金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第8回)議事録

1.日時:

平成24年7月3日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○横尾企画官

皆様、ご多忙のところご出席いただきまして、まことにありがとうございます。第8回ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。本日の資料といたしましては、机上に中間論点整理(案)、それから参考資料としてメンバー名簿がございます。ご確認のほど、よろしくお願いします。

○神田座長

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、始めさせていただきます。本日でございますけれども、投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループの第8回目の会合ということになります。皆様方には、大変お忙しいところ、また暑い中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

お手元の議事次第にございますように、本日は、まず事務局から、中間論点整理(案)につきまして、15分程度のご説明をいただきます。その後、それぞれの項目ごとというのでしょうか、幾つか区分けしながら、皆様方にご議論をお願いしたいと思います。

そういう流れで、本日の議事を進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速、事務局からのご説明をお願いいたします。

○横尾企画官

それでは、お手元の資料、投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ中間論点整理(案)を、事務局のほうでドラフトさせていただきましたので、概要をご説明さしあげたいと思います。全部読み上げますと、ちょっと時間がかかりますので、要点、概要をかいつまんでご説明申し上げます。

まず1ページ目、「はじめに」のところですけれども、これまでの沿革のところは投信法のこれまでの改正の経緯、それから本ワーキング・グループでの検討の開始に当たって、金融担当大臣より諮問された内容を記述しております。

それから(2)ワーキング・グループにおける議論の経緯と今後の進め方ですけれども、ここでは本中間論点整理の位置づけと申しますか、その内容に当たっての考え方を整理しております。特に1ページ目の最後のほう、2つポツがございますけれども、ここに書いてありますことが中間論点整理で付加的に行った作業の1つといえるかと思います。すなわち、これまで7回にわたりご審議いただきました内容を、事務局でフィルタリングしております。その内容は、大筋について皆様方の大体の方針の合意がいただけたもの、そういったものは今後は具体案の作成ということが必要になってきまして、そういったことを事務局において、まず検討させていただき、その後ワーキング・グループにお返しし、ご報告申し上げるものとして、「事務的に検討すべき事項」と整理させていただいております。

「引き続き検討を行うべき事項」という項目もございますが、こちらは、まだまだ議論を尽くせていない、大きな方針についても、皆様の間で議論が分かれているといったような点でございまして、本年後半の会合において、引き続き深度ある具体的な議論を行っていただきたいと考えております。

1ページおめくりいただきまして、2.投資信託制度、以下は投資信託制度についての整理でございます。(1)我が国投資信託の現状と対応の方向性、ここでは2回にわたりご議論いただきました投資信託のあるべき姿や、販売や組成のあるべき姿、そういったことについてのご議論をまとめさせていただいております。

マル1は、現在の投資信託市場を巡る環境と、その下での経済活動ということで、現在どういう状態になっているか、その実態を描写したものでございます。金融機関では従来の収益源にかわって投資信託の手数料というものが重要視されていて、販売会社が顧客との関係をほぼ掌握している中では、なるべく投資家の投資意欲に働きかけやすいような、市場動向に機敏に反応した新しいテーマに基づく新商品が次々と投入されているといったような状況を冒頭に書いてございます。

一方、マクロ的な経済環境に目を転じると、株価の低迷、低金利環境といったことが長期化し、なかなか従来の投資手法ではリターンが上げにくくなっており、他方で、投資家のほうはリターン追求に敏感な姿勢を強めておりまして、その結果、海外資産を中心に運用とする商品、あるいは複数の収益源を組み合わせた複雑な商品というようなものが出てきている。さらに預金の利息のような定期的収入を重視する投資家に働きかけやすい毎月分配型を代表とする高分配、高頻度商品が開発されているという状況を描写しております。

こうした中で、どういう影響が出ているかということがマル2でございます。今、申し上げましたような商品供給の実態として、投資信託商品の開発・販売において必ずしも投資家の資産運用ニーズが反映されていないのではないかというご指摘があったかと思います。こういった点に対しては、顧客の生活設計あるいはマネープランを踏まえた資産形成という観点に基づくコンサルティング機能、単なる財テクの指南とか、そういうことではなくて、生活上必要なお金をどう調達していくか、どう運用していくかといった視点に立ったコンサルティング機能の発揮が重要ではないかというご指摘があったと思います。

また、運用担当者の経歴開示、あるいは報酬体系の取引ベースから残高ベースへの移行というご指摘もございました。他方で、こうしたご指摘については、いろいろなご意見がありましたが、どちらかと言うと一律に法令化して強制するというよりも、競合会社の差別化といった観点から、各会社が自主的に取り組むよう促すことが望ましいのではないかと整理しております。

2番目の影響でございますけれども、投資信託の累増・小規模化を招いており、業務効率改善の必要性が高い。そのためには制度改正も必要であり、また業界慣行の見直しも必要に応じて検討するべきであると書かせていただいております。

第3点目は、商品の複雑化・リスクの複合化が進行しているという点です。このため商品性やリスクに関する購入時の説明の一層の工夫、あるいは全体的な得失を瞭然と理解できるための仕組み、さらには突発的・不連続的に発現するリスクに対しての一定の制約、こういったことを検討するべきではないかと書かせていただいております。

第4点目の影響です。投資信託市場の主要顧客層についての記述です。現在は退職前後の世代が中心でございますけれども、少子高齢化が進む中では、今後投資信託が一層発展するに当たっては、現役世代への普及というものが重要であろうということでございます。このため、目的意識を明確にした積立投資の促進、あるいはETFの活用、さらには確定拠出年金の役割といったことについての議論が行われていくことが望まれると記述しております。

こうした現状認識に対しては、すべて制度で対応するというものではなくて、むしろ関係業界の業態を超えた自主的な努力によって対応すべき領域が多いものと考えられ、後刻、金融審議会においてフォローアップということも考えられるとも記述させていただいております。

3ページ目下側(2)以降は、個別の政策についての議論の整理でございます。まず国際的な規制の動向や経済社会の変化に応じた規制の柔軟化に関してです。1点目は、書面決議制度の見直しでございます。(a)書面決議を要する約款変更範囲の見直しでございますが、こちらの点は大筋において皆様のご支持をいただいたと考えておりまして、あとは書面決議を必要としない場合の要件、これをどう具体的に決めていくかという話が残っているかと思います。したがいまして、その具体的な内容を、まず事務局において検討させていただき、後半戦のワーキング・グループにご報告さしあげたいと思っております。

(b)書面決議を要する併合手続の見直し、こちらも先ほどと同様に、具体的な要件というものを事務的に検討すべきであると書かせていただいております。

受益者数要件の撤廃、こちらについては、相当数の皆様から受益者要件は必ずしも要しないという考えをいただいておりましたが、撤廃に当たってはどのような問題が生じるかということも検討課題だと認識しておりますので、その点を事務的に検討させていただければと思います。

(d)反対受益者の受益権買取請求制度の見直しです。こちらは時価による償還が随時可能なオープンエンド型投資信託の場合であれば、見直すべきではないかというご意見が多かったと思いますけれども、そのほか具体的な要件というものを事務的に検討させていただければと思っております。

4ページ目下段マル2同一信託内における複数報酬体系の容認でございます。こちらにつきましても、おおむねご支持をいただいていると思いますので、5ページ目冒頭に書いてありますように、利益相反の観点から差異を認めたとしても問題が少ないと考えられる要素としてどういうことが考えられるか、事務的に検討させていただきたいと思っております。

マル3外部委託に関する規制の明確化、こちらもご支持をいただいたと考えておりますので、運用指図権限以外の権限の外部委託が可能である旨、何らかの形で明確化するということが適当と記述させていただいております。

マル4は運用財産相互間取引の容認範囲の明確化でございます。こちらも皆様方からご支持をいただいていると理解しておりますので、取引の容認範囲として投資者保護上、問題の少ないものとしてどのようなものを追加的に例示するか、これを事務的に検討させていただきたいと思っております。

マル5金銭設定・金銭償還の例外範囲の拡大でございます。こちらについては5ページ目の下にあります(a)ETFの構成銘柄が権利落ちの場合の対応、それから6ページ目上のほうの機関投資家向け投資信託での現物設定という2つの論点がございますけれども、いずれにつきましても皆様方からご支持をいただいたと思っておりますので、認めることが適当と記述させていただいております。

マル6はそのほかの施策でございます。事務の効率化に資するものとしてア)、イ)、ウ)を掲げておりますが、こちらも事務的に検討させていただければと思います。

(3)は一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保でございます。マル1運用報告書の改善につきましては幾つか論点がございましたが、まず(a)運用報告書の二段階化、こちらについてはおおむね皆様方の合意をいただいたものと理解しております。運用状況に関する極めて重要な事項を記載した交付運用報告書、それから、より詳細な運用状況等を記載した縦覧運用報告書、このように二段階化することが適当であると結んであります。

他方、交付運用報告書は原則として書面または電子的な方法により交付、縦覧運用報告書は原則として電子的手段の活用で足りることとする一方、受益者から請求があった場合のみ書面による交付を義務づけるということが適当と結んでおります。その後になお書きを書いております。請求の有無にかかわらず一律に書面を交付するといった、見直しの趣旨に沿わない対応が行われることのないよう留意すべきであるという一文を加えさせていただいております。こちらは、本ドラフト作成の過程で、当の販売業者あるいは運用会社のほうから、受益者からの書面請求があった場合の縦覧運用報告書の書面交付を義務づけてしまうと、かつて目論見書で行われたような非効率な対応と同様の対応、すなわち縦覧運用報告書について書面交付の義務が生じうるのであれば、縦覧運用報告書に関する請求の有無に関わりなく、縦覧も交付もまとめて送付してしまえといったような画一的な対応が販売の現場で行われてしまうのではないかという懸念が事務局に寄せられました。そういったことは皆様方のご議論の趣旨に合わないと思いましたので、こういったなお書きの一文をつけ加えさせていただいております。

それから、運用報告書記載事項等の見直しでございます。先ほど申し上げましたように、二段階化自体は適当ということでご議論いただいたと思いますけれども、では、具体的に記載事項をどう分けるのかといったことについては、具体の議論をまだいただいておりませんので、記載事項の見直し案というものを私ども事務局で考えさせていただきまして、後ほど後半戦で皆様方にご報告し、ご議論いただくことにしたいと思っております。

それから(c)有価証券報告書等との関係でございます。運用報告書と有価証券報告書、これの単純な統合ということについては困難ということで整理させていただいておりますけれども、有価証券届出書と有価証券報告書、この金商法の世界の中での2つの書類、これらに重複があるということで、現状のまま両方の書類を継続的に提出する必要があるかどうか、こちらを後半戦においてご議論いただければと思いまして、今申し上げた点について検討することが考えられると結んでおります。

それから、マル2トータルリターン把握のための定期的通知制度の導入でございます。こちらについては、おおむねそういう取組みを行うということは支持をいただいていると思いますけれども、具体的にそれをどうやって実現するかということについては、まだまだ議論が必要だと考えております。したがいまして、一定期間の累積損益(トータルリターン)が受益者に通知される仕組みにつき、引き続き検討ということで、本ワーキング・グループにおいて後半戦でご議論いただければと思います。

それに先立ちましては、まずは事務局におきまして当該仕組みを制度として位置づけるのか、あるいは、どのようなシステム上の対応が必要か等々の点を実務家と議論させていただいて、ご報告申し上げることにしたいと思っております。

それから、マル3販売手数料・信託報酬等に関する説明の充実でございます。こちらの点もご異論なかったと理解しておりますので、当該説明の充実を図ることが適当と結んでおります。

マル4販売・勧誘時におけるリスク等についての情報提供の充実でございます。こちらは、事務局から欧州の取組みをご紹介させていただいたりしましたけれども、いろいろなご意見があったと理解しております。いただいた慎重なご意見については8ページ上のほうの2つのポツに記載しております。例えば、段階や階級を用いた表示は、簡便であるがゆえに誤解を招きやすい、あるいはリテラシーの向上を阻害する。また、その計測期間によって表示が大きく変わるなどの問題があるから、慎重な検討が必要である、こういう指摘をいただいたと思っております。

今後、当該取組みの海外における動向や、我が国の実務慣行等も踏まえて、後半戦のワーキング・グループにおいて、引き続き深度ある検討を行っていただければと思っております。

マル5運用財産の内容についての制限(一定の類型のリスクに対する規制)でございます。こちらについても、まだまだ議論が分かれているところと認識しております。したがいまして、マル5の3パラ目、適合性の原則のもとで説明が尽くされても、突発的・不連続的に発現する可能性があり、予測しにくいリスクが内包されている場合等、説明義務に依存するだけでは投資者保護が不十分であると考えられる場合につき、運用財産の内容についての規制により当該リスクを一定限度にとどめることが考えられる。こうした観点からの信用リスクの集中回避のための投資制限、あるいはデリバティブ取引に起因するリスク量の規制、こういった事例も研究して、本ワーキング・グループにおいてさらなる検討を行っていただければと考えております。

それから、8ページ一番下のほうですが、3.投資法人制度でございます。以下、投資法人制度の事項について整理しております。(1)は諮問を受けた現状認識を記述しております。前段はリーマンショック後のJ-REITの動向を踏まえ、投資法人の財務基盤の安定性を向上させる取組みが必要であるという旨を記述しております。

2パラ目は、スポンサーとの関係について、投資法人の運営や取引の透明性確保、こういった取組みが必要ではないか。あるいは、インサイダー取引規制等の導入が必要ではないかといったことを含め、そういった透明性の向上という取組みについての必要性を記述しております。

(2)資金調達手段の多様化を含めた財務基盤の安定性の向上でございます。まず資金調達・資本政策手段の多様化についての基本的な考え方、(a)のところでございますけれども、一番最後の行、みなし賛成制度の維持を前提に考えるべきであるということが、議論の前提として皆様方からご支持いただいた内容かと思います。

(b)具体的な手段の検討でございますけれども、多様化のオプションとしては、事務局よりライツ・オファリング、転換投資法人債、種類投資口、無償減資及び自己投資口取得をご紹介させていただきました。このうち、議論では種類投資口については、投資主間の利益相反の可能性が非常に高く、利益相反防止のための強固なガバナンスが構築されない限り、導入に慎重であるべきだという意見が多かったかと理解しております。加えまして、転換投資法人債も同様に、エクイティとデットという性質の違うステークホルダーが同じ局面で出現するということで、似たような利益相反の可能性が高いのではないかと考え、ここでは転換投資法人債と種類投資口について、強固なガバナンスが構築されない限り、慎重に検討すべきと整理しております。

したがいまして、後半戦では優先的にはライツ・オファリング、無償減資、自己投資口取得、こちらの具体的な手段を、まずは事務局において具体的に検討させていただきまして、ワーキング・グループにまたご報告さしあげたいと思っております。

マル2簡易合併要件の見直しでございます。こちらにつきましては、要件の見直しを行うことが適当だということが議論の大体の方向性だったと理解しております。

(3)投資家からより信頼されるための運営や取引の透明性の確保についてでございます。マル1投資家の信頼を高めるための意思決定確保のための仕組みの導入ですけれども、こちらはまだまだ議論が必要だと認識しております。方向性としては、中ほどに書いてありますような役員会、投資主総会、あるいは運用会社のコンプライアンス委員会、こうした主体による監視ということが考えられるわけですけれども、今後さらに実務を踏まえて具体的な方策について検討いただければと考えております。

加えまして、鑑定価格について、市場関係者の事後的なチェック機能の向上に向けて、評価書の概要だけではなく、その算出根拠、これに係る詳細な情報を公表する取組み、こちらも後半戦で深度ある検討をしていただければと思っております。

マル2インサイダー取引規制の導入でございます。こちらは、皆様方その導入自体はご異論なかったと理解しておりますけれども、具体的にどういう制度設計をしていくか、ここら辺についてはまだまだ議論ができておりませんので、11ページ中ほどにありますように、投資法人特有の事情を考慮した規制の整備につき、さらに議論を行うことを検討すべきと結んでおります。

(4)その他の施策でございますけれども、海外不動産取得促進のための過半数議決権保有制限の見直し、こちらはご異論なかったと思っておりますので、事務的に検討させていただいて、結果をご報告させていただければと思います。

マル2発行差止請求制度の導入についても、ご異論なかったと認識しておりますので、整備を行うことが適当と結んでおります。

そのほか事務の効率化に関する事項につきましても、事務的に検討させていただければと存じます。

以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明いただきましたお手元の中間論点整理(案)ですけれども、これを踏まえて、皆様方からご質問、ご意見をいただきたいと思います。

それで、やり方ですけれども、多少区切ったほうがいいかと思いますので、タテ1、タテ2、タテ3と、1つずつ、まずはメンバーの皆様方からご質問、ご意見等をいただきたいと思います。オブザーバーの皆様方には、大変恐縮ですが、最後にまとめて時間を取りたいと思いますので、そのときにご発言があればお願いできればと思います。

なお本日は、できればお手元の中間論点整理(案)を取りまとめたいと思いますので、ご質問、ご意見に際しては、それを意識したご発言をしていただいて、ややこしいご発言は、また後半戦に取っておいていただければと思います。

それでは、まずタテ1の「はじめに」というところ、1ページから2ページ目の冒頭について、あまりないとは思いますけれども、もしご質問、ご意見がございましたら、メンバーの皆様方からご発言をいただければと思います。いかがでしょうか。

タテ1はよろしゅうございますでしょうか。また後で戻っていただいても結構です。

それでは、次にタテ2の投資信託制度です。2ページ目から。(1)は現状と対応の方向性、総論的なところ。それから(2)が3ページからありまして、そして(3)が6ページからということで、全部で8ページまでですけれども、この2.の投資信託制度につきまして、いかがでしょうか。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。

7ページのマル2及びマル3のところの記述についてですが、ちょっと私が逆に誤解しているのかもしれないのですが、その記述に、やや誤解を前提としたようなところがあるような気がしましたので、ちょっと意見を言いたいのですけれども、マル2ではトータルリターンを把握する必要があるという議論がなされておりまして、これは実際そういう話が出たところですけども、トータルリターンというのは、私の理解では、要するに投資期間中に生じた損益の合計、累積ということだと思うのです。

ところが、ここの記述に累積費用という言葉が出ておりまして、これはおそらく投資期間中に負担した信託報酬等の累積ということなのではないかと思うのですが、トータルリターンを計算する基準は、基準価額ということになると思うのですけれど、基準価額はもともと信託報酬を差し引いたベースですよね。ですので、これは分けて考えないと、もちろん技術的な検討は今後するとはなっているのですけど、これは技術的に立ち行かなくなってしまうのではないかという気がしまして。

例えば信託報酬が、ある投資家の保有期間中に変わったような場合に、それを厳密にちゃんと案分して、ほんとうにその投資家に帰属する累積費用を、特に販売会社ベースで算出するということはそもそも可能なのか。

また、トータルリターンを把握するという制度の趣旨からして、そんなことが必要なのかという2つの疑問がありまして、私が提案したい修文は、マル2の中で「また、実際に負担した信託報酬の総額はそもそも通知されていない」を削除しまして、続くところ「適切な投資判断のための環境を整える観点から、受益者が自分の保有する投資信託に係る投資期間全体の累積分配金を含む累積損益を把握しやすくすることは重要である」として、「や累積費用」という言葉を削除する。

これは決して、何か投資家にとって不利益になるようなことを言っているということでは全くございませんで、その次のマル3で、投資家の費用負担についての開示説明の充実ということがはっきりと書かれておりますので、むしろここの累積費用をできるだけわかりやすく、正確ではないとしても、目安でいいのだと私は思うのですけれども、できるだけ負担した費用をわかりやすくするということについては、マル3のほうの検討で具体的に詰めていくということでよろしいのではないかと思う次第でございます。

○横尾企画官

よろしいですか。

○神田座長

どうぞ、お願いします。

○横尾企画官

ありがとうございます。事務局より、その点についてご説明させていただきたいと思います。確かに、大崎委員ご指摘のように、技術的に累積費用を個人ベース、各投資家ベースで出すというのは相当ハードルが高い、システム的にも相当の負担を要するような事項であるようでございます。

他方で、ワーキング・グループについて事務局よりご説明した資料の中で、どういうことをご説明していたかというと、そもそも投資信託のリターンがわかりにくいということに加えまして、信託報酬については購入時に目論見書等で報酬率などは説明されているが、投資開始時から実際に負担した総徴収額は通知されていないということで、我々の問題意識としては、投資信託の費用負担の認識というものが投資家に希薄ではないかという問題提起をしたつもりでございました。

おっしゃるように、トータルリターンの計算に当たりましては、手数料部分、特に信託報酬部分というものは基準価額に反映されていますので、その部分はトータルリターンの計算には改めて含める必要はないわけですけれども、そのトータルリターンを稼ぐために、どれだけ信託報酬がかかっているのかということは投資家に必要な情報ではないかと考えまして、こういう記載をさせていただいております。

この点、ほかの委員の皆様方もご異論とかご意見とかあるかもしれませんので、本日ご議論いただければと存じます。

○大崎委員

では、ちょっとよろしいですか。そういうことでしたら、例えば私が今提案させていただいた修文の後に、「そのため、一定の期間引き続き検討を行うべきである」の後に、「また、実際に負担した信託報酬の総額はそもそも通知されていない」と続け、ちょっとすぐに文章までは思い浮かばないのですけど、「個々の投資家が負担した累積費用を把握しやすくするための開示等についても検討するべきである」とかいうふうに分けて書いていただいたほうがいいんじゃないかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

今の点は、どうしましょうか。大崎委員が最後におっしゃった方向で整理をしたほうが読みやすいですかね。確かにマル3は目論見書等なので、これからの話で、マル2は既に投資信託を持っている受益者について、損益と累積費用と、具体的にどこまで、どういう形でというのは今後の検討ですけれどもということですので、今の文章ですと、「そのため」の後に累積費用の文章が入っていないので、今おっしゃったようなことにはなるので、このままの文章でいくのだったら、「そのため」の後にちょっと工夫する必要があるということですね。

あるいは、両方分けて、報酬の話はもう1つ後ろに書くということでしょうかね、分けたほうがわかりやすいかもしれませんね。

本日終わるまでに、ちょっと考えていただいて、また最後にこの点を確認させていただきたいと思います。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

私は修文をお願いするつもりではないのですが、少し申し上げたいことがありまして、まず2ページのマル2のところの本文4行目、5行目ぐらいに書いていただいているのですけれども、投資信託商品の開発・販売に当たっては顧客本位の目線が一層必要である。このご指摘をきちんといただいたということは大変重要だろうと思っています。ただ、私がつけ加えて、この場で申し上げておきたいのは、この表現というのは単に商品の組成というか、あるいは、すごく極端な言い方をすると見ばえというか、あるいは商品をつくるときの工夫ということだけではなくて、多分投資者あるいは消費者が拠出した資金が、ほんとうに今の世の中あるいは産業の必要なところにお金がいく、それでリターンが上がってくる、そういう意味で、いわゆる運用力というのが、今の日本の投資信託の業界にとって大事な課題なのではないかということが、このワーキング・グループでも、あるいは金融審議会の本体でも議論されてきたのだろうと思っています。

そういう点から言えば、本来は運用会社と、それから消費者との利益がある程度一致するということが、我々の制度設計の目標だったというところは再度確認しておければと思っております。そういう観点から言うと、ほんとうに結びついているかどうかという点なのですけれども、特に4ページから5ページにかけて、どちらかと言うと規制の柔軟化のほうについて、これは対立する利益がある、つまり投資家なり、あるいは消費者の利益に配慮しなければいけない。いずれも具体的にどのように見直すのかということが提示されないと、なかなか制度設計がしにくいわけで、そういう意味から、事務的に検討すべきだとしていただいていることは大変理解ができるのですが、まさに事務的に検討していただきまして、それをぜひ、報告という形になるのかもわかりませんが、後半戦でなるべく早めに提示していただいて、議論していただければと思います。

くれぐれも、今まで投資信託制度が保護してきたところが損なわれないようにしていただきたい。

もう1点ですけれども、8ページのマル5運用財産の内容についての制限のところです。私、最初に申し上げたことから言うと、運用財産の内容について、一定の制度的な制限が導入される、あるいは導入するきっかけができるということは大変大事なのではないかと思っています。まさに後半戦の課題で、それとの関係で書いてはいただいていると思うのですが、米国や欧州において、いろいろな動向が見られると。これの実際とか、まだあまり運用されていないのではないかと思うので、その辺の導入のねらいであるとか、できれば夏の間に資料が集まるものであれば、ご検討いただければ大変ありがたいと思っています。

私の推測では、もちろん投資者保護あるいは消費者保護が主眼ではありますけれども、一方で、一定のところへの投資が集中しないようにであるとか、あるいはデリバティブをあまり過度に使わないようにとか、市場全体といいますか、金融システム全体についての目配りもあって、それと投資者保護とが一致して導入の方向になったのではないかと思っておるのですが、そのあたりの実態について、検討のために資料があればと思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。いずれも大変重要なご指摘だと思います。

お隣の石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

今のマル5についてのご指摘と同じ観点なのですが、事務的な検討というものと別に、後半戦でさらに深く検討するということに区分けされている事項は、先ほどのトータルリターンもそうですし、それからマル4の、ここはかなり議論があったところだと思うのですけれども、このあたりについても、夏中にとは申しませんが、事務局で資料を幅広く集められて、その後ご検討の期間を経て資料を検討結果と一緒にご提示いただくよりは、資料を前広にお渡しいただいて、委員側でも同時並行で検討できるような形で進めていただけるとありがたいなと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、村木委員、永沢委員の順でよろしければ。村木委員、どうぞ。

○村木委員

ありがとうございます。マル2のトータルリターン把握のための定期的通知制度の導入ということに関連しては、第4回のワーキング・グループで、私からの累計手数料の把握を容易にするための開示が必要ではないかという考えを述べさせていただきました。このワーキング・グループでも投信の手数料水準が高いのか、適正なのかという議論が行われてきました。現状ここでは信託報酬について記載をされていますが、申込手数料が3%台と水準的に決して低くない水準で、これを短期間に回転売買をすると、明らかに投資のパフォーマンスに影響を与えてしまうという問題があります。手数料水準を直接規制をするというのは適切なやり方ではないと考えましたので、申込手数料を含めて、投資をした後にパフォーマンスを投資家がみずからチェックをする上で必要な情報として、こういった開示が必要なのではないかという考えを現在も持っております。

信託報酬については比較的計算がしやすいですが、申込手数料を含めて、それが投資期間中、例えば年換算でどれぐらいのパーセントになって、例えば最初に10万円投資をしたものが結果的に何万円かになったときに、その要因として、手数料であったり分配金であったり、それ以外の元本変動というような区分が必ずしも容易ではないと考えますので、そのための把握としてこの制度を位置づけるのが適切ではないかと考えております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

ありがとうございます。既に出た意見と重なる部分もありますが、皆様の意見にそのままというよりも、資料にしたがって気づきました点を順番に申し上げますので、重なる部分もありますがご容赦ください。

まず2ページ目の一番下のところでございますが、私も上柳先生のご意見に同意でございまして、やはり商品開発の工夫は、分配金とか商品の周辺の工夫だけではなくて、運用力の向上が一番求められている部分もありますので、顧客本位の目線というだけではない部分もあるのではないかなと感じております。またその部分は、一番初めの「はじめに」の新成長戦略のところにも関連しており、思い起こしてみれば、この新成長戦略からこのたびのワーキングにおりてきた背景を考えますと、個人のリスクを取れるお金を、どう低迷に苦しむ日本経済の中に回していくのかも考えていくことが求められていたようにも思いますので、その辺が欲しかったなという感想はあります。でもこれはこのままで、特に異論があるわけではございません。

それから同じ2ページ目の下のところですが、特にこれは書きかえてほしいわけではございませんし、情報開示については各運用会社、販売会社の自主的な取組みを促すことをぜひお願いしたいと思いますし、法令で縛るものではないと私も思っております。しかし、運用者の経歴につきましては、例えばアメリカのSECが2009年3月31日に、エンハンスド・ディスクロージャーということで、ミューチュアルファンドについて目論見書のサマリーセクションでポートフォリオ・マネジャーの氏名、タイトル、担当機関を開示するように要求するという動きも出ているように聞いておりますので、この時点にとどまることなく、さらなる開示努力をお願いしたいし、当局をはじめ市場もこれを求めていくことが必要ではないかと思っております。

それから3ページ目の上から3番目の点に関して質問ですけれども、思い出せなかったので、後で事務局からご説明いただければと思いますが、3行目の「業界慣行の見直し」というのは、例えばどういうものがあったのだろうかと思いまして、もしご説明いただければと思います。

4ページ目の一番下のところですが、種類受益証券についてご提案があったところが、このような書きぶりに落ちついたということだと理解しております。私は、やはりこの複数の報酬体系等の容認というのは、方向性として投資家には、大きなチャレンジ(前進)になるのではないかと期待はしております。といいますのも、投資信託は複合的なサービスの商品でございまして、代行部分のサービスは投資家が選択できるようになって、その部分の価格が違ってきてもいいのではないかと思っておりますので、一律に同じ代行報酬がすべての投資家に強いられる状況を改善するためには、これは大きな一歩になるのではないかと期待はしております。ただ一方で、例えば、目論見書が例えば厚くなる等のマイナス面も出てくる可能性はあり、今まで進めてきた、わかりやすい目論見書を求めるというような方向性と若干反することも出てくると思います。利益相反防止の観点だけではなく、その他の問題もないか検討して、さまざまなチャレンジのための方法を考えていく必要があるのではないかと感じております。

多くて恐縮ですけれども、6ページ目、先ほど事務局から(3)の(a)のところ、なお書きがつけ加えられましたということで、私も、やはり投資家が最終的に負担するコストが上がることは好ましくないことですし、同意でございます。あのとき申し上げたかったのは、店頭で「ホームページにありますから」と拒絶されることがないようにお願いしたいという趣旨でございましたので、この1文を入れていただきよかったということを、あえてつけ加えさせて申し上げておきたいと思います。

それから累積費用、7ページ目の(c)のマル2のところは、村木委員のご意見に全く同意でございます。やはり投資家がよくわかっていないということで、さまざまな問題が生じておりますが、特に投資信託の投資家はよくわかっていない。ここで気づくことが(組織や理解への)大きなその一歩になるかと思いますので、コストやシステム対応の問題などもあるかと思いますが、前向きにご検討いただければと思っております。

8ページ目でございます。上柳委員、それから石黒委員からもご提案がありました点につきまして、私も大賛成でございまして、秋からの議論の前に、海外の具体的な状況を先に提示いただいて、私ども、それから関係者が広く勉強できるような機会を持たせていただけたらと希望しております。

ほんとうに最後になりますけれども、このマル5の最後の段につながるところでございますが、投信法によってつくられるものが何でも投資信託と呼ばれていいのかという素朴な疑問を持っております。投信協会のホームページなどでは、株や債券などに分散投資をするものですよと、下線引きをして説明されたりもしておりまして、投資信託について国民の中に一定の認識が形成されてきております。そういうものからあまりに大きく外れるものまでもが、投信法でつくられているから投資信託と呼ばれていいのかという点を、問題意識として持っておりますことを、書いていただく必要はありませんが、最後にお伝えさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

質問が事務局にあったと思います。3ページでしたか。

○横尾企画官

3ページ目の上から3行目ですね。「その際、業界慣行の見直しについても必要に応じて検討」というところでございます。この具体的な内容が何かということでございますけれども、特定のこれというわけではないんですが、投資信託は今、永沢委員のご指摘にありましたように、法律ではわりと、ざくっとしか決めていなくて、さまざまなことが自主規制であったり、あるいは古くからの慣行であったりといったことで、制度が全体としてワークしているという実情にあるかと思います。中にはその後の投資信託の商品の高度化であるとか、あるいは国際化と齟齬を来しているような慣行がないのかといったことも、投資信託運営の業務の効率という観点では検討が必要ではないかということで、この1文を記載しております。

○神田座長

よろしゅうございますか。ここは一般論としてここで一度入れておいて、具体的な話はまた今後ということに。

○永沢委員

また次回ということで。

○神田座長

そうですね。そうさせていただければと思います。

それから先ほど大崎委員から始まって、7ページのところの書き方は後でちょっとご相談させていただきますので。

清水委員、どうぞ。

○清水委員

神田先生からややこしい話はしないようにということですけれども。

○神田座長

冗談ですので(笑)、遠慮なくどうぞ。

○清水委員

実務家及び会計士の観点から、今、横尾様から説明があった「業界慣行の見直し」について、何度か発言させていただいていますので確認させてください。基準価額の照合のあり方が「業界慣行の見直し」の例の1つだと理解しています。これを「基準価額の一元化」と発言したところ、信託協会から名指しで反対を受けていますが、「基準価額照合のあり方」ということで再度ご説明させていただきたいと思います。基準価額照合については、日本独特のやり方をしておりまして、委託会社と受託銀行の間で、双方で計算して1円まで照合するという方法をとっています。今現在は委託会社、運用会社がほとんど有価証券の価格を受託銀行に提供して、その上で基準価額を合わせています。米国やヨーロッパ諸国では通常は一元的に基準価額を計算するところが計算を実施して、それをモニタリングですとか価格の変動をチェックするとか、そういうやり方で基準価額の正確性を確保しています。基準価額の双方による計算・照合方法については、より効率的、効果的な方法をすることによって、結果的にファンド運営のコストを下げて、投資家のコストを軽減していくことにもなり得ますので、金融庁・事務局様にも引き続きの検討をお願いしたいと思います。AIJの問題もあり、基準価額の計算・時価の取得等、ファンドの管理方法等については慎重に検討していく必要もあると思いますが、私としては投資信託のオペレーション上の重要な課題で、日本の投資信託の独自性になってしまっているので、引き続き検討をしていただければ幸いです。修文としては、「基準価額の照合のあり方、重要性の原則等について、業界慣行の見直しについて引き続き検討していく」としてほしいと思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかの委員の皆様方…。隣の島田委員、どうぞ。

○島田委員

4ページの(b)ですけれども、「書面決議を要する併合手続の見直し」というところで、「投資信託の併合を促進する観点から、併合の前後で」云々ということがありますが、(a)と同様に、併合の場合の考慮要素として何が適切かという部分のところに、できれば投資家に明らかな不利益が起きないようにという形の観点を含めてということを、入れていただけるとありがたいなと思います。

具体的には、みなし賛成を既に適用されている中で、人数要件等もなくなるのであれば、自分が知らないうちにファンドが合併して、気がついたら信託報酬が高いものになっていたということが起きることは避けなければならないと思いますので、このようにご提案させていただきます。

もう1カ所、これは質問ですが、7ページの一番上の「その際、投資家・市場関係者の意見も聴きながら検討を行う」という運用報告書の改定案ですけれども、非常にありがたいことだと思います。ぜひ行っていただきたいと思いますが、この市場関係者というのはどういった方々を前提にしているのか。例えば中立的なアドバイザーとか、FP、評価機関の方とかも含めて市場関係者とおっしゃっているのかどうかだけ、ぜひ含めていただきたいという意味で伺いたいと思いました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

最後の点、事務局からお答えいただければと思います。

○横尾企画官

7ページ目の上から2行目、運用報告書の記載事項の見直しについての検討に当たっては、「投資家・市場関係者の意見も聴きながら」と記述している部分でございますけれども、島田委員ご指摘のとおり、FPでご知見のある方、あるいは評価機関の関係者でご知見のある方等を含めまして、投資信託の市場においてご知見、あるいは職務上関係のある方等を含めました市場関係者という意味でございます。

○島田委員

ありがとうございます。

○神田座長

よろしゅうございますか。

それでは、沖本先生、よろしくお願いします。

○沖本委員

7ページのマル4に関して、中間論点自体に関しては全く異存ございませんが、今後の検討に際しまして希望といいますか、こうしたことができたらいいのではないかということに関してコメントをさせていただきます。

ボラティリティーの段階表示に関しましては、まず大きなメリットとしまして、投資家にとってわかりやすい、相対的なリスクの指標になり得るということがあると思いますが、その反面、リスクの指標としての不安定性とか、そのほかのデメリットもあるのではないかと思います。ですから実際導入するかどうかの議論に際しましては、メリットとデメリットの大きさを比較することが重要になってくるのではないかと考えております。

その上で、海外での動向を把握するのは非常に重要なことになるとは思いますが、日本の投信市場の現状に基づいた試算も重要になってくるのではないかと考えております。具体的には、海外では過去5年間のデータを使いまして、7段階に階級表示するという方法が行われておりますが、実際その手法を日本の投信市場に適用するのはなかなか難しいのではないかと思います。その理由としましては、日本では過去5年間のデータを利用できる投信自体が限られていますので、日本で導入するとすれば、もう少し短期のデータ、具体的には1年、2年、3年のあたりで導入する必要があると思います。ただ、データの使用期間が短くなりますと不安定性が増しますので、7段階のところをもう少し大まかな段階に調整することが必要になってくると思います。その最適な組み合わせは、試算でしかわからない部分も大きいと思いますので、試算をするリソースがあるかどうかはわからないのですけれども、そういった試算ができればいいのではないかと思いました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにご指摘はいかがでしょうか。タテ2の部分ですが。

そうしましたら、ちょっとご指摘いただいた点で幾つか確認をさせていただきたいと思います。まず、大崎委員をはじめとして村木委員、永沢委員からご指摘のあった点ですけれども、事務局として案があればご説明をお願いします。

○横尾企画官

トータルリターンのところでございます。資料でいいますと7ページになります。ご指摘を踏まえまして、3行目の「また」以降、「実際に負担した」云々、「通知されていない」のところをまず削除いたします。その後、その1行下、「累積分配金」のところから「や累積費用」を削除いたしまして、「累積分配金を含む累積損益を把握しやすくすることは重要である」と続けたいと思います。さらに「引き続き検討を行うべきである」という文章の後に、費用の話は別途記載いたしまして、「また、実際に負担した信託報酬の総額はそもそも通知されておらず、こういった負担額についても投資家が把握できるような取組みが重要である」と記述させていただければと思います。最後の2行、「また」で始まりますけれども、これを「以上の検討に先立ち」と整理させていただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

以上のようにさせていただいてはどうかと思いますが、大崎さん。

○大崎委員

まことに適切な修文の案だと思います。私は全く同意です。

○神田座長

どうもありがとうございます。

それから、これは特に修文というご指摘ではなかったと思いますが、上柳委員、永沢委員からご指摘の、要するに運用力の向上というか、そもそも運用が悪いというのがあるでしょうというのは、私も個人的には全く同感なのですけれども、書こうというご指摘ではなかったと思います。もし書くとすると、2ページの(1)のマル1ぐらいに、「さらに」という段落で「活発化している」というあたりに「運用力の向上が求められるとともに」とか書けなくはないのですが、ちょっとなかなかうまく書くところがないという感じもありますので、そういう問題意識はもちろんここにいるメンバーの皆様方全員持っていると思いますので、文字にはならないかもしれませんけれども、ここでそういう問題意識は皆持っているということは確認させていただきたいと思います。

それから、清水委員からのご指摘の基準価額のところですが、1つは3ページの「業界慣行の見直し」のところに例示として書くのはちょっと場所がよくないので、もし書くとすればきちんと取り上げたほうがいいと思います。ここでのご議論は、必ずしも皆様方のご意見を伺っていませんので、私の感じでは、ご指摘はいただきましたのでもちろん議事録にはきちんと残っておりますので、また後半戦でさらに検討できればさせていただくことにさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

ありがとうございます。

それから、島田委員からご指摘の、4ページの(b)にもあるし、(c)にも同じようなことではありますよね。つまり、手続を緩和するのはいいけれども、いわゆるインフォームド・ジャッジメントというか、きちんと情報を得た上での判断ということですので、(b)との関係でご指摘だったとは思いますが、(c)についても今のようなことが言える。ただご指摘は(b)だったと思います。これはいずれにしても事務的に検討していただきますけれども、ここに、一般的な表現ですけれども、「(a)と同様に」の後に、「投資家に不利益が生じないよう」という、ご発言があったような一言を入れさせていただいて、その次に、「併合の場合の考慮要素として何が適切か事務的に検討すべきである」とさせていただいてはいかがかと思います。

大体以上かと思います。

もしよろしければ3ポツに進ませていただいて、気がついた点が後からあればまた戻っていただいても結構です。8ページから最後までで、「投資法人制度」ですけれども、まず委員の皆様方からご意見、ご質問をいただければと思います。いかがでしょうか。

小沼委員、どうぞ。

○小沼委員

ありがとうございます。今回のこのご提案の文章に、何か変更のご提案をするということでは全くございませんで、一言コメントをさせていただきます。

9ページの真ん中ぐらいの米印のところでございまして、不動産投資法人に係る見直しが念頭に置かれていると。今回この分野を中心に検討されて、かつこれ以外の投資法人一般については、別途見直しを行うことが適切か否か、規制の横断化という観点から整理をすると記述していただいていて、この点は大変私としても賛同というか、ありがたいなと思っております。今回の議論の中に、インサイダー規制等の内容が盛り込まれておりまして、まずはある程度実態が把握できる不動産の投資法人のところを中心に、これから深い実務を詰めていったらいいのかなと思っておりまして、日本は投資信託があって、投資法人もあって、投資法人のほうは実態的には不動産のものしか出ていないという形だと思いますけれども、その投資信託、あるいは投資法人の中の将来の可能性との規制の横断化とか、そういったものも図る必要がある中で、やぶから棒にあまり前広にいろいろな範囲で規制強化を進めてしまって、後戻りがしにくくなるといけないと思っております。海外の実態で言いますと、投資法人の形態で例えば指標連動の株価指数型ETFなんかも出ておりますので、将来の議論としては、いろいろな可能性があるのかと思いますので、こういった形で進めていただければ、大変ありがたいなと思っています。

前半の投資信託のほうも、今後の開示の充実等の項目があったかと思いますが、この辺もやはり横断化は頭の初めのところにうたっていただいていると思いますが、商品間あるいはクロスボーダーの横断化の上でのバランスを念頭に置いて、検討が進めばいいなと思っておりまして、この辺は我々の業界の関係者も今後しっかり詰めていくべきところだと思いますので、しっかりやっていきたいと思っております。よろしくお願いします。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにこの投資法人制度の部分は、いかがでしょうか。

石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

10ページの中ほどの(3)のマル1でございますが、私の記憶の確認になるんですけれども、最後の「鑑定評価額の算出根拠に係る詳細な情報を公表する取組みを併せて検討すべきである」とまとめていただいているのですが、私の記憶では、これについては皆さんご異論がなくて、むしろ「適当である」という表現に近いようなご議論だったような気がいたしておりまして、ちょっとその点の認識の確認をさせていただきたいと思いました。

あと今回、今日の会合の前に事務局と非公式にお話をさせていただいた中で、この文章の中には取り上げられていない幾つかのポイントも今まで前半で出ていて、例えば私が単独で申し上げたんですが、日割り配当の問題とかがあります。これらは、死んだわけではないが、ただどのように生きているかよくわからないということだったんですが、適切な機会があれば、また後半戦で議論させていただく余地があるということ、一応そのように理解しておりますことを申し上げたいと思います。

○神田座長

ありがとうございます。最後の点は、先ほどの清水委員のご指摘と似ていまして、これで終わりということはございませんので、私の理解で申し上げますと、今回この中間論点整理に載せさせていただく項目は、ご発言があって、皆様方である程度ご議論いただいて、ご意見がまとまったもの、そしてご意見は分かれたけれどもご議論いただいたものということで、そのほかの、あまりご議論はいただけなかったけれどもご指摘いただいた点は、ほかにもございますので、それは終わりということではございませんので、また秋以降、ぜひ、検討させていただければと思います。

○石黒委員

ありがとうございます。

○神田座長

それと今の10ページの(3)のマル1の末尾。

○横尾企画官

ありがとうございます。マル1の末尾、鑑定評価額の算出根拠等の詳細な情報のところを「検討すべき」と結んでいる趣旨でございますけれども、公表自体は皆様方のご異論はなかったと事務局も理解しております。ただ、では根拠となる情報としてどんなものを出すのかとか、あるいはそういうことについて鑑定士のサイドではどのように対応が可能かとか、そういう実務的なところをまだ詰めなければいけないと思っておりまして、そういったところも含めて後半戦で検討いただければと思って、このように記述しております。

○神田座長

どうもありがとうございました。一遍切るなら公表することが適当であるとして、そのための取組みを続いてとなるのでしょうけれども、趣旨はこの文章で今のようなことでございますので、もしよろしければ。

○石黒委員

今のご確認で異論ございません。

○神田座長

ありがとうございます。

ほかにこの投資法人制度。

清水委員、どうぞ。

○清水委員

毎回同様の発言で恐縮ですが、投資法人の制度について発言させていただきます。

9ページの上から6行目でございますが、こちらの文章の中に、「諸外国のREIT制度や税制との関係も踏まえつつ」、「財務基盤の安定性を向上させる取組みにつき検討する必要がある」とまとめていただいているという理解です。私の一番主張したい点は、繰り返しでございますが、現在J-REITにおきまして会計と税金に差が出てしまうと、そこに過大な税金が発生してしまい、売る必要がない不動産を売却することになったり、J-REITのスキーム自体が破綻するというような大きなリスクを抱えたまま、J-REITの運営がされていることを問題提起させていただきたいと思います。さらにシンガポールやオーストラリア、米国のREITではそういう問題がないものですから、各国のファンド(器)の競争上も不利になっていることはあると思います。ここで記載していただいている点は、そういった趣旨も含まれていると思いますが、確認させていただきたいと思います。(2)のマル1の(b)の、無償減資等を検討したとき、これはそもそも減損によって生じる税務上の問題を解決するために提案していただいている点ですとか、それから(4)のマル1、海外不動産を取得するために今困難となっている点の1つも税制上の問題でございますので、それぞれ特に個別の記載はなくとも、こういった税制の問題も同時に解決しないと、実務上の弊害を解決しないということも含まれているという理解でよろしいでしょうか。

○横尾企画官

ありがとうございます。事務局としては、その点については高い問題意識を持っております。

○神田座長

どうもありがとうございます。大変貴重なご指摘ですし、本当は、一度きちんと時間をかけて議論したほうがいいテーマだとは私も思いますけれども。ただ趣旨はそういうことでございます。

ほかに投資法人制度、3ポツ、いかがでしょうか。

よろしゅうございますか。そうしましたら委員の皆様方で、通して1、2、3と、今ご発言等もお聞きになって、もしさらに追加がございましたら承りたいと思います。

よろしゅうございますか。そうしましたら、オブザーバーの方々で全体について、どの箇所でも結構ですので、もしお気づきの点、ご質問等がございましたらご発言いただければと思いますが、いかがでございましょうか。

投信協会、どうぞ。

○投資信託協会(城川オブザーバー)

この全体の取りまとめにどうこうではないのですけれども、このたび中間論点整理をお取りまとめいただき、神田座長並びに委員の皆様、金融庁の事務局並びにプレゼンテーションをされた有識者の方々のご尽力に、感謝申し上げたいと思っております。今後、先ほどからありますように、秋に具体的な検討が始まるわけですけれども、その議論におきましても、投資家にとって有益なものとなるように、また投資信託の発展につながるよう、実務家の立場から投資信託協会としては意見を述べさせていただければ幸いと考えております。

またこれまで8回ワーキングがございましたけれども、ワーキングの中では、委員の皆様や有識者の方々から、業界に対する多くの有意義な意見や厳しいご指摘がありました。これらのご意見やご指摘等に対しては、我々は真摯にこれを受けとめて、やはり投資信託が国民の中核的な資産形成手段として、より多くの方々に安心してご利用いただき、本来期待される役割を果たすよう、鋭意努めていきたいと考えております。引き続き、よろしくお願いしたいと考えております。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにオブザーバーの皆様方でご発言はございますか。

そうしましたら委員の皆様方、本日、まだ若干時間はあるのですけれども、そろそろ終わってもいいかなと思うのですが、さらに、もしせっかくなのでということでご発言はございますか。

特によろしゅうございますか。それでは、皆様方から活発なご指摘を本日も多数いただきまして、大変ありがとうございました。それでお手元の中間論点整理(案)でございますけれども、先ほど確認させていただきましたように、修正をさせていただく箇所は2カ所です。4ページ目の(b)のところ、島田委員ご指摘の部分と、7ページ目のマル2は大崎委員、村木委員、永沢委員のご指摘を踏まえて、先ほど事務局からご披露させていただきました。そういう形に修正をさせていただきます。それ以外の部分は、この現在の文章ということで、皆様方からご賛同をいただいたと思います。したがいまして、今の2点を修正した上で、取りまとめとさせていただきたいと思います。なお、今後、事務局と私のほうで、てにをはというか、形式的な確認をさせていただきたいと思いますけれども、その形式的な確認の作業は、恐縮ですけれども事務局と私にご一任をいただければ幸いです。その上で、この時点で中間論点整理として公表とさせていただきたいと思います。

このワーキングはまだ終了ではございませんので、今回のこの整理に基づきまして、秋以降このワーキング・グループにおいて、皆様方にはさらなるご検討をお願いするということでございます。そしてまた、先ほどちょっとご指摘がございましたけれども、今回ここには直接書かれていないことにつきましても、必要に応じてご検討させていただきたいと思いますので、お気づきの点があれば、本日ご発言いただいた方もいらっしゃいますが、さらに事務局にお知らせいただければと思います。そのほか、先ほどご指摘いただきましたように、事務局で検討した結果というか状況は、できるだけ早目に可能であれば皆様方にお知らせをして、秋以降の審議に備えさせていただきたいと思います。事務局はこの暑い夏に大変ですけれども、検討事項がいっぱいありますが、頑張ってやっていただけるのではないかと思います。

そういうことで、お手元の中間論点整理は、今申し上げました形で公表することにさせていただきたいと思いますけれども、ご了解いただけますか。

どうもありがとうございます。

それでは、これでこのワーキング・グループの審議は、夏前は一段落となります。どうもありがとうございました。事務局からご連絡等、最後にありましたらお願いいたします。

○横尾企画官

8回にわたり、ご多忙の中、精力的にご審議いただきまして、まことにありがとうございました。今、座長の神田先生よりありましたように、事務局におきましては、検討事項につきこの夏の間に作業を進めさせていただいて、またご指摘がありましたように、参考となるような情報、資料があれば、早目に皆様方に送付申し上げたいと思っております。よろしくお願いしいます。

それから、秋以降またワーキング・グループを再開することになろうかと思いますが、その時期については、改めてご連絡させていただければと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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