日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(第1回)議事要旨
日時:平成13年10月1日(月)18時00分~20時15分
場所:中央合同庁舎4号館9F 金融庁特別会議室
○冒頭、懇話会委員の紹介及び議事運営に関しての説明。
○蝋山座長の挨拶の後、柳澤金融担当大臣から、懇話会の設置の趣旨及び我が国の金融システムと行政の在り方に関する問題意識を披瀝。主な発言は以下のとおり。
不良債権問題への対処など足元の課題に取り組むにあたっても、将来ビジョンがないと方向性を失いがち。英米においては21世紀の金融業に関する書物がまとまっており、日本においても同様なものを作りたいと思っている。
日本は主要資本輸出国であるが、東京のマーケットをより国際競争力のあるものにするためにはどのような方策が必要か。
資金調達に関連して、直接金融と間接金融の関係、間接金融でのプロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンスの問題をどう考えるか。
金融行政に関して、検査と監督の在り方をどう考えるか。
○その後、各委員から、問題意識を順次発言。主な意見は以下のとおり。
将来ビジョンも大切だが、その前に、現下の課題である不良債権問題の深刻さをきちんと認識すべき。
日本経済を支えるべき銀行が、損益面で外部からのサポートがないと立っていられない、いわば第2の特殊法人化しているのが問題。
金融セクターのビジネスモデルの転換が必要。これまで銀行が産業育成の観点から長期資金の供給と株式保有を通じて果たしてきた使命は、四半世紀前に尽きたにもかかわらず、そこから脱却できていない。
わが国の銀行は国際競争力が欠如しており、今後はこれをいかに強化するかという観点からの議論が必要。
銀行業への参入は増えてきているが、退出する場合のスピードが遅いため、経済の活性化につながっていない。ペイオフが解禁になっても、単に個人の預金が複数の銀行に分散するだけでは、弱い銀行を生き延びさせることになる。
間接金融から直接金融への移行という議論があるが、どちらか一方だけという国はない。直接金融と間接金融とのバランスという観点が必要。
個人(家計)の株式保有割合が低く、リスクに対して保守的だと言われるが、企業側が株主に対してリスクに応じた十分なリターンを提供していないなどの配当政策上の問題もある。
行政としては、自ら資金調達できる金融機関には、資本注入等を含めて思い切って助ける代わりに株主・経営者にはきちんと責任をとってもらい、それができないところは、一時国有化等を含めて退出してもらうことが必要。待てば待つほどロスが大きくなるが、その圧力のかけ方が弱いのではないか。
個々の省庁等だけでは改革はできない。ゲーム理論的に相手の出方ばかりうかがっているのではなく、パッケージにして一気に解決していかねばならない。
将来は、ユニバーサルバンキング化の中で、それぞれのユニットが専門化、巨大化、複雑化していくが、そうした中でのコーポレート・ガバナンスの在り方が問われる。
これまで各国が経験した金融危機からの一つの教訓は、銀行に依存したシステムほど、危機の時の経済的・社会的なコスト・影響が大きいということ。日本も間接金融が大きすぎた弊害が現れており、間接金融への依存度を下げていくのが今後の方向性。
個別行の危機と金融システムの危機は別物として対応すべきであり、それを世論に理解させる努力が大事。そうでなければ思い切った銀行の整理淘汰はできない。
IMFの「検査」の話にしても改革工程表にしても、行政は積極的にアピールし、説得することが必要。マーケットの論理の影響力は大きくなっているが、マーケットの論理と政治・行政の論理は違うので、それをすり合わせることが重要。
3年後の不良債権問題の正常化の後は、金融社会主義からの脱却が必要。銀行の民営化(準特殊法人からの脱皮)、郵貯の民営化あるいは廃止、金融行政のもう一段の透明化、検査機能中心への脱却が必要。
市場参加者については、積極的なウィンブルドン化により、外資、異業種の参入を促し、多様なビジネスモデルの間で競争させるべき。
金融業の基本はリスクビジネスである。本来はリスク評価なしにはファイナンスはできないはずだが、金融(銀行)は単なる資金を流す手段になってしまっている。
業態ベースでマーケットができており、業態間のリスク配分がきちんとできていない。全業態(銀行・証券・保険)を通じたリスクの最適化ができることが重要。
不良債権問題は、債権者たる銀行側からの視点が主として議論されているが、表裏一体として向こう側には債務者たる企業がいるということも考えておかないといけない。産業再生の中で、企業側も、より高い付加価値を稼げるようになることが不可欠。
金融当局の対応は後手にまわっているのではないか。改革先行プログラムも、特別検査やRCC機能強化、資金供給という中身はいいが、6か月前にやって欲しかった。
改革工程表の実施に当たっての課題は、(1)人材面も含めたRCCの機能強化、(2)危機対応時のルールの明確化(再生委時代と異なり、金融危機対応会議では当局側から問いかける方法だが、一部の銀行を指名した途端に破綻するのではないか)、(3)銀行の経営が厳しい中での公的負担の在り方、ではないか。
株価、金利、企業経営、銀行収益は、悪循環から脱却しておらず、どこかで断ち切らないといけない。公的資本の注入を含めた抜本的な対策が必要。ただ、現在の銀行中心のビジネスモデルでは、公的資金を入れてもそれで終わりとなってしまうため、将来的には、この仕組みを変えていかないといけない。
不良債権問題は、基本的には中小企業の問題であり、巷間言われている大手30社問題などとは異なるのが実態。
アメリカも現在、プライベートエクイティ、プライベートローン、IT向け融資等で不良債権が急速に増加している。米銀のモデルが有効か現時点で考える必要がある。
現在の銀行は、リスクに対するリターンの追求が不十分であり、貸出先を広げれば広げるほど企業価値が破壊される状況。
通常の監督機関としての規制と公的資金注入に基づく株主としての監督規制の関係を整理し、国が株主として、もっと強く働きかけをすべき。
検査が甘いとよく言われるが、検査が甘いのではなく、基準が甘い。一番ダメな金融機関が救われるように作られており、見直しが必要。
現在は、健全行と破綻行との間の差が激しすぎる。つまり、破綻した時のみ、経営陣の入れ替えはもちろん、刑事罰の適用があるため、できるだけ破綻しないで先延ばししようというインセンティブになる。退出の際のインセンティブ構造を変えねばならない。
今後は、銀行の収益性を高めるのが基本だが、企業収益を高めることも必要。銀行と企業の結びつき・依存関係を見直すべき。また、現在、投資信託は個人資産の2、3%に過ぎないが、投資信託業務、証券化の促進などを通じて、銀行の規模を縮小(銀行数の減少ではなく、銀行業(貸出資産)の縮小)していくべき。
公的金融がリスクフリー・補助金の下で活動している中で、銀行にプライスリーダーとしての機能を発揮しろといっても無理。新たなビジネスモデル構築のためには、公的金融のExit Policyの確立が先決。
不良債権問題については、代表的銀行に着目した議論が多すぎる。公的資金の再注入は各銀行にあまねく入れるものではなく、個別行の問題として考えるべき。また、私的自治をこれ以上失わないようにすべき。
特別検査は市場の評価に基づいて行うが、マーケット操作のインセンティブになるおそれがある。それをやるなら、SECの強化などによる風説の流布への対応などがよほどしっかりされていないといけない。
以上
お問い合わせ先
金融庁総務企画局企画課
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。