金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第14回)議事録

  • 1.日時:

    平成24年5月15日(火曜日)16時00分~17時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○黒澤総務企画局企画課長

それでは、ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をお願いいたします。資料は5種類ございますが、資料の1-1は「報告書の構成(たたき台)」で、以前からお配りしているものでございます。1-2は前回以降いただきました委員、オブザーバーの方々のコメントでございます。1-3が報告書の修正案でございます。1-4はその修正履歴つきのものでございます。資料2はメンバー名簿でございます。以上、よろしくお願いします。

○吉野座長

それでは、第14回目の我が国金融業の中長期的な在り方に関しますワーキング・グループを開催させていただきたいと思います。ご多用のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。第1回の会合でご了解いただいておりますように、今日も議事を公開させていただいておりますので、ご了承いただきたいと思います。

それでは早速、今日の議事に移らせていただきたいと思いますが、お手元にございますように、今日は報告書に関します皆様からの最終のご議論をいただければと思っております。前回の会合の後、書面によりまして、いろいろな方々から追加コメントをいただきました。それで、事務局と一緒に相談しながら改訂版を今日は作成させていただきました。できれば今日をもちまして皆様の意見を収束させまして、報告書に取りまとめたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

資料1-3をご覧いただきますと、「我が国金融業の中長期的な在り方について」、その下に「現状と展望」という副題がついております。本報告書は、本文にも記しましたように、我が国金融業が直面する現状を踏まえ、その中長期的な在り方の展望を中間的に取りまとめたものとの位置付けにして、今後とも、国内外の金融を取り巻く環境の変化等に応じ、金融審議会等においてさらに議論が行われることが期待されるところであります。

それでは早速でありますが、黒澤課長から、このたたき台につきまして説明していただきまして、それから皆様にご議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

企画課長でございます。

お手元の資料1-4、修正履歴つきのものに沿ってご説明させていただきたいと思います。まず全体を通じまして、細かい「てにをは」の部分は事務局で気がつく限り修正いたしております。それ以外の主だった修正につきまして、ご説明させていただきたいと思います。

まず、全体を通じて何カ所か出てくるものをまとめて最初に幾つかご説明しますと、1つ、前回ご議論いただきました「リスクマネー」という語についてでございますが、和製英語ではないかというご意見もあり、また意味がわからない、あるいは誤解させやすいというご議論をいただきました。我々で調べてみましたところ、金融審の報告書ではあまり使われていない用語であることもわかりましたので、無理に定義して使うまでもあるまいということで、今回は「リスクマネー」という用語はなるべく避けて、使わない、ないしは「成長のための資金」あるいは「新たな資金」とそれぞれの文脈に応じてふさわしい用語に置きかえるように努力いたしております。

それから、全体を通じて何カ所か出てくる修正として、家森委員から主に出てきたものですけれども、過疎化が進む中、地域経済における必要最小限の金融サービスを維持するという視点が、もう少しあったほうがいいのではないかということで、2章、3章で何カ所か関連の記述をつけ加えております。

以上が幾つか共通するものです。

それでは、個別の修正箇所についてご説明いたします。まず1ページでございますが、今、座長からご報告がございましたように、報告書の位置づけとして、現状を踏まえた展望を明らかにしております。なお書き以下の4行をつけ加えております。

2ページ目、上のほうでございますが、家森委員のコメントを踏まえて用語を正確にしております。2ページ目の下のほうは「リスクマネー」の用語の置きかえでございます。

3ページも同じでございます。

4ページ目でございますが、文章の整理、わかりにくいので読みやすくしたという趣旨でございます。その次は「リスクマネー」でございます。

5ページ目、文章の整理でございますが、「人材の育成」という言葉が2章以下、何度も出てくるのですが、1章で一度も出てこないということで、整合性を保つためにつけ加えております。次の5ですが、日本証券業協会からいただいたコメントを踏まえた訂正でございます。

2章に参りまして、8ページでございますが、投資銀行業務に係る記述を大幅に追加しております。これも日証協からのコメントでございます。

9ページの上のほうは「リスクマネー」でございます。真ん中あたりは文章の整理ですが、実質的な意味は変えていないつもりですが、文章の順番を少し入れかえて読みやすくいたしております。

10ページ目は同じく文章の整理でございますが、間違ったことが書いてあるわけではないのですが、あまり付加価値のないことが書いてあるので、短くするという趣旨から削除いたしております。

11ページは主に「リスクマネー」という用語のもの、最後のほうは文章の整理ということで、ややくどいところ、あるいは繰り返しになるところを、短くいたしております。

12ページに参ります。公共の担い手としてNPOを加えるべきではないかという、家森委員からのコメントでございます。

13ページの真ん中に参りますが、文章の整理、ここも若干長いということで短くいたしております。

14ページにありますものは、基本的にすべて「リスクマネー」に関連するものですが、3つ目の「リスクに見合った金利等を確保して」という部分、このあたりは名古屋銀行、第二地銀協からいただいたコメントを意識いたしております。もう1つは、文章の整理ということで読みやすくしております。

16ページに参ります。文章の整理で、上にあった2行を1の中に入れただけの直しでございます。「リスクマネー」のものがございます。

17ページの下のほうですが、これも文章の整理で、正確を期したということです。

18ページに参りまして、ここの部分は、前回、何人かの委員の方からコメントをいただきましたが、「個人による直接的なリスク・テイクに自ずから限界がある」ということをはっきり書くべきではないかということで、はっきり書いております。後段の、市民ファンドのところが若干記述が長くなっておりますが、これは場所を移動しただけでございまして、実は19ページにあった市民ファンドの記述をこちらに移しているだけでございます。

19ページに参りまして、たくさん直しが入っているように見えますが、すべてほかの場所に記述を移動させているものでございます。この部分は本来、金融機関の課題を書いているところですが、課題への対応に近い記述がたくさんございますので、かなりの部分を後ろに移動させたものでございます。19ページ真ん中の3の保険関係の記述は、あまり変わっておりません。それから4は先ほど申し上げましたが、「地域における生活者としての個人に対する金融サービスの確保」という課題を、4という新たな節を立てて記述しております。

20ページに参ります。これは文章の整理でございます。長たらしいということで短くしております。その次ですが、前回のご議論を踏まえまして、なぜ顧客への情報提供の透明性を向上させなければならないのかという理由をもうちょっとしっかり書くようにという、永沢委員からのコメントを踏まえております。2の部分も「リスクマネー」に関する記述を直しております。21ページも同様でございます。

21ページ、真ん中は、先ほど申し上げましたが、19ページにあったものをこちらに移動させたものが3でございます。4は文章を短縮化しております。

次のページに参ります。22ページ、上のほう、「顧客のライフプランの明確化を手助けしながら」は家森委員からのコメントでございます。次の信託銀行の記述は、信託協会からのコメントを踏まえております。5は主に文章の整理です。それから「また」以下の部分も、先ほどと同じように、基本的な金融サービスの確保という論点を、ここでさらに書いております。

第3章に参ります。第3章につきましては、前回、大崎委員ほかから、金融行政自体の転換というのは行き過ぎではないかという趣旨のコメントをいただきましたので、最初の部分はかなり抜本的に書き直しております。さらに後藤委員等からも、金融機能の安定が第一義の目的であり今後とも重要であるという点は、しっかり書くべきだということを、ここも書いております。その次の、「経済のインフラとなり、またその原動力の一つ」云々という部分は、信金協会からのコメントを踏まえて、若干ニュアンスを変えております。

次の段落「例えば」以下ですが、小野委員のコメントを踏まえまして、なぜ官民「共働」なのかという理由は、もうちょっと詳しく丁寧に書いたほうがいいのではないかということで、書いております。

24ページも同じような趣旨で、金融行政が大きく転換したのではなくて、新たに展開したということで、ベター・レギュレーションにつきましても、その発展ととらえているということでございます。

25ページに参ります。第1行目、「国際的な情報収集を行いつつ」は後藤委員のコメントを踏まえております。その次は、文章の整理ということで、正確を期してございます。

26ページでございますが、後段の部分は文章の整理で若干、短縮化を試みております。4の部分ですが、為替レートに関する記述をもう少し丁寧に説明しないとわかりにくいというコメント、後藤委員、小野委員からいただいております。それを踏まえました。その次は「リスクマネー」という用語の問題。

27ページも同じく「リスクマネー」という用語の問題が出てまいります。

28ページでございますが、4の(イ)ですが、「リスクマネー」という用語に加え、「また」以下のところは小野委員からのコメントですけれども、新たな担い手だけでなく、既存の担い手、預取金融機関の新規参入も書くべきだということで、書いております。(ロ)の部分につきましては、担い手の問題ではないのではないかという意見、その他、信金協会等からいただいております。削除という対応をしております。その次、(ハ)は文章の整理でございます。

29ページに参りまして、ニーズ、自分のニーズを顧客が認識できないというのはおかしいのではないかという、大崎委員の指摘、前回いただきました。少し正確に書き直しております。

30ページ、上のほうですが、同じく前回、大崎委員から、独立系が正当な販路を得ていないという言い方はおかしいのではないかということで、正確な書き方に直しております。(ニ)は、「その際、金融の公共性」云々は、先ほどと同じ、最小限の金融サービスの確保という視点です。それから(ホ)は、金融リテラシーの記述をもう少し書くべきではないかというご意見、篠原委員、川島委員等からもいただいております。1つ節を立てました。2でございますが、ファイナンシャル・プランナーにつきまして、特定の金融機関に所属しているファイナンシャル・プランナーに、あまり多くを期待すること自体が非現実的ではないかというご意見を、大崎委員からいただきましたので、この部分は割愛させていただきました。

31ページでございますが、「リスクマネー」という言葉を直しておりますのが、主な直しでございます。

32ページに参りますが、「今後の取組み」、第4章でございますが、今後の取り組みに当たって、官と民だけではなくサービス利用者、顧客も入れるべきではないかという、川島委員のご指摘を踏まえて、つけ加えております。

33ページ、アクションプランにつきましては、いろいろ現実的可能性等も踏まえつつ、慎重に検討する必要があるのではないかという、主にオブザーバーの方からいただいたコメントですが、そこら辺を加えてニュアンスを修正しております。

35ページ、「おわりに」でございますが、マクロ経済的に不透明な要素が多いという点を書き加えるべきだという、後藤委員のご指摘を加えております。それから「より広いライフプランの観点からアドバイスできる金融専門家」は、家森委員のご指摘を踏まえております。

36ページは「リスクマネー」の話が出てきまして、最後のところは、大崎委員ほかから出ておりましたけれども、基本的に各金融機関の経営戦略に基づいて、多様な展開があってしかるべきだということを、改めて確認すべきであるということで、こういう形でつけ加えております。

修正は以上でございます。

○吉野座長

黒澤課長、ありがとうございました。

それでは、ただいまの報告書のたたき台をもとに、1章ずつご議論いただきたいと思いますので、最初は資料1-4の1ページ目から3ページ目までで、何かお気づきの点、あるいは大きな点でも結構でございますが、ご意見はございますか。

ここは国内とか海外の経済社会の動向ですので、それほど議論がないかもしれませんけれども、いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。それでは、また後でお気づきになれば、後ほど出していただきますが、今度は6ページから、金融機関の在り方に関しましてですが、ここはわりあい長いですね。22ページまでが第2章でございます。いかがでしょうか。

では、家森委員、どうぞ。ページ数を言っていただいて、どこかを指摘していただければと思います。

○家森委員

1点だけあります。15ページから16ページにかけての、地域金融機関の収益性のところの記述で、特に16ページの上のほうで、これは名古屋銀行からもご指摘がありましたし、信用金庫協会からも関連して指摘があったわけですが、地域金融機関のガバナンスの問題として、地元企業との株式持合が問題である「可能性がある」との箇所です。可能性はあり得るのですけれども、逆に、例えば相互的な監視がきくということもあり得て、前回の協同組織金融機関のワーキングなどでは、地元企業との関係のメリットを指摘していたということもあるので、ここについては多少、私自身は違和感があります。可能性を否定するわけではないのですが、何かこれだけを読むと、これは悪いことで地元企業に株を放出させろみたいなことを言おうとしているように受け取られかねないので、そういうことではないことがわかるようにしていただきたいと思いました。

○吉野座長

ここの16ページの2行目のあたりの書き方は、株式会社の金融機関ということを指摘している部分もあると思いますので、地域密着型はちょっと違った形だと思いますので、家森先生のご意見も含めさせていただければと思います。ありがとうございます。

川波委員、どうぞ。

○川波委員

私は前回、欠席しましたので、意見を申し上げられなかったのですが、前々回までにこの場で申し上げた意見については随所に取り込んでくださって、大変ありがたいと思います。

1点だけ、今、吉野先生がおっしゃった箇所について、「内なるグローバル化」という話がございます。

資料1-4で申しますと、10ページの下のほう。それから2つ前の8ページの下にも「内なるグローバル化」という話がございます。

その中に、要するに東京市場の国際化の話が書かれているのですが、書きぶりとしてやや運用の場と申しますか、海外のマネーが東京市場で資金を運用する場としての、国際化の体制をどう整えるかという書きぶりになっているのですが、同時に、調達の場としての東京市場、これ自体はサムライ・ボンド以来、随分歴史があるのですけれども、国際化の体制を整えていくという意味が消えてしまわないように書けないだろうかと思います。

したがいまして、例えばその次の11ページのあたりに、どこかに「内外のプレーヤーや投資家を……」。

○吉野座長

11ページの5行目だと思います。

○川波委員

「内外のプレーヤーや投資家を惹きつけ続けられるような魅力的で強靭なインフラの整備も望まれる」という表現がございます。その辺に何か使いやすくてコストがかからないという意味合いの文言が入ると、そういう意味も含意できるかなと思いますので、何かその辺の表現をご工夫いただいたらよろしいのではないかと思います。

○吉野座長

工夫させていただきます。ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。

また後で戻っていただいても結構ですので、それでは3章で、23ページから31ページまでで、もしコメントがございましたらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

すみません、揚げ足取りのような指摘で恐縮ですけれども、修正履歴のある資料1-4の30ページ、下のほうの2ですが、「金融当局としては」以下のところで、2行目に「その太宗は」という言葉があります。おそらく大部分という意味で使っているのだと思うのですが、これは誤用だと思います。おそらく、「太宗」を辞書で調べていただくと、中国の皇帝の名前になると思います。「太い」ではなく「大きい」の「大宗」も、「大もと」という意味です。ですので、よくこういった文章で大部分という意味で「大宗」を使う文書をよくみかけるんですが、前からちょっと気になっていまして、本当に揚げ足取りのような指摘で恐縮ですけれども。

○吉野座長

ありがとうございます。少し「その多くは」とか「その大半は」とか、ちょっと考えたいと思います。

ほかにいかがでしょうか。篠原委員、どうぞ。

○篠原委員

30ページの今ご指摘のあった、ちょっと上の(ホ)の部分、金融リテラシー、金融教育を盛り込んでいただいて、大変ありがたいと思うのですけれども、もう少しめり張りをつけられないかと思います。この文章でいいのですが、この後の追加的な表現として、「特に初等・中等教育段階においては、この点を留意して、社会で生きる力を身につけさせる」。これは言葉としては抵抗のある方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私は社会で生きる力を身につけさせる、主権者教育だと思っているんです。「主権者教育の一環として位置づける」と。初等・中等段階の教育段階においてはですね。ここの「金融知識の技術的な習得にとどまることなく」というところですね。要するにマネー至上主義とか拝金主義みたいなものに陥らないようにということだと思うので、それを特に初等教育、中等教育段階において、特にこの点に配慮すべきだということを、もう少し、そこをつけ加える形でもいいのですが、強調していただくとありがたいなと思います。

○吉野座長

ありがとうございます。昔、おもしろい話がありまして、日本銀行の審議委員をやられた東大の植田先生が、中学校の社会科の教科書の中に金融の話を初めて入れたのです。そうしたら、一般の父兄の方からすごく文句が出たと。中学校で金融なんて、そんなお金のことを教えるのかと。それが10年以上前ですけれども、今は逆に篠原委員のように、そういうのはどんどんやっていくべきだと。私もそう思いますので、ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。

では、齋藤先生、どうぞ。

○齋藤委員

しばらく欠席が続いていたので、議論についていけていないところもあるのですが、24ページで直された、いわゆる官民「共働」の説明の部分がございます。その下の直されていない部分については、官民連携という言葉が使われている。さらに30ページにいくと、官民「共働」という括弧書きつきの話が出てくる。括弧書きつきの「共働」と、官民の連携という言葉に意味上の差異はあるのか、なしやというところをお伺いしたいと思いました。

○吉野座長

そんなにないですよね。私は共働も連携も同じ意味だと思っておりますけれども。

○齋藤委員

そうしたら用語はできるだけ統一したほうがよろしいのかなと思います。

○吉野座長

はい。ありがとうございます。

よろしければ、最後の第4章、32ページから、終わりまで含めますと37ページまでですが、いかがでしょうか。

では永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

先ほどご説明があったかもしれないですけれども、最後の34ページの箇条書きのところに、ここは「リスクマネー」が出てきておりますけれども、これはこのまま生きるということでよろしいでしょうか。2カ所あります。

○吉野座長

直し忘れだと思います。ありがとうございます。

○永沢委員

クリーン版では正しく直っていたように思ったのですが。失礼いたしました。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

よろしいでしょうか。ほかに何かありますか。

では、お願いいたします。

○犬飼委員

前回お休みして申しわけなかったのですが、私が出させていただきました決済に関するペーパーについても含めていただき、また金融ADR等についても含めていただいて、大変感謝しています。

それで1つだけ、結論はないのですが申し上げたいと思うのですけれども、先ほど川波先生もご指摘をされていらっしゃいましたが、修正履歴つきのページ10の、2「内なるグローバル化」のところ、それと8ページの同じく2の「内なるグローバル化」、8ページから9ページの上です。そして33ページの一番下の「内なるグローバル化」のところ。この「内なるグローバル化」は非常に重要なキーワードだと思っておりまして、その中身が何を中心に書いているかというと、「グローバルな資金循環の中核となるような市場」という言い方をしていただいていると思うのですが、もう少し内容的にここを充実させていただけないかなという感じが、今日改めて読んでみましていたしました。

具体的な文言を申し上げるわけではないのですけれども、例えば、資本市場の投資のみならず、貿易決済、人民元等も含むアジア通貨建ての調達運用等の短期資金オペレーション等も含んだ、オペレーションを行う場所としての東京あるいは日本という場所を、もっと充実させていく必要があると思うのですが、そういう意味からして、例えばロンドンではポンドやドル以外にも通貨のオペレーションが非常に自由にできる。香港やシンガポールでもある程度のものができるようになっているのに対して、円以外の通貨オペレーションの場所という意味では、日本はなかなかまだそこまで行っていない。このままほうっておくと、どうなるかという議論がいろいろありうるわけですけれども、例えば大手のみならず一般の日本企業もかなりグローバル化しているわけですが、その財務機能自体が「雲散霧消」してしまう。ちょっと極端に申し上げておりますが、円以外のオペレーションについては、財務機能が、例えばシンガポールに移る、香港に移るということまで考えなければいけないのではないかとか、いろいろな議論があると思います。いずれにしましても「内なるグローバル化」は非常に重要なポイントで、そのキーワードとして、せっかく「グローバルな資金循環の中核となるような市場」とまで言っていただいているのですから、そのもう一つ具体的な意義づけというか項目立てのようなものを、少しお考えいただけるとありがたいと思います。

○吉野座長

犬飼先生のお話は、26ページの上から5行目ですけれども、ここに2で、「アジア域内の現地通貨取引のように、欧米でも」という、このようなところに少し、今お話しの、決済の中でさまざまな通貨が利用できるようにというところで。

○犬飼委員

そうですね。ただいま、現在、人民元はそれほど利用できる通貨ではありませんけれども、これから5年、10年、20年ということを考えますと、ドルや円のようなより国際的に自由に使える通貨になってくることも、当然考えられるわけですし、そういう意味で言うと、東京の広義の金融資本市場の在り方というものは、投資であるとか証券決済のみならず、もう少し広い意味で考えていいのではないかと感じております。

○吉野座長

わかりました。決済のところも、いろいろな通貨で、それで日本の企業がそこと貿易取引しているのであれば、そういう通貨がきちんと使えるような制度にするということでよろしいでしょうか。

○犬飼委員

はい。申しわけないです。

○吉野座長

ありがとうございます。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

ちょっと戻ってしまうのですが、修正履歴のある資料1-4の28ページですが、4として、「リスク・テイク能力のある担い手の裾野を広げていく」ということで、(イ)(ロ)(ハ)とあって、(ロ)のところ、先ほど信金協会のコメントを踏まえて全部削除したということだったのですが、改めて読み直すと、(イ)にて、すそ野を広げる多様な担い手がいることは大事だという話は書いてあるのですが、そのために何をするのかという落としどころがないなという気がします。この章全体としては、政府の役割がテーマですので。

信金協会のコメントも拝見したのですが、ご趣旨としては、やみくもに商圏を広げるというようなバイアスをかけるべきではないということですので、その点は、私もそのとおりだと思います。ただ、他方で、それぞれ得手不得手の異なるいろいろな担い手がいる中で、連携を促す、ネットワークを拡充するという文言が(ロ)の中に入っていますが、その部分は残してもいいのではないでしょうか。マッチングのような話ですよね。当事者同士で連携を進めるなり、あるいは政府としてサポートするのが政策の役割だというまとめ方で、いいのではないかという気がしました。

○吉野座長

はい。信金の方々のコメントにあまり引きずられた感じがありましたので、少しここを、もとのところも入れさせていただきます。ありがとうございます。

ほかにございますか。齋藤先生、お先にどうぞ。

○齋藤委員

32ページの2段落目、「そのためには」から始まる段落の5行目です。「各金融機関が経営基盤を充実させることが重要である。組織面では、顧客ニーズに応じて、国内外に広域的に展開」と、ここでもやはり空間的に広げていくというニュアンスだけがどうも強いのかなと。むしろ地域金融機関においては、狭域的というか、定まった地域の中でリスク・テイク能力を高めていくという方向もあるわけですので、一方向の展開方向だけを示すのではなくて、多様な展開方向として提起するのが適当かなと思いました。

○吉野座長

はい。ありがとうございます。これも地域金融としての特色の部分を一つつけ加えさせていただきたいと思います。

ほかにございますか。

家森先生、どうぞ。

○家森委員

最後の、報告書の性格がどうしたものかということもあるかと思うのですけれども、結局これは第一義的には金融審議会として金融庁のほうへ、大臣へ返すことになると思うので、民間の方は多様な選択肢の中で選んでいただくということになると、この報告書が例えば、37ページの最後に、「取組みの指針になるものと期待される」と。この取り組むのはだれかというと、第一義的には一つは金融庁の政策において使っていただきたいということになろうかと思うので、例えば、「本報告の基本的な方向性は、金融監督や検査の実務に反映されることを望みます」というようなことを、我々としては書いてはいかがかなと思いました。共有するのに、まず官の中で共有していただきたいという趣旨です。

○吉野座長

わかりました。ありがとうございます。

ほかにございますか。

よろしいでしょうか。またお気づきの点が、ただいまの言っていただきましたコメントでよろしいようでしたら、皆様のご意見の今日ございましたものは、事務局と私が相談させていただきながら最後の報告書にまとめさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、少しまだ時間がありますので、せっかくですからオブザーバーの方々にも、ご意見、感想をお伺いできればと思いますので、まず、こちらのみずほフィナンシャルグループの泰松様いかがでしょうか。

○泰松みずほフィナンシャルグループ経営企画部参事役兼みずほ総合研究所調査本部金融調査部長

みずほフィナンシャルグループの泰松です。ご指名ですので、報告書に対する意見を申し上げます。

まず、本報告書が多数の有識者のヒアリングや委員の方の議論を踏まえてまとめられたことに、敬意を表したいと思います 。

報告書では、顧客目線の一層の重視、需要者ニーズをより的確にとらえた商品サービス体制の構築などの重要性が強調されたと理解しておりますが、これはすべての金融機関にとって共有し得るものだと考えております。その顧客目線の重視といった考えをベースに、個々の金融機関においては自社の強み、弱み、また経営資源・環境等を踏まえて、多種多様な戦略を策定、実行していくことで多様な需要を充足していくように、一層努力してまいりたいと考えております。

特に報告書2章で記述されました、企業向け金融サービスのローカルな展開について申し上げますと、昨今の地域の経済情勢を踏まえますと、経営不振企業の再生、再編、それへの取り組みが喫緊かつ重要性の高いものと考えております。金融システムの健全性の維持に配慮しつつ、それへの取り組みに一層注力してまいりたいと考えております。

また、本報告書ではまた中長期的な金融業の将来像が描かれたわけですが、こうした将来像について官民で共通の認識を深め、金融業の役割と金融機能、さらには金融行政と金融規制の在り方をともに考えていくことは、大変有意義なことだと考えております。報告書4章で記述されている、官民で行動規範を共有すること、またアクションプランを策定、共有することについては、今後、官民で意見を交換しながら進めていくことが重要だと考えております。

最後になりますけれども、今回まとめられた中長期的な在り方をいかに実現していくか、それに向けて今後とも知恵を絞ってまいりたいと考えております。

以上です。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

それではお隣の、第一生命の田口様、いかがでしょうか。

○田口第一生命調査部部長

オブザーバーの稲垣の代理で参加しております、第一生命の田口でございます。

昨年6月からの精力的なご審議によりまして、本日の報告を取りまとめていただいたことにつきまして、吉野座長をはじめとする関係者の方々に、まずもって深く感謝申し上げます。

今回の報告書では、国際競争力の強化などにつきまして、大変貴重なご提言をいただいたと認識してございます。例えばですが、金融機関のグローバル化に関しまして、報告書の第3章では、「金融当局は、金融機関と連携しながら、国際的な情報収集を行いつつ、現地当局に対し、障害となっている規制の改革を働きかけていく必要がある」ですとか、「国内の金融規制の制度や運用が、外国の規制との兼ね合いで海外展開の妨げとなる場合もあり得る。当該国内規制の目的と効果を十分勘案し、必要に応じ、その見直しが検討されるべきである」といったご提言をいただいております。まさに積極的な海外展開には官民共働の取り組みが成功のかぎを握ることも、しばしばあると認識しているところでございます。引き続きのご理解のほどをお願い申し上げます。

それから第2章ですが、保険に隣接した領域のさまざまなサービスなどの開発、提供の在り方についても、検討を行っていく必要があろうといったご提言もいただいております。この点ですが、先月の金融審議会総会でも、保険商品やサービスの提供などについて、新たな諮問がなされております。少子高齢化が本格的に進行し、国内市場が構造的に変化している中で、保険事業にはさらなる進化が求められていると、まさに認識してございます。多様化するお客様のニーズにおこたえするために、保険会社がどのような役割を担えばよいのか、またどのように期待されているかといったことを、このワーキング・グループと同様、将来を見据えた議論がなされることを期待しているところでございます。

以上、報告書についてご意見を申し上げましたが、このワーキング・グループでの検討内容ですとか、その背景を受けとめまして、事業環境の変化への課題に対してしっかりと対応してまいりたいと考えてございます。

以上でございます。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

では、こちら側にいきまして、東京海上日動の半田様、いかがでしょうか。

○半田東京海上日動火災保険経営企画部部長

半田でございます。

約1年間にわたりまして、このような貴重な場に参加する機会をいただきましたこと、まことにありがとうございます。また本取りまとめにつきまして、吉野座長はじめ、ご尽力いただきまして、まことにありがとうございました。

当業界からは、第2回の会合で、国際競争力といった観点からプレゼンの機会もちょうだいしておりましたが、昨年の保険ワーキング・グループでもお取りまとめいただきましたような、各種規制緩和を積極的に活用させていただきましたり、あるいは今回の報告書の内容も参考にさせていただきながら、より幅広く国内外のお客様のニーズにおこたえしてまいりたいと考えているところでございます。

また国民のニーズに見合った金融サービスの提供という点につきましても、金融審の総会におきまして、保険商品・サービスの提供の在り方が諮問されたところでございますが、業界としましても、報告書の第4章でお取りまとめいただきましたように、グローバル化に向けました官民共働の取り組みも参考に検討していかなければならないと考えておりますし、また募集関連のところでは、お客様からまだまだ募集文書等が多過ぎてわかりにくいというご意見も多く寄せられているところでございまして、このような点も含めまして、よりよい商品サービスの提供に向けて、今後展開される論議に積極的に参加してまいりたいと考えております。

どうもありがとうございました。

○吉野座長

ありがとうございます。

では、お隣の大和証券の大谷様、いかがでしょうか。

○大谷大和証券経営企画部担当部長

オブザーバーとして参加させていただきました、大和証券の大谷でございます。

本ワーキングにつきましては、外部環境を含めた現状分析と将来予測に基づきまして、我が国金融業の将来像を描いていくという、大変意欲的な取り組みであったと理解しておりまして、当ワーキングに参加させていただいたことを、大変ありがたく感謝いたします。

特に、報告書におきましては、従来の貯蓄から投資にとどまらず、投資立国あるいは成長資金といった、広がりのある文言が多用されていることもあり、金融業の将来について改めてその成長力を再認識するとともに、私ども証券業界としても重大な責務を担っているという思いを新たにしたところでございます。

またちょっと個人的な展開にはなりますけれども、事前に報告書案を何度か繰り返し読んでおりますと、産学金プラス官という軸から受ける具体的なイメージ等も相まって、やはり我が国には、資金、人材、情報というものが潜在的にまだ眠っている価値が大きいのではないかという認識を新たにしました。一方で、私どもが金融業としてそれらの価値を有機的に結びつけ、プラスアルファの価値創造を担う役割を本当に果たしているのかどうかという点で、個社レベルにおきましても、自問するに際して、本報告書が大変示唆に富むテキストになっているものと認識しております。

最後でございますが、私ども証券業界といたしまして、本報告書においては職業倫理、プロフェッショナル・レスポンシビリティーというものが、お客様との持続的な信頼関係を構築するに際して最も重要な課題であるという認識を持っておりまして、なかなか短期的に著しい効果を上げられるものではありませんけれども、業界を挙げまして、うまずたゆまず着実にレベルアップを図ってまいりたいと考えております。

雑感ではございますが、以上でございます。ありがとうございました。

○吉野座長

どうもありがとうございます。

ほかにオブザーバーの方でご意見はございますか。

では、日本銀行の梅森様、お願いいたします。

○梅森日本銀行企画局審議役

ご発言の機会をいただき、ありがとうございます。

まず、本報告書のような非常に論点が多岐にわたる、あるいは中長期的なパースペクティブを持った報告書を取りまとめられた、座長はじめ各委員、及び事務局の方々の労力に敬意を表したいと思います。

その上で、現在、我が国経済は、急速な高齢化のもとで趨勢的な成長力の低下という長期的、構造的な課題に直面しております。課題を克服し、新たな経済成長の基礎を築いていくためには、民間企業が付加価値の創造力を高め、外需の取り組みや内需の掘り起しを進めることが何よりも大事であると考えております。

こうした民間企業の前向きな活動を支えていくためには、政府の環境整備や民間金融機関の成長基盤強化に向けた取り組みも重要と考えます。本ワーキングの報告書は、金融機能の向上 ・活性化は、金融機関にとって、我が国経済の発展に貢献する任務であると同時に、みずからのビジネスチャンスでもあると位置づけ、積極的な取り組みを促しております。また政府に対しましても、環境整備と所要のサポートを求めています。こうした方向性は成長力の強化という我が国経済の課題克服にも沿ったものであり、今後は関係者が協力し、本ワーキング報告書で示された課題に着実に対応していくことが重要と考えます。

構造問題への対応において、日本銀行が金融政策でできることは、残念ながら多くはありません。しかしみずからに与えられた力を最大限活用し、2010年から成長基盤強化を支援するための資金供給を行っています。本資金供給は、最近では、小口や外貨建ての投融資も支援対象に取り組みまして、総額5.5兆円まで拡充してきております。日本銀行といたしましては、今後とも中央銀行としてなし得る貢献をしっかり果たしてまいりたいと考えております。

ありがとうございました。

○吉野座長

どうもありがとうございました。

何か最後に、委員の皆様から一言という方、おられますか。

よろしいでしょうか。それでは、これまで長い期間、委員の方々にご議論いただきまして、どうもありがとうございました。最初はどういう報告書になるのか、非常にお先が真っ暗でしたが、おかげさまで、どうにかまとまりました。やはり家森先生もおっしゃいましたように、金融行政はこれまでは規制とかそういうところに強かったと思うのですが、産業、金融業はやはりみんなで一緒に生かしていくと。それが地域、それからインターナショナルにしっかり見ていく。さらに利用者である個人のことを考えながら見ていく。これから高齢化が進むのであれば金融機関からは高齢化に対応する商品などももっと出てきていいような気がいたします。今日の非常に力強い皆様のコメントがございましたので、ここの数年後には日本の金融業が世界で勝てるように、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

長い間、ありがとうございました。この後、私から記者会見をさせていただきまして、今日の皆様のご議論を踏まえて発表させていただきたいと思います。

最後に、森本総務企画局長からお話をいただきたいと思います。

○森本総務企画局長

それでは、一言お礼の言葉を申し上げたいと思います。

本ワーキング・グループでは、「中長期的な在り方」という大変茫漠としたテーマが設定されました。委員の皆様には大変高いレベルで問題意識を共有していただいたと思います。その上で、長い期間にわたって熱心にご議論いただきまして、まずその点が大変ありがたかったと思っております。

そうした議論の結果、本日まとめられた報告書は大変示唆に富む内容になったと、私どもは受けとめております。テーマの性質上、もとよりこうやったら問題が解決できるといったクリアカットな内容にはなっていないと思いますが、現在、我が国の国内経済の状況や国際環境、その分析から発する我が国金融や金融行政は、このようにしてもらわなければ困るといった問題意識といいますか、危機感といいますか、それが大変よくあらわれた報告書になっているのではないかと思っております。そうした意味で、今までの金融審の審議、報告とは多少毛色が違ったものになっておりますが、報告書も大変長いですし、非常に重要な意義のあるものになったと考えております。

私どもといたしましては、この問題意識、危機感を受けとめて、対応していくのは、必ずしも容易ではないわけでありますが、関係者の皆さんと、まさに官民共働とか、いろいろな言葉が提言されておりますが、今後、取り組みを精いっぱいやっていきたいと思っております。その過程で、またいろいろな検討が必要になってくると考えておりますので、委員の皆様方には引き続き私どもに対してご指導をいただければと考えております。本当に長期間、ありがとうございました。

○吉野座長

それでは、以上をもちまして会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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