金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第12回)議事録

  • 1.日時:

    平成24年3月12日(月曜日)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、ワーキング・グループ開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をお願いいたします。

本日は、3種類の資料をお配りいたしております。資料1-1は、バックグラウンド・ペーパー・シリーズというものでございます。表紙に書いてございますように、3人の委員の方々に今回報告書のバックグラウンドなるものを取りまとめいただいたものでございます。資料1-2は、前回お配りしました報告書の構成(たたき台)で全く同じものでございます。資料1-3-1は報告書の素案につきましては、第1章についてのたたき台でございます。第2章につきましては、資料の1-3-2という形でお配りいたしております。以上、よろしくお願いします。

○吉野座長

ただいまから、第12回目の我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループを開催させていただきたいと思います。今日もお忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。当ワーキング・グループは原則公開の立場をとっておりまして、本日も公開とさせていただいております。

本日の議事に移らせていただきたいと思います。前回の会合で議論していただきました「報告書の構成」をもとに、皆様から向かって右側のほうにお座りの3人の方々にバックグラウンド・ペーパーというものを用意していただきました。皆様のお手元のところの資料1-1というところに、3人の執筆者のお前、それから私が一応監修となってございます。本日はまず最初に3人の方々から、バックグラウンド・ペーパーについて、ご報告いただきまして、その後、その下のほうの資料にございますが、これからの報告書のまとめに向けまして、報告書の第1章、第2章の素案を事務局から説明していただく予定であります。これまでのヒアリングやバックグラウンド・ペーパーを踏まえて、さらに前回の会合で議論していただきました「報告書の構成」に基づきまして、事務局からこの第1章、第2章の素案をつくっていただいております。

バックグラウンド・ペーパーにつきまして、まず山田委員からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山田委員

山田です。よろしくお願いします。

バックグラウンド・ペーパーについてですけれども、吉野座長のご監修のもとで、先ほどご紹介ありました「報告書の構成」にある項目に沿って作成したものです。当然のことながら、これまでのヒアリング、それからワーキング・グループの議論、委託調査を反映させたものにしています。いただいている時間は5分ということなので、私から基本的には見出しだけになってしまうと思いますけれども、このペーパーで何を書いたかということをご説明差し上げたいと思います。

まず1ページを開いていただきまして、我が国金融業の企業向け金融サービス(グローバルな展開)で、ここが見出しになります。現状の評価として、企業のニーズの充足度。この中には、検討のフレームワーク、我が国企業の国際展開の動向、それから必要とされる金融サービスとその評価、基本的にこの項目については、先般ここでご紹介のありました、野村総研の「我が国金融業の国際競争力強化に関する調査研究」の資料に基づいて使っております。

3ページ目、4ページ目に行っていただきまして、ここには当然その企業とそれから金融機関の関係を中心にいろいろな議論をさせていただいております。4ページに行っていただきますと、この中でWGにおけるヒアリング及び意見について、幾つか書いております。そして、この最初の章の結論としては、4ページ目の下の結論の第2パラグラフです。ここを読んでいきたいと思います。

本邦金融機関は1990年代から2000年代の前半にかけて、不良債権問題の克服と自己資本比率規制の実態的な国際基準達成のため、国際業務の縮小を進めました。国際業務の資産が縮小から拡大に転じたのは、実は2000年代の後半でした。そこで、現在、本邦の金融機関は国際業務の再構築の途上にあるとみられます。その一方で、企業の海外進出は本邦金融機関の動きをさらに上回るスピードで進んでいます。したがって、この2つのギャップが、例えば現地拠点の数や現地通貨融資の額で、必ずしも企業ニーズを十分に満たしているわけではないということであります。その辺で、改革が必要だということであります。

5ページ目に参りまして、金融機関の国際業務の現状でありますけれども、調べていくと大変おもしろいことがわかりました。図表の4を見ていただきますと、現在、いわゆる銀行を単体ベースで見ていますけれども、貸し出しの額が増えているのですけれども、バブル期、90年代の終わりと比べると、その貸し出しの額は、実はそのときの3分の1しかありません。非常に減らした後に、先ほど言ったとおり、増やす段階にあるということであります。6ページに行っていただきまして、そうはいっても、いわゆる非常にボトムからスタートしているわけでありますから、貸し出しは実は今非常に伸びているということであります。6ページ目の図表5の2つ目下の上から5行目になります。10年3月期から11年9月中間期の最近1年半では、海外貸し出しが、これは3大銀行のケースですけれども、25.6%(年換算17.1%)と急成長しています。このうち地域別に見ると、アジアの伸びが1年半で53.2%であります。3行ほどあとには、主要行はアジアにおける日系、非日系の旺盛な資金需要を、現状では、積極的に取り込んでいると言えるのではないかという書き方をしています。

7ページ目では、他方、地域金融機関における国際業務の位置づけは、まだまだ弱い部分がありまして、ほんとうに企業のニーズにこたえているかどうかは疑問であるとしています。それから、証券会社、保険会社、ノンバンクについてもここで触れております。

あと議論のありました7ページの下です。金融機関の在り方です。国際業務をどうこれからやっていくかということで、幾つか切り口があります。ここでは、ローカルとグローバルということで、完全にローカルベースで国際業務をやるのか、あるいはグローバルベースで全会社的にやるのか。日本の銀行は、実はこの中間にあるのですけれども、そういう議論をしております。

8ページに行きまして、今後伸びていく場合には、オーガニック成長とノンオーガニック成長と書いてありますけれども、ここで言うノンオーガニックとは買収、M&A戦略のことでありまして、時間を買うものでありますが、買収後の経営について、いろいろなノウハウが必要であるという言い方をしております。

9ページに行っていただきまして、国際業務拡大の意義は何かというと、この上から3行目にあります、国民の所得形成の観点から見て、こういうものを進めるべきであろうということであります。国際業務拡大の方向性、これを本格的に進めるのであれば、それなりの覚悟とかそれなりの組織構成が必要ではないかという書き方をしております。次のポイント2.2、国際業務の拡大でありますけれども、今後、いろいろ国際的な部分、あるいはいろいろな国、アメリカをはじめとして、金融規制が出ておりますので、やはりこの辺は官民で情報を共有すべきであろうという言い方をしております。

次に11ページ、12ページですけれども、11ページに行っていただきまして、政府関与の役割でありまして、当然、今申し上げた国際的な規制に関しては、官民で意見を調整していく必要があるということで、共通認識を持つ必要がある。

12ページに参りまして、業務における官民協力で、当然、カントリーリスク、貿易保険などの件、それから中小企業の海外進出において、あるいは市場の環境整備において、今後、官民の協働が必要になってくるだろうという結論になっております。

私からは以上です。

○吉野座長

山田委員、簡潔にどうもありがとうございました。それでは、引き続きまして、小野委員、よろしくお願いいたします。

○小野委員

よろしくお願いします。

このバックグラウンド・ペーパーの位置づけについては、山田さんからご説明いただいたとおりでありますけれども、私自身はそれに加えて、2点ほど作成に当たって留意した点があります。1つ目は、この審議会でも何人かの先生方からそのような発言があったと記憶していますけれども、この審議会でのキーワードの1つに多様性ということがあるかと思います。そうであれば、金融機関の在り方というのも基本的には多様であってよいのだろうし、逆に金融機関の戦略ですとか課題について個々に論じる際には、そのメリットとデメリット両方をきちんと書くとともに、幾つかの選択肢を示すように努めました。この点は、後ほど例をお示ししながら、お話ししたいと思います。

それから、もう一つ、私に与えられた課題は地域金融、ローカルな企業向け金融サービスですけれども、地域金融が停滞している背景として、金融面と実体面と両方あるだろうということで、もとよりこの審議会自体は金融機関の在り方について論じるのが趣旨ですが、実体的な側面についてもできるだけ記述いたしました。以下、かいつまんでご説明したいと思います。

まず資料14ページから18ページにかけてが、地域金融の現状で、需要サイドと供給サイドに分けて説明しております。需要サイドについて、14ページに記してございますけれども、この審議会でも議論があったとおり、企業規模の低い企業のROAが特に低下しているといったことを指摘するともに、新しくつけ加えた図表といたしまして、29ページの図表2で、90年代の初頭から2010年までの20年間にかけて、ROAの低下幅は企業規模が小さいところほど大きかったわけですが、その要因が何なのかということを示しています。売り上げの減少なのか、コストの増加なのか、あるいは資産の水膨れなのかということを要因分解しまして、基本的には売り上げの減少が中小企業の苦境につながっていることを指摘しております。

資料戻りまして、15ページから18ページにかけて、供給サイドの話を、地域金融機関、投資ファンド、それから政府系金融機関の3つに分けて、記述しております。ここでのトーンといたしましては、一部に前向きな動きも見られるわけですけれども、総じて供給サイドも芳しくないこと、その背景には地域経済の低迷を背景とした、資金需要側の要因と、それから金融機関サイドで地域密着型の金融を十分に展開できていないという、2つの背景があるのだろうと指摘しております。

18ページから26ページが地域経済における金融機関の在り方であります。2.1節と2.2節のうち、2.1節が総論、2.2節が各論という位置づけであります。こちらも基本的には、事務局のたたき台に沿って、作成しておりますけれども、総論に関して申し上げますと、2.2節の冒頭で地域経済の縮小が今後もある程度不可避である以上、それを前提として地域金融機関が課題解決に取り組む必要があると言及している点が、やや事務局のたたき台にはなかった点かと理解しております。各論については、見出しだけ順を追って申し上げますと、電子債権、ABLの活用、それから21ページに行きまして、事業再生企業へのエクイティ性資金の供給、22ページに行きまして、創業期企業・成長企業へのエクイティ性資金の供給、23ページ、統合・再編について、それから25ページに行きまして、内部ガバナンスの問題と、地域経済の面的な再生という構成となっております。

これらの詳細には、ここでは立ち入りませんけれども、1点だけ最初に申し上げた多様性をある程度示すような書きぶりにしたいと申し上げた点について、21ページから2222ページに記載しております事業再生企業へのエクイティ性資金の供給を例に、ちょっとご説明したいと思います。ここで申し上げているのは、言うまでもなく、事業再生に対して、地域金融機関が主体的な役割を果たすことが期待されるわけですけれども、ただ、その一方で課題も多いわけで、単に金融機関の努力不足を指摘すれば事足れりというわけではおそらくないのだろうということです。すなわち第一に、そもそも事業再生が非常に手間暇のかかるビジネスですので、それなりのリターンが見込めないと金融機関としても、なかなか取り組みがたいだろう。したがって、こういったビジネスが成り立つためには、リスクとリターンのバランスがどれだけとれるようになるかということが、1つのキーポイントになるでしょうということです。

それから、もう一つとして、冒頭、最近の中小企業の低迷は売り上げの低迷が主因だと申し上げましたけれども、そうだとすると、金融機関が主導するリストラは、財務、あるいはコスト構造での問題であれば比較的やりやすいのですが、売り上げを伸ばすというのは、ビジネスそのものですので、なかなか金融機関が主導してというのは難しい側面があるだろうということを指摘しております。要は、かなり高度な仕事が必要となるわけで、そういった高度な仕事をあらゆる金融機関ができると期待するのもおそらく非現実的だろうということで、そういったコンサルティング機能を自ら発揮するような取り組みをする金融機関がある一方で、外部機関との連携を模索するところもあるでしょうし、あるいはそういったことが自分たちは不得手だというのであれば、債権売却といったような対応をとる金融機関があってもよいのではないかという指摘をしております。

最後に26ページから28ページ、政府の役割について記しております。こちらも見出しだけ読み上げますと、危機対応からの脱却と市場の競争環境の整備、金融機関の取り組みに対する支援、それから政策効果の検証と官民対話の必要性ということで、こちらも基本的にはたたき台に沿っております。若干特徴的な点としては、2点ありまして、1つは危機対応からの脱却というのが、地域金融についてはあるのだろうということです。すなわち、この間、金融危機等もありまして、公的部門の役割が拡大してきました。信用保証ですとか、あるいは政府系金融機関による貸し出しということですけれども、これらについては、セーフティーネットとしての役割を果たすものであったと評価できる半面で、金融機関、あるいは企業サイドでのリストラクチャリングを遅らせるような側面もあったのではないかということで、今後は出口戦略の策定が大事になるでしょうということを述べております。この点は、今後の政府の施策に関する取り組みについても同じことが言えるかと思います。

2点目としては、政策効果の検証の必要性を指摘してございます。この審議会の場でも、金融機関において、データマイニング等の客観的な検証が重要という指摘があったわけですけれども、おそらく同じことは政策についても言えるだろうということで、この点はあえて指摘させていただきました。

以上です。

○吉野座長

小野委員、どうもありがとうございました。引き続きまして、大垣委員、どうぞ。

○大垣委員

31ページからでございますが、基本的には骨子のとおりにつくりましたが、何分骨子が問題指摘はあるのですが、何を書いていいかがよく……、細かく指示のないところもありましたので、指示のないところは私見に基づいて、ワーキング・グループのディスカッションを踏まえて書いております。全体の考え方としては、やはり我が国は課題先進国になっておるということで、いろいろな社会ニーズが個人向けに出てきている中で、これに新しい目で取り組んでいくことで、国民の金融に対する満足が図られる一方で、我が国が課題先進国であるがゆえに、そういうものに真摯にこたえていくことで、世界を逆に日本の金融機関がリードしていけるのではないかということが大きな流れとなっております。

31ページの中ではこれまで特に個人向けについては、“Do things right”という正しく物事をやるというところから、“Do the right things”と、むしろ“right things”をやるという方向へ向かっていかないといけない。そういうときに、おそらく規制ではうまくコントロールができないので、行政手法も変わっていかないといけないのではないか、ということでございます。全体の骨子に書かれていたことは3つあると思います。顧客目線でサービス提供を行う、それから販売本位の動きに対して何らかの手を打たないといけない。いかに個人顧客のお金をリスクマネーにつなげるかと、こういうことであったかと思います。この3つの流れに沿いながら、検討については冒頭にありますように、サービスの提供段階、開発の段階と販売の段階、それからこれを支援する情報提供という3つに分けて、整理をしていっております。

32ページでございますが、ここでは特にこれまでの開発は、どうしても解禁型といいますか、もともと海外にあるものを持ってきて、これをやっていいですよということで来たものが、やはりこれだけ社会が変わってきて、日本で初めてのことが起こっているという中では、顧客ニーズに対する仮説を立てて、これに対して、検証しながら、技術を使って、新しいものをつくって販売に結びつけていくというメーカー型の開発をやらないといけない。これをひとつ、マーケティングという言葉で読んでおりますが、こういうことはやったことがないので、どうしたらいいのかなということでございます。

33ページで指摘していることは、今までのところは似たようなものをとにかく持ち込まないといけない。そうすると、あまり差別化ができていない商品を持ち込みますから、収益率が低い。低いとやはり量を稼がないといけませんので、販売のほうに力が入ってしまうということで、腹を切っても、お客さんは満足しない。これが開発側のジレンマ。規制が厳しいので、規制は守るのですが、規制のないところについて言うと、販売が優先する。ダブルスタンダードがあるのではないか、こういうことを指摘しております。

個人向けのサービスにつきましては、これはなかなか難しいわけでございまして、国がどうこう言ったからできるようになるものではないと思います。もし何かできるとしたら、37ページの2.2.2で指摘をいたしましたように、大手の金融機関はコングロマリット化しておりまして、1人でいろいろなことができるようになると思いますが、地域金融機関が1社ごとに開発するということでは、なかなか大きな動きにはならないので、過渡的なところとしては、何か共同で開発をするような組織をつくっていく必要があるのではないか。

38ページでは、公的な主体にフロンティアの役割を果たしてもらって、クリティカルマスが出てくるような段階になったところで、民間として入っていくような、共同の対応が必要になるのではないかと、こういうようなことを言っております。そうはいいましても、それだけいっても何ともなりませんので、35、36、37にかけてですけれども、具体的にライフステージ別に、どんな顧客ニーズが出るのかについて、これは主として、ワーキング・グループでご議論のあった内容を踏まえて、まとめて、少し私自身のアイデアもつけ加えたということでございます。

販売につきましては、骨子の中でワーキング・グループでは非常に焦点が当たったという印象はあまりなかったのですが、やはりここをきちんとやらないといけないのではないのかという議論がありました。特に、販売を優先とした商品開発が行われるということについて、どうチェックをしていくか。これは非常に難しい問題でございますが、特に投信との関係では、新しい商品がつくられて、消えていくというようなところをどう対応するのかが問題になったかと思います。この辺については、なかなか難しい問題でありますが、41ページのところで少し規制をかけるアイデアについてご紹介した上で、一方で、やはり末端の担当の方のプロ意識を上げないといけないという意味では、今の担当者の位置づけが少し販売優先をしやすい仕組みになっているので、これをもう少しプロ化していくためのアイデアを幾つか提案をいたしております。

リスクマネーの対応については、むしろ個人について、そういうものを今の環境で誘導することは適切ではないかもしれない。一方で、金額を限れば、むしろリスクをとらせてもいいのではないかというポイントですとか、あるいは1つ紹介のございました小口のリスクマネーを匿名組合のような形で呼び込むというようなこと。もう1つ供給いたしましたのは、預金で個人の金を集めた間接金融機関自身がもう少し積極的な役割を果たしやすいような環境整備をしていくことが必要なのではないかということを、この中で書いております。

少し具体的な話として、保険の代理店、乗り合い代理店の強化も「報告書の構成」の項目に入ってございましたので、その辺のところをどういうふうに改善していけばいいかについて、少し具体的な提案をしたところでございます。

私からは以上でございます。

○吉野座長

大垣委員、どうもありがとうございました。

3人の委員の先生方、短期間の間にバックグラウンド・ペーパーをどうもありがとうございました。皆様からご質問、あるいはご意見をいただきたいと思います。30分ぐらい……、では、大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。非常におもしろいレポートをまとめていただいたことは、大変すばらしいと思うのですが、ちょっと確認を改めてしたいのです。これは、報告書をいわば起草するための参考資料という位置づけなのだろうと思うのですが、ということであれば、当然、ワーキング・グループで議論された内容がここに集約されているものでなければいけないと思うのです。しかし、先ほどのご説明でも、私見も入っていますというご説明もあったのですけれども、全く初めて見るような内容がかなり断定的に入っているようなところも多々ございましてですね。

○吉野座長

そこは、ちょっとご説明させていただきたいと思います。バックグラウンド・ペーパーはひとつ我々が議論した内容に沿って、お願いした部分と、それからあと議論されていなくても、ご自分の委員として出していただく部分がございまして、報告書のほうは後で、ご説明いたしますけれども、第1章、第2章という素案の形になっておりますので、そちらのほうは皆様で議論していただくという形になります。

○大崎委員

ということは、このペーパーはすべて3人の委員の方のそれぞれの私見であるということでよろしいのですか。

○吉野座長

それで結構です。私見と、それからこれまでの議論を踏まえた形のものでありまして、これが報告書ではございません。

○大崎委員

はい。ありがとうございます。

○吉野座長

そういうふうにご理解いただきたいと思います。

篠原委員、どうぞ。

○篠原委員

それであるならば、報告書のたたき台、ドラフトがありますよね。これも全部終わったところで議論したほうが、よろしいのではないですか。分けて議論するよりも。

○吉野座長

そうしましょうか。もし、それのほうがよろしければ、そちらに行って、それから3人のご意見のも含めて、やったほうがよろしければ、要するに、それでよろしければ。それで、よろしいですか。もし、そちらのほうがよろしければ。では、そうしましょうか。

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、座長のご指示がございましたので、まとめて素案のほうをあわせて、ご説明させていただきます。まず、資料1-2。これは前回お配りしたたたき台でございますが、このうち第1章と第2章について、若干肉づけをしてみました。したがいまして、第3章、第4章はまだ存在しておりません。次回以降、ご議論いただきたいと思っております。

第1章でございますが、資料1-3-1でございます。分量が多うございますので、読み上げは割愛させていただきますが、ポイントをご説明させていただきたいと思います。まず、「はじめに」というところは、これまでの金融市場ないしは金融業の活性化に係る取り組み、政府ないしは金融審議会で行われたことを簡潔にまとめております。平成19年のいわゆる競争力強化プラン、それから21年の金融審議会の基本問題懇談会が触れられております。この中で、複線的な金融システムの構築の意義が確認される一方、「価値創造型の金融仲介の重要性」が強調されております。

22年には、新成長戦略を踏まえたアクションプランが金融庁において、公表されまして、ここにおきまして、金融の役割を「実体経済を支えること」及び「金融自身が成長産業として経済をリードすること」という2つが明確化されております。その後、大震災、欧州債務危機等がございましたが、政府における戦略が、日本再生の基本戦略で改めて確認、位置づけられまして、これを踏まえまして、この中におきまして、改めて官民連携による成長マネーの供給拡大、あるいは銀行・証券会社等の金融仲介機能の強化等が取り上げられてきているということです。こういった中で、審議会におきまして、金融業の一層の発展を図るための中長期的な課題がご議論されているということでございます。

第1章、新たな金融業に向けて、という仮題をつけさせていただいておりますが、ここは全体の流れのまとめ、ないしはバックグラウンドになるようなことをまず書かせていただいております。出だしは、先ほど申し上げましたように、金融業は、今日は実体経済を支え、かつ、それ自身が成長産業となることを求められているということでございます。これはとりもなおさず、顧客のニーズに的確にこたえ、差別化等を通じて、市場を創造していくということであろうかと思います。顧客に認められる価値を創造するということです。そのために何をすればよいかということですが、資金供給を、当然、金融は行うのですが、そこにとどまらず、より本質的にリスクを見きわめ、引き受け、あるいは移転するという金融本来の機能、それから情報を生産し、蓄積し、提供するという情報生産機能、こういったような自主的な機能をより一層活性化させていく必要があろうという大きな見方を示しております。

1ページ、おめくりください。我が国経済の新たなフェーズという題をつけさせていただいておりますが、国内外のマクロ的、あるいは構造的な状況をかいつまんで説明させていただいております。1は国内の状況でございますが、一言で申し上げられますのは、この1行にありますように、総需要が総供給を下回るデフレ・ギャップ状態。背景にありますのは、3行目ですが、人口減少を伴う少子高齢化などということです。一言で申しまして、供給力の過剰、需要の不足、それから東日本大震災等といったような状況です。これが実体経済上の問題で、これが資金循環面、銀行のバランスシートにどうあらわれるかということですと、これは金余り、資金余剰ということになります。とりわけ中小企業向け貸し出しに、そういう傾向がある。余ったお金はどこに行っているかということですが、これは国債投資に回されます。その結果、銀行部門においては、金利リスクが蓄積される一方、収益性は低迷する。こういう構造になっております。

ただ、これは見方を変えますと、ロにありますように、我が国経済が新たなフェーズ入りの門口に立っている。先ほど、課題先進国という言葉が出ておりましたが、そういう観点から見直すことができるのではないかということです。幾つかの新しい新産業の息吹ということですけれども、少子高齢化による高齢者向けのヘルスケア、あるいは人口減少は新たな街づくりを要請、環境意識の高まりに伴う再生エネルギーの可能性といったものが、可能性としてはあると思われます。こういった新たな可能性に対応していくという見方もあるのかもしれないということです。

翻ってみるということですが、我が国の供給力が過剰と先ほど申し上げました。平均的な企業や家計を想定した商品・サービスを供給する体制が、むしろ限界に来ている。いわゆる供給者主導の生産・販売体制の行き詰まりという面もあるのではないか。むしろ多様化した価値観のもとでは、真の顧客目線に立てば、潜在的な需要を掘り起こせる可能性が大きく広がっているという見方もできはしないかということでございます。

まとめ風に書いていますが、金融業においても、供給者主導ではなく、需要者主導の生産・販売体制の構築が求められている、ということです。

海外に目を転じますと、経済成長につきましては、一番下の行ですが、二極化しつつあると思います。欧米先進国は依然として低迷を続けておりますけれども、これに比較すると、相対的にアジア等の新興諸国が目覚ましい経済成長を遂げております。こうした中、我が国は長らく経常収支が黒字という状況で来ておるわけなのですけれども、真ん中あたりになりますが、2005年以降は貿易収支黒字よりもむしろ所得収支黒字のほうが大きくなってきている。これは、いわゆる成熟した債権国への道を歩み始めている。さらに申し上げれば、輸出一辺倒で稼ぐ貿易立国ではなく、金融・投資でも稼げる投資立国への脱皮ということであり、そういった形でアジア諸国の成長を日本国内へ取り込むという可能性があるのではないかということです。

投資と申しましても、直接投資と証券投資がある。ロに書いてございます。直接投資というのは、企業の海外進出そのものですし、証券投資というのは、日本の投資家が外国の金融商品に投資するということですが、いずれの局面におきましても、金融業の果たす役割があるのではないかという指摘でございます。

その次が、今度は金融業ではなくて、場としての金融市場の活性化という目線もあるのではないかとご議論いただきました。投資立国にふさわしい投資インフラを東京ないしは日本において育ていくことが必要であろう。一言で申し上げれば、1,400兆円に上る家計の金融資産、これが日本を中心に国内外へ出たり入ったりして、効率的に運用される、そういった強靭なインフラをつくっていく必要があろうかということでございます。

その次、(2)、今度は金融規制面に目を転じます。ここでも新たなひとつのフェーズがあろうかと思います。欧米先進諸国は、リーマンショック以降、安定性回復ということで規制強化の方向になべて動いているわけでございますが、我が国はそのフェーズはむしろ脱しておりまして、金融システムの安定が確保されている中で、もう一つ違う課題にチャレンジする状況。金融規制面でも一種のフロントランナーという位置づけもできるのではないかという趣旨のことを書かせていただいております。

次のページでございますが、具体的には、我が国金融機関レベルにおいても、リスク許容度、健全性は総じて高い。また投資銀行モデルよりも商業銀行モデルにある程度再評価が行われてきている。さらに円高という要因もございます。こういったことで、海外進出という可能性がひとつ出てきたのではないかということです。一言で申し上げますと、金融システムの安定性が確保されている中、金融機能の向上、あるいは活性化を目指した政策が可能になっている。

こういった状況、可能性を前に、では何をするべきかということが、(3)でございます。1としては、一言でまとめますと、金融円滑化、あるいは金融機能の向上・活性化というところに力点を置いた展開をすべきではないか。

2、間接金融、直接金融、貯蓄から投資についてご議論いただきましたが、貯蓄から投資ということ自体はもちろん結構なのですけれども、現状は貯蓄も投資も動員されなければならないという局面ではなかろうかという位置づけにしております。

3では具体的に、金融機関は何をすべきか。先ほども少し説明いたしましたが、資金供給の裏側にあるリスク変換機能、あるいは情報生産機能を総動員する必要があろうということです。

4は一番最初に戻ってまいるような話ですけれども、顧客目線に立った経営戦略。そのためには、多様性を踏まえて、選択と集中を実施し、それに向かった計画的、戦略的な展開が必要であろうということでございます。

以上、第2章以下で展開するアウトラインのようなことを頭出しで論じている部分です。

第2章に参りますが、第2章は先ほどいただきましたバックグラウンド・ペーパーなども参考にしつつ、我々なりにまとめてみたものでございます。

最初の部分は、また繰り返しになりますが、価値を創造する、成長を牽引する金融機関ということで、新たな需要を確実にとらえていく必要があろうということ。それから経済のグローバル化を踏まえた新たなグローバルな資産運用ビジネスの可能性にも対応していく必要があろうということをまとめて書いております。

この後、3つに大きく分けていくわけです。1つ目は、先ほど山田委員からもご紹介がありましたグローバルな展開についてでございますが、現状と認識ということで、一言申し上げますと、我が国企業の海外進出が本格化しておりますので、企業は我が国金融機関に国内並みのきめの細かい金融サービスを求めてきている。従来のようにM&Aとか大手企業が進出する際に必要な投資銀行的なビジネスだけではなく、さらにローカル化した際に、現地情報の提供、現地通貨での融資、こういったものをかなり強く求めてきている。

1は、これまでの経緯でございます。1990年代から2000年代まで。

2は、そういった形から何をしていくのかということで、資金供給面、それから次のページに参りますが、情報提供面、それぞれで金融機関が一体どういうことが期待されているのかということを書かせていただいております。

3に参りますと、今度はグローバルな企業が国際資本市場で資金調達を行ったり、国際的なM&Aを行ったりする際のネットワーク不足の問題を書かせていただいております。ここは投資銀行的な業務を念頭に置いております。

金融業としての取り組みの方向性です。試みに、外に向かってのグローバル化と内なるグローバル化の2つに分けてみました。外に向かってのグローバル化はここに書いております、「広がり」と「厚み」の2つのキーワードですが、我が国の企業の海外進出を踏まえて、それにふさわしい広がり、それから厚みを金融機関が持つことが期待されているということが書かれております。次のページの頭のほうまで書かれています。それぞれ銀行、証券、それから保険につきまして、例を挙げて書かせていただいております。それから、ロのところは日本の企業をサポートするだけではなくて、海外のローカル、非日系に対するサービスもそれなりに充実していって、さらにその先に真のグローバル・プレーヤーの可能性もあるのではないかということを書かせていただいております。

内なるグローバル化というのは、先ほども触れましたが、日本の金融市場、資本市場を活性化させていくという観点からの議論をさせていただいています。従来の金融資本市場活性化論を発展する形で、アジアとの連携といった点を強調して、書かせていただいているところでございます。

個々の金融機関が行うこと、課題は何かということで、3ページの下のほうは、まず強みを簡単にまとめさせていただいた上で、4ページの上のほうですが、他方以下はむしろ弱みといいますか、課題を簡単に書かせていただいて、これを克服するために何をするのかというのが、4ページ中ほどからでございます。先ほどもちらっと出ておりましたが、ロの国際展開の手法で、オーガニック戦略、ノンオーガニック戦略の2つがある。さらにノンオーガニックで行った場合、買収後の統合、PMIの問題もあろうということを問題として書かせていただいています。

いずれにしましても、外国人従業員が増えますので、日本の金融機関としてのアイデンティティーの問題が出てくるのではないか。一例ですと、社内言語の統一とか、現地経営陣のインセンティブをどう与えるのかといったような点がご議論されたかと思います。

こういった話は主要行だけではございませんで、いわゆる地域金融機関においても、海外進出を実行に移す中小企業が増えた以上、当然同じようなレベルで議論になっていくのであろうと思います。ただ、もちろん進出は大手行のようにはできませんので、大手行との連携、現地の地場銀行との提携、あるいは地方金融機関同士の連携、共同店舗等といったさまざまな形で展開していく必要があろうと思いますが、いずれにしても、やはり顧客目線や国際展開戦略に対する経営陣のコミットメントや人材といった同じような組織上の問題が出てくるでしょうということを述べさせていただいています。

ホの部分は、経営者のリーダーシップの重要性を強調しています。

ヘの部分は、商業銀行、投資銀行だけではなくて、保険、ノンバンク、さらにネットバンクにおいても海外展開を論じなくてはならないだろうということを簡単に記述させていただいております。

内なるグローバル化は、日本の金融市場の活性化ということですが、ここでは金融市場活性化ということから、いろいろ市場インフラ整備をこれまでも行ってきており、その結果、ある程度質の高い市場インフラが整備されるに至っているわけなのですが、しかしながら、結果から言って、活力のある、あるいはアジアの中核たる市場へ飛躍できる状態には依然としてなっていない、さらなる努力が必要かということを書かせていただいています。具体例として、総合的な取引所構想、あるいはアジア債券市場構想などにも触れさせていただいております。

以上がグローバルな展開ですが、次はローカルな展開でございますが、ローカルな展開につきましては、冒頭に述べましたように人口減少を背景とした経済の疲弊、実体経済の疲弊は、とりわけ地方、中小・零細企業において極めて厳しく、端的にあらわれてきているということで、実体経済面の対応も必要なのですが、金融面での貢献が非常に必要とされているということでございます。

6ページに参りますが、そういったことから担保、保証などに頼ることなく有望な案件について、リスク・テイクを行う、ほんとうの意味のリスク変換機能の発揮が期待されてきている。そのためには、当然、情報生産機能の裏打ちが必要でありましょう。その情報生産というのは、先ほどありましたように財務諸表を分析するという能力だけではなく、企業の将来的な事業リスクを見きわめる目きき能力という、もう一つ一段高い情報分析能力を意味しているのではないかということです。こういった観点からすると、地方、中小企業金融については、貯蓄か投資かという余裕はおそらくないのであって、両方が一生懸命頑張る必要があるというまとめになっております。

1につきましては、今申し上げた資金供給面、リスクマネーをどうやって供給するかということから、ベンチャーファンド、プライベート・エクイティ・ファンド、各種ファンド等の連携、あるいは金融機関自身によるリスクマネー供給の積極化、そういったものに触れさせていただいております。

情報生産機能につきましては、コンサルティング機能の充実ということでございますが、ここについても外部専門家の有効活用なども含め、レベルアップしていく必要があるということです。下のほうに、「産・学・金」連携により、新たな事業展開の可能性を発掘する試みは実例もございますし、今後、有望な取り組みであろうということです。

金融業として何をするかということなのですが、3つの方向性で、まず中小企業金融。非常に苦労している分野をさらに頑張る必要があるということですが、ハイリスク・ローリターンと、いわゆる中小企業、こういう中小企業について、これをハイリスク・ハイリターンな主体、ないしは逆にローリスク・ローリターンな主体、いずれかに転換させる必要があろうということが、7ページ頭でございます。そういった流れの中においては、もちろんお金を出すという有望な企業に対しては、中長期的な視点から資金供給を行うのですが、そうでない先については、事業再編、場合によっては、自主廃業へ円滑に導くというのも金融機関の役割ではないかということを書かせていただいています。

資金供給を仮にする場合は、いろいろな方法があるのですが、特に不動産担保に頼らない、リスクをとった融資の仕方の例として、エクイティ、あるいはエクイティ性貸し出し、あるいはABLがあるのではないか。さらに、DDSということで、昨年、資本性借入金の積極的な活用を促進する金融検査マニュアルの改正が行われているという点も触れております。さらに、今後の話ですが、電子債権という形での担保の取り方も中小企業にとっては非常に有効ではないかということです。

2つ目は、むしろ新たに生じつつある新産業、あるいは産業再編の動きを支援する新しいお金の供給の在り方で、医療・高齢者介護、環境・バイオ、農業という分野で考えられているということです。

次のページに参りますと、3は新たな街づくりといった公益事業の展開に対する資金提供の可能性になっております。コンパクトシティとかが入ってまいります。

(3)は、金融機関の課題です。今申し上げましたものを踏まえて、整理させていただいています。

課題克服に向けて、8ページ下からございますが、一筋縄ではいかないのですけれども、基本的には上に書いてございますが、経営判断の問題になりますし、地盤とする地域経済の動向や取引先企業の特性、さらには金融機関自身の比較優位が異なり、一律の解はあり得ないということで、各金融機関の創意工夫が当然必要であろうとした上で、しかしながら、多くの地域において、経済活動の停滞、営業基盤の低下が指摘されて久しいにもかかわらず、その解決の取り組みが着実に進展しているように見えないという事実もあるということですので、多少の努力が必要であろうということです。

努力の方向性としては、いろいろな組み合わせがあるのだろうと思いますが、1は人材・ノウハウ面、コンサルティング能力の強化です。

2つ目は、財務面。これは自己資本及び収益性の強化になります。

3は組織面で、可能性としてですけれども、イとして、統合・再編、ロとして、連携・提携の可能性に触れています。

4は地域金融機関の成長性・収益性の背景で、これは金融機関のガバナンス、内部ガバナンスに問題があるのではないかという見方を紹介させていただいております。やはりリスク・テイクといった観点から、もう少し企業文化を変えることも考えていく必要があるのではないかということを書かせていただいております。

個人向けのほうに話が参ります。まず、現状と認識ですけれども、1でマクロ的に申し上げますと、個人向けサービスというのは、いずれの業態におきましても、重要な収益源となりつつあるということに加えまして、1,400兆円に上る家計の金融資産、これは今でこそ1,400兆円ございますが、今後、減っていく可能性があるので、これを以下に有効に今、活用するかというのが重要であるということを改めて強調させていただいています。

目を転じまして、しかしながら、実際に運用する個人の側から見ても、金融仲介会社にはより質の高いサービスの提供が期待されているということを書かさせていただいております。個人の価値観は、少子高齢化などに伴い多様化しております。したがって、多様なサービスが求められているということを11ページの頭まで書かせていただいております。この点は、先ほどもちらっと出ておりましたが、課題先進国である日本がこれに対応できれば、少子高齢化は日本が最初ですから、その他の国、発展途上国を含めて同じような段階に何十年か先に必ず至るということですので、フロントランナーになる潜在性がある。

3は、複線的金融システムの、貯蓄から投資へというこれまでの政策についてのひとつの総括を行っております。金融仲介者の機能向上という観点から業規制、商品規制などさまざまな制度的改正、あるいは環境整備を行ってきておりまして、実際問題、多種多様な担い手が登場いたしてきておりまして、提供される金融サービスの商品の自由度も飛躍的に高まってきたということが言えるのだろうと思いますが、あくまでも結果なのでしょうけれども、貯蓄から投資へという大きな流れが実現されるに至っておりません。その大きな理由としては、次の段に書いてございますように、マクロ的に景気低迷、所得環境の悪化、公的年金制度の先行き不透明感がございますし、我が国家計の伝統的な安全志向、あるいはそもそも株が低迷しているといったようなことが多分大きいのだろうかと思います。ただ、他方において、仲介業者において、個人投資家の属性や世代の特性を踏まえて、きめの細かい、顧客目線に立った商品開発や販売に向けた努力が十分なされていないとの指摘もあるということをここに書かせていただいております。

(2)としまして、金融業における取り組みの方向性として、3つでございます。1つ目は今申し上げましたが、個人に対する金融サービスの努力です。次のページに参りますが、個人投資家の運用ニーズにどうこたえていくかということですが、これは多種多様な個人投資家がございますけれども、きめ細かく対応する必要があるということで、例えば若年層が何を求めているかということと、他方、シニア層が何を求めているか。それぞれ多分違うのでしょうけれども、そういったニーズにぴったり合った商品が提供されているかどうかという課題があろうかと思います。あと国民の金融リテラシーの話がもちろん出てくるわけなのですけれども、向上に向けた努力は不断に継続する必要があると思いますけれども、ある程度、個人リテラシーの不足を前提とした提供姿勢も必要ではないかということを書かせていただいています。

2つ目は、リスクマネーの転換の話でございます。ここでは機関投資家を通じたリスクマネーへの転換、あるいは逆にPEファンドやマイクロ投資といった新たな資金媒介経路を通じたリスクマネーの創出の可能性に触れております。

第3の方向は、生活者としての個人ということで、運用する個人とは限らず、むしろ例えば保険を買う個人、あるいはさまざまな信託、そういった金融サービスを受ける側の個人という立場の、そういったような形です。

金融機関として、何をすべきかということで、13ページから1、2、3と分けさせていただいておりますが、1つ目は資産運用者としての、個人に対しては、顧客目線でより丁寧に対応していく必要があろうということです。顧客目線という点にいたしますと、ここにちょっと書いてございます、販売手数料など顧客が負担するコストの構造が透明化されることも、顧客にとっては重要であろうということです。

2は、リスクマネーの転換です。機関投資家の資産運用の重要性で、ここに確定拠出年金制度が非常に低調であるということを書かせていただいております。

生活者に対する金融サービスについては、まず保険がございますけれども、保険につきましては、これまでの死亡保障を軸とした保険の在り方から、むしろ医療・介護、個人年金、こういったところに軸足が移っていっているのではないかということを書かせていただいています。同じように、いわゆるシニア層につきましては、流動性資金に乏しいということで、これに対応するためのリバース・モーゲージなどをはじめとした信託の可能性が触れられております。それから高齢者向けサービス以外にも、個人の金融サービス需要の多様化ということから、消費者ローンやカード・ローンへの需要もあるのではないか。

課題克服に向けてでございますが、これは先ほども若干指摘がございましたけれども、顧客目線重視のものへ、金融機関自身が転換していく必要があるということで、まず人材育成があろうかと思います。真ん中あたりに書いてございますが、いわゆる適合性原則を守りさえすればいいということではなく、顧客が求めているものを顧客サイドに立って、きちんと販売していくというような考え方もあるのではないかということでございますが、これは法令で何かを強制するというよりも、やはり金融機関自身が人事評価、社内教育の目的、あるいは業界の資格試験の位置づけという観点からのアプローチがあるのではないかという示唆でございます。それから、もちろん内部の意思決定プロセスの問題もございますし、さらに手数料など顧客が負担する費用構造の透明化も有効ではないかということでございます。

2は、一般投資家に対するリスクマネーの投資でございます。証券投資の在り方は、インデックス投資だけでよいのかという問題提起、それから確定拠出年金制度。次のページに参りますと、PEファンド、それから市民ファンドにも触れさせていただきました。

3は、顧客目線を考えてもらいますと、顧客側に立つアドバイザーというものを制度的にはある程度整備されているのですが、こういう業種をもっと育成していくという可能性、必要性もあるのではないか。独立系の金融仲介業者の育成を書かせていただいています。例としては、ファイナンシャル・プランナーですが、数は多いのですけれども、金融機関に専属しているプランナーの方が多いのではないかということを書かさせていただいています。産業構造が固定化することによって、現に高い営業力を持つ販売会社の意向が財やサービス開発過程に反映されやすくなり、この結果、顧客満足を維持することよりも、販売会社の手数料収益を短期的に拡大していくことが優先される傾向が生じ得るという指摘、こういうご議論もありまして、書かせていただいています。具体的には何かするかというよりも、まずこういった力関係と申しますか、運用・開発者と販売者の提携の在り方を見直していくという市場環境の整備が必要ではないかということを書かせていただいています。保険代理店、投資信託、保険会社、いずれも似たような部分があろうかと思います。特に保険の場合は、少子高齢化、人口減少が起きますと、かなり人手を使っての代理店、あるいは営業職員による販売形式もある程度見直していく必要があるのではないかということも少し書かせていただいております。

以上、あくまでも素案でございますが、説明させていただきました。

○吉野座長

黒澤課長、ありがとうございました。

素案の第2章はさまざまなご意見、それから一部バックグラウンド・ペーパーのご意見なども含めまして、全部入っておりますので、今日を含めまして3、4回、これから議論させていただきます。ただのたたき台という形でご認識いただいて、いろいろご意見をいただければと思います。どなたからでも結構でございますので、いかがでしょうか。

○大崎委員

すいません。私は個人向け金融サービスというところにわりと関心が……。

○吉野座長

ページ数を言っていただくと。

○大崎委員

そちらのほうで少し申し上げたいと思うのですが。こちらの報告書の素案でいきますと、10ページ以下でございますけれども、まずは漠とした指摘をさせていただきたいのです。ちょっと気になったのは、既存の業者による販売とかサービスの提供がいわば手数料をできるだけたくさん獲得するという目的に偏して行われているのではないかという疑問が非常に強く出ている一方、例えばPEファンドが確固たる地位を得ていないのは問題だとか、個人が共感できるプロジェクトへの少額投資をするマイクロ投資などということがうたわれていて、こちらのバックグラウンド・ペーパーではもう少し踏み込んで、例えば第二種金融商品取引業者による、そういったファンドの募集の取り扱いと書かれていますので、多分500名以上の投資家への販売だと思うのですが、というようなことも積極的に容認すべきだということが書かれているのです。この辺の現状認識と問題の立て方が何かあまりにも既存業者性悪説、新しくやる人に対する牧歌的な信頼が強過ぎるのではないかと。正直に言いまして、第一種金融商品取引業者が信頼できないというときに、第二種のほうがもっと信頼できるというのは、私はちょっとついていけないものを率直に感じます。

それから、バックグラウンド・ペーパーのほうで述べられていることに関してなのですが、これは先ほどのお話ですと、必ずしもこれはここでのコンセンサスではないということでありますが、結構、商品開発法人という概念とか、あと金融機関の人たちを独立性を高めるために金融業界から基金拠出を求めて、中立的エージェントを育成する非営利法人の設立とか、かなり大胆で、こういっては何ですが、若干現実性に欠けたような提案が書かれている。やはりこれは公表されるときは今のような形ではなくて、例えば「我が国金融業の企業向け金融サービス(グローバルな展開)」というのを表題にして、この下に山田委員のお名前を書いていただいて、個人として書かれた論文であるというふうにしていただかないと。このペーパーは、各回でいろいろなプレゼンテーションが行われたのとほぼ同質のものではないかと私は思うのです。つまり、全く個人的な見解を述べられているという。こういう形ですと、少なくともワーキング・グループの委託を受けて、ある程度、みんなのコンセンサスを文章化したと受け取られてしまうのではないかと危惧する次第です。すいません。長くなりまして。

○吉野座長

報告の仕方については、また考えさせていただきます。ご意見、どうもありがとうございました。今のに関して、何か山田委員、ございますか。失礼しました。大垣委員。

○大垣委員

言いわけをすればですね。

○大崎委員

すいません。大垣さんにけんかを売っているつもりは全然ないんです。

○大垣委員

個人金融のところは率直なところ、ワーキング・グループでものすごく深く議論をされたかというと、わりと数的には少なかったということもありまして、その中で、骨子はかなり意欲的な骨子になっていました。それから、保険について申し上げれば、おそらくワーキング・グループではほとんど話題にならなかったと思いますが、スペシフィックに入ってまいりましたし、そういう中では、骨子の内容を満たすために個人的にまず書かせていただいたことがあるのは、事実だと思います。そこら辺はやはりワーキング・グループの回数も限られている中で、すべての論点が取り扱われておりませんので、おそらく扱わなかったから、困るじゃないかというよりは、逆に扱わなかったところについては今後、ご議論をいただくということではないかと思うのです。

もう1点、現実性がないとおっしゃったところはあえて書いておりまして、それはなぜかというと、これは大崎さんが一番よくおわかりだと思います。顧客目線でほんとうにニーズのあるような商品を各金融機関がつくるようにしようねとか、おじいちゃん、おばあちゃんのニーズをちゃんと酌んで、きちんと販売をしていけるようにしようというのは、それは当たり前のことではあります。それを国のレベルで、どういうふうにしていけばいいのかということを書けと言われました。これは非常に難しい話で、おそらく間違いなく規制で何とかなる話ではありませんので、一言で言えば、人材とか経営の問題をちゃんとやるしかない、で終わってしまうものですから。そういう中で、少し懸念をしておりますのは、各地域の地銀さんとか地域金融機関が例えばメガバンクと同じ土俵で、こういう問題に対応していこうと思ったときに、果たしてリソースが十分に大手銀行と匹敵するだけのものをお持ちであろうかとかいうようなことを考えてまいりますと、やはり規制の強い業種でございますから、規模的にも巨大なものから小さいものまである中で、こういうペーパーで、さあ、やりなさい、と言われても、できるところとできないところがあるだろうし、やろうと思っても、なかなか限界のあるところがあるとすると、そういうところこそ、国がフォーローするということがあるんじゃないか。

非現実的と言われましたが、例えば地方銀行の方々が全体として、共同で商品開発をするということはこれまで必ずしも行われているとは思いませんし、そういうようなところをもっとせっかくであれば、少し支援をしながら、逆に役所としてもこういう方向でやってくれれば、規制的にはこういうことになるよということをクイックに働きかけて、これは開発の立場からすると、非常に効果があると思いましたので、大変難しい課題の中でひとつのアイデアとして書かせていただいております。笑止ということであれば、もう無視していただいてよろしいのですが、では、ほかに何があるのだと言われたときに難しいと私は思いますので、ぜひここのワーキング・グループの皆さんでもっと現実性のある、ここで書かれておる目的を達するのに現実性のあるご提案をぜひ具体的になさっていただいたら、よろしいのではないかと思います。

同様に販売につきましても、現在はすべて販売会社というのは本体の代理店の形をとっているわけでありますから、基本的には売る側のエージェントであるわけであります。そういう中で、顧客エージェントであれと言われても、立て方として限界がございます。これを理想論でいろいろ言ってみたところで、なかなか変わるものではないし、これも規制で何とかなるものでもない。例えばですけれども、ある程度ご経験のあるような方、これから大変たくさんの方々が退職をしていかれるわけでありますから、ご経験をお持ちになっているような方が、今度は会社のためにというよりは、お客のために年金プラスアルファで、例えば丁寧な販売をしていくというようなことがあった場合に、現在はそういう個人代理店を必ずしも置けるような構造になっておりませんし、そういうようなものを拙速に導入して、うまくいくという保証もありません。例えばですが、そういうような方々を職員として雇用するけれども、そこができるだけたくさんの金融機関と相乗りをして、たくさんの商品の中から、お客さんに必要なものを職員として販売していくようなこともひとつの例かもしれない。

これも単にたたき台として書いただけでございまして、ぜひ今後のワーキング・グループの中で、よりよい現実性のある、どうやったら末端の販売員の方が今月の数字とか今月の推奨銘柄というようなものから一歩離れてお客さんのことを考えて、お客さんに必要な商品を売っていくようになるのか。これもワーキング・グループの皆さんで、これは私の笑止、非現実的アイデアにしかすぎませんので、ぜひ検討に値する現実的なアイデアをご提案いただいたらと思います。

以上でございます。

○吉野座長

大垣委員、どうもありがとうございました。

先ほどの大崎委員の第一種、第二種のところは、書き方を気をつけたいと思います。そのとおりだと思います。それから、大崎委員、もし顧客の目線で商品販売をできるようにするには、何かいいご提案があれば、ちょっと教えていただきたいのですが。

○大崎委員

私は実は……。こういう場で言うのは、あまりよくないのかもしれませんけれども、いい提案は顧客による選択に任せるということだと思うのです。つまり、先ほど大垣委員が、全部販売者はエージェントだから、顧客の立場に立てないのだとおっしゃったけれども、その販売者同士が競争していけば、より顧客に近い販売者が生き残るはずであって、そうでない販売者は長期的には淘汰されていくわけですから。ですから、顧客側代理人という者が存在しないから、適切でない販売者が長く生き延びるというのは、ちょっとおかしいのではないかなと思う次第です。

それから、もう一つはすごく気になるのは、非営利ということがひとつのキーワードになってしまって、いろいろな調整のための仕組みをつくるという話にどうしても行きがちになっているのかなという気がするのです。それは、私は無用なコストを課すだけではないかと思っております。こういったことも、例えば地銀さん同士で、共同の商品開発をすることが、都銀への対抗上いいということになれば、そういうことをされるはずです。だから、してはいけないという規制を設けることは、私は絶対反対ですけれども、それをだれかがさせなくてはいけないという考え方もどうなのかなと正直思います。

○吉野座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。大垣委員、どうぞ。

○大垣委員

簡単に。それは、大賛成なのですが、どうもワーキング・グループの今回の会話の空気というのを感じておりまして、そういう中でおっしゃっているようなことで、レッセフェールでいかない、何か雰囲気があるねというのが、委員の皆さんに共有されていたと私は思っていまして、そういう中では少し誘導してあげないといけないのだろうか。それから、代理店同士の戦いがあるのは間違いないことでございまして、非営利のところで申し上げているのは、むしろある程度勤め上げた方がリタイアされて、全く縁が切れるのではなくて、そういう方々のご経験をもう1回使うための枠組みはもう雇用ができないわけなのだから、そういうところを取り込んでいくということがあってもいいのではないか。あくまで補完的な立場で考えておりますので、そこはもし誤解するような書き方をしているとすれば、補足させていただきたいと思います。

○吉野座長

ありがとうございます。

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

お二方の間で、激しい議論が続いておりまして、そこに入っていくのはなかなかためらうものではありますが、私から3つ感じましたことをお話しさせていただきたいと思います。

まず第一に、大崎委員が、一種は既存の業者が信じられなくて、二種のほうがといいますか……、これから出てくるようなところに対して、牧歌的な信頼があっていいのかというご指摘に関しては、私も同様の素朴な疑問を持っております。その強い懸念を酌んでいただいて、たしか報告書の中に健全なという言葉を入れていただいたのですけれども、この健全なという言葉は私の懸念を強く酌んでいただいた結果だと思うのです。一方でこうやって読んでみると、健全なという言葉は非常に価値観を含んでいる言葉であり、もう少しもっといい工夫がないものか。私が心配しておりますのは、詐欺的な事件が大変多く起こっておりますので、そういったことへの懸念というものが前提にありますが、やはりこの部分をもう少し健全なという言葉と違う言葉に置きかえていただきたい。私はなかなかいい言葉が思い浮かばないのですけれども、知恵のある方からよりよい言葉を探していただけたらなと思っております。

一方で、やはり先ほど大崎委員が言われたような、新しく出てくるようなところに牧歌的な信頼を与えていいのかというところは大前提として、懸念として持っておりますので、その点はよろしくお願いしたいと思います。

それから、2番目といたしまして、私は大垣委員のまとめていただいた内容に関しては、実は共感できるところも大変多うございまして、残念だったのはワーキング・グループの途中の会のときに、このご提案をいただいていれば、もっと議論が出てきただろうにと思います。今からでも遅くはありませんので、大垣委員が幾つかご提示いただいた内容に関して、それぞれの委員がこの場か、あるいはこれからの会、あるいは持ち帰ってでもいいのですけれども、意見を述べて、共通になるところと、それから意見の分かれるところと分けて記載するということもあり得るのではないかと思っております。例えば情報に関するところは、全く今まで議論がされてきておりませんけれども、非常に重要なご指摘だと思っております。また手数料のことは、こちらにも書いてありますけれども、投信法の改正のワーキング・グループでも、ひとつの大きなテーマとして議論されていることですし、その前提としてのものとして非常に重要な部分だと思っておりますので、ぜひそのような形で、大垣委員のまとめられた内容のものを報告書に反映できるものがあるならばしていただけたら、よりよい提言になるのではないかと思っております。

3番目といたしまして、大垣委員は「プロフェッショナル・レスポンシビリティー」という言葉をお使いなっていまして、また報告書にもそれに準じたような表現がされておりまして、この点についてはやはり知識やスキルでは対応できない問題であり、またこれは個人的な質の問題になっていく問題だと思っておりますので、政府がこうしろというようなものではないと私も認識しております。

ただ、残念ながら、日本においてこの部分が育ってきていないということも事実でございます。先日、アメリカのアナリスト協会の日本の支部の方と意見交換をさせていただいたときに、アメリカのアナリスト協会の資格では、倫理だとか職業人としての行動規範についての部分がウエートとして、すごく高くあり、またそれは業界に対して求めるものではなく、一個人として、プロとして、こうあるべきということで、業界から独立した個人として求められるものであるとお話を伺いました。

聞くところによると、中国でも相当な受験者と合格者が出ているそうで、日本での合格者は少ないそうです。それはちょっと余計なのですが、個人的な質を育てていくというときに、そういった環境整備は必要で、書きぶりとして業界に期待するということではなく、個人として、そういうものを育てていくような何か支援というものが、これは業界から、政府からあるのかわかりませんけれども、何かそういう投げかけみたいなのはあってもいいのではないかなと思いました。

以上、大変長くなりましたけれども、まとめてみますと、3つでございます。また思いつきましたら、発言させていただきたいと思っております。以上でございます。

○吉野座長

ありがとうございました。

大垣委員、よろしいですか。

○大垣委員

1点だけ。最後の点については、全く同意でございまして、その中で少し今の販売員の試験の考え方とおっしゃっている流れと、ちょっとそごが出てきているので、その辺について検討の余地はあるかもしれない。それから、もう1個は私のペーパーの48ページで言えば、おっしゃっていることの裏腹としては個人の責任というのはやはり重くしないといけない。でも、逆に言うと、今月これを売らないといけないと言われているのだけれども、このおばあちゃんには、これはよくないので、こっちを売りましたというときに、その方が会社の中で不利益な取り扱いを受けないような配慮というのは、逆に日本の会社の場合は、かなりしてあげないと、なかなか独立した代理人は出てこない。そういうようなところだけ少し書かせていただいております。

○吉野座長

ありがとうございます。

では、小幡委員、それから川波委員。

○小幡委員

すいません。ちょっと補足なのですけれども、証券アナリストの試験、アメリカと日本と本質的にはすごく似ていると思っていまして、日本の証券アナリストの試験も倫理という科目も必要になっているので、そのこと自体はあまり変わらないのかなと思うので、やはり別の問題かなと思います。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

では、川波先生。それから犬飼委員。

○川波委員

山田委員にもう少しお考えを聞かせていただきたくて、質問します。

ペーパーの5、6、7、8ページあたりに国際業務のお話がございまして、大変興味深く読ませていただきました。この中で、日系か非日系かという分析をなさった件は大変おもしろいのですが、もう一つ、リテールかホールセールかという切り分けで見たときに、そこにどういう構造と申しますか、特徴が見えてくるのかということをもう少し敷衍して教えていただければと思うのです。と申しますのは、アジアというマーケットで見たときに、成長しておりますし、インフラ投資もあるし、そこにファイナンスも入っている。

いずれやはり中間層も厚くなってまいりますし、いろいろな自動車であるとか住宅であるとか、あるいは耐久消費財需要になってくるであろう。それは当然、そこにファイナンスのニーズが出てきて、リテールというニーズが出てくると思うのですけれども、将来的に我が国の金融機関の戦略の方向性ということから見たときに、ホールセールだけではなくて、リテールもという戦略が射程に入ってくるのかどうか。金融機関によって、それぞれさまざまだと思いますけれども、その辺どうお考えか。と申しますのは、素案の2章の例えば2ページの最後の行から3ページ目の初めあたりに、商業銀行業務にとっては、海外のリテールの領域に業容を広げていくことが大事だということが書かれていますので、その辺のことを踏まえて、委員の私見で結構でございますので、教えていただければと思います。

○吉野座長

山田委員、お願いいたします。

○山田委員

ありがとうございます。

この件に関しては、実態はこうなっています。貸し出しは非常に伸びています。日系、非日系比率は10年前も、5年前も、今も3対7です。だから、両方とも伸びている。つまり、アジアの成長をいろいろな意味で取り込んでいる。ただし、これはほとんどホールセールです。リテールで実際に日本の銀行は本格的に業務展開をしているのは、アメリカである大手銀行が地銀を持っていますけれども、そこだけです。具体的に言うと、三菱UFJが持っているユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアだけです。

アジアのリテール展開をどういうふうにやっていくかということなのですけれども、これはまさしくノンオーガニックとオーガニックの議論になって、つまり、ホールセールであれば現在の日本で培ったノウハウがある程度生かせる世界です。ところが、リテールになると、当然、その国々のいろいろな経済的な部分、文化的な部分、商慣行、いろいろ違いますが、なかなか入っていきづらい部分がある。実際のところ、アメリカの地銀を買収したのも、当然、ノンオーガニックで、ノウハウと時間を買うというやり方なのでしょう。

アジアなのですけれども、実態的に今何が起こっているかというと、実態的に日本の銀行がリテールをやっているのは、インドネシアの一部だけでして、これはインドネシアで自動車ファイナンスです。自動車が非常に売れています。それから二輪車ファイナンスです。これは実は日本の銀行のほかに、日本の商社が大変大きなオペレーションを既にジャカルタで持っておりまして、ある商社のインドネシアの子会社、既に11万人という大変大きな子会社を持っているぐらいやっております。ただ、最初からスタートしたのではなくて、現地の資本と組んでやっている話なのです。そのほか、例えば消費者金融とか新たな今後の展開も考えられるのですけれども、やはり地元の資本と組む必要があるという感じです。

問題はそこから先で、実際にアジアでどの程度のことができるのか。実際、日本の金融機関は、アジアでマジョリティーを持っている先はあまりないのです。これは幾つかあります。例えば中国やインドやインドネシアでは、ほとんど大手銀行は国有銀行で、なかなかそういうマーケットは入りづらいし、それから国によっては違いますけれども、国民感情とかいろいろなものがあります。したがって、今、日本の銀行あるいは金融機関がやっているのは、マイノリティー出資と言いまして、5%、10%、20%ぐらいから初めて、ノウハウを吸収していきながら、ほんとうにそこでリテールができるかとどうかを見きわめようとする段階です。これを進めていくと、ほんとうに自分でできるのか、あるいはどの程度経済的な効果があるのかという見きわめの段階なのです。

それから、もう一つは、アメリカとの最大の違いは、アメリカは税制とか会計が非常にしっかりしていまして、すべてが透明になっているので、買収しやすいのです。ところが、アジアではそういう部分がアメリカほどではない部分があるので、なかなか難しいところがある。したがって、基本的にはオーガニックで、アジアではオーガニックで、ホールセール中心、そして一部、ノンオーガニックでリテールの試みが始まったところだと、こうご理解いただければと思います。

○川波委員

ありがとうございます。

○山田委員

ありがとうございます。

○吉野座長

犬飼委員、どうぞ。

○犬飼委員

ありがとうございます。

素案なのですが、全体として大変読みごたえのある内容をつくっていただきまして、ありがとうございます。私から1点のみ、今気がつきましたことを申し上げます。個人向けのところで、顧客目線ということをお書きいただいて、そのとおりだなと思うことが多いのですが、実は、個人向け金融の非常に重要なインフラであります、いわゆる金融ADR制度、これについての記載が全くございません。私の理解では、金融商品取引法ができた後、金融ADRの問題について、金融庁に大変にご尽力をいただきまして、いわゆる一つの法律ではありませんけれども、一つ一つの金融関係の16の法律[業法]を書きかえるという、大変なご努力をされて、いわゆる金融ADR法ができまして、2010年から実質的にそれが施行されるという状況になっております。最初は、ヨーロッパ型のものにはなかなかならないということではあったのですけれども、各業態、業種ごとくくりの新しい金融ADR制度が、実際に立ち上がりまして、もちろんまだまだ課題は多いわけですが、一定の進展を見ていると理解をしております。

この金融ADR制度は、ただいまご議論をしていただいていることの非常に重要なインフラ、必要条件でもございますし、その辺について一定の前進が見られているというところについては、ぜひ記述の中に入れていただけるといいかと思っております。ちなみに、金融庁に事務局をしていただいて、定期的に、金融トラブル連絡調整協議会(金トラ協)も開催していただいておりますし、各民間の金融機関の方々もここ何年か大変にご尽力をしていただいていると思います。本件はあまり表側に出るような話ではなく、いわゆる裏方の話が多いものですから、あまり知られておりませんけれども、着実に制度としては進展を見せているというところは、ぜひ入れていただいたらいいのではないかと思いました。

以上です。

○吉野座長

どうもありがとうございました。入れさせていただきたいと思います。

後藤委員、それから太田委員。

○後藤委員

私が申し上げたいことは、1点でございまして、結論から申し上げますと、第1章、第2章だけ切り出してではなくて、やはり第3章、政府の役割も含めて、きちんとゆっくり議論する時間をいただければと思っております。と申しますのが、少なくとも、私自身は当初から感じている難しさではあるのですけれども、当ワーキング・グループの性格づけ、あるいは位置づけにかかわることだと思うのです。何か当ワーキング・グループというのは、個別具体的な規制とか政策の策定を目指すというものではおそらくないと理解しております。したがって、論点が例えば具体的なところ、特に金融機関ご自身のアクションにかかわる部分に入ってくると、先ほどの大垣委員と大崎委員のご議論ではないですけれども、レッセフェールに任せるべきなのか、それとも政策的に誘導すべきなのかという線引きにおいて、各委員ごとにかなり温度差が出てくるのではないかと感じております。

もし政策誘導すべきならば、3章の政府の役割のところで、きちんと引き取るべきですし、そうではないのであれば、レッセフェールでいくべきだということであれば、問題意識の提起にとどまるべきだと思います。おそらく現実的には、当ワーキング・グループにおいては、その両者のバランスをとって、報告書にまとめるということになるのだと思いますけれども、いずれにしましても、そういった全体のバランスをとるという意味においても3章まで含めて、一度きちんと全体を通した議論する時間をやはりゆっくり設けるべきではないかと考えております。

○吉野座長

ぜひ政府の役割については、ご意見をいただきたいと思いますので。

太田委員、いかがでしょうか。

○太田委員

2つお話ししたいと思います。1つは、総論のところの認識なのかもしれませんけれども、国際業務の充実ということが全体のトーンになっていますが、それは企業のニーズとしても、企業もそういう動きを加速しておりますので、全くそうだと思うのです。一方でその裏腹でやはり国内業務のリストラと言うんですかね、企業単位に言えば、場合によっては、企業そのものが立ち行かなくなるということが国内で起きてくると思うのです。ですから、そういうことに対する金融機関の役割、地域金融機関に関して書かれているような気がしますけれども、変化の時代には両面に対応していかないといけないことがあると思うのです。ですから、今、相対的には、比較的には健全なバランスシートが維持されているわけですけれども、場合によっては非常に重要な経営決断もしながら、国内のリストラに対応していく。一方で、国際業務に融資していくという2面を経営課題として負っているのではないかなと思います。それは企業がそうですから、金融機関もそうなのだろうと思います。

それから商業銀行モデルの中で資金決済について記述されている部分がありまして、これも企業のいろいろな方のニーズが非常に強いところなのです。海外に出て、クロスボーダーの資金決済業務というものが、日本の金融機関はどうも弱いのではないのかという意見が強くあります。欧米の一部の大手金融機関は既に多大なインフラ投資をして、決済インフラをつくっている。それに対して、今から日本の企業が、金融機関がそこに対応できるのだろうか。現実的な指摘もあります。ですから、そこのところの記述については、もう少し具体的に書いていただいたほうがいいのかなと思います。犬飼さんがご専門かもしれませんけれども、そういうふうに思います。

以上、2点です。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

国内に関しては事業再生とか一部書いていますけれども、今のご意見を踏まえて、よく対応させていただきたいと思います。犬飼先生、何かクロスボーダーとかに関して、コメントはございますか。

○犬飼委員

もし、必要でしたら、コメントを用意させていただきます。ポイントとしてはアジア債券市場構想についても既に言及いただいておりますし、全体の方向としては書いていただいているかなと思っておりますただ、今、太田さんがご指摘の件は、大変重要と思いますので、もしご参考にしていただけるのであれば、資料を別途用意します。

○吉野座長

そうですね。お願いいたします。

ほかにいかがでしょうか。篠原委員、どうぞ。

○篠原委員

素案の第2章の10ページの、先ほどからもちょっと議論に出ている個人向け金融サービスのところなのです。現状と認識の1の中で1,400兆円云々で、この金融資産をリスクマネーへと変換し、我が国経済の成長につなげていくのが、金融業の役割であると書いてあります。それは、それでそのとおりだと思います。方向、ベクトルはそうあるべきだと思います。一方、企業向けの中で、ハイリスク・ローリターンの現状からハイリスク・ハイリターンかローリスク・ローリターンへの流れのシフトの変更が必要ではないかということが、この中に書いてあります。これは個人向けについても同じことが言えるのではないかと思うのです。やはり、個人の立場からすれば、お年寄りなどはローリスク・ローリターンでもいいよというお考えの方も結構いらっしゃるだろうと思うし、やはりハイリスク・ハイリターンで、おれは行くんだという方もいらっしゃるだろう。

この多様な選択を個人ができるような金融の在り方というものは、少しふわっと包含していかないと、ただリスクマネーへと変換するんだということで、金融機関がこれから押しつけていくような流れになるのは、大変まずいのではないかなと思っております。全く次元が違うけれども、休眠口座の問題でもこれだけ騒ぎになるわけですから、やはりその辺は日本の、欧米とは違う文化性、社会性、土壌というものを踏まえて、多様な選択ができるような流れにしていかないと、結構いろいろな問題が逆に起きてしまうのではないかと思います。リスクマネー、リスクマネーということで、あまり押し付けていくのはどうか。個人向けについてはですよ。その辺の書きぶりを少し工夫していただきたい、こう思います。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。秋池委員、どうぞ。

○秋池委員

素案の第2章なのですけれども、4ページですが、下から5行目です。(4)の1のハのところなのですけれども、こちらに書かれていることは、今後の金融機関が外国人の従業員が増えていったりですとか、それから経営陣にも外国人が参画することもあったりというようなことが書かれておりまして、最後の言葉、最終的には日本の金融機関という組織の在り方そのものが問われると書いてあるのです。これは、非常に本音のベースで書いていただいて、やはりこれから今までがよかった、悪かったということではなくて、大きな変化にさらされるということが明快に表現されているという意味においては、よろしいかと思うのです。もう一方で、世の中の方がこれをごらんになって、金融機関がすごくここに凝り固まっているというふうに見えてしまうのは、海外の方も目を通されることがあることを考えると、大変よくない印象を与えてしまうのではないかと懸念をしておりまして、ここはちょっと言葉の使い方を考えていただければと思います。と言いますのは、金融機関以外の産業では、こういったことが既に大きく動いている産業もありまして、そういった中をこちらに向かって積極的に足を踏み出しているところでありまして、金融機関も当然そういうマインドを持って、これからどうしようかと考えておられるところだと思いますので、こちらのご検討をお願いいたします。

それから、同じ資料の10ページなのですけれども、4のところです。前の章の最後だと思うのですが、こちらに地域の金融機関がなかなかリスクをとるような活動ができないということの背景が大変率直に表現されていまして、これはおそらく今まで、こういうような分析を明快に打ち出されたことはないのではないか、価値があると思っておるんです。もう一方で、そのアクションを半分より下ぐらいのところに書いてあるのですが、地域金融機関の経営者たちのイニシアチブにゆだねているという表現のように読み取れます。それ自体は、非常に重要なことだと思っているのですけれども、この報告書でどこまで踏み込むかというのはあるのですが、経営者が変わるということだけではなくて、やはり経営者がそうなってしまっていることに対して、何らか制度でありますとか、仕組みといったようなもので加速をしないと、やはり指摘をするにとどまってしまうのではないかと思っております。扱いについては、この報告書をどういったものにするかということにもよろうかと思うのですけれども、ちょっとそんなところが感じたところでございます。

○吉野座長

ありがとうございます。最初の4ページの、下から5行目のところは、例えば日本で活躍するとか、日本で活動する金融機関という言い方もあるかもしれませんので。それから、先ほどの10ページの経営者のリーダーシップ、経営判断、秋池委員のご感想で、どういうふうにしたらその方々のマインドを変えるという、もし、何かあれば、追加でお願いできれば。

○秋池委員

何らかやっぱり、目標値を立てるとか、何でも国主導ということではなくて、元来は経営者が考えていかなければいけないことだというのはよくわかっておる一方で、なかなかガバナンスがききにくいのが地域の金融機関なのではないかと思います。といいますのは、地域金融機関の株主さんというのは、実はお金を借りている先であったりすることもあったりして、お互いに内向きになってしまうような中で動けないというところもあろうかと思いますので、これがいいアイデアかどうか、今、たまたま思いついただけですが、何らか数量的な目標をつくりますとか、あるいはほかの金融機関で、地域のほかの金融機関で、このリスクをとって成功した事例を横で共有していく。そういう活動は既に行われているのかもしれませんが、自分が最初に超えていくというのはなかなか難しいので、背中を押すか、だれかが成功した事例を見るかというところではなかろうかと思います。

○吉野座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。家森先生、どうそ。

○家森委員

ありがとうございます。まず、WGのタイトルが中長期的な在り方ということですから、今回の報告書が、金融機関の中長期的な在り方を変えることを提言するのかどうかということがあるかと思うのです。ざっくり言うと、高度経済成長期は、資金需要にこたえるということが金融機関の大きな役割であって、資金不足の中でお金を融通することが重要だったわけですが、90年代になると、今度は不良債権の処理で、資金需要にこたえられないという状態が長く続いていた。それがようやく終わってきている今は、今度は資金需要にこたえたくても、金融機関の方々から言わせると、資金需要がないのだという状態になってきた中で、資金需要をつくり出していこうという形に行こうとしているわけです。お客さんを探すとか、見つけるだけではなくて、お客さんをつくっていかないといけないような状態になってきている。

これは、従来の金融論でいうと、銀商の商はコマースのほうですけれども、銀商分離的な発想からいったら、かなり禁じ手に近いところの議論ですが、こういうところに日本の金融機関が入っていくのが、もう中長期的な在り方として必要なのだと、この文書を読むとそう読めます。私自身、最近はそう考えているのですけれども、そういうふうに金融機関の在り方を大きく変えようということを含んでいるとすれば、思い切ってはっきり書くということもあり得るのかなと思いました。これはいろいろなご意見が、当然あって、とくに金融システムの安定性という観点で問題もあると思いますので、議論が必要であろうと思いました。

それからもう一つ、前日にいただいているこのバックグランウント・ペーパーで競争に関して2カ所書かれていまして、1つは33ページで、日本の金融機関の競争が、競争は激しいのだけれども価値を創造していないというご指摘が1つあり、他方で、26ページで、こちらのほうは競争が不十分なので、なかなか金融機関が顧客目線を持てないという指摘です。当然、経済学を勉強している者として、競争というのが人々のインセンティブを高めるのに重要であると考えているのですが、現状、この競争が、金融界の方々が激しい競争をされているのは私も聞いていてわかっているのですが、それが価値創造に向かってないという点が大きな問題であって、何かそこに踏み込めるようなことがあれば、よりいいかなと思いました。

○吉野座長

ありがとうございます。ご指摘のように、資金が足りなかった時期から資金過多になって、借り入れが少なくなっているというわけですけれども、そのときにそれを、銀行業、いわゆる商業銀行という形で対応していくのか、あるいは商業銀行の窓口を通じて、PEファンドとかそういうものを販売して、そちらの資金で対応していくかとか、さまざまなやり方があるような気がいたします。

それから、競争の場合も、同じことをやっていれば、需要が少なくなれば、競争が激化して、収益が下がってきてしまうわけですから、その中でこれまでバックグラウンド・ペーパーでもいろいろ言っていただいたように、多様性なり、そこで新しいものを見つけていかなければ競争の価値がないような気がいたしますので。

どうもありがとうございました。では、お隣の藤原委員、何かございますでしょうか。

○藤原委員

ほかの方たちが質問してくださったので、ダブるといけないと思って今日は聞いております。

○吉野座長

そうですか。

○藤原委員

1つだけ。

○吉野座長

それでは、1つだけ。はい。

○藤原委員

ちょっと 外れるのではないかと思ってためらいがありますが、競争は激しいものの価値を生んでいない1つの原因は、多分地銀の場合、銀行の数が多すぎるのではないかと思うんです。私、このことを今回のワーキング・グループで扱うべきかどうかわからなくて、ちょっとその辺をためらっていたのですけれども、今、私の隣の家森委員が話していました。価値を生まない原因の1つはオーバーバンキングで、この話は新しい話ではなくて、10年以上ずっと話されている。だから、その辺を何らかの形で触れるべきですかねというのが、座長への質問です。

○吉野座長

どうもありがとうございました。バックグラウンド・ペーパーの26ページの一番下のところ、今の関連ですけれども、小野委員に何かコメントがあれば、お答えいただけますでしょうか。家森先生のところと、今の藤原委員のところ。

○小野委員

はい。26ページをごらんいただきますと、「当ワーキング・グループでは、地域金融市場のあり方に関する詳細な検討は行っていない」とあるとおり、私は一応、毎回出席したつもりなのですけれども、そんなに突っ込んだ議論をここではしなかったと思うのです。統合再編については、確かに何人かのヒアリング先の先生方から、こんなふうな研究の流れになっていて、こういうコンセンサスがある程度得られているというお話はあったかと思うんですけれども、必ずしも統合再編でバラ色になるかというとそうでもない。メリットと課題がともにあって、それぞれをどう見るかという話になっていたかと思います。

そういう中で、競争についてどう位置づけるかというのは、先ほど後藤さんなり、あるいは大崎さんがおっしゃっていた論点に行き着くと思うのです。つまり、競争はやっているのだけれども、価値をあまり生んでいるようにみえない現状に対して、何か行政誘導的なスタンスをここのワーキング・グループとしてするのか、それとも、そうじゃなくて、そこはやっぱりあくまでレッセフェールで、それぞれの事業者の創意工夫で切り拓いていくしかあり得ないと割り切ってしまうのかということだと思います。その点は、私自身、今回この起草を仰せつかって一番悩んだ点です。

私自身の今の結論は、当然、これは私の個人的な見解ということですけれども、このワーキング・グループとしては、あくまで参考になる材料を提供するという位置づけで、それぞれのいろいろな意見を併記すればいいのではないかと思っています。ただ、それは当然のことながら、金融機関に強制するような筋合いのものではないのだろうと理解しています。

○吉野座長

ありがとうございました。では、川波先生。

○川波委員

今まで出てない話で、例の所得収支の循環の話について感想を1点申し述べたいと思いますけれども、日本の国際収支の動向を見ますと、投資も、証券投資は債券投資がかなりウエートが高いのではないかと思うんです。しかも、欧米が中心だろうと思うのですね。この辺、もう少し多様化と申しますか、アメリカほどとはいかなくても、分散投資と申しますか、ポートフォリオ投資で株式にある程度ウエートを置いたようなパターンにシフトしていくということが1つの課題かなと。

それから、収支のバランス。所得収支が今、確かに貿易収支、一時的に悪化ですけれども、それを補うほどの所得収支の黒字があるのですけれども、これは受け取りに対して支払いが非常に小さいということから来ている面があって、受け取りと同時に、支払いが少ないということは、日本への投資がそれほどないということだと思うのですね。ですから、投資をやはり増やして、日本に投資があり、そしてまた日本の貯蓄を海外に投資するという循環をつくらなければいけないという意味で、どこかに好循環という言葉があったと思うのですけれども、それは極めて重要なことではないかと思っております。

それから1点、言葉の使い方で、私が「おや」と思いましたのは、素案の第1章の3ページの第2段落、「こうした中」というのがあって、その第2段落の4行目から5行目、「輸出一辺倒で稼ぐ『貿易立国』ではなく、金融・投資でも稼げる『投資立国』へ」という表現があるのですけれども、この辺、確かに貿易収支、一時的に赤になっているのですけれども、やや一時的な要因があったりして、「『貿易立国』ではなく」と書かれると、何かそれ、捨てちゃったのかなと読まれかねない。確かに、いろいろな構造的な、少子高齢化の問題とか、先ほど課長がおっしゃったように、非常に大きなギャップがあって、大変なのですけれども、「貿易立国」ではなく、しかしその後に「金融・投資でも稼げる」と書いてあるので、その辺でややほっとするのですけれども、この辺の表現を、「貿易立国」をやめて「投資立国」に行くということではなくて、やや、もう少し慎重な書き方をしたほうがよろしいのではないかと、ちょっと感想めいたことですけれども、思いましたので。

○吉野座長

どうもありがとうございました。最後の「貿易立国」のことに関しては、ドイツ人というのはものすごく面白い考え方で、アングロサクソンというのは金融に特化していって、ですから非常に荒れるときに、ものすごく大きな打撃を受ける。ドイツが、一応ユーロの問題がありますけれども、ある程度安定しているのはやっぱり、コンスタントに貿易で稼いでいるからだと。だから、貿易は捨ててはいけないのだというのが彼らの考え方で、それは先生のおっしゃるとおりだと思います。

第1番目の、日本は債券投資が海外で多いというのはそのとおりでありまして、ただ、そのときに分散投資で株式で稼げるかという問題で、アングロサクソンと比べたら日本人が、どこまで相手の企業なりを見た情報を持っているかということになると思うんですね。ですから、ポートフォリオで稼ぐことは重要ですけれども、情報量の問題が、日本がやっぱり少ないような気がいたしまして。

○川波委員

簡単によろしいですか。おっしゃるとおりで、例えば米国の構造なんか見ていますと、直接投資やります。直接投資をやって、それが欧米、ヨーロッパや日本の直接投資を誘発して、そして直接投資した先が経済成長しますね。経済成長して黒字がたまってくると、それがまたアメリカに還流してくると。経済成長したところの株式に、アメリカは返ってきたマネーをまた投資するわけです。米国を中心とする世界的な金融仲介という構造をつくり出したと思うので、そういうアメリカほどまでにはいかなくても、アジアを中心としたマネーの循環をつくれないのかということを考えていたものですから、先ほどのようなことを申しました。

○吉野座長

おっしゃるとおりだと思うのですけれども、先週、ちょっと国連の会議があったのですけれども、私の学生が今、国連のUNESCAPというところにいるのですが、彼の話ですと、例えばモンゴルとかああいうところに対して、アメリカはもう最初から、法律から組んで、それで自分たちがやりやすいようなところをつくっていって、そこで投資をしてしまっているのですね。だから、やっぱりものすごい力で市場まで開放させながら、最後、自分たちがそこで情報をとれるということをやっていますから、やはり日本が株式投資する場合は、何か違った形での日系企業に関連したところですごく情報があるところで勝負するとか、そういうことが必要かなと、個人的ですけれども思います。

ありがとうございます。じゃ、川島委員どうぞ。

○川島委員

1点だけご検討いただきたいというのがあります。個人向けの金融サービスの中に、多様化する需要を充足するというのは非常に大きな課題だと記載がされております。その中で、借り手としての個人にかかわる記述が、もう少し補強いただけないのかなという気がしております。住宅ですとか、それにかかわるリバース・モーゲージですとかの記述はあるのですけれども、今回、第2章の素案の13ページの最後に、消費者ローンやカード・ローンのニーズが高まりつつあると、こうしたその他の個人の借り手としての商品を拡充させるということについて、今後、課題ですとか、克服に向けた施策、そうした展開をされる中で、内容についてもご検討を深めていただけたらと思います。

以上です。

○吉野座長

ありがとうございます。これは主に運用者としての個人が多かったので、借り手としての個人の部分を少し含めると。はい、ありがとうございます。

では、井潟委員、どうぞ。

○井潟委員

私のほうから2つほど、ちょっと細かい点なのですが。素案1-3-2の10ページ、一番最後の行に「安心して投資できる」とあります。また、13ページの上から3行目に「安心して内外の金融商品に投資し」という表現が記載されています。前回も似たようなことを申し上げたと思うのですが、金融資本市場の領域で安心という言葉の使い方というのは、非常に十分な留意を必要とするものではないのかなと。これは、ここにいらっしゃる方々はそれも大前提としているということだと思いますが、金商法の基本的な考え方としても、一般投資家には公平、公正に取引ができるような環境、土台、土俵が整備をきちんとされて、その上で投資商品の意味、あるいは仕組みというものを十分に本人が理解、納得し、自分の判断と責任で投資の可否を決める自己責任の原則が大前提となっているという点からすると、また、この報告書が広く読まれるということにかんがみますと、そういう基本的な自己責任の原則といったものについての記述あるいは確認があわせて行われないと、安心して投資、安心して資産運用という部分、この安心という言葉は元本保証にとらえられかねない懸念があるのではないかなという点が、少し細かいですけれども、感じた次第でございます。

それから、あと、14ページの一番下のほう、ここ、毎回、私が投資信託の普及においては非常な重要な役割を果たすということで申し上げている確定拠出ですが、これにつきましては、環境整備、啓蒙活動といったものの記述がされている点に関しては、非常に有意義な点ではないのかなと感じた次第です。従業員の昨今の企業年金をめぐる環境の中でも、従業員の受給権確保という点からも改めて注目されている。先週の、たしか衆議院の財務金融委員会でも、先生方のほうから、確定給付から確定拠出にもっと移行が促されるべきじゃないかというような質疑もあったと伺っているという点でも注目される部分ではないかと思っています。

なお、確定拠出年金の記述に「低調な」という表現がついているのですが、私がちょっと改めてデータを確認したところ、毎年大体50万人ずつ、加入者が増えている。一度も減ったことないですね。最近としては珍しい右上がりの制度です。昭和41年から始まっている厚生年金基金と比べると、引き続き、まだ相対的に規模は小さいわけですが、厚生年金基金が既にレガシーとかオブソリートと呼ばれて、一方的に毎年加入者数や事業者数を大幅に減らし減少しているという点にかんがみると、確定拠出年金は単純に低調というよりは、着実に増加しているとか、そういう前向きな表現で書いていただけるとありがたい。よりニュアンスが伝わるのではないのかなと思った次第でございます。

この2点でございます。

○吉野座長

ありがとうございます。10ページの一番下の「安心して投資できる」の場合、何という表現がよろしいでしょうか。

○井潟委員

そうですね。ちょっと私もボキャブラリーが少ないものですから。ただ、「安心して」という言葉が残るとしたら、先ほど申し上げたように、今、非常に私の足りない知恵で申し上げると、やっぱり自己責任原則ということも、この文章全体の中にどこにも記述がなかったと思いますので、それをあわせて書くという点が非常に重要ではないのかな、という気もいたしております。

○吉野座長

ありがとうございます。では、大崎委員、どうぞ。それから河野委員。

○大崎委員

「安心して」のかわりだったら、「信頼を置いて」とか、そういう言葉がいいのではないですかね。

○吉野座長

ありがとうございます。

○井潟委員

大崎さん、ありがとうございます。

○吉野座長

では、河野委員どうぞ。

○河野委員

すいません。今のお話の続き、やっぱり「信頼」というのもありますし、やっぱり「自己責任」という言葉も必要で、どうしても安心、安全というのを一体だれが保証してくれるのかというのは、ある種の透明性と、やはりこちらの判断力、あるいは透明性というのがちゃんと比較、検討できるようなものがきちんと出ている、理解できているというところに、よくリテラシーの話が出ますけれども、そういうことがないと、安全・安心と言われて、きっとゼロ金利で安全・安心と言われているのと同じような気分になってしまいますね。

すいません。それでちょっと、素案の第2章の1ページのところ、私個人の感覚でいきますと、一番上の1ブロックの中で下から3行目、「金融機関が、国境を越えていく個人及び企業の資金フローの動きを支援し」ということで、この金融機関とは、日本の金融機関がという意味なのかという疑問と、今のところ、個人が自己責任で国境を越えて外銀に預金をしようと思っても、とめられまくって絶対にお金を動かせないというか、自分が預けている銀行さんがなかなか出させてくれないというのが個人的な経験からの実感でして、これは非常に初歩的な質問ですけれども、個人がリテラシーを持っている場合には、そういうものを支援してくださると思っていていいのでしょうかとか、何かルールが変わるのでしょうかという妙な質問が1つなのですね。

それと、日本以外の、欧米を含めたところで見ると、銀行というんですか、バンクというのは、日本はやはりコストが……、前回もちょっとシステムと人件費のことを申し上げました。建物も含めて、あちらの場合は非常に、金利とか何とかは短期で動く、ある意味では連動して動くんですけれども、建屋なんていうのはほんとうに、何か非常に質素なところで、それをここの、先ほどのご説明の中で第2の、別のラインを走らせるほうがいいのかという意味合いなのかどうなのかというのも、ちょっとわからないんです。JAL、ANAさんの元の飛行機会社と、格安航空会社の比較じゃないですけれども、ちょっと日本の今までのつくりというか、コスト構造では、同じには戦えないだろうとは、はっきり思えるのです。

ちょっと、最初のところの、国境を越えていって、そこで、もちろんこれは、脱税をするという意味ではなくて、日本に税を納めるということでいいのですけれども、ちょっと現実が違っているので、何か変わったのかなと思って、申しわけございません。妙な質問……。

○吉野座長

私の認識としては、国内がだんだん疲弊してくれば、国内での金利収入、配当収入は少なくなってくるわけですから、そうすれば、アジアで成長するインドとか中国を抱えた日本というのは、投資機会というのはすごくあるのではないかと思うのですね。そこに対して、欧米の資金はすごく短期で流れて、アジアから収益率をすごく稼いでいる。日本の多くの資金は、欧米の国債へ流れているのが現状でありまして、最も低い金利で、安全ではあるのですけれども収益率が低い。ですから、日本の金融業が、アジアなどでもいろいろな情報を蓄えていただいて、それで我々のお金が全部グローバルに流れなくてはいけないというのではなくて、やっぱりその一部が、収益率が高いところに押されるということが必要ではないかなという気持ちでここは考えておりました。

ただ、今河野委員のご意見を踏まえて、少し考えたいと思います。

○河野委員

ええ。だから、個人の分も別に自由に、自己責任で……。

○吉野座長

自己責任でやるのはもちろんいいのだと思うのですね。

○河野委員

いいのですよね。

○吉野座長

ええ。

○河野委員

でも、日本の銀行さんは全部抑えまくっていますけどね。大体、それがルールなのかと。それが、金融庁さんからの、例えば指示なのかというふうな……。

○吉野座長

いや、そういうことはないと思いますけどね。

それから、もう一つ、全然違ったビジネスモデルになるのではないかと、例えば決済ですと、コンビニを通じて随分決済ができるようになりましたし、もうちょっとすると、モバイルバンクのように、携帯で全部やってくれるかもしれないですね。そうしますと、今までの店舗を構えてというところと違った競争が出てくるかもしれません。それはもうちょっと先のことですけれども。そうすると、違った業界、業態になってくる可能性はあるかもしれないと思いますけれども。

ありがとうございます。では、家森委員、どうぞ。

○家森委員

もう1点、今回の報告書がどこまでの範囲をカバーするか次第なんですが、我が国が少子高齢化していくということは、我が国金融業にとっての直面している大きな課題です。これから、特に地方圏で、人口が減っていく中で、金融サービスを適切に提供できるかどうかという問題が起こってくる可能性があります。これは吉野先生が今おっしゃったような、モバイルバンキングのような形で提供できる可能性ももちろんあるのですけれども、我が国の金融業の在り方を考える場合には、人口減少していく地域で金融サービスをどのように適切に提供していくかについても、この中で何らか議論しておくのが必要だろうと思います。

価値創造というところに限定すれば、少し違うかもしれませんけれども、この論点があるということを指摘しておきたいと思います。

○吉野座長

ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。大体皆様からご意見いただいたように思いますので、もう、今日はたたき台をお示しさせていただきまして、それの第1回目でございましたけれども、今後これを、今日いただきましたご意見も含めまして、それから、皆様委員の方々にもそれぞれ少し修正したいところ、直していただきたいところはもう少しお考えいただいて、またさらに、何回かこういう議論を繰り返させていただきたいと思っております。

それから、今日のご発言で足りなかったところ、おありになる方は書面で恐縮でございますけれども、事務局に1週間ぐらいの間にコメントを添えて、書面でいただければ幸いでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、企画課長、今後の予定についてお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

本日はご議論どうもありがとうございました。次回につきましては、また座長とご相談の上、また皆様方のご都合もお聞きしまして、4月の上旬という方向で今、考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○吉野座長

今日も活発な議論をどうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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