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金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第10回)議事録
日時:
令和7年11月28日(金曜日)10時00分~12時00分場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
【神作座長】
おはようございます。定刻より少し早いのですけれども、皆様おそろいでございますので、ただいまより金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ第10回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議におきましても、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、本日の会議の模様も、前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。なお、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。
会議を始める前に、事務局から留意事項をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます小長谷でございます。本日もよろしくお願いいたします。
留意事項などを御案内させていただく前に、記者の皆様におかれましては、撮影はここまででお願いいたします。
本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から御指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いいたします。
なお、対面での御参加の委員におかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から御指名いただきます。なお、御発言後はお名前のプレートを元に戻していただくようお願いいたします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは早速、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より資料の御説明をいただいた後、質疑応答及び討議を行いたいと存じます。
それでは、事務局の金融庁から資料についての御説明をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
それでは、事務局から資料の御説明をいたします。
資料の2ページを御覧ください。この2ページと次の3ページでは、前回会合で委員の皆様から頂戴した主な御意見をまとめております。前回会合では広範なトピックについて御議論いただきましたが、3ページにございますとおり、保証業務実施者の登録制度を設けることについても御議論いただきまして、この点についておおむね御賛同いただけたものと認識しております。保証業務実施者の登録制度を設けることを前提にして、本日は保証業務実施者に対するエンフォースメントについて御議論いただきたいと考えております。
資料の5ページを御覧ください。このスライドでは保証業務実施者の責任に関する専門グループでの御議論の概要を記載しております。スライド冒頭にございますとおり、保証業務実施者の責任については、現行の金融商品取引法、公認会計士法で監査法人に課されている義務・責任を参考にして検討することが適当ではないか、他方で過度な責任を負わせない措置の検討も必要とされたところでございます。
次に、資料の6ページを御覧ください。ここから、行政責任、刑事責任、民事責任の順で御説明いたします。まず、行政責任についてですが、このスライドにございますとおり、法令違反に対する手段として、公認会計士法、金融商品取引法の既存の規定を参考に、課徴金納付命令、業務改善命令、業務停止命令、登録取消などを規定してはどうかと考えております。また、こうした行政処分に係る調査の手段として、報告徴求命令などについても規定することを想定しております。
次に、資料の7ページを御覧ください。先ほどのスライドで御説明した行政のエンフォースメント手段のうち特に課徴金につきまして、こちらのスライドで追加の説明をしております。公認会計士法では、平成19年の改正において、虚偽の証明を行った公認会計士・監査法人に対する課徴金制度が導入されております。
この背景にある考え方ですが、仮に有価証券報告書の虚偽記載等に関連して虚偽証明が行われた場合、当該監査法人に対して業務停止を命令することとなると、虚偽記載・虚偽証明とは無関係な企業にまでその影響が及んでしまうため、金銭的負担を課すというエンフォースメント手段が用意されていると効果的であると説明されていると理解しております。こうした考え方は保証業務にも当てはまるものと考えられますため、虚偽保証を行った者に対する課徴金制度を設けることとし、課徴金額については、公認会計士法の既存の規定を参考に、まず①として相当の注意を怠ったことによる虚偽保証には保証報酬相当額を課し、②として故意による虚偽保証には保証報酬相当額の1.5倍を課すこととしてはどうかと考えております。
次に、資料の10ページを御覧ください。次に、刑事責任についてでございます。こちらにつきましても、基本的には公認会計士法を参考にして、それと並びで規定を整備していくことが考えられるかと思います。このスライドの冒頭にございますとおり、現状、虚偽証明に対する刑事罰は金融商品取引法では規定されておりません。これを踏まえますと、虚偽保証についても刑事罰は規定しないこととなるかと考えております。また、守秘義務違反につきましては、公認会計士法において2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が規定されておりますことから、保証業務実施者による守秘義務違反に対しても同様の罰則を規定することが適当ではないかと考えております。
次に、資料の12ページを御覧ください。次に、民事責任についてでございます。金融商品取引法では、有価証券届出書または有価証券報告書の重要な事項に関する虚偽記載等があった場合であって、それらの書類について虚偽の監査証明を行ったときにおける公認会計士、監査法人の賠償責任が規定されております。この立証責任の転換された民事責任規定は、情報の非対称性などを考慮し、原告の訴訟負担が過大にならないようにという観点から設けられているものと承知しております。こうした情報の非対称性を踏まえた訴訟負担の軽減という観点は、サステナビリティ保証にも当てはまるものと考えられますため、保証業務実施者が虚偽保証を行った場合における立証責任の転換された民事責任の規定も同様に設けることとしてはどうかと考えております。
次に、資料の14ページを御覧ください。この14ページから16ページでは、本ワーキング・グループでも以前御議論いただきました企業開示におけるセーフハーバー・ルールについて、ディスクロージャーワーキング・グループでの議論の状況を御紹介いたします。ディスクロージャーワーキング・グループでは、8月の第1回会合及び9月の第2回会合におきまして、セーフハーバー・ルールに関する議論・検討が行われ、今から御紹介する内容についておおむねコンセンサスが得られているところでございます。
まず、この14ページでは、セーフハーバー・ルールの効果を民事責任、行政責任、刑事責任のどこまで及ぼすかという論点についてでございます。この点につきましては、民事責任については法律改正、行政責任についてはガイドライン改正によりセーフハーバー・ルールの対象とする、すなわち免責とする、他方で刑事責任については免責の対象外とするという方向性を事務局から提示し、おおむね賛同をいただいているところでございます。
次に、資料の15ページを御覧ください。セーフハーバー・ルールの適用対象となる情報の範囲についてでございます。非財務情報のうち、将来情報、見積り情報、統制の及ばない第三者から提供された情報に限定するという方向性を事務局から提示し、おおむね賛同をいただいているところでございます。
なお、例えば、将来情報と現在情報の境界や、財務情報と非財務情報の境界などについて、不明瞭とならないよう整理が必要といった御指摘もあったところでございます。そうした点について明確化を図る観点から、このスライドの下半分にあるような点をガイドラインで示すことを予定しております。
簡単に御紹介しますと、まず、将来情報については、有価証券報告書の作成時点から見て将来に関する情報であって、作成時点において金額、数量、事象の発生の有無等が確定していないものとすることを想定しております。これにより、例えばMD&Aに含まれる将来の業績予想などはセーフハーバー・ルールの対象となる一方で、確定している財務数値を活用して当期の業績を分析する部分などについては、過去情報であって対象外になるという整理になるかと考えております。
次に、統制の及ばない第三者から入手した情報についてでございますが、子会社や関連会社を除く第三者から取得した情報に基づき開示される情報とすることを想定しております。この第三者情報については、データプロバイダーなどから取得した情報を含めるのかどうかといった論点があるかと思いますが、企業においてその情報の正確性を検証することは困難という点を踏まえまして、セーフハーバー・ルールの対象となるものと整理することを想定しております。
最後に、見積り情報についてですが、不確実性のある情報について入手可能な情報を基に合理的な数値を算出するものとすることを想定しております。
次に、資料の16ページを御覧ください。セーフハーバー・ルールの適用要件についてです。このスライドの最初の四角にございますとおり、非財務情報のうちの将来情報等については、その合理性が確保されていると認められる場合には、金融商品取引法上の民事責任の規定を適用しないとしています。
この合理性が確保されていると認められる場合という部分が意味する具体的なところについて、このスライドの下半分で御説明しております。まず、有価証券報告書という欄を御覧いただきたいのですが、本ワーキング・グループの中間論点整理にもありましたとおり、有報の記載事項として、将来情報等を記載するに当たり前提とされた事実、過程及び推論過程などを追加することが予定されております。さらに、確認書制度につきましては、その記載事項として、経営者が非財務情報を含む開示手続を整備している旨とその実効性を確認した旨を追加することが、ディスクロージャーワーキング・グループにおいて提案されております。
こうした有価証券報告書及び確認書の記載事項が真実であることを前提に、その開示をもってセーフハーバー・ルールが適用されるとするということをディスクロージャーワーキング・グループで御提案し、おおむね賛同をいただいたところでございます。
次に、資料の17ページを御覧ください。今14ページから16ページで御説明した企業に対するセーフハーバー・ルールを前提とした上で、保証業務実施者による民事責任についてどのように考えるかという点についてでございます。1つ目の四角にございますとおり、保証業務実施者による虚偽保証責任は、企業による重要な事項についての虚偽記載等があったことを前提としております。言い換えれば、虚偽記載等がなければ虚偽保証は発生しません。この点は財務諸表監査における虚偽の監査証明についても同様の立てつけとなっております。したがって、企業にセーフハーバー・ルールが適用されて企業が負う金商法上の民事責任が免責される場合に保証業務実施者も責任を負わないこととすることは、一定の整合性、合理性があるものと考えております。
このため、このスライドの下の水色で囲った部分にございますとおり、企業にセーフハーバー・ルールが適用される場合は保証業務実施者についても免責とし、他方で、企業にセーフハーバー・ルールが適用されない場合、具体的には例えば企業による有報における将来情報等の合理性確保のための推論過程等の開示が真実でない場合には、保証業務実施者も免責されないということにしてはどうかと考えております。
なお、※印のところにございますとおり、免責の効果としては、企業のセーフハーバー・ルールと同様、民事責任に加えて、行政責任、課徴金についても含めることとしてはどうかと考えております。
次に、資料の19ページを御覧ください。本日御議論いただきたい事項をまとめております。行政責任につきましては、保証業務実施者に対して、一般的な行政処分に加えて、虚偽記載に対する課徴金を規定することについてどのように考えるか。刑事責任については、監査法人との規制のイコールフッティングに留意しつつ、罰則を設けることについてどのように考えるか。民事責任についてですが、保証業務実施者が虚偽保証を行った場合における立証責任の転換された民事責任を規定することについてどのように考えるか。また、最後の点ですけれども、企業がセーフハーバー・ルールにより免責される場合は保証業務実施者も免責とし、逆に企業が免責されない場合には保証業務実施者も免責しないということについてどのように考えるか。これらの点について御議論いただければと思います。
私からの説明は以上でございます。
【神作座長】
御説明どうもありがとうございました。それでは、これより委員の皆様から御意見、御質問等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますけれども、全ての委員の方々から5分以内で御意見を頂戴できればと存じます。
なお、本日の会議では経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで事務局員よりメモを差し入れさせていただきます。加えまして、御発言の順番につきましては若干前後する場合があろうかと存じますけれども、あらかじめ御了承いただければと存じます。
それでは、御意見いかがでしょうか。どなたからお出しいただいても結構です。
それでは、弥永委員、どうぞ御発言ください。
【弥永委員】
ありがとうございます。それでは、この御議論いただきたい事項に即して、取りあえず発言させていただきたいと思います。
まず、行政責任についての御提案には賛成したいと思います。また、刑事責任についても、当然のことながらこれでよろしいのではないかと思うわけです。けれども、ただ、民事責任あるいは行政責任の両方に共通する点ですけれども、セーフハーバー・ルールというのが一体どういう意味合いなのかという点がちょっと気になりまして、どうお考えなのかを伺いたいと思います。
ここで、セーフハーバー・ルールが適用される場合というのは、企業が虚偽記載をしていないという前提なのでしょうか。それとも、そうではなくて、虚偽記載があっても、そこに何らかの過失とかがないから免責されるということなのか、この点がちょっと気になったわけです。ただ、課徴金納付命令との関係でいえば、過失などが問題になるのではないので、恐らく虚偽記載がないとみなされるという整理になっているのだろうと拝察はしたのですけれども、この理解で正しいかということを伺いたいと思います。
仮に虚偽記載がないとみなされるというのであれば、それは保証業務実施者についても同様に、御提案のように課徴金納付命令の対象としないという考え方に賛成です。けれども、仮にこのセーフハーバー・ルールというのが、過失がないから、課徴金納付命令の対象としないという趣旨だとすれば、保証業務実施者についていえば、企業と違って、保証の基準に従って保証業務を実施すれば、それでそもそも責任を負わないわけなので、企業が責任を負うかどうかということとかかわらず、やはり課徴金納付命令の対象となり、また、民事責任の対象となるというのがロジカルには正しいのではないかと思う次第です。したがって、それはセーフハーバー・ルールの言わば前提と申しますか、どういう理解なのかということによって、この事務局の提案に完全に賛成していいのかどうかというのは変わってくるのかなという気がいたします。
いずれにいたしましても、保証業務実施者について固有のセーフハーバー・ルールを設けるということ自体は、国際的な保証基準との整合性ということを考えたときに、保証基準に違反しても責任を負わない場合を認めるという効果を実質的に生じさせて、それは保証業務に対する信頼性を失わせることになると思いますので、保証業務実施者に固有のセーフハーバー・ルールを設けないということについて私は賛成です。私の知見がないせいかもしれませんが、このサステナビリティ情報の保証との関係で、諸外国において保証業務従事者にセーフハーバーを設けるべきだという議論は聞いたことがなく、かつそれが制度として入っているというケースも承知しておりません。
次に、保証業務従事者の適切な業務運営に対する民事的なエンフォースメント手段として、虚偽記載等についての民事責任、これを財務書類についての監査と同様に取り扱うということについては賛成でございます。実際にどういう場合に保証業務実施者に過失があるのかという点について、保証業務実施者は十分に適切な保証基準が定められていれば保護されると考えております。
ただ、実は公認会計士・監査法人、特に監査法人と監査法人ではない保証業務実施者、両方が想定されるような場合について、現在の公認会計士法の下ではやはりかなり差が生じる可能性が実質的にあり得るのはちょっと気になります。これは短期的に対応してほしいという御意見を述べるわけでありませんが、少なくとも、ある程度の期間内にはその整合性を担保する必要があると思われるわけです。
それは、やはり公認会計士法を変えない限りは、監査法人の社員の責任の負い方というのは、1項業務についてのみの指定社員制度、それからそれ以外の社員の責任との関係でいえば、監査法人自体だけではなく、さらに個々の社員が責任を負うという構造になるわけですけれども、これに対して、監査法人でない、特に株式会社とか合同会社が保証業務実施者になるケースについていえば、実施した者自体は責任を負わないということに建前としてはなるわけですので、そのアンバランスというのがまずあります。
また、課徴金納付命令との関係でも、めったにないかもしれませんが、やはり現在の仕組みの下でいえば、課徴金納付命令が発せられたような場合についていうと、監査法人に対して課されるときには、それは監査法人に十分な資力がなければ、社員の方々に請求が行くということになりますが、監査法人が主体じゃない場合はそういうことには必ずしもなりませんので、そういう意味でのアンバランスさというのがちょっと気になる。
さらに、ものすごくマニアックな点では、有限責任監査法人には供託義務を課されているわけでして、この供託義務に相当するものを監査法人以外の保証業務実施者に課していくのかという問題もございます。
以上に加えて、有限責任監査法人の場合に、現在のままですと、財務書類の監査証明との関係で損害賠償責任を負う場合には、被害者に対して、投資者の方々に対しては供託金から優先的に支払いがされることになるわけですけれども、現在の公認会計士法を改正しないということになりますと、それはサステナビリティ保証との関係でいうと、金融商品取引法上の責任は同レベルかもしれないけれども、実際には、実はサステナビリティ保証との関係で、虚偽保証が起きたときに、被害者である投資者は、有限責任監査法人の供託金に優先的には当たっていけないという構造にもなるので、当面は非常に少ない対象会社さんたちのみがこの法定の保証を受けるでしょうから、現実的な問題として生じると私は思っているわけではなくて、抽象的なレベルではあるのですけれど、やはり法制度として見ると、抽象的なレベルでの調整といいますか、均衡と申しますか、こういうものをやはり今後考えていく必要があるのではないかという気がいたしました。
非常に雑ぱくでございますが、以上でございます。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。1点御質問があったかと思います。セーフハーバー・ルールの意義について、事務局から御回答いただけますでしょうか。
【小長谷企業開示課長】
弥永委員から御指摘いただいた点、まず、最初のセーフハーバー・ルールのところでございますけれども、条文のつくり方につきまして、現在、内閣法制局と調整を進めているところでございまして、現時点の案では、資料の16ページにあるような適用要件が満たされる場合には虚偽記載には当たらないというような条文案とすることを想定しております。
また、後段で弥永委員から御指摘のございました点についてですが、おっしゃるとおりでございまして、監査法人制度は公認会計士という国家資格を保有する個人を前提としてスタートした制度であるのに対して、今回のこのサステナビリティ保証業務実施者に対する規制は金商法上の業者規制として導入しようとしておりますので、先ほど御指摘いただいたとおり、例えば供託金制度とか無限責任社員の存在とかそういった点でやはり厳密に見ると規制が一致していないところがあるのは事実だと思っております。この点は、委員からも御発言いただきましたけれども、今後実務の蓄積を重ねていく中で必要に応じて制度のアップデートを図っていければと思っております。
【神作座長】
よろしいでしょうか。
【弥永委員】
ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは続きまして、関口委員、どうぞ御発言ください。
【関口委員】
ありがとうございます。御議論いただきたい事項、行政、刑事、民事責任等とありますが、ここに書いてある事項について、私のほうからは異論はございませんで、こういうまとめ方でいいんじゃないかと思っております。
ただ、いくつか確認をさせていただきたい点があります。まず1つ目、保証業務実施者という記載があるんですけれども、これは今まで監査法人系とそれ以外というふうに分けて議論がされてきていて、この保証業務実施者については特に監査法人系について、監査法人ができるのか、監査法人の子会社ならできるのかというのが議論としてあったと思います。この点は監査法人本体ができるということを想定しているのかということについて御確認させていただければと思います。
もう1点だけ、もし監査法人ができるとすると、指定社員の通知というのができるのかどうかというのも気になっています。特に、1点目について御確認いただければと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございます。ただいまの御質問につきまして、事務局から御回答をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
今、関口委員から御質問いただいた点ですけれども、今回のサステナビリティ保証については、公認会計士法におけるいわゆる2条2項業務に該当するものであって、監査法人本体でも実施可能なものと事務局としては整理をしているところでございます。
【神作座長】
よろしいでしょうか。
【関口委員】
ありがとうございます。2点目はそういう理解でいいのかなと理解しているんですが。
【反町開示業務室長】
2点目については確認させていただけばと思います。
【関口委員】
はい。
【神作座長】
どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】
御指名ありがとうございます。私も、ご提案の3点につきましては事務局の御提案に対して特段の異論はありません。
ただ、1点、既に弥永委員がおっしゃられたことですけれども、資格制の公認会計士と資格試験等のない非財務の保証業務実施者の個人としての罰則規定がどういうふうに執行できるのかという点については私も同じ懸念を抱いておりますので、その点を明確にしていただく必要があるのではないかと思います。
それからもう1点はお願いですけれども、セーフハーバー・ルールの適用については、御説明を聞いている限りにおいても結構複雑なケースが考えられるように思いますので、具体的な例等を挙げて少し整理をし、分かりやすく説明していただけるとよいと思います。この2点です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、藤本委員、どうぞ。
【藤本委員】
藤本です。御説明、あと、事務局のほうで取りまとめいただき、ありがとうございます。私からも何点かコメントをさせていただきます。
まず今回、保証業務実施者のエンフォースメントを中心におまとめいただいていると思います。これは新しい制度が入っていくということで罰則規定等も非常に重要だと考えておりますけれども、一方で実務を広げていくという観点も重要だと思いますので、そこのバランスをどうやって取っていくかということかと思っております。そういう意味では慎重に検討しなければいけない点もあると思っていますので、具体的には今後、法令、あるいは省令、ガイドライン等をお決めになられるところでもしっかり私どもとしても確認をしてまいりたいと考えております。
先ほど関口委員のほうからも御質問があったとおり、会計士法のどの条文に当たるのかということは私も明確にしていただきたいと思っていたところでしたので、先ほど御回答いただいたように、2条2項業務である、監査法人が実施できる業務であるということで承知をいたしました。
そうなってきますと、先ほども委員から御意見があったように、今回、金商法上の手当てが前提になっていますけれども、公認会計士法における責任や処分といったものをどう考えるのかということが、他の保証業務実施者とのイコールフッティングを目指すというところでいいますと、やはり課題になってくると思っております。この点も会計士法の公認会計士や、監査法人に対する責任とか処分の取扱いは明確にしていただき、もしイコールフッティングではないところがあれば、何らかの形での手当ても御検討いただけたらと思っております。
その中で一つ気になっているのが、金融庁に登録するのは組織としての法人格のあるものが想定されていると思いますけれども、個人に対してはどのように考えられているのかという点です。業務執行責任者というものは設けられる想定だと思います。いわゆるサイナーという形になろうかと思いますけれども、そういった方々が例えば処分を受ける可能性があるのかどうか、この点は結構重要になってくると思っています。場合によっては例えば法人のある業務の中で仮に処分を受けるようなことがあったときに、業務執行責任者の方が他の組織に移ったときに、個人としてはその業務が実施できてしまうということが果たしてよいのだろうかという点もございます。これはどちらがいいのかというのは別として、論点としては検討が必要ではないかと考えております。
それから、セーフハーバーについては、企業のほうでセーフハーバーが適用されるということであれば、保証業務実施者も同様にそれを適用すべきというのはそうだと思っていますが、論点がちょっとずれて申し訳ないんですけれども、先ほどお示しいただいたセーフハーバーの対象について、見積り情報を本当に入れていいのかどうかというのは懸念をしているところでございます。SSBJ基準では合理的な見積りをすることが想定されていますし、それを超えて別の形で規定をしてしまいますと、日本のサステナビリティ制度が機能的に同等と言えるのかという国際的な比較可能性の観点で懸念が生じないか、財務諸表の中でも会計上の見積りが行われていて、そこは当然セーフハーバーの対象外ということになっておりますので、そことのバランス、諸外国においてもセーフハーバーの対象がどの程度規定されているのか、そことのバランスを見てグローバルの投資家からどのように見えるのか、懸念が生じないかという点も併せて御検討いただけたらと考えております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、オンラインで御参加の阪委員から御発言の御希望をいただいております。阪委員、どうぞ御発言ください。
【阪委員】
阪と申します。発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
19ページで御提案いただきました内容について、全体として賛同いたします。考え方として、SSBJ基準によるサステナビリティ関連財務情報開示は財務報告の一部でありますので、財務諸表の場合と同様の考え方を採る御提案の内容に賛同するからです。
SSBJ基準で開示を求めていますのは、「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込みうるサステナビリティ関連のリスクと機会」であります。このリスクと機会の識別や開示する情報を識別する重要性の判断に当たっては、財務諸表と比べて、15ページに記載されています将来情報等が含まれること、また、経営者の判断がより強く求められることがあると考えております。財務諸表とサステナビリティ関連財務開示は、それぞれ固有の目的を持ち、異なる情報を提供するため、開示すべき情報の判断は異なります。経営者のこの判断について保証業務実施者がブレーキをかけないという意味でも、企業にセーフハーバー・ルールが適用される場合は保証業務実施者も法的責任を負わない仕組みとすることについて賛同しております。併せて、企業にセーフハーバー・ルールが適用されない場合は保証業務実施者にも固有のセーフハーバー・ルールを設けないということについても賛同しております。
重要なサステナビリティ関連財務情報の開示控えが起きることなく、しっかり企業に開示していただくためにも、特にセーフハーバー関連の枠組みをおまとめいただきましたことに改めまして感謝を申し上げます。
私からは以上です。どうもありがとうございました。
【神作座長】
どうも御意見ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
堀江先生、どうぞ御発言ください。
【堀江委員】
どうもありがとうございます。今回は法的な論点についての議論ですので、もしかするとちょっととんちんかんな発言になるかもしれませんので、お許しいただければと思います。3点確認させていただきたいと思います。
まず1点目は、資料の6ページ目になりますが、先ほど藤本委員からも御発言がありましたが、法人に対する責任だけでなくて、業務執行社員に対する責任についてです。行政責任は基本的には法人に対する責任として記載されていますが、この「具体的には」で始まる文章を読みますと、「保証業務実施者」が主語になっていて、この後になると「保証業務実施者等」というふうな言葉も出てきたりしています。この保証業務実施者という概念ですけれども、前回のワーキングでもこの言葉は使われたわけですけれども、この定義について、再度、法人だけに限定しているのか、あるいは業務執行社員も含むものなのかということについて1点目確認させていただければと思います。
それから、2点目の確認事項でございます。保証業務の実施者に対して、いわゆる虚偽保証に対するセーフハーバー・ルール、この適用については賛同いたします。その前提として、今度は資料の15ページ目になりますけれども、小長谷課長から詳しく御説明いただいたところではございますが、将来情報、見積り情報、統制の及ばない第三者から入手した情報に限定しつつ、「限定」という言葉が出てくるわけですが、次に、「一定の柔軟性も必要」という、こういう用語も登場いたします。
これも私は基本的な考え方としては賛同いたしますが、その上でこの柔軟性という言葉の解釈をめぐっての確認です。本ワーキングの中間論点整理では定性情報という用語も使われておりました。そこで、この3種類の情報以外にも対象となる情報があり得るという考え方なのか、あるいはこの3種類の情報に限定した上で、その内容、例えば将来情報と過去情報との線引きとか、あるいは統制が及ぶ、及ばないといった影響範囲の程度とか、こういったところに弾力性を持たせるという考え方なのかどうか確認をさせていただければと思います。
それから、3点目の確認事項でございます。これはちょっと資料がないんですけれども、保証につきまして、これまでのワーキング・グループでの議論ですと、当面2年間は緊急避難的な措置として、ガバナンス、リスク管理、Scope1・2に保証の範囲を限定すると、こういったものであったわけですけれども、開示情報全てを対象とした任意の保証、これを妨げるものではないということでよかったかどうか。もしその場合、開示情報全体に対する任意の保証があった場合にも、セーフハーバーのルールが適用されるのかどうかということについて確認をさせていただければと思います。
あくまでも確認事項でございますので、ごく簡単な御回答で結構でございます。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。3つの確認事項について事務局から御回答をお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
まず、1つ目の御質問についてですけれども、保証業務実施者という言葉は、ここでは業者を指す、法人を指すものとして使っております。したがって、行政処分につきましては個人に及ぶものではないと考えております。
2点目の、15ページにある柔軟性という言葉の意味についてですが、セーフハーバー・ルールの適用範囲、適用対象となる情報としては、あくまでここにある3つ、非財務情報のうちの将来情報、第三者情報、見積り情報と考えておりまして、その枠からはみ出すことを想定しているものではございません。むしろ、堀江委員から御発言のあったような、例えば将来情報と過去情報の境目とかそういったちょっと不明瞭になりがちな部分を明確化する、そういうところの解釈に柔軟性を持たせるという意味でガイドラインで規定することを想定しております。
3点目の任意の保証については、前回のワーキングで任意の保証の要件を挙げたところですが、それらの要件を満たすものであれば、保証報告書を有価証券報告書に添付することができる方向にしようと考えておりますし、その場合は仮に任意であってもエンフォースメントの対象となりますし、同時に堀江委員からお尋ねのあったとおり、セーフハーバー・ルールの適用対象にもなると整理しております。
【神作座長】
よろしゅうございますか。ありがとうございます。
本日、高村委員が途中で御退席と伺っておりますけれども、オンラインで御参加の高村先生、もし何か御発言がございましたら、御発言を承りたいと存じます。髙村先生、いかがでございましょうか。
【髙村委員】
神作先生、どうもありがとうございます。基本的に、本日事務局から御提案をいただいている事項については異論がございません。その上で、既に委員からも御指摘があった点でありますけれども、2点だけ意見を述べさせていただこうと思います。
一つは、本日事務局の資料の中でも、一つ原則といいましょうか考え方として示されている、保証に当たる主体が、場合によっては異なる分類のといいましょうか、カテゴリーの主体についてもイコールフッティングで、行為規制等を含めて同等に適用されると。それは資本市場に提供される情報の信頼性・真実性の維持を保証するために重要な点としてその大原則を踏まえていただくということが重要だと思っております。
その上で、弥永先生はじめ御指摘ありましたけれども、やっぱり一定の、とりわけ個人の責任、保証に当たる従事者に対する責任あるいは規制の観点で、場合によっては齟齬が生じ得る可能性があるのではないかという懸念が、御指摘があったかと思います。この点、御指摘も、御意見の中にもありましたように、今すぐということではないにしても、やはり運用の中でその点はしっかり見ながら追加的な対応が必要だと私も思っております。
あともう一つ、2点目でありますけれども、先ほど御指摘のあった見積り情報についてであります。将来情報等の中に含まれる見積り情報についてです。これはディスクロージャーワーキングの中でも事務局から資料の提示をしていただいていたかと思いますが、当然見積り情報について、ISSBの基準を基にしたSSBJの基準の中でも、どのような情報が合理的な、いわゆる開示の上で使うクオリフィケーションのある情報かという点については、一定の特性といいましょうかの基準を設けていると思っております。こちらを踏まえた上で、ここでのセーフハーバー・ルールにある、何がこのセーフハーバー・ルールの下で虚偽記載と当たらないものなのかという点についてはルールがつくられると理解をしております。もしその理解と違っているようでしたら、御説明をいただければと思っております。
以上です。
【神作座長】
髙村先生、ありがとうございました。2点目につきましては、御理解のとおりでよろしいかと思います。どうもありがとうございます。
それでは、ほかに御意見はございますでしょうか。吉元委員、どうぞ御発言ください。
【吉元委員】
ありがとうございます。吉元です。私は今日は個別論点ごとというよりは、エンフォースメント全体の設計についての意見を述べさせていただいて、その中で必要に応じて個別論点にも触れる形とさせてください。
まず、エンフォースメントの全体設計として、監査法人に対する規制と同様にするという事務局案に賛同いたします。サステナビリティ情報は、その外縁も明確でなく、定性的な情報も多く含まれますので、どのような形で保証が与えられていくのかということについては、保証業務実施者と企業が中心となって実務を積み重ねていく必要があると思っています。
そういう状況とかサステナビリティ情報開示のそういう性質ということを考慮すると、制度運用開始時の設計としては、広くサステナビリティ情報の全般について、監査法人に対する規制よりも保証業務提供者に対する規制を緩やかにするという考え方もあり得るかなとは思うところではありますが、ただ、個別に見ていきますと現実にどのエンフォースメントを緩めるかというのは制度設計としては結構難しいところもあるなと事務局資料を見て考えているところです。
例えばですが、行政責任のところで課徴金をどうするかというところはありますが、業務停止命令などの行政処分は間接的に企業に影響が及ぶということもありますので、やはり課徴金という面は行政責任としては必要と思いますし、民事責任についても、立証責任を転換した過失責任まで要求するかというのが一つの論点だとは思うんですけれども、ただ一方で単なる過失責任となってしまうとそれはもう民法上の不法行為と一緒で、そうであればわざわざ特別法で手当てする必要はないということになります。
企業も監査法人も立証責任を転換した過失責任が問われることを考えると、やはり保証制度の信頼性向上という観点では、事務局案のように保証業務提供者にも同様の責任を法定するということが合理性があるように考えております。以上のことから、全体の設計としては、刑事責任だけでなく行政責任、民事責任についても監査法人に対する規制と同様にするというのがベースの考え方となるんだろうと思っております。
その上でなんですけれども、資料15ページにあるようなディスクロWGの議論における「サステナビリティ情報のうち特に将来情報等についての不確実性が高く、正確性を求めることが当事者のニーズや企業負担の観点から必ずしも相当とは言えない」という指摘については重要と考えております。そういう不確実性の高い限定された将来情報等については、課徴金制度を必要とするような、保証業務実施者による虚偽証明がされるリスクも相対的には低いのではないかと考えております。
また、ディスクロWGでは、企業の免責対象として、民事責任に加えて課徴金も含む方向で議論されているということを前提としますと、将来情報等について免責対象の範囲として、民事責任だけでなく課徴金も含むという事務局案に賛成しております。そうすることで、少なくとも将来情報等に関する保証業務実施者と企業の負担は、心理的な負担も含めて相当程度軽減されて、前向きな開示が促されるということになるのではないかと思っております。以上が論点についての意見でございます。
それから、保証業務実施者に対する規制をどういう法律でどういうふうに手当てするかというところは、先ほどの弥永先生とのやり取りの中で金商法上の業者規制として手当てされると理解しました。その上でなんですけれども、監査法人含めそれ以外の保証業務実施者となることを検討されている方々の予見可能性を高める意味でも、保証業務実施者に対する規制の全体像を早めに示していくということが望ましいと思っております。
最後に、御議論いただきたい事項に含まれていなくて大変恐縮なんですけれども、事務局資料の冒頭でまとめていただいている前回の議論のうち、有報の提出期限の延長について、一言触れさせてください。前回のWGの後に弊社の社内関係者とも改めて議論したんですけれども、やはり法定期限を徒過しそうなケースに、そのようなときに訂正報告による二段階開示しか認めないというのは、制度としてはやはり少し硬直的に過ぎるんじゃないかなと実務の感覚としては思っております。期限を徒過する理由も、その程度もケース・バイ・ケースで実務ではあり得ると思っていますので、当局がある程度個別事情をしんしゃくして提出期限延長を認め得るような、そういうルートも用意されているのが望ましいのではないかと思っています。
一方で、提出期限の延長を実際に行うということになると、それは財務パートも含めて後発事象期間が延びるというような問題もございますので、企業としては当然法定期限内での提出を目指しますし、別の文脈ですけれども、総会前の有報開示、早期開示ということも要請されている状況ですので、制度上、有報の提出期限延長を認めたとしても、それが頻発するということは現実的には起こらない、極めてまれなんじゃないかなと思いますので、制度運用開始当初の補助輪といいますか安全弁として改めて御検討いただけないかなと思っている次第でございます。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。最後に有報の提出期限の延長について、吉元委員からコメントをいただきましたけれども、この点について事務局から何かコメントはございますか。
【小長谷企業開示課長】
ありがとうございます。今、吉元委員から御発言いただきました有価証券報告書の提出期限についてですけれども、前回会合におきましても、この資料の2ページにございますとおり、例えば保証報告書がタイムリーに出てくるかどうか不明である、現時点では分からないとか、あと、企業としては、今お話にもあったとおり、訂正報告書による二段階開示に抵抗があるといった御懸念の表明を、吉元委員や柿原委員はじめ複数の委員、オブザーバーからいただいたところと認識しております。
この点については、現行の金商法の下で、やむを得ない理由があって法定の期間内に有報を提出できないと認められる場合には、あらかじめ当局の承認を得た上で提出期限の延長をすることができるという規定がございまして、どのような理由がやむを得ない理由に該当するかどうかについては開示ガイドラインの中で明確化されているところでございます。今のお話にもございましたけれども、各企業におけるSSBJ基準適用開始初年度及び保証制度の導入の初年度において実務上の何か混乱を来すことがないように、今申し上げた延長承認の制度を柔軟に運用することができないかどうか、今後、開示ガイドラインの改正を行うことも含めて検討したいと考えております。
【神作座長】
どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。
それでは続きまして、三瓶委員、御発言ください。どうぞ。
【三瓶委員】
御指名いただき、ありがとうございます。私も、まず結論から申し上げますと、全般の事務局案について賛同いたします。
その上で賛成にも濃淡がありまして、7ページのところ、課徴金制度の規定についてなんですが、本来は保証業務実施者が行うべき業務に疑義があり、責任を問う場合には、その軽重に応じて行政処分するということが適当だと思います。ただし、そのときに、今回は従来の監査法人さんだけじゃなくて、新たな保証業務実施者が参入してくるということを考えたときに、その規模というのはまだ分かりませんけれども、法人さんの規模というのは相当ばらけるのではないかなと。
そうすると、この今の御説明にあるような、業務停止命令を出すことによって無関係なその他の企業にも影響が及ぶというのは、大規模な監査法人さんの場合にはまさしく想定し得るんですけれども、そうじゃない小規模な、例えば新規の業者さんの場合に、保証内容が非常にまずいから本来は業務停止命令かなと思ったときには、ほかでも同様のことが起こっているのかもしれなくて、その場合は完全に業務停止にしたほうがいいのではないのかと思うんですね。ですから、ここはそういった法改正があったときの前提とちょっと違う要素もあるのではないかと思います。
とはいえ、だからこそ、行政としては選択肢が多いほうがいいのかなということも理解できますので、そういうふうなことも踏まえた選択肢をうまく活用いただく運用に期待をするという意味での、ここに書いてある説明が全て腹落ちして納得というよりは、そういう心配事もちょっとありつつ、消極的賛成というんですかね、運用のほうで非常にうまくこの選択肢を活用していただきたいということだけ申し上げておきます。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、森内委員、どうぞ御発言ください。
【森内委員】
御指名ありがとうございます。まず、私はエンフォースメントや法的責任に関して専門家ではございませんし、また、エンフォースメント実務に関する知識も十分でない立場でございます。本日申し上げる意見は、事務局からの事前の御説明及び事務局資料をレビューして理解できた範囲内で形成した意見でございますが、理解が不足している点あるいは理解が間違っている点があり得ることは申し上げます。その上で、3点意見を申し上げさせていただきます。
19ページ、御議論いただきたい事項の中で、まず行政責任のところです。保証業務実施者の業務の適切性を確保するという観点から、行政処分や課徴金制度などのエンフォースメントを整備する必要があるという事務局の御提案には賛同いたします。その上で、エンフォースメントの範囲や強度につきましては、誰を保証業務実施者の担い手と想定するのか、あるいは登録要件をどの程度厳格に設定するのか、また、保証基準、保証水準をどのように設定するのかといった制度設計上の前提条件によって変わり得るものではないかと考えました。したがいまして、担い手の範囲、登録要件、エンフォースメントをパッケージとして整合させることが、制度の実効性と公平性の観点から重要ではないかと考えております。
2点目です。御議論いただきたい事項の全般に関わるところでございます。サステナビリティ保証制度の国際整合性を確保する観点から、海外におけるサステナビリティ保証のエンフォースメントを参照することも検討していただきたいと考えております。事務局資料では、公認会計士法、金融商品取引法など日本の既存の監査制度との比較が中心となっております。一方で国際的には、CSRD、ESRSに基づく各国の保証制度、特にフランスにおけるH2Aの監督や、持続可能性監査人等に対する制裁措置など、サステナビリティ保証に特化したエンフォースメントが適用されているのではないかと存じます。今後、日本の制度が国際的に受容され、投資家にとっても比較可能性が確保されるよう、海外制度のエンフォースメント、規制当局の権限なども参考にするということは有益ではないかと考えます。
最後、3点目です。セーフハーバーについてです。企業にセーフハーバー・ルールが適用される場合、保証業務実施者の民事責任や課徴金責任も免除するという事務局の方向性につきまして、その整理自体は金融商品取引法との整合性も重視したものと理解をしております。一方で、企業側がセーフハーバーの要件を満たしていたとしても、保証業務実施者の側に独立した重大な過誤あるいは手続上の瑕疵が存在する場合には、利用者保護、品質保証等の観点から、責任の取扱いについては慎重な検討が必要ではないかと考えております。特に保証業務実施者は独立した専門家としての職責を担うことから、17ページの3ポツ目のセーフハーバーのこの記載が、企業のセーフハーバーが自動的に保証業務実施者へも及ぶ仕組みと解釈され得るのであれば、保証制度全体の信頼性の観点から検討の余地があるのではないかと考えております。
以上です。
【神作座長】
どうも御意見ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
それでは、近江委員、どうぞ御発言ください。
【近江委員】
近江です。御指名ありがとうございます。
まず、19ページの議論事項について意見を述べさせていただきます。まず、サステナビリティ情報の保証制度におきましては、投資家保護、信頼性確保と、企業の積極的な情報開示の両立が重要だと考えます。投資家が安心して企業のサステナビリティ情報を活用できる環境を整えることが長期的な企業価値向上にもつながると思いますので、その観点から、示されております事務局案に対しておおむね賛成いたします。
まず、行政責任につきまして、保証業務実施者に対して、一般的な行政処分に加えて虚偽記載などに関する課徴金制度を規定することは、保証業務の信頼性向上には有効であり、監査法人と同等の規制を適用することで制度の公平性・透明性が確保され、投資家保護にも資すると考えます。一方で、課徴金制度の厳格な適用によって、保証業務への参入のハードルが上がってしまって、例えば新規参入が阻害されてしまう可能性とか、あるいは課徴金リスクにより保証コストの上昇などにつながるなどの可能性もありますので、制度設計上の工夫は重要かと思います。
刑事責任については、守秘義務違反などの重要な行為規制に罰則を設けることは妥当であると考えます。企業が安心して情報提供できる環境を整えるためにも、保証業務実施者の守秘義務違反に対しては、監査法人と同様の規制を設けるべきだと考えます。一方で、サステナビリティ情報は見積りや将来予想を含むため、虚偽保証に対して刑事責任を課さない方針は合理的だと考えます。過度な責任追及が保証業務の萎縮につながらないようバランスが重要だと考えます。
民事責任については、情報の非対称性を踏まえて立証責任を保証業務実施者側に転換することで、投資家が損害保証などを請求しやすくなります。これは投資家保護の観点からも賛成です。また、企業にセーフハーバー・ルールが適用される場合、保証業務実施者も民事責任を免責する仕組みは合理的だと考えます。企業が積極的に情報開示できる環境を整えるためにも、保証業務実施者への過度な責任追及は避けるべきかと思います。一方、企業にセーフハーバー・ルールが適用されない場合は、保証業務実施者に固有のセーフハーバー・ルールを設けないことも妥当だと考えます。
最後に、発展途上であるサステナビリティ情報の特性を踏まえた制度設計が求められますので、セーフハーバー・ルールの適用範囲や要件を明確化し、企業、保証業務実施者双方が過度なリスクを負わずに、投資家に有用な情報が開示される仕組みを構築されるということに期待しております。
以上です。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、井口委員、どうぞ御発言ください。
【井口委員】
ありがとうございます。御説明ありがとうございました。御議論いただきたい事項に沿って発言させていただきます。
最初の行政責任、それから刑事責任につきましては、財務諸表監査と保証は、基本的に同様の課題があると思っておりますので、御提案の方向性に賛同いたしたく思っております。
最後の民事責任のところですが、セーフハーバー・ルールが開示に適用された場合、保証業者の方も免除される方向に賛同いたします。こういった仕組みによって、企業により有用な開示をよりしていただくということで、開示に対するセーフハーバー・ルールの効果をより高めることにつながると思っております。
17ページの下のところですが、企業にセーフハーバー・ルールが適用されない場合には保証業者も免除されないところに関しても原則賛同したく思っておりますが、この条件というのが、16ページに書いていらっしゃるガバナンスと確認書のところがしっかりしているということと理解しております。ガバナンスの開示は保証業者の方が保証されるというのは決まっていますが、自分の中でクリアになってないのは、確認書に対して保証業者の方がどういうことをされるのかということになります。ただ、原則としては、大きな方向性としてはいいのではないかと思っております。歯切れが悪い回答になりますが、以上です。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、芹口委員、御発言ください。
【芹口委員】
御指名いただきまして、ありがとうございます。19ページの3つの責任全般につきまして、基本的には賛同いたします。監査法人への規制と同等の枠組みで同程度の水準を求めるコンセプトで御検討いただいていると思っておりまして、高い質の確保のためには適切だと考えております。
特に民事責任のところについてコメントをさせていただきますと、まず1点目の、立証責任を被告に転換した責任を求めるというところにつきまして、利用者の立場からは歓迎するものでございます。
また、2点目のセーフハーバーにつきましても、基本的には賛同致します。理由としましては、仮に企業には虚偽記載の免責を認める一方で、保証業務実施者に免責を認めないとしますと、保証手続が厳格になり、本来セーフハーバーの趣旨は開示の萎縮を防ぐことにあるところ、その目的が達成されないおそれがあると考えているためです。
一方で、企業の虚偽記載責任のセーフハーバーにつきましては、ディスクロージャーワーキング・グループで、故意でないことも要件とすべきか議論されていると認識をしております。ルールの詳細についてはこのワーキング・グループで検討するものではないと理解しておりますが、保証業務実施者が虚偽記載について故意である場合には、当然免責に値しないのではないかと思っております。したがいまして、企業側の要件を固めた上で、保証業務実施者についても手当てがなされるべきか検討をお願いしたいと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございます。それでは続きまして、浅川委員、どうぞ御発言ください。
【浅川委員】
御指名いただきまして、ありがとうございます。事務局資料、御説明いただきありがとうございました。私からも御議論いただきたい事項に沿って、コメントさせていただければと思います。
まず、行政責任について、保証業務実施者に対して一般的な行政処分に加えて、課徴金制度を規定するという事務局の案に基本的に賛同いたします。その上で、財務情報よりも非財務情報、今までもいろいろお話がありましたが、不確実なデータ等を取り扱って、また、抜け漏れあるいは間違い等、虚偽の内容としてそういったものの発生が高いと推察される、そういう特性も踏まえて、どういった基準でどういったタイミングでどういうレベルで行政処分を出すのかというところについての明確化は、ぜひ検討いただきたいと思います。
具体的な基準の一つの参考になるのかもしれませんが、例えば、既に検証機関あるいは主任検証人が排出量を検証して強制力を持つという制度は、東京都環境確保条例等で罰則規定を含めてすでに実施されている制度もありますので、検証機関という「組織」(個人ではない)が検証したときに、どのような問題が発生しどう対応しているかというような状況については、非財務情報についての一つの参考にもなるのかなと思います。
次に、刑事責任について、監査法人と規制のイコールフッティングという観点で罰則規定をつくるという事務局案についても基本的に賛同いたします。その際、先ほどの行政責任と同様に非財務保証の特性があると思いますので、同様に基準の明確化というのはお願いしたいと思います。
それから、3点目の民事責任につきましては、虚偽記載等について保証を行った場合の、立証責任が転換された民事責任を規定するということについても事務局案に基本的に賛同いたします。
また、ディスクロージャーワーキング・グループで議論されておりましたセーフハーバー・ルール、こちらで保証業務実施者が適用される場合、適用されない場合がありますよということについての事務局案についても基本的に賛同いたします。
その上で、こういったいろいろな責任を問われるような状況に基本的にはならないようにしておくというところもすごく大事なポイントだろうと思いますので、保証業務に係る品質確保をどういう形で維持するのかというところも併せて検討の材料になるといいのかなと思いました。先ほど御紹介しました、例えば東京都確保条例、あるいはISOの認定審査では、事務所審査とか、現地の同行審査、報告書の確認も含めてということで品質確保あるいは独立性、倫理性のチェックというものを第三者機関、制度管理者だったり認定機関だったりが毎年行っているというようなしくみ・制度・スキームもありますので、そういったそれぞれの主体の責任を明確にすることで、制度としての牽制機能を持って、制度としての品質維持に寄与するのだと思いますし、先ほどお話ししたいろいろなガイダンスの状況を明確にするということで、制度としての透明性や信頼性も向上するのかなと思います。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、清原委員、どうぞ御発言ください。
【清原委員】
ありがとうございます。私も最後の御議論いただきたい事項についてコメントさせていただきたいと思います。全般的には、今回御提案いただいたところで私も賛同しているところであります。個別に、一番最後の民事責任、ここのところから話をしたいと思います。
今回のところでは、やはり開示の充実と開示の信頼性の確保がコアになるところで、この民事責任の話、それからセーフハーバーのところは、やはりこの両面から考える必要があると思っており、財務情報と非財務情報、特にサステナビリティ情報についての類似性と相違点、これも併せて検討していくということがあるかと思っております。
その中でサステナビリティの情報に関する特に法的責任、それから、セーフハーバーは、別途ディスクロージャーワーキングで議論されておりますように、やはりサステナ情報の特性を踏まえた責任の在り方というのがまだ十分明確になり切っていないところがあり、そういったところも踏まえて、どういうふうに考えていくかですが、財務情報について、監査法人の民事責任が規定されていて、かつセーフハーバーというものがないということを踏まえたときに、サステナの保証業務の実施者に対してセーフハーバーがあるというのは、やはりそもそも論としてちょっと違和感があります。
ただ、監査法人の責任に関する条文を見ますと、具体的には12ページになりますけれども、21条の1項3号がまずあって、それを受けて2項2号があるかと思うのですけれども、監査証明において、当該監査証明に係る書類について記載が虚偽でありまたは欠けているものを虚偽でなくまたは欠けていなかったものとして証明した場合に監査法人などが責任を負うということ、それで2号のほうで立証責任の転換があると。おそらく条文の建付けとして、サステナビリティ情報の保証業務実施者についても同様に、虚偽記載があるものをないもの、欠けているものがあるのにそれを欠けていないという保証をした場合に責任を負うという規定になるのだろうと考えられます。そうするとまず、やはり本体になるところについて、セーフハーバーの適用によって虚偽記載等がないと認められた場合には、虚偽記載等があることを前提として補充責任を負う保証業務実施者のほうの責任についても結果的に責任を問われないことになるはずだ、と。いわば反射的に民事責任というものは負わないことになるというべきだろうと思います。本来であれば、その者の実施した保証業務について落ち度があれば、責任を問うというふうに考えてもよいところではありますが、民事責任の構造上はそういった補充責任となっていること、これが出発点かと思いますので、結果的に責任を問われないことになるのは、これはまあ正当なのかなと考えるところであります。
他方、企業の側が開示をするに当たって、やはり開示を充実する上で萎縮が生じないようにという意味でセーフハーバーを設けて、やはり少しの「ずれ」といいますか、そういったものがあったときにも責任を問われることを過度に恐れることなく、開示充実を促進する。
他方、第三者的に企業の開示をチェックする保証の側について何か落ち度がある場合、これももちろん考えられるところですので、ここで一番重要なものとして情報の信頼性を考えるとすると、行政のエンフォースメントが、そのような保証業務実施者の手続などについてやはり欠けたものがあったときにはしっかり見ていくことができるということ、これが出発点としてあるということが制度を考える上で重要になると考えるところであります。
その意味で、今回制度設計に当たり、保証業務実施者を自主規制でなく当局のほうに登録をし、それから、検査・監督も、当局の側がまず導入のところからしっかり見られるという形の制度を始めているというのは、非常に理にかなったといいますか、適切だったなというところがあります。
その上で、おそらく当初は少数の保証業務実施者から制度がスタートして徐々に拡大していく、その蓄積の中で、やはりサステナ情報の保証業務に対する検査・監督の在り方または責任・エンフォースメントの在り方ということを、積み重ねていくことができるような、そういったスタンスに立った制度のスタートの仕方が今回は期待されるところではないかなと考えるところであります。
少しまとめ的なお話をさせていただくと、開示の充実を図る上で、やはりセーフハーバーというものをしっかりと入れようという発想に立っているけれども、開示の信頼性を確保するという意味においては、やはり法的責任のところで厳密な責任を問うのではないけれども、行政の監督、エンフォースメントがしっかり行えるように、それに必要な程度、ある種の柔軟性があっていいと思います。やはり実務に即した問題、課題に対しては適切に対応できるよう、制度が設計され、かつ運用ができるような、そういったことに進んでいくことが適切という意味において、民事責任は法律上、セーフハーバーを規定しつつ、行政責任、課徴金のところについてはガイドラインによることとして柔軟性も残しつつ見ていく、というアプローチも、保証業務実施者に関して考える上でも適切ではないかと考えるところです。以上まとめますと、やはり行政庁にある種多く依拠するといいますか、期待するところが今回は大きいのではないかと考えるところであります。
あとは、一つ適切な御指摘がほかの委員からあったところですが、見積り情報についてのセーフハーバーの要件の細かな設定について、これは今後詰めていく話になるかと思うのですが、そこは見積りの性質に応じたものとしては、やはりほかのものとは少し違う面があるかなということと、SSBJ基準の中で、正確性というのをどういうふうに確保されるかという基準もあったかと思いますので、そういったことを踏まえた上で具体的な要件が設定されていくことを期待したい、ということを添えつつ、私からのコメントさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。オンラインで御参加の柿原委員、もし御発言がございましたら、御発言いただけますでしょうか。
【柿原委員】
恐れ入ります。遅れまして、申し訳ございませんでした。ありがとうございます。柿原でございます。では、項目に沿ってコメントさせていただきます。
まず、保証業務実施者に対する行政責任は、事務局提案に賛同いたします。資料の7ページ目に記載いただいている内容は、公認会計士や監査法人に対する課徴金の規定と同等なものであり、妥当な内容と考えております。
次に、刑事責任につきましても、10ページに記載いただいている事務局提案の方向性に賛同いたします。1点だけ側面的なことを申し上げさせていただきますと、保証実務実施者の守秘義務につきましては、監査法人とのイコールフッティングの確保が重要ですので、監査法人の罰則に関する概要を資料としてお示しいただくことで、より関係者の理解や安心につながるのではないかと考えます。御検討いただければと存じます。
続いて、民事責任等についてです。保証業務実施者に対して、虚偽保証を行った場合に立証責任が転換された民事責任を問うことは、慎重な検討が必要と考えております。ディスクロージャーワーキング・グループでも議論になったようですが、我が国の立証責任が転換された民事責任というのは、諸外国と比べて被告の責任が問われやすい厳しい制度であり、この制度をそのまま導入した場合、保証業務実施者が慎重となり、結果として企業に対して根拠資料の提出などを過度に要求するといったことにならないか懸念しております。そのため、17ページの事務局提案で、保証業務実施者に固有のセーフハーバー・ルールを設けず、企業と同様の取扱いをするという案が示されていますけれども、有報における将来情報等の合理性確保のための推論過程等の開示が真実でないことを保証業務実施者が発見することは困難なケースも想定されます。保証業務実施者のセーフハーバー・ルールにつきましては、有報における推論過程等の開示が真実でないことを保証の過程で把握できる場合には免責されないといった規定が望ましいと考えます。
最後に、今回の御議論いただきたい項目ではないんですけれども、2ページ目に記載されております第9回の議論のうち、有報提出期限の延長に関して1点だけ申し上げさせてください。第9回の場で作成者としての課題認識を十分お伝えしたかと思いますけれども、やはり制度上は1か月の延長を認めるべきと考えました。少なくとも法制審議会での議論である有価証券報告書と事業報告書等の一本化の具体的な方向性が見えていないこととか、以前から、ほかの参加者の方も含めて希望している、取引所規則も含む開示全体のレビューがいまだになされないことを考慮いただきたいこと及び、Scope3を含む広範な開示が求められていることを考慮いたしますと、今回の本ワーキング・グループの取りまとめで提出期限を延長しないと結論づけるのは避けるのが望ましいのかなと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。本日御参加の委員の皆様から御発言をいただきました。大変ありがとうございました。
ここで、オブザーバーの方の御意見をお伺いしたいと思います。オブザーバーの方々でもし御意見がございましたら、時間制限をして恐縮ですけれども、1人当たり2分以内で御発言をお願いしたいと存じます。いかがでございましょうか。御発言の御希望はございますか。
それではまず、経団連の神谷さんお願いいたします。
【日本経済団体連合会】
御指名ありがとうございます。経団連の神谷と申します。
セーフハーバー・ルールついては、日本における保証業務の実務が諸外国に比して過度なものとならないようにとお願いしてきたところ、このたびの金融庁事務局のお取り計らいに感謝します。作成者と同様に、保証業務実施者にとってもセーフバーバー・ルールは重要と考えております。
また、最適なサステナビリティ保証業務のレベル感については、保証業務実施者や作成者だけではなく利用者の視点も重要であり、あるべき重要性の水準については、関係者で議論をしつつ、共通認識を持っておく必要があると思います。
それから、吉元委員、柿原委員からも御指摘がございました有価証券報告書の提出期限延長については、金融庁事務局から先ほどご説明頂きました、ガイドラインの見直し等を通じて延長承認の制度を柔軟に運用することで対応するご提案に大変ありがたく思っております。吉元委員からも御指摘がございましたとおり、企業としては期限内での提出を目指す一方で、新しい制度でもあり先行きが不透明な現況下においてはバックストップとなる仕組みも必要かと考えます。またSSBJ基準の適用が開始されてから、その後における実務の状況や定着度合いを見た上で、あるべき制度設計のあり方を改めて判断すべきであり、ぜひ御配慮いただければと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、日本公認会計士協会の太田さん、お願いいたします。
【日本公認会計士協会】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。日本公認会計士協会の太田でございます。
今回議論の対象となっております保証業務実施者のエンフォースメント、これは非常に重要な論点であると考えております。エンフォースメントの前提として、先ほど公認会計士法第2条の考え方をお示しいただきました点、承知いたしました。この公認会計士法も参考にしながら、今回法人に対するエンフォースメント検討をいただいております。委員の方から発言もありましたとおり、公認会計士法は、個人の義務をベースにしながら法人の義務が整理されてございます。法人のみを対象とする場合、このバランスが崩れる可能性もあると思いますので、慎重に御検討いただければと考えております。
また、サステナビリティ情報の保証についても、いわゆる二重責任の原則、作成の一義的な責任は経営者にあるというものですけれども、これが原則であると理解しております。保証業務実施者の責任を考える場合、作成者側の責任ともバランスが取れるように今後詳細を御検討いただければありがたいと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、オンラインで御参加の関経連の中島さん、どうぞ御発言ください。
【関西経済連合会】
関西経済連合会の中島です。幾つかコメントさせていただきます。
今回の事務局説明資料では、保証業務実施者の責任の在り方を記載し整理いただいておりますけれども、財務監査との平仄をとるという点においては、おおむねこの方向性に賛同いたします。その上で2点申し上げます。
1点目でございますけれども、保証業務実施者に対する民事責任についてですが、事務局提案の内容は、ディスクロージャーワーキングで議論した、企業に対する民事責任との平仄を図ったものと思われます。しかしながら、説明資料17ページに記載していただいております保証業務実施者のセーフハーバー・ルールの事務局提案につきましては、有報における将来情報等の合理性確保のための推論過程等の開示が真実でないことを保証業務実施者が発見することは実際には困難である場合が想定されますので、整合性のある取扱いをするという意味では、例えば、保証業務実施者が企業による推論過程等の開示が真実でないことを把握できる場合にはセーフハーバー・ルールを適用しないとすることなどが妥当ではないかと考えております。
2点目でございます。これは第9回で申し上げましたことと繰り返しになりますけれども、サステナビリティ保証には、財務情報の監査と比べていまだ制度が確立されておらず、担い手が十分に確保できないケースなども考慮する必要があると考えておりますので、例えば保証業務実施者のローテーションの年数は財務監査の規定よりも長く取るなど、緩和すべき部分は緩和することが望ましいと考えております。
なお、2ページ目に有報提出期限の延長について、第9回の意見をまとめていただいておりますけれども、経済界といたしましては、制度上の提出期限延長を認めるべきと考えております。少なくとも法制審議会での有価証券報告書と事業報告書等の一本化の推進や、ディスクロージャーワーキング・グループでの有価証券報告書における開示項目の見直し等の議論の進展の状況を待たず、今回の取りまとめで提出期限の延長を行わないといった結論とならないよう御配慮いただきたいと考えております。
その点、事務局から御説明いただいたガイドラインの整備などによる手当てはありがたいと考えております。ただし、適用義務化初年度または保証義務化初年度の混乱を避けるためにガイドラインを整備することを検討するとのことですが、この期間は二段階開示が認められているため、実際に提出期限の延長が申請されるといったことは想定しづらいと考えます。そのため、同時開示が始まってから2年から3年程度様子を見る観点から、提出期限延長を柔軟に認めるということが望ましいと考えております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。オブザーバーの方でほかに御発言を御希望の方いらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございますか。
まだ少し時間がございますので、これまでの議論をお聞きになって、2回目の発言も歓迎いたします。2回目の発言の御希望がございましたら、どうぞ挙手等でお知らせいただければと存じますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。特段御意見はございませんでしょうか。
ありがとうございます。
これまで10回の議論を通じて御議論いただきました事項につきましては、おおむね皆様方の御意見をお伺いすることができ、議論の方向性がかなり出てきたと感じております。次回のワーキング・グループにおきましては、これまで皆様方にいただいた御意見を踏まえて、報告書のたたき台を事務局に御用意いただき、皆様方に御議論をお願いしたいと考えております。
最後に、事務局から事務連絡等がございましたらお願いいたします。
【小長谷企業開示課長】
次回第11回の日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえた上で決定の上、御案内させていただきたいと思います。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、本日予定している時間よりもかなり早く終了いたしましたけれども、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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