金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第7回)議事要旨

1.日時:

平成23年11月18日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

地域金融機関等からのヒアリング

事務局説明

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 地域ファンド運営会社(株式会社ドーガン・アドバイザーズ)および地方銀行(鹿児島銀行)より、我が国金融業の地域経済における金融機能の向上をめぐる論点に関して説明を受けた後、質疑応答がなされた。その後、事務局が作成したこれまでのヒアリングや議論の中間的な整理に対して、自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【個人によるファンド投資増大の可能性】

  • ファンドが潤沢な個人の金融資産の直接的な受け皿になるためには、ファンド自身が安定的・長期的に配当を出せるようになる必要がある。これはファンド運営上なかなか難しいことである。本来、ファンド投資はハイリスクなものなので、個人の資金が直接的にファンドに流入するルートよりも、機関投資家に集約された個人の資金が間接的にファンドに流入するルートを拡充する方が現実的である。こうした観点からみると、地域金融機関に加えて、年金基金によるファンド投資の増大を期待したいところ。また、地域経済に貢献することが存在意義である地域金融機関については、地域ファンドへの投資に対してなんらかの自己資本規制上の優遇措置を行うのも一案かと思われる。
  • 地方では人々の郷土愛を背景に個人向け県債の売れ行きが好調だったりする。個人が地域ファンドに投資することもそうした郷土愛を背景に伸びしろのあるものかもしれない。しかしながら、個人投資家はリスク回避的であり、地方圏ではなおさらそうである。このため、ファンドのパフォーマンスがそれなりに安定したものにならない限り、個人投資家によるファンド投資が大規模化する蓋然性は低いだろうし、ファンドがそうしたパフォーマンスを実現させるのはまだまだ先の話であると考えられる。
  • ファンド運営主体は、個人投資家を募る場合、金商法の要請に応えなくてはならないが、システムの対応や人員の配置などの規制対応コストは、小規模な運営主体では負担できない規模になる。

【地域における経営人材の不足】

  • 地域では中小企業の経営人材が不足している状況にある。仕入れを工夫し、ライバルとの競争を勝ち抜き、収益を上げていくことや、そのために従業員のモチベーションを維持・向上していくことは、そもそも銀行員が代替できる性質の仕事ではない。ファンドは、株主としてそうしたプロセスに深く関与し、役職員と一緒に苦労・努力を重ねることによって、ようやく投資先企業の業績改善に一定の貢献をなしているが、それでも成功ばかりとは限らない。
  • 地域における中小企業の経営人材不足に関して、代わりに経営を担える人材が地域金融機関にいるわけではない。中堅・若手の銀行員を様々な企業に出向させ、企業経営の実際を学ばせることによって、先々、助言や指導を通じて顧客企業に貢献できる人材の増加が期待されているところであるが、経営者そのものになれる銀行員が育つことにはならないであろう。

【地域金融機関によるコンサルティング】

  • 銀行員によるコンサルティングは、財務面および組織管理面にて一定の強みがあるものの、取引先企業が行う事業の各過程について深い知見や鋭い目利き力があるわけではない。また、一般に、異なる地域には異なる産業特性がある。これらを踏まえると、地域金融機関がコンサルティング機能を発揮するためには、注力する産業分野を特定した上で、人材の育成や専門家の採用を通じた自前での態勢整備と、外部専門家の活用を通じたアウトソーシングをうまく組み合わせていくことが重要である。

【地域金融機関による経営戦略刷新】

  • 地域金融機関が経営戦略の刷新に乗り出すきっかけになるものは、世界の経済・金融情勢の変化や規制環境の変化といった大きな要因というよりも、まさに足元の地元において人口減少を伴う少子高齢化が明白に進展していること。危機感が経営トップによるトップ・ダウン型の経営判断につながれば、地域金融機関の行動は変わり得る。

【事務局説明に関する自由討議】

  • 地域経済の縮小が先々不可避であるもとでは、徒な規模拡大を行うことなく収益性を向上させていくことを目指す経営者のリーダーシップが非常に重要である。
  • 地域経済の空洞化は、地元の中小企業が独自に海外進出を行ったり、また住民が亡くなるとその財産が都市部に住む子孫に相続されたり、といった形で進行している。こうした中では、地域において新産業を立ち上げ、IターンなりUターンといった形で、新しい人たちを都市部から取り込んでいくより方法はない。地域金融機関や地域ファンドによる中小企業へのリスクマネー供給は非常に重要である。
  • 地域金融機関にとって、一方でリスクマネー供給を増強し、他方でリスク管理態勢を向上させることは極めて困難であろう。リスクマネーというものはうまく活用されれば波及効果の大きいものであるため、地域に必要な絶対量は決して多くないはず。地域金融機関に、総資産や収益のごく一部をエクイティとして拠出してもらうだけで十分な効果がないか。リスクが高いというなら、特例で最初から全額損金扱いにして将来少しでもリターンがあれば全額利益計上させればよい。これならリスク管理は不要となる。
  • リスクマネー供給態勢の強化については、年金資金をいかにファンド投資につなげていくかが重要な論点であり、この関連では、受託者責任を明確化、あるいは向上させる法整備を進めていく必要がある。
  • リスクマネーを供給するに値する中小企業を金融機関サイドの取組みでいかに作っていくかが重要である。
  • 中小企業へのリスクマネー供給を検討する前に、なぜ収益性の低下が傾向的に続いているかについて検討し、中小企業の実態に対する理解を深める必要がある。収益性の低下は、単に需要の弱さによるものなのか。それとも、金融機能を含めて供給サイドの問題によるものなのか。さらには、緊急保証制度や金融円滑化法を含む様々な政府の施策が中小企業の抜本的なリストラを阻害してきたと主張する者もいるのが実情。
  • 金融円滑化法を含めて、政府および政府系金融機関がこれまで実施してきた中小企業支援融資が、どの程度の規模にのぼり、かつどのくらい返済されたのか可視化を図るべきである。
  • 地域金融機関については、競争の在り方が同質的になっている印象を受ける。地域金融機関の競争の実態を掘り下げるべきである。
  • コンサルティング機能は、ファンド運営会社やコンサルティング会社も手がけている。こういった先のコンサルティングと地域金融機関のコンサルティングはいかに差別化されるべきか検討すべきである。地域金融機関が発揮すべきコンサルティング機能の範囲や深みを明確化し、さらにそれを例示できれば有意義である。
  • 地域金融機関の経営をみると、資金調達面では、預金保険制度の適用や公金預金の存在といった恩恵がある一方で、資金運用面では、ポートフォリオの1/3程度を国債に振り向けるような運用を行っており、ノンバンクの経営に比べてかなり楽であるとの印象を受ける。他方、地域において地域金融機関が雇用の受け皿として果たしている役割は大きい。これらを踏まえると、地域金融機関に一定の雇用を義務付けるのも一案である。地域金融機関が多くの人を雇い入れ、地域経済を担う人材に育る学校の役割を果たし巣立たせていく、という積極的な役割を果たしてほしい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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