金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第4回) 議事録
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1.日時:
令和6年10月10日(木曜日)13時00分~15時20分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
【神作座長】
定刻になりましたので、ただいまより金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ第4回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、本日の会議の模様も前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
会議開始に当たりまして、事務局から出席者の変更と留意事項がございますので、よろしくお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます野崎と申します。本日もどうぞよろしくお願いします。
留意事項などを御案内させていただく前に、恐縮ですが、カメラのほうは御退室ということでお願いします。
初めに、事務局である金融庁におきまして人事異動がございましたので、御紹介させていただきます。これまで企画市場局長でした井藤が新たに長官に着任し、後任として油布企画市場局長が着任しております。
【油布局長】
よろしくお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
次に、本日の会議におきましてはオンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャットにて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いいたします。なお、対面で御参加の委員におかれましては、挙手をいただければ、座長から指名いただけます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、議事に移らせていただきます。
本日は、事務局より資料の御説明をいただいた後、質疑応答、討議を行いたいと思います。それでは、事務局の金融庁から、資料についての御説明をよろしくお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
では、資料のほうを御説明させていただきます。
まず、目次、1ページ目を御覧いただければと思います。今回の論点は大きく2つございまして、1つ目が、これまで複数回にわたり御議論いただいてきました具体的な開示方法、セーフハーバーの在り方というところです。2つ目が保証制度につきまして、今回は大きな方向性について御議論いただければと考えております。
2ページ目に行っていただきまして、まず、二段階開示です。ISSB基準で報告初年度のみに認められている二段階開示でありますけれども、二段階目の開示につきましては、次の3ページ目に行っていただければと思いますけれども、法的な整合性に加えまして、3つ目の四角のところで項目で記載しておりますように、更新箇所の明示のしやすさ、それから、より早期の開示により、後発事象の対象期間を短縮化できると、そういった観点から、有報の訂正により行うことが適当という考え方をお示ししております。
続きまして、4ページ目です。左側の図でお示ししておりますように、二段階開示を行う場合における準拠表明の時点、後発事象の判断時点につきましては、訂正報告書の時点とすることが適当と。また、右の図でお示ししていますように、一段階目の有報開示では、現行の開示からの後退とならないよう、現行開示規制に基づく開示を求め、訂正報告書において、サステナ基準に準拠した開示を求めることが適当と、こういった考え方をお示ししております。なお、右下の米印にありますように、現行開示規制に基づく開示におきましても、サステナ基準に準拠した開示と共通する部分も一定程度あるということが想定されているところでございます。
8ページ目に行っていただきまして、続きまして、海外に向けた情報開示の本邦での開示方法というところです。特に欧州のCSRD等に基づく開示を行った場合に、金商法上の臨報の提出を求めるべきかという論点は、前回かなり御意見の分かれたところです。
9ページ目に行っていただきまして、こちらにつきましては、海外制度に基づく情報開示が行われた場合に、金商法上、投資家に対する情報開示をどこまで求めるのかという、前回御議論いただきました論点に加えまして、欧州のCSRD対応を見据えた日本企業が、欧州制度上の免除制度の要件をどのように満たしていくのかと、こういった論点にも関連するため、こちらでちょっと簡単に説明させていただければと思います。
下のCSRDの概要の欄でございますけれども、2025年12月期以降、EU域内で一定の売上げ等のある日本企業は、単体でサステナビリティ情報の開示・保証が求められるということになりますが、単体での個別対応の免除制度としまして、連結グループ全体で開示・保証の対応を行うということが認められています。その際、その下の免除制度の概要の欄にありますように、日本企業の場合は、日本の法律でオーソリゼーションを得たファームによる保証意見が必要とされております。このファーム、すなわち保証業務提供者でございますけど、EU加盟国でのレジストレーションも必要となっているといった枠組みが示されているところでございます。
次のページ、10ページ目に行っていただきまして、本邦での開示につきまして、金商法上、投資家に対する情報開示の必要性の観点と、こうした日本企業による欧州規制対応のニーズといったものを踏まえますと、3つ目の四角に記載のとおり、有報において本邦のサステナビリティ開示基準に準拠した開示を行っていない企業が、連結ベースでの開示を求める海外基準、こちらは現時点でCSRDのみというふうに認識しておりますが、こうした海外基準に基づく開示を行った場合に限って、臨報において開示を行った旨、リンク先、保証に関する情報などを開示していただくこととしてはどうかという案をお示ししております。
続きまして、12ページ目です。セーフハーバーです。こちらにつきましては、昨年1月に改定しました現行ガイドラインの将来情報の虚偽記載等の責任に関する記載といったものに加えて、特にScope3開示などで議論となる会社の統制の及ばない第三者から提供を受けたデータに基づき開示をした際のセーフハーバーを整理すべきというような議論を、前回いただいたところです。
14ページ目ですけれども、セーフハーバーに関する検討の方向性としまして、こうした問題意識を踏まえまして、具体的にはScope3排出量に関する定量情報が事後的に誤りであると発覚しても、3つ目の四角に記載したような要件が満たされている場合には虚偽記載等の責任を負わないこと、こうした点をガイドライン改正によって明確化するということを御提案させていただいております。
次に、15ページ目ですけれども、開示ガイドライン改正以外に考えられる対応としまして、囲みの①ですとか②のローマ数字のⅲ、ⅳのように、サステナビリティ開示基準でも一定の開示が求められると考えられる事項、さらに、ローマ数字のⅰ、ⅱのような情報も有報に記載いただくということは、投資家保護上、重要な情報であるというふうに考えられるとともに、企業の責任の範囲の明確化にも資するということが考えられるのではないかと思っております。また、経営者の作成責任の明確化の観点から、金商法上の確認書の記載事項に追加するという論点もあり得るかと考えております。
次、16ページ目に行っていただきまして、有報の虚偽記載についての裁判例。こちらはあくまで会社法上の責任についてのものですけれども、開示情報の適切性を確保するための社内手続が整備されていることは、虚偽記載の責任の有無の判断に影響を与えているという裁判例を記載してございます。
続きまして、目次の21ページ目に行っていただきまして、本日、2つ目の大きな柱であるサステナビリティ保証制度についてです。
次からの22から24ページ、前回の資料の再掲でございまして、26ページに飛んでいただきまして、これまでの会議の御意見を掲載しております。まず、保証の担い手というところにつきましては、今後の保証対象事項の広がりですとか国際的な議論の動向、それから、担い手の確保やコスト競争力といった観点から、公認会計士・監査法人以外も保証業務提供者とするprofession-agnosticに賛同する御意見が複数あったかと思います。ただその際も、担い手に求められる能力、品質管理、保証業務の水準などについては、監査法人とそれ以外の保証業務提供者との間で相違があってはならないと、こういった御意見もいただいていたところでございます。
27ページの保証範囲ですけれども、可能な限り広い範囲とすべきという御意見があったのに対して、範囲を広げて開示が遅くなるよりは、担い手の状況や諸外国の動向も踏まえて、現実的な視点で鍵となる情報の信頼性の確保をまずは図り、保証水準も海外制度を参考に、まずは限定的保証からと、こういった御意見もいただいていたところです。
30ページ、海外のサステナビリティ保証制度に係る検討状況というところです。まだ現在進行形というところですけれども、代表的な4か国を並べてみましたが、各国各様という状況でございまして、保証範囲につきましては、ダブルマテリアリティを採用する欧州は、全ての開示情報を保証対象としているというのに対しまして、オーストラリア、米国は、Scope1と2を、少なくともスタート時点では意識したものになっているというところでございます。保証水準は、いずれの国も限定的保証からスタートすると。保証の担い手は、監査法人のみを担い手とする国とそうでない国に分かれているという状況でございます。
32ページに行っていただきまして、サステナビリティ情報に対する保証制度の方向性(イメージ)というところでございまして、以上申し上げた点を踏まえて、保証制度の導入の方向性の1つの案としまして、前回、プライム企業の時価総額3兆円、1兆円、5,000億円以上のレイヤーごとに、2027年3月期以降、開示基準適用の義務化、それから、その翌年に保証の義務化と、こういったステップでの導入というところまで御議論いただいたところでございますけれども、保証適用の義務化のところに括弧で記載しておりますように、一定期間は保証の義務化の範囲をScope1、2のみとし、その後はサステナビリティ開示情報全てということを念頭に、それ以外の保証は任意として、国際動向等を踏まえてさらに検討すると。下に米印で書いてございますけれども、そういったことを示しております。
あと、下の囲みです。下の点線囲みに記載しておりますのは、保証業務実施者は、新たな制度の下で登録を受けた監査法人、監査法人以外の保証業務提供者とすると。欧州でも保証基準を含めた制度全般が整うまでの間、まさに今がそういう状況でございますけれども、様々な工夫がなされているというところも踏まえつつ、制度導入の際の移行期間は仮登録、こういった形での運用、また、保証水準は限定的保証からと、こういった案をお示しさせていただいているところです。
33ページでございます。こちらは今、現状のものを図示したものです。現状、Scope1、2の排出量について、任意で保証を受けられている企業は、時価総額のレイヤーの大きい順に、累積の数字でございますけど、3兆以上が91%、1兆以上が84%、5,000億円以上が76%というふうになってございまして、保証業務実施者は、56%が非監査法人、上から順に56、52、57%という形で、過半が非監査法人系というふうになっております。あくまで任意保証の世界の実態ではございますけれども、御議論の参考にしていただければと思います。
最後、37ページです。御議論いただきたい事項としまして、これまで説明した開示、保証の論点につきまして記載しておりますので、本日はどうぞよろしくお願いします。
私からは以上でございます。
【神作座長】
御説明どうもありがとうございました。
それでは、これより委員の皆様から御意見、御質問を頂戴したいと存じます。全ての委員の方から御意見を頂戴できればと考えておりますけれども、時間が限られておりますので、恐縮でございますけれども、お一人4分から5分以内で御意見等を頂戴したいと存じます。なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から4分が経過したタイミングで、事務局員にベルを流して合図をしていただきます。加えて、御発言の順番につきましては、若干前後する可能性があると思いますけれども、あらかじめ御了承いただければと思います。
それでは、初めに、途中で御事情によって御退席と伺っております、オンラインで御参加の田代委員から、もし御発言ございましたら承りたいと思います。田代委員、いかがでしょうか。
【田代委員】
すみません、田代でございます。ちょっと入るのがばたばたしていまして申し訳ございませんが、もうちょっと後に回していただけますでしょうか。
【神作座長】
承知しました。それでは、また後ほどよろしくお願いします。
【田代委員】
申し訳ございません。わざわざお気遣いいただきましてありがとうございます。
【神作座長】
はい、お声がけさせていただきます。
それでは、委員の皆様からの御意見、御質問をお出しいただければと思います。どなたからでも結構ですけれども、いかがでしょうか。それでは、井口委員、お願いいたします。
【井口委員】
御説明どうもありがとうございました。今、御説明いただいた最終ページの御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げたく思います。
最初の開示基準の導入の論点ですが、二段階開示、海外に向けた情報開示の方向性について、賛同いたします。また、Scope3などのバリューチェーン情報等に対するセーフハーバーの考え方というのは、前回取り上げていただいた、利用者であるアナリストの考え方とも一致すると考えておりますので、賛同させていただきたいと思っております。
次の論点の保証制度の方向性ですが、以前も申し上げましたが、開示とともに情報の信頼度を高める保証の役割というのは非常に重要と思っております。また、私の知る限り、グローバル投資家も注目するところと考えております。
資料24ページの論点1の保証の範囲・水準についてですが、日本市場の至上命題として、まず、ISSB基準と同等の開示を根づかせるということがあると思っておりますので、この資料に記載の32ページにあります、保証を段階的に導入するという方向性には賛同いたします。その上で、2つほどコメントをさせていただければと思っております。
1つは、実務が定着しているScope1、2から始めるということは理解できるのですが、ガバナンスの保証も、Scope1、2と同時に、あるいは早期に入れることも必要ではないかと思っております。ガバナンスの開示内容というのは過去情報となりますので、比較的、保証の難易度が高くないということもありますが、それ以上に、この保証を入れることによって、取締役会などのガバナンス組織の関与というのが明確になり、企業内で報告システムが構築されるということに期待しております。資本市場全体で考えれば、コストに比べ、ベネフィットが大きいのではないかと考えている次第です。
2つ目は、段階的に保証を導入するとしても、資料でも一定期間というふうに御記載いただいていますが、最終的には全ての開示情報に保証を入れるという方向性は、対外的にも、あるいはグローバル投資家にも明確に示す必要があるのではないかと思っております。
32ページの資料の下のほうに、合理的保証への移行の可否という御記載がありますが、ISSB基準と同等の開示基準を導入しようとしている日本の開示制度の方向性からしますと、米国よりも、むしろ、欧州のように、まずは限定的保証でもその保証範囲を広げるという方が優先されるべきではないかというふうに考えております。したがって、将来のゴールを示しつつ、保証基準と保証態勢の充実を御判断された時点で、保証の範囲等を拡大するということを対外的にも明確にされるのがよいのではないかと思っております。
資料24ページの論点2、3の担い手につきましては、大方針はprofession-agnosticといたしましても、財務諸表監査と同じ課題が起こり得るということを考えますと、担い手のクオリティというのは財務諸表監査同様しっかり確保する必要があるのではないかと考えております。その結果、残念ながら保証人の範囲が狭まったとしても、資本市場の健全性という観点からはやむを得ないのではないかと考えております。
具体的には、IAASBやIESBAで策定されております国際的な保証基準や倫理、独立性基準のみを共通のルールとして、保証の担い手に適用すべきと考えております。また、ISSB基準で重視されております財務情報とのつながりを保証する能力も求められるのではないかと考えております。
また、本日の議論の対象外ということと認識しておりますが、24ページの論点4、5の保証業者への監督の在り方も重要と思っておりまして、急ピッチで保証の監督制度も整える必要がある中、現状の財務諸表監査での監督制度を生かせるような形で、担い手についても考えるべきではないかと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、会場で御参加いただいている上田委員、それから、オンラインで御参加いただいている柿原委員、弥永委員の順で御発言をお願いいたします。まず、上田委員からお願いいたします。
【上田委員】
御指名ありがとうございます。まずは事務局、おまとめと御説明ありがとうございました。
保証についてですが、特に新しい制度づくりを急ピッチでと、今、井口さんからもありましたけれども、対応していただきたいタイミングで、今後の流れであるとかスケジュールをお見せいただいて大変有用でございました。では、私も37ページの御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。
まず、前段の開示に関してですが、二段階開示、あるいは海外に向けた情報開示の本邦での開示方法については、基本的に御提案内容に私は賛同しております。二段階開示については、やはりグローバルな視点から、ISSBと同様、初年度に限り認めるとした上で、さらに情報ユーザーの視点という観点からも、開示媒体が複数並立するというのはあまり望ましくないと思っています。また、変更箇所が分かりやすいといった点からは、有価証券報告書の訂正といったところでよろしいのではないかと思います。ただ訂正については、企業サイドの心理的ハードルが想像以上に高いようですので、この辺りはルールで訂正できるということを明らかにしていくということがよろしいのかと思います。
CSRDを想定している海外開示等の本邦での開示については、これも御提案いただいている臨時報告書でリンク等が分かるということでよろしいかと思います。これも虚偽開示に関連しますけれども、リンク先に何かあったといったときの責任を断ち切るというのでしょうか、そこについても何かしらの仕組みづくりが必要と考えます。企業の開示に対する意欲を折れさせないというか、後押しするような形に工夫をしていただければと思います。
そこで本日、新しい視点として御提案ありました、オーソライゼーションというか保証業務提供者がまだ完成しない中での保証業務の提供といったところについては、暫定的な御対応されるとの点についてです。告示等でというお話かと思いますが、それが望ましいと思っております。恐らくは提供者が誰かというと、体制が整っていて品質、倫理、独立性、先ほどIESBAであるとかIAASBの議論ありましたけれども、そういったところの対応等が既に進んでいる監査法人、特にグローバルネットワークに所属している大手監査法人が、保証提供者の候補として出てくるかと思います。暫定的な措置であるとはいえ、今後正式な制度ができた際の流れが違わないように、期待される最も完全性の高い保証提供者としてのイメージです。既に存在している主体で、今後の制度づくり乖離のないよう、暫定策とはいえそのアナウンスメント効果というか、こういうクオリティが必要なのだなということの認知にもつながりますので、ここは急いで工夫いただければと思います。
虚偽記載ですが、先ほどお伝えしたとおりで、企業サイドの心理的ハードルが本当に高く、サステナビリティ開示の一番のネックは虚偽記載だと感じています。統合報告書に書けてなぜ有価証券報告書に書けないかというと、その1点に尽きると思っております。このように、開示という世界だと虚偽開示のリスクというのをすごく考え、正確性にこだわるようですが、一方で内部統制のプロセスにすごく似ているなと思っているところがございます。つまり、プロセスをつくって、管理して、モニタリングという、そういう仕組みができていることで、そのプロセスを経て開示された情報というのに仮に後で何か変更、修正、誤りがあったとしても責任を問われないというものです。また、今回確認書という御提案ありましたけれども、この仕組みの活用は確かに経営側としては対応しやすいのではないかと感じたところです。
ちょっとベルが鳴らないように、保証についてもコメントさせてください。保証でありますが、今特に、基本的にはまず保証水準のところなのですけれども、まずは限定的保証から開始して合理的保証といったところになろうかと思いますが、この点、私は投資家とお話していると、あまりそもそも任意保証と強制的な保証の差異であるとか、あるいは合理的保証と限定的保証といったところの細かなところについてこだわりがあんまりない、特に投資判断をしている方はないようで、情報の信頼性がある、エンフォースメントが効いているというところの仕組みがしっかりしているということがポイントなのかなというふうに感じております。
ただ一方で、競争というのでしょうか、制度間競争という観点もあろうかと思います。情報ユーザー側の視点というのは一方で置きつつ、他方では、各国の制度間、日本の情報開示の信頼性が劣るということがないようなタイミングでの制度設計に注力いただければよろしいのではないのかなと思っております。
また、一定期間と32ページに書いてあります。これは、事務局にも御質問したところではありますけれど、一定期間とはどれくらいなのか。そして、その期間に甘んじることなく、グローバルな環境変化に応じられるよう、準備だけはしておいていただきたいと思っています。
最後、保証提供者についてだけちょっとコメントさせてください。基本的には監査法人が最も品質管理、倫理、独立性のベース、IESBA、IAASB等に準拠しておられる提供者といったところでよろしいかと思います。また、財務との統合的な部分ということでも望ましいのではあるかと思います。しかし、他方では、現状でも財務監査の担い手が減っている状況があります。上場会社監査の担い手が中小監査法人に拡大する中で、そのクオリティがどうであるかといったところが問題となり、監査法人ガバナンス・コードもアップデートされているわけです。これが全く新しいサステナビリティ情報においても発生するかと思うと、その品質問題の可能性も予想できるのではないでしょうか。他方では、担い手不足による保証難民が出るリスクもあります。この両方をどうバランスして解決するかを考える必要がありますので、場合によってはやはりprofession-agnosticといいますか、Non-PAの活用というのは重要な選択肢であろうと思います。ただ、その際にはクオリティのところをどう確保するかというところも重要と思います。例えば監査法人とは別個の独立したファームに頼むということもあるかと思いますし、監査法人が提携したり、専門家を雇ったりして、監査法人の中で同じチームとしてやってもらうとかいろいろな工夫もあると思いますので、ぜひそういったものも、今後御議論いただければと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の柿原委員、お願いいたします。
【柿原委員】
ありがとうございます。柿原でございます。ありがとうございます。本日はオンラインで失礼いたします。
私からは御議論いただきたい事項に関しまして、4点申し上げたいと思います。1点目は、資料10ページの海外に向けた情報開示の本邦での開示方法についてです。開示義務者の対象がサステナビリティ開示基準に準拠した開示を行っていない企業に限定された点、それから、開示を行っている場合のリンク先に明示するなどに限定された開示になっている点については評価してございます。しかし、このワーキング・グループで何度か申し上げておりますとおり、臨時報告書については慎重な議論が必要というふうに考えておりまして、むしろ企業のホームページでの開示のほうが妥当であるのではというふうにも考えてございます。
その理由といたしましては、本件を臨時報告書の対象としますと、これ以外の海外の規制による日本企業の開示が臨時報告書の対象となる可能性がある点と、それから、欧州CSRDの作成者は、日本の法規制以外の情報はフェアディスクロージャーの観点から、ホームページ等での共有開示が想定される点が挙げられます。また、一部の日本企業が欧州CSRD対応の開示を2028年12月期よりも早期に連結ベースで開始する場合、当該企業は日本でサステナビリティ開示基準に準拠した開示をまだ行っていない可能性があり、本件の臨時報告書の開示対象になってしまう懸念がございます。
さらに開示内容として示されています(1)から(4)につきまして、開示のリンク先を示すことが虚偽記載のエンフォースメントの問題を生じさせないというふうに御説明いただいたんですけれども、懸念が完全には払拭できないでいるというのが作成側の正直なところでございます。
2点目は、資料14ページ目のセーフハーバーに関する開示ガイドラインの改正についてです。今回お示しいただきました開示ガイドラインの改正案は、19ページのSECの改正案に比べまして、具体性という点で、Scope3につきましても十分なセーフハーバーにはなっていないという懸念がございます。例えば、19ページの2022年3月のSEC規則案は、当該開示が合理的な根拠なく行われ、または誠実に開示しなかったことが証明されない限り不正な記載ではないとみなされるという内容となってございます。今回の案は、Scope3の開示に問題がないと説明する責任が作成者側にありますが、セーフハーバーを十分に機能させるためには、SEC規則案と同水準にするべきではないかというふうに考えております。
3点目は、戻りますが、資料15ページの開示ガイドライン改正以外に考える対応についてです。開示事項の②のⅱデータ・プロバイダーから入手した情報を含む記載を特定した上で当該情報を含む旨、プロバイダーの名称を開示することは、機密情報に該当する可能性もあるということは御指摘させていただきたいというふうに思います。また、金融商品取引法上の確認書の記載事項の追加を検討するとありますが、具体的な内容が説明されておりません。現在の確認書では、特記事項がない場合は、有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法に基づき適正に記載されていることを確認した旨のみが記載されておりますが、これとの整合性は必要と思われます。
最後に4点目は、保証制度の方向性についてです。資料32ページのサステナビリティ情報に対する保証制度の方向性につきまして、開示適用義務化の初年度のみ二段階開示可とし、2年目からは同時開示を求めるという決定に関してですが、企業が実務対応できる期間を十分に確保するという観点から、二段階開示可の年度を少なくとも2、3年程度、できれば米国と同様に期限なしとするのが妥当と考えます。
米国はScope1、2の開示につきまして、臨時報告書の提出後、一定期間経過後の報告が認められており、将来的にScope3の開示が求められる可能性があることを想定しますと、具体的な事例も参考にすることも必要だと思っております。
以上となります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで参加の弥永委員、御発言をお願いします。
【弥永委員】
御指名ありがとうございます。
私は2点ほど申し上げたいと思います。まず、第1点は、前半部分についてです。この部分については、基本的に事務局でよく考えていただいたと思うのですが、海外での開示との関係で申しますと、先ほど柿原委員が御指摘になられたように、そもそもフェア・ディスクロージャー・ルールの下で開示しなければいけないという余地があり得ることなので、リンク先をこういうことで示すことによっては虚偽記載についての責任のリスクが仮にないというのであれば、本邦で開示しているかどうかということと関係なく開示させるということで、私はいいのではないかと思っておりまして、それが理論的なのではないかと考えます。
どうしてかと申しますと、企業にとっての臨時報告書を提出するための実務上の負担は、ご提案いただいた開示内容からすると非常に小さいものと思われる一方で、海外における虚偽記載については発行者の責任を問わないにしても、先ほど柿原委員が御指摘になられていたような、自社のウェブページできちんと開示しているかどうかということを、外部的にチェックしたり、エンフォースしたりするということは現実に非常に難しいのです。これに対して、臨時報告書の提出という形ですと、開示を行っているかどうかは容易に把握できます。したがって、事務局からご提案いただいたような、臨時報告書における開示内容を前提とする限りは、開示義務対象者は一般的に広げておいても問題はなく、かつ、それが適切なのではないかと思われます。
とりわけCSRDの下での免除を受けるような場合には、日本における保証業務提供者による連結ベースでの保証を受けるということになるのだとすると、なおさらそのように考えたほうが首尾一貫するのではないかと思うところでございます。
第2点は保証についてなのですけれども、既にこれまでの議論でも、先ほどの事務局からの御説明でも言及されておりましたけれども、公認会計士等が行うのか、それともNon-PAが行うのか、それに関わらず、独立性や職業倫理、そして保証の水準などにつき差が生じないようにする必要性があると思うのです。このような前提の下で、24ページで示していただきました論点の中で、やはり監督をどこが行うのかという問題は重要でございまして、もちろん金融庁や公認会計士・監査審査会が十分なリソースをお持ちということであれば、それで当面進めるということも可能なのでしょう。けれども、財務書類の監査と同じように、今、日本公認会計士協会が行っているように、一定の部分は自主規制機関にこのエンフォースメントを委ねるしかない、特に倫理とか、あるいは独立性の局面においては、これはどちらかというと自主規制機関がふさわしいという可能性もございます。
ただ、自主規制機関を活用しようと思うと、これはかなり実際にハードルが意外と高いのではないかと思っております。と申しますのは、例えば、日本公認会計士協会における例を見てみますと、懲戒処分を科すために3段階の組織を日本公認会計士協会さんはお持ちなわけです。監査・規律審査会、規律審査会、そして適正手続審査会、こういう3つの段階での言わば慎重な手続というのを踏んでいらっしゃるわけです。仮に、サステナビリティ情報保証業務提供者を対象とする自主規制機関が、金融庁などが行った懲戒処分を前提として、例えば現在、日本証券業協会などがなさっているように、すなわち、認可金融商品取引業協会も認定金融商品取引業協会も、どちらかというと金融庁の処分を前提として処分をされているようにお見受けしているのですが、そのようにするのであればあまり負担は重くないと思われるのです。けれども、日本公認会計士協会のように、いわば独自に保証のレベルの維持、あるいは、ここで言う倫理の遵守に関するエンフォースメントを自主規制機関がやろうと思うと、かなりコストと時間とリソースを必要とすると予想されます。このような観点のみを取り上げても、Non-PAと公認会計士、監査法人、これらがやはり一体になってやろう、そのような自主規制機関を設けようとすると結構大変なことになるのではないかと予想されます。そこで、この問題についてはどういう方向にするのか、つまり金融庁または公認会計士・監査審査会が思い切ってやるとするのか、あるいは自主規制機関を設けるとすると、今申したようなコストと申しますか、リソースの問題をどう解決するのかということについては、やはり早いうちから検討したほうがいいのかなと思っております。
非常に雑駁ですが、以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、会場で御参加くださっております藤本委員、近江委員、それからオンラインで御参加の三瓶委員、それからまた、会場で御参加の関口委員の順で御発言をいただければと思います。それでは、藤本委員からお願いいたします。
【藤本委員】
御指名いただきましてありがとうございます。藤本です。
私からは、保証制度の方向性についてコメントをさせていただきます。まず、保証業務実施者についてでありますが、こちらはこの議論をする上で、市場の関係者が保証に対して何を期待しているのかということがまず重要かと思っております。やはり市場関係者が国際的に見て遜色ない高い保証の品質を求めるということであれば、適切な保証基準に従って業務を実施すること。それから、さらに実施者の能力開発のための教育や独立性・倫理、自主規制、検査・監督といったものも含めて担保することが必要で、こういったものを実現する法的枠組みが、全ての保証業務実施者に均一な形で担保されるということが不可欠ではないかと考えております。
こうした高い保証の品質を確保するということを前提とすれば、同様の枠組みで行われている財務諸表監査が参考になるのではないかと考えております。会計監査におきましては、監査法人及び個人としての公認会計士が法的責任を負うとともに、自主規制団体である日本公認会計士協会が、相当な経済的・人的リソースをかけて品質確保の体制を整備しております。仮にprofession-agnosticな制度にするといった場合には、監査法人と同質の品質確保の体制を監査法人以外の者にも新たに整備をしていく必要があるのですが、具体的にどのように品質確保の体制を監査法人以外の方にもやっていただくのか、また、新たにかかる相当な経済的・人的リソースを誰が負担をするのかということが、現時点では明確になっていないと思います。
また、説明資料の中で、32ページ目のところに仮登録というものがありますが、こちらの内容が現時点で明確になっておりませんので、これを最初から入れるということになりますと、保証導入当初の品質確保に大きな懸念が生じないかと危惧しております。このようにサステナビリティ保証制度の全体的な基本設計がなっていないところにおいて、profession-agnosticな制度にするという方向性については反対であります。
なお、先行する欧州CSRDにおいて、監査法人から保証業務実施者を拡張するオプションを加盟国が導入するということも認めております。ただ、そのオプションを採用する前提としては、同等な法監督構造を構築するということが条件になっております。また、CSRD対応を、これまで任意の保証の主流になっていた会社の単体に対する保証ではなく、グローバルな会社グループ全体としての保証が要求されております。また、保証範囲もScope1、2のみではございません。このような状況から、既に多くのCSRDに対応しなければならない企業は、監査法人が保証業務提供者となる予定というふうに聞いておりまして、各監査法人においても、グローバルネットワークのメンバーファームとも連携をし、その準備が既に行われ、能力担保やリソースともに対応可能であると理解をしております。
また、当面、時価総額5,000億円以上の企業からこの開示保証の制度が導入されますが、これらの企業の多くはCSRDに対応するということがケースとしては多いのかなと考えております。
続いて、保証範囲についてコメントをしたいと思います。今回、御提案のScope1、2というのは、保証対象としてはやや限定過ぎるのではないかと考えております。仮に経過措置を設けるとしましても、例えば保証初年度は、定量情報の全てであるとか、あるいは各国の状況として30ページ目に記載をいただいているような、オーストラリアのように、重要と思われるガバナンス、それから、戦略の情報の一部なども追加してはどうかと考えております。
今回のサステナビリティ開示保証については、やはりグローバルに事業展開する我が国企業によるサステナビリティ情報の開示に関して、国際的な比較可能性を確保することで、投資家から評価をされるということが1つの目的であると考えております。このような目的を踏まえますと、諸外国においては開示が義務づけられる情報の全てに保証が付され、信頼性が確保されているにもかかわらず、我が国のみ保証範囲を限定することで、適切な投資対象となり、グローバルな投資家から評価されるのかどうか、この点、慎重に検討すべきではないかと思います。保証の基本的な考え方としても、やはり開示情報に対する全てについて、情報の信頼性を確保するのが大原則かなと思っております。
あと、先ほど30ページ目にございましたけれども、事例としてフランス、ドイツもESRSに基づく全ての開示情報についての保証、米国は開示基準ではないですけれども、規則で開示が求められている情報には保証が付されると。オーストラリアは注の2のところに記載ございますけれども、初年度は開示の一部保証となっていますが、2年目以降は全ての開示情報に対する保証ということで、経過措置が1年設けられているという状況かと思っております。したがいまして、前提としてはできるだけ早いタイミングで保証範囲を広げていく。例えば、1年程度とかにしていただく。また、できるだけロードマップを明確にしていただくのが、準備も含めていいのかなというふうに考えております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、近江委員、御発言お願いします。
【近江委員】
御指名をいただきありがとうございます。
37ページにあります議論事項に沿って、まず開示について意見を述べさせていただきます。サステナビリティ情報のうち、提出期限までに作成が難しい定量情報に限って経過措置として二段階開示を求めるという事務局からの具体案は、実効性が高く、賛成いたします。サステナビリティ情報の定性的な情報は、準備に向けて十分な時間の確保が可能であると考えられますので、有報提出期限に間に合わない定量情報に限って準備できた時点で訂正報告書として提出するという形は、適時性の観点から見ても適切であると考えます。
CSRDに対応した開示を行った場合の金商法上の開示義務化につきましては、情報の公平さの観点から、原則として臨時報告書で開示されることが望ましいと考えます。10ページに記載されている事務局案は報告主体が異なる場合にも対応でき、参照先情報のエンフォースメント上の問題を回避しつつ、国内の投資家に対して同等なサステナビリティ情報を提供することができるという点において大変優れた提案であり、これを支持します。
また、9ページに示されておりますCSRD対応において、欧州域内の大会社への開示保証義務を連結グループベースの開示保証により免除できるという措置につきましては、企業がサステナビリティ開示に向けた体制整備を効率的に整えることが可能になることから、我々も投資先企業において、そのような要望があることをエンゲージメントなどを通して確認しておりますので、これを後押しする制度を進めることが望ましいと考えます。
次に、セーフハーバーについてです。例えば、情報の正確性が担保しにくいScope3などにつきましては、前回の会合でも多くの御議論があったところですが、投資家の多くは企業戦略への気候変動課題の影響を把握する上で、バリューチェーン全体におけるリスクや機会の所在についての認識を高め、また、企業側の対応が促されることを期待していると認識しておりますので、この目的で開示を促すという観点から、開示ガイドラインを改正し、企業の統制が及ばない第三者から取得した情報や見積り情報を、セーフハーバーの対象とすることを明記することに賛成します。
また、虚偽記載の判断の基盤とするべきは、合理的根拠の有無に加えて誠実な開示であると考えますので、この点もガイドラインに盛り込んでもよいのではないかと考えます。
また、企業の責任範囲を明確化する観点で、合理的な手法で情報が得られているかを説明するに際して、情報の入手先、見積りの適切性の社内の検討手順に加えて、情報の入手箇所、入手先は必要な情報であると考えますので、15ページに示されております事務局案に賛成いたします。
次に、サステナビリティ保証制度につきましてですが、保証の範囲として、最初は一部とし、また、保証水準も限定的保証として始めて適切な時期に合理的保証に移行する段階的な立てつけとすることで、企業にとって可能な範囲で対応を促すというのが実務上望ましいのではないかと考えます。特にカーボンプライシングに関する議論も深まっておりますので、まず、Scope1、2を保証義務化の対象として定める必要があると考えます。
他方、諸外国の投資家にとって、投資対象である主要な日本企業におけるサステナビリティ情報全般への信頼性が確保されるということは、資本コストの観点から見ても決してネガティブには働かないだろうと、そのように考えられますので、保証義務化の適用の範囲を将来的には広げていく方向性も示しておくというメリットはあるのではないかと考えます。
最後に、保証業務の担い手についてですが、保証業務実施者を、これは倫理、独立性基準を担保した上で公認会計士のみに限定せずに門戸を開いていくのが望ましいのではないかと考えております。これはやはり投資家側としては、保証の担い手が不足することなどにより、開示自体に支障が出てしまうということを懸念しているためです。
私からは以上になります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の三瓶委員、御発言お願いいたします。
【三瓶委員】
三瓶です。御指名ありがとうございます。4分しかないので、37ページの論点について、事務局案に賛同できないところだけ申し上げます。それ以外は賛同するということです。
まず、二段階開示について、4ページに、一段階目は、現行開示原則に基づく開示というふうにありますが、この案には賛同できません。2ページにあるように、第3回ワーキング・グループで提案された方針を支持します。理由は、これまで時価総額基準で義務的開示を段階的に進めることを議論してきました。かつ同時報告については、ISSB基準で認められる二段階開示の経過措置を確認してきました。ここに来て義務的開示の初年度は現行と変わらずというのでは、これまで激変緩和策として段階的な基準を議論してきた前提を覆すことになりかねないと思います。
2023年3月に始まったサステナビリティ情報開示から2年目の今年3月期の有報では、既に前向きな企業は、Scope3の速報値などを有報開示しています。なので、「現行と変わらず」ということにしてしまうと、そこまでやらなくていいというふうに水を差す、そんな懸念もあります。
次に、海外向け情報開示の本邦向け開示についてです。CSRDに基づく開示の粒度は細かいですね。ですから、投資判断に重要な情報において、投資者間で情報の非対称性が生じる不公正を放置するということになりかねなくて、これは問題だと思います。したがって、10ページにある本邦のサステナビリティ開示基準に準拠した開示を行っていない企業に限定するというのは不適切だというふうに思います。
次に、セーフハーバーの方向性について。14ページ、15ページに、統制の及ばない第三者という表現が何度も出てきますけれども、見積りの合理性など、適切性を会社内部で適切に検討したかということも書かれていますが、これはかなり負担が大きいと思います。むしろ、情報を取得する際に、第三者に定義、計算式等を遵守しているかどうか確認するという入り口段階でのチェックというのはより実現性が高くて、これは有報提出者の義務だというふうに思います。
15ページの一番下に確認書の件がありますけれども、ただここで金商法上の確認書に、このような第三者に対して遵守しているかどうかを確認してそのように記載したとして、それを提出したけれども、第三者が実は遵守していなかったというふうに分かった場合に、署名者の免責などは明確にしておく必要があるというふうに思います。
次に、保証制度の方向性についてです。32ページの案について、保証適用義務化の対象は全てとすべきだというふうに思います。Scope3こそ保証が必要だというふうに思っているからです。現状で、有報でScope3の速報値を開示している企業は多くあって、その後、統合報告書等で第三者認証済みの確定値を開示しています。私が見た中では、その結果、2桁修正されていることもあって、第三者認証の意味は大きいというふうに実感しています。この第三者認証は金商法の保証ではないですけれども、このような先進的な取組みを支持する観点から、Scope3を含めるべきというふうに考えます。
ただ、万が一、仮にですけれども、ここに書いてある一定期間猶予を設ける場合だとしても、ここでは毎年、制度導入年度ごとにスライドしていますけれども、そうではなくて、どこかに1つ、何年何月までというふうに時限措置を設けるべきだというふうに思います。
最後に、24ページに追加するべき論点はないかというところで、特にないですけれども、論点5について、サステナビリティ保証の自主規制機関を既存の団体の下部組織などにすると、多重構造で、利益相反のガバナンスが見えにくくなります。したがって、独立した唯一のサステナビリティ保証の自主規制機関として、ガバナンスの仕組み、透明性を確保することが重要だというふうに思います。
私からは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、会場で御参加の関口委員、御発言ください。
【関口委員】
ありがとうございます。では、私もこちらのスライドの順に従って発言させていただきます。
まず、サステナビリティ開示基準の導入における論点、こちらの5点については全体として、いいんじゃないかなというふうに思っていまして、ちょっと細かいところだけ申し上げていきたいと思います。
まず、9ページ目で、二段階開示や海外に向けた開示は支持しているんですけど、9ページ目のところでオーソリゼーションの話があります。これを読んでいますと、保証業務のここでのオーソリゼーションと、後での保証業務提供者の登録とかというのを切り離すような提案になっているのかなというふうに見受けました、暫定的な制度としてというふうにもありまして。ただ、これを完全に切り離すというのは恐らく無理ではないかと思います。欧州としても、評価をするのであれば、制度としてどうなのかということを見てくると思いますので、暫定的な制度としてこれをやるにしても、やっぱり一定のつながりというのを意識する必要があるんじゃないかなというふうに思います。
次に、14ページ目に行きまして、セーフハーバールールのところですけれども、まずここでScope3排出量とございますけれども、恐らくはバリューチェーン情報一般の話かなというふうに思っていまして、Scope3だけではなくてバリューチェーン情報についてということかなというふうに思っています。
その上で、15ページ目に行きまして、以下の事項ということで示されていますけれども、特にこの中のデータ・プロバイダーから入手したというのがありまして、これはほかのものとは少し毛色が違うのかなというふうに思っています。データ・プロバイダーの方、もともと正確なデータを提供することを業としてやっているわけで、その立証責任も恐らくあると思います。保証業務においても、いわゆるSOCレポートを入手するというのも求められるということになっていまして、そういう意味でここのデータ・プロバイダーの扱いというのは、ややちょっと微妙かなというふうに思っています。
なので、ちょっとそこは検討いただいてもいいのかなというのと、あと下のほうで、15ページのところで確認書の記載がありますけれども、この多分意図するところというのを少し明確にというか、出していただくといいのかなと思います。欧州、アメリカなどにおいては、いわゆるDisclosure controls and proceduresというのがあって、一定程度責任を負うのであれば、緩やかな形での統制を構築するというのは恐らく必要だろうと思います。確認書というのは多分そういうものを踏まえてのものなので、この辺、後での議論になってくると思うんですけれども、そういったことが必要なんじゃないかなと思います。
次に、保証業務のほうに行きまして、保証業務のほうは、ちょっと一言で言うと、私ちょっと驚いたというのが率直なところでして、何で自分がちょっと驚いているのかというのをお話ししていきたいと思います。
32ページ目のところを見ていただきまして、まずこちらのほうで、こういった割と現実的な対応を示していただき、これはこれであるなと思っているのですけれども、前回のここの場でもお話しさせていただきいただいたのですけれども、少なくとも3兆円以上の企業を前提としますと、こういったグローバル企業を前提としますと、保証業務提供者となる者は、現実的には財務諸表監査をしている監査法人の一択に多分なってくるかなというふうには思っています。そうした中で、今回特に仮登録というのも認めるというものが提案されています。仮登録って恐らく参入障壁を低くして、緩やかにできる人を広げていこうという趣旨だと思うのですけれども、一方で私の認識では、先ほど申し上げたように、ほぼ現実的には一択であるというところで、参入障壁を下げてあえて広げることに、正直言って意味があるのかなというのはちょっと思っています。むしろ仮登録というと、恐らく非常に簡易的な審査で、割と間口を広げるためにそうなってくると思うので、むしろやっぱり情報の信頼性を確保するという意味では、しっかりとした審査をした上で登録をしていくというのが重要なんじゃないかなと思っていまして、この点で仮登録というのは反対をします。これはちょっと反対をしています。
やっぱり保証業務を提供する人は、しっかりした倫理規則、それから、品質管理システムを備えてやるべきだと思いますし、この点を曲げてしまうと、国際的にも見た目にもよくないというのは率直に思っています。
あとは保証業務の対象のところ、これは恐らくいろんな議論の末にこういうふうになっているのだと思うのですけれども、出来上がりとしては、やや狭くて遅いというのは印象としては避けられないのかなと思っていまして、今回の第1回目の議論ということだと思いますけれども、その辺のところを多分意識しながら検討していただければいいんじゃないかなと思っています。
私のほうからは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、芹口委員、浅川委員、森内委員の順番で御発言をお願いしたいと思います。初めに、芹口委員からお願いいたします。
【芹口委員】
ありがとうございます。そうしましたら、論点のまず開示のところです。二段階開示の方法についてでございますけれども、有価証券報告書の訂正によるということに賛成いたします。3ページの3点目のところに理由の記載があったと思いますが、適切だと思いますし、また、提出期限も半期報告書の提出期限までと明確化いただいていると思います。
また、海外に向けた情報開示の本邦での開示方法ということで、こちらについても御提案に賛成いたします。利用者としましては、企業が海外規制に基づいてサステナビリティ情報の開示を行ったことが周知されるのはありがたいと思っております。利用者のニーズにも考慮いただいた内容ではないかと思っております。
また、続きまして、保証制度の方向性についてでございますけれども、こちらについては今回、24ページの論点1と2についてコメントをさせていただきます。
第一に、保証の範囲についてでございますけれども、利用者といたしましては、基本的には全ての情報を保証の対象にしていただきたいと考えております。また、重要な情報が全て開示されることが必要だと思っておりますので、企業が報告すべき情報の特定プロセスを確立して適切に運用しているか、また、土台となるガバナンス体制やリスク管理体制、これについてもしっかり構築されているか、これらも対象に含めることが必要だと考えております。御提案では、一定期間はScope1、2に限定をして、後に拡大していく方針だとされていますけれども、当初の範囲は狭く、一定期間がいつまでなのか、また、最終的な範囲と時期も明確になっていないと認識しております。30ページの海外の状況と比較しますと大きく見劣りすると思っておりまして、CSRDですと、全ての情報を対象にし、また、ISSBの採用国であるオーストラリアにつきましても、適用対象を徐々に拡大していくとはいえ、当初からガバナンスや戦略に関する情報も対象になっております。
今後の実務を考えますと、新しく設定されるISSA5000は包括的な基準ですので、ガイダンスの開発などが必要な項目もあろうかと思っておりまして、実務の状況を踏まえて、段階的な範囲の拡充とすることはやむを得ないとは思っております。また、優先順位として、まずは開示をしっかり定着させる必要がある状況であるとも思っております。したがいまして、最終的には全ての情報をカバーすることを視野に入れて、まずは保証範囲の拡大のロードマップをお示しいただいて、これによって企業がサステナビリティ関連のリスクと機会を識別し、これらに対応するための体制整備を進めていただくことが必要ではないかと考えております。
第二に保証の水準についてでございますが、広範な手続を必要とする点で、合理的保証のほうが信頼性が高いとは思いますが、これまでの実務と海外の導入状況を踏まえまして、まずは限定的保証から開始をして、その後に合理的保証に移行していくということでよいと考えております。
また、追加の論点になりますが、重要な情報が適切に開示されているかという観点からは、限定的保証と合理的保証の軸だけではなく、準拠性と適正性の軸も含めてどのような保証にしていくのか、整理が必要ではないかと考えております。
第三に保証の担い手についてでございますけれども、これまでの実務を踏まえまして、監査法人と非監査法人の両方に対応していただくというprofession-agnosticのコンセプトには賛同いたします。ただし、2点留意点がございます。
第一に、高い品質を確保していただきたいと考えております。法規制上の責任、品質管理、倫理規則などについては、担い手に関わらず同等かつ高い水準を遵守いただく必要があると考えております。また、財務情報を補完する位置づけで開示基準が設定される中では、これまでの保証実務と比較しますと、つながりを担保する重要性が高まると考えております。サステナビリティ情報と財務情報の間で重要な相違がないように、保証手続においてつながりを担保する体制が不可欠と考えております。
第二に、スピード感を持って、早い段階で全てのサステナビリティ情報の保証を実現していただきたいと考えております。制度設計にかかる時間や労力を考えますと、既に存在する会計監査の枠組みを活用して検討いただくほうが早期に制度を構築することができますし、また、制度運用の確実性も高いと考えられます。早期に全ての情報の保証を信頼性ある形で実現するためには、中長期的にどのような制度設計にしていくのがよいのか、24ページの論点4と5も併せて検討することが必要だと考えております。
私のコメントは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、浅川委員、御発言お願いいたします。
【浅川委員】
ありがとうございます。私のほうからも、論点に従って順にコメントさせていただければと思います。
まず、初めに二段階開示の方法、あるいは海外に向けた情報開示について、本邦での開示方法の具体案ということですが、基本的には御説明いただきました案ということで賛同いたします。また、開示内容から見てもボリューム感から見ても、やはりそういった順番を踏んで開示をしていくというところが現実的なのかなと思いました。
また、欧州のCSRD対応のために臨時報告書を活用してという案につきましても、基本的には賛同させていただきますが、具体的な内容とか検討に当たりましては、実際の事業者さんの現状も踏まえて、意見の集約等やられるといいのかなと思います。
あわせて保証業務提供者のオーソリゼーションの方法につきましても、現状まだ制度が回ってない中で暫定的に先に回すということのようですので、賛成をさせていただきたいと思いますが、やはり保証の業務に限らず、日本の企業自体がほかのところでもスムーズに活躍できるように、いろいろな障壁が日本の企業に不利にならないような交渉等日々やっていただけるといいのかなと思います。
続きまして、セーフハーバーに関する項目ですが将来情報、あるいはScope3のデータ関係について設定をするという案に賛成をいたします。特にScope3については、様々な手法で算定、集計、開示を行われるという状況があるかと思いますので、具体的にどう対応するのかというのは、少し事例等も収集して、実際にScope3がどのように算定がされているかというところを考慮して検討されるといいかなと思います。
それから、3点目の虚偽記載と開示ガイドラインの改正のところにつきましても、基本的には御説明いただいた案に賛成いたします。特に社内手続の明確化については、具体的に途中でもお話ありましたが、内部統制を活用するとか、あるいはマネジメントシステムを導入、促進するとか、具体的な例示等があれば、より効果があるのかなと思います。
最後に保証業務に関する部分ですが、実際の現実的な状況を踏まえると、御説明のあった保証範囲、対象範囲、保証水準についてはこんなところなのかなと思いますが、ほかの委員の方からもお話ありましたけれども、やはり海外の諸制度との見劣り感というかスピード感というのはすごく大事ですし、事業者さんのほうから見ても、やはり最終的にどういうタイミングでどうなるのかというスケジュール感は知りたいと思いますので、そういったロードマップというかスケジュールというか、そういうのは早めに固めていくというのがいいのかなと思います。
あと、保証業務の担い手ということで、私どもJQAはその他の保証業務提供者という位置づけになりますが、やはりお話の出ているような高い精度の品質確保というのは必要だと思っております。その中で、私どものようなISO系であれば、例えば認定制度というようなしくみがすでにGHG等について運用されておりますので、そういったしくみの活用も御検討いただきながら、高い品質を確保するというところに注力いただければいいかなと思います。
私からは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、森内委員、お願いいたします。
【森内委員】
森内でございます。私からは37ページの論点に関し、サステナビリティ開示基準の導入における論点について1つ、そして保証制度の方向性について2つ意見を述べさせていただきます。
まず、9ページ、サステナビリティ開示の導入の論点の中の、欧州CSRD対応のための保証業務提供者のオーソリゼーションというところでございます。記載のとおりCSRDでは、①大会社に対して、②一定規模以上の欧州域外企業に対して、それぞれサステナビリティ情報の開示、保証を受けることを義務づけており、この義務の免除要件の1つとして、親会社の所在する国の法律に基づく保証業務提供者のオーソリゼーションがあるということでございます。
そして、当該免除制度を利用したいという御相談は、私どもISO基準に基づいて保証業務を提供している検証機関にも寄せられていると承知をしております。こうした企業のニーズに応えて、かつ係る企業に対して保証業務を提供している事業者にとっても、継続的な業務提供に支障が出ないよう、暫定的な制度対応として、法令上一定の保証業務提供者を指定するということが妥当であるというふうに考えます。
それから、保証制度の方向性について、まず1点目が30ページ、保証の担い手というところです。海外におけるサステナビリティ保証制度に関する検討状況というところで、保証の担い手を監査法人に限定するのかしないのかということに関しては、各法域によって考え方が違うなということを十分認識した次第でございます。
他方で、33ページの参考資料、Scope1、2の排出量の開示、保証の状況の②保証業務実施者の内訳によれば、対象の時価総額により多少の差は見られるものの、監査法人と非監査法人の割合は半分半分と示されているというように思います。
それから、非監査法人系の保証業務実施者の中には、本協会を含みますIAF(国際認定機関フォーラム)に加盟する認定機関から、ISO/IEC17029、それからISOの14065に基づく認定を受けた検証機関が含まれていると承知をしております。さらに本協会から認定を受けた検証機関は、国によるJ-クレジット制度や2国間クレジット制度、東京都を含む地方自治体のGHG排出量関連制度において検証業務を長く提供しております。かかる状況を踏まえまして、我が国においてはISO14029、ISO14065に基づく認定を受けた検証機関を信頼できる保証業務提供者の1つとすることが望ましいのではないかと考えます。
それから、仮登録で一定期間運用という想定の仕組みについて、32ページの下部の点線の部分です。ここには保証業務実施者は新たな制度の下で登録を受け、監査法人またはその他の保証業務提供者に、保証制度導入後一定期間仮登録で運用を想定するというふうに書かれてございます。新たな制度において、全ての保証業務提供者が、実績や経験に応じて公平に評価、登録されるような健全な仕組みとすることが望ましいと考えます。本協会を含めますIAF加盟の認定機関から認定を受けた検証機関、先ほども申しましたように、J-クレジット、2国間クレジットを含めまして、GHG検証に関しては長く業務を提供しておりますし、一定の実績、経験、技術力を有していると考えております。
それから、参考資料の23ページのほうにはフランスの保証制度の概要が記載されておりましたが、フランスにおいては、検証業務を行う独立した第三者機関の審査は、フランス認定委員会、通称COFRACが実施するということになっておりまして、COFRACは本協会と同じIAFに加盟する認定機関です。COFRACと本協会のコミュニケーションの中でも、やはり保証業務提供者に対する研修・育成が最優先事項というふうに聞いております。現在、研修内容について、H2A(監査高等評議会)を中心にその内容が検討されていて、来年には試験があって、試験は保証業務を希望する機関の保証人、監査法人の保証人いずれも対象で、その登録後、認定審査を始めるというふうに聞き及んでおります。この研修の内容については、品質管理システム、職業倫理、独立性、客観性を含めて、業務の知識であるとか不正への対応であるとか、こういったこともカリキュラムに入っているというふうに聞いております。
最後にIAF(国際認定機関フォーラム)については、前のワーキング・グループでも申し上げたかもしれませんが、今年の2月にIESBAとパートナーシップのMOUを結びました。そしてIAFの中にもサステナビリティワーキング・グループを設置いたしまして、IAASBのISSA5000の包括的な分析、そして、IESBAのIESSA、それから、品質管理に関するISQM1及び2を適用基準とすることのための分析検討、これを続けております。その後、来年は検証機関に対してのガイダンスも発行するという予定で実施をしております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、吉元委員、それから、オンラインで御参加の高村委員に御発言をお願いいたします。まず、吉元委員からお願いいたします。
【吉元委員】
御指名ありがとうございます。では、私も論点に沿って発言させていただければと思います。
まず、開示のところで、二段階開示の方法のうち、二段階目の開示を訂正報告でやるという提案についてなんですけれども、これは私は制度論としては、企業の選択によって半報、または場合によっては臨報で報告を認めるというようなことも御検討いただくのがいいのではないかと思っております。当社のような米国上場企業の場合、有報の訂正ということが一択ということになってしまうと、SECの規則に基づくサステナビリティ開示が強制されるまでの間、じゃあForm20-Fのほうの訂正も有報の訂正に伴ってしなきゃいけないのかどうかという悩ましい問題が生じるというのが1つ実務的にあります。現状、当社含め多くの米国上場会社はそうだと思うのですけれども、サステナ情報の開示のところは基本的には有報を英訳するという実務でやっていることがありますもので、なのでそこが本国、本邦で訂正だというふうになると、じゃあ20-Fは訂正しなくていいのかという議論につながり得るというところが1つ論点としてあると思っています。
それから、海外向けの情報開示の本邦での開示がもし臨報でいいということなのであれば、有報のアップデートというのが臨報の位置づけという理解ですので、二段階目も臨報でいいのではないかと、単純にそういうふうにも思うところでございます。
もし、それでもなおやはり訂正報告一択だという法制度に統一するということなのであれば、やはり合理的かつ企業が不安にならないような制度設計が必要と思っております。その観点では、現行の訂正報告制度との関係で、2点気になっていることを指摘させていただければと思っております。
1つは、訂正の性質です。ここで想定されている訂正というものが、自発的訂正なのか、義務的訂正なのかというところです。もし自発的訂正という前提ならば、自発的訂正にもかかわらず提出期限を設け、その期限については、半報の提出期限を借用すると、そういう制度としての整合性があるのかというところです。もし、この点も臨報であれば、既に遅滞なく提出という時期的制限が法律上あるということも思っております。
逆に自発的訂正ではなくて、これが義務的訂正という前提に立っておられるのであれば、実務上は通常、財務局相談が必要になるというふうには認識していまして、事前相談ということは、企業側と財務局側も相当程度に実務負担が大きく出てくるということだと思っていますので、もし訂正でするのであれば、義務的訂正だとしても、二段階目については事前相談不要とすべきじゃないかというふうに思っております。
もう一つの観点は、訂正に伴う責任の問題です。自発的訂正であろうが義務的訂正であろうが、企業が開示基準に準拠していないことを認識しつつ、一段階目を提出している、一段階目の有報を出しているということが訂正報告の前提になってしまうと思います。これはある意味で、故意に虚偽の開示をしているという状況とも言えるわけですが、この場合には虚偽記載の責任は発生しないということを明確にしていただく必要があるのではないかと思っております。
続いて、海外向け情報開示の本邦での開示についてですが、10ページの現状の事務局案は、実務上の負担を考慮していただいて、開示主体、開示内容とも限定した案になってきていると思っています。ただ、それでもなおCSRD等のサステナビリティ開示のみをなぜ臨報の提出事由にするのかという部分の整理は必要と思っていまして、逆に言えば、それ以外の開示にまで同様の議論が広がらないかという点は気にしております。何人かの委員から開示主体を広げるべきという御意見もありましたが、私はその点については反対しております。臨報は、先ほど申し上げたとおり有報、または半報の補足、アップデートという制度的位置づけと理解していますので、本邦基準で要求されてないものを重要と位置づけるということは、実質的にSSBJ基準、開示基準そのものを拡大する議論につながるのではないかという懸念がございます。もし10ページの2点目のオーソライゼーションの観点から法定開示の裏づけが不可欠というのであれば、それは任意での開示を認めれば十分ではないかと思っております。
セーフハーバーについては、14ページ目の事務局案の3つ目の要件はちょっとまだ厳し過ぎると思っていまして、特に適切性、適切な検討というところは厳しいように思いますし、2点目の開示内容が一般的に合理的と考えられるというのも、これは結果を問われているというふうな気がしますので、19ページ目のSEC規則にあるようなレベルにまで緩和していただくのがいいのではないかと思っております。
開示ガイドライン改正以外の15ページのところについては、不確実な情報の記載箇所の特定を要件に免責を認めるという方向については賛成しておりますが、あまり特定の方法や程度を細かくし過ぎますと、結果的に免責されないことになりかねませんので、その点については合理的な要件設定をお願いしたいと思っております。
確認書については、現状でそもそも有報全体について記載内容の適正性を表明することになっておりますので、記載事項の追加は必要ないと思っております。
保証制度の方向性につきましては、全体的にはおおむね違和感はございません。先ほど御指摘もありましたが、当社含めて基本的には財務保証とサステナビリティの保証、財務情報の監査と保証は同一の監査法人に委託する会社が多いと思っています。ただしNon-PAの活用をする場合については、やはり独立性を含めたクオリティの担保、あとは実際にどの業者が認証を各国でされているのかということが一律分かるような、一見明白に分かるような制度づくり、国際機関との連携をお願いしたいと思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加いただいております高村委員、御発言をお願いいたします。
【高村委員】
ありがとうございます。私のほうから、3点でしょうか、御発言させていただこうと思います。
1つは、スライドの4にございます二段階開示の経過的措置についてです。媒体についてはこれまで御意見ありましたけれども、私は一段階目の開示を有報に基づく開示とするということの趣旨について事務局のほうに御確認をさせていただくと同時に、三瓶委員の御発言の御趣旨とも同じかと思いますけれども、有報に基づく第一段階目の開示ができるにもかかわらず、サステナ基準に基づく開示を妨げる、あるいはすることを抑制する形で働かないようにしていただきたいと思っております。
趣旨として確認をさせていただきたいのは、一段階目の開示を有報に基づく開示というものができるにもかかわらず、サステナ基準に準拠した開示をさせないという御趣旨ではないと理解していますが、それでよいでしょうか。つまり、ミニマムの基準であるという理解でよいかという点であります。
ISSB基準を見ても、この経過措置は容認されるとされていて、本来開示がされることが望ましいけれども、様々なフィージビリティ等を考えて、こうした経過措置が認められると理解をしておりまして、この点確認させていただければと思います。三瓶委員もおっしゃいましたように、既に企業の有報開示は随分進展していると思っていまして、後戻りをするような形の基準にしてはいけないというふうに思っております。
2点目は、セーフハーバーに関する検討の方向性についてです。具体的なガイドラインの書きぶり等々についてはさらに検討が必要かというふうには思いますけれども、基本的な方向性については賛成をいたします。特にスライド15のところにあります将来情報、これはセーフハーバーの文脈ですので、将来情報の入手経路、見積り等の適切性を検討し、評価するための社内の手続についても、やはり開示するということを示していくということを示唆していただいていると思いますが、これは非常に重要だと思っておりまして、事務局説明資料にもありますように、投資家保護上も有用な情報だと思いますし、これまでの裁判例においても、こうした点が重要な基準として機能しているというふうに思います。したがって、それを示す情報が、少なくとも開示の側としても、開示の基準に盛り込まれていく必要があるというふうに思っております。
3点目は、保証についてであります。非常に重要な、つまり、投資家の判断に資する信頼性を有する情報を提供するという観点から検討が重要だと、これまでも申し上げてまいりましたけれども、今回、方向性についてお示しをいただきましてありがとうございます。限定的保証から合理的保証へと時間をかけて進展をしていくという点については、賛成をいたします。しかし、今回いただいた御提案について、井口委員をはじめ多くの委員が指摘されておりますけれども、やはり幾つかの懸念事項を持っております。
1つは、出発点としても最初の第一段階としても、Scope1、2の排出量に限った義務的保証という範囲は狭過ぎるというふうに思っております。これは前回のワーキングでもScope3の文脈で、何のための開示かということを議論してきたかと思います。やはりこうした情報開示によって、Scope3の文脈でしたけれども、芹口委員ほか多くの委員がおっしゃいましたように、やはりバリューチェーン全体を見渡した上で、企業のどこにリスクと機会があるのか、それをどのように企業が対応しているのか、リスク管理をして戦略を持っているのか、これは緻密な具体的な排出量の数字以上に、やはりこうした開示する情報を社内でどのように検討し、決定をしてきたのか、それについてどのように評価をし、対応しようとしているのかということが開示されるということが重要だというふうに思います。
その意味で、欧州、豪州の例についてスライド30、アメリカも含めて海外の例を御紹介いただいておりますけれども、これも委員から御指摘あったとおりですけれども、やはり諸外国と比べても、保証の範囲とスピードで見劣りをするという印象を持たざるを得ません。スライド30のところで、注の2に欧州のアプローチについて御紹介をされておりますけれども、これもどなたかから御紹介ありました、ISSB基準を基本的に尊重しながら開示の基準をつくっている豪州の例として、大変参考になると思います。特に、先ほどセーフハーバーのところで何のための開示かということを申し上げましたけれども、とりわけガバナンス、それから、リスクの評価についてしっかり何らかの限定的でも保証を開始するということが必要ではないかというふうに思っております。
保証について2点目は、多くの委員が御指摘のように、全ての情報への保証を目指して、しっかりその範囲を拡大し、その質を上げていく具体的時間軸を持ったロードマップを示していただきたいというふうに思っております。その観点からも、欧州のアプローチというのは参考になるのではないかというふうに思っております。
最後、保証に関して3点目の担い手についてです。サステナビリティ情報の信頼性をどのように担保していくかという意味で、非常に重要だと思います。公認会計士、監査法人以外も含む制度、Non-PAも含めていくかという点について、保証の担い手を拡大するというコンセプト自身には賛成をいたします。しかし、多くの委員がおっしゃった留意事項を、やはり検討する必要があると思っております。1つは公認会計士、監査法人が、資格や法令上の義務、責任、法令違反の場合の処分、中立性、独立性の担保、利害相反の回避などのためのしっかりした法的規律の下でその役割を果たしているということを考えますと、Non-PAに関しても、法制度上ギャップがないような担保が必要だろうというふうに思います。
資格制度等の能力の担保という点も多くの委員が御指摘あったとおり、支持をいたします。特に財務情報とのコネクティビティをしっかり見ていくということが、必要な保証の項目にもなってくるかと思いますけれども、こうした能力を担保する資格制度の検討もしていただきたいというふうに思っております。こういう制度ですとか法制度が逆にしっかりしていくことは、当然サステナビリティ情報の信頼性を高めるということになりますけれども、同時に、こうした制度が担保されることで、Non-PAの方々が保証の業務に入っていきやすくなる、企業としても使いやすくなるということかと思います。
最後に保証について強くお願いをしたいのは、今、保証について、スケジュール、範囲について御提案をいただいておりますけれども、その制度が整わないから開示、あるいは保証のスケジュール、範囲を遅らせる、狭めるというのは、私は得策ではないというふうに思っております。あと言い方を変えますと、Non-PAの参入を本格的に認めるということであれば、早急に法制度の整備も含めて検討を急いでいただきたいと思います。
以上です。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。1点、趣旨についての御確認事項があったかと思います。事務局からお願いできますでしょうか。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。4ページのところで、二段階開示のところで御質問いただきました。
有価証券報告書の一段階目で、現行開示規制に基づく開示というところが、ミニマムの基準でよいのかという御確認でございますけど、おっしゃるとおりミニマムの基準というところでございます。こちら米印にも書いてございますように、一段階目においても、サステナ基準に準拠した開示と共通する部分、すなわちサステナ基準に準拠した開示が一段階目にも一定程度行われるということも想定してございますので、先生おっしゃるとおりミニマム基準ということでございます。
【神作座長】
高村委員、よろしいでしょうか。
【高村委員】
ありがとうございます。
【神作座長】
それでは、続きまして、オンラインで御参加の田代委員、ここで御発言をいただけますでしょうか。その後、会場で御参加の清原委員、阪委員、また、オンライン御参加の小林委員、それから堀江委員の順番で御発言をお願いしたいと思います。初めに田代委員、お願いいたします。
【田代委員】
ありがとうございます。私のほうから3点、簡単にお話しさせていただきたいのですけど、まず、10ページのところで、海外の開示基準に基づく本邦においての開示なのですけれども、開示義務の対象者のところで、本邦でサステナビリティ開示基準に準拠して開示を行っている場合には、既に必要な情報が日本で開示されているかという表現になっているんですけれども、必要か必要じゃないかというのが理由なのかなというのが疑問だということと、あとは開示の負担が、もしリンクを貼るというような観点であれば、あまりそれ自体は負担にならないと思いますので、本邦で開示しているのかしていないのかに関わらず、海外において開示している場合はリンクを貼るような形にすればいいのかなというふうに思います。
2点目なのですけれども、セーフハーバーにつきましては、まだ日本においてはあまりなじみのない制度というのか、ちょっと怖いと思っている企業が多いと思いますので、導入の際には、今後も実例等、海外における例も含めて積極的に事例を開示することで、企業が必要以上の萎縮をしないような形で開示ができるようにするのが非常に重要ではないのかなと思います。
3点目ですが、保証制度におきましては、今の高村委員とほぼ同じことなのですけれども、やはり当初非常に限定的で、保証を求める場合は、早急にロードマップを示す必要が、同時にロードマップを示す必要があるのではないかと思います。また、さらに公認会計士以外を認定するのであれば、どういう制度を導入して、独立性も含めて非常に重要だと思いますので、どうやって監査して監督していくかという、多分金融庁側のいろいろな準備もあると思いますので、それは早めにやる必要があるのかなと思います。と申しますのも、これも高村委員がおっしゃったとおりだと思うのですけれども、この準備が整わないがために開示自体が遅れてしまうというのは本末転倒というのか、非常に残念な結果になると思いますので、準備は万全にする必要があるという観点からも、早めにスタートする必要があるのではないかと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、また会場のほうに戻りまして、会場で御参加いただいている清原委員、お願いいたします。
【清原委員】
ありがとうございます。議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。
1点目の二段階開示のところですが、有報の訂正ということに賛成いたします。訂正といっても、事務局からお話がありましたように、開示基準に従った開示がミニマムの中で認められているということなので、訂正される部分というのは、新しい情報というか、当初そろってなかった情報という形になるかと思うので、御懸念されている点は実質的にはかなり減るのではないかと考えるところでございます。
期間については、半期報告書の提出期限を借用する形が必要なのかというと、むしろ期限は最初から例えば6か月とかはっきり区切ってしまうのがよいのではないか。継続開示は提出期限の延長制度などもあるので、間に合わないということであれば、理由を説明した上で、フレキシビリティ(柔軟性)を持った運用ができるのではないか。経過措置は初年度だけということになるわけですので、運用の分かりやすさという点から考えるところであります。
次に、海外での開示情報の国内での臨報の開示についてですが、アクセス情報という負担の低い形ですので、国内で開示をしてない企業に限定しないで開示していただくのが適切ではないかと考えるところであります。
他方、10ページの記載内容について、少しコメントさせていただきたいと思うのが、サステナビリティ開示基準に基づいた開示を行った旨だけでなく、場合によっては海外で行ったものの中で、国内でも開示を行うべきような重要なものについて要旨などを追記すること、それができるようなことも含めて、少しフレキシビリティを持っていただきたいというのが1点目です。
2点目は、保証に関してですけれども、ディスクロージャーワーキンググループの2022年12月の報告において、米国SECのルールをベースにして、保証に関して一定の事項を記載するということを述べているところがあって、そこのところでは、意見の内容だとか基準だとか細かいことも幾つかありますけれども、独立性などに関して、保証業務を行ったものの名称だけじゃなくて、独立性に関する事項というものがありますので、この点についての記載も重要ではないかと考えるので、追記いただければというところがございます。
次に、セーフハーバーのところです。セーフハーバーに関しては、ガイドラインの改正でのセーフハーバーの明確化を図るのは、実務的な意味でも有用だろうと考えていますので、賛成するところであります。
他方、なぜこのようなセーフハーバーが認められるかということを少し考えてみますと、やはりそれは広い意味では、開示する企業が責任ある態度で開示に臨んでいる。スチュワードシップ・コードは「責任ある機関投資家の諸原則」という名称ですが、「責任ある」という言葉は、例えばEUですとか、OECDですと、responsible business conduct(責任ある企業行動)のような形で使われていて、やはり上場している企業、もしくは継続開示する企業の開示における姿勢として、それは誠実性ということにもつながると思いますので、そういった概念というものを少し盛り込んでいただくとよいのではないかと思われます。なぜそれを求めるかといえば、やはり信頼される開示を行う上で、企業サイドとして、当然内部統制は整えている。特に内部統制の実施基準は今般改正があったところですが、その目的の1つは「報告の信頼性」という形に改正され、財務報告の信頼性のみならず、報告という形で拡張され、まさに上場企業の方々はその対応をされているところかと思いますので、そういったところからいうと、サステナ情報に関しても、やはり信頼を得られるような、そういう意味でいうと、誠実な、責任ある態度で開示をしているからこそ、セーフハーバーによってそこは責任が問われないという形に持っていける。そうすると、個別のところでどこまでやっていたらよいのか、というところについては、少しフレキシビリティを持たせてもいいと思うので、開示ガイドライン以外に、例えばなんですけれども、記述情報の原則というのは、先般2019年に出たものの別添という形で、サステナビリティ情報の開示についてガイダンスが2023年に公表されていますけれども、サステナに関するガイダンスというようなものを今後、別途、例えばScope3であったらどうだとか、そういったことも含めて御用意いただくということも場合によっては考えていただくとよいのではないかというふうに考えるところであります。したがって、開示ガイドラインがあまりがちがちに固くなってしまうということがないように、他のもので柔軟に補充できるようなことがあればいいのではないかというふうに考えるところであります。
保証のところに関してですが、先ほど来、保証業務提供業者に関して監査法人に限るかどうかというところも含めて御意見がいろいろあったかと思います。私は限定しないほうがいいのではないかというふうに考えるところでありますけれども、よくよく考えてみると、もちろん監査法人は、財務情報の監査についてのプロですが、ではがサステナ情報について、その保証についてのプロかというと、これまでは認定などがない中で進んできているので、新しい制度を組み立てていこうというときに、誰が近いか、誰がやったらいいかということ、これから新しいものを始めるということですので、私は認定の最初の段階では暫定などの言葉が使われるのは当然だと思っています。
最初から間違いのないものを確実につくれるわけではないですし、かつ財務情報の監査とサステナビリティの保証は全くイコールではないはずです。同等の信頼性の確保といっても情報の性質の違いということを踏まえたり、また、それに求められる独立性ですとか専門性を考えると、サステナ情報が広範になったときに全てを保証する、それは口では言うのは簡単なんですけれども、どういう知見があったときにその情報を保証するのにふさわしい専門性があるといえるか、それを認定することもなく何でも保証できるというのも結構乱暴な議論ですので、もう少し精緻な、やはり新しいもの、今までなかったものをつくるということの意味を考えてみて、どこが財務情報の監査と違うところで、そのために今までISOでやっていた方々の知見を活用できるものがあったりするけれども、彼らは監査という形ではしてなかった。その意味で、どこを補っていくか、こういったものをもうちょっと丁寧に議論していく必要があると思います。ですので、アプリオリに、今までと同じようながっちりしたものが必要ですというような断定的な議論をするのはちょっとまだ危険ではないかなと思います。ですので、少しそこはいろいろ考慮すべき要素があるということを踏まえ、多面的な観点から議論を進めていただければと思っています。
最後に、これ以外に議論すべき点があるかということが保証のところで挙げられておりますけれども、私が気にしておりますのが、その中で独立性という言葉が使われているところです。そこでは、やはり多くの方は基準における独立性を想定されていると思いますけれども、アメリカではindependent attestation service provider、EUにおいてもindependent sustainability assurance provider、そういった形でインディペンデントを必ずつけて議論をしている。そのインディペンデントは、経営陣からの独立性、しっかりインディペンデントであることが確保されることが求められています。それはガバナンスが関わってくる。日本でいえば、会計監査人に関して、会社法上の規定があるわけですが、新しい制度なのでそういった会社法的な、法的な規制がないという中で、サステナビリティのアシュアランス・プロバイダーというものに対してどういう規律が制度として確保されることによって独立性が確保されるといえるか、これは、監査基準、サステナビリティ保証基準という、そういう基準だけでなくて、やはりガバナンス的なものをしっかり考えなければいけないはずです。これがもし確保されてないような選任のされ方、報酬の決め方をしていた場合に独立性に疑義がつくようなことになったとすれば、EUに持っていったときにそのような保証は独立性がないじゃないか、アメリカに持っていたときにもそれは独立性がないじゃないか、という議論につながりかねないといえます。
その意味で、やはり一歩下がって、本当に制度を組み立てるというときには何が必要なのか。監査に対して、どういう歴史や経緯があり、制度的な工夫が積み重ねられてきたのか、ここも丁寧にちょっと考えてみる必要があるのではないかということがあります。そこのところについて、僭越ですが一言コメントさせていただきました。
以上であります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、阪委員、御発言をお願いいたします。
【阪委員】
どうもありがとうございます。お示しいただきましたスライドについて、全体の方向性には賛成しております。その上で幾つか意見を申し上げます。
まず、開示についてです。4ページに訂正報告書への言及があります。既に温室効果ガス排出量などについての訂正報告書も企業から出されております。これは4ページ目の二段階開示で意図していることとは異なる、また、サステナビリティ基準で議論されている水準よりも軽微と思われるものについても数値の「訂正」が出されていますので、ここで提案されている意図とは違うような訂正報告書での開示も既にされています。このようなケースで、訂正報告書を出される企業と出されていない企業のばらつきが既に生じていますので、ここでの意図とは違いますけれども、この扱いについても御説明があるとよいのではと思っております。
開示について2点目です。有価証券報告書の開示に関するこれまでの意識と、サステナビリティ情報の範囲や時間軸、不確実性というのはかなり異なります。14ページのスライドの3つ目の四角の下の箇条書に関して、先ほども言及がありましたけれども、「一般に合理的と考えられる範囲」という文言がございます。これは財務情報の視点とサステナビリティの視点では、「一般に合理的と考えられる範囲」が異なると思います。まだ慣習がまだ定まっていない中で、「一般に合理的」という判断も難しいと思います。また、サステナビリティ基準では、「重要性」が非常に重要なキーとなる概念になると思っています。サステナビリティ情報については、既存の将来情報よりも、不確実性が高い情報も多いと思います。これはバリューチェーン、例えばScope3のように、他の企業の取組に依存する部分が多いからです。しかし、不確実性が高いことは信頼性が低いことではありませんし、信頼性が高くても不確実性が高いということもあり得ます。そのため、虚偽記載については、厳密にしすぎないこと、また、基準を前提とすれば、重要性は基準にありますのでわざわざ書かなくてもと言われるとそのとおりかもしれませんけれども、項目は重要だけれども、開示されている数値について、結果として後で差異があったような場合でも重要性がないものについては、責任を負わないといった書き方も考えられるかと思います。
続きまして、保証についてです。1つ目は、32ページ示されているプライムの一部をここでは対象としていることから考えますと、グローバルな視点から、日本企業のサステナビリティ開示の質が他国のグローバル企業と同等と評価されることが重要かと思います。また、サステナビリティ開示が、サステナビリティ関連財務情報開示であるということに鑑みても、既に御発言もありましたが、保証の範囲が狭過ぎると期待ギャップも生じる可能性があります。段階的に拡大していく期間についても、国際的な動きのスピードに合わせて、ロードマップを国際的にも示していくことが重要かと思います。
保証の2点目です。一方で、サステナビリティ開示基準、ISSB基準などの意図、つまり、サステナビリティを会計言語に取り入れることで、より強靱な経済を構築する、という観点からしますと、本来サステナビリティ開示はもっと広く企業に利用されるべきと思っています。プライム全企業あるいはその先を見据えた場合には、今議論されているこの範囲からは外れるかもしれませんけれども、profession-agnosticもあり得ると思います。
特に、サステナビリティ開示の参照先の情報で、様々な保証機関の保証が既に実施されていることに鑑みても、もう少し広い視点から担い手や業務の質保証の仕組み、その検査・監督に関する制度を社会的に整えていくことは、社会全体としてサステナビリティ開示・保証の質を確保・向上していくことにつながると思っています。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の小林委員、御発言をお願いできますでしょうか。
【小林委員】
私からは、3点申し上げたいと思います。
まず、1点目は、二段階開示について大きな流れとしてはこれでよろしいと思います。
ただ1点、保証制度導入の時期について、事業規模でスライドをして二段階開示を全てに適用していくのであれば、時価総額5,000億円以上、それ以下については適用されるまでに時間がありますので、さらに二段階開示を認める必要があるのかどうかということについては、再検討していただいてもいいのではないかと思います。
2点目は、セーフハーバーについてです。これは先ほど田代委員からの御発言とほぼ同じですが、セーフハーバーの求められるプロセスの在り方について、企業側は初めての有報による開示ですので、かなり細かいところまで検討しなければ開示できないと思ってしまうかと思います。この点については、求められるプロセスの在り方、あるいはいろいろなケースを例示して見せていただくことで、企業側もどれくらいまでの開示をしなければいけないのかというイメージ、どこがセーフハーバーで、どの程度のレベルの担保をしなければいけないのかということが具体的にイメージできると思います。その上で、企業の開示が萎縮しないよう、十分な働きかけと、そして、コミュニケーションを取っていただきたいと思います。
それから3点目は保証に関してです。まず、1点目は、高村委員が御指摘なさったScope1、2でいいのかという点については、私も同じように疑問を持っています。限定的保証であっても構わないですが、そもそもサステナはCO2だけではないので、保証の範囲がScope1、2に限定されるというのは狭過ぎるのではないかと考えます。むしろ欧州ないしは豪州の指定する範囲というのを前提に考えたほうがよいのではないかと思います。
そして、保証の提供者については、これは鶏と卵の話になってしまうかと思いますけれども、特にNon-PAの保証提供者を視野に入れた場合、今後どのような質的な要求、そして責任制度ができるのかということを、ある程度イメージして議論をしていかないと、暫定的にスタートするとしても、後で正式な制度を導入するときに大きなギャップができてしまうと信頼できる制度の構築に支障をきたすことになってしまいます。誰が提供者である、あるいはどういった質を求めるのかということと併せて、保証提供者の責任とか教育というようなことも含めた広い範囲での制度の在り方についても並行して議論していく必要があると思います。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、会場に戻りまして、堀江委員、それから永沢委員の順番で御発言をお願いいたします。堀江委員からお願いいたします。
【堀江委員】
どうもありがとうございます。開示と保証について、ごく簡単に意見を述べさせていただければと思います。
まず、開示ですけれども、既に事務局資料の中で、サステナ情報の有報への記載内容についてお示しいただいておりますが、適用初年度の二段階開示のときと2年度目以降の開示からの開示の詳細度というのでしょうかね、この辺りが私だけかもしれないんですけど、イメージがよく湧かない。特に開示基準に従った開示となりますと、解釈による揺らぎがどの程度生じるのかというのがつかめないので、この辺りもう少し明確にしていただけると、開示とセットで考えなければならない保証の対象をどうするかとか、保証の水準をどうするかということの議論もしやすくなるのかなと思っております。
次に、保証ですけれども、私、実は実態を十分に把握、検討しているわけでもございませんし、これまでも議論に出ているCSRDといったような先行する制度との関係をどう考えるかとか、慎重な議論が必要だと思います。ただ、その上で基本的な在り方について、考えを述べさせていただければと思います。
やはりポイントは保証の担い手ではないかと思うのですけれども、有報に記載されるサステナ情報は、基本的には財務諸表と併せて利用される情報です。そういう前提で考えると、保証の主体は、職業会計士が望ましいと考えざるを得ないと思います。職業会計士による財務諸表とのセット保証というふうに考えたほうが、すっきりするのかなと。特に金商法に組み込まれた制度として運用するという前提で考えますと、保証結果に対する責任とか、保証主体の登録制度をどうするかとか、保証主体に対する検査監督、こういったことを考慮すると、職業会計士を軸にして保証の主体を考えたほうが、混乱がなくうまく着地できるのかなというふうに考えています。
そうは申し上げましても、職業会計士だけに任せておくことが、この制度の真に有効な運用にとって本当にいいことかどうかということについて疑問なしとはしませんし、職業会計士であれば誰でも認められるということについても反対です。これまでの実績もありますし、高度な専門性を考慮して、さらにはISO等に基づく様々な保証業務との将来的な連携とか関連づけとか、実は会社側ではアシュアランス疲れとか、アシュアランス地獄なんていう言葉まで出ているわけでして、そういったことも考慮に入れて、職業会計士以外の専門職の協力というのは、不可欠ではないかと思います。
そこで職業会計士による保証を軸に据えて、その上で職業会計士以外の専門家業務の積極的な活用ですとか、保証責任の観点から、これはちょっと慎重な議論が必要になるんですけれども、いわゆる共同監査のようなスタイルが考えられないかどうかとか、そういった職業会計士以外の専門職の協力、参入を、時間軸も考慮しながら、制度の中にうまく取り入れていくような方策を考えたほうが、混乱もなく進められるのではないかというのが私の考えです。
なお、保証水準のばらつきを避ける必要があって、Aという人に頼んだら、無限定で全く問題ありません。Bに頼んだら、グリーンウォッシュを原因とした重要な虚偽の表示があるみたいな、このような話では困りますので、そういう意味でも保証業務提供の品質基準であり、責任基準ともなる、サステナ保証基準の策定というのは、必要不可欠ではないかと考えます。その中で、職業会計士以外の専門職の積極的な参加を促すような規定をきちっと盛り込む。
例えば保証の国際基準を見ても、事細かな手続論ばっかりが書いてある。しかし、何のために保証が必要かということを、メッセージとしてきちっと送る必要があると思います。そういう意味でも、我が国独自の保証基準の策定が必要ではないかと考えます。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、永沢委員、お願いいたします。
【永沢委員】
私は個人投資家の立場でこの議論に入らせていただいています。皆様の議論になかなかついていけていないのですけれども、情報開示は投資の自己責任の大前提であり、これを担保しているのが有価証券報告書の制度であり、サステナビリティ情報が投資判断において重要性をましていることから、その開示を有価証券報告書の制度にどう乗せていくのか、そのための議論をここでさせていただいており、そのための論点整理をしてくださっている事務局のご苦労に感謝いたします。
基本的に事務局の案に賛成なのですけれども、実務の側の立場で参加しておられる吉元委員のお話を伺い、企業の選択によって半報、または場合によっては臨報で報告を認めるという柔軟な対応を認めてもいいのではないかと思いました。
投資家としてはやはり保証のところが一番関心があるところです。どう発言しようか悩んだのですが、藤本委員が一番初めにおっしゃったように、市場はこの制度から何を期待するのかをクリアにすることが出発点として重要だと思います。その一方で、情報開示も国際的な競争の中にあるわけですから、欧米の開示に乗り遅れないために保証制度を早急にスタートさせることも重要です。投資家の信頼を得ることとスピード感という2つの軸を考えていかなくてはいけないと思います。
公認会計士の制度に対する投資家の信頼は非常に大きいものがあります。Non-PAという新しい制度がその制度と並立するような関係になることは、正直、想像することが難しいです。
ところで、資料の33ページのところですが、Scope2までであれば、相当数の企業がすでに対応されており、そのうちの半分が非監査法人を採用されているということですが、非監査法人というのがどういう企業なのか、何社ぐらいあるのかといった情報が資料中からは見えてきていないので、不安に思うのかもしれません。非監査法人の実態について、また、その業務内容がどうなのか等の情報がもっと提供されることが、Non-PAという新しい制度が信頼を獲得するには必要だろうと思います。Scope1と2ですから、それほど高度な専門性は必要ないのかもしれませんが、保証業務の品質はどうなのかといった確認はどこかがすべきだろうとは思います。
財務会計監査の人材が足りないと言われている状況にあることを考えますと、Non-PAに期待せざるを得ないとも思います。堀江先生がお話されたように、当面は、公認会計士を補完する形で、将来的には並立になるのかどうかは分かりませんけれども、国際的に期限が決められている以上、走り出すしかないのではないかとも思います。
もし、Non-PAを登録制で認めるということであるならば、立法化の議論を早急に進める必要があり、また、ロードマップも作っていただき、要件なども専門家や関係者に集まっていただき、詳細を詰めていく必要があるのではないかと、素人ながらに感じます。
最後に、本日、貴重なお話をたくさん伺いましたが、清原先生の独立性に関するご指摘が肝となる概念であると思いました、
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
本日御参加いただいております委員の皆様から御発言をいただきました。どうもありがとうございます。
ここでよろしければ、オブザーバーの方々に御意見、御発言の希望がございましたら、ぜひおっしゃっていただきたいと思います。いかがでしょうか。経団連の小畑さん、お願いいたします。
【日本経済団体連合会】
経団連の小畑でございます。4点ほど論点に沿って申し上げさせていただければと思います。
まず、開示の部分、二段階開示のところです。こちらについては、企業からもこういう猶予を認めていただけるということは非常にありがたいという意見を賜っておりまして、むしろ初年度だけでいいのかと、2年目以降も必要なのではないかという御意見もある状況でございます。
その上でですけれども、二段階目の開示媒体が訂正報告書というところについては非常に違和感があるということです。臨時報告書では駄目でしょうかと。訂正というのは非常に企業にとっては重たい意味がありますので、その辺、媒体についてはもう一度お考えいただける余地があればいいなというところがございます。
次に、資料でいうと10ページ目でございますけれども、CSRD対応のところでございますけれども、今の取りまとめのところでは、日本基準に基づいて開示をしている限りは追加的な開示は必要ないと、そういうふうな書きぶりになっているかというふうに受け止めておりまして、非常に合理的な御判断をいただいているなということで歓迎するところでございます。
一方、1つ確認させていただきたいのはその後の部分で、CSRD等の連結ベースでの開示を求める海外のサステナビリティ開示基準に基づく開示をしたら、日本でやっていなければ臨報でという書きぶりになっているわけですけれども、ここの意味するところは、最初にCSRD対応が出てくる2025年12月期以降に始まる欧州の対応で子会社単体ベースで開示をしたという場合には連結ベースではないので、これは臨報の対応は不要であると、そういうふうに受け止めてよいかということを確認させていただければと思います。
次に、セーフハーバーのところ、資料でいうと15ページのところでございますけれども、こちらをこういう形で設けていただければ非常にありがたいという受け止めでございまして、欲を言えば19ページにありますSECの規則案では、よほどしっかりと反証がない限り合理的なものとして認めるということで、立証責任の分配についてもきっちり書き込まれているということで、この辺どこまで日本の基準において書けるのかというところを模索していただければということとともに、確認書については、これまでも有報全体の記載内容が適正に記載されているということを確認したという趣旨でございますので、有報の中身には、当然のことながらサステナビリティ情報も含まれているということになりますので、この点は特段の追記は不要なのではないかというふうに考えております。
最後、保証の点でございますけれども、まずスタートとしてScope1、2に限るということは合理的なのではないかというふうに考えております。また、保証をする主体でございますけれども、やはり情報の信頼性確保の観点からは、検査、監督、自主規制、こういった体制がフルセットで整っているものということが前提なのかなというふうに思っております。また、Non-PAの皆さんについては、それぞれ専門とする分野については深い知見があると思われますので、例えば財務監査においては専門家の業務の利用ということが今でも行われているわけで、そうしたPAとNon-PAとの協力関係をぜひともしっかりと整えていただければ、有意義な保証というのが行われるのではないかというふうに考えております。
また、保証に関しては別途別の制度として、例えばGXリーグのようなところでも保証というのが出てまいりますので、それぞれの場面で保証の在り方等々が違うというのは非常に企業としては困るということですので、その辺省庁間の御調整、ぜひともお願いしたいというところでございます。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
1点御質問がございました。よろしくお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
御質問ありがとうございます。
いただいた御質問は、欧州のCSRD対応で免除規定を使わずに、2025年12月から単体対応でやった場合に、こちらの臨報の対応になるのかということでございますけれども、欧州のCSRDの仕組みが連結ベース、単体ベース、あと時系列によっても様々な組合せがございますので、全体としてどういう制度が望ましいのかにつきましては、次回以降検討の上、また御回答させていただければと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございました。小畑さん、御発言ありがとうございます。
続きまして、日本公認会計士協会の太田さん、御発言ください。
【日本公認会計士協会】
ありがとうございます。会計士協会の太田でございます。私からは、保証制度の方向性についてコメントをさせていただきたいと思います。
まず、保証業務実施者でございますけれども、やはり議論するに当たりましては、これまでの委員の皆様の御発言あったとおりですが、品質確保のための枠組みの検討が必須であると考えております。制度構築に当たりましては、現行の監査制度が参考になるというふうに考えておりまして、現状、日本公認会計士協会では、公認会計士法に基づきまして、監査業務の改善、進歩を図るために、会員の指導・監督に関する事務を行うということで、登録や、また業務基準、職業規範の策定、会員業務の指導・監督という一連の自主規制の枠組みを構築してございます。やはりこの自主規制枠組みを維持するためには、現在、相当程度の人的・経済的コストがかかっておりますので、この点も含めた検討が必要かと思っております。
また、これも御発言あったところですけれども、今回の御説明資料の32ページに、一定期間は仮登録で運用という記載がございます。この点、仮登録についてやはりどのような制度設計になるのかというイメージがしっかり持てていません。保証業務実施者が決まるという非常に重要なポイントだというふうに思っておりますので、どういう形になるか明確にした上で、議論することが必要だと思っております。
御参考までに、2022年に公認会計士法改正で導入されました上場会社監査事務所の登録制度を踏まえますと、こちらもやはり相当の人的リソース、コストがかかってくると考えております。
次に、保証範囲についてでございますけれども、現在範囲に関しまして、Scope1、2に当面限定する旨の提案がなされてございますけれども、やはり財務情報との関連の深い情報、例えば戦略に含まれる将来情報、ガバナンス情報というのも重要性が高くございますから、当初から含める必要性の高い項目だというふうに認識しております。利用者の視点や国際的な見地からも、保証範囲を検討するということが重要だというふうに考えております。
保証に関してですけれども、やはり新しい分野ですので、一部の情報に保証の課題というものはあるのだと思いますけれども、欧州ではESRS基準全体に対する保証が今期から既に始まっておりますので、海外での実務も参考にしながら、課題に対応できるようにしっかり準備していくということが重要だと考えております。
最後に追加すべき論点でございますけれども、今、経団連様からもご発言ありましたように、GXリーグ等も制度化の方向で進んでいると理解しております。やはり同じような情報開示、保証の作業が重複しないように、インターオペラビリティについても、省庁を超えた議論をしていただきたいと考えてございます。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
オブザーバーの方で、御発言の希望はございますでしょうか。ほかによろしいでしょうか。
松井先生が参加されましたので、松井委員、聞こえておりますでしょうか。ご発言がございましたら、よろしくお願いいたします。
【松井委員】
参加がおくれまして申し訳ありません。恐らく皆様から既にいろいろな御意見が出ているかと思いますけれども、私としては、セーフハーバーについて、一応簡単に申し上げたいと思います。
このセーフハーバーに関しましては、日本では非常に直近、非財務情報に関する記述の開示という形で制度が出発したものでありまして、これをScope3に関するセーフハーバーという形に変えたということでありますので、その中には他社から提供を受けた、もともとどういったものであったかということが分かりにくいデータを用いた情報提供であることに配慮したセーフハーバーと、その他の様々な不確定性に配慮したもともとの非財務情報に関するガイドラインが想定するセーフハーバー等々、いろいろな要素を含んだ議論が混在してなされているかと思いますので、相互関係が若干見えにくくなっているのではないかと感じております。どのような点に関して、どのガイドライン、もしくはセーフハーバーが適用されるのかといった点について、見通しのよい制度になるということを期待しております。
その他の点に関しては、おおむね異存というのはございません。以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、オブザーバーの関経連の中島さんから御発言の希望いただいております。どうぞ御発言ください。
【関西経済連合会】
関西経済連合会の中島です。よろしくお願いいたします。
まず、資料38ページの御議論いただきたい事項について、2点申し上げたいと思います。1点目は、資料3ページの経過措置としての二段階開示に関して、金融商品取引法の有価証券報告書の訂正報告書を提出することは、重大な誤謬等を除けば、企業にとっては極めて抵抗が強いものと言わざるを得ません。また、時間的に間に合わない内容が含まれるのであれば、半期報告書で補足、追記し、翌年度の有価証券報告書の比較情報に加筆、修正することで十分ではないかと考えております。その観点から申し上げれば、有価証券報告書の訂正による方法、または半期報告書による方法を選択できるようにするのが望ましいものと考えます。
また、資料4ページの右下に記載されている二段階開示の案については、慎重な議論と検証が必要と言えます。今回の案では、現行開示規則に基づく開示と、サステナビリティ基準に基づく開示の二重開示になることに加え、訂正報告書で大幅な訂正が必要となる可能性があります。現行開示規則に基づく開示は、サステナビリティ基準に準拠する開示に置き換えられるべきと考えております。
さらに資料4ページの米印の部分でございますが、なお女性管理職比率等の従業員の状況欄で記載を求める事項につきましては、従前どおり有報で記載とありますが、これはSSBJ基準外の内容で、金融庁が開示府令で他の法規則開示の内容を参照する形で、2023年3月期から有価証券報告書にて開示しております。しかし、これらの法規制の該当開示は、厚労省のウェブで別途開示しておりまして、二重開示となっているのが実態でございます。有価証券報告書に記載を求めるにしても、必要な子会社に限定するなどの柔軟な取扱いに変更すべきと考えます。
加えてサステナビリティ情報開示を現行の有価証券報告書提出期限の3か月以内に完成させることは、極めて困難であると想定されます。サステナビリティ情報開示につきましては、諸外国の動向を参考にすると、3か月以内という現行の有価証券報告書提出期限は、現実的ではないと言わざるを得ません。任意の統合報告書やサステナビリティデータブックは、8月から9月にホームページで掲載されるケースが多いため、現実的な手法で検討すべきではないかというふうに考えます。
次に2点目でございますが、保証制度の方向性についてでございます。資料32ページのサステナビリティ情報に関する保証制度の方向性について、段階的に保証適用義務化にするものの、一定期間はScope1、Scope2のみとしたことは、アメリカも同じような動向であり、賛同いたします。同様に開示適用義務につきましても、Scope1、Scope2のみと認識しておりますので、この点、資料に明記いただくとよいと思います。
しかし、開示適用義務化の初年度のみ二段階開示可とし、2年目以降からは同時開示を求める点についてですが、企業が実務的な対応できる期間を十分に確保する観点からは、二段階開示可の年度を少なくとも2年から3年程度、できればアメリカと同様に期限なしとすべきではないかというふうに考えます。アメリカではScope1、Scope2の開示につきましては、年次報告書の提出後、一定期間経過後の報告が認められており、将来的にScope3の開示が求められる可能性があることを想定しますと、アメリカの事例を参考にすべきではないかと考えます。また、2年目から同時開示を求める案については、有価証券報告書の提出期限を3か月から4か月に延ばすことで対応できるという意見もありますが、有価証券報告書の財務情報について、後発事象の期間が1か月延びるという大きな問題があります。そのため、多くの企業は現状どおり3か月以内に有価証券報告書を提出すると思われますので、問題の解決にならない可能性が高いと想定されます。
さらに保証水準は限定的保証とし、今後、実務の状況や海外の動向等を踏まえ、合理的保証への可否について検討としたことは同意いたしますが、資料29ページのグローバルな動向に関しては限定的保証と明記されている観点から言えば、資料32ページの日本の限定的保証についても、表の中に明確に記載するべきではないかというふうに考えております。
私からは以上です。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
御発言ありがとうございました。
ほかにオブザーバーの方で御発言の希望はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。まだ少し時間が残っております。本日、2回目の御発言でも歓迎いたします。これまでのほかの委員の方、あるいはオブザーバーの方の御発言を聞かれて、追加、あるいは補足の御発言がございましたら、おっしゃっていただければと思います。いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。
それでは、ちょっと時間が少し早いのですけれども、本日はこの辺りとさせていただきたいと思います。本日の議論を踏まえて、次回以降、さらに議論を深めていただきたいと思います。
最後に、事務局から御連絡がございましたらお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、また皆様の御都合を踏まえた上で決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。
事務局からは以上でございます。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。長時間にわたり活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。
―― 了 ――
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