金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第12回)議事要旨

1.日時:

平成24年3月12日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

委員によるプレゼンテーション

事務局説明

自由討議

4.議事内容:

  • 委員(山田委員、小野委員、大垣委員)より「バックグラウンド・ペーパー・シリーズ」について説明を受け、事務局より報告書の第1章、第2章の「素案」について説明を受けた後、自由討議がなされた。

  • 自由討議の概要は以下の通り。

【バックグラウンド・ペーパー・シリーズ】

[位置付け]

  • バックグラウンド・ペーパーは、執筆者が、これまでのヒアリングや議論、さらには委託調査や「報告書の構成(たたき台)」を踏まえつつ、私見を交えて作成し、座長が監修したもの。当ワーキング・グループとしての意見ではない。

[山田論文関連]

  • 我が国金融機関の海外展開について、顧客の日系/非日系の別を切り口に、興味深い分析がなされている。リテール/ホールセールの別を切り口で分析すると、また別の特徴がみえてくるかもしれないほか、我が国金融機関が海外にてリテールの領域まで業容を拡大させる可能性の吟味に役立つかもしれない。

[小野論文関連]

  • 地域金融機関の競争が不足しているわけではない。むしろ、激しい既存の競争が顧客の認める価値の創造に向かっていないことが問題であり、これをどう変えていくかが重要。
  • 地域金融における競争については、プレイヤーが同じことをやっているもとで需要が減少すると、収益が減少するのは当然。新しいものを見付けていかなければ、競争する価値がなくなってしまう。
  • 地域金融についていえば、金融機関の数が多すぎるいわゆるオーバーバンキングが問題だ。

[大垣論文関連]

  • 業界をあげて、「商品開発法人」や中立的エージェントを育成する非営利法人を作るという提言があるが、若干、現実性に欠く印象を受ける。
  • 大垣論文にある具体的な提言には共感を覚えるものが多い。今後、当ワーキング・グループにて議論を行い、報告書に盛り込むべきものは盛り込めばよい。また、同論文で指摘されている「プロフェッショナル・レスポンシビリティー」は重要。これは知識やスキルだけの問題ではない一方で、政府が具体的に命令するような話でもない。倫理や職業人としての行動規範の面で個人の質を上げていく必要があり、このための環境整備に対して業界なり政府なりの貢献が期待される。

【報告書第1章(新たな金融業に向けて)及び第2章(金融機関の在り方)<素案>】

[第1章関連]

  • 我が国金融機関の国際業務を充実させるトーンで書かれていると理解。このことは、企業の国際展開が加速している状況下、適切である。ただし、国際展開を行っている我が国企業は、海外業務の拡大にテコ入れしている一方で、国内業務をリストラしている。我が国金融機関は、企業のこうした海外展開と国内リストラという二正面の課題に対応した金融サービスの提供が求められていると思われる。
  • 我が国の所得収支黒字が増大していることについては、利子・配当の「入り」が大きくなっている一方で、「出」が小さいままであることが背景にある。利子・配当の「入り」については、債券投資が主。株式投資の割合を増やすことを通じて、「入り」を拡充していくことが重要である。一方、利子・配当の「出」については、海外投資家の我が国への投資を増やしていくことがリスクマネーを得る観点から重要だ。
  • 第1章p.3にある「『貿易立国』ではなく」という箇所は書き改められるべき。すぐ後に「金融・投資でも」と書かれているので、貿易立国からの脱却を謳っているわけではないのだろうが、貿易立国であることは引き続き重要である。

[第2章関連(企業向け金融サービス<グローバルな展開>)]

  • 国際展開を行っている大企業の間では、国際的な資金決済サービスへのニーズが大きい一方で、邦銀の提供力は十分ではない。こうした現状に鑑み、国際的な資金決済の話をもう少し具体的に書いてはどうか。
  • 第2章p.4にある「最終的には『日本の金融機関』という組織の在り方そのものが問われる」という記述について、もう少し穏便な書き振りにしてはどうか。我が国金融機関が凝り固まった主体であるかのような誤解を受けかねないほか、金融界でも、産業界同様、国際展開の進展や外国人の採用などを行うマインドが強まっているものと思われる。

[第2章関連(企業向け金融サービス<ローカルな展開>]

  • 第2章p.10にて、地域金融機関の経営者の過度な保守性や横並び意識が指摘されており、その通りだと思うが、なぜそうなかったのかという観点から、多少、掘り下げてもよいのではないか。地元の大企業などの貸出先が主要株主に名前を連ねており、ガバナンスが上手く効いていない先もあるかもしれない。誰かが背中を押す、あるいはその結果としての成功事例を見せていくことが重要だ。
  • わが国では、高度成長期に顕著だったように、マクロ的に資金不足なもとで、金融機関が旺盛な資金重要を選択的に満たしていた時代があった。バブル崩壊後も資金需要は存在していたと思われるが、不良債権問題によって、金融機関がそれを充足できない状況となった。そして、今、マクロ的には資金余剰となる中で、報告書では、「金融機関が資金需要を創り出す」という方向性が打ち出されている。このことは、金融論の見地からすると、銀「商」分離原則から離れる画期的なことであり、そう分かるように書くとよいのではないか。
  • 地域において経済の低迷および人口の減少が進展すると、過疎地などでは、商業ベースでは金融サービスを供給しても割に合わない事態になり得る。こうした中で、いかに金融サービスを適切に提供していくかについて、報告書で議論してはどうか。

[第2章関連(個人向け金融サービス)]

  • 全体的に、既存の仲介業者による金融商品販売が手数料目当ての近視眼的なものになっているとの疑問を呈する一方で、新規業者の活躍を期待する内容になっている。これは、既存業者につき「性悪説」に立ちすぎ、あるいは新規業者へ牧歌的な信頼が強すぎる印象を受け。
  • 顧客目線で商品販売がなされるための方策は、長期的には、顧客による選択を通じた淘汰に任せることではないか。
  • 供給サイドが顧客目線に立って、多様化する需要を潜在的なものを含めて充足ないし掘り起こしていくことの重要性や、そのためにはレッセ・フェールでは十分ではなく、政府が一定の誘導を行う余地があるという認識が当ワーキング・グループにて共有されていると思われる。
  • 顧客目線に立って個人向けサービスを提供する場合、金融ADR制度は重要なインフラである。また、金融庁自身もいろいろ尽力してきた。一定の前進が見られていることについて言及があってしかるべきではないか。
  • 個人がリスクマネーの源泉であることは間違いないが、個々の個人投資家のリスク・テイクは多様であるべき。投資を通じたリスクマネー供給を個人に押し付けていくような書き振りにならないように配慮すべきだ。
  • 消費者ローンやカードローンのニーズが高まっているが、商品を拡充するにあたっての課題や課題克服に向けた施策などについて、多少掘り下げてはどうか。
  • 資産運用を論じる際に「安心して」という言葉がついているが、元本保証を提供するわけではないのだから、変な誤解を生まないように文言を変更すべき。また、そもそも投資は、それが個人投資家の行うものであっても、「自己責任」で行うことが原則。「自己責任」である旨もセットで付言すべきである。
  • 第2章p.14にて、「確定拠出年金制度の利用拡大に向けた環境整備・啓蒙活動」という記述を支持。ただし、同制度は「利用が低調な」と修飾されている。その利用は、確定給付型に比べて、絶対的な規模としてまだまだ小さいが、着実に伸びているのが実情である。そこで、「“着実に増加している”確定拠出年金制度」といった具合に書き改めてはどうか。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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