金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」(第6回) 議事録

  • 1.日時:

    令和5年12月19日(火曜日)9時30分~11時10分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

    【神田座長】
     本日御参加いただける皆様方は全ておそろいでございますので、始めさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

     本日でございますけれども、金融審議会の公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの第6回目の会合となります。皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参加いただきまして誠にありがとうございます。

     本日の御出席状況でございますが、齊藤委員と高山委員から御欠席の旨を承っております。また、そのほかの委員の皆様方には全員御出席いただいております。皆様方、いつもありがとうございます。

     前回の会議は対面形式で開催させていただきましたけれども、本日の会議はオンラインでの開催とさせていただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

     また、本日の会議の模様は、これまでどおりウェブ上でライブ中継をさせていただいております。

     それでは、早速ですが議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、これまでの議論を取りまとめた報告書案について御審議をいただくということになります。

     そこで、まず、公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ報告書案につきまして、事務局から御説明をしていただきます。

     それでは、よろしくお願いいたします。

    【野崎企業開示課長】
     金融庁の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。

     それでは、公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの報告書案について御説明させていただきます。

     まず、報告書案の2ページを御覧いただければと思います。

     2ページの15行目からでございますけども、公開買付制度に関しては、近時、市場内取引等を通じた非友好的買収事例の増加やM&Aの多様化といった市場環境の変化に伴い、様々な課題が指摘されているところであり、これらの課題を踏まえた制度の在り方について、制度趣旨の考え方を含む幅広い観点から見直しの検討をしていただいたところでございます。

     最初に、1番の欧州型の規制への移行について御議論いただきました。29行目以降にございますように、当ワーキング・グループにおいては、我が国の公開買付制度に関して、欧州型の規制に移行すべきかという観点から御議論いただいたところでございますが、結論としましては、3ページの2行目にございますように、当ワーキング・グループにおいては、直ちに欧州型の規制に移行すべきとの結論には至らなかったものの、将来的な欧州型の規制への移行の可能性も念頭に置きつつ、公開買付制度の適用範囲や部分買付けの許否など、後述の各検討課題について個別に検討することとしたところでございます。

     次に、2番の市場内取引の取扱いの(1)3分の1ルールにおける取扱いでございます。

     3ページの14行目から記載してございますように、現行の公開買付制度上、市場内取引(立会内)は、誰もが参加でき、取引の数量や価格が公表され、競争売買の手法によって価格形成が行われるといった点で、一定の透明性・公正性が担保されているとの考え方に基づいて、3分の1ルールの適用対象となっていないところでございます。

     他方、近時は市場内取引(立会内)を通じて議決権の3分の1を短期間のうちに取得するというような事例も見られまして、そのような会社支配権に重大な影響を及ぼすような取引については、投資判断に必要な情報・時間が一般株主に十分与えられていないというような問題が指摘されているところでございます。

     会社支配権に重大な影響を及ぼすような証券取引につきましては、その透明性・公正性の観点から、投資者による適切な投資判断の機会を確保するというためには、当該取引の目的・数量・価格等に関する事前の情報開示や熟慮期間、さらには株主の平等取扱いの機会が担保されていることが重要と考えられまして、4ページにございますように、市場内取引(立会内)についても3分の1ルールの適用対象とすべきと記載してございます。

     (2)の閾値間の取引でございます。市場内取引(立会内)を3分の1ルールの適用対象とする場合、3分の1、50%、3分の2といった閾値の間の取引につきましては、会社支配権に一定の影響を及ぼし得る一方で、僅少なものも含めてあらゆる買付けについて公開買付けの実施を義務づけると、制度の目的に照らして過剰な規制となってしまうこともございますので、閾値間の取引については、会社支配権への影響も考慮しつつ、制度の趣旨に照らして過剰な規制にならないようにすべきと記載してございます。

     続きまして「急速な買付け等」の規制につきましては、5ページの9行目にございますように、市場内取引を3分の1ルールの適用対象とする場合であっても、第三者割当増資や適用除外買付け等と組み合わせることによって、公開買付けによらずに3分の1超の議決権を取得するような場面も想定されるという意見もございまして、当ワーキング・グループにおいては、「急速な買付け等」の規制を廃止すべきとの結論には至らなかったと記載してございます。

     続きまして6ページ目、強圧性の問題を巡る対応でございます。こちらは、特に部分買付けにおいては、一般株主において公開買付価格に不満がある場合でも、公開買付けに応募するインセンティブが生じるといった強圧性の問題についての御指摘がございます。

     こちらにつきましては、6ページの29行目にございますように、部分買付けを禁止すべきか否かにつきましては、望ましいM&Aを阻害する効果の検証も含めて引き続き検討されるべきとした一方で、部分買付けが内包する問題に鑑みれば、少なくとも部分買付けを実施する際に、公開買付者が一般株主の理解を得るように努めることが望ましく、具体的には、公開買付届出書における開示の規律を強化しまして、部分買付け後に生じる少数株主との利益相反構造に対する対応策や、一般株主から反対があった場合の対応策についての説明責任を果たさせる措置などが考えられると記載してございます。

     また、7ページの3行目でございますが、全部買付けにつきましても、事例によっては強圧性やこれと類似する問題が生じるため、12行目にございますように、自ら強圧性の問題を解決するために、追加応募期間を設けることを希望する公開買付者が任意にこれを設けることができるような制度を整備することが適切と考えると記載してございます。

     続きまして、3分の1ルールの閾値についてでございますけれども、現行制度上は、「3分の1」という数字が株主総会の特別決議を阻止できる基本的な割合であることに鑑みて、公開買付けの実施が義務付けられる閾値とされているところでございます。他方で、22行目にございますように、諸外国の公開買付制度を概観すると「30%」を閾値としている例が多く、また、我が国の上場会社における議決権行使割合を勘案すると、30%の議決権を有していれば、多くの上場会社において株主総会の特別決議を阻止できるということでございますので、公開買付制度の目的が会社支配権等に影響を及ぼすような証券取引の透明性・公正性を確保するという点にあることからすれば、3分の1ルールの閾値を30%に引き下げることが適当と考えられると記載してございます。

     続きまして5番の金商業者等による顧客からの買付け等でございます。こちらは、8ページの11行目でございますけれども、現行の5%ルールについては、日常の営業活動において反復継続的に株券等の売買を行っている金商業者等の売買取引を過度に制限している面があるという御指摘がございまして、特にここに記載している①②のような取引については、5%ルールの適用対象とならないことを明確化すべきと記載してございます。

     その下に行っていただきまして、6番の公開買付制度の柔軟化・運用体制でございます。現行の公開買付制度では、実質的な観点から個別事案ごとに例外的な取扱いを許容するというような制度は設けられておらず、硬直的な運用を招きかねないという御指摘がございます。

     こういった観点から、9ページの17行目「もっとも」以下のところでございますけども、英国のTakeover Panelに準じた体制まで整備されずとも、現行規制を緩和する方向であれば、現行の当局の体制を強化していくということで対応可能というふうに考えられまして、まずは、その以下に列記しているような各規制について、個別事案ごとに当局の承認を得ること等によって、規制が免除される制度を設けるべきと記載してございます。

     続きまして、11ページの22行目からでございますけれども、当ワーキング・グループにおいては、公開買付けに関する事前・事後の救済制度を設けるべきではないかという点についても御議論いただいたところでして、公開買付けの差止め制度ですとか、議決権を停止する制度、売却命令などについて御検討いただいたところでございます。

     結論としましては、33行目の「以上を踏まえ」からでございますけども、当ワーキング・グループにおいて、直ちに事前・事後の救済制度を設けるべきとの結論には至らなかったものの、こちらについては引き続き検討を重ねていくことが考えられると記載してございます。

     また、現行の制度上も、公開買付制度の違反につきましては、当局における訂正命令の発出や緊急差止命令の申立てといった措置は既に設けられてございますので、当局においてはこれらの手法を適切に活用していくということが期待されると記載してございます。具体的には、特に大量保有報告制度を遵守しないまま公開買付けを開始する事例については、適切な対応を講じていくことが考えられると記載してございます。

     続きまして13ページ目、大量保有報告制度の在り方でございます。20行目で記載してございますけれども、大量保有報告制度に関しては、近時、パッシブ投資の増加や協働エンゲージメントの広がり、企業と投資家との建設的な対話の重要性の高まりといった市場環境の変化に伴い、様々な課題が指摘されているというところでございまして、これらの課題を踏まえた制度の在り方について、見直しの方向性を検討いただいたところでございます。

     まず、重要提案行為の範囲でございます。こちらは、33行目にございますように、そもそも重要提案行為は、当該行為の経営に対する影響力に着目し、そのような行為を目的としている場合には、特例報告制度によらず一般報告により迅速な情報開示を求める趣旨でございます。

     この点、14ページの4行目にございますように、役員の氏名や一定割合以上の議決権の取得といった、企業支配権等に直接関係する行為を目的とする場合については、当該行為それ自体が経営に対して大きな影響を及ぼすということでございますので、迅速な情報開示を求めるべき一方で、配当方針・資本政策に関する変更といった、企業支配権等に直接関係しない事項の提案行為を目的とする場合については、当該提案行為の態様に着目して、その採否を発行会社の経営陣に委ねないような態様による提案行為を行うことを目的とする場合に限って、重要提案行為に該当する規律とすることが適当であると記載してございます。

     共同保有者の範囲でございます。14ページの29行目でございますけれど、上記の共同保有者概念が経営に対する影響力に着目した規律ということであることを踏まえると、各保有者が有する経営に対する影響力を増幅させないような協働エンゲージメントに関する合意をしているもの、具体的には脚注の15に記載してございますように、共同して重要提案行為等を行うことを合意の目的とせず、かつ継続的でない議決権行使に関する合意をしている機関投資家を共同保有者の範囲から除外することが考えられると記載してございます。

     それから、4番の大量保有報告制度の実効性の確保でございます。16ページの3行目でございますけれども、こちらの問題につきましては、全ての大量保有報告制度違反の摘発が現実的ではないとしましても、故意性が疑われる不提出ですとか著しい提出遅延など、市場の公正性を脅かしかねない事例については積極的に対応を講じていくべきである、また、そのような積極的な対応を促進する観点から、共同保有者の認定に係る立証の困難性の問題を解決すべく、一定の外形的事実が存在する場合には共同保有者とみなす旨の規定を拡充すべきと記載してございまして、具体的には脚注18にございますように、例えば役員兼任関係や資本提供関係などに着目して拡充することが考えられると記載してございます。

     それから、16ページ8行目のところでございますけれども、大量保有報告制度を遵守しないまま公開買付けを開始しようとする事例に対しては、公開買付制度の部分でも記載しておりましたけれども、適切な対応を講じていくべきと記載してございます。

     16ページ13行目以下でございますけれども、大量保有報告制度の実効性を確保するためには、大量保有報告制度におきましても議決権を停止する制度を設けることが最も効果的との御意見もいただいたところでございまして、必要に応じて引き続き検討を重ねていくことが考えられると記載してございます。

     最後に実質株主の透明性についてでございます。こちらにつきましては、18ページ8行目でございますけれども、企業と株主・投資家の対話を促進する観点から、実質株主とその持株数について、発行会社や他の株主が効率的に把握できるよう、諸外国の制度も参考に実務的な検討がされるべきとの指摘がございました。

     脚注の21に記載してございますけれども、近時、企業と投資家の建設的な対話の重要性が急速に高まっていることもございまして、我が国の資本市場における喫緊の課題との御意見もいただいているところでございます。

     こちらの対応につきましては、18ページ24行目でございますけども、今後、関係者において、欧州制度を参考に適切な制度整備に向けた取組みを進めるべきである。具体的には、まずは早急に、機関投資家の行動原則として、その保有状況を発行会社から質問された場合にはこれに回答すべきであることを明示する。また、その後、そのような回答を法制度上義務づけることをそれぞれ検討すべきである。その際、企業が得た実質株主に係る情報の有価証券報告書等を通じた開示の在り方についても検討することが期待されると記載してございます。

     説明は以上でございます。ありがとうございました。

    【神田座長】
     どうも御説明ありがとうございました。

     それでは、これから委員の皆様方から御質問、御意見をいただく討議の時間とさせていただきたいと思います。

     まず、本日御欠席の齊藤委員と高山委員から御意見をいただいているとのことですので、事務局から御紹介をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

    【谷口企業統治改革推進管理官】
     金融庁企業統治改革推進管理官の谷口でございます。本日御欠席の齊藤委員、高山委員から御意見を承っておりますので、私から紹介をさせていただきます。

     齊藤委員からは、今回の報告書案について追加の意見、要望などはございませんとの御意見を承っております。

     高山委員からは、報告書案の記載ぶりについては異論ない、ただし、実質株主の把握プロセスについては早急に検討を開始していただきたいとの御意見を承っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、委員の皆様方から御質問、御意見をお伺いできればと思います。

     角田さん、どうぞ、お願いいたします。

    【角田委員】
     報告書の作成及び各所との調整、本当に御苦労さまでした。意見が収束しなかったこともあって、今後の議論に委ねるものが多くなってしまったので、今日は、今後も引続き検討が続くという前提で、欧州型への移行の是非について、パネルなどのような公開買付制度の監督機関について、公開買付けのアドバイザーの質の向上について、実務上気になる幾つかの点についてお伝えします。報告書の最終化に向けた記載の採否については全て座長にお任せいたします。

     既に意見を一部反映いただいていますが、欧州型の制度に完全移行すれば、非常に各ルールが整合的で美しい世界になるのはそのとおりです。けれども、少数株主がそこまでの保護を本当に求めているのかという点や現状のメリットを捨てることになることを踏まえれば、欧州型への移行ありきで検討を続けること、すなわち主要株主や支配株主の存在が悪であって、これらの存在は特例を満たすときだけ認められる制度というのは、私は反対です。前回のワーキング・グループにおいて「少数株主保護の在り方として幅広く検討すべき」と言ったのはその趣旨でした。

     欧州型の本場であるイギリスでも複数議決権株の柔軟化議論がありますし、スタートアップの経営者の安心感を得て、起業家のイノベーションと個人や年金の運用の機会を両立するため、上場市場間の国際競争のような観点からも、支配株主の存在を認めた上で、逆に少数株主の保護を強化するという考えもあると思います。

     米国でも、追加記載されたように子会社が上場したままの買収は珍しいのですけれども、一方で複数議決権を持つなどして支配株主がいる上場会社はたくさんありますし、そういう株に投資する人のメリットを無視すべきではないのでないかと思います。

     政策選択としては、支配株主と共存する形で少数株主の保護を強化することが考えられます。例えば日本でも中外製薬がロシュの上場子会社となった事例を調べましたが、子会社になってから約20年間で株価は約13倍、配当を再投資すれば約19倍となっています。こういう事例もあるということを踏まえた上で検討すべきだと思います。

     少数株主の保護の強化としては、完全に独立した特別委員会の設置、支配株主等の利害関係者を除いた過半数決議(マジョリティ・オブ・マイノリティ)の利用、意思決定の過程を詳細に開示して圧力がなかったか外部検証できるようにする制度などもあるでしょうし、第三者間買収取引へ拡大して、会社法の合併・株式交換などの特別決議に合わせて3分の2の議決権、議決権行使割合を勘案すると支配に近くなり、場合によっては買収防衛策を発動できるようなレベルと支配権を定義して、そのような割合を超える取得について公開買付けを義務付けるなど――現行の比較的柔軟な買収を許容して支配株主が存在する場合に責任を加重する米国型寄りの制度になりますが――こういうようなものも十分考えられると思います。

     次に、パネルのところですけども、欧州型制度における厳格な規制の例外を認めるというだけの機能を持たせるのではなくて、もっとM&A全般について判断できるようにしたほうがいいと思います。

     イギリスのパネルは、コードを販売し、オファードキュメントで手数料を取るほか、株式市場での株の大口売買への賦課金も財源にしていますが、昨年度は赤字でした。出向者を使ってコストと質のコントロールをしていますが、それでも赤字になってしまうので、ちゃんとやろうと思ったら財源の問題も出てきますし、違反者などに対するコールドショルダーのような措置、日本で言うと村八分のような措置を前提としている点は、これが日本でワークするのかという問題もありますので、ここら辺もきっちりつくらなきゃならないと思います。

     上場会社のM&Aについては、証券取引所の今の陣容だとちょっと足りないと思いますけれども、例えば証券取引所を使っていけば、ハードローでなくても上場規則とかで一定のエンフォースができたりもするし、費用もカバーできやすいかもとも思いました。

     審査機関だけではなくて助言者、特に財務アドバイザーも、やはり制度が必要と思います。企業買収、支配権に関わる株の取扱いですし、大量保有報告制度や公開買付制度という金商法そのものを取り扱うので、外国のようにブローカー・ディーラー登録をさせて、法制度を理解させ、当局が検査・指導できる形にしたほうがいいのかもしれません。非上場株の取り扱いに関する簡易な登録業者の制度をつくるというような報道もありましたけれど、こういう上場株の買収関連についてはしっかりとした業者登録制度を設けることも考えられるのでないか。上場株に限定すれば、事業承継に悪影響が起こるみたいな、中小企業庁の議論とも一線を画することができるのでないかなと思います。

     個別の論点としては、公開買付けの追加応募期間については、この前もお話ししましたように、やっぱり日和見の人が多く、インデックス投資についてはそもそも応募しないこともあるので、応募率が下がり良い案件が成立しにくくなるということに、非常に恐怖感があります。

     NTTドコモの株式の公開買付けに応募しなかった個人株主で、ドコモが上場廃止後に買い取られた株式の譲渡所得に関する税金の申告漏れ問題が生じているとの報道が出ていましたけれど、ああいうように、上場廃止となる場面で価格に不満がなくても公開買付けに応募せず、強制買取りを待つ人が多いので、任意の制度としたとしても義務的なものと間違われないようにしたほうがいいと思います。

     公開買付けの予告については、許認可待ちのために予告を続けている事例はいいのですけれども、デューデリジェンスさせてくれることを条件とするとか、対象会社の取締役会の賛同を条件とするみたいな、条件付きの予告の場合は、これによって不安定な状況に置かれることを考えると、もう会社の認めない、賛同しないという結論は出ているのに撤回も敵対的TOBにも踏み切らず予告状態を続けることは、事業への影響もあるため、プットアップ・オア・シャットアップではないですけれども、野放しにするのはやめたほうがいいと思います。

     また、一つの公開買付けの中で二つの公開買付価格を設定することを許容する制度について議論がありましたけれども、応募者が間違えて低い方の価格に応募してしまうこともあり得ます。日本側で手当てをしても、米国対応を行う公開買付けでは二つのTOBが相互に米国法上の別途買付違反となるリスクが残ると米国法弁護士から聞きましたので、二つの価格の公開買付けが同時に走る制度設計よりは、公開買付け成立を条件とした異なる価格での特定の株主からの取得契約締結を許容した上で、別途買付とならないタイミングでTOBと連動して取引を成立させるみたいな制度を導入すべきだと思います。

     最後に、配当がなされた場合の公開買付けの価格の変更ですけれども、任意に価格の変更を認めるのではなくて、配当額と公開買付価格の合計が株主への支払対価として固定的に定まるようにし、100円配当が行われた場合は、公開買付価格も100円自動的に下がるという風に設計し、逆にそれより上の価格や下の価格への変更は許容しないと明確にしたほうがいいのではないかと思いますし、諸外国もこういう実務でやっていると思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、神作先生、どうぞお願いします。

    【神作委員】
     本ワーキング・グループのこれまでの議論を、的確におまとめいただいた報告書案となっており、また、5ページの参考図にありますように、非常に複雑な問題についても、読み手にとって分かりやすい内容にするための工夫をしていただいていると思います。基本的に報告書案に異存ございません。

     ただし一点、もし可能であれば御検討いただきたいという点と、それからもう一点、コメントを申し上げさせていただければと思います。

     一点、もし可能であれば御検討いただけるとありがたいという点は、報告書案の18ページでございます。実質株主の透明性について米国型の制度か、あるいは欧州諸国の制度を参考にするかというところですが、報告書案の記載を読みますと、米国型の制度には問題点ばかりあって採用の余地がないかのように、ちょっと読めてしまうようにも思うのですけれども、しかし、米国型の法制というのも、特に一定の運用資産を有する機関投資家の影響力が非常に強くなったような場合ですとか、あるいは様々な状況の変化等によっては、やはり日本でも導入する余地はあると思いますし、欧州諸国の制度と矛盾するというものではないと思いますので、米国型の制度を排除しないような表現ぶりと申しますか、そのような書き方がもし可能であれば、お願いできればと思います。

     以上が御要望です。

     もう1点は単なる感想と申しますか、コメントですけれども、3ページに、欧州型の規制への移行については引き続き検討していただけるということを記載していただいたのは大変ありがたく、私はそれで十分なのですけれども、特に欧州型の規制においては、本ワーキングでも発言させていただいた点なのですが、価格規制が非常に重要な意味を持っていると思います。

     特に今回、市場内取引に対しても3分の1ルールを適用したということで、市場内取引に対して制約を課すという提案をしている以上は、やはり価格規制というのが非常に重要になりますし、また価格規制は強圧性の問題の対応としても大変有意義だと思いますので、ぜひ、欧州型への移行を考える際には、価格規制についても将来的に御検討いただければ大変ありがたいと思っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、続きまして三瓶委員、どうぞ、お願いいたします。

    【三瓶委員】
     まず事務局には、今回難しく、なかなか収斂しなかった議論もありますけども、まとめていただきありがとうございました。

     その中で、特に時間配分的には、議論はほとんど公開買付制度のほうに偏っていたと思うので、今日は共同保有者の範囲と実質株主の透明性について、ちょっとコメントさせていただきたいと思います。

     まず、共同保有者の範囲について、14ページ30行目から15ページの1行目のところに関してですけれども、ここで、「各保有者が有する経営に対する影響力を増幅させないような協働エンゲージメント」という言葉があります。これは正直言って矛盾があると思います。

     協働するということは、同じ思いを持った人たちが集まって、それについて伝えようとするので、1人で言うよりは大勢で言ったほうが聞いてくれるだろうということなので、「影響力を増幅させないような協働エンゲージメント」というのは、言葉自体が矛盾しているというふうに思います。

     ただ、ここには脚注15がついています。脚注15には、「共同して重要提案行為を行うことを合意の目的とせず、かつ継続的でない議決権行使に関する合意をしている機関投資家」と記載されています。これはそのとおりだと思うのです。

     ですから、脚注15の内容に本文を置き換えるほうが、文章としてすっきりするという感じがします。これは要望です。

     次に、実質株主の透明性についてですが、18ページ20行目のところ、「過剰な規制」という言葉が出てきます。

     ここでは、対話の当事者ではない者にまで保有情報へのアクセスを与えることが過剰な規制ということですけれども、その説明として、その下の22・23行目に、発行会社に対して実質株主の保有状況を伝達するものであり、企業と株主・投資家の対話を促進する目的にかなうと記載があります。しかし、28行目のところでは、「企業が得た実質株主に関する情報の有価証券報告書等を通じた開示」と記載があり、こうなると、対話の当事者ではない者にも保有情報を伝えることになるので、前半で言っている話と矛盾しないのかという問題があります。

     もう一つは、20行目、21行目のところですけども、「必要な情報が開示されない場合がある」というふうに書いてありますが、それはどんな場合なのか、ちょっと例示をして、脚注にでも書くべきではないかなと思います。

     3つ目ですけども、これは25行目から31行目の、最終的な実質株主の透明性についての結論ですけども、ちょっと結論が強引に引っ張られているように思います。

     報告書案では、まず欧州型と来て、原則主義ベースで機関投資家は発行会社から保有状況を質問された場合、担当者に回答させる、その後、回答義務を法制度上規律づける、企業が得た実質株主に関する情報を有価証券報告書等で開示する、それで、プロセス等を効率化するために制度運用を検討するとされています。何かもう結論というか方向性が無理やりに決められているのですけど、これについては、どれだけ時間をかけて議論したのかなというふうに思うのです。

     最後に記載があるように把握プロセスを効率的にすることを検討するとした場合は、先ほど神作委員も仰っていましたけれども、米国型の制度との比較など、随分検討しなければいけないことがあると思うのです。

     例えば、もともとこれは企業と株主・投資家との対話の促進が目的とされていますけれども、本当にそうかなと思います。米国型は、Form 13Fが中心にこれまで議論されましたけども、それ以外にもForm N‐CSR、Form N‐Qという、いわゆるミューチュアル・ファンドとかETFの開示というのがあるのです。その開示があることによって、発行会社はパッシブ投資家がどのぐらい持っているのか、アクティブ投資家の中でグローススタイル、バリュースタイル、インカムスタイルがどれだけ持っているのか、投資スタイルごとに分かるのです。投資スタイルごとに分からないと、本当に踏み込んだ対話はできません。

     Form 13Fについて、少額の場合に開示されないのでないかというようなところが懸念されているようですけれども、2017年の実績で5,200以上の機関投資家が提出しているので、実は物凄く網羅性はあります。

     ほかにも、そういう法制度がどういう対象を規制しているのかというのを見ていく必要があるのと、あと、頻度ですよね。データポイントとして、どのぐらいの頻度で把握できるのか。Form 13Fであれば四半期ごと、Form N-CSRというものであれば年1回または半年ごと、Form N‐Qであれば四半期ごとです。欧州型または英国型でいうと英国の会社法793条ということになるのでしょうけど、発行体が質問したとき随時になります。

     把握の網羅性ということでは、先ほどの米国型の網羅性がかなり高くて、例えばブルームバーグやトムソンロイターといったデータベースでは、主に米国型を活用して、相当な情報提供をしています。

     欧州型の場合は、うまく把握プロセスをシステム化していかない限りは、請求した発行会社のみが知るということになる。これは本当に対話の促進が目的なのかな、むしろ株主総会対策ではないかなという感じが非常にします。

     米国型にすると第三者への情報開示になってしまうのでないかという懸念があるようですけれども、実質株主の透明性というのは発行会社だけのためのものなのかと。もっと幅広く、他の発行体にとっても、また他の投資者にとっても有用な情報ではないのかという論点もあります。

     また、議論の途中段階では、機関投資家の投資戦略が見透かされるという問題があるというのがありましたけれども、米国ではもうそんなの当たり前になっているので、例えばアクティブ運用の最大手のフィディリティに関しては、フィディリティ・ウォッチャーというフィディリティ・ファンドの売買行動を専門にモニターして、それをニュースレターとして発信する業者も複数存在するのです。そんな中で運用していく。これは、AUMの規模が大きい運用会社については、やっぱり社会的な責任等があって、その行動の透明性を高めるという、ある種の義務というのがあるというふうに受け止めているということがあります。

     最後に、効率的な把握プロセスというところですけども、本当に効率的にしようとすると、既にそのデータを把握している議決権行使プラットフォーム、例えばICJみたいなものを活用することが考えられます。

     これを使うと効率的に正確性・網羅性を確保できるのですけども、例えばソフトローの状態でそれを促すと、そういったプラットフォームは、今のところは守秘義務契約を結んでいますから、機関投資家から個別に開示承認を取り付けないといけません。

     また、海外機関投資家としてスチュワードシップ・コードにサインしているとしても、それが国内法人だけであれば、海外拠点分の保有分も開示できるのか、承認できるのかという機関投資家内部の事情や、また、このプラットフォームを使うとすると、これは株主総会基準日ベースなので、年1回しか普通は集計しない。これの頻度を増やすとなると、管理信託銀行やグローバル・カストディアンとまた連携しなきゃいけなくて、そこから追加情報をもらう必要があるのですけど、そうすると機関投資家の了承を得る必要があるとか、この設置が進んでハードローの下でやるとすると、こういった特定の民間のプラットフォームを活用するということに集中していいのか、競争上の問題はないのかとか、把握プロセスを丁寧にいろんな比較検討していくと、結局米国型も見ながらやっていく必要が出てくると思うのです。

     ですから、最初から欧州型を目指すとして、その先まで決めていくというのは、ちょっと強引な気がしました。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、次に飯田委員、どうぞ、お願いいたします。

    【飯田委員】
     2点ございまして、1点目が8ページの脚注6のところですが、全部買付義務の閾値を引き下げない理由について書かれているところです。

     今回、実質的な話としては、全部買付義務の閾値をもし見直すというような話になると、それは欧州型の規制の移行という話とセットになってきますので、今回はここは引き下げるということにはしないということだと思います。ですので、実質的な内容としてはこれでいいのですが、説明の仕方として、今の書きぶりですと、キャッシュアウト等の少数株主を強制的に退出させるために云々という書き方になっていまして、これはこれで一つの理屈であると思いますけれども、そこの「3分の2であること等に着目した」というところの「等」というところに、従来の金融庁のワーキング・グループ等の報告書などのフレーズでいくと、上場廃止等に至るような公開買付けの局面において、手残り株が生じたときの零細株主の保護というような発想なども着目したルールだということが読み込まれていると思います。ですので、この3分の2という数字を引き下げていくというような話になると、上場廃止等に至るというところの理由付けを大分変えるということになるでしょうから、今回はそういうこともあって、この数字を下げれば上場廃止等とは大分遠くなってくるということもありますので、3分の1のルールの30%の閾値に下げるということに伴って、連動する形で全部買付義務の閾値も下げるということにはならないという形で理解できるのではないかなと思いました。これは、修正提案というわけではありませんけれども、そういう考え方なのかなと思いましたというのが1点目です。

     あと、2点目でございますけれども、この報告書案には直接書いていないことですが、公開買付けに関する応募のときに、特に個人株主が応募しようと思うと、公開買付代理人のところに証券口座を開設して移管してという事務手続がかなり煩瑣になるわけでありますので、これは法制度の問題ではないのだろうとは思いますけれども、実務的な工夫がさらに進むことで応募しやすくするということも、今後、ぜひ御検討いただければありがたいなと思いました。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

    それでは児玉委員、お願いいたします。

    【児玉委員】
     まず今般、事務局の皆様方、御尽力いただきましてありがとうございます。なかなか収斂していないところが多いにもかかわらず、これだけまとめていただいたということ、大変感謝申し上げます。

     一点だけ、このワーキング・グループに参加した自分の立場という意味からしますと、やはりどうしても実質株主の透明性について、一言だけ申し上げさせていただきたいと思っています。

     報告書案の記載上は、いろいろな配慮があって、事務局は、自分たちでできるところは「早急に」という表現を使われておられて、恐らく他の関係者の方々の協力が必要なところについてはそれを言及されないという整理をされたのだなというふうに、18、19ページを読んで思っております。1か所だけお願いをいたしますのは、18ページの書きぶりです。内容ではありません。

     18ページの24行目辺りからのところのパラグラフですけれども、25行目に「まずは早急に」と記載がございますけれども、私など産業界として申し上げましたこと、これは脚注21でも記載いただきましたけれども、とにかく全てにおいて喫緊の課題であるという意図、これをもう少し出していただけると大変ありがたいです。関係者に御協力をいただいて全てのこと、すなわち25行目の「具体的には」以降で記載のある全てを「早急に」対応していただきたいというのが思いであります。

     したがいまして、非常にテクニカルですけれども、「早急に」という言葉は、この「具体的には」という箇所ではなくて、その前の文に「制度整備等に向けた取組を早急に進めるべきである」と記載していただきたいと思います。これは、事務局の金融庁だけではなくて、他の関係者の皆様方とも御協力をいただいて早急に対応いただきたいという意味合いです。細かなところではありますが、緊急性について、産業界からの声を反映していただければというふうに思います。

     もし可能であれば、19ページ「おわりに」のところにもございますけれども、こちらでも、「関係者間で協議の上」と記載がございますけれども、これについても「早急に」や「速やかに」というような表現を付け加えていただけますと、私としては大変ありがたいというふうに思う次第です。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     堀井委員、どうぞお願いいたします。

    【堀井委員】
     報告書案の記載の内容に違和感はございません。重要提案行為の範囲、共同保有者の範囲、さらには大量保有報告制度の実効性の確保などについて、一定の方向性をしっかりと示された点については、実際の運用に携わる者として、また、企業とのエンゲージメントに携わる者として、大変感謝しております。

     一方で、何度も本会合で申し上げておりますが、大事なことは、まず動くことだと思います。児玉委員の御発言にもありましたとおり、例えば、実質株主に関する部分は早急に実行することが大事だと思います。議論を継続すべきことは継続するとしても、現場にいる者の立場としては、可及的速やかに実行すべきことはまず動く、すぐ動くということを真剣に意識して頂きたいと思っております。

     最後に、ワーキング・グループで多くの有識者の方といろいろディスカッションをさせて頂き、非常に有意義でした。大変感謝しております。ありがとうございました。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     藤田委員、どうぞ、お願いいたします。

    【藤田委員】
     報告書案の個別の論点についても意見がないわけではないのですが、現在はもうそれを改めて申し上げる段階ではないと思っておりますし、また、報告書案は今回のワーキング・グループの議論そのものは適切に反映していると思いますので、現在の内容での取りまとめについて賛成いたします。ただ、細かな表現の調整自体はあるいは必要かもしれませんが、その点については事務局あるいは座長にお任せしたいと思っております。

     その上で、報告書案の内容それ自体ではないのですけれども、若干感想を申し上げたいと思います。まず、今回の報告書は、多くの方が御指摘されたように、少なくない部分について今後の検討に委ねることとなっているところがございます。欧州型への規制の移行はその最たるものですけれども、それ以外にもいろいろなところで検討すべき課題という記載がございます。その中には、既にある程度の方向性が明示されているものもあれば、そうではなく、今回は結論が出せなかったという記載にとどまっているものもあるわけですけれども、いずれにせよ適切な時期に検討を始めてほしいと思います。「検討すべき課題」というのを、今回は結論を出さないという意味の表現として用いるのではなくて、本当に今後検討する趣旨だと理解してほしいと思います。そもそも今回本格的な検討をするまで長年、公開買付制度や大量保有報告制度について、きちんと検討されなかったこと自体がかなりおかしなことだったと思いますので、今後はそういうことがないようにしていただきたいと思います。実質株主の透明性のように、他の省庁等の関係者の検討を要請することになる提言も含まれておりますが、これも関係者に適切にフォローして、適切な時期に検討されるように期待いたします。

     最後に、この報告書に基づく改正が実現した後ですが、公開買付規制の運用体制について、規制の実質化・柔軟化が必然的に要請されることになると思います。特に公開買付け規制の実質化・柔軟化はどうしても避けられないと思うのですけれども、これを可能にする前提として、当局の権限強化への言及があります。様々な制約はあると思うのですけれども、適切な人材をぜひとも確保して、適切な運営ができるような体制の構築に努めていただければと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、石綿委員、どうぞ、お願いいたします。

    【石綿委員】
     まず事務局の方々には、精力的に見直しの作業を行っていただきまして、深く感謝申し上げます。細部に至るまで御調整をいただいた跡が見受けられまして、大変だったのだろうなと思うとともに、実務にとって非常に有意義な提言が多く含まれておりますので、実務家としても感謝しているところです。

     一方で、将来の課題とされている事項については、あまり時を置かずに御検討いただけると大変ありがたいと思っています。

     最終的な採否は、事務局にお任せをしますが、一点のみ、申し上げておきたいことがあります。近時の裁判において、買収が対象会社による対抗措置の発動などによって対抗された事例の中で、対抗措置の発動が認められた事例、逆に言うと買収が事実上否定された事例の多くは、強圧性のある買収であったと思います。

     今回の提言におきましては、強圧性についての対応はかなり限定的なものにとどまったと認識をしておりまして、やや残念なところではございます。強圧性との関係では、今回は、基本的には、買付者が自主的に追加応募期間を設けることができる制度が整備されるにとどまったというふうに理解しています。もっとも、追加応募期間は、角田委員がおっしゃったように買収に対する阻害効果が非常に大きいものであって、実務として利用を推奨したいものでもないと思います。

     そもそも強圧性のある買収を行ってきた買収者に対して、買収者以外の人が救済を求めているときに、その買収者による自主的な対応に委ねるというのでは必ずしも十分な対応にはならないのではないかと思っています。

     脚注4のところでは、一定の株主の反対があった部分買付けについては、株主意思の確認を義務付ける措置を講じることについて、賛同の意見が多く見られたとされつつも、具体的な株主意思の確認方法等についての意見の一致が見られなかったというふうに記載されていらっしゃいますけれども、実際にワーキング・グループで、株主意思の確認方法等について意見が激しくぶつかったというようなことがあったのか、ちょっと私自身はそういう認識はなくて、むしろ技術的なことは事務局に任せるということで、大きな方針については皆さん賛成されていたのではないかというふうに感じています。

     他の関係者との調整を踏まえてこういう記載になったということであれば、今回はやむを得ないとしても、将来の課題であること、強圧性についての対応というのは今後の課題であるということをどこかに明記していただけるとよろしいのではないかと思っております。

     あとは、ちょっと感想めいた話になりますけれども、M&Aという経済活動が非常に重要性を増してきている中で、我が国ではM&Aに関する法規制が会社法と金商法に分かれて規定されているわけです。

     分かれて規定されていること自体を直ちに問題とすべきではないと考えてはおりますが、今回のような改正に際し、会社法の役割は何で金商法の役割は何だというようなことを、保守的かつ厳格に考え過ぎてしまいますと、結局M&Aという経済活動に対する適切な法制度を用意することができなくなってしまうのではないかと点が気になりました。

     私は、経済事象に対する適切な法制度を用意するという意味で、金商法であってももう少し柔軟に必要な制度を用意すべきかなと、会社法についてももう少し柔軟に考えていいのでないかと思っているわけですが、仮にそれができないということであれば、公開会社法みたいなものを用意していくという方向で考えざるを得ないようにも思いました。

     今後については、我が国においてM&A法制が2つの法律に分かれて規定されている中で、必要な法制度を用意することはできないのか、仮に分かれていることによって必要な法制度が用意できないということであれば、むしろ公開会社法のような形で考えることはできないのか、ということをご検討いただいてもよいのではないかと思いました。

     いずれにせよ、最終的な採否は座長に一任させていただきますので、適宜御検討いただければと思います。いずれにせよ、長い間大変お疲れさまでした。ありがとうございました。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     桑原委員、どうぞ、お願いいたします。

    【桑原委員】
     事務局の皆様、取りまとめを本当にありがとうございました。既に色々な委員の方々がおっしゃったところと重なるところもございますが、今回いろいろ議論をした中で、かなりの重要なポイントが今後の検討課題ということになりました。

     これについて、「今後の検討課題」として終わりではなく、今後どういうタイムフレームでこうした中長期的な課題も含めて議論していくのかということも、事務局におかれましては御検討いただければと思います。

     その中で、例えば欧州型への移行などについては、角田委員もおっしゃいましたけれども、実務への影響も含めて慎重に検討すべきところは慎重に検討していただきたいと思いますが、一方で、例えば大量保有報告の違反の問題のように、足元に問題があって、取りあえずこれは当局対応をしっかりやりましょうということで一つの方向性が示されたところは、ある程度早いタイミングで、実際にそれがうまく機能しているのか確認をし、足りないところがあれば改めてまた議論をすることが必要ではないかと思っております。

     報告書の内容自体については基本的に異存ございませんけれども、2点、やや細かい点も含めてコメントさせていただきます。

     強圧性の問題をめぐる対応について、6ページ36行目の「具体的には」以降に、部分買付けを実施する公開買付者に対して、部分買付け後に生じる少数株主の利益相反構造に対する対応策や、一般株主から反対があった場合の対応策についての説明責任を果たさせる措置というのが書いてあります。

     この前段である、少数株主の利益相反構造に対する対応策についての説明責任、ここは理解できるのですけれども、一般株主から反対があった場合の対応策についての説明責任は、具体的にどういう局面で、どういうことを説明するように求めていくのか、どういう措置を念頭に置いているのかということについて、必ずしもこれまで明示的に議論されていなかったように思いますので、事務局のお考えを確認させていただければと思っております。

     7ページの3分の1ルールの閾値についてですが、結論に異論はないのですけれども、24行目から25行目のところで、30%に閾値を変える理由について、「株主総会の特別決議を阻止することができる」という書き方になっているのですが、これまでの議論としてはどちらかというと、30%を保有すると、特別決議というよりは普通決議について非常に大きな影響を及ぼすというところが根拠になっていたと思いますので、ここも御確認をお願いできればと思います。

     最終的には、採否を含めて座長に一任させていただきますけれども、よろしくお願いいたします。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。
    事務局に対する御質問かなとも思ったのですけれども、事務局の方でもし何かあればお願いします。

    【谷口企業統治改革推進管理官】
     御質問ありがとうございます。

     6ページ記載の部分に関して、部分買付けを実施する場合に、一般株主から反対があった場合の対応策についての説明責任とは具体的にどういったものが想定されるかというご質問と存じております。こちらについては、今後、実務の集積次第とは思っておりますけれども、典型的なものとして考えられる一つの例として、そういうこともあまり多くはないのかなとは思っておりますが、皆様の御議論があったように、一般株主から反対があった場合には、公開買付者が自ら積極的に株主意思の確認を行うというような対応が、期待されるところとしてはあると思っております。

     なかなかそれをポジティブにやっていくという買付者はあまり多くなかろうと思いますが、もう一つ想定される場面としては、昨今よく問題になっているような買収防衛策などに関して、対象会社や他の株主が株主意思確認の総会を開くことを妨げない。すなわち株主総会が開催される前に公開買付けを終わらせてしまうということはせず、もし株主総会が開かれるのであれば、その分、期間延長して、一度皆様の意思を確認しますよという手続を経ることも一つ考えられるのかと思っております。このように、公開買付者が積極的に対応を行うパターン、または消極的なパターンなど、両面が考えられるかと思っております。こちらは今後、そういった具体的な場面などにおける実務の集積を期待していきたいと思っております。

    【桑原委員】
     ありがとうございます。公開買付者側がこういう措置を講じること自体を否定しないところは重要だと思います。一方で、説明責任の範囲がどこまで及ぶのか。基本的に説明をしなくてはならないということになると、明確な基準がない中では実務も運営しにくくなるところがあると思いますので、その辺りも目配りしながら詳細を詰めていっていただければと思います。

    【谷口企業統治改革推進管理官】
     承知いたしました。ありがとうございます。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     桑原委員から御指摘のあった3分の1ルールの閾値に関する部分の報告書案の記載の在り方につきましては、他の委員の皆様方からの御指摘と合わせて、今後のプロセスの中で検討させていただきたいと思います。

    【桑原委員】
     ありがとうございます。

    【神田座長】
     ありがとうございます。

     それでは、田中委員、どうぞお願いいたします。

    【田中委員】
     まず、ワーキング・グループにおける、非常に多様で、かつ、かなり相互に対立した面もある意見をまとめてくださいました座長及び事務局の方々に深く感謝したいと思います。内容的にも、市場買付けに対する強制公開買付規制の適用や、あるいは重要提案行為等の範囲の明確化ないしは一定の限定など、私自身が必要だと考えていた点も含めて、非常に適切な改正提案が盛り込まれていると思っております。

     他方で、公開買付けの強圧性に対する措置など、私自身があっていいのではないかと思っていた点が盛り込まれていないわけですけれども、この点に関しては引き続き検討していくということでもありますので、これで終わりにしないで、引き続き実態を含めて検討し、適切な規制が必要と判断されたときには早期に規制していくことが重要であると考えております。

     このワーキング・グループにおいても、取りまとめの段階で異論や反対論が出されております。このワーキング・グループは非常に多様な意見がありましたので当然かなと思うところではあるのですけども、報告書案に賛成する意見もあるので、今日の意見によって報告書案の内容が実質的に変わるようなところがあると、また、それについて異論が出てくるようなことになりますので、報告書案については、このような意見も見られたというような形で付記するなどの工夫をして、なるべく本文の論調を改めることはしないでいただきたいと思います。

     一つ挙げておけば、公開買付けについて任意の追加応募期間を設けるという措置に関してです。これは、対象会社の株主は、公開買付けに本当は賛成であるか、少なくとも別に反対していないのに、対象会社のほうで、公開買付けが強圧性があるとして、買収防衛策を発動し、持ち合い株主やその他の安定株主の賛成で防衛策を通してしまうというケースがあり得ます。その結果、株式を売却したい一般投資家は相当いるし、また、一定程度の有力株主が公開買付けによって現れることがガバナンスの観点からも適切でありうるにもかかわらず、それがブロックされてしまうということが起こり得ます。このようなケースでは、買付者が任意に追加応募期間を設定すれば、追加応募期間がある以上は強圧性を理由とした買収防衛策の発動については正当な理由がないと主張することが可能になります。少なくともこのようなケースでは、追加応募期間を任意に設定できるものとすることには利点があると考えます。

     これに対し、追加応募期間を設けると様子見が起こるというご意見がありました。これは、確かに実務的な懸念事項としては分かるのですが、例えばアメリカですと、公開買付けが終わった後、すぐキャッシュアウトが行われるのに対して、日本の場合はやはり、公開買付けからキャッシュアウトまでかなりの時間が経過するということがまま見られる現象でありまして、その点で言えば、厳しく見れば、日本の場合、キャッシュアウトが約束されている全部買付けですらも強圧性がないわけではないというのが現状かと思っていまして、どちらかといえばそちらのほうが問題だと私は思っております。

     また、個人株主が、ただでさえ応募しないのにますます応募しなくなるという問題につきましては、これは先ほど飯田委員がおっしゃったように、そもそも我が国の公開買付けの実務が一般投資家にとって必ずしも分かりやすいものになっていないところに原因があるのではないかと思っておりまして、その辺りのことも含めた御検討をいただききたいと思います。私としては、任意の応募期間の設定には賛成であるということを申し上げておきたいと思います。

     それから、最後にもう1点、意見を述べさせていただきます。先ほど石綿委員がおっしゃったこととも関係するのですけれども、「引き続き検討」とされた論点として、例えば強圧性を有し得る公開買付けに対して株主総会などの承認を得させるとか、あるいは議決権停止の措置など、金商法と会社法が交錯するような領域について、今回は立法的な措置を講じるとの結論には至っておりません。これは、それぞれに理由があると思うので、必ずしも会社法と金商法が分かれているので立法がしにくいというだけが理由ではないとは理解しておりますが、その点を確認した上で念のため意見を述べさせていただきますと、法制上、会社法と金商法が分かれているというのは、はっきり言って常識というか、ほとんどの国はそうでありますので、そのような制度になっているから何らかの法改正ができないということはないと思うのです。

     公開買付けに関して言えば、イギリスなどは、経緯から会社法に公開買付規制の基礎的な条文が入れられていますけど、ほかの国を見ると、やはり日本と同じように、会社法は会社法、金商法は金商法で、公開買付規制や大量保有報告制度も金商法で定める形になっています。にもかかわらず、例えば大量保有報告制度違反については議決権停止措置が取られるというルールもちゃんと入っていまして、2つの法律が存在しているということから、本来入れられるべき規制が入れられないということは全くないだろうと思います。

     もし仮に日本においてそのような点が問題になって必要な規制が入れられないとすれば、それは法改正のプロセスに欠陥があるといいますか、非常にフレキシビリティーに欠ける、正直言うと遅れた国になるような感じがします。諸外国でも公開買付制度や大量保有報告制度については様々な議論があるわけですが、会社法と金商法の役割分担みたいな形で必要な規制がブロックされるというのは、アメリカみたいに連邦法と州法が分かれている国ではそういうこともあり得るのですけれども、そうでなければあまり問題にならないところでありまして、そのようなところが障害にならないように、これは将来の法改正についてもそうですけれども、ぜひ適切に立法上の措置をお願いしたいと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、武井委員、どうぞお願いします。

    【武井委員】
     大変お疲れさまでございました。皆様もおっしゃっていますけども、本当にこの難しい話をこの報告書案という形で取りまとめていただきました事務局の皆さんに、大変お疲れさまでございましたと心から謝意を申し上げたいと思います。本当に大変だったと思います。

     資本市場の透明性の規律が、グローバルから見て、日本は相当課題が多いという中で、まさにこの報告書が一つの出発点でありまして、今後いろいろな関係各所の皆様とも色々な調整すべきことや、精緻な制度設計が必要と思いますので、これからよろしくお願いいたします。

     細かい各論で3点だけ申し上げます。

     まず、先ほど協働エンゲージメントの話がありましたけども、企業に対して相当威圧的な態様のものも中にはあるようですので、今後、精緻な制度設計をされる過程で、その点に関して、企業側からも色々ヒアリングをしていただいた上で、制度設計していただければというのが1点目です。

     2点目が、実質株主の透明性についてです。先ほどから御意見もあり、ここの文言を直すか否かは事務局にお任せしますけれども、もし直すとしたら、この制度の目的は単に建設的な対話の促進だけではなく、やはり資本市場の透明性、すなわち企業経営に一定の重要な影響を与えるものについての資本市場の透明性という観点もあると思うので、その点を留意していただければということでございます。

     3点目は、今後の課題である公開買付規制違反とか大量保有報告規制違反のエンフォースメントについてで、議決権行使などの民事罰についてです。こうした民事罰はまさにどこの国でもある制度でございまして、もちろん日本でも今後、立法によって明確に規定していくべきだと思いますけども、現行法の下でも、事案によっては判例によって議決権停止がされてもいい事案もあるように思いますので、現行法のもとでもおよそ議決権が規制されないというわけではないと私は思っています。その点、コメントしておきたいと思います。もっとも、もちろん制度面としてきちっと規定されるべき事項だと思っていますので、それについても意見を述べたいと思います。

     いずれにしても、本当にこれを出発点として色々な制度設計をされていくと思いますので、ぜひ今後とも資本市場の透明性の強化に向けて何とぞよろしくお願いいたします。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、次に、玉井委員、どうぞお願いいたします。

    【玉井委員】
     皆様おっしゃっていますけれども、本当に様々な意見やコメントがあって集約も大変だったと思うのですけれども、結果的に非常に読みやすくまとめていただいたと思いまして、大変感謝しております。私自身は、このワーキング・グループあるいは直接事務局にお伝えしたようなコメントや意見も、非常に丁寧に酌んでいただいて、ありがたく思っております。

     前回の第5回は、恐縮ながら海外出張で参加できなかったのですけれども、あの場で出ていた閾値間の取引に関する新しい論点、これについても今の整理で異存ございません。いろいろな方がおっしゃっていましたけれども、引き続き検討とされた点については、引き続きといっても早急に対応が必要だとは思いますので、改善に向けては常にスピーディーに動くことを念頭に対応をお願いできればと思っております。

     幾つか細かい点ですけれどもコメント申し上げます。一つは部分買付けの強圧性のところで、これは石綿委員や桑原委員からも御指摘ありましたが、強圧性の対応については、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの措置と事務局説明資料に対応措置が挙げられていた中で、Ⅲの措置についてはかなり多くの委員の方の支持を得ていたと思います。対象会社の取締役会あるいは一定の株主の反対があった場合には、公開買付けに対する応募の意思表示とは別に、その公開買付け自体に賛成するかどうかについて別途、株主の意思を確認するというのがⅢの措置でしたが、今回は導入するまでには至らなかったというのは個人的に残念に思っているところです。

     桑原委員から御指摘のあった6ページの33行目以下の部分、一般株主からの反対があった場合の対応策を自発的な措置等として工夫するということが含意されていることは理解いたしました。そこは実務でもどの程度できるかというところの検討になりますけども、任意の取組みとしては検討を深めていきたいと思います。

     関連して、脚注4のところの書きぶりについて、座長に一任ということではございますけれども、もし可能であれば、御検討いただけるとありがたいなと思っています。すなわち、脚注4の末尾は、「確認方法等については意見の一致が見られなかった」と終わっており、確かに議論の中で実際にどういうふうに確認するのでしょうかねとか、時間がかかってしまうかもしれませんねといった御指摘があったことはあったと思いますけれども、総体としては、多くの方々がこういう措置を講じることに賛成していたという点のほうがバランス的には重要なので、例えば、脚注4の書きぶりの順番を入れ替えて、賛同する意見が多く見られたと終わるような形で組み替えるとか、表現上の小さな工夫もあり得るのではないかと思ったところです。

     若干気になっているのが、報告書案自体の具体的な記載についてではないのですけれども、公開買付けの差止めに関する議論において、強圧性については別途の制度でカバーされるということが想定されるので、差止めのところでは、強圧性について対応する必要はないのではないかといったような御議論をされていた委員の方もいらっしゃったと思います。この強圧性に関する措置の想定が変わってしまったときに差止めの点に関する意見を維持できるかという問題もありそうには思いますが、あそこを変えたら今度はここを変えると言っていると、議論がいつまでたっても終わらないので、報告書案としては、これでまとめるということになるとは思いますけれども、そういう意味では、強圧性に対する対応について、Ⅲの措置というものに期待しているメンバーが相当数いたのではないかなというところが少々残念に思われるところです。

     次が共同保有者に関するところですけれども、ウルフパック型等の市場の公正性を脅かしかねない事例について、立証の困難性を解決するものとして、外形的事実がある場合に共同保有者とみなす旨の規定の拡充をしますという記載が入っていると思います。これは私も賛成で、そのようなコメントを以前の会合でも申し上げたのですけれども、他方で、市場内取引に3分の1ルールを及ぼすという点に関連して、過剰な規制にならないように留意すべきだということも報告書案にも入っていると思います。これを聞いていて、やはり同じようなことが、外形的事実に着目して共同保有者とみなすという部分にも関係してくる可能性があるなと思いましたので、一応ここで発言させていただきます。通常の真っ当なグループ運営といいますか、企業のグループ経営の中で、そのつもりもないのに外形的事実で共同保有者にヒットしてしまうということがないように、規制の内容が明確になれば、それを踏まえてグループ管理を留意することになるかもしれないですけれども、過剰規制にならない、あるいは望ましくない副作用が生じないようにするという点は御留意いただきながら起案いただければと思っております。

     もう一つ、公開買付届出書と大量保有報告書のいずれについても記載事項の見直しがされることが記載されていると思います。現段階では大まかな方針が確認されただけで、まさにこれから具体的な作業に入っていくことになると思うのですけれども、色々非常に重要なポイントを含んでいると思いますので、この具体化についてはぜひよろしくお願いしたいと思います。特に公開買付届出書は、東証の適時開示との連携も必要になってくるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

     色々な委員の方々から、検討が継続になった課題も多いとの御指摘をいただきましたけど、他方で、今回の報告書で指摘されている事項、あるいは内容について、これが実際に法律あるいは政令の形で実現することは大きな意味があると思います。

    【神田座長】
     ありがとうございます。

     それでは、太田委員、どうぞお願いいたします。

    【太田委員】
     まずは、このワーキング・グループに参加する機会を頂戴し、皆様のお話を直接伺うことができ、非常に貴重な機会だったと思っております。ありがとうございました。

     我々は、グループとしても、発行会社としても、買付者としても、様々な場面でもろもろのTOB規制に関与するところでございますので、今後の法改正の具体的な内容や種々リリース内容、例えば金融庁のQ&Aなどもしっかりウオッチしながら、適正なM&Aの実施に向け、実務にも具体的な内容を反映させていきたいと思っております。

     その上で、少し細かいところかもしれませんけれども、今日の議論に関して1点だけ少し申し上げたいのが、16ページの脚注18にある大量保有報告における共同保有の範囲に関して、一定の外形的事実が存在する場合にみなし規定を設けることについてです。脚注18の書きぶりからしますと、「例えば」で始まっていて、かつ、役員兼任関係などに「着目」という書き方をされていますので、役員兼任関係があったり、資金提供関係があったりする場合に、たちまちに共同保有者となるというものではないと想定しておりますけれども、やはり役員兼任関係とか資金提供関係を考えていく上では色々な要素がありまして、必ずしも共同保有の概念にはまるようなことではない事実関係や実務の実態もございますので、ぜひその辺は、あくまでそういうところにも着目するといったところに限定し役員兼任関係等が共同保有者に必ずしも直結するわけではないことはしっかり御議論いただき御検討いただければと考えております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、黒沼委員、どうぞお願いいたします。

    【黒沼委員】
     私も報告書の内容については賛成です。事前に指摘した点についても対応していただき、ありがたく思っております。

     今日、細かい点でいろいろと出された御異論、御意見についても、ワーキング・グループ全体の議論の動向を踏まえた上で、もし修正するならば、その点を修正していただければと思います。

     私が気になったのは、何回か議論に出ている脚注4で、株主意思の確認方法について意見の一致が見られなかったという点についての疑義が呈されているのですが、私は、どういう場合に株主意思の確認が必要かについて、あるいは確認方法についても幾つか意見を述べていまして、それは他の委員とは違う意見です。ですから、こういった議論がなかったということはないわけでして、私はこの書きぶりは全く正しいものと考えております。他にも同じような点があるかもしれませんけれども、議事録等を確認していただいた上で、もし記載が適切でないならば直していただければと思います。

     もう1点は感想ですけれども、公開買付けのルールを企業買収のルールとして見て、これを構築するときに、会社法と金商法の垣根を取っ払って制度を構築するべきだという点は、皆様の意見と全く同じです。そういう意味では、今回、第三者割当増資の取扱いについて、踏み込んだ記載がほとんどなされなかったということは、私にとっては非常に残念に思います。

     この問題は、買収ルールの在り方という点では非常に重要な点でして、その論点が欧州型への移行をするかどうかというそういう論点に吸収されてしまっていて、より深く議論すべき点であったと思われるのにその議論が十分なされなかったという点はちょっと心残りであります。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     萬澤委員、どうぞお願いします。

    【萬澤委員】
     報告書案に異存ございませんが、一点、エンフォースメントについてだけ、少し申し上げたいと思います。

     まず、株主等によるエンフォースメントは、11ページの今後の課題の部分に記載があります通り、議論において、その有用性や必要性が一定程度明らかになったということに意義があって、今回は引き続きの検討事項となりましたけれども、これからさらなる議論が積み重ねられていくことにぜひ期待したいと思っております。

     その上で、現時点では、このような株主等によるエンフォースメントが十分に認められないとすると、公的なエンフォースメントが積極的になされることに期待が寄せられると思うのですけれども、これは運用体制とも関わってくると思うのですが、11ページから12ページにかけて、当局による緊急差止命令等の措置の活用について記載が、8ページから9ページにかけて、公開買付制度の柔軟化、運用体制の記載があります。現時点では、いずれも何か大きな変更が加えられるというものというより、現行の体制を強化していくという方向で記載されていると思うのですけれども、このアプローチ自体は賛成です。公的なエンフォースメントについて、今までなかなか機能していなかったところについても強化するという方向で具体例も示していただいていますので、そのところに大きな期待をしたいと思います。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     以上で、御参加の委員の全員の方から御発言をいただくことができました。どうもありがとうございました。
     若干時間がございますので、オブザーバーの皆様方で、もし御意見等ございましたらお伺いしたいと思います。

     日本証券業協会さん、どうぞお願いいたします。

    【日本証券業協会】
     日本証券業協会オブザーバーの飯山です。

     まず、本日に至るまでの多岐にわたる討議事項につきまして、座長及び委員の皆様による御議論、事務局の皆様の御尽力に改めて感謝申し上げたいと思います。

     本日お示しいただきました報告書案では、私どもから述べさせていただいた意見を御考慮いただいていることにつきましても重ねて御礼申し上げたいと思います。これらを含めまして、今後、報告書案の内容を基に法令等の改正が行われる際には、ぜひ証券会社における実務に即した規制となりますよう、事務局と緊密に御相談させていただければと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、日本経済団体連合会さん、どうぞお願いいたします。

    【日本経済団体連合会】
     オブザーバーの日本経済団体連合会の小畑です。

     まず、非常に難しい論点が多岐にわたってある中で、ここまでお取りまとめいただきまして、誠にありがとうございます。その中でも、私どもがかねてからお願いしておりました実質株主の透明性の確保について、ここまで結論を出していただきまして、非常に画期的なことだと思っております。本当にありがとうございます。

     その中で、18ページの記載ぶりですけれども、あえて申し上げれば、25行目において「取組みを進めるべき」と書いていただいているのは非常にありがたいのですけれども、できれば、「取組みを早急に進めるべき」というふうに、もう一段強めていただけると非常にありがたいと思っております。また、この制度はあくまでも株主・投資家と企業との対話を促進する目的であり、この目的からしますと、28行目に、企業が得た情報の有価証券報告書等を通じた開示の在り方についても検討することが考えられるということが書かれているのですけど、なぜそこに結びつくのか、もう一つ理解しかねるところでございます。できれば28行目の「その際」以下を削除していただければと思いますけれども、確かに御議論の中でこういう意見があったということは確かでございますので、できれば、こういう意見があったということを脚注のほうに書いていただくことが適切ではないかと思っております。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     他に御意見等ございますでしょうか。

     よろしいでしょうか。

     どうもありがとうございました。

     これまでもそうですけれども、本日も、皆様方から大変貴重な御指摘、御意見等を多数いただきました。誠にありがとうございました。

     本日は、この会議として、取りまとめをぜひさせていただきたいと思っているわけですけれども、そのやり方ですが、本日、皆様方から報告書案について、多くの御指摘、御意見、感想等をいただいたと思います。もっとも、報告書案の基本的な方向感につきましては、皆様方から御賛同いただいていると思います。意見が非常に分かれる点も多くあって、そういう意味で難しい問題も幾つか取り上げたわけですけれども、それらの個々の御意見等は議事録にきちんと残していただいていると思いますので、報告書と議事録等を併せてお読みいただくということで次のステップに行けるのではないかと感じます。

     ただし、今日、御指摘の中で少し最終的な表現ぶりと言うのでしょうか。細かな点については、なお、もし可能であれば修正なりを試みたほうがいいのではないかと、皆様方の御指摘を伺って、感じました。全部は申し上げられませんけど、一、二申し上げますと、冒頭で神作委員と三瓶委員から御指摘いただいた点、最後には、オブザーバーの日本経済団体連合会の小畑さんからも御指摘ありましたけれども、その辺りは、どういうふうに改善できるかという問題はありますが、表現ぶりは変えられるように思いました。

     それからもう一つだけ、御意見が分かれたと言っていいのかもしれませんけども、脚注4のところの記載ぶりですね。これについては両論があったかと思いますけれども、今のままでいいのかどうかということについては、今日の御指摘を踏まえますと少し考える余地があるかなと思いました。

     そのほかにも、結局表現ぶりになると思いたいのですけれども、それについてさらに少し検討させていただければと感じました。他方、石綿委員、黒沼委員、田中委員、また他の委員もおっしゃっていただいたかと思いますけれども、現在の金融商品取引法と会社法の関係と言うのでしょうか。現在の状況の下で、このワーキング・グループで議論していただいて、法改正が望ましいということになっても、それができないというか、何か足を引っ張られるようなことはぜひ避けなければいけないことだと思いますので、そこは私も一言申し上げておきたいと思います。

     ということでございまして、この報告書案の今後の取扱いですけれども、取りまとめにつきましては、本日、皆様方からいただきました御指摘等をよく、もう一度確認させていただきまして、それを踏まえてメール等での調整等をさせていただきたいと思います。そういうプロセスを経て報告を確定させていただく、そして、その上で後日公表という手順で進めればと思っております。

     なお、今後の作業プロセスにおいて、最終的に表現の平仄、「てにをは」などの精査につきましては、大変恐縮ですけれども、私に御一任をいただけますと大変ありがたく存じます。

     今、概略をお話させていただきましたやり方で、今後、取りまとめの作業をさせていただきたいと思いますけれども、皆様方、そういう方向で御承認をいただくことできますでしょうか。

    (「異議なし」の声あり)
     
    【神田座長】
     どうもありがとうございます。

     それでは、御承認をいただいたということで進めさせていただきます。

     皆様方には今後また御連絡させていただきますし、また、報告が取りまとまって公表された後も、その後の色々なことについて御相談をし、御教授をいただくことになろうかと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

     そうはいっても、今日は、この会議としては一つの区切りになると思いますので、本ワーキング・グループに御参加いただきました委員の皆様方におかれましては、これまで大変お忙しい中を積極的に御参加いただき、精力的かつ前向きの議論を多数展開していただきましたことに対し、心より厚く御礼申し上げます。

     なお、本ワーキング・グループでの取りまとめの結果につきましては、今後、金融審議会の総会に御報告させていただきたいと存じます。

     それでは、最後に事務局である金融庁の井藤局長から一言お願いいたします。

    【井藤企画市場局長】
     ありがとうございます。本ワーキング・グループにおきましては、6回にわたりまして丁寧に御議論いただきまして、本当にありがとうございました。座長の神田先生をはじめまして、皆様方の御協力、御検討、また、御指導いただきましたことを本当に厚く御礼申し上げます。

     今後必要な修正を行った上で確定します報告書を踏まえまして、事務局といたしましては、早急に法令改正を含めた制度整備に取り組んでまいりたいと考えてございます。

     また、併せまして、本ワーキング・グループにおきましては、今後とも引き続き検討を重ねていくべき課題として様々な御意見、御指摘をいただいているものと存じてございます。これらにつきましては、皆様方も色々おっしゃっていただいていますように、難しい論点も多く含まれていると承知しております。

     特に金商法、会社法にまたがる領域におきましては、関係者を含めまして、今後議論していかなくてはいけないわけですけれども、私どもといたしましては、引き続き、検討を進めてまいりたいと考えてございますので、今後ともぜひ先生方の御指導賜れますよう、よろしくお願いいたします。

     これまで長い間にわたり、どうも大変ありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

    【神田座長】
     どうもありがとうございました。

     それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様どうもありがとうございました。

    ―― 了 ――

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

企画市場局企業開示課(内線:3659、3849)

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