金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年9月2日(金曜日)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○吉野座長

それでは、時間になりましたので、ただいまから第3回目の我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループを開催させていただきたいと思います。

では、黒澤企画課長、お願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、開催に先立ちまして、お手元の資料、まず確認させていただきたいと思います。

資料1といたしまして、メンバーの名簿を配付いたしております。資料2以下は、本日行います4つのプレゼンテーションそれぞれの資料でございますが、2-1というのは縦書きの「現地における外国銀行の現状とアジアの新興経済の将来性」、資料2-2が「海外における事業展開とファイナンスの状況」、資料2-3が「当社の財務活動と中長期的な課題について」、資料4は英語のものと日本語のもの2つございますが、「当行グループの戦略について」という日本語名のものでございます。

以上が資料でございます。

○吉野座長

本日も、第1回目の会合でご了解いただいておりますけれども、議事は原則公開とさせていただいておりますので、ご認識いただきたいと思います。

続きまして、黒澤企画課長から、委員のご紹介と事務局の異動について、紹介をお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

申し遅れました、私、企画課長となりました黒澤でございます。よろしくお願いいたします。

まず、これまでご欠席であったため、皆様方にご紹介できませんでした委員の方をご紹介させていただきたいと思います。

太田克彦委員でございます。

○太田委員

太田でございます。

○黒澤総務企画局企画課長

また、事務局の方におきましても、一部、人事異動がございましたので、この際、改めてご紹介させていただきたいと思います。

皆様の方から向かいまして右手になりますが、森本総務企画局局長でございます。

それから、乙部総務企画局審議官でございます。

左手の方でございますが、池田はちょっと遅れて参りますけれども、その隣、小野総務企画局参事官でございます。

その隣が、長谷川監督局総務課長。

それから、三村国際室長はちょっと遅れておりますが、その隣が遠藤監督局審議官でございます。

以上でございます。よろしくお願いいたします。

○吉野座長

それでは、議論に移らせていただきたいと思います。本日は、前回に引き続きまして、我が国金融業の国際競争力の強化をめぐる論点につきまして、皆様から見て右側の方にお座りの外資系の金融機関を含めた皆様からご報告をいただき、それに対して議論させていただきたいと思っております。全部で4人の方々からお話を伺いますが、前半のお二人の後に少し質疑応答いただいて、後半のお二人の後にさらに質疑応答をいただくという予定でございます。

皆様から向かいまして右の方にお座りの4人の方々は、財団法人国際金融情報センターの中島理事兼総務部長、それから住友化学株式会社の近藤経理室(財務)部長、三菱商事株式会社の下山財務部長、さらに香港上海銀行のスチュアート・ミルン在日代表兼CEOにお越しをいただいております。

前回は、銀行、証券、保険と日本の金融業の皆様からお話を伺いましたが、前回、委員の方々からもございましたけれども、外資系金融機関を含めたヒアリングということで、今回は外資系の金融機関の方にも来ていただいておりますし、次回もそのようにさせていただきたいと思っております。

それでは、まず最初に中島様からご報告いただきたいと思いますが、国際金融の調査研究の機関としてのお立場から、さまざまな海外で、日系、非日系金融機関の活動をごらんになっていらっしゃると思いますし、また中国を中心としましたアジアの国々では中間層が台頭しておりますので、そういうアジアの地域を見て、それとの関係で日本の金融業というようなところをご説明いただければと思います。

それでは、中島様から、よろしくお願いいたします。

○中島理事兼総務部長(国際金融情報センター)

国際金融情報センターの中島でございます。よろしくお願いいたします。

本日は、「現地における外国銀行の現状とアジア新興経済の将来性」というテーマをいただきました。最初の部分として、1.邦銀の海外業務の現状と課題をヒアリング結果をもとにお話しいたしますけれども、ヒアリングというのは時間の制約もありまして、どうしても相手先が限られます。それをもとに全体像をあらわしているかという問題は、常について回るわけでございますけれども、私どもはできるだけ数多くヒアリングするとともに、センターにおけます蓄積されたいろいろな情報とか、マクロケース、それから周りに海外経験者が多いので、その人たちのチェックも受けましたので、ある程度、全体像とか、真の姿をあらわすものになっているのではないかと考えている次第でございます。

それでは、1.から、お手元にもうかなり書き込んでございますので、見ていただければわかるので、私の方からは概略を簡単に、これに沿ってご説明したいと思います。地域別に、邦銀の海外業務の現状のヒアリング結果をご説明したいと思います。◎は、邦銀に有利な材料だけ取り出して印をつけております。

まず、米国でございます。日系と非日系、3対7と書いてございます。この3対7というのは絶対的なものではございません。一部、感触を踏まえたものでもありますけれども、地域的な特徴をあらわすものとして参考になると思うので、念のため記載させていただいたというふうにご理解いただきたいと思います。

米国の場合には、自動車各社が先頭を切って開発して出ていきまして、日系大手企業が進出したわけですけれども、これは一巡しております。現在の日系企業の融資は、中小企業の出てきた先に対するものが中心でございます。それから、既進出先への決済取引等も、支店網の制約等から拡大が困難となっていると考えております。

現地企業との取引ですけれども、融資団に入ること自体が非常に困難でございます。たとえ入りましても、融資取引というのは今はもうラインのみのフィー収入でございます。本当にうまみのある債券関係取引等は、銀証分離体制が基本的なやり方でございますので、ワンストップバンキングができないということで、欧米銀行に劣後する部分があるように聞いております。

ただ、いい材料としては、ここに来まして欧米銀行の体力が低下している上、アメリカの金融改革法に伴う自己資本充実の要請がありますので、特にキャピタルチャージの大きなプロジェクトファイナンス、中でも期限の長いものについては、米国の銀行も敬遠しておりますので、邦銀にもその辺でビジネスチャンスが増加しているということでございました。

次に、欧州でございますけれども、日系・非日系は1対9でございます。日系企業の進出は自動車関係にとどまりまして、しかも、これは一巡したことから、米国以上に日系取引のウエートは小さいと聞いております。

決済等関係の仕事ですけれども、ユーロ圏内の決済一体化が進行しておりまして、国境を越える送金の手数料が低下しております。さらに、日系大手企業の場合は、財務部門を域内で集中して、域内の資金決済を一体化しております。プーリングと呼んでいるようでございます。これによりまして、拠点ごとの運転資金需要は減少しております。さらに、財務部門の運営に当たっては、日本人は数名で、あとは現地人に任せる体制をとっております。これに対する邦銀としても、日系取引に現地人を使わなければいけないということで、いわば日系取引の非日系化と言われるようなものが拡大しているようでございます。これは、欧州のみならず、世界各地で見られる動きでございます。海外向け人材の育成やローカル社員の活用につきましては、やはり金融機関よりも事業会社が先行しているという点は否めないという印象を持っております。さらに、金融技術を多用した各種サービスやコンサルでは現地銀行に一日の長がありまして、日系企業への食い込みも見られております。

ただ、いい材料といたしましては、やはり欧州銀行の体力が低下しております。それから、リスク回避姿勢が強まっておりますので、中東向けやM&A関係融資につきましては邦銀もかなり頑張っている。さらに、アジア進出を企画する現地企業から、やはりアジアの大銀行として資金量も多いということで、かなりアプローチが増えております。これまで会ってもらえなかったような企業トップにも会う、話をするようなチャンスができてきたと、こういう話でございます。

次に、新興諸国、まずアジアでございます。日系・非日系は地域によって全然異なりますけれども、イメージとしてはASEANという国を頭に置いていただけばいいと思いますけれども、アジア危機前で大体5対5だったのが、アジア危機後は9対1で、ほとんど現地取引はなくなりました。現在は、非日系の現地企業との取引は回復してきて、5対5ぐらいまで来ているということでございます。

いい材料もあるわけですけれども、中国、インド、ASEAN諸国等は、リーマンショックの影響は比較的軽微にとどまりまして、2010年には回復をしております。日本企業の進出も高水準を維持しておりまして、工場建設資金需要が見込まれるほか、中国向けには非製造業も積極的に進出しております。もう一つ、非日系取引も改善傾向にあります。

しかしながら、資料編を別途つけておりますので、これを横に並べて見ていただければやりやすいと思うんですけれども、2ページ目の上に図表4、BIS統計、日米欧の金融機関がアジアでどれぐらい貸出しをしているかという表でございます。左側がアジア向け、右側が中国向けでございます。太い実線が日本でございますけれども、着実に増えています。リーマンショックの後もそれを上回っておりますけれども、その一方で、細い実線の米国、さらに欧州系の銀行は、落ち込みは大きかったんですけれども、それも早くカバーしまして、かなり伸ばしているということで、今のところ、アジアでも欧米行の牙城を崩すまでには至っていないという状況でございます。

それから、地域別に事情が違いますのでご説明すると、例えば香港では、日系企業といいましても地元企業との50・50出資が原則でございますので、リスクが見きわめにくい。

タイ、台湾等では、地元優良企業の数が限られますので、そういうところの融資はわずか20か30ベースしかとれない。日系や、国内の場合には付随取引がありますが、そういうことは見込めないので、利回りとしては結構低いという評価でございます。

インド、インドネシアあたりは、高成長企業、少なくないのですけれども、財務面の信頼性などから見て、これまでだったら貸さなかった先にも、今はちょっと融資しているということで、今後、リスクの顕現化を懸念する声もありました。

それから、ちょっといい材料、◎をつけてございますけれども、韓国につきましては、韓国の銀行の対外的な競争力というのはさほど強くないということで、韓国の大手企業から日本の銀行にかなりアプローチがあると聞いております。

簡単に中南米でございますけれども、各国政府ともインフラの整備に積極的でありまして、これに食い込んだ日系大手商社や企業、また地元企業からの融資要請が増加しております。ただし、日系大手商社は資金調達力があります。三菱商事さんから後でお話あるかもしれませんけれども、必ずしも現地の邦銀の融資にはつながっておらない。また、地元企業案件は公的保証がつかないとリスクが大きいので、なかなか本部審査部が認めてくれない。さらに、国によっては与信規模に上限がありますので、どんどんこれが増えていくという予想ではなさそうであります。

これらを総括しまして、1と2に分けてあります。まず、短期的には追い風です。先ほどの資料編の表の一番上に、図表1としまして邦銀海外支店の貸付残高の推移が書いてございます。これは、アジア通貨危機まで順調に伸びてきた後、急減いたしました。それから、05年あたりからかなり増加したんですけれども、リーマンショックでまた減った。ようやく10年、11年からは上方に向いて改善しているということは、この表にも出ておりますので、ある意味では追い風の一部が、もう数字にも出ていると考えられます。

この背景としましては、一つは何といっても拡大を続けるアジア市場に位置しておりまして、日本企業の進出意欲が旺盛ということでございます。資料の図表2では、海外現地法人の売上高がどれだけ増えているか、図表3では、細い実線ですけれども、全産業の現地法人数が出ておりまして、特にアジア地区等を中心に増えているとご理解いただきたいと思います。

それから、アジア市場への進出をもくろむ欧米企業からのアプローチが増加。

また、新興諸国政府は金融市場対策として、当面はコントロールのしやすい間接金融を志向しているようでございます。それだけに、外銀の参入につきましては、欧米と異なりまして、進出形態や融資規模等の制限を行っておりますので、すぐにいくらでも増えるということではございません。

それから、新興諸国におけるインフラ投資の高まり。

円高が、日本企業の海外進出、それから銀行がドル、ユーロ等の外貨調達を行う場合に有利に働いております。

それから、欧米銀行の体力低下。

8番目に書いてございますが、大震災の影響の中で、従来は非日系と思われていた企業の中に、日系大手のサプライチェーンに組み込まれました潜在的な日系企業の多いことが確認されたということで、これは逆に言えば非日系の日系化という動きですけれども、そういうことで、ちょっとビジネスチャンスが増えてきたのではないかという認識でございます。

3.総括でございますけれども、では中期的にはどうか。こうした追い風を生かせるかということでございますけれども、問題はやはり日系企業の進出が一巡した後の戦略があるかということだろうと思います。先進国については、経常的な決済取引とか資金取引で収益拡大ができるか。新興諸国については、特に高成長を続けるアジア圏で、日本企業の進出のサポートのみならず、現地企業との取引基盤を構築できるか。それから、地域、国別に異なる市場や監督のあり方に応じた、きめ細かい体制構築ができるか、そういう点に留意が必要でございます。

この点について、今、どういう体制にあるかということでございます。こういう目で見ると、課題は結構多くございます。(1)は、バブル後の業容整理の段階で海外拠点の拡大がストップしております。資料編の図表3、太い実線は金融機関と書いてございますが、基本的に銀行でございます。銀行の海外支店数が、01年の200ぐらいから、今はもう100ぐらいと半減しております。その一方で、点線は支店以外の出張所とかでございますけれども、そういうところは徐々ながら増えている。特に最近、地銀さんは支店より事務所を持っているということで、増やしているということで、ここに反映しております。そういうことで、支店数は全体としてもかなり減っております。

(2)として、従来から課題とされている海外向け人材の育成や、ローカルスタッフの活用がさほど進んでおらない、事業会社には明らかに劣っているのではないか。

こういうことを反映いたしまして、日系企業との経常的な取引についても、地域を問わず、地元銀行や欧米銀行に劣後し始めている。特に、決済取引をやる場合には多額なシステム投資が必要ということも、なかなか踏み切れない一つの制約要因だと思います。

それから、新興国のインフラ投資、現地事情については専門家がいないと、日系商社、企業さんの業務展開についていくだけの存在になりかねない。

それから、現地企業のリスク把握がまだできていなくて、リスクの少ない優良企業との取引は非常にスプレッドが薄い。

もう一つは、一番大事な点ですけれども、新興国に共通して、地元優良企業はほとんどオーナー経営でございます。その場合、融資、預金といった通常の取引関係で大口の取引につなげるのは困難でございます。ASEAN諸国では、概して旧宗主国の経営の金融機関が幅広い店舗網やプライベートバンキング機能を活用しまして、こうした企業オーナーに食い込んでおります。こういう市場で競争するためには、地域の専門家の存在が欠かせませんけれども、大体二、三年で異動する現在の業務体制で本当に対応できるかという感じはございます。

こうした課題を克服するための思い切った、例えば人事とか、そういう体制を敷くことができるかということですけれども、もしできない場合には、国内融資の頭打ちを海外業務でカバーしなければいけない。そういう場合には、円高局面でもございますので、地元銀行や欧米銀行の専門家チーム等の買収が一つの選択肢であります。ただし、その場合にも、買収先を十分活用する能力があるか。この点、米国ユニオンバンクは完全な成功例でございますけれども、これまで多くの時間と労力を注いでおります。短期間に効果を得ることができるかという点では、野村證券のリーマンの買収が試金石だろうと思われます。

2つ目は、適正な買収先があるか。新興国で外資参入が可能な銀行は、既に大半が欧米行の傘下にあります。今さら、HSBC、アムロ、シティ等にはなれそうにもないという感じがいたします。店舗網の制約から住宅ローン等は無理でございますので、今後ともコーポレート取引中心にいかざるを得ないと思います。それから、銀行の対応のみならず銀行監督につきましても、ちょっと金融庁さんには申しわけないんですけれども、例えば海外業務に関しては、英文資料の提出を認めるといった支援体制を要望する声も聞かれました。

これが最初のヒアリングの結果でございます。

次に、アジア諸国の景気動向及び中国のマネーフローということで、簡単にご説明申し上げます。

アジア諸国の景気動向は、お手元の資料でいきますと2ページ目の図表5に書いてございます。08年から09年、リーマンショックの後、10年には急速に立ち直ったわけであります。リーマン危機は、他地域比短期間に乗り切っております。その背景は、アジア通貨危機の経験を踏まえて、短期の対外資金導入に官民とも慎重であったこと。欧米銀行の流動性危機に巻き込まれなかったこと、高リスク消費への投資が相対的に少なかった等が挙げられます。国別には、輸出依存度の高さが落ち込み度合いに影響しております。マイナス先は、台湾等はそういうところが大きかったとお考えいただきたいと思います。

10年後半からは、資源・穀物価格の上昇や、海外からの投資的資金流入等からインフレ懸念が強まりまして、各国とも金融・財政面で引き締めぎみの運営に転じております。とりわけインド、ベトナムでは、財政収支、国際収支の悪化から、政策金利は8、9%に上昇し、中国でも引き締めスタンスを堅持しておりまして、ソフトランディングを模索しております。

しかしながら、ここに来て、大震災の影響や米国経済の停滞に加えまして、アメリカが今、ちょうど見通しを下げましたけれども、EU経済を支えてきたドイツ経済にも息切れ感が濃くなっております。アジア各国とも景気減速や、これまで入ってきた国際資本フローの巻き戻しにも配慮した政策運営を迫られる可能性があります。ブラジルでは、現に利下げがあったということも、ある種こうしたことの前触れかもしれません。

それから、簡単に中国のマネーフローでございます。まず、外資の運用・調達方法につきましては、図表6で経常収支と資本収支、その合計としての外準の増加。資本収支の中には誤脱も含まれておりますので、全体として外需の増加に等しいとお考えいただきたいと思いますが、輸出の高い伸びに支えられた経常黒字に、これは下にも書いてございますけれども、対内直接投資を中心とする資本収支の黒字が加わりまして、毎年4,000億ドル前後の総合収支黒字、外貨準備は本年入り後3兆ドルを超えまして、6月末では3兆1,975億ドルでございます。

日本は、このとき9,110億ドルというのが財務省の計数でございます。米国債に1兆1,655億ドルというのが財務省の数字で、それに相対する日本の計数が9,110億ドルでございます。日本の米国債の運用が9,110億ドルでございます。

その他、詳細は公表されておりませんけれども、CICを通じる海外投資とか、国有企業を通じる海外の鉱山開発等の資源確保、金の購入等に充てられている模様でございます。

マネーフローを見ようと思いまして、図表8をお手元につけてございます。三菱UFJリサーチさんのところです。これは、一応、ポイントを米国と日本に当てておりまして、それ以外のものはちょっと捨象されておりますので、私どもあまりインプリケーションが読めないんですけれども、仮に中国とアメリカとの取引を考えますと、2009年は1,115億ドルぐらいが米国への流出というか、お金を投資したわけですけれども、10年については293億ドルと急減しております。逆に行くと、中国の米国債投資は今年はかなり減ったと言えると思います。

外為政策の基本は、中国元の上昇を緩やかなペースにとどめることでございます。その結果、生じる外貨準備増は、やむないというスタンスだろうと思います。この点は、プラザ合意以降の日本の円高不況の轍を踏まないという強い意志がうかがえる次第でございます。

次に、金融市場運営スタンスですけれども、銀行依存型の間接金融志向であります。大銀行は、いずれも国家が大株主でありまして、実質的には第2の財政です。外貨からの証券投資は依然として制約が多く、市場メカニズムで金融政策運営が影響を受けるのを避けるようなねらいかと思われます。中国元の国際化の進展ペースが遅いのも、同じ発想によるものかと思っております。マネーフロー面では、企業部門の資金不足を家計の余剰がファイナンスする形となっております。

政府は、消費拡大をもくろんでおりますけれども、貯蓄率は増加傾向です。社会保障制度未成熟とも影響しております。中でも銀行預金の伸びが目立ちまして、これは国内に適切な投資対象がない。株もかなり下がりましたし、不動産ももううまみはなくなっております。

そういう中で、日系金融機関のビジネスチャンスでございますけれども、当局の監督は業界ごとで分断されております。外資に対する参入規制等の運営方針も業界ごとに区々であります。内資、外資を区別するダブルスタンダードで、法律にはよらない通達行政が中心でございます。

銀行の場合、参入は比較的容易でございますけれども、外債発行枠が限られておりまして、人民元調達は困難。そのため、ローカル銀行から、ここではLIBORから300と書きましたけれども、いわば企業貸出に近いレートでの調達をしなければいかんという例もあるようでございます。

生損保の場合には、最大50%の外資参入比率(生保)、外資の取扱商品制限(損保)、たしか自動車が制限されていると思います。それから、希望地域への進出に時間がかかるというのは各業態ともあります。

ただ、アジア、中南米等の新興諸国では、金融業における外資参入に制限や裁量的判断を加える国が多いわけでございまして、そういう中では、中国が目立って制限的とは必ずしも言えない。ただ、当然のことながら、欧米諸国に比べると制限的でございます。やはりFTAに加盟しましたので、あまり表面的に制限していることを表に出せないということがあろうかと思います。

すみません、時間の制約でちょっと早口になりました。以上でございます。

○吉野座長

中島理事、どうもありがとうございました。

それから、引き続きまして、住友化学株式会社の近藤部長の方からは、メーカーのお立場として、日本の金融サービス業をどんなふうにごらんになっていらっしゃるか、あるいは日系金融機関、それから海外の金融機関との違いとか、そういうようなものをご報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○近藤経理室(財務)部長(住友化学)

住友化学の近藤と申します。本日、よろしくお願いいたします。

本日は、ご要請をちょうだいしまして、お役に立てるかどうか全く自信はございませんが、引き受けさせていただきました。

本題の海外展開と金融機関に求められるサービスにつきましては、プレゼン資料の中ほどからになりますが、まずは背景となる弊社の海外進出の状況について、簡単にご紹介申し上げたいと存じます。

2ページ目から9ページ目までは、当社の会社概要や各部門の事業紹介でございますので、後ほどお時間が許すようでしたらごらんいただければと存じます。

一気に10ページ目まで飛んでいただけますでしょうか。当社の海外拠点をお示ししております。当社は、総合化学と言われる業界に位置しておりますが、国内の成長性は比較的乏しく、近年、積極的に海外展開を図っております。連結子会社125社のうち、海外子会社は足元で59社となってございます。

11ページ、当社の売上高の推移でございます。リーマンショックの影響はございましたが、おおむね右肩上がりで拡大してまいりました。増収の要因は、ほとんどがアジア市場を中心とする海外売上高の増加でございます。足元の売上高2兆円弱のうち、海外売上高は1兆円を超えて、海外売上高の比率は53%まで上昇しております。

12ページ、従業員の推移でございますが、足元では従業員の数は約3万6,000人、うち海外で1万4,000人おりまして、海外従業員の比率は4割程度というところまで増加しております。

13ページ、当社の有利子負債の状況でございます。積極的な海外展開、それから規模の大きいM&Aなども幾つかやってきておりまして、足元の有利子負債は1兆円を超えておりまして、極めて高い水準にあると認識しております。

14ページ、ここから本題に入らせていただきますが、まず初めに当社の海外事業拡大に当たりまして、金融機関にサポートしていただきたい金融サービス、ごく大まかにまとめてみました。当社のような製造業、メーカーにとりましては、何といっても事業資金の確保が最も重要でありますが、その他、金融に係るさまざまなリスクヘッジ、資金の効率的な運用管理、あるいは情報ネットワークの提供といった機能が求められていると考えております。

これから幾つか当社の具体的な事例につきまして、ご紹介申し上げたいと思います。

15ページ、まず求めたい金融サービスのうち、海外ネットワーク、情報提供の事例といたしまして、当社が近年取り組みましたM&A案件、及び財務アドバイザーについてご紹介申し上げます。恐縮ですが、既に公表した金融機関さんのみ実名で挙げさせていただいております。

一番上段、ちょっと古い話ですが、当社と三井化学さんとの統合案件につきましては、2003年3月に見送られることとなりましたが、財務アドバイザーは米系のインベストメントバンクでございました。

上から2番目、当社の医薬の子会社の合併、こちらも国内上場企業同士の合併案件でございますが、こちらにおきましてもアドバイザーはシティグループさん、実質的に外資系にお願いしております。当時は、大型合併案件における企業評価、フェアネスオピニオンといったような手続に関しまして、外資系のインベストメントバンクが経験、知見において優位にあったかと考えております。

表の中ほどから下3件は、当社の海外のM&A案件であります。海外買収会社に関します突っ込んだ情報、時に買収先の経営陣との人的な関係、あるいは現地の金融制度、TOBといった金融制度、あるいは現地の会社法といったようなところに関します知識や経験において、外資系の金融機関さんに一定の強みがある場合があろうかと感じております。

16ページ、ここからしばらく、当社が求める金融サービスのうち、事業資金の確保、あるいは大規模投資におけるリスクシェアの事例として、現在、当社が社運をかけて取り組んでおりますサウジアラビアのプロジェクトにつきまして、少々詳しくご紹介申し上げます。

サウジアラビア半島の西側、黄海沿岸のまち、ラービクにおきます世界最大級の石油精製及び石油化学の統合コンプレックスでございます。サウジにおけます安価なエタンガスを原料として、極めて国際競争力の高いプロジェクトを立ち上げております。2005年に、サウジアラビアの国営石油会社、世界最大の石油会社でありますサウジ・アラムコ社と合弁会社を設立、2006年に銀行団とプロジェクトファイナンス契約を調印、さまざまな苦難の道はございましたが、2009年4月から本格稼働を開始しております。

17ページは、ラービクプロジェクトの写真でございます。敷地面積は2,000ヘクタールということで、東京ドーム約428個分という砂漠の中の壮大なプロジェクトとなっております。

18ページ、現地ペトロ・ラービク社の概要でございます。当社とサウジ・アラムコ社がそれぞれ37.5%、IPOによりまして一般株主が25%参加しております。当社にとりましては、持ち分法の適用会社という位置づけでございます。石油精製能力は日量40万バレル、これは日本の1日の使用量の約10%に相当いたします。総事業費は101億米ドル、当時の為替換算では1兆円を優に超える大型のプロジェクトとなっております。

19ページ、ラービグプロジェクトのファイナンス概要でございます。総事業費101億ドルのうち、表の右側、網かけの部分になりますが、58億ドルの部分について、インターナショナルな銀行から、プロジェクトファイナンスによりまして資金調達を実施しております。プロジェクトファイナンスは、ご案内のとおり、大規模投資に関する事業リスクをスポンサーと銀行団とでシェアする仕組みでございます。国際協力銀行(JBIC)さんから、当時としては史上最大の25億ドルのご融資をいただき、サウジアラビア側からも、政府系の金融機関PIFから10億ドルの融資を受けております。民間銀行からは、日本勢、インターナショナル、湾岸イスラミック、合計17行から23億ドルの資金を調達しております。

右下の隅に、黒線で囲ってファイナンシャルアドバイザーを記しております。全体のアドバイザーは、当社のメーンバンクであります三井住友銀行さんにお願いいたしました。プロファイの世界での実績は当然のことながら、当社のメーンバンクという安心感、そして、最大の資金提供者でありますJBICさんとのリレーションシップの重要性といった観点から三井住友銀行さんにFAをお願いしたと、そういうポイントがございました。

一方、イスラムの世界の特殊なファイナンスでありますイスラミックファイナンスの部分については、本日も出席しておられますHSBCグループさんにお願いいたしました。HSBCさんは、現地にサウジ・ブリティッシュバンクという傘下の銀行を保有しておられまして、イスラミックファイナンスにおいては、邦銀にはない知見、経験を有しておられるということでございます。

20ページ、プロジェクトファイナンスの組成に当たってのファイナンシャルアドバイザーの役割を大まかに記載しております。荒っぽく申し上げまして、ページの左側、プロジェクトの事業性評価、及び最適なファイナンスストラクチャーの構築といったフェーズから、ページの右側に移りまして、実際の銀行団組成、条件交渉といったフェーズにかけまして、スポンサーである当社及びサウジ・アラムコに対して、そのとき、そのときの的確なサポート、アドバイスを行うという役割を担っていただいております。スポンサーをはじめとするプロジェクト当事者、多種多様なコンサルタント、弁護士、グローバルな金融機関といった多数の関係当事者を、当然のことですが、英語ですべて取り仕切って、当事者間のコンフリクトなどの問題が発生したような場合には、過去の経験、知見から適切なソリューションを提案する。そういったような局面におきましては、イメージ的には外資系のらつ腕バンカーたちの方が適しているような印象も、正直、あるかもわかりませんが、実際にはグローバルなシンジケートローン、プロファイといった領域におきましては、先ほどもお話ありましたが、日本のメガバンクさん3行も外資系と遜色のない実績を上げておられるものと認識しております。

弊社、サウジのプロジェクトは大変規模の大きい取り組みでありまして、また中東という特別な地域ということで、非常に難易度の高いファイナンスでありました。アドバイザーであります三井住友銀行さんとは、ともに手探り的なところはございましたが、パートナーとして協力し合い、知見、経験を深めながら、大規模なファイナンス組成を達成することができたと思っております。

21ページ、続きまして、サウジアラビアで生産された石油化学品の販売に係る事例を紹介申し上げます。

ラービグで生産されました石油化学品については、シンガポールにございます当社の100%販売子会社、住友化学アジアを通しまして、主に中国を中心とするアジア各国に販売されております。販売会社は、商社の機能を仲介せず、各国のユーザーとの間で直接取引を行うこととしております。

この住友化学アジアにおきましては、我々は2つの新たな課題に直面いたしました。1つは、取り扱う輸出書類が膨大でありまして、業務の効率化の必要性が出てきたこと。2つ目は、新興国への直接輸出を拡大したことによりまして、売掛債権保全の取り組みを充実させる必要が増したことでございます。

22ページ、課題の1つ目に挙げました輸出書類関連業務に関する業務効率化への対応でございます。住友化学アジアにおきましては、大半の取引について、L/Cつき輸出手形決済としておりますが、決済件数は膨大であり、年間1万件にも上ります。このため、関連業務について、一括して金融機関にアウトソーシングすることといたしました。取引銀行のところで書かせていただいていますが、取引の中心は外資系銀行、ここでは記載しておりませんが、こちらもHSBCさんであります。シンガポール現地でのシステムインフラ、あるいは人的な陣容確保の問題、あるいはL/Cコンファームといった対応力の観点から、強みのあるHSBCさんにお願いしております。なお、取引銀行のもう1行、本邦銀行と記載しておりますが、こちらは弊社のメーンバンクさんであります。

日本の銀行にとって、今後、アジア市場は、いわば成長の主戦場であり、こうしたアジアにおけるトレードファイナンスの分野においては、何としても外資系の銀行さんにキャッチアップしたいというお考えでいらっしゃるように聞いております。

23ページ、課題の2つ目でございますが、売掛債権保全の取り組みであります。シンガポール販売会社におきまして、L/C取引で対応できないオープンアカウントベースの取引のバイヤーさんに関する代金回収のリスクを低減するために、売掛債権の売却スキームを活用しております。各国のバイヤーごとに、あらかじめ合意されました範囲内において、回収リスクを銀行側に移転させる取引であります。アジア各国の個別バイヤーに関するリスクテイクが可能な外資系銀行さん2行と、こちらも1行さんはHSBCさんですが、取引を行っております。このあたりは、新興アジア各国の国内ネットワーク、個別企業情報等に乏しい日本の銀行さんには、なかなか対応が難しい局面なのかなと感じてございます。

24ページ、話はサウジアラビアの事例から転じまして、当社の中国展開につきましてご紹介申し上げます。

足元では、左にございますが、当社の場合、海外売上高のうち約3割、売上高全体のうちでは15%が中国向けでございます。中国展開におけるファイナンスにおきましては、専ら日本のメガバンク3行さんからの借り入れ、流動性の確保が中心でございます。現在、中国での金融規制、総量規制ですとか預貸比率規制といったものは極めて厳しくなっておりまして、事業資金の確保が最重要課題となっております。金融規制等に関する情報は、我々としては、日本語で情報がいただける邦銀さんとのリレーションシップは極めて重要であります。

ページ右下に記載しておりますとおり、当社はこの8月、中国において統括会社を設立し、ファイナンスに関しましてもグループ管理を強化していく方針を打ち出しております。こういった取り組みにおきましても、日本の銀行からの制度に関する情報、協力関係は非常に重要だと考えております。

時間の関係で、25、26ページは割愛させていただきまして、最後に27ページ、取りまとめといたしまして、海外取引における日系、外資系金融機関の簡単な比較をしております。ただし、これはあくまでごく一般的、イメージ的なところもありまして、必ずしもすべての個別の金融機関さんに当てはまるものではないと認識をしておりますので、そこはよろしくお願いします。

上段の方から、ローン、流動性サポート、長期的リレーションの観点において、日本の銀行は、海外進出において必要となる事業資金を低利かつ安定的に提供してくれる、我々事業会社にとって極めて重要なパートナーであります。日本の銀行のサポートがなければ、我々は海外で大規模なビジネス展開は到底できません。リーマンショックのときには、外資系銀行からは流動性の供給をかなり制限されましたが、日本の銀行、特に弊社のメーンバンクを中心に、一部スプレッドの引き上げの要請はございましたが、最終的には流動性はしっかりと確保していただきました。

一方で、外資系金融機関につきましては、本日、ご紹介申し上げたような事例から、海外ネットワークや海外でのサービスの多様性といった点において、特色や強みがあると感じております。また、当社としては現実に取り組んでおりませんので、ご紹介はできませんが、グローバルな連結、キャッシュマネジメント、あるいはグローバルオファリングによるエクイティーファイナンスといったような分野におきましては、外資系金融機関さんの提供するグローバルな金融機能、サービスには一定強みがあるのだろうなと感じております。

簡単かつ駆け足になりましたが、私からのプレゼンテーションは以上でございます。

○吉野座長

近藤経理部長、どうもありがとうございました。

それでは、最初のお二人のこれまでのご発表に関しまして、皆様からご質問、あるいはご意見をいただきたいと思いますけれども、その中でも特に、今のご説明にありましたように、邦銀が強い部分と、それから邦銀が弱い部分、企業と金融機関のミスマッチ、こういうものをどういうふうにやって、これから解消していくかということも含めて、ご質問いただければと思います。どなたからでも結構でございますが、いかがでしょうか。河野委員、どうぞ。

○河野委員

今のところで一番最後にお話がありました、長期的リレーションというのは非常に安定しているということだったんですが、別のところの会合で聞いた話では、要するに日本の金融機関、銀行さんは大変異動が多くて、担当者が短期で替ってしまうということがある、そういう意味では、会社単位でいえば安定的であるということ、それはある意味で大変歴史のある大手さんだから、安定的であるということが強いというふうに思ってよろしいんでしょうか。すみません、近藤さんに対する質問です。

もう一つよろしいですか、続けて言ってしまいます。中島さんの方には、1ページに邦銀の融資、要するに大手か中小かということの比率をお聞きしたかったんです。地銀というお話も出ましたけれども、地銀の中でというか、中小の中で海外に強いところがどこか特出してあるのか。みんな押し並べて海外に出ているのかということを教えていただきたいのが一つと、3ページにありました野村さんのリーマン買収後が試金石ということでいえば、現時点で日本の証券会社が扱ってない商品が、野村さんでは非常に増えているということを一応聞かされておりますけれども、今の時点では、かなり早期の効果が上がっていると判断されているわけではないんでしょうか。判断のポイントがあれば教えていただきたい。

○吉野座長

近藤部長の方から、長期リレーションシップに関していかがでしょうか。

○近藤経理室(財務)部長(住友化学)

日本の銀行さんの場合は、おっしゃられたとおり、担当者のローテーションみたいなものが早くて、担当の方が早くかわられるというのは確かにあると思います。ただ、まさにおっしゃられように、人がかわっても会社対会社のリレーションというのは変わらずに続いていくようなイメージは、非常にあろうかと思います。それと、日本の銀行さんの場合は、東京であろうが、アメリカであろうが、イギリスであろうが、ヨーロッパであろうが、まず東京が全体を非常にコントロールしていただいているというような強みが、特に近しい銀行さんとはということにますますなりますが、そういったところはあろうかと思います。

逆に、外銀さんの場合は、担当していただいている時間は長くても、その人が会社をかわってしまうと会社自体の取引が変わる。あるいは、外銀さんであっても、HSBCさんのようにロングタームリレーションを重視されるような金融機関さんもおられますし、一概には言えないというところはあろうかと思います。

大手だからかというところに関しては、そういう部分もあるのではないか。銀行さんでも、言い方は悪いですけれども、結構顔を使い分けておられるようなところもあるのではないかと、個人的には思ったりしております。

○吉野座長

ありがとうございました。

では、中島理事、お二つ質問ありましたけれども。

○中島理事兼総務部長(国際金融情報センター)

まず、2つの点があると思うんです。1つは中小企業の進出に当たってどういう違いがあるかということと、もう一つは中小金融機関、地銀さんがどのような機能を果たしているかという、2つのご質問があったと思うんです。

地銀については、事実上、海外での貸出しからほとんど撤退したと申し上げていいぐらいでございます。以前、結構ポジションを持っていましたけれども、今、むしろ展開するのであれば、先ほど申し上げた事務所を出して、情報をお客様に提供するという形での運営を主力にしております。地銀さんの大手の中でも、積極的に海外現地で貸出しをやっているところは、今、ほとんどないと思います。

それから、中小企業に対してのファイナンスがどうなっているか。これはいろいろな例がありますけれども、当初、大企業にひっついて出た場合には、親銀行、親元がかなりファイナンスしたケースもあったんですけれども、今、独立系の中小企業もかなり外に出なければいかんということになっています。そういう場合は、もちろんメガさんでも面倒を見ていらっしゃいますけれども、もうちょっとメガさんが面倒を見きれない先、もしくは地銀さんや信金さんなんかの取引先になってくると、やはりその辺のところはアドバイザリー業務を主として行いまして、あとは地元の銀行を紹介するとか、提携するとか、そういう形を指向していらっしゃるように思います。

それから、次のご質問の野村のリーマンさん買収ですけれども、あそこは中東、欧州の関係のブロックをそのまま丸抱えしたわけでございます。結果として、今、人事も、それから報酬体系も野村本社さんとは全く違う体系でやっておられるわけで、それが本当にどういう効果を持つか、それから社内でどういう問題が起こるかということは、まだ進行形なので結論は出ていないと思います。少なくとも違った文化のところで、違った文化の集団を自分たちでどうまとめていくかという意味では、まだ完全な結論は出ていない。そういう意味では、試金石というふうに私は見ています。これは、むしろ野村さんにお聞きした方がいいかもしれません。

以上でございます。

○河野委員

ありがとうございます。

○吉野座長

ありがとうございます。

ほかにございませんか。では、川波委員、どうぞ。

○川波委員

今の河野委員のご質問に少し関連することですので、中島様にお尋ねいたします。レジュメの3ページ目の上3分の1ぐらいのところの「地域の専門家」というのが、私にはキーワード的に聞こえたんですけれども、これは具体的にどういうものをイメージしたらよいのか、もう少し教えていただきたいと思います。

と申しますのは、今の近藤部長のお話は、日系企業のお立場からのお話だったと思うんですが、現実には現地企業と銀行との取引において、やはり邦銀がやや食われているというお話がございました。また、旧宗主国が強いとか、あるいはオーナー経験者が多いところに食い込んでいくときに、地域の専門家が課題であるとおっしゃいましたので、それをもう少し教えていただきたいと思います。

それから、その後のお話で、やや回答が見えないようなところがございましたので、単にどう体制を改善すればよいのか、あるいは、そういうクローニーな部分に、つまりアジアの身内資本主義的な部分に切り込んでいけるような専門家という意味なのか。その具体的なものがどういうものなのか、少し教えていただければありがたいと思います。

○吉野座長

中島理事、お願いいたします。

○中島理事兼総務部長(国際金融情報センター)

いろいろなイメージがあるんですけれども、これは個別のヒアリングでございますので、一つの話としてお聞きいただければいいんですけれども、例えば、昔、ベトナム戦争のあった時代には、その地域、地域によって、インドネシアだったらインドネシア語もできて、企業にも非常に突っ込んで取引をして、中小企業でも、日本でも信金さんはそうですが、企業の金庫の中身まで見に行くような関係を築いた人が結構いたので、びっくりしたという話を聞いたことがございます。そういう意味で、今はちょっと、何となく部品の一部になってしまって、その地域に行っても2年か3年、無事に終わったら帰ってくるという形になる。それから、言葉も、本当にその言語をきちんと収得してやる前に帰ってきてしまう。そういうことになると、ますます専門家がなかなかいなくなる。

だから、専門家というのは、そんなに高度なものを考えているわけではないんですけれども、その地域についてのスペシャルな知識とか、ノウハウとか、それから当局とのコネクションとか、そういうものを持っている人を育てるということが必要ではないか。それが昔よりも今は、現地ではちょっと後退しているのではないかという感じもありましたので、あえてこういう言葉を使わせていただいたということでございます。

○川波委員

ありがとうございます。

○吉野座長

ちょっと時間なので、篠原委員だけお願いします。

○篠原委員

住友化学の近藤さんにちょっとお聞きしたいんですけれども、このサウジでのプロジェクト、今、中東、北アフリカでああいういろいろな政治に対する、ジャスミン革命と言われた革命の流れがずっと起きているんですけれども、サウジの場合はそういうカントリーリスクは比較的低いんだろうと思いますけれども、やはりあの地域というのはどうなっていくかわからないところが、どうしてもサウジを含めてあると思うんです。そういうカントリーリスクという観点から、日系の金融機関と外資系の金融機関をてんびんにかけたときに、そういう場合でも、やはり日系の金融機関の方がその後の問題についての安心感があるのか。あるいは、そういうものはあまり関係ないのか。

といいますのは、私も記憶があるんですけれども、イランで三井さんが石化コンビナートをおやりになって、結局、パーレビ体制が崩壊をいたしまして、非常に後処理に困った案件がございました。私は、当時、ちょうどパーレビ体制が崩れる直前にテヘランに入って、プロジェクトを見たんですけれども、まさかああいう形で、あのプロジェクトがだめになるとは、見たときは全くわからなかったんですけれども、やはり政治の流れというのは怖いなと。このカントリーリスクの面から、融資はどちらの方が安心感があるか、あるいは有利なのか。そういう観点というのは、やはり常にお持ちなんですか。

○吉野座長

近藤部長、どうぞ。

○近藤経理室(財務)部長(住友化学)

確かに、お話も出ましたとおり、三井さんのような事例もありましたので、当社が進出の意思決定をしたときには、そうしたカントリーリスクに関しますコンサルタントなどを複数雇いまして、分析して、サウジアラビアであれば何とかやっていけるだろうということで、プロジェクトの意思決定をいたしました。

その後、プロジェクトファイナンスにつきまして、日系がいいのか、外資系がいいのかというのは、なかなか答えは難しいかと思うんですが、当社のプロジェクトファイナンスの場合には、政府系の国際協力銀行(JBIC)さんに入っていただいたというようなところで、やはり日本の国としての後ろ盾というか、そうしたものをいただけたということが、何かあったときに、また関連省庁のお力添えもちょうだいできるというような安心感はあったと思います。そうした中で、日本の銀行さんもかなりのご融資を、当社とのリレーションもありますが、ご融資をいただくことができたという経緯があったと考えております。

○吉野座長

まだご質問あると思いますが、後のお二人を聞いてから、またご質問いただければと思います。

引き続きまして、三菱商事株式会社の下山財務部長から、同じように日本の金融機関とおつき合いされていて、強み、弱み、あるいはアジアでどうかというようなところを含めて、ご説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○下山財務部長(三菱商事)

こんにちは。三菱商事の下山でございます。

本日、手前どもの財務活動につきまして、お話をさせていただきながら、本会の目的である日本の金融機関のあり方のヒントをお示しできればいいなと思っております。

私は、我が社の全社財務施策を立案し、計画するという仕事と、いわゆるコーポレートファイナンス全般におきまして責任を負っております。それから、本日は、先ほどからM&Aの話や、プロジェクトファイナンスの話も出てございます。金融機関さんとのおつき合いという意味でいきますと、そういうところも大変重要なことでございますので、手前どものその分野の責任者であります金原も一緒に来ております。後ほど、質疑応答がありましたら、彼の方からも十分な議論をさせていただきたいと思います。

それでは、まず最初に、我が社の概況について簡単にご説明申し上げます。2ページをごらんください。

商社の変遷ということで、約50年から60年ぐらいのタイムフレームを書いてございますけれども、手前ども、この50年の間に、商社斜陽論だとか、冬の時代だとか、いろいろなことを言われたことがありました。さまざまな議論の中で、商社というモデルが果たして今後もやっていけるのだろうかということに何度も直面したわけでございますけれども、特に90年代の終わりから2000年代に入るところで、いわゆる従来型のトレーディング会社というものから、違うビジネスモデルに変わっていくべきなのではないかという議論が盛んになりました。今までのいろいろな知見だとか、経験とかを統合いたしまして、どうやって新しい時代に生きていったらいいだろうという議論がたくさんございました。今から約10年前の議論であります。ちょうどアジア危機が終わり、日本でもいろいろなことが起こって、不透明感が増していた時代であります。

そこで、我々は、どういうような業態変革をしたのか。2ページ目の右側に、2つキーワードが書いてありますが、3ページ目の方がちょっとイメージがわくかもしれません。3ページ目に書いてありますが、手前どもは2000年以降、それまで培ってきたものを1回昇華させて統合するということで、一つの産業を例えにとりますと、川上から川下までシームレスに関与しまして、物流も絡め、一つの「バリューチェーン」を構築するということをやっております。

もう一つは、総合商社というといろいろなものが集まっているような印象ですが、そうではなくて、いわゆる「総合事業会社」として、今までのトレーディングだけではなくて、事業に対してある程度積極的に投資をしていく姿勢を打ち出しております。

この2つがキーワードとなりまして、今から約10年前に業態変革というものを、一旦やり遂げているということが言えると思います。

4ページは、今、一つの産業のお話をいたしましたけれども、それだけではなくて、地域展開、もともとやっておりますけれども、さらにこれにドライブをかけます。それから、地域を横に展開するだけではなくて、その地域一つ一つに根差して、深く入っていくというようなことをやっております。例えば、インドネシアやタイでの自動車事業がありますけれども、約50年以上の実績があります。そういうものを切れ目なく、これからもやっていくということがすごく重要なのではないかと思っております。

5ページ、その結果、どういうことが起きているのかということを簡単に申し上げますと、これは1971年から直近までのヒストリカルな推移ですが、一つは、名目GDPの金額があります。この三角形の折れ線グラフがずっと来ておりますが、90年以降、ほぼプラトーというか横ばいになっております。これに対しまして、三菱商事の収益も、ほぼ同じような相関関係で動いておりましたが、ちょうど21世紀になったところで、我々の収益の規模がジャンプしたというか、大きく上に伸びております。もちろんリーマンショック等もありましたから、ちょっとへこんだところもありますけれども、こういう形になっております。

では、これは何かと申しますと、先ほど申し上げた一つの業態変革ということで、成長地域、成長分野に経営資源を傾けて、そこに人も送り出して、ポートフォリオをダイナミックに変えていき、その裏側でリスクマネジメントも高度化させることに取り組んできました。日本の商社ですから、もちろん日本の成長も大事ですけれども、いかにして世界の成長を取り込むかというところの反映がこういう数字になっているということであります。

6ページは、我々の財務指標はどうなっているかということです。85年から2011年までとっておりますけれども、一番右端に直近の数字があります。一番濃い色の棒グラフ、3.3と書いてありますけれども、これは株主資本であります。約3兆円規模まで積み上がっております。これに対しまして、いわゆる負債を株主資本で割った有利子負債倍率(DER)は、0.9と書いてありますけれども、1倍を割るレベルになっております。ちょっと左側を見ていただきまして、89年、90年のころ、DERは約8倍ということで、財務の健全性という意味では、DERに関してだけ申し上げると、今、非常にリーンな、引き締まった体質になってきているということが言えると思います。

7ページ、8ページに、最近の我が社の戦略について簡単に書いてございます。これは、昨年策定いたしました2010年から12年までの中期経営計画でございます。7ページの基本方針の上から3番目のところに、ネットDERを1倍から1.5倍を目途として健全性を維持するとあり、これは、我が社の一つの財務規律になっております。その中で、その右側にありますように、2012年には約5,000億円の当期純利益を稼ごうではないかということになっております。

そのためにはということで、8ページにございますが、もちろん投資だけで稼ぐわけではございませんけれども、約2兆から2兆5,000億円の新規投資をいたしまして、2012年までに5,000億円の当期純利益を稼げるだけの会社になろうと。もちろん、利益だけではなくてということですけれども、DERといった財務規律を守りながら、この3年間は、投資が予想フリーキャッシュフローを上回り、有利子負債も最大で、ネットで1兆円近く膨らむ可能性もございますが、責めの経営に転じていこうということで、今、取り組んでいるわけでございます。

次に、財務活動ということで、少々具体的な話をしていきますが、まず10ページです。

最初に、手前どもの有利子負債のご説明を簡単にいたしますと、4.3兆円が直近の残高であります。このうち、総合商社の中では直接金融の比率が高いと言われておりますが、これを見て見ますと、比較的高いといっても実は間接金融が3分の2を占めております。取引金融機関数は、今、約40行に及んでおり、一方で直接金融を通じた調達手段もいろいろ多様化しております。おつき合いさせていただいている金融機関の業態も非常に多様化しておりますし、直接金融の方も、後で簡単に申し上げますけれども、複数の市場調達を行って非常に多様化させている。アセットサイドの方も多様化させて、いわゆる調達サイドの方も多様化させるということで、「多様化」を一つのキーワードとして取り組んでおります。

また、先ほど投資計画は積極的だと申し上げましたが、やはりどうやってまとまった外貨のお金を取ってくるかということがキーになってまいります。この辺が一つの課題で、それは先ほどの住友化学さんのお話と共通するところでございます。

11ページ、どういう体制で我が社が連結ベースで管理をしているかということですが、東京本店が一応中心になっておりますけれども、ロンドン、オランダ、シンガポール、ニューヨークという各拠点にも財務の専門家を配置いたしまして、グローバルに管理しております。商社のビジネスモデルというのは、メーカーさんとは異なっておりまして、事業ごとの独立性が非常に高うございます。したがいまして、商流もさまざまということなので、基本的には各地域で多様なビジネスに合わせながらアドバイスをしたり、モニターしたり、必要な資金を供給したり、流動性管理をしております。

例えば、昨年5月にタイで暴動がありましたけれども、ああいう場合でも、我が社のシンガポールの金融拠点がいち早く動いて、各子会社、十五、六社ぐらいタイで活動しておりますので、そこら辺のポジションは全部つかんでいるわけでございまして、あらかじめ手を打っていくということであります。そのときは、もちろん邦銀さんも含めてですけれども、欧米の金融機関、並びに地場の金融機関さんとのリレーションシップを活かして、万全の体制をやっております。

12ページ、今までの話は資金や為替といったようなお話でしたけれども、M&Aもホットな話題ということなので、M&Aのディールフロー全体を示しております。商社のM&A案件も、非常に複雑化、多様化しておりまして、先ほども出ておりましたけれども、財務アドバイザリーとしての、FAに代表される社外専門家のコーディネートというのは、今、金原がおりますけれども、我々、財務部局の大変大きな仕事になっておるわけです。金融機関さんの方も、基本的にはバランスシートを使わないで、相応の手数料収入があるということで、ここは熾烈な競争領域になっております。

右側のところに2表ございますけれども、M&Aリーグテーブルと書いてございますが、ランキング、順位表ということです。直近で恐縮ですが、2010年と2011年の上期を比べて見てみますと、これで一概に決めつけるわけにいきませんが、やはりベスト10を占めているのは欧米の投資銀行であるということが言えます。14位に野村さんということで、これは日本勢でトップの地位を占めている金融機関さんということで書かせていただいております。この辺に一つの課題があるのかもしれないと思います。

13ページからは、我が社の今後の財務的な取り組みと課題整理を通じまして、日本の金融の将来のあり方の議論に、何らかのヒントになるものがあればいいかなと思っております。

14ページ、ここに4点示してございますけれども、企業財務における課題整理ということで、1つは投資案件が非常に巨大化しているということであります。先ほどの石化のプロジェクトもそうですし、資源のプロジェクトもそうですし、非常に大きな金額になってきております。

それから、外貨需要の高まりですね。これは、必ずしもドルだとかユーロだけのことではなくて、先ほどの話のような中国の人民元だとか、さまざまな通貨ですね。通貨には、普通はハードとソフトがございますけれども、ソフトの中にも、いろいろな規制によってハードに近いようなソフトもございますし、2つに単純に分けられる問題ではございませんけれども、外貨の資金調達とりわけソフトカレンシーの確保は大変大きな課題であります。特に、これから世界の成長をある程度取り込みながら、この国の成長に寄与していこうということを考えるに当たっては、いかに輸出だけではなくて、その地域に行って根差して、成長とともにいろいろなプロジェクトをやっていこうということになりますと、どこまで深く根差せるかということと同時に、どこまでそこで使う地場の通貨を手に入れて、ちゃんと管理して、それを取引に回すことができるか。投資をするという観点だけではなくて、投資をした後に人を送り込んで、そこで商売をするわけですから、そこの通貨をいかに管理し、調達するかということが大きな課題になるということであります。

最後に、今後の金融機関のリスク許容度とステークホルダーの多様化と書いてございますけれども、いろいろなファイナンシャルレギュレーションが入ってくる中で、一般的に金融仲介機能が変化すると言われておりますけれども、こういうふうに金融仲介機能が変化する中で、我々、企業はどうやって金融機関さんとつき合っていったらいいのだろう、どうやって資金を調達していったらいいのだろうということを、要するに合わせ鏡のように考えなければいけないということが課題であります。

15ページ、プロジェクトファイナンスのお話をいたします。先ほどのM&Aの話と若干比較しながら、イメージしていただければいいと思いますが、右側の表を見ただけでおわかり頂けると思いますけれども、2010年の通年と2011年の上期を見てみますと、2010年の8位に三菱UFJフィナンシャル・グループがありまして、第10位にSMBCさん、20位にみずほさんということで、それぞれがランクを上げております。

これは、リーマンショックの後から欧米勢というか、欧州勢がどんどん出てきたわけですけれども、昨今、ヨーロッパの債務の問題が出てきておりまして、若干、調達がガタガタしてきている。一方で、バランスシートにリスクをある程度とってくれる余力のある邦銀さんにスポットライトが当たっているわけですが、積極的な邦銀さんの取り組み姿勢と活躍ぶりというのは、実際の現場の中でも感じます。

こういったような海外の情勢や、邦銀さんたちのこの分野に対する注力ももちろんあるのですけれども、もう一つ大きなポイントというのは、新成長戦略の中で、いわゆるパッケージ型インフラ海外展開として、政府がトップダウンでやろうではないかということで支援を表明して頂きました。その中で、JBICさん、それから日本政策投資銀行さん、NEXIさん等々が出てきております。

16ページに、実際に我が社がかかわったプロジェクトファイナンスの案件事例を、最近のプロファイの専門誌に掲載された関連記事ということで載せさせていただいております。先ほどのJBICさんやDBJさんに加えまして、NEXIさんやJOGMECさんとか、こういうようなサポートもありまして、邦銀さんの昨今のプレゼンスの高まりを支えている面もあると思っております。

17ページ、こうしたプロファイだけではなくて、コーポレートファイナンスの方でも、みずからの信用でもって外貨を調達していこうではないかということで、手前どもは昨年の9月16日に、約25年ぶりに外債の発行をしております。ドル建ての外債発行をしておりまして、その後、3月2日にまた5億ドルということで、計10億ドルを発行しております。今後も継続的に発行して、投資活動の拡大につなげる方針であります。

まず、外債発行のねらいを簡単に申し上げますと、ちょうど真ん中に書いてございますけれども、海外に蓄積されている資本の活用ということでございます。それから、我々のアセットの中にはさまざまな通貨がございますので、こういうものに意識的にマッチングさせたり、あえてリスクをとったりすることがありますけれども、ALMの観点から必要だということ。もう一つは、資金調達手段のさらなる多様化ということであります。これは、資金調達ソースを多様化することによりまして、相手先だけではなくて、手段だけではなくて、資金調達地域の分散をして、デッドのキャパシティーそのものを大きくしつつ、いわゆる資金調達の安定化につなげようということです。昨今、いろいろなところで、様々な危機が起こります。その中で、地域をよく見ながら調達するということも重要だと思います。

こういう面に加えまして、繰り返しになりますが、先ほど申し上げたような外貨投資、もしくは外貨の資金需要が増えてくる中で、今までやっているようなデリバティブを活用した外貨資金調達に加えて、ストレートに外貨をとりに行くようなやり方も加えることによって、我が社の資金調達を万全なものにしつつ、新規投資に対し十分な外貨を供給するようにしたいと考えているわけです。

18ページは時間の関係も出てきましたので割愛しまして、19ページに新興国の話が出ています。住友化学さんの話と重なりますが、新興国の成長を取り込んでおこうという中で、我々がこれから行こうとしている、今も行っている地域に関しましては、途上国もしくは新興国、成長国なので、やはりさまざまな融資規制や通貨規制がございます。

融資規制で代表的なのは、リーガルレンディングリミット、いわゆる大口融資規制です。日本でもございましたけれども、中国だと自己資本の15%とか、タイだと25%です。タイは、2006年に少し緩んで15%から25%になったと記憶しております。また、もう一つあるのは、中国で預貸比率規制ということで、今年の年末までに比率を75%にしなければいけないということが入っております。

そうしますと、金融機関にとってはやはり地場で預金業務をどこまでやるかということが鍵になってくるわけです。HSBCさんは、リテール業務を中国でもやられております。

それから、20ページには、流動性マネジメントの高度化、これは先ほど申し上げたように、ボラティリティーが上がっていますので、いかに資金管理をしていくかということの重要性が書いてございます。下のところに我々のアイデアを少々書かせて頂きました。

21ページは、先ほど申し上げたように、銀行さんからの借り入れだけではなくて、さまざまな調達手段が増えてきております。こういうものをどういう形で取り入れていくかも見きわめながら、資金調達のソースの今後を考えていかなくてはいけないと考えております。

最後、22ページ目になりますが、駆け足で申し上げましたけれども、その4つの点に加えまして、グローバルな人材育成、もう言い古された言葉です。しかしながら、三菱商事において、我々の営業活動が深く各地域に入り込んでいるように、我々財務の活動も、やはりグローバルな人材を育てて、現地の社員を鍛えて、優秀な人材を採って、そして深く入っていかなければいけない。リレーションキャピタルというか、関係資本をいかに構築していくかということが重要だと思います。この点は、おそらくこれからアジアで活躍を目指す邦銀さんにとっても、非常に重要な点なのかなと思っております。

ちょっと時間をオーバーしました。

○吉野座長

下山部長、どうもありがとうございました。

それでは、引き続きまして、スチュアート・ミルンさんには、やはり世界的にリテールビジネスを展開されておられますので、お願いしたいと思います。

Mr. Stuart Milne, the translator would translate right after your presentation, so please go ahead.(スチュアート・ミルンさん、翻訳がプレゼンのすぐ後からなされます。どうぞ。)

○スチュアート・ミルン在日代表兼CEO(香港上海銀行)

皆さん、こんにちは。スチュアート・ミルンと申します。HSBCの在日代表兼CEOを務めております。

本日は、本当にお招きいただいて、ありがとうございます。HSBCグループの戦略について、少しお話しさせていただきたいと思います。通訳も交えて、10分から15分程度に押さえたいと思いますけれども、ご質問があれば、いつでもしていただければと思います。

1ページをごらんください。現在、世界が直面している非常に大きなマクロのトレンドとして挙げられるのは、経済的な富みが非常に大きな形で、日本など先進国からアジア、そしてラテンアメリカ、中東といった新興諸国へとシフトしているという現象だと思います。右側のグラフが示しているとおり、2050年までにGDP上位30カ国のうち、半分以上が新興国になります。実際、この上位30カ国のうち、19カ国が新興国ということになります。つまり、今後40年ぐらいの間に、新興国のGDPの成長率は先進国の5倍ぐらいの水準になるということです。

2ページをごらんください。ということで、HSBCは数年かけて、特に新興国におけるプレゼンスを高めてきました。もちろん、新興国だけに焦点を当てているわけではなく、世界の資金のフローをリンクさせるという意味で、新興国、先進国の連結性に焦点を当てております。

3ページ、お願いします。私どもの戦略を一言でまとめますと、世界のリーディングインターナショナルバンクになるということです。2つに焦点を当てております。まず第1に、新興国におけるプレゼンスを強めるということ、そして国際的な連結性が重要な市場においてプレゼンスを特に強化するということです。第2に、規模が十分期待できる、そして収益の上がるスケールを獲得できるような市場において、ウェルスマネジメントを展開していくということです。ということで、すべての人に対して、すべてのサービスを提供したいと考えているわけではありません。競争優位を築けるようなビジネス、地域にフォーカスを当てていきます。

では、その戦略をどうやって実行していくかということですが、4ページ、お願いします。まず、当行の戦略と合致したビジネスを実行していく必要があります。そして、現在、実際、HSBCでは、その戦略に沿った実行ができるように微調整を行っております。例えば、ニューヨーク州におけるブランチネットワークを売却しましたし、アメリカにおけるかなり規模の大きいクレジットカードのビジネスを売却しております。考え方としましては、そういった売却から上がってくる資金を、急成長しているアジアやラテンアメリカ地域でのビジネスに再投入していくということです。

私どもは、資本の配分ということに関しては、非常に規律のあるアプローチをとっております。というのは、株主に対して一定レベルのリターン・オン・キャピタルを約束しており、その水準が達成されるということを株主から期待されているからです。もちろん、これはなかなか難しい課題と言えます。というのは、現在、世界の銀行は、資本を以前よりも手厚く積んでおりますので、一定水準の資本に対するリターンを上げていくという作業が以前よりも難しくなっているからです。こういった状況があり、私どもは投資先の決定に関しては非常に規律のあるアプローチをとっています。

5ページ、お願いします。日本における戦略の実行ですが、3つほどお話をしたいと思います。まず第1に、特に新興国に焦点を当てた貿易、そして資本のクロスボーダーのフローをサポートしたいということです。第2に、海外へとビジネス分散を図りたいと考えている日本の大規模な企業に対して、その戦略が実行されるようなお手伝いをしたいと考えています。第3に、大企業だけではなくて、日本の中小企業への支援も強化していきたいと考えています。そのために、またこれは後ほどお話をしますけれども、日本の地銀とパートナーシップを組んでいます。

6ページと7ページは、日本の大企業と実際どのような活動を私どもが行っているかという例をリストアップさせていただいております。

例えば、簡単に申し上げますと、日本企業の中国におけるビジネスの展開において、人民元建て商品の提供による支援などを行っております。それが私どもにできる理由ですけれども、私どもは外資系の銀行として最大の支店のネットワークを中国で有しております。また、人民元建てのファイナンシング、香港市場における資金調達、また、そういった資金を中国本土に日本企業が持ち込んで、再投資できるような業務のお手伝いをしております。

もう一つ、日本企業に対して私どもが提供しているサービスとして、キャッシュマネジメントのサービスがあります。キャッシュマネジメントというのは、大企業にとって持てるキャッシュの価値を最大限に拡大し、リスクを下げ、そしてプロセスを標準化することのできるツールとなります。

第3に、日本の企業が海外において資本を投資する際のお手伝いをしております。例えば、M&Aの取引であるとか、プロジェクトファイナンス、輸出ファイナンスなどにおいてです。

8ページは、日本の中小企業と当行との間で、実際、最近、行いましたトランザクションの事例を挙げております。HSBC、当行自体は、日本における巨大な支店網を持っているわけではありませんので、日本において直接取引を行っているのは日本の大企業のみということになります。しかし、日本の中小企業の中にも、たくさんの企業が実際に海外で事業を展開したいと考えておりますが、そこで問題になるのは、例えば中国、インドといった市場において、どの銀行の手を借りればいいのかということだと思います。ということで、現在、私どもは、商工中金、そのほかの地銀と提携をしまして、そういった銀行の抱えるお客様が、海外でバンキングのアレンジメントをする際のお手伝いをさせていただいております。

10ページに、そのやり方の事例が実際書かれております。細かくは説明しませんけれども、例えばHSBCは、北京におけるメタル、鉱物、資源の合併企業に対して取引口座の開設などのサービスを提供しております。また、インドにおいては、これは自動車関連のメーカーですけれども、インドにおける用地の取得の資金調達であるとか、そういったお手伝いをさせていただいております。

9ページが最後のスライドになります。まとめて申し上げますと、当行は非常に好運なことに、非常にすばらしい顧客を持ち、また強い資本と流動性を有しております。そして、私どものビジョンは、お客様にとって非常に重要で、ユニークなものであり、マネジメントチームもそういった戦略を効率的に実行できる能力を有しています。現在の経済環境、さまざまな課題を抱えておりますけれども、それでも私どもは国際的な連結性という強みを生かし、さまざまな日本のお客様の事業展開を手助けすることができると思っています。そうすることによって、当行自体も非常に強く、そして株主に対するリターンを提供できるプレゼンスを確保できると考えています。

ご清聴ありがとうございました。何かご質問があれば、ぜひお願いいたします。

○吉野座長

Thank you very much, Mr. Stuart Milne. Could I just ask one additional comment if you can give us? What do you think about Japanese financial institutions' strength and weakness? Since you are here, watching many many things about Japanese financial institutions.(ありがとうございました。追加でひとつ、コメントをお願いしてもよろしいでしょうか。数多くの日本の金融機関を見てこられてきたと思いますが、あなたから見て、日本の金融機関の強みと弱みは何だと思われますか。)

○スチュアート・ミルン在日代表兼CEO(香港上海銀行)

日本の金融機関と外資系の金融機関の強みと弱みの比較ということですが、ちょっとお答えするのをためらうようなご質問です。

まず、日本のメガ銀行は、この厳しい環境を非常にうまく切り抜け、成功していること、これは非常に尊敬に値する事実だと考えています。日本の金融機関の強みとして挙げられるのは、バランスシートの堅牢さ、そして流動性の深さだと思います。特に、日本の銀行の流動性というのは非常に大きな強みの一つとなっていると思います。弱みとして挙げられるのは、国際的な支店網が十分ではないという点だと思います。日本企業の多くが海外展開を考えている時代において、これは弱みとなるかもしれません。例えば、トルコというのは、現在、非常に重要な新興諸国の一つですけれども、邦銀の中でフルの支店を抱えているところはありません。それに対して、HSBCは350支店を有しています。

○吉野座長

ありがとうございました。

それでは、皆様の方から、今まで全部を含めても結構ですし、お二人にご質問でも。では、大崎委員。

○大崎委員

ありがとうございます。

下山さんとミルンさんに1点ずつお伺いしたいと思うんですが、まず下山さんにお伺いしたいのは、私、素人目で見ておりますと、三菱商事さんをはじめとする総合商社というのは、金融機関が最近になって一生懸命やっている、力を入れ始めたと言っているマーチャントバンキングというビジネスを、もうとっくにしっかりやってこられている、実績のある、一種の金融機関だと感じております。今、ご説明を伺った財務力、あるいは情報力などを見たら、金融機関を全く利用することなく、どんどん、一種自前で、あるいは単独で今までやってこられたビジネスをさらに展開していけるのではないか。あるいは、そこで培われたノウハウを、ほかのお客様に提供することで、金融ビジネスそのものもおやりになれるのではないかとすら思うんですが、あえて金融機関の力をかりなければいけないとすると、それはどういう点で三菱商事さんと金融機関が違うから利用されるということになるのか。ポイントみたいなものがあれば、ぜひ教えていただきたいということでございます。

それから、ミルンさんにお伺いしたいのは、よくアジアの中の日本という話をしたときに、香港やシンガポールに比べて、東京というのは金融機関がビジネスをやりにくいと言う人がいるんですね。あまり細かい話には入りたくないんですが、こういうことは香港やシンガポールで当たり前にできるのに、東京ではできないので、ビジネスをやる上で非常に困っているというようなポイントが何かあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

以上でございます。

○吉野座長

それでは、最初に下山部長の方からお願いいたします。

○下山財務部長(三菱商事)

我々の資金調達力というのは、我々単独ではできない部分があります。つまり、金融機関が持っている金融仲介機能を我々が利用させていただいているということです。又、金融界、銀行については、単にお金を持ってくるだけではなくて、我々、マーケットとの間のリスクを遮断するという役割があり、その対価をお払いしているということです。先ほど話があったように、特に邦銀も含めまして、我々にとってリクイディティ・マネジメントは非常に重要であり、そのためにコミットメントラインを持っていたりとか、いろいろな手段を持っているわけですが、そういうときに資金の供給をしてくれるという役割を持っているし、我々はみずからコストをかけて、そこまでは持てないということがあると思います。

それから、僕らにとってはやはりパートナーシップというか、ネットワークバリューというか、そのネットワークの中に金融機関があって、そこには証券会社もあり、保険会社もあり、それから政府系金融機関もありということで、僕らはやはりそこのところはできない。むしろ、そこは利用させていただきながら、対価を払い、その分、事業の方に向かっていくということになると思います。ですから、そこはいろいろなパートナーシップが成り立つと思います。プロファイもそうですし、M&Aもそうですし、資金調達もそうだと思っております。

○吉野座長

Mr. Stuart, the question is how do you see the Tokyo market compared to Hong Kong and Singapore? Are there any obstacles and the inconveniences?(スチュアートさん、香港やシンガポールと比較して、東京の市場をどのように見られているか、という質問です。東京でビジネスをやる上で、何か障害となるものや不便な点はあるのでしょうか。)

○スチュアート・ミルン在日代表兼CEO(香港上海銀行)

まず、純粋に規制の観点から申し上げますと、日本という市場はほかの市場に比べて非常に業務の展開しやすい市場であると考えています。日本の規制当局は、過去15年間にわたって一貫して規制緩和を行っていました。ただ、そうはいいましても、日本の市場において外資系金融機関がオペレーションを行っていく上で大変な事項も幾つかあります。それは、2つの種類のカテゴリーに分けることができます。

まず第1に、非常に大規模なキャピタルコミットメント、資本が必要なビジネス、非常に大きな資本が求められるという点なんですけれども、それが考えられる第1の理由として、日本の銀行の場合、外国の銀行に比べて要求されるリターン・オン・キャピタルの水準がずっと低いということがあります。それは、日本の銀行の観点から見れば、流動性の増加につながるということで、十分合理的な理由になっていると思いますが、例えば日本の市場において、円の貸出しで外資系の銀行が邦銀と競争すると、決して外資系は勝つことができないということになります。もちろん、私どもも日本におけるレンディングは、業務は展開、提供はしております。ただ、それは通常、ブラジルであるとか、トルコ、中東といった、ほかの市場にまつわるビジネスが一緒になっているような場合を考えれば、全体として非常に魅力的なビジネスであるという場合です。

第2に、外資系はビジネスがやりづらいと考えられるカテゴリーとして、なかなか支店網を拡大することが難しいという点が挙げられます。日本におけるディストリビューションコストというのは、非常に高い水準にあります。人件費や賃料、それから土地の取得費、こういったものが非常に高くつきますので、通常、外資系の金融機関は大きな支店網を日本で展開することはできません。

○吉野座長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。では、後藤委員、それから犬飼委員。

○後藤委員

いろいろ貴重なお話、ありがとうございました。

まず、下山様に伺いたいんですけれども、端的に申し上げれば、御社の国際的なビジネスにかかわる多数の関連企業様がいらっしゃると思うんですけれども、その方々に対する資金調達の面で、どういう支援をされているのかというあたりを伺えればと思います。と申しますのは、関連される企業が大企業であれば、もう独自に任せていても資金調達できると思うんですが、国際的にそれほど大きくない企業様が御社の国際ビジネスにかかわってこられる場合に、資金面がネックになってちょっとやりづらいということがあり得ると思うんですけれども、その際に、御社ご自身で金融機能を提供されるということもあり得るかもしれませんし、銀行さんを紹介されるとかあるかもしれませんけれども、特に外貨と申しましょうか、海外での資金調達ということになると、なかなかすんなりいかないようなケースもあるかと思います。そのあたり、どこら辺まで支援をされるのか、現状的なお話を伺えればと思います。

それから、スチュアート様にもちょっと1点お伺いしたいんですけれども、これは御行全体のお話なので、どこまで伺えるのかよくわからない面はありますけれども、特に新興国において金融的な資金供給をされるときに、その原資をどういうふうに調達されることが多いのかということをお伺いできればと思います。何か御行独自の預金の吸収をされているのか、それともマネーマーケットで、ある意味、手っ取り早く調達されるのか。その際の資金調達コストというのは、新興国の場合には結構高くなりがちなことが多いのか。それとも、御行の信用度が高いということで比較的安く調達できているのか。特に、新興国における御行の貸出原資の調達について伺えればと思います。

○吉野座長

まず、下山部長からお願いいたします。

○下山財務部長(三菱商事)

さまざまなケースがあると思います。特に新興国だとか、金融規制だけではなくて、例えば最近はインフレが出てきているので、レンディングそのものも非常に厳しくなってきているというのは、進出企業だけではなくて、地場企業も結構苦労しているような国もそれなりにあります。おそらく我々の方に資金をということになってくると、大昔から言われていますけれども、いわゆる商社金融というか、サイトをある程度ずらしてやるという、トレードファイナンス的なものがございますけれども、基本的にそういう場合も最初やはり銀行に駆け込むと思うんです。おそらく我々がやるのは、それでも賄えない場合に、我々が取引の中でトレードファイナンスを通じて支援するという形になってくると思います。

○吉野座長

Mr. Stuart, can you...?

○スチュアート・ミルン在日代表兼CEO(香港上海銀行)

非常にいいご質問ありがとうございました。HSBCでは、常に感じていることとしまして、やはり貸出しをする前に必ず預金を確保するということが重要だと考えております。これは、非常にスコットランド的なバンキングのやり方だと思いますが、スコットラント人は非常に保守的で慎重であるということで、私自身もスコットランド出身ということで、このようなやり方は重要だと考えています。

特に、そのアプローチというのは、エマージングマーケット、新興国で重要だと考えられます。というのは、新興諸国というのは、通常、ボラティリティーが高く、簡単に資金調達の手段がカットされてしまうということがよく起こるからです。そのいい例が、現在の中国だと思います。中国は、現在、規制の変更が行われておりまして、当局は銀行に対して、預金に占める貸出しの割合を減らすように求めています。既に私どもは、そういった規制を満たしております。中国における支店網というのは非常に巨大なものですし、リテールから十分資金を吸収して、その安定した預金ベースをもとに、企業に対しての貸し付けを行っております。

例えば、日本の銀行は、日本国内においては非常に潤沢な流動性を誇っておりますけれども、海外におけるリテールのネットワークが不足している、十分ないということで、外貨における流動性は十分ではないと考えています。また、スワップマーケットなどを活用すると、スワップマーケットはかなり不安定さが高いということで、特にイマージングマーケットではそうだと思いますけれども、高いリスクをとる必要性も出てきてしまうと思います。

○吉野座長

ありがとうございました。

では、犬飼委員、どうぞ。

○犬飼委員

住友化学の近藤さんと三菱商事の下山さんに、質問させていただきたいと思います。

お二方のお話をお聞きいたしまして、両社とも大変にすばらしいオペレーションを長年にわたってされていると感じます。特に、世界の成長、あるいはアジアの成長を、みずからの成長に取り込まれているということが、本日のお話を聞いてよくわかったように思います。また、お二方のお話からは、邦銀とのおつき合いを含めて、みずからのオペレーションの中で邦銀の優位性というものも非常にあるのだということ、そして、国際金融情報センターの中島さんのお話からもありましたように、今後は、特にアジアにおいて邦銀の有利性というものが出てくるのではないかというお話も含めて、そのとおりではないかと思いました。

本日、たまたまこの2社が選ばれたということかもしれませんけれども、私の認識では、日本の国際的な企業グループでは、多くの他社も含めて、この2社と同様に、大変に頑張っておられて、世界の成長、アジアの成長をみずから取り込んでいるということが断言できるのではないかと、私には思えてなりません。

ただ、さはさりながら、欧米の先進国等の企業や金融機関の評価の一つは株価であろうと思います。例えば、PBRを見ても1.8であるとか2であるとか、それ以上の評価がなされているのに対して、個別にはよくわかりませんが、PBRが1を切るような、要するに解散価値しかないような評価が、日本の企業グループにはずっとなされているということを考えると、これは一体どういうことなのか。先日の『ロンドンエコノミスト』の表紙にありましたように、「ジャパナイゼーション」という言葉で十把一からげに、日本がディクライニングネーションであって、そこに本拠を置く会社や金融機関はみんなだめなのだというような感触が、どうも世界に蔓延しているのではないかと思われてならないのですけれども、実際は、全然そんなことはないのではないか。本日のお話でも、そのことが象徴されていたと思いますけれども、では、次の手としてどうすればいいのか。

我が国の金融機関の中長期的なあり方、事業会社のグループも含めて、やはり、みずから何らかの手を打たなければいけないのではないかと思いますけれども、みずからの評価、対外的なIRと言っていいのかどうかわかりませんが、そういうもののあり方も含めて、どういうふうにこれから考えていけばいいのかというところを、近藤さんと下山さんに、一言ずつお伺いしたいと思います。

○吉野座長

近藤部長、お願いいたします。

○近藤経理室(財務)部長(住友化学)

なかなか難しい質問で、私もすぐにお答えすることはできませんけれども、本日は金融機関さんのお話ですけれども、我が社を振り返りますと、三菱商事さんは違うと思いますが、当社などは、日本の化学会社は銀行さんと同じく、欧米のインターナショナルな会社に比べれば、規模も収益性も大きく見劣りしておりまして、日本の市場が狭くなっているという先ほどのお話の中で、苦しくて、得意分野で海外に進出しまして、あるところでは大規模に勝負、集中投資して、あるところではニッチな分野で何とかしこしこと成長を目指しているというような現状であります。

そんな中で、日本の銀行さんに求めるのは、我々、何といってもお金を借りられないとできないので、日本の金融機関の収益性の低さみたいなことが時に問題にもなりますが、当社などのような会社からしますと、これはもう本当に一番ありがたい、流動性の確保をいただくというのは重要でして、我々のビジネスの本当に大事なパートナーさんであるということは間違いない。

我々からの希望としますと、金融機関さんはある程度インフラだと思いますので、我々のようなユーザーがいて、それを支えてくれるというのかやはり基本だと思います。そうした中で、我々が出ていったところである程度の、先ほど私、お話し申し上げたような事例でも、HSBCさん、メーンバンクさんなんかも、最初はある程度コスト割れでも、こういう分野のところはお金を張っていくんだというようなところで、我々の後押しをしていただいて、ともに成長していくような協力関係が重要ではないかと思います。

○吉野座長

下山部長、簡単にお願いいたします。

○下山財務部長(三菱商事)

私たちが銀行のモデルをどうこうというのは憚られますけれども、日本の金融機関さんを見ていますとプロダクツはあります。それから、人も優秀な方がいらっしゃる。それから、資金管理の面だとか、強みもあります。弱み、強みは、皆さんよくご存じです。では、なぜなのだろう。多分、そこのところに解があるのではないか。もう一つは、よく出ていますけれども、海外における現地化だとか、ネットワークの再構築だとか、ネットワークキャピタルをぜひ構築していただきたいということであります。それから、スピードということだと思います。

○吉野座長

ありがとうございます。

では、藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

これから述べることは質問ではなくて、本日のプレゼンのコメントだけ短く述べたいと思います。

私は、以前、国際業務、日本の金融機関を伸ばすためには、そのための人材育成が重要だと、過去20年間にそうした人材育成が十分にできていないような気がするという話をしました。プレゼン内容はお三方とも非常に充実していましたが、本日のプレゼンで印象的だったことは、香港上海銀行の方が、「時間が少なくてもいい」として、「10分の中で私はこれを話します」といって、今後20年間、30年間のことについて、まず、最初のページで話されたことです。

たまたま国籍が違うからか、それとも人材育成の仕方が違うからなのか、それとも事務局からの依頼内容が違うからなのかよくわかりません。お忙しい中、ここに来て頂いて、私がこういうことを言うのは変かもしれませんが、これだけグローバル化し、これだけスピード化された時間で、もっと端的に、短い時間で話をしていくということについて、今回はたまたまスチュアートさんがいらっしゃって印象に残りました。これがコメントです。

○吉野座長

ありがとうございました。

では、小野委員で最後にさせていただきます。

○小野委員

お時間がないと思いますので、手短に質問させていただきます。

まず、近藤様にお伺いします。アジアでビジネスを展開されていく上で、アジアの現地の銀行の競争力についてどうお感じになっているでしょうか。例えば、ご報告の中でもありましたけれども、売掛債権の回収については現地企業の信用リスクの評価が必要になるので、アジアの地場銀行に一日の長があるのではないかと思います。その点についてどのように感じていらっしゃるのか、教えてください。

それから、ミルンさんに1点お伺いします。ご報告の中で、グローバルに活動する銀行として、国際的な連結性、コネクティビティが大事だというお話がありました。そういった要素を兼ね備えた金融機関の数は、現在、必ずしも多くないと思いますが、お伺いしたいのは、そうした国際的な連結性をコアとして業務展開できる銀行の数は、今後、増えるとお考えでしょうか、それとも減るとお考えでしょうか。推測を交えてで結構ですので、お教えください。

現在、グローバルな金融規制の見直しが進められていますが、そのなかで、コネクティビティが強い金融機関、それからグローバルに活動している金融機関に対する規制資本のサーチャージを強化することが志向されています。そうすると、一方では、非常に生きづらいマーケットになっていくので、グローバルな金融機関の数が減っていくと予想されます。ただ他方で、今後、グローバルな金融機関の数が減っていけば減っていくほど、生き残った金融機関はより一層システミックに重要な金融機関になり、さらに資本サーチャージが膨らむとも考えられます。こうした観点からは、むしろ国際的な金融活動が分散化する可能性も考えられます。私自身、どちらの方向に行くのかよくわからないでいるものですから、私見で結構ですので、ご意見をお伺いできればと思います。

○吉野座長

小野委員、最初の方は。

○小野委員

最初の質問は近藤さん。

○吉野座長

では、近藤部長。

○近藤経理室(財務)部長(住友化学)

我々、事例で紹介申し上げるのはなかなか難しいですけれども、新興国、韓国、台湾、中国みたいなところ、大きな銀行さんがおられたりするケースもありますが、いきなり飛び込んで、我々が行っても、だれだと言われてしまうんですね。HSBCさんのお話にもありましたけれども、やはり日本でそれなりのリレーションがあって、そこといった方が優先されてしまうかなと思います。そういったところで、強みをお持ちで、日本でもお取引のある、外ですと外資系さんがやはり強くなってしまうことが多いですけれども、日本があって、そこでまたネットワークの強い銀行さんにお願いするという意味では、それぞれ強みを持った幾つかの外銀さんともおつき合いしておくというのが、やはり大事かなと思っております。

○吉野座長

スチュアートさん。

○スチュアート・ミルン在日代表兼CEO(香港上海銀行)

確かに、国際的な連結性を提供するようなプレーヤーというのは増えていくのではないかと思います。実際に、現在でもそういった競合がたくさんおりますし、多くの金融機関は私どものやっていることをまねしようとしていると思います。というのは、当行の生み出しているリターンが非常に高い水準であるからです。現在でいえば、JPモルガンなどがそれに当たると思いますし、おそらく10年以内には中国の金融機関なども、私どもがやっているようなことをコピーしようとするのではないかと思います。もちろん、そうはいっても、実行するのはなかなか簡単ではありません。特に、私どもの場合では、イマージング諸国における非常に強いフットプリント、プレゼンスが確立されていますが、それを簡単にコピーできるとは思いません。

私どものやっていることをコピーするのは非常に大変だと思います。特に、新興諸国においては、通常、規制が非常に厳しく、特に新たな、これから参入してこようとする金融機関にとっての参入障壁というのが非常に高いからです。もちろん、そういうことを考えれば、私どもの生み出しているリターンが高いということで、それをまねしようとするところは増えてくると思いますけれども、それは必ずしも簡単にできることであるとは思いません。

これでお答えになっているでしょうか。

○小野委員

What do you think in terms of the global regulation? Whether the current regulatory environment is supportive in increasing the number of global banks or in reducing the number of competitors?(国際的な規制環境について、どのように思われますか。規制は国際的に活動する銀行、御行の競争相手を増やすものなのでしょうか、それとも減らすものなのでしょうか。)

○スチュアート・ミルン在日代表兼CEO(香港上海銀行)

現在の規制環境を見ますと、ますます要求される資本レベルは高くなる、資本はたくさん積まなければならないということになっております。これは、私は個人的に正しいことだと思います。これまで銀行の抱えている自己資本レベルというのは十分ではなかったと考えられます。通常、自己資本比率を高めるような規制が発動されますと、銀行業界では再編が起きてくる。合併などによって、統合、再編が起きてくるということが一般的に言えると思います。ですから、今回の場合も再編が起きてくると思いますが、実はそういったことは規制当局の本意ではい。私どものような銀行にますます大きくなってもらいたいと、多分、規制当局は考えていないと思います。

○吉野座長

ありがとうございます。

時間がちょっと過ぎてしまいましたので、家森委員を含め、ご質問のある方はこちらの方にお寄せいただいて、本日の発表者の方々にお聞きしたいと思います。

これから、次回、それ以降の予定につきまして、黒澤企画課長からちょっと説明していただきます。

○黒澤総務企画局企画課長

次回の日程に関しましては、皆様方のご都合を踏まえまして、吉野座長とご相談の上、9月下旬の金曜日という方向で調整をさせていただきたいと思います。具体的に決まり次第、速やかにご連絡させていただきたいと思います。

それから、先ほどの藤原委員のコメント、しっかり承りました。今後、プレゼンテーションが続きますので、そういったご意見も踏まえまして、いろいろお願いさせていただきたいと思います。

それから、1点だけ皆様方にお知らせしておきたいことがございます。このような形でヒアリングをいたしておりますが、これとは別途、当庁におきましても、委託調査費を使いまして、2つの委託調査をお願いすることといたしております。1つ目は、海外で事業展開している大企業の方々に、金融サービス、一体どのようなものを求めているかといったことについてのアンケート、ヒアリング調査。2つ目は、地域の中堅・中小企業の方々に対して、地域金融機関の現状と、中堅・中小企業の方が外国に出ていく際にどのような金融サービスを期待されているのかといった点を、何百社、何千社となろうかと思いますけれども、ピックアップしてアンケート、聞き取り調査、こういう委託調査をただいま行いつつあります。結果につきましては、年内ぐらいに取りまとまると思いますので、できれば何らかの形でフィードバックさせて、この審議会の審議のインプットにさせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。

事務局からは以上でございます。

○吉野座長

本日は、ちょっとオーバーしてしまいましたけれども、ご参加ありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

Mr. Stuart Milne, thank you very much for your sparing your busy time today.(スチュアートさん、本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました。)

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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