金融審議会「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」(第3回)議事録

  1. 日時:

    令和7年4月17日(木曜日)9時30分~12時00分
  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【堀江座長】

定刻となりましたので、ただいまより、金融審議会サステナビリティ情報の保証に関する専門グループの第3回目の会合を開催させていただきます。

皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、本日の会議でございますけれども、一部の委員の方々がオンラインで御出席いただく予定でございます。本日の会議の模様も、これまでと同じようにウェブ上でライブ中継をさせていただきます。

なお、議事録でございますけれども、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。

また、本日の出席状況でございますが、上田委員が遅れての御出席と伺っておりますが、その他の委員の皆様方には、本日は全員御出席いただいております。

会議を始めます前に、事務局から留意事項がございますので、犬塚室長からお願いいたします。

【犬塚開示業務室長】

事務局を務めさせていただきます犬塚でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催となっております。オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される場合には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には冒頭にお名前をお願いいたします。

なお、対面での御参加の委員におかれましては、目の前にございますネームプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。その後、事務局が手持ちマイクをお持ちいたしますので、そちらのマイクを御使用いただけると幸いでございます。

【堀江座長】

それでは、これから早速、議事に移らせていただきますが、それに先立ちまして、一言、実は委員の先生方から、当専門グループの最終的な着地点と言うとちょっと大げさでございますけれども、どのような形で取りまとめが行われるのかという御心配の声をいただいております。これにつきましては、当専門グループはあくまでもワーキング・グループの下部組織でございまして、保証に関しての専門的な知見をワーキング・グループに対して提供する目的をもって、先生方から様々御意見をいただいているところでございます。

そういう意味で、もちろん専門グループでございますので、専門的なお立場から、これはどう考えるべきかということについてワーキング・グループに上げる必要がございますけれども、あらかじめ決め打ちをするようなことは、やはりこの専門グループの役割としてちょっと難しいところがあるかと思います。前回に引き続きまして、今回も少し踏み込んだところを事務局から御説明させていただきますので、様々、専門的な観点から御意見を頂戴できれば誠に幸いでございます。何とぞよろしくお願いいたします。

それでは、本日、事務局より資料の説明をしていただきました後で、その後、委員の皆様方から、質疑応答、討議という形で進めさせていただきたいと思います。

それでは、事務局、犬塚室長から御説明をお願いいたします。

【犬塚開示業務室長】

犬塚でございます。それでは、資料に基づきまして御説明させていただきます。

まず、1ページ目の目次を御覧ください。本日はこれまでにも御意見を頂戴しているところではございますけれども、保証業務実施者に求められる人的体制、自主規制機関、そして、任意の保証の3点について、さらに御議論を深めていただきたいと考えております。

次の2ページから8ページまでにつきましては、前回頂戴しました御意見をまとめた資料となっておりますので、御説明は省略させていただきます。

10ページを御覧ください。保証業務実施者に求められる人的体制に関する御意見と、それを踏まえた方向性を整理させていただきました。

資料左側、上から2つ目、当初は会計士資格や監査経験を中心に考え、組織やチームにそうした方が所属することを要件に含めるべき。

上から3つ目、専門性についてチーム単位で持つべきか、個人レベルで持つべきかという視点もある。

上から4つ目、財務に関連する事項を絞り込む点が重要。体系的な研修制度が必要。

上から5つ目、外部専門家を管理するサステナビリティ保証業務実施者にもサステナビリティの知識等が必要。そういった御意見を頂戴したところでございます。

こうした点を踏まえまして、資料右側のとおり、保証業務実施者として、人的体制については、一つ、サステナビリティ保証業務を実施する企業の数、規模、特性等を踏まえて適切な人材を確保し、適切に業務の構成員として配置すること。2つ目に、構成員の教育研修に関する方針及び手続を定めること。これらを要件としてはどうかというふうに考えられます。

次の11ページを御覧ください。資料左側、上から1つ目、サイナーには全般の知識が必要。上から2つ目、プロフェッションへの信頼の前提として個人の専門性要件は必須。少なくとも研修等が必要。

上から3つ目、保証の知識・経験に加え、財務諸表監査、あるいは財務会計基準の理解が求められる。

上から6つ目、リスクや機会の特定、重要性の評価、重要性評価のプロセスや内部統制の理解がとても重要といったような御意見を頂戴したところでございます。

こうした点を踏まえまして、資料右側のとおり、海外動向も踏まえ、業務執行責任者(サイナー)個人に求められる知識と能力を踏まえ、要件を具体化する。

上記の要件は、今後の海外における試験制度の動向も踏まえて将来見直すこととしてはどうかというふうに考えております。

12ページを御覧ください。前回も示させていただきましたが、御議論の前提となる保証業務を実施する体制のイメージとなっております。

資料下側のとおり、組織としての保証業務実施者の中で、A社担当、B社担当といったように、企業ごとに担当を分け、それぞれ業務執行責任者、サイナーを中心に、それを補助する構成員や内部専門家が配置される。そして、適宜、外部専門家を活用したり、他の保証業務実施者と連携すると、そういったイメージとなっております。

次の13ページを御覧ください。保証業務実施者に求められる業務管理体制につきましては、品質管理体制及び人的体制が含まれておりますけれども、そのうち人的体制については、サステナビリティ保証業務に係る専門的な知識・能力を担保することが重要ではないかと考えております。具体的には、保証業務を実施する個々人に対して知識・能力に関する要件を求めるのではなく、組織としての保証業務実施者に人的体制を適切に整備していただくことを要件とすることが考えられます。

そうした観点から、先ほどの御説明の繰り返しとなりますけれども、サステナビリティ保証業務を実施する企業の数、規模、特性等を踏まえて適切な人材を確保し、適切に業務を構成員として配置すること。業務の構成員の教育研修に関する方針及び手続を定めること。これら2点を保証業務実施者に対して求めることとしてはどうかと考えております。

他方で、資料の下半分になりますけれども、国際サステナビリティ保証基準であるISSA5000では、業務執行責任者を明示的に位置づけ、その役割や能力等について規定しております。そこでは、業務の品質の管理及び達成に対する全体的な責任を負い、業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与する。そういった役割が示されているほか、保証業務の技能・技法、職業倫理の理解、サステナビリティに関する知識・能力など、サステナビリティ保証業務を公正かつ的確に実施するための知識・能力が求められているところでございます。

これらISSA5000における内容とともに、前回御提案させていただきました考慮事項、つまり、企業が重要性のある情報に絞り込むプロセスや財務とのコネクティビティを含めて、サステナビリティ開示全体を広く確認できる知識・能力が重要。そういった観点から、業務執行責任者については、別途、知識・能力に関する要件を求めることとしてはどうかと考えております。

14ページを御覧ください。こちらはサステナビリティ開示全体を広く確認するために、業務執行責任者にはサステナビリティ開示・保証だけではなく、会計、監査、関連法規等に関する知識・能力も必要になるのではないかと考えられます。また、欧州CSRDでは、保証業務実施者に対して、サステナビリティ開示・保証の試験、実務訓練が要求されているといった状況になっております。

こうした点を踏まえまして、資料右下になりますけれども、保証業務の業務執行責任者の知識・能力を客観的に確認できるよう、公認会計士として登録されていること及び、サステナビリティ開示・保証に関する研修を履修すること。この2点を求めてはどうかというふうに考えております。

次に、少し飛びまして、20ページを御覧ください。自主規制機関に関する論点になります。前回頂戴しました御意見も踏まえまして、行政機関と自主規制機関の役割の在り方について整理させていただきました。資料の上半分になりますけれども、行政機関の役割としては、保証業務実施者が公正かつ的確に業務を遂行できるか否か、参入時に登録審査を行うこと、保証業務を実施する際に遵守すべき基準等を策定すること、保証制度の信頼性確保の観点から、保証業務実施者に対して調査や検査、処分を行うことが考えられます。

他方で、資料の下半分になりますけれども、自主規制機関につきましては、前回御議論いただいたとおり、保証業務の質の維持・向上、従事者の知識・能力の向上、従事者における高い倫理感の醸成・保持といった役割が期待されるところでございますので、そうした点を踏まえまして、具体的に保証基準、品質管理基準、倫理・独立性に関する実務指針等の整備、会員に対する教育訓練、保証業務に係る苦情対応、さらには、会員に対する指導的な機能の発揮といった観点から、自主規制の範囲内で会員に対して調査処分等を行うと、そういった業務を担うことが考えられます。

次に21ページを御覧ください。前回、自主規制機関の運営主体につきまして、リソースですとかコストといった観点から検討すべきとの御意見を頂戴しましたので、考え方を整理させていただきました。運営主体につきましては、既存の枠組みを利用するといった場合と、新たに設立するといった場合が想定されますけれども、資料の下側に記載しているとおり、それぞれメリット・デメリットを整理しております。こうした点を比較しつつ、効率性や費用対効果等の観点から、保証業務実施者において運営主体を検討することは望ましいというふうに考えております。

また、自主規制を担う組織自体は一つに限られるものではございませんけれども、保証制度の一端を担う自主規制機関については、最もふさわしい一つの組織を法令等で認定することを想定しております。

次に、14ページを御覧ください。任意の保証に関する論点になります。前回御提示させていただきました論点を再掲しておりますけれども、一番下に記載しております有価証券報告書以外、つまり、統合報告書等の開示書類における任意保証の場合につきましては、引き続き金融商品取引法等の規制の対象外であるため、保証の要否等については各企業の判断に委ねられるべきとの方向性で特段異論はなかったというふうに認識しております。

他方で、有価証券報告書における任意の保証の場合につきましては、次のページで前回の御意見を整理させていただきました。

25ページを御覧ください。まず、開示基準、保証基準、登録された保証業務実施者、これら3つの要件を満たす保証を制度上の保証というふうに呼ばせていただきましたけれども、この制度上の保証を任意で受けた場合につきましては、資料左側の1のところになりますけれども、制度上の要件を満たす場合は保証報告書の添付を認めるべき、保証報告書の添付を認める場合、信頼性の確保の観点からモニタリングの対象とすべきといったような御意見を頂戴しました。その右側に方向性を示させていただいておりますけれども、保証報告書を有価証券報告書に添付することを認める。保証業務実施者には金融庁の調査・検査権限等が及ぶというふうに整理させていただいております。

他方、制度上の保証の要件を満たさない場合につきましては、資料左側、2のところになりますけれども、制度上の要件を満たさない場合は保証報告書の添付を認めるべきではない。保証報告書を添付するのではなく、記載欄に任意に保証を受けた旨を記載すべき、その際、利用者が保証の概要を理解できる内容を記載すべき、そういった御意見を頂戴いたしました。

その右側にある方向性になりますけれども、保証報告書を有価証券報告書に添付することを認めない。企業が有価証券報告書に、任意に保証を受けた旨を記載する場合、義務化対象外の内容、保証業務実施者の名称、登録の有無、準拠した基準や枠組み、保証水準、保証業務の結果、保証業務の提供者の独立性等について明記するというふうに整理させていただきました。

これらの整理を基に追加の論点について御議論いただきたいというふうに考えております。

1点目でございますけれども、制度上の保証の要件を満たして保証報告書を添付する場合であっても、その企業のステータスを明確にするという観点から、例えば、時価総額5,000億円未満の企業で、本来は保証を受ける義務はないけれども、任意で保証を受けているといったように、どういった事情で任意の保証となっているのかについて有価証券報告書に記載してもらうべきかどうか。

2点目でございますけれども、保証報告書の添付が認められず、有価証券報告書で任意の保証に関する情報を記載する場合、有価証券報告書の他の情報と同様に、作成責任者である企業がまずは一義的に責任を負うというふうに考えるべきかどうか。

これら2点について御意見を頂戴できればというふうに考えております。

次の26ページにつきましては、今御説明させていただいた点をまとめた資料となっておりますので、御説明は省略させていただきます。

また、保証報告書という表現を使わせていただいておりますけれども、この保証報告書に記載すべき内容ですとか文例につきましてはISSA5000で示されておりますので、27ページから30ページに参考資料としてつけさせていただいております。

最後、32ページを御覧ください。本日、「ご議論いただきたい事項」でございますけれども、13ページで提示させていただきました保証業務実施者に求められる人的体制の整備、14ページに提示させていただきました業務執行責任者に求められる知識・能力、20ページで提示させていただきました行政機関と自主規制機関の役割の在り方、25ページで提示させていただきました任意の保証に係る方向性について御議論を頂戴できればというふうに考えております。

事務局からの説明は以上でございます。

【堀江座長】

ただいま、事務局から大きく3つの論点について御説明いただきました。1つ目が業務実施者の要件。これは人的な属性と組織的な体制ということになるかと思います。2つ目が自主規制機関です。自主規制機関といいますと限定されますので、自主規制の在り方そのものを含めて御意見をいただいても結構かと思います。それから、3点目が任意保証ということでございます。

この3つ、大きく論点をお示しいただきましたので、これに基づいてこれから委員の先生方から御意見、御質問等を頂戴する討議の時間とさせていただきたいと思います。

限られた時間ではございますけれども、原則全ての委員の先生方から5分程度で御意見等を頂戴したいと考えております。

なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで、事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。また、御発言を御希望される際でございますけれども、目の前にネームプレートがございますので、プレートを立てていただければ、私のほうから指名させていただきたいと思います。

なお、御発言の順番につきましては、オンラインで御参加の先生方もいらっしゃいますので、若干前後する可能性がありますことをあらかじめ御了解いただければと思います。

それでは、これから討議の時間に入りますので、どなたからでも結構でございます。御意見等頂戴できれば幸いです。よろしくお願いいたします。

それでは、井口委員、どうぞ御発言ください。

【井口委員】

御説明ありがとうございました。「ご議論いただきたい事項」に沿って意見申し上げたく思います。最初の13ページの人的体制の御提案については、賛同いたします。

2つ目の業務執行責任者に求められる知識・能力につきましては、公認会計士として登録されていることを要件とするということに賛同いたします。SSBJ基準がISSB基準と同様、財務会計基準の考え方をベースとしていることや、我が国の国際保証基準のベースとなるであろうIAASB、IESBAの策定する基準も、財務諸表監査の基準と整合性の取れた形で策定されること、また、これに加えまして、前回申し上げましたように、保証範囲が定量数値の保証から定性の保証、開示の保証にも広がり得ること。あと、企業価値の観点で重要性がある情報に絞り込むプロセスの確認を求めること。それから、保証において、その他の記載内容の通読義務が発生し、財務諸表を通読し、その保証で得た知識との相違の検討が求められること等々を考えますと、財務諸表監査を行う能力、経験が求められると考えておるからです。

3つ目の自主規制期間につきましては、これも前回申し上げましたが、利用者といたしましては、保証業務実施者の方をしっかり監督していただけるのであれば、どのような形態でも良いとは思っておりますが、効率性の観点から、可能な限り現状の財務諸表監査の枠組みの活用がよいのではないかというふうに思っております。また、今回、事務局案で提案されております業務執行責任者に求められる要件からいたしますと、なおさら現在の財務諸表監査の枠組みの活用がふさわしいのではないかというふうに思っております。

21ページで言いますと、左下の既存の枠組みを活用するということが望ましいと思っております。そうすると、これも利用者が言うことではないかもしれませんが、デメリットに記載の、所属する者以外の者が自主規制機関へ加入することに対する対応については、現実的な大きな課題になるのではないかというふうに思っております。

最後、25ページの任意の保証の論点についてですが、これも賛同いたします。あと、26ページに御記載のその他の論点のところとなりますが、論点2については賛同いたします。一方、論点1のaからcの記載の義務付けに関しましては、aは保証範囲を示しますので、情報価値があるということで、これについては賛同いたしますが、あと、bとcにつきましては、保証時期に関わらず、保証業務の要件を満たした保証を受けた場合には同等の保証であるべきと思いますので、そもそも開示していただいても情報としての価値が乏しいのではないかというふうには思っております。以上でございます。ありがとうございました。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、オンラインで御出席の弥永委員、御発言をお願いいたします。

【弥永委員】

発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。

事務局の提案のうち、まず保証業務実施者に求められる業務管理体制については賛同いたしたいと思います。しっかりした体制を整備すべきなのは、財務書類の監査と同じという面がございますので、この御提案の方向がよろしいと思います。

また、自主規制機関に関する部分については、今回、丁寧に分析していただいて非常によかったと思います。たしかに、コストとベネフィットあるいはリソースの問題に、どのように自主規制機関が対応していくのか、特にやはり対象企業が少ないという状況の下でバランスが取れるのかという実際上の問題はございます。けれども、今回の御提案の中で、金融庁は一つの自主規制機関を認定するとしている点は、一貫したエンフォースメントを確保する、どの自主規制機関かということによって、そのエンフォースメントが異なってくるとか、質が異なるということがないためには重要なファクターであろうかとは思います。

他方、最後の論点である、任意の保証については若干懸念がございます。もちろん任意の保証をできるだけ広く行ってもらうということが重要だ、そして、それを促進する制度であるべきというのはよく理解できるところではございます。しかしながら、制度上の保証業務の要件を満たさない場合に、事務局の御提案ですと、スライドの27ページの左下のところのようなことを書くとことが提案されていると理解したのですが、このような情報を書かせたからといって、サステナビリティ情報を読む側が、その情報にどの程度の信頼を置くことができるのかということを適切に判断できるのかどうかという点について、実はちょっと懸念がございます。

と申しますのは、たとえば無限定の結論が表明されておりますと書かれている場合には、そもそも、その結論表明の前提として制度上の保証業務の要件を満たしていないということなので、無限定の結論が表明されておりますという記載はミスリーディングな情報になりかねないのではないかという懸念もございます。つまり、消費者保護法などの世界における議論を踏まえてみると、制度上の保証業務の要件を満たさない保証が行われているケースについては、この保証はやはり制度上の保証業務の要件を満たしているものと違うんですと、そんなに信頼してもらっては困るんです、信頼することにはリスクがあり、それは自己の責任で判断してくださいというような警告文言を書かせなければならないという議論だってありそうな類型かもしれないと考えております。もちろん、最初に申し上げたように、任意の保証をどういう形であれ、やってもらうことを促進したほうがよいという政策的判断を優先するというのは十分にあり得る考え方だと思いますので、何らかの記載を有価証券報告書に含めることに必ずしも反対しているという趣旨ではありませんが、懸念はある、そして、記載を認めるときには一定の手当てが必要であるということを申し上げたかったわけです。

さらに、これとの関係で、論点2で、企業が責任を負うのだとされているのですけれども、企業はそもそも、サステナビリティ情報自体の虚偽記載について責任を負うのは当然なわけです。そうすると、任意の保証に関する開示情報について企業が責任を負うとしても、それは具体的にはどういう内容の責任が実際には追加されると考えられるのかという点がちょっと気になっております。企業がそういう責任を負うから保証業務実施者が責任を負わなくてよいとまでは、この御提案には書かれていませんけど、保証業務実施者自身もやはり有価証券報告書にその結論などを企業が記載することに、言わば許諾を与えているということである以上は、保証業務実施者はサステナビリティ情報の利用者に対して、この類型であっても責任を負うというほうが、やはり制度として、立てつけとしてよいのではないかという気がするのです。

非常に雑駁な感想と申しますか、意見でございますが、よろしくお願いいたします。

【堀江座長】

弥永先生、どうもありがとうございました。

それでは、引き続き御意見等頂戴したいと思いますが、いかがでございましょうか。

では、藤本委員、お願いいたします。

【藤本委員】

会計士の藤本でございます。御説明ありがとうございます。私も幾つかコメントさせていただきたいと思います。まず、今回の資料を拝見した全般的な印象ということで、座長から冒頭お話ございましたけれども、今の検討状況で想定しているロードマップのスケジュールに間に合うのかというのが若干気になったというところでございます。

先日も欧州等の国際動向を踏まえても、我が国の現在のロードマップを遅らせるということではないのではないかと私も考えているところですけれども、そこに向けては一定の制度化のための法令の手当というものも必要になってきますので、特に保証の議論をここで検討したものを基に法令化していくと理解していますので、論点はより具体化をして、ここで議論を進める必要があるのではないかと考えた次第であります。

また、担い手がまだはっきりしていないということは承知しておりますけれども、国際動向を踏まえますと、監査法人が保証業務提供者のメインプレーヤーになっているということは明らかでございますので、やはり監査の体制と比較しながら、保証業務の体制、どうあるべきかというのを明示していくと、より具体的な議論を深めることが可能になるのではないかと思っています。

これは全体的なコメントでございまして、個別の論点についてもコメントをしたいと思います。まず13ページ目のスライドで、保証業務実施者に求められる人的体制の整備でございますが、こちらは基本的に異論ございません。保証業務の実施者を検討する上では、組織、それから、チーム、それから、サイナー、それぞれに必要な要件というのがあると思いますので、その要件を具体的にどこで規定していくのかということも併せて御検討いただけたらと思います。

また、スライド14ページ目のところになりますけれども、ここで業務執行責任者に求められる知識・能力、これも記載の方向で異論はございません。ここで登録要件とあるのですが、基本的に登録するのは保証業務実施者を組織として登録をするのではないかと思っておりましたので、個人を登録することになるのかどうかというのがちょっと理解が及んでおりませんでしたので、その点、もし理解が異なるようであれば、御指摘をいただければと思います。

続きまして、自主規制機関と行政機関の役割の在り方ということで、20ページ目のスライドでございます。御説明いただきましたとおり、上下に分けて記載いただいているところですけれども、登録とかモニタリングに自主規制機関がどのように関与していくのかということが、上下、分かるように御記載いただけると、役割分担がより明確になってくるのかと思っております。この時も、できれば会計監査の状況と比較するような形でお示しいただけると、会計監査とサステナビリティ保証の違いというものが明確になると考えております。

それから、次の21ページ目のスライドでございますけれども、こちらのスライドはなかなか理解が十分に及んでいないところですけれども、複数の属性の保証業務提供者が保証を実施することを想定した時に、イコールフッティングを想定すれば、一つの自主規制機関で運用するというのはそのとおりだと思っていますけれども、その場合は、既存の枠組みを利用するというのは結構難しいなと思っています。例えば会計監査にある会計士協会を自主規制機関として置いたとしますと、監査法人以外の保証業務提供者を含む自主規制機関になるということは難しいと思いますので、実質的には新たに設立するという方法しかあり得ないのかと思っている次第でございます。

また、ここの記載ぶりのところで、認定された自主規制機関以外にも自発的に自主規制を行う組織を設立することを妨げるものではないとか、自主規制機関の運営主体について、保証業務実施者において検討されることが望ましいということで、立てつけ上は自発的に設立される組織、団体と思いますが、保証の品質の信頼性確保のためにはやはり行政機関と連携して、それぞれの役割を担うことで、それを進めていくということでありますので、それは制度としてどういう設計をするかということなので、それ以外に設立してもよいというのはここで議論する話とは少し違うと思っており、このスライドに関しては少し違和感があったというところでございます。

最後、任意の保証についてのコメントでございます。論点1と2がありますけれども、最初の論点1のところは、財務諸表監査の経理の状況の冒頭記載に、法律の根拠条文が書かれていると思いますので、利用者の方が分かりやすく御理解がいただければそれでよいと思います。イメージとしては、サステナビリティの情報を記載する章の冒頭記載のところで根拠条文と併せて示していただいて、例えば保証の範囲ですとか、制度外であるとか、そういう情報が必要であれば補足をいただくという形がよろしいのではないかと思います。その際に、保証報告書で何が書かれるのかということも併せて御検討いただければと思います。

それから論点2に関しましては、開示情報を一義的に企業が責任を負うというのはそのとおりかと思っております。また、制度上の保証業務の要件を満たした場合に、早期に任意の保証を開始したいというニーズもあると認識しておりますので、冒頭申し上げたとおりですけれども、早期に任意の保証も可能となるようなスケジュールで、できれば保証の制度化の議論を早急に進めていただきたいと考えております。

私からは以上でございます。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、引き続きまして、関口委員、よろしくお願いいたします。

【関口委員】

ありがとうございます。それでは、14ページからお願いします。まずサイナーの話ですが、この議論を進めていく中で、担い手が決まらないと全てのことが決まりにくいと、非常に議論が難しいというふうに思っています。また、保証の担い手の議論は保証対象の企業、保証を受ける対象の範囲とも関連しますが、そこが今、揺れてしまっているため、金融庁さん、事務局も非常に苦労されているんじゃないかなと思います。ここで書かれていることは、少なくとも大手の企業を前提に置くのであれば、おのずと監査法人がやることになるんじゃないか、それは欧州の経験からもある程度明らかであるという考えで書かれているのではないかと思います。こういった形で規定していくというのであれば、公認会計士として登録されていることを要件とするというご提案は理解できるなというふうには思います。ただ、先ほど冒頭のところで、堀江座長からもお話あったんですけれども、恐らく専門グループとしての考え方、こういった前提で考えたというのはお示しいただいたほうがよいのかなとは思いました。保証における対象企業をどのように想定して、それを考えると、こういったことが合理的と考えられるんじゃないかという説明は、非常に重要なところかなというふうに思います。

その前提で13ページに戻ります。実務的には、少なくとも大手の企業のサステナビリティ情報の保証業務を前提とするのであれば、監査法人がやっていくのが通常考えられるんだろうと。そうすると、13ページの業務管理体制の定めのところで、やはりこれは公認会計士法の業務管理体制の定めと対比しながら検討していく。とりわけ公認会計士法の第34条の13で、業務の執行の適正性確保、品質管理の方針の策定実施、それから、会計士以外の方がこの業務に不当な影響を与える影響力の排除というのが業務管理体制の要件として明示されていますので、そこに加えて何が必要なのかというのをちょっと検討いただいたほうがよいんじゃないかなというふうには思いました。

その上で、14ページにまた行きまして、そうすると、今の話で、これは公認会計士が署名する、サイナーになるということを前提とすると、やはりこれはどちらかの段階で、監査法人が担い手になれる、公認会計士法上、監査法人で、子会社ではなくて、監査法人が担い手になれるということをやはりはっきりさせないといけないのかなとは思います。これは実務上、今、幾つかの監査法人ではなくその子会社がやっているというのがありまして、それはここで書かれている前提とも違ってきちゃうのかなと思いますので、そこはぜひ明らかにしていただきたいなと思います。その上で、さらに14ページの下のところで、これは会計士になるためには会計監査に関する実務経験等が必要で、ここでサステナビリティ情報の保証の研修は必要とされているんですけども、実務経験が必要とされていないのがちょっと変かなと思いまして、これは多分加えていただいたほうがよいんじゃないかなと思いました。

それから、20ページに行きますと今度、登録、検査等が書かれているんですけども、登録のところで、まずこれは金融庁さんに登録することを要件とされています。しかし、監査法人を前提とすると、監査法人は公認会計士協会に登録していて、それを踏まえると明らかにダブルになっちゃうなというのはありまして、これもどこかの段階で、担い手のところがはっきりしてきたら改めて検討いただいたほうがよいんじゃないかなと思います。それから、同じく検査のところも、調査、検査を行うというのは金融庁が行うように書かれているんですが、これも現実的なのかなというのが率直なところ、特に検査のところが現実的なのかなというのはちょっと思っています。これは、公認会計士・監査審査会にやっていただくのか、あるいは自主規制の機能をより発揮いただくのか。そこもこの担い手の議論と並行して、明らかにしていく必要があるんじゃないかなと思っています。

それから次に21ページのところに行きまして、これも保証業務実施者において自主規制の件が検討されることが望ましいとなっているんですけども、自主規制機関が行政機能の一部を負うということを想定されていることを踏まえると、やはり金融庁さんがある程度リードしていかないと、なかなかうまく決まらないんじゃないかなとは思っています。

それから、24ページの論点については、各企業の判断に委ねるということは、これはそのとおりなんだろうと思います。

今度、25ページに行きまして、任意の保証に関して開示する情報で、論点1、2とあるんですけども、開示いただきたいという内容を見ると、この保証は制度上求められているものではないということ以外は全て保証報告書に書かれていることと同じではないかと思っています。基準設定自体のIAASB等での検討においては、どういうことを書いておけば利用者にとってミスリーディングにならないのかという観点から基準が開発されていたんじゃないかなとも思っています。このため、保証報告書のオーバーリライアンスというものと、あと、責任の明確化というのをどう考えるかという観点から、保証報告書によいことが書いてあるのであれば、それをそのまま載せていただいてもよいんじゃないかなとも思いました。

あと、開示情報について、論点2のところで、一義的に企業が責任を負うというのは、それはそのとおりかなと思っています。

私から以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、会場から、筒井委員、御発言いただけますでしょうか。

【筒井委員】

ありがとうございます。日本郵船の筒井でございます。毎度、論点の整理、本当にありがとうございます。いつも申し上げていることではありますけれども、企業といたしましては、非財務情報を積極的かつ効率的に開示することで、社会やマーケットからの信頼を得ると同時に企業価値を向上させたいという思いでございますので、サステナビリティ情報の保証についても、これまでのディスカッションで、たしかプラグマティックという表現をいただいていたと思いますが、現実的な対応が可能な、企業にとって過度な負担が強いられないような仕組みというものを構築していただきたいというのが基本のお願いでございます。

以降、御提示の各ポイントについて意見を述べさせていただきます。

まず、人的体制の整備についてですけれども、資料12ページにございますように、保証業務実施者側で、外部専門家の活用も含めて、体制、これはチームで対応するということかと理解しておりますので、財務情報と非財務情報の性質、それから、確からしさのレベルの違いに対応する意味からも、それから、比較的短期間に保証業務に従事する人数を確保する観点からも、専門性に応じて適切な人材を配置するということに、事務局案に賛成したいと思います。

ただいま藤本委員から、体制整備のスケジュール感に御懸念が示されましたけれども、前回の会合で、たしか田辺委員から御提案いただいたような内部専門家、特に内部監査部門の手続、結果の活用についても取り入れる方向で前向きに検討されてはいかがかなと思っております。

それから、サイナーに対してということでございますけれども、御提案の内容だと、私もちょっと素人で見ますと、もうサイナーは公認会計士にほぼ限るというふうに読めまして、Non-PAの方の参加のハードルが上がってしまうかなと。なので、条件が厳し過ぎるのではないかとちょっと懸念しております。財務会計とか企業法の知識は必要でしょうけれども、例えば会計士試験の一部科目の合格とか、対応する学部の卒業とか要件を緩和することもお考えいただければと思います。

そういうところのポイント、能力とはまた異なる視点からのコメントで恐縮なんですけれども、企業側といたしましては、このサイナーの役割として、財務諸表監査の業務とサステナビリティ保証業務の違いに十分留意していただいて、その間のコーディネーションをスムーズに行っていただくということが大きなポイントになるかと思います。適時適切なコミュニケーションの機会を持っていただくということを義務づけてくださらないかなと。これは何かCSRDでは類似の規制があるというふうにちょっと報告を受けておりますので、述べさせていただきました。

それから、行政機関と自主規制機関の役割の在り方、事務局の御提案の方向性に全く同意でございますけれども、新しい自主規制機関というのは、指針の作成等で作業が遅れるとか、品質の疑義も生じることも考えられると思います。となると、やはり結果として依頼した企業側に実務上の負担が生じる懸念があるのかということであれば、既存の団体さんが果たす役割は非常に大きいと考えるので、準会員とか、そういった方法で御参加いただくなどの前提も必要になってくるかと思っております。

最後の任意の保証についてでございます。企業にとっては、有報は投資家に私たちの活動について御理解いただく貴重なツールでございます。なので、積極的に開示に取り組みたい企業といたしましては、むしろ義務化対象以外の情報も企業価値向上のストーリーに資する情報として、例えば保証のレベル感を明示した上で、可能な限り記載したいと考えております。これは多分、今後、有報が高度化していく方向になると思うんですけれども、それにもつながると思っております。

先ほど懸念が示されましたが、虚偽記載によってダメージを受けるのは、結局、企業自体なので、そこら辺は論点2にもございますけれども、企業が一義的に責任を負うことだと考えていただければ非常にシンプルではないかと考えております。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き、オンラインで御参加の林委員、御発言をお願いいたします。

【林委員】

ありがとうございます。関西学院大学の林です。発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。まずは、本日の議論に当たって、サステナビリティ保証業務実施者に求められる規律の在り方を考えるに当たっての私の基本的な考え方を簡単に申し上げたいと思います。

私は、前回、前々回の会議でも申し上げましたとおり、サステナビリティ保証業務実施者は、公認会計士、監査法人に限定したほうがよいという立場を取っております。ただ、もし例えば競争政策の観点から、会計士、監査法人以外の保証業務実施者、便宜上、Non-PAと申し上げますが、その方々も保証業務実施者に加えるというのであれば、現在提示されているサステナビリティ情報の開示・保証のロードマップを念頭に置いて、制度発足時は対象企業数、それから、規模の観点から、公認会計士、監査法人のみを保証業務実施者として、将来、プライム上場企業全てに対象を拡大するまでに、Non-PAも保証業務実施者となれるように制度を整備するということが考えられるかなと思っております。

ただ、今回の制度化に当たっては、保証業務実施者を会計士、監査法人に限定するかしないかにかかわらず、規制の枠組みは分ける必要がありませんので、一つであるべきと考えておりまして、また、金商法に基づく有価証券報告書の記載情報等に関する保証業務であることから、そこでの規制の枠組みというのは、会計士、監査法人による監査証明業務に関するものと同等であるべきだと考えております。

以上を踏まえて、本日の論点についての意見を申し述べます。

まず1つ目の人的体制の整備ですけれども、登録要件に人的体制を含めることについて賛成いたします。どうしてもこの段階では抽象的な書き方にならざるを得ませんので、具体的な制度化に当たっては、現行の公認会計士、監査法人制度を参考にしていただければと考えています。

次に、業務執行責任者に求められる知識・能力、14ページですけれども、当面の対応として提示された方針に賛成いたします。

それから、本日のこの場で申し上げるには論点がちょっと小さいかもしれないんですけれども、研修の単なる履修ということが右下のところに書かれておりますが、さすがに履修だけでは不十分ですので、達成度の確認は必須と考えております。その意味では、将来的にはNon-PAに保証業務実施者を開放する場合も含めて、公認会計士試験制度の見直し、あるいは新たな認定制度の創設というのが検討課題になるかと思っております。

3つ目の行政と自主規制機関の役割の在り方ですけれども、御提案の内容は現在の枠組みを念頭に置いたものと理解しております。ここに示されている役割については、それぞれの役割については賛成をいたしますが、これまで何度も出ておりますとおり、社会制度としてのコストベネフィット、導入時のコスト、運用上のコスト等を比較考量すべきと思っております。それから、もし制度発足時点で、将来的にNon-PAの方々も保証業務実施者となることを認めるという方針を取るのであれば、新たな自主規制機関を最初からつくっておくということも視野に入るかと思っております。

最後の任意保証のところですけども、つい先ほど関口委員がおっしゃったことに似ているんですけれども、保証報告書に当該保証業務に関する事項というのは様々記載されていますので、そのことを踏まえた上で、想定利用者が任意の保証であるということを理解するために必要な情報としてA、B、Cを書く、それから、制度上の保証業務の要件を満たしたサステナビリティ保証であるというようなことを書く、こういうことが必要になるかなと思っております。

私の意見は以上です。ありがとうございました。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、森内委員、御発言をお願いいたします。

【森内委員】

御指名ありがとうございます。私からは、3点、保証業務実施者に求められる人的体制の整備、それから、業務執行責任者に求められる知識・能力、それから、自主規制機関の位置づけ、この3点について意見を述べさせていただきます。

まず、保証業務実施者に求められる人的体制の整備、これは13ページになるかと思います。この中で、前回提案の考慮事項という右側の点線の中の記載内容のニュアンスについては、若干気になりました。前回提案の考慮事項というのは、これは前回の資料、事務局資料の25ページと認識をいたしますが、ここでは業務管理体制として職業的専門家としての能力、経験等のうち、一定のものを有するものを備えることとなっておりました。また、前回示された考慮すべき事項は、サステナビリティ保証制度を検討するに当たって考慮すべき事項として、現行業務とサステナビリティ保証業務の違いという視点から、考慮すべき事項とされていたものと認識しております。したがって、この点線の中の記載については、前回提案における考慮事項の意図を正確に引用しているとは、私には思えませんでした。

それから、財務とのコネクティビティ、この知識と能力が重要であるということは、言わずもがなですが、これを業務執行責任者を含む業務チーム全体に求められる知識・能力か、あるいは個々のメンバーに求められる知識・能力かについての議論と検討を経ることなく、業務執行責任者だけを特定して要件の案を示すということに関しては、性急感と違和感を感じました。

ちなみに、ISSA5000が要求しているのはこのページの欄外に記載されているとおりでございまして、それから、IAASBと認定機関の国際組織であるIAFがLOIを締結し、認定されたISO検証機関が保証業務の担い手になる場合、このISSA5000を適用基準とするという方向で検討が進んでいるということは、前回でもお伝えしたとおりでございます。

次に、業務執行責任者に求められる知識・能力ということで、14ページ、まず左側のほうですが、会計に関しては、総論として違和感はないんですが、これも業務執行責任者を含む業務チーム、メンバーそれぞれに対して、どの程度のレベルを求めるのかについて丁寧に議論をした上で、合理的に判断すべきかと考えます。

それから、監査、これは括弧の中をよく読みますと、何々を含むというふうになっているので、読み方によっては財務諸表監査についての知識・能力を求めているようにも解釈ができますので、適切ではないと考えました。前回の会合で整理して示された保証業務の概念、それから、保証と監査の関係、監査とサステナビリティ保証の違い、それから、合理的保証、限定的保証などを再確認した上で、監査全般、保証全般だけでなく、サステナビリティ保証業務において、業務執行責任者に求める能力、知識について再整理することが適切であると考えます。

それから、法規と、開示・保証のところですが、これも何々等になっているところが多いと感じました。専門グループとしましては、もう少し深掘りしていく必要があるのではないかと思います。例えばGHG排出量など、気候関連のデータの妥当性を評価するためには、環境関連の様々な法域における法令や規制、国内ではSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)であったり、GX-ETSであったり、こういった制度に関する理解も必要であると思います。そういった意味で、対象となる法規制、制度をリスト化した上で、業務チーム総体として何を備えておくべきかということを議論する必要があるのではないかと思います。

それから、右側にございます登録要件案については反対いたします。理由は、前回までに整理したサステナビリティ保証業務の担い手に求められる知識と能力をはるかに上回るハイスペックとなっているだけでなく、個々の業務チームメンバーもしくはチーム総体で備えるべき能力についての議論や整理を経ずに、業務執行責任者に限定した内容になっているからです。

そもそも専門グループでは、profession-agnostic制度であることを前提に保証業務実施者に求められる規律の在り方、保証業務の同等性について様々な角度から比較し、議論してきたところであります。示された案では、サステナビリティ保証業務に参入しようとする監査法人以外の法人による事業参入を事実上制限する可能性が高いと思います。profession-agnosticな制度をつくるのであれば、一部の要件がある担い手だけに有利になったり不利になったりすることなく、健全で公正な競争環境を構築し、維持する制度である必要があり、これが品質を維持し、保証利用者の信頼につながる重要な点であると考えます。

最後に、自主規制機関の位置づけ、20ページ、21ページでございます。

財務諸表監査の枠組みを参考にすることそのものに異論はございませんが、モニタリングとコントロールの手段の選択肢を自主規制のみにして議論を続けることには、違和感がございます。

例えば、資料15ページですか、フランスのように第三者機関による認定制度をうまく制度に組み入れることで、モニタリング機能を強化して品質を維持する枠組みも、参考に検討すべきと考えます。

サステナビリティ保証業務、提供者の適合性評価、能力証明の枠組みを自主規制に限定すること、また、自主規制機関を1つに限定した場合、監査法人以外の法人による事業参入を制限することにつながらないかという点について、懸念がございます。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、他の委員の先生方、いかがでございましょうか。

それでは、甲斐委員、どうぞ御発言ください。

【甲斐委員】

発言の機会をくださりありがとうございます。公認会計士の甲斐です。私からは、25ページの任意保証の論点に絞って、少し具体的にコメントさせていただきます。

まず、論点①については、義務化対象外であることを記載する必要はあると思います。

ただ、この点、制度保証の根拠条文の内容と、それから保証報告書の記載と併せて検討したほうがよいと思います。

というのは、サステナビリティ報告の場合も、有価証券報告書の中で、財務諸表に関する経理の状況の冒頭記載と同様に、例えば、「当社は××法第×条の規定に基づき、連結会計年度のサステナビリティ情報に含まれるScope1・2、ガバナンス及びリスク管理に関する情報については、Aファームにより保証を受けています」というような形で、制度保証の根拠条文を記載することになると理解しております。

ですので、bつまり義務化対象企業が、義務化開始時期よりも前に保証を受ける場合と、cつまり義務化対象でない企業が保証を受ける場合というのは、経理の状況の冒頭記載に相当する部分で「××法第×条の規定に基づき」という記載がされない、もしくは、「××法第×条の規定に準じて」というような記載になる結果、自然に任意保証であるということが示せるのではないかと思いました。

それから、aつまり義務化対象企業がScope1・2、ガバナンス、リスク管理以外の保証を受ける場合は、制度保証の根拠条文において制度保証の対象が明示されるのであれば、例えば、「当社は××法第×条の規定に基づき、連結会計年度のサステナビリティ情報に含まれるScope1・2、ガバナンス及びリスク管理に関する情報について、Aファームにより保証を受けています。加えて、Scope3に関する情報について、Aファームにより保証を受けています」というような記載にすることによって、義務化対象外がどこであるかを示せるのではないかなと思いました。

加えまして、根拠条文と保証対象というのは保証報告書の中でも記載されると思います。ですので、保証報告書の記載とも平仄を合わせた議論が必要になると思います。

この点、資料の27ページで、ISSA5000をベースにした限定的保証報告書の文例を参考資料として含めていただいています。これは記載いただいたとおり、企業が公表するサステナビリティ保証報告書に含まれる、全ての情報が保証対象である文例だと思います。ですので、限定的保証の結論区分の2番目の文章では、保証対象が単に「サステナビリティ情報が」と記載されています。

一方で、我が国で想定されているように、企業が公表するサステナビリティ情報の一部をまずは保証対象とするという場合は、左側で記載いただいているとおり、有価証券報告書に含まれるサステナビリティ情報のうち、どこが保証対象なのかを保証報告書で明示することが求められます。

したがいまして、今回お示しいただいた任意保証の論点を議論する際は、我が国において想定される保証業務を前提に、保証報告書に具体的に何が記載されるかを踏まえて、それと平仄を合わせる形で、有価証券報告書に何を記載する必要があるかを、全体を見た上で検討するという必要があると思いました。

それから、次の論点②に関して、開示情報については、企業が一時的に責任を負うと考えます。

なお、スライドの26の左下の箱で、任意の保証に関して開示する情報の最初に、義務化対象外の内容として、「上記aからc」と記載いただいているのですが、このaからcというのは、制度上の保証業務の要件を満たす場合における任意保証の類型ですので、制度上の保証業務の要件を満たさない場合の開示を、これと同様の記載とするというのは適当でないように思いました。むしろ、制度上の保証業務の要件を満たさない任意の保証であるということを明示した上で、保証対象情報の範囲等が明示されるようにしたほうがよいように思いました。

この辺、もしかすると冒頭のほうで弥永先生がおっしゃったようなコメントと、少し類する部分があるかもしれないと思います。

私からは以上になります。ありがとうございます。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

極めて専門的な観点から、細かい御指摘をいただきありがとうございました。もし、時間が余れば、再度、御発言の機会があるかと思いますので、もし、他の論点等についても御意見があればお願いいたします。

それでは、浅川委員、御発言いただければと思います。

【浅川委員】

御指名いただきましてありがとうございます。JQA(日本品質保証機構)の浅川でございます。また、資料を御説明いただきましてありがとうございました。私からも、御議論いただきたい事項に基づきまして、32ページに記載されております考慮すべき事項4点、それぞれコメントさせていただきたいと思います。

ちょっと順番が前後しますが、まず、25ページの任意保証についての方向性につきまして、この方向性の検討をする時の一つの視点として、以前もコメントさせていただいたかもしれませんが、やはり任意の保証を事業者さんがやることのメリット感ですとか、あるいは保証という手続が世間に広く理解されて、やはり保証つきのデータの開示というのは非常に大事なんですよと、というような視点から見ると、むしろ任意の保証というのが広がるというのは、やっぱり意味があることなのかなと思っております。

そういう視点で、今回いただいた事務局様の御提案を拝見しますと、今は法定制度の検討なのでしようがないのかもしれませんが、やはり任意の保証を有価証券報告書に添付した場合、金融庁様の監督権限、検査権限という規制目線といいますか、そういった取扱いのみの印象を受けてしまうということで、その枠組みだけの場合、事業者さんにとって、果たして任意保証を広げていくという方向につながるのかなというような感じを受けました。

ですので、今回の御提案の範囲であれば、やはり任意保証は有価証券報告書には添付しないで、有価証券報告書上の記載にとどめるべきではないかなと思いました。

その際、企業様の責任ということですが、先ほどもお話がありましたが、基本的には開示した責任の最終的なところは企業様のところに戻ってくるのかなという感じが私もいたしますが、いわゆる保証の枠組みとしての二重責任ということで、一定程度の責任はもちろん企業様が負われますけれども、有価証券報告書上の責任と併せて、この責任の議論が深まってしまいますと、そもそも、先ほど話した任意保証をあまりやらなくなってしまうというところもあるのかなということが、ちょっと懸念されたところでございます。

次に、自主規制機関のところ、20ページのところでございますけれども、行政機関の役割、保証業務実施者の登録ですとかモニタリング等々、それから自主規制機関の役割、実務指針の策定や教育訓練等々という分担については、事務局様の御提案に賛同いたします。

さらに言えば、やはり非財務情報の中で、直近最も重要な情報と考えられるGHG排出量情報については、先行してこれまで実施されてきた各種制度がございますが、そういった中では、やはり正しい排出量情報を確定するという中で、一定程度それぞれの制度管理者さんの関与、具体的に言えば結果のチェックといったようなところが実施されてきております。

今回御提案の中では、そういった機能が、行政機関さん、自主規制機関さん、いずれもあまり書かれていないように思われまして、想定されている保証水準が、既に始まっている各制度のクレジットベースの合理的水準よりは低位であるということなのかもしれませんが、やはり、コネクティビティを検討する際にも、GHG排出量情報がまず正確であるということはとても大事なことではないかと思いますので、これまでの制度の状況等も少し調査等をされて、検討の素材に上げられるとよいのではないかなというふうに思いました。

一方で、自主規制機関を1つのみに認定するというところについては、これまでの法令に基づく部分でそういう流れだったというのは承知しておりますが、若干気になるところはあり、というのは、やはりサステナビリティ情報というのは非常に幅広い情報ですので、そういう意味で、色々なところに得意・不得意を持った自主規制機関というのがもしかしたら設立されるかもしれませんので、それを上手に使いこなしていくというような目線で登録をしていくという考え方もあるのかなというふうに思います。

それから、保証業務実施者の人的整備、13ページのところですが、サステナビリティ保証業務を公正かつ的確に遂行するに足る人的体制を求める登録要件ということで、記載されている内容については、事務局様の御提案に賛同いたします。

ISOのほうでも、認定基準である14065、あるいは17029、あるいは14066等々、いわゆる組織・機関としての責務とともに、それぞれのチームとしての機能、あるいは検証人としての専門性、役割というようなところが特定するというところを求められてございますので、こういった特定は必要かなと思います。

それらの基準では、業務執行責任者に対する要件というものも求められているので、そういった要件を検討する必要はあるとは思いますが、一方で、4点目になりますが、業務執行責任者に関して、14ページですが、具体的な要件を公認会計士資格のみに限定するということになると、ちょっとそれについてはいかがなものかなというふうに思います。

今日拝見した資料では、一応その後ろのほうに、「またはこれに準ずること」ということで、事前説明をいただいた資料から少し変わっているところがありますので、そういう意味では、少しのりしろができたのかなというふうには理解しておりますけれども、事前説明で頂いた資料はもう「公認会計士とする」というふうに書かれておりましたので、限定するということに対しては反対をいたしたいと思います。

13ページにお示しいただきましたとおり、ISSA5000では、業務執行責任者が有すべき適性ということでは、保証業務の技能・技法というのももちろんそうですけれども、同等に、サステナビリティについての十分な適性というのも必要になっておりますので、片方のみを資格要件ということで限ってしまうというのはいかがなものかと思います。

また、15ページで示されている欧州制度でも、フランスの場合でいえば、法定監査人とともに、その他の保証業務提供者向けのCOFRACでの認定等が併用されているというところでありますし、先ほどもちょっとお話が出ていましたが、この専門グループの親委員会の在り方検討会でのこれまでの議論というところで、その他保証業務提供者の活用という趣旨、あるいは、事業者さんの保証業務提供者の選択肢というところから見ても、懸念があるかなと思います。

前回の議論にもあったかと思いますけれども、オムニバス法案が提出されている現状、それから第4回の親委員会である在り方検討会の資料の33ページで、現状、時価総額5,000億円以上の企業の約6割というところ、日本の中ではその他の保証業務提供者がScope1・2の保証を受けているというところを考えますと、日本の制度設計について、その他の保証業務提供者も含めた、制度の立てつけの検討というのを丁寧に議論するというところは必要なのかなと思います。

御参考までに、これまで、民間ですけれども、非財務情報審査について先導的役割を果たしてまいりましたJ-SUS、サステナビリティ情報審査協会という組織団体がございますが、こちらの資格要件では、公認会計士資格に限定せずに、例えばISO 14001の主任審査員であることのいずれかという要件も書かれておりますし、また、サステナ関係の法定資格ということであれば、非財務情報の中の一番重要なGHG関係、今回の保証対象ともされているScope1・2というところです、東京都制度の検証主任者といった資格もありますから、そういったところも活用を検討されるとよいではないかと思いました。

私からのコメントは以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、岡崎委員、オンラインで御参加いただいておりますでしょうか。途中退室というふうにお伺いしておりますので、もし御発言があれば、今伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。

【岡崎委員】

発言の機会をいただきましてありがとうございます。岡崎でございます。

今回のサイナーのところ、14ページですか、この右側の要件として、公認会計士として登録されているということが要件になってくると、Non-PAで参加するところ、あるいは参加できるところというのは限定したもの、あるいはほとんどできない形になってくると思います。

例えば欧州のCSRD規則においては、独立した保証業務実施者がサイナーとして認められているということはCSRDの第1項に明確に規定されておりますし、フランスでは、非監査法人による証明が認められており、私どももそのような準備をしております。

実際に、議論全体が金融庁、あるいは金商法だとか有価証券報告書という枠組みの中で議論されているので、このような公認会計士に限定をするという意見もよく理解できるのですが、それと同時に、多くの大手の企業が会計監査法人を使用しているというのも事実だろうと思うんですけども、選択肢として排除してしまうと、日本の例えばGHGの検証を、50%以上のところが会計監査法人以外でやっているようなことも、今後、有価証券報告書の枠組みの中では使えないことになってしまいますので、色々な障害が出てくる可能性もあると思っています。

ですから、広い形での議論が必要なのではないかというふうに考えているのと、ISSAの5000とかIESBAの様々な基準をつくる時に議論された中で、もちろんコネクティビティということがとても重要で、それがどういうふうに財務に影響があるのかということは重要だということは理解しております。

ただ、そのところが、サイナーというものに限定して公認会計士資格というものを求めるのがよいのか、その時に、世界的に見て日本で競争力が奪われるようなことがあると、それは問題ではないかというふうに考えます。

自主監査機関の在り方についてですが、これはやはり1つのところでというようなこと、これも、今までの枠組みの中では、そのようなことというのは理解はできるんですけども、CSRDでフランス等においては2つの枠組みが用意されているというようなこともあり、必ずしも1つでないといけないということではないように思います。ただ、公認会計士というところで限定された形であれば、この1つのというのは、その流れというのはよく理解できます。

それから最後の、どのような形で情報を開示するのかという、要求を満たしている場合で、範囲が広いだとか、時期が少し違うとかいうようなことであると、そういうことを明記して添付するということは考えられると思うんですけども、要件を満たさない場合というようなことは誤解を招くおそれがあると思いますので、そこについては、やはり限定した形にしたほうがよいように思います。

私のほうからは以上です。どうもありがとうございました。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、対面に戻りまして、田辺委員、御発言ください。

【田辺委員】

田辺です。4点、議論のポイントが挙がっていると思いますので、順番に申し上げていきたいと思います。1点目の13ページについては、事務局案に賛成、同意いたします。

2点目ですが、業務執行責任者に求められる知識・能力について、挙がっているところのレベル感にもよると思いますが、会計士として会計監査、法規定、かつ、サステナビリティ開示についても幅広く専門性を持ってというと、かなりハードルが高いのではないかなと思います。

現時点において、必ずしもこの全部が必要ではないのではないかと、もっと対象者を幅広に考えてもよいのではないかなと思っております。

この13ページ、14ページを考えるに当たって、参考にできるかと思いましたのが、ITの専門家です。御存知のように、金商法・会社法監査は、会計士のほかに各種専門家が入って監査を実施しています。不動産鑑定士や保険数理士など、その中にIT専門家がいて、これが一番専門家利用の割合として多いと思います。各企業の会計監査の1割から2割。今、企業もITの自動化、高度化が進んでいますので、ITに関わる監査手続というのが増えてきているのではないかと、監査を受けている中でも感じております。だから、多い場合は全体の3割とか4割程度、IT専門家が監査を行っているのではないかなと思います。

では、そのITの専門家の、監査法人でいうところのパートナーその責任者が会計士かというと、そうではないです。

財務諸表監査のIT専門家として何の専門性が重要かというと、会計や監査実務は知っているべきだとは思うんですけども、やはり重要なのが、その会社のITのリスク評価ですよね。監査を対象とする会社にとってどういったITのリスクがあるのか。

これをサステナビリティ保証のほうにも当てはめると、その保証対象会社の業務を理解した上で、サステナビリティ開示で、どういったこの会社のリスクがあるのかというのを適正に見定められる能力などがまずは重要になるのではないかなと思います。

今時点で私が、こうあるべきだという意見はないのが現状ではございますが、現在の財務諸表監査の枠組みで、各種専門家、Non-PAがどういった形で関与しているのかというのも、考える上で参考になるのではないかなと思います。

14ページの右下、「上記の業務執行責任者の知識・能力等は、今後海外における試験・実務訓練制度の動向も踏まえて」とございます。こちらは非常に重要だと思っておりまして、仮に日本がSSBJ基準で諸外国より先に開示が始まって、保証制度も先に始まった場合、日本より後に米国で開示基準が定まり保証の基準が定まってとなった場合、後発の米国基準が日本と違うとなってしまうと、米国に上場している日本の会社は二重に開示に対して用意していく必要が出てきてしまいます。また米国で上場していない日本企業でも、関連会社や取引先、競合他社が米国基準で開示し米国基準で保証されていくとなると、、これまた基準が複数あって、負担になりますし、ユーザー側も混乱をきたすのではないかなと思っております。

ですので、欧州、米国、その他世界情勢の中で、標準的な保証基準というのが定まるにはまだまだ時間がかかるのではないかなと思っていますので、ここに書かれているように、見直しをしていただくことが重要なのではないかなと思います。

残りの3点、4点目、20ページの任意保証について、こちらは事務局案に方向性としては同意です。細かい議論のところは、既にほかの委員の方が発言されていたので、私のほうから特に申し上げるところはございません。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、芹口委員、続けて御発言いただけますでしょうか。

【芹口委員】

どうもありがとうございます。そうしましたら、御議論いただきたい事項につきまして、順番にコメントさせていただきます。

まず、1点目の保証業務実施者に求められる人的体制の整備というところで、組織としての人的体制の整備を求め、また、業務執行責任者の資質に焦点を当てて要件を定める御提案には基本的に賛同いたします。

一方で、保証業務を行う構成員の資質も重要な点だと思っておりまして、業務執行責任者ほど高い水準でなくても、サステナビリティや財務、開示保証制度など、業務に関わる一定の知識が必要だと考えております。将来的には、構成員について資格試験を導入し、登録業者における資格保有者の比率につきましても検討の余地があると見られますが、早期の制度構築が難しい中では、研修を充実させる必要があると思います。 構成員の資質につきましては、登録の要件で詳細を定めないとしても、14ページの業務執行責任者の要件のように、どの主体で検討するかどうかも含めて、今後の論点として明確化しておく必要があるのではないかと考えております。

また、2点目の、業務執行責任者に求められる要件として、公認会計士の登録、もしくは準ずるとの要件の追加を御提案いただいておりまして、こちらに賛同いたします。資格試験をすぐに設定することが難しいと見られる中で、財務情報とのつながりが担保された保証を期待することができると思っております。

一方で、業務執行責任者にはサステナビリティに関する知見も必要で、外部専門家を活用する場合でも一定の知識が必要であることは、1回目の議論でもコメントさせていただいております。研修や資格試験などによって、高い品質が保たれるように検討をお願いしたいと考えております。

3点目につきましては、行政機関と自主規制機関の役割の在り方、また、自主規制機関の設定は1つとする御提案に賛同いたします。利用者といたしましては、これまで検討してきた保証のロードマップの時間軸を前提に、高い品質が担保されるように検討を進めていただきたいと思っております。

4点目の、任意の保証の方向性についてですが、御提案の方向性に基本的に賛同いたします。義務か任意かにかかわらず、どの情報が制度の要件を満たす保証の対象か、明確化いただくことが最も重要だと思っておりますが、論点1につきましては、今後義務化の保証対象を拡大していく場合、前倒しで対応する企業は例えば当初の4項目の保証にとどまる一方で、義務のある企業は対象を拡大するというように、企業によって対応に違いが出てくることも想定されますが、その要因が企業の任意での対応によることが分かりますと、状況を理解しやすいといった利点もあると思います。

既に複数の委員の方からコメントをいただいておりますとおりで、保証報告書等に基準を明記することで、何らか任意であることが分かりますと、利用者としては識別できるかと思っておりますので、併せて御検討いただきたいと思っております。

また、現在の実務では、保証報告書にマークをつけた部分が保証の対象であることを記載するなど、保証の対象が分かりやすく示された事例もあると認識しております。冒頭で申し上げましたとおり、義務か任意かにかかわらず、制度の要件を満たす保証の対象の明確化が最も重要だと思っておりますが、分かりやすさに配慮して御検討をお願いしたいと思っております。

論点2の制度の要件を満たさない保証につきましては、これまでの実務と同様、金商法上の開示の責任は企業のみが負い、また企業と保証業務実施者の契約に基づいて、両者の責任が別途規定されるものだと理解しております。

私のコメントは以上でございます。ありがとうございます。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、他の委員の先生方、いかがでございましょうか。御発言希望があればお願いいたします。

それでは、松本委員、お願いいたします。

【松本委員】

堀江先生、ありがとうございます。また、詳細な御報告を、犬塚さん、ありがとうございました。

保証業務実施者に求められる4つのポイントがあるんですけれども、人的体制に関しましては、最初からお話がありましたとおり、品質管理の体制が確保できないようなところに、基本的に情報の保証を任せるというのは無理ですので、人的体制の必要性を13ページ、14ページで書かれている点は賛成いたします。

問題は責任者に求められる資質で、既に反対説と賛成説、両方出ているんですけれども、ワーキング・グループのほうがどう考えられているかということが、担い手の問題では一番重要かなと思って、今、意見を拝聴しておりました。

とはいえ、経理の状況に関わる利益情報が最も株価に影響を与える情報であるということは、もうこれは大前提であって、結局サステナビリティ情報の有価証券報告書の前段部分というのは、利益情報に比べると従たる情報という位置づけになろうかと思います。

そういう位置づけをすると、やっぱり財務情報とのコネクティビティは必須条件になりますので、財務の情報とのコネクティビティを理解し、その検討を行うことができるような知識・能力・経験を有している人であれば、会計士である要件は外してもよいのかなというふうに考えます。

いずれにしても、ここで「公認会計士として登録されていること」という条件を緩和する場合の条件は、必須条件として、財務情報に関するコネクティビティを評価・判定できる人という条件が必ず必要になるのではないかなと思っています。

行政機関と自主規制機関のところに関しては、最初から1つの自主規制機関というふうに限定されているのは、恐らくコストパフォーマンスを考え、かつ、当初導入されるサステナビリティ情報の開示と保証が69社とか300社という前提を考えてのことだと思うんですけれども、将来的に3,500社まで含めて考えるとか、プライムの1,200社を考える場合、少なくとも、複数の自主規制機関を想定したとしても将来的にはよいのかなというふうに考えています。

問題は行政機関が、金融庁あるいは公認会計士・監査審査会、どこが担うのか分かりませんが、行政機関の監督官庁が1個である場合に、その監督官庁による審査とエンフォースメント、制裁が適切に行えるような環境を構築した上でないと、もちろん複数の自主規制団体というのは認定できないような気がします。

いずれにしても、自主規制団体も行政機関の代行役のような形で、検査や審査、検討、あるいは自主規制の中でのサンクションというのを十分に行えるような体制が整っていなければ、自主規制機関としての登録は不可能かなというふうに考えます。

理由は、行政官庁の予算的にも人員的に考えても、現在、公認会計士・監査審査会が十分な検査を行えることに賛同される意見はこの場ではないと思いますので、審査会の検査はJICPAの品質管理レビューを前提に行われているというふうに、皆さん認識されていると思います。ですので、やっぱり自主規制機関の中での自己検査が充実しないと、自主規制機関としての登録は無理かなと思います。

4番目の任意保証なんですけれども、たまたま犬塚さんたちが御用意された報告書のサンプルが、全体保証のサンプルを持ってこられているので、誤解を生む可能性が非常に高いのかなと思って拝見していました。

次のページに分割保証、部分保証のサンプルも挙げられているんです。29ページだとISSA5000のパラ190を引用されていて、保証の対象を限定する、あるいは特定または記載するという例も含まれています。

現在御検討のサステナビリティ情報の保証というのは、少なくとも有価証券報告書におけるサステナビリティ情報のパラグラフに記載されている一部分の項目の保証を検討対象としているので、保証報告書のサンプルを持ってこられる時も、全体保証のサンプルではなくて、部分保証のサンプルを持ってこられたほうがよかったのかなという気がしています。

いずれにしても、制度保証の場合は、先ほど甲斐先生からもありましたとおり、条文で、制度上この開示されている情報が保証対象であることは限定されますから、必然的に部分保証であることが明記されるわけですけど、任意の場合も当然、部分保証であることが特定できるような記載を設ける必要があろうかと思いますし、また、任意の場合に、現行の金融商品取引法を前提にすれば、確かに任意の保証を受けていますという旨を有価証券報告書のサステナビリティ情報のパラグラフの一番末尾に書いたら、その責任は当然企業側の、有価証券報告書提出者の責任になります。

それは私も賛成するのですが、提出者と任意の保証業務提供者との間の責任関係が債務不履行の民法上の責任だけでよいのか、という別の問題が発生すると思います。

ですので、任意の保証を受けていますというその旨だけを記載した時に、経営者、すなわち作成者だけの責任でよいというのは現行制度を前提にしているのであって、もし特別の金商法上の責任を設けるのであれば、やっぱり保証業務提供者にも責任は取ってもらいましょうという規定を置いたとしても、それは問題はないというふうに私は考えます。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き清原委員、それから町田委員の順番で御発言いただければと思います。

【清原委員】

ありがとうございます。私も、御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただければと思います。

13ページの事務局案については異論がございません。

ただ、人的体制の整備と併せて、当然ですが品質管理があって、そこのどちらに入るかというのがありますが、今回まだ議論がされていないと思っているのが、兼業規制で、これも考えていかなければいけないのではないかと思います。

公認会計士の方々が今、監査法人のほうでサステナの保証をやっていないのはなぜかといえば、公認会計士法に業規制があるからです。そうすると、その業規制の規定がサステナ保証の制度化によってどのように変わるのか、すなわち業規制で手当てすべき弊害はどこにあるのかということを考えないとならないのではないか。財務諸表の監査とサステナ保証との関係で、これは監査法人本体がやって弊害が生じるのか、それとも生じないのか。

現在、監査法人の子会社とか別会社の形式でやっている保証業務をやり続けるところでは、今のところは引っかかっていないですけれども、それが、仮にですが、監査法人のほうに皆さんが移動して、監査法人のほうですべてやるような形になっていくことを考えたときに、本当に一体的に双方をやって弊害がないのかどうなのか。

本日の資料にあるように、EUのほうでは、財務諸表監査とサステナ保証を同一の監査人がやっている例が、特に大規模会社に関して多いというのは認識しました。ただ、そこに関して、米国のSOX法を含めて、監査法人による他業・兼業といったことに関しては、やはり一定程度レギュレーションがないと、監査の品質にも影響することになるのではないか。こういったことも踏まえて制度化は考えていかなければいけないだろうという点が一つあります。ここはまだ議論されていないのですが、ちょっと気になっているところです。

同時に、今度はNon-PAの方々がやっている業務について、今までやっていたコンサルその他の業務をやっていて、これからサステナ保証業務をやるという時に、どういうセーフガード(弊害防止)を入れていかなければ、サステナ保証の品質が保たれないか、ここについても同時に考えなくてはいけない。そういった点は、まだ今回十分にフォーカスされていないようですが、重要なところですし今日の議論にも影響することがあるのではないかとも考えるところです。

その観点からいうと、人的体制、品質管理体制、そこを切り分けて一つ一つ議論することに、もちろん異論はないのですけれども、ちょっと足りていないかもしれないかな、と思う点もあり、公認会計士法の2項業務のところを今後どうしていくのかという点も、やはり一回は正面から取りあげておかないと、法案を出す時のことがあるので、そこは整理が必要かなと思っております。

次に14ページ、職務執行責任者のところは御意見がいろいろ分かれているところですが、ここのところでは。コネクティビティ、財務諸表との関連性、これはもちろん重要だということは分かるのですけれども、他の委員がおっしゃっておられたように、GHGのところだとか、そういったサステナのプロパーのとても重要な知見というものが、ここではうまく反映されきれていないようです。CPAという資格を求めるように、アプリオリに入れ込むということはどうなのか。そこはうまく整合的にいかないのではないかというのが、この14ページのところの難しさだと思います。

ここで、このような視点はどうか、という点として、サイナー、保証のサインをする者というのは1名だけなのか、それとも複数名なのか。1人の人間が全てをカバーするということはなかなか難しい中で、作業は当然チームでやる。そのチームの中でも、責任を負うサイナーという者は、1名でなく2、もしくは3名、それは相互牽制とかも含めて考えると、複数名いることが望ましいということになると思うのですけども、そう考えた時に、これらすべてが1名に求められる能力なのか、それともチームとして、サイナーとして入る責任者が2名ないしは3名いるときに、その中で持っておくべきものなのか、という観点で考えることもできるのではないか。そのことによって、これが参入障壁になるようなことも回避できるし、実際に実務を動かしていくことを想定した場合に、レギュレーションをちゃんとつくっておかなければ検査とか入れないというのがありますから、どういうふうなチーム構成、どういうコンセプトの下でチームを構成して業務を実施していくのか。サイナーに名前だけ載っけただけでは当然駄目なので、その意味でいうと、少し上位の概念としても、サイナーもしくはチームとして求められるものを考え、それを踏まえた上で、業務執行責任者というものの要件をも考えていくことがよいのではないかと。

それから、登録の関係ですけれども、法人としての保証業務実施者の登録は、おそらく社内の状況も載せていくという形で、登録時に業務執行責任者が誰で、どういう資格を持っていてというところもあわせて登録していくことになるというふうに考えていくと、1つの法人の中でどういう体制でやれるかということを、やはり一覧性といいますか、全体が分かるような、そういったことを登録させ、閲覧でき、かつ、それが業務報告のような形で外部にも分かるというようになっているのがよいのではないでしょうか。そうするとチーム編成についてどうなるかということを調べようと思えば分かるような、検証可能性を残したような形で、登録制度というのが構築されていくことがよいのだろうと思われます。実務のところで保証報告がどのような形で出るのかというところと、どうチームが編成されるかということを踏まえたうえで、この知識・能力というものを、御検討いただくとよいのかなと思っております。

次に自主規制のところですけども、私はこの説明を見た時に、認可されたもの1つに絞っているところにちょっと難点があるかなと思っていていました。先ほどから何名かの委員からもご発言があったように、これが公認会計士協会だとすると、会計士以外の人がそのメンバーになることは難しいということも含めて考えると、やはりそこは、自主規制としては、Non-PAの方々が今までやってきたもので、できるものを残していくことも有用だと思われますので、自主規制については、認可を受けた者が自主規制を行うという形として、複数の組織があってもよいのだろうと思います。

ちなみに、業界は全然違いますが、弁護士会はどうかというと、日本全国をカバーする日弁連というものがあり、その他に都道府県ごとに単位会として弁護士会がありますけれども、東京はそれが3つあるんですよね、歴史的な経緯があって。

規律、ディシプリン・懲戒とかを行う会が東京は3つありますが、それはそれでちゃんと機能していますので、1つに絞らなければならないということは、あまりないのだろうと考えるところです。

実務指針をつくるうえで、やっぱり多くの人数がいたり、十分なリソースがあるところがつくる、それはそれでよいと思うのですけれども、だからといって1つでなければならないというふうに限定される必要もないと考えるところです。

最後に、時間を超えて恐縮ですが、任意の保証のところに関してコメントします。最終的には投資家にとってミスリーディングにならないように、ということを考えた上で、透明性を高める形がよいと考えております。今お示しいただいている案で方向性はよいと思うのですけれども、やはり、最終的に保証報告書を見られない状況で保証だけ受けていますということを有報に記載するというのは、やはり問題があると思っていて、わざわざ任意の保証を受けていると有報に記載しようというのであれば、その保証報告書を見ようと思ったら見られるように、アクセスできるようになっている、そういう場合にだけ記載を認めるということがよいであろうと思います。

その上で、そうはいっても全員が見るとも限らないですので、やはり有価証券報告書にはディスクレーマーをしっかり記載していただく、そういうことを、2段階で考えていただくのがよいのではないかなと思っています。ちょっと長くなり失礼しましたが、私からは以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

次に、町田先生と、先ほど申し上げたのですが、オンラインで4名の先生方から発言希望が出ておりますので、ちょっとオンラインでご参加のお二方を挟ませていただいてから、町田先生、お願いいたします。

それでは、高村委員、御発言いただけますでしょうか。

【高村委員】

ありがとうございます。本日の議論を伺っていまして、制度開示、法定開示の対象企業と具体的な開示のスケジュール、それから担い手をどうするか、こうした制度設計の前提というものがある程度共有をされていかないと、議論というのがまとまっていくのが難しいというふうにも思った次第です。

既存の枠組みをできるだけ活用することが効率的だというふうに考えますけれども、この対象企業、開示のスケジュール、担い手について、どういう前提を置いて議論するかというところを改めて確認をする必要があるかというふうにも思いました。

その上で、本日御提示いただいている順に、3点ほど大きく発言させていただきたいと思います。

まず、保証業務実施者に求められる業務管理体制について、私は基本的に事務局の御提案に賛成をいたします。

能力の要件については、何人かの委員からもありましたように、サステナビリティ情報と財務情報の違いというものを踏まえて、その要件化をする必要があるということでありますけれども、一つ気になっておりますのは、これは関口委員の御指摘があったようにも思いますけれども、やはり品質管理の上で、業務管理体制として、例えば中立性・独立性の確保、利害相反の回避などのための適切な業務管理体制になっているかどうか、それをしっかり、例えば公認会計士法などを参照しつつ、サステナビリティ情報の文脈においてそれを明確にすることが必要ではないかというふうに思っております。

幾つかの議論の中に、特にスライドの13に関わるところかと思いますけれども、サステナビリティ開示に関わるような制度、例えば温室効果ガスの排出量の算定報告制度など、サステナビリティ関係の知見が求められるというのは間違いがないと思います。それはスライドの13にも、温室効果ガスに限定はされておりませんけれども、事務局の御提案の中にも含まれているというふうに思います。

他方で、もちろん温室効果ガスの排出量は非常に重要な情報であり、サステナビリティ情報の中でも重要な指標でありますけれども、これは田辺委員あるいは松本委員だったかと思いますけれども、おっしゃったように、資本市場が求めているものはそれだけではないというふうに思っていまして、事務局のスライドの13のところにありますように、企業がマテリアリティのある情報に絞り込んでいく、まさにプロセスや財務とのコネクティビティを含めて、サステナビリティ情報の開示全体を広く確認できる知識・能力ということが、極めてやはり重要な要素であるというふうに思います。

したがって、それをしっかり反映して、その保証ができる、そうした担い手の能力要件である必要があるというふうに思います。これが大きな1点目です。

2点目につきましては、自主規制機関に関する検討です。これもやはり制度開示の対象企業、スケジュール、担い手と非常に密接な関係がある論点だと思いますけれども、自主規制機関に関しての事務局提案については、1点、御検討をいただきたいところがございます。

スライドの21に御提示いただいているように、最もふさわしい1の自主規制機関を認定して、金融庁と連携していくと。しかし、認定された自主規制機関以外にも、自発的に自主規制を担う組織を設立することは妨げるものではないということであります。

私自身、1つに絞る必要は必ずしもないというふうに思いますけれども、少なくとも自主規制機関が、例えば財務情報の保証、その信頼性において果たしている役割を考えた時に、自主規制機関として仮に認定される、認定されないにしても自主規制機関としてその役割を果たす場合においては制度においてですね、その要件というものが明確にされる必要があろうかと思います。少なくとも、自主規制機関として扱われる、名乗るために、少なくとも満たされなければならない要件というのが明確化される必要があるということであります。

例えば、本日のスライドの22に、証券業協会、それから投資信託協会、公認会計士協会の3つの事例を御紹介いただいておりますけれども、やはり自主規制業務がしっかり履行できる体制であること、あるいは能力を持っていること、それは会員に対して監督処分が適正にできる体制を持っていることも含めてであります。

同時に、これは協会に対しての監督官庁の監督がしっかり及ぶということも非常に重要な点だというふうに思っておりまして、したがいまして、1つに絞る必要はありませんけれども、こうした自主規制機関として位置づけるものが満たすべき要件とその制度上の位置づけ、これは監督官庁の監督を念頭に置いておりますけれども、を明確にする必要があるというふうに思います。

最後は、任意の保証についてです。これは甲斐委員や弥永先生のほうから既に御指摘のあった点でありますけれども、特に気になりますのが、やはり要件を満たさない場合の保証についてであります。

事務局から御提示いただいているように、ここで要件を満たさないというふうに想定をされているのは、ISSB基準と同等の開示基準に基づいて作成されたものではない、あるいは登録されたサステナビリティ保証業務実施者による保証でない、あるいはサステナビリティ保証の基準に沿った保証でないということかというふうに思います。

ISSB基準と同等の開示基準に基づかない、例えば一部の開示基準を満たさないという場合には、開示の範囲を明確化した上でその情報を付するという、その範囲を明確にするということはあり得るかというふうに思います。

しかし、②と③については、そもそも保証の担い手、あるいは保証業務の基準に沿わない保証ということであろうかと思いまして、利用者にとってミスリーディングな情報にならないということをしっかり明確にする必要があるというふうに思っております。これは当該企業の情報の保証の信頼性のみならず、保証というものの信頼性そのものを損なうおそれがあるのではないかということであります。

その意味では、少なくとも②と③について、こうした制度上の保証業務の要件を満たしていない場合には、それを少なくとも明記するということが要件として必要ではないかというふうに考えます。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、オンラインで御参加の植村委員に御発言いただいて、その後、町田委員、またオンラインに戻って上田委員、阪委員、この順番で進めさせていただきます。

それでは、植村委員、5分程度の時間でお願いいたします。

【植村委員】

御指名ありがとうございます。植村です。私も大きく4点、コメント申し上げたいと思います。

まず1点目、13ページの保証業務実施者に求められる人的体制の整備についてでございます。念のためですが、上段ボックスのリード文章、具体的には文中に「サステナビリティ保証業務実施者」とありますが、これは法人・事務所を指すと理解しますので、そういうことであれば後段の、個人であるサイナーとの対比を明確にするために、法人・事務所等、括弧書きでも結構なので、丁寧に記載すべきかと思います。

また、上段の黒ポチの記載の中にも、法人・事務所等の品質保証や品質管理についても言及いただきたいです。

続きまして、13ページ下段の、合理的保証を視野に入れているISSA5000、その抜粋での話ですが、サステナビリティ保証業務執行責任者、いわゆるサイナーは、財務諸表のレビューを統括する直接的な能力・スキルは、ここでは要求されていないところは、非常に重要なポイントで、財務諸表・注記、及びサステナ開示の性質の違いもあるので、当然のことだと考えます。前回、第2回の資料13ページ欄外のIAASB FAQの引用でも、外部保証という形態は共通であるだけで、規定されている用語の「レビュー」、「アシュアランス、日本語の保証」、これは使い分けされております。これは担い手の議論にもつながりますので、改めてコメントいたしました。

この流れで、2点目の14ページに参ります。ISSA5000第33項も踏まえて、上段ボックス3行目のサステナ保証業務執行責任者に必要な知識・能力については、それらが組織として具備されている限りにおいては、もう少し柔軟に考えて、会計監査等の知識・能力は一定程度の必要性としてもよいのではないかと考えます。これは、下段の業務執行責任者に対する要件についてのコメントです。

特に右側、青背景の登録要件案ですが、これでは、「その他の保証業務提供者・法人」の関与が難しく、あまりに日本の公認会計士資格に寄せ過ぎた例示であり、違和感があります。

本来ここでは、組織・体制の在り方をしっかりと議論すべきであり、先ほど御意見がありましたが、例えば限定的保証報告書にサインする人数が2名の場合は、サイナーの1名は「日本の公認会計士または準ずる者」などを含めることで、相互補完できるのではないかと考えます。やはり一定の競争力がある健全な保証業務の市場が必要で、そこまでは、この保証専門グループで検討しておくべき内容だと思います。

続きまして3点目、20ページです。上段の行政機関については、サステナ保証業務実施者、法人・個人の登録、その後のモニタリングは必然ですが、現状の記載に加え、必要な基準の策定も対応することを記載いただきたいと思います。

また、自主規制機関はまだ存在しませんので、その設立・運営についても、21ページ下段のようなメリット・デメリット評価を深掘りし、理論的かつ実務的にも相容れる検討のリードが行政機関にも望まれます。

4点目、24ページです。最下段の論点、有価証券報告書・財務諸表以外の任意の保証の場合については、先ほどの犬塚室長の御説明どおり、既に記載内容で合意済み、完結していますので、現状の記載、「考えられる」で終わるのではなく、「各企業の判断に委ねられるべきとする」と断定して結ばないと、継続論点と取られかねず、不親切かと考えます。

続きまして25ページ、有報における任意の保証の論点です。

最下段ボックスの論点①については、義務化対象の保証報告書と義務化対象外の保証報告書は、別個に2通を添付すべきと考えます。したがって、記載の内容も平仄を整合させることが妥当だと思います。

論点②については、制度上の保証業務の要件を満たさないサステナ情報の任意保証については、ミスリードする懸念がありますので、保証報告書の添付はもちろん、有価証券報告書本体への記載はすべきではないと考えます。

最後に追加事項としてですが、企業・地域としての競争力の確保等を目的とした欧州オムニバス法案のうち、我が国企業に関連するWave2、延期法案は、理事会、欧州議会も既に通過、昨日の官報掲載によって、2年延期が確実となってきています。引き続き、欧州簡素化案を含め、グローバル動向への注視が必要です。

その環境下、我が国でも、2段階開示を当初、対案として示された28年3月期への後ろ倒し、これでWave2と整合するわけですが、また、保証については、サステナ情報が財務諸表と性質が異なって、また歴史的にも浅く、保証の現場での双方の混乱は避けられないと想定されるため、当面の間、少なくとも3年以上5年程度の猶予期間の確保も含め、引き続き慎重な議論を行うべきと考えています。

以上となります。よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、対面に戻りまして、町田委員、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。

【町田委員】

ありがとうございます。ちょっとランダムですけれども、まず、業務執行責任者に求められる知識・能力のところ、公認会計士の話ですけれども、実際の今行われているサステナビリティ情報の保証業務のことを念頭に置いて考える必要があるかなと思っております。

現在の実務では、実際にサステナビリティ情報の保証業務を実施する会社において、例えば40社程度に対して提供している時に、その会社の責任者の方が全ての契約で報告書にサインしているというケースがあったりします。例えばこの規定のままいった場合には、1人の公認会計士の人が全てにサインするとか、あるいは2人でも良いんですけれども、少数の責任者がすべての報告書にサインする、そういうことが適切なのだろうか、ということです。この点は、実は品質管理の問題、1点目の議論と非常に密接に関連してくると思うんですね。

公認会計士、財務諸表監査の世界では、日本の制度を前提にお話しすれば、公認会計士法上、公認会計士になるには実務経験として公認会計士の下で業務補助が求められたりします。あるいは、公認会計士法2条3項に補助者の規定があったりして、そういったことに支えられて公認会計士がいわゆる組織的監査を実現していくという基礎があるわけです。ちょっと専門的な話になってしまいますけれども。

それをただ報告書の署名者、サイナーのところだけを取り出してしまうと、かつて日本の、古い話になりますけれども、金融庁以前の大蔵省時代に何度も通達を発出して何とかして2003年公認会計士法改正までの間に排除してきた単独監査の問題がまた生じてしまうおそれがある。財務諸表監査の世界で組織的監査を実現するために長い年月をかけて漸く解消したはずの問題が、サステナビリティ保証のところでまた問題になってしまうんじゃないかなという懸念を持っています。ですから、もしもこのことを規定するのであれば、品質管理の規定とセットで議論して一定の制限をかけなくてはダメだろうと思います。

また、自主規制機関の話ですが、これは以前から申し上げているとおり、自主規制機関を公的機関、金融庁とセットで、あるいは連携してというのは、これは21世紀に入ってからの話ですね。公認会計士協会なり、あるいは自主規制の世界がずっとやってきたところを、色々な会計不正、監査の失敗事例があったので、公的規制がその一部をシェアしたり、剥奪したりしてきたのが今世紀に入っての話だと思います。とくに日本の場合は、公的規制の人的資源の不足を背景として、公的規制と自主規制でシェアする部分が大きかったんだと思います。それでも、それまで綿々とやってきた自主規制があった上での連携であって、例えばここに新たな自主規制機関とか書いていますけれども、新たに自主規制機関を創りましたといったら、すぐ認定してすぐ自主規制をやらせることができるんですかという話です。

そんな簡単な話ではないだろうと。ちゃんと自分たちで実務指針をつくり、自分たちで懲戒処分を行い、例えば例に挙がっている3つの団体がありますけれども、本当に自分たちで自分たちの仲間に対する規律づけを行っているのか、倫理観の高揚への取組みをしているのかというと疑問がつく部分もあるんじゃないかなと私は思っています。自主規制と公的規制、ここでは「設定して金融庁と連携」と書いていますけれども、PFI(Private Finance Initiative: 民間資金活用)じゃないんですから。この部分をはじめ、考え方として自主規制を軽く考え過ぎなんじゃないかなと私は監査の研究者の立場から強く懸念を抱いています。

そして、本日、御発言された委員もいましたけれども、最初は公認会計士、監査法人、あるいは今の公認会計士協会の自主規制に乗ろうなんていう話があるようですが、それは多分無理筋だと思うんですね。最初に制度が適用されるという数十社あるいは100、300社程度というところが、実は2000年前後ぐらいからずっとNon-PAの認証会社の方々と一緒に二人三脚でサステナビリティ情報開示やそもそものサステナビリティやCSRに関する企業活動に取り組んでこられた会社なのだと理解しています。学会の研究成果によれば、Non-PAのヨーロッパ系の認証会社の保証を受けているところほど、実はサステナビリティの先進企業だったりするんです。ですから、後から参入を認めるといっても無理ではないかと思いますので、当初から考え方を一貫したものにしておく必要があるんじゃないかなと思います。

ですから、暫定的とか、将来の可能性とか言って、その場しのぎにするのは良くないのだと思います。私は、第1回の時に申し上げましたけれども、日本のリソースの現状からいった時に、品質管理の問題、エンフォースメントのことを考えた場合には、金融庁が例えばフランスのようにH2Aのような形で組織替えをするというのであれば別ですけれども、そうじゃなければ、ドイツのように、PAによる独占業務とせざるを得ないと考えています。この点については色々意見があるのかもしれませんが、私はそのように考えています。

そして、最後の任意保証のところですけれども、一つ大前提として忘れちゃいけない点としては、日本の有価証券報告書の開示制度というのは、少なくとも大前提として、実際そうなっているかどうかは別として大前提としては、一般投資家が有価証券報告書を読むという基礎前提はあるんだということです。これは目論見書だとか、あるいはプロ向け市場とかの一部の規制では違う種類の規制が含まれている部分もありますけれども、基本的には一般投資家向けに作っている制度だ、と。

その時に、ここに挙がっているような5項目のところについて、微妙な表現で書いてあったり、あるいは、これこれの基準に従っているとか書いてあって、それを一般投資家は分かるのか、読み取れるのですかということです。一般の投資者が、「保証がついているんだから一緒でしょう?」、「金融庁がオーソライズしている有価証券報告書に載っているんだから大丈夫なんでしょう?」と受け取ることが想定される状況が容易に想像される中で、そういう理解に対して、制度を作る側は対抗するだけの論拠を持っているのだろうかと思うわけです。ですから、金融商品取引法の下での開示制度、あるいは、有価証券報告書による企業内容開示制度の本質論から見て、一定水準以上の保証をつけたものであれば載せてもよいけれども、そうでないものは情報自体も載せるべきではないと私は考えます。

最後にもう1点だけ申し上げると、制度化をして開示の根幹である有価証券報告書に載せていくということを考えた時には、先ほどコネクティビティの議論がありましたけれども、それだけでなく、財務諸表監査の監査人は有価証券報告書を全部読むことになっています。日本では監査基準報告書の720の要求事項です。それが、もし別の保証主体が保証をつけた時には、それでもその部分を読んで、重要な虚偽表示や不正の兆候等の問題に気づけるかといったら、それは非常に難しいだろうと思います。その意味でも、ワンストップで財務諸表監査の監査人が保証業務を提供した方が、監査人の側にとっても、企業の側にとっても、そして何より利用者、public interestにとっても有益なのではないかなというふうに私は考えているということを申し上げたいと思います。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。それでは、またオンラインに戻りまして、上田委員、御発言いただけますでしょうか。

【上田委員】

ありがとうございます。本日途中参加となりまして、申し訳ございません。

本日の、そうは言っても、皆様のお話を伺っていますと、先ほど高村先生もおっしゃったかと思うんですが、対象企業の範囲とかスケジュールを含めて、今後、前提をどこに置けばよいのかな、時間軸とか、あるいはスタート時点でのあるべきことと最終ゴールの完成形というものが違うのかなという、そういう思いを今持ちつつおります。そういった揺れ動く中での発言ということをお許しいただければと思います。

私は、御議論いただきたい点についてコメントさせてください。まず、保証業務実施者についてでございますが、これは13ページ、14ページ、続けてお話しさせてください。ここでも整理されておりますように、法人と個人の課題があるかと思います。まず、法人については、私は、ここは監査法人と同程度の業務管理体制というんでしょうか、体制整備が求められるべきであると以前からお伝えしているとおりでございます。これは次の議論にも関連しますが、仮に将来的に自主規制機関、行政機関によるモニタリングが開始された場合には、これに耐え得る仕組みというのはやはり必要であろうと思います。やはり利用者の信頼性、情報の信頼性というのが、ひいては日本の市場の信頼性につながるところでございますので、ここは避けることができないと。

ただ、この点を考えると、現状、監査法人におかれては、ここの部分に多くのコスト、リソースをかけておられると拝察しています。そうなりますと、今後どういう法人さんが入ってくるとしても、サステナビリティに関する専門知識だけではなくて、こういう体制整備にかける相当なリソースの配備、コストがかかるということでもって市場の信頼性に資するというこの点については、ぜひ理解をして共有していくということは必ず必要であろうと思います。

次に、個人の部分です。今回、公認会計士ということが例として出されていますけれども、私は、そもそも必要なのは公認会計士の会計の知識以前の部分、職業倫理とか専門家としてのあるべき姿という、前提となる規律的な部分というものがサステナビリティの今回の保証のサイナー業務の責任者には求められていると感じます。そうすると、まず、スタート地点において、14ページに書かれているようにこれを現在具備している人は誰かというと、まずは公認会計士資格を有する者を要件とするということについては、スタート時点のあり様としては賛同します。

ただ、これは将来的の部分になるんですが、これは別のワーキング・グループでどうなるのかそちらの議論を持たないといけませんが、仮にこの開示対象が拡大するということになって、その場合に公認会計士資格者だけで足りるのかと。公認会計士あるいは監査法人においても現在、中小監査法人において会計監査自体の品質にも課題があるような場合もなきにしもあらずというような議論がある中で、人材が足りるのか、品質が足りるのかといった点については少し懸念がございます。

併せて、サステナビリティ保証が会計監査と決定的に違うのが、柔軟性と言うと変なんですが、エビデンスを積み上げていくというよりは、将来価値からのバックキャスト的な視点も必要になってくるという中で、そういう視点も身につけることができているのかといった点については、今後しっかり検討が必要だと思います。なので、最初に少しコメント、指摘したように、時間軸で完成形をどこにするのかといった点は一方で思いつつ、まずはスタート地点でということになります。ただ、併せて、今申し上げた品質管理のところについてもしっかり御議論していただきたいと思います。

そうなると、従前から議論があったNon-PAについてはどうするかということなんですが、私は基本的にはこういう新しいサステナビリティという領域が拡大していく中で、周辺産業が活性化すると、それによって社会全体にその効果を得られるというのは大変すばらしいことだと思います。そして、将来、開示対象が拡大する、それまでに時間があって、体制整備とか信頼性の確保ができるのであれば、重要な保証業務提供者になり得ると思います。

ただ、そうは言っても、有価証券報告書の信頼性というのが市場の信頼性に最終的につながるという視点も絶対にこれは持っていかなければいけないものです。この大きな柱の中で、正直なところ、現在の公認会計士とか監査法人という、資格試験にはじまり、組んでモニタリングという高度に構築された仕組みに比べるとまだまだ課題があるとは思っておりますので、ここについては、時間軸の中でどう見るか、対象をどう見るのかというところとの兼ね合いというのも必要になってくるかと思います。

続いて、行政機関とか自主規制機関、モニタリングとの関係についてです。これは今の話にまさに関係するんですけれども、まず、自主規制機関についてということですが、ここで保証業務実施者において検討されることが望ましいというふうに指摘もあるかと思います。これは正直もう少し踏み込んでいただきたくて、自主規制機関の上位に行政当局という規制機関が存在することを考えますと、なかなか自主規制機関にお任せということよりも、もう少し当局においてはイニシアチブを発揮していただきたいと思っています。

恐らくは本日の御議論を考えますと、この下の4つの枠のところの左側というのは日本公認会計士協会さんを想定されているかと思います。会計士協会というのは、伺っていますと、経験・知識・制度という総合的に完成された仕組みの中で活動されておられる、当局とも密接に関係されておられるということになります。そうなると、一方で有価証券報告書の中のサステナビリティ情報の保証という極めて一部のものについて全く新しい枠組みを構築するのかというのは、果たして社会コストとしてこれが是なのかどうかというのは別の問題かなと思います。したがって、ここはぜひそういう主たるプレーヤー、期待されている方たちの中でしっかり御議論いただいて、受けられるところ、受けられないところ、そして何が全体として国全体で必要かといった視点から、連携して御議論をいただきたいと思っています。

最後、自主規制機関は何か複数林立してもよいけれども、当局が認めるのは1つだけですという、これは私はすごく慎重に考えるべきだと思っています。勝手にされるのは構わないんですけれども、やはりステークホルダー、情報利用者の視点からすると、複数あるというのはそれだけ混乱が生じるんですね。つまり、誰でもよいというようなところになりますので、ここはあまりこういう書き方自体が望ましくなくて、やはり認定された自主規制機関以外にもよいというよりも、自主規制機関なるものをやはり認定するのが前提であって、それは1つであるという、ここは強い理解をしないと、一般の投資家に変な誤解があるのではないかなと感じました。

最後の保証のところを、時間もあるかと思いますので、簡単にコメントさせてください。最近、企業さんと話していますと、少しこの任意保証というものに対して大きな混乱があるようで、何でもかんでも制度保証以外が任意保証ということで、すごく大きく、程度感とか強さみたいなものがいろいろなものが混ざった議論があります。とすると、そもそも任意保証については、制度保証が掲載される有価証券報告書と記載する場合には、あまり書くこと自体が望ましくないのかなと。そうなると、制度保証と同等クオリティーの場合、例えば範囲、開示、タイミングの早期化とか、こういう場合で、こちらに書いてあるように保証報告書に入れてもよいんじゃないかという場合以外については、そもそも記載することについては相当慎重に、書く場合には条件付とか、書きぶりの指定等も入れないと、企業側が同程度と理解している部分も、また、それを読んだ読み手側の混乱もあるのかなという感想を持ったので、慎重に御議論いただければと思います。

以上です。ありがとうございました。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。それでは、最後になりましたが、阪委員、御発言いただけますでしょうか。

【阪委員】

発言の機会をいただき、ありがとうございます。阪と申します。

32ページに沿って発言を申し上げます。まず、13ページの内容と14ページについては、まず制度をスムーズにスタートするという観点から、この要件から始めるということに賛同いたします。ただ、日本の公認会計士試験というのは、世界的に見るとユニークであるということと、倍率の観点から難易度が高いということもありまして、図の下に書いてありますように、今後の動向を踏まえて将来見直すということとセットとして始めるということに賛成いたします。

次に、20ページについて、方向性に賛同しております。図の中の研修について、14ページで当局が定めた研修と書いてあることもあり、研修内容自体がサステナビリティ開示を全体として支えるインフラとして位置づけられるものかと思っています。例えば国のAI戦略に基づき、デジタル人材を50万人レベルで育成するとなった時に、教える教員が十分にいないということから、教育強化拠点コンソーシアムが出来て、モデルカリキュラムの作成や教材スライド、e-ラーニング教材の提供が行われ、教育の拡大と底上げに大いに貢献したということがありました。サステナビリティ開示についても、この研修内容が教育のインフラとして、保証業務実施者のみならず、作成者・利用者を含めて日本におけるこの分野のレベルアップに役立てる可能性があると思っております。

次に、任意の保証について、25ページの有価証券報告書における任意の保証の考え方の上半分の水色の四角の内容に賛同いたします。下半分の水色の四角については、まずは監査法人からという仕組みから始めるとして、将来の拡大の方向性として、要件を満たす保証業務実施者を拡大していく方向とするか、要件を満たさない保証業務実施者を拡大していく方向とするかによって、考え方の下の四角に書かれている点や、その下の論点②の扱いも変わってくるのかなと思っております。

また、論点②に関連して、開示情報については、企業が全てについて責任を負うというふうに基本的には思っております。あと、要件を満たさない保証であっても、情報の正確性や精度を上げるために保証を受けると思いますので、そのことについて企業が過度な責任を負わないようなことになることを望みます。論点①については、シンプルな記載でよいと思いますので、記載例やサンプルをお示しいただけると企業にとってはありがたいと思います。

この任意の保証については、全体として任意の保証を促進する制度であってほしいと思います。また、このスライドはここでの議論用ですのでこれでよいと思いますが、任意保証を始めようかという企業が見た時に、まず、難解な仕組みは望ましくないと思いますので、制度としての分かりやすさという観点や、最終的には制度上の保証と任意の保証を対比するなど分かりやすく整理いただけるとよいかと思いました。

それから、その他として、既に御発言もございましたが、会計監査人とサステナビリティ保証業務実施者との関わりの整理は必要であると思います。また、サステナビリティ関連財務情報の保証が会計監査人と異なる場合の会計監査人との連携をどのように考えるか、あとは、事業報告書の関係はどうなのかといった論点もあるかと思っております。

私からは以上です。どうもありがとうございました。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。それでは、あと予定まで10分ちょっと切っておりますけれども、本日御参加の委員の先生方でもし追加の御発言等があれば、お受けいたします。いかがでございましょうか。

では、井口委員、どうぞ。1、2分でコメントいただければ幸いです。

【井口委員】

簡単に。御存知の方もいらっしゃると思うんですが、タイトルがサステナビリティ情報の保証と書いていますが、議論しているのはサステナビリティ関連財務情報で、非財務情報ではないということです。ですから、今までのサステナビリティの保証とは違うということを、この辺は念頭に置いて議論する必要があるのかなと思います。

以上です。

【堀江座長】

なるほどね。どうもありがとうございました。

では、関口委員、どうぞ御発言ください。

【関口委員】

1点お話をお伺いしていて感じたんですけれども、先ほど高村委員とか上田委員からもお話があったんですけれども、全体として、前半の議論は非常にハイレベルで、任意の保証のところがいきなりすごい詳細な議論になっていると思います。また、ハイレベルなところは、保証の範囲とか保証の対象とかそういうものが決まらないと内容が詰めていけないのかなというのはよく感じました。やっぱりワーキング・グループでまずそこをしっかり議論いただいて、それを踏まえて専門グループでまた詰めていくというのがよいのかなと思いました。

すみません、以上です。

【堀江座長】

どうもアドバイスありがとうございます。

他はいかがでございますか。藤本委員、どうぞ。

【藤本委員】

お時間ない中、ありがとうございます。先ほどサイナーの人数とか監査とのコネクティビティのイメージ感はどうなのかという御意見、御質問があったと思います。スライドでいうと12ページ目のところにサステナビリティの保証業務実施者の体制、チーム編成についておまとめいただいていて、まさにここと同じように監査の場合も、サイナーが通常、大きな会社であれば複数名おりまして、監査の場合は公認会計士に限っていますけれども、保証の場合も恐らく同じようなメンバーがサイナーとしてサインをする。状況によってはサステナビリティに詳しい人が入って、一体として業務を提供するケースが多くなるのではないかとイメージとしては持っているということでございます。その辺り、参考までにということで発言させていただきました。

以上でございます。

【堀江座長】

どうもありがとうございます。

他、いかがでございましょうか。オンラインで御出席の委員の方、よろしゅうございますか。

特に発言の希望がなければ、委員の先生方からの御意見等はここで打ち切らせていただきますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、残った時間で、最後に、オブザーバーで御出席の方々でもし発言希望があればお願いいたします。一瞬早かったので、では、公認会計士協会、それから経団連さんということでお願いいたします。

【日本公認会計士協会】

発言の機会いただきまして、ありがとうございます。公認会計士協会の太田でございます。何点かコメントさせていただきます。

まず、業務執行責任者、サイナーに求められる知識・能力に関しましては、スライド14ページの御提案に基本的に異論はございません。その上で、まず保証業務におきましては、監査や法規等の専門的な知識・能力に加えまして、サステナビリティ情報は、財務とのコネクティビティを確保するという必要がありますので、御提案のとおり、会計に関する専門的知識・能力、これも当然必要になると考えてございます。

一方、サステナビリティ自体についても、当然でございますけれども、十分な知識・能力を身につける必要がございます。当協会では、サステナビリティに関する能力開発シラバスを昨年公表いたしまして、現在、本シラバスに沿いまして体系的な研修プログラムの開発を進めてございます。シラバスは、公認会計士が持つ知識・能力に追加して必要と考えられるサステナビリティの開示・保証の知識・能力の習得に必要な内容をまとめたものでございまして、ぜひ参考にしていただければ幸いでございます。

自主規制機関の役割に関しましてコメントをさせていただきます。現在の上場会社の監査人登録制度、これは2022年の公認会計士法改正により導入されていますけれども、監査人としての適格性の審査は当協会が担ってございます。これは協会の知見・ノウハウを活用することとか、中小監査法人等においても十分な能力・態勢を整えられるように、法制度による規律づけに加えて、協会におきまして監査法人の育成・支援策を講ずることが有効であると考えたためでございます。

サステナビリティ保証業務においても、自主規制機関が保証業務実施者の育成・支援に指導機能を発揮して、自律的に保証業務の的確な実施体制を構築していくということは社会の期待に応えるものと考えてございます。なお、当協会が自主規制機関の役割を発揮させていただく場合は、自主規制の対象といたしましては、会員である個人の公認会計士、法人については監査法人、これに限定されると考えてございます。

以上でございます。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

実はオンラインでももう2件オブザーバーの方から発言の御希望が出ていますので、経団連様、ちょっと手短に、ポイントを突いて御発言いただければと。申し訳ございません。

【日本経済団体連合会】

承知いたしました。ありがとうございます。経団連の魚住です。

サステナビリティ保証の制度設計の検討に当たっては、やはり実践可能性のある合理的な保証水準をいかに設定できるかが鍵であると思っており、先行する欧州の実態をよく検証いただきたい。どういった効果があって、それがどう競争力に結びついているのか、投資家がどう利用しているのか、そこはしっかりと検証すべきと考えております。

本日の論点であります保証業務実施者に求められる人的体制の整備に関しましては、信頼性確保の観点、資本市場、利害関係者の理解も得られやすいというところから、事務局案に賛同いたします。ただ、厳しい要件を設定することで保証側のリソース不足を引き起こすということは避けなければいけないと考えます。ですので、既存の専門家や実務者も含まれる形を取りつつ、保証業務者を早めに育成し実施者の数自体を増やしていく必要があると考えてございます。

2つ目の論点、業務執行責任者に求められる知識・能力の点ですが、あくまでサステナビリティに関する保証でございますので、今の御提案でございます会計士の方に限るというところは、少しレベルが高すぎると考えてございます。段階的に今後、保証の対象企業が増えてくることを考えますと、リソースの逼迫を避ける意味からも、将来的な状態を見据え、門戸を広くした制度設計をお願いしたいと考えてございます。中長期的な観点から、市場競争を通じての保証業務の品質確保を期待したいところです。

3つ目の行政機関と自主規制機関の役割の在り方に関しましては、一定程度のコントロールが必要というところはそのとおりだと考えますが、やはりそこは財務情報とサステナビリティ情報の基本的特性の違いをしっかり踏まえて検討いただく必要があろうかと考えます。22ページ目で先ほども委員の方からの御指摘がございましたけれども、金融庁の協会に対する監督について今回議論が行われておりませんので、これが財務諸表の監査とサステナビリティ情報の保証で同じでよいのか、それとも違う必要があるのか、法的な位置づけや許認可の取消し等も含め、しっかり議論する必要があると考えます。

最後の任意保証につきましては、やはり企業の自主的な取組をなるべく尊重いただいて、どんどん取組が進んでいくような方向性に持っていっていただければと思っております。CSRDがまだ確定はしておりませんが、日本の国内制度化のスケジュールと少しずれる部分も出てくると考えてございます。場合によっては欧州のほうが先に適用になる企業も今後出てくると考えられ、これらの企業の開示は任意開示の扱いになるのか等々、どう扱うかも今後議論が必要かと考えてございます。

以上になります。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

ちょうど定刻になってしまいましたけれども、2件、御発言希望がオブザーバーの方からございますので、数分オーバーすることをお許しいただければと思います。

それでは、関経連様、本当に1分か長くても2分以内でお願い申し上げます。

【関西経済連合会】

関経連、中島でございます。簡潔に申し上げます。

13ページの保証業務実施者に求められる人的体制のスライドについてでございます。上段に組織体制に関する論点が記載され、下段にサイナーの個人の知識・能力に関する論点が記載されておりますが、これらは分けたほうがより議論がしやすいのではないかと考えています。

また、サイナーの役割と求められる知識・能力の部分に、「ISSA5000では」と記載されていますが、ISSA5000では合理的保証も限定的保証もいずれもカバーしているはずですので、まずは限定的保証を想定し、幅を持たせた要件定義ができるとよいのではないかと考えております。

次に、14ページでございます。14ページ右側に青字で記載いただいている案に、公認会計士の資格を有することまたはこれに準ずることとありますが、他の方から意見もあったように、この要件はハードルが高く、実質的に監査人以外に対する門戸が閉ざされてしまう懸念があるため、Non-PAも関与可能な内容とすることが望ましいと考えております。例えば15ページの右側に記載されていますフランスその他の保証業務提供者の要件を参考にし、かつこれらの資格・学歴等は海外で修得したものも含むとよいのではないかと考えております。

3点目、20ページ、行政機関と自主機関の役割の在り方についてでございます。資料の上段、行政機関の役割のうち、中央の業務実施時に3つ挙げられているものは、いずれも基準や規制の策定について触れておりますので、水色に白地の文字で書かれております「業務実施時に遵守する基準の策定等」とすることが望ましいと考えております。

25ページの任意の保証については、有報における任意に関する考え方をお示しいただいておりますけれども、24ページ最下段に記載されている有報以外における任意の保証の場合の論点についても、考え方の結論を記載いただければと考えております。これについては、前回までの議論で、有報以外の開示書類における保証は引き続き金商法等の記載の対象外であるため、当該保証の要否等は各企業の判断に委ねられるべきとの結論が出ている旨を記載いただければと考えています。

最後に、今回の資料に記載がございませんが、欧州でオムニバス法案が公表され、CSRDのWave2の開示スケジュールの後ろ倒しが見込まれる等、国際的な動向も変化しておりますので、こういった変化を十分踏まえた上で慎重な議論を行っていただきたいと考えております。

以上でございます。

【堀江座長】

それでは最後に、日本労働組合総連合会様、1、2分でお願いいたします。

【日本労働組合総連合会】

連合の片山と申します。よろしくお願いします。

私から1点、保証業務実施者に求められる人的体制の整備に関して、サステナビリティ保証業務を公正・円滑に遂行するために、労働分野あるいは人権など幅広い専門的知識を有する人材を構成員として配置いただくことを検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

以上です。

【堀江座長】

どうもありがとうございました。

それでは、定刻をちょっと過ぎてしまいましたので、討議を全て終了させていただきます。

本日は幾つか極めて具体的な御提案等もいただきましたので、これを踏まえまして、本当はこの3回目でもう終わりと思っていたんですけれども、もう1回、申し訳ございませんが、この専門グループを開催させていただければと思います。

最後に、事務局のほうから、御連絡等がありましたらお願いいたします。

【犬塚開示業務室長】

次回の専門グループの日程でございますけれども、既に御調整を始めさせていただいておりますが、皆様の御都合を踏まえた上で決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。

事務局からは以上です。

【堀江座長】

今日はお忙しいところ、朝からお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

(参考)
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