金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第6回) 議事録
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日時:
令和7年4月21日(月曜日)10時00分~12時30分 -
場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
【神作座長】
おはようございます。
ただいまより、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」第6回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、本日の会議の模様も前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。
なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
会議を始める前に、事務局から留意事項をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。
本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いいたします。なお、対面で御参加の委員におかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。御発言後は元に戻していただくようお願いいたします。その後、事務局が手持ちのマイクをお渡ししますので、そのマイクを御使用いただきますと幸いです。
以上でございます。
【神作座長】
御説明、どうもありがとうございます。
これより早速、議事に移らせていただきます。本日は、サステナビリティ基準委員会から資料1について、また事務局から資料2について御説明を頂いた後、質疑応答、討議を行いたいと存じます。
それでは初めに、サステナビリティ基準委員会の中條様から資料1について御説明をお願いいたします。
【サステナビリティ基準委員会】
ありがとうございます。サステナビリティ基準委員会、常勤委員の中條と申します。本日はよろしくお願いいたします。
では私から、3月に公表しましたSSBJ基準の概要について御説明させていただきます。
まず、3ページを御覧ください。こちらに記載がございますとおり、2025年3月に、SSBJは3つの基準を公表しております。ユニバーサル基準として「サステナビリティ開示基準の適用」、そしてテーマ別基準として2つ、「一般基準」と「気候基準」を公表しています。SSBJ基準に準拠したと言うためには、この3つの基準を全て適用することとなります。これからこの3つの基準をSSBJ基準と呼ばせていただきます。
次に4ページをお願いいたします。こちらは適用対象企業となっております。SSBJ基準では適用対象企業を定めておりませんが、これまで、こちらのワーキング・グループで、有価証券報告書におけるSSBJ基準の適用対象企業について検討が行われていることを踏まえまして、特にグローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業(プライム上場企業)が適用することを想定して開発を行っております。
同時に、プライム上場企業以外の任意の適用を奨励する観点から、金商法以外の法令に基づく場合や、任意で開示を行う場合にも、SSBJ基準を適用できるようにしています。ただし、プライム上場企業以外の企業に固有のニーズも考慮して開発しているわけではなく、プライム上場向けの基準を任意でも使えるようにしているというものになります。
次に、5ページをお願いいたします。SSBJが公表している文書と、SSBJ事務局が公表している文書を含めて、少し御紹介させていただきます。ホームページを御覧いただくと、こちらの3つの種類の文書が公表されております。下2つ、補足文書とSSBJハンドブックは基準ではなく、SSBJ基準の適用を支援するために公表しているものですので、こちらに従わない場合であっても、一番上のサステナビリティ開示基準を適用していれば、SSBJ基準に準拠している旨を表明することができます。
続きまして、8ページをお願いいたします。基準の開発に当たっての基本的な方針を御説明いたします。こちらは、まず一番上にございますとおり、SSBJ基準を適用した結果として開示される情報が、国際的な比較可能性を大きく損なわせないようにするということを基本方針としています。ここで、国際的な整合性を図るという場合に、ISSB基準との整合性を図ることを基礎としています。このため、原則としてISSB基準の要求事項を全て取り入れています。ただし、相応の理由が認められる場合には、ISSB基準の要求事項を定めるとともにSSBJ基準独自の取扱いを追加して、ISSB基準の要求事項かSSBJ独自の取扱いかのいずれかを選択することを認めています。これは、SSBJ基準独自の取扱いを選択しなければ、ISSB基準に準拠したことになるということを意図しています。
一方、SSBJ基準独自の取扱いを選択した場合であっても、それが直ちにISSB基準に準拠しないことにはならないと考えております。こちらについては後ほど御説明いたします。
続きまして、開発の基本方針の次のページをお願いいたします。こちらは前のページからの続きとなりますが、ISSB基準にはない定めであっても、個別に検討した上で必要と認められる場合には、SSBJ基準において、ISSB基準の要求事項に追加した定めを置いております。こちらにつきましては、ISSB基準の開示を作成する過程で入手する情報に基づいて作成可能とすることを意図しておりまして、こちらの追加事項のために、子会社から追加で何か情報を入手していただく必要がないようなものを定めております。
続きまして、11ページをお願いいたします。ここからがSSBJ基準の概要となります。
まず、構成から御説明いたします。先ほど、SSBJ基準とは3つの基準、適用基準、一般基準、気候基準と申し上げましたが、原則としてISSB基準の要求事項を全て取り入れているのですけれども、基準の読みやすさを優先して、ISSB基準の定めや順番を入れ替えたり、用語を言い換えたりしています。
また、2番目にありますとおり、IFRS S1基準は2つの要素から成っております。サステナビリティ関連のリスク・機会に関して開示すべき事項、コア・コンテンツと呼ばれる部分と、サステナビリティ開示を作成する際の基本となる事項を定めた部分がございます。こちらにつきまして、SSBJ基準は2つに分けて、一般基準と適用基準として定めております。
具体的には13ページを御覧ください。ISSB基準はS1基準とS2基準から成るということで、上がISSB基準の構成となっておりますけれども、こちらからコア・コンテンツ部分、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標の部分を一般基準として定めております。これによって、現在、有価証券報告書においても、この4つの要素の開示がございますけれども、SSBJ基準に基づいて開示が求められる場合には、気候関連については気候基準に従って、そして、それ以外のリスク・機会につきましては一般基準に従って、具体的な項目が開示されることになります。
この際に、開示を検討するに当たって基本的な事項、例えば重要性の考え方や、報告の範囲をどのように考えるかなどを定めた基準が、一番左側の適用基準となります。
では次に、適用基準の概要について御説明をいたします。
こちら、次のページを含めて、適用基準の概要を示しておりますが、時間も限られておりますので、ポイントを絞って御説明させていただきます。
まず、サステナビリティ関連財務開示は、財務諸表に含まれる情報を補足・補完する情報であるとされています。したがいまして、2番目の「報告企業」にありますとおり、財務諸表に含まれる報告企業と同じ、関連する財務諸表と同じ報告企業ということで、連結ベースとなります。また、財務諸表と同じ報告期間のサステナビリティ情報について、財務諸表と同時に、財務諸表と併せて開示することになります。
続いて15ページをお願いいたします。2番目にありますとおり、重要性がある情報を開示するとなっております。この重要性は、サステナビリティ関連のリスク・機会のうち、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク・機会に関して重要性がある情報を開示することになります。また、後発事象や比較情報の開示も求められております。
ここで、報告期間と報告のタイミングを図示したものが16ページとなります。先ほど御説明しましたとおり、財務諸表と同じ報告期間を対象として、後発事象を反映した上で、財務諸表と同時に報告するということが原則となっております。
次に、17ページに一般基準の概要を示しております。こちらは簡単に御説明させていただきます。こちらの一般基準は、特定のテーマ別の基準がない場合に適用される基準となっておりまして、現時点では気候関連の基準がありますので、それ以外のテーマ、例えば人的資本に関連するリスク・機会に関して開示を行う場合には、この基準に従って、ガバナンス、戦略、リスク管理、及び指標・目標に関する開示項目を開示していただくことになります。
続きまして、18ページが気候基準の概要となっております。こちらは2番目にありますとおり、TCFD提言と整合した内容となっております。また、気候基準は一般基準よりも指標・目標の定めが詳細なものとなっております。
3番目の「産業横断的指標等」に記載がございますとおり、大きく7つの項目、これは産業に限らず開示する項目になりますが、7つの項目が定められておりまして、このうち1つ目の温室効果ガス排出については、Scope1・2・3の開示が求められております。
この際、GHG排出の測定については、原則としてGHGプロトコルを用いなければならないとしていますが、IFRS S2号でも、法域の法令等でGHGプロトコルと異なる測定方法が要求される場合には、その方法の利用が認められるとされているため、気候基準でも、例えば我が国の温対法のように、法域の当局等が異なる方法を用いることを要求している場合には、その測定方法を用いることができるとしています。
ここで、20ページをお願いいたします。今ほど、GHGプロトコルと異なる方法を用いることができると御説明いたしましたが、例えば温対法では、算定期間がガスの種類ごとに、4月から3月までか、1月から12月までかが法令によって定められているというように、GHGの排出量の算定期間がサステナビリティ開示の報告期間と一致しない場合がございます。この状況につきましては、温対法以外の場合も同様な問題も生じております。この点につきまして、SSBJ基準の審議の過程では、異なる算定期間の数値をそのまま用いるべきという意見と、サステナビリティ開示や財務諸表の報告期間と合わせるべきという御意見がございました。こちらにつきましては21ページに記載しておりますが、最終的には、SSBJ基準の中では、指標の算定期間をサステナビリティ開示の報告期間と合わせることとしております。その理由としては、期間の一致によって情報の有用性が高まること、そして期間が一致しない場合には、ISSB基準と整合していないと受け止められる可能性があるという御意見も頂いたこと、また、算定に当たって見積りを認めていることなどを理由としております。
以上が基準の概要になりまして、次に適用時期について御説明いたします。適用時期ですが、SSBJ基準では強制適用時期は定めておらず、2番目にありますとおり、任意の適用は、SSBJ基準公表日後、終了する年次報告期間、3月であれば2025年3月期の決算期から適用することができるとしております。
また、次のページに経過措置がございます。経過措置は、このページの、法令に基づく場合の経過措置と、次のページに、任意で適用した場合の経過措置というものがございますが、法令の場合は適用初年度の経過措置となりますが、次の任意の場合、御覧いただきますと、比較情報につきましては、適用初年度にかかわらず開示の免除が認められております。
続きまして、26ページ以降で、ISSB基準と異なる主な項目について御説明させていただきます。まず、法令に別段の定めがある場合には法令が優先するという定めを置いております。また、任意の場合は、例えば先ほど財務諸表と同時の報告と申し上げましたが、任意の場合には同時の報告でなくてもよいですとか、比較情報は適用初年度に限らず開示しないことができるなどの定めを置いています。
続きまして、27ページをお願いいたします。こちらが、SSBJ基準独自の選択肢を追加した項目になります。具体的に5点、記載しておりますけれども、例えば一番上のScope2の開示のように、ISSB基準では、ロケーション基準に加えて契約証書に関する開示を求めておりますが、SSBJ基準では契約証書に代えてマーケット基準による数値を開示することができるとして、どちらか選択することを認めております。
最後のGICSにつきましては、次のページで御説明させていただければと思います。こちらに記載しておりますとおり、ファイナンスド・エミッションについては、IFRS S2号では、GICSという産業分類システムを用いて開示することを求めております。SSBJでも同様の取扱いを提案しておりましたが、GICSの使用については懸念が聞かれております。その中で、2025年1月にISSBのボード会議において、GICS以外の産業分類システムを使用することを認めることを提案するということが決定されて、今後、公開草案が公表される予定でございます。本年4月にも公表される予定と伺っております。
これを踏まえまして、SSBJ基準では、GICSを使用するという定めを含めた上で、当面の間、産業別に分解したファイナンスド・エミッションの開示をしないことができるという当面の取扱いを定めております。
以上がSSBJ基準独自の選択肢となります。
続きまして29ページが、ISSB基準に追加した主な項目となります。
こちらは、例えば3番目の適用基準の記載にございますとおり、法令に基づき、SSBJ基準に従った開示を行う場合には、法令の名称の開示を求めております。これは今後、有価証券報告書において、法令に基づく開示と任意の開示があることなどが想定されることを踏まえて定めた取扱いとなります。
続きまして、30ページをお願いいたします。このように、SSBJ基準とISSB基準の内容につきましては一部差異がありますが、SSBJとISSBは、基準間の整合性について確認しておりまして、差異の一覧は、日本語・英語でSSBJウェブサイトにて公表しております。
以上がSSBJ基準の御説明となりまして、最後に今後の対応についても少し御説明させていただければと思います。
31ページ以降が、適用支援の取組と今後の対応となりますが、34ページをお願いいたします。こちらは基準に関する対応になりますので、御説明させていただきます。まず1番目ですけれども、冒頭、基本方針として、SSBJ基準はISSB基準との整合性を図ることを基本方針としていると御説明させていただきました。そのため、ISSB基準が新たに公表されるか、または既存の基準が改訂される場合には、SSBJにおいてもSSBJ基準の取扱いについて検討を開始する予定としております。また、ISSBからISSB基準を適用する上で参考となるような文書が公表された場合には、SSBJにおいても同様に、参考となる補足文書などを公表するかどうかを検討してまいる予定でございます。
また3番目ですが、こちら、SSBJ基準の実務への適用を行うに当たって、SSBJ基準における定めが明確であった場合であっても、これに従った開示を行うことが実務上、著しく困難な場合が関係者によって識別されて、その内容がSSBJに提起された場合には、その内容を公開した上で別途の検討を行うこととしております。
4番目は、今後、SSBJ基準を適用した結果につきまして、モニタリングを行っていくというものでございます。
以上が私からの説明でございます。御清聴ありがとうございました。
【神作座長】
御説明、どうもありがとうございました。
それでは続きまして、事務局の金融庁より資料2について御説明をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
では、資料2に沿って御説明させていただければと思います。
まず目次でございますけれども、本日、5つ、項目を並べております。まずEUにおけるサステナビリティ開示に関する検討状況、それから2つ目としまして、GHG排出量の見積りの更新についての対応、それからサステナビリティ情報の虚偽記載等に対する責任、それから4つ目としまして、サステナビリティ開示に係るEDINETタクソノミ(案)開発の方向性、最後に、今ほど御説明いただきましたSSBJ基準の金融商品取引法令への取込みについてと、この5点について御説明させていただければと思います。
まず2ページ目でございますけれども、こちらは欧州の状況でございます。欧州では既に昨年の12月期の会計年度からCSRDの適用が開始されているところでございます。こうした中、欧州ではサステナビリティ関連報告に係る企業負担を考慮し、企業の競争力とレジリエンスを高めるべきとの議論が昨年から進んでおりまして、とりわけ中小企業の報告負担をドラスティックに軽減するという観点を踏まえまして、本年2月に、こちらに記載してございますオムニバス法案が欧州委員会から公表されているところでございます。
下の表の社数欄にも記載がございますけれども、従来の左側のCSRDでは、上場中小企業等も含む約5万社が対象とされていたところでございますけれども、今般の提案を踏まえると、従業員数1,000人超の大会社に限定するなどにより、対象会社が約80%減少しまして、約1万社を対象とするとされております。
それから開示基準におきましても、データポイントの削減に当たり、グローバルな報告基準とのインターオペラビリティを損なわないということが明記されておりまして、日本のSSBJ基準も意識しております、ISSB基準との整合性がより意識されるものと理解してございます。
保証につきましては、将来の合理的保証への移行が行われないということが明記されており、企業が将来的に、保証に係る追加的な費用負担を負うことがないことが明らかにされております。
また、マテリアリティに関する考え方の明確化を図ることによって、企業が保証業務提供者から、マリアリティ判定プロセスにおいて不必要かつ過剰な負担を求められることがないことを確保するといった方針も示されているところでございます。
適用対象のカテゴリー別の整理としましては、Wave1は予定どおり、昨年12月期から適用開始、それからWave2とWave3はそれぞれ2年延期、Wave1からWave3については従業員1,000人超とするという共通の閾値を設定するというところで、あとWave4の域外適用については、売上高の閾値を引き上げるなどの提案がなされているところでございます。
下の注1にも記載がございますけれども、Wave2とWave3の2年延期の法案は既に採択され、先週木曜日(4月17日)に発効済みとなってございます。その他の法案についてはこれから審議をするところでございます。
次の3ページ目と4ページ目でございます。こちらは、CSRDに基づく開示実施の企業の例を記載してございます。欧州では昨年12月期からCSRDの適用が開始されてございますので、CSRDに基づく開示を実施している企業の一覧を提示しているSustainability Reporting Navigatorというサイトの情報によりますと、既に300社超が開示を終えているというところでございます。フランスなどの国内法制化を終えた法域はもとより、ドイツやスペインなど、国内法制化を終えていない法域の企業からも、自発的なCSRDの開示が行われているという状況でございます。提出のタイミングを見ますと、期末から約1か月後の2月上旬から順次、先行企業からスタートしているというところでございます。
保証業務提供者についても、こちらで記載しておりますけれども、こちらの資料3ページ目と4ページ目につきましては、時価総額3兆円以上の企業についてリストアップしておりますけれども、こちらの企業については全て監査法人となっているというところでございます。それ以外も含めた、データベースに載っている305社を全体に見ますと、注3に記載しておりますけれども、1社において監査法人と監査法人以外の共同保証を実施している例が確認されております。本日時点での事例はあくまで、法定提出期限前に開示している企業に限定していますので、今後、監査法人以外の担い手の事例も増える可能性もありますので、今後の動向は引き続き注視していければと考えております。
続きまして5ページ目でございます。EUオムニバス法案につきましては、先ほど申し上げたように、とりわけ中小企業等の報告負担をドラスティックに軽減するという観点も踏まえ、従来5万社が対象となっていたものを1万社に絞り込むとともに、それでも対象となる一定規模以上の非上場企業等(Wave2)や上場中小企業等(Wave3)について、2年の適用延期を行っているものでございます。
日本との議論の関係では、プライム時価総額3兆円以上に相当する企業については、先ほどの一覧表でお示ししたとおり、国内法制化が遅れている法域も含めて、開示が順次行われているところでございます。現在、本ワーキング・グループにおいて具体的に適用開始時期の御議論を頂いているプライム時価総額5,000億円以上につきましては、欧州のオムニバス法案の閾値の変更後も、注に記載してございますように、99%が対象企業に相当すると考えております。
以上を踏まえますと、これまで御議論いただいていたとおり、引き続き時価総額3兆円以上のプライム企業への適用開始時期を2027年3月期とすること等を基本線としつつ、国内外の動向、保証に関する検討状況等を注視しながら柔軟に対応していくという、従来の路線をキープしてはどうかということを記載しております。
二段階開示やセーフハーバーなど、企業負担の軽減につながる措置についても引き続き検討するとともに、オーソリゼーションの措置の要否についても、今後の欧州の動向と日本企業のニーズを踏まえて検討を進めていければと考えております。
続きまして8ページ目、2つ目の項目でございます。GHG排出量の見積りでございますけれども、GHGの排出量につきましては見積りが使用される場合が想定されるというところでございます。見積りが、有報提出後に判明した実際の確定値と異なる場合の取扱いについての議論をこちらに記載してございます。
まず、前報告期間に開示された見積りの数値について、その変更に関する重要性のある情報を事後的に入手した場合には、比較情報の更新や、前報告期間に開示された数値と更新された比較対象の数値との差異、更新した理由の開示が必要となります。
9ページ目でございますけれども、有報の訂正の要否につきましては、一般的に事業年度末時点または有報の提出時点の状況について判断されるものでございまして、当該時点以降の事情の変更は訂正事由とはならないと考えられ、見積りの数値について、有報の提出後に当該情報に係る確定値が判明したことをもって訂正報告書の提出が必要となるわけではないと考えております。
10ページ目でございますけれども、有報の訂正が必要となり得る例としまして、例えばエネルギー使用量の多い拠点の排出量情報について、季節変動が大きいにもかかわらず当該変動を考慮せずに見積りを実施した場合など、正確ではない見積りであるなどの場合には、誤謬に該当する可能性があり、誤謬に該当する場合には、その重要性に応じて有報の提出が必要となるということも考えられるところ、その具体的なフローをこの図でお示ししているところでございます。
次の論点が、虚偽記載等に対する責任でございます。13ページを御覧いただければと思います。サステナビリティ情報の虚偽記載等に対する責任につきましては、これまでも複数回にわたり御議論いただいてきたところでございます。前回のワーキング・グループでは、Scope3を対象としたガイドライン改正によるセーフハーバーの導入というものを前提としつつ、法律改正も視野に、引き続き検討を行っていくというような方向で、概ね賛同を頂いたと理解してございます。さらに、サステナビリティ情報の特性を踏まえた上で、その法的あり方を議論すべきですとか、セーフハーバーの対象範囲や要件のあり方についても御意見を頂いたというところでございます。
14ページでございますけれども、セーフハーバーにつきましては時間をかけて議論していく必要があるかと考えてございますけれども、基本的な方向性としましては、情報の特性も踏まえた合理的なものであるとともに、有報における開示の充実、それから責任の範囲の明確化のための環境整備として妥当なものとするということが重要と考えております。
本日の御議論では、14ページの一番下に記載してございます、想定される論点に加えて、さらに検討すべき事項があるかといった観点から御意見を頂けると幸いでございます。
続きまして17ページをお開きください。タクソノミでございます。有報につきましては、利用者の利便性(比較可能性)を高める観点から、タクソノミを基にタグづけされた形態でEDINETに開示がなされているというところでございます。
18ページでございますけれども、現状、EDINETに提出される開示書類につきましては、日本の開示項目に対応した金融庁独自のタクソノミを使用しているところでございます。今後、サステナビリティ開示基準の導入に当たりましては、ISSBタクソノミの取り込みということも重要な検討課題と認識してございます。こちらに記載してございますように、今後のタクソノミ開発においては、関係者の御意見も踏まえつつ、特にサステナビリティ情報については基準開発の段階から国際的な比較可能性の重要性が広く共有されていることもございますので、ISSBタクソノミを取り込むことをベースに、優先度が高いものから順に開発していくということを考えているところでございます。
最後に、SSBJ基準の金商法令への取り込みというところでございますけれども、昨年、第2回で御議論いただいたところで、右下にございますように、国際的なベースラインとなるISSB基準と同等なサステナビリティ情報の開示基準を金融商品取引法令へ取り込むという方向性について、一度御議論いただいたかと認識してございまして、これを踏まえて、今般公表されたSSBJ基準に対してどのように対応していくのかというところが論点となってございます。
最後、22ページ目、御議論いただきたい事項を整理したものでございます。
事務局からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
御説明、どうもありがとうございました。
それでは、これより委員の皆様から、御意見、御質問等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますが、全ての委員の方から5分以内で御意見等を頂戴したいと存じます。なお、本日の会議では経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。加えて、御発言の順番については若干前後する可能性があるかと存じますが、あらかじめ御了承いただければと思います。
それでは、委員の皆様方から御意見、御質問をお出しいただければありがたく存じます。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。
それでは井口委員、どうぞ。
【井口委員】
御説明ありがとうございました。資料の22ページの「ご議論いただきたい事項」について、意見を申し上げたく思います。
最初に、最後の論点のSBBJ基準の金商法への取り込みから意見を申し上げたく思います。私は2022年のSBBJ設立準備委員会の段階からSSBJ委員として議論に加わらせていただきましたが、SSBJ基準はISSB基準と機能的に同等の基準、機能的に同等というのは、中條様が御説明された資料の34ページの下に載っておりますが、基準の文言は違っても出てくる情報は一緒ということを意味しておりますが、そのようになっていると考えておりますので、SSBJ基準を金商法に取り込むべきと考えております。
ISSB基準との差異につきましては、SSBJ基準の資料の26ページにある任意適用の定めは、SSBJ基準を義務的適用以外の多くの企業に使っていただきたいということで工夫したものですが、任意の適用企業の方につきましては、任意である旨を準拠表明で開示することになっておりますので、利用者の間に混乱はないと考えています。あと、27ページに記載されている事項も、基準がより使いやすくなるように明確化したもので、差異を意図して設けているわけではありません。以上より、ISSB基準と機能的に同等と判断するため、SSBJ基準を取り入れるべきと考えている次第です。
戻りまして、金融庁の事務局から御説明がございました資料の最初の論点のロードマップについてです。御説明がございましたEUオムニバス法案の動きですが、そもそもEUは最初から一気に進めようとしていたというところが、随分、日本とは違っておりまして、ある意味、EUが日本のロードマップでの現実的な考え方に近づいている動きと考えております。ですので、現状のロードマップについては変更する必要はないと思っております。
適用範囲の絞り込みについては、御承知のように、日本では既にプライム市場からさらに絞り込んだという形になっておりまして、範囲の絞り込みについてはEUを先取りした形になっていると考えています。実際、野崎課長から御説明いただきましたように、日本企業で義務的開示となるレベルの欧州企業は、すでに開示を始めているということと理解しています。
また時期につきましても、事務局の資料の3・4ページに御記載がありますように、欧州企業では、SSBJ基準より詳細な開示に加え、ダブルマテリアリティの開示を求められているESRSに基づいた開示が始まっているという状況になっております。現状のロードマップでも、欧州から3年近く遅れるということになっておりますが、これ以上の日程の後ろ倒しというのは、国内外の投資家からすると、なぜ欧州の大企業はサステナビリティ開示を実施しているのに、日本を代表する企業はサステナビリティ情報の開示がなされないのかということになると思いますので、日本企業についてもロードマップに沿った形での開示をすべきと思っています。
ただ、1つ、気になりますのは、資料3・4ページに御記載している欧州企業は、保証をつけても、事業年度末から2か月ぐらいで、年次報告書を出していらっしゃるということです。この会議もそうですが、日本企業からは、事業年度末から3か月での有報提出はスケジュール的に厳しい、特に保証をつけた場合は難しいというような御意見が多数出ておりましたが、この辺り、日本の状況と何が異なるのか、あるいはどんな開示技術を活用されているのかについては、本ワーキング・グループではないのかもしれませんが、検討する余地があるのではないかとは思いました。
論点2つ目の、見積りの修正の論点については、誤謬と見積りの修正は異なると、SSBJ基準あるいはISSB基準でも定められており、それを踏まえた有報での対応と考え、賛同いたします。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして阪委員、御発言をお願いいたします。
【阪委員】
発言の機会を頂き、ありがとうございます。阪と申します。
22ページの5つの点を、上から発言申し上げます。
まず1点目です。サステナビリティ開示基準の導入のロードマップについて、従来路線をキープした上で、将来的に国際的な動向等を踏まえ、柔軟に対応するということについて賛同いたします。理由は、先ほどの中條様の御説明でもございましたように、日本のサステナビリティ開示基準が、開示される情報が国際的に比較可能となることを念頭に開発されたため、比較の対象となる国際的な開示に変わる部分があれば、我が国においても柔軟な対応が将来的には求められると考えるからです。
その上で、既に多くの企業で、直近の強制適用対象が想定される企業以外であっても、開示に向けた準備を始められていることもありますので、今後の柔軟な対応という部分について、先ほど御説明がございましたCSRDとオムニバス法案との比較検討や、5ページにある、我が国の適用開始時期への影響の検討事項を踏まえて、我が国におけるロードマップが具体的にイメージできるものになることが期待されます。
2点目です。サステナビリティ情報に係る見積りの修正があった場合の訂正の考え方について、御提案に賛同いたします。昨年度において、GHG排出量の見積りの数値に関して訂正報告書を出された企業が複数あり、それは企業の判断で出されたわけですけれども、こういったことに訂正が求められるとなると、企業が情報開示に消極的になってしまわないかを心配しておりました。御提案では、誤謬に該当する場合には、重要度に応じて訂正が必要となること、正確性の要件が満たされる場合等の場合には、訂正報告書の提出は必要でないと明確にされました。このことによって、財務諸表と同じ報告期間に係る、見積りを含む情報を公開することが進み、有用な情報の提供につながることとなり望ましいと考えていますとともに、10ページの中ほどに記載されているような例示列挙を増やしていただけると、作成者にとって非常に役立つと感じております。
3点目については、2点目とも、また前回のワーキング・グループで出された意見も関連いたしますが、GHG排出量のScope3だけではなく、その他のバリューチェーン情報も考慮する必要があると思います。開示の対象であるサステナビリティ関連のリスクと機会は、識別したリスク及び期間のそれぞれに関連してバリューチェーンの範囲を決定し、重要性がある情報を識別することになっているからです。サステナビリティ関連財務情報と財務情報の性質の違い、合理的な裏づけ可能な情報を利用するといった観点も考慮していただければと思っております。
4点目です。サステナビリティ情報に係るEDINETタクソノミの開発の方向性について、御説明でもございましたが、基準が国際的な比較可能性を重視して開発されたことから、共通する開示項目はISSBタクソノミを取り込み、日本独自の開示項目については金融庁独自のタクソノミを開発するという考え方に賛同しております。加えて、これらのサステナビリティ情報と従来の財務情報がより広く活用されるようになる仕組みが望ましく思います。
5点目について、SSBJ基準を、国際的なベースラインとなるISSB基準と同等な基準として、金融商品取引法令に取り込むことに賛同いたします。理由は、SSBJ基準の開発に当たっては、国際的なベースラインとなるISSB基準との整合性を図り、ISSB基準の要求事項を原則として全て取り入れ、用語や定義も原則として同一のもので取り入れられているからです。
ただし、適用対象外の非上場企業やスタンダードやグロースなどの上場企業の任意開示との関係、本法に取り込むのか施行令なのかといった点について疑問を持たれないように、メッセージを出される際には明確にされることが望ましいと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして田代委員、御発言をお願いいたします。
【田代委員】
御説明ありがとうございました。私からも22ページに沿って、意見を述べさせていただきたいと思います。
ロードマップにつきましては、先ほどの井口委員からの御意見と非常に似ている状況でございます。御説明いただいたように、欧州につきましては、先にリードしていっている中、現状においてどちらかというと、IFRSのISSBに似た方向でというか、方向性としては寄っているような印象を受けます。メディア等の報道では、アメリカの状況を受けて、どちらかというとアメリカ寄りという報道の印象を受けると思いますけれども、実態としてはISSB寄りになってきたというふうな印象を受けます。
既に準備をなさっている、適用を受けている企業も多いということに加えまして、SSBJの中でも、モニタリングを通して、必要に応じて基準の修正を行うとなっているかと思いますので、現状あるロードマップどおりに進めるのがよいのではないかと思います。
また、見積りの修正につきましては御意見に賛同いたしますが、1つ、保証につきまして、見積りの段階での保証と、修正をした後の保証と、どのような関係があって、二重に保証するのかしないのかなど、その辺は企業にとって、コスト面においてもそうなのですけれども、明確な基準が必要ではないかと思います。
また、EDINETのタクソノミの開発なのですけれども、やはりグローバルな企業の比較という意味では非常に重要だと思いますが、こちらについても今後、ISSB基準についての変更があった場合は、速やかにそれにどう対応していくかということもポイントになると思いますので、開発の段階から、その可能性も含めて開発する必要があるのではないかと思います。
最後の、金融商品取引法令に取り込むことにつきましても、井口委員と同等に、取り込む方向性が妥当ではないかと考えております。
以上でございます。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして柿原委員、御発言をお願いいたします。
【柿原委員】
ありがとうございます。川崎重工業の柿原でございます。「ご議論いただきたい事項」の5つの論点に沿って、それぞれ意見を申し上げます。
まず第1の論点でありますサステナビリティ開示基準の導入のロードマップについて、国際的な動向を注視しながら柔軟に対応することについて、2点申し上げたいと思います。
1点目は、諸外国に倣い、国際的な競争力の強化を阻害しない配慮をした制度設計が望ましいということです。例えば、CSRDのオムニバス法案では、保証について、将来の合理的保証を行わないと変更されていますが、サステナビリティ情報の保証についての現実的な対応として評価できるポイントかと思います。我が国でも同様の方向性で検討してもよいのではないかと考えます。また、米国の開示動向も参照すべきだと考えます。例えばセーフハーバーやGHG排出量、二段階開示等の取扱いも参考になります。
2点目は、資料5ページの二段階開示についてです。我が国の現行案では、義務化の翌年度から同時開示を求めていますが、企業側の習熟期間を確保するためにも、義務化から2、3年は二段階開示を認めるのが妥当ではないでしょうか。また、GHGの排出量は見積りベースで開示し、別途、確定値の更新を行うのではなく、米国SEC案のように、半期報告書で確定時のみ開示する二段階開示を起用するとよいのではと考えます。
次に、第2の論点であります、サステナビリティ情報の訂正の考え方の見積りの更新と誤謬の訂正方法について申し上げます。10ページの図にありますとおり、確定値が事後的に判明した場合は、翌年度の有報で確定時に更新し、誤謬が事後的に判明した場合は、重要性があり、訂正が実務上不可能でない場合は、訂正報告書を提出するという取扱いはよいと考えます。ただ、先ほど申し上げました二段階開示にも関連しますけれども、更新の場合は、訂正報告書や翌年度の有報ではなく、半期報告書または臨時報告書で更新する取扱いが本来の趣旨からすれば妥当だと考えます。
第3の論点であります虚偽記載の責任のあり方を検討していくに当たって、他に検討が必要な論点の有無という点につきまして、これは既に検討されている論点ではございますが、セーフハーバーと確認書の中身の議論を深めるべきだと考えます。セーフハーバーは対象範囲をScope3に限定せず、サステナビリティ情報全体に広げることや、企業に挙証責任が生じ、萎縮してしまわないように、米国SEC案と同等の制度とすること。これらを、ガイドラインでなく法改正と併せて検討すべきことなどを詰める必要があると考えます。また確認書は、確認事項を追加して責任範囲を明確にする案が第4回ワーキング・グループで示されましたが、有報の確認書は記載内容全体が適正であるということを経営者が確認しているものでもあり、この範囲にサステナビリティ情報も含まれているとするならば、サステナビリティ関連の追加記載の省略も可能ではないかと思います。この2点は虚偽記載のあり方を議論する上で重要なポイントです。具体論はこれからだと理解しておりますが、現時点の案と残された検討課題を整理した上で議論を深めるべきではないかと考えます。
第4の、EDINETタクソノミ開発の方向性につきましては、資料に記載されたような方向性を取った場合に懸念される点など、例えばサステナビリティ情報のみ、2種類のタクソノミが混在することで、何か問題は生じないのか等を慎重に確認する必要があります。
最後の第5の論点につきましては、まだ十分、吟味できていないのですけれども、その上で申し上げます。SSBJ基準の運用に経過措置として一部修正があることを開示規則で明らかにすることは必要と考えます。例えば、会社の規模別の適用時期、二段階開示の年数、限定的保証の取扱いなども含め、内容についての慎重な検討が前提になると考えます。また、我が国の開示には、ISSB等の国際基準と比べて、サステナビリティ情報についてより詳細に開示している項目があると思います。例えば男女賃金格差などです。これは別の法令も関わるので、あくまで1例ですが、国際基準との整合性を図ることに加え、これまでの開示義務についても必要性を見直し、また重畳的な開示とならないか目配りいただくよう、お願い申し上げます。
以上となりますが、最後に改めて申し上げますと、国際的な動向も大きく変化しつつありますので、それらを踏まえつつ、諸般のバランスを考慮し、現実的な案としていただきたいと考えます。
ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして上田委員、御発言をお願いいたします。
【上田委員】
御指名と御説明、ありがとうございました。私も資料2の22ページの「ご議論いただきたい事項」に沿って、幾つかコメントさせてください。
まず第1点目、サステナビリティ開示基準導入のロードマップについてです。そもそもサステナビリティ開示という新しい開示制度について今我々が議論している背景とし、グローバルなハーモナイゼーションが最終的にはわが国の競争力につながるという、この前提は絶対に忘れてはいけないと思います。こういう観点から、今回、EUのオムニバス法案の影響について検討しますと、こちらは5ページ目に数字も出していただいているのですが、時価総額5,000億円以上の会社の99%がWave1に該当するということです。総合的に考えますと、例えば現状、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業に対して27年3月期から始めるということですが、これを基本線として進めることでも、御準備もされていると思いますので実務上も大きな影響はないと考えます。逆に、そうしないと市場競争上も、むしろビハインドになってしまわないかという懸念もあると思いました。また、開始タイミングを遅らせた場合には、該当する企業においてはEU基準との対応ということで、二重開示等の負担等についても心配されるところですので、やはりこの基本線というのは、このまま維持することがよろしいのかなと思います。
併せて、このスケジュール面、本日の資料には、Wave2該当の日本企業における保証業務提供者のオーソリゼーションについての指摘がございます。ここについても別途、保証の議論も進んでいますけれども、やはり開示のスケジュールが定まらないことには、保証については特に枠組みづくりであるとか制度設計に時間もかかるものです。まずは開示のスケジュールというものをしっかりと、できるだけ早期に方向性を固めて、それが保証についてもスケジュール感を持った制度設計ができるのかと思います。そのため、できるだけ早くサステナビリティ開示のスケジュールの確定というものをしていただきたいと思います。
続いて、タクソノミについての議論です。これはなかなか一般の情報ユーザーに気づかれにくい、テクニカルな部分であろうかと思いますが、実はタクソノミをどうするかというのが、上場会社の開示情報がグローバルに有効活用されるか、それが企業価値評価につながるかといった点で極めて重要な論点であると思っています。恐らく情報ベンダーにおいては、グローバル基準、ISSB基準に合わせて情報を整備する、統一しているのではないかと考えられます。そうすると、先ほど述べたグローバルなハーモナイゼーションという観点からしても、やはり重要なのは比較可能性という点かと思います。したがって、こちらの資料に御提示があるように、まずはISSBタクソノミをベースとしつつ、仮に日本独自の開示項目が生じるとすれば、それは別途、金融庁で開発していくということで、比較可能性と独自性というものの両立が図れるのではないかと思います。
そして、ポイントの最後の項目、SSBJ基準の取扱いです。私は、本日、中條様から御説明いただいた今回のSSBJ基準について、これが国際的なベースラインとなるISSB基準と同等なものであるとの認識に基づいて、金融商品取引法令に取り込むことには賛同いたします。ただし、今後、見直しが行われるということも予想されるかと思います。その際にも、このSSBJ基準というのはグローバルスタンダードと同等であるということをしっかり踏まえて、関係者において確実に実行されていくということを期待します。
最後に、本日の資料を拝読して感じたことがございますので、お伝えさせてください。資料の3・4ページについて、時価総額3兆円以上の欧州企業をお調べいただき、ありがとうございました。大変参考になりました。
ここで、先ほど課長からの御説明もございましたけれども、欧州企業は期末から2、3か月で、これだけの開示をしているとのことです。さらに保証も完了しているということです。ただいま日本において、有報の総会前開示について議論があり、ハードルが高いとの意見もに加え、サステナビリティ開示が入るとさらに厳しいのではないかとの御意見があるようです。ただ、欧州企業と比べると、なぜかなというところを少し疑問に思ったところです。企業の作成者と監査人の双方における実務がどうなのか、何か制度的な課題があるのか、あるいは使っている情報のベンダーとかシステムとかデータの課題があるのかなどと思いましたので、この辺り、ぜひ今後、日本にも参考になるかなと思ったところです。
最後のところは本当に感想めいたところで失礼しました。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして関口委員、御発言をお願いいたします。
【関口委員】
ありがとうございます。それでは、5ページからお願いいたします。
まず5ページで3点目からなのですけれども、時価総額3兆円以上というところで、基本的に支持いたします。理由としては、最近、EUの動向、米国の動向が非常によく取り上げられるのですけれども、アジア諸国、それからオセアニア等も見ていますと、必ずしも何か非常に強い揺り戻しがあるわけでもなく、着実に進められているところもあり、あと実務においても、特に大手の企業においては準備が進められているということ。そういった点を踏まえると、御提案というのは良い感じなのではないかなと思います。
ただ、これは後でぜひ明確に頂きたいですが、先ほど野崎課長のお話の中で、従来路線を維持するという口頭でのお話がありまして、資料には時価総額3兆円以上のところだけが書いてあります。そのため、時価総額1兆円以上の企業はどうなのかとか、あるいは時価総額5,000億円以上の企業をどう考えているのか、それから保証について、1年遅れという提案を、以前より頂いていましたけれども、その点をどのように考えているのかについても、多少見えにくいところがありますので、御説明いただけると大変助かります。
個人的には、例えば時価総額1兆円以上の企業については、やはり同じようにやっていく必要があるのではないかとか、時価総額5,000億円以上の企業も、できればやっていく必要があるのではないか。それから保証についても、1年遅れというのは合理的ではないかと思っており、現時点でのお考えについてお話しいただければと思います。
それから、次の二段階開示は欧州における経験等も踏まえて検討していく必要があるのだろうなと思っていますが、有報の総会前開示の議論も踏まえて非常に重要なところなのではないかと思います。
次のオーソリゼーションのところは、御提案は非常にリーズナブルなのではないかなと思うのですけれども、一方で保証業務提供者の側からしますと非常に困っているというのが実態です。日本企業のグループでグローバルベースで開示して保証できないかというようなお話があるときに、我々として、ぜひと言いながら、できるかどうか分かりませんというような変な状況になっていまして、ぜひこの点は金融庁から欧州委員会に、要請したり働きかけたり、なるべく早期に結論を出せるように、ぜひお願いしたいなと思っています。
次に9ページに行っていただきまして、見積りの修正があった場合の対応について、記載の内容に基本的に賛同いたします。1点だけ、相互参照している場合に、相互参照先で誤りがあった場合にどうなのかということ。この点について、もしかしたら今までの取扱いを変える必要がないのかなと思っていまして、この点は次回以降で結構ですけれども、御検討いただければと思っています。
14ページで、今度、セーフハーバーの話がありまして、一番下のところでセーフハーバーの内容、適用範囲等のところで、非常に絞ったもの、将来情報というふうに絞ったものから非財務情報全般にセーフハーバーが適用されるような記載もあります。
この点、次のページで、アメリカ・イギリスの制度など分析いただいているのですけれども、イギリスの制度がそれに近いようにも見えます。しかし、自分の理解では必ずしもそんなこともないのかなと思っていまして、やはり非財務情報全般にセーフハーバーを広げるというのは少し極端なのかなとも思っています。今までの検討も踏まえて、将来情報、それからバリューチェーン情報に絞った形でというのがいいのではないかなとは思っています。
それから次の18ページに行きまして、18ページでタクソノミの話がありますが、これにも賛同いたします。また、これは非常に重要なのではないかなと思っています。先ほどSSBJの中條委員から、SSBJ基準はISSB基準とfunctionally equivalentなのだという話がありましたが、functionally equivalentだとしたら、まさにISSBと同様のタクソノミを使用できると思うので、これはぜひこういう方向でお願いしたいなと思います。
最後、20ページにおける御提案についても、金商法令の体系に取り込むということについて賛同いたします。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
1点、御質問があったかと思います。1兆円以上、それから5,000億円以上の会社についての取扱い、考え方について何かございますかという御質問だったと思います。事務局より、お願いいたします。
【野崎企業開示課長】
5ページ目の基本線のところの御質問を頂いたところでございます。
こちらでは、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業への適用開始時期を2027年3月期とすること等を基本線としつつということで、中には1兆円、5,000億円と、それから、これまで御議論いただいた、保証を1年遅らせるということも含意してございます。
他方で、やはり時価総額が3兆円、1兆円、5,000億円となると、それぞれ開始する時点において見えている景色が大分、解像度も変わってきますので、そういう意味で、柔軟に組み合わせて、最終的な絵姿というのは具体化していくのかなとは理解しております。
【神作座長】
よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは続きまして、オンラインで御参加いただいている委員の方から、御質問、御発言の御希望を頂いております。小林委員、弥永委員、松井委員の順で御発言ください。初めに小林委員、お願いいたします。
【小林委員】
小林です。私も22ページの「ご議論いただきたい事項」に沿って発言させていただきます。
まず1点目につきましては、今回、CSRDのオムニバス法案が出たということで、当方のこれまでの議論と大分平仄が取れてきたので御提案のとおり進めることでよいと思います。ただ、今、御説明にもありましたが、1兆円以下についてどうしていくのかということについては、本邦企業の動向をしっかりと見ながら、今後議論を進めていただきたいと思います。
それから2点目の見積りの修正については、妥当な御提案だと思いますので賛同いたします。
3点目の虚偽記載ですけれども、これについては、バリューチェーン情報に限定せずに、将来情報についてはサステナビリティ情報全体に広げるでもよいのではないかと思うのと同時に、実際に今後の議論の中で、虚偽記載の虚偽でないことを証明する負荷が大きくなり過ぎないような制度にしていくことに留意すべきと思います。
4点目のタクソノミについては、国際的な比較可能性を担保するという御提案の方向で進めていただくのでよいと思います。
そして最後の5点目ですが、先ほどSSBJの御説明の中で、ISSBの基準の今後の変更に対しては、SSBJも早急に対応を検討するとおっしゃっていただいた点は非常によかったと思いますけれども、これを金融商品取引法令に取り込んだ場合に、やはり同じようなスピードで法令の修正が行われるような前提で議論を進めていただきたいと思います。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の弥永委員、御発言ください。
【弥永委員】
ありがとうございます。
1点目については、事務局の御提案の方向性に私も賛同しております。
さらに、5点目、SSBJの基準ですけれども、こちらは現時点では、確かに合理的な差といいますか、それぞれのターゲットにしている部分が違うので、食い違いがあるのはもっともなのです。けれども、特にサステナビリティ情報の開示が、どちらかというと国際的な比較可能性をある程度意識しているからこそ、多分、現在、時価総額3兆円以上とか1兆円以上とか、あるいは5,000億円以上というラインが、プライム市場の上場企業について設けられようとしているということを考えると、有価証券報告書における他の情報に比べると、比較可能性がより確保できることをやはり将来に向かって担保していく必要性があるのではないかと思っております。また、下から2つ目の4点目のタクソノミとも関連するのですけれども、2組存在するというのは望ましくない。実はちょっと気になるのは、今回の時価総額3兆円とか1兆円とか5,000億円というラインですと、対象企業は比較的少ないわけでして、この対象企業数を念頭に置いたときに、どの程度このタクソノミの開発にコストをかけていいのかなどという問題というのも実際にあり得て、あまりにも不粋な話ですけれども、有価証券報告書提出会社のほとんどがカバーされるようなときのタクソノミの開発とは、ちょっと違った面があって、その中で、また2通りあるというのがいいのかどうか、それだけのコストをかけるのがいいのかという点は、やはり将来の課題として残るような気がいたしました。もっとも、事務局の提案に反対という趣旨では全くございません。
2点目と3点目について、若干、私なりの考えを述べさせていただきますと、2点目との関係では、確かに見積りの変更、更新によって訂正報告書を常に出さなくてはいけないというのは適切でないと思います。この点については御提案の方向には基本的に賛成なのです。けれども、ただ、1点、既に他の委員の方もおっしゃってくださっていましたけれども、事後的に見積りの更新がなされた場合、訂正報告書という形での開示が要求されなくても、やはり臨時報告書などの形で開示を求めていく必要性はないのかという点は検討に値すると考えております。
さらに、資料9ページの「GHG排出量の見積りの更新について(2)」ですけれども、この2点目のところについては、実は若干気になる点がございます。事業年度末時点または有価証券報告書の提出時点の状況について判断されると書かれていますが、一般的に財務情報を考えたときには、有価証券報告書は、事業年度末時点ではなくて、その後の重要な後発事象というものがあるような場合には、当然のことながら、やはり基準時点が、事業年度末時点よりも後ろに来ざるを得ないわけですので、見積りの更新というもの自体が、重要な後発事象によって、つまり財務報告で言えば、いわゆる修正後発事象に当たるような場合もあるのではないかと思われるので、こればかりはもう少し厳密にというか、財務情報の開示のルールとのいわば整合性というのも、ちょっと考えなくてはいけないのかなという印象を受けました。
最後に3点目ですけれども、いわゆる虚偽記載等の関係ですが、セーフハーバーなどの対象を、例えばバリューチェーン情報に限ることは、1つの方向性としてあるのかもしれませんけれども、将来情報が含まれるということに着目するのであれば、それはサステナビリティ情報に限ったことではなく、非財務情報全体について及ぶという可能性があるように思われまして、今回はサステナビリティ情報について検討していることですけれども、これを契機に非財務情報全般についても、将来情報というものについて、これまでのガイドラインでの取扱いだけではなく、仮にサステナビリティ情報について、法令といっても、法律よりは恐らく府令とか、そういうレベルが想定されるのでしょうけれども、もしそちらで対応するというのであれば、サステナビリティ情報に限らず、情報の特性というものに基づいてセーフハーバーが定められ、規定されるのが適切なのではないかと思っております。
他方、挙証責任の転換などの問題について申しますと、他の非財務情報、あるいは、より一般的に、非財務情報であれ財務情報であれ、同じ問題点があり得るので、こちらはより慎重に考えなければならないと思います。そこで、取りあえずセーフハーバーで対応するというのであれば、できれば、非財務情報一般について、同じ属性を持っているのであれば、その限りにおいて適用されるというのが適当なのかなと考えております。他の情報に対する規制、他の情報についての責任関係と、サステナビリティ情報についてのそれらも整合的に考えていくのがよいのではないかと考えております。
以上です。どうもありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続いて、オンラインで御参加の松井委員、どうぞ御発言ください。
【松井委員】
発言の機会を頂き、ありがとうございます。それでは、私も検討事項に沿って発言したいと思います。
まず1点目につきまして、私はサステナビリティ開示に係る政策の妥当性ということについては、日本の大きな政策との整合性を検証しつつ進んでいくことが必要だと思っています。
金融ビッグバン以降の成長と分配の好循環という政策に至るまで、日本の金融政策というのは、まず投資家に選ばれる市場を整備し、活性化すること。それから、企業にとっては資金調達のコストを下げること。最後に、このような市場の活性化によって、家計の資産形成に資することという3つを追求してきたかと思います。サステナビリティ開示に関する制度の一環としてシングルマテリアリティを基本とし、投資家に評価してもらい、かつ企業の資金調達に資するということを目的として制度を検討してきたということであります。今回のワーキング・グループにおいて検討が進んできたのも、この開示が長期的に非常に重要なイシューであるという規範的な考え方のほかに、やはりサステナビリティの機運が高まっている現在ならば投資家も選んでくれるし、かつ企業の側も財務的に負担に耐えられるという判断の下であったかと思っております。
この点、ダブルマテリアリティを政策として標榜しているEUであるとか、あるいはサステナビリティの中でも都市開発などが大きなテーマで、比較的、将来投資の枠組みでGHGに取り組みやすいASEAN(東南アジア諸国連合)などとは別に、現状を日本の政策に照らして路線を維持するかどうかを判断するということはあるかと思います。他方で、もちろんサステナビリティ課題自身の重要性や、国際的な比較可能性というメリットがあるということは理解しておりますけれども、最終的には、日本ではどうか、そして政策的にきちんとした正当性があるかということを踏まえつつ進むということは重要だと思っております。
本ワーキング・グループも含め、国際的比較可能性のメリットも加味して、投資家がきちんと引き続き支持してくれるかということ、また企業がコストに耐えられそうかということを確認するということになるかと思いますけれども、本日、既に多くの発言があり、投資家として引き続きスケジュールどおりの開示推進を希望しており、企業の側も少なくとも時価総額3兆円以上の企業について基本線を維持することに反対しているわけではなく、現実的となるような制度設計を求めていると理解いたしましたので、1点目については、現在賛同できるという状況だと了解いたしましたけれども、市場の急変など、引き続き状況と政策を照合しながら進めるという課題は残っているのかなと思っております。
2点目の見積りの更新と誤謬についてということですけれども、誤謬となったら訂正が必要となるというふうに、大きく対応が分かれてくる点でございますので、誤謬であるか、ただの更新であるかという区別というのは明らかであるということが望ましいかと思います。10ページの例には明らかな誤謬が載っておりましたけれども、弥永委員が御指摘のように、修正後発事象の問題のようなものがありまして、現状の更正との整合性を突き詰めていくと、運用上、心配な場合というのが出てくる可能性も出てくるかと思います。したがって、誤謬というものを絞るという、現在はセーフハーバーに変えてガイドラインを策定することがよい対応なのかという論点で似たような議論がありますけれども、とにかく適切な対応ということを考えていくというのは重要かと思いました。
セーフハーバーについては、日本では不実の開示の責任について立証責任が転換されているであるとか、ガイドラインで責任の軽減を図っており、企業がどのような行動をすることで責任がなくなるのかということを明らかに列挙するというような書き方をしているという点など、他の国と比較するといろいろな点で特殊な面がございますので、どの範囲で見直しをするのが適切なのかは、本ワーキング・グループのアジェンダを超えるという可能性も含めて、理論的な点も考え、かつ、運用上、どういうふうにするのがいいのかという適切さということもにらんで、しっかりと議論することが必要だと考えております。
以上になります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは会場に戻りまして、藤本委員、三瓶委員、森内委員の順番で御発言をお願いできればと存じます。
初めに藤本委員、お願いいたします。
【藤本委員】
藤本でございます。発言の機会を頂き、ありがとうございます。
それでは私も「ご議論いただきたい事項」に沿ってコメントさせていただきます。
まず、サステナビリティ開示基準導入のロードマップについては、皆様からも御発言がございましたように、欧州の環境変化を踏まえても、これまで、本ワーキング・グループで議論してきたロードマップから遅らせるべきではないと考えております。我が国の時価総額5,000億円以上のプライム市場上場企業は、欧州のCSRDのWave1企業と競争関係にある企業でもありますし、こうした企業のサステナビリティに関する取組を国際的な基準に従って開示することの意義、それから投資家からのニーズも高いものと考えております。また、2027年の3月期から開示を導入するという想定でございますが、この年度の期首というのが2026年4月1日ということで、もう既に1年を切っている状況になっていると思います。既に企業は準備を進めていらっしゃると思いますが、できるだけ早いタイミングで導入のタイミングを固める時期に来ているのではないかと考えております。
それから、資料を拝見しておりまして、3・4ページ目のところで、欧州の大企業の保証の状況について調査を頂いており、大変参考になります。こちらを拝見しておりまして、ほとんど全ての企業が、財務諸表監査人と同じ監査法人が保証を担っているという状況が見て取れると思います。まだ全部ではないということで承知しておりますけれども、今の状況ではそういう状況だと理解しています。CSRDの場合は、国内法制化が完了している20か国のうち、profession-agnosticを採用するフランス、それからデンマークの2か国しか、profession-agnosticはないと理解していますけれども、そこでも監査法人を選択しているようなケースがあるということ。こういった状況も踏まえて、保証の担い手に関しては本ワーキング・グループで御議論するテーマだったかと考えておりますので、こちらを今後改めて議論する必要がないかどうか、御検討いただければと考えております。
続いて、2点目の見積りの修正に関してです。こちらは、8ページ目から10ページ目のところに訂正の方向性について示されておりますが、SSBJ基準における取扱いを反映したものであると思いますので賛同いたします。なお、GHG排出量が例として挙げられておりますが、海外におけるCSRD対応の開示実務では、例えば排出物量ですとか有害物質の排出量と、ほかの市場においても見積りによる算定を行っているケースがあるとも聞いております。限られた時間の中でサステナビリティ開示を行うために、GHG排出量以外の見積りの場合でも、このような取扱いを考えるべきかどうか、少しその辺りも御検討いただいてはどうかと考えております。
それから、虚偽記載等に対する責任についてです。14ページ目に整理を頂いているとおり、セーフハーバーを設けることには賛同いたします。その場合、民事上の責任に加え、刑事、それから行政上の責任についても検討が必要だと考えておりますが、セーフハーバーの適用対象情報を、投資家保護の関係からは、いたずらに適用範囲を広げるということに、やや懸念がないかということが気になっております。ある程度、特定可能なものに限定する必要がないかどうか、御検討いただきたいと思います。
それからEDINETタクソノミに関しては、ISSBタクソノミと整合させることで国際的な比較可能性が高まるという利点があると認識しております。一方で、部分的に金融庁独自のものを取り込むことや、その他の有価証券報告書のタクソノミとの整合性を踏まえまして、実務にどのような影響が与えられるのかということについて分析いただければと思います。こういった提案が、情報利用者、企業、それから監査・保証実施者に混乱が生じないような形で、御対応をお願いできたらと考えております。
それから最後、SSBJ基準の金商法令への取り込みにつきましては賛同いたします。御説明いただきましたとおり、SSBJ基準はISSB基準と高い水準で整合性が確保されておりますし、機能的に同等な結果をもたらす基準であると、ISSBとも確認が取れていると聞いております。したがって、SSBJ基準はグローバルな投資家の情報ニーズを満たす開示基準であり、これを取り込むことが適当であると考えております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして三瓶委員、御発言ください。
【三瓶委員】
三瓶です。発言の機会を頂き、ありがとうございます。私も、事務局資料の22ページの5つの点について発言したいと思います。
まず1点目ですが、ロードマップについて、今の適用開始時期を基本線としつつ柔軟に対応するというところ。「柔軟に対応する」の表現が従来どおりということなのですけれども、今、藤本委員もおっしゃっていましたけれども、時期が近づいてきているので、そろそろ固めないといけない。もちろん、ある程度の柔軟性は必要だと思いますけれども、この線で基本線を守るということを、より明確に伝えていただきたいと思っています。他の委員の皆様がお話ししたとおり、日本は決して先走っているわけではなくて、現在の国際情勢などを見ていくと、むしろ日本が遅れを取り戻すチャンスが来ているということだと思いますので、日本がそこで躊躇するということがないようにしていただきたいと思います。
2点目について、見積りの修正があった場合の訂正の考え方は、事務局案に賛同いたします。今、多くの委員の方がおっしゃいましたけれども、3・4ページに書かれているように、12月決算の欧州企業が、もう既に2月・3月には開示できていると。これは、日本企業も見積りというものをもっと有効に活用すべきということだと思います。また一方で金融庁には、有報開示情報を温対法報告にも使えるように、引き続きインターオペラビリティの向上を探っていただきたいと思います。
3点目、虚偽記載等の責任のあり方なのですが、14ページの整理は妥当だと思います。ここで、特に悪意・重過失がある場合のみ責任を問うべきということだと思います。そして、情報の範囲というお話が委員から出ていますが、情報の範囲を考えるときに、英国の場合、15ページにありますけれども、戦略報告書というのを対象にしています。これは1つ、この機会に、英国の戦略報告書というのはどんなことが書かれているのか、どんなことを書かないといけないのかということを再度確認しながら、ではそれを対象にするのか、しないのかという検討をしたらいいのではないかと思います。一番大事なことは、情報開示に消極的にならないようにという意図でセーフハーバーを設けていることなのだと思います。情報開示に消極的になるということは、市場の評価を受けるときに不利に働きます。ですので、この辺が非常に重要だと思います。
4点目のEDINETのタクソノミの開発の方向性。基本的にこの方向性でいいと思います。私も前職のグローバル運用会社で、リサーチマネジメントシステムの再構築というのをやったことがありますが、そのときにグローバルでいろんな議論をするときに、やはりタクソノミの統一の課題に直面しました。やはりここで課題になったことと同じで、国際的な比較可能性というのが、まず大事なのですが、同時に国内のみの対象の分析とか集計ということも非常に有用な場合がありますので、その両立することが最終的に開示情報を最も有効利用することにつながると思います。
5点目のところについては、ISSB基準と同等の基準として金融商品取引法令に取り組むということでよろしいかと思います。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして森内委員、お願いいたします。
【森内委員】
ありがとうございます。
まず、SSBJ基準の御説明、大変ありがとうございました。このところ、保証に関しての議論にフォーカスしていたものですから、開示に関して疎くなっていた点をちょっと反省いたしております。改めて公開草案からの変更点、それからISSB基準との違いについて、十分再認識させていただいたところでございます。
それから、適用支援としてのツールとして、ハンドブックですとか、それからサステナビリティ基準検索システム、それから今後のセミナーもしっかりと活用させていただきたいと思っております。
22ページの「ご議論いただきたい事項」の1点目からですが、まず時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業へのサステナビリティ開示は基本線とし、柔軟に対応していくということに関して賛同いたします。
2点目、それから3点目もそうなのですが、サステナビリティ情報に係る見積りの修正あるいは虚偽記載の責任のあり方ということに関してですが、とりわけGHGの排出量については誤謬が生じやすいと考えております。特に見積り情報についてはリスクが高いのではないかということを感じております。また、重要性の判断につきましても、個々の産業・企業を取り巻く状況はそれぞれ違いますので、この状況の理解が必要ですし、その影響の要因についても、内的要因・外的要因をしっかりと見極めるということが必要かと思っております。そういった認識におきましては、保証業務提供者においてのGHGの算定に関する、特に国際基準の動向ですとか、いろんな見直しも進んでおりますので、こういった動向、それから算定ツール、法域ごとの制度の動向等も含めて、専門知識を十分に認識しておくことが重要と思います。
4点目、EDINETタクソノミの開発の方向性ですが、EDINETの範囲を拡大していくという取組について賛同いたします。EDINETについては各データ要素間の紐づけについて、企業間比較という点では課題があるとは認識しておりますが、いずれにいたしましても、EDINETタクソノミの範囲を拡大していくことによって、データの標準化がさらに進んでいくと考えます。一方でヨーロッパにおいては、ESAP(欧州単一アクセス・ポイント)において、EU域内の金融・非財務情報を一元的に集約する新たなプラットフォームづくりが進んでいると承知しております。こうした動きも注視しながら、EDINETの将来的なあり方についての検討も並行して進めていくことも必要ではないかと考えます。
最後、5点目ですが、SSBJより御説明いただいたサステナビリティ開示基準を国際的なベースラインとなるISSB基準と同等の基準として、金融商品取引法令に取り込むことについて賛同いたします。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして吉元委員、御発言ください。
【吉元委員】
ありがとうございます。では私も論点に沿って発言させていただければと思います。
まず1点目、開示基準導入のロードマップについてですが、事務局案に賛同いたします。ただし、EUだけではなくアメリカの動向も注視しつつ、日本企業が外国企業に比して、過度な開示負担が課されることで国際競争力がそがれることがないよう、適用のあり方を検討することが重要だと思っております。
特に保証につきましては、企業及び保証業務提供者の実務負担は重いのが実情ですので、慎重な検討が必要だと思っております。世界情勢の変化が今大きい中で、4、5年後は現状とは逆に、ルールの厳格化のほうに海外当局が動くということも、理屈上あり得るかなと思っておりまして、そうした場合は、場合によってはSSBJ基準の適用のあり方の見直しも含め、海外の規制との足並みを柔軟に揃えていくというような構えも重要ではないかと思っております。
2点目、GHG排出量の見積りの修正についてです。こちらについては、事務局提案の方向性は合理的であると思いますので、賛同いたします。
3点目、虚偽記載等の責任のあり方についてですが、サステナビリティ情報の虚偽記載等についての議論は、有報全体についての開示責任のあり方の議論と切り離せないという、事務局の課題認識に賛同いたします。14ページの想定される論点についても違和感はございません。
他方で、サステナビリティ情報の特性を考慮しますと、少なくともサステナビリティ情報に関するセーフハーバーは不可欠であると考えておりますし、セーフハーバーのあり方としては、現状の日本の開示ガイドラインでは不十分であり、SEC規則案なども参考にしながら発行体が萎縮しないルールづくりが求められるという点は、改めて指摘させていただければと思っております。
EDINETタクソノミについてですが、こちらについては、印刷会社や情報利用者の意見がより重要だと思っておりますが、発行体の立場では合理的な提案と思われますので、事務局提案に賛同させていただきます。
最後、SSBJ基準の金商法令への取り込みについてですが、公表されたSSBJ基準の内容を踏まえ、取り込みの方向に賛同いたします。その上で、仮に2027年3月期からSSBJ基準の適用を、基本線のとおり、開始する場合は、時価総額3兆円以上の日本企業から見ると、CSRDに基づく開示義務化のタイミングより1、2年先にSSBJ基準の開示が先行するということになると思います。それで、マテリアリティの違いなど、乗り越えるべき課題はあるものの、オムニバス法案を受けてESRSの大幅な簡素化も検討されていると理解しておりますので、NESRSのあり方、内容についても影響があると想定されます。そのため、EUが基準の見直しに動いている今のタイミングから、相互運用性の確保、より具体的には、日本企業にとってみると、先行するSSBJ基準での開示をもってCSRDに基づく開示をできるだけ代替できるというような形になるよう、金融庁にはEUや国際機関への積極的な働きかけ、緊密な連携をお願いしたいと思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして浅川委員、御発言ください。
【浅川委員】
御指名いただきましてありがとうございます。JQAの浅川でございます。また、資料を御説明いただき、ありがとうございました。私からも、22ページの「ご議論いただきたい事項」に従って、順不同になりますがコメントさせていただければと思います。
初めに、13・14ページに示されたサステナビリティ情報の虚偽記載等の責任のあり方の論点につきましては、一連、記載されております事務局案に基本的に賛同いたします。また、18ページに示されましたサステナビリティ情報に係るEDINETタクソノミの開発の方向性につきましても、一連、記載された事務局案に基本的に賛成いたします。現状の課題もいろいろあるようですので、そういった課題を改善される方向での開発というところを期待したいと思います。
次に、8ページ以降に示されましたサステナビリティ情報に係る見積りの修正があった場合の訂正というところですが、訂正の報告書が必要な場合と、訂正の報告書が不要な場合ということで、区別していただきましてありがとうございました。基本的に事務局案に賛同いたします。一方で、SSBJ基準の御説明にも少しあったかと思いますし、既にほかの委員の方からもお話があったかと思いますが、保証との関係で、後発事象との兼ね合いについても分かりやすく整理しておくことも必要かなと思った次第です。
一方、最初の論点であります、我が国におけるサステナビリティ開示基準のロードマップですが、2ページに示されますように、オムニバス法案が出たといっても、もう既にWave1の枠組みは粛々と実施されていますということのようですので、少なくとも該当するような日本企業が不利にならないように、同様のスピード感での対応が求められるのかなと思います。このため、EU対応が必要となる企業がどのぐらいあって、どのぐらいの規模なのかというようなところの確認は、まず最優先で具体的に明確にしていただくことが必要なのかなと思います。
そういった現状を把握した上で、それぞれの対応を整理して、丁寧に検討を進めていくとよいのではないかなと思います。併せて二段階開示やセーフハーバーの議論についても、これまでの議論を継続されるという事務局の御提案に賛同いたします。
一方で、3・4ページのCSRDの実施企業ということですけれども、先ほども少し言及がございましたが、実際には今、海外の大手監査法人が実施されているという状況があります。これまでのワーキング・グループの中では、私どものようなその他の保証業務提供者あるいは中小監査法人の活用というお話もあったかと思いますので、そういったところと、実際の欧州の現状とで問題がないのかどうかというところについては、やはり確認していく必要があるのではないかなと思います。
それから最後に、追加されましたSSBJ基準についてですが、現時点で原則として20ページの事務局の案に基本的には賛同いたします。ただ、1つ気になったのは、従前より議論があったと思いますが、御説明いただいたSSBJ基準では、GHGのScope3の排出量について開示してくださいということが書かれておりますが、一方でこれまでの特に保証に関する議論では、Scope3については取りあえず保証の対象から外すという議論になっています。保証がついていない情報が、このまま有報などに載っていくということについて、問題ないのかなというところは若干気になりましたので、その辺りについては多少整理が要るのかなと思いました。
併せて、関連する論点として1つだけ言及しておきたいのですが、例えばSSBJ基準について御説明いただいた資料18ページでは、GHGプロトコルに基づくGHGの排出、あるいは日本の場合は温対法ベースの排出というようなことが認められておりますが、実際に私どもが検証の現場に行ったときに、そもそも本当にGHGプロトコルに基づく排出や温対法に基づく算定がちゃんとできているのかという視点で見たときに、まだまだ相当ギャップがあるとの印象を持っているところを少しお伝えしておきたいと思います。
例えばGHGプロトコル、コーポレートガイダンスでは、要求事項と推奨事項があって、正しいGHG排出量を算定するための手続、プロセスが求められておりますが、そういった算定の手続きが着実に実行されているのか、実行できる体制が整っているのかという点で、例えば大きなプロセス排出がそもそも抜けていたり、エネルギー起源CO2以外のガスの算定が抜け落ちたり、あるいは算定対象範囲に含むべき組織や施設が含まれないというような指摘事項というのは、実際の現在の任意保証の検証現場でも普通に見られるところかなと思いますし、制度はちょっと違いますけれども、従前も御紹介した合理的保証水準ベースでのGHGの各制度、GX制度や東京都J-クレジットといったところのレビュー結果でも、指摘として、ここが抜けているよということが毎回多数、出ているという実情があります。そのため、当然にSSBJの資料18ページに示されるコア・コンテンツの各指標というのは、企業間で比較が可能なようなものにするということが必要なのですが、そのためには、その基になる数字やそれを算定するプロセスそのものが適切で合っている、実態を表しているということが非常に大事だと思いますが、そういった、事業者が認識していなかった大きな漏れやガス種の抜けなどといったところについては、やはり保証業務提供者側がそれをきっちり指摘していくという意味で、専門性の力量が必要なのではないかなと思います。そのため、今回、SSBJ基準を法令基準にするということになるのであれば、それを保証するという視点で、非常に大事なポイントかなと思いますし、またそこが違っていた場合の、本制度にもありました虚偽記載の位置づけとしてどうなるのかというようなところも含めて、少し議論されるといいのかなというのは感じたところです。
逆に、先ほど御紹介した先行の各制度、そういった指摘事例、よくある間違いというのが、もう随分と蓄積されていますので、実務指針をつくる際の1つの材料として、まずはGHGについては、参照されるといいのかなということもコメントしておきたいと思います。
私からのコメントは以上です。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして芹口委員、御発言ください。
【芹口委員】
御指名いただきましてありがとうございます。22ページの「ご議論いただきたい事項」に、順にコメントさせていただきます。
まず1点目の、EUのオムニバス法案が我が国の開示のロードマップに与える影響につきましては、基本的には影響はないと考えておりまして、これまでどおりの検討を行っていただきたいと思っております。
理由といたしましては、対象企業の中小企業などを対象外としたり、域外適用の閾値も引上げとなりましたけれども、基本的には我が国の開示ロードマップで対象にしているような時価総額の大きい企業につきましては、グローバルに事業を展開し、欧州にも一定の事業基盤を有すると見られること、また、開示を簡素化しても、インターオペラビリティを損なわないとされておりますので、ベースラインとなるISSB基準、またSSBJ基準に相当する開示要求は残ると見られます。これまで、私ども利用者といたしましては、財務情報を補完するものとしてサステナビリティ情報が重要であるということをお伝えしてまいりました。グローバルで統一された基準の下で開示される質の高い情報を早く活用していきたいと思っておりますので、5ページの3点目に記載されておりますとおり、2027年3月期を適用開始時期とすることを基本線とした考え方を変更せずに、検討を進めていただきたいと考えております。
また2点目の見積りの更新につきましては、御提案いただいた内容に基本的に賛同いたします。ただし、見積りが適切な場合でも、例えば、事業環境に大きな変化があったり、また企業の買収、事業の一部売却・撤退などで、確定値と見積りの差が大きくなるようなことも想定されると思います。基本的には、企業の自主性に委ねた開示でよいと思っておりますが、その差が重要な情報と考える場合には、任意で有価証券報告書の訂正報告書、あるいは本日、御意見を頂きましたような臨時報告書、もしくは適時開示などでもよいと思っておりますが、周知いただけますと大変ありがたいと思っております。個別に開示された情報を、アナリスト、投資家が確認をし、また情報ベンダーによっては、アップデートされた情報を反映するといったことも期待されますので、投資家が企業と対話する際に、事前に確認することが可能になるのではないかと考えております。
3点目の虚偽記載等の責任のあり方につきましては、御検討の方向性に賛同いたします。
また、4点目のEDINETタクソノミの開発の方向性につきましても、グローバルの部分と、また日本での独自性の両方を考慮して開発する等、利用者の利便性に考慮いただいていると思いますので、御提案に賛同いたします。
最後に、SSBJ基準の金商法令への取り込みにつきましては、SSBJとISSBの基準間の整合性が確認されておりますので、御提案に賛同いたします。また今後、新たに基準を開発する場合につきましても、ISSB基準と同等であることが必要だと思っておりますが、開発に当たっての基本方針にありますとおり、ISSB基準との同等性は確保されるものと考えております。
私のコメントは以上でございます。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして近江委員、御発言をお願いいたします。
【近江委員】
近江です。御指名ありがとうございます。私も22ページ目の議論事項について意見を述べさせていただきます。
まず時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業のサステナビリティ開示の運用開始時期を2027年3月とすることに賛成いたします。昨今の米国の動向などはございますけれども、運用機関において、投資先企業の企業価値評価に影響を与え得るサステナビリティ情報を適切に把握するということの重要性は変わるものではございません。時価総額5,000億円以上のプライム上場企業のうち、オムニバス法案によるEUの適用対象の開示の要件以上を満たす会社の社数ベースで99%になるという状況でもありますので、従来の議論どおりのタイムラインを基本線とするのが望ましいと考えます。
次に、サステナビリティ情報に関わる見積り修正があった場合の訂正の考え方ですが、合理的な情報に基づいて適切なプロセスに基づいた見通しであって、誤謬ではない場合には、訂正報告書の提出の必要性は、企業側の自発的な判断に任せる案について反対いたしません。まずは企業の開示を促すことが優先されるべきであると考えます。ただし、投資の意思決定の影響の観点から、後発事象その他などにより見積りと確定値に著しい乖離が生じるなど、重要性が認められる場合には、誤謬ではなくとも訂正報告書の提出は選択肢であるということが言及されると、利用者にも提出者にも資するのではないかと考えます。訂正報告書を提出しなくても、有報提出後に、見積りとは異なる確定値が、ホームページやサステナビリティレポート、統合報告書など、他の媒体において開示される場合も想定されますので、その場合には注意書きなどにより、見積りと異なる確定値であることを明確にするとか、あるいは、そういったことが想定される場合には、あらかじめ有報の見積り数値の開示箇所に注記を加えるなどによって、その後に確定値が適切に反映されるような工夫などがあっても、利用者には情報が迅速に把握されることにおいて資するのかなと思います。
虚偽記載に対するセーフハーバーにつきましては、今までのワーキング・グループでの議論を踏まえた事務局案を基本として、将来情報や予測情報、バリューチェーン情報、合理的な根拠に基づいた見積りなどの情報が対象となるという方向で、議論を継続していくということに同意いたします。なお、タクソノミ開発につきましては、サステナビリティ情報がグローバルの投資プラットフォームにおいて最大限に活用されるということを担保する上で、IFRS基準とSSBJ基準の共通項目については、ISSBタクソノミを基本とする開発を行うことに賛成いたします。ただ、タグづけ項目の優先づけということにつきましては、否定はしないものの、過度に範囲が狭くなり過ぎないということは希望いたします。
最後に、SSBJ開示基準について御説明いただきましたけれども、SSBJ基準はISSB基準との高い整合性が確保されているということを確認いたしました。ISSB基準と同等な基準として、金融商品取引法令に取り込むことに同意いたします。
私からは以上になります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして清原委員、御発言ください。
【清原委員】
発言の機会を頂きましてありがとうございます。私も22ページのところに沿って、意見を述べさせていただきたいと思います。
1点目のところは、2027年スタートということに賛同いたします。ただ、以前もコメントさせていただいたのですが、カテゴリーが3つに分かれているというのがちょっと複雑だなというところは、意見としてはまだ持っておりますので、本来であれば、よりシンプルなほうが望ましいのではないかというところがございます。
2027年の3月期というと、来年2026年4月から始まる事業年度から始まるということになりますが、どの会社が適用対象になるかということが確定的になるのは、本来は事業年度の開始前が望ましいところです。今の日程でいくと、国会で法律案が可決して施行される時期として、来年4月の段階で全てが確定しているかどうかは、若干、微妙なところはあるのではないかと想定されます。
この3段階に分かれて実施されていくということでいうと、どのカテゴリーに入るかということが、やはり法律が成立したところで確定する必要があると思いますので、時価総額について過去5年分の平均ということで話が進んでいたかと思うのですけれども、そういったものも含めて、法律が可決され、施行されるところでは、どの段階からどの会社が対象になるか、明確になる形で分かる、それが告示なのか、それとも金融庁がウェブサイトで開示するのか、やり方はいくつかあるかとは思うのですけれども、そういったことが当初からはっきりとなっていて、そして進んでいくということが望ましいのではないかということを、1点目のコメントとして補足させていただければと思います。
次の見積りの修正のところですけれども、これも訂正以外に更新する、それを法定開示の中で反映させる方法として、半期報告書もあるかとは思うのですが、臨時報告書の形でも、それが法定開示の中で示されることができるというのは望ましいと思うので、開示府令のところの見直しについても、必要であれば御検討いただければというところがございます。
虚偽記載等の責任に関しては、現在のガイドラインの改訂だけで十分かどうかという根本の議論もありますけれども、少なくとも今進めている、もしくは既に始まっているサステナビリティ情報開示について、やはりガイドラインがあって、責任の範囲に関して企業が不安を持たずに萎縮せずに開示できるということが望ましいので、まずここは進めていただければというところが1点目としてあります。次に、法的な責任ですので、やはり立法的な手当てが必要になることがあります。そのため、改めて議論の場を設けて、しっかり議論する必要があるのだろうと思っております。
今あげられている論点の中で、責任の有無という形のところもあるのですけれども、課徴金のところですと、加重ですとか、減額とか、そういった加減という制度もあるのですが、実務上、必ずしも活用されているとはいえないようです。責任に関して、民事責任については、加重したり減少というのは考えにくいところがありますが、課徴金などでは現在すでにあるので、これをもっと活用されるようにして、自主的に企業が訂正したり、それから当局に申し出たりといったことも含めて、企業の開示を促すという政策的な視点も、この責任の議論のところで、より強く打ち出していただくとよいかと考えています。
タクソノミの開発は飛ばしまして、最後のところですけれども、SSBJ基準自体を金商法の取引法令の中に取り込むことは、もちろん賛同しております。取り込み方のところについて、どういうふうになるかを想定すると、財務諸表に関しては財規があるように、同様に、やはり本法で根拠条文をつくった上で、内閣府令のところでサステナビリティの開示に関する規則というものがあり、それを受けて金融庁長官の告示指定がなされるということが、多分、流れとして出てくるのだろうと思っております。そのような枠組みの中で考えていくとすると、SSBJ基準というのは適用基準があり、それからS1・S2に相当する基準というふうに、一般基準、それから気候変動基準とあるわけですけれども、財務諸表等規則のような形で、内閣府令でサステナビリティ開示の規則ができるのであれば、適用基準に相当するものは、内閣府令の規則のところに落とし込むことによって、SSBJ基準を強制適用される会社でなくても、それに従って、有価証券報告書におけるサステナビリティの開示をしていくこととなって、従うべきルールというものが整備される、そういうことが考えられるので、制度化に当たっての検討事項にそういうものもあるのかなと考えておりますので、併せてコメントさせていただきました。
以上であります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして高村委員、どうぞ御発言ください。
【高村委員】
ありがとうございます。
お尋ねいただいている項目について発言させていただきますけれども、最初に資料1で中條様より御紹介があったSSBJの基準についてです。このメンバーの中にもSSBJのメンバーが多くいらっしゃるので御一緒しておりますけれども、ISSBの動向を見ても、先般、ISSBの副議長が来日されたときも、35の法域、世界の時価総額の40%を超える水準で、アジアの諸国も含めて、既に法律規制の枠組みにISSBの基準の導入を決定、あるいはその準備をしているという御報告がありました。EUオムニバス法案でも、今、何人かの委員からもございましたように、基本的にグローバルスタンダードへのインターオペラビリティをより高めるという方向が、繰り返し、方針として掲げられていると理解しています。そういう意味では質の高い、そして国際的比較可能性が高い日本にとっての開示基準という意味では、ISSB基準との整合性が重要で、SSBJ基準が、まさにこれは3月の末に、ISSB基準とSSBJ基準との差異を発表していますが、ISSBの副議長からも機能的に同等ということを確認頂いていると理解しています。その意味で、SSBJ基準について、金商法令の中に取り込む基準として適切だと考えています。
2つ目がロードマップについてです。これは多くの委員から御指摘があった点ですが、この間、基本線として提案を頂いて議論してきた方法を変える必要はないと思っています。先ほど関口委員から御質問が事務局にございましたけれども、私も時価総額3兆円以上の2027年3月期からの開始だけでなく、少なくとも5,000億円以上、2029年3月からの開始について、今の時点で変更する必要はないと考えています。これは事務局からスライド9のところで、EUの、24年度から既にWave1として適用対象となっているものとの比較、それからアメリカは連邦レベルではなかなか大変ですけれども、カリフォルニア州など先行している州域においての開示の状況、そして先ほどISSBの状況についても発言させていただきましたけれども、こうした動きを見ても、この基本線を変える理由というのはないと考えています。
そしてもう一つ、僭越ながら申し上げると、松井委員がおっしゃいましたけれども、最終的には国際的にどう動いているかというのは見るわけですが、日本として日本の企業の競争力を高めていく上で、サステナビリティをいかに経営に統合していくのか、あるいはそれを適切に評価できる資本市場の形成をどういうふうにしていくのかという点が非常に重要だと思っております。これは私の理解では、現在のGX政策をはじめとして、日本の産業政策の、そして金融政策の基本の事項だと思っておりますので、それも含めて変更する理由はないと思っています。企業の準備、制度構築のスケジュールから、3つの予見性という点でももちろんであります。
3つ目でありますけれども、見積りの修正があった場合の訂正について、私は事務局の整理について賛同いたします。特にここではGHG排出量の見積りを念頭に置いてということですけれども、実際、今、温室効果ガスの算定評価報告制度の下でいきますと、特にScope2に関わる排出量をマーケット基準で算定しようといたしますと、今の排出係数のスケジュールでいくと、私の理解では6月末までにエネルギー事業者が報告され、7月にまとまった形で示されて、算定報告制度に基づいて企業が報告するケースが多いと思います。
そうしますと、実際、起きているのは、調整後の排出係数が有報作成時に入手できない、あるいはその後、更新されるということが起き得る、あるいは起きていると思っております。したがいまして、事務局から提案を頂いている、見積りを使用した同時報告を行うために、調整として見積りを使われるということの、まさに基準に照らした見積りが合理的で正確な見積りである場合には訂正報告書は不要であるということを明確にするということは、企業にとっての、自らの意思に沿わないといいましょうか、制度に由来する負担を軽減するということになろうかと思います。もちろん、誤謬に該当する場合には重要性に応じた有報の訂正が必要というところも妥当だと思います。
後発事象との関係の整理ということは私も必要だと思っておりますけれども、当然、主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る場合、そうした後発事象についての開示ということ、これはSSBJの基準でも示していると思います。これは事務局の恐らく文言で、仮に確定値が判明したことをもって、訂正報告書の自発的提出が必要となるわけではないという表現は、恐らくそうしたことも含んだ御提案ではないかと思いますけれども、特にGHGの排出量の見積りについて言いますと、もちろんその中で、利用者の意思決定に影響を与える場合というものは、適切な追加的な開示は必要だと思いますが、恐らく多くの場合の修正というのは、それに該当しない。特に調整後と言いましたので、非化石証書やクレジットなどによって排出係数が変わるケースを想定すると思いますと、恐らく、そうした事例というのは限られたものではないかと考えております。
むしろ今、調整後の排出係数を特に念頭に置いたお話をしましたけれども、とはいえ訂正報告書が不要としても、翌年度に比較情報の修正が必要になる可能性があるということでありますので、できるだけ企業の開示負担を軽減するように、やはり係数をどのように集め、どのタイミングでどう開示していくかというところについては、金融庁の所管ではないと理解していますけれども、一度、検討はお願いしたいということは改めて申し上げたいと思います。
最後ですけれども、虚偽記載に関する責任について、基本的にセーフハーバーに関する論点はここに出していただいていると思っております。こうした要素を、情報の信頼性と開示の充実、双方を確保するためにどう制度化するかということだと思いますけれども、やはり1つ、気になっておりますのが、関口委員と藤本委員からの御指摘と共通するのですが、サステナビリティ情報全般、非財務情報全般というのは、さすがに広過ぎるようにも思っております。具体的な開示される情報の項目をしっかり見ながら検討したほうがいいと思いますけれども、まさに将来情報ですとかバリューチェーン情報というのが出発点ということになろうかと私も思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして堀江委員、御発言をお願いいたします。
【堀江委員】
どうもありがとうございます。本日、サステナビリティ基準委員会の中條様から御説明いただきましたので、既に御検討済みかと思いますけれども、お願いと御質問をさせていただければと思います。
本日言及なされなかったのですけれども、作成要領のサンプルをお示しいただいていまして、恐らくボイラープレート化を避けるということも大切かと思いますが、そもそも、各財務局で行っている有報のレビューというのがありますけれども、その結果等を拝見いたしますと、これは全ての有報提出会社を対象としたものですので、今回議論しているものと範囲がぴったり一致いたしませんけれども、機会に関する開示が非常に少ないとか、開示自体が不十分な状況にあると。そういう意味では、先ほど高村委員がおっしゃられましたけれども、開示企業の戦略とか、経営とのリンクを想定して、開示を後押しするように、恐らく作成要領でも全般的留意事項としてお書きになられるだろうと思うのですけれども、企業の開示の姿勢ですとか、あるいはこういうところに留意して開示しているということのメッセージというのが大事ではないかと思います。これは、作成要領ベースでいいのか、あるいは、内閣府令等で規定することが適切なのかどうか、何とも分かりませんけれども、そういう開示に対する姿勢が問われているのではないかと思います。その辺りも想定されて、手当てされているのかどうか、もし御回答いただければお願いいたします。
それともう一点、これは実は保証ともリンクしてくるのですけれども、現在、開示される情報に対する部分保証が想定されています。それで、分かりやすい例で言いますと、会計では「完全なる一組の財務諸表」という言い方をいたしますけれども、部分保証となりますと、財規とか会社計算規則などのフルセットの財務諸表の中でも、ごく一部分だけを保証するということです。例えば売上高だけ保証しますといったことになっても、保証する人は売上高だけを見ていればいいのかというと、決してそういうわけではなくて、貸借対照表の科目などにも当然にはねるわけです。それで、サステナビリティ情報では、今のところ、Scope1・2と、ガバナンス、リスク管理が保証の対象になっていますけれども、開示の観点で見た時、ほかのコア・コンテンツにはねることは、あるのか、ないのかということについて、もしコメントがあれば頂ければと思います。
もう一点、1番目のディスカッションポイントに関連するところで、もう既に委員の方からいろんな御指摘がございましたが、私は、上田委員が触れられた有報の総会前開示が、特に我が国固有の問題として起こっていますので、金融庁の施策として、有報はできるだけ前倒しで開示しなさいと言っておきながら、開示量が極めて増えるという、この辺りについて、開示のタイミングだけではなくて、開示すべき内容についても、もしかするとWave2あるいはWave3辺りが、問題になるのかなという感じもいたしますので、この辺り、様子を見ながらとしか、多分、考えられないと思いますけれども、少し柔軟な対応というか、お考えが必要なのかなと思います。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。ただいまの堀江委員の御発言の中には御質問が含まれていたと思いますけれども、これはサステナビリティ基準委員会の中條様にお答えいただいてよろしゅうございますか。
【サステナビリティ基準委員会】
ありがとうございます。
まず作成要領でございますけれども、今回は2025年3月期ということで、有報において任意適用でSSBJ基準を適用した場合の作成要領を、現在検討しております。その中では、まず基準が3つございますが、それを有報の記載に落とし込むとどういった構成で記載されるかというところは考えて記載しておりますけれども、具体的に書き込むと、やはりボイラープレートになるということで、どちらかというと項目を記載した上で、留意事項のような形で作成に当たってのポイントを付しているというような形になっております。
2点目の部分的な保証に関してですが、SSBJ基準自体は、部分的な開示についてSSBJ基準に準拠しているということは想定しておらず、準拠していると表明するためには、全ての開示項目を記載していただくということを前提にしております。その中で保証がどのようになるかというのは、今後、保証基準の中でどのようにその範囲を特定していくかということになるかと思います。
【堀江委員】
結構でございます。
【神作座長】
よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
それでは、最後に永沢委員から御発言いただければと思います。オンラインで御参加の永沢委員、どうぞよろしくお願いいたします。
【永沢委員】
良質な金融商品を育てる会を主催しております永沢でございます。私は個人投資家の立場で入っておりますので、皆様のような専門的な知見を持っておりませんけれども、本日、皆様のお話をお聞きしながら感じたことを、意見として申し上げさせていただきたいと思います。
まずサステナビリティ基準委員会の中條様のお話をお聞きしまして、これからサステナビリティ情報開示というものがどのようなものなのかということを、かなり具体的に把握することができました。また、今回の会議では、投資において重要な比較可能性という視点からの検討についてかなり具体位的にお話をお伺いすることができ、大変参考になりました。ありがとうございました。
事務局資料の22ページの「ご議論いただきたい事項」について、一通り意見を申し述べたいと思います。
まず1点目でございますけれども、松井委員の御指摘が特に心に響きました。グローバルな投資家から選ばれる日本市場でなくてはいけない状況にあります。この点は、資産運用立国ということを掲げている我が国は今、非常に重要なところにあると私どもでも認識しております。グローバルな投資家の要請への対応に遅れることはあってはいけないと思いますし、何よりも、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業におかれては、グローバルにビジネス展開される中で、既に法規制よりも先に手を打って進んでおられ、特段の反対もないようですので、予定どおり基本線を守って進めていただくということでいいのではないか私も思います。
また、ほかの委員方からも御発言がありましたように、時価総額3兆円以下の企業につきましても、また未上場の企業につきましても、サステナビリティは社会的な要請でございますので、先をゆく企業を参考にしながら非財務情報の開示を進めていけるよう、学びの機会を、金融庁には御提供いただくとともに、将来的には、全ての企業が負担なくサステナビリティ情報の開示に対応できるよう、簡単な様式の開発を進めていただきたいとも思います。
2点目につきましても賛成でございます。手続的には合理的で妥当だと思いました。一方、何人かの委員からも御指摘がありましたように、スタート当初は、事後的に誤記となってしまうということが生じやすい状況にあるかと思いますので、誤記となる範囲の判断基準は具体的にお示しいただくとともに、指導の範囲で対応頂くことも必要なのではないかと感じた次第です。
3点目につきましては、皆様の意見をお聞していて、少し意見が割れているように思いました。大筋は皆様同意されているようですが、扱い方について議論があるように感じました。15ページに金融庁でお示しいただいた表ですが、法律の専門家や情報開示の専門家であればともかく、企業の経営者には、これはちょっと分かりづらいのではないでしょうか。取締役会は法律の専門家ばかりではありませんので、欧米のように分かりやすいものにしていただくことも必要なのかなと感じております。
4点目になりますけれども、EDINETタクソノミの開発につきましては、今回のお話を伺いまして、投資において重要な比較可能性が高まるということに繋がりますので、そうなりますと、やはり世の中全体のサステナビリティの底上げにもつながると思いますので、これは私としても賛成としたいと思います。
最後の点ですが、金商法令に取り込むことについて、基本的に賛成でございます。
最後に、今回、比較可能性という重要な視点が提供されました。機関投資家の皆様は、グローバルに企業比較をされる際にサステナビリティ情報を活用されると思います。例えばA社、B社、C社を比べてサステナビリティの観点からどこが進んでいるかという比較を、それも国際的に比較されていくのだと思いますが、個人投資家の場合はどう利用できるかを考えますと、株主として自分が持っている会社がサステナビリティのトレンドをきちんと捉えて改善を続けているかをチェックすることにこうした情報を利用できるようになるといいと思います。企業におかれては、規制改正への対応に終わらせず、個人株主とのコミュニケーションにも活用していただく、そんな前向きな捉え方をしていただくことを期待しております。
私からは以上でございます。どうもありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
本日のワーキング・グループは委員の方全員に御出席いただいており、全員の方から御発言を頂戴することができました。誠にありがとうございます。
それではオブザーバーの方々で、もし御発言の御希望がございましたら、時間の許す範囲内でお願いしたいと存じます。オブザーバーの方。それでは、経団連の魚住様、よろしくお願いいたします。
【日本経済団体連合会】
ありがとうございます。経団連の魚住です。私からも論点に沿って発言させていただきます。
まず1点目のロードマップにつきましては、諸外国の動向を見据えつつ、やはり柔軟な対応が可能な状況にしておくことは極めて重要であると考えてございます。実践可能性やコストベネフィットをしっかりと備えた制度設計に着地することが肝要と考えてございます。日本企業はヨーロッパ企業だけでなく、アメリカ企業、中国・韓国・インドを含めたアジア企業とも競争しているところでございますので、国際的な状況というときに、ヨーロッパ以外にも目を配っていただけると大変助かるところでございます。
そういった観点から、日本の置かれている状況といたしまして、有報の総会前開示の要請も出ている中で、実務の中では非常にプレッシャーを感じながら、実務もなるべく効率的に進めたいと努力をしているところでございます。一方、諸外国と比較した場合、例えばヨーロッパ企業の今回、情報開示のタイミング等々もお示しいただきましたけれども、開示されている情報が連結に限られているのではないかと。日本と、やはりそこの個別情報が出ている、出ていないは、大きな違いがあろうかと思います。そういったことも含めますと、適用時期の開始時期だけでなく、二段階開示の適用期間あるいは保証の範囲といったところも含めて、地に足のついた御議論を頂けると大変助かるところでございます。
2点目の、見積りの修正があった場合の訂正の考え方につきましては、訂正報告書の提出が必要なケースを限定するという事務局の案に賛同いたします。いかに合理的な線引きができるかというところが重要と考えてございまして、今現在、サステナビリティ情報の収集プロセスというところが、まだ企業の中で財務情報ほどはシステム化されておらず、皆様、リソースをいかに抑えていくかという努力をしているところでございます。そうした意味からは、やはり欧州の事例で、例えば訂正がどういう場合に行われている、どういうふうに報告されているといったところも検証いただくというのが、日本の制度をつくる上では有効ではないかとも考えてございます。
3点目の虚偽記載でございますけれども、やはり見積りが不確実性の要素を多く含むサステナビリティ情報ということを鑑みますと、発行体が萎縮しないようなセーフハーバーの整備ということが必要不可欠であろうと考えてございます。その際に、SEC規則案といったものを参考に頂いて、より具体的な文言を明記いただけるとありがたいと考えてございます。
また、重要な虚偽記載の発生の原因を解釈する際に、誤謬と不正を区別するというところの判断指標でありますとか、悪意重過失がなければ、刑事や民事の法的責任が問われないといった、国際的な観点からの整合性というところも御考慮いただけるとありがたく存じます。
4点目のEDINETのところでございますけれども、海外投資家にも利用しやすいという観点は非常に重要と考えてございます。その上で、日本特有の事情を考慮すべき事項があれば、国際的な調和と固有事情とをよく考えて、バランスを取っていただきたいと考えてございます。この辺りは、サステナビリティ情報だけでなく財務情報についても同様であると思ってございます。
最後でございますけれども、SSBJ基準とISSB基準との同等性、あるいはESRSとのインターオペラビリティの確保は非常に重要と思いますので、ぜひ金融庁と欧州当局あるいはSECを含めて、海外当局との連携を図っていただきたいと期待しています。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして日本公認会計士協会の男澤様、御発言をお願いいたします。
【日本公認会計士協会】
発言の機会を頂きましてありがとうございます。日本公認会計士協会の男澤でございます。私からも論点に沿って、意見、コメントさせていただきます。
1点目は、サステナビリティ開示導入のロードマップに関してでございます。SSBJ基準に基づくサステナビリティ開示及び保証の導入時期に関しては、保証の担い手の確保及び能力開発を円滑に実施する観点からも、制度の導入時期の予見可能性が高いことが極めて重要だと考えております。欧州もWave1は、CSRDは導入済みでございます。また、オムニバスパッケージでのWave1企業の適用延期は行われておりません。日本の資本市場が国際的に見劣りしないものとなることを確保する観点から、これまでのワーキング・グループでの議論を踏まえて、2027年度からSSBJ基準に従った開示の導入、翌2028年度からの保証の導入という、当初のロードマップに従って進めていただくことが適当であると考えております。
なお、先日の保証専門グループでも複数の委員から御発言がございましたが、当初のワーキング・グループで提示しているロードマップ案に沿って進める場合、制度手当ての時間等を考慮いたしまして、保証の担い手の方針をワーキング・グループにおいて早急に示していただくことも重要であると考えております。
2点目です。EDINETタクソノミの開発の方向性に関してでございます。タクソノミについては、情報の利用者、作成者、そして監査人の利便性・効率性を確保していただくことが重要だと考えております。こちらを踏まえた上で、御提案の方向性に賛同いたします。
SSBJ基準がISSB基準と高い水準での整合性を確保しており、ISSBタクソノミの利用が可能であること、またISSBタクソノミを採用することで、電子開示システムなどの特定のシステムに依拠することなく、他法域の企業との企業間比較の確保がデータレベルで可能になるメリットが考えられます。加えて、基準設定団体であるIFRS財団が、デジタル開示を標準化するためのタクソノミを開発している意味を踏まえますと、サステナビリティ基準の適用とその基準に対応したタクソノミの採用はセットとして考えていくことが適当であり、両者をセットとして導入していくことは、企業間の国際的なインターオペラビリティの実現につながるものと考えております。金融庁独自のサステナビリティタクソノミに関しても、ISSBタクソノミと競合しないような設計をしていただくことが必要であると考えております。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、オンラインで御参加いただいております関経連の中島様、御発言ください。
【関西経済連合会】
関経連、中島です。よろしくお願いいたします。私からは、22ページの論点に沿って申し上げます。
まず冒頭の最初の論点について、2点申し上げます。1点目は、諸外国の動向を参考に、我が国でも国際競争力を損なうことのない制度設計を行うべきということです。例えば、欧州では、CSRDのオムニバス法案で、開示要求及び保証の取扱いを緩和する方向性の議論がなされているように見受けます。我が国においても、諸般のバランスに配慮しつつ、現実的な案の策定を行うべきであると考えます。
2点目は、これまでの議論や国際情勢の変化を織り込んだ資料としていただけるとありがたいということです。今後も国内外の変化を踏まえた柔軟な対応のためには、常に最新のロードマップ案をアップデートし、関係者と認識をそろえながら議論を進めるとよいのではないかと考えます。
また、CSRDのオムニバス法案でセクター別基準の開発中止が検討されていることは、ISSBをベースに検討が進む我が国の制度にも将来影響する可能性がある事項のため、2ページ目のEUにおける検討状況の概要に記載があるとよろしかったのではないかと考えております。
次に、2点目の論点であるサステナビリティ情報の訂正の考え方について申し上げます。10ページの図についてですが、こちらの図に、見積り値を確定値に更新する場合の記載がないため、更新の場合には、訂正の日が翌年度の有報ではなく、半期報告書または臨時報告書で更新するような取扱いの記載があるとよいと考えます。
次に3点目の、虚偽記載等の責任のあり方については、既に議論している論点ではありますが、セーフハーバーや確認書について具体的な中身の議論を深めるべきと考えます。例えば、セーフハーバーにつきましては、第4回・第5回ワーキング・グループの議論を踏まえた現時点の最新の案を示していただき、その内容について議論を深めるとよいのではないかと考えます。その際、海外のセーフハーバーの規則の詳細を掲示するなど、議論のベースとなる資料を掲載しておくべきと考えます。
4点目の論点でありますEDINETタクソノミ開発の方向性についてですが、複数のタクソノミが混在することによる問題が生じないか、慎重な議論が必要であろうと考えます。資料に記載された方向性を取った場合に得られるベネフィットと、考えられる懸念点を、提出者、利用者それぞれの立場で整理した上で、丁寧な説明をお願いいたしたいと考えます。
最後、5点目の論点について2点申し上げますが、この論点についてはもう少し詳しい分析資料が必要だと考えております。
1点目は、SSBJ基準の適用に、適用時期や開示内容、経過措置や一部修正があるということを、開示規則などで明らかにする必要があるという点です。この点は、経過措置や修正の内容を含む慎重な議論をお願いしたいと考えます。
2点目は、SSBJを正式な開示基準として金商法令に取り込む上では、国際基準と比べて我が国が詳細に開示している事項についても併せて見直しを行い、全体として整合性の取れた内容としていただきたいという点でございます。
以上となりますが、昨今、企業の開示情報が多元的となる中、十分な御配慮を頂いた上で現実的な案を策定いただきますよう、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
オブザーバーの方で、ほかに御発言を希望の方はいらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございますか。
まだ少し時間が残っておりますので、もしよろしければ、委員、オブザーバーの方も含めて、2回目の御発言も歓迎します。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。清原委員、どうぞ御発言ください。
【清原委員】
1つ、リクエストという形になりますけれども触れさせていただきますと、保証の話をするときに、どうしてもコネクティビティといったことをもって、やはり監査人のほうが保証業務の実施者としていいのではないかというふうな意見が多く述べられております。SSBJ基準が確定したばかりのところですので、財務的な影響などについて実際にどういうことが記載されていって、それは監査人でなければ、きちっと保証ができないのかどうか、ということについて、やはりきちんと考えなければならないのではないかな、と思っております。やはり、財務諸表、財務情報というのがメインであり、サステナビリティというのは、ある種、それをサポートする、補助するものだと。そうでありながら、本体である財務情報と同じレベルのものを求めるということになるとすれば、私はやり過ぎになるのではないかと考えるところもあり、そこも含めて、投資家サイドが、では短期・中期・長期と情報が出てくるときに、どの程度の確度をもって保証されるということまで求めているのか。そういったことが、ある程度、具体的に、事例も含めて検討することによって、ここでの議論というものが抽象的な議論でなく、具体性を持ってできるようになるのではないかと。やはり、保証という制度を新しく導入するに当たって、対象となるものがどういうものなのかに関して、まだ十分に理解が共通になっていない部分もあるのではないかと考えるからです。
補足的に、私自身の個人的な見解ですが、少し述べさせていただくと、会計や監査についての専門ではないのですけれども、監査の世界というのはまず簿記があり、そういったものをベースに、かつ期首の数字がきちっとしていないときは、過去に遡ってきちっとやり直すというぐらいの厳格性が求められている、そういった連続しているものだということが、大きな特徴としてあるかと思っています。公認会計士の方々には当然と思われていると思うのですけれども、それがサステナビリティの今回の定量的な情報というのは、そのような財務情報と比べて、そこまで厳密なのかどうか、というところも含めて本当は考えたほうがいいのではないかと。外部の者でありますけれども考えているところもあり、同じであればいいという意見は、言うのは簡単ですけれども、本当にそこまで重要なのかと。虚偽記載のところもそうなのですけれども、ではサステナビリティの情報で虚偽の記載があったときに株価にどういう影響があるのかと考えたときに、全てに重要性があるものではないのではないか。ですので、責任の話ということでいうと、企業の方も委縮とおっしゃるのですけれども、果たしてそれが本当に損害賠償を含めた責任にどれだけつながるかというと、サステナビリティ情報は財務情報と比べるとやはり大きく違うのではないかと。ただ、業種によってそれが非常に重要な場合というのは当然あるかと思いますので、そういった違いも含めて考えたときに、では制度を設計するに当たって、どういうふうに実態というものを、実質というものを見ていったらいいのか。ここはやはり少し共通の認識を持てるようなデータですとか事例ですとか、そういったことを挙げていただくとよいかと思っています。
今回頂いた資料の中で、EUにおいて監査人がサステナの保証も行っている事例が非常に多いというのは、実例として挙がっております。他方、日本の国内において、大規模な上場企業の方々の中で、監査人以外に検証をNon-PAの方々にやって頂いている企業というのも非常に多いのだろうと思っています。これは、過去のワーキング・グループ資料の中で出していただいていたところですが、その違いがどこにあるのかということについて、まだよく分からないところもあるので、制度のあり方を議論していくうえで、やはり、より具体性のある話を進められるように、何か資料についても御準備いただければと思います。大変かと思うのですけれども、ぜひ御検討いただければと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございました。ほかの委員の方から御発言、あるいは、ただ今、清原委員から非常に根源的な御発言を頂きましたけれども、清原委員の御発言に対する御意見等がございましたら、併せてお伺いできればと思います。ほかの委員の方で御発言の希望はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ほぼ予定した時刻になりましたので、本日はここで討議を終わらせていただきたいと思います。本日の御議論、大変建設的な御議論を頂けたと思います。次回以降、さらに御議論を進めてまいりたいと思います。
最後に事務局から御連絡事項がございましたら、お願いいたします。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。
次回のワーキング・グループの日程でございますけれども、後日改めて事務局から正式な御案内をさせていただければと思います。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。大変御多忙のところ、御参加いただきありがとうございました。
―― 了 ――
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