金融審議会「投資運用等に関するワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    平成26年10月10日(金曜日)16時30分~18時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

それでは、定刻より1分程度お早いかもしれませんけれども、皆様方おそろいでございますので始めさせていただきます。「投資運用等に関するワーキング・グループ」の第1回会合を開催いたします。

皆様方には大変お忙しいところ、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。申しおくれましたけれども、私は吉野直行金融審議会会長金融分科会会長からご指名をいただきまして、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます東京大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。

そこでまず初めに、このワーキング・グループについて簡単にご説明をさせていただきたいと思います。このワーキング・グループでございますが、本年9月26日に開催されました金融審議会の総会と金融分科会の合同会合におきまして、金融担当大臣から2つの諮問をいただきましたが、その2つの諮問のうちの1つであります投資運用等に関する検討を行うため設置されたものであります。

大臣からの諮問におきましては後ほどご説明がございますけれども、資料3の事務局説明資料にありますように、投資家の保護及び成長資金の円滑な供給という観点を踏まえ、いわゆるプロ向けファンドをめぐる制度のあり方などの課題について検討することが求められております。総会におきましても説明がございましたけれども、プロ向けファンドをめぐりましては、さまざまな問題が生じておりますことから、まずは皆様方、このメンバーでプロ向けファンドをめぐる制度についてのご検討をお願いしたいと考えております。

次に、初回でございますので、このワーキング・グループにご参加いただくメンバーの皆様方をご紹介させていただきたいと思います。お手元に名簿をお配りさせていただいておりますけれども、メンバーの紹介は事務局からお願いします。

【田原市場課長】

市場課の田原でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、当ワーキング・グループのメンバーの方々をご紹介申し上げます。座席順にご紹介させていただきます。

メンバーの皆様の右側から磯崎哲也様です。

【磯崎委員】

よろしくお願いします。

【田原市場課長】

上柳敏郎様です。

【上柳委員】

上柳でございます。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

大崎貞和様です。

【大崎委員】

大崎でございます。よろしくお願いいたします。

【田原市場課長】

沖野眞己様です。

【沖野委員】

沖野でございます。よろしくお願いいたします。

【田原市場課長】

尾崎一法様です。

【尾崎委員】

尾崎でございます。

【田原市場課長】

加藤貴仁様です。

【加藤委員】

加藤です。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

坂勇一郎様です。

【坂委員】

坂です。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

田島優子様です。

【田島委員】

田島でございます。よろしくお願いいたします。

【田原市場課長】

永沢裕美子様です。

【永沢委員】

永沢でございます。よろしくお願いいたします。

【田原市場課長】

増田悦子様です。

【増田委員】

増田でございます。よろしくお願いいたします。

【田原市場課長】

家森信善様です。

【家森委員】

家森です。どうぞよろしくお願いします。

【田原市場課長】

次に、オブザーバーをご紹介申し上げます。

消費者庁の鈴木課長です。

【鈴木オブザーバー】

鈴木でございます。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

経済産業省経済産業政策局の佐々木課長です。

【佐々木オブザーバー】

佐々木でございます。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

国土交通省土地・建設産業局の小林課長です。

【小林オブザーバー】

小林です。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

日本証券業協会の小柳常務執行役政策本部長です。

【小柳オブザーバー】

小柳でございます。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

第二種金融商品取引業協会の島村事務局長です。

【島村オブザーバー】

よろしくお願いします。

【田原市場課長】

投資信託協会の増田自主規制委員長です。

【増田オブザーバー】

増田でございます。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

日本投資顧問業協会の岡崎企画部長です。

【岡崎オブザーバー】

岡崎でございます。よろしくお願いします。

【田原市場課長】

また、本日はご欠席ですが、当ワーキング・グループのメンバーとして神作委員、黒田委員、黒沼委員にもご参加いただくこととなっております。なお、池田委員、太田委員につきましては所用のため、途中からご出席になるとのことです。また、本日は参考人として野村資本市場研究所の関研究部長にもご出席をいただきまして、ご説明いただくことになっております。

事務局につきましては時間の都合もありますので、お手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

次に、最初でございますので、議事の進め方等につきまして若干ご承認をいただきたいことがございます。

まず、このワーキング・グループですけれども、原則として公開とさせていただきたいと思います。議事録も公表ということにさせていただきたいと思います。したがいまして、皆様方には公表を前提としてといいますか、そういうご意見、ご発言をいただければと考えております。また、万が一、私がこの会合に出席できないような場合が生じ得るかもしれませんけれども、そのような場合には座長代理をお願いしたいと思いますけれども、この点につきましては大変恐縮でございますけれども、私にご一任をいただき、その都度ご指名をさせていただくということにさせていただきたいと思います。

以上につきまして、今、申し上げました線で進めさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】

どうもありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきたいと思います。

それでは、本日の議事に移らせていただきます。

お手元の議事次第にございますように、本日はまず野村資本市場研究所の関研究部長から「投資運用等を巡る国内外の状況」についてご説明をいただきます。このワーキング・グループでは、プロ向けファンドをめぐる制度について検討を行っていただくわけですけれども、本日はこのワーキング・グループは初回ということもございますので、プロ向けファンドを含む資産運用ビジネスの国際的な動向につきまして、幅広くお話を伺うこととした次第です。

その後ですけれども、事務局から「投資運用等を巡る制度の現状と課題」、次に証券課の井上課長から「適格機関投資家等特例業務届出者の状況」につきましてのご説明をいただき、皆様方に質疑応答、意見交換をお願いしたいと思います。

以上のように進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速ですけれども、関研究部長、どうぞよろしくお願いいたします。

【関参考人】

ただいまご紹介にあずかりました野村資本市場研究所の関と申します。よろしくお願い申し上げます。

ただいま神田先生からお話がありましたとおり、皆様のワーキング・グループのいわゆる本論の部分とは少しかけ離れた話題も入ってくるかもしれないんですけれども、投資運用業、アセットマネジメント産業を取り巻く国内外の環境について、オーバービュー的にご紹介をしてほしいというご要請を受けまして、資料をご用意させていただきました。国内外と書いておりますが、海外、なかんずく資産運用業の中心地である米国の話題が若干中心になっておりますけれども、この辺はご容赦いただければと思っております。

まず、資料を1枚めくっていただきまして資産運用ビジネスのトレンドということで、金融危機前後の変化について、簡単にキーワード風にまとめさせていただきました。皆様もご認識のとおり、世界の金融産業におきましてアセットマネジメント産業、あるいはファンドマネジメントビジネス、いろいろな呼ばれ方をしているビジネスが大変ある意味活況を呈しているといいますか、成長産業になりつつあるというところだと思います。

この成長産業化しているアセットマネジメント産業でございますけれども、グローバル金融危機が起きる前から、おそらくアメリカなどの先進国において進んでいる高齢化に伴って、個人金融資産を中心とする金融ストックが積み上がる中で、大変ビジネス環境としてはフォローの状況があったことかと思います。

それから、金融機関のビジネスのモデル、資産運用のプロダクトにおいてもアメリカを中心にさまざまなイノベーションが起きてくるということでございまして、一言で申し上げますと、伝統的な証券運用から世界のアセットマネジメント産業はかなり幅が広くなってきているということでございまして、非伝統的なアセットクラスに関しましてもファンドというものが作られ、成長していく状況が見てとれます。

それから、金融機関のビジネスモデルに焦点を置きますと、かつてのファンドマネジメント、ファンド運用がどちらかというとパフォーマンス、資産運用で利益を出して、投資家の方にお配りする、貢献していくというのが第一義的な産業だったと思うんですけれども、高齢化が伴うに進みまして、徐々に単なるパフォーマンスの提供というところからライフスタイル、ライフイベントに対するさまざまなソリューションを提供するということで、運用商品の内容もあるいは金融機関のビジネスへの取り組み方もソリューション提供型のほうに徐々に競争力の中心が移ってきているという認識を持っております。

このグローバル金融危機が起きまして、当然このアセットマネジメント産業も大きな影響を受けたわけでございますが、後で見ていただきますとおり、事業環境はその後また好転をして、成長を続け始めているという状況でございます。また、グローバル金融危機の後に金融規制改革が世界中で起きております。この金融規制改革の進展を受けまして、商業銀行・投資銀行が今まで担ってきたリスクテイキング、リスクマネーの供給という役割が若干再編、再調整を迫られる状況になってきておりまして、資産運用業の重要性が相対的に高まるという状況が出てきているかと思います。大手の金融グループ、投資家、国の政策としても資産運用の重要性を認識し、競争力を強めるために何ができるかを官民一体となって考えている国が増えてきている状況があるのではないかと認識している次第でございます。

以上が全体的なトレンドでございますが、2ページ以降少しばらばらとしてしまうんですけれども、環境について幾つかの資料をご紹介していきたいと思います。

まず2ページでございますが、PWCが行いました2020年までのグローバルな資産運用業界の予測でございます。投資顧問中心、年金基金中心、北米中心という大ざっぱに言ったときのシェア、中心地は変わらないわけでございますが、投信が増えてくる、地域別にいいますとアジア太平洋、ラテンアメリカのようなエマージング諸国で今後はファンドビジネスが伸びてくるという予測がなされておりまして、全体的に成長はするんだけれども、少し重心が変化する予測がなされているようでございます。

次に3ページ目と4ページ目でございますけれども、そのファンドにお金を供給する金融ストックの状況について簡単にご紹介をさせていただいております。1ドル100円換算で同じ縦軸を使って3ページはグラフを作っておりますので、若干日本の金融資産の蓄積が弱いようにも見えるわけでございますけれども、これは翻って考えれば米国の金融資産の蓄積が非常にハイスピードで進んでいるということを意味しております。ここでも資産運用なりファンドビジネスが大変重要な役割を果たしてきたということは言うまでもございません。また、日本におきましても90年以降証券市場、資産、投資市場が停滞しているにもかかわらず、家計金融資産ストック全体としては維持もしくは徐々に増えていく状況がありまして、先進国共通に金融ストックが高齢化に伴ってたまっていく状況が見てとれます。

4ページでございますけれども、この高齢化社会においてより重要性を高めている年金の資産の蓄積を見たものでございます。ここでは米国の例を見ておりますけれども、伝統的な確定給付型のDBプランの資産も増えているわけですけれども、それ以上に確定拠出型(DC)プラン、あるいは個人退職口座(IRA)、これはDCプランでお金をためてきた人たちが退職するとIRAに資産を移管するようなケースも含まれておるようなんですけれども、このDCプラン、IRAの資産が増えている様子がわかります。

また、このIRA、DCプランは個人の加入者、投資家が資産運用の内容を決定する要素が強いわけでございますが、その資産運用決定の中で、投信の選択される比率が増えているということでございまして、DCプランが増えているということ、DCプランの中での投信の選択される比率が高まっているというのがファンドマネジメントビジネスの成長を大きく支えている要因ということが言えると思います。

5ページにいっていただきまして、ここではグローバル資産運用業界のプレーヤーのランキングとその変化について見ていただいております。残念ながら日本に本社を持つ会社はグローバルなトップ20には入っていない状況がございますけれども、グローバルトップ10の中では大変大型化、競争激化、M&Aを含めました再編が非常に活発に起きているということでございまして、そういったグローバルな資産運用業界における競争環境も、あるいはプレーヤーがどんどん変わっていく環境を我々としては認識しなければいけないのかなと思っている次第でございます。

6ページにいっていただきますと、その運用会社のさらに後ろ側にいるスポンサー、アセットオーナーの状況を少し見ております。代表的な例といたしまして米国の確定給付年金プランの上位200基金、合計いたしますと大体4兆ドルぐらいの運用資産があるわけなんですが、この人たちの資産配分、アセットアロケーションがどのように変化しているかを見たものでございます。

一言で申し上げますと、伝統的な証券の比率が少し減る傾向がございまして、米国から見たときの海外の証券もしくはオルタナティブ資産と呼ばれる非伝統的なアセットクラスへの配分が増えていく傾向が指摘できると思います。

7ページをご覧になっていただきますと、さらに代表的な例といたしまして大学基金、カリフォルニア州の公的年金において、非伝統的な資産のアセットアロケーションの比率が非常に高いといったことを指摘させていただいております。このようにアセットオーナー側でオルタナティブ資産の比率が増えてくることを反映いたしまして、資産運用業界のプレーヤーの中でも非伝統的な人たちが少しプレゼンスを拡大する傾向がございます。代表的な例といたしまして、ソブリン・ウェルス・ファンド、ヘッジファンドというカテゴリーの投資家の資産がどんどん増えている様子を7ページには指摘させていただいております。

以上がプレーヤーなんですけれども、8ページ以降、代表的なファンドの分類に従いまして、世界の状況を見ていきたいと思います。まず、投資信託でございますけれども、圧倒的に世界の中での投信大国である米国の状況を8ページにはご覧になっていただいております。

まず左側のグラフにおきましては、総資産がMMFを足し上げますと15兆ドルを突破した米国の投資信託の残高の伸び方が見ていただけます。また、右側をご覧になっていただきますと、米国の個人金融資産に占める投資信託の比率、株式、現預金は長期的に見るとかなり上下に動いておりまして、投資信託、1980年代の半ばぐらいから継続的に一貫してこの比率を高めているということでございまして、ベビーブーマー層を中心に高齢化している米国家計の中で、投資信託が非常に重要な存在になっていることがおわかりいただけると思います。

9ページでございますが、この米国の投資信託の運用する人と販売する人の関係が微妙に変化をしながら発展を遂げてきております。ここでは細かくはご紹介はしないわけでございますが、大ざっぱな傾向を幾つか指摘させていただきますと、製販分離と言いまして、少し運用する人は運用に特化したほうがいいんじゃないか、資産運用商品の販売に特化する人は販売に特化したほうがいいんじゃないかということで、運用側と販売側の距離感が少し出てくるような潮流が見てとれますけれども、必ずしもそうなりきっているかというと、完全に分離してしまったかというとそういうことではなくて、あくまでも顧客の志向・ニーズに基づいて、どのようにアドバイスつきで資産運用商品を提供するかというところに、アメリカの金融業界全体が大きな力を注いでいることかと思います。

10ページでございますけれども、そういった中で非常に主流になってまいったのが投資信託あるいは資産運用商品を包むような形で、コンサルティングを通じて総合的な資産管理を提供するマネージドアカウントもしくはラップ口座の資産の拡大でございます。この辺は最近の日本なんかでも注目されてきているということでございまして、冒頭申し上げたとおり、資産運用産業が単なる運用パフォーマンスを提供するだけではなく、長期的あるいは総合的に資産管理、ソリューションを提供するビジネスに変貌していることがこういったことからも見てとれるのかなと思います。

11ページでございますけれども、ETF、あるいはターゲットデートファンドと言われているようなさまざまなイノベーションがアメリカで起きてきておりまして、これは資産運用産業の非常に好調な事業環境を受けて、さまざまなR&Dあるいは商品の開発が進んでいることを示しているものだと考えております。

12ページには欧州の投資信託市場の動向を書いております。米国ほど急激に回復、成長しているということはないのかもしれませんけれども、欧州におきましても金融危機前のピークを超えて、投資信託のファンドアセット、総資産が増えております。株式型ファンドだけではなくバランスファンド、債券ファンドも人気を集めてきているということでございまして、やはりどちらかというと資産形成、あるいは高齢化した投資家に向けて、さまざまなファンドが販売されていることではないかと思います。アメリカと共通の傾向が見てとれるということでございます。

13ページ、14ページはヘッジファンドについての簡単な資料をご用意させていただいております。世界のヘッジファンド業界、さまざまな推計があるんですけれども、ここではヘッジファンドリサーチ、HFR社と言われている会社の推計をグラフにさせていただいております。大体現在のところ世界で2.8兆ドルぐらいのヘッジファンド資産がありまして、この4、5年、先ほどのアセットオーナー側の動きを反映して、資産流入が非常に好調であるということで、市場規模が拡大しております。

ところがという感じなんですけれども、右側の主要戦略別構成比もしくは14ページの左側のリターンを見ていただきますと、ヘッジファンドというと非常にリスクをとって高いパフォーマンスをとにかく出すんだみたいなことを想像される方も多いのかもしれませんが、現実の最近のヘッジファンド業界はそうでもなくて、非常に平均化と言っては変なんですけれども、標準化が進んでいる一方、14ページの左側で見ていただくとおわかりのとおり、例えばS&P500で見たときの株式のリターンからちょっと負けるというんでしょうか、アンダーパフォームする状況が最近5年ほど続いておりまして、単純に高いリスクをとって、高いパフォーマンスを目指す姿とはまた違うヘッジファンドの平均的な姿も出てくるということでございます。

最後にプライベートエクイティファンドとベンチャーキャピタルについても資料を幾つかご紹介していきたいと思います。15ページと16ページにつきましては、グローバルに見たプライベートエクイティファンドの状況を見ていただいております。2000年代の前半、いわゆるバイアウトファンド、バイアウトブームみたいなものが少しあったということで、非常に大型のプライベートエクイティファンドが組成された結果、金融危機の反動で少しまだ回復がおくれているというのが世界の状況かと思います。

15ページの右側を見ていただきますと、未投資基金とかドライパウダーとか言われているようでございますけれども、PEファンドに投資家からお金は出ているんだけれども、そこから先に投資がされない、具体的なバイアウトファンド案件などに投資がされない資本が世界で数十兆円でまだたまっている状況がございまして、こういった状況を見ていきますと、先ほどの投資信託と若干違い、プライベートエクイティファンド市場においては、依然として世界金融危機の影響が若干名残があるといったところかと思います。

16ページをご覧になっていただきますと、グローバルプライベートエクイティファンドのエグジットの状況が書いてあります。これも金融危機前の水準を十分に回復していないわけなんですが、最近注目されておりますのが、右側のIPOがなかなか好調になってきたということでございまして、IPOによるエグジットが活性化することにより、プライベートエクイティファンド市場全体の活性化というのがまた出てくるのではないかと期待されている模様でございます。

17ページをご覧になっていただきますと、世界の大手のプライベートエクイティファンド、5年前と現在のファンドのランキングを出させていただいております。ちょっと英語で恐縮なんですが、一言で申し上げると、やはりここでも残念ながら日本のプレーヤーは入っていない状況でございます。

金融機関の系列のプライベートエクイティファンドが少し減っているですとかあるいは現在トップになっているカーライルグループ、KKR、ブラックストーンといった会社が、実は運用会社自体がニューヨーク証券取引所に上場しておりまして、上場した資産運用会社としても成長を遂げているということで、主要なプレーヤーの資金調達のあり方も変化してきている様子を見ていただけるのではないかと思います。

18ページにはベンチャーキャピタルに絞って状況を見ております。先ほどプライベートエクイティファンドの中でベンチャーキャピタルが占める割合は少し2000年代、低下する傾向がございまして、少しスケールが違ってまいりますけれども、傾向としてはややプライベートエクイティファンド全体と似ているところがございます。すなわち金融機関系列のベンチャーキャピタルがボルカールール等の影響を受ける形で少し減るという傾向がございます。

それから、18ページの右側のベンチャーキャピタルの投資でございますけれども、世界金融危機前のピーク、ましてや2000年前後のITバブルのときのピークはなかなか超えられないという状況が続いているわけですけれども、コンスタントに大体4,000社前後の会社に、円にいたしますと3兆円前後の投資がなされているというのが米国のベンチャーキャピタルの姿と言えそうでございます。

19ページでございます。米国ベンチャーキャピタルのエグジットの状況でございます。ここでもIPOが少し回復傾向が出てきておりまして、この背景にはジョブズ法と呼ばれるアメリカの新しい規制体系、フェイスブックのような非常に注目をされる大型のベンチャー企業のIPOがあったことなどが影響しているようでございますけれども、逆にベンチャーキャピタルの投資からエグジットまでの時間の長期化、案件の大型化などが指摘されている状況でございまして、少し5年前、10年前のベンチャーキャピタルのエグジットとは変わってきているのかなというところでございます。

欧州ベンチャーキャピタル市場の状況について20ページに書いてございますけれども、欧州のベンチャーキャピタル市場はさまざまな指標で見てもちょっと低調な状況が続いているというのがポイントかと思います。

私からは以上なんですが、最後に一言だけまとめさせていただきますと、今、申し上げたように資産運用産業の重要性が世界で高まっているということ、リスクマネー供給の供給主体としてファンドが非常に世界的にも注目を浴びる状況になっていることが、私の簡単なプレゼンテーションから言えることではないかなと思っているところでございます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、ここで少し質疑の時間をとりたいと思いますので、今のご説明について委員の皆様方からご質問等ございましたらお願いします。大崎委員。

【大崎委員】

ありがとうございます。

ちょっと2点、教えていただきたいんですが、1つは単なる言葉の問題なんですけど、PEという言葉とVCという言葉の関係なんですけど、先ほどのお話だとPEの中にもIPOによるエグジットがあるとか、あるいはPEのうちVCはというお話があったので、何となくPEが上位概念で、VCが狭い概念なのかなという感じがしたりもするんですが、そういう理解でいいとお考えなのかどうか、あるいはPEファンドと言われるものとVCファンドと言われるものには何か構造的に非常に大きな違いがあるのかどうか、それを教えていただきたいのが第1点です。

第2点は、ちょっと私自身もあまりちゃんと調査ができていなくて、今後事務局から教えていただければと思っているんですが、何となく私の感じだと例えばアメリカや欧州のここのところのずっと投資運用業に対する規制の流れを見ておりますと、例えばヘッジファンドをどうやって登録規制の中に取り込んでいくかということが、例えばアメリカでは大きな課題になったとか、あるいは欧州においてもUCITSの規制の見直しを何度もやって、どちらかというとあまり規制を強化か緩和かと私は白黒つけたくはないんですが、どちらかというと規制を整えていく、厳しくしていく方向だと思うんです。

そういった中で、今、関さんからお話があったとおり、非常に世界的に投資運用業の役割とか運用資産が大きくなっているお話があったわけですけど、そういった規制を強めることが投資運用業の発展に対して何か妨げになるということがあるとお考えなのか、それはむしろきちんとしていくことで業界がさらに発展していくことを助けているのか、その辺何かご感想があれば教えていただきたいと思います。

【関参考人】

ありがとうございます。

まず、第一のポイントでございますけれども、私のこの資料の構成としてはPE、プライベートエクイティが上位概念、大きな集合体としてございまして、最後の米国、欧州のベンチャーキャピタルの資料はその中の一部を取り出して見てみたという構成になっております。構造的にはパートナーシップを活用したファンドという形で資金調達がなされており、いわゆる未公開の証券に投資される構造からいたしますと、似たところはあるんだと思います。

ただ、先ほどちょっと申し上げたように規模の点、プレーヤーの点でもプライベートエクイティファンドランキングで上位になっているような大型のPE運用会社は、ベンチャーキャピタルはあまりやっていない状況が出ているようでございますので、少し専門家、バイアウトを中心に行うPEファンドの人たちはバイアウト中心に、ベンチャーキャピタルの伝統的なプレーヤーは、ベンチャーキャピタル中心にというすみ分けというんでしょうか、グループ的な違いが出てきているのかと考えているところでございます。

それから、規制に関しましては私が米国駐在の時代も含めまして見ている感想で申し上げますと、金融危機の反省ということで例えばドッド・フランク法というのができ上がったわけなんですけれども、明確にヘッジファンド、プライベートファンドが金融危機の原因となったという認識は、おそらく米国の規制当局側にはない一方で、やはり何となく実態を常に把握できる状態は作りたいという政策的な考え方はかなり全面に出てきたということで、プライベートファンドの登録ですとかファンドマネージャーに対して政策当局が常にアクセスをできるとか、そういった状態を常に確保することは行われてきたんだと思います。

そういった規制が業界の発展にどのくらい影響を及ぼしたのかということは、私も調査不足で十分にわかっていないところがあるんですけれども、必ずしもドッド・フランク法、金融危機後の不正がダイレクトにヘッジファンド、プライベートエクイティファンドの業界の成長を妨げたという話は見たことがございません。むしろ先ほどのJOBS法のような形でリスクマネー供給におけるファンドあるいはファンド投資家をどのように規制あるいは政策的に支援していくのかということが議論されている状況だと考えます。

【大崎委員】

ありがとうございます。

【神田座長】

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

本日は詳細な説明ありがとうございます。私からは3点質問させていただきたいと思います。

まず1つ目は細かなことで定義に関するところなんですけれども、いただいた資料の2ページ目の図表2の富裕層個人とマスアフルエント層の定義を確認させていただきたいと思います。

2番目は、今回このようなワーキング・グループが開かれた背景には、投資運用等とは書いてありますけど、プロ向けファンドを一般個人が取得することについていかがかということが背景にあると私は認識しております。今回いただきました資料を拝見しておりますと、確かにオルタナティブは私も想像以上に大きくなっていることに驚いたんですけれども、このオルタナティブの投資は機関投資家が多いのか、個人もオルタナティブにいっているのでしょうか。私の理解ではアメリカの投資信託は非常にオルタナティブ投資への規制は厳しいと思いましたけれども、個人がもしいっているとするならば、どういう形の器(法形式)でオルタナティブやPEといった非伝統的なものに投資しているのかということが2点目でございます。

3点目は、これも大変ずれた質問かもしれないんですけれども、DCが伸びているとかIRAが伸びているというお話がありました。DCとかIRAのような優遇税制を受けている器でこのような非伝統的なものをアメリカでは買うことができるのでしょうか。知識に関する質問で恐縮ですけれども、その3点をお願いしたいと思います。

【関参考人】

ありがとうございます。

まず第1点でございますけれども、調査の本票を持ってきていないので正確な定義は確認する必要はございますが、こういった調査において通常富裕層個人といったときは、投資家の資産100万米ドル以上の個人投資家を指しているという理解がございます。逆にいうとマスアフルエント層はそれ以下の投資家の資産を持った大衆投資家と言われ方をするときもあるようでございますけれども、そういった階層の投資家層を示すものでございます。

2点目のオルタナティブファンドあるいは投資商品の一般個人への販売の仕方についてですが、まず私の理解は完全ではないんですけれども、私の理解では今申し上げた例えばマスアフルエント層とか、一般投資家にオルタナティブファンドが公募みたいな形で広く販売される例はほとんど見たことがございません。オルタナティブファンドは機関投資家もしくは富裕層個人を中心に販売をされるものでございまして、通常は私募の形をとっているという理解でございます。その富裕層個人の中でプロ並みの知識を持っている人がいるかいないかといったことについてはちょっと私も存じ上げないんですけれども、一応そういう理解でございます。

3番目のDC、IRAに関しましては、基本的にはオルタナティブ的なアセットクラスとか私募でしか作られないような投資商品がそのままDC、IRAに入ることはほぼないということだと思います。ただ、一般の投資信託でも例えば空売りですとかデリバティブといったものを活用する例が増えていると思いますので、そういったものを通じて資産運用していることはあるんじゃないかと思います。

【神田座長】

どうぞ、永沢委員。

【永沢委員】

すみません、今のお答えの中で富裕層と機関投資家がオルタナティブ投資等へということでした。これの比率というのはわかるものなんでしょうか。

【関参考人】

そうですね、正確なところはなかなかわからないということです。

【永沢委員】

同じぐらいとか機関投資家は主流であるとかその逆であるとか、そのようなところはどうなんでしょうか。

【関参考人】

ほんとうになかなか統計みたいなものはなくてわからないところです。

【永沢委員】

ありがとうございます。

【神田座長】

ありがとうございました。ほかにご質問等ございませんでしょうか。上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

すいません、2点伺いたいんですけれども、1つ目は先ほどの大崎委員のご質問の続きかもしれませんけれども、金融危機以降、特に投資信託についてはヨーロッパかもわかりませんけれども、規制が強まっているように私は思うんですが、それによって先ほどはPE全体について言及されたような気もしますけれども、いわゆる投資信託については規制が厳しくなったからこそ、資金が流入していると私は思っていて、規制が厳しくなったにもかかわらずということではないという気がするんですが、その考えといいますか、私の意見かもしれませんけれども、ご見解があれば教えていただきたいのが1点です。

もう1点は、少し定義的なことになるかもしれませんが、きょうヘッジファンドであるとかプライベートエクイティという言葉をいただいているんですけれども、これが一体何を指すのか。特に今回のプロ向けファンドの日本における規制を考えるときに投資信託、PE、ヘッジファンドが日本で言うと何なのかということが何となくわかりにくくなっているんですけれども、そこをどういうふうに整理されているかお教えいただければと思いまして、質問いたしました。

【関参考人】

ありがとうございます。

まず、欧州につきましては、UCITSの投信信託のほうでは非常に業界のパラダイムを変えるような規制改革は今のところ発生していないということなので、先ほどUCITSファンドについては順調に成長が回復していることを資料でご紹介しておりますけれども、そういう理解でございます。

一方、私募、オルタナティブに関してはAIFMD、新しいディレクティブが作られるという形で、発想としては先ほどのドッド・フランク法のような私募ファンドにおきましても、ある程度そこで行われていることですとかリスクが把握できるような状態を作ろうという規制が作られまして、完全施行されたのはごく最近、2014年の夏と聞いておりますけれども、まだその影響がどうこうというには早い時期かもしれないんですけれども、確かにおっしゃるとおりでございまして、そこは信頼性の回復が規制によって行われるのであれば、また順調なそれによる投資家のお金の戻りもあるんじゃないかなというふうに思います。

それから、2番目でございますけれども、非常に難しいご質問で私は日本についてどうこうということは正直きちんと考えたり、定義としてまとめてみたことはございません。アメリカ、海外につきましては同じ私募型のプライベートファンドとして作られるものの中で、公開の有価証券に投資されるものをヘッジファンド、未公開の非上場の証券にでき得れば経営権をつけて投資しようとするのがプライベートエクイティファンドと、そのような何となくのカテゴリー分けをして、きょうの資料も作らせていただいております。

【尾崎委員】

ちょっと補足させてもらってよろしいでしょうか。ベンチャーキャピタル協会の尾崎です。

やはりこれからきちんと議論していくために、この辺の定義はある程度きちんと理解しておいたほうがよろしいんじゃないかと思います。プライベートエクイティといいますのは、英語の意味でいうともちろんプライベートですから未公開ととられるかもしれませんけれども、もっと広くPEという形で総称されています。しかし、ファンドの商品性格からいうともうちょっと正確に言っておいたほうがよくて、アメリカのカーライルやKKRがやっている大型のプライベートエクイティファンドと言われているものは上場株も含んだりします。そういう意味でPEと称してしまうと、未公開ですかということになりますので、そこはバイアウトファンドという形で投資をして、バイアウトファンドの中には上場株の買収も含めた広義な意味で使われています。

VC、ベンチャーキャピタルファンドというのは100%未公開企業ということになっていますので、これは明らかにプライベートエクイティではあります。しかし、商品という説明でいうと、むしろPEと総称するよりはオルタナティブの中でくくったほうが商品の説明はしやすいと思います。オルタナティブの中にバイアウトファンドがあり、ヘッジファンドがあり、ベンチャーファンドがあるように思います。

したがいまして、ここでもし今後議論するんであればPEという表現でくくるよりは、やはり日本の今、ご質問の中でいうと日本ではどうなっていますかと言われますと、日本でPEと称しているものは上場株の買収はございません。したがいまして、基本的にはPEイコールバイアウトファンドという総称が一番ふさわしいと思います。

一方、ベンチャーキャピタルファンドは明らかに未公開ですので、未公開のベンチャーキャピタルです。商品としてどう違うかというと全くリスクの選好度が違っていまして、ベンチャーキャピタルの日本における主なエグジットは基本的にはIPOになります。欧米では5割以上トレードセールによる売却が多いんですけれども、日本では伝統的にIPO依存型の投資が多くて、ここ数年に至りましてトレードセールと言われる企業買収によってエグジットすることが顕著に増えていると。

バイアウトのプレゼンの中に上場もありますと言っていたんですけれども、バイアウトもサイズによって欧米型の数千億、数兆円のバイアウトの場合には別ですけれども、日本の場合には数十億から数百億の未公開企業のバイアウトもたくさんございます。むしろそれが主流でありまして、数十億から数百億ですと十分未公開から公開ということによる上場益のエグジットもたくさんございます。そういう意味でバイアウトも公開として、IPOがエグジットになることもございました。

しかしながら、やはり80%、100%の経営権を伴った買収がバイアウトでございますので、上場するとファンドはその売却は大変苦労でございます。したがって、なるべく上場よりはトレードセールによる売却エグジットが多くなってきた。

まとめますと、やはりPEといいましてもアメリカにおいてのPE、バイアウトファンドは上場も含む大きな買収がございました。むしろベンチャーキャピタルのアメリカのファンドは1件当たりの投資額が数十億にも及ぶ日本の10倍以上のサイズもございますので、むしろアメリカでは300億円以下の時価総額のIPOはほとんどなくて、ほとんどがトレードセールで売却されている。日本は逆に言うと300億円以下の上場会社が上場企業の3分の2を占める状況でございますので、やはりベンチャーキャピタルの主力は数十億の未公開企業ということになります。

そういう意味で日本においてはバイアウトと言われましたら、数十億から数百億の未公開株が中心であるということでございまして、上場株は含まれていない。ベンチャーキャピタルは基本的にはアメリカと同じでございますけど、企業規模サイズは10分の1から数十分の1というのが日本のベンチャーキャピタルでございます。日本では、それを総称してPEという表現はなかなかなくて、PEとバイアウトファンドが同義として混同されて使われておりますので、このワーキング・グループで使われるときはそこをよく注意をしながら整理をされたほうがよろしいのではないかと。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

時間の関係もございますので、次へ進んでもよろしいでしょうか、それとも関さんのご報告について、さらにご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは関さん、委員の方々から難問がたくさん出されましたけれども、どうもありがとうございました。また引き続きいろいろ伺いたいと思っております。よろしくお願いいたします。

どうもありがとうございました。それでは、次に事務局からの説明に移りたいと思います。

田原さん、よろしくお願いします。

【田原市場課長】

それでは、お手元右上に資料3とあります事務局説明資料に従いまして、今回のワーキング・グループにおける問題意識についてご説明をさせていただきたいと思います。総会での説明とやや重なるところがございますので、総会委員の皆様には恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。

1ページをおめくりいただきますと、現在の日本における投資運用に係る制度の全体像を鳥瞰した図が出ております。左側の投資家の方々に金融商品を提供する上で販売、運用、ビークルという形で段階を追って、それぞれの段階で制度が設けられている制度になっておりまして、販売についていいますと、基本的には第一種金融商品取引業者、登録金融機関が証券などの販売をしておりまして、投資助言・代理業者、投資運用業者がアドバイスをしたり資産運用を請け負う形になっておりますし、ファンドにつきましては第二種金融商品取引業者あるいは自己募集といった形で実務が行われているところでございます。

また、運用につきましては、今申し上げましたとおりそれぞれ投資運用業者でありましたり、今回議論になります適格機関投資家等特例業務届出者といった形での運用が行われておりまして、今、申し上げました販売と運用につきましてはそれぞれ登録制度であったり、届出制度という中で業界としての透明性が保たれるような仕組みを作ってきたということになっております。

また、ビークル規制につきましては、日本のビークル規制はそれぞれの業法に非常にくっついたところがございまして、ややアメリカなどとは異にしておりますけれども、投資信託や投資法人のようにそれぞれについて届出・登録制度があるものもありますれば、一方で、組合のようにそういったものはないものもある形になっているところでございます。また、このほかに全体を通じまして公募の場合には開示制度があるという形になってございます。

1ページおめくりいただきますと、そのうち運用についてやや詳しく説明した資料になってございます。最初の丸のところにございますけれども、現行、日本の法制におきましては投資運用業は原則として、当局へ登録を行うことによって可能となっておりまして、一方で、最近、規制緩和の中でプロ向け投資運用業を設けまして、こちらにおいては出資者を適格投資家に限定し、また、運用財産の総額につきましては200億円以下とすることで、緩和された登録要件のもとで業務を行うことを可能にしたものでございます。

一方で、今回議論になっております適格機関投資家等特例業務につきましては、1名以上の適格機関投資家、いわゆるプロの方、49名以内の適格機関投資家以外の投資家、いわゆる一般投資家、アマの方から構成される場合につきましては、届出だけで運用を行うことができる形になってございます。

プロ向けファンドは組合契約等に基づきまして出資で募った金銭等を主として株式等の有価証券やデリバティブへ投資する運用業務を行うことができるわけですけれども、下の表をご覧いただければわかりますように、忠実義務や分別管理義務といった行為規制は課されていないところでございます。

また、登録制でないこともありまして、業務改善命令や登録取消などの行政処分の対象となっていないということでございます。

次のページに投資運用に関する制度のこれまでの改正経緯が書いてございますけれども、2つの大きな流れがございまして、1つは左側の投資一任業務・投資助言業務でございますが、こちらは左側の一番上の四角の中に書いてありますように、悪質業者による投資家被害が発生したということでございまして、これを踏まえて1986年にいわゆる投資顧問業法が制定されたものでございます。これが2004年に規制緩和の流れの中で1億円から5,000万円に最低資本金が引き下げられたというのが1つの流れでございます。

もう1つの流れは右側の投資信託委託業でございまして、1951年に証券投資信託というものを作る上で法律が制定されまして、これが免許制になったりする中で続いてきたわけでございますけれども、2004年には同じように規制緩和が行われて、資本金が5,000万円になったという流れになっているところでございます。

この2つの運用に関する法律が2007年の金融商品取引法施行時に横断的に整理をされまして、いずれも登録制、投資運用業につきましては最低資本金5,000万円、投資助言・代理業については営業保証金500万円、各種の行為規制が適用されることが横断的に整備されたということでございますが、この際、後にも説明しますけれども、適格機関投資家等特例業務が新設されたということになってございます。また、2011年には先ほど申し上げましたように、規制緩和の流れの中でプロ向け投資運用業が整備されたということになってございます。

1ページおめくりいただきまして、4ページは販売関係の業規制・行為規制についてご説明をさせていただいております。有価証券の売買やその取次ぎ、募集・私募やその取扱い等は原則として当局への登録を行うことによって可能となっております。

一方、プロ向けファンドにつきましては、やはり届出のみで組合契約等に基づく収益の分配を受ける権利について、アマを含めて私募を行うことが可能ということになっております。また、販売に際しましては書面交付義務、説明義務、断定的判断の提供の禁止などの行為規制は課されておらず、登録制でないこともあり、行政処分の対象となっていないということでございます。

1ページおめくりいただきまして、販売に関連します規制の改正経緯、これは最近のものでございますけれども、左側の証券会社、当初は登録制でしたけれども、1968年にいろいろ問題があったことから免許制となりまして、これを1998年に再度登録制に変更しております。また、資本金につきましては、先ほどと同じように2004年に引き下げたということになっております。

一方で、右側のファンド販売業者でございますけれども、これは金融商品取引法の施行以前には横断的な監督はございませんで、証券取引法や商品ファンド法、信託業法などの個別法によって販売業者が監督されておりました。規制されていない業者もあったということでございまして、監督されていない詐欺的ファンドによる被害事例が発生したということでございまして、こういったことを踏まえて2007年に金融商品取引法という形で横断的な法制度の整備が行われたものでございます。

また、昨年いろいろご議論いただきまして、今年度の法改正におきまして株式型クラウドファンディングやファンド型クラウドファンディングに関する規定が整備されたところでございます。

1ページおめくりいただきまして、適格機関投資家等特例業務につきまして、再度ご説明させていただければと思います。

下の図にございますように、現在の制度におきましては適格機関投資家が1名以上、投資家として存在するファンドにつきましては、一般投資家49名以内であれば届出を行うことによりまして、通常、業として登録が必要になります以下の2つの業務を行うことが可能となります。

1つは、組合型集団投資スキーム持分の私募ということでございます。これは販売のほうでございます。

それから、もう1つはその財産を主として有価証券やデリバティブ取引に係る権利に投資することによる投資運用ができるということでございます。これらを適格機関投資家等特例業務と呼んでおりまして、一般的にはプロ向けファンドと呼ばれているということでございます。

1ページおめくりいただきまして、その導入の背景でございますけれども、先ほど申し上げましたように2007年の金融商品取引法の施行以前に組合型のファンドが非常に問題になったということがございまして、2007年の金融商品取引法の検討時の議論におきまして、ファンドにつきましては多数の一般投資家を対象とした匿名組合形式の事業型ファンドに関する被害事例などに鑑みまして、利用者保護ルールの徹底を図る観点から、包括的・横断的規制の整備を図るとされました。

一方で、利用者保護を前提にしながら、活力ある金融市場を構築するという観点からプロ投資家を対象とするファンドにつきましては、一般投資家を念頭に置いた規制を相当程度簡素化しまして、金融イノベーションを阻害するような過剰な規制とならないように配慮するといった考え方がとられたものでございます。

このような考え方のもとで、一般投資家を対象にファンドの販売・勧誘、運用を行う業者につきましては、登録制とする。その一方で、プロ投資家を対象とする業者につきましては、最低限の実態把握を行う観点から届出制とするとともに、行為規制につきましても簡素なものとされたものでございます。

また、このようなファンドでありましても当該プロ投資家と関係の深い一般投資家、例えばファンド運営会社の役員なども出資している場合も多いということも踏まえまして、プロ投資家以外の方が少数、政令におきまして49名とされているわけでございますが、その範囲にとどまる場合にはプロ向けファンドということで、プロ投資家のみを対象とするファンドと同等の扱いにするということ。つまり届出制で簡素な行為規制にすることとされたものでございます。

こういった形で金融商品取引法制定時に制度として導入されまして、当初は特に問題がなかったわけでございますが、8ページをご覧いただきますとこの数年、下の左上のプロ向けファンド届出業者に関する相談件数にご覧いただけますように、その販売等を行う業者につきまして、行為規制が緩く、また登録制でないこともあり行政処分の対象となっていないということ、49名以内であれば投資の素人にも販売が可能ということを悪用いたしまして、投資家に被害を与えるケースが多発してまいりまして、国民生活センターへの相談件数が増加傾向にあるということになってございます。

次のページ以降に主な事件についての新聞報道を掲げてございますけれども、9ページの右側、アジア投資という会社で4つのプロ向けファンドを設立しまして香港の会社に投資すると言っておったわけですが、実際にそういう投資は行っていなかったということでございます。

また、同じビルに入っていたプロ向けファンド販売業者であるアール・オー・イーというところも一般の高齢者から預かった資金を経費に流用したと報道されているところでございます。

また、左側の昨年の6月の記事になりますけれども、こちらの業者につきましては外国為替証拠金取引で資産運用するとうたいながら100億円ほど集めましたが、実際は無関係な経費に充てたり、複数の社外関係者への営業報酬に流用していたと報道されて問題になったということでございます。

1ページおめくりいただきまして、こちらは警察が手がけた事案でございますけれども、七福神ですとか、エスメディアインターナショナル、おはよえーすなど実体のない会社をでっち上げまして、被害が出たものでございます。

こうした被害を踏まえまして、これまでもさまざまな対応をとってきているわけでございますが、11ページはその対応の1つといたしまして、届出手続きについて制度改正を行いまして、適格機関投資家1名以上の要件を満たさない届出業者のファンドで被害が発生していたことですとか、実体のない法人などにおいて届出が提出される事案もあったということで、届出時に適格機関投資家の名称を確認するようにいたしましたり、本人確認の資料を添付資料に追加するといったような手段をとってきたわけでございます。しかしながら、先ほどチャートにおいてもご覧いただきましたように、残念ながら苦情自体は増加しておりまして、被害につきましてもなかなかとまらないことがございまして、本年の4月に証券取引等監視委員会及び消費者委員会から出資者に係る要件を厳格化する、すなわちプロ向けファンドということですので、できるだけプロに近い人を対象とした制度にして、一般の方はできるだけ制限していくべきではないかという建議・提言をいただいたものでございます。

証券取引等監視委員会の建議におきましては、真ん中のところにありますように出資者に係る要件を厳格化する等、一般投資家の被害の発生等を防止するための適切な措置を講ずる必要があるという建議をいただきました。

また、消費者委員会からの提言におきましては、本来プロ向けの制度であるということで、制度趣旨に則って諸要件を見直すことが適当という提言をいただきまして、法人につきましてはたとえ法人であっても自衛能力や耐性のある投資家と認めるに足りる要件を別途設定する必要があるのではないか。それから、個人につきましては少なくとも億単位の余剰資金をもって、投資性の金融取引を年単位で継続的に行っている投資家という要件を満たすべきだろうとされたところでございます。

このような提言などを踏まえまして、プロ向けファンドの本旨も考えた上で、今年の5月から6月、金融庁におきましてパブリックコメントを行わせていただいたところでございます。その内容が13ページにございますけれども、現行規制上は右側にありますように、適格機関投資家以外の方の属性については問わない、一般個人の方も可能であると。ただし、49名以内とされているわけでございますが、こちらの方につきましてはある程度リテラシーのある方を対象とするということで、上場会社ですとか、資本金5,000万円超の株式会社、上場会社等の子会社・関連会社、年金基金、これも一定の金額、下の注に書いてございますが、一定規模以上の年金基金。それから、富裕層の個人投資家、こちらにつきましてはいわゆる投資性金融資産で、金融商品取引法上の有価証券ということになりますが、そういったものについての投資経験がある方、かつ額も1億円以上としています。それから、資産管理会社、ファンド運営業者の役職員等という形のパブリックコメントをさせていただいたものでございます。

このパブリックコメントに対しましてさまざまな意見がございましたけれども、14ページをご覧いただきますように、大きく2つ意見をいただきまして、1つは、プロ向けファンドの個人への販売は禁止すべきであるというご意見を一方で頂戴しておりまして、下に書いてございますように、日本弁護士連合会様からはそういった意見を頂戴しているところでございます。

一方で、こちらは下にありますように、独立系のベンチャーキャピタリスト等有志の方からいただいた意見が中心ということになりますけれども、販売が可能な投資家の範囲が狭く、新たなファンドの組成が困難になるため、投資できる人の範囲を広げてほしいということでございまして、その具体的な内容につきましては、時間の関係もございましてここでは省略させていただきまして、後ほどあるいは今後それぞれの方からのプレゼンテーションに委ねたいと思いますけれども、こういった意見を頂戴したものでございまして、その意見の多様性、さまざまな意見がございまして、そういったものをよく踏まえた上で、今後の制度のあり方を検討していく必要があるだろうということでございまして、今般、大臣より15ページにあるような諮問を頂戴したものでございます。

以上、手短ではございますが、ご説明とさせていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、井上課長からよろしくお願いいたします。

【井上証券課長】

証券課長の井上でございます。

監督局証券課からはお手元の資料4に従いまして、適格機関投資家等特例業務、いわゆるプロ向けファンドの届出者の状況についてご説明申し上げます。

まず、1枚めくっていただきまして1ページ目で、プロ向けファンドの届出者の概況についてご説明したいと思います。左側の表ですけれども、届出者数等でございますが、こちらは本年8月末時点の数字でございますけれども、金融商品取引業者として当庁に登録している業者の全体の数は2,045でございます。これに対してプロ向けファンド届出者の数は下にございますが、3,031でございます。つまり、プロ向けファンド届出者の数は金融商品取引業者全体の数を上回っておりまして、相当の数があるということが言えるかと思います。

次に、右側の表でございますけれども、プロ向けファンドの販売額等とさせていただいております。この中で集団投資スキーム全体、つまりファンド全体の数字とそのうちプロ向けファンドのみを抽出した数字を販売及び運用の面で比較した表でございますけれども、販売額合計の欄をご覧いただきますと、集団投資スキーム全体の販売額合計1兆4,394億円のうち、いわゆるプロ向けファンドで66.1%となっております。運用財産額を見ていただきましても、集団投資スキーム全体で13兆7,557億円に対しまして、そのうちプロ向けファンドが64%を占めている。つまり、プロ向けファンドがファンド全体の販売額、運用額の6割以上を占めているというのをご覧いただけるかと思います。

次に2ページ目に移らせていただきます。このページではプロ向けファンドの商品分類別の運用状況、つまりファンドの種類ごとの運用状況につきまして、ファンド数ベースと運用財産額ベースの数字を比較させていただいております。

まず、左側のファンド数ベースの円グラフでございますけれども、青色の不動産ファンドが597本、29%、次が薄い紫色でございますけれども、ベンチャーの502本、25%が大きな割合を占めております。右側の運用財産額ベースの円グラフでございますけれども、青色の不動産ファンドの6兆4,989億円が74%でございまして、これに続きましてバイアウトファンドが4,955億円、6%、ベンチャーファンドが4,322億円、5%となっております。

このように商品分類別の運用状況で集計いたしますと、ファンド数では不動産ファンドが3割程度、ベンチャーが2割5分程度、運用財産額では不動産ファンドが7割強を占めておりまして、バイアウト、ベンチャー等が続くという形になっております。

次に、3ページ目で出資者の属性をご覧いただきたいと思っております。この出資者の属性は一番出資額の多い方、属性を主たる出資者と判定しまして、その属性で分類したものでございます。左側のファンド数ベースをご覧いただきますと、事業法人等で40%、金融機関で24%ということで、あわせて6割強、運用財産額ベースでご覧いただきますと事業法人等で63%、金融機関で21%で、あわせて8割強で出資の大半は事業法人、金融機関が占めているということでございます。

主たる出資者が個人であるファンドですけれども、数としましては左側のグラフで20%ということで、第3位となっておりますけれども、右側のグラフの運用財産額でご覧いただきますと、出資額としてはわずか1%程度ということになっております。

次の4ページに移らさせていただきまして、今見ていただきました主たる出資者が個人であるプロ向けファンドで、どのような商品分類になっているかということをご覧いただきたいと思います。

全体の数字としましては、ファンド数ベースで一番下に書いてございますけれども、403本、運用財産額ベースで1,156億円を分類したものでございます。まず、ファンド数ベースでは、ヘッジファンドが25%程度で、ベンチャーが19%程度となっております。

運用財産額、右側でございますけれども、第1位のヘッジファンドが41%程度、第2位がファンド・オブ・ファンズで14%、第3位がベンチャーで11%となっております。ご覧いただきましたように、主たる出資者が個人であるプロ向けファンドでは、ヘッジファンドやベンチャーファンドといったものが上位を占めているということでございます。

5ページ目以降でございますけれども、現在行っております悪質なプロ向けファンド届出者への対応状況について、簡単にご説明させていただきます。

当庁では悪質なプロ向けファンド届出者による投資被害の発生、拡大を防止するために、証券取引等監視委員会や警察などとも連携いたしまして、監督指針に基づき、現行法の枠組みで可能な限りの取り組みを行っております。

主な事案については次のページでご説明いたしますけれども、無登録の金融商品取引業や虚偽告知といった金融商品取引法違反行為等が認められたプロ向けファンド届出者に対しては、財務局、財務支局より警告書を発出した上で、これを公表させていただいております。さらに当庁のウェブサイトでは、警告書を発出した届出者の一覧を公表しておりまして、当該一覧には警告書を発出した届出者の名称、所在地、金融商品取引法違反行為等を掲載しております。警告書を発出した届出者についての情報を警察当局と消費者庁にご提供させていただいております。

どのような形で公表しているかというのは、9ページ目以降に載せさせていただいておりますので、後でご参照いただければと思います。

次に6ページ目でございますけれども、悪質なプロ向けファンド届出者への対応ということで、警告書を発出した事案を大きく区別しますと、(1)にございます無登録の事案と(2)の虚偽告知等の事案に分けられます。1つ目の無登録のほうですけれども、そのうちの1つ目の丸ですけれども、適格機関投資家等からの出資を受けず、自己募集業務、自己運用業務を行っていたものでございます。

2つ目は49名という法律の縛りがございますけれども、それを超える一般投資家への自己募集業務を行っていたものでございます。

(2)の虚偽告知等でございますけれども、1つ目の事案は出資勧誘で実際にはある会社の株式に投資すると言っておきながら、その会社に投資していないで顧客に対して虚偽を告知して勧誘を行っていたという事案でございます。

2つ目の事案は全く運用する意思がない、また運用した事実がないにもかかわらず、顧客に対して出資金を運用するという、うその説明をして、出資を勧誘していたというものでございます。

3番目でございますけれども、実際とは異なる運用実績を記載した運用報告書を交付するなど、顧客に対して虚偽の運用実績を告知していたもの。

4番目でございますが、出資金を出資契約に基づき運用せず、当初契約とは異なる投資対象への投資、ファンドと無関係な会社経費等に流用していたものでございます。

最後の事案は契約書を保管しておらず、届出者自身が出資者やファンドの運用状況を全く把握していなかったという事案でございます。

このような事案につきましては、先ほどご説明いたしました対応に加えまして、法令違反行為等の是正内容を報告させ、事後の対応状況を確認させていただいております。

続きまして、7ページ目からプロ向けファンド届出者数等の推移を簡単にご紹介させていただいております。一番上の行をご覧いただきますと、プロ向けファンドの届出者数はおおむね3,000程度で推移しております。毎年新規の届出と廃業の方がいらっしゃいますので、約500件程度の入れかわりはございます。

警告書を発出した業者の数は一番右の総数をご覧いただきますと77でございまして、その内訳は無登録が38、虚偽告知が42となっております。これらについては足元、増加傾向にあるということが言えるかと思います。

次の8ページでございますけれども、問題リストに掲載いたしました業者数の内訳について最後に簡単にご説明させていただきます。問題リストに掲載される主な理由は、左側にございますように警告書を発出したもの、報告命令に応じないもの、連絡がとれないもの、届出書提出義務違反の4類型になります。このうち届出書提出義務違反は、先ほど市場課長からご説明させていただきましたけれども、平成24年度にプロ向けファンド届出者に対する対応を強化いたしまして、ファンドの名称等について届出書の提出が義務づけられたものですけれども、それに違反したものの数を記載してございます。

したがって、この平成24年度以降に数字が入っているわけですけれども、この結果、平成24年度以降その報告命令に応じないものと連絡がとれないものの数も増加しているということでございます。

この平成24年度に対応を強化した効果もございまして、平成24年度におきましてはその表の1行目でございますけれども、届出者数が前年度に比べまして約200ほど減ってはございますけれども、問題リストの掲載業者の数は増え続けておりまして、平成26年度で一番下でございますけれども、8月末の数字ですが、問題リスト掲載業者の数は全体の2割弱、17.4%に達しております。

以上、簡単にプロ向けファンド届出者の状況をご説明申し上げました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、本日の残りの時間は、今のご説明を参考とさせていただいて、委員の皆様方にご議論をお願いしたいと思います。ご質問、ご意見、どんな点でも結構ですのでお願いします。大崎委員、坂委員の順で、大崎委員からお願いします。

【大崎委員】

ありがとうございます。

何点か質問したいんですが、まず第一は、現在の適格機関投資家等特例業務届出者の要件についての確認なんですけれども、49名以内の一般投資家というのはいわば仕上がりベース、実際に販売、買った人が49名という意味なんでしたよねということをまずは確認したいと思います。それで例えば極端な話、1,000人の人に勧誘して49名しか買わなかったという形にすれば、それで49名以内だということになるのかどうかということです。

それからもう1つは、それと似た話なんですが、プロ向けの一種の緩やかな規制のほかの例としては、情報開示規制におけるプロ私募とか少人数私募の人数カウントにプロを入れないという制度もあるわけですけれども、これらの場合は基本的に株式等の一項有価証券に関していえば勧誘ベースですよね。ですから、例えば少人数私募であれば、50人に勧誘しちゃうと、もうその時点で直ちに募集になるということで無届募集ということになると思うんですが、それに比べると随分緩いなという印象を受けるんですけれども、とはいえ、ファンドのようなみなし有価証券であっても、仕上がりベースで500名以上になると募集に該当すると私は理解しておるんですが、ご紹介いただいた新聞報道を見ると、被害者が900人とかいう数字もあったりして、これは無届募集とはならなかったのかどうか、もちろん新聞報道は必ずしも正確に事実を報じているかどうかは、特に厳密な意味ではわかりませんので何とも言えませんが、その辺を教えていただきたいということと、2点です。

【神田座長】

ありがとうございます。

【田原市場課長】

最初のご質問ですけれども、ご指摘ありましたようにファンドにおいては取得者が500人に達しなければ私募となることとの関係で、取得者が500人未満であれば基本的にはいいということです。

それから、2点目でございますけれども、これは実際に報道にもありますけれども、ファンドの数が例えば幾つもあるとかそういう形での規制逃れというものがあるということではないかと思われます。

【大崎委員】

ありがとうございます。

【神田座長】

ありがとうございました。それでは坂委員、永沢委員の順で、坂委員、どうぞ。

【坂委員】

それでは、プロ向けファンドについて、主として個人投資家をめぐる状況の観点から若干意見を述べさせていただきたいと思います。

金融商品取引法の法制は、基本的には行為規制と行政監督を制度的に整備することによって、資金の円滑な融通、特に適切な投資先への融通を図ろうとしていると理解しておりますけれども、プロ向けファンドをめぐる状況の中では、金商法の法制の趣旨に反する事態が生じていると言わざるを得ないと考えております。

現在、悪質な業者はプロ向けファンドによって、金商法上の行為規制ですとか行政監督をあまり気にすることなく、合法の装いをもって資金集めができる状況にあります。そして、高齢者を中心として投資家に被害を発生させている状況にあり、その規模は現在公表されている資料によれば、全国の消費者センターの相談事例だけでも、昨年の11月までだったかと思いますが、4年8カ月の間に約144億円に上っているとされております。被害実態はおそらく暗数がありますので、その数倍の規模も想定されるということになりますと、相当規模の問題が生じていることになろうかと思います。こういった悪用、乱用を許す制度のあり方は急いで改める必要があると考えます。

そこで今回議論になっていますプロ向けファンドの販売可能な投資家の範囲をどのように考えるのかということですけれども、この点については基本的にはファンドの投資商品としての特質とプロ向けファンドの制度枠組みを十分に検討する必要があるのではないかと考えております。

まず、ファンドの商品としての特質ですけれども、このファンドという商品は投資商品がいろいろある中でも比較的難易度が高い商品であることを考慮すべきではないかと思います。ファンドの法律的な枠組みとしては、匿名組合契約ですとか投資事業有限責任組合契約といったものが用いられると思いますけれども、ファンドの中では例えば出資内容ですとかリターンの内容、費用負担、投資者が得られる情報、あるいは投資者が取り得る手段といったものは、基本的には契約の定めによることになろうかと思います。そうしますと、投資者には本来こういった契約内容を適正に認識、判断をして契約することが求められることになろうかと思います。

他方で、プロ向けファンドの制度ですけれども、これは先ほどありましたように適合性の原則ですとか説明義務等の行為規制の適用が基本的にはないことになっておりますし、また、行政の監督も極めて限定をされております。そうしますとプロ向けファンドの販売可能な投資家としては、基本的にはファンドという比較的難易度の高い投資商品について、みずから責任において例えば販売者に対して質問をするなどして情報を得て、その上で投資判断をきちんとできる、そして、契約後も契約の管理がきちんとできる人が基本的には想定されることになろうかと思います。そういった意味では、投資家として想定されるものは基本的には相当程度限定されると考えるべきと思います。

この点で問題になると思っておりますのが、1つの類型として一定以上の資産ですとか一定以上の収入があるものにプロ向けファンドの販売を認めるという考え方です。一定以上の収入や資産があったとしても、先ほどお話をしたようなファンドの判断ですとか情報収集ですとか管理が果たしてできるのかというところは非常に疑問です。

こうした人たち、個人に販売が許されることになりますと、これはむしろ悪質な業者の格好のターゲットにされるおそれがあると思われます。ちなみに周辺の被害事例等を見ますと、ざっと見渡しましても一定以上の資産を持つ人には、例えば遺産を相続した相続人ですとか、不動産を売却して売却代金を得た個人ですとか、交通事故の後遺障害によって保険金を得た被害者であるとか、長年こつこつと蓄えを積み重ねた後に退職金を得た高齢者ですとか、こういった人たちが目に浮かぶところです。

本来、金融商品取引法上では、ファンドは基本的には第二種金融商品取引業者によって、適合性の原則や説明義務を遵守した形で販売され、さらには投資運用業に該当する場合には忠実義務等を守って運用すべきということになっていると思います。

基本的に金融商品取引法はこういう制度の枠組みの中で適切な資金の提供と適切な管理が行われるということを想定していると考えておりまして、こういった枠組みを考えると少なくとも一般の個人の取引においては、今、お話ししたような原則的な金融商品取引法の枠組みの中で取引が行われることを厳に確保すべきではないかと考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。私は4点、質問と確認させていただきたいことがございます。

まず、資料3のほうなんですけれども、9ページと10ページに被害の新聞記事が出ておりました。今回いわゆるプロ向けファンドは適格機関投資家、プロが1名以上入っていることが前提になっているわけですが、それはスタート時なわけですよね。質問としては、このような悪質と言われて摘発されたファンドで、適格機関投資家さんはこの時点で残っていらっしゃったのかどうか、初めだけでずっといるのかどうかという点を確認させていただきたいと思います。

といいますのは、ちょっと余計な話ですけれども、インターネットなどを拝見しておりますと、あなたも簡単にプロ向けファンドが作れます、適格機関投資家をご紹介させていただきますというような広告を見かけます。インターネット上で、そういうビジネスをされている方を拝見したことがあります。そこから推察するに、もしかしましたら適格機関投資家の方に、言い方は悪いですけれども、名義貸し的なことをされている場合があるのではないかと思ってしまったわけです。

それから、法制定当時にこの特例が認められた背景には、適格機関投資家のような目ききであり、発言力のある人がいてくれれば運営がきちんと管理されるだろうということも前提としてあったと思うんです。適格機関投資家が最後までいてくれるのかどうかというところはやはり気になるところで、実際にこのようなトラブルがあったところに適格機関投資家は最後までいたのかというところをまず第1点教えていただきたいと思います。

第2点目は、11ページなんですけれども、先ほど適格機関投資家の役割は大きいということを申し上げたつもりなんですけれども、先ほどお話のあった適格機関投資家の名前を届出の際にチェックすることにされたことの効果はあるのかどうかを教えていただきたいと思います。また、他の委員の皆さんはお分かりだと思いますが、念のために適格機関投資家の範囲を教えていただけますか。社会的に高いレピュテーション、社会的評価を背負っていらっしゃる方々なのだろうと思いますけれども、その点を確認させてください。

もう1つ、資料4のほうですけれども、1ページ目ですが、右の販売額などを見ましたら、プロ向けファンドも結構大きな金額を集めているのだなと思った次第です。一方で、プロ向けファンドで集められたものの中で、個人は1%とかという数字も見たような気がしたんですが、プロ向けファンドのうち個人が主体と言われるものはこのうちのどれくらいなのか、教えていただきたいと思います。ちゃんと活動されているところとそうでないものとを一緒に論じてはいけないとも思っておりまして、その観点からの質問です。

4ページ目は単純な確認ですけれども、この商品分類は届出上のものであって実態ではないと理解してよろしいでしょうか。

以上4点でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、事務局お願いします。

【田原市場課長】

最初の質問と2つ目の質問の一部につきまして、私のほうからお答えをさせていただきたいと思いますが、具体的に報道事例のうち、最初の2つは証券取引等監視委員会でやったものでございまして、最後のものは警察でございますので、最後についてわからないのでございますが、証券取引等監視委員会のものにつきましては、私の手元にはあるんですが、内容について言っていいものかどうか、後ほど相談の上と思いますけれども、2つ目の質問とも関係するのですが、18ページをご覧いただきますと金融商品取引法上のプロ概念について4つ載せさせていただいておりますけれども、一番左側の適格機関投資家のところに書いてございますのが、具体的な適格機関投資家の方々のリストでございます。実態として問題が多い事例として、この場で申し上げられるのは、投資事業有限責任組合がプロになっているものでございまして、こちらにつきましては少ない人数で登記すれば作れるということでございまして、悪用されるケースが多いのではないかと考えているところでございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

井上さん、お願いします。

【井上証券課長】

永沢委員の3点目と4点目のご質問につきまして、まとめてのご回答になるかと思いますけれども、4ページ目をご覧いただきますと、これは先ほどご説明いたしましたが、主たる出資者が個人であるファンドの商品分類でございまして、数のベースで403本、運用財産額ベースで1,156億円でございまして、これがプロ向けファンド全体から見ると運用財産額ベースで1%程度ということでございます。その4ページ目の表の分類ですけれども、これは金融庁で毎年一度行っておりますファンドモニタリング調査の数字を基にしておりまして、この中で商品分類がどういうものか選んでいただく、そういう意味では自主申告ベースでございます。

【神田座長】

どうぞ。

【永沢委員】

もう一度確認させていただいてよろしいでしょうか。

そうしますと、1ページ目でこれだけの数字が出ておりますけれども、個人が主体のものは出資額としては大変小さいということで、1%足らずということで、その1%足らずのところに大変深刻な問題が起きているものがあると理解してよろしいわけですね。

【井上証券課長】

ご理解のとおりです。

【永沢委員】

ありがとうございます。

【神田座長】

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、磯崎委員、太田委員の順で。

【磯崎委員】

質問を2点ばかりさせていただきたいんですが、1点目はプロ向けファンドという用語の歴史的経緯、プロ向けファンドといいますとプロが中心になって投資をしているというイメージなんですけれども、純粋に法律だけを読みますと1名だけプロがいればよくて、あと49名は誰でもいいですと書かれているように読めますというお話なので、プロ向けファンドという用語が歴史的にどういうふうに出てきたのか。

要は金商法を作るときに当然国会で審議されたと思うので、その場でこのファンドはプロが中心になって投資をするファンドなんですという説明が国会に対してなされたのか。我々特例業務と呼ぶことが結構多かったものですから。プロ向けファンドは「プロ向け」ファンドなのに問題が出ているという形の報道とかが多いので。どういう経緯でこの「プロ向けファンド」という用語が出てきたのかというご質問が1つです。

もう1つは、いろいろカテゴリー別にこういうファンドが特例業務をやっていることを挙げていただいているんですが、問題があるファンドとカテゴリーのクロスの統計がもしあれば、今回でなくても結構なんですけれども、それがあると非常に議論がしやすいのではないかと思いまして。例えば先ほどお話があったようにスキームとして、例えば匿名組合契約と投資事業有限責任組合があります。投資事業有限責任組合も2通り考えられるわけでして、1つは先ほどのお話のように「適格機関投資家として出資をする側」として名目的に使うような悪用がされているケースが1つと、もう1つは「お金を集める箱」のほうとして、ファンドを組成するときに投資家が直接出資する箱としてそういう組合形式が作られるのか、または匿名組合が使われるのか、大分違うんじゃないかなと。

匿名組合は大抵は営業者と出資者の1対1の契約ですので、これは多分、悪徳業者にしてみればだますのに非常に都合がいいというか、ほかの人がどういう人が出資しているかわからないというところが匿名組合契約の特性ではないかと思うんですが。ベンチャーキャピタルファンドについては、大抵1枚、1冊の契約書の中に全員の組合員の名前が書かれている。そこに住所、氏名、場合によっては電話番号とか電子メールアドレスも書かれているので、これはよくも悪くも誰がほかに出資しているかがわかっちゃうという話です。

なので、一般の金融商品的なものには非常に使いにくいところがありまして、要はプロ野球選手の誰が出資しているとか、その人の連絡先がどうかということは、プロ野球選手なんかはわかりたくないところがあるので、私の想像ではいわゆるベンチャーキャピタルファンドに使われているような投資契約は、初めからだまそうと思っている人は使いにくいんじゃないかということを想像しているんです。そういうスキーム別でだまされている人が多いというお話とか、または不動産ファンドでだまされている人が多いのか、ヘッジファンドで海外にいろいろデリバティブを組み合わせてやりますというのでだまされる人が多いのか、そういったものもあれば非常に参考になるかと思いますので、もし今あればお伺いしたいんですが、なければ次回以降でもお伺いできればと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

【田原市場課長】

ご質問ありがとうございます。

プロ向けファンドと呼ばれる理由につきましては、7ページに書いてございますように、2007年の金融商品取引法を検討する際の考え方として、当時の担当者ですとかさまざまな過程で考えられたことがこういうことであったというものを当時の記録などから作ったものですけれども、基本的には制度としてはプロを念頭に置いたものでありまして、審議会でも当時からプロ向けファンドと呼ばれていたということでございます。

【磯崎委員】

なるほど、かしこまりました。

【井上証券課長】

問題のある業者はどのような者を適格機関投資家としているかということなんですけれども、警告書を発出した業者は先ほど77と申し上げましたが、実際にはそのうち適格機関投資家が全くいなかったというものも結構な数ございまして、適格機関投資家が存在している方だけに限ってみても、大体そのうちの3分の2程度が投資事業有限責任組合を適格機関投資家としているということでございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

ご指摘の点はさらに調査するなり、研究する必要があるとは思います。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

すいません、これは今もしお手元に資料等あればで結構なんでございますけれども、質問を1点だけさせて頂きたいと思います。

欧州ではオルタナティブインベストメントファンドについて、先ほどもちょっと話が出ていましたけれども、EUディレクティブでAIFMDなどの規制があるかと思いますけれども、そこで我が国のプロ向けファンドに相当する部分について、どういうふうな規制体系がとられているかということがもしお分かりになれば、ご紹介いただければ大変ありがたく存じます。

【田原市場課長】

AIFMDでよろしいですか。基本的には規模の大きい、原則は認可ということになっていると思いますけれども、規模の小さいものにつきましては登録制になっていると承知しておりまして、その具体的な内容については各国規制に任されているんですが、登録制の場合には他国では売れないということですので、他国で売る場合は今、ベンチャーですとEuVECAというスタンダードについて議論が行われているそうでして、そちらのほうは行為規制なども含めてパッケージで登録制が適用されて、そのかわりにそれを満たせばEUで売れるということなので、これが今後スタンダードになっていくんじゃないかと考えております。

この具体的な欧米の仕組みにつきましては引き続き調査の上、いずれかの段階でご披露させていただきたいと考えております。

【神田座長】

よろしいでしょうか。ありがとうございます。

大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

先ほど坂委員から大変包括的に極めて整理された意見を伺ったことに触発されまして、私も変な質問ばかりしていないで、ちょっと意見を申し上げたいと思ったんですが、坂委員のご意見を伺っていますと、現在の適格機関投資家等特例業務の届出制度ということをあくまで維持することを前提とされて、あくまで含めていい投資家の属性について検討すべきというご意見だったように思ったんですが、私はむしろどうして人様のお金を預かって何かに投資をすることをやる投資運用業の一端であると思われるこの業務が、そもそも届出制で許されるのかというところに非常に疑問を持っておりまして、事務局の作られた資料3の1ページに端的にあらわれておりますように、ほかは全部登録制になっているわけで、例えば人からお金を預からないことが前提になっている投資助言・代理業も全面的に登録制なわけです。顧客の属性とかそういうことは全く関係ないわけです。

ですから、私は現在の制度を大前提として投資家属性をどうすべきかという議論をするのも1つの方法だとは思うんですが、これは実は金融審の総会でも意見として申し上げたんですが、むしろここはせっかくの機会ですので、もうこれを根本的に見直す可能性も含めて検討したほうがよりいい内容になるんじゃないか。

ただ、そのときに単純に登録制にした場合、今の登録要件で果たしてリスクマネーの供給を阻害するようなことはないのかといった観点からの検討をしたらいいんではないかという意見を持っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

1点だけ、資料の読み方ですけれども、資料4の1ページで、プロ向けファンドの届出者が3,031件で、運用本数は実際に活動しているファンドだと思うのですけれども、その数は2,046本で、この差額はどのように理解すればいいのかということです。

もう1つは、プロ向けファンドの状況についてご説明をうかがって、非常に参考になったのですけれども、ファンドモニタリング調査の実効性について質問させてください。先ほどのお話ですと、例えばアンケート調査のように調査票をプロ向けファンドに送って回答してもらうという形のようですが、悪徳業者はそもそも回答しないのではないかとの危惧があります。要は、本日のご説明が、どれぐらい正確に現在のプロ向けファンドの状況をあらわしているのかということについて、ご感触でもいいですので、伺えればと思います。

【井上証券課長】

1点目のご質問ですけれども、1ページ目の表の左側の3,031という数字と右側の運用本数の2,046本が違うというのは以下の3つほどの要因があるかと思っております。

1つ目はファンドモニタリング調査の調査対象事業者は1ページ目の右下に小さく書かせていただいているんですが、国内業者のみでございまして、国内業者以外の海外の方が700ぐらいありますので、その部分が違うということが1つでございます。左側の表の届出者数にはその数字が含まれているんですけれども、右側には含まれていないということです。

もう1つは、届出していただいたんですが、実際にファンドの運用を開始していない方がいらっしゃる。これは数字は把握できないんですけれども、それがあるということです。

3番目は加藤委員の2つ目のご質問とも関係するんですが、ご回答いただけない方もいらっしゃる。これが600ちょっとございます。ただ、このファンドモニタリング調査自体は、金融商品取引法上の報告徴求命令に基づきまして行っているものでございまして、そういう意味では回答の義務があるということになっておりまして、この過程で連絡がとれなかった方は先ほど申し上げました問題業者リストに掲載させていただいております。

【神田座長】

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、増田委員。

【増田委員】

2点質問がございます。まず1点は資料4の8ページに関してなんですが、私の理解不足かもしれませんが、届出者数が3,031ありまして、問題リスト掲載事業者が527とありますが、これは蓄積したものということなんでしょうか。

【井上証券課長】

ご理解のとおりです。

【増田委員】

わかりました。そうすると3,031の中の527という意味ではないということですか。

【井上証券課長】

そうですね。過去に問題リストに載っているけれども、その後廃業されたというのも入っている可能性はございます。

【増田委員】

現状の届出されている方の中でどのぐらいかということはわからないと。

【井上証券課長】

失礼いたしました。現状の届出者のうちでということでございますね。すみませんでした。現状の届出者のうちで3,031のうちの527で、17.4%ということです。

【増田委員】

わかりました。非常に割合が高いなという印象があります。

それから、3ページ目なんですけれども、この1%の個人の方の運用ベースですけれども、この方たちがファンドベースでいうと20%ということで割合が大きいですが、個人の方が参加しているものについてのファンドの規模はどのくらいの大きさ、小さい規模が多いとかそういうことはおわかりなんでしょうか。

【井上証券課長】

おっしゃるとおりでございまして、主たる出資者が個人であるプロ向けファンドは、最大でも運用財産額が200億円ぐらいで、比較的小規模なものが多いと思います。

【増田委員】

私が今申し上げたいのは、先ほど坂先生がおっしゃられたように、個人の方が投資しているものについて、小さい規模であればリスクも高い、難易度の高いものであろうと思うのと同時に、私は消費生活センターの現場の相談員も経験しておりまして、ご相談を日々受けておりましたものですから、そのご相談の中におきましては、やはりもともと投資をする認識、意思がない方たちであり、かつ情報収集能力がない、パソコンも使わないとかそれまでの人生の中で新聞の為替だとか株の動きとか、そういうことさえ見ない方たちが非常に多いわけです。財産上の適合性に関しましても、この1億円とかいう金額は、相続など、特殊な形で手にしている方が多いと思われます。そういう中でかつ難易度の高いものということは問題が当然に起こるだろうと思いましたものですから、確認させていただいた次第です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、家森委員。

【家森委員】

すいません。1つは、この登録制と届出制との間で、組成をするときにはどの程度のコストが違うものなのかという点です。さらに今、プロ向けファンドには非常に大きな問題が起こっていますが、登録制の投資運用業については問題が少ないとしますと、登録制に伴う業規制や行為規制があるかないかというのが大きいということになるのでしょうか。どういった点が欠けており、問題を多く起こしていると認識されているでしょうか。法律のことはよくわからないのですが、例えば届出制でも、業規制があればそれで大丈夫なのかというあたりについて、今現場でどんなふうに感じられているのか教えていただければと思います。

【神田座長】

現場と言われましたので。

【家森委員】

現場というか。

【神田座長】

まずは田原課長から。

【田原市場課長】

制度的に申し上げますと、2ページに書かせていただいておりますけれども、例えば登録制でありますれば、登録の際に拒否要件がございますので、そこで入ってくるものはある程度振り落とすことができるとか、あるいは歯止めにつきましても業務改善命令とか業務停止命令を打つことができますので、そういう意味では非常にコンプライアンスを守りやすい制度になっているということは言えると思います。

それから、実際のコンプライアンスのコストですけれども、それはやはり一般的には届出をするよりは登録するほうがコンプライアンスコストが高い可能性はありますけれども、これにつきましては具体的にデータはありませんので、証券課長から直感的なところをお話し頂ければと思います。

【井上証券課長】

登録していただく場合、標準処理期間というのがございますけれども、例えば60日以内にこちらのほうで審査させていただいて、場合によっては補正していただくことはありますので、それ相応の弁護士費用等はかかるかと思います。

あとは二種業ですと常勤職員を置かなければいけないとか体制整備義務もかかりますので、そのあたりの費用も現在のプロ向けファンドに比べればかかってくると考えています。

現場の感覚でございますけれども、私自身も現場という意味ではないんですが、実際に登録があるということのほうが、届出の取消しという概念はないものですから、登録の取消しという形でエンフォースメントは比較的しやすいというのはもちろんあるかと思います。行為規制がもちろん不十分であるということで、現在ある意味少し無理して警告書を出している部分がございますので、そのあたりは現場としては、ある程度、行為規制があったほうがいいということも言えるかと思います。

【神田座長】

どうぞ、家森委員。

【家森委員】

もう1つ追加で質問します。悪質なプロ向けファンドの届出者への対応の説明のところで、無登録と書いてあるのは本来登録しないといけない人が登録していないという問題ですね。これは今の制度であると、届出だけをしていれば一見それで合法的に見えるから、これが問題を深刻化させているということでしょうか。今後例えば、プロ向けも全部登録にしても、登録しないままやる悪い人は常にいるわけですが、合法的に見えにくくなるので、それがかなり減る可能性があるということだと理解してよろしいでしょうか。

【田原市場課長】

そうですね、基本的にはそもそも登録もせずにされている人、それを信じているとおっしゃる方もいらっしゃると思うわけですけれども、制度の中で考えれば、それは登録制度という形をとったほうが一般的には歯どめがかかりやすいということであろうかと思います。

【神田座長】

どうぞ、磯崎委員。

【磯崎委員】

現場で実際に第二種業の登録とかを知り合いがやっているのを見たときの登録をするか、届出するかという業務の違いについての感想なんですけれども、登録にしますと当然財務局さんなり金融庁さんなりに持っていってやっていただくわけですが、法律上は審査に要する期間は決められておりまして、その期間でぴしっと終わるはずなんですけれども、実際の業務がどうなっているかといいますと、これは基本的に金融庁さんなり財務局さんなりも非常に真面目でいらっしゃるからということもあると思うんですが、要は怪しい業者は当然通せないわけですね。怪しいかどうかはよく聞かないとわからないと。

そうすると例えば単純なスキームのものとかだったらいいんですけれども、海外に投資するとかややこしいものが含まれるものについては、本審査に入る前に、ここは法律に書かれていない領域なんですけれども、結構な時間待たされるということがありまして、例えば長いものだと1年ぐらい、これはどうですか、あれはどうですかと質問を受けて、なかなか本審査に入っていただけないことがあると。

しかも、ある程度コンプラ態勢というのは必要なわけですから、例えば広告の責任者はこの人ですとか内部監査をする人はこの人ですという人が、紙だけでいいわけではなくて、実際には人数を置いてやらなきゃいけない。そうすると最低資本金が1,000万円でいいですということになっていても、1,000万円で1年間食っていけるわけではないので、例えば5人の体制を作ると、金融ですので当然お給料の高い人が5人集まって、1年間過ごすということになると、これが1年で必ず済みますという話だったらまだいいんですが、いつ通るかわからないというのが現場の実情だと、いろいろなケースから聞いていますので、結局コストが例えば1カ月に500万かかって10カ月かかるとすると5,000万円のお金がかかっちゃうということなので、最低資本金だけで見て、これは楽です、どうですという話ではなくて、実務としては実際にはかなりのあれがかかりますし、例えば5,000万円かかるとわかっていればいいし、必ず通るとわかっていればいいんですけれども、通るかどうかわからないというところに投資するベンチャーキャピタルはいないんです。なかなか審査が通るかどうかわからないですけれども、投資してくださいといっても、なかなか投資してもらえないということなので、かなりハードルが上がってしまう可能性があるというのが現場の感覚です。

あともう1つついでに、先ほどの2番目にお願いしたカテゴリー別というところなんですけれども、届出をしている例えば質問表を出したのに返ってこないとかというので警告書を受け取ったという話で、これは明確な法律違反ですのでけしからん以外の何物でもないんですけれども、実際にこれも知り合いに聞いたケースですと、金融庁さんなり財務局さんなりから来た封筒が、実際には書類の中に埋もれちゃっていて、実際に返せなかったという話で。これも法律違反だからけしからんといえばけしからんのですが、ちょっとうっかりとか移転したけれども、届出を出さなきゃいけないのを忘れていて連絡がつかなかったとか、極めて少人数、2、3人でやっているところですと、大手金融機関のような事務体制がないので、必ずしもそこに答えられていない、そんなに悪くない人も入っているんじゃないかなと。何を言いたいかと申しますと、金融庁さんで把握されている、実際にそういう警告を出したような方の内訳もそうなんですけれども、実際にだまされた人の資料3の8ページにあるような届出業者に関する相談件数は相談を受けたものについて、実際にはどういうカテゴリーのファンドが多かったのかとか、どういうスキームのファンドが多かったのかという統計なり調査なりがありましたら、ぜひ次回以降でも出していただけると、非常に議論の参考になるんじゃないかと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

では、お隣の上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

できましたら磯崎委員に伺いたいんですけれども、後半のほうでおっしゃった封筒が紛れるというのはそれはまずいような気がするので。

【磯崎委員】

いいとは申しておりませんで、悪いのには間違いないという話なんですが、申し上げたかったのは、要は被害を受けている方の被害を受けているファンドがどのようなのかという調査も、金融庁さんで警告書を発したやつは非常に数が少ないので、実際に被害を受けていらっしゃる方ははるかに多いわけですから、そちらの内訳がどうなのかというのを調べていただきたいということです。

【上柳委員】

わかりました。

私が伺いたいのは、最初のほうでいろいろ登録に時間がかかるというのは、不当に時間がかかるというのはまずいと思うんですけれども、通常であればどのぐらいでできるんですか、あるいは何か問題があるから時間がかかっているんではないかと思うんですけれども、どういう点がネックになるんでしょうか。

【磯崎委員】

やはり伺っている範囲では、私も直接やっているわけではないので、伺っている範囲で聞きますと、やはり財務局の方が全て全知全能でいらっしゃるわけではないので、ご自分が知らないスキームのファンドですとかそういうものについては非常に基礎的なところまで質問が行われると。

例えば海外のこういうものに投資をしますというファンドですと、当然その国の情勢はどうなんですかとか、その国の法律はどうなっていますかという話だと、その国の言語を日本語に翻訳した資料を作ったり、そういうこともしないといけないわけで、それは通訳とか、わかる人が社内の体制で一生懸命翻訳をしたりしないと資料が作れないということになるので。それは悪いと言っているわけでは必ずしもなくて、当然そういう疑問は審査に必要だからこそ聞いているということがあると思うんですけれども、実際何カ月で通るというのがきちんとわかっていないで、ビジネスが始められないということですと、なかなか先ほど申し上げたように投資も受けられないし、ハードルは実際として上がってしまうということでございます。

【神田座長】

よろしいでしょうか。また具体的なことは今後ご議論いただくことになると思いますけれども、私も1点、感想としては、一般論ですけれども、申請をするほうが情報は持っているので、当然相応の説明をしないと。早く説明すれば早く手続も進むでしょう。ケースバイケースだとは思いますし、海外の場合もあると思いますけれども、だから困るというのはちょっとおかしいと思いますけれども。また具体的なところで実態も踏まえてご議論いただければと思います。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

今のおそらく磯崎委員の関連するところだと思うんですけれども、私は基本的にこの登録制の話は、その登録制の中身をどういう登録要件として課すかによって、大きくその効果は違ってくることになるんだろうと思っておるんですけれども、例えば今、世の中にあるような投資運用業の登録とかそういうものを前提に考えた場合には、今回のプロ向けファンドの届出者とかで、資料4の2ページ目を見ますと、運用財産額ベースでは不動産ファンドがほぼ4分の3ぐらいを占めているかと思いますけれども、不動産ファンドの場合にはおそらくSPCとかが実際にはやっているということだと思うので、人員確保を要求したり社内体制整備といったそもそも人がいないので、実際には登録制といっても絵に描いた餅、対応不能ということだろうと思うので、この問題は登録制にすればいいのか、届出制だとだめか、単純に割り切れる問題というよりは、むしろ実態的に登録制でも届出制でもどういう実態的規制を課すべきなのかということで議論するのが生産的なのかなと。登録制にすれば全て解決するというものでもないだろうと思いますし、逆に登録は絶対だめだということだと、ある意味ではそれでも十分な議論を尽くせるということなのかなとは思っておりますので、その点だけ1点申し上げたく。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】

この規制ということでこれから議論すると思うんですが、我々ビジネスの業としての業法を議論する、または金融制度という通常のビジネスの範囲内でそれを不公正にやらないようにするとか、または過剰な競争を排除するという業法的な規制もしくはそういうルールは十分だと思うんですけれども、悪質な業者を締め出すとかこれはまたファンドも全て被害者が出ているというのは犯罪です。この犯罪者はどんなに規制を強化しても、必ず網をかいくぐって出てくると。それを業法上の金融制度の中で規制を強化することで排除しようとすることであると、本来業界の発展やまたは前向きの議論をしなきゃならない部署にいたずらに規制を強化することになってしまうと。

金商法を2007年に議論されたときに、私どもベンチャーキャピタル業界もPE業界も基本的に規制をされることについては本能的に抵抗感があるわけですけれども、やはり金商法という新しいルールのもとでいろいろなものが調整が図られ、あらゆるものが前向きに考えられるということで賛成し、まずこの金融イノベーションを阻害するような過剰な規制はとらないという基本姿勢があったので、我々も資料の提供や議論に大いに参加し、いい法律になっていただくように努力をしたということで、こういう法律の体系の中でもちろん今後もいろいろ議論しなきゃいけないんですけれども、やはり規制としても犯罪者を締め出す規制に走っていっては、議論が極めて後ろ向きになってしまうと。

ですから、ここでいろいろこれからも議論されるんですが、犯罪者を締め出すために登録を厳しくするとかいろいろなものを課するというのは本論ではないのではないかという意見を持っていますので、今後の意見の方向性にぜひその辺をご考慮いただければと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

予定の時間が来ているのですけれども、若干の延長をさせていただければと思います。まだ手が挙がっているものですから。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

今、お話がありましたけれども、犯罪者の抑制を考慮しないかのような言い方であればそれは大いに異論があると思います。業界の発展なり資金の流れを円滑にするということと、国民が安心して生活していける。それが両方あって市場が育成されていくということだと思いますので、2007年のときも私自身はいろいろ異論はありましたが、それにしてもその2つをバランスするためにこのプロ、アマの分離をして、きちんと整備したと思うんです。

その意味では、私からは言えばプロ向けファンドははみ出たところなので、むしろ先ほど大崎さんが言われたのと、私のとは同じか違うかわかりませんが、むしろきちんと本来の姿に戻したほうがいいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

予定の時間があっという間に来てしまいましたけれども、もしさらにどうしてもというご意見がございましたらと思います。よろしいでしょうか。

本日はご発言いただけなかった委員の方もおられて、大変私の進行が不手際で申しわけありませんでした。初回から非常に重要なご指摘を多数いただきまして、今後審議していく上でのものの考え方、方向観から具体的にさらに実態を把握する上での調査、その他、非常に複雑な制度になっておりますので、その制度を変えたときのインパクト、影響あたりについての重要なご指摘、ご質問も多数いただきました。

いただきました宿題につきましては、今後事務局のほうでさらに次回以降にご説明できることがあればご検討いただくことにさせていただきます。

それから、委員の皆様方におかれましては、本日非常に基本的な今後の議論の方向観等について、あるいは異なる立場からのご意見もあったと思いますので、今後ぜひお考えいただいて、積極的にご意見をお述べいただきたいと思います。

それでは、私の不手際で4分ほど延長してしまいまして申しわけございませんでした。本日いただきましたご説明、ご意見等を踏まえて、今回さらに具体的な検討をしていただきたいと思います。

最後に事務局からご連絡等ありましたらお願いいたします。

【田原市場課長】

ありがとうございます。

次回のワーキング・グループの日程でございますが、10月24日金曜日にこの共用特別第一会議室で開催させていただきたいと思っております。詳細は後日事務局より案内させていただきます。

次回以降、証券取引等監視委員会、消費者委員会事務局、国民生活センター、ベンチャーキャピタルの関係者の皆様、日本弁護士連合会などからヒアリングをさせていただきまして、議論を深めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課
(内線2644、2639)

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