金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第11回)議事録

  • 1.日時:

    平成24年2月15日(水曜日)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、ワーキング・グループ開催に先立ちまして、お手元の資料を確認させていただきます。

今回たくさんございますが、6種類資料をご用意させていただいております。資料1-1は、委託調査をお願いいたしました野村総合研究所の資料でございます。資料1-2は、同じく委託調査をお願いしましたみずほ総合研究所の資料でございます。資料1-3は、本日ご議論いただく報告書の構成(たたき台)というものでございます。それから、資料1-4につきましては、これはオブザーバーで参加されている各業態の方々から、これまでの議論を踏まえてのご意見をいただきました。お時間の関係もありまして、説明は省略させていただきますが、ご質問、ご意見等ありましたら、後ほど自由討議のときにお出しいただければと思います。

それから、資料1-5は、これまでの審議の過程で河野委員ほかから、我が国金融業のコスト構造の国際比較についてご質問がございました。IT費用が高いではないかというご意見もあったかと思います。必ずしもぴったりの資料が見つかったかどうかわかりませんけれども、最近の日本銀行の調査資料というものを見つけましたので、紹介させていただいております。

それから、資料1-6は、先月の総会において事務局からご紹介させていただいた資料でございます。改めてご説明はいたしませんが、今後の当ワーキング・グループの議論に関係ありそうなものが含まれていますので、あわせて配付させていただきました。

以上でございます。

○吉野座長

それでは、早速ですけれども、「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」の第11回目の会合を開催させていただきます。

今日、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。今回も、前回同様に原則公開としておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、今日の議事に移らせていただきたいと思いますが、本日は、先ほど黒澤企画課長から説明ありましたように、アンケート調査に関していろいろ説明していただきます。シンクタンクの2つの先に調査を依頼させていただきました。今日のご議論を踏まえて、最終報告書を完成してもらい、金融庁のホームページのほうにシンクタンクの名前で公表してもらう予定です。

さらに、後半に移りましては、ワーキング・グループ、我々の報告書の作成に向けまして、皆様からいろいろご意見をいただきたいと思っております。

それでは、アンケート調査に関しまして、2つございますが、まず最初のほうは、我が国における金融業の国際競争力の強化、これにつきまして、野村総合研究所の山本上級コンサルタントからご説明をお願いいたします。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

それでは、我が国金融業の国際競争力強化に関する調査研究という1-1の資料をごらんください。

まず、今回の調査研究を行うに至った背景の問題ですが、日本の経済が少子高齢化で停滞している。その一方で、世界が上回る成長を見せているという、成長の内外格差があるという問題で、日本企業及び金融機関が外の市場に向かっていく必然性があるということで、この議論をスタートしております。お開きいただきまして、2ページ目、3ページ目のところがその問題意識に従ったものでございまして、2ページ目のところで、日本と世界のGDPを比較していますが、92年以降、日本が下回っているという状況です。BRICsという非常に発展著しい地域がありますが、そこでは7%の成長をしているという現状がございます。

続きまして、3ページ目のところですけれども、ここでは、ちょっと見にくいですが、GDPとGNIを比較しております。この差というのが海外からの所得の移転ですが、それを比較すると、やはりGNIのほうが上にきていて、外から入ってくる収入があるということです。したがいまして、今後もこういうような外からの所得を国内に還流させて、さらに国内で投資していくということになれば、GNIが増加するとともにGDPが増加していって、日本の経済成長を促すということが期待されるところでございます。

ただ、その企業のサポートに当たる金融機関の国際展開の状況というものが4ページ目に書かれております。ここでは、まず、国内で製造業との比較、それから、海外の主要な外資系プレーヤーとの比較ということを書いております。ただ、日本の中でも、最近ではM&Aを進めている金融機関というのが出てきていて、海外の売上高というのが高くなっているところもございますが、主要な金融グループの平均でいくと17.8%、電機、輸送用機械ですと50%を超えているという状況になっておりまして、かなり製造業との間には差がある。さらに、外資系との機関とも比べても、HSBC、ゴールドマン・サックスといったところが65%、45%といったぐらいの規模になっているというのと比較すると、やはりかなり劣っているということが否めないかなという現状でございます。

これが問題意識のところでございますが、引き続きまして、金融機関がサポートする対象である企業の国際展開の動向というものを6ページ目、7ページ目でご説明させていただきます。

進出状況でいきますと、これは上場企業を対象としたアンケートでございますが、中国、北米、NIESとか、西欧といったところでは、5割ぐらいの企業が進出しているという現場がございます。かなり進出が進んできているというところでございます。

それを地域別とか、時系列別に海外進出の目的というものを整理したものが7ページ目でございます。7ページ目を見ますと、国内市場がシュリンクしているということがございますので、現地の顧客獲得とか、シェア獲得というものが、左のほうが時系列データのものでございますが、下になるにつれて最近のデータで、下のほうが伸びていくという傾向がだんだん強くなっているということです。ほかの目的においても同じ傾向でございます。それから、地域別ではということで、生産的な要素とか、研究開発的な要素とか、販売ルート獲得の要素とか、いろいろございますが、新興国、中国とか、ASEANとかの成長著しいところを振興国と呼んで、それ以外のところは発展途上国というようにちょっと分けておりますが、新興国に対する進出が多くなっております。ただ、一部先進国で研究開発ベンチャーの買収なんかも含め、先端技術の強化というのも出てきておりますが、主に先進国中心に展開が進んでいるという状況でございます。

これが我が国企業の国際展開の動向ということでございまして、実際に上場企業様はどのような金融サービスを受けているかというものにつきまして、9ページ以降のところでご説明をしております。これを示すデータを載せております。

まず、9ページ目でございますが、段階を、海外に出る前の情報提供等のサービスとか、組織をつくるためのM&A等のサービスというものと、進出後に提供を受ける融資だとか、キャッシュマネジメントなどのサービス、あるいはそれとは無関係に、ワールドワイドで受けるアドバイスサービスとか、そういったものに分けて見ておりますが、やはり圧倒的に利用している割合があるものというのが、進出前でいきますと、その進出しようとしている国に対する情報の提供でございます。税制とか、会社法とか、金融取引なんかの規制に関するものが8割近くということで、この利用が多くなっております。

それから、真ん中が進出をした後でございますが、多いものは、現地の通貨の需要、それから、次が国際通貨の需要、融資で受ける。それから、貿易信用状の提供とか、キャッシュマネジメントシステムといったサービスを受けております。こういうのに比べて、ワールドワイドで受けるようなアドバイザリー系のサービスというのは、比較的少数にとどまっているというか、多くても10%程度というものが現場となっております。

これが大体の概略でございますが、10ページ以降で、個別の状況についてご説明させていただきます。M&Aとか、サービスの個別状況についてご説明させていただきます。

10ページ目でございますが、大体海外でM&Aを行った経験のある会社が、大体40%弱ございます。規模が大きくなればなるほどこういうことをよくやるという傾向が出ておりまして、地域としては、現行では北米とか、西欧とかの先進地域が多いですが、中国、ASEANなんかも20%台とか、16.5%といった水準になっております。

それで、こういった状況でございまして、その進出の際のM&Aをやる際に、アドバイザリーサービスとして日系の金融機関、あるいは外資系の金融機関を使いますが、その評価について書いてありますものが、11ページ目でございます。11ページ目で、上段が日本の金融機関、下段が外資系の金融機関ということでございます。それで、選定理由というのを見ますと、これはかなり明確に出ていますが、日系の金融機関でございますと、リレーションシップ上の問題と日本語で選ばれる傾向がある。これが上の長いものがそうなっています。それから、下の棒が長いものが外資が強いものということですが、選定理由では、類似実績、それから、営業時の提案、こういうM&Aをやったほうがいいとかっていうご提案とか、買収先の企業リストがすぐれているということで選定しているということです。評価の理由についてもほぼ同じようなことが出ておりまして、現地を活用した情報提供力が高いとか、買収先のリストが充実しているとか、現地制度に精通しているとか、それから、実行面では、デュー・デリについても、下の棒の外資系のほうが長くなっているということがございます。これに対して日本のほうの評価では、日本語で対応してくれるという点は、日系企業からは評価されているということがございます。

したがいまして、12ページの下のほうに書いてあるようなことが結論になりますが、進出予定国の法制度の情報提供、これは外資系に優位、それから、候補企業の選択も外資系に優位。ただ、継続的なコミュニケーションという点では、日系企業から評価されている点が本邦金融機関もございます。それから、事業戦略の構築とか、当局交渉については、ちょっと意見がインタビューなんかでも分かれているところでした。さらに、デュー・デリジェンスという点では外資系の優位という点がアンケートから出ているかと考えます。

引き続きまして、13ページにいきますが、13ページは、海外も含めまして、大規模な資金調達、つまり世界で使う事業資金を一気に調達するということで、500億円以上を対象とした調達ということで伺ったものでございます。13ページになりますが、あまりそのような調達というのは行われてはいないようでございますが、行っている企業の間では18%が日本の金融機関からの融資というものを使っている。この使う理由しては、金利の問題と、それから、これまで構築されたリレーションシップということから使っているというケースがございます。こういうことでいきますと、現在の金利状況とか、金融機関との関係からいって、日本の金融機関から低利で借りるということが多くなっているのが現場でございます。

続きまして、現地においての調達ということで、これは14ページのところに移らせていただきますが、現地通貨建ての融資というものの利用状況でございます。これ、新興国、途上国について対象にしていますが、半分弱、そのぐらいの企業がお使いになっています。中国とか、ASEANで利用されております。やはりリレーションシップ上の関係から日系の金融機関が利用上は多くなっているというのが14ページでございます。

続いて、15ページに移らせていただきますが、ここで出てくるのが現地通貨建ての融資、現地通貨調達の際の評価でございますが、日系金融機関がすぐれている点というのは、交渉がスムーズということとか、日本語で対応してくれるというものです。一番上の棒が日本の金融機関ですが、これが一番長くなっています。真ん中が外資系で、下が現地ということになっていますが、外資とか、現地が優位になっているものということでいくと、融資の額といったところが評価されるということになっております。このような結果が出ておりまして、交渉のしやすさでやはり日系金融機関が選ばれるのですが、預金の少なさとか、そういう点で貸し出しの融資額という点ではビハインドがあるという結果になっております。

引き続きまして、16ページでCMS、キャッシュマネジメントのサービスの評価というものに移らせていただきます。これについて利用しているところが2割ぐらい、それから、最も多くカバーしている国で使っているのがやっぱり日本の金融機関でございます。ただ、日系の場合ですと、整備方針を見ると、各地域の個別最適ということで整備されているのが多くなっているようです。45.8%というのが国・地域ごとの最適システム導入ということで、全世界で同じものを導入するという形ではないのが現場でございます。

続きまして、このCMSについての評価というものを見たいと思います。17ページになりますが、中が外資系、それから、上が日本の金融機関、一番下が現地の金融機関ですが、棒が長くなっているものでいくと、対応できる国数とか、画面の使いやすさ、パッケージでよくできたソフトだというのが外資系のものでございます。それから、国数が多いというのが外資系の利点でございます。これに対して一番上のところが多い、日系が強いところというと、オーダーメードの対応、仕様をフレキシブルに対応してくれるということと運用における対応がいい。これはトラブル対応なんかがいいということです。それから、日本語での対応をしてくれるという点が評価されております。ただ、これからシステムを世界標準で統一していくという流れがあるかもしれませんので、その際は個別の仕様対応の日本のメリットというのが今後も生きるかどうかというのはちょっと疑問があるところでございます。

それから、貿易信用状についてが19ページになりますが、これは55%ぐらいの企業が使っているところです。やはり日系の企業から貿易信用状を提供してもらうケースが多くなっております。

その評価については20ページになります。外資系が強いものは、外資系の真ん中のグラフになりますが、やはり対応できる国数が多いというのが出てまいります。地場の現地の棒グラフが一番下ですが、第三国、外国から第三国、日本を経由しないものに対応するというのが多くなっております。これに対して日本が強いものというのは、日本語で対応してくれるということでございます。

以上がサービスごとのものでございまして、引き続いて、あと、日本企業に聞いた今後金融機関に強化してもらいたいサービスが21ページ目になります。これでは、重要なものとして、進出のときの情報というものが最初のときでも評価されておりましたが、現地情報の提供力を向上してほしいというものが断トツで多くなっております。それに続くものとして、資金決済とか、送金といったものが出ております。あと、貸し出しの円滑化というものが項目として挙がっております。

以上が金融サービスに対する企業のニーズでございまして、それを取りまとめましたものが23ページ目になります。進出前・進出後でいろいろ、今申し上げたものを○とか、×とかでつけております。これは総じての結果でございまして、一部M&Aとかで国際展開が進んでいる金融機関の場合ですと、そうでないところもございますが、総じての結果として、やはりキャッシュマネジメントの対応の柔軟性とか、現地通貨建て融資について、日本はかなり評価できるところがありますが、それ以外ところではあまり評価が高くないというか、外資系に強みがあるというところがあると思います。

それを図で取りまとめましたものが24ページ目にございます。企業の進出するエリアと進出の目的というか、機能、それについて一覧のマップになるように整理したものです。先進国、新興国、発展途上国に展開していった場合と生産、調達、販売、研究開発、こういった機能でちょっと整理しております。左下のほう、生産の新興国、それから、販売とかの先進国といったところの進出、この辺の赤いラインが入っていますが、それよりも左下のあたりのサービスは比較的日系でも対応できる部分なのかなというところはありますが、新興国の対応、発展途上国への対応では、現地通貨建ての調達、貿易信用状のサービスといったものを見ていくと、やはり外資系のほうが優位性があるのではないか。左下のほうが日系が強くて、右上のほうが外資系が強い。機能的には研究開発では、かなり外資系のほうに優位性があるというような感じが見受けられます。大体左下のほうが日系の強いところ、右上のほうにいくと外資系の強いエリアではないかと考えております。

最後、25ページ目になりますが、以前にゴールドマン・サックスさんの海外展開のご報告がありましたが、そういったものを踏襲して、今後の企業の国際展開ということで考えられるものを挙げております。最初は企業向けの国際金融サービス、強みである国際通貨建ての融資というものをベースにスタートして、わりと現行でもリソースがあるものから展開するように考えております。M&Aなんか進められている金融機関ですと、クロスボーダーのM&Aアドバイスとか、評判のいいCMSとかを使って、次の段階の企業向け国際金融サービスを進めていくということが考えられます。それから、徐々に現地向けのサービスというものを展開していく。現地向けのサービスの展開も、まずは企業向けに特化してリテールとの関係の薄いものからサービスを行っていき、最後にリテール付随のものも行う。このような展開がアンケートとか、インタビューからは考えられるのではないかということでございます。

以上がアンケートとインタビューの結果の集約でございます。

○吉野座長

山本上級コンサルタント、どうもありがとうございました。

それでは、15分程度委員の皆様からご質問いただければと思いますが、いかがでしょうか。じゃあ、小野委員、どうぞ。

○小野委員

ありがとうございます。2点教えてください。

1つ目は、資料の13ページなんですけれども、ここでの大規模な資金調達というのは、どの通貨建てのものを指しているのでしょうか。

それから、2つ目の質問なんですけれども、幾つかのサービスについてご報告いただいているんですけれども、金利あるいは費用について、外資系、現地、日系の間での相対的な高低が、サービスによってばらつきがあるように見受けられたんですけれど、その背景を教えていただけるとありがたいです。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

まず、13ページ目の大規模な資金調達についてですけれども、これは特にどこの通貨ということは限定してないですが、基本的なイメージとしては、メインバンクから大量に資金を調達するというのは日本の通貨で借りるということになります。あるいはちょっと選択肢にも書いてございますが、ロンドンとか、そういった大規模調達ができる市場で調達するということで、それに関連する通貨、ドル、ユーロ、円等の主要な国際通貨、大きい取引市場のところで調達できる国際通貨というものを想定しております。

それから、サービスにかかわる金利だとか、コストということで、それぞれごとにどうなのかということですね。

○小野委員

そうですね。例えば融資にかかわるところは日系の方が結構低いのかなと思ったんですけれど。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

ええ、金利は低いですね。

○小野委員

他方で、キャッシュマネジメントについては、外資系のほうが低いとなっているようなので、その背景がわかればということなんですが。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

融資の関係でいきますと、ちょっと最近は大分違ってきておりますけれども、金利環境といったものが影響しているということがございます。それから、あと、日本の金融機関と企業との間のリレーションからはスプレッドがどれだけつけられるかという取引慣行からいくところからの低さといったところがあるかと思います。こういった点で比較的日系は、企業側から見ると調達コストが安いということがございます。これに対してキャッシュマネジメントの話は少し逆かなというところですが、キャッシュマネジメントの大体の基本姿勢でいくと、外資系はいろんなところでもうでき合いものがあるという表現は変ですけれども、パッケージのかなりよくできたシステムがあって、それを展開するというのが外資系の金融機関のCMSの特徴でございます。これに対して、日系の金融機関というのが、先ほども申し上げましたけれども、個々の事業者さんの仕様とかにも対応してくれるというか、逆を言うと、それほどパッケージとして定着しているものができていないということがあろうかと思います。

そこで、実際上新たにつくるものかというのを出てくるので、実際上コスト的に言うと、高くなることはあるかと思います。ただ、最終的にシステムで調達する際のコストというのが、事業者さんと金融機関との間の取引で決まるところもありますので、結構日本の金融機関があそこの部分を、ほんとうは仕様に合わせて特別につくっている分でコストがかさ上げされているところがあるのですが、それをのむケースとのまないケースがあるみたいで、のまないケースだと、新たにもうお客様の都合に応じてシステムをどんどんつくっていくという形になりますので、コストが割高傾向になるのかなと考えております。

○小野委員

ありがとうございました。

○吉野座長

ほかにいかがでしょうか。じゃあ、藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

この中には、 例えば20年前との比較といったものはないですけど、20年前まで国際金融にかかわってきた者として、今日の発表を聞いて感じたことは、あまり20年前と変わってないかなということです。山本さんはどういうご意見でしょうか。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

意見としてはというか、20年前は、私はそんなに深く金融に携わってなかった者でして、あまりそういうことは十分に存じ上げないところではあるのですが、最初のところの4ページ目のところなんかでHSBCの国外、域外の収益のデータとかを見ましても、これは欧州以外の比率が6割以上ということで、もともとの育ちがかなり日系の金融機関とは違っていて、中国とイギリスに非常に拠点として持っているというのがかなり昔からあるというところがございますので、育ち方の問題も含めて20年前からあまり、今、おっしゃられたとおり変わってない部分というのもあるのかなと、金融機関の育ち方の問題からいってですね。というところはあるのかもしれないなというふうには感じております。

○吉野座長

じゃ、もう一つ、藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

私が どのページを見て質問したかと申しますと、11ページです。その当時も、邦銀の強みはリレーションシップと日本語対応で、情報提供力は外資系ほど強くないと。私は、買収先企業の提案といった、情報提供力というものは向上してきたのかなと思いながらデータを見ていました。日本の金融機関が力を入れた分野ではなかったのかなと思っておりました。そこで山本さんのご意見を聞きたいと思った次第です。補足でした。

○吉野座長

はい。じゃ、井潟委員、どうぞ。

○井潟委員

今の 藤原委員のお話とも少し絡むんですが、ページの23ページ、M&Aアドバイザリーサービスというところ、我が国金融業のサービスに対する評価という部分、×で、M&Aの候補企業の提案内容を中心に、外資系金融機関に強みというふうにありますが、現実、例えば2011年の日本企業が外国の企業の買い手になったディールのアドバイザリーのランキングは、上位5社に日本の証券会社が2社入っていて、全体の4割近いシェアを実際は占めているというハードなデータがありますよね。1位と4位に日本の証券会社が入っているわけなんですが、そういう意味においては、ヒアリング先の偏り方ということはあると思いますが、現実はやっぱりそれだけのシェアを日本企業が外国の企業を買うときの割合として占めているということに配慮すると、ここは×じゃなくて、△じゃないかなと思うんですが、ご配慮いただければと思います。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

ハードなデータの部分と今回インタビュー、アンケートで、たまたまの面もあるかと思いますが、印象的な部分とかということもありますので、必ずしもデータそのものと整合しないものが出てくるかと思いますが、ちょっとその点も考慮して検討したいと思います。

○吉野座長

じゃ、篠原委員、どうぞ。

○篠原委員

ちょっとご質問なんですけど、この4ページ目の金融グループ、主な産業の平均海外売上高比率ってありますね。これで企業数3、平均17.6%とあるんですけど、これは、海外事業と、それから、海外における日本企業と両方含めた数字ですか、海外での売上高比率というのは。つまり、日本の企業を対象にした、それから、海外企業を対象にした、両方あると思うんですけども。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

ええ。これはどちらも対象としています。海外での売り上げということだけですね。

○篠原委員

その内訳はわからない?

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

内訳はわかりません。

○吉野座長

関連で4ページのこの表を見ますと、やっぱり金融グループだけが非常に低いわけで、逆に、じゃあ、なぜ製造業とか、右の部分が強いかというと、1つは、日本の企業の独自の技術力というのがありますね。だから、どこが違うかというのをぜひ教えてほしい。1つは、独自の技術力があって、それから、日本の製品のブランドがあると。それから、製造業ですと、言葉は要らなくて、いい製品を安くつくればだれでもわかると。そういう中で、じゃあ、金融業として今後どういうふうにすれば、言葉を使わないで勝負できる金融業とか、何かそういうことを考えなけりゃ、同じ英語でやっていったら絶対負けるのは当たり前ですから。この今回の調査をやられてどういうところに活路があるというふうにごらんになっていますか。

○山本野村総合研究所上級コンサルタント

活路という点でいくと、最後に述べさせていただいたところとか、23ページ目とかというところから入っていくのかなということです。

考え方は2つの視点があると思います。1つがまだネットワークが十分ではないところもありますが、海外に進出しやすいものから入るということです。そうなると、やはり企業向けの国際的なサービスで、国際通貨建ての融資とかということが大きなものとして出てくるのではないか。それから、パッケージとしていいものがあるならば、キャッシュマネジメントサービスが、企業向けの国際的なものから入るという点ではあるのではないか。まずはそこから入るというものが一つの視点でございます。入りやすいものということでいくと、企業向けの国際金融サービス。

それから、実際上の強みがあるものということで、23ページ目の○・×・△のところではご意見があるところかと思いますが、ここで強みのあるもの、今の環境からいくと、国際通貨の調達能力というのは、邦銀かなり強いと思いますので、それをもとにサービス展開していく。強みのものをうまく使ってやっていく。ここで挙げているように、国際通貨建て融資であるとか、キャッシュマネジメントシステムに強みがあるのではないか。それから、リソースとしては、先ほどもお話しになりましたけれども、M&Aを進められている金融機関もかなりあって、FAのアドバイスというところも強くなっているところがあると思いますので、そういった業務をスタート段階とか、第2段階で行って、徐々に企業の現地向けサービスと個別の中小企業向けのサービス、さらには、リテールと関連するものにどんどん進化していくという形があると思います。したがいまして、強みを生かすということと、海外から入りやすい企業向けの国際金融からやっていくということが今後の展開のあり方として考えられるところではないかなと認識しております。

○吉野座長

藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

私は反論してよろしいんでしょうか、今の意見に。それがまさに90年代、80年代後半からの日本の戦略だったんです。それで、多分それがうまくいかないから、こういう統計結果が出てるんじゃないかと思います。

で、 私は、この11ページを見て、例えば情報提供力に弱いとか、手続の円滑さが評価されてないとかというのを今日見ました。事前に読んできたんですけど。感じたのは、その強みを生かすじゃなくて、違った発想でいかなければいけなかったんじゃないかと思うんです。それは、日本人は英語が下手だから、英語では勝てないと。でも、考えてみると、香港でも、シンガポールでも、皆さん、まず英語を上手になって、英語が上手になるから海外の人が会ってくれる、情報が入る、生で入る、新聞情報以外が入る。それでお客さんと仲よくなると、おたくのほうはサービスが遅いねとかって、そういう身近になることでいろいろ注意してくれると。それでサービスの円滑化とか、そういうのが出てきて、だから、結果的には、情報提供力とか、そういうのも強くなると。何か私は、過去の自分がいた国際金融の経験からして、やっぱりマネジメントはそちらのほうにシフトしていかなければいけないぐらいグローバル化がとめられない状況になっていると思います。もちろん日本に来たら、外資系金融機関は日本語で商売すべきだと思いますが、もうこの英語が国際共通語みたいになって、英語ができることが国際金融業務の効率化と収益増加を導き出すという関係は強くなっていくんじゃないでしょうかね。

以上です。

○吉野座長

ありがとうございます。まだまだご意見、ご質問あるかもしれませんけど、先のほうに進ませていただいて、その後、また必要であれば戻っていただきたいと思います。

それでは、次の資料の資料1-2のところでありますけれども、地域経済における金融機能の向上につきまして、こちらのアンケート調査は、みずほ総合研究所にお願いしております。今日は、松本主席研究員からやはり15分から20分、ご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○松本みずほ総合研究所主席研究員

それでは、資料1-2に基づきまして、説明をさせていただきます。

まず、めくっていただきまして、1ページ目になりますが、調査の目的と方法というところでございます。今般の調査、我が国の地域経済における金融機能の実態把握と、さらに、機能向上に向けた示唆を得るということで、アンケート、ヒアリング調査により実態把握を行っているということでございます。アンケート調査、ヒアリング調査のスペックにつきましては、こちら、書いてございますけれども、2,000社、中堅・中小企業、東京商工リサーチのデータベースからランダムに抽出をして、配布を行っております。回収は29.2%でございました。ヒアリングにつきましては、全国の中堅・中小企業51社に対して対面、または電話により聴取を行ってございます。

次の2ページ目がアンケート調査項目の一覧ということで書かせていただいておりますけれども、こちらが調査事項でございますが、金融機関との取引状況をまず聴取し、さらに、資金調達に関するニーズと実態と、また、経営支援・アドバイスに関するニーズと実態を把握します。一方、海外事業展開、地方の企業でも海外に出てくるところが増えておりますので、こちらに対するニーズ及び実態と、輸出入及び海外進出に関して実態把握をしております。さらに、国内・海外取引それぞれに対する全般的な要望ということで聞いてございまして、ヒアリングにおきましても、こちらを深掘りするような形で聴取をしてございます。

次の3ページ目がアンケートの回答企業の属性ということで、基本的に、先ほど説明しましたように、東京商工リサーチのデータベースからランダムに抽出をしたところに手を加えずに集計をしているということです。

次の4ページからが調査結果でございます。まず、4ページ目は、金融機関との取引状況とございましたけれども、こちらについてですが、企業から見てメインバンクがニーズや課題を把握しているかという質問に対する回答結果でございます。把握できていないとするのは29.8%、3割程度あったんですが、残りの企業については、メインバンクがきちんと把握してくれているという結果でございました。ただ、融資先企業が若い企業であったり、規模が小さい企業でありますと、その把握の状況が若干薄くなっています。また、実際取引が長くなるに従ってニーズ・課題の把握が進んでいっても、解決策の提案ですとか、実際のサポートを行うといったようなところまではなかなか手が回っていないと、こういう状況になっているということでございます。

次の5ページが資金調達についてでございます。まず、5ページ目は、要望ということで、金融機関からの資金調達において希望する取引という格好で聞いてございます。無担保の借入、無保証の借入、あるいは保証協会の保証つきの借入についてニーズが高いというような結果が出ておりますが、この中で保証協会保証つきの借入につきましては、創業間もない企業や規模が小さい企業におきましては、特にニーズが高いというような結果が出ておりまして、これらの企業では、いわゆるマル保融資についてもなかなか受けられないような現場があるのではないかということが示唆されるということでございます。

次の6ページですが、企業のニーズに対する実際の金融機関の対応の状況ということでございます。先ほどニーズのグラフに金融機関対応のグラフを重ね合わせたものでございますけれども、特に乖離が大きいものとしては、保証協会保証つきの借入、あるいは不動産を担保にした借入ということで、ニーズをかなり上回るような対応となっています。実際ヒアリングでこの辺を深掘りしてきたわけですけれども、借入については、保証協会の枠内と担保を持っていても、なかなか貸してもらえないというような話ですとか、そういった意見が複数見られているという結果でございました。

次の7ページが新規に借入を行う際の金融機関の考慮項目ということで、まず、企業から見て、金融機関が何を重視しているのかということでございます。考慮されている項目、貸し出し条件に反映されている項目、今まで以上に考慮してほしいという項目という形で聞いておりますけれども、見ますと、財務状況が考慮され、条件に反映されていると感じている比率が非常に高くなっているということでございます。ヒアリングにおきましては、同じようにやはり財務状況、あるいは保全面、また、過去の借入についての返済状況といった過去データのみが考慮されているというところに対して不満を述べる意見が多々見られたという結果でございました。現場の事業内容ですとか、将来性についてもう少し見てほしいという要望が出されております。

次の8ページが続きでございますけれども、ヒアリングでは、審査能力そのものに疑問を呈する意見が出されております。特に先ほどマル保の対応というような話がありましたが、保証協会の審査結果ですとか、あるいはいわゆる帝国データバンクとかの、企業情報サービス会社の評点、こちらに左右されて、金融機関が突然セールスにきたりとか、そういうことが多々ありますというような意見が見られております。

この2ポツ目になりますけれども、過去にリスケを行ったり、法的再生を経験した企業で、その後の事業が軌道に乗っていっている場合でも、なかなか正当な評価を受けづらいというような意見も複数見られています。新規成長分野に対応している企業ですとか、業績悪化を経験した企業などでは、銀行借入ではなく、直接金融による調達を検討しているようなケースも見られました。

次の9ページ目も続きですが、これまで以上に金融機関に審査の際に考慮してほしい項目という問いに対する回答でございます。先ほども言いましたように、事業の成長性のほか、商品・サービス開発力等々があるわけですけれども、新規産業分野の企業ですとか、ベンチャー企業、若い企業では、技術・ノウハウと、こういったところをより評価してほしいというニーズが高くなっております。

一方で、ヒアリングでは、技術・ノウハウというのは金融機関がそこまで理解するのは難しいんじゃないかというような意見も複数見られております。同業者でもやはり自社の技術をわかってもらうというのは相当難しいのに、ましてや金融機関ではなかなか難しいんではないかという意見でございます。そうはいいましても、新規事業展開において資金調達ができずに支障を来すようなケースもヒアリングでは聞いておりますので、今まで以上に定性評価をやっていくような仕組みづくりが何か必要なのではないかということが言えるかと思います。

次の10ページ目からが、経営支援、アドバイスについてのニーズでございます。10ページ目は、ビジネスマッチッグと書いてありますけれども、こちらの下のグラフにある項目についてのニーズ、また有料・無料でどうかというような点を聞いていまして、特にこの1つ目の販売先の紹介といったところがサービスを受けたい、有料でもいいという比率が高くなっている項目でございます。

ヒアリングにおいても、このようなビジネスマッチッグにつきましては、肯定的な意見が多く出されているということで、金融機関に一層期待をしたいということでございました。一方で、取引先の紹介は期待しないという企業もあったのですが、その理由としましては、業務が若干特殊なため、金融機関から紹介を受けたところが、自社の間尺に合わないとか、BtoBとBtoCというところでは、販売先が個人主体なので販売先として企業の紹介を受けても困るとか、あるいはもうちょっと事業内容をきちんと把握してほしいという要望が出ていますので、個社のニーズ把握、あるいは各社の事業内容を踏まえた紹介というのがより求められているという結果でございます。

次の11ページも続きですが、今度は、いわゆるコンサルティングというところですが、経営への助言・コンサルティングについてでございます。こちらにつきましては、先ほどのグラフでも見ましたが、ニーズはさほど高いとは言えない状況でございます。ヒアリングでその理由を探っていったところ、金融機関に情報をすべて開示するのは嫌だというような企業が複数見られました。また、金融機関系列でコンサルティングを受けると、それを必ず実行しなければならないのではないかという強制力を感じてしまう、あるいは過去に助言を受けたけれども質に若干問題がある、ほんとうにアドバイスが役に立つのかといった意見が見られております。

次の12ページも続きでございますが、その他の経営支援、アドバイスについてでございます。これはヒアリング結果を抜粋していますけれども、例えば若手経営者の会とか、業界ごとの交流会について、あるいは各種情報提供につきましては、既存のサービスが評価されているという結果でございました。必要な情報の内容としましては、業界動向から始まって、不動産ですとか、資産の売却、専門家の紹介といった非常に多岐にわたるものを必要としていると。中堅・中小企業と、特に中小企業では、やはり自社のネットワークというところで相当限りがあるというところで、金融機関が持つ幅広なネットワークに非常に期待を持っているということが言えるかと思います。

次の13ページが国内取引全般のニーズ・要望というところでございます。アンケート結果を見ますと、商取引拡大に結びつくような、先ほどビジネスマッチッグがありましたけれども、情報提供、あるいは担保・保証が不要な借入といったようなところのニーズが高くなっています。

ヒアリングでは、ビジネスマッチッグについては、先ほども言いましたとおり肯定的な意見があったのですけれども、それは置いておいて、とりあえず、まず本業のほうをもう少し強化をしてほしいという意見が多くの企業から見られています。先ほどの審査能力に疑問を呈する声というのが出てきていましたが、担保とか、保証に過度に頼らずに金融機関みずからがリスクをとって資金供給を行ってほしいといったような意見、あるいは研究開発を行う企業ですとか、地域経済の今後の活性化に寄与するような企業への資金供給をもっと行ってほしいという意見が出されております。

次の14ページになりますが、その前提として金融機関にこういうことが必要なのではないかという意見で、ヒアリング結果からまとめたものでございます。ここに2つありますが、事業内容のより一層の理解というところと、人材面の問題を解決してほしいという意見が多くの企業から出されています。人材面につきましては、最近そうなんですが、担当者が非常に早く転勤してしまう、面談にくるのも、ここに具体的にあるように例えば半年に1回しか来なくて、2年で転勤してしまうというと、4回ぐらいしか会わないで次の担当者になってしまう。事業内容、到底理解ができませんねという意見が出されています。あと、担当者につきましては、より一層教育を充実させてほしいと。特に、最近、売る商品がいろいろ多くなっていますので、そういったことも含めて充実してほしいという意見が出されております。

次の15ページからが海外事業展開に関するニーズでございます。15ページは輸出入に関してでございますが、こちらのグラフにある比率が高いものとしましては、信用リスク、為替リスクの管理に関するアドバイスですとか、貿易相手の企業、あるいは現地の代理店についての信用情報の提供、自社のリスクを軽減するような情報アドバイスへのニーズが高いという結果でございました。しかしながら、有料だとどうかという点につきましては、なかなかニーズは高くなく、無料で対応してほしいというような意見となっております。

次の16ページが、こちらは海外進出に関しての金融機関によるサービスへのニーズでございます。比率が高いものを見ていきますと、現地での資金・為替、あるいは財務管理ですとか、貿易金融、リスク管理、情報提供等。主なものは、金融回りというか、資金回りに関連するようなサービスへのニーズが高くなっています。こちらも輸出入と同様に、有料ということになると、ニーズは高くないという状況でございました。

17ページは続きで、ヒアリングの結果でございますが、金融機関に期待する意見も見られております。事業展開のアドバイスですとか、現地情報の提供ですとか、現地の取引先紹介といったようなところは期待したいという意見が出ましたけれども、一方で、企業のニーズに金融機関が十分こたえられていないケースもあります。実際相談しても銀行から提案がないですとか、以前はサポートしてくれたがなくなってしまったですとか、サービス内容が役に立たないという意見も幾つか出されています。そもそも期待しないという意見も散見されているという状況でございます。

18ページですが、特に金融機関に期待したいものとして、ヒアリングでは、情報提供というところは非常に有用なんじゃないかというのが皆様から出された意見でございまして、一般的情報、基本的情報というのは金融機関からよくもらうんだけど、有用であると。一方で、詳細な現地情報につきましては、なかなか役に立たないという意見が多く見られております。現地の実態を把握したものですとか、詳細なところはどうしても難しいので、現地の金融機関による連携とか、あるいは現地の税務・会計事務所、こちらと連携しながらという対応が現実的なのではないかというところでございます。

次の19ページが海外取引に関する全般的なニーズ・要望でございます。先ほど見ましたように、アンケート結果でも、情報提供に関する選択肢の回答比率が高くなっています。さらに、簡易・無料ですとか、独自性があるサービスといったような、何らかの特色を求める回答が多くなっています。一方で、先ほど見ましたように、有料でのサービスのニーズというのは高くないという結果でございました。また、ヒアリング結果でありましたように、担当者の教育、これは国内のほうのヒアリングでも出ましたが、海外のほうでも充実が求められているという結果でございました。

次の20ページがヒアリングで補完したものですが、海外取引に関する幅広な情報提供、業務支援、こちらを期待する意見が見られましたが、一方で、基本的な部分でまだまだ対応が不足しているという意見が出されています。例えば決済のサービスですとか、外貨口座の知識が皆無であったとか、こういったそもそもの部分で商機を逃してしまっていることがあるのではないかということでございました。

ここまでが調査結果でございまして、21ページ目がまとめでございます。1つ目としましては、最初のほうに出ましたけれども、金融機関みずからがリスクをとってという話で、リスクマネーの供給と書かせていただいておりますけれども、担保・保証への過度な依存からの脱却ですとか、あるいは担保資産の多様性といったようなところを1つ検討する必要があるのではないかというところです。直接的にエクイティを供給するというのもなかなか難しい部分もあるかもしれないですけれども、間接的に、例えば連携をしながら供給するという取り組みがどうも求められているということでございます。ただ、一方、課題としましては、いわゆる目ききというところがより一層能力向上が必要となってくるであろうと。さらに、リスクが当然高まりますので、資本の増強というところと、さらに、特に特定地域でやった場合はリスクをどう分散させるかといったことが1つの課題になってくるのではないかということです。

2つ目が情報サービス機能の向上というところでございますけれども、特に販売先の紹介を中心としたビジネスマッチッグですとか、あるいは情報提供、こちらは最近の経済情勢も踏まえますと、自社のビジネスの拡大に結びつくようなサービスや情報へのニーズが大きいという結果でございましたが、先ほどヒアリングの意見として見ましたように、事業内容の理解が不十分であると、どうしてもミスマッチが起きてしまうということで、こちらが不可欠であろうと。事業内容の理解を深めるというのは、先ほど、上のほうに記載した目ききの向上ですとか、あるいは前のほうに出ました定性評価、こちらの強化にもつながるのではないかということでございます。課題としましては、やはり人材の点が1つ大きな問題であります。さらに、最初のほうのヒアリングでありましたように、企業が金融機関に情報を全部提供するのは嫌だという意見を持っているところもありますので、情報提供の動議づけといったようなところ、さらには、金融機関、特に銀行だけで対応するというのはなかなか難しい点もあろうかと思いますので、外部の専門家とどうコラボしていくかというところが課題になると思います。

これらを踏まえまして、3つ目にあります経営戦略の刷新ということで、こういったリスクマネーの供給ですとか、情報サービス機能の向上を行うためには、各金融機関で顧客本位の商品サービス設計、営業展開、こちらを新たに行っていかなければいけないだろうと。さらに、資金・情報サービス両面で経営基盤を拡充していく必要があろうということでまとめてさせていただいております。

発表は以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございました。

それでは、やっぱり15分ぐらい皆様からご質問いただきたい。じゃあ、大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

2点ございまして、今のお話を伺いますと、金融機関というのは、事業の内容もわかってないし、審査の能力はないし、担保と保証に頼っていて、とても金貸しとは言えないみたいな、非常にひどいものだというようなふうに聞こえてしまうんですね。で、そうだとすると、もっとリスクをとって、資金を供給しましょうというまとめの結論も、ああ、そうかなということになるかもしれないんですが、私は、ちょっと違う解釈もできるんじゃないかと思っております。つまり、貸出業務の現場では、担保も保証もとらないで貸し出しをどんどんやれば、それは不良債権を増やしてしまうという、非常に大きな危険を冒すことになるわけですよね。それは、検査・監督の観点からも抑制されているところでもあるわけです。また、以前報告がありましたとおり、リスクに応じたスプレットがちゃんととれているのかというと、とれていないという現実もあるわけで、ちっとももうかりそうになくて、検査で怒られる危険を冒してまで、仮に本当に事業を理解し、この会社はすごいと、担当者個人が実は内心思ったとしても、とてもじゃないけど、その要望に「はいはい」と応じるわけにはいかないという現実があるんじゃないのかなというふうに私は感じます。もしそうだとすると、リスクマネーを供給しましょうという、それはそのとおりなんですけれども、じゃあ、どうするのかという問題が、ものすごく大きな問題として残るんじゃないかというのが感想です。その辺りについて松本さんのご意見を伺いたいということが第1点です。

第2点は、ちょっと揚げ足取りで申しわけないんですが、19ページの問13への答えのところで、海外取引についての期待について、「現状のままでよい」というのが3割ぐらいあって、見ようによっては満足しているというふうにも読めるんですけれども、他方で、このヒアリングの結果を拝見すると、例えば外貨取引とか、決済とかについて、そういう、いわばベーシックな点について不満があるというようなご指摘もあるようですね。こう言うとなんですけど、アンケート設計の際に選択肢がやや情報系に偏ってしまったので、そういう決済とか、実際の金融取引に直接かかわるような選択肢が見当たらないんで、「現状のままでよい」という答えになってしまったのかなという感想をちょっと持ったんですが、そこについてもご感触を教えていただければと思います。

○吉野座長

お願いします。

○松本みずほ総合研究所主席研究員

まず、2つ目の点ですが、実際アンケートの設計のときの選択肢は、ここに載せてあるのがすべてでございますので、ベーシックな部分というのはあえて聞く必要もないだろうということで、実際入れてない部分でもあります。情報サービスとか、海外展開に関するようなコンサルティングといったところで、金融機関、先ほど利幅が薄いとかいろいろありましたけど、何かしら収益の種というのも探せないかなというのが1つ問題意識としてありまして、こういう設計になっていたわけでございます。それで、実際ヒアリングに行ってみると、いや、そもそもベーシックな点が不満だという話が出てきたというのが実態のところでございます。

1つ目につきましては、確かにご指摘のところはそうなんだろうというところです。実際業績がよくなってくると、最近、貸出先が非常に少なくなっており預貸も落ちていますので、例えば帝国データバンクの評点がよくなると、ものすごいたくさんの金融機関からセールスが一斉にくるというような状況ということでございます。これは複数の企業から聞いた点でございまして、そうなってくると、今まで聞いたことのないような非常に低い貸出レートを突然提示されたり、担保も保証も要りませんという話で寄ってくる金融機関があるようです。

一方で、例えば先ほどのリスケをした企業とか、経営再建という話がちょっとありましたが、そういった企業で1社あったのが、あまりほかの金融機関には手を広げずに、メインバンクを1つ決めて、従来型の取引というか、メインバンクにおんぶにだっこではないですが、全部開示して、毎日のようにきちんと相談に行って見てもらっていると。最初業績がよかったときは、それなりの普通の取引をしていて、業績が悪くなったときも、その銀行は見捨てずに、ある程度の金利は取られましたけれども、担保はもう全部その銀行に出しているんで、もうこれ以上ないですという状況で、何とか救ってもらっています。金利水準につきましては、業績立ち直った後にほかの銀行がいろいろと低利でやってくるんですけれども、やはりそういう経緯があるので、いざというときにどれだけ助けてくれるかといったのに対する保険料じゃないですけれども、そういった高い金利をメインバンクに払っているというところも1社ございました。そういうつき合いというのもあるのかなというのが1つ考えられるかと思います。

以上でございます。

○大崎委員

ありがとうございます。

○吉野座長

今のリスクマネーですけど、多分預金で集めたお金じゃなくて、やっぱり投資信託とか、違う形で集めないとなかなかリスクがとりにくいという状況ではないかなと個人的には思いますけど、家森先生、どうぞ。

○家森委員

2点質問させていただきます。

1つは、18ページのコメントの中の一番下なんですけれども、このワーキングでも、外国の金融機関の方と地方の金融機関の連携というのは1つの課題かなというふうなヒアリングもあったと思うんですが、ここの最後のところで、国内の銀行ではコンプライアンスの関係もあり、十分な情報提供は難しいと記載されています。これは、どういう意図でコメントされているのか、教えていただきたいです。つまり、何か法令上の制約があってこういうことができないような問題があるのかということを教えていただきたいというのが1点です。

それから、第2点は、これはむしろ金融庁の方に聞いたほうがいいのかもしれませんが、14ページでの結果によると、担当者がころころ変わるというのに対して、企業の方々から非常に強い不満がある。私が行っている調査結果でもそういうことはよくあるんですけれども、その理由の1つは、金融監督当局がコンプライアンス上、担当者が長くなると困るというような指導をされているからなのかという点であります。確かに顧客との癒着というようなことが起こると問題になるというようなことが、時々言われます。第1の質問は、金融庁の姿勢についてです。

仮に何らかの形で、交代させることが合理的であるとしたら、この不満は担当者の間でうまく顧客情報の引き継ぎができてないということを意味するのかと思うんです。これはみずほの方にお尋ねしますが、この担当者の間の情報の引き継ぎについての何らかの不満が意見として出ていないかという点をお尋ねしたいと思います。

以上です。

○吉野座長

じゃあ、お願いいたします。

○林みずほ総合研究所主任研究員

それでは、最初のご質問についてご回答させていただきます。

コンプライアンスの関係もあり、十分な情報提供ができないというところでございますが、この中には海外の裏情報ですとか、表面的なその情報ではなくて、現地に行かなくては把握できないような、いわゆる泥々とした闇の世界というのも含めて、現地での実態の情報をさらけ出すというようなところがなかなか難しいというような意味合いでコンプライアンス上の問題という表現の仕方をさせていただいております。

○吉野座長

金融庁の方のほうで、人材、人事の面でどなたかお答えいただけますでしょうか。

○遠藤監督局審議官

監督局でございますけれども、 具体的に金融庁のほうで、顧客との癒着が問題になるんで、営業職員というのは2、3年でやっぱり交代すべきだということを、検査等の場において実質的に指導しているということはございません。

ただ、 おそらく金融機関が内部の監査の体制の中で、やはり営業の第一線においてのいろいろな問題がありますので、そこで、一般的にはあまり長過ぎるといろいろとやっぱり顧客に必要以上に仲よくなってしまって、いろいろ便宜を図るというようなことが起こってしまうんで、金融機関自身がそこら辺は内部チェックの1つのルールとして、そういう体制をしいているのではないかなと思います。

○吉野座長

今の関連でオブザーバーの金融機関の方々、今のアンケート調査を見て、煮えくり返っているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか、どなたかでも結構なんですけれども。現場で、例えばやっぱり人事がどんどん回るというようなことをだんだんなくなってきているのか、もし、そのあたり、どなたかお答えいただければと思うんですけど、いかがでしょうか。松宮室長、いかがでしょうか。

○松宮企画部経済調査室長

今、人事ローテーションの話が出ておりますので、そこについてお話ししますと、今、当局のほうからご説明いただきましたとおりでございまして、我々金融機関としても、不祥事件を少しでも抑えるというのは、これは1つの経営課題なわけですけれども、その中で過去の経験ですとか、いろいろな事象から、ある程度長い期間一定の取引先をずっと持っていると、不祥事件に通じる芽は出てくるというようなところは1つ論点として確かにあると思っておりますので、そのあたりが影響しているというのは間違いないところだと思います。

ただ、今回のこのワーキング・グループの場でも、担当者が頻繁にかわることがいろいろなお取引先から見てマイナスだというふうな声は出ておりますので、手前どもの鉢迫のほうからご報告させていただいたときも申し上げておりますとおり、そこら辺は十分勘案して体制、見直していきたいと思っております。

○吉野座長

ありがとうございます。

じゃ、こちら、地方銀行の静岡銀行の梅原グループ長、いかがでしょうか。

○梅原企画グループ長

弊行においても、3年で交代するというのはあくまで自主的な行内のルールとして設けて運用をしております。これは、全銀協の、今、松宮さんのほうからもご説明あったとおり、過去の経験則などを考慮しまして、顧客との癒着の防止などを含めて運用しているものです。

先ほど家森先生のほうから、引き継ぎ等の不満という点に関してあったですが、直接的な回答ではないかもしれませんが、お客様とのお取引というのは、10年、20年、さらにそれより長く積み重なっているわけなんですが、銀行員というのは、大学出て入れば23歳、24歳の行員がご担当するということで、当然その過去の経緯を知らないということがお客様との中で不満を招いてしまうことがないように、過去の記録というものを、私どもの銀行の中ではかなりきちんと大切にしていこうということを考えております。今は、そういう交渉記録などをシステムでかなり登録をしまして、そういうものをすべて今の担当者が過去の経緯を知るということができるような形を前提に、お客様のニーズにこたえていくということを検討しております。

以上です。

○吉野座長

ありがとうございました。

もう一つぐらいご質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。もし何かあれば、また後で戻っていただければと思いますが、それでは、引き続きまして、このワーキング・グループでそろそろ報告書の作成のほうに向けまして、皆様と一緒に考えさせていただきたいと思いますので、黒澤企画課長のほうから、報告書の(たたき台)についてご説明をお願いしたいと思います。じゃあ、よろしくお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

企画課長の黒澤でございます。

それでは、お手元に資料1-3というものがお配りしてあると思いますが、それをごらんになってください。これまで10回ほどワーキング・グループ、開いてまいりました。その間に出ましたさまざまなご意見を、私ども事務局なりに座長とご相談しながら、たたき台という形でちょっと構成し直してみたものでございます。既に事前にお配りしておりますので、目を通されているという前提でポイントだけご説明したいと思いますが、基本的なメッセージとしてどういうことでつくっているかということですが、1つ目は、やはりこれまで出てきておりますが、金融機関におかれては、これまで以上に顧客の目線に立って、潜在的な需要を掘り起こしていく必要があるのではないかというのがメッセージの一つになっているかと思います。そのためには、金融機関におかれては、担保をとって優良先に貸すというような活動だけではなく、きちんとリスクをとる。リスクを見きわめてこのリスクを引き取る、あるいは移転するというリスク変換機能というのが本源的な金融機能ですから、これをまたしっかりやるということと、その裏側に当然あるんですけれども、情報を生産し、蓄積し、提供すると。こういった本来的な機能をより一層高めていくことが期待されているのではなかろうかということでございます。

2つ目は、先ほど来出ておりますけれども、金融業が変わる以上は、金融当局も変わらなくちゃいけないだろうということでございまして、金融庁の本来的な目的は3つございまして、1つは、金融システムの安定、2つ目は、預金者、投資家等の保護なんですが、3つ目として、金融の円滑というものがございますが、これは広い意味で金融機能の活性化、向上というところですが、ここにもう少し重点を置くという金融行政の方向性があるのではなかろうかということです。そうしますと、そのやり方といたしまして、これまでのように金融機関を突き放して規制、監督、処分というようなことではありませんで、共に働く、共働という言葉を試みに使っておりますが、そういうアプローチもあるのではないかという提案をさせていただいています。

以上がポイントですが、たたき台に沿いまして、説明させていただきます。

2ページでございますが、最初のところで金融業を取り巻くマクロ的な環境、規制環境を整理させていただいております。まず、国内環境でございますが、ここに書いてございますように、人口減少を伴う少子高齢化等によりまして、実体経済においては、消費不足・供給力過剰という状況、金融面におきましては、貯蓄過剰、で、貸し出しが伸びない。余った貸し出し余力は国債に全部回る、こういう状況が見られるわけです。そうすると、出口がないように見えるんですが、よく見るとそうでもないのではないかというのがその次に書いてございますが。

世の中変わってきております。高齢化、環境意識の高まり等があり、新たな潜在的な需要が実は生れてきているのではないかと。しかしながら、これまで産業界、金融界においては平均的な企業、家計を想定した、いわゆる大量生産・大量消費型の態勢しかなかったから供給過剰が起こっているのではないかと。逆に言えば、多様化している需要を想定すれば、そういう面での供給力というのはむしろ不足している可能性があるということで、これに対応する金融サービスというものが想定できないかということでございます。

それでは、その余った平均的な家計を想定した供給能力、これをどうするのかということなんですが、これは国外にはけ口といいますか、アウトレットで出すということで次の国外の話が出てまいります。グローバル経済におきましては、日本はじめ先進国は低迷いたしておりますが、アジア等、新興国は、おしなべて、成長力が伸びていると。これは国際収支面ではどうなるかというのは、最近話題になっておりますが、我が国は確実に成熟な債権国の道を歩んでおります。既に2005年ぐらいから所得収支の黒字が貿易収支の黒字を上回る状況になってきております。確実にたまったお金を海外、外国に投資して使うと、そういう経済構造に移転しているということでございますが、外国に投資する投資の仕方は2種類あります。直接投資と間接投資ですが、直接投資というのは、とりもなおさず、海外に出ていくということですので、国際展開する日本の企業をサポートする、そういう意味での金融業の在り方があるのではないかと。

それから、2つ目は、個人のお金か出ていく証券投資の部分ですが、これをサポートする金融業というのも当然必要になってくるのではないかということです。いずれにしましても、出ていったお金が返ってこないと日本は豊かになりませんので、返ってくるお金が減らないようにするための為替政策の安定というものも当然、政府全体としては必要かと思います。

次のページにまいりますが、規制環境も変わってきております。欧米におきましては、金融危機というものがございまして、バーゼル3を含め、ひたすら金融規制を強化するという方向に進んできておるわけなんですけれども、我が国から見ますと、基本的にはいつか見た景色ということで、もう10年前に経験した規制強化の波に今ごろ欧米が入っていると、こういう状況かと思います。したがいまして、相対的に我が国の金融機関の健全性は高く、セーフティネットは充実しているという評価ができるのではないかと。逆に言えば、リスク許容度がまだ我が国の金融機関はあるのではないかと。また、商業銀行モデルに基礎を置くのが我が国金融業の基本的な特性ですが、こういったビジネスモデルが改めて見直されているのではないかと。したがいまして、我が国金融行政は、米欧と同じように規制強化をして安定性回復というよりは、もう一段先のフェーズというのもあり得るのではないかという問題提起であります。

こういった中で、では、金融業はどうすべきかというのは、先ほど申し上げましたが、金融機能の活性、あるいは向上化という観点から、潜在的な資金需要に顧客目線から対応していくということでございます。1の3のところに書いてございますが、情報を生産・提供する機能、リスクを見きわめ・引き受け・移転する機能、こういった本源的な機能を強化する必要があるのではなかろうかということです。こういうことを通じて顧客が認める価値を創造していくということであります。

3ページの下、金融機関の具体的な在り方として各論風に書いてございます。まず、グローバルな部分は、先ほど申し上げましたように、海外展開をする大企業、さらには中小企業をサポートすると。それは資金供給という面だけではなくて、情報生産・情報提供というものもあろうかというのが3ページの一番下に書いてございます。

さらに、4ページにまいりますが、金融業の現地化を推進することも必要でありましょうし、日本企業に限らず、非日系の企業に対するサポートというのもあるのではないかということで。さらに、こうやって出てくる企業をサポートするだけでなく、外にあるアジアの中核市場としてアジアのお金、ないしは活動を我が国市場に取り込んでいく必要があるというようなことから、引き続き、我が国市場の環境を整備すると、こういった努力は続けていく必要があろうかなと思っております。あるいはもう一つ目線が変わりますが、自然災害等、大震災も含め、こういったもので保険のグローバルな局面が大きく変わってきております。こういったところでの整備という目線もあろうかと思います。

いずれにいたしましても、課題といたしまして、強みを活用しつつ、リレーションシップ、低コスト、あるいは商業銀行業務に基礎を置く高い信用力と資金調達力、ここからまず立ち上がっていく必要があるのではないかということです。

ローカルな展開のほうにまいりますが、ローカルな展開につきましては、中小企業金融に対するリスクマネーの供給ということでございますが、エクイティ、擬似エクイティ、あるいは担保の多様化、あるいは電子債権の活用というアイデアがあろうかと思います。それから、地域経済における産業再編をサポートするようなコンサルティングというのもあるのではないかということです。

4ページ下からは新産業の育成ということで、5ページにまいりますけれども、医療・介護・環境・バイオ、あるいは新たなまちづくりといった新規の需要というものも少し見えてきているのではないかということでございます。課題といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、リスクマネーを供給する態勢、あるいはコンサルティング業務、情報提供機能ですが、こういったものの高度化が求められるのではないかと。そのようにして地域における金融、これ、深掘りしていきますと、ここに書いてございますが、地域集中リスクというものが当然深まってきますので、これの分散の方法もあわせて考える必要があるということですが、そのためにも、課題克服に向けた着目点ですが、規模・機能両面における金融機関の経営基盤の拡充という形でリスクの分散を図っていくということも必要になってこようかと思います。

それから、個人の金融サービスのほうにまいりますけれども、個人というのは、リスクマネーの供給源、資金運用者としての側面と、生活者としての個人、資金をむしろ需要する側の個人、両面があろうかと思いますが、その両面それぞれについてきめの細かいサービスというものが求められているのではないかということです。

まず、資産運用のほうでございますが、個人が安心して内外の金融商品に投資して効率的な資産運用できる、こういった環境を整備するというのが引き続き大きな課題かと思われますが、そういうものを求める過程で出てまいりました意見は、5ページの下に書いておりますように、短期的な販売手数料獲得に主眼が置かれていると指摘されるような態勢があるのではないかということ。あるいは6ページにまいりますけれども、それぞれのライフサイクル、ないしライフステージというものを見据えた中長期的な観点からのリスク資産、こういうものを提供する姿勢がもっと必要ではないかと。あるいは投資信託、今の文脈に出てまいりましたけれども、販売会社、銀行を含みますが、だけじゃなく、より運用会社主導の市場環境というものも考えていく必要があるのではないかというご意見もあったかと思います。

他方、今度、個人のお金をリスクマネーに転換するわけで、直接的にリスクマネーを出すのは個人には難しいので、どうしても機関投資家を経由してということになりますが、機関投資家、年金、あるいは一部個人、富裕層であれば直接ということなんですが、PEファンドを通じたリスクマネーというのもあろうかと思います。それから、個人の公共心、郷土愛を背景とする健全な、あくまでも健全なですが、市民ファンド等というのもあるのではないかということ。他方、金融サービスを需要する側としては、ローン、保険商品、その他手数料ビジネスといった点、きめの細かいサービスの可能性があろうかと思っています。

こういったことから行われるべき着目点ということで、まず第1に、顧客目線重視の金融機関経営への転換、それから、もう一つは、顧客サイドに立った独立系の金融仲介業者の育成というのもあるのではないかと思います。これは証券に限らず、保険といったことにも通じるような論点があろうかと思います。それから、機関投資家の資産運用の在り方、これは政府全体として考えなくてはいけないんですけれども、こういった問題もあるということです。

こういった中で、金融業に期待される役割に対して、政府の役割は、先ほど申し上げましたように、6ページの下ですが、金融機能の安定確保、投資家保護といったことだけでなく、金融の円滑、金融機能の向上・活性化に重点を置いた金融行政の展開というのがあるではないかということで、その際には、7ページ上にまいりますが、官民共働で推進すると。一義的には個別金融機関の経営戦略の問題なんですけれども、これを対話を通じて弾力的にともに解決していくというアプローチ。民間プレーヤー自身のインセンティブを最大限に生かしながら、これをサポートするということでございます。

そういった政府の役割の各論ということで、幾つかアイデアを並べておりますが、グローバルな面では、政府系金融機関といったものの戦略的な連携、あるいは外国金融当局とのいろいろな対話というものも当局の役割かと思われます。それから、ローカルな展開という面におきましては、リスクマネーが供給できるような態勢、枠組みというものを考える余地があるのではないか。あるいは政府系金融機関の役割もあろうかと思います。

個人向け金融サービスにつきましては、顧客本位の営業展開ができるような環境整備ということ。いろいろ書いてありますが、金融リテラシーということもつけ加えさせていただいております。

8ページは、今後の展望ということですが、これもご議論いただきたいと思っておりますが、中長期的には、今申し上げましたように、顧客が認める価値を創造するための情報提供機能、リスク変換機能、これを強めていく必要があろうかと思います。その際に経営基盤の強化、あるいは産業組織面での変化といったものも必要かと思います。官民共働でこういったものを今後引き続き議論していくということで、あくまでもアイデアでございますが、例えばということで、官民ラウンドテーブルの設置とか、あるいは業界、当局によるアクション・プランの作成、これはあくまでアイデアとして書かせていただいておりますが、こういったものを提案させていただいております。

以上でございます。

○吉野座長

どうも黒澤企画課長、ありがとうございました。これを見ていただきまして、全体の章立てが一番最初のページの1のところにありますけども、全体の章立ても含めて、それから、各論も含めて、こういうところをもう少し発展させたほうがいいとかいうのがあればご意見いただきたい。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。私が勝手に言っていたことなので、それが入ってないじゃないかとけちをつけるとかいう趣旨ではないんですが、どうしてもやっぱり気になるのが、ストーリーとして、日本の経済構造、金融構造が変化していくから、日本の、というか、和製金融機関の方向性というものも変化が必要である。だから、いろんな政策的対応も必要であるという流れできれいにできていて、それはそれでいいんですけれども、私は、やっぱり一方で、和製でなくても、日本国内で活動する金融機関の金融機能の強化というのはやはり重要だと思います。これは個人向け金融サービスという観点でも、企業向けの金融サービスという観点でも、あるいは東京市場の競争力強化、あるいは金融センター機能強化という観点でも、どこでも非常に重要だというふうにやっぱり思うんですね。一番最初にもちょっと申し上げたんですけど。

それで、そういう意味では、ところどころにばらばらと東京の国際金融センターとか、そういう言葉がちらほらと出てくるんですが、何かストーリー全体の流れとしては、どうも和製のものをどうするかという問題意識だけになってしまっているような気がしてならなくて、最終的にどういう仕上がり品にするかということとも関係はすると思うんですが、もし、文章化をかなり細かい形でやっていかれるのであれば、もちろんそれを主たるに論旨にしろとかということを言っているんじゃなくて、あくまで脇筋ですけれども、必ずしも和製ということだけに拘泥するものではないんだというメッセージはぜひ入れていくべきじゃないかと。これ1つ意見でございます。

それから、あと、もう一つ、最後のところで、金融業についてのプリンシプルというようなこと、あるいは官民共働とかいう言葉を書いていただいている点について、これは非常にいいことだと思っておりまして、ぜひこれを、何というんですかね、この報告書の重要なメッセージになるようにお願いしたいです。それから、先ほどご説明いただいた欧米の金融機関を取り巻く状況とはちょっとステージ、ないしはその現状認識が違っていいんじゃないかという、このあたりを重要なメッセージとして打ち出せればいい報告書になるんじゃないかなと、こういうふうに思った次第です。

○吉野座長

ありがとうございました。大崎委員の討論も1つ節をつけるぐらいやらせていただきたいと。ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。はい。じゃ、小野委員、太田委員の順番で、それから、井潟委員。

○小野委員

ありがとうございます。リスクマネーの話なんですけれども、2つ分けて議論したほうがいいかなという印象を持っています。1つは、この骨子でいいますと、医療・介護ですとか、あるいは海外進出支援のような、新しく伸びてくるような、エントリーしてくるような企業に対してどうリスクマネーを供給するかという話です。

もう一つは、こちらのワーキングでもヒアリングしましたけれども、多くの地方経済が過去10年、20年はどんどん下がる基調のなかで、いわゆる再生案件みたいなところでエクイティマネーが必要になっているケースがあると思います。これら2つは、分けて議論すべきだと思います。

その上で、後者なんですけれど、少なくともここ10年は後者のほうが圧倒的にウエートとしては高かったわけですけれど、そこに対するリスクマネーの供給というのは、ハイリスク・ハイリターンである以上、先ほどの大崎さんの話じゃないですけれども、一歩間違えば、ばくちのような側面はどうしても出てきてしまうと思います。また、今後も地方経済の規模的な縮小がある程度避けがたいときに、お金を出す方向にバイアスをかけていいのかというと、そこはどうなのかなという気がしています。

このワーキング・グループ自体は金融機関の在り方を議論するということなので、枝葉の議論ではあろうかと思いますが、すべての再生案件がうまくいくというようなことはあり得ないと思うんですね。そういうところについては、やっぱりエグジットすべきものはするという選択肢があるべきですし、この報告書で、そこにリスクマネーを出すことのバイアスをあまりかけたくないなというのが、思っている点です。

また、企業活動が活発になっていけば、もちろんエントリーも増えるわけですけれど、エグジットも増えるというのが自然な姿だと思います。その際、じゃあ、再生案件についてリスクマネーを出しましょう、リスクが高いのであれば、政府が支えましょうというのは、あまりサステーナブルではないんじゃないかという気がします。

○吉野座長

どうもありがとうございました。太田委員、それから、井潟委員の順でお願いします。

○太田委員

ありがとうございます。このグローバルな展開というところに関してなんですけれども、企業、あるいは資金や金融のサービスを受けるほうの立場で言えば、やはり大分変わってきていると思うんですね、ニーズが。で、昔から国際金融ということに関して本邦の金融機関に対する期待もあったんですけれども、その質が随分変わってきたんじゃないかと思いますね。ここに書かれていると思いますし、今日の野村総研さんのレポートは、まだ十分読み込んでないですけど、そういう観点で興味深い指摘がいろいろあると思うんですね。

2、3申し上げれば、やはり地域が、新興国であり、アジアの成長地域であるというようなことだと思うんですね。それから、従来のようなM&Aで既存の企業を買うんじゃなくて、やっぱりそういう地域ですから、1から地産地消を目的にした企業というか、工場をつくるなり、会社を立ち上げるというようなことだと思うんですね。そういうことがニーズだと思います。

したがって、求める金融サービスも、ここに商業銀行モデルというような言葉で書かれているんだと思いますけれども、やはり資金決済であるとか、それから、為替の問題だとか、そういうインフラを必要とするサービス、その継続的なサービス、そういうことになっていくと思うんですね、現地における現地通貨によるですね。そういうサービスを提供する金融機関と、こういうのを求めてくると思います。そうしたときに、他のサービス業では、日本の企業というのは海外でも多くが成功しているように、きめ細かいサービス、日本流の非常に行き届いたサービス、こういうことがやっぱり強みとしてあろうかと思うんですね。それもまた日本の企業も求めていると、こういうふうに思います。アンケートでは、日本語ができるというようなことで書かれていますけれども、それ以外のことだと思うんですね、ほんとうは。日本語ができるできないよりも、やはりきめ細かいサービス、日本流のサービス、そういうことが求められているんだろうというふうに思います。

したがって、従来、きれいに分けることはできないんですけれども、M&Aで既存の企業を買うというときには、それらのサービスは全部でき上がっていたものを買っていたわけですから、そこに今、私が言ったようなことが求めてなかったわけですけれども、随分変わってきているだろうということだと思います。

ですから、日本の金融機関は、海外に出ていって、バブルの崩壊とともに帰ってきちゃって、それで、また出てってって、こういうことで一貫性がないというような指摘があるかもしれませんけれども、そういう面もないわけじゃない。しかしながら、日本の金融機関も、従来出ていった地域なり、従来出ようとしていたサービスと、今、やろうとしていること、我々が求めていることというのはやっぱり違うわけなんで、遅れているとは思いますけれども、遅過ぎない。で、先ほど座長からのご質問ありましたけれども、私が言ったようなことで活路はあると私は思うんですね。ですから、その路線をぜひ後押しするような政策をやっていかれればいいし、十分ビジネスチャンスもあるし、大いに期待したいと、こういうことだと思っております。

意見であります。以上です。

○吉野座長

ありがとうございました。じゃあ、井潟委員、どうぞ。

○井潟委員

インフルエンザじゃないんですが、38度の熱があるものですから、ちょっと頭がぼっとしてうまく説明できないかもしれませんが、3つほど意見という形です。

黒澤課長の非常にわかりやすい説明で勉強させていただきました。6ページのところ、これ、非常に細かいところで、かつ私がここでプレゼンテーションさせてもらったときにも言及したということで、確定拠出年金制度の部分があります。低調な確定拠出年金制度の利用状況という、上のほうに1カ所と下のほうに1カ所です。先ほど黒澤課長が、まさに今後の日本で顕在化してくる、これまで潜在的だったが高まってくるそのニーズと、高齢化の中で、そういうニーズのまさに受け皿になる制度として、本来日本の年金問題ということを考えた場合にはもっと普及していかなきゃいけないと。アメリカのみならず、オーストラリア、イギリス、スウェーデン、ドイツ、こういった国々も公的年金改革、ひいては財政改革となると思いますけれども、そういったものを進めていく上でも、私的年金制度としての確定拠出年金制度の普及といったことには非常に重要な役割を果たし、活用してきたという点では、この低調な確定拠出年金制度がより日本で拡充、普及する方策といったものについて、是非触れていただければと。とりわけ、先月からですか、法改正もありまして、従業員も確定拠出年金そのものに自ら拠出できるという、マッチング拠出と呼ばれているものも可能になっています。日本で唯一自助努力で従業員がお金を積み立てていける制度になったという点では、確定拠出年金を入れていない会社は、従業員からそういう機会を実際奪っているといってもおかしくないような位置づけに定性的には変わってきた、というように考えているわけなんですが、この確定拠出年金制度の部分について、是非そういうご配慮いただければと思います。

また、この徐々に年金に向けて足の長い資金が入ってくるというこの制度の普及というのは、おそらく2ページのところに、これも黒澤課長からご指摘ありましたが、日本の経常収支の安定化・黒字安定化のための所得収支の拡大という点で、こういった制度からの外国証券投資といったものと、おそらく非常に密接に結びついてくるんじゃないかと考えておりまして、マクロ面でも重視していきたいと思っています。

これに関連するということで2点目になりますが、やはり金融機関、ないし金融商品を提供する人となると思いますが、これもやっぱり日本で非常に重要になってくるのは、この年金、あるいは他国では教育資金作りなどにもこういう制度と同様なものが提供されていますが、目的といったものをどういうふうに位置づけていくかという点での投資教育の提供、あるいはファイナンシャルプランニングの重要性といったものなどが、より金融機関、あるいは販売者に対して強く求められてくる時代になっている。そういった部分についてもご言及いただければと思います。

あと、ここが非常に広く注目されているワーキング・グループだと伺っておりますので、でき上がった報告書は広くあちこちで言及され、読まれることになると、今後の金融サービス業の一つのバイブル的な存在になるんじゃないかなと思いますが、その分、言葉の使い方の厳密さという部分については、安心、安全、高い、低いという言葉などもございますが、こういう言葉の厳密性といったものを、とりわけ私も発表したとき、わずか15分で駆け抜ける形の発表だったわけなんですが、必ずしも言及すべきところを言及しないで終わった、そういう内容もあり、是非いろいろ発表ありましたけれども、そういった発表の裏取りやデータ確認なども行われながらの報告書、本文の作成といったことをお願いできればと思っています。

○吉野座長

ありがとうございました。それじゃあ、河野委員、それから、永沢委員と。

○河野委員

このたたき台のまとめというのは、ここに多くのことが言及されていて、ほとんどのことが包含されていると思います。その中で、一番私自身がこだわっているというか、それは必要だと思うのは、やっぱり多様性という言葉だと思うんです。これが今後の展望とか、あるいは政府の役割とか、もろもろ、金融機関の役割とかありますけれども、これが全部多分一律同じようにできるわけではきっとないだろうと思いますので、その多様性をどうやって許容していくか、選択していくかというふうなところがもう少しわかればいいかなと。そういう意味では、グローバルで国際的に戦えるというのと地域の地産地消とか、いろいろ出てますけれども、全部の銀行に全部同じことをさせるということでもきっとないだろうということですね。そこのところをどう実現できるかというのがイメージできるような表現があればいいかなと。何かを変えれば、ルールを変えればなのか、まあ、あるいはこういうものにある程度の時間とか何とか。それも何か決めちゃうと、またそのチャンレジできないとか、自分で選べないというのも、自分というのは金融機関さんですけれども、というふうな感じもしないではない。

で、私としては、どこかのページにあったんですけれども、日本の国内の金融機関、あるいは日本に出ている金融機関とも、条件はイコールだというように解釈されるところがありまして、現実はイコールで多分ないだろうと思うんですね。正確にどの規制でそうなっているかよくわかりませんけども、日本国内における自由度と、海外でできることの自由度というのは違うんじゃないかと思うんですけれども、そういったところも含めて多様性とか、国際競争力を持つという表現で書かれてあるんでしょうということを確認するか、そこまではいかないのだということなのか。よく解釈すれば、特に我々が海外の金融機関で海外で受けられるサービスと日本国内でできるサービスとの違いはないというふうにも受け取れるし、いや、やっぱりあるんだというようにも思えるしというところが、いわゆる一般個人目線で言えば、わかればいいかなと思っています。

それと、もう今のある種の保証で、さっきお話が出ていましたけれども、退出されるところも当然ないと、全部が護送船団でまたずうっと1つの安全・安心のために退出するところがないということ自体がとてもおかしなプログラムになってしまうと思うんで、そこら辺のところが、政府の役割としての保証なりチェックというのとの絡みが、わかればいいなと思っております。

○吉野座長

ありがとうございました。じゃ、永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

このたびは報告書をまとめていただきまして、ありがとうございました。幾つかございますが、4点だと思っております。言い忘れてしまうかもしれませんが。

まず、5ページ目のところなんですけれども、細かしいことをいろいろ申し上げて恐縮なんですけれども、2の4の在り方のところで、リスクマネー供給源としての個人という位置づけがされておりますけれども、そのとおりであるとは思うんですが、現実に今の国内の金融機関の営業などを見ておりますと、このリスクマネーは国内の成長のためのリスクマネーだと思うんですが、実はそのような方向にお金が回っていない。中南米の成長を支えているのかもしれませんけれども。そのようなミスマッチがもしかしたら起きているのかもしれない。それは顧客が求めているからそういうことが起きているのかもしれない。いろんな理由があるかもしれませんけれども、このリスクマネー供給源としての個人に対する金融商品企画・提供力の向上というところの後ろに、もう一つ私は、欠けているものは、金融機関の方に大変申し上げにくいのですが、やはり金融機関というのは公器で、公の器でございますので、日本の国内にお金を流すという、その重要な役割を担っているんだという、その大事な心の部分が欠けているというか、欠けているというのは変ですね。もう少しもっと強調していく必要があるのではないかなと思っておりまして、8ページの最後の今後の展望のところで、プリンシプルとか、そういったことは触れていただいているんですが、全体として力とか、スキルとか、そういう面が強調されていて、少しそのような精神面を強調し過ぎるのは問題はあるかもしれませんが、そういった側面も少しあってもいいのではないか。特にそういったものが社員教育にも影響してくる問題ですので、入れていただきたいなというふうに読みながら思っております。

それから、2番目の点といたしましては、全体として価値の創造というお話が強調されておりまして、それは大変よろしいことだと思うのですけれども、もう一つそこに、従来サービスについては、経営努力をしていただいて価格を下げるという努力を一言書いていただきたいと思った次第です。どうしても全くこの議論を見ずに、報告書、この骨子だけをごらんになった方がもしあったときに、人によっては、価値の創造イコール付加価値、どうしても金融機関はコンサルテーションといって、長く座らせて、分厚いものをくれてサービスだというふうに言うけれども、いや、もうそれはちょっと違うんだよという声もあります。新しい価値を創造すると同時に、ほかの製造業が国際競争力をつける中で経費削減努力されてきたような努力をしていただいて、利用者に還元していただきたいし、そのためには、おそらく行政と金融業と、それから、消費者、利用者が一緒になって考えて、コスト削減を図れる部分もあるのではないかなというふうに感じておりまして、ほんの一言でもいいんですが、そのようなことがあったらいいなと思っております。

それから、あとは、ささいなことなのですけれども、個人の投資家から、投資家という表現を使ってしまいますけれども、投資家から見ますと、やはり国内の成長力が低下しているということ、それと伴って資金需要がないからだと思いますが、投資対象が、何というんでしょう。ゴープライベートといいますか・・・。昔はどんどん市場に出ていっていたのに・・・個人の投資家がアクセスするためには、市場での取引というのが必要かと思うんですが、そういう方向が少し何か全体として弱まっているような傾向にある日本というのは少し寂しいなと思っておりまして、これに書くのかどうかは別にして、リスクマネーの供給というときに、そういったインフラ部分というのがもう少しやはり見直しが必要なのかもしれないと思っております。

それから、最後の点は、ちょっと脈絡がなくて恐縮なんですけども、先週金曜日に三田の会議所、あそこの席でいろいろアジアのトップの方からお話を聞きましたときに、ASEANでは、例えば集団投資スキームのこのスキームの共有というんですか、そういうものが行われつつあると。やはりアジアという地域の中で、多分投資信託というようなものだと思いますけれども、そういったものを国を超えてユーロのような形で使い始めているというお話をされていました。もちろんASEANとこの私たちのいる日本の地域とは違いますけれども、今、投信法の改正なども検討され始めているところですが、そういった日本だけではなくて、このアジアの周辺というところも考えた、何かそういう視点もあったらいいなと思いまして、ちょっと最後につけ加えさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございました。1番目のところは、ISバランスって経済学でいいますけども、国内ばかりじゃなくて、海外とのバランスもあるので、そこまで含めたというのが大きなところだと思うんですけど。

2番目のコストのところは、先ほどの製造業と違うところは、日本の金融業にどれくらい技術進歩があって、諸外国と比べてそのコスト削減ができているかどうかというところがもう一つ重要じゃないかなという気がいたします。ありがとうございます。

じゃ、山田委員、藤原委員の順で、先に山田委員から、じゃあ。

○山田委員

ありがとうございます。1点だけ、7ページなんですけれども、ここで政府の役割の中で、グローバルな展開とローカルな展開と、こういうふうに分けてあるんですが、実は多分、先ほどね、みずほ総研からのレポートにもありましたけれども、この間に落ちるところ、つまり、個人的には、私は日本の企業金融の今、最大の課題というのは、中小企業の海外進出の支援だと思うんですね。現在の地域金融機関の業務の範囲からすると、なかなかそれは難しいということで、これをどういう形でサポートしていくのか。これから空洞化といいますけども、中小企業の海外進出、もっと本格化、活発化すると思いますので、その辺、現在のほんとうの地域金融機関の、いわゆる業務の範囲の中でなかなか難しい。例えば海外支店をつくるの、難しい部分がありますのでね、これをどうやって考えていくかみたいなね、論点があってもいいと思います。

私からは以上です。

○吉野座長

どうもありがとうございます。じゃあ、藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

報告書というのは、 一度つくったら残るし、皆さんに読んでもらう機会があると思うんですね。それで、2ページの国内では東日本大震災のことを触れていますので、やっぱりこのワーキング・グループで話し合っている間も、ユーロ危機というのは深刻化してきています。そこで、その国外のところでユーロ危機について1行か2行書いたほうがよろしいんじゃないでしょうかと思いまして、提案致します。

○吉野座長

はい。ユーロ危機まで含まれると、またいろんなことを書きたくなっちゃいますけど、少しにしておきますけど、はい、ありがとうございます。

じゃあ、川島委員。

○川島委員

2点ほど発言をいたします。どこの箇所かということでもないとは思うんですけれども、まず1点目が、個人ですとか、企業という金融の対象から、そのすき間にあるような、例えばNPOですとか、社会的企業ですとか、そういった主体に対する金融の機能といった観点が重要ではないかと思っております。今の政権のもとで新しい公共という役割ですとか、あるいは地域活性化といった中でのメインプレーヤーとして、今、申し上げたようなNPO、社会的企業に着目されているということもありまして、そうした観点も、企業向け金融サービス、ローカルな展開というところにもう入っているのかもしれませんけれども、そういう視点での幅出しをしていただけたらと思います。

もう1点は、6ページ目の一番最後のほうに、個人の共感に基づく健全な市民ファンドということで、これを膨らませますと、今、この震災からの復興だとか、あるいは今後、さまざまな課題、問題が地域で、高齢化社会の中で起こっていくことになると思っております。人と人のつながりですとか、あるいは善意が、そうした官に頼るだけではなくて、民間の資金が共有されるような、そういった大きな仕組みづくりといいますか、そういうところも視野に置いてこの提言が取りまとめられるということを願っております。今回この日本再生戦略にこの中長期的な金融戦略として、どのような提言を行っていくのかといったことが重要な役割だと思いますので、そうした視点も考慮いただけたらと思います。

以上です。

○吉野座長

ありがとうございます。

じゃあ、最後に家森先生、どうぞ。

○家森委員

第1点は、先ほどから山田先生とかがおっしゃっているように、それぞれの特性を生かしていく必要があるということです。地域金融機関は地域の企業と関係が深いが、国際的展開力は弱いということなので、このグローバルな展開についても、それぞれの金融機関の特性に合わせた提言をしないと、意味がないのではないかと思います。

それから、あとは、この報告書が最終的にどの程度具体的な提案をするのかによるので、この段階では少しわかりませんけれども、例えばイノベーションとか、M&Aという点でいうと、産学官の連携とか、そういうものをどうやって進めていくかというのも、大きな課題であろうと思います。さらに、全体として、人材が非常に不足しているというように指摘はするんですけども、じゃあ、どうやってこの人材を育成していくのかという点についても触れる必要があるかもしれません。例えば現状、金融機関同士が非常に熾烈な競争をされていて、囚人のジレンマ的にお互いに今日の戦いのために明日のための投資ができないような状態にあるのなら、当局が出てきて、お互いに勉強できるようなルールをつくるということはあり得るかもしれないです。それは大きなお世話になるかもしれないですけれども、以前、吉野先生が議論されていたような、例えば金融についての専門的な資格みたいなものを考えるとか、そういうようなことも、あり得るのかなと思いました。

以上です。

○吉野座長

どうもありがとうございました。

今日は、一わたり皆様にご意見いただきまして、今後でございますけれども、この報告書の、今日いただいたご議論も含めて、私なりに少し監修させていただきまして、それから、事務局の方々と、それから、先生の委員の方々でそれぞれのご専門分野で関連するところに関しましては少し手伝っていただくことがあると思いますけれども、個別にご相談させていただきまして、次回、また、このたたき台を修正したものを皆様にお示しさせていただきたいと思います。

それでは、黒澤課長のほうから、今後の予定についてお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

本日も長い間、どうもありがとうございました。次回の日程に関しましては、皆様方のご都合、それから、吉野座長とのご都合を踏まえまして、3月中旬の方向で調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○吉野座長

今日も活発なご議論、どうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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