が法令で質が担保された保証であると誤認するおそれがございます。そこで、投資家保護の観点から、任意の保証についてどう考えるべきか検討する必要があると考えております。
32ページ目を御覧ください。ここでは、開示基準、保証基準、登録された保証業務実施者の3つの要件を満たす保証を制度上の保証と呼ばせていただきます。任意の保証の場面といたしましては、1つ目に、義務化される保証の対象範囲以外、例えばScope3などについて保証を受ける場合。2つ目に、保証義務化の開始時期よりも早期に保証を受ける場合。3つ目に、義務化対象ではない企業が保証を受ける場合が想定されます。これら3つの場面において任意の保証を受けた場合、有価証券報告書に保証報告書を添付してもよいか、添付を認める場合には、制度上の保証と誤認しないよう、何らかの方策を取るべきか、添付を認めない場合には、有価証券報告書に保証を受けた旨を記載してもよいのか、その記載方法に何らかのルールを設けるべきかといった点が論点になると考えられます。
33ページ目を御覧ください。有価証券報告書以外の開示書類、例えば統合報告書やサステナビリティレポートが想定されますけれども、これらの開示書類は引き続き規制の対象外となりますので、保証の要否については各企業の判断に委ねられるべきと考えられます。
最後、35ページ目でございます。本日御議論いただきたい事項でございますけれども、先ほど御説明させていただきました、25ページで提示させていただいた考慮すべき事項、27ページで提示させていただきました自主規制機関の役割、29ページ目で提示させていただきました保証制度の全体像について御議論いただければと考えております。また、任意のサステナビリティ保証に関する論点につきましても御意見を頂戴できればというふうに考えております。
私からの説明は以上となります。
【堀江座長】
ただいま事務局からポイントについて御説明いただきましたので、これを踏まえまして、これから委員の皆様方から御意見、御質問等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。
まず初めに、本日御欠席の阪委員、田辺委員、弥永委員から御意見を頂戴しておりますので、事務局から紹介をお願いいたします。
【犬塚開示業務室長】
それでは、本日御欠席の委員から頂戴しております意見について御紹介させていただきます。
まず、阪委員でございます。1つ目、現在の検討において、財務情報とサステナビリティ関連財務開示の違いを、作成・保証・利用にかかわるすべての方に広く知っていただくことは、サステナビリティ開示基準の本来の目的を社会全体で達成するために重要であると考えています。財務諸表とサステナビリティ関連財務開示は、ともに財務報告の一部ではあるものの、それぞれ固有の目的を果たし、異なる情報を提供するものであるためです。その点、今回の資料において、検討の考え方として相違点を整理していただいたことに感謝申し上げます。
2点目、サステナビリティ開示の目的を果たすためには、バリュー・チェーンに連なる企業とともにサステナビリティ課題に取り組むことが重要になります。バリュー・チェーン企業の取組レベルを高めるために、現在検討されている枠組みのもとで、多くの企業にとって任意開示及び保証に取り組みやすい仕組みが望ましいと考えております。
3点目、32スライドの論点については、1は添付を認めること、2は、現行の開示実務を踏まえて、(2)の任意に保証を受けた旨を記載することとしてはどうかと考えます。33スライドの論点については、これまでどおり、各企業の判断に委ねる形とし、実務の進展を促すことが望ましいと考えます。
阪委員の意見は以上でございます。
次に、田辺委員の御意見について御紹介させていただきます。
1つ目、25ページ目、考慮すべき事項について、本内容に賛同いたします。2つ目、27ページ、自主規制機関の在り方について、本内容に賛同いたします。3つ目、29ページ目、サステナビリティ保証制度の全体像について、本内容に賛同いたします。
加えて、前回の議論を踏まえ、以下の2点について、論点として検討に加えてはいかがでしょうか。(1)内部専門家及び内部監査部門の実施手続・結果の活用について。保証業務実施者の業務負担を軽減する観点から、企業内部の専門家や内部監査部門が実施した手続の一部を外部の保証業務実施者が依拠することの可否について検討すべきではないかと考えます。これは現在においても内部統制監査において広く採用されている実務であり、サステナビリティ保証においても同様の枠組みの適用が検討されるべきと考えます。(2)他の保証業務実施者の実施結果への依拠について。親会社の保証業務実施者が短期間でグローバルに専門家を充足することは困難であると考えられます。そのため、一定の期間を定めた上で、また、一定の範囲や程度を限定した上で、親会社の保証業務実施者が、自己が属する国際ネットワークとは異なる別のネットワークファーム、または別の保証業務実施者の実施結果に依拠することの可否についても検討が必要ではないでしょうか。これは、財務情報の監査が国際化する過程において広く行われてきた実務であり、サステナビリティ保証の枠組みにおいても一定の合理性があると考えます。
4つ目、32ページ、任意保証について。(1)制度上の保証業務の要件を満たす場合。制度上の保証業務の要件を満たしている場合には、有価証券報告書に保証報告書を添付することを認めることが適当であると考えます。任意で保証を受け、その旨を開示することを希望する作成会社にとって、開示の信頼性向上につながると考えます。(2)制度上の要件を満たさない場合。制度上の要件を満たさない場合には、有価証券報告書への保証報告書の添付は認めるべきではないと考えます。制度保証と任意保証の混同が生じる可能性があり、投資家や市場関係者に誤解を与えるおそれがあるためです。ただし、要件を満たさない場合でも、保証報告書の添付を希望する意見がある場合は、直ちに否定するのではなく、その是非について慎重な議論を行うことが望ましいと考えます。
5番目、終わりに。前回の意見の繰り返しになりますが、サステナビリティ情報の保証に関する制度設計を進めるに当たり、米国・欧州において法定開示時期の延期が検討され、保証業務の枠組みがいまだ確立されていない現状を踏まえ、慎重に検討を進めていただきたく存じます。
田辺委員の意見は以上でございます。
最後、弥永委員の御意見を御紹介させていただきます。
有価証券報告書中のサステナビリティ情報について任意の保証を受けることは望ましいとは思われますが、仮に、サステナビリティ保証報告書を有価証券報告書に添付すること、または保証を受けていることを記載することを認めるのであれば、保証業務実施者は金融商品取引法の損害賠償責任を負うものとしないと、有価証券報告書の利用者の保護という観点からも、また、業務実施者の責任という観点からも均衡を欠くものと考えます。また、業務実施者に対する監督上の処分(課徴金を含む)も同様に科すことが適切であると考えます。
もしそのようにしないというのであれば、サステナビリティ保証報告書を有価証券報告書に添付すること、または保証を受けていることを記載することを認めることは不適切であろうと思われます。有価証券報告書の利用者としては、そのようなものに過度な信頼を置いてはならないと思われる(過度の信頼を置くべきではないのであって、利用者の自己責任であると割り切ることは適切ではない)ため、いわばミスリーディングな情報となり得るからです。
自主規制機関の役割には賛成しますが、法定の保証業務の対象となる有価証券報告書提出者が少なく、その結果、保証業務実施者の数や監督対象となる業務の数が少ない場合に、コストとリソースを踏まえて現実的な解決策を講じることが必要であると思います。すなわち、例えばNon-PAのみで自主規制機関を創設することが適当ではないとすると、日本公認会計士協会がNon-PAも対象とするのかという問題があり、もしそれが適切でないとすると、当面は、自主規制を前提とせずに、金融庁ないし公認会計士・監査審査会が直接監督をするという方策も理論的にはあり得るので、様々な選択肢の得失を検討したほうがよいかもしれません。
弥永委員の意見は以上でございます。
【堀江座長】
それでは、本日御出席の委員の皆様方から御意見等をお伺いさせていただきたいと思います。限られた時間ではございますが、基本的に全ての委員の方々から、5分程度で御意見等を頂戴したいと考えております。前回同様、一通り委員の先生方から御発言等いただきました後、時間が残された場合には2回目の御発言の機会を設けさせていただきますので、御発言の時間を守っていただければ大変助かります。
なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで、事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。また、御発言を希望される際は、先ほど事務局からも御案内がありましたとおり、目の前にございますネームプレートを立てていただければと存じます。加えまして、本日オンライン参加の委員の先生もいらっしゃいますので、御発言の順番につきましては若干前後する可能性もあるかと思いますので、あらかじめ御了解いただければと思います。
それでは、どなたからでも結構でございます。御意見等を頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。どうぞ御遠慮なく御発言いただいて結構でございます。
それでは、井口委員、どうぞお願いいたします。次、筒井委員、御発言いただきますので、お願いします。
【井口委員】
御説明ありがとうございました。また、保証と監査の比較について整理いただきありがとうございました。理解が進みました。御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げます。
最初は25ページのほうですが、最初の「財務諸表監査と共通するもの」として記載の事項は、資本市場からの信頼性確保の観点で保証業務でも必要になると考えますので、財務諸表監査と同じレベルで取り入れるべきと考えます。その下の「考慮すべき事項」の2つ目の必要とされる知見につきましては、これも資料8ページに御記載いただいていると思うのですが、保証範囲がこれまでのScope1、2などの定量数値から、今後、ガバナンスをはじめとした定性の開示にも広がり得ること、企業開示の観点で重要性がある情報に絞り込むプロセスの確認が求められること、それから、14ページに御記載がありますように、保証においてもその他の記載内容の通読義務が発生し、財務諸表を通読して、保証で得た知識との相違の検討が求められるということを考えますと、保証の知識や経験に加え、財務諸表監査、あるいは財務会計基準の理解といった、利用者なんかよりもずっと高いレベルの財務諸表の理解度が求められるものと考えております。また、同じ25ページの一番下のところの、我が国の状況を鑑み、サステナビリティ保証基準を策定することには賛同いたしますが、国際的かつ財務諸表監査とも整合的な、IAASB、IESBAの策定した基準のみを基礎として策定すべきと考えております。
続きまして、27ページの自主規制機関につきましては、利用者といたしましては、挙げられている3つのポイントに沿って保証業者の方をしっかり監督していただけるのであれば、どのような形態でもよいとは思っております。ただ、効率性の観点から、現状の財務諸表監査での監督体制を可能な限り活用できるような体制がよいのではないかというふうに思っております。
次に、32ページの任意の保証の論点につきましては、制度上の要件を満たす場合には保証報告書を有報に添付するということに賛同いたします。また、要件を満たさない場合は、利用者が混乱しないよう、有報に添付するのではなく、こちらの資料の2(2)にご記載がありますように、記載欄に任意に保証を受けた旨を記載するということが妥当と思います。ただし、その際の開示内容についても定める必要があると考えております。ちょうど、31ページのディスクロージャーワーキング・グループ報告の抜粋にありますように、保証業務の提供者の名称、準拠した基準、保証水準など、利用者が保証の概略を理解できる内容も併せて記載するべきというふうに考えております。
最後となりますが、33ページの有報以外の保証についてとなります。SSBJ基準では任意の開示の取扱いというのがございまして、任意の報告書などでもSSBJ基準に準拠した開示も一定程度出てくるものと考えております。また、その報告書にも保証がつけられるということも一定程度想定されると考えております。このような企業さんの取組というのは非常にありがたいと思っております。また、金商法の規制の対象外ということも理解しておるのですが、投資家保護の観点から考えますと、資本市場全体として、この任意の保証も含めて目を配る必要があると思っております。保証報告書のベストプラクティスの選出とか、あるいは投資家や企業への啓蒙活動、周知徹底などを通じて、保証について利用者が保証の概要が分かるような開示を、この任意の報告においても求める方策というのも検討する必要があるのではないかというふうに考えております。以上でございます。ありがとうございます。
【堀江座長】
貴重な御意見ありがとうございました。
それでは引き続きまして、筒井委員、お願いいたします。
【筒井委員】
ありがとうございます。日本郵船の筒井でございます。グローバルな動向も含めまして、保証に関わる概観を大変分かりやすく資料にまとめていただきましたこと、ありがとうございます。私も大変理解が進みました。私も井口委員と同様に、同じ段取りで発言させていただきたいと思います。
まず、25ページの考慮すべき事項でございます。1つ目でございます。
1ポツ目、制作者側のセーフハーバーの議論等を踏まえて、過度な責任とならない措置とすること、これには全く賛同いたします。セーフハーバーということの意図するところは、制作者側に対してより積極的に情報開示することを促すと理解いたしますので、全く同様の趣旨で、保証業務実施者側が過度な責任を負うことで保証手続が厳格化されてしまうとしますと、結果的に情報開示の積極性が損なわれてしまうのではないかと危惧いたします。したがいまして、そういったところにはぜひ御配慮いただきたいと思います。
2つ目の資格制度の要否自体を将来の課題とするということについては、慎重であるべきではないかと考えております。なぜならば、企業側にとっても保証業務実施者の信頼性、資料にも高い信頼性ということが何回かコメントされておりますけれども、その信頼性の担保が非常に重要だと考えます。と申しますのも、保証業務実施者が、資料9ページにあるように重要な情報の記載が漏れていないことを確認する、また、14ページにあるように、重要な虚偽表示リスクが存在する箇所を把握するためというと、リスク評価の手続を実施することになるかと思います。となりますと、当然のことながら、取締役会とか経営会議での、経営上極めてハイレベルな議事録、情報にも触れる機会があるのではないかと想定いたします。したがいまして、保証業務実施者が守秘義務とか、そういった倫理規程、規律規定を遵守することに高い信頼が置けるということが必須ではないかと思う次第でございます。したがいまして、やはり高い倫理感が醸成されるという意図からも資格制度があるべきではないかと考えております。ただし、資格の水準が必ずしも、例えば弁護士試験とか公認会計士試験と同等である必要はないでしょうし、資格制度を将来しかるべき時期に導入とするということは選択としてあり得ると考えております。
2つ目の四角になります。このポツ2つ、どちらの点も賛同いたします。
それから、3つ目の四角でございますが、こちらも井口委員と同様に、国際的なガイドラインと整合し、同レベルで保証されるべきですが、我が国の制度が国際的な水準に比べて厳しい保証水準となることのないように、また、国内の監督官庁による違いがないように、慎重に制度設計していただくことを強く希望しております。
27ページの自主規制機関の役割及び29ページのサステナビリティ保証制度の全体像について、こちらについては賛同申し上げます。
そして、任意のサステナビリティ保証についてでございますけれども、有価証券報告書に添付される保証報告書は、投資家からの信頼、評価が得られるべきと考えますので、同水準のレベルを保つべきであると考えております。したがって、こちらの記載の2番、制度上の保証業務の要件を満たさない保証報告書の添付には反対いたします。一方で、制度上の要件を満たした保証を、例えば早期適用であるとかScope3の開示などに拡大するということは、制作者側が投資家を念頭に、よりしっかりとした対応、努力をしたことの結果であるので、こういったことも含めて添付を認めるということに賛同いたします。
また、保証業務の要件を満たしているということを担保するに当たっては、金融庁様の監督・検査権限が及ぶべきではないでしょうか。また、その権限を確実に及ぼすためには、任意の保証範囲の拡大、期間の前倒しを含む場合も制度に含めることが望ましいでしょうし、弥永委員の意見書にもございましたが、ある種のペナルティーのようなものを導入するということも選択肢として検討すべきではないかと思います。
最後に、有報以外の開示書類については、引き続き、各企業の判断に委ねられるべきという考えには賛同申し上げます。
以上でございます。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで御参加いただいている委員の方から、お二方続けて御意見をいただきたいと思います。
松本委員、御発言いただいて結構でございます。
【松本委員】
堀江先生、ありがとうございます。また、犬塚さん、詳細な資料ありがとうございました。議論いただきたい事項として35ページにまとめて挙げていただいておりますので、それに即してお話をさせていただきたいと思います。
最初の黒丸のところで義務と責任に関して記載されているんですけれども、これは弥永先生のコメントにもありましたし、今の筒井委員の御説明にもありましたとおり、最初にセーフハーバーの議論をするのではなくて、まずは金商法上の特別の責任として、有価証券報告書作成者の責任、つまり虚偽記載に関する作成者の責任は金商法上に規定されていますが、財務諸表以外の虚偽記載を正なるものとして証明した者に関する責任に関しては金商法上規定されていませんので、有価証券報告書の経理の状況以外の虚偽の記載を保証した者の責任に関して、セーフハーバーを議論する前に、まずはその特別の責任を規定する必要性を認識すべきではないかと思います。
次に、登録制度・登録要件の問題と自主規制機関の役割は同じ流れで捉えられるべきだと思いますけれども、スライド25、スライド27で説明していただきました。自主規制機関の役割にしても、登録制度・登録要件にしても、サステナビリティ情報の保証を社会的な制度として成り立たせるためには、保証主体あるいは保証業務提供者の信頼性は必須の条件だと思います。というのも、社会制度として保証業務を成り立たせようと思ったら、まずその保証業務を提供している人たちの社会的な信頼性が必要だからです。このことは昭和31年の監査基準設定についての前文においても、高度な人格を有し、公正な判断を下せる立場にないと監査人になれないことが規定されていますので、このような高度な資格要件を監査基準なり保証業務の新しい基準なりに盛り込み、かつそれを社会に公表することによって、その登録団体については、あるいは登録された保証業務提供者については、高い社会的評価を得られる者だけが保証業務を提供しているということを社会に知らしめることで、保証主体の信頼性を確保し、もって制度の信頼性を確保することにつながると思います。ですので、自主規制団体に一定程度、品質管理の監督とかを委ねたとしても、高度な資格要件を前提にした登録は必須だと思います。
3つ目です。3つ目は任意保証のところですけれども、これも議論が出ておりますが、任意のサステナビリティ情報の保証については、制度上の担保が可能であればというお話がありました。その場合の少なくとも制度上の担保というのは、まず登録主体であること、それから保証基準ならびに作成基準が既に権威ある団体である金融庁によって認められた基準に基づいていることという条件を前提に、保証対象となる範囲だけが違った場合を想定しないといけないと思います。したがって、保証主体の資格要件、作成及び保証基準が同じで、保証対象範囲のみが異なる場合にどういう扱いをするかという話になるわけですけど、これは2014年の改訂監査基準で導入された特別目的の財務諸表の監査というのが参考になると思います。その特別目的の財務諸表の監査が行われた場合、監査報告書及び財務諸表において、これが特別目的の会計基準に従った財務諸表であることと、特定の利用者を想定したものであることを記載しなければならないとされています。つまりサステナビリティ情報に関して特別の知識を持った利用者向けの情報及び保証であることをサステナビリティ情報の注記や付記事項あるいは保証報告書の追記情報として記載することが必要だと思います。
さらに、任意のサステナビリティ情報、つまり有価証券報告書以外の保証についてですが、保証業務の目的というのは想定利用者のリスクを低減させることにありますから、任意であろうと法定であろうと、リスクが低減するという観点から有価証券報告書以外のサステナビリティ情報の保証について有価証券報告書での言及を認めてよいと思います。しかし、先ほど申しましたとおり、同じような注意喚起情報として追記情報あるいは注記や付記事項として、これが特別の任意の開示情報であるし、それに対する任意の保証であるということが分かるような記載が必要になろうかと思います。その場合、もちろん弥永先生がおっしゃったとおり、法定開示書類である有価証券報告書で言及する以上、法定開示及び法定保証と同等の法定の責任が付されるということが制度的に必要になると思います。
以上です。ありがとうございました。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは引き続き、オンラインで御参加いただいております上田委員、御発言いただけますでしょうか。
【上田委員】
御指名ありがとうございました。資料のおまとめと御説明もありがとうございました。私も他の委員の皆様と同様に、御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせてください。なお、前回欠席させていただきましたので、前回の議論と重複している部分があるかもしれません。そこは何とぞお許しください。
まず25ページ目の部分ですけれども、サステナビリティの保証業務実施者については、何よりも有価証券報告書の信頼性確保、これがひいては市場の信頼性確保につながるという前提において、倫理と独立性については、監査人、会計監査と同様のレベル感での信頼性確保、ここは必ず必要であると考えます。とりわけ公認会計士については、資格取得からその後の研修プロセスを通じて、この部分というのは職業的な専門性以前の部分、倫理観等の部分については強く訓練されて身につけている部分で、そして協会、そして当局含めてモニタリングをしている部分だと思っています。これは信頼性のベースになる部分ですので、ここは保証業務実施者についても同様であると考えております。
他方、「職業的専門家として」という部分の専門性の部分についてですが、いわゆるサイナーになる方たちというのは、サステナビリティ全般についての知識、経験が必要であるということについては疑いがないというところなんですが、特定の分野の専門家がサイナーの下でチームを組んで参加する場合もあると思います。
正直ここは悩ましいと思っています。公認会計士資格と比べて、その資質をどう評価、要は客観的に見て信頼性があるものとして認めていくかというところの程度感は悩ましいと思っています。その点を含めて、今回少し資料に記述があるように、資格試験については将来的な検討課題とのことですが、時間的な問題からそういう議論でよいかと思うのですが、ただし、全てのプライム上場会社が対象となるようなタイミングまでには制度を確立しておく必要があるのではないかと思います。
続いて、27ページ、29ページは、少し内容が重複するので、まとめてコメントさせてください。自主規制機関については、国際基準に基づいて、PA(公認会計士)であるかNon-PAであるかに関わらず、保証業務実施者として同じ機関が行うべきであると考えます。ここも例えば監査法人についていいますと、協会レビューと審査会のモニタリングということで、有効なモニタリングの体制が組まれているかと思います。保証についても、程度感というのはあるかもしれませんが、こういう自主規制機関と行政機関の相互協力というのでしょうか、2層による役割分担による監督というのが適切であろうかと思います。
ただしその場合、当局というのは金融庁のどこが担当されるのか、また別途組織をつくるのかとか、そういう御議論はあるかとは思うんですが、全体としては29ページに書かれている仕組みについては賛同するところでございます。こういう仕組みを整えることで、例えばここで倫理・独立性基準は自主規制機関において、保証基準は金融庁の中の企業会計審議会等においてという、これでいいとは思うんですけれども、他方、資格試験はどこが実施するのかとか、この仕組みができた後に適切な形というのを検討すべきと思っています。
続いて、任意保証の32ページと33ページについての部分ですが、制度上の保証業務の要件を満たした保証を任意で受けた場合には、制度上の保証業務と同水準の質が確保されているということだと思いますので、有価証券報告書に保証報告書を添付するということを認めることが適切であると考えます。そうすることで開示情報の信頼性確保にもつながりますし、また当局モニタリングの対象にもなるということなので、情報の信頼性というところからは、投資家保護という観点からも望ましいと思います。
他方、制度上の保証業務の要件を満たさない保証を任意で受けた場合については、有価証券報告書における保証報告書の添付は認めるべきではないと考えます。ただ現行、プラクティス、開示の状況等を見ていますと、サステナビリティ記載欄に任意の保証を受けたということを記載することを禁止する必要はないのかなと考えます。ただし、その場合には、情報ユーザー、投資家等の誤認とか誤解、混乱を避けるためには、任意保証の提供者、実施者の名称とか保証範囲についてはしっかり明記するというような仕組みづくりというのも必要なのかと思います。
以上を踏まえて、全体的な部分なのですが、特に時期的なものでございます。海外情勢を含めますと、我が国において金融審議会におけるサステナビリティ情報の開示、保証の議論が始まった頃と比べると、少し時間的余裕も出てきているのではないかとも感じます。他方では、2028年3月期から時価総額3兆円以上の企業については保証が義務化されるという、スタート地点が決まっているということですので、例えば、まずは監査人、会計監査を担う監査法人等からスタートするとか、そこの監査チームの中に、いわゆる今後Non-PAとして保証業務実施者として予定されている、イメージされているような専門家が監査チームに入るとか、そういうところから始める等して、まずは確実に実務が回れるようにすることが重要と考えます。ただし、プライム上場会社全部に拡大するというタイミングでは、今回御議論いただいているNon-PA含めた、資格試験も含めたという形で完成形を目指すという、少し濃淡つけて議論してもよいのかなと感じたところです。
以上でございます。ありがとうございました。
【堀江座長】
どうも貴重な御意見ありがとうございました。
それでは、次に藤本委員から先に御発言いただいて、その後、オンラインで御参加の林委員、また対面に戻りまして関口委員という順番で進めたいと思います。よろしくお願いいたします。
【藤本委員】
藤本でございます。発言の機会いただきありがとうございます。また、事務局からの説明資料も大変丁寧にまとめていただきまして、ありがとうございます。私も、御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。
まず、サステナビリティ保証業務実施者に求められる規律の在り方について、25ページ目等にまとめていただいておりますけれども、この内容については基本的に賛同いたしております。その上で幾つか、3点ほどコメントさせていただければと思います。
25ページ目に記載いただいております考慮すべき事項の1つ目でございます。過度な責任を負わせない措置を検討ということで、サステナビリティ情報は、やはり財務情報と異なる特性を持ったものであるということでございますので、御提案の方向性については賛同しております。一方で、もともとやはり高い規律を求めるということが当初の趣旨でございましたので、どの部分をそういった措置するのかどうか、ここについては丁寧に、慎重に検討していく必要があるのではないかなと考えております。幾つかこういった義務・責任に関するところがございますので、個別に検討いただければと考えております。
それから、2点目でございますけれども、このページの最後のところにある保証基準についてでございます。こちらは基本的には国際保証基準であるISSA5000をベースに検討していくと理解をしておりますけれども、ここで必要な要素が何かあれば、我が国の保証基準に反映させることと記載がされております。関係者から幅広い御意見を求めるのは、これはもうデュープロセスとして必要なことではないかと思いますが、一方で、グローバルの投資家が求める開示制度に基づく保証基準でございますので、やはりこのISSA5000から大きく乖離するような内容にすることは望ましくないと考えております。こちらは今後検討を進めていく中で御検討いただければと考えております。
それから、3点目でございますが、27ページ目にございます自主規制機関の役割についてです。この内容については私としても賛同しております。ただ、この役割を担う自主規制機関が、どのようなリソースやコストや体制が必要になってくるのかということであります。これらの期待される役割を担うためには、それに対応する人的あるいは費用面での体制、コスト、リソースも必要になってくると思います。こういったところも含めて、より具体的に次の専門グループに向けて御検討いただければありがたいと考えております。
それから、話が少し飛んでしまうんですけども、この資料の中でオムニバス法案についてまとめていただいていると思います。こちらは保証の話ということだけではないですけれども、ここでおまとめいただいたように、非常に日本の企業にとっても影響がある内容になっていると承知をしております。一方で、私の理解としましては、どちらかというと開示の簡素化であるとか、あるいはEU域内非上場会社の適用を制限するといった方向性を踏まえますと、よりISSBに近い開示の内容になったり、あるいは企業数が絞られるという観点では、現在我が国が想定しているような、ロードマップで想定しているようなものというのは、直接的な影響を受けないのではないかなと考えております。ここで合理的保証への移行も否定されたということでございますけれども、現在のロードマップ上でもそこは明確に現時点では示されていないところでございますので、私としては、やはり今のワーキング・グループで提案されているロードマップの案は、引き続きそれを実現すべく検討を進めるように、議論を後退させないようにしていただきたいと考えております。
それから、任意の保証についてでございます。こちらは先ほど来皆様から御意見いただいているとおりと思っておりまして、まず保証報告書に関しましては、まず利用者から見たときの利便を第一に考える必要があると考えております。そのような観点で、分かりやすさという観点からは、制度上の保証業務要件を満たした場合に保証報告書を添付する、そうでない場合は添付しないというのが最も適切ではないかと考えております。
また、制度の保証業務要件を満たさない場合、保証報告書を添付しない場合には、任意に保証を受けた旨のみの記載では、どのような保証をしたのか、受けたのかということが分からないと思いますので、やはり先ほど来皆様からのコメントがあったとおり、十分に内容を記載いただくことが必要ではないかと考えております。また、責任に関しても皆様から御意見が出ていたところと私も承知しておりまして、やはり制度上の保証業務要件を満たしている場合、それから満たしていない場合で責任が異なるのかどうか、ここの明確化も必要ではないかと思っております。また、最後の有価証券報告書以外の開示媒体における任意の保証に関しましては、御提案のとおり、各企業の判断に委ねるという考え方に賛同いたします。
私からは以上でございます。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで御出席いただいております林委員、御発言お願いいたします。
【林委員】
関西学院大学の林です。発言の機会をいただきありがとうございます。これまでの各委員の御意見と大きく異なるところはありませんけれども、最終ページに示されている論点に従って意見を申し述べます。
まず25ページ、サステナビリティ保証制度を検討するに当たって考慮すべき事項というところですけれども、ここで御提示いただいている内容について異論はありません。上段の財務諸表監査と共通する事項のうち、2つ目の品質管理体制の確保、それから3つ目の専門分野の知識の維持・向上については、サステナビリティ保証に当たって考慮すべき具体的な事項として、下段の真ん中の枠で業務管理体制が示されているものと理解をいたしました。
続きまして、27スライド、自主規制機関の役割、それから併せて29スライドの全体像についてですけれども、ここにつきましても、基本的な考え方については御提示いただいております自主規制機関に期待される3つの役割、それから全体的な枠組みについて、異論はございません。ただ、これは弥永委員も御指摘されて、他の方も御指摘されたかと思いますけれども、現実の問題としましては、自主規制機関だけではなくて、監督機関も含めて、担い手の問題、それからコストベネフィットの考慮、そういった検討が必要と考えております。
続きまして32スライドですけれども、要件を満たしている場合も、それから要件を満たしていない保証の場合も、保証を受けているという旨を有報に記載するに当たりましては、投資家保護の観点からは、当該保証を理解し評価するために必要な情報、具体的には、これも何度も言及されておりますけれども、保証業務実施者とか、準拠した基準、保証の範囲、水準、結論などを何らかの形で明示することが必要となります。それから、保証業務実施者の責任につきましては、金商法の損害賠償責任は当然負うことになりますし、監督上の処分の対象にもなると考えております。
これらを踏まえた上でですけれども、要件を満たしている任意の保証報告書につきましては、有価証券報告書に添付することを認めてよいと考えております。一方で、要件を満たしていない任意の保証報告書につきましては、比較可能性や、保証業務実施者が負う責任の観点から、保証報告書の添付は認めず、サステナビリティ情報記載欄に任意に保証を受けた旨を記載することを認めるのが適当と考えます。任意に保証を受けた旨を記載する場合には、当該保証を理解し、それから評価するために必要な、先ほど申し上げたような情報をサステナビリティ情報の記載欄に記載する、あるいは、例えば他の統合報告書や当該会社のウェブサイト等、必要な情報を確認できる場所を特定するということも併せて求めることが望ましいと考えております。
最後に、33スライドの任意保証の論点②については、御提示いただいております考え方に異論はございません。
私からは以上です。ありがとうございました。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、一通り御意見お伺いさせていただきたいと思いますので、関口委員、お願いいたします。
【関口委員】
ありがとうございます。それでは、私も25ページのところからコメントさせていただきます。
今回御提案いただいていて、25ページも含めて、反対するところはあまりないんですけれども、正直言ってよく分からなかったというのが率直なところです。反対はないんですけども、今後もうちょっと詰めていく必要があるんじゃないかなと思っているところがいくつかありますので、その辺を少しお話しさせていただければと思っています。
まず25ページのところで、資格制度の要否について将来の検討課題とする、これも反対ではないんですけれども、通常議論する場合、例えば欧州でどうなっているとか、他の国でどうなっているとか、何かそういう比較検討というのがあるのかなと思っていまして、資格制度がないにしても何らかの形で能力を問うというのは、それはしかるべきかと思っています。例えばEUの制度でも、公認会計士試験に埋め込まれているわけでないにしても、業務を実施する前にテストをするというのがあったり、あるいは研修要件というのもあったりというので、そういったものも全くなくしていくのかというのがここではよく読み取れませんでした。また、下のところで、職業的専門家としての能力・経験等のうち一定のものと、財務会計の知識、上場会社の保証経験とありますが、これを業務実施者に求めているのか、あるいは例えば品質管理部門みたいなところに求めているのか。これは私の観点からすると業務実施者に求めるようなものなのかなというふうにも思っていまして、なぜ業務管理体制に求めているのかというのがちょっとよく分かりませんでした。このように資格試験制度の要否について将来の検討課題にするということは、これは一般論として賛成なんですけれども、じゃあどうやったら業務実施者の資質みたいなところを問うていけるのかというのは、もう少し検討したほうがいいんじゃないかなというふうには思っています。
それから、あともう一つ、ここは書いていないところなんですけれども、以前に私が申し上げたのが、SSBJ基準のうちでScope1、2とガバナンス・リスク管理に関する開示というのが保証対象になるとした場合に、保証の意見として、SSBJ基準のうちでパラグラフ何々があって、その部分について従っているのかというふうな意見の形式にすることが想定されてるのじゃないかなというふうに思うんですけれども、それが果たして本当にできるのかどうか。SSBJ基準は、基本的に全体として準拠しないと準拠表明できないというふうにもなっていて、かつ監査でいきますと、何か一部分だけをというのを会計基準から引き算してやるというのは認められていない中で、そういったものがテクニカルにできるのかなというのがあり、テクニカルフィージビリティーを検討したほうがいいんじゃないかなというふうに申し上げていました。この辺も恐らく検討する必要があるのではないかなというふうに思っています。
あと、すみません、これも書いていないんですけれども、相互参照された場合に、相互参照先について保証業務実施者が責任を負うとした場合に、企業の責任はどうなのかというのが今のままでよいのかどうかというのも検討したほうがよいんじゃないかなというふうに思います。それが25ページのところです。
27ページに行きまして、今度は自主規制のところで、これも反対はないんですけれども、例えば、自主規制機関が登録を担うのか、またモニタリングを担うのかというのは非常に大きなところなのではないかなというふうに思います。御案内のとおり、公認会計士あるいは監査法人に対しては、登録を自主規制機関が実施して、かつ品質管理レビューという形でモニタリングをしています。他方、ここを見ると、どうもそれがないんですけれども、じゃあ自主規制機関に対してそういったことを期待しているのか、していないのか、こういったところは少なくとも検討はしたほうがよいんじゃないかなというふうには思っています。
続いて29ページに行きまして、検査・監督のところで、これも申し上げてよいのかどうかいまいち分からないのですけれども、審査会というのがこれはあえて記載されていないんじゃないかなというふうに思います。公認会計士・監査審査会が検査・監督を担うのかどうかというのは、恐らくどこかでは議論しなければいけないんじゃないかなというふうに思っていまして、検査・監督について議論する際には、この点は多分避けて通れないんじゃないかなというふうには思っています。
続いて32ページに行きまして、今度は保証報告書を入れるかどうかというところです。これもちょっとよく分からないのが、保証報告書はいわゆる非財務情報の一部として開示されると思います。非財務情報の開示にあたってはNon-GAAPメジャーをどこまで開示していくべきなのか、いけるのかというのが一般論として議論になりますが、そのときに投資家にとってミスリーディングな情報であってはならない、そのためにはプロミネンスの程度を工夫して、あまり強調し過ぎないようにするとか、そういうのが重要と言われていたりすると思います。
保証報告書の開示をするとしても、発行者にとっては、保証の対象になる情報は刑事、行政、民事の責任を負うということになると思います。それから、保証報告書を入れた場合には、保証業務実施者においても恐らく民事と刑事の責任は問われるようになってくると思います。だとすると、なぜこの保証報告書だけ何か特別扱いして議論するのか、保証報告書に限って、仮に投資家保護にとって有用だと考えられる場合でも開示してはいけないということが果たしてできるのかというのがいまいちよく分かりませんでした。このため、もう少し全体的に議論したほうがいいんじゃないかなとは思っています。
私のほうからは以上です。
【堀江座長】
貴重な御意見ありがとうございました。今御指摘のように、まだまだ論点出しのレベルにとどまっているところが多くて、先生御指摘のとおり、もう少し踏み込んで議論を進めていかなければいけないところも多々あることは十分認識しておりますので、これから事務局と相談しながら進めさせていただければというふうに考えております。
それでは、森内委員、よろしくお願いいたします。
【森内委員】
ありがとうございます。私からは2点ほど意見を述べさせていただきます。
まず前半部分、4ページから19ページにかけまして、従来の財務情報とサステナビリティ情報の相違点であるとか、現行業務とサステナビリティ保証業務の相違点、それから財務諸表監査とサステナビリティ保証業務の相違点など、非常に分かりやすくまとめていただいたと思います。それから、監査と保証についての概念も、チャートで非常に分かりやすく整理いただいたと思います。
一方で、少しさらに深掘りしていただきたい点ということで1点ございまして、それは現行業務の中での、保証と検証です。これはページによっては保証(検証)と書いてある部分もあれば、保証と書いてある部分もございまして、そういう意味で保証と検証、この概念の違いであるとか、もう少し深掘りしますと保証と妥当性確認、保証と検証、保証と妥当性確認・検証、この3つの考え方がありますけども、これはJIS規格でいいますとJIS Q 17029などに記載されているところでありますが、こういった概念とか範囲の理解を関係者が相互に深めていくということが非常に大事だと思っております。
ちなみに、私どもが所属しております国際機関でありますIAFとIAASBが昨年の11月にLOIを結び、それぞれの規格、特にISSA5000の適用について具体的な専門グループをつくって検討しているということは前回ワーキング・グループのほうでも共有いたしましたが、直近ですと2月に2日間のミーティングをやったという報告が来ております。
それから2点目、25ページに多分集約してあると思いますので、ここで幾つか挙げさせていただきたいと思いますが、まず考慮すべき事項の中で、財務諸表監査と共通するものの3ポツ目「専門分野の知識の維持・向上(研修を受講する義務など)」というところです。この3ポツ目は非常に重要だと考えます。特に財務諸表監査と共通するものの中で、このサステナビリティ保証業務で必要な専門分野の知識の範囲がどこまで必要なのかということと、この研修を受講する義務など、ここは非常に重要な点だと考えます。
それから、下のほうの考慮すべき事項というところで1つ目の箱です。保証業務実施者が知識を習得し、保証業務経験を蓄積することを優先し、資格制度の要否については将来の検討課題とすることとございますが、保証業務実施者が知識を習得することも、保証業務経験を蓄積することも優先することはそのとおりだと思いますが、資格制度の要否というところが気になります。やはり資格制度は必要だという前提の下で議論を進めていくべきではないかということと、将来の検討課題といいますと、将来というとどのくらい将来なのかというのがございますので、ある程度、義務化、保証の導入に合わせて、この資格制度についてもロードマップをつくって検討していくことが重要ではないかと考えます。
サステナビリティ保証業務は、発展途上なればこそ、体系的な研修制度の導入が必要ですし、開示を行う企業側も含めて、いろんな教育、研修の機会を、継続的な教育も含めて仕組み化することが重要だと考えます。サステナビリティ保証業務の性格上、やはりサステナビリティ会計の歴史ですとか、専門職としての職業倫理原則、実務基準に対する一定の知識なしに経験を蓄積していっても、担い手によって品質にばらつきが生じてくるということがございます。そういった意味では、意図したユーザーの期待に沿わなくなるリスクがあるということでございますので、保証業務の担い手がそのバックグラウンドに関わらず、一定の研修を受講するような仕組みをつくるということが望ましいかと思います。特に、18ページにも留意すべき事項としてまとめていただいておりますが、財務に影響するリスク及び機会を識別して、重要性がある情報に絞り込むプロセス、この能力が非常に重要だということは、まさにそのとおりだと思います。
参考になる研修制度とか試験ということでいきますと、IFRSがやっておりますFSA Credential、これはレベルが2段階に分かれておりまして、それぞれ合格には30時間から50時間の学習時間が必要と言われています。ですから両方やると60時間から100時間とか、相当な学習時間になりますけども、ここには保証の要素というのはほとんど入っていないということからしますと、他に例えばフランスが保証業務提供者に対して義務化している90時間の研修受講、これは恐らく保証もかなりの部分入っていると考えられますので、こういった海外の事例なども参考にしながら、できるだけ早く研修のカリキュラム、それを資格制度にしていく、そういった流れをつくることが必要だと思います。
以上です。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、事務局のほうから、オンライン、対面、オンライン、対面と順番を入れ替えながら進めてもらいたいというメモが来ましたので、続きまして、オンラインで御参加の植村委員にまず御発言いただき、続きましては対面での町田委員、それからまたオンラインに戻りまして甲斐委員、対面に戻りまして清原委員と、こういう順番で進めさせていただきます。
それでは、オンラインで御参加の植村委員、御発言お願いいたします。
【植村委員】
御指名ありがとうございます。植村です。私も35ページの御議論いただきたい事項に沿って大きく6点、その後、そこに含まれていない論点につきコメントを申し上げたいと思います。
1点目、18ページ下段の留意すべき事項の1つ目ですが、財務諸表とサステナビリティ情報に大きな違いがある点については同意いたします。しかしながら、3つ目の財務諸表監査とサステナビリティ保証の違いの記載は、合理的保証と限定的保証の違いを述べているだけであり、そもそもの財務諸表監査レビューとサステナ情報の保証の相違について記載はされていません。財務諸表とサステナ情報開示に違いがあるので、それらに対する監査レビューとサステナ保証は、たとえ広義の保証に分類されるとしても、前回も申し上げましたとおり、監査レビューとサステナ保証との重み、位置づけは異なるものとの整理が必要だと考えます。
2点目、25ページの内容につきましては一定の理解はいたします。しかしながら、冒頭申し上げましたとおり、従来の財務諸表情報とサステナビリティ情報との違いについて考慮すべき事項は記載されているものの、最下段左側の財務諸表監査とサステナ保証の違いについて、括弧書きの中にサステナ保証は限定的保証と示されており、合理的保証の一つと考えられる財務諸表監査と同様の手続は求められないとあり、論点がぶれていると思います。ここは、情報開示そのものに性格的な違いがある限定的保証の財務諸表レビューと限定的保証のサステナ保証の相違について、それらの重み、位置づけの違いを明確にすべきです。合理的保証手続と限定的保証手続の相違としての論点整理はしないでいただきたいと思います。
続きまして3点目、27ページの自主規制機関の役割ですが、ワーキング・グループで示された方向性及びその考え方については賛同いたします。一方、現状はその体制が確立していない状況のため、新たなサステナ保証に関する自主規制機関をいかに設立するのか、いつを目標にしているのか、コスト負担、コストベネフィットの論点についても具体的に整理をすべきだと考えます。
続きまして4点目、29ページのサステナビリティ保証制度の全体像については賛同いたします。特に競争力確保等を目的の一つとした欧州のオムニバス法案等のグローバル動向も踏まえると、一番下の左側、保証の水準は限定的保証にとどめるのが必然だと考えます。技術的に自主規制機関の在り方、役割については、先ほど申し上げたとおり、具体的な整理、説明が必要だと思います。
5点目になります。32ページ下段の任意のサステナビリティ保証報告書の添付の可否については、1については、制度上の保証業務の要件を満たした任意保証の場合はサステナ保証報告書を有報に添付することを認めてもよいと考えます。具体的には、少しくどくなるかもしれませんが、制度と任意の保証報告書の2通を添付することになろうかと考えます。一方、2の制度上の保証業務の要件を満たさない任意の保証については、金融商品取引法の有報への任意の保証報告書の添付及び任意に保証を受けた旨の記載は、誤解を生じる懸念があるため、双方とも認めるべきではないと考えます。
6点目です。33ページ、最下段の論点、有価証券報告書以外の開示業務への影響について、これには賛同いたします。
最後に、御議論いただきたい事項に含まれていない点でございます。米国や欧州でのサステナ情報の開示や保証について、競争力確保などの観点から見直しの動きもありますので、これらの動向を踏まえながらの慎重な議論の必要性が高まってきています。今回の事務局資料には添付はございませんが、時価総額3兆円企業の2027年3月期からの2段階のサステナ情報開示についても、当初対案としてあった2028年3月期からに1年後ろ倒しすることも再検討すべきと考えています。また、2年目には同時開示に加え、同時保証適用が義務化となっているところについても同様に再検討が必要と思います。サステナ情報開示は、財務諸表開示に比べ、歴史的にも浅く、作成者が実務的、物理的対応が厳しいところに、さらに保証業務を同時実施するというのは非常に難航、混乱も想像されます。前回申し上げたとおり、当面の間、少なくとも3年以上、場合によっては5年以上の同時保証の猶予期間というのは必要だと考えております。
以上、私からのコメントとさせていただきます。御考慮いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、対面に戻りまして、町田委員、御発言ください。
【町田委員】
ありがとうございます。私からも検討すべき事項に合わせて発言させていただこうかと思いますが、後ほど全体で2つ、事務局に質問したい点があります。
その1つ目ですけど、今、何人かの委員から御発言がありましたけれども、第1回のこの専門グループの会議と今回の会議の間にあった一番大きい事件というか、出来事としては2月26日のオムニバス法案のことがあります。私は実は、第2回の専門グループ会議、本日の会議は延期されるんじゃないかとさえ思ったんですけども、もう1回ワーキング・グループに戻って、実施のスケジューリングだとか、あるいは日本はどうするのだろうというような話に戻ってしまうんじゃないかと思いました。それとも、ともかくこの専門グループでの議論は進めておこうということなのかどうなのか。そのことについて方針をお聞かせいただきたいというのが1点目の質問です。
それから、内容についてですけれども、まず27ページ、自主規制機関の役割ですが、皆さん、これはこれでいいと、公認会計士協会もこれでいいと言っているんですが、私はどうしても気になる言葉があって、3つ目の「行政機関を補完する役割を担い」というところがやはり気になっています。社会的には、社会全体として見ればそうなんですけれども、制度的には、自主規制機関が公的規制を補完する役割を課せられている覚えは全くないわけです。公認会計士協会が登録名簿制度を担ったり、いろんなことをやっていたりするというのは、日本の公的機関における人的リソースの不足という日本固有の問題に合わせただけのものなので、ここを所与として議論することについてはちょっと違和感がありました。
同じように、あたかも決まったかのように書かれているので気になった点です。そこまで深読みしなくてもよいのかもしれませんけど、29ページの図を見て、皆さんこれでよいとおっしゃるですけれども、サステナビリティ保証業務実施者は金融庁に登録して、検査・監督を金融庁が行うということなんでしょうか。これは、何かあたかも、監査監督機関に登録するイメージにしか私は見えなかったんですが。もちろん、審査会とは書いていないので、そういう意味ではないと、あくまでも業者登録の問題なんだということなのかもしれませんけれども、Non-PAの保証業務実施者は、自主規制機関へ登録するのではなくて、もう金融庁、公認会計士・監査審査会に登録するということが既定路線なのかどうなのかということがとても気になりました。この点について、2つ目の質問としてお教えください。
その上で、先ほど何人かの委員から御発言ありましたが、25ページについて一言申し上げたいと思います。私も、ここにある下から3つ目のボックスの「資格制度の要否については、将来の検討課題とすること」というのは、資格制度を創設するのは大変だから将来に先送りしようという意味で受け取りました。しかしながら、保証業務の実施者あるいはプロフェッションに対して業務を社会が任せるということは、その者の専門性に依拠して、その専門性に信頼を置いてお任せするわけで、全く専門性の観点がなくて、専門性のチェックがなくて任せるということはあり得ないだろうと思うんですね。それが資格であろうと、研修であろうと構わないですが。実際、監査法人では、サステナビリティに関する研修制度を行っていて、一定の研修を受けた者がサステナビリティ業務についているというふうに聞いておりますが、最低限それはクリアしなければいけないことであって、将来の検討課題ではなく、制度の実施に向けて研修の実施という問題はあるのだろうと考えます。
また、あくまで業務実施者といいますか、法人あるいは事務所が金融庁に登録するという観点から、同じ図でその下のところに業務管理体制として、知識あるいは経験を備えた者を置くという書き方をしているのかと思うんですけれども、契約を結ぶのは法人であっても、あくまでも業務を実施するのは個々の専門家として個人がやるわけですから、個人として、一定レベル以上の業務が可能な専門性を有する者でなければいけないんだろうというふうに思っていますので、ここの書きぶりは私もおかしいんじゃないかなと思います。
それと32ページですが、有価証券報告書における任意の保証の話です。私たちは今、日本の制度の議論をしていますけれども、実際に、すでにEUに拠点を置いている企業でサステナビリティ報告を公表したり保証を受けたりしている企業においては、GHGのScope1、2だけとか、あるいはリスク管理とかガバナンス、そういったところに限定したサステナビリティ報告をしているのではないわけです。そうすると、ヨーロッパではサステナビリティ報告として、ある程度大部なものが出ていて、日本の有価証券報告書ではそれが出ないというのがどうなのかという問題は当然にあるだろうと思います。だとすると、弥永先生からは責任の観点があるというご意見でしたから、ある程度、責任の議論を先送りするということであれば、例えば、内部統制報告書と同様に、有価証券報告書の添付書類としてサステナビリティ報告書を提出するという形にすることも含めて検討して、やはり海外の投資家が読めるものは、日本の利用者にも読めるようにするべきなんじゃないかなというふうに思っております。
また、その時に当然、作成基準、それから保証業務実施者、また業務実施基準、保証の基準あるいは範囲、そういったものは明記すべきだろうと思います。逆に、33ページにあるような法定開示以外のところについては縛る必要はないというのは、そのとおりかなというふうに思います。
あともう一つ、これが最後ですけれども、1つ気になった点についてお話ししたいんですが、15ページのところで合理的保証と限定的保証の議論が示されています。専門グループの会議ですから、皆さん限定的保証の手続については御承知おきの中で議論されているんだろうと思うんですけれども、実際に現在のわが国のサステナビリティ情報の保証業務における限定的保証の業務がここに書かれているような形で行われているのかどうなのか、また、業務実施者によって違いがあるんじゃないかという点が気になります。私が、いろいろと研究目的でヒアリングして回ったところの範囲では、監査法人によっても違いがありますし、あるいはNon-PAの事務所においても違いがあります。例えば、分析的手続の実施に当たって、比較すべき推定値をつくっているかどうか聞いてみたところ、千差万別でした。そういった形でどのように分析的手続をやっているかどうかという違いも大きいように思います。
また、私は研究目的でこのサステナビリティの保証のことを研究していますけれども、海外の研究では、サステナビリティ情報の保証に関して、保証チームの属性ということが議論されます。保証チームに専門家がいるかどうか、あるいは専門家はどんな資格を持っているか、そういう議論があるんですけれども、日本の場合、非常に小さいチーム、もしくは現場に行っているのは1人で、そして会社に戻ってきて、もう1人が管理しているというケースもあります。そんな形になると、日本では同じ研究ができないんですね。つまり、海外ではサステナビリティの保証チームの研究ができますけど、日本では保証チームの研究はできない。そうすると、日本で実際に今行われている保証業務のイメージと海外のNon-PAあるいはPAが行っている保証業務のイメージが大分違っているんじゃないかなというのが私の今日段階での感覚なんです。その点についても、もしも機会があれば、実際にどんな形で監査法人やNon-PAの方が業務を行っているかということを、この専門グループの会議の場で教えていただけないかなというふうに考えているところです。これはお願いです。
ということで、私からは以上ですが、質問としては、繰り返しますが、2点。オムニバス法案のことを受けて、本当にこのまま議論を続けるんですかということが1点と、もう一つは、資料にあった金融庁に登録、それから検査・監督というのは、これはもう所与なんですかということをお伺いしたいと思います。
以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。今様々、御質問も含めて御意見等頂戴いたしました。御質問2点いただいていますので、1つ目、これは委員の方々皆さん御関心あるところかと思いますので、まだまだ不確定なところもあるかと思いますけれども、事務局のほうから、オムニバス法案の扱いでスケジューリングに何か影響が出るのかどうなのか、感触だけでも、お答えいただける範囲で、お答えいただければと思います。
これについては課長から。
【野崎開示課長】
すみません、オムニバス法案の影響については私のほうからお答えさせていただければと思います。
オムニバスの規則について、動きを我々注視してございますけども、現在提案の段階ということでございまして、今後、欧州議会などにおける議論も踏まえて決まっていくというものでございますので、引き続き動向をしっかり注視していく必要があるかなと思ってございます。
現時点で出ている案を見てみますと、2年延期というものも出てございますけども、こちらは非上場企業の適用年度と、あと上場企業の中でも中小規模の適用年度であるというふうに理解してございます。我が国で今検討中、御議論いただいている案は、そもそも非上場企業とか中小上場企業というのは適用対象としていないというところでございます。我が国で今検討中のプライム上場企業の時価総額3兆円、1兆円というような上位企業、規模の大きいところに相当する、欧州でいうといわゆるWave1というところにつきましては、CSRD開示が2024年12月期から既に開始されているというふうに理解してございます。
このような状況でございますけども、いずれにしても我が国でサステナビリティ開示を円滑に導入していく上で、経過措置の議論も様々ございますので、皆様方、ステークホルダーの方々の御意見をしっかりお伺いしながら、丁寧に検討を進めていければというふうに考えてございます。
【犬塚開示業務室長】
御質問いただきました2点目の登録、検査・監督、これについて所与のものと考えているのかという点でございますけれども、こちらはもちろん現在、全体像という形で示させていただいておりますので、御意見を頂戴できればというふうに考えております。その一方で、やはり法令に基づく登録制度を導入する場合には、国に登録をするのが通常だと考えておりますし、国が検査・監督を行うことが一般的だと考えております。特に監査の世界においては、公認会計士協会において、例えば品質管理レビューですとか上場会社等監査人登録制度の運用を担っているという点はございますけれども、やはりこれはもともと公認会計士協会がやってきた実務という、そういった歴史的な経緯の中でそういった役割を担ってもらっているという部分もございますので、それを前提とした議論とするのではなく、やはりまずは原則論として国が検査・監督、登録制度を担うと、そういう形を示させていただいたというところではございます。
【堀江座長】
町田先生、いかがでございますか。よろしゅうございますか。確かにこの点につきましても、保証主体との絡みでまだまだ不確定な要素があるので、現在の公認会計士又は監査法人による財務諸表監査の登録とはちょっと違った考え方というか、もう少し幅広での考え方を示させていただいているということで御理解いただければと思います。また、いろんな書きぶりにつきましては、いただきました御意見を事務局等含めて再度検討させていただければというふうに考えております。
それでは引き続きまして、オンラインで御参加の甲斐委員、大丈夫でしょうか。海外から接続とお聞きしておりますので、ネットの環境がどうか。大丈夫ですか。
【甲斐委員】
発言の機会を下さり、ありがとうございます。公認会計士の甲斐です。通信環境の問題で、大変申し訳ありません、ビデオオフで失礼いたします。
25ページに記載の内容については、基本的に賛成いたします。その上で2点コメントさせていただきます。
まず、8ページに関連してコメントいたします。一番下の保証報告書の欄で、保証業務実施者の結論が記載されていますが、左側の有価証券報告書の保証の欄にのみ、括弧書きで「適正に表示」という表現が含まれています。これは、右側の現行実務の欄が準拠性の基準を前提としているのに対して、左側の有価証券報告書の保証の欄では適正表示の基準があり得るということを想定して記載されているものと理解しています。現在検討中の我が国の制度保証において、その保証の対象は、ISSB基準と同等の基準に従って、有価証券報告書に開示されるサステナビリティ情報の全てではなく、その一部の情報であると理解しています。ですので、ISSB基準と同等の基準に従って適正に表示されているという適正表示形式の結論を取るべきかについては議論があると考えます。先ほど関口委員からあったコメントとも関係しているかと思います。既に論点として想定されている事項だとは思うのですが、開示基準や保証対象が決まった後に、我が国の状況に照らして議論されるべき重要な論点の一つだと考えまして、この点についてコメントさせていただきました。
2点目として、19ページに関してコメントいたします。今もちょうど御議論があった欧州オムニバス法案とIAASBのISSA5000に関してご質問いただくことがありますので、個人的な見解を述べさせていただきます。
まず、資料にも記載されているとおり、現行のCSRDでは2026年10月までに保証基準を採択することになっていましたが、オムニバス法案では、2026年までに保証のガイドラインを公表することが提案されています。この変更の意味は、財務諸表監査と同様に、欧州レベルではガイドラインのみが開発されて、保証基準は各加盟国レベルで開発されるというアプローチにしたものだと理解しています。財務諸表監査においては欧州レベルでの監査基準は存在せず、各加盟国が監査基準を開発しております。その結果として、ほぼ全ての加盟国において国際監査基準に基づく監査基準が開発されていると理解しています。このようなアプローチとしている大きな理由の一つは、恐らく監査基準の採択、開発は、一般的に各加盟国の基準設定主体の権限となっているため、欧州レベルで監査基準を法制度化することが難しいためなのではないかと聞いております。こうした背景から、サステナビリティ保証に関しても同様のアプローチを取ったのではないかと考えています。今後欧州議会が公表予定のガイドラインが、各加盟国レベルでの保証基準の開発に影響を与えると考えますので、その内容には注視する必要があると思います。
もう1点、保証に関して注目された変更の一つが、合理的保証に関する提案かと思います。現行のCSRDでも、資料に記載いただいているとおり、合理的保証への移行が確定していたわけではなくて、移行についての検討を行うとされていました。ですので、オムニバス法案によって、第三者による保証を制度化すること自体が変わったわけではないと思っております。このように考えますと、今回のオムニバス法案は、保証というよりは、やはり開示の簡素化の側面が大きいのかなと思っています。開示の簡素化によって、保証に関する課題も解決する部分が多いのではないかと思います。
IAASBとしましては、ISSA5000をグローバルベースラインとして機能する基準として策定しております。欧州での状況は今お話ししたとおりですけれども、前回コメントしたとおり、欧州以外の一部の国では採用が開始されております。IAASBは、今後も引き続き、企業支援のための資料の公表ですとか、実務上の課題の識別と対話を行うことによって、ISSA5000の採用と適用を引き続き支援していくということを予定しております。
私からは以上となります。ありがとうございます。
【堀江座長】
どうもありがとうございました。情報提供も含めて、大変助かりました。
それでは、引き続きまして、対面に戻りまして、清原委員、御発言お願いいたします。
【清原委員】
発言の機会をいただきましてありがとうございます。
少し議論がまだ新しいものということで、、少しコメントも飛ぶところがあるかと思うんですけれども、意見を述べさせていただきます。
大まかに25ページから始まる全体像のところについては、異論はないところであります。けれども、先ほど町田先生から大変貴重かつ重要な御指摘あった登録のところですけれども、金融庁のほうからの御説明にありましたように、法令でまず制度を求めるときに、国の機関に登録するということは非常に重要なポイントだと思っておりまして、その方向でまず進むのがよいかと思っています。と申しますのは、自主規制機関の登録というのは、まだできてもいない自主規制機関に対して登録するということをそもそも議論し始めるのはなかなか難しいだろうということが1つと、それから自主規制機関というのも、公認会計士協会の関係では歴史的な経緯があるものであり、日本で自主規制機関というのはどういうタイプのバリエーションがあって、どういう運用がされているか、この全体像をこちらの審議会とかでお示しいただいて議論するのがよいかなと思っています。一つのイメージ、案ではあるのですけれども、金融庁もしくは財務局かもしれませんけれども、国に登録をした後、自主規制機関のほうでは、登録というよりは、むしろ加入、強制で登録させるという形ではなく、メンバーとして入って、その中で一定の自主規制というものが機能するという運用もあるのではないか。恐らく金融関係の業者に対するレギュレーションとしてこれまでの実例もあるだろうと思います。
今回の議論の中で、ちょっと広くなって恐縮ですけれども、法定の制度としての保証を中心に議論しているけれども、法定の保証以外の任意の保証に関して、あまり信頼性の高くないものが通用している状況があったりすると、全体に影響してくるだろうと思われますので、保証というもの全体を底上げするようなことにつながることも考えなくてはいけないのではないかと考えます。制度保証はこうだという議論にとどまらず、それ以外に、任意で保証を行うものについても、保証の主体について一定程度の質を確保する、もしくは確保できているかどうか、どのように社会に周知せしめるかという点、すなわちトランスペアレンシー、開示ということを含めて考えていく必要もあるのではないかと考えています。
そのやり方としては、近年の金融庁の施策の中でいろいろありますけれども、プリンシプルというものがあり、例えば自分たちでサインアップしたりして採択する、自分たちで自主的にやっているということも含めて、運用を考えていくこともあるので、法律やレギュレーションや自主規制機関などが規定をつくって、それに従う、もしくはそれが監督をするというだけでなく、まだ生成途上にあるもの、これからどうしていこうかというときに、最初から全てを縛るよりは、方向感、プリンシプル、原則というものをしっかり打ち立てて、それに従って、それを参考にしながらやっていく会社が増えること、このような進め方というものも、これからの保証提供者のマーケットの成長を促すうえで、育成していくうえで、非常に有用なアプローチではないかと考えています。
その意味で、自主規制機関に、法制度にのっとって登録をしている保証提供者が加入するだけじゃなくて、法律上の登録をしているわけではないけれども任意の保証業務を提供している者も加入したりする、もしくは加入しない保証提供者ではあるけれども、自主規制機関が示す規則とかプリンシプル自体を参照しながら自分たちも自主的にやるんだという形で宣明をしたり宣言、サインアップしたりするというような、そういった運用もあると思われます。ですので、法定の制度をつくるのはもちろん重要なんですけれども、この新しい保証というものを、制度の信頼性を担保する上でも、制度以外の保証提供者の方々の信頼性をも、少し広めに議論して制度設計全体を考えていただくとよいではないかなというのが1点目でございます。
あわせて、制度の話は、他の方と意見が大きく違うところはないんですけど、任意の保証の扱いのところについてどうするか、そこのところが実はかえって重要ではないかと私は思っていて、他の委員の方から主体の信頼性についてのご意見があり、非常によい指摘がありましたけれども、すごく大切なところで、そこを担保するということが制度と制度の隣の任意の保証のあり方としてしっかりと組み込まれるようなことが想定されるとよいのではないかと考えます。そのように考えると、法定開示書類に添付するものが制度保証とともに任意の保証の添付を認めることも可能になるかもしれません。
それから、法定開示の枠の外で保証報告書を開示している、ウェブサイトなどに企業がアップして一般に閲覧できるようなときには、それに参照するということがあってもいいと思いますし、そういった意味で、少し全体感を持って検討するとよいかと考えています。
最後の制度保証、添付するわけでない、有報のいわば外にある任意開示書類に、例えば任意保証がついているというときに、これを有報で参照することを認めることについて、いかにディスクレーマーをつけても難しいことがあるとも思っていて、外部の書類への参照文言を有報に記載することを認めるのであれば、保証報告書が開示をされて閲覧できる場合、すなわちどういう内容の保証報告書かが分かる場合、なぜなら保証報告書には手続などが書かれたりとか、いろんな情報が入ってくることがあるので、企業の説明だけではなくて、保証報告書そのものにアクセスできる場合であれば、それを法定開示書類において参照することも許容するとすべきではないか。そうじゃないものを参照するようなことを認めると、どういうものか内容についてよく分からない保証を参照するようなことを認めることになりかねず、制度としては問題を生じるのではないか、と懸念があります。やはり透明性を確保したもの、それは企業がウェブサイトに載せる、もしくは統合報告書に載せるということがあって、そこにアクセスできるということが確保されているものであれば、法定開示書類である有報において、どこどこで開示されているということと共に、ディスクレーマーを付した上で開示することができる、というような形にするのがよいのではないかと考えます。
それから、任意と法定のところで、任意のところで保証範囲を拡充したものの議論が少しありましたけれども、これは非常に気をつけなければいけない点があるなと思っています。というのは、範囲の拡充というのがScope1、2、3のように、対象事項がはっきりとしたものならいいですけど、サステナビリティというものは対象となるテーマが非常に広いですので、専門性があるかどうかはっきりしていない、資格制度もない状況で、保証の対象範囲を任意に広げてカバーした保証報告書が添付されて混在してくると、比較可能性の観点において問題になってくるのではないかと思います。保証の対象範囲としては、制度上認められているものについて保証報告書を添付することを超えて、任意に範囲を拡充したものについてどうするか、その取扱いはやっぱり慎重に考えなければいけないのではないかと思います。すなわち、比較可能性の観点において言うと、混乱を生じかねないという意味で、そこは慎重にと。
ただし、ご意見にもありましたように、欧州その他の海外でパッケージで保証を出しているもの、それを任意のものとして出すという場合について、これを許容するかどうかというのはまた別途議論する余地があると思います。このように、議論を少しずつ具体的に詰めていかなければいけないところがあり、複雑になりかねない面はありますけれども、丁寧にこういった議論を積み上げて進めていくことによって、マーケットにとって有用であり、誤解が少なくて、企業としても自社が取り組んでいるものを積極的に示すことができる、そういう制度設計につながっていくんじゃないかと思います。引き続き御議論を続けていただければと思います。ありがとうございました。
【堀江座長】
どうもありがとうございました。大変貴重な御意見賜りました。
それでは、またオンラインに戻りますと、浅川委員、ちょっと遅れて御参加いただいている予定でございますけれども、入られておられますでしょうか。
【浅川委員】
浅川です。入っております。
【堀江座長】
どうぞ御発言ください。
【浅川委員】
ありがとうございます。ご指名していただきましたので、コメントさせていただきます。
私からも御議論いただきたい事項に基づいて、25ページに記載された考慮すべき事項、27ページの自主規制機関の役割、あるいは29ページに示されたサステナ保証制度の全体像、任意のサステナ保証について、コメントさせていただければと思います。
まず初めに、18ページの留意すべき事項を前提とした上での、25ページの考慮事項のうちの1つ目ですが、財務監査との共通事項ということで示されている点につきまして、守秘義務ですとか、同時提供の禁止ですとか、品質管理体制、専門性の維持とか、こういったものが必要ですよねというところについては私も賛同いたします。いずれも第三者という立場を明確にする際に、とても重要な事項かと思います。
その上で、この中の特に専門性分野の維持・向上につきましては、25ページのところにあります考慮すべき事項の2つ目、財務情報との違いにも絡んでくると思いますが、サステナビリティ情報は、18ページの留意事項にあるように、予測情報、定性情報、記述情報が多いと特性上なされていますので、例えば職業専門家としての能力について、もちろん財務会計の知識等も必要ですが、一方で、プロセス排出のセクターの規格等、GHG情報をはじめとした専門分野というのがやはり関わってくるかなと思いますので、そのようなセクター区分の導入。ISOのほうではセクター区分という考え方が入っているかと思いますが、そういったところもある程度、考慮してもよいのかなと思うところでございます。
一方、25ページの2つ目の財務情報との違いの残りの部分につきましては、セーフハーバー等の検討に賛同いたします。
それから、3つ目のところですが、現行の任意保証と実務との違いというところですが、もちろん企業が財務に影響するリスク及び機会を識別して、重要性のある情報に絞り込むプロセスを確認するということは大事なことですし、それは大きな目的と思いますが、それが正しくできているのかどうかということを確認する、保証する前提は、それぞれの基準に照らした要求事項に即して、実態が正しく現状把握、モニタリングされているのかというところかなと思いますので、そういう意味で、現行の任意保証実務の中での定量性情報の正確性の確保というのは、やはり引き続き大前提として大事なところなのではないかなと思います。そういうことで、先ほどお話ししたように、業種ですとか、プロセスの専門性というところも大事なところなのかなと思う次第です。
そのところでいいますと、29ページの図ですが、サステナビリティ保証業務実施者が専門的な情報の保証に当たって外部専門家を活用するということで、これはとても大事なところですが、一方で、サステナビリティ保証業務実施者自身が外部専門家を適切に本当にちゃんと管理できるのかということを考えたときに、やはりそれ相応の知識とか知見とか、そういったようなところも必要になってくるのかなと思います。
それから、25ページに記載されています考慮すべき事項の4つ目の財務諸表監査との違いということで、19ページに示されている欧州CSRDオムニバス規制案の現状も踏まえて、現状想定されている限定的保証水準での運用というところに賛同いたします。14ページのところで財務諸表監査とサステナビリティ情報保証との差異ということで表を作っていただいて、非常に分かりやすい表だと思いましたが、財務諸表監査は合理的保証、サステナビリティ情報については限定的保証ということになっていますが、サステナビリティ情報のうちのGHG排出量については、クレジット制度、ISO規格等に準拠しているような保証業務であれば、国内で言えばJ-クレジット、海外ではCDM、JCMですが、監査諸表の監査と同時に合理的保証水準で実施されていて、リスク対応手続の中での証憑の突合ですとか立会い等の手続が必須として実施されているところになります。ですので、この表では、財務諸表とサステナ保証の差異ということだけではなくて、保証水準での手続の差異というところも多少入っているというところは留意すべきところかなと思いました。
次に、自主規制機関の役割ですが、書かれている3つの役割案ということで、保証業務の質の水準向上、知識向上、高い倫理感の醸成・保持というところについて賛同いたします。具体的にどのようなことが必要なのかといった取組はやはり今後の検討になるかと思いますが、例えば、前にもお話ししたかもしれませんが、ISO認定制度では年1回の立入りということで、この辺り、質の向上・維持や倫理観向上、醸成・保持というところにも寄与しているかなと思いますので、あるいは報告書のレビューなどもそういったところに寄与するのかなと思いますので、そういったところも検討されるとよろしいかと思いますし、最新動向の共有ですとかセミナーの開催というところ、あるいは審査員資格の修了というのも内容として考えられるところかなと思います。
また、29ページのサステナ保証全体像ということで、こちらの全体像に私も賛同いたします。ただ、まだまだ何か追加すべき事項もいろいろあるのかなという感じもいたしますので、幅広い意見聴取というのは引き続き必要ではないかと思いました。
最後に、任意のサステナ保証の論点ですが、まず、先ほどもちょっとお話ありましたが、金商法に基づく有報の中で制度保証要件を満たした項目の任意保証については、制度保証と同時に認められるということでいいのかなと思いました。一方で、その要件を満たさないような有報の記載事項に対する任意保証の取扱いは、案にも書かれておりますとおり、保証対象の識別の観点や誤解を与えないという観点から、別扱いというのもあるかなと思ったところです。さらに、制度に関わらない、本当の任意保証ということは、もう事業者判断ということでよいと思いますが、いずれにしましても、任意保証を受けるメリットというところをある程度明確に出していくと、先々保証環境が進展していくことにつながるのではないかと感じたところです。
私からのコメントは以上となります。ありがとうございました。
【堀江座長】
どうも貴重な御意見ありがとうございました。
それでは、芹口委員、よろしくお願いいたします。
【芹口委員】
ありがとうございます。そうしましたら、御議論いただきたい事項につきまして、順にコメントさせていただきます。
まず、25ページの考慮すべき事項として、1点目の従来の財務情報とサステナビリティ情報との違いについてですが、金商法には監査証明の提供者の虚偽記載等の責任がございますが、保証業務実施者につきましては現状規定がありませんので、新たに金商法上に責任規定の追加を検討する必要があると思っております。詳細につきましては、現在御検討中の作成者の規定を踏まえた検討でよいと思っておりますが、サステナビリティ情報は見積り情報や定性情報を含むなど、性質が財務情報とは異なりますので、虚偽記載等の責任における重要性を含めて、虚偽記載等の判断もおのずと異なってくると考えられますので、そのことが一定の方法で示されることが必要ではないかと考えております。
また、2点目の現行実務とサステナビリティ情報の保証業務の違いにつきまして、登録の要件におきまして業務管理体制として、職業的専門家としての能力・経験等を有する者を備えることを追加し、財務会計の知識を例示いただいておりますが、かなり広く規定されている印象を受けました。大前提として、SSBJ基準は財務的な重要性を重視して策定された基準で、それに基づく保証はこれまでの実務と異なると考えております。全体を通じて財務的な重要性の判断が必要になり、今後、戦略にも保証範囲が拡大していく中では、データ、仮定の整合性を取る必要があります。また、IAASB、IESBAの国際基準では、財務諸表とサステナビリティ情報との間で重要な相違がある場合には監査人との連携が求められるなど、保証手続の様々な場面で評価、判断が必要になる可能性があると考えております。
御提案いただきました財務会計の知識では要件が形骸化しないか懸念される一方で、保証の資格制度は今回の御提案でも将来の検討課題とされておりますとおり、すぐに設定することは難しい状況と思います。そうなると現時点では、公認会計士の資格を有する方や財務諸表監査の御経験のある方などを中心に考えていくことが適切だと考えております。合理的保証である財務諸表監査の御経験から必要な手続を考えて限定的保証を行うノウハウをお持ちであることも、業務管理体制を構築する上で利点になると思われます。したがいまして、前回お伝えしましたとおり、組織もしくはチームに財務諸表監査の経験のある方などが所属することで、財務会計の専門性をカバーする体制の構築を要件に追加いただきたいと考えております。市場競争を図ることは重要な点だと理解しておりますが、財務会計の専門性を担保した上で検討いただきたいと考えております。
また、もう一つの例示として、上場企業等の保証経験とありますが、現在の実務、すなわちIAASB基準に基づく保証とISOの認証が全て含まれて、広く規定されている印象を受けました。これからの保証業務で求められる資質として、趣旨を明確化いただくのがよいのではないかと思っております。
また、3点目は、資料に記載のとおり、サステナビリティ保証は限定的保証で、合理的保証である財務諸表の監査とは手続の深さが異なると理解しておりますが、その上で25ページでは、保証基準を策定するに当たり、関係者から幅広い意見を求め、必要な要素があれば基準に反映するとされておりまして、国際基準から軽減するようにも読めましたため、国際基準に追加があってもカーブアウトがないようにお願いしたいと考えております。
続きまして、27ページの自主規制機関の役割につきましては、御提案に賛同いたします。
29ページの全体像につきましても基本的には賛同いたしますが、確認事項としましては、資格制度なしに自主規制機関のエンフォースメントをどのように果たすのか、検討する必要があるのではないかと考えております。
最後に32ページの任意の保証につきまして、他の委員の皆様と同じ趣旨のコメントになりますが、まず1点目の保証の義務のない企業が制度の要件を満たす保証を任意で受けた場合につきましては、利用者としては、情報の質を担保するために、保証報告書を有価証券報告書に添付して開示いただくのが望ましいと考えております。この場合、利用者は、企業に保証の義務があるかどうかに関わらず、保証を受けた情報を分析や投資判断に用いることが想定されますので、保証業務実施者には金商法等の責任が当然及ぶものだと考えております。ただし、図のaのように、企業が保証範囲を任意で拡大していく可能性も考えますと、どの情報が保証の対象なのか保証報告書に明記をしたり、現在実務でも行われていますとおりマークをつけるなど、明確化をお願いしたいと思っております。
また、2点目の保証が制度の要件を満たさない場合に任意の保証報告書を有価証券報告書に添付しますと、利用者が混同することが想定されますので、認めるべきではないと考えております。一方で、任意の保証とはいえ、情報のクオリティーをある程度確認することができますので、御提案のとおり、制度の要件を満たさない保証を受けている旨など、概要を記載いただくことは利用者にとって好ましいと考えております。ただし、有価証券報告書におきまして、制度の要件を満たす保証と満たさない保証が混在することになりますので、どの情報が制度の要件を満たす保証の対象なのか明確化するなど、利用者が混同しないよう、配慮をお願いしたいと考えております。
私のコメントは以上でございます。ありがとうございます。
【堀江座長】
貴重な御意見どうもありがとうございました。
それでは、岡崎委員、御発言いただければと思います。
【岡崎委員】
発言の機会をいただきましてありがとうございます。25ページのところですが、この中で、専門分野の知識をどのように確保するのか、グローバルのオムニバス法案で少し内容が変わってくるところはあると思うんですけども、方向性として合理的保証を考えていたところから限定的というのは、考え方としてわかりやすいと思います。専門的知識の中で、リスクや機会の特定をどのようにするのか、それから重要性をどのように認識して、どれだけ対象にするのか、この辺りのプロセス、それと内部統制等が正しく理解できることがとても重要になってくると思います。
それ以外のところを全て、サステナビリティ、専門性を理解する、有するというのは非常に難しい、範囲が広いところなので、専門家として入れるものと必ず必要なものと、分けて考える必要があるのではないかと思います。
それから、その専門性等ですが、チームとして要求をするのか、それとも個人で必要なのか、実際に分析をしたり、リスクの特定のことというのは実施をされるわけですから、その実施をする人が全員で必要なもの、それ以外のチームで必要なものと、2つあると思います。そういうことを考えていただきたいと思います。
それから、27ページです。自主規制の考え方、何らかの機関できちんと問題がなく運用できているというのはマーケットを乱さないために必要なことなので、このような考え方は要ると思うんですけども、どのようにやっていくのかというのは、まだ明確に出されていないので、これからの議論で、例えば、PAに対してどうするのか、Non-PAに対してどうするのかとか、世界的にどのように対応されているのか、国内で違う運用がどのようにされているのか、そういうことも考えていただければと思います。
それから、29ページ、全体のイメージはこういう考えで賛同します。
32ページ、33ページの任意の保証について、ここはやはり誤解を招かないというところが大前提なので、添付されるものというのはルールに基づいて基準を明確にされて、どこの組織が、機関が実施をしているのかということは必要だと思います。それ以外のものが混在すると誤解を招くおそれがあると思いますので、そのように考えます。
一方、グローバルで既に保証を受けていて、その保証と、日本でこれから制度化されるものと違いがある場合、範囲が広いことが考えられて、その時に、その部分を削除したものを新たに保証としてつけなければいけないのか、それが、ここは日本では対象外ですよと明記することで添付できるのが、企業に負担がない、誤解がないような形の運用がされればよいなと思います。
以上、私のほうからコメントさせていただきました。
【堀江座長】
貴重な御意見ありがとうございました。
それでは、最後になりましたけれども、高村委員がオンラインで御出席いただいておりますので、御発言お願いいたします。
【高村委員】
ありがとうございます。遅く入室いたしまして申し訳ありませんでした。
私からは2点、発言をさせていただこうと思っております。
1点目でありますけれども、これは前回の議論でもございましたが、基本的に、今回御提案をしていただいている全体像、論点について、基本的な方向性については了解をしております。
その上ですけれども、前回も議論ございましたが、資本市場におけるサステナビリティ情報の信頼性の担保という観点から申し上げますと、今回、サステナビリティ情報と財務情報の違いというところをかなりハイライトして、事務局が資料を作成していただいていると思いますが、恐らく大前提になっているからだと思いますけれども、やはり資本市場におけるサステナビリティ情報の信頼性、それは財務情報とのコネクティビティも含めて、その資格、法令上の義務、責任、それから、弥永先生の御意見とも通じるところはあると思うんですけれども、法令違反あるいは虚偽などの場合の法令上の処分、この中立性・独立性の確保、利害相反の回避などのための、現在ある財務情報に関してあります法的規律というのは、資本市場における情報の信頼性という意味で、やはり共通したものである必要があると思います。これはつまり、担い手が誰であってもということであります。
この点については、財務情報と共通した仕組みを大前提とし、しかし、本日御提案をいただいているように、サステナビリティ情報と財務情報の違いを踏まえて、保証において行うもの、あるいは能力の担保、こうしたものがその差異を踏まえて規律をつくっていくということであろうかと思います。
繰り返しますけれども、サステナビリティ情報と財務情報の性質の違いということは大前提とした上で、しかしながら、資本市場における信頼性の確保の上での担い手に関する規律等については、財務情報と共通した基盤をしっかり持っておくことが必要ではないかと思っております。
2つ目は、欧州のオムニバスパッケージについても今回御紹介をいただきました。保証の水準について、あるいは欧州におけるこのCSRD等々の見直しについて御指摘のとおりかと思いますけれども、他方で、現在、2027年3月期から段階的に、時価総額の大きなプライム上場企業から導入をしていくというこのスケジュールについては、状況を注視しつつではありますけれども、しかし、こうしたスケジュールについて、基本的には前提としつつ準備を進めていくということが必要かと思います。
ここでスケジュール感について不確かな形になってまいりますと、やはり制度設計についても、企業の皆さん、あるいは保証を行う皆さんの準備についても不確かさをもたらしてしまうように思っておりますので、全体の状況はしっかり見つつということではありますけれども、このスケジュール感でもって検討を進めていただきたいと思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。
【堀江座長】
貴重な御意見、どうもありがとうございました。
それでは、冒頭申し上げましたとおり、少し時間的な余裕がございますので、本日2回目の御発言がございましたらお伺いしたいと思います。
挙手またはチャット等でお知らせいただければと思います。いかがでございましょうか。
関口委員、どうぞ。
【関口委員】
ありがとうございます。ちょっと時間があるようなので1点だけ。
前回の会議で、担い手の話があって、今回、担い手の話が何となくどうなっているのかなとわからないまま議論をしていて、そうすると、自主規制機関の役割というのもどうなるのか、そこも何となく、あえてふわっとしているのかなと思うんですけれども、多分、それによってもいろいろと在り方が違うと思います。また、その担い手の点では、例えば監査法人というのが担い手になり得るのかどうかの検討にあたっては、監査法人の子会社ではなくて監査法人でもよいのかとか、そういうところも含めて議論すべきだと思うので、一度立ち止まってまた議論をする必要はありそうだなというのは、ちょっと個人的には感じています。
以上です。
【堀江座長】
どうもありがとうございました。
ぼやっとした話になってしまって申し訳なかったです。
それでは、他、いかがでございましょうか。もしあればお伺いいたしますけれども、よろしゅうございますか。
それでは、オブザーバーの方で御発言の希望があれば、お伺いさせていただきますが、いかがでございましょうか。
経団連の方からどうぞ。お願いいたします。
【日本経済団体連合会】
ありがとうございます。経団連の魚住です。
何人かの方々から既に御指摘があった部分もございますので、重複があるところを御容赦いただければと思います。
サステナビリティ情報は、やはり財務情報に比べて定性情報を多く含み見積りの要素が非常に強く、開示や保証というところで、やはり財務情報とは求めるべき水準が異なってくると考えます。この点、議論の入り口の段階から割り切って整理をいただけるとありがたいと思ってございます。
また、先ほど御説明ございましたとおり、オムニバス法案のヨーロッパの動き並びにトランプ政権のアメリカの動きが日本企業にも非常に大きな影響を与えると考えてございます。過度な実務負荷が、作成者だけでなく保証業務の実施者にかかってきてしまいますと、日本自体の活力がそがれてしまうところもございますので、国際競争力の確保の観点からもしっかりと重視いただきたいと考えてございます。そういった意味からは、現状において、今一度立ち止まって日本の在り方というものを一度御議論いただくという必要性があると考えてございます。
実践可能性、あるいはコストベネフィットからの議論が必要であると考えてございますし、日本として、諸外国の動向を見ながら柔軟に選択ができるような状況にしておくということも重要と考えてございます。
この専門グループが、当初の御説明では3回開催して、その結果を上位のワーキング・グループに報告されると理解をしておりますが、昨年12月の第5回の会合から大きく状況は変化していることも考えますと、大きな議論を一度上のワーキング・グループでしていただいて、方向性を改めて確認した上で、保証の議論をした方がやりやすいのではないかと。本専門グループで詰めるべき論点は変わらないのかもしれませんが、議論が空中戦にならないように、大きな方向性を上のワーキング・グループで再確認することが必要と感じているところでございます。
そのほか、個別の論点についても何点かコメントさせていただきます。前回も少し発言をさせていただきましたけれども、開示をされる企業側のセーフハーバーのみならず、保証業務を担われる実務者の方々にとってのセーフハーバーも一定程度必要と考えてございまして、25ページ目に反映いただいた点について感謝をしてございます。
また、精緻な業務を求めてくるのではないかという懸念が、実務者の企業側のほうにはございますけれども、ヨーロッパの先行している動き、あるいは他の国々で先行して行われているサステナビリティ情報の開示と保証の動きが資本市場にどういったインパクトを与えているのか、あるいは、それが企業価値の向上ですとか経済の競争力の強化にどういう貢献をしているのか、投資家の皆さんがそれをどうやって利用されているのか、そういったところを現実的に一度検証するステップがあってもいいのではないかと。その上で、我が国の制度としてどうあるべきかというところが議論されると、地に足のついた非常に効率的な制度がつくれるのではないかと考えてございます。
あとは、保証業務の実施者がどのような方であろうとも、品質の公平性とか任意性、そういったものを担保するのは必要であろうと思ってございます。その際に、25ページ目で資格制度の将来課題ということで、この将来っていつなんだろう、どれぐらい先なんだろうというところが読み取れません。有報での開示とありますが、万が一、開示と保証で問題が起こったときの法的責任について、その責任は何に基づいて問われるのかなと。資格がない中で、それがどういうふうに見られるのかというところは、非常に制度的には危ういという懸念があり、今一度整理をいただけるとありがたいと考えてございます。
27ページ目の自主規制機関の役割に関しましては、これは、PAとされるのかNon-PAとされるのかで異なる立てつけになろうかと思います。社会コストですとか実務負担、あるいは実践可能性等を見ていただいて、諸外国を参考にしながらつくっていただければと考えてございます。
また、29ページ目の全体像に関して、仮に自主規制機関がある程度の機能を担われるという場合に、罰則や指導などが当局からどのように行われるのか、あるいは世の中にどのように開示されるのか、そういったところも今後併せて検討いただければと考えてございます。
最後、32ページ目について、今、任意の取組を各企業のほうでいろいろ工夫をしながらやっているところですので、そういったものの萎縮につながらないように、ぜひ制度設計して頂きたいと考えてございます。なるべく開示に向けたインセンティブを、企業側あるいは保証実施者の方々が感じられる形で進めていただけると助かりますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。
【堀江座長】
どうもありがとうございました。
御発言の冒頭でアドバイスいただきましたワーキング・グループとの関係、私も大変気になっているところでございます。事務局とまた相談させていただいて、対応を考えたいというふうに思います。
それでは、日本公認会計士協会、よろしくお願いいたします。
【日本公認会計士協会】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。日本公認会計士協会の太田でございます。
何点かコメントさせていただければと思います。
まず、自主規制についてでございます。自主規制機関の役割につきましては、保証業務実施者の範囲がどう決まるか次第ではございますけれども、監査法人、また、公認会計士が当該業務に携わる場合には、サステナビリティ情報の保証についても、弊会の自主規制の範囲には含まれてくるだろうと考えてございます。
弊会の自主規制では、大きく2つの制度がございます。1つは、財務諸表監査を前提としたものではございますが、監査事務所の品質管理体制の整備・運用状況を確認・モニタリングする品質管理レビュー制度です。2つ目としましては、財務諸表監査であるかどうかは問わず、非違行為、違反の行為ですね、これを行ったと疑われる監査法人、公認会計士に対するモニタリングとしての個別事案審査制度を運用してございます。
今申し上げた2点目の個別事案審査制度は、個別の事案に係る指導・監督機能、処分懸念事案に係る調査及び審議、個別の事案に係る懲戒処分の実施、これを行う制度でございますが、この機能までを含めて、自主規制機関に期待される役割と考える必要があるだろうと思っております。
登録に関しましては、先ほど、原則として金融庁様で行うものという認識をお示しいただきました。上場会社等監査人登録制度では、登録事務は自主規制機関で行っておりますけれども、こういった立てつけを取らないまでも、登録に当たっては自主規制機関が行政機関を補完する役割を担うのか、必要な連携を行って進めていくことになるのか、こういった方向性については、改めて御確認いただきたいというふうに思っております。
次に、任意の保証でございます。任意の保証に関しましては、制度上の要件を満たした保証であれば、保証報告書を有報に添付することがよいと考えております。ただし、任意の保証であることや、保証主体、保証範囲、保証水準、手続、こういったものについては明記する必要があると考えております。やはり信頼性の確保という観点からは重要だと思っております。制度上の保証業務の要件を満たさないものに関しては、保証報告書は添付しないほうが混乱を招かないのではと思っております。
あと、開示情報と保証報告書がセットで開示されず、保証報告書、保証を受けた旨や概要のみを記載することについては懸念があると考えております。やはり保証の範囲や内容が明らかにされず、個々の保証業務に関する水準を情報の利用者が理解、評価することができない可能性がありまして、保証業務の発展を阻害される可能性があるのではと思っております。
以上でございます。
【堀江座長】
貴重な御意見、どうもありがとうございました。
他にオブザーバーの方、よろしゅうございますか。
それでは、本日、オブザーバーで御欠席の関経連から御意見をいただいております。皆様方のお手元に配付させていただいておりますので、お手元の資料を御覧いただければと思います。※
それでは、予定していた時間までちょっと残っておりますけれども、本日も様々貴重な御意見をいただき、誠にありがとうございました。
また、本日の議論を踏まえまして、次回以降さらに議論が深められるように、もう少し踏み込んだ論点も出せるように、事務局と相談しながら進めさせていただければと思います。
では最後に、事務局のほうから事務的な連絡等ございましたら、よろしくお願いいたします。
【犬塚開示業務室長】
事務局側でございます。
次回の専門グループの日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえた上で決定させていただきたいと考えておりますので、当方側からの御案内をお待ちいただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【堀江座長】
本日は極めてスムーズな議事進行にお力添えいただきまして、誠にありがとうございました。
それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。誠にありがとうございました。
―― 了 ――
※第2回サステナビリティ情報の保証に関する専門グループへの意見
令和7年3月21日
関西経済連合会 中島 宏
第2回の会合への欠席となりましたこと、深くお詫び申し上げます。意見書の提出について、下記のとおり報告いたします。
資料35ページの「ご議論いただきたい事項」につきまして、「サス テナビリティ保証業務実施者に求められる規律の在り方」と「任意の保証」に関して、4点申し上げます。
1点目は、資料27ページの「自主規制機関の役割」について、考え方には賛同します。ただし、サステナWGで示された「監査法人であるか、その他の保証業務提供者であるかにかかわらず同じもの」という方向性が提示されましたが、現状はその体制が確立していない状況です。そのような中、具体的に新たなサステナビリティ保証に係る自主規制機関をどのように設立するのか、どのくらい近い将来に可能なのか、そのコストは誰が負担するのか、について、具体的に資料で説明することが必要だと考えます。
2点目は、資料29ページの「サステナビリティ保証制度の全体像」について、全体像については賛同します。「保証の水準」について、限定保証となっておりますが、サステナビリティ保証については、これを継続するのが現実的です。その観点から言えば、今年2月に公表されましたCSRD等を改訂するオムニバス規則案のように「合理的保証への移行は行わない」ことを明記するべきと考えます。このオムニバス規則案は、欧州のサステナビリティ開示と保証の規則を現実的な方向に簡素化する案であり、国際的な影響力が大きいと思われます。
3点目は、資料32ページの「任意のサステナビリティ保証報告書の添付の可否」について、制度上の保証業務の要件を満たした保証を任意で受けた場合、制度上の保証業務で求められる質が担保されているため、サステナビリティ保証報告書を有価証券報告書に添付することが認められると考えられます。ただし、a.(保証範囲)の場合、保証が義務化されていないスコープ3について、任意で保証を受ける可能性があると想定され、その場合、法定の保証と任意の保証の両方を添付するのか、それとも法定の保証に任意の保証事項を追記するのかという課題があると考えます。
また、制度上の保証業務の要件を満たさない保証を任意で受けた場合は、そのサステナビリティ保証報告書を有価証券報告書に添付することは認めるべきではなく、「任意に保証を受けた旨を記載すること」も認めるべきではないです。これは、この保証が保証要件を満たさないこととサステナビリティ保証報告書を添付せずに「保証を受けた旨を記載すること」は利用者にミスリーディングな情報を提供してしまう可能性があるためです。
4点目は、資料33ページの「有価証券報告書以外の開示書類への影響」について、「有価証券報告書以外の開示書類は、引き続き、金融商品取引法の規制の対象外であるため、当該保証の要否等については、各企業の判断に委ねられるべきと考えられる」と記載がありますが、この点については賛同します。
最後に、最近、 欧州や米国で、サステナビリティ情報の開示と保証に関して、負担軽減の視点から見直しの動きが出ていますので、これらの海外の動向を踏まえて、作成者のコストや実務対応についても考慮したバランスのとれた議論をお願いいたします。以上のコメントについて、ご考慮をよろしくお願いいたします。
(参考)開催実績
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