金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第10回)議事要旨

1.日時:

平成24年1月11日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

有識者等からのヒアリング

事務局説明

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 有識者等(A.T.カーニー株式会社 矢吹パートナー、中央大学大学院戦略経営研究科 杉浦教授、大垣委員)より、国民のニーズに合った金融サービスの提供に関する論点に関して説明を受けた後、質疑応答がなされた。その後、事務局が作成したこれまでのヒアリングや議論の中間的な整理に対して、自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【銀行の収益性】

  • 我が国銀行業の収益性の低さは世界でもまれにみるもの。銀行法の第一条では、まず銀行の公共的立場が謳われており、銀行からするとそもそも収益ばかり追及できない側面があるものと考えられる。
  • 我が国銀行業の収益性の低さの原因は、人件費や情報システム関連費用を主たる要因にする高コスト体質にあるのではないか。
  • 銀行は、メーカーのように、新商品を開発しヒットさせなければ経営が傾くといったことはなく、流入する預金を国債購入にあてることによってある程度の収益をあげることができる。このため、銀行は何か新しいことを行うことに強く動機付けられていない。なるべくリスクを取らないという姿勢は、預金を扱っている以上、あながち否定できない面がある。新しいことに挑戦しないと経営が立ち行かなくなるような業態を新たなに作らない限り、金融業におけるイノベーションは起きづらいものと考えられる。
  • 銀行の公共的な役割も、民間企業あるいは営利団体として存続しない限り、果たされない。コスト面については、あらゆる業務や機能をできるだけ自前で揃えようとする態勢から脱却することによって、コスト効率を引き上げる余地がある。一方、収益性についていえば、手数料収入を増やすことが不可欠であろう。金融サービスに対する対価の感度が高くない我が国の顧客でも対価を払ってもよいと思うだけの高品質のサービスを提供することが重要である。こうしたサービスは、金融の範疇に止まるものではなく、他業種のサービスとの連携や融合を伴うものかもしれない。

【個人向け金融サービス】

  • 潜在的な金融サービス需要が存在するか否かについては、二つの考え方があると思われる。一つは、顧客が現状を踏まえ金融機関には期待していないものの、実は金融機関が提供可能なサービスのことである。例えば、住宅購入についていうと、顧客の金融機関への期待は低利での融資につきるだろうが、顧客の資金計画はもとより、その人にとって相応しい住宅の条件などについて、金融機関は情報サービスを提供できるはずである。もう一つは、少子高齢化などの経済社会の構造変化を受けて、先々生じる公算の高い金融サービス需要でありながら、現状の金融業の在り方では充足できそうにないものである。
  • マーケティングでは、顧客層をいくつかの評価項目で分類して考察する手法がとられることがよくあるが、需要が多様化する中で、個人向け金融サービスにおいていかに顧客層を類型化するかは競争戦略を策定する上で、非常に重要なポイントになっている。
  • 金融機関は、元来、接客をはじめ、個人に対するきめ細かいサービスが得意な業態ではない。また、経営戦略上も、自己の特性や強みを活かすことが重要である。これらを踏まえると、金融機関は、個人向け金融サービスを無理して行わずに、法人向けに徹する戦略もあり得る。例えば、住宅ローンについていうと、個人客を直接開拓するのではなく、開発業者やハウスメーカーとの提携ローンに注力することもあり得る方策ではないか。

【信託関連】

  • 信託ビジネスについては、新たな担い手になり得る特定分野の専門家が参入しづらい状況であるため、これを改める必要がある。ただし、この種の規制緩和が消費者被害の新たな温床にならないようにするためには、新規参入者の適格性や参入可能な分野、さらには当局による監督などもあわせて検討されなければならない。
  • 高齢化社会では、生前信託へのニーズが相応に存在するはずだが、信託銀行・信託会社からすると、個々の一般大衆の生前信託に応えることは、規模やコストの面で事業性の確保が容易ではないものと考えられる。信託銀行・信託会社サイドにて、例えば、管理業務は子会社に集約的に担当させるといった一工夫が必要なのかもしれない。

【事務局説明に関する自由討議】

  • 投信販売の手数料の高低は、サービスの水準や商品性の複雑さとの兼ね合いで判断されるべきものであり、料率が高いということだけでもって問題視することは不適切である。
  • 大手販社がその営業力を背景に、特に同じグループに属する投信会社の商品開発に対して一定のバイアスを与えているかのような記述があるが、実際には、大手販社は、第三者機関の評価を参考に異なる金融グループに属する投信会社の商品も取り扱っており、また投信会社サイドでも、グループ外の投信会社に運用を委託する商品を開発し、販売会社に卸している。こうした実態を踏まえた上で、今後、議論を深めていくべきである。
  • 「市民ファンドの支援」という文言について、その意図するところには賛同するものの、悪徳ファンドも存在するという現実を踏まえると、書き振りを工夫すべきである。
  • 「金融リテラシー」については、言葉としての定義が明確ではない上に、これまで官民で行われてきた金融リテラシー向上のための取組みの内容や成果について十分な検討が別途必要であるものと考えられる。
  • 本ワーキング・グループは中長期的な観点から金融業の在り方を検討する場なので、「金融リテラシー」という言葉の定義を議論するという次元は超えているものと思われる。むしろ、考えるべきは、中長期的な観点に立って、小学校から始まる公教育に、金融というものをいかに取り込んでいくかということであろう。その際、儲け主義ないし拝金主義と一線を画す配慮がとても重要である。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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