金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」(第5回) 議事録

  • 1.日時:

    令和5年11月1日(水曜日)16時00分~18時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

    【神田座長】
     あらかじめ遅刻されるという御連絡をいただいている方を除いて皆さん御出席ですので、始めさせていただきます。本日は、金融審議会の公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの第5回目の会合になります。皆様方には大変お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

     本日でございますけれども、このワーキング・グループとして、初めて対面での開催をさせていただいております。会議の模様は、前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。議事録も通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

     なお、本日は飯田委員と玉井委員が御欠席と伺っております。

     それでは早速ですが、議事に移らせていただきます。このワーキング・グループですけれども、本年の6月以降、皆様方に御議論をしていただいてまいりました。前回までで全てのテーマについて一通りの御意見を頂戴したことと思います。したがいまして、本日は改めて全てのテーマについて御議論をいただくということにさせていただき、それを踏まえて、次回以降で本日までの御議論を踏まえての取りまとめを目指させていただきたいと思います。そういったことを見据えて、今回は全てのテーマを網羅した資料を準備していただいております。

     それでは、本日も、これまでと同じですが、まず事務局から資料の説明をしていただきます。その後、皆様方に質疑応答、討議の時間とさせていただきたいと思います。それでは、事務局からの資料説明をお願いいたします。

    【野崎企業開示課長】
     それでは、事務局説明資料につきまして、御説明させていただければと思います。

     本日の資料でございますけれども、3部構成となってございまして、1つ目が現行制度の概要、2つ目が検討課題についてこれまでの御議論をまとめたもの、そして3つ目が本日御議論いただきたい事項となってございます。検討課題につきましては、公開買付制度、大量保有報告制度、実質株主の透明性の順にこれまでの議論の整理を御説明させていただければと思います。

     公開買付制度につきましては、6ページにございます欧州型の規制への転換について御議論いただきました。7ページにございますように、支配権の移転の場面において、一般株主が公平な価格で売却する機会を確保することは非常に重要ということで、これを担保できる形に近づけることが望ましいとの賛同する御意見があった一方で、欧州型の規制への転換は抜本的な改正が必要となるけれども、そこまでのニーズは現時点では確認されていないのではないかといった御意見もいただいたところでございまして、中長期的な課題と位置づける御意見も多数いただいたと考えております。

     続きまして、市場内取引の取扱いにつきましては、8ページ記載の裁判例もございまして、9ページにございますように、市場内取引についても、経営支配権の異動を伴う場合には株主に十分な情報と熟慮期間を確保していくことが必要など、3分の1ルールの適用対象とすることに賛同する御意見を多くいただいたところでございます。その際、その他の1つ目のところで記載してございますけれども、M&A取引の機動性の観点から、閾値を超えた後50%までの買付けについて常に公開買付けを必要とするのかを検討すべきという御意見も併せていただいたところでございます。

     次の10ページにございますように、フランスをはじめ幾つかの国におきましては、30%から50%の範囲においては、一定以上のスピードで取得しない限り公開買付けは不要とされてございます。一方、我が国の公開買付制度におきましては、過半数から3分の2の範囲におきましては60日で10名以内からの買付けであれば適用除外とされる一方で、3分の1から50%の範囲におきましてはそのような適用除外が設けられていないという状況でございます。市場内取引を3分の1ルールの適用対象とする場合には、3分の1から50%の範囲においても適用除外を設けるべきか、本日新たな論点として御議論いただければと思います。

     続きまして、11ページ、第三者割当の取扱いでございます。こちらにつきまして、12ページにございますように、強制公開買付規制の適用対象とすることに賛同する御意見もありました一方で、第三者割当と株式の買付けでは経済実質が異なるなどの反対意見がありましたとともに、さらに、欧州のような事後的な義務的公開買付規制に完全移行する際の検討課題として中長期的な課題とすべきとの御意見もいただいたところでございます。

     続きまして、13ページ、公開買付けの強圧性をめぐる問題でございます。こちらにつきまして、事務局よりローマ数字のⅠ、Ⅱ、Ⅲでお示ししている3つの案を提示して御議論いただいたところでございます。

     まず、14ページ、1つ目の案としまして、現行の3分の2の全部買付義務の閾値を下げるべきとの案につきましては、賛同、反対双方から御意見があったとともに、こちらも欧州制度への転換と併せて中長期的な課題として検討すべきとする御意見もいただいたところでございます。2つ目の追加応募期間を設ける案につきましては、賛同する御意見、また、任意の措置として導入することに賛同する御意見を複数いただいたところでございます。3つ目、16ページでございますけれども、株主の意思確認の仕組みを導入するという案につきましては、買収防衛策との関係から不要とする御意見があった一方で、部分買付けを実施したいのであれば、買付者が利害関係者の支持を集めるようにする規律を導入すべきといった御意見や、会社法を参考に、10分の1以上の株主が反対するような部分買付けについては株主の意思確認手続を求めるべきといった御意見など、賛同する御意見を複数いただいたところでございます。

     続きまして、17ページ、現行で一部認められている公開買付けのオプトアウト制度でございますけれども、これを一般的な形で制度化すべきかという論点でございます。こちらは18ページにございますように様々な御意見をいただいているところで、現時点で一定の方向性を得られてないかなと考えております。

     続きまして、19ページ、3分の1の閾値を下げるべきかという論点でございますけれども、こちらは20ページ目にございますようにグローバルスタンダードの30%にまで引き下げることに賛同する御意見を複数いただいたと認識しております。

     続きまして、21ページ、5%ルールの適用範囲の見直しというところでございます。こちらは金融商品取引業者等が顧客の流動性確保の目的で自己勘定で行う取引など一定の場合には、5%ルールの適用の在り方を見直すべきではないかという論点でございます。こちらは、22ページにございますように、規制の潜脱とならない範囲で適用除外を認めることに賛同する御意見を多数いただいているところでございます。

     23ページ以下は、急速な買付規制の取扱いでございます。24ページにございますように、現行、3分の1の閾値をまたぐに際しまして、3か月以内に行われる一定の取引を一連の取引とみなしまして公開買付規制を適用するというふうになってございますけれども、右側、検討課題その1としまして、そもそも公開買付けによって閾値を超える場合には、急速な買付規制の対象外とすべきだというところ、また、検討課題2としまして、今般の市場内取引を3分の1ルールの対象とする場合にはこの買付けの位置づけをどうすべきかというところ、また、そもそも急速な買付け等の規制が不要となるのかどうかというところについて御議論いただいたところでございます。

     御意見としましては、次の25ページにございますように、検討課題その1については、本制度の趣旨に照らすと、そもそも公開買付けを行う場合を対象とすべきではないという御意見があった一方で、本制度が有している実質的な効果も勘案した制度設計が必要というような御意見も含めまして様々な御意見をいただいたところでございます。また、検討課題その2につきましても、本制度自体を廃止してしまうと、先ほどの実質的に一体な取引について規制範囲が不明確となり、かえって萎縮効果を生じさせるおそれがあるということで、この資料に記載のとおり様々な御意見をいただいたところでございまして、いずれにしても御意見が分かれている状況かなと認識してございます。

     続きまして、26ページ、公開買付けの差止制度、それから、28ページからございます事後的な救済制度につきましても、様々な観点から幅広い御意見や課題の御指摘をいただいたところでございますけれども、いずれの制度につきましても、その要否とか具体的な手段とかスコープにつきましては御意見が分かれている状況かと認識してございます。

     30ページに行っていただきまして、公開買付規制の柔軟化・運用体制でございます。こちらは31ページに記載してございますけれども、運用面や中長期的な課題について幾つかの御指摘はいただきつつも、賛同する御意見を多くいただいたところと考えております。

     32ページ、こちらが公開買付制度の個別論点の最後となりますけれども、公開買付けの予告でございます。こちらにつきましては、33ページのとおり、開示の在り方について整備が必要というような形で御意見を多くいただいたところでございます。

     34ページ以下、①から⑩までその他の論点として項目を列記してございます。これまで①から⑧までは御議論いただいたところでございますけれども、⑨と⑩が今回新しくお示しするものでございます。36ページの⑨でございますけれども、公開買付説明書の簡素化です。公開買付届出書を参照すべき旨を記載することによって、公開買付説明書の内容を簡素化できないかという論点でございます。それから、次のページの⑩でございますけれども、こちらは、公開買付届出書の記載事項につきましても、本ワーキング・グループで提示された様々な御意見とか、近時、発行会社における開示の充実が進んでいるということも含めまして、こちらの書類についても一定のアップデートが必要ではないかというような全般的な方向性について御議論いただければと考えてございます。

     続きまして、39ページ以下では、大量保有報告制度の論点となります。まず重要提案行為の範囲につきまして、40ページにございますけれども、提案の態様や内容に着目して限定・明確化を図っていくことに賛同する御意見を多くいただいているところでございます。

     41ページは、共同保有者の範囲の明確化についての論点でございます。こちらも42ページにございますように、規制の潜脱とならない範囲で共同保有者の範囲を明確化することに賛同する御意見を多くいただいたほか、その他に記載してございますけれども、ウルフパックの問題への対応についても御意見をいただいたところでございます。

     続きまして、43ページ、エクイティ・デリバティブのロングポジションなど一定のデリバティブについては、制度の趣旨に照らし、大量保有報告制度の対象とすべきではないかとの論点を記載してございます。アメリカのSECにおきましても、大量保有報告制度を回避する計画・スキームの一環として現金決済型のエクイティ・デリバティブを取得した場合などには規制対象となり得る旨のガイダンスが公表されております。この点につきましては、44ページにございますように、潜脱的にデリバティブ取引を利用するケースなど一定の範囲に限定して、デリバティブ取引を大量保有報告制度の対象とすることに賛同する御意見を複数いただいているところでございます。

     45ページは、大量保有報告制度の実効性確保の論点でございます。この点につきましては、46ページにございますように、議決権停止制度の必要性、取締強化の在り方、違反時の差止めや制裁の在り方を含め、幅広い観点から御意見をいただいているところでございます。

     最後のブロックでございます。49ページ以下の実質株主の透明性でございます。こちらは50ページにございますように、運用資産が一定規模以上の機関投資家に情報開示を義務づけるという米国制度につきましては、中小規模の企業にとっては必要な情報が得られないなどの御指摘があった一方で、会社側の通知に投資家が答える形で実質株主を把握していくという欧州制度につきましては、企業と投資家との間の対話促進という制度の我々が目指すところの目的に合致するなど、賛同する御意見を多くいただいたところでございます。また、こちらの制度が整備されるまでの間は、例えばスチュワードシップ・コードなどのソフトローでの手当ての必要も御指摘いただいているところでございます。いずれにしてもこちらにつきましては、すぐ対応できることから始めるとともに、プラットフォームの構築など、企業・投資家にとって使いやすい制度とすべきといった御意見もいただいているところでございます。

     以上、これまでのワーキング・グループでいただいた御意見を紹介させていただきました。本日は、最後の52ページで記載しておりますように、これまでの議論の振り返りと本日新たにお示しした論点についての御意見を頂戴できればと考えております。

    【神田座長】
     どうも御説明ありがとうございました。

     それでは、これから委員の皆様方から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきますけれども、それに先立ち、本日御欠席の飯田委員から書面で御意見をいただいておりますので、事務局から御紹介をお願いいたします。

    【谷口企業統治改革推進管理官】
     金融庁企業統治改革推進管理官の谷口でございます。私のほうから、資料3の飯田委員からの意見書について御説明をさせていただきます。

     まず、飯田委員からの御意見として、これまでの議論について、3点ほど御意見をいただいております。まず1つ目が、強圧性の問題をめぐる対応というところでございますが、こちらについては、もしⅢの措置、つまり、株主意思確認手続を必要とするという措置について、一定の反対があった部分買付けについてのみ措置するということであれば、全部買付けの場合はⅡの措置、つまり、追加応募期間の措置、これを導入すべきであると考えるという御意見をいただいております。

     理由としましては、キャッシュアウトを予告して行われない場合には、全部買付けであっても強圧性が生じますし、キャッシュアウトを予告して行う公開買付けであっても、キャッシュアウトに一定の時間がかかることを考えると、追加応募期間を設定するほうが合理的であるということでございます。また、こういった意見が採用されない場合であっても、任意の措置としてⅡの措置、つまり、追加応募期間を導入するということは、禁止する必要がないので、できるようにすべきであるという御意見をいただいております。

     また、2つ目が急速な買付け等の規制の取扱いについてでございます。こちらは検討課題その1と関連いたしますが、市場内取引を3分の1ルールの対象とする場合には、市場内取引でtoeholdを築いた上で3か月以内に公開買付けを行うことができるようにすべきである。つまり、市場内取引で一定程度、つまり、株券等の総数の5%超を築いたような場合、その後公開買付けをやるということは、現行の急速な買付け等の規制をそのまま適用するとなると法に抵触し得る形になりますけれども、そういったことはできるようにしておくべきである。なぜならば、有益な企業買収すら阻害されてしまうおそれがあるからだということでございます。

     3つ目は公開買付けの予告でございます。こちらにつきましては、開示すべき情報について、どのような予告であれば許され、どのような予告ならば許されないということ、違法と適法の線引きを明確にすべきだという御意見をいただいております。

     続きまして、新たな検討課題のところでございます。閾値間の取引の適用除外、こちらにつきましては、まず過半数から3分の2の閾値の間、こちらは現行法のとおり適用除外にすべきであるという御意見をいただいております。また、意見の②としまして、3分の1から50%の閾値間、こちらについては逆に適用除外を認めるべきではないという御意見をいただいております。理由としましては、3分の1というのはあくまで事実上の支配を示す基準であって、3分の1を取得すれば支配を取得できるとは限らず、その後、追加取得により支配を強固なものにしたり、追加取得して初めて事実上の支配を取得できるケースも想定されるため、こちらについては適用除外にすべきではないという御意見をいただいております。

     次に、公開買付説明書の内容の簡素化、こちらにつきましては簡素化することに御賛成をいただいておりまして、また、一覧しやすいような開示の工夫なども一考に値するという御意見をいただいております。

     最後、6番目の公開買付届出書の記載事項の見直しにつきましては、公開買付けに応募するか、応募せずに会社に残るかなどの投資判断に重要な情報であるかどうかという観点から記載事項を検証すること自体には賛成ですという御意見をいただいております。

     私からは以上でございます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、討議の時間に移りますけれども、本日は大きなテーマが3つあることになります。第1が公開買付制度、第2が大量保有報告制度、そして第3が実質株主の透明性ということになります。今回は2つに分けて時間を区切って御意見等をいただければと思います。すなわち、公開買付制度とそれ以外という2つに時間を区切って御質問、御意見をお出しいただければと思います。

     なお、恐縮でございますが、オブザーバーの皆様方におかれましては、全てのテーマについて、委員の皆様方から御質問、御意見等をお伺いした後、御発言の希望がある場合には御発言を承るということにさせていただきたいと思います。

     冒頭申し上げましたけれども、次回以降取りまとめに入りたいと思いますので、できましたら、取りまとめを意識した御発言をいただければ大変助かります。また、これも御紹介がございましたけれども、公開買付制度については、新しい論点が挙げられていますので、もしそれについて御意見があればお伺いできればと思います。

     ということでして、大量保有報告制度以下は後でもう一度時間を設けますので、まず、公開買付制度について御発言をいただける方は御発言をお願いしたいと思います。どなたからでも御質問、御意見をお出しいただければありがたく思います。いかがでしょうか。

     石綿委員、どうぞ。

    【石綿委員】
     まず、全体について申し上げたいのですが、私は17年前に公開買付規制の見直しをテーマとする同種のワーキング・グループに関与させていただきました。そのときにも、市場内取引について強制公開買付規制の適用対象とするのか否か、ないしは差止めの制度を入れるか否かといった論点が出ましたが、実は、私は当時いずれにも反対をしました。なぜ反対をしたかというと、当時、法規制の適用対象を広げ過ぎることによって企業買収の阻害効果があるのではないかということを懸念したためです。特に、2006年というのは買収防衛策が実務的に導入され始めた時期でしたので、そのような買収防衛策という方法で私企業が個別に対応していけばよく、法制度が介入すべきではないのではないかという考えを有しておりました。

     しかし、その後17年間、M&A実務に携わってきた中で、根本的に考え方を改めることになりました。1つには、我が国のM&A法制のわかりにくさの問題があると思います。わが国のM&A法制は、アメリカやイギリスとも違い、独自の制度を採用しており、それ自体はいけないことではないと思うのですが、どうしてもわが国のM&A法制が分かりにくいという評価がつきまとうわけです。いろいろな理由があるとは思いますけれども、その一つは、私企業が買収防衛策を個別に設計して、そしてそれを実際に発動してしまうということが行われてきていることにあると思います。買収防衛策の内容は私企業が決めますから、いろいろ中身が異なりますし、その利用範囲とか要件が必ずしも明確ではない。そうすると、投資家から見て予測可能性も低くて、結局、社会的コストが高くつくことになります。

     しかしながら、わが国のM&A法制は不十分ですので、買収防衛策を用いる必要があるという主張にも一理あります。つまり、わが国では、時間・情報不足とか強圧性の問題について法規制で対応ができていないために、買収防衛策が必要となるわけです。そうであれば、公開買付規制の制度的枠組みの中で、このような問題が生じないようにできる限り手当てをしておいた方がよいのでないかと考えるに至ったわけでございます。

     それから、2つ目には、17年間も改正がされなかったということも想定外でした。「将来の課題にしましょう」といったときの「将来」というのは「5年」ぐらいなのかなと思っていましたら、17年経ってしまった。その間に日本の経済力とか日本市場のプレゼンスなどが大きく変わってきているわけです。したがって、私が申し上げたいのは、今回いろいろな意見がございますし、別に私の意見を通そうとは思っているわけでもありませんが、ただ、全員の意見の一致が見られないからといって先延ばしをするのはできる限りやめられたほうがいいと思います。そう簡単に改正の作業はできませんから、ある程度の意見の一致が見られるものについては、将来を見据えて思い切って改正していくという形で動いていかないと、日本のM&A法制はよくならないと思います。

     そのような観点で幾つか論点を絞って申し上げたいと思います。まず、13ページの公開買付けの強圧性の問題です。先ほど飯田先生のほうで、全部買付けについても強圧性の問題はある、その場合には任意にⅡの措置をとることができるようにする形で対応すべきではないかという意見がございました。まず、私は、今回の法改正で強圧性の問題に対する対応をするべきだと思っております。そのやり方自体はいろいろあると思いますが、私は、部分買付けであれ、全部買付けであれ、Ⅲの措置でやったほうがいいのではないかと思っています。実務感覚から申し上げると、Ⅱの措置については、実際に公開買付けに賛成をしていても応募しないで様子見をする人が増える結果として、公開買付けの成立確度を下げることになると思っています。任意の制度であったとしても、事実上それをやらざるを得なくなれば、同じような弊害があります。そういうことを考えますと、Ⅲの措置でやったほうがいいと思います。

    では、Ⅲの措置を部分買付けに限定すべきか否かという点については、部分買付けに限定すべきではないのではないかと思います。過去において上限をつけずに行われた公開買付けで、その後、非上場化したけれども、たくさんの株主がキャッシュアウトされずに塩漬けになってしまっている企業が実際存在しています。そういうことが実際起きているということを踏まえると、全部買付けだからといって強圧性の問題がないわけではなく、この問題に対する対応は必要だと思います。そして、その方法としてはⅡの措置よりⅢの措置のほうがいいのではないかと。なぜ部分買付けについてⅢの措置が認められて、全部買付けについてⅢの措置が認められないかということもあまり合理的に説明できないような気がしております。

     それから、2つ目は、26ページの差止制度の話に参りたいと思います。私は、前回も申し上げましたが、例えば、公開買付けに先立って大量保有報告制度の違反があったような場合とか、著しい強圧性が認められるような場合には、法令・定款違反には該当しないとしても、差止めが認められるような枠組みを用意すべきだと考えております。

     差止めが非常に濫用されるのではないか、それが企業価値などの企業側の論理でうまく使われるのではないかというような御懸念があるということは理解はしていますけれども、むしろそれは法制度の改正に当たって、そういう制度ではないのであると明確に制度趣旨を説明していけば、裁判所がそれを間違えて解釈するということはないと思います。株主の利益を守るものとしてこういう差止制度を用意していくことは、日本のM&A法制にとって必要であると思います。

     事後救済の方法としていろいろ御提案いただいているのも理解はしていますが、やはり実務的には、実際に公開買付けが成立してしまって、その直後に取締役を全部変えてしまえば、後から事後救済といったところでできることは限られているという印象がございますので、やはり事前の差止めを用意しておく方がよいと思います。もし強圧性が高いといって裁判所に差し止められたら、そこの部分を直してもう1回やり直す、セカンドチャンスをあげるという形で運用していけばいいのではないかと思います。

     金融庁による禁止・停止命令については、私も実務の中でこれを利用しようとしたこともあります。ただし、実際それが使われていないということにはそれなりの理由がありまして、現実問題、当局の方が持っていらっしゃる情報とか時間というものを考えると、これが現実的に機能することは考えられないわけでして、そういうものが机上にのっかっているからといって、それでいいというわけにはいかないのではないかと思います。

     それから、最後、新たな検討課題でございます。まず、1つ目のところについては、飯田先生と同じ考えです。3分の1から50%までの閾値間には適用除外は要らないと思います。3分の1持っている状況の中で支配権に影響を与えられるという話と、50%取得してもう支配権を取得したという状況ではやはり大きく状況が異なりますので、3分の1から50%までの閾値間に適用除外を作るということはあまり合理的ではないのではないかと思います。一方で、過半数から3分の2というのは十分考えられると思っています。

     公開買付説明書の内容を簡素化することは賛成です。

     それから、届出書について記載内容を見直すということも賛成です。特に届出書については、今、同じ記載が重複して記載されていることが多く、読みにくいとか、ないしはグローバルな観点から見て見直すべき事項がありますので、これを機にグローバルな目線でもう一回見直して、世界から見て恥ずかしくない届出書にしていくとよいのではないかと思っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、角田委員、どうぞお願いします。

    【角田委員】
     私からは、事務局の整理に私が反対意見を持つもの、意見が分かれているもの、追加された部分についてコメントします。言及しない点は、資料の整理と同じ、例えば欧州型でいえば、現状では反対で、少数株主保護の在り方として幅広く検討すべきというふうに御解釈ください。

     15ページの強圧性のⅡの措置について、公開買付期間を通常の期間と追加応募期間に分けるという点ですけれども、少なくとも義務化については反対です。最近の非公開化の事例でも、3割近く保有するいわゆるアクティビストが全部応募したが、結果的に79%の応募にとどまった事例があります。パッシブインデックスファンドのようにそもそも公開買付けに応募しない株主がいるだけでなく、スクイーズアウトを待てばいいという株主で応募をしない層が多くでました。スクイーズアウトまでの期間が長くなるので強圧性があるという議論がありましたが、強圧性を感じていないという方々もいるという我が国の株主構造があります。ですので、追加応募期間を導入すると、さらに様子見株主、フリーライドして応募手続きをしないで成立後の自動現金化を待つ方が多数になることで、よりよい買収が不成立になるリスクが高まる。少なくともこのリスクについて我々は検証していませんので反対です。特別な事情がないのに全部買付け後のスクイーズアウトが予定されていない案件はほぼないと思いますし、先ほどの個人が逆にスクイーズアウトを待つというような状況にもなっていますので、この点については強圧性の解消措置としても意義が小さいと思います。

     2つ目は、16ページの強圧性のⅢの措置についてです。公開買付けの応募の意思表示と賛否の意思表示を分けるということですけれども、こちらは部分買付けを禁止する欧州型への移行と一部同様の効果を持つので、私は少数株主保護の広い在り方と併せて検討していただきたいと思っております。株主は応募の有無という形で意思表明できますし、先ほど申し上げたように、少なくとも株主は強圧性の問題を感じていないように見えますので、持ち合い株主などの特殊な利害に基づく声が変に反映されるリスクを取ってまで手間と時間などのコストがかかるプロセスを導入する必要性はあまり感じておりません。

     3つ目は25ページの「急速な買付け等」の規制の取扱いです。これは存続させていただきたいなと思っています。現状の規制を撤廃すると、公開買付けの意図を隠して大量保有報告書を提出しながら、買い上がった直後に3分の1超の所有割合を取得できるということになってしまい、潜脱的な行為ができるようになります。大量保有報告制度についての議論は後半行うとのことですが、大量保有報告制度はそもそも投資家のポジションに伴う需給情報の開示だけでなくて、経営支配の意図があるのか、どういう目的で保有をしているのかという情報の開示を求める制度でもあると思います。経営支配目的への保有目的の変更が遅れることが散見されて、この状況が摘発も含めて改善されない中では、本規制は残しておいたほうがいいと思います。

     改めて、経営支配に関する開示でもある大量保有報告制度と経営支配権の取得のやり方及び経営支配後の経営方針の開示でもある公開買付制度というのは、実は連関しているのではないかなと思っています。その観点で差止制度のほうに移りますと、差止めが行き過ぎだという意見もあるみたいですが、強圧性のある買い方の場合に防衛策を使ってまで止めるということが行われている我が国では、経営支配目的に関する開示について虚偽の開示をしつつ株式を買った方が自由に経営権を取得できる、公開買付けを行えるというのは何かおかしいなと正直思います。経営権を取得してしまうと不可逆的な面もありますので、事後の売却命令などでは治癒、保護できないようなものもあると思いますので、一旦差止めで停止することが逆に穏当で望ましいのかもしれません。特に、その後の公開買付けによる支配取得が制限されるとなれば、大量保有開示の違反行為を抑制する効果もあるのではないかなと思います。そのような観点では、先ほどの「急速な買付け等」の規制の3か月の待機期間は、経営意図の周知、待機みたいな考えもできるのかもしれません。

     新たな課題である閾値間の取引についてですけれども、過半数から3分の2の間は、大きな変動がないので、市場内取引は適用除外を認めていいのかなと思います。3分の1から50%の間は、市場内取引を強制公開買付規制の対象とすることによって、うっかり規制にひっかかってしまう事例が増えると思いますので、それを治癒するものとか、インセンティブ目的での役職員への新株発行で持分比率が下がってしまう、それを単純に戻したいだけみたいなものもありますので、そういうものを認めるという意味で限定的に解除する。欧州制度のような、12か月で1%みたいなスピード制限をつけて認めてあげるのでいいかなと思います。

     説明書の簡素化は、すべきですけれども、中途半端に変えると手間が増えますので、この辺りは注意深くやる必要があります。ただ、公開買付期間中に訂正の説明書を配布するほどではない軽微なものでも今配布していますので、そういったものに関しては期間延長までは求めないとか、ネット、ウェブサイトのリンクで済ますとかいうような形での限定というのですかね、プロセスも含めた簡素化というのは意義があると思います。

     届出書の記載も、「と聞いております」みたいなのを羅列していたりして、とても読みにくいので、直すべきかと思うのですけれども、ちょっと議論があったサステナビリティとかコーポレートガバナンスとかの情報については、上場維持の場合は必要な情報かもしれませんけれども、記載情報をむやみやたらに増やすのは反対で、買い付けるという取引に集中した情報がいいと思っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、黒沼先生、どうぞお願いします。

    【黒沼委員】
     私からは、3点ほど意見を述べたいと思います。

     まず公開買付けの強圧性をめぐる対応のⅢの措置についてですが、資料の16ページに、応募株主の賛否を株主意思の確認手続で代替する必要はないとの意見が反対に分類されています。この意見が私の出したものだとしますと、それはⅢの措置に賛成するものです。ただし、Ⅲの措置は、公開買付けが有する強圧性を緩和するためのものであって、誰が閾値を超える株主になるべきかについて株主の意思を問うものではありませんので、株主の賛否は、公開買付けに応募した株主の過半数が公開買付けに賛成していれば足り、株主総会で過半数の賛成を得られなければ公開買付けの実施を認めないとする必要はないと考えます。

     第2に、公開買付けの差止制度についてです。仮に差止制度を導入する場合の設計としては、差止事由は法令違反に限定し、差止権者は対象会社の株主に限定するのが合理的であると考えます。差止め事由を著しく不公正な場合にまで広げますと、著しく不公正の要件が拡大解釈される可能性があり、企業価値をめぐる評価が株主総会を通さずに直接裁判所に持ち込まれることになりかねないからです。また、強圧性の高い買収方法については、著しく不公正を差止事由にしなくても、一定の範囲で今回ルール化される予定ですので、そのルールに違反する場合には、法令違反を理由とする差止めの対象となりますから、問題はないと思います。差止権者については、公開買付けのルールがあくまでも投資者保護のためのものであるということから株主に限定すべきですが、この株主というのは、公開買付けの対象とされなかった株主も含めるべきであろうと考えます。

     第3に、閾値間の取扱いという新しい問題についてです。これは飯田委員の御意見に賛成します。具体的には、3分の1から50%まではTOBルールを強制し、50%から3分の2までは適用除外とする。これは市場外取引の場合とそろえるということになりますけれども、その理由も飯田委員が展開されているのと全く同感であります。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、神作先生、どうぞお願いします。

    【神作委員】
     公開買付制度の見直しについて3点コメントをさせていただきたいと思います。

     まず第1は、欧州型の規制への転換についてです。これまでの多くの委員のご発言もそうだったと思いますけれども、いきなり全面的に転換というのではなくて部分的に、とりわけ、市場内取引について規制の対象にする点において欧州型に転換することについてはかなりの賛成があったものと理解しております。

     その場合に、欧州型の規制の特徴が6ページの右のほうに書いてございますけれども、価格規制についてはやはり真剣に考える必要があるのではないかという感触があります。特に市場内取引についても強制するというときは、公開買付価格をいったいどのように決めるのかというのは非常に重要な問題であると思います。欧州型の考え方というのは、公開買付価格というのは相当な価格と申しますか、適正な価格であるべきであるという前提があって、それを基に動いていると思いますので、一部欧州型を取り入れるときには価格規制の在り方について考える必要があると思います。

     欧州型すなわち市場内と市場外を基本的に同一に規制するという場合には、市場外で一定期間に買った株主と、それから、市場内で買った株主とも区別することなく、いわゆる最低限度額規制などの価格規制が入れられることになりますけれども、これは株主平等取扱いをどこまで広げるかという極めて政策的な問題ですので、価格規制については今回導入するかどうかというのは検討の余地はあると思いますけれども、少なくとも市場内取引に3分の1ルールの適用を広げる場合には、例えばこれまでの株価の動向は考慮しなくて決めて良いのか、市場価格を利用しないことになるわけですから、欧州型の規制では適正な価格、相当な価格であることを求めていますけれども、少なくとも例えば開示のところで相当だと考える理由について開示してもらう。現行法の下でも算定の根拠については開示していると思いますけれども、根拠だけではなくて、なぜ買付価格をその価格にするのかという価格の相当性の理由についても開示することが考えられると思います。

     それから、今の点とも関係するのですけれども、24ページから25ページの「急速な買付け等」の規制についてです。この規制を残したときは過剰規制になる可能性が高いと思うのですが、他方で価格規制が入っていれば、「急速な買付け等」の規制はなくすことも可能だと思います。そのような意味では、価格規制についてどう考えるのかという問題は急速な買付け規制などとの関係においても、さらに詰めていく必要があるのではないかと感じたところでございます。

     10ページの閾値間の取引についてでございますけれども、これは飯田先生、石綿先生、黒沼先生が御発言されたのと私も全く同意見でございます。30%から50%までの取引について、もし市場内買付けも強制公開買付けの適用範囲にするというのであれば、適用除外に原則としてはしない。そして、過半数を超える取引の場合には適用除外を認めてもいいのではないかと思います。理由づけも含めてこれまでの先生方の御意見と同様でございます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、田中委員、どうぞお願いします。

    【田中委員】
     まず、市場内買付けも公開買付規制の対象にすることは、これまでも述べてきたとおりで賛成であります。
     それから、資料10ページにある閾値間の取引に関しましては、これも多くの委員がおっしゃっているように、30から50%の範囲についての適用除外は必要ないと思います。これは恐らく30%を取得した時点で、全株主に全株対象の公開買付けをかけるという規制が前提になっているルールかと思いまして、そのようなルールなく、30%あるいは3分の1を超えて取得することが可能な我が国では、直ちに当てはまる規定ではないのではないかと思っています。これに対して、50%を超えた部分に関しては適用除外を認めることはいいのではないかと思います。

     それから、13ページの強圧性に関する問題についてです。これまで述べたこととも重複しますが、私は一定株主がかかる手続を要求することを条件として、Ⅲの措置を課すということがよいとこれまでも述べてまいりました。ただし、これは株主総会での意思表示に限る必要はないので、公開買付けをするに際しての書面による何らかの意思表示によってそれに代えるということもできるかと思います。

     その上でですが、私は、Ⅱの措置は、公開買付者のほうで任意に設定できるということにしまして、全部買付けで、かつ任意の延長期間を設定した場合は、Ⅲの措置を不要にするという、こういう規制がいいのではないかと思っております。これは私も飯田委員と同じように、全部買付けであっても強圧性はかかり得るので、Ⅲの措置で規制を課したほうがいいと考える一方で、公開買付け自体に対して過半数による承認を要求するという制度の下では、やはり我が国では持ち合い安定保有株主などの賛同によって公開買付けがブロックされて、一般株主が売却機会を奪われてしまうという、その問題があるかと思います。そのために、全部公開買付けをかけて、かつその後にキャッシュアウトを約束するという方法もあるわけですけれども、これも安定株主がいる場合は、キャッシュアウトに必要な3分の2の買付けを条件として設定することは非常に困難になります。その点を考えますと、強圧性への対処として、任意の延長期間を設定して、売りたい人はそこで売れるとしておけば、Ⅲの措置を課す必要はないという、そういう制度が一番いいのではないかと考えた次第であります。

     それから、23ページ、「急速な買付け等」の規制についてです。私は、買収手法の強圧性について十分な規制を課した上であればこの規制は撤廃してもいいと申し上げてきたのですけれども、それについて必ずしも多くの賛同がないようであればこの規制は残すのですが、ただし、市場内買付けで取得した後に公開買付けをする場合はこの規制を除外するというのがいいのではないかと思います。市場内買付けによって3分の1に満たない株式を取得した後公開買付けをするというのは、いわゆるtoeholdという一般的に許容されている買収手法であるように思いまして、それを規制対象にするのは問題であると思いますので、ここの「急速な買付け等」の規制を維持するのであれば、市場内買付けでtoeholdを取得した場合、その後公開買付けをする場合は適用除外にしたほうがいいのではないかと考えております。

     それから、26ページの差止制度に関しましては、これも前に言ったことと重複しますが、法令違反については差止めの制度を設ける。この法令違反というのは開示規制の違反も含めるということにして、虚偽の情報開示がある場合は差止めを命じ、適正な開示を訂正した上でもう一度公開買付けをさせるという制度にするのがいいかと思います。

     それから、この法令違反については、大量保有報告制度に違反して取得された株式がまだ売却されていないということを法令違反と明示的に規定して、大量保有報告制度違反については、違反している部分は一旦売却した上で公開買付けをやらせるということにすることによって、大量保有報告制度の規制違反についても一定の歯止めをかけることができるかなと思います。

     これに対して、不公正な方法による公開買付けも差止めの対象にするのは、不公正という規定の解釈問題が生じ、公開買付けを不安定にするので、これについては慎重にしたほうがいいと思います。強圧性の問題については、どういった強圧性を規制対象にするかを十分議論した上で、明文のルールをもって対処したほうがいいと考えております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。
     
     それでは、堀井委員、どうぞお願いします。

    【堀井委員】
     私からは、37ページの公開買付届出書の記載事項の見直しについて、投資家としての立場で3点ほどコメントさせていただきます。まず1つ目ですが、買付者が現在の経営者と比べてどれだけ企業価値を高められるのかが投資家として知りたいところなので、この点を意識して少数株主の判断に資する情報を、図表を交えるなどで分かりやすく簡潔に読みやすく整理して頂けるとありがたいと思います。2つ目に、公開買付け成立後の経営方針について、中長期の時間軸で定量的かつ具体的にこれを説明する必要もあると考えます。

     最後の3つ目ですが、上場企業への公開買付けで上場廃止となる見込みがない場合、すなわち、将来的に親子上場となり得る場合については、例えば買収される企業のガバナンスがどれだけ独立しているか、子会社の事業面で不利が生じない施策を担保するか、こうした買収される企業の少数株主の利益を守る仕組みについて明記する必要があると思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは次に、桑原委員、どうぞお願いします。

    【桑原委員】
     まず、9ページから10ページのところで、市場内取引を対象に入れるということは私も賛成をしているところでございます。10ページの閾値間の取引に関する適用除外につきましては、既に多くの先生方がお話しされたように、過半数から3分の2以上のところは適用除外を認め、3分の1超から過半数は適用除外を認めないことにするという大きな方向性に異存はございません。ただ、例えば3分の1から過半数のところで、意図せずして変動が生じる、例えば株式報酬で希薄化が生じるといった場合に、それを戻すために市場内で取引をするようなパターンも何らかの要件の下で認めてもいいのではないか。例えば過半数を持って子会社にしていたところ、ダイリューションが生じて過半数を切ってしまったときにそれを元に戻したいということも考えられますので、そこは少し工夫をしてもいいのではないかと思っております。

     それから次に、「急速な買付け等」の規制でございます。これは以前も申し上げましたけれども、市場内取引が入る場合であっても、透明性・公平性を高めるというところで市場内取引に規制を及ぼそうというところからすると、一旦買い進んでその上で公開買付けをかける場合も、現行と同じように引き続き、「急速な買付け等」の規制の対象にするほうが透明性・公平性が高まるのではないかと考えております。

     それから、26ページの差止めのところでございます。これは引き続き悩ましいと思っております。法令違反は対象にしたらいいのではないかと思いますが、著しく不公正な場合については、これがどういうふうに使われるのか、どうしっかり定義づけできるのかというところが悩ましいと思っているところでございます。

     この点に関連して、大量保有報告の中に違反があったような場合をどう考えるかというところについては、公開買付届出書の記載事項を見直すというお話も出ておりますので、例えば、既に5%以上持っている人が公開買付けを始める場合には、公開買付届出書の中で、それまでの大量保有報告での報告内容などを記載することにし、過去に保有目的等の記載に問題があったのであれば、そこを是正しないと事実上公開買付けを始められないといったこととセットにすることによって対応ができないかなど、そういうことも検討してはどうかと思っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、太田委員、どうぞお願いします。

    【太田委員】
     市場内取引に関して、3分の1を超える際に公開買付けを要する点につきまして、短期間の買い上げにより急に閾値を超えるような株主が現れることについて、抜け穴になってしまうため、そこを埋めるために必要という議論とにつきましては、皆様の議論を伺いやむを得ないと考えているところでございます。

     ただ、やはりあくまでも短期間の間に急激に買い上げ支配権を有することとなる株主に対する懸念が問題の発端と考えておりまして、その趣旨で考えた場合には、3分の1を超えた後に過半数に届くまでという間につきましては、我々が実際の現場でその立場になったときのことを考えますと、どういった要請があるか、発行会社との関係等どういうニーズがあるかというのは様々なシチュエーションがあり得ると考えております。

     したがいまして、私どもの考え方としましては、その閾値間の取引を一律に必ず排除しなければいけないということではなくて、短期間の間に急激に買い上げるのではなく、少規模な取引であるとか長期間をかけての取引に関しては少し適用除外を考えていただければと考えております。市場における受止め、強圧性があるなしというところは恐らく、もともとのスタート時点での保有比率が何%なのかとか、その後その対象会社の日々の出来高がどのぐらいあるのかというところでパーセンテージなどは一律にはなかなか決め難く難しい議論であるということは承知しておりますけれども、そういったニーズもあるということは御理解いただければと考えております。

     強圧性に関しましては、任意の制度を入れるという場合に、やはり任意の制度を採用しているがゆえにしっかり配慮している買付者だというような評価がだんだんスタンダードになってきてしまうということを少し懸念しております。あくまでも任意の制度というのは、それをやったらばいい結果がもたらされるときにチョイスができるという選択肢の一つであるということが重要です。仮にそれを取っていなかったら、すなわち、それは強圧的な買付者だというふうな理解にはならないように、うまい伝え方といいますか、プレスリリースとかQ&Aとかいろいろな方法があると思いますけれども、御説明いただければと考えております。

     それから、差止めにつきましては、やはり著しく不公正な場合が差止事由として入ってきてしまいますと、裁判所の最終的な判断には問題はないのかもしれませんけれども、どうしても途中で邪魔をされてしまったときの実務的なデメリットというものを私としては考えてしまうところであります。できるだけ恣意性を持った濫用的な使い方ができないような仕組みを考えていただければと考えております。

     最後、記載事項の見直しでございますけれども、必要な開示を入れていったり、重複しているような開示をなるべくシンプルにしていただいて、見やすいものにしていくというところにはもちろん賛成ですし、それは作る側としても読む側としても賛成でございます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、児玉委員、どうぞお願いします。

    【児玉委員】
     前回、大量保有報告制度と実質株主の透明性についての議論でしたので、私としては珍しく先陣を切ってお話をさせていただきましたけれども、今回は皆さんから御指摘のないようなところ、あるいは、ちょっと意見が違うところだけ指摘させていただく、それもできるだけ企業目線からお話しさせていただくという立場に戻りまして、3点ほど指摘をさせていただきたいと思います。

     まず、どなたも御発言なかったのですが、これは既に皆様の了解が得られていると理解していいのかどうか分からないのは、12ページの新株発行についてです。これを適用対象とするか否かにつきまして、企業として申し上げたいことは、改めてですけれども、これはやはり資金調達の有用な手段の一つです。資金調達のその他の手段がそれほどないという前提がありますので、資金調達の方法に影響しないように公開買付規制の対象としない、あるいは、お考えいただくとしても、他の調達手段との関連で中長期的にお考えいただきたい。これは企業界からのお願いであります。

     もう一点は、これはちょっとお話しすべきかどうか迷ってはいたのですが、26ページの差止制度であります。こちらは企業の人間が申し上げると、自分で言って自分も入れろという結論になりますので、非常に申し上げにくいのですが、この点に関しましては、国の立場で法制として実効性があるかどうかということでお話をさせていただきます。

     そもそもこの議論の出発点として、金商法の192条による行政による差止制度が機能するのであれば、今回の議論は恐らく必要がないところだったのではないかと思っていまして、これが機能しないという前提で、我々が持っている時間軸で何か実効性のある手だてができないだろうかという議論をしているというふうに理解をしております。

     その前提で申し上げますと、この公開買付けの差止め制度を入れていただく必要性としては、192条が機能しない以上は必要だろうなと私自身は個人的には思っておりまして、ただ、その際には、皆さん御懸念のように、経営陣の保身といった濫用はとにかく許さないという、この大前提でお話をさせていただいておりますが、申立権者は、実務の実態を考えますと、株主だけに限定するということは、せっかく実効性を担保するために作ったのに、また実効性がない制度になってしまう懸念がありますといいますか、恐らく間違いなくそうなるのではないかと思います。

     実務界としてはそういう認識ですので、これは対象会社も含めないと骨抜き制度になってしまうということを非常に懸念しております。

     37ページの公開買付届出書の記載事項の見直しについてですが、これ実は公開買付届出書に限らず、第1回の会議で私自身の問題意識として申し上げたのですが、会社の開示ばかりが一方的に進んでしまったことによって、とりわけこの公開買付けという場面の買付者というものが念頭に浮かぶのですけれども、やはりちょっと開示のアンバランスが生じているのだろうということを、ずっと実務をやっている中で感じています。

     実質株主の透明性の話も、実は私自身、気持ちの中では、その一環としてぜひ取り入れていただきたいというふうに申し上げてきたところですが、公開買付届出書の記載事項の見直しは大賛成でありますし、ぜひお願いをしたいなと思います。特に堀井委員、太田委員、からは、具体的な記載事項の内容まで御指摘いただいておりまして、大変ヘルプフルだと思っています。

     私の立場からもう一個言わせていただければ、やはり企業という立場からすると、ステークホルダーの中でも従業員の取扱いというものをどう考えているのか、買付者がどういうふうに従業員の将来について考えているのか、こういった情報もパブリックにしていただくということは、この局面では非常に大切なイシューであると思っておりますので、そういったことも御検討いただければと思います。

     最後に、16ページです。強圧性に関するⅢの措置において株主の意思の確認、あるいは、株主総会による意思確認といった表現がございますけれども、これ自体を進めていただくことに異論はございませんが、実務家という立場からは、具体的にどういう手法を念頭に置かれるのだろうかという、もうちょっと具体的なガイダンスみたいなものが欲しいと思います。実務界としては、毎度申し上げますけれども、大企業で株主総会を開くって、場所がそんな簡単には見つからないですし、じゃあほかにどういう形で確認するのだろうかといったところ、極めて実務的ですが、少しそれを念頭に置いていただきたく思います。ただやりましょうでは、実務家は少し混乱を来すところだなということを感じました。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、次に、萬澤委員、どうぞお願いします。

    【萬澤委員】
     私からは公開買付説明書の簡素化と、公開買付届出書の開示内容の見直しと、公開買付けの予告に関して少し申し上げたいと思います。

     まず、公開買付説明書の簡素化ですけれども、飯田委員の意見書に、「投資家にわかりやすい情報が提供されるようにする目的で簡素化することに賛成」とありましたが、この点、同様に賛成です。資料のところでは、事務の負担に言及されていましたが、その点も重要と思いますが、それでも、投資者にとって有用な、有益な情報源にするという視点は忘れてはいけないのではないかなと思います。

     すなわち、公開買付説明書というのは投資者、株主に向けられたものですので、投資者にとって本当に必要な重要な情報、買付けに応ずるか否か、応募するか否かを判断するために必要な情報と、買付に応じたいと思ったときにどのようなことをすればいいのかの手続が簡潔に分かりやすく書かれていることが必要なように思います。具体的には、買付者が誰で、その買付けの目的、買付けに上限、下限があるか、買付けの値段、買付けの期間、そして、もし応募しなかったときにどうなるのか、2段階取引があるのかどうかということが簡潔に分かりやすく書かれていることが重要なように思います。

     公開買付届出書の開示内容についても、これも投資者にとって有益かどうかという視点から見直すことは賛成です。ただ、内容というよりむしろ開示方法の話になると思うのですが、もしも投資家にとって有用だということで開示内容が追加されるということになった場合に、もしそれらが有価証券報告書等のほかの法定開示書類で開示されている内容で、投資家がEDINETを通じて容易に閲覧できるものであるならば、それを参照先とすることで十分なのではないかと思います。

     そのようにしても、もしも情報が虚偽であった場合に責任を問うことはできるので、問題はないように思います。重要なのは、投資家が重要な情報に容易にアクセスできて、それが虚偽だったときに責任を問える体制が整っているということだと思うので、そういった簡素化も検討されても良いのではないかと思います。

     公開買付けの予告の在り方について議論を深めることも賛成です。現行法の下でも、御指摘のとおり風説の流布等の規定がありますし、また、参考資料の22ページで、東京地判の平成14年11月8日の事案を御紹介いただいていて、実際、この事案では風説の流布に該当するとして認められたわけですけれども、ただ、それでも、風説の流布等だけで公開買付けの予告の課題について対応するのは不十分ではないかと思っています。

     と申しますのは、金融商品取引法158条の風説の流布が認められるためには、相場変動目的が必要で、この要件を満たさないような場合でも、公開買付けの予告について望ましくないものがあるのではないかと思うからです。

     確かに、御紹介いただいているこの平成14年の東京地判では、相場変動目的要件が認められているわけですけれども、ただ、この事案は少し特殊です。というのも、これは、公開買付けの対象会社の株価を上げたくて、公開買付けを行う意思がないのに、公開買付けを行うという虚偽の発表をしたという事案です。何でそんなことをしたかというと、自分の信用取引の枠を拡大させて、さらに株式の取引をできる状況を作出するために、自分が証券会社に差し入れていた株式が公開買付けの対象会社の株式で、その株価が上がれば信用取引の枠も上がるという背景で行ったということのようです。

     このように少し特殊な事案だったので、こういった事案まで行かないものでも、やはり望ましくない予告、例えば、市場を長期間不安定にさせるような予告はなされるべきではないと思いますので、やるべきでない予告とそうでない予告について議論して明確にした上で、もし対応が必要ならその手当てをするということに賛成いたします。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、三瓶委員、どうぞお願いします。

    【三瓶委員】
     私からも特にコメントしたい点について発言させていただきます。

     最初に、6ページの欧州型の規制(事後的な規制)への転換というところですが、欧州型を事後的な規制というふうに一くくりすることは、結論の導き方を誤る可能性があるかなというふうに思います。ここに書いてあるとおり、欧州型の中には事後的規制という特徴だけでなく、全部買付義務とか最低価格とかいろいろ要素があります。ですから、この要素はそれぞれの要素を別に取り出しても、議論は実際はできるというふうに思います。

     その中で、現行の公開買付規制の趣旨というのが事前の情報開示と株主の平等取扱いということが2ページに書いてあるわけですけれども、株主の平等取扱いというのは、具体的に言うと売却期間と売却価格ということだと思います。そうすると、部分買付けを原則禁止とすることで、本来は公平な価格で売却する機会確保が可能になるという点は、これまでも多くの委員の方が賛同されていた点だと思います。

     なので、私はこの部分買付けの原則禁止というところにこだわっているわけですけれども、今回、それがすぐにできるかどうかは分からなくて、中長期的な課題というふうに書かれています。仮に、そうだとしても、7ページの反対意見においては、ニーズは現時点でいまだ我が国で確認されていないのではないかとの記載があります。これについては、以前第2回ワーキング・グループ閉会後、事務局に書面を提出し指摘しましたが、事実認識が違うのではないかと思います。これは今後、将来的、中長期的な課題として議論するのであれば、このままの記載ではちょっと困るなと思いましたので、付け加えさせていただきたいと思います。

     事実認識が違うというのは、例えば、2019年6月28日公表の「公正なM&Aの在り方に関する指針」では、その対象の取引に親会社による従属会社の完全子会社化も含めるということで広げました。これは構造的な利益相反問題が指摘されていたからです。

     そして、2020年9月1日、東証が「支配株主及び実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社における少数株主保護の在り方等に関する中間整理」という公表をしています。そして、これに関しては2023年1月から第2期の研究会が開催されて、今も継続的に議論がされているところです。

     また、2021年6月11日公表の改訂コーポレートガバナンス・コードでは、第4章の取締役会等の責務の「考え方」の部分で、支配株主及び支配株主を有する上場会社に対し、少数株主の利益を保護するガバナンス体制の整備を新たに求めているわけです。

     さらに、2022年6月13日公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング報告では、企業・株主間のガバナンスに関する合意などについて、「重要な契約」についての有報による開示を求める提言がされて、今は開示府令の改正が検討されているところと認識しています。

     また、直近では、2023年8月31日に公表された「企業買収における行動指針」の取りまとめ段階でのパブコメは、多くの投資家から日本が放置している部分買収の問題が指摘されて、これを禁止するべき、または抑制されるべきだという意見があるわけです。

     パブコメの回答自体は、金融庁ではなく、経産省が行ったものですが、パブコメに対しては、本ワーキング・グループで議論がなされているという回答をしていますから、何か含みを持たせているというか、期待させている部分もあります。

     そういったことがある、ファクトとしては、そういう支配株主を持つ従属上場会社の少数株主保護というものは喫緊の課題であって、いろいろなところで議論されているし、懸念は表明されているので、そのニーズがないとか確認されてないというのはちょっと違うと思います。なので、そういった利益相反構造をつくる入り口となる部分買収について、本来は放置すべきではないという考え方です。改めて申し上げたいと思います。

     次に、8ページの市場内取引(立会内)の取扱いですけれども、こちらは、基本的にこの賛同意見を支持します。その上で、10ページにあるところですが、皆さんの意見と違うのは、ここに書いてある2つ目のところで、「諸外国においては」という説明ですけれども、外国においては、そもそも事後的規制であるとか、また部分買付けは禁止されているという状況があるので、そのままこれを参考にできるのかなというところが疑問になるところです。

     また、参考資料17ページに、各種取引種別に一覧表を掲げていただいています。ここでこうして見ると、60日以内に10名以内というところだけが例外となっていて、基本的にそういう意味では、水色、紺色の範囲というのを市場内のほうに延長していくというのが全体としては一番分かりやすい整理ではないかなというふうに思います。

     次に、13ページの公開買付けの強圧性の問題のところです。これに関しては、先ほど申し上げたとおり、部分買付けを禁止し、全部買付義務を課すべきというスタンスでいますので、本来はⅠの措置を推しているわけですけれども、なかなかすぐそこまで行けないという御意見もある中で、次善策としては、私はⅢの措置によって安易な部分買付を抑制する方策というのを取り入れるというのがありかなというふうに思っています。

     次に、19ページの3分の1ルールの閾値のところですが、何となく30%でよかろうという感じはあって、結果的にそうなることには大きな反対はないけれども、実は、賛同意見が多いとしていますが、根拠はばらばらですよね。根拠は合理的かつ明確にしておくべきだと思います。

     例えば、ここで表面的にグローバルスタンダードということで仕切ってしまうと、まず、グローバルスタンダードって何だと。なぜ諸外国ではそうしているのかというときに、海外事例を導入する場合には、その考え方や他の規律との整合性というのを知った上でやるべきだと思います。

     例えば、9月にOECDから「コーポレートガバナンスファクトブック2023」というのが公表されていますが、それによると強制公開買付規制で閾値を設けている48の国・地域の半数で、30%から3分の1というのが閾値として採用されているというふうに出ています。ここでは30%と3分の1というのは一くくりにしていて、そこに差は設けてないのですよね。ですから、それほど大きな意味があるのかなというのが1つあります。

     また、グローバルスタンダードに合わせるということならば、最初のところで議論した欧州型規制への転換のところですけれども、これに関連しますが、48の国・地域のうち38、つまり81%が事後的な規制を採用しています。そして、88%が最低価格規制を導入している。こういうところはもっと圧倒的に海外でやっているけれども、導入を検討しないとなると、一貫性、整合性がないという感じがします。

     また、もう一つの議論としては、現状の議決権行使比率というのがあります。そういったデータも提供していただきました。ただ、これは議決権割合の実効的効力を根拠とするということだと思いますけれども、そうなると、ほかの閾値にも影響してくる問題だと思いますので、それも併せて見直さないと整合性がないかなと思います。

     また、別の理由で経営への影響力を牽制する意図で閾値を下げることに賛同しているように見受けられるところもあって、こうなるとちょっと意味合いは違うなというので、何を理由にするのかということは明確にしていただきたいというふうに思います。

     「急速な買付け等」の規制についてですが、私は3か月以内の取引を一連の取引とみなすという規制は残すべきではないかなと思っています。そして、非常に単純ですけれども、市場内取引(立会内)を24ページの図で言うとAからBに位置づける、そして、公開買付けによって3分の1の閾値を超える場合は規制に抵触しないとするということでいいのではないかと思います。

     これを考えるときに、取引の印象ということを考えると、公開買付けの上限をどこに設定するかによって全然変わってくると思います。50%を超えたくらいの非常に低いところに上限を構える場合ともっと上のほうに上限がある場合とでは見え方が違ってくると思いますので、やはり上限を設けない公開買付けというのが本来は望まれるというところです。

     26ページの差止めについては、私は株主側の立場としては反対意見のほうを支持いたします。

     最後に、36ページの公開買付制度に関するその他の指摘というところの⑨公開買付説明書の簡素化については、簡素化自体に反対ではありませんけれども、実際に参照先となる公開買付届出書を見ると、かなり訂正が多いですよね。ですから、参照する先で訂正のものばっかり出るのか、または、その元を見るのか、かなりこれは実際は利用者にとっては煩雑だと思います。だからやめということではなくて、どうやったらうまくいくのかの工夫が必要だというふうに思います。

     もう一つの⑩公開買付届出書の記載事項の見直しというのがあります。これについては、これも見直しについて反対しませんけれども、利用者側から削減案、この情報とこの情報は実は要らないから削減してくれというのは、なかなか出てこないだろうなというふうに思います。ですから、発行会社側から、どうしてもこれはこういう理由で載せなくてもいいのではないかという何かたたき台があれば、議論がしやすいのかなというふうに思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、齊藤委員、どうぞお願いします。

    【齊藤委員】
     まず、欧州型への移行についてですが、いわゆる欧州型は広い意味での企業グループ法制の一部で、支配株主登場時に退出権を与えるという意味を持つ規律であると思います。欧州型というのは、単に買収者が閾値を超えたときに全部買付けを義務づける、というものではなく、取締役会の中立義務や価格規制、セルアウトといった制度も含む包括的な規制になっておりまして、潜在的な対象会社側にも、また、潜在的な買収者側にも一定の譲歩を求めることを通じて、売却対象の証券の保有である、対象会社の株主を保護する機能を有していますことから、導入のニーズというものがあるとすれば、売却対象の証券保有者の保護の必要性に求めることになろうと存じます。

     欧州型は、対象会社にも、買収者側にも、行動の余地が制限されるという意味で規制強化になる側面があることは否定され得ず、その意味で、いずれのセクターの関係者にとっても歓迎されにくい側面があるかもしれず、各セクターからの要望や意向の集積という形では実現が難しいものであるように思われますが、全体的に望ましい規制に向けて、証券保有者の保護の必要性があるか、という観点から、中長期的に議論をしていくことが望ましいと思われます。

     今回の改正では、欧州型には移行せず、市場内取引を従来の公開買付規制の対象に含めるにとどめるといたしますと、改正後の3分の1ルールの趣旨とは、支配権取得の場面において、投資家の投資判断のために必要な情報と時間を確保するというものと理解することになるかと思いまして、関連する様々な改正事項もそのような趣旨にかなうものであるかという観点から規律を整理していくことになると思われます。

     そこで、買増しについてでございますけれども、30%ないし3分の1から50%までは適用除外にする必要がないという御意見に、私も賛成いたします。支配権移転のポイントが3分の1であるとは限られないため、先ほど申し上げた改正後の規制の趣旨から、そのような買増しも適用除外にする必要はないと思われます。

     次に、強圧性に対する措置でございますが、強圧性の問題は部分買付けの場合に限られるわけではないので、Ⅲの措置を全部買付けの場合にも導入するというご提案も合理的であると思われますが、それが難しいようであれば、任意でⅡの措置を採用することを認めるというのが合理的ではないかと思います。

     ⅡⅢの措置というのは、導入当初は混乱なども生じるかもしれないのですけれども、仮に欧州型の全部買付義務とセルアウトへ移行するときがあれば、そのときのハードルが相対的に下がるのではないかとも思われます。

     次に、差止制度につきましては、当局によって法令違反となるような行為についての監視や是正が十分に働くのであれば、差止め制度に期待するところもあまり多くないように思いまして、当局によるモニターを改善、強化する余地があり、それにより当事者の適切な行動が促されるのであれば、まずはそれに委ねることでもよいのではないかと思われますが、それが十分に機能しないのだといたしますと、差止制度を認めることも考えられると存じます。

     しかしながら、不公正というのは非常に曖昧な概念で、今回の議論でも、不公正とは何かということにつきまして、共通認識が形成されるほどには至っていないように思われますことから、まずは法令違反に限って導入するというのが考えられるのではないかと思います。

     また、以前の議論では、インセンティブの観点から、実際に機能するためには会社を差止権者に入れなければいけないのではないかと申し上げたのですけれども、いろいろな御議論をお伺いしていて、その点につきましては意見を留保したいと思います。

     公開買付けに関する差止めに期待されることの1つは、情報開示が不十分な場合に差し止めて、情報を十分に出させた上で再開させるということであるという指摘もあり、確かにそのような側面もあるのですが、仮に、差止め事由を法令違反に限った場合には、形を整えれば法令に違反しているとは言えなくなるので、情報開示の実質的な不十分さに対するエンフォースメントとしての差止めという意義は限定的なものにとどまるのではないかと思われます。

     次に、「急速な買付け」等の規制でございますけれども、既に御議論に出たように、toeholdを築いた上で公開買付けを一定期間内に行うというものは適用除外にしてよいのではないかという点につきましては、冒頭に申し上げた趣旨に照らして、それでよいのではないかと思われました。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、藤田委員、どうぞお願いします。

    【藤田委員】
     まず、今回目指す改正の一番基本的な方向としては、市場内取引を規制対象に含める、新株発行は中長期的検討課題と整理するということ、それ自体は私もそれでよいと思うのですが、そのように改正された新たな公開買付制度を全般としてどう説明するかという点は程度きっちりした答えを持つべきだと思います。規制の必要性に関する個別の賛否の集積の結果、こっちは入れてこっちは落としましたということにしてしまうと、将来さらなる改正をするときに指針がなくなってしまうことに加えて、恐らく、今の点の捉え方が、今回の論点――例えば、「急速な買付け」等の規制を含めるかといった論点――にも関係してくるというふうに思います。

     私自身が積極的に今言ったような制度を支持して提唱しているわけではないものですから、説明するとすればこういうことになるのだろうといった言い方しかできませんけれども、もともと日本の強制公開買付制度は、支配権取引が不透明な形で行われてはならないということで導入され、相対取引はもちろん不透明だけれども、市場取引は不透明ではないという性格づけから始まっています。微修正はあったのですが、この点は現在でもあまり変わってないと思います。

     今回、もし先ほど言ったような修正を加えるのだったら、この基本的な点をかなり根本的に見直すということにならざるを得ないと思います。つまり、改正後の制度の説明としては、支配権の取得は原則公開買付けによるべきである、なぜなら、それ以外の方法だと、投資家に情報と判断の時間が確保された状態で支配権の移転への賛否を問うということが保証されないからであるというふうに根本的なところで重要な発想の転換をしたとまず言わなくてはならないと思います。

     ただ、こう説明してしまうと、経営者の一存で株主の意思を問わずに行うことができる新株発行が規制対象から外れるのはなぜですかと疑問が出るのですが、これについてあえて説明するとすれば、支配権の異動を伴う新株発行の規制が、会社法のほうで既に先行して、しかも比較的最近導入されてしまっているので、新株発行の方法は、一応情報と判断の時間を確保する形で賛否を問うという立てつけが、曲がりなりにも構築されていて、そういう意味では目的はかなり共通の制度となっているから、当然それとの調整が必要になってくる。過去の研究会では、資金調達の必要性という話も強調されましたが、実務的なニーズのみならず、会社法でも規制が取り入れられているので、そちらの方で、規制を拡張するのか、そのままでいいのか、あるいは閾値を下げるとどうなるのかといったいろいろな議論をして調整していかなきゃいけないので、そこに同種の目的を持った制度を併存して導入する場合には調整が必要となり、中長期的に課題として残さざるを得ないということで、今回はあえて手をつけないと説明することになると思います。

     それ以外にもっと簡明で筋の通った説明があれば、いつでも今の意見は撤回しますけれども、いずれにせよ改正後の規制の理念を何らかの形で積極的に説明はする必要があると思います。

     仮に今言ったように説明するとすれば、「急速な買付け等」についての視点もある程度は出てくると思います。24ページの検討課題その2のところに書かれている、市場内取引を表でいうBに位置づけるか、それとも、「急速な買付け等」の規制は廃止してしまうかという論点です。仮に支配権取得を目的とした取引は、公開買付けでやるのが原則であって、それは情報と時間を確保するために必要だと言うのであれば、一定期間内に公開買付け以外の方向をある程度以上の大きな割合で含むような形でする支配権の取得というのは望ましくないから、規制に含めるべきだということで、全面撤廃にはならないと思います。ただ、考えなくてはいけないのは、飯田委員の意見書にもあるとおり、toeholdの取得が不可能になってしまったら非常に制約されるという問題はあるのかもしれません。それは考慮要素としては残ると思います。その場合、特に5%のBという数字を見直す必要があるのかもしれません。あるいは、極論すると、AとB合わせて10%という形で考えてもいいのかもしれない。この辺の数字を見直す必要はあるかもしれませんが、全面的に要らないという整理にはならないと思います。

     検討課題1のほうも、買収が始まったにもかかわらず、閾値を超えるぎりぎりまで別の方法で行って、公開買付けで閾値だけ超えるというのは、さっきからの趣旨とは相容れないと言わざるを得ないと思うので、規制してもいいと思います。別に支配権を取得する瞬間の取引だけを問題にしているわけではない。そういうふうなものだと考えるべきだとすれば、そういうふうになるのだと思います。

     以上が一番大きなところとそれに派生する話でしたが、あと差止めですが、これもまず、多くの方の意見、私も数えたわけじゃないのですが、法令違反に関する限りは導入してもおかしくないという意見はそれなりにあったように思います。構造的に株主の判断をゆがめるような公開買付けも規制した方が本来はよい気がするのですが、この構造的に判断をゆがめるというところがうまく表現し切れないという問題があります。強圧性がある場合を念頭に置いているのかもしれませんが、強圧性はゼロか100かではないので、僅かでも強圧性が残るようなものはみんな差し止められるとなると、あまりにも弊害が大き過ぎますし、「著しい」といった曖昧な言葉でそこを表現して線を引くのも難しいような気もします。

     そうすると、結局、法令違反でない場合の差止めの対象というのは、もう少し議論が集積するのを待たざるを得ず、本来のあるべき方向への期待とは違うのですけれども、今回は見送りも仕方ないかなと思い始めております。ただ、今回、法令違反に限定してでも差止めは入れたほうがいいと思っているのは、今回、法令違反だけでも差止めが入っていれば、あとは差止事由の見直しといった形の議論になるのですけれども、ゼロベースで差止め制度そのものが公開買付けと相容れるかみたいな議論のところから、将来議論し直さなきゃいけないような状況にはしないほうがいいと思うので、限定されて実効性が少なく、それほどメリットが大きくなくても、入れるだけは入れたほうがいいような気がします。

     法令違反に限定するなら、会社が主体に含まれてもそれほどおかしくないようには思うのですが、将来、差止事由も検討する余地があると思っているのであれば、株主に限定したほうが安全なのかもしれません。この辺り、将来議論することでも足りるのかもしれないので、この点は、法令違反に限定するならどちらもありうると思います。

     最後、公開買付けの柔軟化、運用体制という話について、一言だけコメントしておきたいと思います。これは中長期的な課題という位置づけにならざるを得ない問題であるということは、そのとおりだと思いますが、ちょっと気になるのは、もっぱら英国のパネルを想定して、形だけまねても駄目だとか、文化的背景が違うとか、こういう意見が出てきていたということです。

     比較的知られていることかと思いますが、ヨーロッパの諸国では公的機関が一定の裁量をもって公開買付けの監督を行う実務があるようです。そしてMBO等については、投資家が不当に害されるという実質判断も含めて、最終的な判断をしているとヨーロッパM&A制度研究会報告書では報告されております。フランスやドイツがそのとき対象になったのですが、私もそのヒアリングに同行し、そういうことを直接伺いました。中長期的に議論する場合も、シティという極めて特殊な文化的基盤を持つイギリスのパネルを念頭に、それがいいか悪いかという形で議論するよりは、日本にとってもう少し共通性がありそうな法制も含めて長期的に検討して、パネルの是非のような形で今回の報告書もこの問題を記述したりしないように注意していただければと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、武井委員、どうぞお願いいたします。

    【武井委員】
     まず、閾値間の取引の点です。先ほど公開買付けの価格規制の話もありましたが、現状だと欧州のような価格規制は入らない前提であると。なお価格規制の点については今後の議論の対象なのかもしれませんが、その前提ですと、そんなに広範な適用除外は難しいのだろうなとは思います。せいぜいフランス型かなと思ったのですけれども、フランス型も合うのか合わないのか分かりません。この点、実際、今回の法改正でいろいろな形で規律が強化されますので、こういったものなら別に問題ないのではという一定の柔軟化の一例なのかもしれません。そういった一例がありやなしやということを各論で見て、これだったらいいのでないかというものがもしあれば適用除外するということかもしれません。そもそもこのような例外は要らないという御意見もある中で、これで本当にここまで規制するつもりはなかったという事例がありやなしやということを確認するのかなと思いました。これがまず閾値間取引の点でございます。

     2点目が11ページの新株発行のところでございます。これは新株発行は除外すべきだと思っておりまして、あと、自己株処分もやはり除外すべきだと思っています。これは今後、中長期的な課題として欧州型云々という議論があったとしても、自己株処分は今回対象外とすべきだと思っております。特に、公開買付けを行わせるということは、対象会社にお金を入れるべき場面で、一般株主にもお金を支払うことを強制することになりますので、これでは経済行為として全然違うことになります。こういった支配権に当たっての株主意思の確認の方法として、現行の会社法の要件をどう変えるかという議論があり得るところ、公開買付けのほうを強制すると資金調達に与える悪影響があると思いますので、今回、ここは自己株処分を含めて対象外とすべきではないかと思います。

     3点目が15ページの強圧性でございます。まず、Ⅲの措置に賛成でして、全部買付けも含めてⅢの措置を適用すればいいと思っておりまして、逆にⅡの措置というのは、私は任意であっても反対で、やるべきでないと思っています。これは、まず、Ⅱの措置が全部買付けの場合の措置であるとか買付者が任意に選択できる措置であると、おっしゃっていますけれども、それが法律上の要件として全部買付けに限定して任意で認めるというと、法制度上どういう要件の議論をするのかよく分からないというのもあります。また、これは全部買付に限定したとしても、任意だからというのは任意にならないと思っています。特に全部買付けのときに、強圧性の対処措置としてこういう制度が法律でできましたとなったときに、これは恐らく、いろいろな完全子会社化とかスクイーズアウトの事案では、例えば、第三者委員会とかそういったところが、これはもうこういう追加応募期間を定めるような公開買付けにしろということを事実上半強制的に言ってくる事態になるのではないかと懸念します。いわゆる公正性担保措置としてやらされるようになることがないのかということです。任意であるということの前提として、不利益を被るのが買収者だからという前提があると思うのですけれども、これが法制化されると、事実上買収者側も強制されてしまうことがないか。また、3分の2の下限を設定した場合にも、こういう制度がなければ3分の2が本来であれば集まったところを、様子見株主がいることにより、公開買付けが成立しない不利益があると思います。ですので、全部買付けの場合を含めて、強圧性に対してはⅢの措置で担保すればよくて、Ⅱの措置は任意であっても私は入れるべきではないのではないかと思います。これが強圧性についてです。

     続きまして、公開買付けの差止制度ですけれども、これは前回私も、差止めを入れるのであれば、会社も差止権者に入れないと意味がないと申し上げまして、これは今でも変わらないですけれども、ほんとに意見が分かれていますので、私も差止めは今回入れなくてもいいかなと思っています。ほかにもいろいろな場合はありますが、虚偽記載の場合が一番使われる場合だと思いますけれども、虚偽記載の場合、当局のほうで訂正命令を積極的に出していただいて、それで対応することでもまずはうまくいくと思っていますし、いきなり裁判所で差止めというのも、裁判所も相当負担だろうなという気がします。今回は、意見があまりに分かれていますので、差止めを入れないという方向でいいのではないかと思います。

     あと、公開買付けの幾つかのその他の箇所ですけれども、まず、記載事項に関しては、先ほどもお話にありましたが、従業員が企業価値の源泉ですので、従業員がどうなるかという情報は重要だと思います。

     あと、公開買付者のUBO、実質的支配者が誰なのかということも書いてもらうべきではないかと思います。企業を支配する行為者、企業の支配権の獲得者なので、企業の支配権の獲得者の支配者が誰なのかは、有用な情報だと思うので、UBOなども開示をやるべきではないかなと思います。

     最後に、前回も申し上げた点なので繰り返しになりますが、公開買付けが開始されて以降、裁判とか総会とかが関わった場合、公開買付期間が、今は買収者が延ばすかどうかは任意なわけですけれども、これは必ず延長される。自動的に延長されるとしたほうがいいと思います。そこの点、今回、入っていないので改めて申し上げるのですが、そういう公開買付期間が延長されるか否か分からない状態になることがないほうがいいと思いますので、それも手当すべきではないかと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、時間の関係もございますので、公開買付制度についての御質問、御意見をいただく時間はひとまずここで終わりとさせていただき、続きまして、大量保有報告制度と実質株主の透明性について御質問、御意見をお伺いしたいと思います。

     石綿先生、どうぞお願いします。

    【石綿委員】
     まず、39ページの重要提案行為の範囲についてです。私は、態様及び内容に注目して限定、明確化を図るという大きな方向性自体には異論はありません。ただ、大量保有報告制度の趣旨の潜脱がなされないよう、バスケット条項的なものは設け、経営支配権に影響があるようなケースにおいては特例制度が利用できないような手当てはしていくべきであると考えております。

     それとの関連において、大量保有報告制度の趣旨についても、これを機にご検討されてもよいのではないかと思います。わが国の大量保有報告制度の趣旨としては、経営に対する影響力と市場における需給に与える影響という二つの点に着目しているわけですが、諸外国の大量保有報告制度の趣旨を踏まえ、経営支配権に与える影響という点に重点を置くという形で制度趣旨を整理しなおし、それを踏まえて、めり張りのある制度として設計していかれたほうがよいのではないかと思います。

     それから、42ページの共同保有者の範囲という点でございますけれども、賛同のところで紳士協定的な合意も対象とすべきという話が出てきていますが、私はこれには反対です。やはり合意というのは法的拘束力のある合意というふうにしなければ、外縁が非常に不明確になってしまって、共同保有者の範囲が不明確だという議論につながってしまいます。この合意とは法的拘束力のある合意であると整理することで、共同保有者の範囲を限定し、明確化していけばよいと思っています。なお、これに加えて、新しい状況としてウルフパックの問題もありますので、一定の外形的事実があるときに共同保有者に含める提案については賛成でございます。

     それから、公開買付規制においては、届出書の記載事項の見直しという話が出てきておりますが、私は大量保有報告書につきましても記載事項の見直しを是非されたほうがよいと思っております。特に目的の記載事項とかが非常にシンプルで、あまり情報開示としての意味をなしていないところもありますので、グローバルスタンダードを踏まえ見直していただいて、記載が不足しているものについては充実化をさせるということで、ぜひ記載事項の見直しをしていただければと考えております。

     最後に、実質株主の透明性の話ですが、私は英国型を目指し、法改正ができるまでの間、スチュワードシップ・コードで対応するということに賛成です。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、角田委員、どうぞお願いします。

    【角田委員】
     まず、大量保有報告制度のところですが、保有目的が支配目的か否かについては、いわゆる特例を認めるか認めないかだけではなくて、支配しようとする場合はどういう支配をしようとしているのかということを含めて開示させるべきだと思います。一方で、担保関係は非常に重要な記載であると思いますけれども、負担になっているような記載があるのであれば、それは整理するのかなと思っています。

     実質株主の透明性について、欧州型に必要な会社法改正の前にはスチュワードシップ・コードでの対応が考えられるという議論が出ています。カストディアンとやり取りしている話では、基本的には、実質株主を聞くためには会社側の委任状がないと、当たり前ですけれども、注意義務違反となるため教えてくれない。委任状があっても教えてくれないところも結構ある。やはり、そこに関しては、法律で義務として定めることが一番であると聞いています。

     コードで対応するというのも一定程度は意味があると言っていました。あとは、欧州では一部定款に書いている会社があるからでしょうけれども、日本企業も定款に書いてくれれば開示しやすいという議論もあったそうですので、一応お伝えしておきます。

     また、制度が導入されることが前提ですけれども、実質株主を把握した場合、現在は、有価証券報告書上、株主名簿上の上位順10人のほかに、外枠に大量保有報告書でこのような開示がありますと記載していると思うのですけれども、同様の取扱いをすべきであると思います。

     ただし、大量保有報告書と違って、どのぐらい正確性があるのか微妙なところもあると思いますので、この辺りも企業の皆様の負担にならないように、明確にするとか免責するとかそういう手当をしてやっていただく必要があるかなと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、三瓶委員、どうぞお願いします。

    【三瓶委員】
     まず、40ページの重要提案行為の範囲については、ここに書いてある賛同意見を支持します。

     そして、42ページの共同保有者の範囲について。ここに範囲の明確化について賛同する意見が多く出ているのですが、具体的な方向については意見が様々なので、具体化には一層の検討が必要だというふうに思います。ですから、方向性はいいけれども、じゃあどうするのかというのは、もう一段掘り下げて議論する必要があるかなと思います。

     50ページの実質株主の透明性のところですが、私は米国型を支持しているのですけれども、ここで米国制度の参考というところの上から3つ目の「米国型の制度は、一定の運用資産額以上の投資家にしか適用されず、中小規模の企業にとって必要な情報が開示されない懸念がある。」という指摘が、もしかすると勘違いがあるかもしれないなと思うので、ちょっと補足します。例えば、米国の場合は1億ドル、つまり、今日1ドル151円ですので、日本円では151億円になりますけれども、運用資産以上、その金額以上の運用資産を持っている場合に報告対象なわけです。

     例えば、そのファンドがインデックスファンドだったらというと、2,000銘柄保有していて、そうすると、1銘柄当たり単純平均の保有残高は750万円です。アクティブファンドで50銘柄の投資だったら、1銘柄当たりの単純保有残高というのは3億円になる。そういうことですが、そこで網にかかったファンドは、運用者として全てアグリゲートして、粒々の保有している対象を保有株数全部開示します。

     ですから、これはかなり少額の保有でも開示しなきゃいけないので、相当な範囲で開示がされます。そういう意味では、中小規模の企業にとっても、提供される情報は十分に有用なはずだというふうに思います。そして、特定のこの人が持っているのではないかというふうにターゲットをつけて聞くだけではなくて、自分たちが知らなかったところも全部集められるので、実は相当情報量はあるというふうに思います。

     とはいっても、皆さんが欧州型という感じなので、欧州型を念頭に考えていくということであれば、ちょっと注意事項を申し上げたいのですけれども、ここではソフトローで手当てするという意見がありますが、そのときに、例えば、個々の企業に対する投資残高というのは、運用会社にとって非常に機密性の高い情報で、通常は社外秘で厳重に管理されています。ですから、誰か運用会社の人間がぽろっと言っていいものではないです。

     ただ、欧州でそれがどうしてできているかというと、欧州ではハードローを根拠にしていて、だから機密性が高い情報だけれども、法令遵守が優先するからこの場合は仕方なしということで開示をしているわけです。一旦そういうことで制度として開示をするのであればということで、情報ベンダーなどが間に入って情報を収集して集約したデータベース化するなどということをして、双方開示する側、開示情報を利用する側にとって使いやすいインフラができている状況です。

     ただ、私は今回こういう議論があるので欧州の投資家に確認したのですけれども、ハードローの根拠がなかったらそれをするのかというと、ハードローの根拠がなかったら、そんな情報は情報ベンダーに出すことはできなくなる。そうすると個別に投資対象の会社、発行体に対してだけ内密にということで言うことはできる。そういう非常に相対性が高いというか、閉じられた情報開示になってしまうという問題があるので、ソフトローでうまく引っ張れるかというところは、その辺に課題があるということは、あらかじめ申し上げておきます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、高山委員、どうぞお願いします。

    【高山委員】
     私のほうからは、実質株主の透明性について意見を申し上げたいと思います。

     実質株主の透明性を高めるということについては、私も含めて委員の皆様が賛同しているという理解でおります。今問題になっているのは、ではどのような方法で実質株主をより判明しやすくするかというところであると思います。第一段階ではソフトローで対応するというのはよろしいと思うのですけれども、これは限界がありますので、法制度の改革というのが必須であると考えます。

     その際に参考にする制度としては、事務局説明資料に書いてあるように米国制度と欧州制度の2つがあります。実務家の観点から申し上げますと、それぞれよいところと、あと問題になるかもしれないというところがあります。

     米国制度のほうですけれども、データベースをつくるときに、企業別のデータを集計できるような仕組みにしておけば、企業にとっては非常に容易に自分の株主を把握できるというメリットがあります。一方で、こちらにありますように、一定の運用資産額以上の投資家にしか適用されないという状況です。日本でも同様な制度を取り入れるとすると、全ての投資家に要求するのは難しいので、一定の範囲内にするために、運用資産額なり何なりで限定するという対応になると思います。そのときには企業側にとっては全ての投資家、株主が把握できないという点が問題になるだろうと思います。

     今、三瓶委員がおっしゃったように、インデックスファンドを持っている場合は、個々の企業の保有額も少額であり、かなりカバーできるのではないかという考え方もありますけれど、投資家によっては様々なタイプがありますので、理論的に考えれば全ての株主を把握できないという問題があると思います。

     一方、欧州制度の場合は、全ての株主を把握できるというメリットはありますけれども、一方で、手続が結構煩雑で、企業にとってそれなりの負荷がかかるというところがあると思います。そのように考えると、米国制度と欧州制度のどちらを取るかというところは判断が難しいところがあります。ここの判断の基準の1つとして私が重要だと思うのは、できるだけ早く実行できる制度を採用すべきだと思います。本制度の改革は時間がかかると思いますけれども、欧米、海外と比べて日本の企業が、投資家との対話において不自由な立場に置かれているという状況を、長期間において放置するべきではないと思います。そういう観点で早く制度改革ができるものを選択するとよいと思います。

     それから、どちらを選択するにしろ、その際に考えるべきこととして、改めて2点申し上げます。まず、制度として、ユーザーにとって使いやすいものにするということが1つです。それから、あともう1つは、必ず海外株主を対象とするということです。現在、機関投資家の日本株の保有分を考えると、日本の機関投資家の保有分よりも、海外投資家の保有分のほうが、より多いという状況にあります。ですので、全ての主要な投資家を把握するという観点では、海外株主を対象にするということが非常に重要であると思います。

     以上2点を、制度を導入するときに考える必要があると考えます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、児玉委員、どうぞお願いします。

    【児玉委員】
     実質株主の透明性については、私は今回に至るまでに基本的には思いの丈を全てお話ししているつもりでおりますので、今日もう発言は要らないかなと正直思っておったのですが、そうでもないのであるということを今一度理解しましたので、発言させていただきます。

     実質株主の透明性を確保する制度は実務界にとって混乱が生じる前に必ず入れなければならない制度の1つだというのが私の認識でありまして、もう一度これは繰り返しですが、何ゆえに欧州型と米国型の二者択一を前提に議論するのか、私としては理解はできていないところです。到達点としては、やっぱり私自身の思いとしては、別にストレートでなくてもいいのですが、やっぱり会社側から調べていくというシステムが必要であろう。会社が必要だと思った場面に、自分たちのコストで調べていけるという、これはバランスとして必要だろう。それが到達点であると考えております。ただし、そこに至るプロセスとして、やはり時間軸を考えたときには、もう喫緊の課題だという認識の下に、それ以外の制度をテンタティブでもトランジションという言い方でもいいと思うのですが、それも検討していくということが十分あっていいのではないかと思います。これは繰り返しですので、皆さんもう御理解ですので言いたくはないのですが、やっぱり強調させていただきます。

     実は今日、お話ししたかったのは1点だけでありまして、大量保有報告制度の共同保有者の範囲です。世界の情勢を見ると、これから日本のマーケットでもウルフパックといいますか、現状の枠組みでは対応できないのではないかと考えられるようなものが、恐らく行われる時代もすぐそこに来ているのではないか。もう現に来ているという意識もあっていいと思うのですが、現在の法律にある黙示の合意ですか、この範囲でどこまで対応できるかということを検討して、現行制度で対応できるのであれば、外形とまで極端なこと言わなくても構わないと思うのですが、もしやはり対応できない形態での行為があるのだということであれば、やはりせっかくこの機会ですので、ここで対応策を検討する。そのためには1つのアイデアとしてという意味で、外形的事実から入っていくという、かなり極端に振れることになると思いますけれども、あっていいのではないかというふうに考えております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、田中委員、どうぞお願いします。

    【田中委員】
     まず、重要提案行為に関しましては、前回もお話ししたように、提案の態様を中心として範囲を限定、明確化していくことがよいと思います。ここはまた今後、具体案が出てくると思いますので、それに即して考えていきたいと思います。

     それから、42ページの共同保有者の範囲、ここも賛同意見が多かったということで、何らかの形で改正案が出てくるのかなとは思っておりますけれども、ちょっとこちらのほうは必ずしもどのようなコンセプトに基づいて範囲を明確化するのかはっきりしないところがあると思いますので、今後より議論していく必要はあると思っております。

     私自身は、現在の共同保有者の範囲については、合意というものを慎重に解して、やはり将来の行動を約束するというものでなければ合意ではないので、一般的には機関投資家が行う協働エンゲージメントについては、多くは合意の範囲に含まれないと思っているのですが、この点について疑義があるなら、何らかのホワイトリストを設定するということはあり得ると思います。

     一方で、明確化だけでなくて、限定するということも考え方としてはあり得ると思っています。現在の共同保有者の範囲については、株主の権利行使について合意すればどのような権利であろうと、共同保有者になりますので、この点が広過ぎるのではないかという側面はあるかと思います。この辺り、諸外国では経営に対して継続的な影響を与えるという目的を要求するところもあると理解しておりまして、そのような形の限定ということもあり得るのではないかと考えております。

     それから、43ページ、デリバティブの取扱いですが、ここも適用対象とすることに賛同意見が多く見られたと44ページに書いてありますので何らかの案は出てくると思います。ただ、私としては何らかの規制対象にすることは賛成ですが、やはり大量保有報告制度というのは、会社経営に対する支配力ないし影響力に着目して開示規制を課すというものであり、キャッシュフローライトだけでは、それがいかに大きくても規制対象にはならないというのが原則と思いますので、その原則が破られないようにすべきではないかと思います。

     そういう観点からすると、デリバティブについては広く規制対象にするということは支持し難くて、アメリカを参考に、あくまでも大量保有報告制度を回避しようとする計画・スキームの一環として利用されるデリバティブを規制するというコンセプトで考えたほうがいいと思います。

     その場合に、アメリカで実際に事件になったように、デリバティブのロングポジションを持っていて、相手方がショートポジションのヘッジのために現物を持っているので、デリバティブを解消するときに、相手方に現物での決済を求めると、普通は現物の引渡しに応じてくれることになっている、このような行為類型は、確かに規制の回避の典型であると思いますが、このような場合には、事後的にどういう結果になったかに着目して、後で実際に現物を取得したときには、そのようなポジションを契約した当初からそういう規制回避目的があったということを推定して、契約当初から開示規制に違反したという形でチェックしていくことが考えられるかと思います。

     今申し上げたように、大量保有報告制度については、後の成り行きを見ないと規制違反かどうかがよく分からないということがどうしてもあると思っていまして、だからこそ諸外国では規制違反について事後的に議決権行使停止制度を設けるというような形で対応しているのではないかと思っています。事後的にしか規制の違反が判明しないようなときに、後々に規制違反して取得している部分については、売却しない限り議決権行使停止措置があるよというような形での制裁がないと、どうしても規制のエンフォースメントが十分ではないという部分があるかと思います。この辺りはまずは公的なエンフォースメントをしっかりやることが先だという考え方もあるのかもしれませんが、諸外国では公的なエンフォースメントに加えて私的なエンフォースメントも行っている国が多いわけですので、そういった制度についてもぜひ排除しないで検討していただきたいと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     ほかにいかがでしょうか。では、桑原委員、どうぞお願いします。

    【桑原委員】
     42ページの共同保有者の範囲について、共同保有者の範囲を明確化するということは私も賛成でございます。共同保有者に含まれるということになりますと、公開買付け、あるいは大量保有報告のところで開示の義務、責任を負うということになりますので、そういう義務、責任を負わせるだけの根拠があるような場面といいますか、ジャスティファイできるような場面というのも1つ考慮に入れるべきなのではないかと思っています。

     そういう意味で、合意をベースにするというところはひとつ分かりやすいと思うのですけれども、これを黙示の合意、あるいはその外形的な事実というところで捉えていこうとするときに、それをもって開示の責任、義務を負わせることが適切と言えるような場面なのか、そういう観点も含めて考えていく必要があるのではないかと思っています。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     ほかにいかがでしょうか。藤田さん、どうぞお願いします。

    【藤田委員】
     基本的に大量保有報告関係はおおむね書かれていることに賛成ですが、1点だけ頭の整理的な話で、石綿委員が述べられたことと少し関係するのですけれども、重要提案行為の範囲について、基本的に規制を見直してエンゲージメントの障害をなくす方向で改正する、規定を設けるといったのは賛成です。その中身としても、賛同というところに書かれているような提案内容と提案の態様の双方に着目するというアプローチそれ自体はいいように思うのですが、抽象的なので、私の理解したところでいうと、例えば極端な例でいうと、株主への還元をできるだけ高めてくれというような提案は、別にそれ自体は重要提案行為じゃないけれども、株主提案権使って配当しようとなるとこれは当たる。両方勘案するというのは例えばそういう意味では、現経営陣は責任持ってやめろと強く主張するというのは、これは株主提案しなくても当たり得るという、両方相関的に考えるようなアプローチ。

     今の例が適切かはともかく、両方相関的に考えるという、そういうアプローチなのだと理解しましたが、それはそれでいいと思うのですが、提案の目的について40ページの真ん中の欄に書かれていて、これは基準とするのは適切ではないというふうに強く書かれています。整理の仕方だけなのですが、しかし、確かに内心の意図を探るような意味での目的で考えるのはよくないと思うのですが、提案内容などから合理的に読み取れる目的を問題にするのはむしろ当然であり、あるべきことだと思うのです。

     そうなると、その他のところに書かれている会社支配権に影響を及ぼす目的・効果というのが一般条項的な意味での中心的な考え方であって、それを判断するための具体的な外形的判断要素として提案内容と提案態様があると、こういう階層的な構造を持っていて整理されるということなのかなというふうに理解したのです。あるいは、これは表の読み方が違っているのかもしれませんけれども、目的を考えるのがおかしいというふうな、整理の仕方にはちょっと抵抗があったものですから、この辺り、最終的な報告書までに、どういう全体像なのかというのが分かるような整理をしていただければと思います。基本的な発想、内容はこんな基準であるとは思っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     武井委員、どうぞお願いします。

    【武井委員】
     2点ございます。まず1点目の事後救済の箇所ですけれども、田中委員からございました「大量保有報告の違反は後から分かるものである」というのはとても鋭い御指摘だと思いまして、なおのこと、議決権停止制度が実効性があるというお話だと思います。

     議決権停止は立法上の措置があったほうが分かりやすいのですけれども、現行の法解釈としておよそできないのかというと、そうでもない気がするのです。いろんな法解釈がありえるのだとは思うのですけれども、立法措置がない中で議決権停止は解釈論としてあり得るという意見があったなど、報告書における記載のとりまとめの際には御検討いただけましたらと思います。議決権停止制度が、特に大量保有報告においてはいかに大事かという議論が深まっていると思いますので、ちょっと深めて書いていただければと思います。

     2点目が重要提案行為のところですが、これも最終的にどういう案が出てくるかだと思うのですけれども、本当に現行の概念がどのくらい普通にやっている協働エンゲージメントの支障になっているのか、ちょっと私はやっぱり疑問を持っていますので、今ある資本市場の透明性を後退させないような形にすべきだと思っています。今の重要提案行為の規定で本当にどのように困っているのかを踏まえて、不用意に透明性を後退させない形で直していただければと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、オブザーバーの皆様で、今回議論した3つのテーマ全てについてどれでも結構ですので、もし御意見がありましたら、時間の許す範囲内でお伺いしたいと思います。

     日本証券業協会さん、どうぞお願いします。

    【日本証券業協会】
     日本証券業協会の森本でございます。

     本日のワーキング・グループでは、我々証券会社からの意見も含め、これまでの議論の内容を整理いただき、御礼申し上げます。

     私からは、公開買付制度に関しまして、1点コメントを申し上げさせていただきます。証券会社やそのグループでは、顧客の流動性を確保する目的でのトレーディングや、運用のためにまとまった数量の株式を売買したり、保有したりすることを日常的に行っております。これらは企業支配を目的としたものではないことから、新しい規制・制度の設計に当たっては、適用除外を設定するなどの工夫も併せて御検討いただければと思います。

     例えば、今回の資料で申し上げますと10ページの閾値間の取引、35ページの形式的特別関係者についての適用除外のあり方につきまして、引き続き金融庁の御担当の方と御相談させていただきたいと存じます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、国際銀行協会さん、どうぞお願いします。

    【国際銀行協会】
     国際銀行協会、平山と申します。

     21ページの5%ルールの適用範囲の見直し、44ページの大量保有報告におけるエクイティ・デリバティブ取引の取扱い、47ページの大量保有報告に関する記載事項の簡素化など、弊協会の会員の意見を取り上げていただきまして、どうもありがとうございました。これらはいずれも弊協会会員の関心が極めて高い事項でございますので、今後、事務局にて制度を詳細に進められる際に、ぜひとも協力させていただきたく思っておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

    【神田座長】
     ありがとうございました。

     東京証券取引所さん、どうぞお願いします。

    【東京証券取引所】
     東京証券取引所の青でございます。

     基本的にはこれまでの御議論に異論ないところが大半ですが、2点だけ申し上げます。16ページの強圧性に対するⅢの措置については、株主総会による意思確認手続を仮に導入することになった場合には、例えば株主総会を開く際の期限をどうするかといった点で、過度にM&Aを制約しないような手当を意識することも大切な点かと思いますので、実際に導入する場合は念頭に置いていただければと思います。

     それから、37ページの公開買付届出書の記載事項の見直しですが、記載事項について、投資家の欲するものを的確に提供する観点から見直すことに賛成ですけれども、具体的な内容については委員の方々で思っている範囲がかなり違うのでないかという印象ですので、丁寧な御検討ぜひお願いできればと思います。そのときに例えば、対象企業が情報を出さないと買付者が書けないような情報があったりすると、それも阻害要因になるでしょうし、例えば非上場化のときなども、これはMBOとそうでない場合で変わってくると思いますが、投資家のほうは価格の妥当性を適切に判断するために必要な情報は当然必要だということになるかと思いますので、どういう情報が必要かについては、本来の開示の目的に照らして丁寧に御検討いただければと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     堀井委員、どうぞお願いします。

    【堀井委員】
     ありがとうございます。投資家の立場での繰り返しの発言になり恐縮ですが、改めてひと言申し上げたいと思います。我々機関投資家は受託者責任を負っており、受託者責任を果たす観点から投資先企業と企業価値を上げるための対話をいろいろな切り口で行っているのですが、配当の話とか事業構造改革の話は一定程度は不可避な話題だと認識しています。

     一方で投資家は、例えば投資信託という法的な枠組みの中においては株主であっても経営権取得を目的としているわけではないので、こうした活動実態に則した整理をして頂くことによって一層深みのある対話ができるようになることが理想です。まだ議論の余地は数多くあるとは思いますが、改善に向けた一定の方向が見えたことは投資家にとって大変ありがたい話ですので、一言コメントさせていただきます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、ちょうど時間もそろそろという感じですので、このあたりとさせていただければと思います。

     本日も、皆様方から貴重な御意見をたくさんいただきましてありがとうございました。考え方に関わる部分については主として研究者の方々からも重要な指摘をたくさんいただきましたし、個々の論点についても多くの貴重な御指摘をいただきました。さらにお気づきの点ございましたら、ぜひ遠慮なく事務局のほうまでお伝えいただければ大変ありがたく存じます。

     次回のワーキング・グループですけれども、冒頭にも申し上げましたように、取りまとめをしていかなければいけない時期になっているわけでして、本日を含めまして、これまでいただきました御議論を踏まえて、取りまとめに向けた御議論を、次回お願いするということになります。

     今日伺っていましても、論点によっては取りまとまるのかなという不安がないわけではないのですけれども、何とか皆様の御協力を得て取りまとめに向けた議論を進められればと思っております。引き続きよろしくお願い申し上げます。

     金融庁企画市場局長、もし一言あればお願いいたします。

    【井藤局長】
     今日は対面での開催ということで、まるで初回のような新鮮さもありましたけれども、議論のほうは大詰めを迎えていまして、先ほど神田座長からお話がありましたように、なかなか全ての論点について、完全な意見の一致というのは難しいかと思います。ただ、前回の見直しから17年もたっているという御指摘もありましたけれども、少しでも対応できる部分については制度の見直しを実効性ある形でできればというふうに考えてございます。

     また、必ずしも十分なコンセンサスが得られなかったことについても、継続して議論をしていくのであろうとも思ってございます。そのときには決して次は2040年にはならないように心がけていきたいとは考えてございます。十分な結論が得られない点については、例えば私ども行政のリソースの問題もございますし、もう一つは、会社法の領域に関わると、金融庁の所管していない法律であることの制約といった点もありますけれども、そういったところも御理解いただいた上、できればなるべくほかのところはコンセンサスを得られるような方向で御議論していただければと思います。

     今回に至るまで5回にわたる御議論をいただいており、大変感謝しておりますが、もうしばらくどうぞよろしくお願いいたします。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、本日は対面開催に御協力をいただきまして、誠にありがとうございました。以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

    ―― 了 ――


     

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

企画市場局企業開示課(内線:3659、3849)

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