金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    令和5年6月5日(月曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室 

【神田座長】
 金融審議会の公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの第1回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、大変お忙しいところ、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 このたびワーキング・グループの座長を務めさせていただくことになりました神田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 本日の会議でございますが、オンライン会議にての開催とさせていただきます。また、議事録ですけれども、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 
 そこで、初めに、ワーキング・グループについて少し御説明をさせていただきます。このワーキング・グループでございますけれども、本年3月2日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合におきまして、大臣からいただきました諮問を受けて設置されたものでございます。諮問文は、お手元に資料1として配付されているかと思います。
  
 この諮問におきましては、次のように言われております。すなわち、「近時の資本市場における環境変化を踏まえ、市場の透明性・公正性の確保や、企業と投資家との間の建設的な対話の促進等の観点から、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方について検討を行うこと」が求められております。
 
 それでは、初回でございますので、会議を始めます前に、事務局から委員の御紹介をお願いいたします。谷口さん、よろしくお願いいたします。

【谷口企業統治改革推進管理官】
 本日、事務局を務めさせていただきます金融庁の谷口でございます。よろしくお願いいたします。
 
 本ワーキング・グループのメンバーの皆様を御紹介させていただきます。
 
 資料2の名簿の記載順に、飯田秀総様、石綿学様、太田頼子様、神作裕之様、黒沼悦郎様、桑原聡子様、児玉康平様、齊藤真紀様、三瓶裕喜様、高山与志子様、武井一浩様、田中亘様、玉井裕子様、角田慎介様、藤田友敬様、堀井浩之様、萬澤陽子様。
 
 以上でございます。
 
 オブザーバーの皆様につきましては、こちらの名簿をもって御紹介に代えさせていただきます。また、事務局につきましても、お手元の配席図をもって紹介に代えさせていただきます。
 
 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 次に、私が万が一、会議に参加できないような事態が生じた場合に備えまして、恐縮ですが、座長代理をお願いしたいと考えております。神作先生に座長代理をお願いできればと考えておりますけれども、皆様方、御承諾いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 どうもありがとうございます。
 
 それでは、神作先生、どうかよろしくお願いいたします。

【神作委員】
 よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 それでは、次に、会議の公開についてお諮りさせていただきます。金融審議会の議事規則に則り、このワーキング・グループの審議については公開するということとさせていただきたいと思いますが、そのようにさせていただいてもよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 ありがとうございます。それでは、御了解いただいたということで、本日の会議の模様は、ウェブ上でライブ中継させていただきます。
 
 それでは、議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、事務局から資料の説明をしていただきます。その後、質疑応答、討議の時間とさせていただきます。
 
 それでは、事務局からの資料説明、どうぞよろしくお願いいたします。

【谷口企業統治改革推進管理官】
 金融庁の谷口でございます。それでは、私から、資料3の事務局説明資料に基づいて御説明させていただきます。各制度の詳細や、海外制度との比較などにつきましては、資料4の参考資料のほうにも掲載しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 
 それでは、ページをおめくりいただきまして、2ページ目でございます。本ワーキング・グループの検討の背景と諮問事項について、こちらにまとめてございます。大まかに申し上げますと、2006年以降、公開買付制度・大量保有報告制度は大きな改正がされておりませんでしたが、2006年以降、これまでの十数年間の間に、資本市場における様々な環境変化が生じておりまして、その環境変化を踏まえて、様々な課題が指摘されているところでございます。
 
 そういった事情、環境変化を踏まえ、市場の透明性・公正性の確保や、企業と投資家との建設的な対話の促進等の観点から、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方について検討を行うことが諮問されている次第でございます。
 
 ページをおめくりいただきまして、3ページ目以降から、現行制度の概要を御説明させていただいております。
 
 まず4ページ目、公開買付制度の概要でございますが、公開買付制度は、会社支配権等に影響を及ぼすような証券取引の「透明性・公正性」を確保することを目的としておりまして、そのような証券取引について公開買付けを強制し、事前の情報開示と株主の平等取扱いを求めるものとされております。
 
 具体的に、公開買付けが強制される取引の範囲はこちらに図示しているとおりでございます。細かく申し上げますと、買付け後の保有割合と、取引の類型によってそれぞれ分かれておりまして、市場外取引につきましては、保有割合が5%超となる場合や、3分の1超となる場合に、広く公開買付規制が適用されるような立てつけになっておりますのに対して、市場内取引や第三者割当による新株発行等については、原則として規制対象外になっているというのが現行制度でございます。
 
 続きまして、大量保有報告制度の概要について御説明いたします。大量保有報告制度は、その目的として、株券等の大量保有に係る情報が「経営に対する影響力」や「市場における需給」という観点から重要な情報であることを踏まえ、その情報を迅速に提供するということを目的としたものでございます。
 
 大量保有報告制度は、原則的な報告類型である一般報告というものと、金融商品取引業者等の特例措置として認められている特例報告制度というものがございます。一般報告では、5%超の保有者となった場合には、その日から5営業日以内に大量保有報告書を提出することが求められております。また、その後、1%以上の増減等、重要な変更があった場合には、その変更があった日から5営業日以内に変更報告書の提出が必要となっております。
 
 これに対して、特例措置である特例報告制度におきましては、事前に届け出た「月2回の基準日」において、「大量保有報告書」、「変更報告書」の提出義務を判断すれば足りることとされております。つまり、5%超になっているか、ないしは1%以上の増減などが発生しているかどうかを基準日ベースで確認すれば足り、その基準日にそういった事情があった場合には、5営業日以内に報告書を提出するという立てつけとなってございます。
 
 最後に、重要な概念である共同保有者という概念について御説明させていただきます。こちらは、株券等の保有者と一定の関係性を有する者は、共同保有者として、その株券等保有割合を全て合算して計算しなければならないというような規律でございます。具体的に、共同保有者の範囲としては、こちらの➀、②、③に掲載しているとおりでございまして、共同して株券等を取得しまたは譲渡することを合意している者、共同して議決権その他の権利を行使することを合意している者、また、保有者との間で、一定の資本関係、親族関係その他特別の関係がある者は、共同保有者として取り扱われることとなっております。
 
 続きまして、6ページ目、特例報告制度の利用要件をこちらにまとめてございます。先ほど説明のとおり、金融商品取引業者等については、特例措置として特例報告制度というものが認められておりますけれども、その特例報告制度を利用するためには、株券等保有割合が10%を超えないこと、重要提案行為を行うことを保有の目的としないこと、基準日を当局に届け出ることといった要件が必要となっております。
 
 こちらの重要提案行為という概念につきましては、この下に掲載しているとおりでございます。
 
 以上、制度の概要について御説明させていただきました。
 
 以上を踏まえまして、7ページ以降に、検討課題をまとめてございます。こちらはこれまで当庁に寄せられました御指摘などを踏まえまして、事務局からお出しさせていただいている検討課題でございます。分量が大分多くなってございますので、本日はコンパクトにポイントのみをまとめて御説明させていただき、詳細な御説明は次回以降に回させていただければと思っております。
 
 まず、公開買付制度のところから御説明させていただきます。
 
 まず1つ目、市場内取引の取扱いという論点でございます。ここで市場内取引といいますのは、いわゆる立会内取引、市場でオークション方式によって取引をしていく場合を指しておりまして、いわゆる立会外取引ではない取引というものを意味しております。
 
 そういった市場内取引につきましては、先ほど説明のとおり、現行法上は、公開買付規制の適用対象となってございません。他方において、近時、そういった市場内取引を通じて、議決権の3分の1超を取得するような事例も見受けられているところでございまして、そのような取引につきましては、投資判断に必要な情報や時間が一般株主に十分に与えられていないのではないかといった問題や、裁判例の言葉を使いますと、強圧性の問題があるなどというふうに指摘されているところでございます。
 
 以上を踏まえまして、市場内取引により、議決権の3分の1超を取得する取引については、強制公開買付規制の適用対象とすべきではないかという点について、皆様の御意見をいただければと考えております。
 
 続きまして、9ページ目でございます。こちらは第三者割当の取扱いという論点でございまして、現行制度上、先ほど説明のとおり、第三者割当により新規発行株式を取得する場合には、強制公開買付規制の適用対象となってございません。
 
 他方、第三者割当によって、既発行株式である自己株式を取得するような行為につきましては、強制公開買付規制の対象となっておりまして、また、欧州諸国においては、第三者割当についても強制公開買付規制の適用対象になっているという現状もございますので、こういった点を踏まえまして、第三者割当により議決権の3分の1超を取得する取引についても強制公開買付規制の適用対象とすべきではないかといった御指摘が寄せられているところでございます。
 
 続きまして、10ページ目でございます。先ほど図で示したとおり、「3分の1」という閾値が公開買付規制の場合には重要なメルクマールとなってございます。この3分の1という数値でございますけれども、その数値が設定されている理由の一つとして、株主総会の特別決議を阻止できる基本的な割合であることが勘案されたものと整理されているところでございます。
 
 一方で、こういった3分の1という数字につきましては、実際の議決権行使割合を勘案すると、3分の1よりも低い割合で、株主総会の特別決議を阻止できるのではないかといったような指摘も寄せられているところでございまして、その観点から、3分の1よりも引き下げた閾値を設定すべきではないかという御指摘をいただいているところでございます。
 
 続きまして、11ページ目でございます。欧州型規制への転換という論点でございますけれども、こちらは中段左側の日本型と欧州型の差異という図を見ていただけると分かりやすいかと思います。日本の現行制度上は、一定の閾値、この場合、3分の1を意識していただけると分かりやすいかと思いますけれども、この3分の1をまたぐ取引について、公開買付けが必要というような整理となっております。
 
 これに対して、英国ないしは欧州の諸国においては、閾値をまたぐ取引それ自体は、公開買付けは不要ということになっておりまして、他方において、閾値をまたいだ場合には、またいだ後に公開買付けを別途実施しなければならないというような、言わば事後的な規制となっているところでございます。そういった事後的な規制に転換することによる帰結としては、右側に書いてありますような全部買付け、つまり、上限を付したような公開買付けは基本的に禁止されるといった規律であったり、最低価格規制ということで、公開買付けを実施する場合に一定の価格以上でなければならないといった規制が設けられるほか、先ほど御説明しました市場内取引や第三者割当取引も適用対象になるというような特徴がございます。そういった特徴を踏まえまして、この公開買付規制を欧州型の事後的な規制に転換することについて、どうお考えになるかというところについて御議論いただければと思っております。
 
 続きまして、公開買付規制のオプトイン/オプトアウト制度という論点について御説明させていただきます。こちらも中段の図を見ていただけると分かりやすいかと思います。こちら、中段の図は、現行制度上の取扱いでございますが、現行制度は複数種類の株式を発行している場合と、1種類の株式のみを発行している場合で、取扱いが若干異なっています。
 
 まず左側の図ですが、複数種類の株式を発行している場合には、A種株主が買付けに同意し、かつ、B種の株主がB種種類株主総会で公開買付け不要というような承認決議をした場合には、例えば3分の2以上の株券等所有割合になったとしても公開買付けは不要であるというような整理になっております。
 
 他方で、1種類の株式のみを発行している場合には、一部の株主が買付けに同意するということとし、残りの株主は、株主総会で公開買付け不要というような承認決議をしたとしても、3分の1超であれば公開買付けは必要という整理になっております。このため、このように複数種類と1種類でこのような規制を分けている合理的な理由がないのではないかということで、それであれば、複数種類のほうに合わせて、定款の定めであったり、株主総会の承認などを通じて、公開買付規制の適否を定めるということを検討すべきではないかというような御指摘をいただいております。
 
 続きまして、13ページ目、公開買付けの強圧性の問題を巡る対応というところでございます。こちら、公開買付けの強圧性とはどういうものかというところを御説明させていただきますと、公開買付けによって支配権を取得した後に、対象会社の企業価値の減少が予測されるような公開買付け、つまり、この公開買付けが成立してしまうと、対象会社の企業価値が下がってしまうのではないかと、そういうことが予想されるような公開買付けにおきましては、一般株主の立場からすると、その後に生じる企業価値の減少、これによる不利益を回避するために、かえって公開買付けに応募するインセンティブが生まれてしまうという問題でございます。
 
 この問題は、一般株主の立場から見ますと、不当に低い価格で公開買付けに応じるよう強いられるリスクというものが生じてまいりますし、また、社会全般的な観点からしましても、企業価値を低下させる買収のほうがかえって成立しがちになるというような問題も指摘されているところでございます。
 
 また、これらのリスクは、全部買付け、いわゆる上限を付さない公開買付けよりも、部分買付けといって、上限を付した公開買付けにおいて生じやすいということも指摘されているところでございます。
 
 こういった公開買付けの強圧性の問題につきましては、英国の公開買付制度等ではうまく対応されているというふうに言われておりまして、そういった英国の公開買付制度を参考にしますと、中段にありますような、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのような措置がそれぞれ考えられるのではないかということを記載してございます。
 
 具体的な措置の内容でございますけども、1つ目の措置が全部買付義務、先ほどのとおり、上限を付さない公開買付けをしなければならないという義務の閾値を引き下げるということで、現行は、3分の2以上となる場合には上限を付してはならないということになっておりますけれども、これを例えば3分の1ないしは過半数に引き下げることによって、部分買付けが認められる範囲を狭めていくというのが一つ、措置として考えられるところでございます。
 
 また、2つ目の措置としては、公開買付期間を通常の応募期間と追加応募期間に分けて、その上で、通常の応募期間で公開買付けの成立が確定した場合には、追加応募期間を設置することを義務づけるという措置でございます。このような措置を講じることによって、一般株主の立場からの、もし公開買付けが成立するのであれば応募したいが、成立しないのであれば持ち続けたいというようなニーズに応えられるということになるものでございます。
 
 同じように、3つ目の措置でございます。3つ目の措置は、公開買付けに応募するか否かの意思表示と、公開買付けへの賛否の意思表示を区分した上で、賛同の意思表示が反対を上回る場合、もしくは株主総会で過半数の賛成があった場合に限り、公開買付けの実施を認める措置でございます。
 
 こちらも2つ目の措置と同じように、公開買付けが成立するのであれば応募したいが、公開買付けが成立しないのであれば持ち続けたいというような投資家のニーズに応えられるというものでございます。こういった措置の内容を含めまして、そもそも措置が必要かどうか、また、その措置の場合の具体的な内容について、皆様に御議論いただければと思っております。
 
 続きまして、14ページ目、公開買付けの差止制度という論点でございます。現行制度上は、私人による公開買付けの差止制度というものは存在しません。現行の金融商品取引法192条においては、当局が裁判所に申し立てて、同法又は同法に基づく命令に違反する行為の禁止または停止を命ずることが認められておりますけれども、公開買付けに関してこういった申立てが過去になされた例はございません。
 
 この点につきまして、会社法上は、私人による組織再編等の差止制度というものが設けられておりまして、そういったものを参考に、公開買付けにおいても事前の救済措置として、私人による公開買付けの差止制度を設けるべきではないかというような指摘がございます。
 
 また、その際の差止事由につきましては、法令違反の場合に加え、公開買付けのあり方が著しく不公正な場合も含めるべきではないかという点や、差止権者については、対象会社の株主のほか、対象会社自身も含めるべきではないかといった御指摘をいただいております。
 
 続きまして、15ページ目、公開買付けの事後的な救済制度という論点でございます。現行法上、公開買付規制に違反した場合には、事後的な救済措置ないしは制裁措置として、民事上の損害賠償責任、課徴金、刑事罰などといった措置が制度上設けられてございますが、公開買付規制に違反して取得した株式の議決権行使を差し止める、ないしは、議決権を停止させるといった措置は設けられてございません。
 
 他方、公開買付規制違反が生じますと、他の株主の株式売却機会が奪われて、会社支配の公正が害されるおそれがあるといった問題点がありますので、公開買付規制違反が生じた場合には、議決権行使の差止めなどといった事後的な救済制度を拡充すべきではないかというような御指摘でございます。
 
 続きまして、16ページ目、公開買付規制の柔軟化・運用体制という論点でございます。現行の公開買付制度は、公開買付けの条件などについて各種規制を設けております。ただ、こちらの各種規制につきましては、基本的にルールベースで画一的に定められておりまして、実質的な観点から個別事案ごとに例外的な取扱いを許容するような制度は設けられてございません。
 
 一方で、こういった制度の下においては、どうしてもルールベースの硬直的な運用を招きかねないということで、そういった実質的な観点から個別事案ごとに例外を許容していくような、そのような制度を設けるべきではないかというような御指摘がございます。また、その場合には、当局において、そういった実質的な観点からの判断ができるような体制を整備していくべきだというような御指摘がございます。
 
 続きまして、その他の指摘というところで、17ページ、18ページにやや細かいものも含めて、幾つか論点を掲載してございます。
 
 まず1つ目、公開買付価格の均一性に関する規制(同意を得た場合)という論点でございますけれども、実務上、特定の大株主などから一般株主より低い価格で公開買付けに応募しますという同意が得られるケースもございます。他方で、現行制度上は、公開買付価格は全ての応募株主において均一でなければならないとなっておりますので、今の実務上はどのようにしているかといいますと、大株主向けの公開買付けと一般株主向けの公開買付けの2回に分けて、公開買付けを2回実施しております。
 
 ただし、このように2回に分けて公開買付けを行うとなりますと、事務的、時間的なコストも増加してまいりますし、2回目の公開買付けが開始されないリスクもあるということで、均一性の規制を緩和して、一つの公開買付けの中で、同意を得た一部の株主についてのみ、低い公開買付価格を設定するということを許容すべきではないかという指摘がございます。
 
 2つ目も同じように均一性に関する規制でございますけれども、異なる種類の株券等についての問題でございます。こちらにつきましては、異なる種類の株券等については、そもそも公開買付価格の均一性が要求されるのか。また、要求をされる場合に、どのように均一性を判断するのかといった点が法文上、必ずしも明確でないという点を踏まえまして、そういったところを明確化すべきではないかというような指摘でございます。
 
 3つ目、公開買付期間の延長に関する規制というものでございます。こちらは問題意識として2つございまして、まず公開買付者が自発的に公開買付期間を延長したいという場合であっても、現行法上は60営業日が最大の延長期間となっております。逆に、公開買付期間が残り10営業日を切ってから訂正届出書を提出する場合には、提出日から起算して10営業日を経過した日まで公開買付者は義務的に公開買付期間を延長しなければならないというような規制になってございます。
 
 こちらにつきまして、例えば、買収防衛策に関する裁判の係属中には60営業日を超えて延長する必要性が高い場面もありますし、また、国内外における競争法のクリアランスを取得したことにより届出書を訂正するような場合には、果たして本当に10営業日の周知期間、熟慮期間が必要なのかというような問題もございます。そのため、一定の場合には60営業日以上の自発的な延長を認めるべきではないかといった問題や、また、訂正届出書の提出に伴う延長の場合のうち一定の場合には、10営業日未満の延長でよいのではないかというような指摘が寄せられているところでございます。
 
 続きまして、4つ目は、形式的特別関係者の範囲という論点でございます。現行制度上、買付者と一定の資本関係、具体的には議決権ベースで20%以上の資本関係がある場合には、実態にかかわらず、形式基準により「特別関係者」に該当するとして、買付者と特別関係者の株券等所有割合を合算して計算しなければならないというような規制があるところでございます。
 
 ただ、一方で、一定の資本関係があったからといって、議決権に関する方針などが、両者で一致するとは必ずしも限らないというところでございまして、そういったケースがあることを踏まえまして、形式的特別関係者に該当する場合であっても、一定の場合には「特別関係者」から除外されるような規律を導入すべきではないかという指摘がございます。
 
 5つ目、全部勧誘義務の対象となる株券等の範囲という論点でございます。こちら、現行制度上は、3分の2以上となるような公開買付けを行う場合には、全部勧誘義務といって、あらゆる種類の有価証券を公開買付けの対象にしなければならないというような規制が置かれておりまして、その有価証券の範囲には、ADRなどの海外の預託証券も含まれております。一方で、そういった海外の預託証券につきましては、これを公開買付けの対象とするためには、海外法令等の関係から実務的な対応が困難であるというような指摘も寄せられておりまして、そういったものは全部勧誘義務の対象から除外すべきではないかというような御指摘をいただいております。
 
 また、6つ目、公開買付届出書の事前相談方針の明確化という論点でございます。現行実務上は、公開買付届出書の提出に際しまして、関東財務局において事前相談を受け付けておりまして、金融庁とも連携の上で対応を行っております。他方で、こちらの事前相談につきましては、交渉局面における「手の内」を公開買付届出書に記載するような実務対応が求められているなど、関係者から一部疑義が出ておりますので、企業や弁護士に対して、行政としての指導方針などをちゃんと説明すべきではないかというような御指摘が寄せられております。
 
 最後、7つ目、買付条件の変更・撤回に関する規制というところでございます。こちらは公開買付期間中に対象会社が配当を実施したような場合、現行制度上は公開買付価格をその分引き下げるということは許容されておらず、一定規模以上の場合に限って撤回することができるというような規制にとどまってございます。
 
 このような制度の下におきましては、配当が行われるリスクを公開買付者に不合理に負担させかねないということで、公開買付期間中に配当がされた場合には配当相当額の「公開買付価格の引下げ」を許容すべきではないかというような指摘が寄せられております。また、こちらに関連しまして、現行法上の公開買付制度における撤回事由が厳格過ぎるのではないかといった指摘も寄せられているところでございます。
 
 以上、公開買付制度に関する検討課題でございました。
 
 続きまして、大量保有報告制度における検討課題について御説明をさせていただきます。
 
 まず、1つ目は、重要提案行為の範囲という論点でございます。こちらは、重要提案行為の範囲が不明確であることが企業と投資家との実効的なエンゲージメントの支障になっているのではないかという指摘でございます。
 
 先ほど説明の通り、大量保有報告制度には特例報告制度という金融商品取引業者等のための緩和措置が設けられておりますけども、特例報告を利用するためには、重要提案行為を行わないことが必要とされております。この重要提案行為の範囲につきましては、スチュワードシップ・コード策定時、2014年に一度、解釈の明確化を図ったところでございますけれども、踏み込んだ実効的なエンゲージメントを促進するという観点からは、さらなる明確化が必要ではないかという指摘が寄せられているところでございます。
 
 続きまして、21ページ目でございます。こちらは共同保有者の範囲という論点ですが、共同保有者の範囲につきましても不明確であるということで、それによって協働エンゲージメントの支障となっているのではないかという指摘でございます。
 
 先ほど説明のとおり、大量保有報告制度上は、共同保有者がいる場合には、共同保有者の保有割合も合算しなければならないという規制が置かれております。こちらもスチュワードシップ・コード策定時にその範囲を明確化したところでございますけれども、近時、複数の機関投資家が協働して、企業に対してエンゲージメントするというような協働エンゲージメントが増加しております。そういった協働エンゲージメントにおいてどのような場合に共同保有者に該当するのかといったところをもう少し、さらなる明確化が必要であるということが指摘されているところでございます。
 
 続きまして、22ページ、デリバティブの取扱いというところでございます。現行制度上、実務的にトータル・リターン・スワップであったり、CfDなどと呼ばれている現金決済型のデリバティブ取引につきましては、その取引終了時に、株式の交付による決済が想定されているなどの事情がない限り、ロングポジションを持っているのみでは、大量保有報告規制の対象にならないというふうに整理されてございます。
 
 ただ、一方で、そういった現金決済型のエクイティ・デリバティブにつきましても、株式の需給や支配権に影響し得るという面もあるということや、会社側が実質的な主要株主との対話を深めていくに当たって、そういったデリバティブの状況も確認する必要があるのではないかといった点を踏まえまして、現金決済型のエクイティ・デリバティブについても大量保有報告規制の適用対象とすべきではないかというような指摘が寄せられているところでございます。
 
 23ページ目、大量保有報告制度の実効性の確保という論点でございます。2008年金融商品取引法改正において、大量保有報告制度の違反抑止、つまり、実効性の確保という観点から、大量保有報告書等の不提出や不実記載については、課徴金制度の対象となりました。一方で、課徴金納付命令が実際に発出されたケースはあまり多くなく、いまだ大量保有報告書の提出遅延が相次いでいるということを踏まえまして、大量保有報告制度の実効性が確保されていないのではないか、そのための方策を何か講じるべきではないかといったような御指摘が寄せられているところでございます。こちらにつきましては、何らか実効性を確保するための方策が必要かどうか、また、必要である場合はその内容について皆様から御意見をいただければと思っております。
 
 最後に、大量保有報告制度に関するその他の指摘というところです。まず1つ目、取得請求権付株式等の取扱いというところは、やや技術的な問題ではございますけれども、現行の保有割合の計算においては、新株予約権はその行使により取得される株式を株式数の分子として取り扱うことになっております。一方で、取得請求権付株式や取得条項付株式につきましては、転換前の株式、その取得条項付株式などの転換前の株式を分子として取り扱うというような整理とされております。
 
 このような取扱いに関しまして、取得請求権付株式や取得条項付株式についても、その転換後の株式数を分子として取り扱うべきではないかというような御指摘が寄せられております。
 
 また、2つ目、記載内容の明確化という論点でございますけれども、現行制度上、大量保有報告書には、保有目的や、重要な契約などを記載することが求められております。ただ、一方で、実務上は、これらに関する記載内容、記載方法が必ずしも明確になっていないということで、提出者によって記載ぶりがまちまちになっているというような指摘がございます。そのような現状を踏まえまして、保有目的や、重要な契約などの記載欄について、記載内容、記載方法を明確にすべきというような御指摘がございます。
 
 また、その際、現行の記載方法が複雑であることが提出遅延の一因となっている可能性もあるということで、記載内容の見直しも検討すべきであるというような御指摘もいただいているところでございます。
 
 最後、実質株主の透明性に関する検討課題について御説明させていただきます。
 
 こちらは、実質株主の透明性を向上させるべきというような御指摘でございます。ここでいう実質株主とはどういうものかと申し上げますと、いわゆる株主名簿上にその名前が載ってくるような株主ではなく、株主名簿上は、他の株主の名前が載っているけれども、その株式について、議決権指図権限や投資権限を持っている方々をここでは実質株主と定義しております。

 名義株主が会社法上の株主名簿や有価証券報告書などの開示を通じて、企業や他の株主が把握できるように制度整備されている一方で、こういった実質株主につきましては、大量保有報告制度の適用対象となる場合を除いて、企業や他の株主がこれを把握するような制度整備がされておりません。この点につきましては、企業と株主・投資家との対話や、相互の信頼関係醸成という観点から、その実質株主とその持ち株数について、他の株主ないしは企業が効率的に把握できるよう、諸外国の制度も参考に実務的な検討がされるべきという御指摘をいただいております。
 
 こちら、中段のところに、諸外国における制度というものをまとめてございます。米国における制度と、英国ないしは欧州における制度で大きく変わっておりまして、まず米国の制度では、一定規模以上の機関投資家は、四半期ごとにその保有銘柄をSECに提出することとされており、その提出された書類がSECのウェブサイト上、つまり、EDGAR上に公開されるというような取扱いとなってございます。
 
 これに対して、英国ないしは欧州では、会社側が実質的利害関係を有している者、もしくは実質的利害関係を有していると信じるに足りる合理的な理由がある者に対して、事実確認のための通知をすることができるという権利を持っておりまして、その通知を受けた者は、通知上の質問に対する回答を合理的な期間内にしなければならないというような規制になってございます。このような諸外国の事例も参考にしつつ、企業や他の株主が実質株主を効率的に把握するための方策の要否やその内容について、皆様に御議論いただければと思っております。
 
 以上、長々と恐縮でございますけれども、検討課題について御説明をさせていただきました。
 
 以上を踏まえまして、本日御議論いただきたい事項を28ページ目にまとめてございます。こちらは、今、御説明をさせていただきました検討課題でございますけれども、かなり分量も多くなってございますので、本日のところは各検討課題について深掘りをするというよりは、まずもってこのワーキング・グループで検討していくべき検討課題として、今、御説明したものについて、過不足はないかというところ、また、その検討に当たって、特に留意をすべき事項であったり、各課題の優先順位など、そういったところについて、何か御意見があれば頂戴できればと思っております。
 
 また、そのほか、一般的な事項として、審議を進めるに当たって、どのような点に留意すべきかというところについても、もし御意見があればいただければと思います。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうも御説明ありがとうございました。
 
 それでは、これから、委員の皆様方から御意見、御質問等をお伺いする討議の時間とさせていただきたいと思います。時間も限られておりますけれども、初回ということでもございますので、できましたら委員全ての方から御発言いただければありがたく思っております。割り算をしますと、1人当たり三、四分程度以内ということになるかと思います。今、事務局からも御説明いただきましたけれども、個別の検討課題についての御意見というのは次回以降に出していただきますので、検討課題の過不足はないか、特に留意すべき点や各課題の優先順位はどうか、また、今後、御議論していただくに当たってどのような点に配慮すべきか等、そういう辺りについて御意見、御質問等をいただければありがたく思います。
 
 今日は、藤田先生が所用で途中退席されるということですので、まず藤田先生に御発言があればお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 【藤田委員】
 申し訳ありませんが、所用があり途中で退席するため、最初に発言させていただきます。個々の論点についての賛否は、今回は取り上げないということで意見を差し控えて、今後の審議のあり方や取り上げる論点についておのおの1点ずつ、簡単にお話ししたいと思います。
 
 議論の仕方については、1点だけ、自明のことと思われるかもしれませんが、気になっている点だけ申し上げておきます。
 
 今回挙がっている論点は、いずれも、近時の買収案件や機関投資家との対話や、そのほか様々な技術的な問題点など、近時の実務において認識されている個別具体的な問題を取り上げていると思います。個々の論点について、適切な結論となる解決をすることはもちろん重要ですし、また、個々の適切な解決さえすればいいような論点もあるとは思うのですが、他方、論点によっては解決がされたときに、その結果が大量保有報告制度、公開買付制度に関して、論理一貫した説明ができる内容になるものなのかという、そういう視点も必要なものがあると思います。もちろん理論は美しくても、実際に機能しない制度をつくっても仕方がないという声はよく聞きますし、それはよく分かるのですが、他方、論理的に一貫した説明ができない制度をつくってしまうと、その後も個別ニーズに合わせた修正が続くことで、結局、基本的な政策も分からなくなってしまい、長期的には禍根を残すような危険があるように思っています。
 
 特に、もともと比較法的に非常に特異な内容となっているところに、さらに微修正が加わって、現在のような姿になっている公開買付制度については、そのような懸念は少なくないように思います。ですから、個別の必要性に応じた、つまみ食いのような改正の集積にならないようなことを意識する議論が必要な論点もあると思っております。
 
 次に、論点の過不足については、基本的には、現在挙げられている重要な論点で、ほぼ網羅されているように思いますので、基本的にはこれでいいと思います。ただ、1点だけ、11枚目のスライドに、欧州型の規制、事後的な規制への転換ということが挙がっております。欧州型の規制と、ここで言っているのは、30%ぐらいの閾値を超える株式の取得がなされた場合は、その取得原因を問わず、事後的な公開買付けを強制するといったパッケージのことだと思います。これ自体を議論するのももちろん結構なのですが、仮にこれを取らないとした場合の選択肢として、次の点も意識していただいたらいいのではないかと思います。
 
 4枚目のスライドに現行の仕組みが書かれていますが、3分の2ルールについて、現在は、3分の1ルールと同じ内容の取引が適用対象となっています。しかし、そもそも3分の1ルールと3分の2ルールは根本的に性格が異なっておりまして、3分の2ルールは、少数株主として残される株主に離脱の機会を与えることを保障する制度です。
 
 これは、基本的には欧州型の規制です。欧州では30%が基準ですけども、欧州型の規制と非常に似た目的の制度であって、その場合、3分の2の議決権の取得の理由を限定すること自身が非常におかしいわけです。仮に、全面的に欧州型の制度に移行すべきではないと考えるとしても、―――そしてその理由はいろいろ考えられますが―――、3分の1ルール自体は現在のまま――あるいは閾値をちょっと下げて30%にしても同じですが――維持し、3分の2ルールを併存させることになるとすれば、少なくとも、3分の2ルールについては見直しを考えてもいいように思います。
 
 念のために言いますと、今回、3分の1ルールに市場内取引や第三者割当増資まで含めると、非常に適用範囲は欧州型に近づくのですが、ただ、そうは言っても、3分の2を超えるケースは、それだけに限定されるわけではありませんし、そもそも少数株主に離脱の機会を与える制度としては、事前規制、つまり、閾値を超えるところに規制をかけるよりは事後規制のほうが、本来は、建て付けとしては座りがいいと思いますし、また、万一、違反があった場合の治癒も簡単です。したがって、仮に、欧州型に全面的に移行しない場合にも、3分の2以上の株券等の取得に係る規制については欧州型のようなルールへの変更ということも検討課題とすべきではないかと思います。
 
 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、角田委員、どうぞお願いいたします。

【角田委員】
 角田です。重要な場に参加する機会をいただいて、ありがとうございます。実務家として期待されていると思いますので、その観点で、座長からお話しいただいた進め方、要点を意識してコメントさせていただきます。
 
 まず、取り上げられている項目については、過不足はないというか、非常にきちんと取り上げていると思います。私はM&Aのアドバイス、あと、株主の皆様とのエンゲージメントのアドバイスを担当しております。公開買付けを行う、もしくは受ける側としましては、現行の大量保有報告制度により、1%刻みの増減に伴い変更報告書が開示されることによって、株価が動き、売り惜しみが出るため、市場内で3分の1の株式を取得することは起こらないのかなと思っていたのですけれども、実際に観察されることになった。また、公開買付けを差し止める制度がないとか、よくある点では、配当を事後的に行った場合に公開買付価格が自動調整されないために日程が制約されるとか、色々な実務的な点についてしっかりと把握していただいていると思います。
 
 大量保有報告制度に関しても、実質は一体で共同保有者に該当するのに、開示を回避していると言われている案件があったり、敵対的買収という最終的な目的があったと推察されるけれども、その目的変更のタイミングを意図的に遅らせるなど、罰則が課されていないから、悪意を持ってやっているのかはよく分かりませんけれども、色々な気になる案件があったのも事実でございます。
 
 実質株主では、実際に目の前に座っている方が、保有割合が5%を超えれば分かるのですけれども、それまでのところはよく分からないというのは、エンゲージを促進するように、社会、政府として言っている中でも非常にやりにくいものだと感じております。
 
 1点、先ほどの藤田先生の非常に深い分析に通じるのですけども、過不足ではなくて、重点が、このワーキング・グループとしては低いというか、別の場でやるべきだと考えているのが欧州型制度への抜本的な転換になります。特に公開買付けの際、大株主ができる場合に、残された少数株主が不利な立場に置かれるため、離脱の機会を与える点。先ほど藤田先生が3分の2ルールのところで仰っていましたけど、ここの閾値を30%ないしは50%以下という形にしてしまうという点に関しては、我が国においては、上場子会社がたくさんございますし、上場子会社も、普通の上場会社もあまり区別がない、少数株主にとって不利がないという前提で実務があり、少数株主側もそこまで気にしているようには思えません。もちろん少数株主の保護について、全部買付義務の閾値を3分の2とするのか、もっと低いのかという点は別途ございますし、東証プライム市場などの流通株比率の点もありますので、数字自体は議論の余地があるのですけれども、欧州型規制への転換というのは、このワーキング・グループで公開買付けのやり方という観点で議論するよりは、もう少し広い、大きな、我が国として少数株主をどういうふうに保護していくかというような位置づけで議論していくべき、違う場で議論していくべきではないかなと思っております。
 
 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に、飯田委員、よろしくお願いいたします。

【飯田委員】
 飯田です。3点、意見を述べさせていただきます。
 
 1つ目ですけども、検討課題の過不足についてです。大きな論点については、特にないと思っています。もちろん付随的な論点は色々あるわけですが、例えば仮に欧州型の規制への転換をするとした場合には、金融商品取引法27条の2第1項1号の5%ルールをどうするのかという論点も出てくるだろうと考えます。また、大量保有報告制度における共同保有者について見直しをするのであれば、公開買付規制における実質基準の特別関係者の範囲はどうするのかというのも併せて出てくるのだろうと思います。
 
 それから、同じような話ですけれども、大量保有報告制度でデリバティブ取引を対象とするということであれば、公開買付けの株券等所有割合のカウントのときにデリバティブ取引をどう扱うのかという論点も出てくることにならざるを得ないと思います。
 
 その点に関して、株券等所有割合における所有概念に関しては、細かい話かもしれませんけれども、例えば、金融庁企画市場局が出していらっしゃる株券等の公開買付けに関するQ&Aの問15で、資産管理会社の株式の取得についての記載がありますけれども、間接的に上場会社の株式を買い付ける行為に係る公開買付規制の適用の有無についても、所有概念に関連してルール化ないしは明確化するということも考えなくていいのかというような付随的な論点もあるかなと思っています。それが1つ目です。
 
 2つ目の点ですけれども、検討に当たっての優先順位ということですけれども、もう既に議論になっています資料3の11ページの欧州型の規制への転換という論点が重要だと考えます。欧州型への転換というのは、既に指摘がありましたけれども、単に事前事後という規制の発動のタイミングの問題という技術的な論点だけではなくて、公開買付規制のポリシー、要するに、少数株主に支配権の変動が生じた後に、少数株主の保護のために公平な価格で売却して、会社から退出するという権利を株主に保障するかという発想を取るかどうかということですから、こういうポリシー的なもの、基本的な考え方、規制の趣旨というものに関わるものだと思います。ですから、今回挙がっているたくさんの検討課題の中では最も基礎的、根本的な論点になるのだろうと思います。
 
 それから、細かなことですけれども、事前規制型と事後規制型というのは、ゼロか100かという選択肢となるばかりではなくて、例えばイギリスのように両方を使って、組み合わせて規制設計していくという選択肢もあると考えています。
 
 3点目ですが、総論的なことですけれども、最終的な方向性を出す時点で考えればよいことでもありますが、規制全体として、公開買付者、または対象会社の一方だけを有利にするということのないように配慮するべきだと思います。公開買付けには、企業価値を増加するものと毀損するものの両方があり得るからであります。
 
 それから、大量保有報告規制のあり方についても、株主による監督機能、つまり、機関投資家によるスチュワードシップ活動と、いわゆる株主アクティビズムのあり方の両方に影響するわけであります。ですから、透明性を高めるということへの考慮というのは非常に重要だと思いますけれども、同時に企業価値を増加させるような株主による、監督を萎縮させないように配慮するという視点も重要だと考えています。
 
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、黒沼先生、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】
 黒沼です。よろしくお願いいたします。私からは、審議事項について1点、それから、留意すべき事項について1点、申し上げたいと思います。
 
 まず、審議事項についてですが、2006年に改正された項目のうち、見直しが必要なものはないかという点も検討したらいいのではないかと思います。例えば全部買付義務ですけれども、上場廃止のリスクにさらされた少数株主の保護にとって十分でないということは、改正当初から指摘されていました。また、急速な買付けの規制は、3分の1ルールの潜脱を防止することを目的に設けられたものですけれども、その効果は潜脱防止の目的よりも広い範囲に及んでいます。これらの改正点について不都合はないかという観点から検討する必要があるのではないかと思っていまして、もし余裕があれば取り上げていただきたいと考えています。
 
 第2に、審議の上で留意すべき事項ですが、公開買付制度についての話であります。公開買付制度は企業買収のあり方に大きな関係があって、本来は、会社法の改正を見据えた議論が必要だと思います。今回のワーキング・グループでは、そこまではできないとしても、挙げられた項目を検討する際に、企業買収のグランドデザインを勘案しながら各項目について議論する必要があると思います。そうではなくて、各項目について、現在指摘されている不都合だけを解消するという議論をすると、やはり大きな議論を見失う可能性があるのではないかと思っています。
 
 抽象的な指摘で申し訳ございませんけれども、私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
 神作でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。まず、公開買付制度・大量保有報告制度及び実質株主の透明性の確保の3つについて、包括的、網羅的に重要な論点を取り上げていただいており、過不足はないと思いますけれども、他方で、非常にたくさんの論点が挙がっておりますので、私としては、特に以下の点を重点的に速やかに検討していただき、必要に応じて法改正等に着手していただきたいと考えております。
 
 論点を3つ挙げさせていただきたいと思います。
 
 第1は、スライドの8ページでございますけれども、市場内取引に公開買付規制を及ぼすかという点につきましては、公開買付制度の趣旨である情報の提供及び提供された情報に基づいて合理的な投資判断を可能にするという観点からいたしますと、市場内取引であっても、今申し上げたような観点から投資者の保護を図るべき場合があると思いますので、そのような方向で検討していただければと思います。
 
 第2は、平成26年の会社法改正のときの議論の経緯もあって、難しいとは思うのですけれども、特に支配権に関わる公開買付規制違反につきましては、他の株主の私的な権利、株主権に対する影響というのもございますので、民事的な効力を与えて、議決権の停止を私人によっても認めることが公開買付規制の実効性の確保に資すると思います。特に法令定款違反についての企業による公開買付け自体の差止めは、基本的には監督官庁の役割ではないかと思いますけれども、一方で、議決権停止、議決権行使の差止については、ぜひ再び議論をしていただければと思います。
 
 3番目は、大量保有報告制度と実質株主の透明性確保に関わるのですけれども、スチュワードシップ活動がかなり定着してまいりました。2014年のスチュワードシップ・コードの策定、それから、翌年のコーポレートガバナンス・コードの策定によって、機関投資家と発行会社が共に、スチュワードシップ活動に対しては真摯に取り組むということで、実務はかなり定着してきていると理解しています。中長期的な企業価値の向上を目指すという機関投資家の正当なスチュワードシップ活動が阻害されることがないよう、重要提案行為等の範囲を明確化し、場合によっては限定するとともに、実質株主の透明性についても発行会社の側が一体誰との間でスチュワードシップ活動やエンゲージメント活動を行うのかを明確にするという観点から、2番目と3番目の論点、すなわち大量保有報告制度の見直しと、実質株主の透明性の確保についても議論を進めていただきたいと思います。
 
 それから、最後ですけれども、飯田先生からも、また、藤田先生からも御指摘がありましたスライドの11ページの、事後規制への転換についてコメントさせていただきます。これはいろいろな理解の仕方があるかと思います。私は最後に飯田先生が言われたと思うのですが、事後規制への転換というのは、やや言葉が強過ぎるところがあって、むしろ、事後規制を入れても、例えば公開買付けを強制される一定の閾値を目指して株式を取得するための取引について、しかるべき公開買付規制というのが導入されることになるのはおそらく避けることができないと考えられます。そういう意味では、もし欧州型の事後的な規制にするとしても、例えばその閾値を30%や3分の1にするとしても、今度はそれを目指して、公開買付けを利用する場合にはどのようなルールの下で行うかということで、事前規制がどうしても必要になると予想されます。そのような事前規制にしたがっていれば、閾値を超えた場合の事後ルールの適用を原則として免除されるという建付けになると思われます。そういう意味では、事前的な規制と事後的な規制は、連続的な規制になるとともに、先ほどのエンフォースメントとの関係で言えば、例えば議決権停止のようなものは、3分の1のような一定の閾値を超えたときに発動するというような形で整理することになるのではないかと考えます。
 
 いずれにしても、11ページの論点というのは、基本に関わる非常に重要な論点だと思いますので、この点についても常に意識しながら議論を進めていってはいかがかと思います。
 
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、高山委員、どうぞお願いいたします。

【高山委員】
 高山です。私からは、実質株主の透明性について意見を述べさせていただきます。今回、このワーキング・グループで、このテーマについて議論を深めるということに賛同いたします。そして、これは多くの日本の上場企業が望んでいることだと思います。
 
 神作委員のお話とも重なるのですけれども、現在、投資家や株主と企業との間の建設的な対話の重要性について色々なところで言及され、強調されています。そのような対話を行う上で、実質株主が誰か、実質株主を判明するということは非常に重要で、基本的な情報であると考えています。現在の状況を見るとどうかというと、日本では、諸外国とは異なって、企業が実質株主を把握するというのが非常に困難な状況にあります。多くの企業はそのために多くのリソースを費やして、株主の判明を試みているという状況にあります。もし実質株主の判明が容易になれば、企業は、投資家との対話により注力することができるでしょうし、また、対話の質を高めることができると思います。それは投資家にとっても大きなメリットがあるということだと考えております。
 
 今後、このワーキング・グループで実施株主の透明性について、具体的な手法や施策について議論されることになると思いますが、議論の際に2つ留意することがあると思います。一つは、透明化を目指す実質株主の対象に海外株主も含めるということです。それからもう一つは、ユーザーである日本企業にとって、使いやすい制度、使いやすい仕組みをつくるということです。
 
 この2点については、今後の議論の中でまた具体的に意見を述べたいと思います。
 
 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、堀井委員、どうぞお願いいたします。

【堀井委員】
 三井住友トラスト・アセットマネジメントの堀井でございます。今回、ワーキング・グループに参加させて頂きありがとうございます。メンバーの3分の2が大学の先生や弁護士といった高名な諸先生方、そしてアドバイザリー業務や企業内の専門家の方々が多く参加されている中で、唯一、運用現場にいる人間として、機関投資家として参加させていただいていることに、その責任の大きさを感じている次第です。
 
 日本版スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コード、それと、ESGを含むサステナビリティ経営の広がりで、投資家と企業の間のエンゲージメントは、ここ5年で飛躍的に変化したと現場では感じております。また、金融グループとしても、エンゲージメントは経営資本を投入する重要な領域の一つと捉えており、エンゲージメントの対象領域は拡大しています。
 
 そうした中、パッシブ運用資産をお預かりしている国内の巨大投資家、例えば当社ですと本年3月末時点で21兆円ほどの日本株、これはTOPIXの3%弱に相当する規模になりますが、こうした投資家にとっては、エンゲージメントで重要提案行為を行うと、大量保有報告制度の特例制度が利用できなくなる、反復継続的で過大な事務の負担緩和につながる特例制度が使えなくなってしまうことになります。こうした理由から、日本版スチュワードシップ・コード導入から現在に至るまで、エンゲージメントにおける重要提案行為を控えるように対処してきたのが現場の実態です。
 
 こうした課題点から、20ページの重要提案行為の範囲、これを議論することは非常に重要と考えております。また、範囲という意味では、21ページの共同保有者の部分、さらには26ページの実質株主の部分でも議論を進めていきたいと思っております。
 
 なお、今回の議論の中では、実際の実現できるかどうか、私は現場の実務家としてこの点を特に重要視したいと思っております。実際にここで話し合われたことが、本当に世の中でしっかりと実現できるのかという議論を進めていきたいですし、進めていただけるとありがたいと思っている次第です。よろしくお願いいたします。
 
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】
 三瓶です。どうぞよろしくお願いいたします。まず、今日は全体の話ですけれども、今後は、公開買付制度、また、大量保有報告制度、実質株主の透明性と、この3つの大きな検討課題について、それぞれ別々に深掘りする時間を設けて議論していくのだと思います。留意点、留意すべき事項として、この3つは、相互に非常に関連しているので、それぞれ別々に議論してしまって、バラバラにならないようにということがまず一番大事な留意点ではないかなと思います。その点をまず申し上げます。
 
 過不足に関して、ここには書いていない観点で、一つ。公開買付制度に関連して、閾値の話が色々あります。ここにないもので、私が前から気になっているのは、会社法308条第1項括弧書きに、経営を実質的に支配することが可能な関係として議決権を25%以上有することが挙げられています。これは相互保有に関連してですけれども、金商法上での閾値の考え方と、会社法の実質的支配とはどのように関連するのか、また整理するのか。そういうところも明確化して、議論していただけると非常に分かりやすいと思います。
 
 3つの大きな検討課題の中で大量保有報告制度について、ここで挙げられている課題については、この会議体の中で結論をぜひ出してほしいと思っています。
 
 その中で、重要提案行為の範囲という課題があります。検討課題では範囲を限定、または明確化という言い方になっているのですけれども、実は範囲だけではないのではないかなと思います。箇条書きにして範囲を書けばいいのではなくて、行為の性質ということも考えるべきではないかと思います。それは具体的に言うと、提案行為をしたときに、その結果、経営者に裁量の余地があるのか、またはかなり強要するような提案行為なのか、それによってスチュワードシップ・コードが求めるエンゲージメントと呼べるかどうかという論点も出てくると思います。
 
 ですから、項目を列挙するだけではなくて、「行為の性質」も議論すべきではないかと思います。また、その行為の性質を考えるときに、その意図というのも重要な観点だと思います。というのは、これは公開買付制度とも関連してくるのですけれども、実質的に経営支配権に影響を与える行為なのかどうか、そういったことを意図しているのかどうか、これによってまた重要提案行為の捉え方が変わってくると思います。
 
 また、2つ目の共同保有者の範囲ですけども、こちらも、その範囲について明確化や限定をするということになっていますが、こちらも性質が違うものがあると思います。そもそも議題として上がってきているのは、従来、考えられていた集団的エンゲージメントと、近年の協働エンゲージメントでは、性格がちょっと違うものになっているということ。そういったことを踏まえないといけないので、まずは規制の趣旨を明確化した上で議論するのがいいと思います。
 
 また、共同保有者の範囲というのは、実質株主の透明性という別の大きな課題とも関連してきます。そういったことを踏まえた議論が必要だと思います。
 
 最後に、大量保有報告制度の実効性の確保ですけれども、実効性の確保がどのようにされるかによって、先ほどからも議論が出ていますけれども、公開買付制度の、特に市場内買付けの議論との関連がかなり重要になると思います。現在だと、制度の実効性の確保ができていないことによって、市場内買付けで、規制の不備のように見える行為が見られるということだと思いますので、大量保有報告制度の実効性の確保と、公開買付制度、特に市場内買付けとの関連性を踏まえた議論が必要だと思います。
 
 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、田中委員、どうぞお願いいたします。

【田中委員】
 発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。事務局から提示された論点は、公開買付制度および大量保有報告制度に関する論点として、重要なものを網羅的に挙げていただいたおり、過不足はないと思います。私は、これらの論点に関して様々なものを書いたり、発言もしてきましたけれども、その中で提案している事項もいくつか取り上げていただいておりまして、非常にありがたいと感じておりますし、ぜひここに取り上げられている論点を十分検討して、よい制度改正につなげていければ考えております。
 
 私のほうからは、過不足というほどではないけれども、この点に関しては特に取り上げていただきたいということを2点ほど申し上げます。また、審議を進める上での一般的な考え方について、意見を申し上げたいと思います。
 
 先に、審議を進める上での一般的な考え方について申し上げますと、これは飯田委員から既に言っていただいたことではあるのですけれども、様々な規制には、当然、便益と費用がありますので、便益だけでなく費用面についても十分考慮が必要だということです。具体的に言えば、例えば大量保有報告制度は、投資家・株主のための情報の透明性に資するものではありますけれども、他方で、買収なりアクティビズム活動にとってはコストを高める可能性があるということがあります。
 
 諸外国でも、アクティビストのリターンの源泉は、アクティビズム活動がまだ市場価格に反映される前に、アクティビストが対象会社の株式を買うことによって生まれていると指摘されています。まず安い市場価格で相当数の株式を買っておいて、それからアクティビズム活動を行い、株式市場価格を高めることで、リターンを挙げると言われています。それが、アクティビストが株を買った直後に情報開示を求められ、それによってアクティビズム活動に関する情報が市場価格に反映されてしまうと、アクティビストは、安い価格で株式を取得できず、十分なリターンを得られなくなる。これが、情報開示のコストであると指摘されています。
 
 もちろん、アクティビズムも適切なものとそうでないものがあるかと思いますが、企業価値向上に資する適切なものもあると存じます。そのようなアクティビズム活動に対し、禁止的なコストを課すような規制は避けるべきと思います。そのほか様々な規制についても、全て便益と費用がありますので、これらについて十分留意する必要があると思います。
 
 あとは、各論的なことを2点申し上げます。まず1点目は、これも飯田委員に取り上げていただいたところですが、21ページで、大量保有報告における共同保有者概念についての検討の必要性が説かれていますが、これは、公開買付規制においても共同買付者の概念という、ほぼ同じ論点がありますので、それについてもぜひ取り上げていただきたいと思います。
 
 私の印象では、ヨーロッパ諸国では、大量保有報告における共同保有者概念もさることながら、特に、公開買付規制の共同買付者の概念が広範すぎる場合、機関投資家による協働エンゲージメントに対して抑圧的な効果が及ぶとして、非常に深刻な問題と受け止められてきたと理解しています。これは、一つには、ヨーロッパ諸国の規制は、市場内買付けも公開買付規制の対象に含めますので、共同買付者になってしまうと、別に公開買付けをしていなくても、ただ市場で株式を買うだけで、義務的公開買付規制の対象になりうるということで、シリアスな問題になると理解しております。
 
 その点については、日本においても、もし市場内買付も公開買付規制の対象にするのであれば、ヨーロッパ諸国とほぼ同じ状況になりますので、共同買付者概念の重要性が増してくると思います。その点を考慮して、ぜひ公開買付制度のほうも、共同買付者概念について検討を進めていただきたいと存じます。
 
 それから、2番目は、23ページにある大量保有報告制度の実効性確保に関することです。これについては、もちろん課徴金制度を適切に運用するということもあるのですけれども、私法上の権利にも影響を及ぼすという、そういう可能性もタブー視せずに議論していただきたいと思います。
 
 資料4のでは、諸外国の規制として、議決権行使の停止という制度が挙げられていますけれども、これに限らず、例えば大量保有報告制度の違反があった場合に、株式の売却を命じるという方法も考えられます。このほうが、株主でありながら議決権がないということは考えられるかといった、実体会社法の問題をあまり意識することなく、制度設計できるのではないかと思っております。特に大量保有報告制度の違反というのは、記載されていた目的が実際の行動と齟齬しているという形で問題になるために、規制の違反の有無は、事後的にしか分からないというケースもあると思います。そのような場合、規制違反が明らかになったところで1回売却させるという、それで仕切り直しをさせるというほうが適切な解決になる可能性もあると思っておりますので、そういった点も選択肢の一つに含めて議論していただければと思います。
 
 長くなって恐縮ですが、以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、齊藤委員、どうぞお願いいたします。

【齊藤委員】
 齊藤でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。前回の大幅な改正から長い年月が経ちましたので、今回、公開買付制度や大量保有報告制度の改正が検討されることは大変歓迎されるべきことと思います。既に御指摘もありましたが、検討課題には、短期に、他の制度にあまり影響を与えることなく実現可能であるような部分と、それから既存の制度の趣旨の理解の根本に関わるものがあるように思われますので、事務局におかれましては、どのような順番で議論するのがよいかを整理しつつ、議題を設定していただければありがたいと思っております。
 
 まず公開買付規制につきましては、例えば前回の改正で、全部買付義務等が導入されたことによりまして、その制度趣旨の理解に混乱が生じているようなところがあるかと思います。ご説明にあった東京機械製作所の事案において、公開買付規制に正面から違反したわけではないにもかかわらず、その買付手法の適正さが疑問視されたということの背景にも、公開買付規制が何を目的とするものかということについて、関係者の理解が分かれていることが認められると思います。
 
 また、そのことが司法による解決に多くを期待するという意味で司法への負担にもなっているのではないかと思われます。したがいまして、この場の議論を通じて、特に支配権の取得の場面において、立法としてどのような手当が必要なのかということについて議論が深まることは非常にありがたいことだと思っております。
 
 欧州型への移行ということにつきましては、提案として検討対象に取り上げられていることは歓迎すべきことと思っております一方で、欧州においても買収指令の策定には非常に長い時間を要したものですから、欧州においても、欧州型の規律の評価には関係者において対立があったものと思います。それは我が国でも同様と思われ、欧州型の導入は、従来の公開買付規制の発想も大きく転換させるものであることに照らして、短期の議論で、そもそも無理と結論づけられ撤回されて、その後は俎上に上がらないということは残念なことでもございますので、例えば短期で実現可能でなかったとしても、今回の改正論議で、将来的にそのような導入も可能になるような形での議論の着地点を見つけるようなことも検討していただくとありがたく思います。
 
 また、欧州型の規制に関する議論の中では、会社法における株主保護あるいは少数株主保護との役割分担の整理、例えば平成26年会社法改正において手当されました第三者割当増資の規制の位置づけなどについても整理していく必要があろうと存じますし、また、支配権の移動における株主保護の必要性は、会社法において大株主の義務というのが日本においてはいまだにあまり明らかでないというところにも起因しているところもあろうかと思いますので、そのような上場会社の株主保護の在り方全体にかかる議論が深まる方向に、本ワーキングの議論がなされていくことが望ましいと思っております。
 
 大量保有報告制度につきましては、既に御指摘にあったと思いますけれども、重要提案行為というものが非常に広く解され得るというところが、エンゲージメントへの阻害要因の一つとなっているかと思いますので、御指摘があったような方向で規制されるべき範囲が明確化されていくということが望ましいと考えております。
 
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、玉井委員、どうぞお願いいたします。

【玉井委員】
 事務局の御説明ありがとうございました。また、発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 
 まず、第1点目の過不足はないかというところについてですけれども、非常に広範に論点を拾っていただいていて、不足ということは全くないと思います。むしろ挙げていただいた各論点について同じように議論していくと、とても時間が足らないだろうと思われる中で、メリハリをつけて議論すること、そして、その論点の、既に御指摘ありますけれども、相互の連関ということを非常に意識しながら、その根底にある考え方、これに立ち返ってバランスのいい議論をしていくということが非常に大事かなと考えているところです。
 
 優先順位についてですけれども、今日は具体的な議論には立ち入らないということで、特にどのような点に重点を置いて御議論いただけるとありがたいかという実務家の観点からですけれども、公開買付制度について、私自身は3点考えております。
 
 一つが、市場内取引に公開買付規制を及ぼすかどうかという点、もう一つが、昨今、よく議論になっております部分買収の強圧性という問題に対してどのような対処が考えられるかという点。それから、もう一つが、日々の実務を通じて、関東財務局の事前相談のあり方について、いささか硬直でやりにくいように感じているところもありますので、公開買付規制の柔軟化、あるいは運用体制のあり方についての議論や方向づけについては大いに期待したいと思っているところです。
 
 特に最初の市場内取引については、資料の8ページですけれども、事務局の説明にもありましたが、資本市場の様々な環境変化が起こっているというところが顕著に現れている部分でもあるかなと思っていまして、かなりの短期間に相当程度の割合まで市場での上場会社の株式の取得がされるという状況が生じている中で、特に上場会社の時価総額が非常に小さい会社もたくさんある中で、この問題をどのように取り扱っていったらよいのかということが検討の課題になると思っています。
 
 それから、部分買収の強圧性については、やはり実際に友好的な取引を中心に、部分買収も相応に活用がされているという実務もございますので、それも踏まえて、どのようなアプローチが考えられるかという点、私自身は買収の手法や選択肢を過度に絞り込まないような形での対応ができるといいなと思っているところです。
 
 それから、大量保有報告制度につきましては、私は1点、実務家として感じるのは、やはり23ページのエンフォースメントの点に課題が多いというところです。ここに本格的に取り組んでいくべきなのかなと思います。課徴金の執行状況を見ていると明らかで、現在の課徴金の制度の性質を考えると難しい部分がありますが、ある程度メリハリをつけて、提出遅延の事例が年間に約1,500件とありますけれども、その中でも悪質な事例あるいは実質的に問題がある事例をきちんと捕捉できるような制度というのを考えるべきではないかと思います。
 
 他方では、大量保有報告制度というのは、機関投資家に限らず、個人や海外投資家なども広く提出義務者となり得るので、制度の不知とか、うっかりミスといったようなことで不遵守の件数が積み重なっていくというようなことがないように、ユーザーフレンドリーという言葉を使っていらっしゃった委員の方がいらっしゃいましたけれども、分かりやすい制度というのを目指していくということも、抽象的なポイントで恐縮ですけれども、大事かなと思っています。
 
 最後、実質株主のところですけれども、こちらも非常に重要な論点で、何らかのフォローができる形で議論がまとまればいいなと思っています。企業はよく実質株主判明調査というのを一定のコストを払って、私的に行っているわけですけれども、一般的にそういうニーズがあるということだと思います。海外の法制度を見ましても、欧州と米国で違いはありますが、何らかの対応が取られているという実情を考えますと、日本でもやはり真剣に制度の導入を考えるべきではないかと考えています。
 
 最後に留意点として、これはむしろお願いになるのですが、実際に具体的な論点について議論を進めていく際に、やはり判断の基礎とすべき重要なファクトと言いますか、情報をしっかり議論の前提に置いて、それを認識しながら議論するというのが重要かなと思っていまして、例えば統計的なデータとか、あるいは実際に問題になった具体的な事例とか、そういったファクトの部分を、今日も事務局のほうで非常に参考となる資料を丁寧に御準備いただいていますけれども、このような形で御準備いただけると議論がやりやすいかなと思っております。
 
 私からは以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に、石綿委員、桑原委員、そして、児玉委員の順で御発言をお願いできればと思います。
 
 石綿委員、どうぞお願いいたします。

【石綿委員】
 御発言の機会いただきまして、ありがとうございます。森・濱田松本法律事務所の石綿です。もう既に、皆様において、私が申し上げたいことを大分おっしゃられましたので、手短に申し上げられればと思います。

 私自身、2006年の公開買付規制の改正のワーキング・グループにも携わらせていただきましたが、その後の17年間に色々な事例を見るにつれ、当時、思いが至らなかったところないしは手が届かなかったところなどが少なからずあるということを認識するに至っております。過去17年間の事例の中には、公開買付規制の目的である取引の透明性、公正性の確保という観点から問題となる事例も見受けられておりますが、そのような問題に対し、新しく法改正により対応していく、規制を課していくという発想は必要だと思っています。
 
 また、今般のような法改正がそう簡単にできるわけではないということを考えますと、法改正のはざまに色々な問題が出てきたときに、ある程度柔軟に対応できるような枠組み、それを可能とする運用体制や差止制度などですが、そのような枠組みも用意していけるとよいのではないかと思います。
 
 あと先ほど便益と費用という話がありましたけれども、公開買付規制を論じる上では、その規制による公開買付けに対する阻害効果を評価し、規制の目的との関係において、阻害効果が大きくなり過ぎないかというような発想を持つことが肝要であると思っています。また、今の公開買付規制は、経済合理的なM&Aやそのような条件設定自体も妨げてしまうような、硬直的な面も有しておりますので、経済合理性のあるM&Aを阻害することがないように見直しができればと思っております。
 
 次に、大量保有報告制度の方でございますけれども、この点については、大きく2つの問題があると思っています。一つは、大量保有報告制度が遵守されていない、または遵守されていても大量保有報告書による情報開示が不足しているという問題です。もう一つは、エンゲージメントに委縮効果が生じている可能性があるという話。この両方にやはり目配せをしながら考えていく必要があると思っています。
 
 では、どうしたらいいかというと、今の大量保有報告制度の趣旨が、支配に関する観点と、それから、株式の需給関係に関する観点から制度設計されているわけですが、その制度趣旨も若干見直すことによって、規制の範囲を合理的なものにすることが考えられると思います。他方、規制を及ぼす以上は、しっかりエンフォースをする必要があります。そういうメリハリのきいた制度設計にするのがよいと思っております。また、情報開示の不足については、諸外国の開示実務も参考にグローバルに見てそん色ないようにしていく必要があると思います。
 
 重要提案行為の話につきましても、単純に項目を減らす、増やすという話ではなくて、会社支配にどういう効果を与えるといった観点も踏まえ、海外の事例なども見ながら合理的な範囲を考えていけるといいのではないかと思っています。
 
 最後に、過不足ですが、基本的によくまとまっていらっしゃると思っておりまして、それほど大きな問題点は感じていません。あえて、申し上げるとすると、最近、予告型TOBが結構行われているわけですけれども、予告型TOBについてどう考えるかというところも整理していけるとよいのではないかと思っています。
 
 もう一つは、やはり大量保有報告制度と公開買付制度は相互に連関しておりますので、大量保有報告制度で論点としているものを公開買付制度のところでも議論するなど、両方の制度が一連のものとしてうまく回るようにつくっていく必要があろうかと思います。
 
 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、桑原委員、どうぞお願いいたします。

【桑原委員】
 桑原でございます。発言の機会をありがとうございます。今回、公開買付制度、大量保有報告制度、実質株主の透明性について、広範に重要な論点を出していただいて、ありがたく思います。非常に重要なワーキング・グループに参加させていただいたと思っております。よろしくお願いいたします。
 
 私は、公開買付制度について、進め方と論点と、それぞれ若干コメントさせていただきます。既に委員の先生から色々御意見が出たところと重なるところでございますが、まず、公開買付制度の中で、特に欧州型の規制への転換という点、これを本気でやるのだとすると相当大がかりな改正ということになるのだろうと思います。
 
 藤田先生が仰っておられたように、欧州型を意識しながら議論するということは重要だと思いますけれども、そもそもこういう大きな規制の転換を今回のワーキング・グループで議論するのかどうかというところについては、最初のほうで整理をしていただいたほうが、その後の議論がしやすいのではないかと思っております。
 
 それから、今回御提示をいただいた論点は、議論を進めると、色々な派生論点や関連論点、相互に関連する論点が出てくるものも多くあると思います。例えば共同保有者概念のところは既に御指摘ございました。また、市場内取引について強制公開買付規制を及ぼすということになると、急速買付けの議論と同じように、一連の取引として、どこまで前後の取引を規制していくのかといった点も考えていく必要があると思います。こうした派生論点、関連論点についても深掘りした議論ができるように、事務局におかれましては議論の順番や進め方を工夫していただければと思っております。
 
 それから、論点についてでございますが、こちらも本当に広範に拾っていただいており、過不足というところではございませんが、若干のお願いとしては、先ほどの石綿先生がご指摘した予告型TOBのケースを取り上げてほしいというところとも少し絡みますけれども、18ページの撤回に関する規制のところで、撤回事由がどうあるべきかというあり方をもう少しコンセプトベースで議論できるといいかなと思っております。
 
 と申し上げますのも、現状、例えば、公開買付資金の調達に際して、金融機関から取得するコミットメントレターに記載される融資の前提条件は公開買付けの撤回事由よりも広くなっております。つまり、現状では起きていないと思いますが、融資がつかない状況下でも公開買付けは撤回できない、したがって決済事故が起こってもおかしくないような立てつけで動いているというのが実務の現状でございますので、この辺りも本当にこの実務でいいのかというところを含めて、撤回事由のあり方を見直してみてもいいのかなと思っております。
 
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、児玉委員、どうぞお願いいたします。

【児玉委員】
 児玉でございます。
 
 私自身、海外での業務経験が非常に長かったこともございまして、比較法的な視点から、かつ大企業だけではなくて、中小企業の立場も代弁するようなオールジャパンの企業目線から、本ワーキング・グループに貢献できればと考えております。よろしくお願いいたします。
 
 まず1つ目ですが、事務局のほうで整理していただきました論点につきまして、とりわけ新たに付け加えて議論をしていただきたいと考えるところはございません。御提示いただいた論点を議論するに当たっての留意点でございますけれども、企業の目線から見たときにぜひお願いをしたいところをお話しさせていただきたいと思います。
 
 大量保有報告制度並びに実質株主の透明性に関するところ、とりわけ後者についてあらかじめ申し上げさせていただきます。これまで長年にわたるコーポレートガバナンス改革におきまして、金融庁の皆さんをはじめ、リーダーシップを発揮していただいて、企業側としては様々な面で開示の充実を進め、透明性を向上させてきたと思っております。現在、企業情報の開示は、本年度から始まります環境や人材といった非財務情報の開示も含めまして、十分にグローバルスタンダードをキャッチアップしていると考えております。これに対して、投資家側の情報開示について目を移しますと、残念ながら日本はこの視点が不十分であったと言わざるを得ないと思っておりまして、その開示の充実を推進することが急務であると実務的には感じております。
 
 比較法的に見ました場合に、日本法における株主の権利は、実はかなり相対的に強いものとなっておりまして、企業側の情報開示ばかりが先行しているという現状を考えますと、企業と株主との開示、あるいは権利関係がアンバランスな状況にあると実務の担当者として強く感じることがございます。市場の透明性向上に資する制度を拡充するという視点から、各施策について、このワーキング・グループで検討していただければと考えております。
 
 とりわけ、実質株主の透明性、実質株主の把握のための制度導入は、オールジャパンの企業目線では喫緊の課題であると強く申し上げておきます。各論については、個別の論点のところでお話をさせていただきますが、今回の資料の26ページですか、諸外国の例といたしまして、機関投資家に保有明細を開示させるアメリカ型の制度、それから、会社が能動的に投資家に対して事実確認できるようにするというヨーロッパ型の制度が紹介されておりますけれども、ぜひ皆さん確認していただきたいこと、私、機会があるごとにこの発言を続けておりますが、これは二者択一の問題ではないということです。企業にとりまして、実質株主の把握は待ったなしの喫緊の課題であることをもう一度申し上げます。今すぐできることから始めて、具体的にはソフトローで対応できる制度から導入し、最終的には恐らく法改正が必要となるであろうヨーロッパ型の確認制度を認めていくと、そこまでたどり着くこと、これをぜひ実現していただきたいと企業代表として強くお願いするものであります。
 
 そのためには、金融庁だけではなくて、オブザーバーとして参加されておられると思いますが、経産省、さらには法務省の方にも本ワーキング・グループと連携する体制を構築していただいて、日本経済、市場全体のあるべき方向性を持ちながら、また、もう一つのお願いは、世界経済のスピードという非常に速い時間軸を持ちながら、迅速な対応をお願いしたいと切に願うものであります。5年後、10年後の対応では、トゥーレイトになるのではないかということ、これをぜひ御理解いただきたいと思います。この上で議論を重ねていければと考えております。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、太田委員、どうぞお願いいたします。

【太田委員】
 伊藤忠商事の太田と申します。このたびはこのようなワーキング・グループに参加する機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
 
 伊藤忠商事からの参加ということで、買付者としての立場を御想像されるところは多いかと思いますけれども、このワーキングに参加するに当たりましては、買付者の立場だけでなく、少数株主、対象会社その他様々な視点をもち多角的に考えながら参加していきたいと思っております。今回のワーキング・グループの目的、趣旨、狙いの一つとしては、公開買付け・買収の透明性の向上が狙いかと思いますけれども、必ずしも一律の議論というのがなじまない点が多くあると今回の資料を拝見して考えております。ですので、不備の是正・防止のために何ができるのかといったところを、様々な視点で考えていきたいと考えております。
 
 一律の議論が非常に難しいと思っている中で、資料の16ページに記載の柔軟化・運用体制というところにつきましては、企業で実務をやる上では非常にありがたい検討課題になるのではないかと考えております。かなり中長期的な取組みにもなると思いますので、今すぐに結論を出して、今回のワーキング・グループで全て結論を出すというような議論ではないのかもしれませんけれども、やはり企業としましては、例えば、用語として出てくる「一定の」ですとか「著しく」とか、色々解釈に幅があるような文言をベースに実務を進めようとしたときに、やはり不安定さが残りますし、予見していくのが難しい側面がございますので、そういうところも含めて、個別の御相談がしっかりできて、もちろん最低限の公正性を守るというのは大前提かと思いますけれども、柔軟に運用できる体制というのがもし仮に構築できるようであれば、非常に企業側としてはやりやすいということになろうかと思います。一定の不安の解消ということで、その他、17ページ以降にも様々な御指摘を資料のほうに記載いただいておりますけれども、この辺りにつきましても、一部のソリューションにもつながる考え方ではないかと考えております。
 
 それから、先ほど来、話題に非常に多く出ております、ヨーロッパ型の事後規制への転換というところに関しましては様々な議論がありますし、非常に難しいというのはお伺いしていても、文献等からも、感じているところでございます。考え方としては、非常にすっきりする考え方であるとは感じております。ただし、これまでは必ず全部買収をしなければいけないという前提はおかずに公開買付けについて検討しており、部分買収の禁止は我々企業側にとっても非常に大きな意識改革を要するような話と理解をしていますので、これこそ長期的な議論ということかと思いますけれども、議論をし続けるということ自体は有意義なことと考えております。
 
 御記載いただいた論点に関しての過不足というところに関しまして、私のほうからは特にございません。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして、武井委員、どうぞお願いいたします。

【武井委員】
 武井でございます。よろしくお願いいたします。
 
 まず、これらの論点は、全般的に、資本市場の透明性に関する論点ばかりでして、重要な論点ばかりだと思います。特に、諸外国がこの10年、20年、相当動きが早かったこともあるのですけども、日本の現状は資本市場の透明性の点で相当遅れているといいましょうか、諸外国と色々な差異ができている状態だと思います。資本市場というのはまさにグローバルでございますので、グローバル的に一般的なレベルと齟齬がある点はやはりきちんと、同じようなレベルにまでできないかということを考えるべきだと思います。そういう意味でこれらはとても重要な論点です。また、市場の透明性は、一般株主の保護のためにもとても重要な論点であり、一般株主の中には、エンゲージメントができるわけではない個人株主、個人投資家のかたも含まれますので、そういう方を含めた一般株主の保護の観点からも、今回制度的な対応をすべき点について対応するというのは大変重要な改正だと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
 
 そういう意味で、公開買付制度も大量保有報告制度も、透明性をつかさどっている重要な制度ですので、今回きちんと透明性の観点から議論すべきと思っています。
 
 また、グローバルと比較して日本が進んでいない点は、制度の実効性についてです。特に制度のエンフォースメントという観点からしますと、違反者の議決権停止であったり、株式を売却させる制度などの私法上の措置がない。行政上の措置だけに頼って、議決権停止とか株主を売却させる制度がない国は日本ぐらいなのだと思います。私法上のエンフォースメントの措置を持つべきであって、グローバルな観点から日本だけ違う制度になっているというのは、やっぱり根本的におかしいと思うのです。しかも、こういったことに関して、私としては、金商法という資本市場が担っている制度なので、金商法の中で、制度のエンフォースメントも自己完結して書くべきだと思います。そういった観点から、まさにグローバルな透明性等の観点からこの制度のエンフォースメントについても前向きにいろんな議論が進むことを大きく期待しております。
 
 実質株主の透明性に関する制度も、日本が透明性の観点からグローバルと比較して相当遅れている点でございますので、法制的には色々な議論があるかもしれませんけれども、資本市場の透明性が遅れている点を解決するために、聖域なく、クリエイティブに色々考えていく必要があるのだと思います。しかも、実質株主の透明性については、日本企業の企業価値向上を目的としたエンゲージメントの充実のためにもとても大事な論点でございますので、ここはちゃんとやるべきだと思います。
 
 あとは、各論3つです。まず、1つ目が、公開買付けに伴って企業価値を高める買収をどんどん前に進めるという観点から、色々なステークホルダーに与える影響・利害を含めた企業価値への影響に関して、公開買付届出書の記載事項の充実という論点も各論の一つとしてあるかなと思っております。
 
 2つ目が、柔軟化に関連するかと思いますけれども、公開買付期間が60営業日を超えて延長できないというのを原則としているのは多分日本だけだったかなという気がしています。公開買付期間の延長に関する議論をするときには、この点の柔軟化の話になるわけですが、60営業日を超えて延長できない点をどこまで維持するのか、また公開買付期間は買収者だけが一方的に決めていいのか。これは一般株主や市場への影響を踏まえて色々考えていかなければいけないと思っています。
 
 3点目が、株式交付などの株式対価の公開買付けについてです。株式対価の公開買付けを行う場合、株式交付や株式発行が差し止められた場合には公開買付けは撤回できなければおかしいと思います。また、撤回事由についても、解釈に不明確さがあるのであれば今回きちんと明確にすべきだと思っております。
 
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、次に萬澤委員、どうぞお願いいたします。

【萬澤委員】
 萬澤でございます。発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。
 
 事務局の方におかれましては、詳細な御説明ありがとうございました。一貫した説明が難しい制度になっているところを、どこまで一貫した形に持っていけるかということが一つ大事な点かなと思って伺っていました。
 
 そこで、重要だと思っている点は、これまでも多く出てきているところですけれども、欧州型の規制にどこまで移行するかということかと思います。欧州型の規制を導入する趣旨は、少数派株主の退出権の保護といった、より少数派株主の保護を強めるものになることと思っています。ですので、我が国でこれまでとられてきたような、支配権等に影響を及ぼし得るような証券取引について、透明性や公正性を確保するという趣旨を大きく変えることになるのではないかと思っており、欧州型の規制をどこまで導入できるかによって、市場内取引をどうするかですとか、第三者割当をどうするかという論点について、随分、議論の方向性が変わってくるのではないかと思います。
 
 また、3分の1ルールの閾値もどう考えるかというと、我が国では株主総会の特別決議を阻止できる基本的な割合であること等に鑑みて、ということでしたけれども、もしも欧州規制を入れるとなると、例えばイギリスですと30%というのは実効的な支配を取得し得るという考え方でそのようにしているということですので、この閾値もその目的に関連して議論の対象になるのかなと思います。あと最低価格規制や全部買付義務の閾値をどうするかということも、欧州型の趣旨をどこまで取り入れるかによって変わってくるのかなというふうに思いました。
 
 あと、これも先ほど他の先生方がおっしゃっていたことですけども、このエンフォースメントをどういうふうに規定するか、いくらいい制度をつくってもエンフォースメントが確保できなければいけないと思いますので、エンフォースメントのところも十分議論がなされる必要があるように思っております。
 
 私からは以上になります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 以上で、委員の皆様方全員から御発言をいただきました。非常に貴重な御指摘をたくさんいただきまして、誠にありがとうございました。
 
 あまり時間は残っていないのですけれども、もしオブザーバーの方々で御発言があれば簡潔にいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
 国際銀行協会、平山さん、どうぞ。

【国際銀行協会】
 国際銀行協会の平山と申します。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 
 論点の過不足という観点から、大量保有報告制度について1点述べさせていただきたいです。
 
 本日も複数の委員の方から大量保有報告に関する負担や、ユーザーフレンドリーの視点に関する御発言がございました。また、資料24ページ下段に、現行の記載方法が複雑であることが提出遅延の一因となっている可能性があるとの記述がございます。せっかくの機会ですので、本ワーキング・グループで議論される制度の高度化に資する範囲で、海外の事例を踏まえて、報告様式の簡素化も併せて御検討されるべきだと考えております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 ありがとうございました。
 
 では次に、東京証券取引所、青さん、どうぞお願いいたします。

【東京証券取引所】
 東京証券取引所の青でございます。
 
 今般、会社の支配権をめぐる争いがかなり常態化しつつありますし、キャッシュアウト等の事例もかなり積み上がってきているという状況ですので、そうした実際の状況を踏まえた上で、現行制度のよしあしにつきまして改めて見直すということは、非常に時宜を得た対応だと思います。その際に、時間がかかるものも含めて、広く制度全般をスコープに入れて議論していくことは非常に大切なことだと思っておりますので、ぜひ充実した議論をお願いできればと考える次第です。
 
 その際に、できましたら、先ほども出ておりましたけども、金商法の公開買付けと会社法の規制は相互に関連し合う部分があるかと存じますので、会社法の現状を所与のものとし過ぎずに、将来的にはいかにあるべきかというところを念頭に置きながら議論ができると、より望ましい形につなげられるのではないかと思います。
 
 それから、支配権市場が有効に機能するということは非常に重要なことですので、見直しについて広義で議論するときも、M&Aが有効に成立するような仕組みになっているかという視点を絶えず持ちながら御議論を重ねていただければと存じます。
 
 それから、大量保有報告制度の関係についても、色々な議論が出ているところですけれども、エンフォースメントに関しましては、より厳しくかける必要性がある場合と必ずしもそうでない場合があるかと思いますので、シチュエーションをある程度想定した上で、しっかりとエンフォースメントがかからないといけないところはどこか、そこを十分に考えた上で対応を分けていくというのも一つの考え方だと思われます。
 
 最後ですけれども、様々なところでエンフォースメント、つまり実効性が重要だと思っておりまして、必ずしもすぐに法改正をするマターではないかもしれませんけれども、特別委員会がワークするかどうかや、特別委員会の考えていることがきちんと公開されているかどうかといった点も重要だと思われますし、そうしたところのあり方を通じて、場合によっては先ほど武井先生がおっしゃられた私人によるエンフォースメントも含めて、適切に争い得るような形で機能するかどうかという点も視野に入れていくことも重要だと思います。TOB制度そのものの話とは少し段階が違うかと思いますけれども、そういうこともどこかで議論する対象にできれば、よりよい制度になるのではないかと思う次第です。
 
 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは次に、日本証券業協会、森本さん、どうぞお願いいたします。

【日本証券業協会】
 日本証券業協会の森本でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、このたび本協会もオブザーバーとして本ワーキング・グループにお招きいただきまして御礼申し上げます。
 
 長年にわたりまして大きな見直しが行われてこなかった公開買付制度、大量保有報告制度などにつきまして、今般、資本市場における環境変化を踏まえて検討が行われることは時宜にかなった取組みであると理解をしております。市場の透明性、公正性を高めつつ、投資者保護を確保しながら、資本市場の活性化を目指す議論となりますよう本協会も微力ながら協力させていただければと思っております。その上で、今回議論の対象とされる制度に関しましては、証券会社が関与する場面も多々ございますが、議論を通じまして、市場関係者にとって予見可能性がより高まるとともに実務的に負担が小さくなる制度となることを期待しております。
 
 なお、証券会社やそのグループでは、企業支配とは関係なく、トレーディングや運用のためにまとまった数量の株式を売買したり保有したりすることを日常的に行っておりまして、これが本ワーキング・グループで議論されるテーマ、例えば市場内取引を3分の1ルールの適用対象とするなどの検討課題に関係してくるのではないかと考えております。
 
 先ほども申し上げましたとおり、今回の議論は時宜にかなった取組みであると理解をしておりますが、その一方で、規制の射程として想定していない類型の売買や保有にまで影響を及ぼすことは意図するところではないのだろうとも理解しております。
 
 つきましては、新しい規制・制度の設計に当たっては適用除外を設定するなどの工夫も併せて御検討いただきたく、その他、証券会社の実務面からの問題意識や意見なども含めまして、本ワーキング・グループにおける発言や、金融庁の御担当の方への御相談をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは次に、経済産業省、安藤課長、どうぞよろしくお願いいたします。

【経済産業省】
 経済産業省の安藤です。
 
 経済産業省では、昨年の11月から公正な買収の在り方に関する研究会を開催してまいりまして、M&A市場における、特に経営支配権が移るような買収について、経営支配権に関わる市場機能がより発揮され、それにより企業価値の向上に資する買収が活発に行われるようにということで、検討を進めてきてございます。
 
 今回の金融庁の制度的な検討と経産省の検討で、かなり問題意識が重なる部分もあるかと思いますので、政府の中でも連携をして、M&Aに関する環境整備を進めることに力を尽くしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 今回の取組みは時宜にかなった検討だと思いますので、経産省としてもしっかりとサポートをしていければと思っております。
 
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 あっという間に時間が大体来てしまっておりますけれども、そろそろということで本日はこの辺りにさせていただければと思います。
 
 本日は初回にもかかわらず大変貴重な御意見を多数いただきまして、また、委員の皆様方全員から御発言をいただきまして、誠にありがとうございました。本日いただきました御指摘等を踏まえ、次回以降さらに議論を進めていきたいと思います。
 
 また、次回以降は、個別の論点について深く、あるいは他の論点との関わり、関連、それから考え方等にも十分留意しながら御議論を進めていただければと思います。
 
 こういう会合をするといっても時間的にはどうしても制約がありますので、どうかお気づきの点とか御意見等ございましたら、随時、事務局まで、私まででも結構ですけど、事務局のほうにメール、お電話、どういう方法でも結構ですので、お伝えいただけますと大変ありがたく存じます。議論できる時間というのは限られておりますけれども、そこでいい議論をしていただくためにも、そのような形で随時お気づきの点があれば事務局までお知らせいただければありがたく存じます。
 
 それでは最後に、事務局から御連絡等ございましたらお願いいたします。

【谷口企業統治改革推進管理官】
 本日はありがとうございました。
 
 今、神田先生からお話のありました事務局への御連絡でございますけれども、もし事務局あてに何か御意見などございましたら、私までお寄せいただければと思います。
 
 また、次回ワーキング・グループの日程でございますけれども、今後、皆様の御都合を踏まえました上で決定し、その上で皆様にまた改めて御案内をさせていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。
 
 事務局からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。
―― 了 ――

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