金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第3回) 議事録

  • 1.日時:

    令和6年6月28日(金曜日)10時00分~12時20分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

    【神作座長】  
     おはようございます。定刻より少し早いのですけれども、皆様おそろいということですので、ただいまより金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ第3回会合を開催いたします。皆様、大変御多忙のところ、また足元の悪い中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
     本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、よろしくお願い申し上げます。
     本日、弥永委員は御欠席と伺っております。
     会議を始める前に、事務局から留意事項をお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】  
     事務局を務めさせていただきます野崎と申します。よろしくお願いします。
     本日の会議におきましてはオンライン会議を併用した開催となっておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システム上のチャットにて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いします。なお、対面で御参加の委員におかれましては、挙手をいただければ、座長から指名いただけます。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。それでは、早速議事に移らせていただきます。
     本日は、事務局より資料の御説明をいただいた後、質疑応答及び討議を行いたいと存じます。それでは、事務局の金融庁から、資料についての御説明をお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】  
     それでは、事務局説明資料に沿って御説明させていただければと思います。
     まず、目次ですけれども、1つ目として、従来から御議論いただいております開示基準の在り方、適用対象・適用時期というところの方向性。2つ目としまして、開示基準の導入における主な論点というところで4つほど記載しておりますけれども、そちらについて御議論いただければと思います。最後に保証制度の導入における論点を簡単に触れた後に、御議論いただきたい事項をまとめております。
     では、早速2ページにいっていただきまして、サステナビリティ開示基準の在り方と適用対象・適用時期の方向性のイメージです。下の図に示しておりますように、2027年3月期から適用義務化というところで、2つ目の黒丸ですけれども、企業等の準備期間を考慮し、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業から段階的に導入する案を基本線としつつ、国内外の動向、それから保証に関する検討状況等を注視しながら、柔軟に対応していくということとしてはどうかというふうに記載しております。
     次のページから、サステナビリティ開示基準の主な論点に入っていきます。4ページには個別論点として、下にあります①から④のポイントを記載しております。
     まず、5ページ目をお願いします。1つ目、時価総額の算定方法です。こちらもIFRSの「法域ガイド」で5年というところが出されておりますので、一番下の四角にありますように、適用となる期の直前までの5事業年度末の時価総額の平均値を用いることとしてはどうかという案を1つ示させていただいております。
     次のページにいっていただきまして、二段階開示(経過的な措置)です。こちらにつきましても、ISSB基準において認められた経過措置では、報告初年度につきましては、財務諸表報告後に半期報告に併せてサステナビリティ報告を行うことが許容されているところです。我が国においても、法定適用の初年度には二段階開示を容認するというところが考えられるのではないかというふうに思っております。二段階開示のやり方ですけれども、有報で一段階目の開示を行って、二段階目のやり方としては、有価証券報告書の訂正というスタイルと、それから半期報告書で記載していただくという2つのスタイルがあるかなというふうに考えております。
     具体的に一段階目で何を書いていただくのかということが重要かと思いますけれども、こちらは下ですけれども、2023年3月期、昨年の3月からサステナビリティ情報の開示を開始しておりますので、そこで記載されている情報というのは一段階目で書いていただくと。他方で、一段階目で記載が難しいと想定されるS2のScope3等につきましては、作成が難しい情報について二段階目にしていくというところで、そこの切り分けというものをどう考えていくのかというのも1つの大きな論点かなというふうに考えております。
     次の7ページ目に行っていただきまして、同時開示と二段階開始のイメージです。最終的にはというか、同時に開示するというところが原則となるんですけれども、二段階にする場合には、下の図にありますように訂正報告書、あるいはちょっと時間がたってしまいますけど、半期報告書でやっていくというスケジュール感を示しております。最終的に同時開示でかつ制度保証もというところになってきますと、やはり期末から3か月以内というところが実務的にもいろいろと難しいかと思いますので、提出期限の延長というところも検討していただければというふうに考えております。
     次のサステナビリティ開示基準の経過措置、こちらはISSB基準の経過措置の御紹介ですので、飛ばさせていただきます。
     次の米国の事例もスキップさせていただきまして、次、10ページ目を御覧いただければと思います。今年の5月にIFRS財団が「法域ガイド」というものを最終化しております。下の表にありますけれど、まず、適用開始前の戦略と、それから適用開始後の戦略というところの2つがありまして、まず、適用開始前の状況としては、信頼できるロードマップをしっかり示していくということによって、ISSB基準に導入していることをコミットしているということが表明できるということになっております。
     それから、適用開始後の戦略ですけれども、真ん中の黄色の部分ですけれども、例えば今、ISSBで認められている経過措置を1年というふうにするのでなくて、それを1年から2年に延長するというような措置を取った場合には、経過措置を限定的に導入しているというステータスになると。その経過措置が過ぎて、ISSBが求めている経過措置期間、なので1年なんですけれども、1年の経過措置という段階に入った段階で、ISSB基準の完全な導入というスタイルになるということです。
     それを分かりやすくお示ししたのが次の11ページ目でして、ISSBのほうではall or mostということで、例えば時価総額1兆円以上の企業、日本だとそれで時価総額74%がカバーできるというところですけれども、これをもってall or mostを達成しているというふうにみなされる場合には、ISSBがもともと認めている経過措置1年であれば、2028年3月期から完全な導入ということになりますし、経過措置を1年増やして経過措置2年とした場合は、2028年3月期は限定的な導入として、黄色のカテゴリーになりまして、2029年3月期からは完全な導入ということになるということです。
     続きまして、12ページ目です。海外に向けた情報開示の本邦での開示方法ということで、こちらも何度かこの場でも御議論いただいておりますけれども、欧州のCSRD等の海外制度に基づくサステナビリティ情報の開示を海外に向けて行った場合には、日本の投資家に対しても確実に情報提供がなされることを確保することが重要という考え方に基づきまして、例えば臨時報告書の提出とすることが考えられるかというのが1つ論点としてあります。
     次の項目です。次はサステナビリティ開示基準の任意適用の促進に向けた取組というところについて御説明させていただきます。14ページ目を御覧いただければと思います。
     サステナビリティ情報の開示の推進につきましては、これまでもコーポレートガバナンス・コードですとか、記述情報の開示に関する原則、それから、記述情報の開示の好事例集というものを公表しておりまして、こういったもので任意開示の促進を行ってきたというところです。
     その状況を絵に描いたのが次の15ページ目でして、まさに上にありますプリンシプルを通じた開示の推奨というところと、あと、それに沿って企業の方々が開示の実務に取り組まれて、それによって好事例が出てくると。その好事例を我々のほうで抽出して好事例集として公表することによって、またこれを御覧になって、さらに開示の改善につなげていっていただくというような好循環をつくりつつ、サステナビリティ情報の任意開示の底上げをしていくというところが1つ望ましい姿としてあるのかなということでお示しさせていただいております。
     次の任意適用の在り方というところですけれども、まず、TCFD等の自主的な開示の流れというものは、サステナビリティ開示基準に基づく強制開示が開始されてからも維持・拡大していくというところが重要かというふうに考えております。強制適用を控える企業の事前準備としても活用されている、活用できるというふうに考えております。
     記載事項の考え方のイメージですけれども、まず、もともと必須事項として、昨年から導入しております、2023年3月期より適用されている現行法上のサステナビリティ開示というところに加えまして、任意に適用する、しない項目を明示していただくというところが1つあるかと思います。
     実際に任意開示のやり方としましては、全部適用、部分適用、二段階開示、同時開示、それから参照書類による開示、保証の有無、保証範囲と、様々なカテゴライズが可能かと思っております。ちょっとここで留意いただきたいのは、仮に部分適用というふうにした場合には、サステナビリティ開示に準拠している旨の表明はできないということです。ISSB基準でも、全てを適用することによって準拠表明ができるということになっておりますので、部分適用の場合には準拠表明はできないのですけれども、他方で、対応可能な事項から開示を進めるという観点から、部分適用も推奨してはどうかというふうに考えております。
     あと、参照書類による開示というところで、統合報告書による開示というものが日本の実務で進んでおりますけれども、有報でこれを参照するというところも推奨していくということです。
     注の1ですけれども、投資家の投資判断にとって重要な事項については有報にもしっかり記載していただくというところが必要となっております。あと、開示自体が任意ということなので保証も任意という位置づけではありますけれども、こちらも注2でありますように、投資家の投資判断を誤らせないように、取扱いの明確化というものも進めていく必要があろうかというふうに考えております。
     次がScope3のところにいっていただきまして、18ページ目です。IFRS S2号及びSSBJの公開草案のいずれにおきましても、温室効果ガスの排出の絶対総量をScope1、2、3に分類して開示するということが求められております。そして、Scope3はGHGプロトコルの15のカテゴリー別に分解して開示する必要が出ております。注の1にありますように、重要性の判断が適用されるというところなので、それに基づいて開示していただくというところです。温室効果ガスの排出の測定については、GHGプロトコルに従うというところです。
     右側の吹き出しにありますように、Scope3のGHGの排出量の開示には、自社外、上流下流のデータを集計して開示しなければいけないというところで、様々な課題とか、実務的な乗り越えなければいけない課題があるというふうに認識しております。
     次のページ、19ページ目です。Scope3のGHG排出量の測定というところですけれども、直接測定と見積りを使用した測定の2つを示しておりますけれども、見積りの使用を含む可能性が高いということが前提として考えられております。こちらで下のほうにもありますけれども、報告日時点で企業が過大なコストや労力をかけずに測定可能な全ての合理的な裏づけ可能な情報を用いることが要求されるというところなので、こちらの過大なコストや労力をかけずにというところが1つ大きなポイントになるのかなというふうには考えております。
     次のページ、21ページに飛んでいただきまして、具体的にScope3のGHGの排出量を開示されている企業の例を掲載させていただいております。有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の欄におきまして、前年度のScope3のGHG排出量を含めて開示しておられまして、その後に公表する任意開示書類で当年度の情報を記載されているというところが1つ事例としてあります。
     次のページ、22ページにおきましては、こちらは有報ではGHGの総排出量に関する取組の概要を記載した上で、サステナビリティレポートにおいて、具体的な排出量ですとか、可視化に向けたロードマップを開示されているという会社もあります。
     海外の事例、23ページ目でありますけれども、こちらではアニュアルレポートにおいてScope3のGHG排出量を開示した上で、計算方法の詳細については、その他の報告書において開示しているという例があります。ロールスロイスの例は、2022年の12月期というもので、実際のScope3も開示されているんですが、提出日が翌年の2月23日ということで、2か月程度で出されているというところです。
     次の24ページ目を御覧いただければと思います。Scope3の考え方でございますけれども、情報利用者の方々の声を伺っておりますと、Scope3のGHGの排出量の情報開示は必要であるものの、完璧な開示を求めているわけではなくて、可能な範囲での開示の下で、企業と情報利用者との対話を通じて開示精度の向上を図っていくということを求める声があるというふうに承知しております。
     吹き出しにもありますように、完璧なデータでの開示が難しいということは投資家も承知していると。同じセクター内で開示の好事例が出てくれば、他社が追いつこうということで開示がより充実していくのではないかということですとか、あと一番下にありますように、Scope3の開示はリスク把握に役立つ。それがリスクの低減につながって、企業価値の拡大につながる可能性もあるというようなお考えをお持ちの方もいらっしゃいました。
     個別論点の最後でございますけれども、虚偽記載です。まず、重要性の話です。
     26ページに行っていただきまして、まず、従来の財務情報とサステナビリティ情報というのは、そもそも何が違うのかというところをまとめたものです。2023年にCOSOが公表した資料ですけれども、支配力から影響力、それから定量的なものから定性的・記述的になると。過去情報から将来予測情報になるというところで、大きな違いということを示されているところです。さらにサステナビリティ情報については、バリュー・チェーンも含めた開示というところも、相違点として大きなところとして指摘されているところです。
     28ページ目に行っていただきまして、そういった違いを念頭に、サステナビリティ情報開示に係る重要な虚偽記載等についてどのように考えていくのかというところを示しております。ある開示につきまして、重要な虚偽記載等として、エンフォースメント、課徴金刑事罰、民事責任の対象となるには、まず、重要な事項または事実についての虚偽記載または記載の欠缺に該当することが必要となるというところです。
     重要性ですけれども、こちらはこの下の表にまとめておりますように、サステナビリティ情報と財務情報等で同様の定義ということで、連関ないし一体性があるというふうに考えられるということです。具体的には省略したり誤表示したり不明瞭にした場合には、利用者が行う意思決定に影響を与えると合理的に見込み得るというところが1つのメルクマールになっているというところです。
     一方で、重要性の判断につきましては、財務諸表に関する重要性の判断と必然的に異なるという考え方も示されておりまして、SSBJの公開草案におきましても、重要性の判断は企業固有のものというふうなことを書かれているというところです。
     続きまして、過去の財務情報の開示規制違反に関する課徴金納付命令の事例を記載しております。こちらは後ほど御参考にいただければと思います。
     30ページ目です。現行の金商法の体系ですけれども、開示規定の実効性の確保をするため、行政処分、民事責任の追及を容易にする特則規定及び刑事責任に関する規定をまとめているところです。
     次に、セーフハーバー、31ページ目を御覧いただければと思います。有価証券報告書では、記述情報の充実が図られる中で、将来情報等に係る虚偽記載等の責任について、いわゆるセーフハーバーの考え方が示された後、サステナビリティ情報の記載欄を設ける際の議論の中で、ガイドラインの改正につながったという経緯があります。
     最初の2018から19年には、セーフハーバーの議論が進められて、パブコメの回答という形で金融庁の考え方を示していたところですけれども、一番下にありますように、2023年1月にガイドラインの改正というところで明確化を図っているところです。
     次のページに、ガイドラインの中身を記載しているところです。
     33ページ目は、こういったセーフハーバーの考え方に沿って開示をされている例を、1つ載せさせていただいております。詳しくは右下の囲みを御覧いただければと考えております。
     続きまして、34ページ目です。こちらはセーフハーバー・ルールについての海外の取組というところで、米国SECについては、将来予測に関する記述についてのセーフハーバー・ルール。カリフォルニア州については、Scope3の排出量に関する開示の虚偽記載に関するセーフハーバー。英国は、よりジェネラルな形で記載されているところです。
     セーフハーバーの検討につきまして、35ページ目ですけれども、サステナビリティ情報というのは、先ほど申し上げたように将来情報を含むもの、それから、バリュー・チェーンも含めた支配力の及ばない第三者のデータに一定程度依存しなければいけないという特徴があるところです。
     サステナビリティ情報の開示につきましては、投資家の投資判断にとって有用な情報を提供するという観点では、虚偽記載等の責任が問われることを懸念して、企業の開示姿勢が萎縮するということは好ましくなく、上記のような特徴に応じたセーフハーバーの在り方を検討するということが重要ではないかというふうに考えております。
     なお、有価証券報告書においては、記載すべき重要な情報を記載していないという場合には、不記載により虚偽記載等の責任を負う可能性もあるということにも御留意いただく必要があり、今年の有報レビューにおきましても、一番下にありますように、本来であれば有報に記載すべきと考えられる重要な戦略並びに指標及び目標の記載がなされてない可能性があるという事例も見受けられていますので、その両面でしっかりとセーフハーバーについて考えていく必要があろうかというふうに考えております。
     続きまして、最後の課題である保証です。37ページ目で全体像をお示ししておりますけれども、具体的な論点としては、38ページを御覧いただければと思います。
     まず、1つ目の論点としましては、サステナビリティ保証の範囲・水準をどうするのか。2つ目として、サステナビリティ保証業務の担い手をどうするのか。3つ目としまして、サステナビリティ保証業務に関する保証基準、倫理基準・独立性基準をどうするのか。4つ目としまして、サステナビリティ保証業務実施者の検査・監督の在り方。それから最後、自主規制機関の役割と、こういった考えられる論点の大枠を示しているところです。保証につきましての議論は、詳細につきましては、次回以降も含めてしっかりと御議論いただければというふうに考えております。
     最後、40ページ目に、今御説明させていただきました事項をまとめております。1つ目の大きなブロックとしましては、サステナビリティ開示基準の在り方及び適用対象・適用時期についての論点、それから2つ目としまして、サステナビリティ開示基準の導入における論点、最後、保証の導入における論点、こちらについて本日御議論いただければと思います。
     私からは以上です。
     
    【神作座長】  
     御説明どうもありがとうございました。
     それでは、これより委員の皆様方から御意見、御質問をお伺いする協議の時間とさせていただきます。限られた時間ではありますけれども、全ての委員の方から3から4分以内で御質問、御意見を頂戴できればと思います。
     本日御欠席の弥永委員から御意見をいただいておりますので、まず初めに、事務局から、弥永委員の御意見について御紹介をお願いしたいと思います。
     
    【野崎企業開示課長】  
     弥永委員からいただいております意見書を読み上げさせていただきます。
     海外で開示した情報を日本の投資者に対して提供しないでよいとすることは、金商法が定める開示規制の目的からは不適切であると考えます。まず、臨時報告書による開示であれば、日本における開示のために、情報の作成時期を変更する必要はないので、有価証券報告書提出会社に過大な負担が生ずるということはないものと思われます。
     また、日本の企業であれば、通常日本語で情報の作成及び開示内容を決定し、それを英訳等して外国で開示すると推測されますが、もしそうであれば、外国で開示した内容を日本語に翻訳するという必要はないのではないかと思われるところです。
     仮にそうではなく、開示情報の作成の全プロセスが終始外国語で行われるのだとしても、当該外国語での開示情報を日本語に訳すことなく、外国語で開示することすら要求しないことは、明らかに日本国内の投資者保護に欠けると思われます。日本国内ではシングルマテリアリティであり、EUなどではダブルマテリアリティであるという事実があっても、それは日本国内でゼロから情報を作成する必要があるかどうかに影響を与えるものにすぎず、EUなどで作成した情報を日本国内で開示することを要求することが不適切であるという根拠にはなり得ないと思われます。
     国内投資者が外国投資者より少ない情報しか得られないという制度は合理的ではあり得ないと思われ、外国で開示した情報をそのまま臨時報告書で開示することは最低限要求されるべきなのではないかと思われます。この最低限であれば、企業にとっての追加的費用や手間は極めて小さいものと思われるからです。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、委員の皆様方から御意見を頂戴したいと思います。会場で御参加の方は挙手をしていただき、オンラインで御参加の方はチャット機能でお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。
     井口委員、どうぞ。
     
    【井口委員】  
     御指名いただきありがとうございます。また、御説明ありがとうございました。40ページにあります御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げたいと思います。
     最初のサステナビリティ開示基準の在り方等のところですが、資料に示していただいている開示基準の在り方、それから、スケジュール感などに賛同いたしたく思っています。なお、資料の2ページ、4ページのロードマップの最後にありますプライム市場全企業への適用義務化につきましては、即、強制適用ではなくて柔軟に対応していくのであって、資料に書かれているとおりですが、まずは、任意適用の拡大を図るということを報告書がつくられる際には明記していただければと思っております。
     2つ目のサステナビリティ開示の導入という論点のところです。1つ目の黒丸の中の海外に向けた情報開示の取り込みですが、これは御説明ありましたように、ESRS等で開示されるインパクトマテリアリティに基づいた開示が主になると思っております。昨今、国内の機関投資家含めて、インパクト投資というのが1つの大きなテーマになってきておりまして、また大きく広がってきていますので、こういった開示は有用な開示になり得るのではないかと思っております。ただ、弥永先生もおっしゃっていますように、これを和訳する必要まではなくて、そのまま掲載していただければいいのではないかと思っております。
     2つ目の黒丸にあります、「法域ガイド」とのトレードオフとの関係です。そもそもは、これまでも議論されておりますように、同時開示というのが大前提の中で、特別措置ということで、経過措置が議論されていたと思います。また、早期にISSB基準の完全な導入がなされた市場と認識されることは、日本の資本市場の信頼性向上にとっても非常に重要で、至上命題だと思っております。ですので、経過措置は1年に限るというのが妥当ではないかと考えております。
     また、ISSB基準の完全な導入がなされた市場と認識されるには、この資料に御記載いただいている適用の仕方に加えて、ISSB基準とSSBJ基準の同等性をISSBから認めてもらうということも大前提にありますので、ISSBとも密接にコミュニケーションを取っていくということが非常に重要になると考えております。
     3つ目の任意適用の拡大についてです。特に任意適用が重要になるというのは、当面は強制適用の対象になっていない時価総額5,000億円未満の企業さんにどういうふうに任意適用を広げていくかがポイントになると思っております。ただ私の感覚では、この辺りの時価総額の企業さんから、開示意欲というのは低下していくと経験上思っておりまして、このような中、好事例だけでどこまで本当に任意開示が進むのかはやや疑問に思っております。前回も申し上げましたが、この資料にも御記載いただいていますように、TCFDがソフトローにもかかわらず、ここまで広がった背景には、ガバナンス・コードに定められたということが1つの大きな後押しになったと思います。ですので、タイミングの問題はあると思うんですけど、ガバナンス・コードにSSBJ基準に基づいた開示を求めることを定める必要があるのではないかと思っております。
     4つ目の黒丸のScope3の開示のところとなります。資料の24ページに、アナリスト協会のISSB基準セミナーを取り上げていただいて、どうもありがとうございます。ここのお三方というのは、いわゆるESGを専門とするESGアナリストではなくて、金融や自動車セクターなどを御担当されている外資系、あるいは国内系の運用会社のセクターアナリストの方々ということになります。こういった企業価値を分析するセクターアナリストの方々は、今後ISSB基準あるいはSSBJ基準の開示情報の中心的な使い手になってくると思っておりますし、こういった意見というのは、今回は、国内にいらっしゃる投資家の方なんですけど、グローバルの投資家での意見でもあると思っています。そして、ISSB基準のScope3にプロポーショナリティが導入されている背景には、こういった国内外の投資家の意見が反映されているとも思っています。
     ですので、資料に御記載いただいておりますように、Scope3の開示における、こういった投資家の期待とか、基準の在り方を、企業さんにしっかりお伝えするということが重要ではないかと思っております。
     最後、保証制度の導入の論点です。これについては、今後議論されることになると思いますが、開示とともに、情報の信頼度を高める保証の役割というのは重要と思っております。グローバルでの保証導入という動きもありますが、最近、海外の機関投資家団体も、ISSB基準ができたということもありまして、これをどう各国に定着させるかということとともに、保証の在り方に議論をシフトしていっているようにも認識しております。企業の情報開示に向けた内部統制の確立も含めたISSB基準の開示実務の定着が、第一の最優先課題だと思っておりますが、保証の導入の在り方についてもここに御記載いただいているように、議論していく必要があるのではないかというふうに思っております。
     以上でございます。ありがとうございました。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     ほかに御意見いかがでしょうか。三瓶委員、どうぞ。
     
    【三瓶委員】  
     三瓶です。御指名いただきありがとうございます。私も40ページの論点に沿ってお話ししたいと思います。
     まず、最初に、適用対象・適用時期についてですけれども、2ページに示されている27年3月期から段階的に導入する基本線ということが、いろんなことを考えたときに現実的な最善策かなというふうに思います。
     そして、保証に関するところですけれども、保証導入よりも、先ほどの井口委員と同じですけれども、やはり早期の義務的開示を開始することのほうを優先すべきというふうに思います。ですから、義務的開示をして翌年から保証すると、そういう形でよろしいかと思っています。
     次に、大きな2点目のところです。基準の導入の論点のところで、4ページにコンパクトにいろいろまとまっていますけれども、下段の①のところ、時価総額の算定方法などは、次のページにもありますけれども、予見可能性を重視するということが大事だと思います。ですから、いろんな計算方法があると思いますけれども、複雑過ぎないということが大事であろうというふうに思います。ですから、5ページでいえば上段のほうがいいと思います。
     そして、4ページの論点の②、③に該当するところですが、二段階開示、同時開示、任意適用についてなんですけれども、まず言葉として、任意適用というのと任意開示というのを明確に区別したほうがいいかなというふうに思っています。適用という言葉を使った場合には、その表現は準拠性があるということを示したほうが明確になると思います。そうすると例えば、任意適用という言葉を使う場合には、対象企業または開示時期について義務的適用されてない状況で適用する場合に当てはまるというふうになります。他方、部分的な基準準拠というのは、これはISSBが認める経過措置の期間を超える場合とかですけれども、そうするとこれは任意適用ではなくて、適用ではなくて任意開示だと、そういうふうにすると分かりやすいと思います。これはここで議論する際にも分かりやすいし、また、ここの議論をフォローするいろんな関係者の方にとっても分かりやすいし、また、開示利用者にとっても分かりやすいというふうに思います。
     その結果、任意開示と任意適用という言葉を使い分けて、でも任意開示はもちろん促していきたい。それでできるところからやっていくというのが進んでいって、その先に発展的に今度は任意適用というのもあって、ある一部のところは強制適用になっていくと、そんな感じで広げていくということはあり得るかなというふうに思います。
     そこでなんですけれども、経過措置の議論もありますけれども、例えばですけれども、強制適用の対象以外の企業が二段階開示を3年行って、4年目に同時開示をしたとします。それは今の言葉で言うとどうなるかというと、最初の2年の二段階開示は任意開示、3年目以降が任意適用になります。こんな感じで捉えると、利用者側も非常に分かりやすいというふうに思います。
     次に同時開示ですが、これは6ページにもいろいろ御説明がありますけれども、経過措置として二段階開示を行う場合の報告書について、我々ユーザーとしては、EDINETで書類検索をします。そのときに、EDINETの閲覧可能期間というのは非常に重要です。例えば、最新のものを見るだけという利用の仕方ではなくて、ある企業を重点的に調べたいときに、何年も遡るということはよくあります。そのときに、有報は今、EDINETで10年遡れます。この4月から臨時報告書については、これまで2年だったのが5年に延長されているということです。なので、どのぐらい見られるのかというのは重要なポイントです。ですから、半期報告書は今まで3年でしたけれども、これ、何年になっているのかな、ちょっと気になるんですけれども。ということであれば、やはりここは長く遡れるという意味では、有報の訂正のほうがいいかなというふうに思います。先ほども議論が出ていました、海外での情報開示を本邦で開始する場合というのは、そういう意味では臨報が5年遡りますから、非常に重要だというふうに思います。
     次に、同時開示の企業負担について、ある企業、株主総会前、13日前に有報を開示している企業にヒアリングしました。結論から申し上げると、排出量の報告について、温対法に基づく報告と、算定範囲、定義、算定期間を統一してもらえれば、今後もサステナビリティ情報について同時開示を行いつつ、総会2週間ぐらい前に有報を開示できるというふうに言っています。今年4月から温対法で電子報告システムEEGSというのがありますけれども、そこで報告した排出量から、GHGプロトコルと整合したScope1、2への換算を容易にする機能が付加されています。これは非常にありがたいことなんですけれども、もう一歩省庁間でインターオペラビリティについては追求していっていただきたいなというふうに思っています。
     その際に重要な点というのは、これもヒアリングから分かったことですけど、財務報告をするときに、当然当年度の事業活動について関わるデータを集計するわけですけれども、厳密に言うと、どこかに当年度分の締め日というのがあるんですね、データを集計する。その締め日までに集計して、随分後から分かる当年度分データというのはあるけれども、それは翌年度に回すということを繰り返していくことによって、連続性や一貫性、比較可能性が担保されるわけですけれども、財務報告でそうやっている。そうすると、報告期限が全然違う温対法だと締め日が変わってしまうと。なので、これが財務報告と同じ締め日で集計していいということになると、非常に全体の効率性が変わるということをおっしゃっています。ですから、そういったことも考慮して、省庁間ですり合わせをしていただきたいなというふうに思います。
     最後にエンフォースメントとセーフハーバーについてですけれども、現場でどういう場合にそれが非常にクリティカルかということの例を1つ申し上げたいと思います。今、市場では第三者ESG評価機関というのがかなり重要なポジションを占めていますけれども、彼らが企業一社一社についてESGレーティングをつけたりします。例えば、7段階レーティングがあるうちの中位の4段階目というところはかなり重要な意味を持っていて、上から4段階目以下のレーティングはファンドに組み入れてはいけないよとか、組み入れるんだったら何%までということが欧州のアセットオーナーから言われたりします。そうすると、開示の内容が不正確であることによって、そのレーティングが上から3なのか4なのかもし変わったとすれば、これは相当重要な投資判断の情報になってしまいます。ですから、ちょっとした誤記入ではそこまでレーティングは動かないんですけれども、ただそういうことはあります。なおかつそういった個々の企業のESGレーティングを集めて、今度は、1つのファンドのESGレーティングをつくったりもしています。そうするとこれは、一般の個人投資家等がESGレーティングの高いファンドを買いたいなというときに、ここにも影響してしまいます。ですから、二次利用、三次利用のところでいろんな投資判断間違いというか、投資判断に重要な情報として使われるのに、その判断を間違えるということが起こり得ます。ですから、これは極端なことを言うと訴訟リスクになるかもしれませんから、そういうことも踏まえた上でのエンフォースメントと、一方で開示しやすいようにセーフハーバーという、このバランスを考えていただきたいなというふうに思います。
     最後と言ったんですけど、保証について1点だけ。論点5のところで、自主規制機関のことが書いてあります。これについては、公認会計士以外の保証業務の実務者、実施者ということも想定されていますので、そういった方々も入ってくることを前提に自主規制機関を考えることが重要で、保証の担い手別に自主規制機関が2つできてしまったりすることは、どうしても避けてほしいなと思います。
     以上です。 
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     オンラインでの御発言の希望を寄せていただいています。阪委員、近江委員、柿原委員の3名でございますけれども、このうち近江委員は11時までに御退出と伺っておりますので、順番が前後いたしますけれども、近江委員から先に御発言いただけますでしょうか。
     
    【近江委員】  
     申し訳ございません。近江です。発言の機会をいただきましてありがとうございます。では、私のほうからも、40ページの議論事項について幾つか申し述べさせていただきます。
     サステナビリティ開示基準の在り方、適用対象や時期につきましては、お示しいただきました基本線に賛成いたします。ただ御留意いただきたいのは、繰り返しになりますけれども、最終的なゴールがプライム全上場企業の適用であることを明確にする必要があるということであって、それが任意適用を促すことにもつながると考えております。任意適用を進めるための取組としまして、部分適用や二段階開示、参照書類開示などの推奨という事務局からの御提案に賛成をいたします。
     また、任意適用を進めるための環境整備につきましては、開示好事例集などもされてございますけれども、例えば、サステナビリティ開示の充実が資本コストを低減させて企業価値向上につながるということについての調査研究などをさらに後押しして、企業側と共有していくということなども考えられるかもしれません。これは三瓶委員もおっしゃっていたことですけれども、開示に取り組むことによる企業側のベネフィットがあると思っておりまして、例えば、GHGプロトコルと温対法の間でのインターオペラビリティの向上ということは、検討の余地があると考えております。
     議論事項のうち、時価総額の算定方法、二段階開示や同時開示方法、海外に向けた情報開示に関する具体例については、基本的に御提案内容に賛成しますが、7ページに示された同時開示の場合に、有報の提出期限を遅らせることにつきましては、有報のみ記載されている財務情報や注記情報などの、企業分析や投資判断への重要性を鑑みますと、やはり開示を1か月延長するということへの投資家側の抵抗感は高いのではないかと認識しております。同時開示を難しくしている情報は何かということになりますと、つまるところ6ページに記載のとおり、Scope3というところで限定的な情報ではないかというように考えておりますけれども、この後の委員の方々の御意見をお伺いして、そこは検討する必要があると考えております。
     また、Scope3は24ページに記載のとおり、投資家が投資先企業のバリューチェンを俯瞰して気候変動に関するリスクや機会の所在を理解する上で大変有用な情報ですけれども、これが推計の塊であるということは投資家は理解しておりますので、最初から完璧な開示を求めるのが可能と考えているわけでもありません。ですので、セーフハーバー・ルールにおいて、これが合理的なスタンスに基づいて誠実に開示されていれば、行政処分の対象にならないことを明確にして、開示に対して企業側が消極的にならないよう、十分配慮する必要があると考えます。
     最後に保証制度についてですけれども、一言だけ述べさせていただきますと、情報を利用する立場から見ますと、やみくもに保証範囲を広げるということによって開示が遅くなるといったところがむしろ心配でありまして、むしろ鍵となる情報の信頼性が確保されて、財務とサステナビリティの統合的な把握が可能になる、そういったことに対しての妨げとならないということに御留意いただけますと幸いです。
     私からは以上になります。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、阪委員、御発言をお願いいたします。
     
    【阪委員】  
     阪でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。3つ申し上げます。
     1つは、今、お示しいただいています40ページの論点の上のほうですね。時価総額の算定方法。具体的には、説明資料の5ページの適用対象企業の決定を、過去5年間の株式時価総額の平均を取ることについてです。株式時価総額というのは会計指標と比較してボラティリティが非常に大きいために、複数年の平均を取るということで、一時の変動の影響を受けにくくなるということから、5年間の平均を取るということについて、判断基準としては妥当だと思っております。ただし、平均の理論でありますのが、平均を取ることは、母集団の平均に収束するときに意味があるというふうにされていますので、株価にトレンドがあるときには気をつける必要もあるかなということも申し添えておきます。
     次、2つ目について、40ページの水色の2番目、任意開示を含む開示の在り方についてです。今、御説明いただきました方向性に、基本的には賛成しております。その上で、長期的に全体的な開示の在り方を一定程度見据えておくことも必要かと思っております。ISSB基準の内容は、従来のサステナビリティレポート、統合報告、コーポレートガバナンス報告などの内容と重複する部分があり、また現在、我が国の開示の全体像が複雑になっています。統合報告書やサステナビリティレポートはより多くのステークホルダーに読んでいただけるという観点から課題を抱えていました。今回のサステナビリティ基準による開示の導入によって、より開示が複雑化してしまうのではなく、全体として分かりやすい開示体系として、より多くのステークホルダーに読んでいただけるようになる、より多くの企業に開示していただけるようになるということが理想的だと思っております。また、海外から見たときの分かりやすさという点でも、このことは重要なことかと思っております。
     ある程度の時間はかかると思うのですけれども、長期的な開示の全体像の方向性を明らかにして、段階的にそれに向かって進めていくことが、企業の心理的な負担感を減らし、前向きな対応を促進していただくためにも重要かと思っております。この方向性によって、任意適用の方向性なども定まってくるのかと思います。こういった議論については、ISSBの「報告における統合」の将来的な議論にも、日本から積極的に意見発信していただけるとありがたいかなと思っております。
     最後の保証については簡単にだけ申し上げます。サステナビリティ情報は不確実性が高いため、ヒストリカル情報を念頭に置いたこれまでの保証とは同じではないということに配慮していただいて、先ほどの御説明にもあったところですけれども、企業の前向きな開示を萎縮させない、厳格過ぎない保証制度というのが望ましいと思っておりますということのみを申し上げさせていただきます。
     以上です。ありがとうございました。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、オンラインで御参加の柿原委員、御発言をお願いいたします。
     
    【柿原委員】  
     川崎重工業の柿原でございます。御指名ありがとうございます。御議論いただきたい事項につきまして6点ですが、それぞれ手短に申し上げたいと思います。
     1つ目は、サステナビリティ開示基準の導入における論点の中で、資料12ページの海外に向けた情報開示の本邦での開示方法に関してです。欧州CSRD等の海外制度に基づくサステナビリティ情報の開示を行った場合に、臨時報告書を提出するという案が示されておりますけれども、サステナビリティ情報についての虚偽記載に関する認識がまだ不明瞭で、共通認識になり切ってはいない状況におきましては、金商法上の虚偽記載のエンフォースメントによって企業の開示を萎縮させるおそれがあり、開示内容に影響が出る可能性があるため、臨時報告書として提出することに反対いたします。この点につきましては、企業のホームページで日本語の要約を任意開示する方法など、実務面を考慮した対応が適当であると考えております。
     2つ目は、ISSB基準を導入する際の経過措置についてです。資料10ページのISSB基準の完全な導入という戦略の選択肢ではなく、経過措置を限定的に導入するという選択肢を検討している国も多く、これが現実的であると考えております。
     また、同じく10ページの適用開始後の戦略につきまして、米国は経過措置後の延長導入に区分されるという認識でよいものか、いずれかのタイミングで御教授いただければと思っております。
     3つ目は、任意適用の促進についてでございます。サステナビリティ開示や保証は、その内容や範囲は発展途上の状況でございます。有価証券報告書で適用義務化より前に任意適用した場合、虚偽記載へのインフォースメントだけでなく、適用を義務化された時点での開示と内容が乖離するリスクがありまして、任意適用につきましては統合報告書で行うケースが多いのではと考えております。
     4つ目、重要な虚偽記載等の要素となる投資家の投資判断における重要性についてです。非財務情報に関しましては、重要な虚偽記載であると判断するのは難しい面がありますが、29ページの実例のように、実態とはかけ離れた記載となっている場合などが限定的に該当するものと認識しております。
     5つ目は、サステナビリティ情報に関わる重要性、虚偽記載及びセーフハーバーについてです。サステナビリティ情報は、中長期の未来情報を多く含む特性があるというのが共通認識であると承知しております。また、過去の状況を踏まえますと、日本企業は虚偽記載の指摘を恐れて記載を躊躇しがちですし、国内の利用者側も、事実や根拠を求める傾向があるというふうに考えております。その結果として、開示水準が欧米に見劣りする可能性があると考えており、本来の目的である外資の呼び込みから遠ざかってしまう懸念を持ってございます。セーフハーバー・ルールはサステナビリティ情報の不確実性等といった特性を考慮し、開示媒体として有価証券報告書ありきではなく、統合報告書での任意開示も含めて検討するなど、企業が開示に萎縮することがないような適正なルールを設定していただきたいと思っております。
     最後に6つ目、保証制度の導入についてです。サステナビリティ開示の限定的保証、合理的保証のそれぞれについて、財務情報監査との比較で保証のコストがどの程度かかるかを明確にした上で、コストベネフィットの観点から、どこまでの開示と保証を求めるかについて検討する必要があります。その際、米国と欧州のケースにおいて、保証コストの差異を明らかにするべきですが、現時点においては米国のように気候変動に限定して保証Scope1、2に限定することも有力な選択肢と考えてございます。
     また、保証を義務づける場合は、当面は限定的保証で準拠性の枠組みからスタートするというのが現実的であるとも認識しております。さらに保証の担い手につきましては、現時点のおいても保証会社の確保競争が激しいという状況や、コスト競争力の観点からも、保証業務の担い手は公認会計士以外も含む制度にすべきであると考えております。
     以上になります。ありがとうございました。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、ほかに御意見ございますでしょうか。松井委員、どうぞ御発言ください。
     
    【松井委員】  
     ありがとうございます。それでは、私は導入時期、セーフハーバー、それからインターオペラビリティについて発言をしたいと思います。
     各委員の御発言のとおり、早期に導入することにより投資家の信頼を得るということが非常に重視されるということは分かるのですけれども、他方で、早期に導入した場合に上がるリスクというものもあるかと考えております。特にサステナビリティ情報に関しては、導入時の負担にすでに相応の配慮がなされていることは了解しておりますが、それでも事業会社の現場に負担がかかる規制であると考えております。また、任意開示においては連結の範囲等が自由であったのに対し、規制のもとではそうした点の裁量が減って新しい負担が相当程度生ずるということが見込まれるのではないかと想像しています。通常こういった厳しいスケジュールで上意下達をいたしますと、現場で生じやすくなることとして、データ操作とか捏造などによる認証不正のようなものが起きやすくなるというのが昨今のニュースなどで記憶に新しいところではないかと思います。
     繰り返しになりますが、これらのことを懸念して、最初からScope3などでは、あらかじめ負担の少ない方法というものを許しており、不正のインセンティブはないのではないかという考え方もあります。しかし、急いでこれを導入しようというふうになったときに、存在しないデータをつくるであるとか、まったく合理性のない推計を使うといったようなことがもし生じてしまいますと、将来的にこれを正しく直していくということが難しくなってしまうなど、結局、日本のサステナビリティ情報に対する信頼が落ちるというリスクが発生しないかということを少し心配しております。そういう意味では、先ほど三瓶委員が御提案いただいたように、温対法のデータをそのまま使えるような、なるべく負担を小さくする工夫が非常に重要ではないかというふうに考えております。
     また、セーフハーバーについてですけれども、これも先ほど申したとおり、信頼性の低いような推計データがある程度使われることというのが当初は許容されるかもしれないですし、またセーフハーバーも必要かもしれません。しかし、導入を契機として、存在しないデータをつくってでも形を整えることが評価されるような構造的なゆがみであるとか、内部統制の欠落というような問題が生じてしまった場合に、これをセーフハーバーで救うのかといったような問題も発生してしまう可能性があり、急いだ導入というのは禍根を残す可能性というのがあるのかもしれないと今考えております。そういう意味では、現場によくヒアリングをした上で、何を使うと無理のない、嘘のない導入の成功を阻むリスクを最小限にできるのか追求していただきたいと思います。
     以上です。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     ほかに御意見はございますか。それでは、藤本委員、お願いいたします。
     
    【藤本委員】  
     御指名いただきありがとうございます。私も御議論いただきたい事項に沿って、幾つかコメントさせていただきます。
     まず、開示の在り方、適用対象・適用時期ですけれども、2027年3月期から、3兆円から段階的に導入していくことについては賛同いたします。ただ制度開示におきましても、まだ議論すべき事項が幾つかあるのではないかと思っております。例えば、有価証券報告書における開示箇所、情報構成の在り方、デジタル報告、XBRLの在り方、ISSB基準やESRS等、他の開示基準を同時に適用する場合などの対応も考えられるかと思っております。また、SSBJ基準を早期に適用したいと考えている企業も想定されると考えられますので、できるだけ早い段階でこうした論点について議論して、一定の方向性を示していただきたいと思っております。
     それから、導入における論点ですが、まず、適用対象となる幾つかの論点の中で、適用対象となる時価総額の算定方法についてです。こちらは今お示しいただいているように、IFRS財団の「法域ガイド」の考え方に沿って、5年間の平均値を用いるという提案ですがも5年というのは感触として少し長いという印象があるのと、日本の場合はちょうどプライム市場等、市場区分の変更がございましたので、このタイミングをどのように考えるのかということもあります。これらの点も御考慮いただいた上で検討いただくといいのではないかと思っております。
     それから、海外に向けた情報開示を本邦において取り込む方法として、臨時報告書を御提案いただいていると思います。もともと有価証券報告書というのは投資家保護の観点から、重要なサステナビリティ情報は開示されているはずであるということと、臨時報告書というのは、基本的には企業の重要事実が何か発生したときに開示される書類であると考えておりますので、そうしますとCSRDに基づく開示書類を臨時報告書で開示するのは、少しそぐわないのではないかと思いますし、先ほど柿原委員がおっしゃっていただいたとおり、エンフォースメントの観点でも、やや過度な開示をしなければならない、もしそこで虚偽記載が発生した場合にどうなるのか、そういった点も考える必要があるのではないかと思っております。
     もしこれがCSRDで日本の企業が開示されたということを周知する、あるいは投資家の方に知っていただくことを目的するとするのであれば、そのような報告を、例えば金融庁さんとかが受けて、情報開示を例えばリスト化して開示するなど、別の周知を行う方法も考えられるのではないかと考えております。
     それから、ポチの2つ目の経過措置について、先ほど井口委員もおっしゃっておられましたが、SSBJ基準の最終化も来年の3月に予定されていますし、国際的な比較可能性の観点からも、経過措置を2年とするのはやや長いのではないかと考えております。特に報告のタイミングに関しては、やはり二段階開示は初年度のみ認めるという形で、2年目以降は同時報告を実現するということがあるべきではないかと考えております。
     それから、3ポチ目の任意適用の中で、先ほど三瓶委員がおっしゃっていただいたのと重なりますが、ここでいう部分適用という考え方について、SSBJ基準を準拠したものでないのに任意適用の一部として解釈されるのは、やや誤解を生みやすいのではないかと考えております。任意適用という言葉をどう定義するのか、また、部分適用という言葉をここで使うべきなのか、この点に関しては十分に御留意をいただいた上で、記載を考えていただきたいと思っております。
     それから、最後の点になりますが、保証についてです。こちらは論点たくさん掲げていただきましたけれども、全般的なことについてコメントさせていただきます。まず、保証業務の品質確保の観点からは、登録とか能力開発、エンフォースメント含む品質管理、や懲戒処分など、こうした論点を個々に議論するというよりは、全体的な制度の在り方というものを、枠組みを示した上で検討いただくことが必要と考えております。また、最初のほうは対象企業も絞られているということもございますので、現行制度を活用するなど、社会的コスト、それから実行可能性も考慮して検討いただきたいと思っております。
     また、制度保証は2028年3月期ということですが、開示が制度化されるタイミングでも保証のニーズはあると想定しておりますので、できるだけ早く検討をし、方針を決めていくということが望ましいのではないかと思っています。
     それから、最後になりますけれども、保証業務実施者に公認会計士や監査法人以外を含む制度とする場合には、その違いによって求められる能力や品質管理を含めた体制や、保証業務の水準に相違があってはならないと考えております。この点は、我が国の開示の信頼性を確保する観点から、保証の制度設計において最も重要な点になると考えております。
     私からは以上でございます。ありがとうございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、田代委員、御発言ください。
     
    【田代委員】  
     ありがとうございます。今ページが上がっているところの順番で、簡単に幾つかお願いしたいと思います。
     1つ目につきましては、タイミングと、あと時価総額別に開示するということには賛成でございまして、時価総額の算定方法につきましては、参考ということで書いてありますけれども、ここにあるように、予測が非常に難しいということもございますので、上に書いてある算定方法がよいのかというふうに思います。
     また、導入時期につきましては、いろいろ準備の段階というのが難しいというのは、当初は金融機関であってもばたばたしているような状況ですので、製造業の皆様におきましては非常に準備が大変だとは思いますが、一方ではグローバルの開示が進んでいる中でございますので、今お示ししている形の開示の記述というのがよろしいのではないかと思います。
     また、CSRDの件でございますが、これも対象がCSRDがどこまでいくかというのがまだ分からない中だとは思いますが、CSRDの対象になっても、こちらの今、皆様でお話をしているのに該当しない場合ですと、さらに任意適用を自社で選ばない場合ですと、英語のみの開示になると、やはり日本語の開示があったほうがいいのかなと思います。特に今日、あまりお話には出てきていませんが、国内においても日英同時開示ということで、海外の投資家のニーズに合わせて、東証などはプライムにおいて2025年までといっているので、当然逆もしかりで、日本語の開示を英語にしているのに、英語の開示を日本語にしなくてもいいというのは、ちょっと道義的にないのではないかなと思います。
     あと保証につきましては、これからの議論だというふうに認識しておりますけれども、やはりこのような形でのサステナビリティ開示をする会社さんが多くなれば多くなるほど、保証についてもニーズが高まるというふうに認識しておりますので、認証制度とか品質の担保というのが、もしかすると金融庁さんの負担になるのかもしれないんですが、ちょっと最初の段階では広範囲に可能性を探るべきではないかなというふうに思います。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、会場で御参加いただいている小林委員、関口委員、浅川委員の順番に御発言をお願いいたします。まず、小林委員からお願いいたします。
     
    【小林委員】  
     ありがとうございます。私からも、40ページに沿って幾つかコメントさせていただきたいと思います。
     まず、サステナビリティ開示の基準の在り方、適用対象・適用時期ですけれど、算定については、私も予測可能性ということを考えまして、5ページに示されている上段のやり方が妥当と思います。
     2点目は、適用の時期です。基本的には二段階開示、ご提示いただいたスケジュールに賛同いたしますが、一方で、開示の質を上げるという意味では、必ずしもここに記載されているプライムの5,000億以上への適用で完了ということではなく、企業の規模関係なく算定・開示を前向きに促していくことが重要と考えます。単純にISSBの基準の完全な導入を目的とせず、社会全般に開示を促すための方策も必要だと思います。その意味では、プライム上場企業の適用の義務化のタイミングは、今のところ203X年度末と記載されていますが、もう少し明確にしておいたほうがよいかと思います。少なくともプライム企業に関しては、明確なターゲットをつくっておくことが必要であると思います。
     3点目は、海外での開示の本邦での開示についてです。これは性質上臨時報告書の趣旨に該当するものであるかというと、私の理解ではそうとも思えません。海外で開示した情報のの国内での開示義務化というよりは、海外の開示を国内でも開示をすることは、その企業の開示の姿勢をより前向きに見せているということのアピールになりますので、むしろ好事例として任意開示を促せば良いのではないでしょうか。日本語訳の義務化についても、これも企業の姿勢を示す1つのツールとして、特に義務化をする必要はないのではないと思います。
     4点目は保証制度についてです。保証制度がどういうタイミングで、どの程度制度として進み、そして保証提供者が育成されていくか次第によりますが、差し当たり最初の時点で3兆円、1兆円までの保証適用については、1年遅れであれば可能だとは思います。一方5,000億円以上への適用のタイミング(2029年3月)には、ある程度保証制度が確立できていると期待していますので、その段階であえて保証を一年ずらす必要はないのではないかと思います。この点は、今後の保証制度の具体的な制度設計、保証の提供者が本邦での育成状況次第と思いますが、具体的な時間軸も含めた議論を早急に進めていただきたいと思います。
     以上です。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、関口委員、お願いいたします。
     
    【関口委員】  
     ありがとうございます。私も、御議論いただきたい事項に沿って発言させていただきます。
     まず、1点目、今回の資料で、開示をまず進めて、その後、保証を進めていくという方針がクリアになったと理解しました。私は、当初は開示と保証は一体で行うべきだということを言っていまして、開示情報の信頼性を確保しつつ、開示の充実を進めていくためにはそのほうがよいと思っていました。しかし、これまでの議論を踏まえて、やはり開示を少しでも先行させたほうがいいという意見が多かったと思います。このため、これはこれでいいのかなというふうに思っています。
     もう一つの理由としては、今、我々もSSBJ基準等の任意適用の御相談をいただいているんですけれども、そうした中で会社様が任意適用を進めていこうとしていく過程で、保証業務の視点からも会社の準備状況を見てほしいというのは、実際に言われています。このため、もしご提案の形で制度化されるとしても、実際には初年度から保証業務提供者が会社と伴走するような形になってくるんじゃないかなと思っています。したがって、実質的には開示情報の信頼性を確保できるようにもなってくるのかなというふうに思っています。こうした点を踏まえ、お示しいただいているご提案を支持しています。
     2点目の時価総額の算定方法、二段階開示、同時開示、これらのご提案についても賛成いたします。海外に向けた情報開示、これは少し多分明確化をしたほうがいいんじゃないかなと思っています。今、書かれておりますのが欧州CSRD等の海外制度に基づくサステナビリティ情報の開示とされていまして、この意図は恐らく、日本企業グループがCSRDに基づいて欧州に向けて開示をする状況を意図していて、日本企業の子会社が開示することは特に想定していないんだろうと理解しています。もしその理解が正しいとしたら、主語を明確にしていただくと、誤解を避けるためにもいいんじゃないかと思っています。あと、「等」というところも、人によってはSECの例えば気候関連開示の規則に基づいたのが、もし入るとしたらこれは大変だというような話もありまして、こうした点について明確化をしていただいたほうがいいんじゃないかなと思っています。臨時報告書でということ自体はいいと思うんですけれども、こうした点について明確化をしていただいたほうが、誤解を避けるためにもいいんじゃないかなと思います。
     次の経過措置のところ、これはまさに今、SSBJが公開草案で、経過措置についてもコメント募集をしているということで、そこに対するコメントもいろいろ集まってくると思います。このため、この点について、ここでの議論も踏まえつつ、それからSSBJの公開素案に対するコメントも踏まえつつ、決めていくのが一番いいんじゃないかなというふうに思っています。
     次のところ、任意適用を着実に進めていくためにはということなんですけれども、これはまさに三瓶さんおっしゃっていただいたように、任意の開示の拡充というものと、任意適用というのはラベルを分けて、意味をクリアにして議論を進めたほうがいいと思います。その中で、私はやはり任意適用の促進を検討していくべきじゃないかなというふうに思っています。
     それから、次のScope3をはじめとしたという中で記載されている重要性の判断のところなんです。私は、IFRS、S1、S2のトランジションインプリメンテーショングループの会議も出ていますが、その中でも重要性の判断というのが重要だというのが繰り返し言われています。現時点でサステナビリティ情報における重要性の判断というのが、どこをどういうふうにしたらいいのかというのが必ずしも明らかになっていないという中で、重要性の判断というのは極めて開示情報をつくる上では重要、利用する上でも重要だと思います。
     また、今回お示しされているもので、エンフォースメントの実態というのが財務情報とサステナビリティ情報で、やや多分違っている。サステナビリティ情報、非財務情報は、実態に即したものというのをより重視しているということを提示されています。このため、どういうものが投資情報として重要で、サステナビリティ情報についてはどういうものがそうでもないのかというのを明らかにしていくと、今後の実務に当たって非常に役に立ってくるんじゃないかなとは思っています。その理解が進むと、セーフハーバー・ルールというのが本当に必要なのかどうかという点についても議論が進むんじゃないかなと思っています。少なくとも、将来情報のところについては、今のガイドラインで相当程度カバーされているのではないかと思います。あとは、Scope3のような不確実性が高いものについてどう考えるかということだと思うんですけれども、ここはまさに重要性の判断の在り方が分かってくると、この点についてセーフハーバー・ルールが必要かどうかというのがおのずと分かってくるんじゃないかなというふうに思っています。
     最後に、保証制度の導入に当たりということで、お示しいただいているとおり、本当にいろんな論点がありまして、私自身非常にこれは関心があるところです。しかし、今、企業様とお話ししていると、実際のところは、特に大手のグローバル企業においては、ほとんどが監査をしている監査法人ほぼ一択になってくるんじゃないかなと思っています。これまでの経験を踏まえると保証制度の構築は非常に時間がかかると思っていまして、だとすると、現実的にはまずはそういった監査人がやる場合だったら、どういう手当てが必要なのかというのをまず考えていって、その上でもうちょっと裾野を広げていくとしたら、こういった措置も追加的に考えられるというのは、段階的に検討を進めていくのが時間もない中で整備を進めていく上では一番いいんじゃないかなというふうに思っています。
     以上です。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、浅川委員、御発言ください。
     
    【浅川委員】  
     ありがとうございます。私も、40ページの論点に沿って、簡単にコメントさせていただきます。
     まず、初めにサステナビリティ開示基準の適用対象・適用時期ですが、基本的には御説明いただきましたスケジュールや内容に賛成いたします。その上で、これまでワーキングでも開示方法ですとか様々な御意見、本日も含めていろいろあると思いますので、そういった内容も踏まえて制度設計を考えていかれるというのはやっぱり大事かなというふうに思います。
     続きまして、適用対象となる時価総額の算定方法や二段階開示、海外対応ということですが、こちらも基本的に御説明いただいた内容でよろしいかと思います。二段階ということで、私の感じで言いますと、有報と半期報告書のほうが、もし事業者さんのほうが書きやすいということであればそういった形でよろしいのではないかなと思いますが、いずれにしましても、この辺りの負担感の議論というのは今までもあったと思いますので、そういったことに配慮された制度設計というのが大事かなと思います。
     それから、あと経過措置ですけれども、こちらもIFRS財団さんの文で見たときに、実態としてやはり2年というのが、多分実際のところなんじゃないかなという感じがしますので、ただいずれにしましても、早めの周知等というのはやはり準備のために必要だと思いますので、その辺りも御配慮いただければいいのかなと思います。
     続きまして、任意適用ですけれども、先ほども何人かの方からもお話ありましたが、やはり任意適用が進むようなメリットというかインセンティブみたいなものは、もう少し見える形で検討されるといいのかなというふうに思います。もちろん好事例というのもメリットの1つ、いずれ義務化されるということであればメリットになるとは思いますけれども、例えば、任意適用から始めた事業者さんに対しての何らかの、優遇と言うのがいいか分かりませんけれども、何かそういったものとか、差別化とか、そんなような目に見えるインセンティブがあると、より任意適用をしたくなるような事業者さんが増えてくるのかなというふうに思いました。
     それからあと、Scope3の重要性の判断ですけれども、30ページのところにもありますが、やはりScope3の算定は、かなり業種ですとか、範囲ですとか、データの取り方とか、いろいろ複雑になっているのが現状だと思います。ですので、これも細かく突き詰めていくと、やはり事業者さんの負担というのもありますので、30ページにもあるように、数字だけではなくて、どのようなデータ出自、その背景とか、そういったところも加味した形で何らかの仕組みをつくると、いわゆる誤謬ですとか虚偽というとちょっと言葉が厳しいような気もしますけれども、そういった間違いというものが減るのではないかなというふうに思いました。
     あわせてセーフハーバー・ルールのところですが、バリュー・チェーンはやはりかなりいろいろ多種多様だと思いますので、その辺りを考慮して、実務的に可能な範囲のセーフハーバー・ルールというのを検討されるというのが実務的かなと思います。
     最後に保証制度のところですけれども、こちらもこれからの議論ということですが、例えば、先ほどのScope3の例でもありますように、検証する側、保証する側は、やはり業種業態によるいろいろな差異ですとか、そういう不確実性ということをきっちり分かるということが品質確保には必要だと思いますので、そういった専門性も含めて、あるいは世界の動向とも整合するような枠組みも含めて、幅広い議論を検討していかれるといいのかなと思います。
     私からは以上です。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、会場で参加いただいております芹口委員、清原委員、また、オンラインで御参加の上田委員、高村委員、それから永沢委員の順番で御発言をお願いいたします。まず、芹口委員からお願いいたします。
     
    【芹口委員】  
     ありがとうございます。40ページに御議論いただきたい事項が3点ありますが、1点目の開示基準の在り方及び適用対象・適用時期につきまして賛成をいたします。本日は特に2点目、3点目のところで、新たにハイライトされたり追加いただいているところについて、3点コメントさせていただきます。
     まず、開示基準の導入における論点の中で、同時開示の部分が8ページで論点になっていると思いますけれども、前回お伝えしましたとおり、利用者といたしましては、サステナビリティ情報と財務情報のつながりが重要だと思っておりますので、経過措置は原則どおり1年に限定をして、同時開示を早期に進めていただきたいと考えております。一方で、開示基準の適用対象企業を拡大していくペースにつきましては、実務の対応状況を考慮しながら検討する余地はあると考えております。
     また、セーフハーバーについて新たに追加いただいておりますけれども、24ページに引用いただいております証券アナリスト協会のセミナーにもございますとおり、利用者といたしましては、Scope3の排出量の開示が重要だと考えておりますので、開示を躊躇されることがないよう、新たに追加いただく必要があると考えております。
     御提案いただいておりますとおり、グループの範囲外の企業から取得をし、その正確性を検証できないといった要素が新たに追加されることが想定されますが、無制限に免責するのではなく、一定の制限や規律を設けることも検討する余地があるのではないかと思っております。最低限どの項目が対象になるのか、テーマ別の開示基準を踏まえて特定をしたり、また、企業が情報の誤りを認識していたり、それについて過失があるといった場合には、当然ながら対象外に値すると思います。松井委員からもこの点、本日御指摘いただいているところで、何らか規律といったところも検討に値するのではないかと思っております。
     3点目は、保証制度につきましてたくさん論点いただいておりますけれども、主なポイントについてコメントさせていただきます。まず、38ページに論点を記載いただいておりますけれども、保証の範囲につきましては、利用者といたしましては、重要なサステナビリティ情報が漏れなく開示されていることが重要と考えておりますので、これに対する保証手続上の対応に期待があるということ、また、サステナビリティ情報は多様な性質を有しますけれども、可能な限り広い範囲の情報をカバーいただきたいと考えております。今年9月に完成予定のISSA5000の下、テーマ別基準やガイダンスの開発が進めば、より手続が明確になって保証の質も向上していくと思いますので、より広い範囲をカバーいただくことを期待しております。
     また、論点2の保証業務の担い手につきましては、現在の実務を考えますと、会計士以外の方も含めて対応いただくことに賛成いたします。情報の信頼性を担保するためには、保証業務を提供する方に高いレベルの倫理基準を遵守いただくとともに、資格や教育制度なども検討する必要があると考えております。
     また、論点3の基準につきましては、日本の実務の状況を踏まえた基準開発が必要だと思っておりまして、会計基準ですとか開示基準と同様に、国際基準をベースにした日本基準の検討が必要だと考えております。
     最後になりますけれども、追加の論点といたしまして1点申し上げます。保証の意義が何かを考えますと、保証提供者の金商法上の責任についても、今後義務化していく上では整理が必要ではないかと考えております。財務情報につきましては、監査証明を提供する方の責任が金商法上担保されておりますけれども、財務情報とサステナビリティ情報の特徴が異なるということも十分踏まえまして、検討する必要があるのではないかと考えております。
     私のコメントは以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続いて、清原委員、お願いいたします。
     
    【清原委員】  
     ありがとうございます。清原でございます。私も、40ページの御議論いただきたい事項のところに沿ってコメントさせていただければと思います。
     全体的なところなんですけれども、このような議論を進める中で、適用対象の話をしていると、どうしても義務的適用、強制適用というように「強制」というトーンが非常に強く出てくるのですが、今回、開示を充実していくという観点からすると、我々が気にしなければならない問題の1つとして、企業の開示姿勢がまだ必ずしも前向きになり切れていないことがあり、その文脈では、強制ですとか、義務化のことにかなりフォーカスした議論が強調されて伝わってしまうと、もちろんそれは必要なことではあるのですけれども、あまりよくない影響があるのではないかと気になります。同様に、任意適用というときにも、基準の一括適用というように、あたかも全部をやらなきゃいけないというような、何か「やらされ感」につながるような印象を企業の方が持たれることがあるとすれば、全然プラスにはならなくて、マイナスになってしまうのではないかという懸念があります。先ほど委員の方の御発言もありましたけれども、開示することの意義、メリットの点を考えること、それから、皆さんが気にされている法的責任の制限その他の責任に関するところもあわせて考えると、開示を充実することが、むしろ責任の観点から見てもプラスに働く面があるということ、そういったことを含めて、理解が進むということが非常に重要ではないかと考えるところであります。
     その関係で、今回整理いただいている事務局資料の法的責任のところで、刑事罰、それから行政的な責任、課徴金のところ、民事責任のそれぞれにおける主観的要件が違っていることをお示しいただいていて、対応する必要があるところがそれぞれ違うということも整理していただいているところですが、こういったことが広く伝わることがやはり重要ではないかと考えるところです。
     具体的に申し上げると、まず刑事罰というのは故意犯であること、しかも自然人の故意犯です。法人の両罰規定がありますけれども、その意味でいうと、よほど悪質なものでないと刑事罰の対象にはなかなかならないといえます。他方、課徴金のところになると、故意、過失を問わないということになるので、むしろ過失すらないときにもその責任を問われるかもしれないわけですから、金融庁が処分を下す課徴金については、ここがあまり厳しくなりすぎないことを考えていくこと、次に、民事責任のところは、故意、過失が必要となるわけですけれども、現在示されている企業開示ガイドラインのところにあるような考え方、責任を問われるものでないと考えられるという形で示されている考え方、解釈だけを示したとしても、必ずしも裁判所を拘束するわけではないわけですから、その意味でいうと、裁判などでそれが参照、斟酌されたりするとしても、企業としたら、まだ不安が残るという部分があるといえるのではないでしょうか。そうだとすると、もしかすると本法、すなわち金商法の中で民事責任について、現在ある過失責任のところを重過失でも十分かというふうに過失の要件のところを軽減すること、特にサステナビリティの関連で、皆さんがおっしゃっているように、そんなに厳密なところまで求めているものではない、将来のことをそんなにしっかり分かるものでもない、ということを踏まえると、過失責任という概念のところでは概念上は厳しく責任が問われそうに見えるけれど、実際には緩く適用していくようなことよりは、むしろ概念のところから、そもそも重過失がなければ責任は問われないというようにしていくこと、これも十分検討に値するのではないか、と考えられるところです。
     そのような考え方でいうと、法文のところでの考え方の整理と、開示ガイドラインなどで示されている解釈の明確化の話と、それからやはりその先の実際の適用のところ、例えば、記述情報に関する原則などありますけれども、そういうところを段階分けしてみて、それぞれの段階での考え方を整理して、それが共有されることによって、企業の方々が不必要な懸念を持ちながら開示に臨むことのないような状況、むしろ積極的な姿勢で開示をする、開示のメリットを取りに行っても大丈夫だということが分かるようになって、開示のベネフィットを企業の方が享受しようという姿勢が促されるような、そういう制度環境になっていくことが望ましいのではないかとも考えられます。
     そういう意味でいうと信頼性の確保と開示の充実をあわせて追求する、開示が充実することによって、開示される不確実な情報の背景や要因をも含めたところが開示され、投資家が開示情報をよりよく理解できるようになること。そこは言わないでおこう、というふうに開示を止める方向、開示を減らそうとするのではなく、こういうふうな不確実性の要因があるんですということをしっかり企業が開示していくこと、それを推奨するというか、そういう開示が促進されるようなことが望まれますので、そういう開示は投資家にも歓迎されますし、また企業にとっても責任の面でもプラスに働くということがしっかり理解いただけるような、そういった制度構築がされて、それが理解され周知されていくことがいいのではないかと考えるところです。
     先ほど委員から、無理強いをするような形になると現場に負担がかかるというお話がありましたが、そのことも私は非常に重要な指摘だと思っております。やはり開示を多くの上場企業に強く、強制的に求めていくということばかりを強調するよりは、開示を充実させることは責任を問われにくいことにもつながるし、投資家の評価などにつながるなどの開示のメリットがあるとの理解が広まり、そういう制度環境が整っていったうえで、開示する企業を徐々に広げていくようなことが望ましいのではないでしょうか。緩くするという言葉は適切ではないかもしれないのですけれども、あまりにも萎縮しがちな開示姿勢の企業が多い中で、まずはそこをできるだけ和らげていく、柔軟な適用が認められる、企業が実情に合った開示をすることが批判されない、というようなことを含めて、皆さんに種々のことが共有されて、前向きになれる制度環境が積み上げられていくのが望ましいのではないかというふうに考えるところであります。概括的なところが長くなりましたけれども、そういったふうに考えるところであります。
     次に、海外で開示された情報について、国内でも、それが同じように公表され、共有されるべきではないか、という点について、一般論として理想は分かるのですけれども、それが開示の萎縮につながりかねないことも、同時に考えなければならないというのは企業の方から御指摘があったとおりだと思います。制度として、現在の臨時報告書は確かに重要な事象が発生した場合や重要な決定があったときに提出されるものではあるのですが、ここで臨時報告書について改めて考えると、海外もしくは場合によったら統合報告書も含めてかもしれないですが、サステナビリティ関係の情報について、対外的に公表されている情報があるということが、臨時報告書を通じて一般に伝わり、認知、周知が進むといったらいいんでしょうか。すなわち、全部を記載するというよりも、何々が開示されました、その開示された場所はどこですというふうに、情報へのアクセスを保障するようなものとして臨時報告書を使うことがあってもよいのではないか。すなわち、フェアディスクロージャーでいうと、ホームページであっても当然公表があったという形で扱われていますけれども、やっぱりホームページへの掲載だけですとばらばらになってしまい確実に伝わるとはいい難いですので、法定開示制度の中で、情報が出されたということが広まること、情報の内容についてまで責任を問われる形ではなく、公表されたことを伝えるものとして、どこに行ったら情報を見ることができるかが分かるというような、そういった制度についてもこの機会に併せて考えてもいいのではないか、と考える次第です。
     こういったことは、場合によったら東証のTDnetのほうでやってもいいのかもしれないですが、TDnetとEDINETとが、将来的に統合されることもありうるのではないかという点もありますが、法定開示の枠内でも、こういう制度を検討していくことが、将来に向けてプラスになるのではないかと考えられますので、コメントをさせていただきました。
     法定責任のところに戻りますが、サステナビリティ情報に関して、現在の開示ガイドラインでは、将来情報についての不確実性、これに対する手当ては一定程度なされているというところですが、バリュー・チェーンのところに関しては、まだ十分に手当できていないというのは確かだと思います。バリュー・チェーンのところでは、将来情報に関わるものとあわせて、実績値などの記載もあります。それは過去情報なのですが、自己の支配下にない情報に関してまで責任を問われることがない、ということがはっきり分かるような形で、これについては、事務局資料の中の方でいいますと、34ページのところにカリフォルニアとかSECのセーフハーバー・ルールの紹介があるのですけれども、米国SECの規則のところは、最終化された規則のところが記載されていて、最終化される前の規則案の段階にあった、Scope3についてのセーフハーバーについて考え方については、ここには記載がないのですが、そこで示されていたのが、開示が合理的な根拠に基づいて、誠実に開示がされたときには虚偽に当たらない、Fraudulent Statementに当たらないという、そういう形での整理が示されていました。カリフォルニア州のルールはそれを参考にしているようなもののようですので、こういったものをも参考にして、日本においても、現状ある開示ガイドラインよりも広げた形のものを、バリュー・チェーンに関する責任制限の考え方として示すか、もしくはセーフハーバーとしてのルールを導入していくのが、これから望まれるのではないかというふうに考えるところであります。サステナビリティに関しては法制化が必要になる事項が多々ありますので、そこに合わせて検討していくのがよいのではないかというふうに考えております。
     あとは今日お配りいただいた参考資料の中でやはり重要だなと思うのが、参考資料の方の20ページのところにある財務諸表の作成における会計上の見積りです。ここのところで企業会計基準24号、ASBJのほうからコロナ禍の頃に示されたものですけれども、ここの考え方というのは、会計の世界ではもちろん十分理解されていると思うのですけれども、開示の世界においても同じような考え方が、やはりアクセスしやすいような形で、ガイダンスその他の中にも反映されるようなこと、これも含めて御検討いただいて、先ほど申し上げた法令、法文の見直しの検討のところと、それから開示ガイドライン、それからガイダンスのようなもの、それぞれにおいて考え方や必要な情報というものが整理されて共有されるように、そういうふうに進んでいけばよいなというふうに思っているところでございます。
     最後の保証のところですけれど、いろんな御意見が出ている中で、保証に関しては、保証対象事項がいろいろと出てくると、必ずしもそれらのすべてについて公認会計士の方々が持っておられる知見で全部カバーできるものでないだろう、といえると思います。とすると、そこは監査法人以外の方を含めて保証の提供ができるような制度の構築が必要になってくるのではないかと考えるところです。ただ、監査法人が今まで培ってきたプロセスその他の制度的な適正さというか、しっかりとした基盤というもの、監査基準や品質管理基準とかの厳格なルールがありますが、それと同様のものを実施してきていたとまでは言えなかったかもしれないそれ以外の保証業務提供者、ISOその他の認証提供者の方々にも、同じような形で、ただ、全く同じというわけでなくていいと思うのですけれども、同様のものができるようにしていく必要があり、それを導入するにはかなり時間がかかるということもあります。保証制度の導入に向けた議論と、保証制度が本当に機能し始めるところまでの間には、やはりそれ相応のタイムラグがあるということを踏まえた上で、議論が進めばよいのではないか、というふうに考えているところです。
     私からは以上です。ありがとうございました。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、オンラインで御参加の上田委員、御発言をお願いいたします。
     
    【上田委員】  
     上田でございます。御指名ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私も、40ページの御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきたいと存じます。
     まず、第1点のサステナビリティ開示基準の在り方及び適用対象・適用時期についてですが、これは既に御提示いただいている27年3月から時価総額3兆円以上から段階的に導入というスケジュールに賛成いたします。そして、過去にもコメントさせていただいておりますけれど、2030年以降とされている、時価総額5,000億円未満の会社についても、この後、できるだけ早く道筋をつけていただきたいと思っています。というのは、多くの企業において、開示しなければという機運が高まっているように感じております。特に我が国企業においては海外事業比率が高くて、自動車とか電子機器とか半導体というサプライチェーンに組み込まれている場合には、常に顧客からの要請で、グローバル水準での対応と開示というものが求められていると聞いております。
     そういうこともありまして、15ページに書いてある好循環というものを高めていくということが大変重要だと思っております。そこでは好事例集が書いてありますけれど、これ以外の有報レビューも、今年公表された報告書の活用が大変進んでいるということですので、そういう底上げしていただければと期待しています。そしてさらに言うと、そういう底上げをしても、一定程度のスケジュール、あるいは、次の点にも関係しますが、環境整備がないと実務対応できませんので、セットで御検討いただきたいと思います。
     環境整備について、第2点のサステナビリティ開示基準導入における論点にも関連するのですが、こういった時価総額水準の会社と話をすると、一番の懸念は、Scope3のデータの計算方法及び保証の在り方について、その厳格性がどうなのかといったところのようです。より言うと、厳格性とその濃淡、程度が分からないといったところでして、具体的にはScope3については、第三者の見積りを含む場合は認められないのではないかというような声をよく聞きます。そうすると保証が取れないのではないかといった心配があるようですので、その点、本日の資料にもありますが、投資家も含めた情報ユーザー側が求める水準感といったものについての共有と啓蒙を進めていただきたいと思います。本当に企業がせっかく開示しようという機運を潰してしまう、意欲が減退することがないように、後押しをお願いできればと思っています。
     また、統合報告書に開示されているのに、有報には開示されてないというようなお話もあったかと思います。これもしばしば話題になるところですが、有価証券報告書は虚偽記載への懸念が強いという、比較的制度設計の在り方が議論されるようですけれども、どうも企業の方にいろいろ聞いてみますと、組織内での有価証券報告書の作成部門カルチャーと、サステナビリティを含む非財務情報の作成部門のカルチャーが全然異なると。恐らく有価証券報告書は過去情報を正確に開示するという位置づけだと思うのです。恐らく今後の有価証券報告書は、将来価値を見積もれる情報の提供というふうに少し様子が変わってくると思いますので、この辺りは啓蒙活動をしていただく必要があるのかなと思っております。
     この点で少し関連するのですが、将来情報についてです。重要なのは、将来情報という性質上、変化する可能性がある前提を踏まえるということだと思っております。そうすると期中に将来情報の見積りというか予測に関して、大きな変化があるという場合もあろうかと思います。このような価値評価に大きな変化がある場合には、これも適時開示等でタイムリーなディスクロージャーというものを進めていただければと思っております。特に今後、有報の開示期限が4か月ということで延長される中で、タイムラグがさらに拡大することを懸念しております。したがって、将来情報に関わるマテリアリティ部分は、あるいは関連する情報部分においての大きな重要な変更がある場合には、翌期の有報での修正というのはもちろんですが、それを待たず、適時の開示を期待します。また、細かいところですが、16ページの任意適用について、別の委員からも御指摘ありましたが、部分適用は準拠ではないということ。これは専門用語で、専門家の中では共通理解だと思うのですけれども、有価証券報告書を見るのは一般投資家の方もおられます。そのため、部分適用という言葉を使っていいのかどうかとか、この辺りの用語についても、専門家だけではなく一般の情報ユーザー、投資家もいるという前提で少し御準備いただければありがたいです。誤解させないような文言のつくりというのを御検討いただければと思います。
     最後に、保証についてです。いろいろ会社と話していると、保証が、現在一番企業が気にしているポイントだと思います。私見としては、保証を理由に開示を遅らせるということは望ましくないと考えます。一方で、信頼性確保のためには保証制度の整備を急ぐ必要があると思っておりますので、ここの対応は次回以降ということですが、急ぎ御対応していただきたいと思います。特に企業にお話を聞いていますと、先ほどの話でありますが、Scope3の正確性によって保証が取れないというようなことを心配する企業が本当に多いようです。この点については、例えば、海外の動きを見ていても、例えば合理的保証がいいのか、限定的保証がいいのかということについても、投資家からはまずは限定的保証でもいいのではないか、将来的には合理的保証というように、投資家のほうがむしろ柔軟というか、現実的なのかなと思っています。
     ここも今までの議論にもありましたけれども、せっかく企業が開示の意欲が高まっているということで、萎縮させない、厳格過ぎない保証の在り方というものも、会計監査とサステナビリティ保証は性質も少し違いますので、御検討いただきたいと思います。
     保証については、グローバルにはIAASBであるとかIESBA等でグローバルな基準づくりというものが進んでおります。また、欧州においても、欧州中心、諸外国においても制度整備が進んでいると聞いているところです。こういったものを参考にしながら、我が国のあくまでもグローバルな競争力を持った市場というのが大きな目標でございますので、それに合わせた制度整備、そういう機会をいただきたいと思います。
     その場合には、新しい組織や仕組みづくりをつくるということも1つのやり方ではありますが、それと時間リスクも高くなりますので、既にある社会に存在する仕組みというものを活用していくというのも1つの手ではないかと思います。特に保証提供者については、実際には監査人に頼む企業が多くなると思います。一義的には公認会計士、監査法人というのが重要な役割を果たすと思います。それに加えて、それ以外の保証提供者という新しいカテゴリーが入ってくるかと思います。監査法人、公認会計士については、既に確立した監督の仕組み等がありますので、こういったものを使いつつ、社会コストはあまり過度にかけることなく、迅速な制度整備というものを今後御検討いただければと思います。
     以上でございます。ありがとうございました。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、オンラインで御参加の高村先生、お願いいたします。
     
    【高村委員】  
     神作先生、ありがとうございます。皆様と同じように、スライド40の御議論いただきたい事項に沿って発言をしていきたいと思います。
     まず、開示基準の適用対象と適用時期については、事務局からお示しいただいているように、27年3月期から、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業に適用するというような段階的な導入拡大という基本線のラインについて異論はございません。
     1つだけ申し上げると、これも直前に上田委員も同様の御趣旨でおっしゃっていたと思いますけれども、プライム市場上場の全ての企業に対して、できるだけ適用していただくということは非常に重要だというふうに思っております。これは任意であっても義務的であっても、本来のプライム市場の性格からしても、そうした適用を促していくということが必要だと思っております。適用を積極的に促していくためにも、少なくともこの時点で導入を目指していく年次の目標というのは、やはり定めるべきではないかと考えます。事情の変化によって今後見直しがあってもよいというふうに思いますが、しかし、どういうタイミングで導入を目指していくかということについては、やはり目標として持つべき、示すべきではないかなというふうに思います。
     2点目、同時開示と二段階開示についても基本的に異論はございません。二段階開示のいろんなシミュレーションをしていただいていると思いますけれども、もともとの原則である、同時開示というものの重要性は、とりわけ利用者の側から指摘をされているところであります。そういう意味では、制度保証を受けて開示する場合の有報の提出期限の延長という点は、いろいろな伴う課題はあるかと思いますけれども、ぜひ検討を続けていただきたいと思います。
     Scope3と、それに関わるセーフハーバー・ルールに関わるところでございます。企業の中期的価値の向上という観点からも、Scope3の開示というのは非常に重要だと考えております。これは、これまでもほかの委員からも御指摘があった点だと思います。ただ、SSBJで開示基準を議論していく中でも同じような議論をしていたと思っておりますけれども、Scope3の排出量の数字の緻密な正確さが必要ということではなく、むしろバリュー・チェーン全体を見渡したときに、その企業のどこに気候変動に関わるリスク、あるいは機会があるのかと、それに対応した企業のリスク管理、戦略がしっかり行われているのかということがScope3の排出量の開示に伴って期待をされているところと考えます。先ほど申し上げました数字の緻密な正確さよりは、こうしたリスクの識別と把握、それへの対応が合理的にできているのかということが、利用者にとってもより重要な観点であると考えています。事務局のスライドの中でも、エネルギーセクター担当アナリストの方のコメントの御紹介がありますけれども、それを基に開示主体と投資家との対話が進む、そのために必要な情報だという意味であります。
     セーフハーバー・ルールとも関わってくると思いますが、例えば、事実情報と申しましょうか、実態と異なる記載、あるいは重要である将来情報をあえて記載をしなかった場合等、具体的なエンフォースメントの対象となる事例についても、今回事務局が非常に丁寧に整理をしていただいて、御紹介をいただいていると思います。どなたか委員もおっしゃいましたけれども、現行の開示ガイドラインでかなりの部分、対応ができるのではないかというふうにも思っております。現行の開示ガイドラインで、一般的に合理的に考えられる範囲で具体的な説明がある、あるいは社内で合理的な根拠に基づく適切な検討を経ているということが要件になっているかと思いますが、これは引き続き、Scope3も含めたサステナビリティ開示においても妥当ではないかと思います。
     社内での合理的な根拠に基づく適切な検討が行われているかという点は、先ほどScope3のところでも申し上げたところと関連してまいりますけれども、むしろ緻密な排出量の数字よりは、開示する情報を社内でどのように検討し、決めたのかという、まさにそのプロセスが妥当に行われているのかというのが、虚偽記載との関係でも重要な要件になると考えております。
     積極的に開示していただく制度環境の重要性について複数の委員から御指摘ありましたけれども、1つには開示の基準、これはSSBJになるかと思いますけれども、そして、保証の基準の中で、例えばScope3についてどういった観点で開示をしていくのか、保証をしていくのかということについて、より明確な基準化、あるいはそのガイダンスを提供するということは、開示する企業のエンフォースメントへの懸念にも対応し、必要な対応の一つではないかと思っております。これは重要性の判断についても同様であるというふうに思っておりますけれども、今この段階では、エンフォースメントの文脈で申し上げます。
     それから、関わる論点として、1つは内部統制との関係があります。スライド27だったかと思いますけれども、米国におけるサステナビリティ情報に係る内部統制の議論について御紹介をしていただいて、日本の内部統制基準についても御説明をいただいております。先ほど申し上げました、社内での合理的な根拠に基づいて適切な検討が行われているかといったような要件については、例えば金商法上で求められる内部統制の仕組みを活用する可能性もあるのではないかということであります。現行法では内部統制については財務報告に限られていると理解しておりますけれども、非財務情報の開示について、その信頼性の確保のために、こうした内部統制を働かせるという考え方も、1つの論点としてはあるのではないかと思います。検討していく1つの論点として挙げさせていただきたいと思います。
     最後は保証でございます。前回も発言をさせていただきましたけれども、公認会計士以外も含む制度にするということについては賛成をいたしますが、同時に公認会計士、監査法人等が現行法で、資格や義務、責任、あるいは法令違反の場合の処分も含めたしっかりした制度の下でその業務が行われる仕組みとなっているということを考えますと、新たな担い手について、情報の信頼性、それは企業にとっても利用者にとっても期待する保証の質が提供されるという点からも、こうした同様の制度が必要だと思います。
     しかし、新しく制度をつくるという点については、非常に時間も労力もかかる。1つは、そのことを理由に開示のスケジュールが遅れる、あるいは保証の範囲が狭まるといったような、望まれる開示のタイミングや範囲等を変えるようなことは得策ではないと思っております。
     もう一つは、様々な専門家がいらっしゃいますので、保証については公認会計士、監査法人が行いつつ、しかし、業務の中で専門家と連携をするといったような形の在り方もあると思っておりまして、こうした具体的な連携、保証の在り方についても、今後検討していただきたいと思います。
     以上です。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、オンラインで御参加の永沢委員、それから、会場で御参加の堀江委員、森内委員、吉元委員の順番で御発言をお願いできればと思います。まず、永沢委員、お願いいたします。
     
    【永沢委員】  
     永沢でございます。私からは3点、意見を申し上げたいと思います。
     第1に、第1回でも申し上げたことであり、先ほど小林委員からも同様の御意見があったように思いましたが、サステナビリティ開示が上場企業に限ったもの、金融商品取引法が適用になる企業ばかりのものにならないよう、金融庁を越えて、省庁の枠を越えてこの問題には取り組んでいただきたいということを、最初に申し上げたいと思います。その上で、40ページの御議論いただきたい事項について、事務局から示された方向性には全て賛成いたします。
     次に、サステナビリティ開示の適用対象に関してです。時価総額5,000億円以上ぐらいまでは、グローバルに資金調達をされることも考えますと、具体的な期限を掲げて進めていくことが必要であろうと私も思います。そう考える一方で、時価総額1兆円以上の企業は、ビジネスグローバル展開をされている企業ばかりですので、サステナビリティ対応は欧米市場で生き残るための必須要件になっており、サステナビリティ情報の開示の重要性を経営トップが強く認識されており、無理なく進めていくことができそうに思いますが、時価総額5,000億円以上の第二のグループになると、例えば地方銀行など、ビジネス展開は国内にとどまっているが、資金調達のニーズがグローバルにあるという企業も含まれます。日本市場を底上げしていくという観点から、サステナビリティ関連のリスク管理やモニタリング体制についての情報開示について、海外投資家がどう重視し評価しているのかといったイんプットをこうした企業の取締役会を含む経営陣に入れる等のサポートを、金融庁や機関投資家に期待します。
     最後に、個人投資家としての立場からの要望となりますけれども、企業と対話ができるのは機関投資家のみです。個人投資家は難しいです。また、サステナビリティ情報の事例をいろいろと示していただいておりますが、基本的に定性情報が多く、量も多く、比較が難しいという状況があり、投資家側にも読み取る能力、リテラシーがかなり必要であると感じております。個人投資家には現状、こうした情報を理解することはまだまだ難しいところがございます。サステナビリティの情報開示が今後進んでいくことが期待されますが、個人投資家にもアクセスしやすく、そして、理解しやすい開示の方法を工夫していただくことも、一方で進めていただきたいと思います。
     デジタル化というイノベーションも十分に活用いただき、機関投資家と企業との対話の成果が個人投資家にも還元されるよう、情報開示の工夫をお願いしたいと思っております。今年の株主総会では、個人株主から、プラスチックの問題や人権等のサステナビリティ関連リスクをどうマネジメントしているのかといった質問が個人株主から聞かれるようになってきており、個人株主の質問に質的変化がみられたという話も聞こえてきています。このワーキング・グループでは有価証券報告書等を中心に、投資家に対する情報開示のあり方を議論する場ではありますが、ここでの議論の成果が個人株主にも還元されるよう、個人投資家目線のサステナビリティ情報の開示も今後、検討課題に加えていただくことを期待しています。
     私からは以上でございます。ありがとうございました。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、堀江委員、お願いいたします。
     
    【堀江委員】  
     どうもありがとうございます。まず、全般的な意見として、時価総額に応じて1年ずつずらして段階的に導入していくこと、それから、二段階開示を採用する考え方に賛成いたします。
     そこで、スムーズな制度導入の鍵を握るのが、実質的な準備期間となる任意適用の促進のフェーズだと考えています。法定開示企業の義務化以前の任意適用については、多くの企業にとって必ずしも十分な時間的余裕があるとも思えません。そういう意味で、制度的な縛りとして、部分的な適用を認めるとか、保証の免除を認めるということが現実的ではないかというふうに考えます。あわせて法定開示企業以外、つまりプライム上場企業以外についても、底上げを図るために、ほかの委員の方からも出ていましたけれども、特にプライム上場以外でも、いい事例があったらどんどん取り上げていただくとよいと思います。このように、プライムに限らないで好事例として取り上げていただくというのも1つのアイデアではないかと思いますし、また、CSRDの取扱いがちょっと難しいんですけれども、例えば経産省ですとか資源エネルギー庁、それから環境省等で様々な情報開示制度が進められていますので、そういったようなものをうまく今般の情報開示制度とつなげる、紐づけの一覧のようなものができると、作業の効率化につながるのではないかと思います。過度な負担にならないようないろんな工夫が考えられるかと思いますので、ぜひ御検討いただければというふうに思います。
     なお、保証でございますけれども、いろいろ議論あるんですが、大前提として2つのことが大事だというふうに思っています。1つ目は、まずは情報の利用者の立場に立ってもの考えないといけないということ。限定的保証だとか合理的保証だということではなくて、まず利用者にとって保証が必要なのは何かとか、そういったところを軸足にしないと、ちょっとおかしな制度設計になってしまうのではないかということと、それともう1点は、ここで議論されている制度の前提はあくまでも投資意思決定情報としての開示であり、保証だということだと思うんです。そういう意味で、例えばGHGの排出量の個別的な情報の信頼性というよりも、むしろ数年間の傾向に関する情報を踏まえて、この数年間というのがとても大事だと思うんですが、企業の財政状態とか経営成績とかキャッシュフローにどういうインパクトを与えているのか、あるいは将来どういうふうに変化していくのかといったような、そういう情報ですね。この保証はとても難しいと思いますけれども、こういった本質的なところを軸足に置かないと、何のため保証か、誰のための保証かということが分からなくなってしまうというふうに思います。
     その上で、保証を受ける企業サイドでは、先ほどからも出てきましたが、情報の開示がサステナ経営に結びつかないといけないので、ガバナンスの充実、それともう一つは、情報の信頼性を担保するための内部統制をどうやって組み込むかということが、とても大事なポイントになってくるのではないでしょうか。一方、保証主体側ですと、仮に部分保証みたいなことが起こると、ちょっとマニアックな話になりますけれども、主題の間のつながりの中で、最終的に保証の結論を述べる、保証の主題情報をどう特定するかとか、とてもややこしい問題もあり得ます。何でこういうことを申し上げるかというと、例えばサステナの場合には記述情報が多かったり、それから、将来情報を含むわけです。そうすると、重要性の問題等も絡んでくるんですけれども、保証の結果についての責任の問題が密接に関係してくると思うんです。保証の議論についての論点が、事務局にご用意いただきました資料には5つほど示されておりますけれども、併せて保証結果に対する責任の問題についても慎重に検討しないといけないと考えております。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、森内委員、お願いいたします。
     
    【森内委員】  
     森内でございます。私からは、2点述べさせていただきたいと思います。
     まず、事務局資料の2ページですが、サステナビリティ開示基準の在り方と適用対象・適用時期の方向性(イメージ)というところですけれども、この中で、保証制度の導入は、開示に遅れて導入するというイメージが示されています。一方で、第2回のワーキング・グループの事務局資料の中では、開示と保証の導入のタイミングについて、同時が望ましいというのも含めて選択肢が示されていたかと思います。したがって、もし今日の資料2ページのイメージでいくとすると、どういったメリット・デメリットを考慮した上で、このイメージでいくのかというところの説明責任を、次回お示しいただくとよろしいのではないかというふうに思いました。
     それから、もう1点が16ページの任意適用の在り方というところです。複数の委員の皆さんからもご意見がありましたが、やはり任意適用と任意開示というのは明確に分けておいたほうが、やはりよろしいのではないかというふうに思います。特に任意適用の時期が早い企業を中心に、任意適用の準備のための場をしっかりとつくるということが重要ではないかと思います。それと併せてこの時期に保証業務提供者、あくまでもこれはプロフェッション・アグノスティックになるという前提ですが、複数の保証業務提供者の業務の水準であったり、プロセスであったり、品質であったり、こういったものをできるだけ幅広いステークホルダーの皆様、特に情報のユーザーの皆様に見えるような仕組みというか、そういったコミュニケーションの場があると、よりその他の保証業務提供者について皆さんに理解をしていただけるのではないかというふうに思います。
     以上です。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     続きまして、吉元委員、お願いいたします。
     
    【吉元委員】  
     ありがとうございます。では、私も40ページに沿って発言させていただければと思います。
     まず、サステナビリティ開示基準の適用時期についてですけれども、時価総額に応じて段階的に適用するという基本的な思想には賛成しております。ただ適用時期の最終確定の前提としては、やはり保証の在り方ということをきちんと議論、検討されるということが条件になると思っております。
     続いて、二段階開示と同時開示の方法についてですけれども、こちらも議論の前提として、同時開示や二段階開示というものの要件ですとか効果というものを、ある程度整理、明確化していく必要があるんじゃないかと思っています。企業実務の感覚からすると、2年目から要求されることになる保証の範囲や程度、あとは保証人サイドの対応状況次第でもあるんですけれども、同時開示というのはやはりハードルが高いんじゃないかと、現状感じているところです。
     一方で、じゃあ1か月延期して同時開示するということも、その場合に財務報告のほうの監査意見日も後ろ倒しが必要になるんじゃないかとか、いろいろ同時開示の1か月延長というのも実務的にはハードルが高いと。両方ともなかなか難しいなと思っているところでありますので、やはり企業側の準備、検討を進める上でも、二段階開示や同時開示というものの要件ですとか効果というものを、もう少し明確化していく必要があるんじゃないかと思っております。
     二段階開示とも関連してISSB基準の完全導入の時期についてですけれども、CSRDやSECなど他の基準がISSB基準での開示による代替、相互運用を認めてくれるという可能性を考慮すると、一般論としてはISSB基準の完全導入時期が早いということは望ましいと思っています。一方で、他の基準との相互運用の状況を見つつ、先ほど申し上げた二段階開始を含めた経過措置の延長を柔軟に議論できるような、そういう議論の進め方というのが望ましいんじゃないかと思っております。
     それから、海外向けの情報開示の本邦での開示に関してですけれども、この点は企業サイドとしては必要性をあまりちょっと理解できておらず、違和感が強いというのが正直な感想です。ほかの委員からもありましたが、CSRDは報告の連結範囲がISSB基準と異なっていたり、報告主体も欧州子会社が開示するケースもあり得るということを考えますと、利用者のサイドでも混乱が起こるということもあるんじゃないかというのが1つと、あと似たような発想としては、米国SECの6Kルールというのがあるんじゃないかと思っているんですけれども、6KルールはそもそもFPI(海外民間発行体)は年次報告以外の開示義務が基本的にはエグゼンプトされているというのが大前提で、それを補う制度としての6Kという制度設計です。あくまで海外民間発行体が母国で開示したものの英訳をSECに提出せよと、こういう制度ですので、今回のように、そもそも日本の有報でサステナビリティ開示を強制しているのに、本質的にはそこで必要な情報は開示されているはずなので、それを海外の別の基準で開示したから、それを日本でさらに開示せよと、それを法定開示の枠組みで義務づけるというのはちょっとやはりトゥマッチなのではないかというふうに思っております。
     1つ企業の側で、当社ソニーも米国で上場している関係で、似たようなものとして考えたのが、ドットフランクアクトに基づくConflict Minerals Reportです。紛争鉱物に関する開示をFORM SDという形でSECに開示しているんですけれども、じゃあこれはどうなのかと。弊社においては、この情報開示というのは米国SECのみやっていて、社内での作成プロセスも完全に英語だけです。じゃあこれについてはなぜ開示を要求しないのかとか、いろいろやはり各国それぞれのルールに基づく開示がある中で、もしこの法制度を進めるのであれば、なぜCSRDに基づく開示だけなのかというような視点も重要なのではないかと思っております。
     最後に、投資判断における重要性、セーフハーバーについてですが、事務局資料にもありましたとおり、Scope3中心に不確実性を有するサステナビリティ情報の性質を考慮すると、やはり厳格なエンフォースメントにはなじまないんだろうなというふうには考えております。企業側が萎縮しないようなセーフハーバーの設定が不可欠だと思っております。その観点では、現状の開示ガイドラインの要件は少しセーフハーバーとしては狭過ぎるのではないかと思っておりまして、少なくともScope3については、事務局資料の34ページで御紹介いただいているような、米国や英国のルールと同程度には緩和すべきだと考えております。
     以上です。
     
    【神作座長】  
     よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
     若干時間を超過してしまっておりますけれども、少し延長を許していただければと思います。
     オブザーバーの方で、もしどうしても今日御発言したいという方は、御発言いただければと思います。それでは、日本会計士協会の太田さん、お願いいたします。
     
    【日本公認会計士協会】  
     発言の機会いただきありがとうございます。会計士協会、太田でございます。
     我々も27年3月期から段階的に導入するという基本線について賛成でございまして、今後、国際動向も踏まえながら、プライム全企業に拡大するということも、引き続き検討が必要だと思っております。その上で、2点コメントさせていただきます。
     まず、二段階開示でございますけれども、有価証券報告書とその後の追加開示ということが想定されておりますけれども、追加開示する場合に、どの部分が追加をされて、どの部分が更新されたのかということを利用者が明確に分かるように工夫をするということが必要だと思っております。
     また、関連して二段階開示の追加開示の方法でございますけれども、有価証券報告書の訂正と半期報告書の活用と2つの案が示されてございますけれども、これについては有価証券報告書の訂正のみで良いのではと思っております。半期のタイミングで追加開示が必要であれば、半期報告書でなく、同じタイミングで有報の訂正を行えば足りるのではないかなと思っております。
     最後に、保証についてでございます。保証業務の担い手についてでございますけれども、公認会計士以外も含む制度とする場合には、ほかの委員の方もおっしゃっておられますように、品質確保の観点から、能力担保、自主規制、懲戒等も含めて、同一性を担保できるような制度設計にする必要があるというふうに考えてございます。当協会でもこれまで自主規制団体として、品質確保のための取組を行ってきております。ルール設計や自主規制については、これもほかの委員の方おっしゃっているとおり、既存の監査制度の枠組みを生かすことができると考えてございます。現行の仕組みや経験等を生かして、我々としても役割をしっかり果たしていきたいというふうに考えております。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     ありがとうございました。
     それでは、経団連の小畑さん、お願いいたします。
     
    【日本経済団体連合会】  
     経団連でございます。発言の機会を頂戴いたしましてありがとうございます。
     2つ申し上げたいと思っております。1つ目が、先ほども御議論ありましたけれども、CSRDの開示を行った場合、日本の臨報でそれの中身を全部開示せよという御提案については全く受け入れられないというふうに思っておりまして、そんなことになるのであれば、外国で開示したものを日本の開示とするというのは、日本の開示基準を検討する必要がないことになってしまうんじゃないかというふうに思っておりまして、そういうことから、臨報でCSRDの開示を書くということについては反対でございます。
     それから、もう一つがセーフハーバーのところで、これは非常に重要だと思っておりまして、早期に開示を進めていく上でも、ここはぜひ担保していただきたいというふうに思っておりまして、特に先ほども議論ありましたようにScope3、こちらについては、米国の制度もよく念頭に置きながら、工夫をしていただきたいと。そうしたことを前提に、やはりセーフハーバーの在り方とか、さらには保証の在り方、こういったものが決まってきた段階でようやく最終的な適用開始時期、こちらが決定していくんじゃないかということだと考えておりますので、ぜひとも御検討を進めていただければと思います。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     最後に、オンラインで御参加いただいております関経連の中島さん、御発言をお願いいたします。
     
    【関西経済連合会】  
     関西経済連合会、中島です。よろしくお願いいたします。
     資料40ページの事項に即しまして、4点申し上げます。1点目は、サステナビリティ開示基準の在り方及び適用対象・適用時期についてですが、時価総額をベースに段階的に導入することは同意いたします。導入年度につきましては、第1回、第2回会合で申し上げましたとおり、28年の3月期からが適当であると考えておりますが、日本企業では3月決算企業が多いことから、実質的には2029年3月期からが開示対象になると認識しております。この点、資料にも明示いただきたいと考えております。
     また、気候変動への対応につきましては、米国はScope3の開示を求めないことを決めており、米国がこのような方向に進んだ背景を分析し、検討することが必要があると考えています。また、気候変動枠組みはGHG排出量の削減が本来の目的であり、排出量の測定は重要であると認識しておりますが、測定には膨大な手間とコストが必要であり、財務情報と比較すると情報の粒度と正確性の面で劣っている実態を考慮しますと、コストベネフィットの観点から、現実的な方向性で議論することが必要と考えております。
     2点目につきましては、サステナビリティ開示基準の導入における論点についてです。今回、時価総額の算定方法を示していただきまして、ありがとうございます。この方向で算定した場合、資料2ページで示されている時価総額別の会社数がどのように変化するのか、主要国においてこのような方法を採用している国があるのかどうかなど、検証も必要かと思いますので、また別途、次回以降で結構でございますので、御教示いただければと思います。
     3点目は、二段階開示についてでございます。資料6ページ下部に、投資家への情報提供を後退することや、開示基準の適用対象外企業がこれまでどおり有報で開示する情報とのバランスを踏まえ、2023年3月から開始しているサステナビリティ情報及び開示基準に基づく定性情報については、有報で開示することが考えられるかと記載がございますけれども、こちらについては同意いたしかねます。SSBJ基準の適用が義務化された場合、当該基準の開示に一本化し、それまでの有価証券報告書で開示が求められておりますサステナビリティ関連開示は廃止すべきであります。適用するサステナビリティ開示基準は1つであるべきであり、金融庁様が追加でサステナビリティ開示を求めることにつきましては、慎重な議論が必要と考えております。
     4点目でございます。最後の点でございます。同時開示につきましては、適用2年目から同時開示の案が示されておりますけれども、同時開示のタイミングをもう少し遅らせるか、米国のようにGHG排出量等のサステナビリティ情報の一部につきましては、提出期限を延長する方法が現実的であると考えております。同時開示する場合、有価証券報告書の提出期限を1か月延長して、決算日後4か月とすることが提案されておりますけれども、この提案に関する複数の問題点を十分に検討する必要があると考えます。
     例えば、資料7ページに記載されておりますけれども、有価証券報告書の作成が第1クオーター、短信の作成、公表のタイミングと重複する問題がございます。この点、欧州を参考に、有価証券報告書の提出期限を決算日後4か月にするのであれば、第1・第3クオーターの短信の開示は、基本的には任意にすべきだと考えております。また、会社法の事業報告・計算書類等と金商法の有価証券報告書の重複開示の問題、有価証券報告書の公表スケジュールを7月に遅らせることにより、財務情報について、後発事象が発生する可能性が高くなる問題など、これらを踏まえた上で、慎重かつ幅広い議論をお願いしたいと思います。
     このような実務的な観点から考えますと、資料7の同時開示と二段階開示のイメージの中に、会社法上の事業報告書や決算書類などのスケジュールも反映し、全体のスケジュールを踏まえた上での検討が必要であるというふうに考えております。
     私からは以上です。よろしくお願いいたします。 
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     本日は時間を大幅に超過してしまって大変申し訳ございませんでした。発言することができなかったオブザーバーの方は、ぜひ事務局に御意見を寄せていただければと思います。本日の議論を踏まえ、次回以降、さらに御議論を進めてまいりたいと存じます。
     最後に、事務局から御連絡等がございましたらお願いいたします。
     
    【野崎企業開示課長】  
     ありがとうございます。次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、また改めまして皆様の御都合を踏まえた上で、最終的に決定させていただければと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。
     以上でございます。
     
    【神作座長】  
     どうもありがとうございました。
     それでは、以上をもちまして、本日の会議は終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

    ―― 了 ――

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