金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第7回) 議事録

  1. 日時:

    令和7年6月5日(木曜日)15時30分~17時55分
  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【神作座長】 
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」第7回会合を開催いたします。皆様におかれましては、大変御多忙のところ御参集いただき、あるいはオンラインで御参加いただき、誠にありがとうございます。
 本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、本日の会議の模様も、前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。
 なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 会議を始める前に、事務局から留意事項をお願いいたします。
 
【野崎企業開示課長】 
 事務局を務めさせていただきます金融庁の野崎でございます。どうぞよろしくお願いします。
 本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンライン会議で御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛にお名前を御記入ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には冒頭にお名前をお願いいたします。
 なお、対面での御参加の委員におかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。その後、事務局が手持ちマイクをお持ちしますので、そちらのマイクを御使用いただけますと幸いです。
 なお、御発言後は名前のプレートを元にお戻しいただくようお願いいたします。
 
【神作座長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、これより議事に移らせていただきます。
 本日は、本ワーキング・グループでの議論を受けて設置されました、サステナビリティ情報の保証に関する専門グループの座長でいらっしゃいます堀江委員から、同専門グループにおけるこれまでの議論の状況について、資料1に基づいて御報告をいただきたいと存じます。
 続きまして、事務局から資料2について御説明をいただいた後、質疑応答及び討議を行ってまいりたいと存じます。
 それでは、堀江委員、資料1についての御報告をお願いいたします。
 
【堀江委員】
 どうもありがとうございます。堀江でございます。それでは、私のほうから御報告をさせていただきます。
 昨年12月の本ワーキング・グループにおきまして保証専門グループの設置が決定され、本年2月以来、4回にわたりまして専門グループを開催し、議論を進めてまいりました。
 まず、お手元資料1の1ページ目を御覧いただきたいと思います。上の薄い網かけ、専門グループにおけます議論の途中経過の報告と、下の薄い網かけ、ワーキング・グループにおけます議論に資するための専門グループの意見に分けて、議論されました主な論点が示されております。
 保証の担い手につきまして、ワーキング・グループにおきまして、監査法人またはその他の保証業務提供者を想定するという方向性が事務局より示されたため、専門グループにおきまして、企業や情報利用者のニーズ、さらには海外動向なども踏まえまして、様々な角度から、保証業務実施者に求められる規律の在り方に関する各論点についての議論を行ってまいりました。
 しかし、保証の担い手と求められる規律の在り方は切っても切れない関係にございまして、今、御覧いただいております1ページ目の下の薄い網かけにある、保証業務の担い手をどう考えるかによって、上の薄い網かけとしてお示しさせていただきました保証業務実施者に求められる規律の在り方、ひいては保証業務を行うに際して求められる要件に、大きな影響が及ぶものと考えられます。
 そのため、本ワーキング・グループにおきまして、まずは保証の担い手、また、できれば保証対象範囲等の方向性、または枠組みについて御議論いただき、それを踏まえた上で、保証専門グループにおきまして、具体的な保証業務の担い手を前提とした場合の登録要件、自主規制機関の在り方、検査・監督の在り方をはじめ、その他取り残しました細かな論点についての議論を深めたいというふうに考えております。
 なお、保証専門グループでは、保証業務の実施に際して求められる規律の在り方につきまして、様々な論点について幅広く議論を重ねてまいりましたことから、その詳細につきましてはお手元の資料をもって代えさせていただき、本日は、専門グループでもおおむね御了解をいただいた、業務制限、義務・責任の在り方、保証基準の策定、任意保証の方向性等についての説明は割愛させていただき、保証業務の担い手、それに関連する登録制度、それから、検査・監督、自主規制機関に関する議論の状況にポイントを絞って御報告をさせていただきます。
 まず、保証の担い手でございます。資料のずっと後ろのほうになりますが、34ページ目、35ページ目を御覧いただけますと幸いです。
 保証の担い手につきまして、専門グループでの主な意見を整理させていただくと、この34から35ページ目に記載のとおりでございます。
 御覧いただきますと明らかなとおり、考え方に大きな相違が見られるところでございます。そこで、「監査法人に限定すべきでない」「監査法人に限定すべき」「当面監査法人に限定してスタートするのがよい」といった3つにグルーピングをさせていただきました上で、ウエートに差が生じないように、事務局にてそれぞれ4つずつにポイントを整理していただきました。
 なお、保証の担い手をどう考えるかということは、登録制度、自主規制の在り方とも密接に関連いたしますので、これらの論点については後ほど少し詳しく御説明いたします。
 保証の担い手に関する主な意見は、34、35ページのとおりでございますが、時間の関係もございますので逐一お読みすることができませんので、各委員の御意見を私なりに端的に整理させていただくと、おおよそ次のようになるかと思います。
 まず、「監査法人に限定すべきではない」という御意見でございますが、これは監査法人の独占業務とする論理に乏しく、市場での競争を通じた質の高まりを期待すべきであり、企業に保証の担い手の選択肢が与えられるべきであって、また、既に行われている任意保証を考慮したとき、必ずしも監査法人に限定すべきではないということになろうかと思います。
 このような御意見でございますが、主に開示情報の作成者、つまり企業サイドでございます、それと公認会計士以外の保証業務提供者、法曹関係者からいただいたものでございます。
 一方、「監査法人に限定すべき」とする御意見でございますが、これも端的にまとめさせていただきますと、想定されている保証対象は財務情報とのコネクティビティが重視されるサステナビリティ関連財務情報に関する保証であること、また、既に有価証券報告書のサステナビリティ情報に対する通読・検討が財務諸表監査で行われていることから、監査法人に限定することが合理的であるということになろうかと思います。この御意見は、学者、公認会計士から寄せられたものでございます。
 実は第3案として、主体を組み合わせる御意見が提案されました。これはどういうものかと申しますと、当初の保証対象となる企業数、保証の義務化までの時間的制約などを考慮したとき、まずは監査法人からスタートし、適切なタイミングで監査法人以外の保証業務担当者への拡大を図ることが効果的で現実的であるとするものであります。
 これは主に、開示情報の利用者つまり保証結果の利用者、それから公認会計士、学者から寄せられた意見でございます。
 これ以外に、後ほど紹介いたしますお手元資料の登録制度の箇所に記載がある御意見でございますが、監査法人を主体としつつ、それ以外の専門家、これをチーム構成員として取り込んだり、組織体内外の専門家として関与してもらうという組合せの考え方でございます。これは主に学者からの意見でございます。
 なお、35ページ目の真ん中辺りに「その他」というのがございまして、そこに記載がございますが、保証業務の担い手を決める前提として、保証業務実施者に求められる規律の水準をまず議論すべきという御意見ですとか、欧州CSRDに対応する企業の負担を軽くする、重複を防ぐ点でも、欧州と同じレベルの保証とすべきとの御意見もいただいたところでございます。
 引き続きまして、資料のページが戻って恐縮でございますが13ページ目以降、13ページ目から16ページ目まで、登録制度についての記述がございます。
 まず、13ページ目でございますけれども、ここに全体像が示されております。これは保証業務実施者の登録要件としての業務管理体制について、事務局でおまとめいただいた全体像でございます。
 ごく簡単にポイントを絞って御紹介しますと、サステナ保証に関する専門性をいかに担保するかという視点から、適切な品質管理体制を整えた保証主体としての組織体制を前提として、保証業務を担う具体的な人的体制としては、外部の専門家の活用も含め保証チームを統括し、全体的な最終責任を負うサイナー、つまり保証報告書の署名者でございますが、その者に求められる役割や能力要件、及びその他の構成員のそれぞれに必要な要件を定める必要があります。
 このように、13ページ目の図の左側にありますように、適切な人的体制と品質管理体制、これを整えることが登録要件と考えられるということが示されております。
 ただいま御説明した大枠については、専門グループでも御理解いただいたところでございますが、実は13ページ目、今、御覧いただいている図の右側の点線枠のちょっと下のほうになります、濃いブルーで色がついておりますけれども、「人的体制としての業務執行責任者(サイナー)の能力要件」、ここにつきまして、事務局として具体的に提案させていただきました「公認会計士登録またはこれに準ずること」としている点については、次のように意見が分かれたところでございます。
 まず、14ページ目を御覧いただきますと、サイナーに公認会計士資格を求めるべきとする意見が記載されています。そのポイントを御紹介しますと、第1に、マテリアリティのある情報の絞り込み、財務情報とのコネクティビティ等に着目すると、財務諸表監査の知見が有用であるから公認会計士資格者に限定すべき、第2に、高い品質を確保した上で競争を図るためには、現時点でサイナーの能力を客観的に確認できる要件は、公認会計士資格・それに準ずるものと想定される。これは主に保証結果の利用者、つまり情報の利用者でございますが、それと公認会計士から寄せられた意見でございます。
 次に15ページ目は、サイナーに公認会計士資格まで求める必要がないとの御意見です。ここも幾つかポイントが示されておりますが、これも要約させていただきますと、第1に、企業側の選択肢、及び競争性から見て、公認会計士資格に限定すべきではない、第2に、公認会計士資格に限定することはハイスペック過ぎる。総体として業務実施者の能力を吟味すべきで、サイナーの適性としてサステナビリティについての十分な適性が求められていることから、保証業務の機能のみを資格要件とすべきではない。
 この公認会計士資格まで求めるべきではないとする御意見は、情報の作成者側の企業、それから公認会計士以外の保証業務提供者から寄せられた意見でございます。
 次に、16ページ目になりますが、ここで、全員に公認会計士資格を求めなくてもよいという意見が出てまいりました。
 そのポイントは第1に、複数のサイナーのうち最低1人を公認会計士または準ずるものとする考え方もあるのではないか。第2に、チームの唯一のサイナーか、あるいは普通のサイナーのうちの1名に求められる能力かに切り分けるべき。このような御意見は、主に情報作成者であります企業、それから法曹関係者からいただいた意見でございます。
 その他、なお、今後の海外の動向等も踏まえまして、将来的に見直すという視点が重要だといった意見もございました。これは主に情報作成者側の企業、それから学者からいただいた意見でございます。
 このように、保証の担い手、それから登録制度につきましては、「公認会計士に限定すべきではない」「公認会計士に限定すべき」という両極端の御意見と、折衷的な案を御提示いただいた意見に大別できるかと思います。
 折衷案も出てまいりましたので、何とか方向性だけでもと思いましたが、取りまとめ役である私の力量不足もありまして、3つの考え方、御意見を併記せざるを得なくなりましたことを申し訳なく思っております。
 次に、検査・監督、自主規制機関についてでございます、資料のページがあっちへ行ったりこっちへ行ったりで申し訳ございませんが、23ページ目、24ページになります。
 23、24ページになりますけれども、監査法人であるか、その他の保証業務実施者であるかにかかわらず同じものとする本ワーキング・グループでの方向性を踏まえまして、専門グループでは、行政機関は登録事務、保証基準の策定、検査・処分といった機能を担い、自主規制機関は実務指針の策定、研修の開催などの機能を担うという役割分担が想定されること、また、自主規制の役割を担う最もふさわしい1つの自主規制機関を認定し、運営主体については、効率性、費用対効果との観点から、保証業務実施者において検討されることが望ましいとの事務局案を提示させていただきました。
 このうち、専門グループで特に議論となり意見が分かれましたのが、保証業務の担い手と関連する自主規制の運営主体に関することでございます。
 これは、資料の25ページ目になりますが、幾つか案が示されておりまして、まず第1案、「既存の枠組みを活用すべき」との御意見であります。これは、自主規制機関が複数あると混乱するとか、社会的コストをかける必要はなく、効率性の観点から既存の財務諸表監査の枠組みを活用すべき、新設する自主規制機関では、指針の作成に時間がかかるとともに品質に疑義が生ずるため、経験・知見から日本公認会計士協会が適切だという、これは主に保証結果の利用者で開示情報の利用者の方、それから情報作成者である企業側の意見としていただいたものでございます。
 第2案は、「複数の運営主体を認めるべき」とする意見でございます。今後、保証の対象企業数が増えてくれば、自主規制機関は複数あってもよい。また、日本公認会計士協会は自主規制の対象が監査法人に限定されると考えられるところ、同協会を自主規制機関とすると、保証業務の提供者が限定されてしまう。これは、公認会計士以外の保証業務提供者、法曹関係者の方からいただきました意見であります。
 そのほか、先ほどの事務局提案では金融庁がかなりの業務を担うこととなるため、金融庁のリソースを懸念する意見が学者からございました。
 最後に、冒頭で申し上げさせていただきましたとおり、保証業務の担い手をどのように考えるかで、保証業務の実施に際して求められる規律の在り方に関する様々な論点が大きな影響を受けるため、ここに御紹介させていただきました専門グループでの意見を踏まえて、今後、事務局に再度保証業務の担い手などに関する論点を整理していただいた上で、ワーキング・グループにおいて御議論いただければ幸いでございます。
 以上でございます。

【神作座長】
 堀江委員、どうも御説明ありがとうございました。難しい論点につきまして、方向性を示し、また議論の分かれている論点については複数の考え方を摘示していただき、大変ありがとうございます。
 それでは続きまして、事務局の金融庁より、資料2に基づいて御説明をお願いいたします。
 
【野崎企業開示課長】
 では、資料2に基づきまして御説明させていただければと思います。
 まず、目次をお開きいただければと思いますけれども、本日、目次に記載の大きく3つの項目について御議論いただければと思います。まず1つ目がロードマップ案、それから2つ目が見積りの更新、それから3つ目がSSBJ基準の適用に係る用語の整理でございます。
 次のページ、2ページ目に行っていただきまして、昨年夏以降、御議論いただいていますロードマップにつきましては、1つ目の矢尻にございますように、国際的な動向や保証の検討状況等を注視しながら、時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業への適用開始時期を2027年3月期とすること等を基本線としつつ、柔軟に対応していくこと、それから、SSBJ基準を、国際的なベースラインとなるISSB基準と同等な基準として金商法に取り込むことというところについては、おおむね賛同をいただいているかと認識しております。
 また、企業が導入に向けた準備を進められるよう、タイミングを早く確定すべきというような御意見や、二段階開示につきましても、企業の習熟期間を確保するために、1年ではなくて2、3年は認めるべきといった御意見もいただいていたと認識してございます。
 3ページ目に行っていただきまして、こちらは何度かお示ししているロードマップ案でございますけれども、こちらに記載してございますように、SSBJ基準の適用につきましては、具体的にはⅰにございます時価総額3兆円以上の企業につきましては2027年3月期、それから3兆円未満1兆円以上の企業につきましては2028年3月期、それから1兆円未満5,000億円以上の企業につきましては2029年の3月期からの適用開始を基本とし、特にⅱとⅲの適用時期につきましては、国内外の動向等を注視しつつ、引き続き柔軟に検討するというような方針を記載させていただいているところでございます。
 それから保証につきましては、開示基準の適用開始時期の翌年から保証を義務づけることとしまして、保証の範囲につきましては、当初2年間はScope1・2、ガバナンス、リスク管理をすると記載してございます。
 保証の水準につきましては限定的保証としてございまして、前回御紹介させていただきました欧州のオムニバス法案におきましても、企業が将来的に保証にかかる追加的な費用負担を負うことがないことを明確にするという観点から、合理的保証への移行の検討は行わないということが記載されているということも踏まえまして、日本においても同様の考え方の下、合理的保証への移行の検討は行わないという点を今回、記載させていただいているところでございます。
 保証の担い手につきましては、本ワーキング・グループで引き続き御議論いただければと考えております。
 以上のロードマップ案の確定に向けて、本日御議論いただければと考えております。
 それから次の論点、5ページ目になりますけれども、ロードマップの確定に向けた関連論点としまして、二段階開示と同時開示というところをこれまでも御議論いただいてきたところでございますけれども、これまでの御議論も踏まえまして、6ページ目を御覧いただければと思いますけども、まず、経過措置としての二段階開示につきましては、これまでのワーキング・グループでの御意見ですとか最近の国内外の動向を踏まえ、SSBJ基準適用義務化の初年度の1年間にとどまらず、2点目の保証の導入時までとすることが適当と考えられると記載しております。
 これにより、下の注で記載しておりますように、ISSB基準の完全な導入とされる時期が1年遅れの2029年3月期となることが想定され、これによって同等性ですとか域外適用の影響というところが見込まれるので、こちらについてはしっかり注視していく必要があろうかと思っておりますけれども、金融庁におきましても引き続き、情報収集ですとか海外当局とのコミュニケーションを図りながら、こういった同等性評価ですとか域外適用に対する影響を可能な限りマネージしていくということを前提に、SSBJ基準に基づく情報開示の円滑な導入をより優先することが適当と考えられるということを記載させていただいているところでございます。
 2つ目の論点の、提出期限の延長でございますけども、こちらにつきましては、特に財務情報の開示が遅れることへの懸念を中心に、早期の情報開示を望む声があるというところと、あと、欧州では早いところだと期末から1か月半後といったところで、比較的早期に保証つきで制度開示が行われている実態もございますので、引き続き検討していくというところが適当というふうに記載させていただいてございます。
 続きまして、8ページ目以降でございます。こちらは前回のワーキング・グループでも、ヨーロッパのCSRDに基づく制度導入初年度から、欧州企業が期末からおおむね2、3か月以内、早いところだと1か月半から保証つきで開示できているという状況も踏まえまして、開示実務上の工夫に関連した御意見が寄せられていたところでございまして、我々のほうで一部事例を確認しましたところ、ここに記載しておりますように一部期間、あるいは一部拠点について、GHG排出量の開示において見積りを採用している事例、それから重要性の観点から、測定拠点の範囲を限定・特定している例というものが見られたところでございます。
 もちろん、これは欧州の基準に基づく開示例でございますので、SSBJ基準においても参考となると思われる事例を紹介しているものの、日本における実際の開示に当たってはSSBJ基準に従った開示上の判断を行うことが必要であるというのは、注の2に記載しているとおりでございますけれども、こうした事例も含め、様々なプラクティスを参照しながら、より議論を深めていければというふうに考えています。
 具体的な事例を御覧いただきますと、9ページ目でございます。こちらは一部の期間において見積りを採用している事例としまして、こちらは期末から1か月半後に開示を行っているKone社という事例でございます。活動データが四半期ごとに集計されておりまして、最後の第4四半期のデータは、第3四半期のデータに基づき推定しているということでございます。
 それから、期末から2か月後に開示しておりますBayer社の事例におきましては、最後の2か月分は推計値で対応していると。推計値は、必要に応じ今期の特殊データを反映した前年データ、あるいは今期のデータのアップデートに基づくとしてございます。
 次、10ページ目でございます。こちらは、一部の拠点において見積りを採用している事例としまして、Essilor Luxotticaという会社でございます。こちらは、Scope1につきましてデータ報告がなされていない拠点が全体の13%に相当するというところでございますけれども、こちらにつきましては従業員数に基づいた推定値を利用しているというところです。さらにリテール部門については、57%が実績値、残りの43%は冷房機器の有無ですとか店舗の面積に基づいて推定しているというところです。
 続きまして11ページ、これは測定拠点の範囲を絞っている例としまして、先ほども出ていましたBayer社です。こちらはScope1・2について、年間エネルギー消費量が1.5テラジュールを超える拠点をenvironmentally relevantというふうにしまして、これに該当しない拠点は全体のデータに大きな影響を与えないため、算定対象に含めないというような取扱いをしているというところです。
 12ページ目以降は、ガバナンスの開示例ですとか、13ページ目はリスク管理の開示例というところも御紹介させていただいておりまして、14ページ目、15ページ目は、当然ESRS、ヨーロッパの開示基準とグローバルスタンダードのISSB基準というのは異なるものですけれども、その両者の対応関係が分かるように、マッピングの資料をつけさせていただいております。
 以上がロードマップに関する事項でございます。
 続きまして、見積りに関する事項につきまして、17ページをお開きいただければと思います。
 こちらも前回のワーキング・グループにおきまして、サステナビリティ情報に係る見積りの修正があった場合の訂正の考え方につきまして、GHG排出量の測定において、合理的な見積りを使用している場合には、事後的に確定値が判明しても訂正報告書の自発的提出が必要となるわけではなく、翌期の有報の比較情報の更新等を行えば足りるというような考え方をお示しして、賛同を得られたと理解しております。
 他方で、GHG排出量以外の見積りについても検討すべきですとか、後発事象との関係を整理すべき、あるいは見積りが更新された場合の開示の在り方を検討すべきというような御意見をいただいたところでございます。
 次の18ページ目でございますけれども、こちらは見積りの更新に係る検討でございますけれども、まず、GHG排出量以外の数値の測定に見積りを用いることは可能というふうに考えてございます。
 さらに、前回のワーキング・グループで御議論いただいたb.のケース、すなわち、前年度の後発事象の期間が経過して、さらに有報を提出した後に確定値が判明した場合において、その確定値が判明したとの情報に重要性があると判断される場合には、翌年度の有価証券報告書の比較情報の更新等を行う必要があるというところですけれども、こうした場合に訂正報告書の提出が要るのかどうかというところの検討を行ったところです。
 この場合ですけれども、見積りに誤謬がなく、訂正報告書を提出する必要がない場合においても、比較情報による更新を待たずに情報を開示したいという企業のニーズもあり得るというふうに理解しておりまして、こうしたことに対応するために、有価証券報告書における見積り情報を更新するための制度的枠組を整備することも考えられるかと思っております。
 この点につきましては、さきの例で御覧いただきました欧州が、見積値で開示した後に確定値が出た後、どのような対応をしているのかということについて、事例調査も含め、企業の対応可能性ですとか投資家のニーズも踏まえつつ、今後検討していければと考えてございます。
 続きまして、21ページ目をお開きいただければと思います。最後のテーマでございますが、サステナビリティ開示につきましては、ロードマップに沿った義務的な開示というものもさることながら、義務化の対象となっていない企業、あるいは義務化がスタートする前から、基準に基づく開示を促していくというところも重要かと考えておりまして、任意適用の促進に向けた取組についてもこれまで御議論いただいていたところでございます。
 22ページでは任意開示の促進に向けた好循環という御議論もいただきましたし、23ページでは任意適用の在り方について、いろいろ御議論をいただいていたところでございます。
 そういうことも踏まえまして、24ページでございますけれども、改めてSSBJ基準が最終化されたこともございますので、このタイミングで有価証券報告書などにおけるSSBJ基準の適用に係る用語の整理につきまして御議論いただければということで、こちらの資料を準備しております。
 まず、大前提としまして、SSBJ基準では、サステナビリティ開示基準の全ての定めに準拠しない限り、サステナビリティ関連財務情報開示がサステナビリティ開示基準に準拠していると記述してはならないとされている、これが大前提でございます。
 これを踏まえまして、SSBJ基準の全ての定めに準拠し、かつ金商法令に基づいて有報において開示する場合のみを「適用」と定義することが適当だと考えてございます。
 その「適用」の中身も分かれておりまして、企業の属性ですとかタイミングに応じて、まず1つ目は、適用を義務づけられている企業が適用時期に開示を行うというところ、このオーソドックスなパターンが「強制適用」、それから、適用を義務づけられている企業が適用時期を早めて開示を行う場合、これを「早期適用」、適用を義務づけられていない企業が開示を行う場合、これを「任意適用」と呼んではどうかと考えております。
 他方で、有報においてSSBJ基準を部分的に参照して開示を行う場合ですとか、統合報告書などの法令外の媒体においてSSBJ基準に準拠し、または部分的に参照して開示を行う場合、これらを総称して「任意開示」としてはどうかと考えております。
 最後、26ページでございます。本日の資料で御説明させていただきましたロードマップ案、それから見積りの更新、それから最後のSSBJ基準の設定に係る用語の整理、こちらについていろいろと御意見をいただければというふうに考えてございます。
 私からは以上でございます。
 
【神作座長】
 御説明どうもありがとうございました。
 それでは、これより委員の皆様から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますが、全ての委員から5分以内で御意見等を頂戴できれば幸いと存じます。
 なお、本日の会議では、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで、事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。加えて、御発言の順番につきましては若干前後する可能性があると存じますが、あらかじめ御了承いただければと思います。
 初めに、本日御欠席の田代委員と高村委員より御意見を頂戴しておりますので、事務局から、まずは田代委員の御意見について御紹介をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 
【野崎企業開示課長】
 それでは、田代委員からの意見書でございます。
 まず1つ目としまして、適用時期についてでございます。
 時価総額3兆円以上の企業は2027年3月期からの適用開始を基本とする一方で、1兆円以上及び5,000億円以上の企業については柔軟に対応とし、適用時期の決定を先送りする案が示されておりますが、企業の開示準備を促進する観点から、これは適切ではないと考えております。
 その理由は、適用時期が不明確なままでは、企業においても準備作業への着手が遅れ、結果として制度の円滑な導入が困難となることが懸念されるためです。リソースの確保が難しいという企業の声に配慮された御判断と拝察いたしますが、制度導入においては、ある程度決め打ちで一定の方針を明示いただくことが重要であると考えます。適用時期が明確に定まることで、企業としても具体的な計画を立てやすくなり、結果として制度の実効性が高まると考えます。
 したがいまして、1兆円以上及び5,000億円以上の企業についても、従来どおりの適用時期をお示しいただきたいと思います。その上で状況を見て、変更が必要な事象が生じた場合には、その時点で再検討する形としてはいかがでしょうか。
 2つ目、見積りの更新についてでございます。
 見積りの数値の開示後に確定値が判明した際に、企業が自発的に情報を更新する場合、その開示媒体として臨時報告書を含む開示を活用することも一案ではないかと考えます。
 従来より、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいても、臨時報告書を含む開示の実効性に対する懸念が指摘されてまいりました。今回の制度改正を契機として、これらの活用を促すことで、重要な情報の開示が適時に行われる枠組みの整備にもつながるのではないかと期待しております。
 以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、高村委員の御意見につきましても御紹介をお願いいたします。
 
【野崎企業開示課長】
 それでは、高村委員からの意見について御紹介させていただきます。
 まず、1つ目がロードマップ案についてでございます。
 こちら、第6回会合で事務局から説明があったように、時価総額5,000億円以上のプライム上場企業のほぼ全てが、オムニバス法案による見直し後においても2024会計年度からCSRDの適用が開始される会社に相当することも考慮すると、1兆円以上、それから5,000億円以上についても、この適用開始時期が基本であることを明確にすべきであり、その上で、国内外の動向等を注視しつつ、基本を変える必要があるかを検討すべきと考えます。
 スケジュールの基本線を明確にすることは、開示を行う企業や保証を提供する者の準備に予見性を与え、準備を促していくために必要であるとともに、スケジュールの基本線が明確でないと関連する諸制度の検討が異なる時間軸で議論され、検討が混乱することを懸念します。
 事務局の説明の趣旨もそうであろうと考えましたが、重要な点ですので確認をさせていただければと考えます。
 2つ目、見積りの更新についてでございます。
 事務局の提案・整理に基本的に賛成いたします。見積りの利用の際、有価証券報告書提出後に確定値が判明した場合、翌年度の有報での比較情報において更新する対応で十分であること、そして、その前に見積りを更新することは任意であることが明確にされています。
 見積りの更新を任意で行うことについては、スライド18の図の記載にもありますように、あくまで見積りの変更に関する情報に重要性がある場合に行うものであることが、開示を行う企業にも保証を提供する者にもしっかり理解されるようにすべきであり、情報を更新するための制度的枠組を検討するに当たっても、それを前提として検討すべきと考えます。
 見積りの利用はGHG排出量にとどまるものではありませんが、同時報告の要請やScope3排出量の排出量算定において、多くの企業に利用される可能性があります。
 例えばGHG排出量算定に利用する排出係数がエネルギーを供給する事業者の事情で更新されることは現に起きており、まれなことでもありません。その場合、排出量の値は変わるものの、多くの場合、投資家の判断に影響を与えるという意味で重要性のあるものではないと考えます。
 この重要性の判断を前提とするものであることが徹底されないと、見積りの更新に当たって、開示する企業の負担が増えることになりかねないと考えます。
 以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまから、委員の皆様方から御意見、御質問をお出しいただければありがたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、御発言の意思を示していただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、井口委員、どうぞ。
 
【井口委員】
 御説明ありがとうございます。資料2の最終ページの御議論いただきたい事項について御意見させていただきたく思いますが、2点目・3点目につきましては事務局案に賛同いたしますので、1点目のロードマップ案等について御意見させていただければと思っております。
 最初は、資料の3ページのロードマップ案についてです。2つ申し上げたく思います。
 1つ目は、二段階開示の2年への拡大についてです。このサステナビリティ開示と財務諸表の開示のタイミングにつきましては、SSBJの基準策定の議論の中でも一つの大きな重要なポイントでした。そして、多くの議論を経た中で、財務諸表とのつながりの重要性の観点から、原則、同時開示を求めるということになっております。
 従って、利用者にとっては、この同時開示というのはとても重要な事項ですので、2年への拡大については、利用者からいろんな議論が出てくる事項とは思います。ただ、私としては、今後何十年にもわたるSSBJ基準の適用の、最初の2年間と限定されているということで、これには賛同したく思っております。これ以上後ずれしないように御検討いただければ幸いに思っております。
 2つ目は、時価総額別の適用スケジュールについてです。準備期間を考慮されて、2段階目の1兆円以上、3段階目の5,000億円以上の適用時期は柔軟に対応と資料に記載されておりますが、今ほど御紹介いただいた田代委員、あるいは高村先生がおっしゃったように、私も適用時期を明確にすべきというふうに思っております。少なくとも1段階目と2段階目、つまり1兆円以上の企業については同様の扱いとして、3段階目の5,000億円以上1兆円未満の企業についてのみ、引き続き柔軟に対応するということでいいのではないかと思います。
 この理由は、一つには、各々の段階に入る企業の開示状況を個別粒々に見ますと、1兆円以上の企業というのは、統合報告書などにおいて既に非常に優れた開示がされているということです。一方、1兆円未満の企業というのは、やや各社の対応に差が出ているというふうに認識しておりまして、準備期間への考慮ということで差をつけますと、やはり1段階目と2段階目の1兆円以上の企業を一つにくくって考えるほうが適切ではないかと思っております。
 もう一つの理由は、この資料の6ページにございますが、1兆円以上の企業に対して、ISSB基準と同等の基準――SSBJ基準になると理解しておりますが、このSSBJ基準が適用されることをもって、日本の資本市場が国際的にISSB基準の完全な導入がなされた資本市場とみなされるということになっています。従って、日本の資本市場の評価向上の観点からは、少なくとも1兆円以上の企業へのSSBJ基準の適用は確保する必要があると思っております。
 また、こういったことは、田代委員の意見書にもありましたが、なるべく多くの企業に早期にロードマップをお示しするということは、企業の準備の関係でも重要と考えておりますので、御検討いただければと思っております。
 次に、有報の提出時期についてです。
 御提案には賛同いたします。前回、欧州の大企業が既に同時開示、保証もつけて2か月で年次報告書を出しているということについて質問いたしまして、8ページから11ページに見積りの活用の事例を掲載いただきまして誠にありがとうございます。
 ちょうど今、株主総会前ということで、有報の総会前開示も含めて、企業の開示の実務をされている方と話す機会も多いのですが、事業報告と有報の開示のこの2つの作業があるということが、非常に作業を難しくしているという御意見が多いと感じております。見積りの活用とかの工夫もあると思うのですが、こういったことも欧州との差につながっているのではないかというふうに推察いたします。また、このことは、有報の提出期限だけではなくて、前段の、二段階開示を2年にするというような、こういった状況にもつながっていると思っております。
 従って、当面はお示しいただいた見積りの対応や二段階開示でしのぎながらも、抜本的には、事業報告と有価証券報告書の一体開示の実現というのが極めて重要になると思っております。
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【神作座長】
 井口委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、三瓶委員、御発言ください。
 
【三瓶委員】
 御指名いただきありがとうございます。三瓶です。私も26ページの議論のポイントに沿ってコメントします。
 まず一つ、事務局資料の3ページに示されている導入ロードマップの6つのポイントについて、基本的に賛同いたします。
 その上で、3ポツの二段階開示については、欧州のサステナビリティ開示基準と同等性を確保したいところなのですが、保証の導入初年度まで適用することができるようにというのも分かります。
 なので、制度としてはISSB基準の完全な導入が1年遅れるというふうに思われるところはありますけれども、ここは金融庁に頑張っていただいて、同等性への理解を国際的にも勝ち取るということと、あとは企業の対応にも期待したいと思っています。
 ですから、企業の対応次第のところもあるので、制度として、二段階開示を適用開始から2年間とする案は許容範囲というふうに考えます。
 4ポツ目、有報の提出期限の延長については、今、井口委員からもありましたけれども、総会前提出の議論もあって、ここは慎重に検討すべきというふうに思います。
 8〜15ページのお調べいただいた欧州企業の開示例は、開示タイミングや効率性を踏まえ、機関決定された重要性に基づくデータ集計など、様々な点で参考になると思うので、今後もこの辺について当ワーキング・グループで理解を深めていく運営をお願いしたいと思います。
 次に2点目の、見積りの更新についてですけれども、これは公表すべき訂正及び確定値について半期報告書を使った定期報告で開示するというのがいいのではないかと思います。
 そうすると、開示する側・利用者側双方が、次の半期報告書で、例えば確定値、または訂正が出てくることを予想できる、期待できる。だからタイミングが分かるんですよね。これは、3月末の企業でいうと半期報告書が10月中旬から11月中旬ぐらいに出てきますけれども、統合報告書はだんだん早くなってきていて、8月、9月に出ております。そうすると、確定値が統合報告書に出てきているという場合があります。
 そういうことも踏まえると、統合報告書、任意開示で出てくるのだけれども、その確定値が法定開示の資料では翌年まで出ないというのは、ちょっと気持ちが悪いなというのがあるので、定期報告で出てくるという期待を持たせるというのがいいかと思います。
 そういうふうにすると、これは自動的になるのだと思いますけれども、もしもその定期報告で開示する訂正部分がかなり大幅な訂正である場合には、企業としては、東証の適時開示にのっとって、タイムリーにアップデートする必要が出てくるのではないか。定期報告を見て確定値を確認するときに、あっと驚くような数字が出てくるというのは、よろしくないのだろうと適時開示が促される。したがって、定期報告を使うことになると、非常に滑らかな開示体制になるのではないかというふうに考えます。
 3点目の用語の整理については、第3回のワーキング・グループで指摘させていただきました。これを御検討いただきありがとうございます。
 今御提示いただいている「適用」の使い方、それと適用と任意開示の区別、これについて、この整備案については適切だと思いますので賛同いたします。
 せっかくこういうふうに明確化するのですから、有報の開示に際しては、「何々適用」を使っている、または、これは「任意開示」ですというように明記をしていただいて、利用者にそれが分かるような運用を整備していただきたいと思います。
 ここまでが論点なのですが、ちょっと全体に関係することなのですけど、その他という感じなのですが、3ページ目のポイントの6つ目、「保証範囲は当初2年間はScope1・2、ガバナンス及びリスク管理(3年目以降は国際動向等を踏まえ今後検討)」ということですけれども、ロードマップとしての書きぶりはこれでいいんですけれども、ちょっと懸念があります。
 懸念というのは、規制対応の目線中心で物事を捉えているというところです。本来の意味でのコネクティビティとか、機会、オポチュニティという意識が薄いのではないかということです。
 私が実際に経営トップの方と話すときに、「Scope3の把握というのはビジネスオポチュニティですよ」ということを申し上げています。これは、自社のサプライチェーンの上流・下流の取引先と共に状況を把握することによって調達や物流のプロセスを見直す、または製品の設計段階とかビジネスモデルそのものを見直す機会になります。
 なので、自社サプライチェーン内の企業とのこういった排出削減の協業から始まって、排出削減がビジネスになったり、また、自社サプライチェーンの外の企業への横展開、そういった機会を広げる可能性があります。
 こういうことを話すと経営トップの方は非常にびっくりされて、急に「そういうことか」と、だったらこれ大事じゃないか、というふうに変わるんです。
 なので、開示の負担とか、これをコストというふうに捉えて、コストセンター意識を持っている感じがありますけれども、積極的に状況を把握してビジネスに生かす、プロフィットセンターという捉え方へ経営者の意識が変わります。そうなるとリソースの配分も変わりますし、全然違うんですよ、対応が。
 なので、これを規制だからといって非常に嫌々、コストだ、リソースがない、だから海外の様子を見ながらゆっくり、みんながゆっくりやるのだったら私たちもゆっくり、とかというのは、全くそういうビジネスの戦略的な観点が欠けていると思います。
 なので、ちょっと、ここのワーキング・グループの本来の目的、アウトプットとは違うかもしれないのですけれども、そういう認識というかそういう意識を持っていかないと、規制対応のテクニカルな話ばかりになってしまうと思うので、もっと大局観を見ていかないといけないということを思います。
 これはいろんな一つ一つの問題を解決する、また議論する上でのベースになることかと思うので、あえて申し上げました。
 以上です。
 
【神作座長】
 貴重な御指摘ありがとうございました。
 それでは続きまして、柿原委員、御発言お願いいたします。
 
【柿原委員】
 川崎重工の柿原でございます。御指名ありがとうございます。今の三瓶委員の大局的な御意見の後で、非常に実務的な意見で申し上げにくくなってしまったんですけれども、幾つか申し上げたいと思います。
 まず、ロードマップについてです。二段階開示の適用期間を2年間とすることについて賛同いたします。作成者の習熟期間に配慮した案としていただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 他方で、同時開示の義務化に向けましては、有報の提出期限の延長は有効な手段と考えますが、現在企業にとって新たなテーマとなっております総会前の有報開示とサステナビリティ情報の同時開示を両立しようとした場合、株主総会開催日の後倒しが現実的な選択肢となってまいります。
 しかしながら、総会の後倒しには、株主名簿の確定に係るコスト増ですとか、取締役の人事などの重要な意思決定が遅れることでのマイナス影響等の観点で、慎重な検討が必要になるのも事実です。
 総会の開催を後ろ倒しとせず有報を早期に開示するために、米国の開示案を参考に、二段階開示を2年間だけの経過措置ではなくて、基本的な取扱いをするということも検討する価値があるのではないでしょうか。
 また、Scope1・2・3のデータ集計につきまして、9ページ以降に今日紹介されているような、欧州企業は一定期間の測定や一部拠点の測定において見積値を利用している事例は、とても参考にはなります。
 しかし、見積値を計算し、その後に確定値を計算するためには、相応の時間もかかってしまいます。二段階開示には、この課題を解消するメリットがあるという点についても触れさせていただきたいと思います。
 なお、サステナビリティ情報の同時開示と総会前開示を両立させるために、他の開示制度、具体的には株主総会前に有報を提出する企業には会社法上の開示を不要とする法改正を行うことですとか、第1クォーターの決算短信の取扱い等も併せて議論する必要があろうかと考えます。
 次に、見積りの更新の整理についてです。18ページに、「情報を更新するための制度的枠組を検討」と記載いただいておりますけれども、これは期中に見積り情報を更新したい場合には、任意で半期報告書または臨時報告書に記載することとし、重要な誤謬が発覚した場合のみ訂正報告書を提出するという取扱いが、シンプルでよいのではないかというふうに考えます。
 最後に、用語の整理について1点のみ申し上げます。24ページに記載されている、「任意適用」と「任意開示」の区別が明確になっている点などは非常によいと思います。
 そのほかにも、先ほどの見積りの修正の部分で触れました「訂正」ですとか「更新」なども含む、細かな用語の使い方についても整理していただけると、誤解がなくよいのではないかと思います。
 以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 ここで、オンラインでの御参加の小林委員、本日途中退席と伺っておりますので、もしよろしければここで御発言をお願いできますでしょうか。
 
【小林委員】
 小林です。早めに御指名いただきありがとうございます。
 私も、御議論いただきたい事項に沿って申し上げます。まず、2点目と3点目につきましては、事務局からの御提案で私は問題ないと思っています。さらなる検討をするポイントとしてもよいと思います。
 1点目についてですが、まず、二段階開示の適用を2年間とすることについては、1年目は初年度、2年目は保証の初年度ということで、妥当と思います。当初、2年間の保証がScope1・2と限定されていてScope3は入っていませんが、ここの部分については、ガバナンスとリスクの保証において、Scope3への対応の妥当性について検証していただくことが有効ではないかと思います。
 プライム全企業適用の時期についてはまだ203X年となっていますが、ここも明示されておいたほうが、全企業の準備を促進するという意味でよいのではないかと思います。
 それから、有価証券報告書の提出期限の延長についてですが、これは今、まさに有価証券報告書の株主総会前提出を促す発言と明らかに矛盾していて、市場に対して混乱させるものではないかと思います。
 これについては、株主総会の時期の後ろ倒しという観点に加え、実際に企業の話を聞いていますと、様々な開示が集中してくるので、そこに非財務情報まで加えるのになかなか時間が取れないという、リソースの確保が難しいという声を聞いておりますので、この辺りは総合的に、有報、それからその他の制度開示の簡略化ということも含めて検討する必要があります。そして有価証券報告書自体の全体の開示をできる限り早い時期に、今、3週間前というのが一つめどとなっていますけれども、実現するべく、調整を今後議論していくべきではないかと思います。
 ということで、基本的には、有価証券報告書の提出期限の延長ということについて、私は賛同しかねますが、そこの点については、株主総会前にどういう形であれば有価証券報告書を提出できるかという視点で、今後検討していただきたいと思います。
 以上です。
 
【神作座長】
 小林委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、オンラインで御参加の上田委員、御発言をお願いいたします。
 
【上田委員】
 上田でございます。御指名ありがとうございます。また、堀江先生からは専門グループの御報告を、御丁寧にありがとうございました。会議での意見が大きく分かれている中、丁寧に進めてお取りまとめもいただきましたこと、改めて重ねて御礼申し上げます。
 私も、御議論いただきたい事項に沿ってコメントをさせていただきます。
 まず、第1点のロードマップについてです。3ページについて、時価総額3兆円以上は確定しているというものの、それ以外のⅱとⅲの部分については、今後引き続き柔軟に対応と書いてございます。ほかの委員からも御意見ございましたけれども、このサステナビリティの開示、保証に関する企業経営サイドの意思決定でありますとか、体制整備、準備、さらにいうと情報利用者側の予見可能性ということも考えると、現時点において引き続き柔軟に対応という、時間的な余裕があるような状況ではないのではないかと考えます。
 むしろ、柔軟に予定を定めないとすることで実務上の混乱も生じるかと思います。しかも、恐らく該当する企業様においては、既に実務対応を想定した準備に入られているところが多いのではないかと推測します。したがいまして、このタイミングというのは、できるだけ早期に確定することが望ましいと思います。
 また、今、小林委員からもございましたけれど、203X年という時期に該当する企業群についても全く同じでございまして、まだ先だから余裕ありますねというような声も聞きますところ、決してそれほど余裕はないということもありますので、ここについても予見可能性があるような形で、できるだけ早くめどをつけていただけるとよろしいのかなと思います。
 保証についても、基本的にこちらは日本企業の国際的競争力というものを前提に考える必要があると思っております。この点、今、欧州のほうの動きも変わっていくということもありますので、限定的保証に限られるということで合理的保証への移行を行わないという方向性は望ましいものであろうと思います。
 さらに、この二段階保証につきましても、同等性評価とか域外適用という点を同様に考慮する必要があるということを踏まえますと、やはり2年というのが最大限の経過措置としては望ましいのではないかと思います。実務も、保証が実際に27年3月期の会社からどんどん始まっていく中で、定着していくのではないかと期待するところでございます。
 第2点目、見積の保証についてでございます。これも、見積に誤謬がなくて訂正報告書を提出する必要がないという場合において、比較情報による更新を待たずに情報開示したいという企業のニーズがあるというふうに御報告されていますが、これは投資家から見ても情報ユーザーから見ても望ましい取組であろうと思います。
 したがって、この見積情報を更新する制度的枠組をつくる、整備するという御提案には賛同いたします。こちらも具体的に御検討いただいて、どういう形になるのか、早い段階で分かるとありがたいなと思います。
 最後、用語の整理、こちらも事務局の御提案に賛同いたします。この会議に出ても、それぞれの用語が似て非なるものがあるなと感じますので、これは恐らく一般にもそのように理解されるおそれがあろうと感じます。大事なところですし、定義も違えば、制度上の位置づけも全く違うものでございますので、こういう混乱はできるだけ生じないほうがよいと思います。したがいまして、用語の整理、定義の明確化、その共有といったところについてもお進めいただければと存じます。
 以上です。ありがとうございました。
 
【神作座長】
 上田委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、会場で御参加の阪委員、その後、オンライン御参加の近江委員に御発言をいただきたいと存じます。
 まず阪委員、どうぞ御発言ください。
 
【阪委員】
 発言の機会をいただき、ありがとうございます。阪と申します。これまでの議論をまとめていただき、どうもありがとうございました。今までの資料に比べて論点や方向性が分かりやすく整理されており、感謝いたします。
 全体として、ロードマップの基本的な方向性や、限定的保証の方向として、二段階開示を2年間とすること、有価証券報告書の提出期限延長は引き続き議論すること、見積り数値に関する比較情報の更新の整理、情報の更新ニーズに対応した制度的枠組の整備などについてもお示しいただき、方向性に賛同しております。ありがとうございます。
 意見として2点申し上げます。
 1点目は、26ページの内容ではないのですけれども、今日報告いただきました専門グループの報告の中で、重要性の判断が要求されるとの部分について、その重要性は財務情報とは異なることと、サステナビリティと財務の両方の観点からの判断が要求されるという意味で申し上げましたので、こちらは補足をさせていただきます。
 2点目は、26ページの最後の点でございます。説明資料のスライド24ページで、任意適用、任意開示などの用語について整理をしていただきありがとうございます。基本的にこの整理でよいと思っております。
 1点、サステナビリティ開示基準の文言との関係で気になった点がございます。適用基準の67、68項で、基準の文章ですが、ただし、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で――ちょっと省略しまして――同時に報告しないことを容認している場合または任意開示の場合には同時に報告しないことができますという文章があります。この24ページの任意開示というのが、基準上の任意開示と同じであるのか、あるいは24ページの任意適用が基準上の任意開示と異なるのか、作成者である企業が悩まれるかもしれないと思いました。同時開示については作成者の関心が非常に高いところかと思いますし、任意適用、任意開示を促進するという観点からも、明確になるとよいのではと思いました。
 それから、例えば非上場企業であっても、規模も大きく、全ての定めに準拠する企業も出てくるかと思いますので、任意適用と任意開示の隙間にはまってしまう企業が出てくる可能性もあると思いました。24ページの下の任意適用の注2の一番最後に「等」というのを入れるか、あるいは別の区分にするかということも必要かなと思いました。私が誤解している部分もあるかもしれませんが、分かりやすくお示しすることが望ましいと思いますので、御確認いただけたらありがたいと思っております。
 最後にですが、これまでサステナビリティ開示は、企業の自主的な、先駆的な取組が実務をリードし、開示水準を向上させてきました。開示が一定のレベルに達し、また、社会的要請により強制開示に動く中で、強制適用企業が一部の企業であっても、バリューチェーンに連なる企業からの情報の入手可能性や信頼性を高めるためにも、任意適用や任意開示が促進されること、そして、開示を通して企業やビジネスが、適用対象企業だけではなく、全体としてサステナブルな方向に変革していくことを支援する制度であることが望ましいと思っています。スライド22で示されている好循環と開示の底上げを広く促進することに賛同しますとともに、それを支える仕組みであることが望ましいと思っておりますことを申し添えます。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【神作座長】
 阪委員、どうもありがとうございました。
 用語の定義統一について御指摘ございましたけど、今の段階で事務局からコメントございますか。よろしゅうございますか。どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、オンラインで御参加の近江委員、御発言お願いいたします。
 
【近江委員】
 近江です。御指名ありがとうございます。私も議論事項について意見を述べさせていただきます。
 まず、サステナビリティ情報開示につきましては、基本的に事務局の3ページに示されたロードマップ案に賛成いたします。適用開始時期を明確にすることは、多くの委員からも御指摘ありましたけれども、企業側の計画的な対応につながりますので、これは時価総額が3兆円未満で5,000億円以上の企業、2つのタイプの企業についても適用開始時期を明確にするということがまずは望ましいと、そのように考えます。その上で経過措置として、二段階開示は適用開始から2年間とすることで、円滑な適用を可能にするという措置に賛成いたします。
 私のほうから特に申し上げたいのは、財務情報と非財務情報の同時的な開示の意義に加えて、これを可能とするためのデータ管理のプラットフォームの開発がコンサルティング会社、SaaS企業などにおいて、グローバルで急速に今進んでいる状況であるということを踏まえますと、これは日本企業が後手に回らないためにも、示されたロードマップの期間において、同時開示に向けて取り組んでいく必要があると考えます。
 あと有価証券報告書の提出期限の延期につきましては、ほかの委員からの発言もありましたが、非常に慎重な議論というものが必要だと思いますので、ここは十分な議論につきましてお願いいたしたいと思います。
 次に、サステナビリティ情報に係る見積りの整理ですが、17ページの記載に賛成いたします。GHG排出以外のサステナビリティ情報につきましても、合理的な見積りを可能とすることにより開示が進むことを期待します。また、18ページで取り上げられております訂正報告書を提出する必要のない場合における情報のタイムリーな更新につきましては、ここは少し意見がほかの委員と違うところではありますが、利用者側の立場からは、あえて制度的な枠組みを設けずとも、企業側の任意の判断によって、ウェブサイトであったり統合報告書などで確定値を、適切な説明を加えて公表することでも足りるのではないかと、そのようには思います。特に利用者側の実務に照らせば、投資家サイドとしましては、サステナビリティ情報を利用する際には、有価証券報告書に加えて統合報告書であったり、サステナビリティレポート、ウェブサイトなどを確認するというものが通常でありますので、それらの媒体で情報が更新されているということにより、タイムリーな情報の把握は可能であると、そのように考えます。
 SSBJの基準の適用に係る用語の整理につきましては、明確なガイドラインに基づいた準拠表明を定義するために、「適用」という文言を用いて、任意適用と任意開示と明確に区別するということに、非常に分かりやすくなるということで賛成いたします。
 私からは以上になります。ありがとうございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、対面で御参加の関口委員、御発言をよろしゅうございますか。お願いいたします。
 
【関口委員】
 ありがとうございます。それでは、まず3ページのほうから発言させていただきます。
 まず、ロードマップ案を示していただいてありがとうございます。2点、このロードマップ案でコメントさせていただければと思います。
 1点目が、2番、3番の適用時期は、国内外の動向等を注視しつつ、引き続き柔軟に対応とされている点です。これは今の状況を踏まえると、多分一番現実的な書きぶりなんだろうなと思っています。ただ一方で、こうしているとずっと準備が進まないというのは確かでして、今はちょっと難しいだろうなと思うんですけど、年内ぐらいをめどに決めていただくのが一番いいのかなというふうに思っています。この点、コミュニケーションが非常に重要で、金融庁、あるいはほかの方から、明確に、いつ頃までに決めていきますとか、あるいは決まったらすぐに伝えていくとか、そういったコミュニケーションをしっかりしていただくのが非常に重要なのかなと思います。
 2点目が保証の範囲のところで、これも当初2年間はScope1、2、ガバナンスとリスク管理、3年目以降は国際動向等を踏まえて今後検討とされています。これまで私も保証専門グループに参加していますが、なかなかいろいろなことが決まらない状況です。決まらない理由というのは、保証の対象、保証の範囲が何なのかというのが決まっておらず、このため、その保証をやるためにどんな要件が必要かというのが決まらないと理解しています。保証の範囲の書きぶりは現実的なのだろうなと思うのですけれども、これだと保証の担い手がずっと決まらないんじゃないかなというふうに危惧しています。今はこの書きぶりが最大限なのかなと思うんですけども、どのタイミングか分からないですが、ここはもう決めていくしかないのかなというふうには思っています。それが3ページのところです。
 次に8ページに行きまして、CSRD開示の実務上の工夫で、まず、こういった実務上の工夫を御紹介いただいて本当にありがとうございます。非常にいい取組だなと思っています。今後実務を適用する際には、恐らくこういった実務上の工夫とか、あるいは誤解とかというのを明確に解いていく必要があるんだろうなと思っており、こういうことをやっていくと、恐らく不安というのも軽減される部分もあるのかなと思っています。
 もう一つ、これは開示の観点からの工夫なんですけれども、保証の観点からの工夫があります。この点、やはり早く関与するというのが一番工夫としてあるんだろうなというふうに、欧州の経験を聞いていても思います。具体的には、保証準備業務とかというのをやっていったり、あるいは期の途中、もう本当に初めの頃から企業側と対話して進めていくというのが重要な要素と思っていまして、こういうのも御紹介いただくといいんじゃないかなと思っています。
 それが2点目で、3点目が18ページに行きまして、見積りの更新に関する検討で、これに対応するため、有価証券報告書における見積り情報を更新するための制度的な枠組みを整備するというのが書かれていまして、これも恐らく制度的な枠組みを整備するとすれば、先ほど三瓶委員のほうからお話しいただきましたような、半期報告書における開示というのが一番現実的なのだろうなというふうに思います。ただ一方で、半期報告書は、本当は前年度末から起きた重要な変動というのを記載するというのが開示のコンセプトなのだろうと思っていまして、多分コンセプトには合わないんじゃないかなと思っています。そういう意味でちょっとどうなのかなと思うんですけど、それをやるとしたら、やっぱりデータベンダーと連携をして、ここに載ったらしっかりデータとしてベンダーが取り込んで利用されるような、そういった整備をしていただければいいのかなというふうに思っています。
 最後に24ページに行きまして、用語の整理ですけれども、これもおおむねは賛成ですけれども、一番下の任意開示の統合報告書等のところがどうかと思います。例えば統合報告書においてSSBJ基準の全てを適用した場合、これは私の観点からすると、任意開示書類におけるSSBJの適用なのではないかなというふうに思っていまして、ここはやっぱり有価証券報告書におけるSSBJ基準の適用というのと、任意開示書類におけるSSBJ基準の適用というのを分けて整理したほうが、英語にしたときにも多分そうしたほうが伝わりやすいのではないかなというふうに思っています。ちょっと細かいんですけども、検討いただければと思います。
 以上です。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、藤本委員、どうぞ御発言ください。
 
【藤本委員】
 藤本でございます。発言の機会をいただきありがとうございます。私も、この御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。
 まず1つ目のロードマップについてです。皆様から御意見ありましたとおり、この2つ目のポチ、時価総額3兆円からスタートし、1兆円、5,000億円と段階的に示されておりますけれども、やはりこの1兆円、5,000億円について、国内外の動向等を注視しつつ、引き続き柔軟に対応、というところが気になるところでございます。多くの委員からも既にコメントございましたけれども、私としましても、企業あるいは保証業務実施者の準備に大きく影響すると思います。制度の予見可能性を高めるためにも、適用時期は早めに明確化していただけるとよいのではないかと思っております。
 それから、二段階開示でございまして、こちらは適用から2年間ということで、保証の初年度に御配慮いただいたと認識しております。通常、適用開始から2年間というと、少し長めの印象というのは若干あるということもございまして、また、財務情報とのコネクティビティを踏まえますと、本来であれば保証のタイミングから、可能であれば同時報告を実現するということが望ましいのではないかと思っています。
 また、仮に2年間、二段階開示をするということになりますと、保証の初年度が関わってまいります。財務諸表監査の観点からいいますと、その他の記載内容に関する通読、検討の手続が、対象になるのかならないのか、実務上の検討課題になると思いますので、この辺りも整理をいただく必要があると認識しております。
 それから、保証範囲についてです。3年目以降、国際動向等を踏まえ今後検討とございますけれども、こちらも情報利用者のニーズがあくまでもどうかということではございますが、基本的には開示基準全体、全てに関して保証していくということが最終的なゴールとしては望ましく、その上での経過措置として保証範囲を限定しているという理解をしていますので、そういう意味では3年目から開示情報全てを保証対象とするということを前提にまずは考えて、その上でなかなか難しいというところがあれば、その点については、適用までに再度検討するという形も考えられるかと思います。特に欧州では全ての開示情報について限定的保証が実施されており、しかも一定の期間に終了しているという実務が見られていることから、改めて一考の余地があるのではないかと考えております。
 それから、CSRD開示の事例です。スライド8ページ目でございます。こちらは実務上の工夫として、企業におかれましても参考に資する情報であると思っておりまして、意義がある内容をおまとめいただいたと思います。ありがとうございます。一方で、開示情報はあくまでもSSBJ基準に従ったものになると理解していますので、必ずしもこの事例が全ての企業に当てはまるものではないと思っております。この辺り最終的な開示情報をどのように作成するかの判断は各企業が行うということを、改めてこの参考情報の利用の仕方として御留意をいただきたいと思っております。
 それから、見積りの更新、18ページ目でございます。こちらは、見積りの更新があった際に、情報をできるだけ早いタイミングで利用者の方にお届けするという速報性を重視する意味では重要な取組と思いますけれども、任意で開示をするということでございますと、そのための制度的枠組はどこまで検討していく必要があるのかと、若干そういう疑問もございます。
 なぜそう思うかといいますと、一つは、任意の枠組みとはいっても、情報の更新をすることがデファクト化したときに、各企業が、これは必ず開示をしなければいけないのではないかという、企業側の負担が生じてくるのではないかということですとか、あるいは、仮にですけれども、様々な見積りがあった場合に、何度も更新が実施されてしまうような状況や、それから、期中の更新の後に、翌期の有価証券報告書で比較情報がさらに修正されるような状況、保証を受けたら、結果としては、またさらに数字を変えなければいけないといった、そういう状況が可能性としては生じ得るのではないかと考えております。そういったもう少し具体的な事例も踏まえながら、慎重に御検討いただくのがよいのではないかと考えております。
 それから最後、24ページ目、SSBJ基準の用語の整理でございまして、こちらは前回の事務局の資料よりも大変分かりやすく、特に部分適用の場合を任意適用とはしないということを明確にしていただき、この辺は正確に整理いただいたと思っております。ただ、先ほども御指摘ありましたように、最後の統合報告のところでございまして、SSBJ基準に準拠している場合には、任意適用なのか任意開示なのというところは、用語の使い方が難しくなるところであります。今ここでは、制度開示の議論をしていますので、ここまで整理をする必要があるのかどうかというのはやや疑問に感じたところでございます。
 私からは以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかに御発言を希望される方、いらっしゃいますでしょうか。
 吉元委員、御発言ください。
 
【吉元委員】
 御指名ありがとうございます。では、私も論点に沿って意見させていただければと思います。
 まず導入ロードマップについてですけれども、3ページの事務局案に賛同いたします。投資家の要請や、欧州を中心とするグローバル企業の動向も踏まえつつ、他方で日本の発行体の多様なニーズや実務負担にも配慮した、全体的にバランスの取れた案になっていると感じているところでございます。
 企業実務の立場から少し申し上げると、27年3月期、3兆円超の企業の開示となると、来年の4月、26年4月からは、もうガバナンス、リスク管理体制を整備して、開示に向けて走り出すという必要がございます。その観点では、なるべく早いタイミングで法令改正が行われることを望んでおります。ですので、ロードマップ案というのは可及的速やかに公表される予定だとは思っておりますが、その後の法令改正、公布等のスケジュールも、大まかな目安でも結構ですので示してもらえると、実務としては対応しやすいのではないかと思っております。
 全体としては以上のとおりですけれども、ロードマップ案に関して、個別論点について2つ述べさせていただきます。
 1つ目は、有報の提出期限延長については今後継続検討ということですけれども、ほかの委員からもありましたとおり、総会前提出に関する大臣要請との関係についての整理は事務局にお願いできればと思っております。
 2点目、二段階開示についてですけれども、方針としてはこれで異論ないんですけれども、第4回のワーキング・グループで取り上げられたと記憶していて、そこで二段階目の開示媒体ですとか開示時期に関して議論があったところと承知しているんですけれども、どこかのタイミングで改めて、その考え方ですとかを整理して、共有していただければと思っております。
 それから、事務局資料のCSRD開示における実務上の工夫については、見積り方法や重要性基準の設定方法など、大変参考になり、ありがとうございました。今後もCSRDでの取組事例などを御紹介いただけると、投資家、企業双方にとって大変有益だと思われますので、よろしくお願いいたします。
 それから、見積りの更新についてですが、19ページの整理の大枠については異存ございません。その上で、19ページのaとbそれぞれについて、少しだけ触れさせていただければと思いますが、まずaの場合ですけれども、多くの見積りが含まれ得るサステナビリティ情報と、確定値を前提とする財務情報とでは、修正後発に該当する重要性の判断基準は異なってしかるべきではないかと考えております。事務局資料の欧州の事例でも、かなり推定値を活用しているところが見られるところでございます。
 確定値が事後的に判明した場合に修正後発に該当するケースが増えてしまうと、いつまでたっても保証をつけて有報を提出できないということも起こり得て、提出遅延申請が頻発すると。そうなると、もう企業だけでなく、投資家も当局も困るということにもなりかねませんので、例えばですけれども、サステナビリティ情報においては修正後発に該当するケースは限定的と考えられるといったようなガイダンスを示すことも一案でないかと思っておりますし、それがもしちょっと当局として踏み込み過ぎだということであれば、せめて修正後発に該当すると考えられるケースを例示的に示すということも考えられるのではないかと思っております。
 続いて、19ページのbの場合ですけれども、この制度的枠組としては、ほかの委員からもあったとおり、半報ということが想定されるのかなと思っているのですが、COの排出係数など、国によっては半報提出期限より後になって判明するというケースもありますし、半報でアップデートするかどうかはあくまで任意という建付けとされて、企業の実情に応じて、半報ではなく翌年度有報における比較情報の更新という方法も選択できるような制度とすべきであると思います。統合報告ですとかサスレポといった任意の制度もありますし、重要性がない情報のアップデートをあまり法規制で縛り過ぎないほうがいいのではないかと思っております。
 半報で更新するとした場合も、有報の比較情報を更新する場合も、保証をどうするかということについて、問題はついて回ると実務的には思っておりまして、そこで保証の取り直し、出し直しということが必要となると、結構現場の負担は相当になると思われますので、保証の出し直しというのが要求されるのが訂正報告を出す場合に限定されて、半報や有報で過年度数値を更新する場合には再度の保証は不要であるということを明確にすべきではないかと思っております。
 最後に用語の整理についてですが、25ページの整理は大変分かりやすく、基本的に異存ございません。細かい点というか、私がちょっと分かっていないだけかもしれないですけれども、適用義務化以降2年目までに経過措置として認められる二段階開示をした場合というのは、この表でいうところの任意開示に該当するという整理なのか、それとも強制適用の定義にも該当するのか、両方に該当するのかもしれないですけれども、どこかで整理していただければと思う次第です。
 以上です。ありがとうございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、オンラインで御参加くださっております松井委員、御発言ください。
 
【松井委員】
 私は、このロードマップ案の3兆円からの導入時期、二段階開示について2年間程度認めるとの方針等については、妥当ではないかというふうに思っております。企業の努力期間として、この程度の試行錯誤の時間というのが妥当なのではないかということでございます。一部拠点、一部期間についての見積りというような組合せのやり方という御紹介をいただきまして、総会前開示に間に合わせるという点で実務がどの程度工夫ができるのかということを見ていく上でも、非常に適切なのではないかというふうに思っております。
 保証に関しても、制度がどのように組まれるのかということがまだ分からない部分がありますけれども、制度が組めれば、この御提案の開始時期に開始するということについて異議なく、また、2年間について保証内容が限定されているということについても、私も先ほどの御報告の中で第3案のようなものをつくるのがいいかなと思っているんですけれども、そうするとチーム編成など、習熟するのに若干時間がかかるのではないかというふうに思っておりますので、保証内容を少しずつ詰めていくという、2年間限定というのも妥当ではないかと思っております。
 保証手順がこれで実施できるのかとか、あるいは開示実務が習熟するのかということがちょっと不透明なので、最終的に提出期限延長であるとか、あるいは総会時期の変更などに係る抜本的な制度の提案といったことにつながるのかどうかという点については、2027年度開始という列車に乗せるように議論をするということよりは、取りあえずはこのような議論でまず進めるということではないかと思いました。
 議論の仕方について、企業が始められるように、なるべくタイムテーブルを明らかにした議論が必要だということを複数の委員から御指摘いただきまして、そのとおりであろうというふうに思っております。導入の時期あるいは保証の範囲など、最終的にここに持っていきますという、信頼がある、そういうキーポイントというものが幾つかあるのではないかという印象を持っており、最終形をそういったところについては答申をする必要があるかなと思っております。他方で、そういったものをつくりながら、短期的なロードマップを修正しながら、繰り返して段階的に制度を更新するとならざるを得ない部分というのもあるのかなと思っておりますので、こことここを押さえておくのが大事だろうと思う部分について外さないという、そういった対応のやり方、議論の仕方というのが有益ではないかというふうに思いました。
 次に、見積りの更新について、より正しい情報を出したいという企業のインセンティブは非常に正当なものですし、訂正という形でなく、なるべくそういったものを入れてあげたいという方向性について皆さん妥当だというふうに考えておられ、こちらは一致しているのではないかと思いました。私も事務局の整理というのが妥当かなと思っていたわけですけれども、やはり重要性に該当した場合というときに、訂正報告書の出し直しということについて疑義が残るということで御指摘もあったということがありますので、こういった御指摘について改めて考える必要があると感じました。
 次に、用語の定義について、方向性を示していただけたことは非常によかったかなと思っております。「適用」という言葉は何となく、金商法が適用されるということなので、SSBJ基準及びその法令に従って有価証券報告書上の開示がなされるということで、それに伴い金商法上の責任が全面的にかかるという、そういった考え方を意味しているのかなと思っておりまして、そうすると任意開示というのは、一部の基準しか準拠していない情報について有価証券報告書に載せるということになるので、通常の責任体制と少し異なってくるかなと思いまして、そういった場合に、任意開示であって、任意適用を選択するものではなく、特にこの部分の記載についてはSSBJに準拠していないといったようなディスクレーマーがあるということが有益ではないかというふうに感じました。
 本日御提案の事務局資料については以上であります。
 
【神作座長】
 松井委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、会場に戻りまして、森内委員、浅川委員、芹口委員の順番で御発言をお願いいたします。
 初めに森内委員、お願いいたします。
 
【森内委員】
 ありがとうございます。私からも、御議論いただきたい事項に沿って、3点意見を述べさせていただきます。1点目が6ページの有価証券報告書の提出期限の延長、2点目が25ページの任意開示、最後3点目が、ちょっと戻りましてロードマップ、3ページ目という順番で行かせていただきます。
 まず、6ページ目でございます。有価証券報告書の提出期限の延長のところです。最後の一文の「引き続き検討していく」という、この検討の方向性について、もう少し明確にしてもよろしいのではないかと思いました。先ほど事務局からもお話ありましたように、欧州においては比較的早期に情報開示が行われているということもございますし、先月IFACから発表されておりますサステナビリティ情報の開示と保証に関する5年間のレポートを見ますと、アジア・パシフィックの中で、日本の保証と監査の間のギャップ、日数がかなり大きいということもございます。それから、今日報道でも出ておりましたけど、総会前に有価証券報告書を発行する企業の数が飛躍的に増えたという流れもある中で、この「引き続き検討」というのは提出期限の延長ありきの検討ではないのではないと感じておりますので、その辺りもう少し明確にしてもよろしいのではないかと感じました。
 続いて2点目が25ページです。既に多くの委員の方々から御意見ありましたが、用語の整理の一番下の任意開示、それと、一番下から一つ上の任意開示、この2つの違いを明確にする必要があるだろうと思います。これもIFACのレポートによりますと、日本においては統合報告書等での開示の比率が非常に多いということもございますので、企業によっては非常に野心的な目標を設定して、高い水準で保証を求めたり、あるいはSSBJ基準の全てに準拠して開示をしていく企業もいらっしゃるかと思います。これは時価総額に関係なく、そういったケースもあろうかと思いますので、同じ任意開示であってもそういった先進的な任意開示の姿勢を取られる企業の開示がもう少し分かるように用語を整理するとよろしいのではないかと考えます。
 それから最後は3ページに戻りまして、真ん中の保証の部分です。これは私も専門グループに参加させていただいておりますけども、いろいろ立場の違いがあって議論がなかなかまとまらなかったということで、堀江座長には大変御迷惑をおかけしているなと感じます。今後議論を深めていく中で、保証業務をどちらがやるかとか、誰がやるかというよりは、誰がやるにせよ、人的な体制、業務管理体制、保証を実際にやるチームなり担い手が、どういう水準で、どういう登録要件で、どういう研修が必要なのかというところを深掘りしていく必要があるのではないかと考えます。
 そういった意味では、先進的な取組をしているフランスの例をもう少し調べていく必要があるのではないかと思いますし、サステナビリティ保証のニーズは、有価証券報告書以外にも、例えばGX-ETS(排出量取引制度)ですとか、ほかの制度でも様々これから出てくると思っております。私どもISO規格で認定をしている法人としても、どういった力量がこのサステナビリティ保証を行う要員に必要なのかという視点で今年度少し調査をしていきたいと考えておりまして、もし間に合えば、ぜひ情報共有をさせていただく機会がいただければと思っております。
 私からは以上です。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、浅川委員、御発言をお願いいたします。
 
【浅川委員】
 御指名いただきましてありがとうございます。JQAの浅川でございます。専門グループの御報告と資料の御説明いただきまして、ありがとうございました。私からも、26ページの御議論いただきたい事項に従ってコメントさせていただければと思います。
 初めに、3ページに示されたロードマップ、併せて二段階開示の適用期間2年にするということ、あるいは有価証券報告書の提出期限の延長についての引き続きの検討等について、基本的に事務局の御提案に賛同いたします。また、国際的なサステナビリティ開示基準との同等性の影響の注視も含めて、SSBJ基準に基づく情報開示の円滑な導入を優先するという方向性もよろしいのではないかと思っております。
 そんな中で、専門グループのほうの資料にもございますが、ワーキング・グループにおける議論に資するための御意見という中に、37ページになるかと思いますが、その他御意見の中で、ロードマップについての御意見というのも専門グループでも大分いろいろ出ていたかと思います。ですので、先ほどお話しさせていただいた事務局案にあるSSBJ基準に基づく情報開示の円滑な導入というのをまず初めに優先していくという方向性も踏まえると、そういった意見で出てきている、特に事業者からの御見解ですとか御不安等にも配慮した、実務的にはきめ細かな対応というのをぜひ進めていかれると望ましいのかなというふうに思いました。
 次に、サステナビリティ情報に係る見積りの更新の整理というところにつきましても、基本的に事務局様の御提案に賛同いたします。18ページの内容ですと、実際に実務的には、見積りの状況に応じて、その先の対応というのがいろいろ変わってくるということも考えられるようですので、実際のところで、例えば重要性の具体的な判断事例等、これもどなたか御意見あったと思いますけれども、判断のばらつきとか、そういったところを減らすという意味で、そういった事例をいろいろ集めてくるとか整理しておくというところは大事なところなのかなというふうに思います。
 それから、有価証券報告書における用語の定義、用語の整理のところですけれども、これも関係者間での共通認識というところは、どなたか委員おっしゃっておられましたが、非常に大事だと思いますので、この用語の整理は必要かなというふうに思っております。まず一旦こういう形で整理していただいたということで、本当に分かりやすくなったかなと思いますし、幾つか意見も出ておりましたが、より必要な用語がもしあれば、より細かい解像度で整理を進めていただくということで、事業者も含めて、制度管理者も含めて、保証業務の担い手も含めて、みんなの共通用語になるところですので、なるべく分かりやすい用語というところで引き続き整理をいただけるといいかなというふうに思いました。
 私からは以上になります。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、芹口委員、御発言ください。
 
【芹口委員】
 ありがとうございます。それでは、御議論いただきたい事項につきまして、順にコメントさせていただきます。
 まず、ロードマップにつきまして、今回、時価総額1兆円以上、5,000億円以上の適用時期につきまして、引き続き柔軟に検討という案をいただいておりますが、少なくとも時価総額1兆円以上につきましては早期に固めていただく必要があるのではないかと思っております。
 第1に、適用対象企業の拡大ペースは1年ずつが理想ではありますが、実務の対応状況を考慮して検討する余地はあると思うところですが、やはり今日もたくさんの委員の方の御意見がありましたとおりで、準備期間があるというところでございまして、ワーキング・グループの最終報告書が遅くならない前提ではありますが、最終的な報告書を公表するまでには確定する、あるいは適用時期が先の時価総額5,000億円以上の企業につきましてはいつ確定するか明記をするなど、方向性を明確化する必要があるのではないかと思っております。
 また、ワーキング・グループの第3回目でISSB基準の完全な導入について解説をいただきましたが、時価総額1兆円以上の企業への強制適用によって、時価総額の大半を達成することが仮定されております。時価総額1兆円以上の企業への適用時期を早い段階で明確化することで、いつISSB基準の完全な導入を目指すのかロードマップに明示するなどにより、共通認識を持っていただくとよいのではないかと思っております。
 また、二段階開示の適用につきましては、これまでお伝えしましたとおり、財務諸表とサステナビリティ関連財務情報のつながりの重要性を考えますと、同時開示を原則とすべきと考えております。今回、二段階開示をもう1年延長する提案をいただいておりますが、確定に当たりましては検討事項もまだ残っておるかなと思うところでございます。
 第1に、先ほど冒頭で申し上げましたとおり、適用対象企業の拡大ペースは実務の対応状況を考慮する余地はあるというところでございまして、これと併せて検討する余地もあるのではないかというのが1点目。第2に、資料6ページの下段に、有価証券報告書の提出時期の延長は引き続き検討とされていまして、もし提出時期を延長する場合は経過措置の延長が不要になる可能性もあるのではないかと思っております。利用者としては、もちろん有価証券報告書を早期に開示いただくことが望ましいと考えておりますが、提出期限の延長の方向性を固めた上で検討する必要があるのではないかと考えております。第3に、同時開示の実現のために何がネックかを精査し、施策を検討する余地もあると思っております。
 以上のとおり、二段階開示の適用時期につきましては、ほかの論点とも関連し、検討が必要なところもあろうかと思いますので、これらも踏まえて確定すべきではないかと思っております。
 続きまして、見積りの更新につきまして、前回のワーキング・グループでも申し上げましたとおりで、見積りが適切な場合でも確定値と見積りの差が大きく、重要な情報と考える場合には任意で開示をお願いしたいと考えておるところでございまして、19ページの制度的な枠組みは、半期報告書が情報をアップデートする媒体としては適切ではないかと考えております。また、半期報告書に間に合わない場合は、任意で適時開示などによって開示をお願いできればと思っております。
 最後に、用語の整理につきましては、整理いただいたところで異論はないところでございます。
 コメントは以上でございます。
 
【神作座長】
 芹口委員、どうもありがとうございました。
 ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。まだ本日御発言いただいていない方で、御発言の御希望がございましたら、御発言いただければと思いますが、いかがでしょう。
 それでは、清原委員、お願いいたします。
 
【清原委員】
 発言の機会をいただきましてありがとうございます。私も、御議論いただきたい事項に沿って、コメントさせていただきたいと思います。
 基本的には御提示いただいたものについて賛同する意見でありますけれども、細かなところについて、少し意見を述べさせていただきたいと思っております。
 ロードマップのところでありますけれども、ほかの委員からもお話ありましたように、やはり今後の進め方について明確になっていることの意味は非常に大きいと思います。特に時価総額3兆円の企業は、来年4月に始まる年度からということ、それから1兆円というのはその次の年ということ、そういうことを考えていったときに、5,000億円以上のところについての柔軟性というのは分かるんですけれども、やはり1兆円以上の時価総額の会社の扱いというのは、できればこのワーキング・グループでの取りまとめ、恐らく6月内かと思うんですけれども、そこでか、または、もしそうでないとしても年内には確定をするということが適切なのではないかなと考えておりますので、1点目として申し述べたいと思います。
 その次に、二段階開示の2年間というところに関して、これも賛同であります。なぜ二段階開示を2年間にしているかというところの考え方として、制度導入初期というのは、いろいろなこともあり、そこはフレキシビリティを残しておいたりする、そういう経過的な時期だという位置づけになるからだと思われます。そのように考えてきたときに、2点目、3点目のところにも関係するところではありますが、例えば更新のときに保証が必要なのかどうかということ、そういったことを考える上でも、経過的な導入時期に関しては、あまり厳格な話にならないように、それは、重要性があるとかないとか、そういった議論がありましたけれども、どちらの場合であったとしても、最初の保証を出した後にもう一回保証が必要という話にならないようなことを、制度導入の最初の時期の扱いとして、はっきりと打ち出してしまったほうがよいのではないか。むしろ保証人が、何か後であるかもしれないと考え、その意味で保守的な対応をすることがあれば、それは企業側に負担につながったりしますし、または開示の充実ですとか、任意の保証というものを考えたときに、任意でも入れる大変なことになるな、というようなネガティブな姿勢から始まることにつながりかねないと懸念されます。ですので、やはり最初は、皆がまずやってみようということを促進するという、そういったスタンスというのもすごく重要ですが、厳密にきちんとしないと信頼が置けない、だから資本市場に対する信頼がどうだこうだという議論になる、そこまでのものなのかどうかという観点から考えたときに、まずこれは、全然保証がないところから今、保証を入れることを議論していて、グリーンウオッシュに必ずしもつながるという話ではないのでしょうけれども、やはり外部の目が入る、それを見ながら、会社の中の人も保証業務実施者との対話をしながら見直しをいろいろしながら進めることもあるでしょう、そういった経過的な段階というのも非常に意義があって、それをサポートし、かつ促進する、そういった制度の始め方というのもあっていいんじゃないかと。やはりそういった観点からすると、正しい答え、それに向けてきちっと、いろんなことを考えてやろうとすると、やり過ぎることにもなり、議論というものもいつまでたっても細かいところまで詰めておかないと進まないということにもなるので、やっぱりそこは方向性として、導入時はどう円滑に、かつできるだけ保証というものの意義を皆が感じて、それを活用するようにしていけるかという視点を持った形で、議論がまとまり、かつ運用においても、少し許容する範囲を広げた形で、柔軟性というものを考えていただくことが有用ではないか、というところが大きなところのコメントでございます。
 次に、更新のところについて、コメントさせていただきたいのですが、やはり今、継続開示書類に関して、提出した後に訂正という発想はあるけれども、更新という発想がないと。臨時報告書というのは、必要なものを義務的に後で出すけれども、それは新しいものが起きたとか、そういったときのものだと。しかし、じゃあアップデートという発想が要らないのかといったら、それをできる制度もあっていいのではないかなと。
 すなわち臨時報告書制度というものの建付けが、やはり今の使われ方として、若干固いというところがあると。前回のディスクロージャーワーキング・グループのときの四半期開示の中でいうと、臨時報告書というものを活用して、四半期決算短信を公表したらその写しを添付して提出するとか、そういったことができないかという議論もありましたけれども、臨時報告書制度というものを少し緩やかに、もう少し、今あるものよりは少なくとも広げる形で使えるような、そういった制度を考えていく。それは今回の議論だけに限らず、開示制度の枠内ではすごく意味があるのではないかと考えますので、アジェンダの一つとして御検討いただければと考えています。
 最後の用語のところについては特段異議はありません。こういった形で整理していただくことは非常によいと思っております。ただ、事前説明のときにも申し上げているところではありますけども、「保証」という言葉について、ギャランティー、債務の保証という言葉で使う保証、それから「保証会社」などという形で有報などでも使われている言葉でもありますので、このサステナに関するアシュアランスを同じ「保証」という用語で使い続けてよいのかどうかというところは、ちょっと懸念を持っているところであります。そこは日本語の中で概念を区別しやすいようなものを使うことも御検討いただくとよいのではないか、ということがあります。ここでの用語の整理とは別の話になりますけれども、併せて御検討いただければと考えておりますので、申し添えたいと思います。ありがとうございました。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、オンラインで御参加の永沢委員、御発言ください。
 
【永沢委員】
 良質な金融商品を育てる会の永沢でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 事務局の皆様には、これまでの議論をまとめていただきましてありがとうございます。また、これまでは、どちらかというと抽象的な内容が多かったのですが、今回は具体的な事例が盛り込まれており、理解を深めることができました。
 御議論いただきたい事項につきまして今回3点示していただいておりますけれども、いずれにつきましても、ほかの委員の先生方の御意見を伺い、事務局から示していただきました方向性はいずれも妥当なものであることを確認させていただきました。この点が、まず総論としての意見でございます。
 その上で、田代委員をはじめ、ほかの多くの委員が御指摘になっていましたが、時価総額1兆円以上の企業や5,000億円以上の企業につきましても、具体的な適用時期を早めに明示することが重要であるという意見に私も賛同します。日本市場がサステナビリティの情報開示に真摯に取り組んでいるということを外に示すことにもなります。また、実際に御準備をされる企業の担当者はそれなりの準備が必要になるところ、具体的な期限が金融庁から示されることによって経営層の理解が進むことから、サステナビリティ情報開示に向けて必要な体制整備の後押しにもなります。そのような理由から、具体的な適用時期の明示は必要と考えます。
 最後に感想的なことになりますけれども、私が関わっている企業は時価総額が1兆円未満や、さらに小さな企業もありますが、その規模の企業でも今日、中期経営計画を策定する時代になっており、その中でサステナビリティは大変重要な要素になってきています。株主に提供するサステナビリティ情報を充実させていきたいという意欲は、企業規模にかかわらず高まってきており、このワーキング・グループは多くの企業の開示担当者が関心を持ってご覧になっているようです。本日の資料中でヨーロッパの企業の開示例をお示しいただいていますが、トップ企業だけでなく、中堅どころの企業の開示例なども積極的にご提供いただくことをされるといいと思います。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
 
【神作座長】
 永沢委員、どうもありがとうございました。
 続きまして、会場で御参加の弥永委員、どうぞ御発言ください。
 
【弥永委員】
 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私も基本的に、事務局が提案してくださったロードマップ案に賛成です。けれども、やはりこの二段階開示という問題については、情報利用者の方々の考え方というのもおありなので難しいところはあるかとは思いますが、有価証券報告書の提出期限を延長するというのはあまり現実的ではないような気がするので、その意味においては、企業の負担を重くしない、そしてやはり習熟するという観点から、二段階開示を広く、適用開始から2年というように今回は御提案いただいた、この方向に賛成したいと思います。ただ、情報利用者の方の必要性というのがあるので、ちょっと断言はできないのですけれども、実際にやってみて、これはもうちょっと二段階開示を続けたほうがいいというときには、これは将来の話ですけども、やはり2年に拘泥しなくてもいいんじゃないかなと、私などは思うところがございます。
 また、見積りの更新につきましては、日本の企業の方は非常に慎重と申しますか、そんなに頻繁に訂正報告書を、任意であっても訂正報告書という形で出されることに、やはり心理的な抵抗というのがおありだなという気がするわけです。アメリカなどでは、もう本当に訂正報告書を、毎日のようにというのはちょっと語弊ありますけど、出していらっしゃる企業というのもあると感じるぐらい頻繁に出されるケースもあるようです。したがって、訂正報告書の任意提出によるというのは重要な選択肢になるのではないかとも考えております。ただ、やはり日本では、この訂正報告書という言葉の響きがあまりよくないというのであれば、先ほど清原委員も御指摘になられていたように、臨時報告書を活用するという方向で、任意で行われる見積りの更新の受皿として使うということは今後検討されてもいいと思いますし、さらに進んで、臨時報告書を広く使うということは、我が国の企業内容開示制度の中で一般論としても検討し、またそれを実務の方々も使いやすくするということは非常にいいのではないかと思いますので、今回のサステナビリティ情報の開示という問題をきっかけとして、その辺りは見直したほうがいい、見直すというのはちょっと語弊がありますけども、意識を変えていったほうがいいかなと考えた次第でございます。
 以上です。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。堀江委員、もし御発言いただけましたら、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
【堀江委員】
 恐れ入ります。私は冒頭、時間を使わせていただきましたので、時間が余ったら発言と思っておりましたので、失礼いたしました。
 まず、開示と保証に関するロードマップ案でございますが、基本的に、賛成いたします。ただ度々、御指摘いただいたように、引き続き柔軟に対応するとか、今後の検討ということになりますと、やはりどうしても先延ばしになったりといった心配があります。ある程度決めてしまうと、日本の会社はとても真面目な会社が多くございますので、それに向かってきちんと努力されるのではないかと思います。
 ただ、前回私が発言させていただいたのは、Wave1というのですか、時価総額3兆円以上の大きな会社とかはあまり問題ないんだけれども、それ以外になってくると、今後、心配しなければいけないことは、Wave1の様子を見ながら、後追い的になってしまって主体性がなくなり、開示が目的化してしまうのではないかという心配があります。企業の規模が小さくなるとリソースの制約も考慮しなければならないと思うんですけれども、我々がやはり考えなければいけないことは、先行事例に何とか追随しようとして、開示すること自体が目的となってしまい、何のための開示かということがどこかに行ってしまうと、この制度の本来の意味がなくなってしまうのではないかというふうな感じを持っておりました。
 保証の問題につきましては、冒頭御説明させていただきましたとおり、これから細かいところにつきまして、様々いただきました御意見をもとに責任を持って進めさせていただきますが、とりまとめ役となりますと、自分の意見はなかなか言えませんので、根本的なところ、どう考えているかということについて一言だけお時間をいただくこと、可能でございましょうか。
 
【神作座長】
 ぜひお願いいたします。
 
【堀江委員】
 開示と保証はセットで考えるべき、これは確かに理屈なのですが、何でもかんでも開示されているものは全部保証が必要かというと、必ずしもそうではない。サステナの情報の保証について、常になぜこれが必要かの原点に立ち返ることが大切かと思います。分かりやすい例で申し上げますと、学校の試験で、「現在、有価証券報告書ではいろんな情報が経理の状況以外にも記載されていますが、例えば事業等のリスクの保証こそが必要であって、サステナ情報よりもそちらのほうが必要ではないか」という文章が与えられ、それについて反論しなさいという問題が与えられたとき、うまく反論できるのかと。事業等のリスクのほうが、むしろ保証が必要ではないかとかというふうな主張もあり得るのではないかということです。
 ですから、これから保証についての議論を進めるに当たっては、軸足がぶれないようにするためにも、なぜ保証が必要なのかという、保証の本質的なところを忘れないように議論を進めさせていただければというふうに考えております。
 余計な発言になってしまいました。申し訳ございません。
 
【神作座長】
 大変ありがとうございました。
 本日御参加の委員の方には、全員御発言をいただきました。大変ありがとうございました。ここでオブザーバーの方の御意見、御発言を募りたいと存じます。オブザーバーの方々で、もし御意見がございましたら、時間まだございますので、御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。
 それでは、経団連の魚住さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【日本経済団体連合会】
 まず事務局の皆様に、大変感謝申し上げます。
 特に欧州の開示事例の分析につきましては、大変参考になる情報と考えますので、引き続きここの分析はぜひ続けていただければと考えております。今後はさらに欧州における開示の事例だけでなく、最終的な開示の結果に至るまでの保証側と企業側の実際の手続や具体的な対応、合意形成方法などの分析も、実務の観点から、今後日本で導入するに当たって大変参考になるので、お願いします。
 また、先ほど堀江先生の御指摘にもありましたが、この欧州のサステナビリティ情報開示がマーケットでどのように受け止められたか、投資家の皆様がどういう評価をしたのか、はとても重要と考えます。開示すること自体は目的ではなく、開示することで得られるメリットを明確にすることが重要です。メリットを明確にすることは企業側として自ら開示をしていくインセンティブになり、そもそもサステナビリティ情報開示の制度がどうあるべきかにつながると考えます。既に金融庁でも色々とご検討頂いているところではありますが、引き続きぜひお願いしたいと思います。
 また、適用時期の判断については、企業側を取り巻く環境は様々であり、一枚岩ではないと考えます。そういった意味では、時期ありきではなく、求められる開示や保証の内容によって対応できるかできないかが変わってくると思っております。その辺り並行しての議論を引き続きお願いします。
 保証の範囲については、2年間当面と資料には記載いただいておりますが、その先についても、ぜひ諸外国の動向を含めて柔軟な検討をお願いできればと思っております。と申しますのは、サプライチェーンが近年は益々複雑化しておりアメリカや中国などを組み込むグローバルなサプライチェーンで、短期で対応できるようになるのは実務的には非常に難しい面があると思っております。理想論だけではなく、こうした実務の現状も踏まえた上で保証の範囲についても今後検討していただきたいと思っております。また、ヨーロッパ、欧州の大陸側だけでなく、大きなマーケットのあるイギリスやアメリカの動向の分析や当局とのすり合わせ等々も今後お願いしたいと考えます。
 もう一つ、有価証券報告書の提出時期に関しましては、株主総会前の開示という要請をいただいている中でございますので、やはりここで開示制度そのもの、任意開示含め、法定開示含めですが、開示の在り方を、しっかり会社法も含めた形で検討する場を持っていただく必要があると考えます。日本企業にとっての競争力強化につながる開示がどういったものなのかを議論することは大変重要と考えます。
 最後に、見積りの更新についてですが、事務局の御提案に賛同させていただきます。やはり財務情報とサステナビリティの情報では基本的に特性が異なり、重要性の判断基準の違いもあると思っています。そういった意味で、我が国の実務が諸外国に対してトゥーマッチにならないように御配慮をいただきたいと考えております。
 以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、日本公認会計士協会の男澤さん、御発言をお願いいたします。
 
【日本公認会計士協会】
 発言の機会をいただきましてありがとうございます。日本公認会計士協会の男澤でございます。私から2点、コメントさせていただきます。
 1点目です。サステナビリティ開示基準及び保証制度に係るロードマップ案に関してでございます。こちらにつきましては、さきに委員の先生からも御発言があったところでございますが、作成者及び保証業務実施者において、予見を持って適切な準備期間が確保できるよう、1兆円以上、5,000億円以上についても早めに明確にしていただけるよう希望いたします。なお、当協会といたしましては、現在お示しされているスケジュールで保証業務が対応可能となるよう準備を進めているところでございます。
 2点目です。有価証券報告書におけるSSBJ基準の適用に係る用語の整理についてです。SSBJ基準の全ての定めに準拠して開示する場合のみを「適用」と定義すること、また、「適用」に関しての用語の使い分けに賛成いたします。このような形で御整理いただきまして、誠にありがとうございます。
 一方で、部分的に基準を参照するケースに関しては、御留意いただきたい点があるように思っております。例えば、テーマ別基準第2号、気候関連開示基準のGHG等の指標について参照開示していても、国内の排出量のみを開示するなど、適用基準の組織の範囲ですとか報告期間等が遵守されていないといったような場合も考えられるかと思います。このように、作成者が、SSBJ基準の一部の条項を特定する形で、これを参照した開示をしている旨のみを言及した場合には、基準の適用状況について、利用者の誤解を招くおそれもあるかと思うところでございます。したがって、そうした誤解が生じないよう、、開示に当たっての作成方針、例えば対象企業の範囲、報告対象期間、指標等の基準等について説明を推奨する形等、今後詳細についても御検討賜れればと思います。
 私からは以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、関経連の中島さん、お願いいたします。
 
【関西経済連合会】
 御指名いただきましてありがとうございます。関西経済連合会の中島です。御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。
 まず、ロードマップ案についてでございます。3ページに記載の今回事務局案として示されたロードマップ案は、二段階開示の経過措置期間を一旦2年間確保し、企業の習熟期間を設けるといった点で高く評価できるものと考えます。一方で、同時開示の義務化に向け、有報の提出期限を延長する場合には、株主総会の開催を後ろ倒しにする必要が出てまいりますので、その際のコストベネフィットを踏まえた検討が必要になると考えております。仮にサステナビリティ情報と財務情報との同時開示、有報提出期限の延長と総会の後ろ倒しをセットで考える場合、その他の開示への影響を考慮した検討が必要であるというふうに思っております。第3回のワーキング・グループでも申し上げましたとおり、有報の提出期限を決算日から4か月後とするのであれば、第1、第3クオーターの決算短信の開示は基本的には任意にすべきであるというふうに考えております。加えて、会社法上の事業報告や決算書類と、金商法上の有報との重複開示につきましては、株主総会の開催前に有報を提出する企業には会社法上の開示を不要とする法改正を行う等の見直しの必要があるというふうに考えております。
 また、保証水準についての括弧内の記載の部分でございますけれども、限定的保証とし、合理的保証への移行の検討は行わないと明記いただいたことも高く評価できるポイントであると考えております。今後はこのロードマップの図が各種参照されることが想定されますので、図の中に、限定的保証が義務化されることが、多くの関係者、リーダー等に分かるように記載いただけますとありがたいと考えております。
 そして次に、見積りの更新の整理についてでございます。18ページにまとめられた方向性について賛同いたします。その上で1点、細かな点を申し上げますと、確定値判明の図の下に記載されましたbの「見積りの変更に関する情報に重要性があり」という部分は、例えば「見積り情報の更新に重要性があり」との文言にすることで、不要な誤解が生じずに済むというふうに考えておりますので、御検討いただければと思います。
 最後に、用語の整理について申し上げますが、24ページの用語の整理は、実務者としては、誤解がなく、大変よいというふうに考えております。なお、23ページの任意事項の3ブレット目に「統合報告書等で開示する場合には、有報でこれを参照することを推奨」と記載がありますけども、有報で統合報告書の開示を参照した場合、その部分は金商法の罰則等の対象になる可能性があるということに注意が必要であると考えておりますので、慎重な対応が求められるということは触れておきたいと思っております。これらと併せまして、過去のワーキング・グループでも議論されていた虚偽記載の罰則とセーフハーバー・ルールについても議論が進展することを期待いたします。
 私からは以上でございます。
 
【神作座長】
 コメントどうもありがとうございました。
 それでは、東証の青さん、お願いいたします。
 
【東京証券取引所】
 東京証券取引所の青でございます。各回の様々な御意見をかなり適切に反映していただいていると思います。事務局の方々のこれまでの工夫について敬意を表させていただきます。
 その上で、3点申し上げます。基本的には賛成なのですけれども、まず有報を提出した後に、見込みベースで記載したところについての修正をしていくというところにつきまして、臨時報告書で開示するという御意見もございましたけれども、臨時報告書という形で、有報と別の体系の開示書類を用いるのがよいのか、あるいは、「訂正」という言葉がいけないということだと思いますので、例えばですけども、「有報の更新情報」などの形で、あくまで有価証券報告書の枠の中で整理をしていく形がよいのかというところについては、それぞれの報告書の性格や公表の期限、位置づけなどの差異について十分に意識をした上で決定いただくということがよいのかなと思っているところでございます。
 それから、株主総会と有報のタイミングにつきましては、それぞれ、総会の前に一定の情報が必要だという御意見があるという点と、有報に記載すべき事項が増えていくと現状の期末から3か月以内に有報が出せるものなのかという点の2つの点が出発点と思いますので、それぞれの点について純粋に検討していくのが、一番妥当な結論につながるのではないかというふうに考えているところでございます。
 また、有報につきましては、見積りのところでの実務上の工夫の仕方によって、実際に必要になる期間は大分変わってくるかと思いますので、それを踏まえて考えていくということがよいかと思います。総会の前に情報が必要だからといって、有報のタイミングを今より早くすべきという方向に話を持っていくとなると、議論がずれてしまうかと思いますので、やはりどういう情報が投資家に必要で、それが企業にとってもどう有用なのかというところを踏まえた上で開示すべき事項を定め、その上でタイミングについて決めていくということが基本的には一番よいところではないかと思うところでございます。
 あと先ほど、仮に有報のタイミングが期末から4か月となった場合に、四半期開示が要るのかどうかという点について御意見がございましたけれども、そこはこれまでのところで、四半期ごとの情報は有用であるものの、法定開示と適時開示との重複を避けるという意味で、取引所のほうで開示するということになったというだけのことでございまして、四半期開示の有用性が低いというような整理はないと認識してございますので、仮にそこについて御議論される場合には、かなり慎重な御議論を要すると思うところでございます。
 私は以上でございます。ありがとうございました。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかに御発言を御希望のオブザーバーの方いらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございますか。まだ予定の時刻まで少し残っておりますので、もし、本日皆様の御発言を聞いて、2回目の御発言の御希望がございましたら。
 井口委員、どうぞ御発言ください。
 
【井口委員】
 すみません、ありがとうございます。簡潔に発言させていただきます。弥永先生から二段階開示を2年以上延ばすことについて利用者としてどう思うかというお問いかけがあったと思いますので、発言させていただきます。
1つ目は、さきほども申し上げましたが、SSBJ基準の策定時に、かなり同時開示については議論があって、その中で利用者の声を酌み取った上で、同時開示というのがSSBJ基準で定められております。また、グローバルでも、ISSB基準は同時開示を原則としており、日本、グローバルの利用者とも同時開示を望んでいるということになりますので、今回の二段階開示は非常に特別な措置と理解しております。
 2つ目は、この二段階開示を永遠に延ばすと、さきほども申し上げましたように、日本の資本市場がISSB基準と同等の基準を適用している資本市場と認識されることが永遠になくなるということになりますので、やはりこれは限定的な処置としてやるべきだと思っております。
 あと、別の委員のご意見で、総会前開示をするために二段階開示を使うべきという、こういった御意見もありましたが、そもそも利用者は、必要な情報を株主総会前に欲しいということになっておりますので、利用者が希望していることとは違うことになるのではないか、と思います。もし、有報の中で無駄な情報があるというなら、それはちゃんと整理すべきだとは思うんですが、基本的には、現状、そういうことはないと思いますので、ご意見させていただきます。
 以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかに2回目の御発言の御希望、いらっしゃいますでしょうか。まだ多少お時間がございますので。
 どうぞ吉元委員、御発言ください。
 
【吉元委員】
 ありがとうございます。見積りの更新のところで臨報で出すという御意見が何名かの委員の方からあったので、実務をやっている立場でそれがどう映っているかということを少しお話しできればと思うんですけども、これは金融庁というよりは、どちらかというと東証のルールとの兼ね合いで気になっておりまして、東証の適時開示基準で、臨報を出したら東証でも適時開示するというのが原則的なルールとなっております。ですので、利用者からするとそれはいいのかもしれませんけども、発行体としては、臨報を出すと、必ず基本的には東証適時開示がついてきて、当社のようにUS上場している会社は、それをUSの取引所にもファイリングするという形で、臨報の開示というのが結構ほかの開示と連携しているというところがあって、これはどちらかというと東証のルールによるところが大きいんですけれども、ですので、臨報を今のままで、臨報で更新をするとなると、それを常に東証とか取引所開示とセットで開示していかなければいけないことに今のルールの中ではなってしまわないかなと、それが本当に投資家にとって重要な情報なのかと、そういうケースもあり得ると思うんですけれども、何でもかんでも過年度の情報の更新が取引所開示までトリガーされるということについては、少し慎重に考えていく必要があるのではないかと思ったので、意見させていただきました。ありがとうございます。
 
【神作座長】
 御指摘どうもありがとうございました。
 ほかに御発言の御希望の方いらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、もしよろしければ、定刻より少し早く、まだ10分ほど余しておりますけれども、本日の討議はこの辺りで終わらせていただきたいと思います。
 本ワーキング・グループにおきましては、本日を含めて、これまで7回の開催をいたしました。また、保証専門グループにおきましては、保証に関する専門的な論点について御検討いただいております。まだ引き続き検討を要する論点も残っておりますけれども、次回のワーキング・グループでは、これまで皆様方にいただいた御意見、また、特に本日いただいた御意見も踏まえて、中間論点整理のたたき台を事務局に用意していただき、皆様方に御議論をお願いしたいと存じます。
 最後に、事務局のほうから何か御連絡がございましたらお願いいたします。
 
【野崎企業開示課長】
 ありがとうございます。次回のワーキング・グループの日程につきましては、後日改めて事務局から御案内させていただければと思います。また、先ほど冒頭に高村委員からの御意見を御紹介させていただきましたけども、こちらの御意見につきましては、田代委員の御意見とともに、後日、金融庁のウェブサイトに掲載させていただく予定でございます。
 事務局からは以上でございます。
 
【神作座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを閉会とさせていただきます。お忙しいところ、活発な議論をいただき、大変ありがとうございました。

―― 了 ――

(参考)
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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

企画市場局企業開示課(内線:3688、3846)

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