金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第2回)議事要旨

1.日時:

平成23年7月29日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

銀行業界・損保業界・証券業界からのヒアリング

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 冒頭、吉野座長より、前回(第1回)の補足説明があった。

  • 銀行業界・損保業界、証券業界より、(1)企業等の多様なニーズに対して我が国における金融サービスは十分に対応しているか、(2)我が国金融業は、欧米やアジアの金融機関と比較してどのような強み・弱みがあるか、等の観点から我が国金融業の国際競争力の強化について、それぞれ説明があり、その後、質疑応答、自由討議が行われた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【我が国金融機関の海外展開の現状と諸課題】

(1980年代との比較)

  • 1980年代は、大企業中心に輸出産業が生産拠点作りのために海外進出していた一方で、現下は、内需型の産業の国際展開が増加しており、これに伴って、我が国金融機関の国際化に関しては、地元企業あるいは当該地域経済の繁栄が金融機関の発展に直結する形態に変わりつつある。
  • 1980年代は、我が国経済が好調であったことが本邦企業の海外進出の梃子になっていたが、現下では、新興諸国経済が世界経済を牽引しており、日本を中核にアジア全域をマザーマーケットとして、アジアの成長市場と日本を結びつけるといった形の国際化が重要である。
  • 1980年代、我が国保険会社は、主としてホールセール・ビジネスにおいて、本邦企業に付随的に海外展開するにとどまり、収益構造も国内部門が主であったが、現下では、保険会社の収益構造について海外リテール部門の拡充が重要になっており、中でもアジアでのリテール・ビジネスが鍵を握っている。

(収益性)

  • 国際銀行業務の展開としては、(1)企業の海外展開に沿って金融サービスを提供すること(Bank follow industry)、(2)国際金融センターにおける金融仲介や投資銀行サービスの提供、(3)新興諸国にて現地銀行を買収した上で、現地の個人に対し現地通貨建てでリテール金融サービスを提供すること(Global Banking)といった方向性が考えられる。
  • 我が国金融業による海外部門収益の増大については、これまでの銀行業務で取り組んできた方向性である(1)をベースとして、アジアの成長をいかに取り込んでいくかが目下の課題であり、海外に進出する本邦企業に対する金融サービスの提供や、プロジェクト・ファイナンス等も手がけているほか、現地企業との取引も増加している。
  • 一方で、新興諸国においては、日本における個人向けサービスの内容が各国で異なる様々な個人のニーズと合致する訳ではないため、邦銀の国内におけるノウハウが使えず、個人向け取引はあまり進んでいない。こうした中で、現地銀行を買収した上で、現地の個人に対して銀行サービスを提供する方向性(3)は有効な手立てである。
  • 収益性については、例えば、貸出スプレッドに関して、日系企業には、当該企業の日本本社に適用されている小幅のスプレッドが取引条件として参照されることが多い一方で、非日系企業については、信用リスクに見合った貸出スプレッドを確保できるほか、(貸出に加えて外国為替やデリバティブに関する金融サービスを提供する)海外進出ノウハウから手数料収入も得ることができるなど、日系企業を相手とする取引よりも、非日系企業との取引や市場取引関連で相対的に高くなっている。

(我が国金融機関の強み・弱み)

  • グローバルに展開しているアジア系の銀行が少ない中で、海外進出を目指すアジア企業との連携を強化し、これまで日系企業向けに提供してきたような海外進出ノウハウなどのサービスをアジア企業に提供していくといったことが評価されている。
  • 良好な財務基盤や格付など、自社の強みを認識した上で、海外金融機関の買収することにより、経営資源の選択と集中を行うことが重要であり、ホールセールの分野ではこれらの戦略のもと、実際に再保険の分野等で効果が上がっている。
  • 一方で、アジアを主戦場とするリテールの分野では我が国金融機関の知名度が、一般大衆の間では高くないことがネックとなり、自社の強みが活かせるには至っていない。もっとも、これまで長年日本国内で行ってきたように、極めて高い知名度を誇る我が国自動車メーカーとうまく連携することによって活路を見出していくことは可能であると考えている。

(海外展開する際の課題)

  • 我が国金融機関が海外展開するにあたっては、国内規制よりも、海外における規制が障害となっており、現地の規制にうまく適応することが重要である。また海外の規制の内容や運用の不確実性については、官民一体となって、海外当局へ改善を求めていくことが必要と考える。
  • 国内規制については、こちらについては、現在開催されている金融審の別のワーキング・グループでご論議頂いているテーマでもあるが、保険会社が異業種の子会社を保有できないことが、海外保険会社の買収において障害になっている。ある海外保険会社を買収する際、傘下に異業種の子会社があると、事前にそれらを売却・清算しなければならず、大変な手間であるとともに、スピード感ある国際展開が阻害される。

(我が国金融機関の海外拠点等に係る現状と課題)

  • 日本人の駐在期間については、現地でのネットワーク作りを涵養する観点から、駐在期間を延長したり、同一人物を同じ地域・国に複数回派遣する等の人事面での対応が必要である。
  • グローバルに展開している欧米の金融機関でも、自由度の乏しい海外拠点が多く、欧米に比べて我が国金融機関の意思決定が特に本社に集中しているとは思わない。
  • どんな国でも、リテール・ビジネスを展開するにあたり、国籍を問わず、現地市場に詳しい人やネットワークのある人材が求められており、そうした人材の採用が重要である。しかし、我が国金融機関については、現地での知名度の低さが採用活動で苦戦する一因になっている。
  • 金融機関が海外展開を行うにあたっては、国内の人事戦略においてスペシャリストの育成を推進することのほかに、現地における幹部クラスの人材の採用や現地拠点のローカル化が重要である。
  • 現地銀行の買収に際しては、米国で買収した子会社の経営を通して培った、現地顧客ニーズへの対応やマネジメントの向上といった経験が、アジアで応用できるか検討の余地がある。

【全体】

  • 金融機関の国際競争力を測る上で有益な指標としては、個別のビジネスラインについては、リーグテーブルの順位などが有益な指標だが、「総合力」の計測指標となると、利益の大きさやネットワーク、顧客数など様々なものが考えられ、どれを用いるのがよいかは難しい。その中で、株式時価総額は、市場ないし株主による将来にわたる収益性の評価であり、有益な参考指標となるものと考える。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る