金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第7回)議事要旨
1.日時:
平成24年6月1日(金曜日)14時00分~16時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室
3.議題:
1.開会
2.事務局説明
3.自由討議
4.閉会
4.議事内容:
○事務局からの説明の後、討議が行われた。
○討議における主な意見は以下のとおり。
(資金調達手段の多様化全般について)
- 制度の見直しにあたっては、海外の事例を参考とすべき。
(ライツオファリング)
- 新投資口予約権の上場制度の手当てが前提となろうが、コミットメント型のライツオファリングの導入には賛成。
- 株式会社に関するライツオファリングの議論(会社法の議論)に配意しながら、投資法人におけるライツオファリングの導入について検討していく必要がある。
(転換投資法人債)
- 転換投資法人債の発行が必要となるのは、基本的には危機的な状況のときであると想定される。そういった状況における資金調達手段の確保を図る観点からは、転換投資法人債を導入すべきであるし、いわゆるMSCBも全面的に禁止するのは望ましくない。MSCBについては、株式会社と同様に、ソフトローによる規律で対応することが望ましい。
(種類投資口)
- 投資法人に種類投資口制度を導入した場合、種類投資主間の利害調整手段をどうするかについても検討が必要。種類投資口の多様性を幅広く認めると制度は非常に複雑になるし、種類投資主総会制度と「みなし賛成制度」との関係が問題となる。種類投資口に係る利害調整手段につき、簡素なガバナンス構造を有する投資法人においては、会社法と同様の利害調整手段を導入することには無理があると思われるので、種類投資口制度の導入には消極的であるべき。
- 仮に種類投資口制度を導入する場合、種類投資口の多様性の幅は大きく広げる必要はないと思われる。特に、投資法人の支配権に関わる部分について種類投資口間で差を設けることは「みなし賛成制度」等との関係でも消極的に考えるべき。
- 資金調達手段の多様化を行うにあたっては、予測可能性の問題、利益相反の問題にも配慮が必要であるところ、特に種類投資口については、これらの問題を解消できるかが懸念される。
- 種類投資口の導入と簡素なガバナンス制度とは一種のトレードオフのような関係にあるものと思われるが、簡素なガバナンス制度の維持に重きを置くべきである。会社法とのアナロジーで制度が複雑になっていけば、究極的にはそもそも導管体として非課税にすべきでないという議論もあり得る。
- 危機時における緊急避難に資する資金調達手段として、種類投資口の導入に賛成。導入すべき種類投資口として想定されるのは、シンプルな種類投資口であって、かつ、複雑なガバナンスを必要としないもの。株式会社と同様のバラエティーを持った種類投資口までは認めることは不適当。
- 契約型投資信託において種類受益権を導入すべきとの議論との関係に留意。
(無償減資)
- 固定資産の除却損が出るような場合に、なかなか欠損が解消できないということも想定されるので、REITが災害復興において機能を果たすためにも、無償減資は許容すべきである。
- 実際に実現した損失があるにも関わらず、無償減資後に得られるインカムゲインをそのまま分配してもよいかという点については、保守的に検討をし、一定の歯どめをかける施策が必要。
(自己投資口取得)
- 現在のJ-REIT市場の大きな課題に、NAVに対する倍率が1倍割れしている銘柄が全体の7割を占めており、投資口価格の割安放置の状況がなかなか解消されないということがあるところ、その解決策につき優先して検討すべき。そして、自己投資口取得は当該課題の解決に非常に重要な役割を果たすと考えている。
- 自己投資口取得を導入する場合、内部留保が実質上積み上げられないJ-REITにおいては、その原資につき、事業会社の場合との比較、あるいは海外事例を参考にしながら整理・検討を行う必要がある。
- 自己投資口取得を実効的なものとして導入するためには、例えば資産の譲渡益を原資とした自己投資口取得ができるような税務上の手当てを講じることや、内部留保を許容することが必要。
- 自己投資口取得の導入にあたっては、説明義務の強化等のほか、利益相反行為防止の実効性を担保するような手当てが必要。
- 投信法上の利益概念と税務上の利益概念に係る計算式の違いから、自己投資口取得によって当該REITが課税されてしまう可能性があるので、税務上の手当てが必要。
- 自己投資口の取得を導入するに当たっては、債権者保護手続の導入の是非の検討が必要。
- 取得した自己投資口の取扱いについては、消却することを前提と考えるべき。
(資金調達手段にかかる投資主関与のあり方)
- 投資口の発行差止請求制度の導入には賛成
- 投資口の発行差止請求制度においては、金額の不公正性だけではなく、発行そのものの不公正性等も差止事由とするよう、差止事由の範囲について工夫が必要。
- 「みなし賛成制度」は見直すことも含めて検討すべき。特に、投資主の利害関係に大きな変動をもたらすようなことが可能になる場合には、投資法人の意思決定に積極的に関与する投資主の意見を重視するような考え方はとれないかという点につき、検討する必要がある。
(簡易合併手続の見直しについて)
- 会社法上、当該合併のインパクトが会社にとって小さければ総会決議は不要だという考え方に基づき、20%基準が採用されているところ、当該基準を投資法人においても適用して良いのかという点につき問題となる。
(投資家の信頼を高める意思決定確保のための仕組みについて)
- 投資法人のガバナンスにおいては、役員会によるコントロールを強調すべき。例えば、役員会でどのような議論・検討がなされたかを、簡素な形でわかりやすく開示するという方策が考えられるのではないか。
- 客観的な第三者によるチェックとしては、不動産鑑定評価が非常に重要。鑑定評価の信頼性を高めるべく、鑑定評価の依頼枠組みの再考や鑑定書自体又はその裏付けデータの公表を検討することは有益。
- 海外投資家からは、J-REITのガバナンスに係る関心が高く、日本においても諸外国と同様、投資主が何らかの形でJ-REITの意思決定により関与するようなプロセスを導入すべき。
- 投資法人制度成立後の実務・制度の変遷等を踏まえ、現在においてどのような枠組みが好ましいのかという観点から、投資法人のガバナンスに関する制度等を見直していく必要がある。例えば、REITの投資対象が何であるかによって、物件取得の頻度等は大きく異なることや、投資法人の役員はスタッフを抱えることができないこと等を前提として、どういった制度が実効的なのかを考えなければならないし、ハードローとソフトローをどのように活用するのかという議論も必要。
- 投資法人のガバナンスにおいて、関係者の責任関係の整理等、実効的なものとするための仕組みについて考えていくべき。
(インサイダー取引規制について)
- 具体的な制度設計においては、REITのオペレーションそのものに悪影響が出ないよう配慮することが非常に重要。また、現行のインサイダー取引規制とのバランスやインサイダー取引規制そのものの動向もにらみつつ、制度整備を行うことも重要。
- 会社関係者の範囲については、REITの特性、実態をよく見きわめて検討する必要がある。例えば、スポンサーの位置づけについては、工夫する必要がある。
- インサイダー取引規制と取引所の適時開示ルールとでは、背景となる考え方も異なるため、必ずしも一致させる必要はないことに留意。
- インサイダー取引規制の制度設計に際しては、資産運用会社やスポンサーの従業員持株会によるJ-REITへの投資が可能となるための検討も行うべき。
(J-REITによる海外不動産取得促進のための過半議決権保有制限見直し)
- 不動産保有目的SPCへの出資規制を緩和することで、グローバルに事業展開している日本企業が保有・使用する不動産をJ-REITを通じて日本国内から投資できるようにすることは、J-REIT市場の発展、拡大につながると同時に、日本企業の海外への積極的な展開を日本国内の金融資産で支援していくという効果ももたらされる点で、非常に重要。
- 投信法と租税特別措置法の規定の平仄をとるべき。
- 一部の不動産関係の業務では、国内不動産でもSPCを通して保有する例もあるとのことなので、対象の不動産を国内不動産に広げることも検討すべき。
- 日系企業がテナントとして入っている海外不動産をJ-REITが保有する場合には、円・円での支払いを行うことにより為替リスクを回避できるという利点がある。
(その他)
- 税会不一致の問題等があるので、税制についても一定の見直しが行われることが望まれる。
- 内部留保が実質的に許容されておらず、分配金の原資は当該期間の利益そのものだというJ-REITについては、投下資本の稼働期間に応じた配当(日割り配当)を認めることが理論的ではないか。
- 投資法人法制の見直しにおいては、J-REITを念頭に置いた見直しのみならず、不動産以外を投資対象とする投資法人をも考慮した見直しを行うべき。
以上
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