金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第6回)議事録

1.日時:

平成24年5月18日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○横尾企画官

皆様、ご多忙のところご出席いただきまして、ありがとうございます。

会合の開催に先立ちまして、恒例のように、お手元の資料の確認だけお願いさせていただきます。まず資料1といたしまして、「J-REIT市場の概況・基礎データ」、不動産証券化協会様よりご作成いただいたもの、それから「Jリート市場拡大策を巡る議論」、野村資本市場研究所、関様からおつくりいただいた分、そして「J-REIT市場の課題と改善策について」、SMBC日興証券の鳥井様よりご提出いただいたものがございます。そのほか参考資料といたしまして、第1回会合で事務局より提出させていただきましたJ-REITに係る論点、こちらを参考資料としてご用意させていただいております。なお、最後に、メンバーの名簿をご用意させていただいております。

ご確認をお願いします。

○神田座長

資料のほう、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、始めさせていただきます。毎週お集まりいただきまして、大変恐縮でございますけれども、本日は投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループの第6回目の会合ということになります。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

議事に入ります前に、今回から参加されますオブザーバーの方のご紹介を、事務局からお願いいたします。

○横尾企画官

今回、そして次回、J-REITに関する議論となりますので、国土交通省よりオブザーバーのご参加をいただいております。ご紹介させていただきます。国土交通省土地・建設産業局不動産市場整備課不動産投資市場整備室長の横田正文様です。

○国土交通省(横田オブザーバー)

国土交通省の横田でございます。よろしくお願いします。

○神田座長

どうぞよろしくお願いいたします。

そこで、本日ということになりますけれども、本日は有識者の方からお話を伺うという予定でありまして、このワーキング・グループのメンバー以外にお二方に特にご出席をいただいております。これも事務局からご紹介お願いします。

○横尾企画官

座席順にご紹介させていただきます。株式会社野村資本市場研究所研究部長でいらっしゃいます関雄太様です。

○関野村資本市場研究所研究部長

関です。よろしくお願い申し上げます。

○横尾企画官

それから、SMBC日興証券株式調査部シニアアナリストの鳥井裕史様です。

○鳥井SMBC日興証券シニアアナリスト

鳥井です。よろしくお願いします。

○神田座長

どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、お手元の議事次第に沿って進めさせていただきたいと思います。まず、投資法人の現状と課題につきまして、3つのお話というか、プレゼンテーションをお願いします。不動産証券化協会、そして関さん、鳥井さんと、この順番でお話をいただきます。その後、皆様方でご議論をしていただくという流れで議事を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速でございますけれども、まず不動産証券化協会からJ-REIT市場の概況・基礎データにつきまして、できれば10分程度ということなのですけれども、ご説明、お話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○不動産証券化協会(巻島オブザーバー)

不動産証券化協会の巻島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

当協会は、J-REIT市場の社会的役割を十分に発揮させるためには、時価総額を早期に10兆円に拡大する必要があるということを提言しております。

では、お手元のJ-REIT市場の概況・基礎データに沿ってお話をさせていただきます。各ページの左下にページ数を打ってありますが、2ページ目、第1回目に金融庁から説明のあった投資法人の仕組み図であります。J-REITは借り入れと投資法人債及び増資により資金調達を行いながら、賃貸不動産に投資し、主に賃料収入からの利益を配当するものであります。

賃貸不動産の賃料収入は賃貸市場の需給関係に影響を受けるわけですけれども、優良な賃貸不動産の場合には相対的に安定しています。資産の売却はあまり見られませんが、最近では保有期間が長いものを売却する事例も見られます。

では、資料の4ページ、「J-REITマーケットの推移」と、5ページのグラフをあわせてごらんください。2001年9月にスタートしたJ-REIT市場は、昨年創設10年目を迎えました。2007年までに時価総額で約7兆円、銘柄数で42銘柄まで順調に拡大いたしましたが、リーマンショックによりニューシティ・レジデンス投資法人というREITが民事再生といいますか、破綻をいたしました。それを機に、投資口価格は大きく下落いたしました。破綻の要因は、REITの資金調達手段が借り入れ、投資法人債、増資に限られている中で、金融・資本市場がリスク回避傾向を強めたため、それらの資金調達方法がすべて機能せず、借り換え等のめどが立たなかったことが挙げられます。

この状況に対して、官民によりつくられた不動産市場安定化ファンドと呼んでおります官民ファンドによる貸し付けと、合併法制の整備による再編の進展によりまして、市場は落ちつきを取り戻しました。

その後、賃貸市場も底打ちし、投資口価格は回復局面にありましたが、東日本大震災と原発事故や、欧州債務危機の影響を受けまして、昨年後半から投資口価格は低迷いたしました。

現在は、J-REITの保有物件では震災の影響が軽微であったことに加え、日銀の資産買入基金の買入対象となったこともあり、全体としては持ち直し傾向にあり、現在34銘柄、時価総額3.5兆円となっております。

6ページ目、J-REITが保有している資産の累積グラフです。薄い色で恐縮です。それに、時価総額、上場銘柄数をあらわしたものです。資産の約半分強が賃貸オフィスビルに投資されております。続いて賃貸住宅、商業施設、その他のところは流通倉庫やホテルなどであります。総額で約8兆円の資産規模になっています。

7ページ、赤い折れ線グラフが分配金の利回りの推移でございます。棒グラフは分配金を累積したものでございます。分配金利回りの計算式ですけれども、分母は投資家から預かった出資金の合計額、株式会社でいえば自己資本の金額に相当いたします。分子は分配金の合計額でございます。年率で換算して、約5%前後で安定しております。したがいまして、分配金の累積額も、比例的と言いますか、直線的に増加しておりまして、2010年6月には1兆円を超えました。現在、年間で2,000億円程度を配当しております。

8ページをごらんください。J-REITが保有する実物不動産ベースのインカムリターンとキャピタルリターンをグラフにしたものでございます。濃い青色の棒グラフがインカムリターンで、計算式の分子は賃料からの純収益であるネットオペレーティングインカムでございます。分母は不動産鑑定評価額です。四半期ベースで、そこにありますように1.5%から2%弱、年率で5%前後で安定しています。

キャピタルリターンは景気や金融市場の影響を受け、そこにありますようにシクリカルに変動いたしますが、ここでごらんいただきたいのは、リーマンショックの前後でも、インカムリターンのほうは相対的に安定しているということが見てとれるのではないかということでございます。

9ページをごらんください。赤の折れ線グラフがJ-REITの保有不動産の稼働率です。青の折れ線グラフが市場全体の平均稼働率でございます。J-REITの運用資産の稼働率が相対的に高く、市場競争力のある賃貸不動産に投資をされていることがわかります。

私どもは、J-REITが優良な賃貸不動産を購入することにより、その資金が新たな都市開発のために使われ、都市の更新が促進されたり、賃貸不動産の耐震性能や防災性能の向上が図られるということを、J-REITが果たす重要な役割の1つであると評価しておる次第です。

では、10ページをごらんください。都市開発の担い手と言いますと、まずディベロッパーが思い浮かぶわけでありますが、この表にありますように、大手不動産会社6社が保有している賃貸不動産の時価は、合計で11兆4,000億円に過ぎません。J-REITの資産は既に8兆円になっているわけですので、民間資金を都市資産に流入させるための資金循環経路として、大きな存在になっていることがわかります。

11ページをごらんください。青い色の棒グラフは、2001年以降J-REITが取得した賃貸不動産の金額でございます。また赤い色の折れ線グラフは、上場会社が購入した固定資産の不動産金額を適時開示情報等で集計いたしまして、その中にJ-REITが買った金額のシェアをあらわしたものでございます。J-REITは、2005年から2007年にかけては、おおむね平均して毎年1兆5,000億円以上の不動産を取得し、シェアも最大で45%に達しました。2008年以降は資金調達環境の悪化により、年間取得額は激減いたしましたが、シェアは2割を保ちました。最近では再び5,000億円を超える不動産を取得し、4割を超える程度のシェアにまで回復しています。

J-REITは、優良な賃貸不動産の買い手として高いシェアを有しており、資産デフレの防止と不動産市場への資金流入に重要な役割を担っているといえます。

12ページをごらんください。このように賃貸不動産の買い手として重要なJ-REITですけれども、資金調達能力のところに課題があります。資金調達手法が借り入れ、投資法人債の発行、増資等に限られておりますので、このグラフのように、金融・資本市場の逼迫時には金融機関の貸し出し態度も極端に硬化いたしますので、債券発行市場それから資本市場もリスク回避傾向が強まることもあり、資金調達ができなくなる結果、新たな資産の取得がほとんど不可能ということになります。

賃貸不動産の売買価格が下がっているときに、資金調達ができて、機動的な資産の取得ができれば、運用パフォーマンスも向上し、投資家のためにもなり、資産デフレの防止という役割も担えるのですが、現状の制度下では限界があるという状況であります。

14ページをごらんください。世界のREIT市場の概要であります。日本は11番目にREIT制度を導入いたしました。アメリカ、オーストラリアに次いで第3位の時価総額という時期もあったのですが、現在は4位でございます。ここには24カ国、617のREIT、時価総額66兆円を表にしておりますけれども、ここ二、三年で新たに導入した国も多く、現在では36カ国に広まっております。

REITの形態としては、上場ということもあり、ほとんどがクローズドエンドのみで、また、マネジメントは外部運用型が多数派ですが、ヨーロッパでは内部運用型や両方とも可能だという型が拮抗しているという状況でございます。

15ページをごらんください。主要な各国REIT制度の比較表でございます。ここではSPC等を通じた不動産の取得、ライツオファリング、転換社債、自己株(投資口)取得の4つの項目について比較をしております。このように、J-REITと海外のREITでは多くの点で差があります。J-REITはSPCによる不動産の取得ができないことで、実質的に海外の不動産に投資をすることができません。オフィス、商業施設、流通倉庫などでは、日本から欧米やアジアに既に多くの不動産投資が行われておるわけですけれども、J-REITはそれらを取得することができない状態にあります。

ちなみに、この表にありますアメリカ、オーストラリア、フランス、イギリス、シンガポール、香港のREITでは、日本の不動産も含めて海外の不動産を保有しているREITが数多くあります。

また、J-REITは、ライツオファリング、転換社債、自己投資口の取得ができないため、金融・資本市場の変化に対応した適切な資金調達や、資本政策の実施が制限されています。海外の投資家からは、J-REITは他国のREITに比較して、成長性や財務マネジメント力において制度的に劣後しているのではないかという声も聞きます。ぜひ改善が必要であると考えます。

16ページをごらんください。日米のREITの運用資産の用途を比較しております。米国のREITは、さまざまな用途の賃貸不動産を運用しており、多様な投資機会を投資家に提供していることがわかります。我が国REITの課題の1つであろうかと思います。

説明は以上です。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして関さんから、J-REIT市場拡大策を巡る議論につきまして、これもできれば10分程度をめどにプレゼンテーションをいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○関野村資本市場研究所研究部長

改めまして、関でございます。よろしくお願い申し上げます。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。冒頭に書いてございますとおり、不動産証券化協会の中につくられました「Jリート市場拡大策と東京市場のアジア拠点化に関する研究会」という有識者の勉強会があったのですが、その報告書を取りまとめさせていただいた関係で、報告概要を伝えさせていただきたいと思っております。

まず1ページ目、この研究会の概要でございますが、2001年にJ-REIT市場が創設をされまして10周年ということを機にいたしまして、不動産証券化協会の事務局内につくられた専門家委員会でございます。昨年の10月から5回にわたって開催をいたしました。座長は田村幸太郎先生という投資法人制度の創設、改革に大変見識のある先生でございますけれども、田村先生を座長といたしまして、右側に書いてございますようなメンバーが集まったということでございます。それぞれ実務的な、あるいはアカデミックな経験、あるいは単にJ-REITをつくるということだけではなく、投資家サイド、マーケットといったことについてもかなりの見識を持つ方がお集まりになった研究会でございます。

私は2004年から2011年までの7年間、米国に駐在をしておりまして、そこで米国のREITの制度、あるいは不動産ファンドの研究に少し携わらせていただいた関係で、コーディネーター役といたしまして報告書の取りまとめをさせていただいたということでございます。

さて、この研究会でございますけれども、順を追って、どんな雰囲気であったかということ、どんな議論であったかということをご紹介したいと思います。まず2ページでございますけれども、これまでのJ-REIT市場10年間の成長と市場改革の経緯みたいなことについて、イベント面から年表をつくったものでございます。2001年から2003年ぐらいにかけましては雌伏期といいますか、制度の認知を徐々に広げていく時期でございました。2004年から2007年にかけましては、さまざまな制度上の後押し、それから経済・市場環境も非常によかったということで、ファンドの数や投資家の数もどんどんと成長していった成長期と言えるかと思います。この間、日本の資本市場を取り巻くさまざまな法制度の改正がされておりまして、そういったことも日本の市場の活性化に貢献していたのかなと思うところでございます。

2008年前後は、先ほど巻島さんからご説明がありましたとおり、リーマンショックをはじめとする信用危機が起きまして、J-REITの制度の脆弱性といったことが注目をされた時期でございます。その後、さまざまな対応策がなされまして、信頼回復に向かって市場関係者が努力をしているところでございますけれども、日本銀行の資産買入策といった、やや特殊な金融政策によって市場が支えられているという環境が依然として続いておるという状況でございます。

3ページでございますが、以上の10年間の歴史を振り返りますと、私個人的には大きく2つほどJ-REITの意義があったのかなと思っております。1つはJ-REIT市場ができ上がったことで、商業不動産取引全体の透明性ですとか、評価体系の透明性が高まったことです。実際に、いわゆる最後の買い手として、不動産ファンド、不動産市場全体を活性化する役割をJ-REITが担ったと思います。

それからもう一つは、投資ビークルとしてのJ-REITは、先ほどのご説明にもありましたとおり、安定したインカムゲインを投資家に提供しつづけたというところかと思います。

これを踏まえまして、私が参加した研究会におきましては、次の10年、J-REITをどのように活性化するべきなのか、あるいは活性化することには、どのような社会的、経済的意義があるのかということで、さまざまな意見を議論してまいりました。特に挙げられたのは、ここに書いてございます3つの点でございます。

第1に、民間資金を不動産市場に流入させるためのエンジンとして、J-REITをさらに成長、拡大すべきではないかということでございます。欧米における金融危機の継続、それから資産デフレ的な状況が継続する中で、より経済、金融を活性化するための役割を担えるということでございます。

第2に、高齢化社会における個人資産運用の中核としてJ-REITが活用可能だということでございまして、後にも申し上げますが、個人とか、それから投資信託の中でJ-REITをもっと活用してもらうということができるのではないかということでございます。

そして3番目に、国際金融センター整備への貢献ということでございまして、先ほどもお話ございましたけれども、REITという制度がグローバルなスタンダードとして確立してくる中で、よいJ-REIT市場をつくるということは、日本の金融市場の活性化につながるのと同時に、海外からの投資家、特に金融だけではなく不動産の投資家も呼び寄せる1つの武器になるのではないかということでございます。

一方で、4ページ目をごらんいただきたいのですけれども、現在のJ-REIT市場には幾つかの課題がございます。先ほど来、話に出ておりますように信用危機の影響というものがまだ残っておりますし、海外の金融危機とか日本の大震災の影響といったものも、J-REIT市場の評価に対して少なからず影響を残しております。代表的な指標を挙げるならば、純資産の価値に対しまして、株価がかなり低くディスカウントされた評価が続いているということでございます。

こういった状態の中で、積極的な資本調達がなかなかできず、なかなか市場の好循環を生み出すことができない状態にございます。

投資家層の厚みというのも、やや気になるところでございます。4ページ目の右側図表をごらんになっていただきますと、青の凡例が2004年の投資部門別の売買状況、赤のグラフが2011年の年間の投資部門別売買代金をグラフにしたものでございますけれども、これを見ていただきますと、外国人のシェアが非常に上がったわけなのですが、個人のシェアは少し下がっております。それから投資信託のシェアもまだまだ低いといった状況にございまして、これだけ低い評価が続いているにもかかわらず、また高い配当利回りが得られるにもかかわらず、日本の国内の投資家がなかなか買いに来ないという状況がございます。

5ページをごらんになっていただくと、J-REITの資本調達が信用危機後なかなかできないという状態を示しています。J-REITが社会的、経済的役割をなかなか発揮することができない状況が続いているということでございます。

6ページをごらんになっていただきたいと思います。これは我々の研究会の中でも、かなり話題になったところでございますが、海の向こうの米国のREITはどういう状況であろうかということでございます。これを見ていただきますと、左側の株式時価総額の推移が最も典型的な指標と言えるかと思いますけれども、リーマンショック後にはかなり縮小したのですけれども、その後また復活をいたしまして、今やリーマンショック前のピークを上回るREITの時価総額規模にまで復活をしているということでございます。

この復活は何によって成し遂げられたのかということでございますが、エクイティファイナンスが非常に積極的に行われておりまして、特に2009年の第2四半期以降のエクイティファイナンスの規模が非常に大きいということでございまして、活発な資本増強によりまして信用力を回復するとともに、成長原資、すなわち不動産やREITを買収するための原資も確保したということでございます。

先ほど申し上げたように、REITというマーケット、制度が、世界のスタンダードになっていく中で、依然としてグローバルな中心として米国REIT市場がプレゼンスを維持しているという状況ではないかと思います。

7ページをごらんになっていただきたいと思います。この米国REIT復活の要因として活発な資本調達と申し上げたのですけれども、その裏側には、米国における投資信託の拡大ございます。日本においても、契約型の投資信託の中で不動産投資信託を買えるようになったことがJ-REIT市場の拡大に貢献しているわけなのですけれども、考えてみますと、高齢化した個人投資家が、J-REITに運用する投資信託を買うと、プロフェッショナルの運用者による安定したインカムゲインを取得し、他の資産との分散効果も期待できるわけですから、投資信託とREITにはかなりの親和性があるということだろうと思います。

米国もベビーブーマー層が高齢化する中で、REITファンドですとか、インカムゲインをねらうファンドというのが非常に増えてきておりまして、こういったファンドが増えていることが、活発な増資を支えたという見方も可能かと思います。

もう一つ、これは米国だけではなく、オーストラリアでも同じ現象が見られますけれども、確定拠出年金の中で投資信託を買う場合に、REITですとか不動産証券のようなものを、ある一定割合でアロケートしていくということが非常にリーズナブルであるということでございます。オーストラリアのスーパーアニュエーションにおきましては不動産、これは非上場の不動産も含みますが、10%程度のアロケーションをしているということで、こういった長期安定的な投資家層がいるということが、REIT市場拡大の大きなかぎになるということかと思います。

8ページと9ページは研究会の結論的な部分をチャートにしたものでございます。J-REITには社会的な役割が大きく、10年を経て新しい成長ステージに向かうことで、さまざまな日本の経済の好循環に貢献できるのではないかということでございます。

一方で、J-REIT市場の現状は、まだまだ評価が低いと言いますか、そういったところがあります。一方、海外REITはグローバルな競争ということも少し意識しながら、制度の活性化・整備を進めているということでございます。

9ページをごらんになっていただきたいと思います。具体的なJ-REIT市場拡大策でございますけれども、これは不思議なことに、J-REITの制度をこういうふうに変えようとか、規制をこういうふうに緩和すべきだという議論以上に、J-REIT制度以外の部分においても市場の活性化とか、投資家層を増やす努力といったものがもっと必要なのではないかという意見が多く出されました。市場関係者の中で、必ずしもJ-REIT制度の改革だけではなく、日本の資本市場あるいは不動産市場全体の改革、活性化というものを求める声が大きかったということです。報告書上はJ-REIT制度の改革というのを3つ目の柱にしておりますが、投資家層の拡大を1番目の柱、それから不動産投資市場の拡大を2番目の柱にあげました。三位一体改革などと、よく我々の研究会では議論しておったのですが、そういった総合的な改革が必要であろうということでございます。

アクションプランについても、必ずしも投資法人制度の細かいところをただ変えるだけでは、J-REIT市場の拡大にはつながらないだろうという意見が多かったということで、かなり幅広にまとめさせていただいております。

10ページでございますが、最後に、そうはいってもということで、J-REITの制度面ということについて、どのような議論がなされたかということを示しています。REITの本質といたしまして、不動産所有をし、賃貸収益を分配する中で、法人税を非課税にするという制度的な本質があるわけでございますが、この制度なりビークルは平時においては非常に安定的であり、評価も得られるのですが、いったん信用危機になりますと、弱いところもあるということは明らかです。

それから、増資なり、外部成長というところを確保していかないと、なかなか長期的に信頼を得ることができないということでございまして、財務マネジメント手法の柔軟化を、投資主の保護とガバナンスを大切にしながら進めていくことが、J-REIT市場拡大策の最も根幹になるのではないかと考えます。以上が大変雑駁ではございますけれども、研究会の報告の概要でございます。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、最後になりましたけれども、鳥井さんからJ-REIT市場の課題と改善策についてということで、これは20分程度をめどにお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○鳥井SMBC日興証券シニアアナリスト

SMBC日興証券でREIT市場のアナリストをさせていいただいています、鳥井と申します。よろしくお願いします。私からは、直接REIT市場に毎日携わらせていただいている立場から、これまでのREIT市場の意義、それから今後の課題というものを中心にお話しさせていただきたいと思います。

それから、私の資料の後半の部分に、各データ、参考資料として載せさせていただいていますけれども、巻島専務と関様のデータと同じようなものではありますので、こちらは参考程度で使う程度で、基本的には1ページから口頭でお伝えさせていただきたいと思います。

まず、1ページのところで、2001年の9月にJ-REIT2銘柄が東証に上場してからのパフォーマンス状況、それから投資家サイドから見た意義、不動産の投資市場から見た意義というところを、まずお伝えさせていただきたいと思います。

まず1ページ目の一番上の段に書かせていただいておりますけれども、今年の4月末時点でのJ-REIT市場全体の分配金利回りは5.4%という状況でございます。直近、昨日の終値ベースですと5.5%を若干上回る程度というような状況でございます。長期金利を4%以上上回る水準でございますので、円建て資産で5%を上回るインカムゲインが期待できるという商品は非常に貴重なのかなと思っております。

それから、2001年の9月10日から、足元4月末までのJ-REIT市場全体のパフォーマンスはどうだったかというところでございますが、分配金を除いた価格だけの価格指数ベースで見ておりますと、累積でマイナス3.2%、TOPIXがこの期間は24%弱のマイナスでございましたので、TOPIXの動きに比較しますと、REITの価格、パフォーマンスというのはましだったということではありますが、ただ、マイナスリターンであったことには変わりはないという状況でございます。

一方で、先ほどお伝えさせていただいたとおり、REITの特徴としては、やはりインカムゲインが獲得できる商品だというところでございます。分配金を含めたトータルリターンに関して、過去10年強で見ますと、J-REITはプラス63%のパフォーマンスを遂げております。同時期のTOPIXの配当込み指数がマイナス10%でございましたので、73%超過リターンを達成したというような状況でございます。

J-REITのインカムゲイン、これは長期的に見て積み上がりますと非常に大きい。パフォーマンスに大きく寄与したということで、投資家の方々にも、このインカムゲインというのは非常によかったのではないかと思っております。

一方で、価格の動きなのですが、2006年の後半ごろまでは比較的投資口価格の動きというのは安定して動いていたのですけれども、2007年の前半に関しましては賃料の上昇期待、もしくは不動産価格の上昇期待を織り込みつつ、価格が相当上がりました。一方で、2007年の後半から2010年にかけましては逆の動きで、不動産価格の下落懸念、及び資金調達環境の悪化というものを織り込みまして大きく価格が下がったということで、投資口価格のボラティリティは相当高まりました。それに加えまして、まだまだ資産規模が小さいというところでございましたので、流動性の面からも、どうしても価格のぶれが大きいというような状況でございました。

4月末時点の時価総額3兆5千億円で、不動産の取得価格総額だと8.5兆円ということで、この10年間でここまで残高を積み上げてきたというところは意義深いものだと考えておりますけれども、やはり先ほど巻島さんからお話がありましたとおり、時価総額10兆円、資産規模で申しますと20兆円程度というのが市場の規模、流動性などを考えますと必要なのかなと考えております。

それから、不動産投資市場から見た現状でございますが、先ほどのお話でもございましたとおり、2005年から2008年にかけましてはJ-REITの年間の物件取得額は年間で1兆円を超えておりました。その期間の上場企業の不動産取引の買い手のうち、約半数はJ-REITでございましたので、やはりREITの市場が活性化して、REITがいっぱい物件を買うというような状況であれば、不動産投資市場の活性化、それが不動産価格の上昇であったり、デフレの払拭に大きく貢献するのではないかなと思っております。

それに加えまして、J-REITの開示状況なのですが、IRなども充実しておりまして、実際の物件の取得の事例、賃料がどういう水準なのか、もしくはどれほどの利回りで物件を買っているのか、月々の稼働率はどうなのかというような情報が開示されておりますので、これは不動産市場の透明性向上や物件の取得事例なども多いので、取得事例のベンチマークとなり得るものとして、これは非常によいものなのだろうとは思っております。

それで、ここまで申し上げたのは、主に意義というところではございますが、次の2ページ目で、今後の課題というところをお伝えさせていただきたいと思います。まず、先ほどお伝えさせていただいたとおり、資産規模20兆円、時価総額10兆円に向けて安定した分配金を維持もしくは向上しつつ、いかに資産規模を拡大していくか。数多くの投資家の方々に買っていただくということで、流動性向上及び投資家層の拡大、それからボラティリティの低下というところが今後の課題になってくるのかなと思っております。

この5つの課題をいかに克服していくかというところでございます。幾つかの課題克服のための手段はあるかと思いますが、ここでは主に資金調達手段及び資本政策手段の多様化の部分と、それからガバナンス強化であったり、市場の透明性の強化という面でお話をさせていただきたいと思います。

まず、私としては資本政策手段の多様化というところで、自己投資口取得の解禁というのが一番意義としては大きい、プラスの影響としては大きいのではないかなと思っております。先ほど巻島さんからお話もありましたとおり、日本以外のREIT市場では認められているというものでございます。

それから、先ほどお話しさせていただいたとおり、資産規模を拡大させていくためには、やはり定期的に増資をしていく必要がある。ただ、もともとの1口当たりの純資産よりも低い価格で増資をしてしまうと、1口当たりの純資産が希薄化してしまう。もしくは1口当たりの分配金が減少してしまうということで、既存投資主に非常に迷惑をかけてしまうという懸念点がございます。したがいまして、いかに1口当たりの純資産よりも高い投資口価格水準で増資ができるか。1口当たり純資産価値よりも高い水準で増資ができれば、口数の増加よりも調達金額が多くなって、結果として1口当たりの収益性を高めて、それで物件を買っていけますので、分配金を維持もしくは向上させながら、増資をしながら資産規模を拡大していけると言えるかと思います。

それで、昨日の終値の東証REIT指数は930ポイントという水準でございます。一方で、純資産価値1倍のラインというのは、東証REIT指数で申し上げますと約1,050ポイントという水準でございますので、足元の東証REIT指数というのは、10%前後ディスカウントされているという状況でございます。ディスカウントされている状況というのは、外部環境も含めていろいろ理由はあるかと思いますけれども、やはり自己投資口取得を可能にするということができれば、そのアナウンスメント効果も含めて、投資口価格が1口当たり純資産価値の1倍のラインというのが1つ目安と言いますか、ボトムラインとして期待できるのではないかなというのが1つございます。

それから、実際の今のREIT市場で売買のメーンプレーヤーの状況を見ておりますと、順張りの投資家がほとんどなのかなという印象が見てとれます。具体的に申し上げますと、REIT特化型投資信託、それから地域金融機関の方々が売買の中心であるのですが、やはりこれらの投資家層の投資行動を見ておりますと、どうしても順張り投資的な動きをしております。したがいまして、投資口価格が一方向に動きやすいという特徴がございます。

そういう中で、やはり1口当たりNAV、純資産価値という水準を意識させることで、結果として順張り投資家だけではなくて、逆張りと言いますか、資産価値に目を向けた投資家層も新たに入ってくるのではないかということで、さまざまな投資家層がこのマーケットに入ってくることで、結果として投資口のボラティリティが低下したり、もしくは流動性の向上につながるのではないかと思っております。

それから、REITさんの立場からいきますと、投資口価格が安定して、一口当たり純資産を上回る水準で増資をすることができれば、一口当たりの収益性を毀損させずに、物件取得と増資を同時にできる。それによってREITの資産規模をどんどん拡大できるのではないかなと思っております。それができれば不動産の売買市場の活性化にもつながりますし、それがデフレの払拭に貢献していくというところで、非常に意義としては大きいのかなと思っております。

3ページ目は、今お話しさせていただいたことを図表でまとめたものでございますけれども、ご参考いただければと思っております。

それから、4ページ目でほかの資金調達手段について、意義と課題というものをまとめさせていただいております。まず、ライツオファリング、新株予約権でございますが、この意義と課題というのをお伝えさせていただきたいと思います。ライツオファリングについては、基本的には有効な資金調達手段であると思っております。やはり金融危機が起きたとき、例えば2009年から2010年、非常に世界的に厳しい資金調達環境であったときというのは、シンガポールや欧州のREIT市場では、このライツオファリングを導入した増資が活発に行われまして、その結果金融危機を乗り切ったという過去の事例がございます。

また、ライツオファリングを行使することでいけば、一口当たりの純資産を大幅に下回る水準のディスカウント状態での増資であっても、既存投資主がそれに応じることができていれば、既存投資主の実質的な利益の希薄化というものが回避できるのではないかと思っております。

ただ一方で、課題と言いますと、ライツオファリングが横行してしまうと、これはディスカウント状態での増資になってしまいます。投資家側としては、自分の持ち分相当分を増資に応じることができればいいのですけれども、やはり投資家サイドから見た資金の都合とかもありますので、もしそれに応じなければ希薄化をもろに受けてしまうという問題点もございます。したがいまして、ライツオファリングが横行するようなことになれば、どうしてもREIT側の都合に優先されてしまうという部分がございますので、やはりここはライツオファリングをしなければ財務健全性が著しく損なわれてしまうのではないか。そういうようなときの緊急事態というところで導入するような倫理観を持っていく必要はあるのかなと思っております。

それから、転換社債(CB)の導入に対する意義と課題というのもお話しさせていただこうと思っております。CBの転換価格、これを一口当たりの純資産額以上で設定していれば、仮に投資口価格がその水準を上回って、投資口に転換されていくというような状況になれば、これは純資産価値を希薄化させずに増資をしたことと同じ効果がもたらされますので、基本的にはよい資金調達手段だと思っております。

かつ、投資口価格の上昇局面で、この投資口への転換というものがされていけば、需給の悪化による投資口価格の下落、これを懸念せずに済む可能性がありますので、そういう状況ではよいのかなと思っております。

ただ、問題点としましては、やはりREITの投資家の方々とお話しさせていただいていますと、一口当たりの分配金というのを非常に重視して投資されている方が多いかと思っております。したがいまして、CBの導入で期末時点で投資口数が予測しづらくなってしまう。当初各REITさんが公表した予想の一口当たり利益であったり、分配金と実績値が大きく変動してしまう可能性があるというものが課題として挙げられるかと思います。

したがいまして、分配金を維持するということであれば、やはり利益超過分配金など、別途ほかの課題の仕組みも追加的に必要になる可能性がありますので、その問題点はCB導入のときには検討すべきかなと思っております。

それから、先ほどもお伝えさせていただいたとおり、現状のREIT市場での主な投資家層を見ておりますと、REIT特化型投信であったり、地方銀行の方々という投資主体でございます。したがいまして、CBが発行されたときに、実際だれがCBを買うのかというような問題点もございますので、投資家サイドの運用体制で、REIT投信でもCBが買えるのかどうかというところを見ていく必要はあるのかなと思っております。

ここまでは、私のほうからは資金調達手段、それから資本政策の意義と課題というところを伝えさせていただきましたけれども、一方で、これからよりガバナンスの強化、もしくは市場の透明性として強化していくべきことも、簡単にお伝えさせていただこうと思っております。

現状のREITは、やはり外部運用制度というのを使っておりますので、どうしてもREIT側とスポンサーサイドでの利益相反というものも一部で見られるというところがございます。具体的に申しますと、スポンサーサイドからREITに物件を渡す場合、物件の価格が適正なのかというところが、1つ問題にはなるのかなと思っております。例えて申しますと、スポンサーさん側から見た有利な価格、高値でREITに物件を売ってしまうと、REITの投資家から見ると、それはマイナスということになってしまいますので、やはりスポンサーとREITとの物件売買の妥当性、この説明責任の強化というのは必要なのかなと思っております。

現状でも、不動産鑑定評価額をとって、それをもとに不動産の売買がされているケースが多いですけれども、やはりその不動産鑑定評価額自体が正しいのかという課題もございます。ですので、不動産鑑定評価額の前提となっている賃貸収入であったり、還元利回り等の開示はしていく必要はあるのかなと思っております。

大部分のREITさんは、今の時点でもこの前提条件などは開示しておるのですけれども、一部開示されていないREITさんも中にはいらっしゃいますので、開示の統一性というところも必要なのかなと思っております。

それから、これまでREITの資金調達手段として、エクイティサイドから見ますと公募増資及び第三者割当増資、この2つに限られているというような状況でございました。今後増資をしていくというときに、仮に自己投資口の取得等を認められるような場合があるのであれば、逆に一口当たりの収益性を大きく毀損してしまうような増資というのはなくなることは期待する一方で、そういう増資も今現状ではございますので、やはり既存投資主の利益、一口当たりの分配金を希薄化してしまうような増資に対しては、これまで以上の説明責任の強化が必要なのではないかと思っております。

具体的には、投資主総会にかけるとか、もしくは取締役会でより現状よりも強化していくというところを課題として挙げられるかなと思っております。

それから最後に、市場の取引の透明性というところでございます。やはり現状REIT市場では、インサイダー取引の明文化がされておりませんので、やはりここは一般の株式と同様に証券取引所で売買されている以上は、一定のインサイダー規制というのは対象として取引の透明性向上としては必要なのかなと思っております。ただ、非常に範囲が広範にわたるので、基本的には私としては資本市場に関する部分、具体的には増資であったり、もしくは合併というような事例のところについては、やはりインサイダー規制の明文化というところは透明性の向上のために必要なのかなと思っております。

最後に、参考資料で1つだけご紹介させていただきたいのが、15ページのグラフでございます。先ほど関さんからアメリカのREIT市場では投資信託が非常に増加していて、それがREIT市場を支えているというお話がございましたけれども、15ページは日本の個人投資家向けのREIT特化型投信の残高の動きでございます。左側の青い棒グラフがJ-REITだけでの投資信託の状況です。足元としては7,000億円程度という水準で、2010年以降大きく増加しておりまして、これは日本の個人投資家にも一定の認知度が高まっているというしるしだとは思っております。

一方で、右側のピンクの棒グラフをごらんいただければと思います。こちらが日本で販売されているグローバルREIT、世界のREITに投資をする投資信託の残高でございます。足元5兆円前後という水準まで増加しております。これは先ほど関さんのお話にもありましたけれど、日本だけではなくて、グローバルで見てグローバルリアルエステートファンドであったり、グローバルREIT投信の残高が非常に拡大している。このグローバルREIT投信がいかに日本のREITを買ってくれるかというところが非常に重要なのかなと思っております。そのためには日本のREITがより魅力的になるべきであると。ほかの国のREITであれば、資本政策、資金調達手段が柔軟に可能な状況になっている一方で、日本だけが資金調達手段で制限があって、何もできないということであれば、やはりほかのREIT市場に、このグローバルREITファンドのお金が流れていってしまいますので、やはり競争力強化のためには、先ほどお伝えした自己投資口の取得であったり、海外不動産投資が実質的に可能になるようなことは必要なのかなと思っております。

以上になります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまお三方からお話をいただきましたので、そのプレゼンテーションを踏まえまして、本日は残りの時間、皆様方でご議論、ご審議をいただければと思います。これまでは、あいうえお順というか、まず一言ずつご発言をお願いしたりしてきたのですけれども、本日はちょっと投資法人という専門性が高いテーマですので、お一人ずつ一言というとご迷惑かと思いますので、本日はまずはメンバーの皆様方からご自由に、何度でもご発言をいただくということで、やってみたいと思います。

なお、順番に一言あるだろうと思って準備してこられた方は、もちろんその内容をご披露いただいて結構でございます。

それでは委員の皆様方、まずご質問、ご意見、どなたからでもお願いいたします。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。

若干感想的な意見を申し上げて、それからちょっと鳥井さんに1つご質問をしたいのですが、まず私の感想的な意見ですけれども、最初に、資金調達手段の多様化が必要だという話は非常によくわかるのです。詳細な制度の議論は、また次回ということかと思いますので、その点については特に申し上げませんが、ただ同時に、私、REITの過去の歴史を振り返ると、現在若干低迷的な状態になっている1つの理由は、やはり2005年以降の、地価がわりとよくなっていった中で、変な言い方をするとビル転がしみたいなことをやるようなREITが一部にあらわれ、それが結局金融危機が来たところで破綻してしまって、一挙に反対に振れてしまったという。このことが、本来であれば安定的なインカムを分配していく導管体ということで、いわばミドルリスク、ミドルリターンの投資の手段になるはずだったREITの性格をちょっと変えてしまって、それが投資家に悪いイメージを持たれてしまったというのはあると思うのです。

ですから、資金調達手段を多様化すること自体、私は積極的に賛成なのですけれども、その使い方については、やはりREIT関係者の倫理というか、しっかりした考え方のもとに上手にやっていただきたいなと。まかり間違っても、REITが破綻する、あれはほんとうに世界でもまれ。まれというか、私はほかに例を知らないのでありますがというような、単なる導管が破綻してしまうという、ほとんどあり得ないことが起きたということは決して忘れてはいけないのだろうと思っています。

それから2番目に、これはちょっとした思いつきなのですが、REITに対して、やや一般の、特に個人投資家が何となく投資の敷居を感じるとすると、名前の問題というのも、もしかするとあるかもしれないと思っていまして、これはどうしてか私はよくわからないのですが、非常に著名なディベロッパーがオリジネーターとなってやっておられるようなREITに、そことの関係性を示すような名前がついていないケースが結構あったりしまして、実は私自身も、どのREITが、どちらでおつくりになったREITなのだろうというのは、やはり調べないとわからないというケースがあって、もし万が一何か規制でもあって、もちろん先ほどもちょっと利益相反の話がありましたが、スポンサーとの距離を見せなければいかんというようなことでやっておられるのだとしたら、それはあまりよくないなという気がするのと、そういう名前を前面に打ち出して、むしろスポンサーに対する信頼度でREITに対する信任を高めるという考え方があってもいいのかなと思いました。

それから、同じような話で、例えば非常にランドマーク的な著名なビルをがんと取得して、そのことで市場の関心を集めるとか、今はあまりないと思うのですけれど、でき上がったものを持つだけではなくて、若干最初のころはレバレッジをきかすことになるのでしょうけれど、長期的な開発を行うようなREITなんていうのも、もしかすると今までにはないタイプの商品として市場の活性化につながるのかななんていうことをちょっと思いました。

3つ目に、これは鳥井さんに伺いたいのですが、自己投資口取得解禁のところのご説明が、ちょっと私、正直理解できませんでした。自己投資口の取得を全面的に禁止しなければいけないかどうかということについては、私は、そこまでする必要はないのではないかと思っているのですが、ただ、自己投資口の取得が解禁されると、投資口の価格が一口当たりのNAVを上回るようになるという、このご説明は、正直理解できないのです。これは、そういうものではないのではないかという気がしまして、特に、取得された自己投資口をどうするという前提で、こういうことをおっしゃっているのかなというのが気になりまして、もし単純にシグナリング効果を発揮して価格が上がることを期待するという取得であれば、価格が上がったところで売り出しをするというのが筋のように思うのですけれども、それは何かまた、自己投資口を取得するための資金があるのに、その後売出しをして更に資金を得るというのも何か妙な話だなという感じがしてきます。

他方、償却をするという話だとしますと、それでどうして投資口価格がNAVを上回るようになるのかというのが理解できないし、増資ができにくいから償却をしてしまうというのは、何かちょっとよく理解できないという気がします。

同じような話で、一口当たり収益性が低下するというお話が何度もあったのですけれども、私は、これはちょっと理想論かもしれませんが、増資した資金で極めて収益性の高い物件を手当てされるということが可能であれば、別段分配金を減らすとかいうことなしに増資をして、さらに続けていくということも可能なのではないかと思ったものですから、別に自己投資口取得解禁に反対しているということではないのですけれども、ちょっと気になって、教えていただければと思った次第です。

○神田座長

ありがとうございます。

それでは、鳥井さん。

○鳥井SMBC日興証券シニアアナリスト

まず質問項目の前に、名前の問題であったり、開発のところなのですけれど、そこは私もすごい賛成でして、シンガポールのREIT市場も見させていただいていると、シンガポールのREITというのは、すべてその自分の名前を強調しておりまして、かつ保有している物件には全部自分のREITのロゴマークを入れているということで、それは非常にいいのかなということと、やはりシンガポール等を見ていますと、商業施設のREITというのは大規模な開発、リニューアルというのを成長性の源泉にしておりますので、そこは、できるものであれば、やはりやっていくべきものなのかなと思っております。

自己投資口買いのところでございます。まず、最後にお話がありましたNAVを下回る水準であっても、高い収益性の物件を買えば分配金を上げられるのではないかというお話は、そのとおりだと思います。直近で申しますと、産業ファンド投資法人さんが、純資産価値を下回る水準での増資ではあったものの、既存の物件の利回りよりもかなり高い利回りの物件を取得することで分配金を向上させるということができておりますので、それができるのであれば、それは非常にいいものなのかなと思っております。

ただ、そういう事例ばかり出てくればいいのですけれども、例えば純資産倍率が0.5倍ぐらいになっていれば、高い利回りで物件を買っても、そのプラスの効果が追いつかないと言いますか、例えばですけれども、0.9倍、0.8倍程度のところで高い利回りで物件を買って、その口数の増加と調達資金の増加の割合で多少ディスカウントがあったとしても、高い利回りで買うのが補える水準の純資産倍率であればいいのですけれども、それに届かないというREITさんもいらっしゃいますので、やはりそこはNAV倍率0.5倍なのか、0.8倍なのかと、その水準で若干変わってくるのかなというところだと思います。

ただ基本的には純資産倍率1倍で割っていても、高い利回りで物件を買って、結果として一口当たりの収益性を維持もしくは向上できるREITであれば、それは非常にいいことだと思っています。

自己投資口の、買えば1倍になるかどうかというところも、これも解禁して買ったら1倍超えてくるかというと、必ずしもそうではないとは思います。ただ、今の状況であれば、自己投資口取得すらできないという状況でありますので、NAV倍率が1倍を割っている水準であれば、理論的に申しますと新規で物件を実物不動産市場から買うよりも、自分のところの投資口を買ったほうが収益性が上がると言いますか、そういう指標的なものもありますので、やはりアナウンスメント効果というのが大きいというところはあると思います。

あと、今持っている物件をどんどん売却して自己投資口を買うだとか、自己投資口を取得するために借り入れをどんどんするという、そういうところまでは必要ないと思っています。そうすることは、ちょっとまた市場のゆがみと言いますか、拡大に逆行することだと思いますので、私もそういうところまでは必要ないとは思いますけれども、やはり資本政策として、できるのだという制度をつくっておくということが重要だと思いますし、あとは減価償却費で若干蓄積された現金の部分を、いかに活用していくかというところで、自己投資口の取得というのもNAV倍率1倍への改善、もしくはその資金の活用というところでの手段としてあるべきところなのかなと思っております。

○神田座長

ありがとうございます。

よろしいでしょうか。

○大崎委員

償却するのか、売り出しにするのかというのは、それはいかがでしょう。取得した自己投資口をどうするべきだとお考えですか。

○鳥井SMBC日興証券シニアアナリスト

私としては、どちらでもいいとは思うのですけれども、REITさんの実務上のことを聞いていますと、消却したほうが会計制度的にもいいという話は聞きます。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、永沢委員お願いします。

○永沢委員

私からは、メーンの投資家は、先ほど地方金融機関とREIT特化型ファンドだというお話がありましたが、非メーンの投資家の立場としてお話をさせていただきたいと思います。

REITといいますのは、ある程度株式投資をやっている経験のある投資家にとってみますと、投資家の中には特に配当株を好んで投資する、逆張り型の投資家もいるわけですけれども、その逆張り型の投資家にとってみると、投資対象の多様化であったと私は評価しております。特に財務諸表もシンプルでわかりやすいですし、投資している内容もわかる、よく見ればちゃんと出ておりますので、投資対象としては、今ディスカウントになっているのか、プレミアムになっているのかという判断をしながら買いに入ったり、売ったりということができます。

それなのに、どうしてこの市場が広がらなかったのかということの理由について、市場という要因もあったかと思いますけれども、私としては2点、この場をかりて感じていることをお話しさせていただきたいと思います。

1つは、やはり賃貸不動産市況に対する漠然とした不安を個人は持っているということです。先ほどもお話があったかもしれないのですが、どんどん床面積が東京は増えているわけです。REITが今持っているビルの賃貸収入は、今よりも下がるのではないかという不安がありまして、やはりそれは不動産需給マーケットの状況というのを、個人投資家もやはり理解しておりますので、そこの部分は大きいのではないかと感じております。

よくUSのREITが引き合いに出されますけれども、ほんとうかどうかは知りませんけれども、ニューヨークのマンハッタンの床面積は変わっていないのだそうです。USのREITでは、古い建物でもリニューアルして、高い賃料収入を維持できるというような期待が投資家の中にある。これに対して、東京の市場はどうなのだろうか。その点をやはり個人投資家もわかっているのではないかというのが第1の原因としてあるのではないかということを指摘させていただきたいと思います。

それからもう一つは、漠然とした不安なのですけれども、鳥井さんからもご指摘があったと思いますが、やはりスポンサーが非常に強い構造にあると理解しているのですが、利益相反が起こりやすいのではないかと、投資家としては漠然と不安を抱いております。これがマーケットの支障になっているのかどうか、問題を起こしているのかどうかはわかりませんが、成長を阻害している要因の一つとしてはあるのではないかと思っております。

もちろんスポンサーが非常に重要なことは理解しておりまして、ニューシティ・ショックのときには、スポンサーが変わることだけでディスカウントが解消されていった。そうしたことを考えますと、投資家はスポンサーも評価しているけれども、一方で(投資家よりも)スポンサーのほうを向いて運営されているのではないかという不安も持っておりますので、鳥井さんが4ページで指摘されたような、ガバナンスの強化だとかインサイダー取引規制の強化による市場の透明性というのは、今後の市場の成長の重要なキーになるのではないかと考えております。

次に、今回、海外投資の解禁についてご提案がありました。否定はしませんが、個人投資家にとってはシンプルであることがこのREITのよさでもあったので、複雑になってしまうことがプラスになるばかりではないのかもしれないことは、念頭に置いておかなくてはいけないのではないかと思います。

ただ一方で、今、契約型の投資信託でREITファンドがどんどんできておりますけれども、後で少し触れさせていただきますけれども、それとの比較でどうかとか、いや競争させたほうがいいのではないかという考え方もありますので、この器のあり方に関してもまた議論すべきことがあるかと思います。

それから、メジャープレーヤーとして投資信託があることについて、REITファンドは直接REITに投資できない投資家にすべを与える方法であるとは思うのですけれども、一方で、今供給されているREITファンドについて、一つ引っかかっていることがありまして、その点を指摘させていただきたいと思います。

通常、個人の投資家はREITを買うときにはキャッシュ・カウという雌牛を買っていると思っているんです。雌牛から牛乳を絞り、それを売って現金を得て、雌牛がちょっと大きくなったら買いかえて、そういうことで出資金をずっとキープしながら、キャッシュを受け取れるのがREITだと教科書では習ってきた。ところが最近のREITファンドを見ますと、このWGでも問題になっておりますが、出資金を返戻しているケースも多うございまして、投資家の中には、大変利回りのいいREITを買ったと思っていたら、実は自分の出資金をどんどん戻されていて、牛乳を売って稼いでくれていると思っていたら肉を売って稼いでいたんだよ。僕の牛は半分になっちゃっていたよと、嘆いておられた方がありました。このような混同が、かなりREITについてわかっている方にも起っておりまして、REITとREITファンドの分配に対する考え方がこのように違い過ぎるのは、双方の市場の成長にとって非常に問題になるのではないかと思っております。この辺に関しては両業界で協力されて考え方を統一されたり、商品供給のあり方について再度ご検討いただく必要があると思っております。

大変長くなりましたが、最後にもう1点、内部留保の必要性についてですが、内部留保を認めることの必要性もおそらくあるのだろうとは思いますが、REITというのは利益の9割以上が払い出されるものと理解されてきました。どの程度内部留保されるのかわかりませんが、契約型投資信託で今起きていることを踏まえますと、あまり運用会社がそこの部分において裁量を持つことについては、もしかしたらプラスもあるかもしれませんが、マイナス部分も少し考慮されていたほうがよいのではないかということを、つけ加えさせていただきたいと思います。全くご提案に対して意見にはなっておらず、感想めいたことになりましたが、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。大変貴重なご指摘をありがとうございました。

お隣の清水委員、どうぞ。

○清水委員

今、永沢さんからの発言で誤解があるようなことがあったので説明させていただきますと、J-REITの器のほうは、基本は計上された利益をそのまま分配するような仕組みになっているので、今の投資信託の特別分配金のように、元本の払い戻しを行うことは基本的にはなくて、家賃収益から経費等を差し引いた金額をそのまま投資家に渡すようになっています。混同を招くのは、REITを束ねて投資信託にしているものがあり、そちらのほうは投資信託のルールになっていますので、考え方としては特別分配金、あるいは元本払戻金が分配がされることもあり得るので、その2つの論点は投資信託の論点とそれからJ-REITの論点で、それぞれ別なものです。

○永沢委員

まさしくその理解でおります。すみません。

○清水委員

大変失礼しました。自分の意見を述べさせていただきます。

まず私自身としては、1つ目は、それぞれ皆様からREITの安定性ということでご意見が出ていたと思うのですが、会計士としましては、今のJ-REITにおける仕組み上の最大の問題点としましては、会計と税務が乖離した場合に非常に多大な税金が課されるという制度上の問題があると思います。不動産投信とはそもそも集団投資スキームの1つで、器やファンドには課税されないことが基本的に大前提になっていると思うのですが、現在の税法上のたてつけでは、会計と税金の計算に差異が生じると、現行の実効税率の2倍ぐらいのレートで課税されてしまうという制度上の欠陥があります。

会計制度においては、IFRSの導入もあり、税務処理とどんどん乖離していく方向にあるのですが、J-REITは証券取引所に上場しており、金商法の開示対象で適正な財務諸表を作成する必要があるにもかかわらず、現在、実務上、税務に会計を合わせざるを得ない状況にあり、このような理由からも制度上の欠点を修正するためには、REITに関する税を含めた制度上の改正が必要だと考えております。この問題は、大きな減損等が生じると、上記の問題を解決するために、物件を強制売却したり、ファイナンスに支障が出たり、J-REITの制度上、実務上の大きな問題となっています。

2つ目は、ARESからもお話がありましたが、現在、J-REITは法的には海外投資が可能になっていると理解しておりますが、他の投資ビークルの過半数を投資することができないという、制度上、税務上の制限から実質的に海外不動産投資の弊害になっていると理解しております。日本の投資家にとって、日本の投資信託や投資法人は理解しやすくて安心して投資できる器、ファンドであると考えております。オーストラリアやシンガポールのREITは、日本の不動産ですとか、自国以外の不動産へ投資しているREITが幅広く上場されています。これはREITに投資しているファンド・オブ・ファンズの投資信託ではなくて、REITそのものの話でございます。制度上、税務上の制限によりJ-REITが海外不動産投資を行うことが困難であり、代替的に他国のREITを購入せざるを得ないような状況は問題だと考えています。今後、不動産投資においても海外の投資の需要は出てくると思いますが、シンガポールや香港のアジアREIT等と健全な競争を促進していくためにも必要な、税務上、制度上の改定が必要だと考えています。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは小沼委員、お願いします。

○小沼委員

ありがとうございます。今のお話にも少し関係して、大づかみな話として、不動産証券化協会がご用意くださいました海外の比較、13ページのデータがあると思うのですけれども、今、日本のJ-REITのマーケット規模が3.5兆円ですよと。これはアメリカの約10分の1だと思うのですが、先進の歴史もありますので、この辺の溝が大分あるのはしようがないというところかもしれませんが、経済実態規模、例えばGDPだとか人口の比率でいうと、アメリカは日本の大体2.5倍だと思いますが、REIT市場に関しては10倍という距離になっておりまして、株式の時価総額は3倍ぐらいだと思いますので、その辺の比較でもまだ伸びしろが日本にはあるのではないかなと。

アメリカばかり比べてもということで、オーストラリアやシンガポールと比べましても、オーストラリアで日本の市場の規模の2倍近くございます。もちろんGDPや人口はむしろ逆転していて、日本の4分の1とか5分の1の規模のオーストラリアのほうが、J-REITの規模は倍ぐらいある。我々マーケットを見ているところから見ると、やはりシンガポールが一番ある意味、競争相手としては気になるところでございますが、今、日本の市場の大体7割ぐらいの規模に拡大してきていて、もちろんGDPや人口などは25分の1の国なのですが、国のありようが違うところではございますが、相当この辺は近づいてきているなと思っております。そういった相対評価からも日本のJ-REIT市場は、巻島様がおっしゃるように、試算は難しいかもしれませんが、10兆円規模になっておかしくない水準だと思います。こういうことに向けて、私どもも関係者の一員として頑張っていきたいと思っております。

それからもう一つ、少しマクロ的な感じで言いますと、若干、各論にも関係するかもしれませんが、幾つか出ておりますSPCを通じた海外の物件の取得でございますけれども、これも非常に道をつけることが重要なのではないかと思っておりまして、日本の会社が今どうやって収益を上げ出してきているかというと、アジアを中心とした近隣国にいろいろな不動産を取得して、日本で培ってきた技術やビジネスモデルを転用して、海外で収益を上げてきて、それを日本のマーケットの評価として戻してきていただいているのが実態ではなかろうかと思っております。そこで、日本の会社が海外に進出する際に、現地でお持ちになる不動産のポートフォリオを、日本のJ-REITの中では取り込めないということになってまいりますと、関様がおっしゃるような国際的なマーケットのプレゼンスにも大きな問題が出てくると思いますし、事業会社のそういった活動の実態、方向感と、金融サービス、インフラとしてのJ-REITの仕組みがうまくマッチしていけないというか、ついていけないというのですか、隔離というか乖離が起きてしまうようなことになってもいけないと思いますので、ここは実際には投信法と、それから14ページの注2にあるように租税特別措置法の2つの法律も関係するところだとは思いますが、ぜひこの辺を検討して、道を開けていけるといいと私どもは思っております。

もう少し各論の話で、本日いろいろ出ております問題、あるいは事務局の方が以前にご紹介いただいた問題意識として、金融庁のペーパーの2ページ目にあるような、ライツオファリングだとかCB、それから種類投資口、無償増資といった資金調達の問題につきましては、我々は投資家とお話をしておりますと、使う、使わないは実際どうかわからないところは現時点ではあるけれども、こういう用意がされていないことで、日本のマーケットが投資家から見るとディスカウントになっているのではないかというご指摘をいただくことがございますので、実際に制度に盛り込むときには、いろいろなセーフガードを考えて、乱用されないようにチェックをしていく部分も必要かと思いますが、こういうものが用意されている市場だというご認識をいただくことが非常に重要なのではないかと思っております。

最後に、ガバナンスに関する問題でございますけれども、こちらも外部運用をベースにしておる我が国の形として、投資家の方からいろいろとご意見をいただくところがありますので、できるだけスポンサー、REIT、運用会社が同じ箱に乗って利益相反にならないように、あるいは利益相反になる場合にはそれをきちんとチェックするようなガバナンスのメカニズムができるといいと思っておりますし、ご指摘のあるような投資主総会をもう少し有効活用していくような、スポンサーから物件を受けるときにこういったプロセスを経たほうがいいのではないかというご意見もありますし、ここを活用していくというやり方もあるのかなと思っております。この際、投資主総会を開くに当たりましては、2カ月前の公告が必要だという取り決めになっておりまして、その辺が実務的にはちょっと使いにくいというご指摘も聞いておりますので、そういったこともあわせて検討いただけるとありがたいなと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

さっき言い忘れたことで、ちょうど小沼さんが取引所もREITの活性化に取り組みたいとおっしゃってくださったので、ぜひ要望したいです。

先ほど来、ネットアセットバリューを割り込んでしまって、投資口価格が低迷しているというお話があって、もちろんそこは永沢さんがご指摘のような、将来の見通しに対する悲観的な見方が反映されている可能性もあるわけですけれども、一方でその流動性が十分ではないとかいう話も影響していると思うのです。だから、私はおそらく取引所の取引制度、ETFの件でも同じようなことを発言いたしましたけれども、取引制度の面で何かやっていただけることがあれば、ぜひやっていただきたいと思っていまして、よろしくご検討のほど、お願いいたします。

○神田座長

ありがとうございます。

それでは神作委員、それから石黒委員、上柳委員の順で。神作委員、お願いいたします。

○神作委員

4点、申し上げさせていただきます。

第1は、REITの特色についてでございます。REITの場合には、単純な証券を投資対象とする投資信託と異なりまして、REITにおいては不動産の管理、修繕、更新等、まさにより一般事業に近い形で資産を管理運用していかないと、なかなか価値が上がらないという特色があると思います。言葉を換えて申せば、運用と管理がより一体化しており密接であるという言い方もできると思われます。そうだといたしますと、資金調達についてもより機動的に行うことが必要となるでしょうし、財務戦略の必要性なども高いと考えられます。

そのようなREITの特徴とあわせて考えてみますと、「J-REIT市場の概況・基礎データ」、一般社団法人不動産証券化協会によるプレゼンテーションの資料の15ページで、どうも我が国では規制により不可とされている事項のうち、ほかの国では可になっているものが多いというのも、理由がないわけではないのではないように思いました。もしREITの価値を高めるための十分な制度上の手当てがなされていないということだといたしますと、それらを可能とする方向で見直しをしていく必要があると思います。

第2に、その際の視点としては、会社法の規律、とりわけ株式会社についての規律と相当パラレルに考えられる部分があるように思われます。したがって、株式会社の規律と比較しながら、さらには会社法の規定を参照しながら各論点を詰めていくことが、これからさらに検討を進めていく際のアプローチとして考えられるのではないかと思います。

第3に、各論についていくつかまとめて申し上げます。例えば有利発行の規制ですとか、あるいは差止めに関する規制など、現行の投資法人に関する規律の中には会社法と比べると不十分な部分があるように思われますので、先ほどプレゼンテーションの中にも説明責任の拡大ということがございましたが、それはもちろん大事だと思いますが、それのみならず実体的な規制ですとか、手続的な規制についても見直していく必要があると思われます。

またライツオファリングの場合は、これをどういう形で実現するのか私のイメージが間違っているかもしれませんけれども、もし新投資口予約権の制度を創設してそれを利用して行うとすれば、新投資口予約権を売却することができる仕組み等もつくっておかないと、ライツオファリングを行った場合に予約権を行使しなかった投資主の持分が水割りされてしまうという投資家保護の観点からの問題点が出てくるように思います。このあたりの問題についても、会社法の規律や考え方が大いに参考になるのではないかと思います。

それから利益相反規制も、多くの委員の方々がご指摘されているように、特にREITの場合には利益相反規制が非常に重要な問題だと思いますので、法律でどこまでできるのかということはございますが、法律で一定の規律をするとともに、自主規制その他さまざまな利益相反のための規律ないし規範、先ほど鳥井さんも大崎さんもご指摘されたと思いますけれども、一種の倫理と申しますか職業規範のようなものまで含めて、利益相反の問題について総合的に点検することが、先ほど申し上げた資金調達の手法ですとか選択肢の拡大と、いわばバランスのとれた規制になっているかどうかという観点から、必要になるように思われます。

長くなって恐縮ですけれども、最後にインサイダー取引規制ですが、私は現在でもインサイダー取引規制の適用があってもおかしくないのではないかと思っておりますが、ましてや資金調達の手法等が拡大し、市場価格に重大な影響を与えるような事由が生ずる蓋然性が高まる場合には、インサイダー取引規制を課すことが必要になってくるのではないかと思っております。

長くなって恐縮ですけれども、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、石黒委員、上柳委員の順で、石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

ありがとうございます。

今日、プレゼンテーションをいただきました、ARESの18ページで要望事項がございまして、これは特にご説明はなかったのですが、網羅的に書かれています。それから関さんの資料の10ページ、鳥井さんの資料の4ページ、5ページあたりですか、いずれもご指摘の点は私ども法律実務家としてREITの実務に携わる立場から、方向性としてはいずれもごもっともなご提案で、総論的には賛成できるなというのが、まず大づかみな感想でございます。

それで資金調達の多様化ですが、自己投資口の取得も含めて、資本政策手段の多様化としてくくってもいいのかと思いますけれども、これはご説明がありましたように、平時の安定性を確保して優良物件への投資促進をしていくという意味でも、それからリーマンのときのような危機時における抵抗力ということで、もうこれは明確な形で、しかも厳しい形で実際に数年前には我々は経験しているわけですので、そういったことを平時も危機時も含めて考えたときに、やはり利用可能なメニューはできる限り用意しておくべきであると思います。特に危機時は、のど元を過ぎると何とかということがありますけれども、危機時には、もうそんなときには手当ては間に合いませんので、やはりメニューはあらかじめ用意しておくという考え方で進めていくべきだろうと思います。

もちろんメニューを多様化するときに、ネガティブな面にも気配りは必須ではありますけれども、そのネガティブな面があり得る、あるいは乱用的な使い方があり得るということで、本来のそういったメニューの取りそろえをちゅうちょするということではないだろうと思います。むしろメニューは用意した上で、ではそれに対してどういう規律をきちんと適用していくのかという話になってくると思います。

実際には、非常にこのあたりの資本市場における手法に対する規律の保持の手段は難しいと思います。ほんとうにいろいろな知恵が、悪いことを考えることが仕事になっているような人がいるわけでございますので、あらかじめそれをすべて想定して、きちっとした形で手だてを置いておくのは、資本市場の特性からいうと不可能なのかなという感じがいたしております。

ただ、だからそれでどうでもいいということでは全くなく、むしろ逆で、基本的には規律というものを、マーケット関係者、発行体であるREITそのものはもちろんですけれども、引き受け証券会社、その他関係者がレピュテーションをかけて、おかしなことをすればマーケットから追い出されるというような緊張感を持った資本市場をつくっていくのが、一番の本筋だと思うのですが、それにプラスして当然、一定のミニマムなルールを適用していくということで、具体的なものは非常に難しいのですが、英知を結集して具体的なものに具現化していくということなのかなと思います。

先ほども、1口当たりの収益性が大きく低下してしまうような増資についてのご議論などもございましたけれども、これも典型的に今までの実態を見ると、良質物件を機動的に買うために期中で借り入れをして、それで取得しておいて、その後の増資で返していくということを考えると、そこでレバレッジがきかなくなって、1口当たりの分配金が低下するというのは、健全な増資であってもそんな不思議な話ではない中で、おそらくご指摘は、やはり単純に低下するかしないかではなくて、乱用的なものに対してどういう規律を考えていくのかというご指摘と理解させていただいたのですが、そこの線引きも非常に難しい。

そういう意味で、先ほどの、基本的には一番恐ろしいのはマーケットの自己規律である、おかしなことをしたらマーケットのだれからも相手にされなくなるという恐怖感みたいなものが共有されているのが一番よいと思うのですけれども、それを基礎として、ミニマムルールをいろいろな形でハードロー、ソフトローで入れていくということかと思っております。CBをできるようにするときに、MSCBをどうするのかとか、有利発行をどうするのかとか、いろいろな問題が山ほどあると思いますので、その辺にも目配りをしながら、ただメニューはやはり基本的にはできるだけ幅広く用意するということではないかと思います。

具体的な施策が非常に重要でかつ難しいという点では、インサイダー取引規制についても同様だと思っておりまして、一般論として、REITについてはインサイダー的な規制は一切不要だという方は多分いらっしゃらないと思うのですけれども、ただ個別事象としてあまり異論がなさそうだなというのは、合併とか増資とか、そのぐらいのところしか思い浮かばなくて、あとは個別のまさに物件の取得とか処分とか、テナントの移動とか賃料の増減とか、そういったREITのパフォーマンスに影響してくるようなさまざまな要素がありますが、それらにあまり事細かく過度な規制を入れていくと、非常にもう、そもそもそういう物件の所有者とか借り主と交渉することさえできなくなってきたり、そういったことをやれば、角を矯めて牛を殺すということにもなりかねないわけでありますので、ここはやはり具体策については相当慎重にやる必要がある。私の個人的な感覚では、むしろ今、株式会社ではそうなっておりませんけれども、あまり細かい規定ではなくて、一般規定、包括的な規定の中で事例を積み上げていくような方向が、一つ有力なオールタナティブ、選択肢になり得るのかなという感じがいたしております。

それから税務上の手当てですけれども、特に内部留保の問題は、譲渡損や減損等で一時的に多額の損失が発生した場合に、資金調達手段の多様化では直接そこはカバーできないわけでありますので、やはり安定性を維持確保するためには、内部留保を一定の程度で許容していくことは不可欠だろうと思っています。特に今現行の上場規則では、3営業期間連続で分配できないと上場廃止になるという、投資家にとって非常に大きなダメージが出るような問題にもつながってまいりますので、そこは、例えば将来の損失積立金ないし分配積立金みたいな形で、きちっとした管理ができたものについて別な扱いをしていくとか、工夫の仕方はあると思うのですけれども、やはり内部留保の許容は非常に重要だと思っております。

同じく税務については、税務と会計の不一致の問題に対してどうするかというところで、先ほどご指摘があったかと思うのですが、期ずれの問題で会計上の利益を全額分配したとしても、税務上の利益が残ってそこに課税されてしまう可能性もありますので、その辺の手当てもぜひ必要だと思います。

それから課税の関係もちょっとございますけれども、今日、多分どなたからも話題としては出ていないかと思うのですが、現物出資を一つ考えるべきではないかということで、優良な不動産の取引の促進ということから言っても、簿価の非常に低い不動産がたくさんあるのに対して、これを市場に誘い込もうということになると、現物出資プラス課税の繰り延べという形で、遊休の優良な不動産をマーケットに呼び込むことが必要で、ここでも税務が非常に重要であろうと思います。また現物出資については、危機時におけるデット・エクイティ・スワップというような手法をメニューに加えるという意味でも、重要なのではないかと思っています。

あともう一つだけ、ここはまた慎重な手だてをとりながらではございますけれども、運用財産相互間取引について、全投資口保有者の個別の同意が必要であるというところは、やはり非常に実態に合わないと思いますので、特に優良物件が出たときにウエアハウジングでまず確保しておいて、きちっと運用して、それでREITの資産に取り込むことをするときに、この規制が障害になっていて、投資家らにとってもリターンの面で不利益になっておりますので、何らかの弊害防止措置を考えながらも、基本的には多数決的なもので、あるいは役員会の承認ということも含めて、規制を緩める手だてを考えていただければと思います。

アトランダムでございますが、以上でございます。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

事務局から論点として提示されたうちの、ガバナンスの体制の問題、あるいはインサイダー取引規制の問題について、基本的に賛成というか、ぜひ考えられるべきことだと思います。鳥井さんの説明資料の4ページも下のところでそれをご指摘いただいていて、私もほぼ賛成でございます。

ただ鳥井さんの4ページの上のライツオファリング導入の弊害防止のところですけれども、総論的なことになるかもわかりませんが、倫理観にだけ頼るのはなかなか難しいと思います。確かに平時と有事とどのように区別するのかとか、結局は先例といいますか、今までも事件はあったようですが、裁判所に頼るしかないのかもわかりませんが、ここは大分工夫が必要なのではないかと思います。

そういうことと関連するかもわかりませんが、不動産証券化協会から、15ページですか、各国制度の比較を出していただいて、これは特に規制の柔軟化を業界が要望されているところが上がっているのでこういう表にはなっていると思うのですが、何というか、外国との比較はすごく難しくて、よくよく考えなければいけないと思っています。

私は、前回に申し上げたかもわかりませんが、基本的にどちらかというと契約型投資信託があまり好きではないというか、問題点を感じまして、そういう意味では投資法人が中心になっていくべきだと一方では思っております。ただし、いわゆる今までのJ-REITといわれるような不動産の流動化なり証券化なりという観点から見ると、税金の関係もあって導管体というものにすぎないという切り口での限界もあるでしょうし、それから永沢さんが既におっしゃっていますけれども、投資家なり消費者から見た場合はシンプルなものが望ましいと思います。このように裁量といいますか、あるいは複雑化すると、税金も含め問題がでてくるのではないかと思います。

そういう意味で言うと、市場規模について大きなところで10兆円というお話も出て、今までのように取得物件が限定されていたものから見れば、物件の対象は広がっていくわけですので、そのあたりのことも考える必要があるのではないかと思いました。

投資法人については、会社法を参照して、それなりにガバナンスがあるものということで、2000年に解禁というか、制度をつくって、私も当時はそれでいいのではないか、むしろ投資信託全体が投資法人に移行すべきだと思っていたのですけれども、やはりNCRあるいはそのほかの事例で、問題が顕在化したわけで、その教訓をよくよく考える必要があると思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは村木委員、どうぞ。

○村木委員

ありがとうございます。3点申し上げたいと思います。

まず1点目は、ライツオファリング等の調達手法の多様化に関しては、成長のための資金調達という点では解禁には基本的に賛成です。ただ、この調達手法を多様化することがストレス時のリスクをどの程度軽減するかという点については、あまり過信すべきではないと考えております。金融商品として分析していきますと、REITであったり、あるいはSIVと呼ばれているようなファンドは、短期から中期の借り入れ、負債を調達して、レバレッジをかけて期間の長目の不動産等の投資をする構造を持っておりまして、これは宿命ですが、流動性危機が起きれば、負債の調達に銀行や社債の投資家が応じなくなり、資金繰りが行き詰まるというリスクを常にはらんでいると考えています。

これまでワーキング・グループの議論の中でもずっと出てきていましたけれども、利回りが高いということは、イコール何かのリスクをとって利回りをつくっているということですので、その点ではこういったファンドが持つリスクを、調達手法の多様化でなくすことはできないのではないかと考えています。

こういったストラクチャリングされたファンドの堅牢性といいますか、強さ自体は、資産と負債のデュレーションミスマッチであったり、レバレッジの大小、あるいは信用力によって決定されているもので、財務上の手法の多様化自体がリスクを大きく減らす効果は、限定的ではないかと考えております。こういうリスクは一般のレバレッジをかけていない投信にはあまり見られない特殊なリスクでもありますので、こういった手法の多様化とは別に、特に個人投資家に対しては、そういった特殊なリスクをとっているという理解を引き続き促していく必要があると考えています。

2点目の、投資口の取得については、大崎委員と考え方が近いと思うのですけれども、何を原資として何のために自己投資口を取得するのかが重要だと考えております。仮に市場で取引されている株価がおかしいと、NAV倍率が1倍を割っているのがほんとうに異常な状態なのであれば、物件を売却してその資金で安くなっている自己投資口を取得するという、株式市場と不動産市場を通じた裁定取引は可能だと思います。けれども、株式市場の中で、高値で増資をすることが目的で、安値で自己株取得を行うことが果たして可能なのかということと、もしそうであれば投資家をミスリードしてしまうリスクがないかということが少し気になります。

また、調達というアクセル、自己株取得というブレーキを両方とも持つ場合は、かなり多様な資本戦略が可能になりますけれども、これは事務局で準備いただいている資料の2ページに論点としてお示しいただいていますが、簡素なガバナンス構造や導管体としての性質から、どこまでそういった自由度に耐え得るかという点も考慮すべきだと考えています。

3点目に、スポンサーとの関係という点ですけれども、この論点の中にも投資法人の役員会の機能強化が1つの案として入っておりますが、運用会社と投資法人の二重構造みたいなものができてしまったり、あるいは幾ら社外取締役を入れても、牽制機能が十分に働くのかという問題が残るかと思います。その点では、鳥井さんからもご説明がありましたけれども、本質的には一番利益相反のリスクが高まる瞬間は、スポンサーから物件を取得するときであり、その価格自体が、譲渡価格が適正なのであれば、利益相反のリスクは相当程度、軽減できるのではないかと考えています。ですので、外部の鑑定評価がどの程度適正なのか、その適正さを担保するような仕組みは考えなくていいのかという、以上、3点になります。ありがとうございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

井潟委員、どうぞ。

○井潟委員

私はいつもそういう役割なのですが、少し経済的な観点から申し上げたいと思います。

非常にいずれのプレゼンテーションも、簡潔に整理されて、すばらしい内容だったと思うのですが、確かに多くの委員から指摘されているように、日本のJ-REIT市場の歴史あるいは現状において、幾つか課題があった、あるいは今もあるということがある一方で、やはり未曾有の少子高齢化が進展している日本において、個人及びおそらく年金基金をはじめとする機関投資家にとって、J-REITはインカムゲインが長期にわたって手に入る可能性が高い投資対象であり、その点でこれを育んでいくという観点は忘れてはいけないのではないか。

不動産は歴史的に見ても実は最大の投資対象という位置づけであり、日本では不幸なことに非常に投機の対象になった時代があり、それがまだ印象として残っているということがありますが、不動産に投資するという重要性、しかもアセットマネジャーの目ききを伴いながらファンド化することで小口、あるいは金商法の対象、あるいは流動性が高まるといった付加価値を伴いながらこれを実現するJ-REITといったものを、やはり何とか大きくしていきたいという点は、再確認がこういうところで議論する際には必要なのではないかと思っています。ましてや株・債券というポートフォリオに不動産投資を加えることで、より分散投資が非常に大きく効くという点も、議論の大前提としていただきたいと思っています。

また、ARESや鳥井さんの発表にも示されていましたが、J-REITは日本の不動産取引における最大の買い手になっている。日本の不動産取引の活性化という点でも主役になりつつあるわけですが、日本のGDPにおいて不動産産業のシェアは大体10%強と聞いておりますけれども、日本経済がこういう景気低迷、デフレから脱却するためにも、不動産投資市場を活性化して、不動産取引を活発にしていくことも非常に重要なのではないか。そういう点でのJ-REITという意味、J-REITに対する経済的な面での期待というもの、したがってJ-REITを育くんでいくという考え方も大事だと思っています。

本日の鳥井さんやARESから発表された諸課題とその改善策の検討は、もちろんそのまま何でも改定していいのかということは、ご指摘がさまざまな委員からございましたように、そういった懸念だとか注意事項について配慮すべきだとは思いますけれども、こういった諸課題と改善策の検討を進めていくのは急務ではないのかなと。

私は個人的には、大崎さんなどからはいろいろ指摘がございましたが、やはり投資家という観点から見ても、鳥井さんの2ページから3ページ目に提示されていた、NAV倍率1倍割れの銘柄が数多く存在する状況が続いていることについては、なかなかやはり投資しにくい。それが悪循環を生んでいるという点では、非常に解決すべき大きな課題ではないかと思っています。聞くところによると、2012年4月末で大体NAV倍率が1倍割れしている銘柄は全体の7割を占める。7割は随分、そういう状態が放置されているのだなということでございます。

短期的な効果だけをねらうわけではないですし、財務的、財務政策的な柔軟性を確保していくという点では、やはりご提案があったように、自己投資口取得が機動的に行われるようになって、ちょうど事業会社による自社株買いが理論的だという方も多いわけですが、市場に対して割安であるというメッセージを伝えるとされるのと同様な効果を伴いながら、J-REITの投資口価格の適切かつ安定的な推移が期待できるのであれば、もちろん他国では解禁されているわけですので、どういったメリット、デメリットがあるのかという他国での検証も必要だと思いますけれども、そういうものがあるとすれば十分に検討に値するのではないかなと思っております。

それから、自己投資口取得のみならず、同じく鳥井さんの4ページ、それからARESの最終ページにいろいろ出ている全体の諸施策ですね。お互いに重なっている項目が多いことからもわかるように、多くの専門家や関係者の間で対応や検討が必要ではないかと共有されているものだと理解しておりますので、この機会に十分に一度きちんと議論してみる。J-REITができて10年目でおそらくこういう議論をするのは初めてだと思いますので、この機会を利用してこういった事項についての検討を十分にやるべきだと思っています。

とりわけARESの資料の15ページですか、先ほどいろいろな先生方がこれに言及されております。いろいろな見方があるかと思いますが、やはりこれも私の見方で、投資家あるいは特に海外の投資家が日本のREITに投資をするという視点から見ると、必ずしも非常に深く追求する機関投資家ばかりではない中で、おそらくこういう表などを見ながら「そうか、日本のJ-REITは同じ土俵に上がっていないのか」という判断が下されることは、現実多いと聞いております。そうなりますと、もう、はなから投資対象には加わってこないということなども、あり得ることを考えると、日本の国際金融センター化の推進という点でも、鳥井さんの資料、あるいはARESからの最終ページにあるような諸施策については、全体を1つのパッケージとして位置づけて、きちんと議論する、検討することが必要なのではないか。REITの後発国であるフランスやイギリスに追いつかれたりしている状況になっているのは、グローバルな観点でもJ-REIT制度を見直す機会になっているのではないかと思っています。

最後に1つ、ご質問なのですが、ARESの最終ページ、1番のところに、先ほど他の委員からもお話があったと思いますが、海外不動産、それからあえてインフラという言葉も出ています。J-REITはこれまでもっぱら日本の不動産に投資するというイメージだったわけですが、これは一歩踏み込んでいる印象があったりするのですが、あえて海外不動産そしてインフラという言葉まで書かれている背景だとか、あるいは具体的な対象があるということであれば、ぜひお聞きしたいと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

不動産証券化協会、いかがでしょうか。

○不動産証券化協会(巻島オブザーバー)

まず海外不動産について申しあげます。J-REITが海外不動産に投資をするというと、そのためにこれから海外で開発が行われて、その後ようやく完成した物件がJ-REITに売却されるようなことを思い浮かべられるかもしれませんが、私どもが考えているのはそれだけではありません。既に小売業などでは、欧米、ASEAN、中国等に、非常に多くの商業施設を展開しているわけです。そのような小売業は、不動産を持つことが目的ではなくて小売業をやることが目的です。ただ仕事の性質上、不動産を持たざるを得ない。しかし、それをやっていくと、どんどんバランスシートが大きくなってしまって、その後の事業展開ができなくなるのは明白なわけでありまして、すでにキャッシュフローの安定した不動産はREIT市場に上場したり、私募ファンド市場により、小売業本業に充てる資金を捻出することが望ましいわけです。同じようなニーズは流通倉庫の業界でも起きておりますし、ホテルでも起きている。そういうニーズが既にあるわけです。アジアの成長をわが国の金融・資本市場に取り込むためにも、これらの業種の成長を阻害している状態から解放してやらなければいけない、そう考えます。

それからインフラ施設についても、あらためて市場型間接金融とか集団投資スキームの育成という議論に戻って考えてみると、REITが保有できるようにすべきであると思います。J-REITは、賃貸不動産という安定したキャッシュフローの原資産を証券化したから、集団投資スキームの中で大きな市場に成長してきたのだと思います。インフラ施設は、賃貸不動産よりもさらに安定したキャッシュフローを生み出す原資産になる可能性があります。PFI法の改正もあって、現実に近づいていると私は思います。病院なりヘルスケア施設、高齢者施設、また有料道路とか、上下水道、空港、港湾、いろいろあろうかと思いますが、これらを、投資法人制度を使って、そこで調達した資金で地方自治体等が財政の健全化を図ったり、新たなインフラ資産の更新を図るというように発展していくことが望ましい。もともとそういうことが、投資法人制度の理想のひとつとして、あったのではないかと思うわけです。ですので、ここにSPCを通じてインフラ施設の保有ができるようにしてほしいということで、入れてあるということであります。

○神田座長

よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。

残り時間が少なくなっておりますけれども、ほかにいかがでしょうか。オブザーバーの方で、もしご意見があれば……。投信協会、どうぞ。

○投資信託協会(城川オブザーバー)

ありがとうございます。

投資法人の発展のためにご意見をいただき、ありがとうございました。私どもから、特に問題意識を持っております3点について、意見を述べさせていただきたいと考えております。

まず1つ目は、資金の調達手段、資本政策手段の多様化についてです。プレゼンテーションの中でもありましたけれども、リーマン・ショック直後の混乱や、その後の長期にわたる低迷の際に、やはり資金調達手段の制約と財務上の課題が顕在化した教訓から、投資法人の運営を円滑に行うために、特にライツオファリングの導入や無償減資制度の導入をお願いしたいと考えております。加えて話題にも出ましたけれども、自己投資口の取得要件の改善についても、私どもは投資家利益の向上に資すると考えておりますので、ぜひご検討いただくようにお願いしたいと考えております。

2つ目は、投資法人に係るガバナンス体制の見直しについてです。ガバナンス体制の見直しについては、運営や取引の透明性を確保し、投資家からの信頼を一層高めるために必要と考えております。なお、投資法人につきましては、事業会社とは異なり、投資法人と運用会社のそれぞれにガバナンス体制がしかれておりまして、両者がセットで機能しているのが実情です。また投資法人が物件を取得する際に、運用会社内で審議を行うコンプライアンス委員会には、多くの社では拒否権を持つ独立した外部の専門家をメンバーに加えております。したがいまして、ガバナンス体制の充実を考える際には、こうした投資法人特有の事情についてもご考慮した上で、ご検討いただければと考えております。

最後に、インサイダー取引についてです。上場商品である投資法人、投資口の健全な流通を確保し、投資家からの信頼性を向上させるためにも重要な課題であると認識しております。委員からも発言がありましたけれども、実際の制度設計に当たっては、重要事実の範囲をどうするかなど、要するに規制が適切に設定されるよう、実務者の意見も参考としていただければと、お願いいたしたいと思っております。

私からの発言は以上です。ありがとうございました。

○神田座長

ありがとうございました。吉野先生、どうぞ。

○吉野金融審議会会長 一言。鳥井様の資料の14ページを見ますと、だれが売ってだれが買っているかが、出ています。これを見ると、外国人が随分売りに出て、それで日本銀行が買い支えたという部分も出ているようにも見えます。もう少しいろいろな日本の投資家の方々が、売買し合うとよいと思われます。特に2011年のあたりは、下の緑が出ているところは外国人がたくさん売って、それを日本銀行が買い支えてあげたという感じがします。

もう一つは、海外、日本国内はこれからいろいろなリスク、地震リスクも含めてあるとすれば、こういう市場も海外に分散することは重要だと思うのですが、為替リスクが大きなリスクになると思います。現在は海外からの所得収支が増えており、海外から日本に戻ってくるお金が多いわけで、海外から戻ってくるお金を日本に戻さないで、その資金を海外で投資に回す方法もとっていただきたいと思います。また、企業が海外で得た収益を日本円に変換するのではなく、現地通貨のままで、必要な日経企業に現地通貨を融通できれば、為替リスクを回避できますし、日本の地震リスクのような地政学的リスクを回避できるのではないかと思います。ぜひ具体的に、現地通貨を海外で回せる部分は、日本円に戻さないで活用できる方法を模索していただきたいと思います。感想です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

私もちょっとだけ感想を申し述べます。今後各論になると思いますので、制度的なことですけれども、2点ちょっと意見を申し添えさせていただきたいと思います。

1つは、上柳委員はじめ、若干ほかの委員の方も触れられましたけれども、法人型か信託型かという話です。本来ならば、現在の制度に即して言えば、証券投資信託が法人型であってもいいはずだし、REITが信託型であってもいいはずです。しかし日本の歴史は、証券投資信託は信託型、REITは法人型ということで育ててきた。今後も一層育てばいいなという状況にあるわけです。信託型か法人型かの選択は一体どのように考えたらいいのかということが、あると思うのです。上柳委員もおっしゃったように、アメリカは証券投資信託も不動産投資信託も法人型です。ただ一部、ビジネストラストという形態がありますが、それは日本で言えば法人型に近いので、結局どちらも法人型です。

アメリカで法人型がいいとされてきた理由は、従来はガバナンスがきく、信託型に比べて法人型は例えば社外取締役がいるのでガバナンスがきくと言われていたのですけれども、上柳委員がおっしゃったとおり、なかなか大変です。私がごく最近読んだアメリカの論文などでは、アメリカも法人型だとガバナンスがなかなか大変なので、もっとシンプルにして、監督当局が必要なことだけ直接やったほうがいいという提案がなされたりしている論文もあります。いずれにしても法人型か信託型かというのは、運用の対象が証券か不動産かということと、ベストミックスになっていればいいのですが、その辺の基本的な問題があると思います。

もう1点は、これは神作委員がおっしゃって、若干ほかの委員も関連するご発言があったと思うのですけれども、REITは伝統的な意味での投資信託なのでしょうかという問いがあるわけです。これは証券投資信託であれば運用は、あっちの株を買ったりこっちの国債を買ったりというのがあるわけですけれども、不動産投資信託の場合は、例えば1つのオフィスビルでもいいわけです。そこから上がってくる賃料を投資の対象とする。ですから、そういうものは資金調達とか証券化という話になるわけです。しかし、証券投資信託を証券化と呼ぶ人はいないと思います。資金調達という機能がないからであります。

1つのオフィスビルであれば、イギリスの法制が最初だったと思いますけれども、シングル・プロパティー・スキームといって、複数の不動産に運用する場合、あるいは一般の集団投資スキームである証券投資信託等の場合の規制を大幅に緩和しているわけです。むしろ会社が不動産事業をやるときに資金調達するような道を認めているわけです。ですから、そこのところは結局、不動産というのは賃料に着目するということになれば1つでもいいわけですし、もちろん入れかえてもいいわけですが、そのあたりが伝統的な証券投資信託とは経済実体が非常に違います。がゆえに、不動産の分野は証券化とか資金調達とも呼ばれている分野です。そのあたり、日本は同じ制度につくっているわけですけれども、どのように整理していけばいいかという課題があるように思います。

すみません、私がしゃべっていて時間が過ぎてしまって、申しわけありませんでした。ほかに、どうしてもというご指摘があればいただいて、またそうでなければ随時ご意見は事務局にお寄せいただきたいと思います。

よろしゅうございますか。

本日も、皆様方から活発なご指摘、貴重なご議論をいただきまして、ありがとうございました。最後に事務局からご連絡がありましたら、お願いいたします。

○横尾企画官

次回の日程でございます。来週はお休みさせていただきまして、次回は6月1日、2週間後でございますけれども、14時からとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○神田座長

そういうことでございますので、2週間後に、またよろしくお願いいたします。

以上をもちまして散会いたします。ありがとうございました。

以上

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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