日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(第9回)議事要旨
日時:平成14年6月20日(月)18時00分~20時05分
場所:金融庁9F特別会議室
○事務局より将来ビジョンのたたき台についての説明があり、その後自由討議。
(各委員から出された主な意見は以下のとおり)
当面の課題と、中長期的のビジョンとを区別するのはいいが、同時に、どうつなげるのかがないといけない。移行の筋道を書く作業・視点が必要。
(1)証券化のプロセス等が進展する中で、当面の課題である不良債権処理のための新しいツールが様々な形で利用可能になり、好循環になる、(2)銀行の新しいビジネスモデルを考案し、それを実現させる環境を作り出していく、(3)「将来ビジョン」という形で明確になることがマクロ経済パフォーマンスの改善につながるといったチャネルが考えられるのではないか。
金融は一般的に専門性が高いものだが、今は国民にとって非常に関心が高い。要約版を作って、金融の専門家以外にもわかるようにすべき。
日本版ビッグバンについては、その検証をするだけでなく、フォローアップして一つの金融行政の流れとして過去の改革を継続していくという視点が必要。
当面の課題と中長期的課題とのブリッジについては、(1)公正な競争促進政策、(2)総合金融サービスの推進による業務の多様化の中での収益力向上、(3)国際競争力の強化が必要であり、長期的な課題に見えるが、結局は短期の課題をクリアする強力なバックアップになる。
ユーザーサイド(国民・企業個人)にとって金融システムの安定ないし新しい方向がプラスになることを示すことが必要であり、金融サイドだけからではないという視点が重要。
現状分析や金融システムの方向性は良いが、金融庁がどう方向性を示していくかが必要。ビジョンの実現に向けての舵取りを行政が示さなければ、良い論文はあるが、ではどうするのかということになる。
報告書は金融庁の仕事のマニュアルを作るものではなく、むしろ大臣や金融庁が要所要所で方向性を示すための指南書であり、今後も折に触れ振り返ってもらうためのものとの理解ではないか。
全体的に、伝統的な産業銀行モデルだけでは駄目で、市場を中心としたモデルを追求する必要があるというトーンであるが、産業銀行モデルと機能主義との折り合い、ウエイトをどうつけるかという視点が必要。
システムとしての産業銀行モデルが既に破綻しているのは皆わかっているが、産業銀行的な行動は随所で必要であり、典型的なのは中小企業金融の分野。産業銀行的な行動は市場型のシステムの中で実現可能であり、むしろ市場型のシステムの方がやりやすい。商工ローンや消費者金融はそのような行動でマーケットを利用しながらパフォーマンスを良くしている。
日本の銀行は、貸出や金利の延滞・免除などはやってきたが、企業に対してリスクを認識し、企業の意思決定に積極的に関わるということが弱かった。RCCに関わっているのは外資系のコンサルティングなどであり、一方で企業再生ビジネスという形で企業を助けながら、もう一方で証券化してリスクの高い部分は自分たちが保有してサービサーが丁寧に回収業務をしている。こうした視点から、銀行と企業のリレーションを作らないといけない。
預金者は、皆自分は安全に行動していると思っているが、背後にある国債発行や公的資金の注入などを考慮すると、預金が安全と思いながら実は目減りしているということに留意すべき。
製造業が下がってくる中で、英米では金融サービス業が強くなって経済が回復している。次の日本の産業は何かといったらやはりそこしかない。どういう形で強くするかを考えると、やはり守られているだけでは駄目である。
金融システムや銀行のビジネスモデルが変わり、不良債権処理が進んで、最も影響を受けるのは中小企業。彼らの目から見て、数年後に自分たちのお金はどうなっているか、今後のイメージがわかるようにすることが必要。
日本の預貸システムが破綻し、そういうリスクのとり方はやめようというのがビッグバンだったが、結局アメリカのようにはならないし、なれない。将来ビジョンという場合、銀行中心のシステムから資本市場中心のシステムへというのではなく、預貸と資本市場とがどう共存するかを示すことが必要。
日本の普通銀行は産業銀行的色彩の強い商業銀行であり、これが普通の商業銀行になることにより、資本市場と共存することが将来ビジョン。産業銀行的色彩をとっていき、資本市場と両立する商業銀行となっていくのがリテールビジネスの充実であり、まったく新しいビジネスモデルを作るのではなく、原点に帰るということ。
企業側と同時に個人がどういうメリットを受けるかが重要であり、そこを強調した方が良い。関連して、自らの系列金融機関が提供する商品を優先的に仲介する行為が抑制されるべきとの観点は非常に重要。客観的に評価して情報を提供し、個人の利便性を高めることが必要であり、預金のみでなく株・投信含めたトータルアドバイス機能を持てば地方の金融機関も十分生き残る。また、自社の商品と他社の商品との比較情報のあり方も考慮すべき。
産業銀行と資本市場のどちらがいいかの切り分けはコストの問題。産業銀行の場合に金利・手数料等でコストがチャージされていれば、それとの切り分けで資本市場が生まれてくる。預金保護のためにコストがかかっており、国が預金保険料の不足に対して補助を出し続けることはできない中で、そうしたコストを払うのであれば、産業銀行を使って下さいということになる。
中小企業金融に対して、リスク・リターンの関係で考えれば中小企業の負担は上がる。地域経済や中小企業金融を考えた時、自分は安く調達しているつもりだが結果として一部の地域なり中小企業が排除されることを受け入れるシステムがいいのか、次の地域経済発展の芽が出るような、リスクがあっても十分跳ね返せる企業には等しくファイナンスされるシステムがいいのか。基本的には市場化を進めていくべきであり、その時々の状況で適切なファイナンスを選ぶなら間接金融は消えない。絶対的にどちらがいいということではなく、拡がりをつける中での相対感という方向性で考えるべきではないか。
不振の中小企業には2種類あり、一つは本当に競争力を失っているものであり、これはリスク・リターン原則に従って整理淘汰される。もう一つは競争力はあるが、長いデフレ、マクロ経済不振の中で一時的に生きていけないところであり、そこに対してリスク・リターンを歪めずにやるにはどうするか。公的金融でやるとどうしても歪んでしまう。マクロ経済が悪い間に限って限定的に利子補給することがセーフティネットとして必要ではないか。
(1)ペイオフの議論でわからないのは、大きすぎるセーフティネットは結局自分(国民負担)に跳ね返ってくるということが共有されていないこと。(2)産業銀行モデル等いろいろな議論はあるが、銀行はサービス業になるから、個人にも企業にも尽くす、我々のことを考えてくれる、というイメージで考えるとわかりやすい。(3)地域金融機関の合併促進策では、あくまでも自主的な施行を促すとの姿勢が必要。(4)この報告書は、金融庁関連では近年稀に見る明るいメッセージとして前向きのもの。ただし、もっとわかりやすくすべき。
年金については、未積立の年金債務が膨らみ、納税者負担まで含んだ問題を抱えている。高齢化社会に向けて、年金の未積立がある現状を示してほしい。中長期的な資源配分上の問題や、究極的には公的負担が増すというバランスを考えないといけない。
公的金融に関しては、政府のバランスシートを圧縮してマーケットに対する信頼を増すしかない。民間に任せられるものはできるだけ早く撤収し、売れる資産を早急に売り、バランスシートを圧縮する。その結果、民間に規律が戻ってきて本来の価格がつくべきところにつくというプログラムを早急に行うべき。また、郵貯・簡保については、既存契約は別途移して新規には受け入れず、株式会社郵政ネットワークは切り離し、比較情報を提供しながら金融商品の販売手数料を受け取るところに主たる目的を絞り込むべき。
以上
問い合わせ先
金融庁 総務企画局 企画課
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。