金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第11回)議事要旨

1.日時:

平成24年2月15日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

委託調査先による発表

事務局説明

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 委託調査先(株式会社野村総合研究所、みずほ総合研究所株式会社)により、我が国金融業の国際競争力強化に関する調査研究、地域経済における金融機能の向上に関する調査研究について説明を受けた後、質疑応答がなされた。その後、事務局より「報告書の構成(たたき台)」について説明を受け、自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【我が国金融業の国際競争力強化】

  • 我が国金融機関が国際競争を勝ち抜く活路は、その強みを、参入しやすいビジネス・ラインで活用していくことにあると考えられる。我が国金融機関は、円をはじめとした国際通貨の貸出力が高い。この強みを取引関係のある我が国企業に対する国際金融サービスにおいて発揮し、そこからクロスボーダーM&Aやキャッシュ・マネジメントへと戦線を拡大する。さらにその次に、進出先国内における金融サービスへとつなげていくことが期待される。なお、キャッシュ・マネジメントについては、対象地域の広い汎用型のシステムを提供する外資系金融機関とは異なり、取引先個社固有のシステムの仕様や設計に則した柔軟な対応やトラブル対応におけるキメ細かさの点で我が国金融機関は評価されている。
  • 強みを活かして活路を開拓していくことは何十年も前から指摘され、かつ実行に移されてきた方向性である。しかし、アンケート調査によると、今なお、我が国金融機関は、情報提供力や手続きの円滑さの面で、グローバルに活動している外資系金融の後塵を拝しているようだ。英語力の低さが、人脈形成や情報収集、さらには顧客からフィードバックを受けるといった面で、我が国金融業の成長を妨げ続けてきたと考えられる。英語力の向上を通じて、情報収集機能が強化され、この結果、情報提供力も向上するという経路を経営サイドはもっと重視した方が良いと思われる。

【地域経済における金融機能の向上】

  • アンケート調査によると、地域における銀行の実像として、取引先企業の事業内容に対する理解が不十分で、審査能力も不十分で、担保と保証に頼ってばかり、という姿が浮かび上がってくる。これを踏まえて、リスクマネー供給態勢を向上する必要性を指摘することはもっともなことだが、この必要性になぜ応えられていないのか。これが重要な論点だ。例えば、金融機関の担当者がある企業について有望な技術力や将来性を見出しても、結局、リスクマネー供給にまでもっていけない。もしリスクマネーを供給すると、全体として不良債権は増えるわけだが、これは金融庁の監督・検査で指摘されかねないこと。また、銀行はリスクに見合ったスプレッドを取れない状況に置かれている。結局、不良債権が増加するリスクや金融庁検査で怒られるリスクをとってまで、低スプレッドでリスクマネーを供給する銀行はおのずといなくなるのではないか。
  • 企業サイドでは、銀行の担当者が頻繁に交代することについて不満があるようだ。担当期間を数年に限定することは、顧客との間で悪しき癒着関係が生まれることを予防する観点から一理あるかもしれないが、その一方で引継ぎをしっかり行うといった工夫が求められる。

【事務局説明に関する自由討議】

  • 「東京市場の国際金融センター機能の向上」という文言もあるところだが、全体を通じた印象では、ストリーラインがどうも“和製”金融機関に重点を置きすぎている感がある。外資系金融機関が担い手になる形で我が国の金融機能が向上する側面もあるはずだ。
  • プリンシプルの共有化やラウンドテーブルなど官民「共働」型の金融行政は非常に良い取組みと評価できる。この点は、報告書の重要なメッセージになるものと期待できる。
  • 我が国金融機関が欧米の金融機関とは異なる状況にあることに着目することを支持。この点は、報告書の重要なメッセージになるものと期待できる。
  • 地域経済におけるリスクマネー供給について、その必要性は認めるところだが、(1)新規事業への挑戦や新産業の勃興といった新規参入者に関するものと、(2)疲弊する地域経済の中で経営不振に陥る中小企業の整理・再生という(潜在的な)退出者に関するものを峻別すべきである。さらに、後者(2)について、再生案件はハイリスク・ハイリターンであり、実際に再生に至るケースは少数派。こういった分野へのリスクマネー供給については、整理(エグジット)という選択肢も視野に入れること、地域金融機関が積極化すべきというバイアスをもたずに対応することが重要。
  • 国際展開を進める我が国企業に対する金融サービスの提供において、我が国金融機関が過去に海外事業から撤退したこともあって、外資系金融機関に立ち遅れている面があるのは事実。しかしながら、当時の海外ビジネスモデルと現在のビジネスモデルは異なっており、十分キャッチアップ可能。我が国企業の国際展開の在り方そのものが変化している中では求める金融サービス需要もどんどん変わっているからだ。
  • 我が国企業の国際展開については、かつては欧米企業に対するM&Aを主流であった。これに対して、最近では、アジアにおいて生産設備をゼロから立ち上げるローカル化が進展していることが特徴となっている。我が国金融機関は、現地通貨や為替などの商業銀行ビジネスにおいて日本流のキメ細かさでもって活路を見出していくことを期待したい。
  • 確定拠出年金制度に関する記述を歓迎。同制度の利用が進むように推進すべき。
  • 金融商品の販売現場では、金融機関の販売員が、顧客の金融知識の涵養やファイナンルシャルプラン作りのよきアドバイザーになることが重要。
  • 全ての金融機関に全てのことを同様に行ってもらう必要はない。報告書では、金融機関の多様性を認めることが重要である。
  • リスクマネー供給源としての国民が拠出する資金は、主として、海外ではなく、国内の経済の底上げに活用されていく形が望ましい。
  • 金融機関の新しい取組みも重要だが、従来型の金融サービスの手数料引き下げに繋がる効率化の努力も引き続き必要。
  • 最近、上場企業がみずから非公開企業に変化する動きが散見される。個人投資家にとっては投資対象の減少に繋がる話であり、報告書で一定の懸念を示すのも一計ではないか。
  • 企業向け金融サービスの「グローバルな展開」と「ローカルな展開」いずれにもかかわるのだろうが、地域における中小企業の海外進出のサポートは極めて重要な論点。
  • イノベーションを起こす上で「産・学・金」(産業界、学界、金融界)の連携は重要。この点にも報告書にて言及すべきである。
  • 「国内」にて東日本大震災に言及するなら、「国外」では欧州危機に言及してはどうか。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る