金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第5回)議事録

1.日時:

平成24年5月11日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○横尾企画官

皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。第5回会合の開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。まず事務局説明資料として横長の資料、それから事務局よりの参考資料がございます。そのほか、メンバーの名簿がございます。また、第1回のワーキング・グループ会合で、信託協会様よりご提言のありました規制改革策につきまして、今回具体的なご提言をいただいております。その資料をあわせて配付させていただいております。ご確認のほど、よろしくお願いします。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。

本日は、投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループの第5回目の会合になります。大変頻度が高くて、頻繁にお集まりいただきまして大変恐縮でございますけれども、皆様方には、いつもお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

本日ですけれども、お手元の議事次第にありますように、まず事務局から投資信託制度改革の方向性その2ということでございまして、一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保等に関する論点ということで、30分程度のご説明をいただきます。その後、そこでご説明いただきました論点につきまして、皆様方でご議論をいただくということで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですけれども、事務局からの説明をお願いいたします。

○横尾企画官

事務局の市場課企画官、横尾でございます。お手元の事務局説明資料に沿ってご説明さしあげたいと思います。

1枚おめくりいただきまして、資料の1ページ目でございますけれども、こちらは第1回の会合時に、今日のテーマであります、一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保ということに関しまして、提出させていただいた資料でございます。本日は、この資料で提示しました論点に基づきまして、次のページ、2ページ目にございます事項についてご説明させていただきます。大別いたしますと、1つは商品内容等への理解・関心を深める施策の充実ということでございます。それからもう1つの柱は、投資信託の仕組みの複雑化・リスクの複合化への対応という柱でございます。

それでは早速、1つ目の柱について説明させていただきます。資料の3ページ目でございます。こちらには現行の公募型投資信託の販売前後におきます情報提供制度の枠組みを記させていただいております。販売または公募時の情報提供制度ということでは、有価証券届出書の公衆縦覧、それから目論見書の交付、それから約款内容記載書面の受益者への交付といったことが整備されておりますが、この段階で手数料や信託報酬に関する説明を充実すべきではないかという論点を後ほどご説明させていただきます。

一方、販売後の情報提供制度といたしましては、有価証券報告書等の公衆縦覧あるいは運用報告書の受益者への交付、取引残高報告書の提供ということがございますけれども、この段階で、加えて運用報告書自体を改善すべきではないか、あるいはトータルリターン把握のために、通知制度というものが導入できないかという論点を後ほど説明させていただきます。

1枚おめくりいただきました資料4ページ目でございます。まず、第1点目の具体的施策として運用報告書の改善についてご説明さしあげます。まず現在の運用報告書について、よく言われます課題として、一番上に掲げておりますような4点あろうかと思います。1点目は、数字の列挙が多くて、記載内容もなかなか投資家には理解が困難ではないか。それから、原則として書面で交付する必要がございますので、コストの面で印刷や送付ということに費用がかかるということもあろうかと思います。また運用報告書自体が大部になる場合もあって、そういったときには運用状況を正しく把握するための情報の取捨選択ということが、なかなか投資家にできないのではないか。あるいは、投信法に基づく運用報告書、それから金商法に基づく有価証券報告書、こうしたものの位置づけがもう少し明確にならないかというご指摘等があろうかと思います。

こうした状況に対しまして、対応の方向性としては、運用状況等を正しく把握するために必要となる情報を、近年の電子的技術の進展も踏まえ、投資家にとってわかりやすい形で、しかも適正なコストで提供できるような、そういった制度を考えていくべきではないかという方向性かと思います。

具体的な検討の方向性としては、大きく2つの柱を考えられるかと思います。1点目は、運用報告書の記載事項の見直しということでございます。投資家が運用状況を正しく把握するために必要となる情報は何かということを抽出した上で、制度として構築する際には、現在のところ府令や監督指針、それから自主規制ということで、いろいろなレベルで記載事項が規定されておりますけれども、先ほど申し上げた、抽出した事項をどの規範で規定すべきかというような観点から、記載事項を見直してはどうかと考えられます。

この際、前回の議論でもご指摘ございましたけれども、分厚くて、だれも読まない上にコストもかかるということで、簡単に短くしようという発想ではなくて、やはり投資家が理解しやすいように配慮した表示とするにはどうしたらいいかということかと思います。そういった面も含めまして、制度改正の一定期間後にフォローアップをするということも考えられるかと思います。

それから留意点でございますけれども、こちらは課題のところに掲げました有価証券報告書との関係についてでございます。次のページに参考としていろいろ記載させていただいておりますけれども、有価証券報告書と運用報告書、それぞれ固有の性格や位置づけ、さらには、それに応じた記載内容というものがあるわけなのですけれども、それを踏まえますと、両報告書を単純に統合するということは、なかなか困難ではないかと考えております。

他方で、記載事項については、運用報告書における運用状況の開示に比べまして、有報の開示というのは相当簡素化も進んでいるとも認識しておりまして、しかしながら、さらに工夫すべき点があれば、そういったことに取り組んでいかなければならないと考えておる次第でございます。

次に2つ目の柱、すみません、資料の4ページ目にちょっと戻っていただきまして、2つ目の柱、箱の右側、運用報告書の二段階化ということでございます。こちらは、現在目論見書において実施されていますように、運用状況等に関する極めて重要な事項について記載した交付運用報告書、それと、より詳細な運用状況を記載した縦覧運用報告書というふうに二段階化してはどうかというものでございます。さらにその上で提供方法につきましても、交付のものについては原則として紙ベースとする一方で、縦覧用のものはホームページに掲載ということで対応するということにしてはどうかと考えております。

この点に関しましては、留意点にも書いておりますが、投資信託の保有者は、なかなかインターネットを常用というわけにはいかない高齢者も多いということも踏まえなければならないと思いますし、他方で、投資家から請求があった場合、すべて紙ベースで交付を義務づけるとなると、結局その備えのためのコストというものもかかってしまうということで、この両者のバランスをどう考えるかということが1つ論点としてあろうかと思います。

それで、資料5ページは先ほどご説明さしあげました制度の違いで、後刻ご参照いただければと思います。

それから資料の6ページ目、トータルリターン把握のための定期的通知制度の導入ということでございまして、こちらは、いわゆる多頻度の分配型投信というものが昨今普及してきて、なかなかトータルリターンというものがわかりにくくなっているのではないかという問題意識の上で、ご提案さしあげているものでございます。現状でも分配金が発生した場合には、資料の上のほうにありますような投資家のほうに販売会社から幾ら分配金があったという通知は行くようになってございます。ただし、期中のフローのみの記載でございますので、なかなか投資期間全体にわたるリターンというものは、投資家がこういった書類を集めてみずから計算しない限りはわかりにくい。

さらに信託報酬については、もちろん目論見書等で購入時には説明されておるのですが、実際どれぐらい支払っているのか、徴収されているのかということは、こういった通知でも出てきませんので、投資家の負担感というものが希薄でないかということも言えるかと思います。

以上を踏まえまして、トータルリターンを把握できるような何らかの、例えば基準価額とか累積の配当・費用といったものを記載したような通知制度というものが考えられないかと提案させていただいているわけでございます。

本件につきましては、検討を進めるについても、いろいろ課題があると思っております。1つ目は、例えばシステム対応・体制整備といったような相応のコストがかかりますので、進めるにしても、運用会社であるとか、あるいは証券会社といった実務界の皆さんの意見も聞いて、実現可能性についてさらに検証する必要があると思っております。特に大手の販売会社だけでなくて、中小やその他金融機関がついてこられるかどうか、体制整備が可能かといったことを検証しなければいけないと思っております。

さらに制度導入となりますと、法制度上の通知義務者というものをだれとすべきかということも難しい問題かと思っております。ちょっと小さい字で書いておりますけれども、制度上各投資家の金銭の運用の受託というのは、もちろん運用会社でございますし、配当額の決定、信託報酬の受領ということも運用会社でございますので、実務的には販売会社にこれにかかる業務を委託するということが前提であったとしても、法制上の義務となりますと、運用会社の義務とすることが一番自然とも考えられるわけなのですが、他方で、運用会社の立場に立ちますと、信託財産全体の管理については、その責任が負えるとしても、なかなか個々の投資家の得失についてまで、承知、認識するということは難しいので、むしろこれは販売後のアフターフォローの観点から、顧客管理の問題としてとらえるべきではないかという意見もございます。

そのほかテクニカルな問題といたしましては、どこまでデータをさかのぼって計算するかということがあろうかと思います。なかなかほんとうに買った最初からとなりますと、データの現存可能性ということも検討しなければなりませんし、他方で、割り切ってしまって、制度導入からの計算ということもいいのか、悪いのか検討する必要があるかと思います。

それから資料7ページ、次の情報提供制度の施策の1つでございますけれども、販売手数料それから信託報酬に関する説明の充実ということでございます。既に現在でも目論見書において、こうした手数料については開示されておりまして、特に信託報酬ついては3つの関係会社間の配分というところまでも開示されているわけなのですけれども、ここでの問題意識といいますのは、何のためにその手数料が徴収されているかという意識が投資家に希薄ではないかということでございます。単に目論見書に記載しているというだけでなくて、その手数料の徴収によって、投資家に対してどのようなサービスが提供されるかということをもっと説明するべきではないかということでございます。

この点について、前回の会合で一部のメンバーの方より、手数料の「使途」の説明ということを事務局は提案しているのだけれども、それは手数料水準がコストの積み上げにマークアップして決められているというような、何だか誤解のもとに考えられているのではないかというご指摘もございました。その点、「使途」という言葉を前回まで使っておりましたので、やや私どもの提案した意義というものが十分伝わらなかったと反省しております。必ずしも手数料をどのような経費に支弁しているかという、何だか費用の明細を明らかにするということを目的にしているというよりも、むしろ「どのようなサービスの対価として払っている手数料なのか」、言い方を変えると、その支払いによってどのようなサービスを享受できるのかということの投資家の理解が必要ではないかということを問題意識としては持っております。そういう説明によりまして、一般消費者という立場では非常にコスト意識が高いと思われます我が国の投資家、これらの方々の選別眼がより強化され、競争の促進が期待できるのではないかと、そういった問題意識を持っておる次第でございます。

次に資料の8ページ目でございます。これまで情報の提供ということでいろいろご説明をさしあげてきましたが、ここからは投資信託の仕組みの複雑化やリスクの複合化にどう対応していくべきかということについての考えを幾つかご紹介させていただければと思います。8ページ目真ん中にありますように、当然でございますがリスクはリターンの源泉ということは普遍の命題としてあろうかと思います。そのもとで、現在の我が国の投信市場の構造といたしまして、前回までいろいろご議論の中で出てきましたのは、昨今の低金利や株安、そういった中で投資家のリターン追求という姿勢が鮮明になってきており、供給サイドは、これに応じた形で商品開発を進めているという状況かと思います。

そうした中で、リターンを上げるために投資信託の仕組みの複雑化、あるいはリスクの複合化というものが進展してきているのではないか、こういった現状認識は、本ワーキングでも幾分共有されているのではないかと考えます。

他方、業界や委員の一部の方々からのご意見としては、そもそもこうした状況というのは、投資家ニーズが具現されている結果であって、拙速な規制による対応は慎むべきというようなご意見もあったように拝察しております。また、投資家の選別にさらされるという、その自由競争によって一定な合理的な均衡がもたらされるのであって、過度な規制というものは不要ではないかというご意見もあったかと思っております。

この点につきましていろいろ考えてみますと、競争原理で合理的な均衡を達成するというには、市場における各プレーヤーが十分な情報を有しているということが前提かと思います。特に昨今の投資信託の複雑化やリスクの複合化といった機能の高度化が進展している状況を考えますと、どうしても投資家と供給サイドの情報の非対称性が大きくなりやすいのではないか。こうしたことを是正する必要があるのではないかと考えております。

こうしたことから、図の上段にございますように、適合性の原則、それからその適用の際に商品内容・リスクに関する情報提供、こうしたことをもとにした投資家による選別というプロセスを強化していくために、上段左側にありますように、販売・勧誘時のリスク説明を一層充実していく必要があると考えておる次第でございます。

具体策としては、情報提供ということでは、資料の前半で説明しましたような事項に加えまして、複合化するリスクへの対応ということで、どんなことが考えられるか、事務局よりも幾つかアイデアを示させていただきますので、皆様のご議論をいただきたいと思っております。

もう1つの方向性としましては、すみません、また資料8ページ目の下段を説明させていただきますけれども、投資家のリターン追求と、それに応じた商品開発というところに、パターナリスティックにある程度の制約を課していくということも考えられるのではないかということでございます。ワーキング・グループの中では、こういったことについては慎重なご意見も多くあったと拝察しておりますけれども、先ほど申し上げましたように、我が国の投資信託が発展する上では、国内市場の低成長といったものを前提としますと、ある程度の高機能化というものは避けて通れないと思いますし、そういった点において適合性の原則が重要であるということも変わらないと思いますけれども、そういった中で、適合性の原則の執行の局面にだけプレッシャーを与え続けていくということが、今後の投資信託商品の機能の高度化という中で、持続可能かどうかということも考えていかなければならないと思いますし、あるいは、個々の運用会社のリスク管理も高度化する必要があると思いますし、それに応じた規制の高度化ということも必要ではないか。

そういったことを考えますと、商品開発のプロセスに一定程度制約をかけていくということも考えられるかと思っています。後ほどご説明しますが、しかしながら特定の投資信託の類型であるとか、仕組みといったものを規制するというよりも、例えば投資家が意図しないようなリスクというものが商品に内在していれば、そこに一定の制限をかけていくということで、あくまで商品組成の自由度は一定程度確保した上で、リテール商品としてのリスクのOBラインというものを決めていく、そういった試行も1つの方向性としてはあり得るかなと思っております。

資料の9ページ目でございます。今申し上げたような考え方のもと、施策を考えていくにあたって、そもそも今、リスクの状況がどうなっているかということを幾つか説明させていただきたいと思います。まず、資料の左側でございますけれども、これは現存する公募投信の月間リターンの標準偏差を運用年数ごとにプロットしたものでございます。我が国投信の場合、どうしても運用年数が短こうございますので、ビンテージの若いほうにたくさんのサンプルが並んでいるという状況になりますけれども、それでも非常にリターンの変動というものは多様なものがあろうかと思います。

右側のグラフでございますが、こちらは同様のデータを投資対象ごとに大まかに分類してプロットしたものでございまして、これを見ますと、ある類型の投資信託は、わりと別の類型に比べて変動が大きい、あるいは小さいという傾向が言えるかと思いますし、また同一の類型の中では、同じ類型といってもリターンの変動というものは非常にばらつきがあるとも言えるかと思います。

資料の10ページ目は、今申し上げたようなデータを、もう少し違う形でプロットしたものでございます。サンプル数の多い国内株式型、国際株式型、それから国際債券型といったような投資対象を持つ類型の投信のデータを集めてみました。縦軸には平均のリターン、横軸には月間リターンの標準偏差というものをプロットしてみたわけですけれども、大きくカテゴリーを横断的に見ますと、リスクとリターンが比例したような関係にあるようにも見えますし、他方で、1つのカテゴリーの中ではわりとリスク、リターンの関係は一意的には決まっていないというように見えるかと思います。

資料の11ページ目でございます。こちらは最近どういう投資信託が設定されているか、そしてどんな仕組みのものが出てきているかというものを幾つかご紹介するための資料でございます。上の表は、近年新たに設定された投資信託のカテゴリーのうち、残高の多いものを幾つか並べているものでございます。ごらんいただきますと、新興国の債券あるいは株式に投資する信託というものが、わりと最近上位を占めておりますし、それからアセットアロケーション型のような、一時期はやったようなものは、最近あまり設定されていないようでございます。それからヘッジファンド型のような投信というのも、最近徐々に新規設定されているというような状況かと思います。

今、申し上げましたようなカテゴリーの中で、特に残高の多いものとか、代表的なものを幾つか図示したものが11ページ目下段、それから12ページ目下段でございます。例えば新興国債券の投資信託となりますと、最終的な投資は幾つかファンドが重なった上で最後で行うわけですけれども、その途中の段階で通貨選択に対応するための外貨の取引とか、あるいはCDSのプロテクション売りといったようなデリバティブ取引を行ったりとか、さらには12ページ目、そのほかの投資信託の中では、最近はやっておりますのはハイイールド型という利回りの高い債券に投資する投資信託も多くございますけれども、最終的な投資というのは、利回りが高いということでございますので、格付で見るとどうしても低くなってしまわざるを得ない。BBBやBB、それからBといったような債券が中心に投資されるということかと思います。

それから真ん中は、海外不動産に投資するタイプでございますけれども、これはちょっとユニークな例としてリンク債と呼ばれる外国銀行の社債に投資するタイプを例示してみました。こちらは外国銀行の発行する社債のリターンがリートの指数であったり、それから外貨の先物取引の収益率に連動したり、あるいは一種のオプションのプレミアムが乗っていたりというような仕組み債的なものでございますけれども、こういったことに投資することによって、外国の不動産のリターンを得ていこうというものでございます。

それから一番下はヘッジファンド型ということでございまして、こちらはヘッジファンドという性格もあって、目論見書からどういう取引が行われているか、具体的にはなかなか把握もしにくいわけなのですが、よく多いのは、ここに書いてありますような割安のものを買って、割高のものを売っていく、そういったことをデリバティブを駆使してやっていくというような、ロングショート型と呼ばれるようなものが多いようでございます。

それで13ページ目、今申し上げましたようないろいろな投信が出てきている中で、どのような説明が行われているかということを、資料だけでございますけれども、取り出してみたものでございます。ここでは、通貨選択型でよく使われている資料を掲げさせていただいております。ここでは、ごらんいただくと損失の発生するメカニズムですとか、運用にあたってのリスクとか、非常に丁寧に、さらに図示を用いてわかりやすく説明を試みられていると認識しております。

ただし、損失の発生の可能性とか、あるいは元本保証でないということは丁寧に読めば理解できると思いますけれども、商品ごとの相対的なリスクの度合いというものがなかなか伝わりにくいのかなとも言えるかと思います。

そういったことも踏まえまして、資料の14ページでございますけれども、投資信託におけるリスクというものを、どのようにわかりやすく情報提供していくかといったことを、改めて検討していくということが必要ではないかということでございます。その検討にあたっての参考といいますか、ほかの国でどういったことをやっているかという1つの例でございますけれども、ヨーロッパにおいては基準価格の5年平均値からの変動率、これを7段階に階級表示しまして、わかりやすく投資家に提供しようという試みが始まっております。こちらはまだ全面導入には至っていないようでございまして、本年の夏ごろまでに、各国こういうことを進めていくということになっているようでございます。

ただ、これにはいろいろ慎重に考えるべきだという意見もございまして、例えば変動率というものは、どういう期間で計測するかということで非常に変わってきますので、そういったことを投資家が理解していないとトラブルになりやすいということもあろうかと思います。

また、階級値でわかりやすく説明しようとするあまり、そのほかの事項が見落とされがちになって、リテラシーの向上につながらないということもあろうかと思います。

それから、先ほど申し上げましたように、変動率がわりと変わりやすいということでありますと、それを一々投資家へ通知するですとか、説明するということでコンプライアンスコストがかかってしまうという面もあろうかと思います。

こうしたこともございますので、ほかにどのようなアイデアがあるか、あるいは視点があるかというものを、ぜひご議論いただきたいと思いますけれども、1つの参考としましても、下のボックスに書いてありますけれども、例えば店頭デリバティブの取引にあたっては、現在監督指針で「最悪シナリオを想定した想定最大損失額」、こういったものを提示するということになっております。これも例えばモデルのつくり方によって、投資家の誤解を招いたり、変動しやすいといった誤算もあろうかと思いますけれども、いずれにしても投資信託の商品性が高度化しているという中では、どういったリスクの説明の仕方が考えられるか、何か工夫の余地はないのかといったことをご議論いただければと思っております。

それから、今までもリスクの情報提供ということでいろいろ説明させていただきましたけれども、15ページ、16ページはリスク量を規制するということも考えられるのではないかといったことを説明させていただくための資料でございます。15ページにありますように、我が国の現行の制度におきましても、法令及び自主規制において、既に運用対象や手法に対して一定の規制というものがかかっております。そこに書いてありますように、例えば投資対象としては、そもそも開示の行われていない株式とか、そういったものは組み入れることはできませんし、あるいはMRFとかファンド・オブ・ファンズ、そういったものについては、一種の仕組みを規制しているという状況でございます。

また、デリバティブにつきましても、「発生し得る危険に対応する額」といったものが純資産を超えてはならないといったような規制が既に存在しているわけでございます。

諸外国を見てみますと、もう少しリテール向けには規制しているところがございまして、資料の16ページです。欧米では、市況により突然・非連続的に顕在化するたぐいのリスク、例えば信用リスクですとか、デリバティブのリスク、こういったものに対して一定の制限を課しているということでございます。例えば信用リスクにつきましては、集中回避のためにエクスポージャーの上限というものを決めておるようでございますし、デリバティブ取引に関しましても、一定量のリスク量の制限というものを課しているようでございます。

我が国におきましても、こういった非線形型のリスクにつきまして、特に一定の制限を課すということも考えられるのではないかということでございます。欧米の制度につきましては、参考資料にいろいろ書いておりますので、後刻ご参照いただければと思います。

あと、16ページ一番下のところ、外国投資信託についてですけれども、仮にこういった制度を導入するとなりますと、本制度の趣旨に合致する運用を行っている、そういったことを外国投資信託についても求める、そういった制限の上で持ち込みや、あるいは日本の投信への組み込みというものを認めていく、そういった投資者保護的な手当てというものも考えられるかと思います。

こういった方向性に対しまして、資料の17ページ、実務界ともいろいろ意見交換しておりますけれども、なかなか慎重なご意見もいただいているところでございます。例えば信用リスクの集中回避といったことのための投資制限につきましては、ちょっと字が小さいのですけれども、1銘柄当たりの集中投資というものが困難になる。それから欧米の発行体の格付がどんどん下がっていく中で、そこで分散しようとなると、例えば格付の低い取引先まで手を広げるということになって、ファンド自体のリスクが高まるですとか、それから、デリバティブやヘッジ取引のカウンターパーティについてまで分散が必要となりますと、せっかく最良のレートを出してくれたのに、その規制のために契約ができず、ほかの取引先となると、コスト増となりリターンが低下する、こういったことがご指摘いただく場合がございます。

こういったことに対しては、1つの考え方としては、同じように市場での運用を行っている機関投資家や金融機関、これのリスク管理というものを参考にするということは1つあろうかと思います。信用リスクやカウンターパーティリスクにリミットを設定してコントロールしている場合が多いわけですけれども、そういうことが投資信託になじむのかどうか、そういったことを考えていくべきかなと思います。

それから、先ほどリンク債を組み込んだ投資信託を紹介させていただきましたけれども、ああいったものが分散投資となると組成が困難になるというご指摘もいただいております。この点に関しましては、1つの考え方としては、投資家の立場からしますと、例えば先ほどの例では外国の不動産市場ですし、あるいは投資がなかなかしにくい新興国投資といったような、あるテーマについてのリスクを引き受けていると思ってご投資なさっているところ等が発行体の信用リスクも負うというふうになりますので、こういったことをどう考えるかという点はあるかと思います。

そのほか実務界からは、テクニカルにもファンド・オブ・ファンズの組成が困難になるとか、あるいは指数連動型の投資信託の組成はどうなるのかとか、それから特定の国債に投資するような投資信託、これはどうなるのかというようないろいろなご指摘をいただいておりますけれども、そこは欧米の例も参考にしながら、例えば例外とかそういうことも考えられるのではないかと思います。

また、下段のデリバティブリスクの規制につきましても、業界をはじめ実務界からは、そこに書いてありますような、現在もう既に規定があるとか、あるいは一律に高度化すると対応できない運用会社もあるといったようなご指摘もいただいておりますが、ここは最近の投資信託の機能の高度化ということを踏まえますと、リスクの計算方法とか、そういったことをもう少し精緻化していくという必要もあるのではないかと考えているところでございます。

駆け足になりましたが、事務局からの説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。大変盛りだくさんのご説明いただきましたけれども、大別して、目次というのでしょうか、資料でいいますと2ページ目にありますように2つの柱、第1の柱は、さらに3つの論点、第2の柱が2つの論点ですが、合計して5つについてご説明をいただいたということかと思います。

それで、今の事務局説明につきまして、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。やり方なのですけれど、ここ2回程度やっていますように、順番にまずは手短に言っていただいて、ただ一巡で終わってしまうと、ちょっと何か寂しいものですから、ぜひ二巡目、三巡目といきたいと思います。それで、お一人ずつ簡潔にといいますか、2分程度をめどにしていただくと、第二巡目にいけると思います。本日はあいうえお順でお願いいたします。井潟委員から、どうぞ。

○井潟委員

承知いたしました。大事な2つの柱について、非常に多くの論点を簡潔にまとめられて、事務局さんのほうは大変だったのではないかなと思います。

私から短く3点ほどです。まず6ページの、投資家がトータルリターンを把握できるよう投資家ごとに各投資信託の基準価額及び投資開始時からの累積配当・累積費用等についての定期的通知制度を検討してはどうかという、商品内容等への理解・関心を深めるための施策の充実についての具体論なのですが、これは私も初回のワーキング・グループでも申し上げたように、投資家向けに必要な情報がわかりやすい形で提供されるということは、非常に大切なことで、分配金、利回りの高さだけが強調されがちな現状が解消されていくというためにも、これはぜひ実現に向けて検討を進めていただきたいと思っています。

この制度導入が契機となって、トータルリターンという、これは日本ではまだまだなじみのない言葉だと思うのですが、この言葉が広く一般に普及していくということになれば、このワーキングでも何度か取り上げられてきた日本の一般国民の投資リテラシーの引き上げという課題の解決についても、おそらく副次的な効果としても大いに貢献するのではないかという期待も高まります。

というのは、私のこれまでの拙い経験ではありますが、米国の投資に関する入門書なども翻訳したことがありますけれども、例えば米国でよく読まれている女性向けの投資入門書で、投資信託のパフォーマンスとか、リターンの計測などという章では、トータルリターンというのが必ず真っ先に出てきています。ファンドの運用成績を明確に、あるいは正確に示す指標として必ず解説されているということもありますし、プロ向けの、企業年金の運用担当者向けの入門書を翻訳したこともございますが、その本では第1章第1節がトータルリターンという節になっている。その節の終わりの文章は、トータルリターンこそが投資についてのすべてなのだ、という終わり方をしているほどでございます。投資大国の米国でも投資リテラシーの基本中の基本とされるトータルリターンという考え方の普及が日本でも促されるということは、非常に投資信託の適切な普及という点においては不可欠ではないかと考えています。

ただ、トータルリターンの開示を、例えば法制化して表示方法まで固めてしまうのか、それとも自主ルールの下での業者間のサービス競争で強化促進していくのかということについては、同じ6ページの黄色い部分、先ほどご説明もありましたけれども、こういった課題などについて協会などと密にご検討いただければと思っています。できればこうした開示という作業でも、業者間のサービス競争が促されていくということは非常に大事ではないかと思っています。先ほど申し上げた米国でも、業者がお客様に対してどういう内容を、どういうふうに工夫してステートメントをつくるのかということ自体が、競争すべき対象として非常に重要なことになっているという点でも、我が国も今後注力していく分野ではないかと思っています。

あと簡単に2点ほどでございます。7ページでございます。販売手数料・信託報酬に関する説明ということでございます。これについては、確かに同じページの上段に示されているような水準の分類だけでは、左下にありますように、投資家はそれぞれの手数料がどんなサービスの対価であるか理解・納得しているだろうか、手数料に関する説明が不足しているのではないか、という懸念が出るのは当然ではないかと思っています。

そういう意味で、ご説明がありましたが、このページの右側の下にありますような、横尾企画官がおっしゃったようなこういう説明、それぞれの手数料がどういったサービスの対価であるかということについての記述説明が伴われるようになると、こういうサービスを私はちゃんと相応に受け取っていたっけ、という意識が高まって、有用なサービスや商品を提供する業者が一層生き残り、そうではない業者が淘汰されていくという競争プロセスというのが一層促進されるということが期待できると思っております。

あと、最後でございます。14ページになりますが、リスクについての投資家の理解を深めるための取組例ということでの変動率の部分です。これはページでいけば、ちょっと戻りますけれど11ページにございましたように、今後、例えば日本がこれまで以上に新興国などへの海外投資も拡大していかなければいけないという立場の国だということも考えると、複雑化・リスクの複合化といったものへの対応というものが求められていくことは否めませんので、そうしたもとで、14ページに事務局が示されているような投資家に商品のリスクについて、よりわかりやすく情報提供する方策を検討してはどうかというのは重要な検討事項になると思っていますが、やはり同じページの中段に記載されているデメリット、これがやはり気になるところで、わかりやすさという単純化と、より詳細ということを詰めていく正確さとのバランスを、どこにどう線を引いていくかという、ここの実務的な点の詰め方というのが非常に重要になってくると思います。

この点について、やはり導入を検討する場合は、投資信託の製造と販売を行う両業者、それと品質保証的に受けとめられないことから生じるトラブル防止という点での法律家の意見、それと方法論としては定量的な分析が必要になってくるという意味での金融工学系の研究者の方からの、こういった各方面の研究者、あるいは専門家の方からのお知恵をおかりするということが、どうしても不可欠になるのではないかと考えております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは石黒委員、いかがでしょうか。

○石黒委員

ありがとうございます。

運用報告書を交付分と縦覧分に分けるという部分で、これは実務負担を軽減できるのであれば結構だと思いますが、それに加えて、何らかの形で運用報告書と有価証券報告書を統合してはどうかという部分については、両者で罰則も大きく異なりますので、有価証券報告書に寄せるとすると規制の厳格化となり、運用報告書のほうに統合すると規律が緩くなるという問題もございますし、あとは報告期間の違いもある、すなわち、財務諸表の入る関係で有価証券報告書については3カ月の猶予期間があるという、そのあたりがどうかというようないろいろな問題があるので、やはり単純な統合は、事務局のおまとめのように、なかなか難しいと思っております。

ボラティリティについては、これまでの会議でもさまざまな委員の方からたくさんのコメントが寄せられておりますけれども、なかなか本来的効果が必ずしも十分に明確とまでは言えない一方で、副作用のおそれがそれなりにあるのかなというのが率直なところでございまして、「わかりやすさ」ということの意味は、その対象事項の本質的な実体を困難なしに正確に理解できるということだとすると、やはり参考資料の2ページ、3ページあたりなどを見ますと、なかなかそういうふうには簡単には言えないのかなと感じます。

物事というのは詳しく説明すればわかりやすくなるわけではなくて、詳し過ぎるとストレスが出てよくわからないという意味で、階級表示というのはシンプルという点では非常にメリットがあるわけですけれども、ただ、やはり階級表示をするとなれば、標準偏差値とは何か、ファンドの類型ごとの偏差値の計算方法は何かという説明も必要になってくるのだろうと思いますし、個別ファンドごとに標準的な計算方法から外れた部分があるとすれば、それを注記するといったような開示の丁寧さの必要も出てくるとすると、結局これを読むのは相当ストレスになるのかなという感じもいたします。

それをまたきちんと誤解なく、比較可能性とか、あるいは複数ファンド保有の場合の意味といったあたりまでを理解しながら読むということになると、なかなか難しい部分もあるので、これを導入する場合には相当英知を集めて導入する必要が出てくると思います。

それから、一般には制度改正を考えるときには、あまり濫用事例のことばかり気にしないでやったほうがいいと思っているのですが、ボラティリティの階級表示を導入する場合には、やはり濫用的な事例への目配せも必要になってくるのかなという感じがしております。

商品リスクの集中回避の部分、投資制限の部分ですが、これも全く必要がないとは言えないと思いますけれども、原則的な考え方としては、やはり一律な制限というよりは、例えば一定の基準を設けた上で、その基準を超える投資を行う商品については、特にはっきりと明示的な開示の方法を工夫するとか、そういった中間的なアイデアもあり得るのかなと感じております。

あと、外国投信の観点から申し上げますと、運用報告書の二段階化を行う場合に、現在海外の投資運用者に求められていない新たな負担が発生しないような、留意が必要かなと思います。

それから縦覧用報告書のホームページ掲載をするということになった場合に、外国投信の場合には、多分代行協会員のホームページということになるのかなと思いますが、その辺も事務的、物理的にうまく回っていくかどうかという実態の確認が必要かなと思います。

最後に、外国投信について、商品のリスク量制限を仮に導入する場合においてですが、それを機械的に同じ基準を外国投信にそのまま適用するのが適切かどうかについては、慎重な検討が必要であろうと思っております。外国投信は設立準拠地の制度で、合理的根拠に基づいた制約を受けて運営されているわけでございますので、国内基準を機械的に当てはめて、重要といえない程度の誤差で引っかかってしまってだめになるというようなことにはならないように、ある程度フレキシブルな運用が必要なのではないか。資料の16ページで「趣旨に合致する」というような表現をされているのは、そのあたりをお含みいただいていることかと思いますけれども、今のような視点もご留意いただけるとありがたいと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、上柳委員、いかがでしょうか。

○上柳委員

ありがとうございます。事務局の資料が、投資信託の仕組みの複雑化、あるいはリスクの複合化という観点を分析していただいて、一定の商品規制あるいは分散投資やデリバティブ関係の一定の制限を例示されたという点について、投資者あるいは消費者保護上の観点から賛同します。ぜひ投資信託のあり方という大所高所の立場から、この場でもコンセンサスができればと思うところです。

分散投資あるいは信用リスクの集中を回避するという関係で、具体的にどうするのかというのはなかなか難しいと思いますけれども、やはり欧州指令がまだ発展途上のところはあるにしても、やはり大きい参考資料ということになろうかと思います。既に反対論が幾つか出ていますけれども、投資信託という制度を信頼に足りるものにするということから言うと、やはり基本的にはポートフォリオ、つまり分散投資を中心にしてリスク制限をして、それを多くの人たちに提供するという形を基本にするということは適切なのではないかと思っています。

デリバティブに関するリスクの規制ですけれども、これも欧州指令が参考資料の4ページに紹介があります。カウンターパーティのリスクの制限も含めて、これもなかなか実務的には最初は難しいのかもわかりませんが、やはり大いに参考になると思っています。

ただし、私はさらに進んで、いわゆる投資信託については投資対象を一般投資家が認識可能な株式、債券などの有価証券に限定することであるとか、あるいは逆に言うと、デリバティブの利用はリスクヘッジ目的に限定する。これも何か20年前に帰るのかとおっしゃる方があるかもわかりませんが、そういうことも含めて考えるのがいいのではないかと思うのです。

繰り返しですけれども、わかりやすく透明性の高いものを基本にする。そのほかの商品がつくれないわけではないのです。そのほかの保有形式あるいは何らかのラベルを張ることで、そのような商品を私は禁圧するつもりはないのですけれども、投資信託は基本はいわゆる市場型間接金融のツールとする。デリバティブを原則排除する、あるいは投資先の企業価値の上昇によって、投資者も仲介業者も利益を得るということが基本だろうと思います。大崎さんからすぐ反論が出そうですけれども、私はそう思っております。

それから、最後にしますけれども、いわゆる分配型投資信託の問題とか、あるいは手数料や報酬に関する問題への対応として、トータルリターンの提案であるとか、説明の問題を指摘していただいているのですけれども、これは情報提供の強化だけでは不十分であって、分配金の原資の問題であるとか、あるいは、さらには運用責任者の選任、解任への受益者の関与なども含めて、いわゆるガバナンスについても、今回目配りする必要があるのではないかと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、大崎委員いかがでしょうか。

○大崎委員

それでは、5項目いただいておりますので、それぞれについて基本的に1つずつ申し上げたいと思います。まず、運用報告書の改善等のところでございますが、ここで議論されていることと、ちょっとずれるかもしれないのですが、私、この5ページの参考の表を見ていて思ったのですけども、まさにこういう性質の違いがあるということで、その通りだと理解していますが、有価証券報告書の目的として、主として流通市場における投資家を対象として投資判断に必要な情報を提供すると書いてある。そう考えますと、オープンエンド型の投資信託の場合、常時募集が行われているということになるので、流通市場というものは存在しないのですが、ただ買ったり売ったりする人を流通市場の参加者だといった場合は、目論見書及び届出書によって常時情報が提供されているとも見ることはできるように思うのです。ですから、ちょっと前にも私はオープンエンドだけ別の規制というのはできないかと申し上げて、でも、ややこしくなるよねと自分で否定したのですが、例えば有価証券報告書はそれなりに重要であるから、単純に運用報告書と一緒にはできないと、今、石黒先生からもあって、大変もっともな話だとは思うのですが、例えばオープンエンドの場合は有価証券報告書をなくして、目論見書に一本化するとかというようなことも検討の余地があるのかなと思いました。

それから2番目に、トータルリターン把握の定期的通知制度ということですが、トータルリターンというのが非常に重要であろうというのは、私もそのとおりだと思います。ただ、個別の投資家ごとのトータルリターンをきちっと捕捉して通知するというのは、現状では、少なくとも運用会社には不可能なのではないかと思いますので、トータルリターンを把握するといった場合、何を示すのかです。ご存じのとおり、例えば毎月分配型等の投資信託でも、分配金込みのリターンというのは、現在でも目論見書などに載っているわけでありまして、ああいうものでいいのか、それとも個別に計算するのかというところは、これは多分個別にということをご想定だと思うのですけれども、その場合は、少なくとも運用会社にやらせるというのは無理ではないかなと思います。

それから3つ目に、手数料の説明の件ですが、7ページのここに書いてあるような文章を目論見書に追加するのであれば、私は大いに結構なことだし、それはやっていただいたらいいのではないかと思います。例えば購入時手数料というので、何か欄を1個つくって、これは契約締結時の説明や諸手続の費用に充当するものでありますとかいうようなことを書くということが求められているのであれば、それは大いに書いたらいいのではないかと思います。

それから次に、リスクの複合化への対応というところですが、私はちょっとシニカルな言い方かもしれませんが、投資家が意図せざるリスクに直面するということを事前に規制するのは無理ではないかと率直に思いまして、いわゆるプロの金融機関といわれる人たちが、リーマンショック、世界金融危機で意図せざるリスクに直面して大変なことになったわけでございまして、しょせんと言うと申しわけないのですが、データが何か提供できるとしても、すべて過去データなわけです。ボラティリティを7段階に分けようが、5段階に分けようが、悪くはないと思うのですけれども、これは全部過去のデータを示すしかないわけで、現実に金融危機のときは、過去のデータに基づいてAAAと判断されていた商品が、一挙にBBBないしはそれより下までリスクが実は高いのだということに変わってしまって、その結果大混乱になったということですから、その程度のものであるという認識でやるのであれば、私は絶対反対ということはないのですけれども、1と表示していたやつが、ある日7になってしまって、それはそれでしようがないということなのかどうかということだと思っております。

それから、リスク量制限についてですが、私、これも技術的に非常に難しいのではないかと思っているのですけれども、ちょっと気になりましたのが、16ページでUCITSで一定の規制市場で取引されるもの等にそもそも対象資産が限定されているというご紹介がございます。これは事実ですが、ただ、ヨーロッパのUCITS、これは欧州指令の特徴ですけれども、これの規制対象になるのは、要するにEU各国で販売できるようにするためには、これに従わなければいけないということですから、各国内のみで販売したい場合には、これに従う必要はないわけで、現実に、例えばドイツのような国でも、私の記憶が間違っていなければ、ヘッジファンド型の投資信託なんか販売されていると思うのです。ですので、UCITSと同じような規制を課せば国際水準なんだというのは、ちょっと誤解なのではないかと思います。

上柳先生がおっしゃったことで、デリバティブ、リスクヘッジ以外やめさせたらいいんじゃないかという話について、一言だけ申しますと、それは多分、むしろ投資家にとって不利なことになるのではないかと私は思います。例えば、指数連動型のファンドを組成しようとしたときに、一挙に指数構成銘柄をほんとうに買えるだけの資金が集まらなかった場合は、それは先物で買っておくのが一番安いわけです。でも、それはリスクヘッジとはちょっと言えないと思うのです。デリバティブのみに投資して、現物を持っていないわけですから。では、それはいけないのかというと、私はそれは全然合理的で、投資家のためにもなる行動だと思うので、あまりそういう一律規制をしてしまうと、投資の実態に合わなくなるのではないかなと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは沖本委員、いかがでしょうか。

○沖本委員

2点述べさせていただきます。まず1点目はボラティリティに関してです。多くの方からボラティリティ指標の問題点のような意見が出ていますけれども、私も懸念するところが何点かありまして、前回のワーキング・グループの際に3点ほど述べさせていただきました。追加でもう1点だけ言わせていただきます。

個々の資産の分布が同一であれば、標準偏差というのは統一的なリスクの指標になるとは思うのですけれども、個々の資産で分布自体が異なりますので、そこを考慮せずに、ボラティリティだけを見るのは多少危険なところがあるのではないかと思っております。

具体的に例を挙げますと、例えば身長のようなデータですと、正規分布でよく近似できるということが知られております。正規分布の場合はプラスマイナス2標準偏差を考えれば、95%ぐらいの確率をカバーできます。しかしながら、株式データとかの金融資産の分布の場合は、正規分布よりもすそが厚い分布に近いということがいわれておりまして、そうした分布に関してはプラスマイナス2標準偏差で、何パーセントぐらいがカバーできるのかということは、一概に言うことはできないと思います。

現実的に、リターンの分布というのは、投資信託の間で違いがあると思いますので、ボラティリティだけで比較できない部分も多いのではないかと考えております。

もう1点は資料の13ページ、14ページのあたりなのですけれども、販促資料のイメージがありますが、これをぱっと見たときに、私がわかることとしましては、元本が保証されているものではないというのは確実にわかります。さらに、複数のリスクが混在しているということもわかるとは思います。

しかしながら、具体的にどれぐらいのリスクが含まれているのかというのが全くわからないという印象があります。14ページに店頭デリバティブの取引を行う場合には、「最悪のシナリオを想定した想定最大損失額」等を含めた形の説明が要求されているということですが、投資信託に関してもこのような説明があったほうが、具体的なリスクをイメージをしやすいのではないかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは川波委員、いかがでしょうか。

○川波委員

私からは大きな論点の2番目の論点について、2点感想を申し上げたいと思いますけれども、資料で申しますと14ページに当たりますでしょうか。「販売・勧誘時等のリスク等についての情報提供」ということで、基準価格の変動率、あるいは変動幅を等級に分けて提示することが検討課題として提案されましたけれども、私としては積極的に導入を検討してはどうかと思っております。1つには、基準価格の変動幅を、こういう何かある種の段階あるいは等級に分けて提示することが、投資家にとっては、投資判断に際して等級を見ながらリテラシーを磨いていくことにつながるのではないかと思いますので、積極的に導入を検討すべきではないか、と思います。

ただその一方で、非常に注意しておかなければいけない。これは既に実務界からも意見が寄せられていますし、あるいは協会でおとりになったアンケートの中に、販売員の説明に満足できたか、できなかったかというアンケートがございまして、その中に説明されるポイントが多過ぎてよくわからなかったというのがあります。そういう意味では、こういう標準偏差等を用いて開示することが逆に混乱させるという側面もあるかもしれないと思いますので、そういうことは十分注意しなければならない。

それから先ほど井潟委員がおっしゃったことに私も全面的に賛成でございまして、法律家、実務家、それから定量的な視点、さまざまな観点からこれを見ていくことが必要です。加えて、欧米のやり方、特に欧州はかなり具体的な等級を提示してやっているということでございますので、そこでどうなのかと。うまくいっているのか、いっていないのかを検証しながら、そういうことと並行して検討するということで、それでどうもやはりうまくいっていないということであれば慎重に考えるべきでありましょうし、そういう立場で現在のところはおります。

もう一つ、その次のページですけれども、リスク量についての制限ということに関し、信用リスクの集中的回避のための投資制限がどういう形で可能なのかという問題、すなわちアメリカの投資会社法、それから欧州の規制に対応するような、集中投資、コレクティブ・インベストメントに対する規制がございます。これは、具体的な規制の中身を俎上にのせて議論をしないと、今ここでやっている限りでは、何やらこうあるべきだという机上の空論になってしまいます。既に協会で規則として運用されているものがあるわけです。15ページに出されておりますように、ありますし、それから特に欧州やアメリカにおける集中投資規制については、数値的な制限が導入されております。その際に、例えばアメリカでは分散型ファンドの場合には、1発行体への投資を5%以下にするというような、そのほかさまざまな数値の枠が設けられておりますけれども、その意味あるいはその効果はどうなのかも検証しながら、検討していってはどうか、と思います。具体的なものをベースにして議論したいと思っております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは草野委員、いかがでしょうか。

○草野委員

私は、運用報告書の改善等についてと、販売・勧誘時のリスク等についての情報提供について意見を述べたいと思います。

運用報告書の改善を二段階化することについては賛成です。紙ベースでわかりやすくしておいて、あと非常に詳しく知りたい人に対しては、縦覧運用報告書をネットで開示するということでいいのではないかと思います。多種多様な人がいますから、皆に詳しい説明をしても、かえって迷惑だということもあると思うのです。わかりやすいということは、正確に記載することではありません。正確に記載することはわかりにくいことなのです。詳しく正確に記載することはアリバイづくりには有効ですけれども、詳しく正確に説明すればするほどわかりにくくなることは、経験則上知られていることです。

それでリスクの情報提供ですけれども、ほんとうにわかるようにリスクの情報を提供してほしいと思うのです。どういうところでトラブルが起きるかといったら、私は熱心に売り込まれる人が被害者になるのです。熱心に売り込まれる人というのは、私に言わせると2つの条件があって、まずは、お金を持っている人です。持っていない人はもう大丈夫なのですけれども、お金を持っている人。それから説得がやりやすい人です。要するに販売員が言って説得したら承諾しやすい人です。この2つの条件を兼ね備えるのがお金のある高齢者になるわけで、その人たちがリスクを理解できるのかどうかが問題なのです。

この13ページの説明を見ましても、正直な話、私もあまり理解できません。私は専門家でないから理解できないのだろうとは思うのですが、高齢者に示して理解できるかということをしたら、おそらく理解できないだろうと思います。いろいろなパンフレットとか説明書がありますが、私はそれらが高齢者などに実際理解できるのかどうか検証してからつくってほしいなと思います。販売会社の人が自分の頭で合理的に考えて、「こういうことをしたらリスクを説明できる、おれはよくわかった」というのではなくて、買い手がわかるようにリスクを説明してほしいと思うのです。

販売員は、リスクだけを説明するのではなく、必ずその前にもうかるという話をした上で、その後にリスクの話をするのですね。もうかるということで大体もうマインドコンロトールにかかっていますから、あとは、よほどのことがない限りリスクは理解しないと、自分の裁判官の経験からするとよくわかるのです。

ですから、これまでのパンフレットにしても、ちゃんと高齢者とかそういう人たちが理解できるということを検証した上でつくっているのかどうか、非常に疑問に思うところであります。そういうことで、ほんとうにわかってもらうことが大事なので、そのように説明書もわかるように工夫してほしいのですが、実際にそういう人に読んでもらって、ほんとうにわかるかどうかということを検証した上でつくってほしい。これをぜひ要望したいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは黒沼委員、いかがでしょうか。

○黒沼委員

4点ほど申し上げたいと思います。

まず運用報告書を二段階化することですが、コスト削減のためにやむを得ないという意味で賛成します。目論見書の改革のときの経験がありますので、詳しいものについては請求次第交付することを法令に規定すると、コスト削減の実効性が上がらないことは理解します。ただ、投資信託の保有者には高齢者も多いことにかんがみると、法令上の義務ではないけれども、自主規制上の運用で、要求があればできるだけ情報が行き渡るように手当てをしていただきたいと思います。

2つ目は、トータルリターンの把握のための定期的通知制度ですが、これも賛成いたします。運用会社から通知するのがいいか、販売会社から通知するのがいいかという点ですけれども、理屈ではなくて実現しやすいほう、コストが安く実現しやすいほうでやってもらえばいいのではないかと思います。

第3に、ボラティリティの情報提供ですが、これにはいろいろなご意見がありましたけれども、一般投資家にとって投資信託は分散投資の手段なわけですから、ボラティリティが重要な情報であることは間違いない。過去のデータであって限界がもちろんありますし、既に意見が寄せられているようにコストがかかることもよく理解できますが、便益がコストを上回るように制度をつくることは可能だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

最後に、商品のリスク量についての制限ですが、先ほど川波委員が言われたように、私もこれだけではちょっと判断できないので、商品内容について法的規制を何らかの形ですることには賛成ですが、具体的にどういう規制をどういう理由でやるのかということを示していただけないと、詳しい議論はできないと思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、河野委員、いかがでしょうか。

○河野委員

私も川波委員と、今、黒沼委員がおっしゃったことと、ほぼ同じ意見を持っております。6ページのトータルリターンのことは賛成ですけれども、先ほどから出ていますように、これはリアルでほんとうに具体的にどれだけのコストがかかるのかとか、6ページの中でいいますと、黄色いところの、本制度導入を検討するに当たっては、システム対応、相応のコスト・時間、運用会社・委託会社等と書いてありますが、まさにこれが一番ベースとして見なければいけないことで、ですからトータルリターンを出さなくていいというのではなくて、出す。出さなければいけない。そのために今までどおりのやり方でシステム対応をしてコストをかける時間を費やすことでは、多分日本は競争に勝てないだろうと思うんです。ですから、原点として透明性、顧客への透明性もそうですけれども、競争が大事なのですが、まさにほかを相手にしたときに、システムとか時間という、日本の場合はいろいろなことが海外とほぼ一緒だけれども、時間はかかりますと言われたら、もうそれだけで多分遅れを取ることになると思いますので、そういったこともクリアすることをぜひ実務業界でチャレンジしていただけるような内容であってほしい。

私は、規制は緩やかなほうがよくて、結果責任、あるいはこれにおける運用成績、いわゆるトータルリターンがきちっと出ていく。あるいはさっきの16、17ページ、要するに商品のリスク量についての制限というのも、その7段階に分けたときの実態の成績が出ていけば、それが透明にきちっと出ていけば、それぞれ受益者にとってわかりやすくなると思っています。ただコストがかかる、時間がかかるということを、一応書いてありますけれども、ほんとうにそれを超える方法は必ずある。ぜひ諸外国の成功事例を参考にして、それを越えてやれればいいなと思っております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、小沼委員、いかがでしょうか。

○小沼委員

前半の、商品内容の理解・関心を深めるための施策の充実の部分ですが、1点は、ちょっと技術的になりますが、信託報酬の開示の件でございまして、いろいろな開示書類を見ますと、信託報酬にプラスして、ファンドにかかってくるその他の手数料という項目がございまして、これがファンドにおいては具体的に上限何%ぐらいまででと書いてあるものと、そこが何も書いていない、そういうものがかかりますよとしか書いていないものがありまして、手数料というのは、具体的には監査報酬だとか、事務コストだとか、あるいはインデックスものであれば指数のライセンスの関係の費用だとか、コモディティーのもので実物が保管されているような場合には、その倉庫料だとか、そのようなものがあると聞いております。

ここがある程度、上限の数字を開示される運用会社と、書かない会社とがあって、実務的な問題もあってそういう結果になっているのだろうと思いますが、そういうアンバランスが、場合によっては商品を投資家の目線で比較されるときに、いろいろな調査機関の皆様も数字で書いてあればそこをオンして書くし、書いてなければそれを無視して書くというところで、似たような商品だけれども、そこの部分で差が出てくるという現象があるのかなと思っていて、悩ましい問題だなと思っております。その他の費用がものすごく無視できる比率の小さなものであればいいのですが、場合によっては10%とか20%とか、全体の信託報酬の中で占めているような場合もあるかと思いますので、その辺が少し今後ちょっと注意して検討していける余地があるといいなと思っております。

もう1点は、外国投資信託の持ち込みの関係で、特にETFなんかで私どもが業務で思っているところではあるのですが、事務局のご用意いただいた参考資料の7ページぐらいにも、前半で書いていただいている部分でございますが、ちょっと複雑ではありますが、例えば米国のS&P500に連動するETFを日本の投資家が買う場合、実態的には多くのお客様は自分から選んで、オンライン証券かなんかで買いに行く。買いに行くパターンとしては、ニューヨーク証券取引所まで直接ブローカー・ブローカーのルートで現地に買いに行く場合と、現地のS&P500に連動するETFが重複上場で日本にも上場していただいたものを買いに行く場合と、それから日本の運用会社が別途日本でS&P500に連動するETFを日本組成して上場していただいたものを買いに行く場合と、3つの投資パターンがありまして、それぞれにそれぞれ違う体系の開示の仕組みがかかる。この仕組み自体に少しアンバランスなところがきっとあるのだろうと思っておりまして、この辺がどちらに寄せるかという、現在すぐにイメージがあるということではないのですが、難しいところがあるかもしれませんが、過度にバランスが悪いと、悪い影響も出てくるのではないかなと思っておりますので、そういう問題意識をご披露したいなと思っております。

それから後半の「投資信託の仕組みの複雑化、リスクの複合化への対応」の部分でございますが、前回もちょっと申し上げましたが、リスクというのは投資家にとって許容度が違いますので、適合性の原則をベースにご議論いただくということだとは思うのですが、1点、先ほどご説明がありました非線形的なリスクというのですか、信用リスク等が顕在した場合の説明が十分行き届いているかということにつきましては、私も気になっているところではあります。

これもご紹介でございますが、取引所に上場する投資信託の中でもリンク債に投資をするETFが何銘柄かございまして、この点につきましては現在、発行体をパーセントで絞っていってバランスさせるという形にはなってございませんが、発行する運用会社に通常の上場審査は私どもはやるのですが、それに加えてリンク債の発行体の財務状況や信用リスクについて、どうやって運用会社がそれをモニターしているのか、管理している体制ができているのかとか、そういう情報についてどういう形で十分に投資家に情報が周知できるのか、あるいは適時開示としてリンク債の発行体の格付が変わるときには、速やかにそれが開示できるのか。それから昨今の整備のほうでは、ぎりぎり発行体の信用度合いに問題が起きた場合には、上場廃止というオプションも含めて市場から退出するという取り扱いの規定を設けるなど、その辺の形で相当厳格に慎重な対応を進めてきている部分がございますので、こういったことも今後の議論に参考になればと思いまして、ご紹介させていただきました。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは島田委員、いかがでしょうか。

○島田委員

まず運用報告書の改善については、2つに分けるのはいいことだと思うんですけれども、交付の運用報告書は投資家に向けて出すという位置づけをはっきりさせていただいたほうが、わかりやすいという点ではいいのかなと。一方で、縦覧のほうについては、むしろ正確性を重視してつくっていただく形にすると、より一層使い勝手が補完的になるのではないかと思います。この改善について、従来の運用報告書で報告している部分を、どこをどのように交付と縦覧で振り分けるかといった考え方ではなくて、より一層投資家にわかっていただくためにはどういったことが必要かを、根本的なところからもう一度お考えいただけたら大変ありがたいと思います。

それから、運用管理費用について、一般に言われる信託報酬ですけれども、ここは信託報酬という言葉自体が、一般にはほかの商品ではほとんどない言葉だと思いますので、7ページの左側にあるように、運用管理費用という形で書いていただいて、括弧で「信託報酬」ということを一般化したほうが、より親切なのかなと思います。また、これらの費用の中身についてのご説明、7ページの下に書いてあるようなことが、説明の補完としてついていたら、非常にいいのではないかと思います。

その次にリスク開示についてですが、勧誘等のときのリスク等の情報提供ということで、いろいろな販売会社のホームページを拝見しておりまして、販売会社の中にも独自にリスクの説明をもうちょっとしっかりしたいなという努力の表れだと思うんですが、独自にリスク要素のファクターごとにマークをつくって、そのファンドの名前の横にマークが幾つかついているという販売会社のホームページがございました。例えばあるファンドには市場の価格変動のリスクのマーク、それから債券のファンドであれば信用のリスクがあります、為替リスクがありますという形で、幾つかのマークがついている。特にすごいなと思ったのは、そこにデリバティブのリスクがありますよというマークもありまして、そういう表示があるとことで、感覚的に投資家にわかっていただけるのは重要なことではないかと思います。当然、誤解を招くといった危惧もあるかとは思うんですが、むしろこのマークをつけることによって、マークについてそれぞれのことがらについて説明することができるという前向きな考え方で、こんな例もあるので、お考えいただければと思いました。

特に年配の投資家の方などには、詳しいボラティリティの数字、あるいは標準偏差が幾つといったことで開示をしても、理解をいただけないことが多いと思います。そうであれば、例えば10ページなどでも、一般的にもよく使われているグラフがありますけれども、こうしたグラフの中に東証株価指数であるとか日本国債がどの辺にあります、それに比べてこのファンドはこの辺にありますよといった絵を見せてさしあげることも、一般的になってくると、最初はそのグラフをごらんになるのは非常に難しいとは思うんですが、繰り返しそういったものが普通になっていくといいなと考えております。

それからリスク量の制限についてですけれども、例えば現状について非常にわかりにくいものがあるとするなら、そのわかりにくいものの例を少しご説明いただければと思います。例えば消費生活センターや金融ADRに寄せられる案件で、実際にどのような投資商品がわかりにくくて問題になっているかというお話を伺う機会があれば、より具体的に考えられるのではないかとも思いました。一方で、自由な商品の組成、あるいは投資信託という商品の競争力の維持という観点からは、一概に規制をするのがいいということではないと思います。また規制を強化することによって、さらに複雑な商品、あるいはさらにわかりにくい仕組みのものを生むきっかけになってしまって、より投資信託がブラックボックス化していくことが起きないとも限らないので、そういったことについても具体的な議論が必要なのではないかと感じました。

そしてもう1つ、外国籍の投資信託の持ち込みについてですけれども、確かに外国籍の投資信託は国内投信でできないことなどを、いち早く投資家に紹介できるという便利な商品でもあると思いますので、開示などを一律に同じようにできないことは非常によく理解できるのですが、そうであるなら国内の投資信託と違う部分について、運用はこのように違います、あるいは開示はこういうタイミングでしかできませんといったことについて、販売時あるいは販売用の資料などでも明示していただければ、よりわかりやすいかと思いました。

ありがとうございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは清水委員、いかがでしょうか。

○清水委員

5つの論点について、1つずつコメントさせていただきたいと思います。

まず運用報告書の件ですが、有価証券報告書との関係についてですが、こちらについては有価証券報告書を実際に閲覧している方も少ないと思いますが、内容を統一化する等にすれば、実質的に作成するのは1つで済むことになると思います。

それから運用報告書を2つに分けるということですが、これは投資家として受け取る側の意見としては、例えばファンド・オブ・ファンド等のもので100ページぐらい、非常に厚くて送られてくる場合があるのですが、それを見ている方はかなり少ないのではないかと思われます。ご興味のある方が申請して得られるようにして、通常の投資家の方には皆様が言っているようにわかりやすい形で送っていただけるのがいいかと思います。

2つ目のトータルリターンの問題ですが、私自身も分配型ファンドが非常に多くて、毎月分配されていると基準価額が上がったり下がったりして、勝っているのか負けているのか自分で電卓で足してみないとわからないことがあるので、トータルリターンを開示するステートメントがあるといいなとは思います。しかしながら、これを通知制度として法令等で導入すべきものなのかなという疑問はございます。運用会社が、個別の投資家ごとのトータルリターンを計算するのは不可能だと思いますが、販売会社の工夫といいますか競争の中で導入されていく事項ではないかと思います。

それから手数料等の説明ですが、特に委託者報酬の中の約半分ぐらいを占める代行手数料が普通の投資家の方には一番理解するのが難しいと思います。こちらにつきましては、定性的に目論見書等の中できちんと説明していただければ、納得していただけるのではないかと思います。

販売時のリスクのカテゴリーの問題ですが、投資家としては、以前投信協会で実施されていたように、あるいは欧州で導入されようとしているように、R1から5とか7のようにリスクの高低がしめされていると、端的にわかりやすいとは思うのですが、こちらについても、以前協会が実施していたものを、誤解をまねくということであえて止めたと私は理解していますので、これは欧州の動向およびその効果を見てから導入を判断するのがよいと思います。それから私の理解では、現在年間収益率等を10年分開示して、過去の収益の振れを記載することによって、標準偏差とかという難しい話ではなくて、わかりやすく、過去の振れを開示しようとしているので、欧州の開示制度の効果を見てから、もう一度判断するのでいいのではないかと思います。

それから商品のリスクの規制の話ですが、これは本日配付された参考資料の4ページにありますように、マーケットリスクにつきましては、VaRという言葉が出ていますが、現実的にはストレートなファンドについては、コミットメントアプローチという現在の協会のルールとほぼ同じようなルールで、デリバティブを使っている複雑なものについて、さらにこちらに書いてあるように2つの分かれたやり方が行われていることで、単純にVAR一本で管理しているわけでないという理解です。カウンターパーティーリスクも含めて、ファンドのリスクを必要に応じて、規制、開示していくのがよいと思いますが、これを今欧州で導入しようとしていますので、こちらも、導入後の影響を一度よく見てから、日本での制度導入を考えるのがいいと思います。やはり欧州とか米国は、リーマン前までに非常にいろいろなリスクをとった商品が、機関投資家及び投資家に、日本よりは幅広く販売されていて、リーマンの破たんが起きて、その反動的で非常に規制が多くなっていると理解しています。日本は若干状況は違うと思いますので、そこは現実に今、強化された規制が欧州等に導入された影響がどうなっているのかを一度見てから、日本で前向きに導入を検討することがいいかと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは田島委員、いかがでしょうか。

○田島委員

5つの論点について簡単に意見を述べたいと思います。

まずは、現在の投資信託市場に参入している日本人投資家の中には、もともとリスク性商品の購入を望んでいない、適合性に欠ける層があると思われますので、そのような者に販売会社が投資信託を売ることのないように、別途対策を講じる必要があると思います。その結果、投資信託に適合した投資家のみが参入する市場になれば、改める必要のある事項は限定的になると考えております。

まず運用報告書の改善は行うべきだと思います。現在高い費用を払って大部な報告書を印刷、送付しても、ほとんどの一般投資家はその厚さや字の細かさを見ただけで読まずに放置している実情がありますから、無駄を省くためにも記載事項についての必要な見直しを行った上で、重要度の高い事項についてのみ交付運用報告書に記載して、各投資家に送付し、運用状況等詳細については縦覧運用報告書としてホームページに掲載すれば足りることとすべきだと思います。

当然のことながら、交付運用報告書については一般人が容易に理解できる平易な文言と表示方法を用いる必要がありますが、他方でインターネットを常用しない投資家で詳細情報に関心のある者はごく少数と思われますから、それを想定して経費のかかる紙の交付を義務づける必要はないと考えます。

販売手数料と信託報酬の使途詳細については、投資家に知らされるべき事柄ですので、販売時に目論見書で説明すべきだと思います。

また信託報酬の率のみの通知では、投資家に実負担額がわかりにくいので、運用期間中の全実負担額を投資家に通知すべきです。

トータルリターン把握のための基準価額や累積配当・費用の定期的通知制度は、投資家が計算すればわかることなので、費用との兼ね合いで考えて、経費負担が大きくなるようであれば導入する必要はないと考えます。

販売勧誘時等のリスク等についての情報提供についてですが、現状でも運用対象や運用の仕組み、損失の発生するメカニズムが詳細に説明資料に記載されているとおっしゃいますけれども、説明資料13ページの販促資料のイメージを見ましても、到底、一般人に理解できる内容になっていないと思います。これを読んで理解しろというのは無理があります。特に20代、30代の投資未経験者の取り込みを考えるのであれば、専門家が読めばわかる内容ではだめで、専門用語を一切使わず、日常用語のみで理解できる説明内容に改めることが必須だと思います。口頭説明が加わるからよいというものではありません。その上で欧州のような7段階のリスク表示を、誤解を招かないように工夫をしながら付すことには意味があると思います。

最後に、商品のリスク量の制限についてですが、販売時に投資家の意図せざるリスクが商品に内在していることを含めて、理論上考え得るあらゆるリスクについての情報提供が十分になされていれば、あえて制限を設ける必要はなく、もともと投資信託はリスク性商品なのですから、自由な商品開発を行えるようにすべきなのではないかと考えております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは永沢委員、いかがでしょうか。

○永沢委員

最初に、前回は個人的な事情で欠席してしまいまして、まことに申しわけありませんでした。私からは、最初に総論と、それから事務局からご提示いただきました論点について、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。

まず総論の部分ですけれども、前回、田島委員からご指摘があったと伺っておりますけれども、やはり一般投資家がどういう人なのかというところが、議論の出発点にあるのではないかと考えております。私は投資信託は、いろいろ議論、ご意見はあると思いますが、国民の資産形成のための金融商品と期待されていることを前提とするなら、一般投資家は、そう(投資)リテラシーが高くない投資家と想定せざるを得ないのではないかと考えております。そのように一般投資家を想定いたしますと、おのずとどのようなリスクやその他の情報の開示が行われるべきか、さらには投資信託という商品はどうあるべきかという大枠が見えてくるのではないかと感じております。

次に、個別のこちらの事務局説明資料で掲げられた論点について、多少前後しますが、今の前提、総論として申し上げましたことに関連しまして述べさせていただきますと、まず運用報告書については、説明資料に示していただいた方向性でよろしいかと思いますし、既にいろいろな委員からご意見が出たところで、私も全く同感でございます。先ほど申し上げましたような「一般投資家」が実際にわかるのかどうかを確認しながら、これを実現していただきたいなと考えております。

次に、前後いたしますけれども、リスクの表示、15ページに紹介されている欧州の取り組みですが、これにつきましては一定以上のリテラシーを備えた中級クラスぐらいの投資家には非常によいものだと思うのですが、初心者クラスの投資家にわかるのだろうかという不安がございます。先ほど島田委員からご紹介があったような、ある販売会社のリスクの表示の仕方という取り組みも参考になります。また、例えば金融トラブル連絡調整会議で実際に起こっている金融トラブルの事例が報告されておりますので、そういったものを参考にしたり、あるいは公認会計士の方々といった専門的な方々に、先ほど申し上げましたような「一般投資家」の目線でわかるかどうかについて、検討していただいて、(リスクについて)ある程度の類型化を行い、その類型への該当性について目論見書などで開示するようなこともあっていいのではないかと考えます。

次に、トータルリターンの部分ですけれども、やはり投資のリテラシーを高めるためには、教えるだけではだめで、投資家自身、購入者自身が自分で気づいて調べるという作業が、私は重要だと思っております。その手がかりを与える工夫として、このトータルリターンを定期的に知らせる取り組みは、なかなか有効なのではないかと思っております。先ほど委員の方からご指摘がありましたように、コストはかかるだろうと思われますが、このコストが投資家に転嫁されることのないように、ぜひともお願いしたいと思っています。

それから市場に参加する人に情報を与えて、その人たちが合理的な判断をすることによって市場のゆがみが是正されるという部分も、これも期待できる部分もあると思っておりまして、コストの開示はその有力な方策だと思っております。8ページに示されているような記載が欲しいと思っておりますが、もう少し踏み込んで、もう1つ、例えば毎月分配型ファンドが売れておりますけれども、毎月分配というサービスには相応のコストがかかっておりますわけで、自動累積投資型よりも代行報酬は割高なはずだと私は理解しているんですが、投資家に、あるサービスに対して少し割高に払っているんだという情報が与れば、投資家の間でそのサービスを利用するのかどうかの選択の動きも起きてくると思っております。情報提供サービスもしかりだと思います。無料であればたくさん欲しいと思う人もいますが、これは有料なんだと分かれば、それなりの価格メカニズムも働いてくるのではないかと思っております。

最後に、商品の規制について述べたいと思います。市場の是正というものは情報の非対称性の解消というのですか、投資者保護の分野で解決していくことが望ましいとは思いますけれども、前回までのお話を伺っている限りでは、なかなかこれは期待しにくい。時間がかかるし、ほんとうにマーケットメカニズムが働くのかどうかもわかりませんし、問題は今の時点でございますので、何らかの商品規制は検討せざるを得ないときに来ているのではないかと考えております。

投資信託に参加する人の類型化を行って、一定の場合に商品の規制を考えることも必要ではないかと思っておりまして、その規制のあり方については資料にいろいろ提示いただいたのですが、正直、専門家ではございませんので、わかりません。私からの提案といいますかお願いとしては、広く運用のプロにご参加いただいて、それも投信業界だけではなくて保険や信託などで年金運用されている方とか、それも運用だけではなくてミドルオフィスやバックオフィスの方々、それから公認会計士等の専門家にも加わっていただき、またもちろん欧米の状況にも詳しい方にも集まっていただいて、賢人会議というのでしょうか、そういうものを常設して、そういったところで議論をいただいて、その議論が国民に見えるようにしていただければ、国民の投資信託への信頼も増すのではないかと思いますので、そういった取り組みもしていただければと思っております。

最後になりますが、11ページの、プロしか利用できない投資手法が一般投資家にもアクセスできるようになったという記述が気になっております。そのとおりなんですが、少し高く評価し過ぎているのではないかと思っております。このようなものに個人がアクセスしようとすれば、高くつくという点が見落とされているように思います。難しいことをしても、結局リターンが上がらなくて損をしたら、(投資の)リテラシーのそう高くない人でも、結局はこの投資は失敗だったと分かります。先ほどのコストの開示と併せて、こういった視点もぜひお願いしたいと思っております。

以上です。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは村木委員、いかがでしょうか。

○村木委員

投資のプロセスというのを考えたときにも、plan、do、check、actというプロセスはあるかと思うのですが、現状の販売会社のスタンスはdoの部分は非常に力強く背中を押してくれるのですが、planとcheck、actのサポートがやや弱いのではないかと感じております。

この点で2点なのですが、まず1つ目はcheckとactに係る部分かと思いますが、トータルリターンを把握するためのサポートは、リテラシー向上のためにも非常に重要なのではないかと考えております。自分自身投信を買ってみた経験でも、手数料控除後のリターンを計算するのは決して簡単ではありませんで、もちろんシステム対応上、販社側で過去に遡及をして累積のトータルリターンを計算していくのは非常に困難であることは理解しておりますけれども、投資家がリターンを把握しやすくするための開示で工夫できることはあるのではないかと感じています。

2点目は、最初のplan、あるいはdoの部分にかかることかと思いますが、リスク開示、あるいはリスクの総量規制をどうするかという論点でして、まずリスクの開示については不足していると感じています。通貨選択や複雑な仕組み債ライクな商品の目論見書を見ましても、複合的過ぎてどのようなリスクが内包されているかは、我々が見ても簡単には理解ができないです。果たして販売員がそのような複合的なリスクを把握して、適合性の原則に基づいて販売できているのかというと、やや疑問なところがありますので、販売員がリスクを把握しやすくするという観点でも、わかりやすいリスク開示、何か説明ができないのかと感じています。

けさ、外国の銀行が巨額の損失を発表しておりますが、この金融機関は巨額の損失発表と同時に、過去開示をしていたリスク量であるVaRが、実は開示の2倍だったという訂正を行っています。プロ中のプロでもリスクの把握が非常に困難ですが、この金融機関は別にもうこれでリスク管理をやめてしまうということは決して言わないわけです。そういう点では、単純なボラティリティの開示はいろいろな副作用を伴っているというのは理解しますけれども、現状何もなしで非常に複雑なものの販売が行われていることを考えれば、一定の開示の充実が必要なのではないか。

あとは複合リスクを特に持っている商品については、単純なボラティリティ開示だけで十分かという問題がありますので、先ほどもご指摘が出ていましたが、いわゆる何か大きなイベントが起きたときに、リスクが顕在化するようなテールリスクを、具体的な過去の事例であったり、今後想定されるイベントを例示した上で説明をしていくことも、複合商品については有効なのではないかと考えています。私の考えとしましては、リスク開示は充実をすべきだと考えておりますが、一方で、そのリスクの総量規制のような商品に直接制限をかけるようなタイプの規制は、本来は自由なマーケットである投信マーケットについては慎重に行うべきではないかと考えております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

一通りご意見をいただきましたので、今出たご意見を受けて、さらに、まず委員の皆様からご発言があればお出しいただきたいと思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

1点だけ申し上げたいのですが、島田委員がご紹介くださった、リスクをいろいろ工夫して表示している販売会社があるという話は大変おもしろいと思うんです。私はそういうことからしても、なおさら法令等でリスクの表示について何か一律的なルールをつくることはかえって無益ではないか、生産的ではないのではないかという気がいたします。逆に島田委員がいいと思われた例を、法令で一律に義務づけるのがいいかどうかも、また非常に問題がある話です。ですから、そういう投資家にわかってもらえるであろうと思うものを各販売会社が工夫してやっていく。さらにそれをいい方向に進めていくということであれば、投信協会に多分お願いすることになるのでしょうけれども、あるいは証券業協会かもしれませんが、その中のいいと思われる例、ベストプラクティスとでもいうのですか、そういうものを積極的に紹介していくような試みをやられたらどうか。そんな方向がいいのではないかという気がいたしました。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

運用報告書を二段階にして、1つを交付書面にし、詳しいほうはインターネットにするという提案で、合理的とは思うのですけれども、私は、やはり請求があれば印刷物といいますか、紙ベースのものを渡すというふうに、法律の建前は維持したほうがいいのではないかと思っています。コストがかかることは間違いないですけれども、どの程度なのかなということも含めて、毎回同じことを申し上げているんですが、ここはそう思いました。

それから今、大崎さんが言われた言葉に反論してしまうのですけれども、確かに幾つも事業会社といいますか、関係される業者の方がいらっしゃるわけですので、その間で創意工夫があり、当社はこのようにリスク分析をしてお客様にアピールする、その方法が自由であってしかるべきだと。そのほうが多分全体としてうまくいくというのは、私も理屈ではそう思うんですけれども、現状がこれでよいのかどうかという判断だろうと思うのです。このままで、この延長線上でやるということであれば法制化しなくてもいいですし、ただやはり世界的な問題もあってかもわかりませんが、日本でも分配型あるいは報酬の問題、それから小さなファンドが乱立してしまったという状況を踏まえて、やはり法律あるいは法制として、こういう確保をするんだと、信頼の確保をするんだというメッセージを出すことが大事なのかなと。それをどこまでやるのかというのが大問題ですけれども、一定のいわゆる商品規制的なものの改善はあり得ると思います。

○神田座長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○河野委員

6ページのところで、黄色の括弧の中に、今出ていた話題にも多少関連するのですが、丸の2番です。いわゆるトータルリターン、あるいは今までの運用報告書というのでしょうか、そういったものの「通知義務者を誰とすべきか、ということも検討を要する」となっていますけれども、これはどちらかという表現で、上の丸と下の丸が書いてあるのですが、基本的にはというか、両方、二者連記がよいのではないか。少なくとも、本来は顧客の側は売っている人としか接していないので、ほんとうはそちらから説明を聞きたいし理由も聞きたいしというところですけれども、運用会社から、運用会社がばかをやってしまいましてなんて言われても困るわけでして、そういう意味では最低二者連記、どちらかといえば販売会社系列のほうが顧客にとってはわかりやすいと思います。そういう意見でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、永沢委員。

○永沢委員

2点ほど、右倣えのように言ったところで、ちょっと補足させていただきたいところがありましたので。まず先ほどの運用報告書の請求、運用報告書という名称になるのでしょうか、その部分に関しては、4ページの下の右の四角の内容ですけれども、私はインターネットでよいとすることは、やはり無理があると思っておりまして、投資家が求めたら、それは印刷して紙で配付することを事業者には義務づけていただきたいと思っております。

それからもう1つ、先ほど大崎委員から言われたリスク表示について、島田委員が紹介されたような取り組みについてのところですけれども、確かに各社の自主的な取り組み、ベストプラクティスをみんなが見習ってというところはあるのですが、その方向が望ましいとは思うのですが、やはり投資家からしますと、ばらばらだとわからなくなりますので、一定の統一性をもって表示されることが必要で、それが法令になるのか、自主規制ルールになるのかはまた検討の必要があると思いますが、統一して比較可能性があることが投資家にとってはわかりやすい要素の1つであることを、つけ加えさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。吉野先生、どうぞ。

○吉野会長

2点ほど。

10ページの資料を見ますと、縦軸がトータルリターンで横軸が標準偏差になっているわけですけれども、私がここまで何度か販売会社と運用会社と投資家と利用者がみんな同じ方向に向かってほしいと申し上げたのですが、このトータルリターンが出れば、これを目指して皆さんが同じ方向に向くとすれば、目的関数が一つ同じになっていくと思いますので、このトータルリターンを出していただくことと、どうやって求めるかというのも、どこかに書いておいていただくと、利用者の方がわかるのではないかと思いました。

それから、この図でいきますと、ちょっとわかりにくいのは、横軸が標準偏差と書いてありますが、例えば国際債券型平均と書いてありまして、10.5と書いてあるのが多分標準偏差で、5.5が横軸になりますからトータルリターンだと思うのですが、これの下に例えばこれを計算するとマイナス5%から、間違っていなければ16%の間にいきますと。多分その平均値が5.5ですといいますから、それまで書いていただければ、個人の方だって、うまくいかなければ5%損してしまう、うんとうまくいけば16%かとわかるような気がします。さらにそれに詳しく分布の、いろいろな正規分布ではないものもありますから、どこかに書いておけばいいわけで、やはりこういう表にだんだん皆さんがなれていけば、日本人のリテラシーが上がるという気がいたしました。

もう一点は、運用報告書はプリントアウトがどうしても欲しい人はそれで結構だと思うんですけれども、その人のコストまでインターネットを使う人が負担すべきかということはあると思うのです。そういうお年寄りがたくさん来て、その分だけほかの人たちのコストも増えてしまうわけですから、そうであるとすれば、それぞれのプリントアウトにかかった費用はそのお年寄りからいただくようにしてくださらないと、せっかく運用利回りが高いのにそのコストでトータルリターンが下がってしまうこともありますので、そういうところも考えていただければいいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

今、最後のほうで、開示のレベルについて法令レベルでやるのか、それとも業者の工夫、競争レベルでやるのかという議論が、ちょっと平行線になっていたと思うのですけれども、私から見ると、必要最低限の部分は何かという議論がまず必要で、それについてはハードローで当然やるということだと思うのですが、そこから上についてもすべて比較可能性があって、すべて一律でなくてはいけないというのは、むしろ創意工夫とかサービスの質によっての競争を殺すことになりますので、それは違うのではないかと思います。

ですから、先ほどベストプラクティスの紹介というアイデアもありましたけれども、いろいろな表彰制度などもやって、良質なプラクティスの存在が広く知られるようになると、ハードロー以上の部分については、投資家のリテラシーが上がって、「そういういいことをやってくれている業者もあるのか、うちの証券会社は何も言ってくれなかった」となったら、それを自分の証券会社に要求されるようになれば、業者側もそれに対応しなければいけないという形で工夫レベルが上がっていくとか、あるいはそれをずっとやっていくのであれば今のコストはどうなのかという話に広がっていき、法令の要求ではなくむしろ実地のところからの要求でいいプラクティスが広がっていく部分と、その2つをやはり分けて考えなければいけないのではないかという感想を持ちました。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、オブザーバーの皆様で、もしご意見があれば。投信協会、どうぞ。

○投資信託協会(城川オブザーバー)

投資信託協会でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。何点か考えを述べさせていただきたいと考えております。

商品の製造者である運用会社は、投資信託の仕組みが複雑化しリスクが複合化する中で、投資家の皆様に商品のリスク等について正しく理解してもらうように、当然ながら努める必要があると考えております。本協会では、お示しいただいております変動率の階級表示も参考に、商品のリスクについてよりわかりやすいように投資家に情報を提供する方策について検討しております。日本の投資信託の実情に合った対案といいますか、こういう案を考えまして、事務局にご提案したいと考えております。

次に、信用リスクの集中回避のための一定の制限を課すことについてですけれども、その趣旨は大変理解できますので、個々の事例については業界としての検討も必要と考えております。加えて投資信託のリスク管理を一層推進するという観点から言えば、例えば本協会のデリバティブ取引に関するガイドラインについても、現行のものよりも踏み込んだ内容にできないかと考えております。

投資家の皆様への開示ということで、先ほどから運用報告書等の例が出ておりますけれども、現状、投資家に法定上、運用状況等を知らせる方法としては、投信法上の運用報告書と金商法上の有価証券報告書の2つがあります。両者については実質的な情報の内容について、結構重複する部分があるのも事実で、ただ記載方法とか書式等が異なっているのが、実情でございます。

そういう状況の中で、両者の関連性などが投資家にとってわかりにくいものとなっているのが現状でございますので、そこで両者の関係を整理して、投資家にとってわかりやすい開示体系とすることが必要なのではないかと考えております。例えば有価証券報告書と運用報告書とでは、先ほどから記載の罰則等が異なるため、ちょっと難しいという話もありますけれども、実質的に運用報告書をもって代替することも一案かと考えられますし、または有価証券報告書のある部分については、運用報告書の内容をそのまま添付する等々のことも考えられるのではないかと思っています。

また金商法上の発行開示についても、有価証券届出書の記載項目の整理や有効期間の無期限化、委託会社にかかる情報の参照方式化等と、今、投資信託に即したものにする改善等が必要ではないかと考えています。

最後になりますけれども、今日の議論とは離れていますけれども、信託協会さんから要望といたしまして、受託者によるレンディングというのが出ております。今日は議論の中に入っておりません。これについては、当投資信託協会として検討させていただきたいと考えております。

私からの発言は以上でございます。ありがとうございました。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにオブザーバーの方々で、ご発言はありますでしょうか。

銀行協会、お願いします。

○全国銀行協会(松田オブザーバー)

全国銀行協会です。事務局様の中のご意見、それからたくさんの先生方のご意見にありますように、トータルリターンの通知ということで一言だけ述べさせていただきます。

お客さま毎のトータルリターン及びにトータルコスト、こちらをお客様にお知らせするということにつきましては、お客様に商品内容を理解していただくための施策として、非常に有効だなと思います。仮に、これを導入するとなった場合に、主にどこがやるのかということにつきましては、やはりお客様の情報、受益者の情報を有しておりますのは、手前ども販売会社ということになろうと思っていますので、販売会社がやはり主には対応していくことになるのかなと思いますが、そういった場合には、非常に多数の販売会社が対応できるようなものを考えていかなくてはいけないなと思っていまして、先ほどから事務局様からもご指摘いただいておりますし、委員の方々からも出ていますけれども、やはりシステムの対応等々負荷が大きいのも事実です。

システムの対応の中にも、特にデータという意味で言いますと、多分現実的には、既に過去のデータにさかのぼって、保有されておられる販売会社はそう多くないと思いますし、事務局さんのご意見である程度割り切って、遡及する期間を割り切ることもあるかと思うんですけれども、一方、データを持ち続けるというのも、過去、時点を切ると、そうなんですけれども、これから未来ずっと持ち続けることもやはり同じように、コストという意味でもかかってくると思いますので、そういったことも踏まえて、どうすればできるのかということについて、そこはしっかりこちらのほうで考えていかなくてはいけないかなと考えております。

短いですけれども、以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

大体時間が来ておりますけれども、さらにご発言ございますでしょうか。

私も一言だけ感想を。こういうワーキング・グループで専門的なご議論をいただいているので、その前提となる留意点というのでしょうか。2点ほど感じたのですけれども、1つはご指摘のありました一般投資家像といいますか、何を前提とするかということです。リテラシーというご指摘がありましたけれども、昔から言われていることですが、リテラシーとは別の次元で留意すべきことがおそらくあると思います。これは一般投資家であれ、消費者であれ、何が不足しているかというと、情報が不足しているということであり、場合によっては時間も不足している。そういうのが消費者であり、一般投資家であり、頭が悪いわけではないわけでして、リテラシーと別の次元でどういう前提なり、投資家像を描くかというのは重要なことと思います。

それから、もう一点、こういう投資信託の販売、勧誘は、ほかの金融商品もそうだと思いますけれども、単品で売られているわけではないと思うのです。ですから、高齢者とかお年寄りと言われても、例えば退職金がありました。銀行へ行けば、半分は定期預金に、半分は投信にという話で、投信を半分買ってくれれば、定期預金を1カ月ぐらいは金利を上げますとか、いろいろな、要するに組み合わせで販売される。証券会社であれば、株を買ってくれる人に投信も買ってもらうというのが伝統的な売り方だったと思います。ですから、投信だけを単品で議論するには危険で、投資家、消費者から見れば、セット販売というか、抱き合わせ販売が多いと思いますので、そういう中での情報提供なり、ルールづくりということを考えたほうがいいと思います。

以上が私の感想なのですけれども、今日、皆様方から多様なご意見をいただきましたので、手短にまとめてみたいと思います。まず第1点目、4ページですが、この運用報告書の改善については、細かい点でいろいろ工夫は必要ですけれども、多くの方は前向きに検討するということで、その方向での検討ということであったかと思います。細かい点では、プリントアウトして、それを刷るコストはだれが払うかという点について、今回ご指摘をいただきました。

2点目、6ページ目、トータルリターンの定期的通知制度。トータルリターンを知らせるというのは、アイデアとしてはいいということだと思います。ただ、具体的にだれがやるのか。どういうシステムを持って、どの程度可能なのかというのは、そのページにも留意点はありますけれども、そういうことを今後詰めていってはどうかということかと思います。

3点目、7ページ目。これは、手数料についての説明の不足というか、改善というのはおそらく右下のような説明を加える。あるいは、信託報酬という名前は現在でも目論見書等では運用管理費用と言うのですかね、報酬か手数料、いずれにしても運用報酬なり手数料という名称のほうがいいのかもしれません。いずれにしても、7ページの右下に書いてあるようなことを、説明を加えることについてのご異論はなかったように思います。

4点目は14ページになります。これは、いろいろなご意見がありましたので、EUの動きなどは様子も見ながらということもあろうかとは思いますけれども、しかし、基本的にはリスクについてのよりわかりやすい情報提供ということにあまりご異論はなくて、具体的に何を、だれがどのように、そして義務づけてやるかとかいうことについて、なお検討するということではなかったかと思います。

最後の5点目、16ページ目については、委員の皆様方の間でもご意見は分かれたと思います。どちらかというと、何らかの制限は導入することを検討してはいかがかというご意見のほうが多かったのではないかと思いますけれども、不要である、適切でないというご意見もあったところかと思います。

ただ、16ページのテーマは、実は4点目の14ページの課題ともリンクするので、14ページのほうが充実すれば16ページのほうの制限は不要というご意見もあったところですので、4点目の課題とあわせて、5点目、16ページの課題については、今日の皆様方からのご指摘、ご議論を踏まえて、さらに検討を進めるということではないかと思います。

事務局から何かございますでしょうか。大体、そんなところでよろしゅうございますでしょうか。それでは、ちょっと時間を延長してしまいまして、大変申しわけありませんでしたけれども、皆様方にはさらにご意見もおありかと思いますので、ぜひ随時事務局までお寄せいただければと思います。

本日は、大変活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。最後に事務局からご連絡等があれば、お願いいたします。

○横尾企画官

ありがとうございます。

次回の日程のご案内でございます。次回、1週間後になりますけれども、5月18日、13時からということでございまして、次からは投資法人、リートについてご議論いただければと思っております。よろしくお願いします。

○神田座長

来週午後1時ということでございますので、よろしくお願いいたします。どうも、ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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