金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第1回)議事要旨

1.日時:

平成23年6月24日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

メンバーの紹介等

ワーキング・グループの進め方等について

自由討議

4.議事内容:

  • 冒頭、吉野座長より、ワーキング・グループの設立経緯について説明があり、続いて、事務局より、メンバー等の紹介、運営方法に関する説明があった。

  • 事務局・吉野座長からの説明の後、討議が行われた。

  • 討議の概要は以下の通り。

【我が国における金融業の国際競争力の強化】

  • 80年代、邦銀は株式時価総額ランキングで上位を独占していた。しかし、昨日時点の株価を前提にすると、日本のメガ3行は世界の20位、40位、42位に過ぎない。現在の最上位は中国の銀行だが、欧米の銀行に加え上位にはブラジル、ロシア、オーストラリア、カナダ、インドの銀行がランクインしている。邦銀の世界に占める地位が地滑り的に下落しているという厳しい現実を直視したうえで、金融機関がどのように変わるべきかに関して、地に足の着いた議論をしていく必要がある。例えば、地方の中小企業までが海外進出をしている中で、金融機関が十分なサポートを提供出来ているのかは疑問である。
  • 日本企業のROAが低いと事務局から説明があったが、海外子会社も含めた連結では高い収益率を達成している企業は多い。一方、日本の金融機関については、海外での存在感は乏しいと感じている。
  • 外国人投資家の目には、日本市場は、エマージング(新興)市場の反対のデマージング(没落)市場に映っている。彼らは、人口減少期に入った日本が痛みを伴う改革を避けていることに失望している。残念なことであるが、外国人投資家の中で日本株専門家の数は大きく減少している。
  • デマージング市場と呼ばれていることで委縮するのではなく、困難を突破してく気概を持って取り組んでいく必要がある。
  • 競争力を強化する為には、金融機関で働く人材の能力強化が必要である。
  • 日本の金融機関の弱みの一つとして、外国人を使いこなせる人材が少ないことがある。金融機関任せにしていてもそうした人材が増えない可能性があり、資格試験制度を導入するくらいのショックを与えないと状況は変わらないのではないか。
  • 国際機関等に勤務する日本人を見ると、十分に外国人スタッフを使いこなしており、なぜ金融機関ではそれが出来ていないのか。
  • 金融業の競争力を考える上では、我が国金融業を取り巻く諸条件を勘案した上で検討することが大切である。外資系金融機関は日本でのリテール業務に魅力を感じないと聞いたことがあるが、こうした背景に、日本のリテール業務の収益性が低いことなどが影響している可能性もある。
  • 新たに専門性の高いホールセール型金融機関を設けるべきである。
  • 日本でプロ向け債券市場が立ち上がったところだが、このアジア版を日本が主導して実現できないか。

【国民のニーズに合った金融サービスの提供】

  • 資料2-3の11頁に家計の金融資産に占める現預金の割合が過半を占めているとあったが、実物資産も含めた家計の資産全体に占める割合をみると、二割弱となっており、必ずしも家計の資産保有が預金に偏っていると言うことは出来ない。
  • デフレは、キャッシュの相対価値を高める。家計の金融資産が預金に偏っているとの批判があるが、個人は極めて合理的な資産選択をしていると考える。
  • 家計の金融資産に占める株式等の割合は、家計の平均で見た保有比率が低いだけでなく、株式を現在ないし過去に保有した経験がある個人に偏っている点も重要な事実である。
  • 米国では、家計は投信を直接保有するのみでなく、IRAや確定拠出などの年金制度の枠組みの中でも投信を組み込んでおり、これをも含めて考えると預金や直接株式で運用するよりも、投信で運用する方が多いのが実態である。我が国で個人の投資について、海外投資等も念頭に考えると、投資信託等のファンドを通じた投資が重要になるのではないか。
  • 資料2-5の5頁で、個人の株式運用成績が悪い原因は何か。このような状況をみると、個人の株式等での投資を増やすべきとは言いにくいのではないか。また、個人が株式投資で損をしている背景について、売り手の証券会社の問題なのか、個人の投資能力の問題なのか等を検証する必要があるのではないか。
  • 個人が退職金で投信等を購入する事例が増えているが、中南米債のようなハイイールドのものやデリバティブが組み込まれているものなどリスクの高いものもが多く買われているようで、心配に思う面がある。こうしたリスク性の高い資産を購入する行動は、個人投資家の金融に対する知識・能力に依るところもあるかもしれないが、販売会社の営業活動の結果ともいえるのではないか。日本の金融機関が国民の資産ニーズに応えるサービスを提供してきたのかを検証する上で、どのような商品を売り、その結果がどうなったのか、検証が必要ではないか。
  • 高齢化社会の下では、今後、例えば、個人の金融資産が減少を始めたり、高度成長期に地方から都市部に単身出てきた人達の親世代が亡くなり、相続により資産が地方から都市部に移ったりする可能性が考えられる。こうした過去に例のない金融資産のストックやフローの変化に対処していくには、これまでの延長線上にない検討が必要である。
  • 個人の資産運用の視点は大事であり、資産運用を通じて消費・経済の活性化を図ったり、正しい金融教育を普及することが重要である。
  • 若年層の資産形成については、投資型商品のみでなく住宅ローンや保険等も含めて考えるべきであり、彼らの資産形成行動が人口の減少などの環境変化の中でどうなっていくのか、また、支援のためには何がポイントになるのか等を検討していく必要がある。
  • 米国が、対外純資産が赤字の下でも所得収支が黒字となっている要因の一つとして、自国通貨で資金調達できることが挙げられ、日本も自国通貨で資金調達できる仕組みを作っていくことが大事である。

【地域経済における金融機能の向上】

  • 資料2-3の23頁には着実な発展を遂げる中堅・中小企業の例が挙げられているが、こうした企業に対してどういった形でファイナンスがされるかが大事である。金融機関が環境、情報、医療、介護、農業、バイオといった新しい成長分野に資金を供給する際には、担保や過去の財務諸表のみに囚われない、当該分野の発展性、成長性、収益性を適切に見極めた上で、リスク評価を行っていくことが大事である。例えば、米国には医薬品企業への投資を専門とする投資会社があり、理系の博士を多く抱えている。わが国でも産学連携を使って大学の理系人材を活用する形の目利きができないか。
  • 地域金融の問題を考える上では、地域金融機関のガバナンスについて検討する必要がある。
  • 業績が好調なIPO直前の中堅企業は、あまり資金調達には困っておらず、また、企業数もそう多くはない。むしろ、その前の段階にある大多数の企業、特に事業が不振な企業に必要な金融機能は何かが重要な点である。
  • 地域金融機関は、多くの知的財産を保有しており、この活用に組織的に取り組むことが大事である。例えば、金融機関は企業のコスト構造改善、再生、海外進出等におけるベストプラクティスの事例を多く有しているはずであり、このような事例を整理・活用することが重要であるほか、新しい成長分野に資金を供給する際にも、これまでの成功・失敗事例を検証していくことが目利き能力を高める上で大事である。
  • 中小企業が資金調達をする際には、銀行等からの調達に殆ど限られているのが現状であるが、その他の私募債等の調達方法等に関する情報が企業に十分に提供され、企業が資金調達方法を選択できるようになることが重要である。
  • 地域経済と金融との関わりを考えた時、被災地における企業の再生に金融機関が果たせる役割が課題の一つになると考えている。また、被災地以外も含め、地域と共に生きる金融の役割、地域に根ざした金融機関の業務の在り方について検討することが大事である。その際には、金融の中に規律・公正といった倫理観を取り入れる倫理的金融という視点が必要である。
  • 震災復興の関係では、街づくりに金融的手法が活用できないかと考えている。

【全般】

  • 今後、人口が減少していく中での安定・縮小経済において金融業が求められるものは、これまでの拡大経済において求められてきたものとは違うと考えられる。例えば、拡大経済の下では増築資金の供給が必要であったが、縮小経済では減築資金・リストラ資金を供給する中でビジネスを探す発想が必要である。また、地域経済におけるオーバーバンキングの状況を踏まえると、金融業の規模が縮小していくことも大事ではないか。
  • 日本は少子高齢化など困難な状況にあるが、世界を見るとどの国においても大変な状況にあり、あまり状況を悲観して解決策を見失うことがないようにすることが重要である。
  • 議論が専門的になったり、ステークホルダーに偏りがちにならないよう、議論の内容を国民に広く公表してもらいたい。
  • 資料2-4に示された3つの視点のほかに、制度が問題となって解決できない例があるのであれば、それについても問題提起してもらいたい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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