金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第1回)議事録

1.日時:

平成24年3月7日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○横尾企画官

皆様、ご多忙のところ、まことにありがとうございます。ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

お手元の資料、資料1としまして、当ワーキング・グループのメンバー名簿、それから資料2は、大臣より金融審にいただいております諮問事項、資料3でございますが、投資信託・投資法人法制の現状、それから資料4が投資信託に係る統計、資料5、投資信託・投資法人法制の見直しについて、それから参考資料といたしまして、投資信託に関する監督指針の改正について、参考資料2は投資信託・投資法人法制の見直しに係る業界からの要望事項でございます。

それから、欠席になっておられます東京証券取引所の小沼様より、投資信託・投資法人法制の諸課題についてメモを提出いただいております。ご確認をお願いします。

○神田座長

資料については、よろしゅうございますでしょうか。

そういたしましたら、時間になりましたので、ただいまから投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループの第1回目の会合を開催させていただきます。

私は、後ほどいらっしゃると伺っておりますけれども、金融審議会会長・金融分科会会長の吉野先生からのご指名をいただきまして、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます東京大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。

このワーキング・グループでございますが、本年の1月27日に開催されました金融審議会の総会及び金融分科会の合同会合におきまして、大臣から諮問をいただきましたものがございます。それが「投資信託・投資法人法制の見直し」について調査審議をするということでございまして、そのために設置されたものでございます。

諮問の内容に沿って、投資信託・投資法人法制に関する諸課題について、皆様方にご検討をお願いしたいと思っております。

それでは次に、ワーキング・グループにご参加いただくメンバーの皆様方のご紹介をさせていただきたいと思います。お手元に名簿をお配りしておりますが、メンバーのご紹介は事務局からお願いいたします。

○横尾企画官

総務企画局市場課企画官の横尾でございます。どうぞよろしくお願いします。

それでは、当ワーキング・グループのメンバーの方々をご紹介申し上げます。あいうえお順にご紹介させていただきます。

メンバーの皆様の右側から、井潟正彦様です。

○井潟委員

井潟でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○横尾企画官

石黒徹様です。

○石黒委員

石黒でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

上柳敏郎様です。

○上柳委員

上柳です。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

大崎貞和様です。

○大崎委員

大崎でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

沖本竜義様です。

○沖本委員

沖本でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

神作裕之様です。

○神作委員

神作でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

草野芳郎様です。

○草野委員

草野でございます。よろしくお願いします。

○横尾企画官

黒沼悦郎様です。

○黒沼委員

黒沼でございます。よろしくお願いします。

○横尾企画官

島田知保様です。

○島田委員

島田でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

清水毅様です。

○清水委員

清水です。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

田島優子様です。

○田島委員

田島でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

永沢裕美子様です。

○永沢委員

永沢でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

村木正雄様です。

○村木委員

村木でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

それから、当ワーキング・グループには、業界団体よりオブザーバーのご推薦をいただきまして出席をいただいております。オブザーバーの皆様をご紹介申し上げます。

信託協会よりご推薦いただきました、中央三井アセット信託銀行受託運用部長の笠原泰様です。

○信託協会(笠原オブザーバー)

笠原でございます。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

全国銀行協会よりご推薦いただきました、みずほ銀行コンサルティング営業開発部長の松田徹也様です。

○全国銀行協会(松田オブザーバー)

松田でございます。よろしくお願いします。

○横尾企画官

投資信託協会よりご推薦いただきました、野村アセットマネジメント執行役専務、城川幸男様です。

○投資信託協会(城川オブザーバー)

城川でございます。よろしくお願いします。

○横尾企画官

日本証券業協会ご推薦の大和証券執行役員、相澤淳一様です。

○日本証券業協会(相澤オブザーバー)

相澤です。よろしくお願いいたします。

○横尾企画官

不動産証券化協会よりご推薦いただきました、協会の専務理事でいらっしゃいます巻島一郎様です。

○不動産証券化協会(巻島オブザーバー)

巻島です。どうぞよろしくお願いいたします。

○横尾企画官

このほか、本日はご欠席されておりますけれども、当ワーキング・グループのメンバーとして、沖野眞已様、川波洋一様、河野栄子様、小沼泰之様にもご参加いただくことになっております。

なお、事務局については時間の都合もありますので、お手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、初回でございますので、次に議事の進め方につきましてご確認というか、ご承認をいただきたいことがございます。このワーキング・グループですけれども、原則公開ということにさせていただきたいと思います。議事録も公表ということにさせていただければと思います。皆様方にも公表を前提としたご意見、ご発言をいただければということになります。

以上のような形にさせていただきたいと思いますけれども、ご承認いただけますでしょうか。

 

(「異議なし」の声あり)

 

○神田座長

ありがとうございます。それでは、そういうことにさせていただきます。

では、引き続きまして、事務局から諮問事項と投資信託・投資法人の現状についての説明をお願いいたします。

○横尾企画官

ありがとうございます。諮問事項につきましては、先ほど資料2とご紹介させていただきました紙に書いておりますように、国民が資産を有効に活用できる環境整備を図るため、以下のような観点から法制の見直しについて検討ということでございます。

投資信託については、国際的な規制の動向や経済社会情勢の変化に応じた規制の柔軟化、一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保等、投資法人については、資金調達手段の多様化を含めた財務基盤の安定性の向上や投資家より信頼されるための運営や取引の透明性の確保等ということでございます。

次に、資料3を用いまして、投資信託・投資法人法制の現状についてご説明させていただきます。資料が大部でございますので、かいつまんでご紹介させていただきます。

まず、1ページをおめくりください。投資信託・投資法人の定義でございますけれども、投信法の中で定義されております定義規定を抜粋しております。条文を抜粋しておりますけれども、わかりにくいので後ほど図解にて説明させていただきますが、投信法の中では、信託型の投資信託、それから会社型の投資法人、それから投資信託の中には、委託者指図型投資信託、委託者非指図型投資信託というものを規定しております。前者の指図型が一般的な、いわゆる投信のことでございまして、非指図型については現在、実際には残高がないという状況でございます。投資法人については、いわゆるJリートとして現在活用されているところでございます。

1ページおめくりください。2ページ目は投資信託・投資法人の分類、純資産額、ファンド本数でございます。投資信託と投資法人合わせて、広義の投資信託としてまとめておりますのが一番左側でございまして、残高にいたしますと90兆円、ファンドの本数で7,000本ということになってございます。最も残高が多いのは、資料中ほどの欄、一番上段にございます証券投資信託57兆円、これには株式投資信託、公社債投資信託、あるいはETFやMRFといったものが含まれます。また、資料中ほどの不動産投資法人、Jリート、こちらが4兆円の残高がございます。

その他、左側になりますけれども、私募投資信託ということで、私募の証券投資信託と私募リートがございます。

もう一ページおめくりいただきますと、3ページ目、投資信託・投資法人にかかる主要な制度改正経緯ということでございます。昭和26年、証券投資信託法ということで制定されましたが、その後大きな改正としては、昭和42年、委託者の受益者に対する忠実義務を規定するための改正が行われました。また、平成10年には金融ビッグバンに伴いまして、ファンド設定における個別約款承認制を届出制へ変更、また私募投資信託、あるいは会社型投資信託、いわゆる投資法人の導入、それから銀行窓販の開始等の改正が行われております。

さらに平成12年には、対象資産を不動産等に拡大いたしまして、投資法人においてJリートが開始されるのを可能としました。また、受託者責任のさらなる明確化のため、善管注意義務を規定したものでございます。平成19年には、金融商品取引法が施行になりまして、投信法上の業規制を金商法に移管しております。

資料の4ページでございます。契約型投資信託のうちでも主流な委託者指図型の仕組みについてご説明させていただきます。

基本的な関係といたしましては、まず投資信託委託会社と信託銀行の間で信託契約を締結し、その信託受益権を販売会社を通じて販売するということで、投資家より資金が集められます。さらに、その資金は信託銀行において分別管理され、運用の指図については投信委託会社が行うことになっております。上がった収益は、販売会社を通じて投資家に分配されるということでございます。

重要な規制といたしまして、例えば信託銀行においては、ページの左側にございますように、信託法・信託業法において、受益者に対する受託者責任を規定しておりますし、他方、投資家と委託会社の関係におきましては、金商法や投信法において、忠実義務、善管注意義務、賠償責任等を定めてあります。

また、投資家に対して受益権を販売する販売会社に対しては、金融商品取引法において適合性の原則と販売・勧誘に関する規制を定めております。

もう一ページおめくりください。資料の5ページ目、投資信託委託会社に関する主な行為規制でございます。例えば登録要件といたしましては、資本金5,000万円以上の株式会社、あるいは金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成等を求めております。

業務につきましては、信託財産の運用指図のほか、そこに掲げておりますような、その他関連業務を行うことができます。また、禁止行為といたしましては、運用財産と投資信託委託会社の取締役等との間における取引を禁止、あるいは管理しております運用財産の相互間の取引というものを禁止しております。

さらに、外部委託につきましては、運用の指図を行う特定の投資信託財産について、当該指図に係る権限の全部または一部を委託可能ということになってございます。ただし、※の2つ目ですけれども、運用の指図を行うすべての投資信託について、当該指図に係る権限の全部を委託してはならないことになってございます。

資料の6ページ目、1枚おめくりください。証券投資信託に関する運用についての規制の説明でございます。

法令レベルでは、そこに書いてありますような、主として、すなわち50%超を委託者指図型投資信託の場合は特定資産、あるいは証券投資信託の場合は有価証券に投資するということになっているのみでございます。他方、ページの下段にございますように、自主規制におきましては、投資対象、分散投資、あるいはデリバティブといったような事項につきまして、そこに掲げてありますような具体的な運用の規制を規定しておるところでございます。

資料の7ページに移らせていただきます。今度は投資法人の仕組みでございます。投資法人につきましては、真ん中にあります投資法人という法人が、左側の投資家から投資口に対する出資という形で資金を集めます。この資金を左側、「不動産他」とございますけれども、そこに投資をして収益を上げ、投資家に分配するという仕組みでございます。ただし、その業務に当たりましては、例えば資産運用、あるいは資産保管、その他一般事務、すべての業務について、外部の専門会社に委託することが義務づけられております。したがって投資法人は、そこにありますような投資主総会、役員会等の機能は残りますが、実態的には箱だということになります。

それから、これは制度ということではないですが、ページの左上、スポンサーというものが重要な役割を果たしているかと思います。実務的には、多くのJリートは不動産会社傘下の運用子会社が設立して、そしてその運用対象の多くを当該不動産会社、ここでいうスポンサーから取得する場合が多いと聞いております。

資料の8ページ目は、投資法人に関する規制の中でも財務の関係の規制についての説明でございます。

投資法人のアセットサイド、不動産等特定資産になりますが、法令上、特定資産であること以上の規制はございませんけれども、Jリートとして活用する場合、そこに掲げていますような運用制限として、不動産関連資産の組み入れ比率というものが自主規制、税法の関係、あるいは上場規程において規制されております。また、投資法人を利用した会社支配を防ぐ観点から、同一発行体の株式の50%超の取得禁止ということが税法、あるいは投信法において定められております。

ファイナンスサイドにつきましては、資料右側ですが、金融機関から借り入れを行うことができますし、あるいは投資法人債といった債券の発行によって資金調達を行うことが可能でございます。エクイティーにつきましては、基本的に投資家から公募増資、あるいは第三者割当増資という形で出資を募ってエクイティーを調達するわけですけれども、それに係る配当につきましては、配当可能利益の9割超を配当することが、分配金の損金算入により法人税を課さないという意味での税制上の恩典を得るために必要な事項になってございます。

資料9ページ目でございます。投資法人に関する規制のうち、コーポレートガバナンスに関する規制でございます。投資法人の中には投資主総会が設置されておりますけれども、そこに対して投資主が議決権を行使する場合、資料の左側ですけれども、書面行使というものが可能になってございます。それから、書面行使もしない、または総会に出席しないといった投資主がいらっしゃれば、その場合はみなし賛成、賛成をしたものとみなすことができるという規約を置くことが可能でございます。投資主総会での決議事項は、左側に掲げているとおりでございます。

また、役員会というものが投資法人の中には組織されまして、その執行役員として1名または2名以上を任命することが義務づけられております。他方、執行役員とは別に、監督役員として利害関係者以外の方を任命することが必要ですが、その人数は執行役員よりも1名以上多いということになっております。役員会の承認を要する業務は、右側に掲げているとおりでございます。

資料10ページに移らせていただきます。投資信託・投資法人のディスクロージャーに関する規制でございます。ビークルが設定されます、いわゆる発行の段階での開示書類として、金商法は有価証券届出書の提出、及び公衆縦覧を求めております。また、目論見書につきまして、投資家への交付が必要となりまして、先般の改正によりまして、あらかじめ交付する交付目論見書、それから投資家の請求に基づきまして交付する請求目論見書というものがございます。他方、投信法におきましては、投資信託であれば約款、投資法人であれば規約を内閣総理大臣、すなわち金融庁へ届け出ること、あるいは受益者への交付、本店据置ということが必要になってきます。

一旦運用が開始された後の継続開示でございますけれども、金商法上は有価証券報告書の提出・公衆縦覧というものが必要になってきます。他方、投信法におきましては、各受益者に対して運用報告書を交付することが義務づけられております。

資料11、12ページには、欧米で投資信託類似の制度を掲げさせていただいております。時間の関係上、詳しくご説明することは省略させていただきますけれども、1点申し上げさせていただくと、日本の投資信託の管理に比べて、欧米では、例えばアドミニストレーターであるとかトランスファー・エージェントといったような、さまざまな専門業者が管理業務を分担しているということが言えるのではないかと思います。

続きまして、統計に関連して資料4をご説明させていただきます。投資信託に係る統計ということで、時間の関係上、投資法人についてはまた別途の機会にご説明させていただければと思いますけれども、投資信託について主要な数字をご紹介させていただきます。

資料1ページ目、販売チャンネル別純資産残高の推移でございます。銀行、証券会社、あるいは直販という形で販売されている投資信託の純資産残高を歴年で表示したものでございます。ごらんいただきますように、2007年までは大きな伸びを示しておりまして、その中でも相対的には銀行窓販を中心にした伸びが大きいところでございます。リーマン・ショック後、残高は落ち込みましたけれども、やや回復はしておりますが、足元90兆円弱、80兆円半ばという残高でございまして、販売チャンネル別にはほぼ証券会社と銀行窓販が拮抗している状況でございます。

資料2ページ目は飛ばさせていただきまして、資料の3ページ目をおめくりいただけますでしょうか。先ほどの残高を、今度は純資産総額を通貨別の構成でプロットしたものでございます。2002年、10年前は、一番左端ですが、グレーの斜線の棒グラフ、これは円建て資産ですけれども、純資産総額における通貨建てで見ますと、円資産が大宗を占めておりました。その後、外貨建て資産が大きく増加いたしまして、一番残高が多い2007年には、半分近くが外貨建て資産だと。なかんずく黒塗りの米ドル、それからやや薄いグレーのユーロといったものが大きなシェアを占めておりました。

その後、全体の残高が減少にするに伴い、円建て、あるいは外貨建てとも縮小しておりますけれども、現在でも、2011年末で見ましても4割程度が外貨建て、特に先ほど申し上げました米ドルのほか、豪ドル、ブラジルレアルといった通貨建て資産がシェアを占めております。

資料4ページは、今度は投資信託の主な投資対象ごとにファンドを分類してみまして、ファンド数、あるいは純資産総額ということで円グラフにまとめたものでございます。資料の右側、まずはファンドの数で分類してみますと、外国債券、国内株式、アセット・アロケーション型といったものがバランスよく存在しているかと思います。

他方、これを純資産総額で見ますと、外国債券、あるいは外国株式、エマージングの株式、債券、それから外国リートといったものが全体の純資産額の約7割を占める状況になってございます。

資料5ページ目は、ファンドの数の推移でございます。上段は残存するファンドの数の推移でございまして、徐々に増えておりまして、2011年末で4,200本余りという状況でございます。

グラフ下段は、各年の新設、あるいは償還のファンド数をプロットしております。新設につきましては、近年、毎年500本前後が新規に設定されているという状況でございます。償還数は減ってきておりますが、足元でも200本余りが毎年償還されている状況でございます。

1枚おめくりいただきまして、資料6ページ目、公募されております外国籍投資信託の状況でございます。資料左側に残高を投資対象別にプロットしております。国内籍投信の動向と似たような上下を繰り返しておりますが、昨年9月末で全体で約5兆円という残高がございます。公募投信国内物が大体57兆円という規模でございますので、それに比べても一定のシェアを外国籍投信が持っているということが言えるかと思います。

次に、1枚おめくりいただきまして、資料の7ページ目、これ以降のページは投資信託に関するアンケート調査ということで、投資信託協会様のほうで実施されておりますアンケート調査より、幾つか抜粋させていただいております。

まず、7ページ目の資料左側、投資信託の保有状況でございますが、中ほどにございます年代別というところをごらんいただくと、40代、50代、60代、70歳以上と、年齢が高くなるにつれ、現在持っている、あるいは以前は持っていたという投資経験者の方々のシェアが高まっていることがごらんいただけるかと思います。

右側には、投資信託を保有していらっしゃる方の購入資金が何から来たかということをアンケートされております。これも中ほど、年代別をごらんいただきますと、総じて定期性の預貯金等からというご回答が多いようでございますが、特徴的なのは20代、30代におきまして、月々の月収からというご回答をなさっている方々も多いということが言えるかと思います。

1枚おめくりいただきまして、資料の8ページ、左側は投資信託を持っていらっしゃる方に、購入の際重視した点、あるいは今後重視したい点を調査したものでございます。購入の際重視した点としては、安全性の高さ、値上がりの期待、過去の運用実績、過去の分配金額、分配頻度の多さといったものが主な重視された点ということでございます。他方、今後購入の際に重視したい点としては、安全性の高さ、値上がり益の期待と、同じようなものが上位に来ている状況でございます。

それから、こういった方々がどんなきっかけで投資信託を購入したかということをアンケートしたものがその下のグラフでございまして、各年を通じまして一番多い返答は、証券会社や銀行等の人から勧められてということでございました。

右側に移りまして、販売員の説明・勧誘といった方法につきまして、結果をアンケートしたものでございますが、「とても満足した」あるいは「まあ満足した」というご回答が4割強という状況でございます。

それから、満足された方にどういった点が満足できたかということを聞いたのが中ほどでございまして、「商品のリスクもきちんと説明した」あるいは「商品の魅力をわかりやすく説明した」というご回答が多いようでございます。その次に、「自分のニーズにあった商品を勧めた」というご回答がございます。

他方、不満に感じていらっしゃる方の理由をお聞きしますと、ちょっと字が小さくて読みづらいですが、直近の平成23年では「説明が多すぎてポイントが理解できなかった」あるいは「商品の魅力の説明しかしなかった」「投資経験に応じた説明をしてほしかった」ということが上位に来ているようでございます。

次のページ、9ページ目は、今度は運用報告書に関するアンケートでございます。左側の一番上段は、これは年度をまたいで、22年と23年の間に選択肢の不連続がございますが、平成23年ベースで申し上げますと、運用報告書を交付されて「全部読んだ」という方が2.5%、「必要と思われる項目を読んだ」という方が50.6%いらっしゃいます。「読んだことはない」という方が、他方45.6%いらっしゃいます。

このうち、読んだことがある方にその理解の状況をお聞きしたのが次のグラフでございまして、「よく理解できた」あるいは「まあまあ理解できた」という方が6割弱、「よくわからなかった」という方が4割弱という状況でございます。

それで、一番下のアンケートは、運用報告書をお読みにならなかった投資家の方にその理由を聞いた調査でございますが、平成23年度は「難しそうだったので」という方が22.7%、「内容が多すぎて読む気にならなかった」という方が50.9%という状況でございます。

資料の右側は、投資信託のすぐれている点をいろいろ調査しておりますが、説明は省略させていただきます。ごらんいただければと思います。

最後のページは、現在、資産残高が上位のファンド、あるいは資産流入額が昨年末で多かったファンドを一覧化しておるものでございます。そこに掲げてありますような投資対象、あるいは分配の仕方等の選好が出ているかと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

今のご説明につきまして、皆様方からご質問やご意見がおありかと思いますけれども、後でまとめてお出しいただければと思いますので、続きまして、今日は初回で盛りだくさんで恐縮ですけれども、諮問事項に基づいた検討において考えられる主な論点というものを事務局で用意していただいておりますので、この説明を事務局からお願いします。

○横尾企画官

はい。続きまして、資料5を用いまして、投資信託・投資法人法制の見直しに関しまして、今後の皆様の審議の参考とさせていただければ光栄でございますが、事務局のほうから幾つか考えられる論点の具体例をご紹介させていただければと思います。

資料5を1枚おめくりいただきますと、投資信託・投資法人法制の見直しということで、そのゴールと諮問内容をもう一度確認させていただければと思います。上段にございますように、平成22年12月に公表しましたアクションプランにおきまして、投資信託・投資法人法制の課題の把握・見直しの検討ということで、タイムスケジュール的には平成25年度までに制度整備の実施を行うことを当庁としてはコミットしております。

また、下段には、それに向けた、先ほど読み上げました大臣諮問のポイントを掲げさせていただいております。

1枚おめくりいただきまして、資料の2ページ目、投資信託・投資法人に関する基本的特性等ということで、検討に当たって、こうしたビークルの特徴を踏まえた検討が必要ではないかと思い、あえて1枚にまとめさせていただきました。投資信託・投資法人というものは、小額投資であっても分散投資が可能であるとともに、新興国等への海外投資や多様な金融技術、あるいはオルタナティブ投資といったものへのアクセスが可能であることが特徴かと思います。

こうした特性を踏まえますと、一般国民が効率的・安定的に資産形成を行うための金融商品として、今後一層重要になってくるものと思いますし、また留意すべき点としては、機関投資家においても、運用能力・コストの観点から、みずからのポートフォリオとして活用するケースも存在するということかと思います。

3ページ目、投資信託に関する現状、それから課題と考えられる主な論点でございます。投資信託について、その現状をどう認識するかということでございますが、例えば拡大の余地はあるといっても、現在、純資産残高が10年前に比べて倍増していることを考えますと、この10年で投資信託は相当に普及してきたのではないかと思います。

その中で、必ずしも長期投資が根づいていないことも相まって、ファンドの数が増加、あるいは乱立といった傾向にあるのではないかという有識者の指摘もございます。こうしたことがファンド運営に関する管理事務の増大、あるいはコストの増大、さらにはそもそも旧弊たる規制の改善によって効率化ができる余地が生じてきているということが課題の1つではないかと考えられます。

また、販売チャンネルの多様化ということもあって、投資方針が明確でリスクリターンを十分理解する投資家のみならず、いわゆる配当利回りを追求しがちな一般消費者といったような方々へも投資信託が浸透してきているものと思われます。こうした中では、低迷する市場下で配当利回りを向上させようとして、高度な金融技術の応用、あるいは商品内容の複雑化・リスクの複合化というものが進んでいるのではないかと考えられます。

こうした状況に対しまして、考えられる主な論点としましては、まずは具体的な論点の検討の前提として、今申し上げたような課題を踏まえて、運用会社の商品組成方針、あるいは運用管理態勢、販売会社においての投資信託販売に関する取り組みや顧客管理態勢といったことについて、まずは望ましいあり方を議論する必要があるのではないかということが考えられます。

その上で、諮問に応じた、その下に書いてありますような具体的な論点を検討してはどうかと考えます。具体的な論点については、次の4ページ目でご説明させていただきます。

まず、投資信託に関します考えられる主な論点のうち、諮問の前段でございます国際的な規制の動向や経済社会情勢の変化に応じた規制の柔軟化等、これに関する、例えば考えられる論点でございますが、マル1、業務運営の効率化・柔軟化を図るため、諸外国の規制も参考にしつつ、ファンド間の併合や1つのファンドにおける複数の報酬体系を可能とするための方策を議論してはどうかと考えます。

例といたしましては、乱立する小規模ファンド間の併合を容易化するために約款変更、あるいは併合手続といったものを簡素化することが考えられるのではないかと思います。また、報酬の柔軟化を可能とすべく、1つのファンドで異なる報酬体系を導入することも考えられまして、その場合、例えば受益権を差別化する、種類受益権を解禁することが考えられるのではないかと思います。

この点、若干補足して説明させていただきますと、現在、投資信託の受益権というものは、均等に分割する必要がございまして、たとえ投資対象が同じでも、信託報酬の体系が異なれば別々の投資信託として運用する必要がございます。現状、実務では、そうやって別々に設定した複数の投資信託、いわゆるベビーファンドというものから、実際の運用を行う親ファンド、マザーファンドに対して投資を行うということで運営されておりまして、ファンドが二層になっているケースが多うございます。こういったことを信託報酬に限って差別化を認めるということであれば、1つのファンドで運営するといったことも考えてはどうかと考えられます。

マル2、運用会社の機能分化や各種業務への新規参入を促進するため、諸外国の規制も参考にしつつ、外部委託に関する規制を明確化することを検討してはどうかと考えます。

例でございますが、運用以外の管理業務の外部委託については、現在、法令上禁止されているわけではございませんけれども、外部委託の可否、あるいは外部委託を行った場合の義務・責任について明文がないことから、これを法令上明確化することで外部委託を促進してはどうかと考えられます。

マル3、その他、投資家保護の確保に配慮した上で、諸外国の規制も参考にしつつ、投資信託業務運営の合理化・効率化を図るため各種の規制の柔軟化を進めてはどうかということで、これも例ではございますが、複数の投資信託を擁する運用会社における投資信託財産間の取引、これは原則禁止ということになってございますが、投資家保護上、問題ないものとして例外的に取引が容認されるケースも現状ございます。括弧の中に書いていますような、運用財産の運用を終了させるために、公正な価額により有価証券売買を行う場合等といったものを規定しておりますが、こういった例外を拡大することで運用の効率化を図ってはどうかと考えます。

また、現状、投資信託の設定におきましては、現物出資が容認される場合には、すべて現物で出資する必要がございます。ETFの設定を弾力的に行えるように、現金と現物を組み合わせた出資(混合出資)を認めてはどうかということでございます。

これも若干説明が必要かと思いますが、先ほど申しましたように、現物出資の場合はすべて現物ということになりますと、例えばTOPIXのような多数の構成銘柄があるETFを設定する場合、その銘柄すべてを用意する必要がございますが、その中に権利落ちや、あるいは配当落ちの関係で、売買ができるものの、その価格がETFを設定した場合と齟齬が生じる場合がございます。こういった制約から、なかなかETFの設定ができないという声がございました。場合によっては、1年のうち半分がETFの設定ができないということがあるようでございます。こういったことを解消し、ETFの設定を弾力的に行えるようにするためには、現物だけではなく、現金も組み合わせたような出資を認めてはどうかということでございます。

それから最後に、機関投資家等プロ専用の投資信託において、より積極的な運用を可能とするために、責任限定信託制度を導入し、実務上も借り入れを可能としてはどうかということでございますが、これも若干補足させていただきますと、現状、投資信託では法制上規制はしておりませんが、自主規制において借り入れが許されておりません。ただ、これを機関投資家のみを対象とするような場合に限っては、借り入れを認めることも考えられます。

ただし、その場合は、借り入れ契約の主体が受託者であります信託銀行となりまして、当該投資信託が債務超過となった場合、その信託銀行の固有財産にまで引き当てが及ぶことが考えられます。したがって、借り入れを実務的に行うことはなかなか難しいわけですが、責任限定信託という制度を導入することで、引き当てを限定することができれば、借り入れも可能になるかと思います。

次に資料5ページ目、投資信託の後段の諮問に対する論点でございます。投資家の商品内容等への理解・関心を深める施策を充実させてはどうかということでございます。例としては、投資家にとって、よりわかりやすい運用報告書とするための改善を含め、金商法上の開示規制と投信法上の開示規制との関係を整理する必要があるのではないかということがございます。

また、投資家がトータルリターンを把握できるように、投資家ごとに基準価額、あるいは各投資信託への投資開始時期からの累積の配当額、それから累積の支払い費用について、定期的な通知制度を導入するということも考えてはどうかと思います。

それから3点目、販売手数料や、あるいは委託会社・販売会社・受託会社といった支払い先別の信託報酬、こういったコストは現在でも開示されているわけですが、使途を含めまして、その説明が不足しているのではないかと考えます。対価にふさわしいサービスが提供されているのかということを投資家が確認するためにも、その使途の説明を充実させてはどうかと考えます。

それから、商品のリスクをわかりやすく表示する工夫が考えられないかということもあるかと思います。例えば、海外の規制を参考にしますと、投資信託のボラティリティー、基準価額の変動のしやすさというものをリスクだととらえて、これを統計的に計算の上、投資家にわかりやすいように階級化して表示するといったような工夫が考えられるのではないかということが言えるかと思います。

マル2、あわせて、一般投資家に販売される投資信託のリスクについて、一定の制約を課すことの是非を検討してはどうかということでございます。例といたしましては、海外の規制を参考に、一般投資家に販売される投資信託に限っては、各投資信託が抱えるリスク量を制限することが考えられるかどうか、こういったことを議論してはどうかと思います。

それから、外国籍投資信託の我が国への持ち込みについて、商品内容等の観点から、国内籍投資信託に求められる水準と同レベルのものに限るべきではないか、こういった論点も議論してはどうかと思います。

次に、投資法人に関する現状・課題、主な論点でございます。現状につきましては、投資法人、なかんずくJリートは金融商品としての重要性が高まってきていると思います。東証の売買高で見ましても、10年間で約10倍以上ということになっております。この中で、不動産という原資産に裏づけられた商品ながら、その投資口価格は金融市場の変動を受けざるを得ないという側面が顕著になってきているかと思います。先般のリーマン・ショックのような金融逼迫時には、リートが資金調達手段の制約といったような財務上の課題があることが顕在化したのではないかと考えられます。

また、別の観点からは、現状、運用体制に必要な人員、あるいはノウハウの確保、投資物件の提供といったことも含めて、リートの経営遂行上はスポンサー企業への依存度が高まらざるを得ないと思われます。こうした点は、スポンサーによる信用補完といったメリットもある反面、スポンサーの利益と投資家の利益が相反するのではないかといった懸念があるのではないかと考えられます。

こうしたことに対して、考えられる主な論点としては、そこに掲げていますような、それぞれの諮問の前段と後段に応じた論点を検討してはどうかと思います。資料の7ページ目でそれを若干詳しく説明させていただきます。

まず、諮問の前段の資金調達手段の多様化を含めた財務基盤の安定性の向上等ということに関しては、資金調達手段の多様化を検討するわけですけれども、それに当たっては、マル1、投資法人の簡素なガバナンス構造、あるいは導管体としての性格も踏まえて検討する必要があるのではないかと考えます。有識者や実務家よりは、新たな資金調達手段としてライツオファリング、転換投資法人債、種類投資口などが挙げられております。また、資金調達ではございませんが、その他の資本政策手段として、無償減資、自己投資口の取得などの指摘を受ける場合もございます。

それからマル2、合併手続に関してですけれども、簡易合併制度の見直しということが考えられるかと思います。投資家利益に配慮し、簡易合併制度の利用基準を発行可能投資口基準から資産規模基準へ見直してはどうかということでございますが、これも若干補足が必要かと思います。現在、投資法人の簡易合併制度、それ自体は存在しておりますけれども、簡易合併を利用するに当たっては、吸収される側に交付される投資口数が吸収する側の発行可能口数未満であれば、投資主総会の決議を要しません。発行可能口数は余裕を持って設定される場合が多うございますので、大概のケースでは投資主の意向を反映する機会がないのではないかと思います。リートの合併が現実化した現在、このような観点から簡易合併制度を見直すことも考えられるのではないかと思われます。

諮問の2段目、投資家からより信頼されるための運営や取引の透明性の確保等についてでございます。マル1といたしまして、資本政策、あるいはその他の運営に関して、ガバナンス体制について見直してはどうかということでございます。

1つ目、スポンサーから独立した意思決定を確保するため、例えば物件の取得等に関しまして、投資法人役員会によるチェック機能をより広く活用してはどうかということが考えられるかと思います。それから、資本政策の多様化に当たりましては、既存投資家との利益相反性が高いような政策を導入する場合、既存投資家保護のため、新たな手段実施に係る投資主総会決議について、みなし賛成制度というものを見直す必要はないかという論点があるかと思います。

それからマル2、インサイダー取引規制の対象とすることを検討してはどうかということがございます。ただしその場合は、会社関係者の範囲、あるいは重要事実といったものを慎重に検討する必要があるかと思います。

以上申し上げたような論点につきまして、今後皆様方のご検討を深めていただければと思いますが、資料8ページ目で今後の進め方につきましてまとめさせていただいております。

先ほど申し上げましたような具体的な論点を、各回におきまして改めて事務局より詳細に説明させていただき、中間論点整理までに投資信託・投資法人制度の改革の方向性を定めて、法改正等施策展開していくべき事項を絞り込んではどうかと考えます。もちろんこれに限らず、メンバーの皆様より多様な課題、あるいは対策といったものもご指摘いただいてご検討いただければ幸いでございます。

第8回までで中間論点を終えました後、今夏以降でございますが、法改正事項を中心に詳細を議論しつつ、例えばそこに掲げてありますような規制の横断化、あるいは規制の柔軟化といったような法体系の整理も試みまして、年末に最終報告をいただければと存じます。

事務局より、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、これから皆様方にご審議をいただきたいと思います。本日は1回目ということでもございますので、今、事務局からご説明のあった点、あるいはそこに触れられていない点でも結構でございます。事務局からのご説明等につきましては、ご質問もおありかと思います。ご質問、ご意見等を皆様方からご自由にお出しいただければと思います。

なお、本日ご欠席の東京証券取引所の小沼委員から、書面によるコメントの提出がございましたので、お手元に配付させていただきました。ご参照いただければと思います。

それでは、残りの時間は皆様方からのご発言ということに本日はさせていただきますので、どなたからでも、どの点につきましても、またご質問、ご意見、その他、どういうことでも結構でございますのでご発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

意見ということになると思いますけれども、今回このワーキング・グループが発足したのは、ある意味でまさに時宜を得たというか、状況が必要性を高めていたのではないかと思います。といいますのは、投資信託について弁護士会、あるいはいろいろなところで法律相談を受けるんですけれども、相談がすごく増えております。

1つの類型は、2000年代前半、4、5年のあたりが多いのかもわかりませんけれども、銀行も含めていろいろなところから購入して、その人たちが大きな損をしている。損をしているというのは、株なり、あるいは為替の動きかもわかりませんけれども、よく考えてみると、預金金利であるとか、場合によっては貸出金利より高い手数料、あるいは信託報酬を払っているのに、どうしてこういう結果になるのかという不満を持っておられる。2つ目に、これはむしろ相談を受ける弁護士にとっては深刻ですけれども、いわゆる仕組み投信になっていたり、あるいはデリバティブ単体を投資信託と称して、投資信託というビークルで売っているようなものもありまして、損失にレバレッジがかかっている。3つ目に,最近多いのは、毎月分配型ということで、これで今も損をしたと思っていらっしゃる方もいますし、そうでない方もいるんですけれども、結局よく見てみると、同僚の桜井弁護士の言葉ですけれども、毎月分配型というよりも、毎月一部元本解約型と表示したほうがいいんじゃないかという実態がある。暗い側面ばっかり申しましたけれども、投資信託への信頼を回復できるかどうか、そういう意味で正念場だと思います。

今回、投資法人も含めて法制を全面的に見直す体制を当局のほうでもとっていただけるのではないかと思いますし、大事な、信頼を持てるインフラとするのかどうか。これまでの歴史をたどりますと、もともとは戦費の調達のようですけれども、財閥解体の受け皿であるとか、あるいは最近でいいますと、市場型間接金融の担い手ということで期待を持ってきたわけですけれども、法制のほうはそれほどかたいものではなくて、一方で大蔵省のチェックといいますか、昔は約款の承認という手続があったようですけれども、そういうものと相まって、ある程度の信頼を確保してきたということが、ビッグバンの中で商品構造の柔軟化が図られていく、あるいは自由化が図られている中で、これからどのように包括的に法整備をするかどうかというところがポイントだろうと思います。

投資信託は、いわゆる集団投資スキームの一類型ではあるんですけれども、それにとどめるのかどうかというところが審議されなきゃいけないところだろうと思います。つまり、行為規制なり、あるいは販売規制を金融商品取引法並み、あるいはそれに準ずるものということでよいのか、それとも一定の商品規制なり、昔の約款承認をせよと言っているわけではないんですが、商品についても一定の枠を法律上も含めてはめて、投資信託というブランドなり名前を一般の集団投資スキームと違ったものとして信頼を回復するのかというところがポイントだろうと。

去年の12月16日に金融審の中長期的な在り方ワーキング・グループというところでモーニングスターの方の資料が配られておるようですけれども、そこに「短命投信量産」という言葉があります。短い命の投資信託を量産している、こういう状況を追認、あるいはその事後処理をするような改革ではなくて、諮問の中に一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保ということがありますけれども、まさに適切な商品のほうに重きを置いた審議がなされるべきじゃないかと思います。

そういう意味で、今日、資料5として論点を例示いただきましたけれども、何となく規制緩和の4ページ目より消費者保護の5ページ目のほうが薄いような雰囲気というのは少し気になりました。各論は追い追い述べたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。永沢委員、お願いします。

○永沢委員

私も上柳先生に全く同意見です。想定される論点についてまとめていただき大変参考になり、これらの点を検討していかなくてはいけないということには同意いたしますが、今回の法改正の審議において、併せて検討すべきと思う事項を、上柳先生と重なる点もありますが、4点申し上げたいと思っております。

第1に、今回のペーパーでは、投資信託、投資法人とが一緒に紹介されていることも関係するかと思いますが、投資信託を、新興国等への海外投資や多様な金融技術、オルタナティブ投資へのアクセスの手段としても評価しています。これは、今までの議論には見られなかった捉え方であり、私は、投資信託のこうした特性を重視し強調されようとされているような印象を持っております。確かに、投資信託が生まれましたイギリスでは、投資信託というものは19世紀にブルジョワジーの人たちが植民地投資をするための手段として誕生したわけですから、こうした歴史が示しますように、そういった特性が投資信託にあることはそのとおりだと思っております。

ただ、一方、これまでの金融審を中心に投資信託について語られてきたときには、どちらかというと、米国でのミューチュアル・ファンドのようなものをモデルとして語られてきたのではなかったでしょうか。そこでは、やはり広く一般の勤労者が退職後のための資産形成に使う金融商品だから、その視点からの投資家保護・受益者保護を考えていかなくてはいけないのではないかということが議論されてきたように私は認識しております。

もちろん、投資信託というのは、今申し上げましたような2つの特性を持っておりまして、どちらも否定できるものではないと考えますが、そこで想定される投資家層は明らかに違っております。想定される投資家が異なってくれば、求められる投資家保護や受益者保護のあり方というのも当然変わってしまいます。現段階では、投信の投資家として一般国民、機関投資家という括り方が想定されているようですが、一般国民の中をさらに分ける必要があるのではないでしょうか。商品性においても、適合性という概念が適切なのかどうかはわかりませんけれども、そのような考え方を導入して規制のあり方を考えていくことも検討に値するのではないかと、資料を全体的に拝見しながら思いました。

第2の点として、近年の規制緩和によって、これまで一般の個人がアクセスできなかった投資対象にアクセスできるようになっているわけですけれども、果たして現行の契約型という法形式が、新しい投資対象や投資手法に耐え得るのだろうかと素朴に不安に思っております。

今、現行の契約型では、運用会社が委託者となっているわけで、その運用を投資家にかわって監視する役割はどこなのかと考えてみますと、おそらく仕組みの上では受託銀行ということになるんだと思います。実務的には委託会社と受託銀行との間で照合作業が行われており、そこでチェックは働いているのだと思っております。

問題は、近年の規制緩和によって、私募の外国投信とか私募の仕組み債なども入ってきておりまして、適正な市場価格がきちんと受託銀行側に入っているんだろうかということを不安に感じておりしたこところ、今回、AIJ投資顧問の事件が起きました。AIJ事件は、年金基金が投資顧問を雇っていた場合であって投資信託ではありませんが、信託銀行には見破れなかったということは投信にとっても重大な問題ではないのでしょうか。現行の契約型で何でも作らせていいのか、検討すべきはないでしょうか。投資対象や使う投資手法によっては、器を検討し直すことも必要なんではないかと感じております。

第3の点といたしましては、思い起こしてみますと、90年代の後半からの規制緩和は、フリー、フェア、グローバルという言葉が中心で語られて進められてきたと思いますが、フェアという点において欠けていたのではないでしょうか。投資家から見たときに、このビジネスはフェアなんだろうかと、実際に投資をした多くの投資家は感じて不満に思っているのではないでしょうか。

投資信託の投資家は、購入後は受益者と呼びますが、投信委託会社や販売金融機関が約款で決められたことを受け入れるしかない地位にあるわけです。この関係をバランスのとれたものにしていくためには、規制とまでは言いませんけれども、事業者側に何らかの責任といいますか、そういったものを負わせるようなことも検討に値するのではないかと思っております。

この点については幾つも言いたいことはありますが、2つ例を挙げさせていただきたいと思います。一つは、販売手数料や信託報酬の水準がどんどん上がってきているということです。この水準が果たして適正な水準なのかどうか、フェアな水準なのかどうかというのを、私たち利用者としては疑問に思っているわけです。そもそもどのようなサービスに対する対価なのかがはっきりしておらず、説明が足りていないのではないかという点は論点ペーパーでも指摘されているところですが、やはり力関係といいますか、先ほど申しましたような事業者と利用者との間の関係を考えますと、上限を定めるとまでは言いませんが、何らかのチェックが働くような仕組みが導入されることも検討すべきではないでしょうか。

もう一つの例として、ファンドの数が増加し、乱立傾向にあるということで、ファンドの資産規模が小さくなっていることが問題になっているということがこのペーパーでも指摘されていますが、そもそも投信委託会社や販売金融機関は、ファンドを設定して利益を得ているわけです。ファンドの資産規模を適正に維持する責務というのはないんでしょうか。ある一定の水準のサービスを提供する責務というものがあるのではないかと思うのですが、現実を見ますと、次から次へとファンドが新設されて、既存ファンドの資産が減っていて、最後には繰り上げ償還が起きるわけです。繰り上げ償還となると、少し細かいことを申しますが、信託期間が10年だと書いてあれば、10年と思って3%の手数料を払っていたのに、5年で繰上償還されてしまうと、支払った手数料は実質6%になるわけで、これはやはりビジネスとしておかしいではないかという投資家もいます。

こういう問題があるからファンドの併合の問題がクローズアップされてきており、その必要性は認めますが、併合を認める場合も、信託報酬が異なるものが合併するときには、信託報酬は低いほうに当然決まるというように、投資家や受益者の利益になるような意思決定が行われることが制度的に保障されなくてはいけないのではないかと思っております。

今回の論点ペーパーを見ますと、事業者にとってメリットになるようなコスト削減のための提案が散見されますが、規制の柔軟化による利益は、最終的に受益者や投資家に還元されるということが制度的に保障されるような手当てが必要ではないでしょうか。フェアでないビジネスに、長期的に発展はありません。このフェアという視点を私たちは今回の見直しでもお願いしたいと思います。

最後に、投信法を眺めましたときに、投資法人は別として、投資信託については大枠だけが投信法などの法令で定められていて、中身に当たる部分は、その多くを自主規制機関である投資信託協会の自主ルールに委ねていると私は理解しておりますけれども、投資家から見ると、この自主ルールというのがよく見えません。自分たちに適用されるルールが見えないという、この状況はどうなのかとも思っておりまして、この方式を継続していくのが妥当なのかどうか、どこまでを法令で定めどこからを自主ルールで定めるのか、この機会に検討すべきではないでしょうか。また、投資信託協会が自主規制機関として機能しているのかも、この機会に法制度を見直す上で必要なのではないかと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうも大変ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

それでは島田委員、どうぞ。それから大崎委員。

○島田委員

1点だけ、運用報告書のことについて申し上げたいと思うんですけれども、運用報告書がわかりにくいので、簡易にしてわかりやすいものにしたいという論点は非常によく理解できるんですけれども、一方でいろいろ皆さん、猜疑心の塊のように投資家もなっている部分がございますけれども、投資信託の開示というのは、他の金融商品に比べて非常に優秀な部分がたくさんあると私は思っております。ですから、これがわかりやすいという言葉のもとに後退していくことは非常に残念だと思っているのが1つ。

それからもう一つ、最後のほうで出てきました外国籍の投資信託についての議論がございましたけれども、現状では買っていらっしゃる方は外国籍の投資信託なのか、あるいは国内籍の、日本の投資信託なのか、ケイマンの投資信託なのかということは、買っていらっしゃるおじいちゃん、おばあちゃんは一切気にしていらっしゃらない、わからないものであると。同じ投資信託というものとしてお買いになっていらっしゃるのだとしたら、この辺の開示は、むしろ現状のよいものに合わせるような部分の詳細なものは、ぜひ、交付運用報告書ではなくて、要請で出すものとしても残していただきたいと思っています。

○神田座長

ありがとうございました。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。個別の論点については追っていろいろ議論していくことになると思いますので、議論全体を通じた基本的な姿勢として、私が重視したいと個人的に思っていて、皆様とできれば共有したいと思っている点について、少し述べさせていただきたいと思います。

1つ目は、こういう諮問が行われて、制度改正の議論がされるというのは、当然その背景に現状に対する問題意識があるわけですけれども、現状生じている問題をとらえるときに、市場環境の、とりわけ短期的な変化、例えば急激に円高が進んだとかいったようなことが主たる要因として生じている問題と、より構造的な、投資信託法制のどこそこにおいて受益者の保護にもとる点があるとか、そういったことが要因で起きている問題というのは、注意深く切り分けて検討を進めていかないと、角を矯めて牛を殺すとでも言うような結果になりはしないかと懸念します。つまり、短期的には確かに顕在化している問題ではあるんだけれども、それに対して制度を大幅に変えることで対応した結果、長期的に見ると、本来いい機能が発揮できたはずのところがつぶされてしまうことになりはしないかという点に注意しながら議論を進めていきたいと思うわけでございます。

とりわけ投信の問題を考えるときに注意しなければと私が思っていますのは、投信をめぐる紛争、消費者と業者の紛争の現場では、販売業者、これは銀行も含むわけですが、証券会社または銀行ということになると思いますが、の顧客対応に問題があって、あるいは投資家を満足させなかったためにいろいろな問題が出ているという点が多々あると思うのです。ただ、そういう問題は、投資信託の法制上の問題とは区別しなければいけないということを感じております。もちろん、販売業者サイドの問題をほうっておいていいと言うつもりは全くございませんで、金融ADR等々、いろいろな制度も整備されておりますし、個別の対応はしなければならないわけですが、少なくとも投信制度の問題、投資法人制度の問題というふうにとらえてしまうと、ちょっとミスリーディングかなということでございます。

それから2番目に、先ほど永沢さんが言われたことと対立してしまうような気もするんですが、私は法令で対処すべき問題と自主規制ルールで対処すべき問題をできるだけ切り分けて、法令によって画一的に規制する点は極力少なくしていったほうがいいのではないかと思っております。ただ、単に一方的に減らせ、増やせというような粗雑な議論をする気はないので、決して永沢さんが先ほどおっしゃった、今、投信のかなりの部分が自主規制にゆだねられていることがあまりよくないというご意見と真っ向から対立するものではないと思いますが、ただ、ここのところは注意しないと、あまり微に入り細をうがった法令をつくってしまいますと、現実と合致しない点が出てくるんじゃないか、この辺は注意が必要だと思っています。

それから、3点目ですが、一般投資家への適切な商品の供給、これは私、全く賛成なんでございますが、ここで我々が注意しなければいけないなと思っていますのは、制度として投資家の類型を、現在存在する特定投資家とか適格機関投資家というものからさらに踏み込んで区分けすることについては、相当慎重でなければいけないのではないかと思っております。

これは、ともすれば、どうしても問題が紛争というところから来ると、被害をこうむったとおっしゃる投資家の方の視点からばかり物事が語られがちになるんですけれども、一方で投資の結果や金融機関のサービスに満足している投資家の人もいるわけです。ただ、満足している人はわざわざそのことを金融庁に言いに行ったりしないので、そういう声は届きにくいわけですから、現在の商品を喜んで買って、最終的に利益を実現している人もいるということを忘れて議論してしまうと、これは非常に危険だと思います。

以上、3点、考え方として申し述べさせていただきました。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

それでは、投信協会、よろしくお願いします。

○投資信託協会(城川オブザーバー)

投信協会を代表しまして、野村アセットの城川でございます。

投資信託・投資法人法制の見直しについて、ワーキングの場で皆様方にご議論いただけるということは、業界の一員として心より感謝申し上げます。

まず初めに、投資信託について申し上げます。投資信託については、これまでも数次にわたり、金融審議会や証券取引審議会等の場でご議論いただきまして、その後の発展につながる大きな改正をしていただきました。

しかし、皆様ご存じのように、個人金融資産に占める割合がいまだ3%程度に低迷していることから見ても、投資信託が期待されるだけのものになったとは言えない状況にあります。今回の法制見直しは、2000年の投信法改正以来のものとなります。投資家のニーズが多様化する中で、投資信託について、投資家に対してよりよい商品を幅広く提供できるための様々な議論がこの場でなされまして、結果的に今後の投資信託の拡大につながれば何よりと考えております。

先ほど事務局のほうから説明がありました、考えられる主な論点についてお示しいただきましたけれども、何点かについて発言させていただきたいと思います。

まず、国際的な規制の動向や経済社会情勢の変化に応じた規制の柔軟化等という点でございますけれども、この点につきましては、業界の業務運営の効率化につながるものと認識しておりまして、当然ながら、この結果、受益者にメリットがもたらされることに加えて、制度としての日本の投資信託の国際競争力を高めることができるということから、積極的に推進すべきものと考えております。

また、次の一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保という論点で、ここはいろいろ書いてありますけれども、この中の、まず最初の運用報告書の改善、投信法上開示と金商法上の開示の整理についてですけれども、これは先ほどから意見もいろいろございましたけれども、運用報告書に関しては、現在、受益者に交付されている運用報告書における記載量が多くて、またその内容についても必ずしもわかりやすいものになっていないという観点から、受益者に交付するものについては、重要な情報に絞った上で、簡潔にわかりやすく、読みやすく提供するための改善の余地が大きいと考えています。

また、金商法上の開示についてですけれども、必ずしも現状の投資信託にそぐわない部分が多々あるということから、また投信法上の開示と重複する部分も多いことから、投信法上の開示との関係を整理した上で、抜本的に見直すことが必要じゃないかと考えております。

次に、投資家がトータルリターンを把握できるように、投資家ごとに基準価額及び各投資信託への投資開始時からの累積配当・累積費用についての定期的な報告、通知の制度の導入という点がございましたけれども、この趣旨は十分に理解できます。

しかし、販売会社におきまして、こうした投資家ごとの累積配当・累積費用をまとめることは、システム投資負担が結構大きいものと考えられまして、費用が大きいからどうのということじゃなく、費用対効果の観点から十分に検証して、同様の効果を期待できる代替的な方法がないかの検討も行う必要があるのではないかと考えております。

あと、商品のリスクをわかりやすく表示する工夫が考えられないかということで、例えば海外の規制を参考に、各投資信託のボラティリティーを階級化するということが先ほどの事務局案で示されていましたけれども、運用会社には、投資家にファンドの商品性格やリスクについて、よりわかりやすく説明・開示する工夫が求められているものと考えております。

ただ、先ほど説明がありました海外の規制を参考に、過去のボラティリティーを階級化して表示することについては、一見、投資家にとってはわかりやすいもののように思えるんですけれども、あくまでも過去の実績に基づくものであって、かえって投資家の誤解を招くおそれもあり、導入するについては注意が必要ではないかと考えております。

例えば、市場の大きな変動とかボラティリティーの大きな変動が起こった際に、ボラティリティーの階級が変わることが考えられるんですけれども、例えばボラティリティーとして収益率の標準偏差、5年程度の移動平均を考えますと、2007年3月時点で、日本株については大体14.4%であったものが、2012年の2月末では20.2%に上昇している例もありますし、例えば先進国のリートなんか、これは円ベースで計算したものですけれども、同じ2007年の3月時点で12.4%であったものが、本年の2月末時点では30.0%と、2倍以上に上昇している例も見られます。

このように、当該資産を投資対象とするファンドの階級化の表記については、そうした数値が変動するということを十分ご理解の上、検討する必要があります。

したがって、こういう数字が変わることは、投資家に、最初に買った数字と実際が違うということで混乱が生じることも考えられる点も留意する必要があると思います。一般的な投資者の方々が商品のリスクをわかりやすく理解でき、かつ誤解を生じることのない表示であるべきと思いますので、そういう観点から慎重に検討する必要があるのではないかと思っております。

また、一般投資家に販売される投資信託のリスクについて、一定の制約を課すことの是非という話がございましたけれども、我々運用会社といたしましては、商品として当然リスクの低い商品からリスクの高い商品まで、多種多様なリスク・プロファイルの商品を投資家に提供し、投資家が年齢や資産状況や投資経験を踏まえて最適なポートフォリオを構築するために役立つというのが運用会社としての本分であると考えております。

したがいまして、リスク量につきましては、個々の投資家のポートフォリオ全体について、投資家が年齢や資産状況や投資経験を踏まえて、どの水準とするかということを必要に応じてコンサルテーション等を受けながら決定すべきもので、個別のファンドごとにリスク量を制限することは、必ずしも意味があることとは思えません。投資家による多様な投資機会を確保するとの観点からは、むしろ弊害をもたらすんじゃないかという懸念も考えられます。

あと、先ほど何人かの人がお話しになりましたけれども、外国籍投資信託の我が国への持ち込みについては、日本の投資信託における外国投信の組み入れについての規制を考える際には、やはり日本の投資家の投資機会を損なうことにならないよう配慮する必要があると考えております。

続いて、投資法人についてでございますけれども、投資法人については先ほど事務局のほうから話がありましたけれども、2000年の投資信託法改正で不動産への投資信託が認められ、翌年に第1号のファンドが登場し、2007年まで拡大してきました。2008年秋のリーマン・ショック後、銀行の投資法人に対する融資姿勢が慎重となって、新規の借り入ればかりか、リファイナンスも滞る状態となったのが実情でございます。

また、投資法人投資口の市場価格も大幅に値下がりしたことから、新株発行による市場からの資金調達が思うように行えなくなっております。投資法人は金融商品であるという理由から、事業会社には認められている資金調達手段のうち、ごく限られたたものしか認められておりません。

国民の投資法人に対する認知度もまだまだであり、今回、主な論点として掲げられた2つの論点、資金調達手段の多様化を含めた財務基盤の安定性の向上、あと、投資家からより信頼されるための運営や取引の透明性の確保等についてぜひご議論を進めていただき、特に新たな資本政策手段として、無償減資とか、自己投資口の取得、資金調達手段の多様化として、ライツオファリングについてはぜひ実現していただければと考えております。

最後に、長くなりましたけれども、投資信託・投資法人が国民の中核的資産運用手段として、多くの方々にご利用いただけるように、業界としてもできる限りの努力をする所存でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○神田座長

ありがとうございました。それでは石黒委員、お願いします。

○石黒委員

初回でございますので、感想めいたことを幾つか申し上げたいと思いますが、その前に、事務局からご説明いただいた資料で1点だけよくわからなかったのを教えていただければと思います。

資料4でございますけれども、これの9ページの左下の運用報告書を読まなかった方の読まなかった理由というところで、ちょっと目を引いたのは、「難しそうだったので」というのが一番左がどんどん減ってきていて、平成23年50.9%というのが突出していて、つながりがよくわからないんですが、右から3つ目の「発行されていることも知らなかった」というのがなくなっちゃったりしていて、これは非常に目を引く統計だなと思ったんですが、これはどんなふうに受けとめていらっしゃいますでしょうか。

○横尾企画官

申し訳ございません。選択肢の不連続がございまして、平成22年までと、それから平成23年で答えの用意を変えていらっしゃいます。

○石黒委員

別の……、じゃ、1つの表にするべきものではなかったという。

○横尾企画官

ないですね。

○石黒委員

わかりました。

○横尾企画官

「参考」とそこに書いてありますのは、そういう意味でございます。

○石黒委員

そういうことですね。わかりました。

○横尾企画官

申し訳ございません、説明が不足しておりました。

○石黒委員

ありがとうございました。

それで、感想といたしまして、投信に関しましては、いろいろと問題点が指摘されていて、長期投資が少ないとか、配当利回りを過度に重視しているとか、商品組成の哲学に疑問がある、あるいは販売体制、対顧客への体制といったような、いろいろな問題点が指摘されていて、これはある意味では数が多過ぎるという現象にすべてつながってきているという気もいたしますが、これに対して、今回、制度的な対応をやることは極めて国民の資産運用の手段の多様化という意味でも、日本の活性化という意味でも必要だと思うんですけれども、そういった制度的対応はきちんとやっていく必要はございますが、制度的対応に加えてというのか、制度的対応の前にというのか、あるいはそれとともにというのか、やはりいずれも指摘されている問題のほとんどが適合性、あるいは説明義務、あるいはそれに対する監督というところにかなりかかってきていて、ハードの制度の問題と、それから現場で実際にどうやっているのかということ、ソフトの運用の問題というんでしょうか、そこの複合的な問題であって、制度的手当てだけですべてに対応しようと思うと、非常にヘビーデューティーな使えないものになってしまうおそれもあると感じております。

ですから、そこは制度的対応とともに、一層そのあたりのところは監督も含めてきちっとした対応をしていく、あるいはそういうソフト対応をきちんとすることを前提としたハードの制度づくりをしていくという視点が重要なのではないかと感じました。これは今後、一つ一つの論点をお話ししていくときにも出てくることかと感じております。

それから、外国投信につきましては、今回の論点整理では1カ所だけ外国投信に対する言及が、このペーパーの5ページの一番下のところにあり、これはリスク量の制限という文脈の中で、外国規制を参考にして、リスク量制限をすることが検討課題になりますねと。それを仮にやるとすれば、外国投信についても同レベルにするという文脈で読ませていただきました。

外国投信についてどういう考え方でやっていくのかというのは、非常に大きな問題だと思っておりまして、個別事項ごとに、今のようにリスク量の文脈ではどうなんだという個別事項に応じた吟味が必要になってくると思います。ただ基本的には、やはり日本にない商品性とか投資技術とか、そういったものに対するアクセスは、投資家にとっても意味のあることだと思いますので、ある程度設立国の絞り込みをする、いろいろなほかの観点で、金商法においても、最近例えば英文開示について、どういう規制のもとで、どういう絞り込みのもとで英文開示を認めるかとかいう形でそういう考え方が入ってきておりますけれども、投信を巡る規制体系として一定の合理的な制度的な保障がある国をどういう手法で選別し絞り込むか、技術論はございますけれども、ある程度投信設立国の絞り込みとセットにした上で、合理的な規制がある国の投信商品については、あまり日本の制度との類似性とか同一性というところを厳しく見るのではなくて、そのまま商品の魅力を損なわない形で受け入れていくという観点が基本的な観点として必要なのではないかと感じております。

投信につきましては、今回、大きく2つ、柔軟化ということと、それから適切な商品の一般投資家に対する供給の確保ということが示されていますけれども、これらは特に対立する2つのものではないと理解しておりまして、柔軟化等で、無駄なコストがあればそれを安くして、手数料を低くして投資をしやすく、増やしていくということで、そのあたりは業者、投資家両方がウィンウィンの関係でなければ、いずれにしても制度として、あるいは商品として長続きしましせんので、むしろ車の両輪であるということで、対立構造的に見るのではない視点で私は見ていきたいと思っております。

それから、投資法人に関しましては、大きく4つほど、あり得る論点として、資本政策、あるいは合併手続、ガバナンス、インサイダーというのを挙げていただいておりますけれども、いろいろなことが頭を去来するんですけれども、例えば資本政策、自己投資口の取得とかいうことに関しては、特にリートの関係では税の制度との折り合いをどういうふうにつけるのかということが非常に重要になってきますので、この辺、税を含めた形で制度づくりをきちんとやっていく必要があるということが1つと、それからガバナンスにしましてもインサイダーにしましても、いずれも総論としてはおそらくそんなに異論がないのではないかと私は個人的には想像しておりますけれども、それを実際にどういう具体的な手法でやるかというのは、相当難しい課題ではないかと思っております。

ガバナンスについても、一方では投資法人は単なるビークルであるということで、従業員も雇用できないのが現状ですが、ガバナンス充実のためにいくら制度的手当てをし、あるいは素晴らしい看板を掲げても、実際にだれがそれをやるんですかという問題にすぐ突き当たることもございますし、あるいは監督役員の欠格事由の拡張の問題なのかとか色々論点はあると思いますが、そういう概念的・制度的観点とともに、実効性を重視し、実際にワークするようなものを考えていかないといけないと思います。

あと、インサイダーについても、一定の規律は必要だと思うんですが、発想としては、株式会社に今適用されているようなインサイダー取引規制、これはそもそも黒沼先生のお説のように、個別の限定列挙型の規定ではなく、一般規定にすべきではないかというもともとの問題意識はございますけれども、それは別としても、株式会社に今適用されているようなものを横目に見ながら、それと同じものを入れる、あるいは同じ中でできないものをはねてそれ以外のものを残してやるという発想ではなくて、全く株式会社と投資法人は違う、そこの特性の違いに注目して、一から考えるべきであると、こちらの制度に似たようなものがあるから、それを借りて制度作りをするという発想ではなく、一から考えていかないと、過重な規制になってもいけないし、逆に規制すべき部分に穴があいてもいけないと思っておりまして、投資法人に関しては、ほんとの具体的な技術論のところを相当議論しないと最終的によい制度になかなかつなげていけないんじゃないかという感想を持ちました。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは清水委員、お願いします。

○清水委員

会計士個人としての意見で述べさせていただきたいと思います。

まず、総論的なものでございますが、日本で個人の方が1,400兆、1,500兆の金融資産を持っていて、その中で諸外国、米国ですとか欧州に比べますと、非常に投資信託の割合がまだまだ低いということがあると思います。今回の目標が、国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備と記載されていますが、やはり健全な投資信託制度というものを発展させていかないと、こういったことは達成できないんじゃないかと個人的には思っています。そのときに、投資信託に関係する運用会社・金融機関の健全な発展がないと、投資信託制度もなかなか発展していかないんじゃないかと個人的には考えています。

その中で、ファンドの合併という話が出てまいりましたが、1つの例として、海外の会計士と意見交換していますと、小さくなってしまったファンドにつきましては、ほんとうはコストがたくさんかかっているので、リターンはマイナスになってしまっているので、投資家のために、フィデューシャリー・デューティのためにあえて解散をしたり、合併させるのが自分たちの義務なんだとおっしゃるんです。ですから、規制も重要だと思うんですけれども、例えば、過度な事務負担が増えているような状況の中では、なかなか投信の全体としてのパイが広がっていかないんじゃないかと個人的には考えております。

それから、投資家として考えますと、今現在はご年配の方の投資家が多くて、その中で、これは個人的な感想ですけれども、若干複雑で、理解が困難な商品が多いのではないかと感じています。投信協会様からは、それは運用会社様の問題ではなくて販売会社様の問題だというご指摘でございますが、これも個人的なコメントとして、実際に販売されている方がほんとうに複雑な商品を理解して、かつ投資家の方も理解して買っているのか、という疑問はございます。

この問題は多分、投資信託を販売している金融機関でも認識されていて、長年、販売員の方の教育とかを進めてきていらっしゃると思いますが、この二、三年の中で売られた商品が、ほんとに投資家の方にきちんと説明されて、投資家の方に理解してもらって購入されてたのかというと、問題は残ると思います。そのときに、これもまた個人的な意見ですけれども、いろいろな厳しい法律ですとか法令を作って管理しようとすると、紙のチェックリストが増えて、実際に私が買おうとすると何枚もサインさせられて、それも何か形式的なもののような気がします。ほんとうにさらに厳しい法令を制定すればこの問題が解決するのか、考える必要があると思います。どうやって業界全体の水準といいますか、販売員の方がほんとに投資家の方に説明をして売っていくような体制に全体としてもっていくことが課題ではないかと個人的には思っています。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、どうぞ、井潟委員。

○井潟委員

事務局による大変わかりやすい論点の整理、大変ありがとうございました。参考になりました。

私は、法律の大家の先生方の中で、やや経済系というか、ビジネス系の研究者だということもありまして、そういう観点から少しお話ししたいと思います。まず、アプローチについて共有したい点についてです。資料5の2ページで先ほど事務局のほうからも言及がありましたが、「小額投資でも分散投資が可能であるとともに」という投資信託の特性、こういう特性を踏まえた上で、「一般国民が効率的・安定的に資産形成を行うための金融商品として今後一層重要」とありますが、この今後一層重要という点は、おそらく過去にないくらいで重要性が増しているはずではないでしょうか。

そういう意味において、この議論においても投資信託を、先ほど清水先生からもお話がございましたが、どうやって育んでいくのか、発展させていくのかという点は、ほんとうに、ここで書き切れないくらいの非常に喫緊の課題になっているんじゃないか、そういう観点が、制度や法規制を議論する中でも、常に念頭に置かなきゃいけないんじゃないかと思っております。

と言うのは、これはもう言い古されていることですし、どこでも出ている言葉ですが、この国の史上空前の少子高齢化、人口減少のもとで、賦課方式に基づく社会保障制度の維持は、巷で思われている以上に、おそらく相当今後も動揺を続ける可能性が極めて高いわけですし、財政の観点からも、支出項目としての一番大きい社会保障の、いわゆる削減といったものについての検討が長期間にわたって続く。これは一般国民の目から見ると、年金や教育や医療といったものについて、自分で何とかしていかなきゃいけないという、ほんとうの意味での、戦後初めてだと思いますが、運用ニーズの高まりに、一部の人だけではなくて、広く国民全体が直面していることを意味します

ただ、一方で、同じ少子高齢化、人口減少という背景のもとで、国の経済の成長といったものについてはあまり期待しにくくなっている。どうしてもアジアを中心とした海外の成長をどういう形で果実として取り入れていくのかという、もう一つの背景もある。結局、広く一般国民が老後や医療、教育などにできるだけ早い段階から、自助努力、つまり、自ら備えようとする場合に、こうした海外で活躍する日本企業とか、あるいは海外企業そのものへの投資といったものを自分の資産規模、リスク許容度、あるいは時間軸に応じて行っていかなくてはならいないという、この作業の不可欠さがほんとうに高まってきている。我々の両親の世代などは及びもつかないくらいの考えが非常に高まってきている。

このことはまたマクロ経済的には、貿易収支の赤字定着化がいよいよ予想されるもとで、先ほどもありましたが、個人金融資産の海外証券投資の拡大を通じて、所得収支の黒字化を定着、あるいは増大させて、経常収支の安定化を図っていくことにも直結するという点で、これまた非常に重要になっている。

そういう意味で、このワーキング・グループでの投資信託をめぐる法規制のあり方についての議論も、広く一般国民にとって身近どころか、大なり小なり不可欠になってきている投資を実現する最も有効な機能として投資信託を発展させていくという観点でのアプローチが、日本が初めて直面する課題への対応策という点でも必要不可欠じゃないか。こういうことを法規制、細かいところをいろいろ議論していくわけですけれども、常に念頭に置く必要があるのではないのかと。投資信託に対する見方を、少し金融の機能という点で変えていかなきゃいけないという局面での今回のワーキング・グループじゃないかと思っています。

あと、論点については、今後いろいろ議論するので、あまり細かいことを今日は申し上げませんが、幾つか、特に今の時点で少し気になっているところとしては、1つ目はトータルリターンの関連情報を定期的に通知してはどうかというところがございます。投資家向けに必要な情報をわかりやすい形で提供することは大切なことで、この実現は非常に重要なのかと思いますが、その際、どういう情報を提供するかという中身だけではなく、例えばインターネットの活用なんかも含めた情報の提供の仕方というんですか、そういうことについても議論するのが望ましいんじゃないかと思っています。効率的な情報提供については、何でも紙かということもありますし、効率的な手段というものは、最終的には投資家負担の軽減、あるいは投資家の利便性向上にもつながってくるという点で大事かと思っています。

あと、2つ目としては、海外の規制を参考に各投資信託のボラティリティーを階級化して表示ということで、これは海外の規制、特にUCITSの同様の規制のことを指していると理解して、少し調べてみたんですが、十分じゃないんですけれども私が今の段階で調べた限りでは、UCITSにおいても、まだ実施のデッドラインが来ていないということもあって、全面的な取り組みが始まっていないんじゃないかという印象でした。したがって、現地での評価も定まっていないという印象です。

既に表示を始めているファンドの目論見書も、実際、インターネットで手に入りますので、その表示も見てみたんですが、非常に確かにきれいで、あっちは7段階だったと思いますが、シンプルでわかりやすいと感じる一方で、ただこれを当てはめるとなると、例えば運用対象や運用方法がお互いに異なっていて、本来は単純には比較しにくいものが、何かこれを見ると簡単に比較し切っちゃった、比較できちゃった、比べ終わっちゃったという気持ちになってしまいはしないか。自己責任原則にのっとって、詳しく商品の中身について比較する、調べるという姿勢との関係が、これを導入するかどうかという点では重要じゃないかと思いました。

あと最後に、リスク量の制限を投資信託にという点ですが、これは私ももっとちゃんと調べますが、知り得る限り、非常に投資信託が発達しているオーストラリア、あるいはアメリカ、欧州の一部の国々で同様の、こういうリスク量での制限はなかったような気がしています。そことの兼ね合いといったことについても確認しながら進める必要があるんじゃないかと思いました。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。吉野先生、どうぞ。

○吉野金融審議会座長

私から、少し経済学の立場からお話しさせていただきたいと思います。

日本のこれまでのパフォーマンスがあんまりよくないということは皆さんおっしゃっていると思うんですけれども、私がちょうどアメリカにいるときに初めてMMFができまして、そのときはみんな預金金利のほうが低くてMMFに移っていったわけですが、それもやっぱりアメリカの景気がすごくよかったですから、パフォーマンスがよかったわけですけれども、日本の場合ですと、国内の景気がこの20年間悪いわけですから、そうすると、いくら投資信託で国内で運用していても、預金以上の金利ができるわけないわけです。ということは、国内だけでやっていたらいけないわけです。

じゃ、それで海外の高い金利を目指してやるとしますと、経済学の理論で、Interest rate parity、いわゆる金利平価説があるわけです。そうすると、金融市場が完全であれば、高い金利のところにいけば為替レートが調節しますから、結局得はできない。そうすると、じゃ、どこが必要かというと、個別の商品で、それぞれの国で、個別の商品を選んで、そこで高いものを選べなかったら、やっぱりリターンが出ないわけです。そうしますと資産運用会社の側で、日本の場合、そこまできちんとミクロまで見てやっていけるかどうかということが、今後、投信の勝負じゃないかと思うんです。

それから2番目は、大きな経済ショックがこれまでこの10年間、たくさん起こってきているんですけれども、その大きなショックを事前に把握できるかということなんです。イギリスのバッキンガム宮殿のすぐそばに構えているヘッジファンドの社長にお目にかかる機会がありました。サブプライムローンの直後にお会いしまして、「あなたのところはどうしてそんなにうまくいっているんだ」と言いますと、「吉野さん、ファイナンスの理論だけじゃないんだ。ファイナンスの理論というのは、ある程度のノーマルな動きのときは役立つけれども、政治が大きく動いたり、大きなショックのときは絶対役立たない」と。「あなたたちはどうしてそこがわかるんですか」と言うと、彼らは全世界にネットワークを持っているんですね。彼らが言うには、2カ月前にサブプライムローンで全部売り抜いていると言うんです、

だから、そういうすごい情報を持った人たちがいて、ですからやっぱり日本の運用会社もそういうところのグループに入って、そういう運用ができないと、なかなか収益を稼ぐことができないと思います。そういう意味では、政治経済学まで考えた、情報をちゃんと持っているかどうかということがもう一つ必要で、我々大学ではいろいろファイナンスの理論とか、みんな金融をやっているのですが、それだけでは、足りないというのが2番目です。

それから最後は、販売会社の目的関数と投資家の目的関数が違っているから、こういうことが起こるんではないか。販売会社は手数料最大化を目指しているわけです。それはそのとおりでありまして、個人は自分の収益が一番最大になるように目指しているわけですから、そうすると我々経済学者のやり方としては、両方の目的関数が一致するような手数料なりの体系を構築しない限り、運用会社と個人投資家の目的関数が違うわけですから、投資家が満足する運用結果が得られない可能性が出てくると思います。

そういう意味では、いろいろここで法律を考えて、制度を考えていただくときに、やっぱり経済メカニズムでその方向に動くようなやり方を考えませんと、いつまでたっても同じ問題が起こるような気がいたしました。

○神田座長

どうも大変ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。沖本委員、お願いします。

○沖本委員

私から1点だけ意見を述べさせていただきたいんですけれども、一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保等の2番目に、各投資信託が抱えるリスク量を制限することが考えられるという論点が挙げられているんですけれども、その前提といたしまして、各投資信託のリスク管理がどれぐらいきちんとなされているのかというのを、監督といいますか、把握する必要があると感じております。

といいますのも、私は金融市場の分析を中心にやっておりまして、例えば日経平均のバリュー・アット・リスクを正確に計算しようと思うと、たくさんのモデルを推定して、いろいろ比較をした上で、一番よさそうなモデルを使って数字を出してくるということをしないといけないと思うんですけれども、それをするのはかなり大変なことだと思っています。

しかしながら、現在の投資信託の状況を見てみますと、数々の投資信託がつくり上げられておりまして、その一つ一つにそのような作業がほんとうに行われているのかどうかというと、甚だ怪しいのではないかと思っております。ましてや、アクティブ運用のタイプの投資信託ですと、頻繁に銘柄の入れかえのようなことも行われますので、そこら辺のリスク管理がきちんとされているかどうかということを監督することも重要なのかと考えております。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、不動産証券化協会、お願いします。

○不動産証券化協会(巻島オブザーバー)

2点、投資法人について申し上げさせていただきたいと思います。

1点目は、先ほどご説明のありました資金調達手段の多様化を含めた財務基盤の安定性向上につきましてであります。有効だと考え、ぜひ実現をお願いしたいということであります。

2点目でございますけれども、事務局からの説明にはありませんでしたけれども、投資法人による海外不動産等の取得についてであります。我が国の持続的成長のためにも、東京市場が内向きの市場から脱却し、国際金融センターとして多様な内外の投資機会を提供することが望まれているところであります。

Jリートにおきましても、多くの海外のリート制度のように、海外不動産を組み入れることができるようにすべきという考えから、2008年に東証の上場規則が改定され、国土交通省の海外投資不動産鑑定評価ガイドラインが策定されました。しかし、残念なことに、Jリートの海外不動産投資はいまだに進展しておりません。ニーズがないわけではありません。理由は、Jリートが海外不動産を取得する際には、リスクマネジメント等の観点からだと思いますけれども、直接不動産を取得することはほとんどなく、外国のSPC等の出資を通じた間接取得が想定されております。この場合に、租税特別措置法や投信法上の出資制限等が支障となっておるからであります。

ぜひ、今回のこの席でも取り上げていただきまして、投資法人の海外不動産投資が可能となるよう、お願いしたいと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。信託協会、どうぞ。

○信託協会(笠原オブザーバー)

信託協会から参加させていただいております笠原と申します。

契約型投資信託における受託者の立場は、資料の中にもあるとおり、本来委託会社から運用指図をいただいて、有価証券等の保管・分別管理などの機能を求められているわけですが、今回の議論の俎上に上がっております「国際的な規制の動向等を踏まえた規制の柔軟化」という観点で、受託者としてもう少しできることはないか、すなわち商品性の向上、ひいては何か受益者のお役に立つようなことができないかという観点で考えているところでございます。先ほど井潟委員から言及されましたUCITSでの実例などを踏まえまして、1点、問題提起させていただきたいと思います。

かねて申し上げてきたところではありますが、現行の投信法では、受託者は投信委託会社から運用委託を受けることができないという仕組みになっております。すなわち、委託会社から個別の指図をいただかない限り、信託財産の余資運用やレンディングなどを行うことができず、結果的に収益機会を逃しているのではないかと考えております。

資料の中にありますUCITSファンドでは、ファンド管理会社とカストディアン(資産保管者)がレンディング契約などを結び、カストディアン側でレンディングを行っている実態があります。

私ども信託銀行では、多数の機関投資家から信託財産の管理・運用を委託されているわけですが、これらの業務を通じてレンディングに関するノウハウをかなり蓄積してきているという自負もございます。本邦の投信におきましても、運用委託を受けた受託者が裁量でレンディングなどができるようになりますと、委託会社にとっては効率化、すなわち具体的には、レンディング先の信用リスク管理等の負担軽減が図られ、受益者にとっても収益性向上という点で貢献できるのではないかと考えております。以上、問題提起ということで、申し上げさせていただきました。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、村木委員。

○村木委員

今後の議論で考慮していただきたい点として4つ、簡単に申し上げたいと思います。

まずは、規模と効率化というバランスでして、投資信託の手数料率、効率性が低いというのは諸外国と比較してよく指摘をされるところですが、その要因は投信のマーケット自体が小さいという全体としての規模の小ささに起因する部分と、もう一つは過去の販売手法等の問題もあり、先ほどから何点かご指摘出ていますが、小規模なファンドが乱立をしているといった構造の二面があるかと思います。これがファンドのM&A等を通じて、ある程度2点目について効率化ができたとしても、果たして海外、マーケットの非常に大きいアメリカのような低コストな投信マーケットにたどり着けるかというと、そこにはまだ相当大きなギャップがあるのではないかと考えています。

2点目がガバナンスでして、投資法人とスポンサーの関係については指摘が出ていますが、一方で投資信託の運用会社と強力な販売力を持っている販社との関係自体が、果たして健全なのかどうか。マーケットであったり、投資家はこういった利益相反を非常に嫌いますので、これが成長の阻害要因になっているのであれば、軽減をするようなことが可能かという点が2点目です。

3点目は、投資家のニーズとリテラシーでして、アンケートの結果にもございましたが、給与所得者が資産形成のために投信を買うケースと、シニア層が分配金を目的に投信を買うケースでは、かなりニーズには開きがあり、果たしてそのニーズの違いに沿った商品の販売、提供が今行われているのかというあたりも検討する必要があると思います。

4点目はリスクでして、例えばブラジルレアル建てで欧米の銀行の社債に投資をするようなファンドが持つ複合リスクであったり、あるいはレバレッジをかけている投資法人が、銀行が貸し出しスタンスを変えたときに、どのような株価の変動が起きるかといったような複合リスクは、プロから見ても非常に計量化が困難な商品が出てきていると考えられます。

業者と投資家の間での情報の非対称性が、従来の伝統的な投信に比べると大きくなっていると考えられますが、法制度でどこまで縛るのか。自主規制でやれる部分、あるいはディスクロージャーの充実によって対応できる部分もあるかと思います。あるいはそこはあるべき論になるのかもしれないですが、リテラシーが向上すれば、そういったハイリスクな商品が市場に存在したとしても、それを理解した人しか投資をしないということであれば、必ずしも排除すべき商品ではないとも考えられますので、規制のかけ方、段階としてどういった水準が適切なのかというのを、ここで私も別に明確なオピニオンを持っているわけではないですが、ぜひ今後の議論で深めていきたいと思っております。

○神田座長

どうも大変ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

私も1点だけ、すみません、昔話をさせていただければと思います。皆様方と比べると大分年をとっているものですから。私もこの分野は今後、日本にとってますます発展してほしいし、健全な発展をしていただきたいという思いでここに座らせていただいているのですけれども、90年代にこの分野は、やはり同じように、今後発展しなければいけないという議論をしました。市場型間接金融という言葉を使っていたかどうかわかりませんけれども、90年代に議論したときと比べると、隔世の感があるなと思います。それまでの日本の証券投資信託といいますと、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私の同僚の経済学部の先生が、自分は株式を投資してきたことはあるけれども、投信を好んで買ったことはない。株式で利益を上げると、もうけさせてもらった営業マンの方のためにおつき合いで投信を一部買っていたとおっしゃって、そのご発言が議事録にも残っていると思います。

当時はそういう時代でして、投資信託の商品性というのも、預貯金並びでつくられていましたので、日本での特徴はまず単位型でした。それで本数がやたらに多い。また、2年のクローズド期間というのがありまして、先ほどのような状況で売っていたものですから、クローズド期間が満了すると、もう解約が殺到するという世界だったのです。

とにかくそれでは投信らしくない投信であって、やはりこの分野は、当時ですけれども、今後変えていかなければいけないという議論をしました。当時はまた、投信法の世界の中で情報開示もしていました。海外の投信だけは、先ほど石黒先生からご指摘ありましたけれども、OECD加盟国という限定をつけていまして、海外ものは仕組み規制というか、当時の約款の個別承認制かかりませんでしたので、そういう限定をつけた上で、売るときは証券取引法の世界で開示していたという世界でした。

でも、いずれにしても、投信らしい投信にしていきましょうということで非常に議論をしまして、その結果が今日あるのですけれども、その後はいいますと、その当時はせいぜい30兆円から40兆円という感じだったんですけれども、それが今100兆円であり、それから商品性も、昔の単位型、2年のクローズド期間というものではなくなりまして、随分さま変わりしたと感じます。そういう意味では投信らしい投信に、かなりステップアップしたと思います。しかし、皆様方から見ると、やはり今日の投信は十分でない、もっと発展しなければいけない。全くそのとおりだと思います。おそらく制度ということでいいますと、過不足があるということだと思います。今後のご議論の中で、過の部分は減らさなければいけませんし、不足の部分は補わなければいけないということであると思います。本日は非常に多様なご意見をいただきましたので、さらにいろいろな角度から現在の制度の過不足の点検をしていただいて、このワーキング・グループでいい議論ができればと思います。

ちょっと余計な昔話をして恐縮でしたけれども、ほかにいかがでございましょうか。また若干時間はありますけれども。よろしいでしょうか。

そうしましたら、本日は皆様方からいろいろな角度から大変活発かつ多様なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

今後のことを考えますと、来月から月2回という大変ハイペースで皆様方におつき合いいただくのですけれども、それでもなお言い足りないとか、もっとこういうことが言いたいということがあると思いますので、ご意見あるいはご質問がございましたら、この会の外でもというか、随時事務局のほうにお電話、電子メールその他で、お寄せいただけませんでしょうか。そういうことをすることによって、実際に物理的にお集まりいただくこの会合をさらに補完していきたいと思っております。ご意見等を随時、事務局にお寄せいただきますよう、お願いいたします。

それで、本日いただきましたご意見を踏まえまして、次回以降の具体的な検討に移りたいと思います。

次回は、事務局からの論点説明でもございましたけれども、個別の論点の検討をしていただくのに先立ちまして、投資信託の位置づけですとか、我が国の投資信託市場における運用会社、それから販売会社のあるべき姿につきまして、関係者の皆様方からプレゼンテーションをしていただき、ご審議をいただくということにさせていただきたいと思います。

それでは、最後になりましたが、事務局からご連絡等がございましたらお願いいたします。

○横尾企画官

次回のワーキング・グループの日程でございます。後日、事務局より詳細をご案内させていただきますけれども、4月6日ということで予定をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

事務局からは以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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