第33回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1.日時:

平成19年6月12日(火)14時00分~16時30分

2.場所:

中央合同庁舎4号館 特別会議室AB

3.議題:

  • (1)ADR法の認証及び金商法(認定投資者保護団体)の認定取得について

  • (2)利用者相談室満足度調査について

  • (3)日本司法支援センター(法テラス)の概要について

  • (4)多重債務問題解決のためのカウンセリングシンポジウムについて

  • (5)平成18年度における業界団体・自主規制機関の苦情・紛争解決支援について

4.議事内容:

ADR法の認証及び金商法(認定投資者保護団体)の認定取得について

事務局から資料1-1に基づき説明が行われた。また、金融ADR・オンブズマン研究会会長の簗瀬弁護士から資料1-2に基づき当研究会についての紹介が行われた。

  • 原委員 資料1-1で、日本証券業協会は、ADR法の認証取得の意図はないと回答し、その理由として報告義務等の発生を挙げているが、報告義務はそれほど困難なものなのか。また、金融ADR・オンブズマン研究会に参加している法律事務所は大手ばかりであるが、これまでに行われた消費者からの苦情についての研究をどのように取り入れるつもりか。

  • 白石委員 日本証券業協会は、証券取引法に基づく苦情相談機能があり、主務官庁は金融庁である。ADR法という別の法律で主務官庁を持つと、一つの機能が二つの法律、別の監督官庁で管理されることになり事務負担が大きい。報告義務については、金融庁よりも法務省の方が、ボリュームが大きいと考えている。当協会は、すでに証券取引法上の認可機関として機能しており、ADR法の認証を取得する必要はないと考えている。

  • 簗瀬参考人 金融ADR・オンブズマン研究会に参加している弁護士は、顧客である金融取引業者のために仕事をするときには、最終投資家にも満足してもらえることが長期的には顧客にとってもベストだという立場で行っている。消費者からの相談を受けることもあり、日夜さまざまな観点に関心を持って勉強している。実際のトラブルがどのようになっているかの調査は、金融ADR・オンブズマン研究会で検討していきたい。

  • 高橋委員 資料1-2の設立趣意書には「統合的・横断的な金融サービス紛争解決制度の設計が求められている」とあるが、ここに記載されていることまでは、すでに99年頃に金融審議会で検討されている。その結果、暫定的に金融トラブル連絡調整協議会が設けられた。現在は、制度設計というよりはお金と人の問題で組織が立ち上げられない状況。金融ADR・オンブズマン研究会は当協議会にどのように貢献して頂けるのか。

  • 簗瀬参考人 どのようなADR機関がベストかを研究したいと考えているが、お金や人の問題も含めてどのようなことが可能かについても研究していきたい。金融機関や金融サービス業界がADR機関の意味を積極的に受け止められる点は何かを吟味して制度の設立に向けて協力していきたい。

利用者相談室満足度調査について

金融サービス利用者相談室長の伊藤委員から資料2に基づき説明が行われた。

  • 高橋委員 金融トラブルにあう若年層や老年層が増加しているところ、金融サービス利用者相談室の相談者は中年層が多いことから、自分のトラブルの相談ではなく、親や子のトラブルについて相談している可能性がある。今後も利用者満足度調査は継続して行われると思うが、その際にはこの点についても調査して頂けるとありがたい。貸金の相談もあると思うが、多重債務者プログラムに則った相談対応や相談室の今後の取組みについて伺いたい。

  • 伊藤委員 今後も利用者満足度調査を行うか現時点では決めていないが、実施する際には参考にさせて頂きたい。多重債務問題については、どのような対応のあり方があるのか検討していきたい。

日本司法支援センター(法テラス)の概要について

日本司法支援センター(法テラス)の第一事業部情報提供課関課長から資料3-1~3-5に基づき説明が行われた。

多重債務問題解決のためのカウンセリングシンポジウムについて

金融庁総務企画局信用制度参事官室の大沢課長補佐から資料4に基づき説明が行われた。

  • 原委員 金融庁の相談室も法テラスも振分けが中心業務で、消費者センターも弁護士会等に回すことがあり、多重債務者のたらい回しが心配されるので、相談室、法テラス、消費者センター、自治体、貸金業協会と連携して取り組んで頂きたい。

平成18年度における業界団体・自主規制機関の苦情・紛争解決支援について

事務局から資料5-1~5-4に基づき説明が行われた。

  • 原委員 苦情・紛争解決支援機関の従事者のスキルアップが課題であると回答している業界団体が複数あるが、この点はどの団体も苦労していると思われるので、工夫している事があったら紹介して頂きたい。

  • 辻委員 銀行とりひき相談所は全国に51箇所あるので、なかなか一堂に集まる機会が少ないが、毎年1回研修会を開催して事例研究を行っており、その際には消費者団体の方にも参加いただいている。また、東京に集まることが難しいということで地域ブロック別に会合を開き、東京から職員が出向いて研修を行うことも検討している。その他、相談・照会回答事例集Q&AのCD-ROM(項目を入力すれば回答が出てくるもの)を作成、毎年更新して各地の銀行とりひき相談所に配布しており、これを利用して相談対応水準の均一化を図っている。

  • 原委員 銀行は、扱う金融商品の幅が広く研修は必須である。消費者センターの金融担当の相談員は、かなりの頻度で研修を行っているが、これと比べて全国銀行協会の年1回の研修では到底追いつかないと思う。

  • 辻委員 地域ブロック別の研修を実施するなど、さまざまな金融商品に対応できるよう研修の頻度を高める方向で検討したい。

  • 坂本委員 日本損害保険協会では特に電話応対のスキルアップが図れるよう検討しているところ。

  • 竹中委員 本部には専属の相談員が13名いるが、地方は相談業務だけでなく一般の業務も行っており、人数が少ない中での相談・苦情対応やストレス等の問題を課題として意識している。一堂に集めて研修を行うのが困難であり、年1回のブロック研修や全国の事務局長会議で対応している。

  • 白石委員 日本証券業協会も、生命保険協会と同様の課題を抱えていた。しかし、今年の7月から、苦情相談業務を東京と大阪に集約し専任者を置いて対応する。対応の平準化、情報のリアルタイムでの共有化ができ、効率的だと考えている。それに併せてフリーダイヤルを導入する。苦情対応業務は基本的に電話対応が可能であるが、あっせん業務は相対が基本なので集約はせず、従来どおり全国9センターで行う。

  • 土田代理(青山委員の代理)資料の1-1で、各協会はADR法の認証、認定投資者保護団体の認定を受けないとしているが、各協会には苦情から紛争解決に至るシステムができあがっており、ADR法の認証を受けてもいいのではないか、また、認定投資者保護団体の認定も受けて頂きたい。

  • 竹中委員 ADR法の認証については、1年後に再度検討することとしている。また、認証を受けた団体等の状況も見ていきたい。認定投資者保護団体については、現在、細部にわたって検討している段階である。

  • 原委員 苦情解決支援の状況について、解決されていない件数が多いのが、生命保険協会と日本商品先物取引協会である。日本商品先物取引協会については、損金請求に関する苦情であり、ある程度分かるが、生命保険協会については、もう少し取組みについて考える必要があるのではないか。

  • 竹中委員 18年度は、まだ検証中の数字である。17年度で言えば、苦情の総受付件数が6,898件であり、相談所で解決したものと助言のうえ各保険会社の担当窓口を紹介したものが86%である。保険会社に協会を通じて解決依頼をしたものが14%だが、そのうち解決したものが53%である。苦情解決支援は各会社に協力要請しているが、相談所においても苦情の中身を分析し、より解決しやすいようにしている。

  • 原委員 生命保険協会は、不調件数の中に、一方的に社長に謝罪を求めたようなもの等も含めているが、他の団体と同様な相談、苦情、紛争の定義で実態を把握して頂きたい。

  • 浜地委員 45件は、苦情処理の段階での不調件数であり、その後、あっせん、調停に移行し解決したものがある。

  • 石戸谷委員 全国銀行協会は、相談件数42,083件に比べ、苦情解決支援の申立てを受け付けた件数が586件と非常に少ない。資料5-1で、「クレーム等」が別途2,372件としているが、資料5-4の事例を読むと明らかに苦情にあたるものをクレーム等としている。苦情とクレームの定義について伺いたい。

  • 辻委員 苦情の定義は、全銀協の規則の第4条で「会員銀行に責任あるいは責務に基づく行為を求め、顧客が当該会員銀行に対して解決を求めているもの」をいうとしている。クレーム等とは銀行とりひき相談所の職員が商品説明をして納得を得られたものや御意見として伺ったものをいう。資料5-4の事例は、銀行の個別の商品の問題であり、銀行とりひき相談所としてはそこまで立ち入ることは難しく、なかなか解決できない。

  • 石戸谷委員 結局、資料5-4の事例は、苦情か、クレームか。

  • 辻委員 この事例はクレーム等にあたる。

  • 石戸谷委員 中途解約での元本割れ可能性の説明がなかったことについて顧客がおかしいと言っている場合は苦情に当たると思うが、これも苦情に当たらないのか。

  • 辻委員 クレームか苦情かは見極めがつきにくいものもある。当協会の定義は、苦情を「顧客が解決を求めているもの」としている。

  • 原委員 この協議会でモデルを作った時に、相談と苦情と紛争とに定義を分けた。全国銀行協会は、当時、苦情が少なかったが、そんなはずはないとの指摘を受け、クレームという定義を作ったと承知している。いまの説明では、苦情にあたるもののうち後に顧客が納得したものをクレームに入れている。クレームという定義は内部の整理であり、実際には「苦情」として分類し、そのなかで「納得いただいた」とか「解決した」の分類になるものと思う。

  • 辻委員 以前に、苦情の件数が少ないことから、苦情以外のものも分析したほうがいいというご指摘を受けたことで、新たにクレーム等という分類を設けた。

  • 原委員 全国銀行協会は、苦情という言葉をあまり表に出したくないという感じがあるが・・・。今回の投資信託の窓販問題での三菱東京UFJ内部の話を聞いても、苦情がないことが表彰され、ただ単に苦情は少なければいいという発想があるのではないか。

  • 辻委員 我々にも銀行にも苦情を隠そうという意識は、現在はなく、むしろ苦情は苦情として分析し知識として蓄積するようにしている。苦情を隠すという考え方は、消費者保護の観点から望ましくないと考えている。

  • 高橋委員 それならば、苦情という分類で行って頂きたい。金トラで2000年から検討を始めたときに、全国銀行協会の委員もWGに出て、この定義を皆で決めたのに、それを勝手に変えることが問題である。独自の定義を当協議会の場に出すことは、協議会のメンバーとしておかしいので検討頂きたい。

  • 坂本委員 苦情の定義について、日本損害保険協会では、昨年度の上期までは、会員会社に解決依頼を行ったものを苦情としてカウントしていたが、下期からは、不満足の表明があったものすべてを苦情としてカウントするようにした。

  • 岩原座長 定義の問題は、ずっと当協議会で懸案事項となっている。共通した理解、言葉で整理されることが重要なので、各団体とも共通の定義で行って頂きたい。

  • 井上委員 (1)紛争解決支援の件数が少ないが、すべて拾いきれているのか。(2)業界団体の意見が会員企業を拘束するところとしないところがあるが、全国銀行協会の仲裁センター利用の事例で、銀行側の弁護士が当日欠席し不調となった事例があった。このようなことが起こってはならないが、どうなっているのか。(3)紛争解決支援における利用者の満足度についてどのような調査、把握をしているか。苦情・紛争解決支援に対するインセンティブとして、マーケティングの発想からは、利用者に対する満足度調査は欠かせないと思うが、十分な取組みがなされていない。以上の3点について伺いたい。

  • 土田代理(青山委員の代理)消費者からは、業界団体のADRは偏っているのではないかと思われる傾向がある。ADR法の認証によって、中立、公平さが担保されるので、積極的にADR法の認証を受けてほしい。

  • 竹中委員 紛争解決支援件数は、裁定審査会が発足した平成13年度は4件、14年度は14件、15年度は15件、16年度は23件、17年度は33件、昨年度は20件。裁定審査会のようなADRは、中立、公平性が重要であると考えている。協会としてのPRに加え、会員企業におけるPR、例えば、約款にも記載しPRを促進している。会員企業が、裁定審査会の決定を拒否したことはないが、あれば社名公表等により対応することになっている。満足度調査は、今後の課題として検討していきたい。

  • 高橋委員 全国銀行協会のとりひき相談所では、消費者が苦情解決支援を申し立てても、消費者が納得させられている状況があるのではないか。また、全国銀行協会では仲裁センターの利用を消費者に促していないのではないか。全国銀行協会の仲裁センター利用の2件のうち1件が不調となっていることについても、業界団体として銀行の対応を把握するべきである。消費者が被害を被害と気付かないこともあるので、そのような消費者を探し出して解決支援するという観点が必要ではないか。自前で紛争解決支援機関を持っているところは、それなりに行っていると思うが、自前で持っておらず仲裁センターを利用している団体は、それ以上の努力をしなければ、紛争解決支援機関を持っているとは言えないと思うが、いかがか。

  • 辻委員 今年の5月からは、各地の銀行とりひき相談所で受付けた苦情解決の解決、未解決についてフォローアップし、また、3ヶ月以上未解決の苦情は仲裁センターを利用してもらうよう促すこととした。また、先ほどの仲裁センターでの不調の事例は、当方としても全く想定していなかったことであり、当該銀行に対して抗議したところである。銀行協会としてもフォローアップは行っており、現在、地裁に移管されている状況である。

  • 竹中委員 何年も経つと会員企業がADRの意味を忘れることもあるので、裁定審査会の委員と各社の担当者を集めて会合を持った。これにより利用者及び各社の役に立っているという意識を共有できた。紛争解決支援件数の少なさについては、会員各社で設置している再審査制度での対応がきちんとなされたため、協会に持ち込まれる苦情・紛争が減少していることも考えられる。

  • 井上委員 まだ周知が足りず、会員企業がもっと積極的になってもいいのではないか。現在は、各協会のパンフレットが会員企業の店頭に置いてある程度と思うが、各会員企業の商品販売資料の中で周知して頂きたい。

  • 高橋委員 業界団体が何かアピールするもの、例えば認証マークを作って、これがついていれば協会が責任をもって解決するというような取組みの検討はされたのか。

  • 原委員 取引に入る前に、苦情・紛争解決支援機関の存在を消費者に積極的にアピールして頂きたい。

  • 坂本委員 保険業界では、重要事項の周知が不十分だったことも今般のトラブルの根底にあったといえる。現在、会員企業が契約者に渡す重要事項説明書に、当協会の相談窓口と紛争解決支援機関を明記することとしている。これにより周知が進んでいると思う。今後も更に周知の努力をしていきたい。

  • 石戸谷委員 紛争と取引は密接な関係があると思うので、苦情・紛争を分析して取引のあり方を考えていくよう、前向きに考えて頂きたい。

  • 原委員 苦情・紛争を経営に活用することが重要であり、会社のトップ層で活かして頂きたい。投資性の強い金融商品は横断化が進むと思われるので、認定投資者保護団体について、検討を進めて頂きたい。

以上

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金融庁総務企画局企画課内 金融トラブル連絡調整協議会事務局
電話番号:03-3506-6000(内線3682、3647)
担当:丹下、杉谷

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