第18回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1. 日時:

平成14年12月12日(木)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館 共用第一特別会議室

3. 議題:

苦情・紛争解決支援のモデルのフォローアップ(続き)及び機関間連携のあり方について

4. 議事内容

(苦情・紛争解決支援のモデルのフォローアップについて(続き))

  • 自己評価結果表の概要と議論のポイント(前回資料より関係部分抜粋)について資料1を用いて事務局より説明があった。

    • 日本商品先物取引協会です。資料2別紙(各団体の自主的な取組一覧)の2枚目のところで△がずっとあるが、当方は仲裁センターを使っておらず、独自に紛争処理機関を設置しているので、ここの△には当たらない。

      • 資料の訂正をする。

    • 項目3-15(結果報告)について、申立人への確認がほとんど行われていないという評価だが、規定は二つの文章から構成されている。一つは事業者団体に申立てがあった場合にその結果についての確認、もう一つは申立人と会員企業が相対交渉になった場合に相対交渉の結果を報告してもらうという構成になっている。実際には、両方できていない場合にのみ対応できていないという形で回答されたのか、それとも一つの場合でも対応していないと回答されたのか、評価をされた側から見てどうだったのか知りたい。

      • 事務局としては、各協会の自己評価はそのまま置いておいた上で、チェック項目が二個満たされていればAに、一方だったらB(概ね実施)と考えていた。

    • 事務局としては、各機関が評価をされたものをそれ程深く中に踏み込まずにそのまま書かれたということか。

      • 議論のたたき台なので、あまり主観を入れず、何処にチェックが入っているかということを洗い出した。項目3-15(結果報告)の最初の一段目の規定は、相対交渉の場合にどちらからその結果を聞くかということで、企業側から聞くか申立人から聞くかを選択できる形になっている。その二段階目として、相対交渉の場合において団体が事実確認を行うか否かについてみた場合、申立人への確認という手順がないことが、相対交渉だから問題ないという言い分があるのかもしれない。もともとのモデルの趣旨の書きぶりもあるので、申立人への確認が無いこと、つまり、会員企業から聞いたことで終了とすることが十分か否かは協議会で議論していただきたく、事務局としては判断していない。

    • これを見る限り、相対交渉の結果は事業者団体には報告されていないと思うので、そこは充実して欲しい。

    • 相対交渉に入った場合、各団体では一般的にどのように対応しているのか。個別企業から報告を受けるのが普通なのか。日本証券業協会においてはどうか。

      • 日本証券業協会では、報告有りのところに印を付けているが、資料2では規則で規定はしていないとなっている。次に、「苦情対応結果の把握」のところでは申立人への確認のところに印を付けている。「苦情解決支援機関から申出人への対応結果の報告」については、有りと印を付けて報告している。これは、苦情処理として当然なので規則としては規定していない。実際の運用としては、B(趣旨等を反映した形で概ね実施)に印を付けて報告している。会員会社から報告なり協力なりを求めることができるということ自体が規則にあるので、個別の案件の結果報告は当然受けている。

    • 協会の方でも、個別企業から報告を受けているということで良いか。全国銀行協会や信託協会においても、団体側からも申立人に報告するということになっているのか。

      • 全国銀行協会に規則第4条というものがあり、会員銀行の迅速かつ誠実な対応ということを謳っている。その後で、会員銀行は銀行としての対応結果を私どもの相談所に報告することになっている。次に第5条で、顧客から「説明して欲しい」という話があった時は、相談所の方から説明をすることになっている。ただ、会員銀行から説明した方が良いという場合には、会員銀行から説明を行っている。

    • よろず相談所の方では、会員銀行からの報告に基づいて、自分でも直接説明されているということか。

      • 顧客が説明を希望される場合は、説明を差し上げるということになっている。

    • 顧客に説明するに足りる十分な報告を頂いているということか。

      • そうである。

    • それで顧客は、納得してくれる方が多いのか。

      • これは、ケースによると思う。今までの経験で言うと、どうしようも無いということはなかった。

    • 信託協会は、全国銀行協会と同じような対応をしている。相対交渉をしている加盟会社から毎月報告を受け、その状況を把握するようにしている。かなり込み入った話になると、申立人の方から連絡があるのでそこで調整するというやり方をとっている。

    • 項目3-15についてはよろしいか。次に項目3-16(苦情未解決の場合の取扱い及び紛争解決支援への移行)についてだが、これは紛争解決支援機関を設けずに仲裁センターを利用されるという考えの団体が多いが、仲裁センターを利用する場合の問題点は、後で機関間連携として検討したい。

    • 日本商品先物取引協会です。前回配布資料の別紙2の項目3-16で「規定×」となっているが、これは私どものミスで、規則はあるので修正していただきたい。

    • 項目3-17(措置・勧告)については、規定はほぼ整備されている。他方、措置や勧告内容について公開するかどうかについては、公開しないところがほとんどである。生命保険協会は公表されているが、他の団体では何か問題があるのか。実務的に、公表に伴って問題があるということであればご指摘頂ければと思う。生命保険協会では、具体的にどれ位の内容を公表しているのか。

      • 生命保険協会ですが、モデルを踏まえ、今回初めてこの規定を入れており、公表したという事例はまだ無い。あれば公表する予定である。

    • その場合、具体的にどれくらいの内容を公表することを考えているのか。

      • 対象となる行為自体が、相談所規定に反する行為を繰り返し行うなど悪質な行為として定義している。措置・勧告を行った場合はその内容と企業名、公表の方法は相談所リポート、ホームページを予定している。

    • 他の団体では、そのようなことは検討されなかったのか。

      • 日本商品先物取引協会です。私どもの方では、措置・勧告をしているが、その段階では公表しない。苦情処理規則に基づく措置に応じなかった場合には、制裁対象になるので、制裁規程に基づいて措置される。制裁された場合は、公示されるので、苦情処理の規則ではないものの、別の規程との関係で一定の効果が図られる仕組みになっている。

    • 日本証券業協会ですが、私どもの方でも紛争処理規則第1号というのがこの関係の規則である。これは日本証券業協会の規則なので日本証券業協会の規則に違反した場合には会員処分(定款上の処分行為)ができる。定款上の処分が行われれば公表している。会社名、行為の内容等をホームページを含め公表している。ただ、勧告については、反省を求めるという趣旨なので、現在のところ公表はしていない。処分については、該当すれば規律委員会、理事会の決定を経て公表することになっている。

    • 公表されることについては、当該個別企業としては抵抗感はあると思うが、ルールを実効的なものにするためには必要だと思う。特に異論がなければ、公表の規定を何らかの形で整備していただければと思う。

      次に項目3-18(細則)について、これは大体対応していただいているようである。特に無ければ、一応ここで苦情解決支援規則の部分は終了したいと思う。以上で紛争解決支援規則を除く部分についてひととおり確認いただいたわけだが、過去の議論の内容等を基に資料をまとめている。それが、資料2(フォローアップの概要(案))である。

(フォローアップ結果の概要(案)について)

  • フォローアップ結果の概要(案)について資料2を用いて事務局より説明があった。

    • フォローアップ全体を振返るという意味で、ご意見やご質問等ご自由に発言いただければと思う。

    • 再評価ということが度々出ているが、再評価ということは必ず実施するのか。今の案よりよりもかなり良く、その先をまた行っていると期待してよろしいか。

      • 再評価の位置付けというのは、以前、時間の流れの中で協議会と自己評価がどのような係わり合いになるかというものをお配りしたことがあったが、今回の議論(フォローアップ)で色々出た意見を踏まえた上で、進展しているか否かをチェックする。それに更に加えてということがあるかどうかは、各団体の自主的な取組みになるので、再評価の時にはそのあたりをチェックする。私が期待するところでは、たぶん進展するのだろうなと思っている。

    • 項目3-14(解決案の提示及び尊重義務)だが、これは事業者団体に苦情を持って行っても、またその当該企業の方に回されるというところが消費者側の不満としてある。事業者団体が主体的に苦情・紛争解決に乗り出して頂きたい。ここでは、そういう書きぶりで評価の方向性を出しているが、実際はどうか。相対交渉に回されたとしても、その結果は必ず事業者団体に回答をもらって、申立人の方にも確認するとか、それから事業者団体が責任をもって最終的な苦情相談の解決までやっていただくということを是非お願いしたい。私も銀行協会に係わって感じることは、相対交渉に回されてそれ以上何処まで乗り出せるかは、私自身疑問を感じている。他の団体はいかがか。

    • 全体についてコメントさせていただきたい。資料2の概要(案)というものについて、全体として私どもとしてお願いしたいのは、業界としても個別銀行をもって苦情解決の体制整備について努力をしているので、その辺については是非ご理解を頂きたい。それから、このモデルの規則の位置付けだが、私の印象では、当初想定されていたものとやや違うような点が出てきているので、若干違和感を感じる。そうは言っても、今までの議論の中で、いくつか私どもの方でも変えていかなければいけないところもあり、全国銀行協会としてはできるものは積極的に変えて行きたいということで、年度内には改正していくところを議論している。以上が全体的なコメントである。具体的なコメントをさせて頂くと、一つは項目3-14(解決案の提示及び尊重義務)について、資料2の307ページをご覧頂きたい。ここでモデル規則の内容というのが左側に出ていて、そのモデル規則の具体的内容というのは、「相対交渉によて苦情解決されなかった場合等に苦情解決支援機関が双方からの事情聴取や提供された資料等に基づいて、解決案又は解決のための方向性を提示できることとする。」という「できる規定」である。それから、その下の趣旨のところの注で、「この項目は、紛争解決支援手続きを設けていない機関の場合を想定したものである。」ということになっていて、その辺をふまえて考えていく必要があるのではないか。先ほどの資料2の中での意見は、そういうものを規定することが求められるというような意見であり、私どもの考え方とちょっと違っているなと感じている。私どもとしては、苦情解決の支援というというのは、具体的には個別の取引事案なので基本的に相対交渉で考えるべきで、これが不調の時には、私どもの機関より専門的かつ公正中立的な機関の力をお借りする方が効率的ではないかと考えている。ただ、具体的に原委員からお話があったが、十分かどうかということはあるかもしれないが、私どもの相談員の現場としては、その解決案そのものを提示することはやっていないが、顧客と会員との間に立ってできるだけスムーズに話し合いが進むように誘導は日々やっている。その中には、お客さまの方から最終的に解決がなされて、お礼をいわれるケースもある。実際に現場でやっている人間からするとそういう顧客からの声を聞くと非常に励ましになる。そういう努力を日々やっておるということでご理解をいただければと思う。

    • 最初に三つの一般的な指摘を頂いて、その後で項目3-14に係わるご意見を頂いたが、一般的な指摘の第二点で、モデルについての位置付けについて、若干違和感を感じるところがあるということをおっしゃっていたが、もう少し具体的にどのような点について違和感を感じているかを説明いただきたい。

      • 今の項目3-14について、「定義できることとする」という表現のところで、できるところがやればよろしいのではないかという理解でおり、それが求められるというような意見で資料2の中に掲載されているのが、私どもの理解と少し違うということ。

    • この問題は、まさにこの後議論する機関間連携の、特に仲裁センターに委嘱する形になる場合に、その送り出し先になる各個別業態ADRとしては、どこまでの事をすべきかという問題。後の機関間連携のところで本格的な議論をしていただきたいと思う。

    • 今の全国銀行協会の話は、要するによろず相談所は、受けた相談を相手の企業に渡してそこで相対交渉しろということで、全国銀行協会は相談を受けるのみか。後で相対交渉がだめだったから仲裁センターに回すということは、全国銀行協会の役割としては、相談しか受けないのか。

    • 実際の現場では、単に私どもの相談所もお互いの言い分をそのまま聞いているわけではない。当然、顧客の言い分を十分聞いたうえで、顧客の理解が間違っているということもあるので、スムーズに交渉が行くような土壌作りは努力している。単に顧客から来たものを当該銀行に丸投げするということではない。

    • 日本商品先物取引協会です。私どものやり方が金融関係機関についても当てはめられるかどうかわからないが、当方では、バックに紛争処理段階もあるので、苦情段階では当事者同士の話し合いが原則で、私どもの相談員が間に入って仲を取り持つということはしないものの、その解決のためにお互いに折り合いの付くところで相談員がアドバイスをしたりすることはある。それで解決できなくても、次のステップで第三者の専門家が間に入って取扱われるので、苦情の段階でもより踏み込んだ対応が可能になると思う。

    • 独自の解決支援手続きをお持ちのところは、そういう形の対応になる一方、仲裁センターに委嘱するというところも増えている。各業態のADRとしてどこまでのところまですべきかというのが非常に大きな問題として出ている。

    • 今の話を伺っていて、また、そもそも論を申し上げなければいけなくなったと思う。この協議会ができたきっかけは金融審議会の中で、金融市場活性化のために必要な消費者保護策を講じなければならないということになり、その中で迅速、公正中立な業態横断的金融ADRが必要であるという議論がなされた。その中で、業界団体がそうした対応をできるかどうかという議論が金融審議会のワーキングループでもおこなわれ、消費者委員はそれはできないのではないかと申し上げていたが、業界委員は出来るということでやることになった。それが諸般の事情で無理であれば、移送等がある中で、責任を持ってやるためには項目3-14のような規定を設けることが必要であると、モデルを作る時に話合われたと記憶している。その方向に行くことが無理というのであれば、やはり業界団体を中心に金融ADRというのを考えるのが無理なのかなと、私としてはそういう結論に至らざるを得ないという意見を申し上げる。

    • お二方のお話にあったとおりであり、苦情・紛争の解決の現場から見ると、浜地さんの言われたとおり、後に斡旋・調停段階がある場合は、苦情で解決できるものはそこで解決し、解決できないものは上に上げることが出来る。大体こういうケースだと斡旋・調停段階に行った時に先例の積み重ね等があって、それが参考になって苦情の解決が促進されるということがある。元々このモデルを作ったときも、苦情段階と斡旋・調停段階をワンセットとして考えてきた。苦情のところだけを切り離してフォローというのは全く想定していなかった。弁護士会の仲裁センターに移行する時に、斡旋の当事者対等性をモデル案にあるようないろんな論点ごとに盛込むという、手続き上の修正はできるが、元々のモデル案の基本理念に盛込んであるのが、先ほど高橋さんが言われたような金融審からの色々な議論の経緯である。

    • 先ほどの違和感というところの一部になるかも知れないが、資料2の4の(2)の評価基準のところに関して、私どもも規則の整備を進めており、具体的に申し上げると、項目1-2(苦情等の原因解明及び再発防止)、2-1(苦情等の定義)、2-2(消費者への周知)、2-4(ユーザーフレンドリー)、2-5(人材育成)、2-6(苦情・紛争解決支援担当者等の守秘義務)、3-4(会員企業の責務・行為準則等)、3-6(苦情申立人の範囲)、4-18(事実調査)、4-23(会員企業の受諾義務等)について改正の議論を始めている。その中で、規則を整備して実行するというのが一番良いが、私どもの実感としては、規則に書かれなくても実態はやっているところをもう少し評価していただきたい。新しい分類方法によると、規則が無くて実態が十分であってもCだということになり、私どもの実感と違う。

    • たたき台としてこれを作ったときに同じようなことは感じた。杓子定規に規則が有るか無いかを見ることは、規則が有ろうが無かろうが実態面で対応してもらうことが消費者(利用者)としては望ましいなということと矛盾すると感じた。ただ、ここでは、規則を整備することがまずありきなのではないかと思い、このような(案)とした次第。

    • 実施の評価を含めた評価の基準を作り直すということは考えられないか。

      • 規則は規則であって、実施は実施で別にあるという方が良いとは思う。

    • 場合によっては、二つの表の組み合わせがある。そこ辺りは、今後工夫していただく余地があると思う。この資料2は、先ほどのフォローアップの残りを検討した際に頂いたコメントや只今の議論を踏まえた修正を行った上で、(案)を取った形で取りまとめさせていただきたいと思う。協議会としてのやり取りを踏まえて、各業界団体においては、引き続き規則の整備や運用の改善を図っていただきたい。

(機関間連携のテーマ別・パターン別論点整理)

  • 機関間連携のテーマ別・パターン別論点整理について資料3を用いて事務局より説明があった。

    • 機関間連携については、これまで何度も議論してきたが、前回の協議会で山本委員から紛争解決支援規則をベースにした論点の整理をしていただいた。資料3は、それに加えて各団体間の移送についても整理している。

    • 業界団体間の連携についてはそれぞれ整理されつつあるが、中の規定振りで細則の方まで下りて行くと、それぞれに責任があるところが出て行って解決に当たることになっている。私としては、それぞれに責任があるかないか分からない段階でも、同じテーブルに着いて頂きたいと思っており、そこあたりに齟齬があるような気がしている。責任がはっきりしない段階でもお互いにテーブルに着くという規定にし、係わる人は全て同じテーブルに着くようにして頂きたい。二点目は、弁護士会の仲裁センターの件である。金融審議会での議論としては、統一した横断的な第三者的な苦情処理機関をという話をしていたが、その時、事業者団体の方々が自分達の責任でやるとおっしゃったのでこの協議会ができた経緯がある。是非、ご自分達の責任で考えて頂きたい。そういう意味で考えると、仲裁センターの方に流れて契約をしていることが不可解に思える。確かに銀行協会がおやりになっているのでそれに倣っているのだと思うが、銀行協会でおやりになっていることの検証が必要だと思う。銀行協会でやっていても、例えば、各金融機関が本当に資料提供をするのか、結果が出た場合に尊重するのか、という点の手当てが全くされていない。それから、石戸谷委員が言われたように、仲裁センターの前提は、当事者対等であり、事業者対消費者のように格差があるものを想定していない。消費者側からすると、そういったところに投げ込まれるという印象もあり、みなさんはどのように考えているのかということである。それから、例えば、ここに弁護士会仲裁の現状と展望という本があるが、是非この本を見ていただきたいと思う。現状としてはかなり裁判に因っているというか、判例に因っているというところがあって、本当に紛争解決機能を担えるのかどうか。もともと協議会に金融審議会からあずけられた時の話としては、ご自分達の責任で金融市場の活性化に繋げるということで始まったことにもかかわらず、どういう検討の結果で仲裁センターに任せるという判断をされたのかを是非お聞きしたい。

    • 弁護士会の仲裁センターでは、手続きに対する応諾義務と文書等の提出についての協力義務、調停案なり斡旋案が出た時の尊重義務というのが全然ない。このモデルに従った場合と弁護士会の仲裁センターで取り扱った場合で、中身に違いが出てくる印象をもたれると思うが、今まで約1,800件の申立てを受けているという中で、約600件を解決している。文書の提出がネックになって解決に繋がらなかったという案件はなかった。先ほど解決基準について言われたが、判例を大きく外れることはできないが、必ずしもその判例で採っている基準そのものを適用しているわけではない。むしろ判例より先行している事例は複数ある。金融の関係では通帳等の盗難事件について5件ほど申立てがあった。判例に因ると基本的には過失の有無によって決まるが、例えば過失の割合を決めてあるケースでは、90%強の預金返還を認めたものもあったし、あるケースでは60%程度認めたということで、必ずしも裁判所の判例の考えに従って全事件を解決しているわけではない。弁護士会の仲裁センターに事案が送られることを弱い消費者が投げ込まれると言われたが、基本的にそういうことはない。建て前としては中立・公正と言っているが、当事者の力関係に格差があるというのは消費者事件に限らずあらゆるケースについてあるので、ある程度弱者の立場に立った見方をしているケースが多いと考えている。手続応諾義務、文書提出義務、結果尊重義務のうち仲裁センターとしては、話し合いのテーブルに着いて欲しいという意味で、弁護士会の規則の中に載せることはできないが、手続応諾義務は、業界の中で会員企業に対して手続への応諾というのは決めていただきたい。東京の三弁護士会の場合は、12月から銀行協会と具体的な協議に入ることになっているので、その三つの点について年度内には見通しが出てくると思う。

    • 大川委員に質問。仲裁センターの取扱い件数は非常に多いが、その中で金融に関するものの割合、件数を教えていただきたい。それから、原委員の弱い消費者が投げ込まれるというところをもう少しフォローさせていただくと、金融商品は他の商品と違って目に見えないので、特に文書、資料が重要な意味をもってくる。事実確認がとても難しいにも係わらず、文書提出義務がないとなると、消費者としては素手で戦わなければならない状況になって、業界団体で責任をもってやるより不利になるのではないかと感じざるを得ない。その点についてのご意見を聞かせていただきたい。判例に頼らないものして、通帳の盗難事件いわゆる印鑑偽造の話があったが、私が承知している限りでは、仲裁センターに行っている銀行の案件はほとんどそれではないかという噂が流れているので、その辺の事実関係の確認をお願いしたい。他の案件がどうして出てこないのかをお聞かせ願いたい。

    • 先ほどの専門的なところに対応できるかできないかという問題については、各弁護士会では、助言者とか専門委員という制度を設けている。東京三弁護士会の場合には、専門家仲裁人という制度を設けている。東京地裁の調停委員の経験のある方に名簿登載してもらい、専門的なフォローアップは進んでいると思われるが、個別金融分野については専門委員を現在設けていない。ただ、弁護士の中には金融関係の知識に詳しい方がかなりいて、具体的な事件の解決にあたっては、そういう弁護士を担当させて解決を早くするという形をとっている。それから金融は目に見えないということだが、具体的にこの書類があればある事実が解明できるというような段階まで行くことはない。ほとんど当事者の要望している書類が出てきているというのが実情ではないかと思う。裁判手続きに近いような深刻な対立になるケースで、この書類がどうしても必要というケースは、仲裁センターに来ていないということではないと思うが、そういう場面での争いが起こったということはあまり報告は受けていない。それから銀行協会だけでなく、私自身の経験では、金の先物取引やその他ノンバンクと銀行との争い、あるいは事業者と銀行の為替に関する取引の争いとかかなりの案件が上がって来ている。金額的にも何十億円単位の損害賠償を認めたケースもあり、銀行関係だけでなくかなり多岐に渡っていると感じている。具体的に金融関係のどのような紛争のパターンがあるのかという集計は行っていない。

    • 今の質問で、銀行協会から仲裁センターにお願いしている案件というのは、通帳の紛失盗難事件だけでないかという質問だが、たまたま顧客から要望があった。特にそれだけに限って仲裁センターに取次いでいるわけではない。それから、実際に係争中の案件もいくつかあって、それは通帳の盗難紛失事件以外の案件も出てきている。最近は、邦銀・外銀も私たちのメンバーになっているが、やはりコンプライアンスという問題についての意識が高まっている。そういう中で顧客とのトラブル案件について、いろんな形で解決を図っていくということがあるが、仲裁センターという非常に公正中立な機関を通すことによって銀行のコンプライアンス問題についても十分クリアできるという考え方で対応しているところもある。そういう意味では、私どもの仲裁センターの利用というのは、業界団体で紛争処理機関を作ると逆に業界色が強くなるので、むしろ外部の機関が良いのではないかという議論があった。そういうものを勘案し、外部の公正中立な機関を利用した方が良いのではないかということでこれまでやって来ている。実績の面からも、十分な役割を果たしていると思っている。

    • 一点補足させていただきたい。証券関係の申し立てというのは結構多いが、これは証券取引法の省令の関係で証券業協会の専管になっているので全て証券業協会に回さざるを得ないという状況である。

    • 通帳盗難の件が偶然だということだが、一つ慣れてくると同じ案件は受け入れ易いからどうぞということがあって、新しいものについてはなかなか取扱えないのではないかという憶測というか疑心暗鬼を持たざるを得ない。過去に生命保険の査定委員会の時に、昭和40年代からありながら処理した案件が3件しかなく、それが全部告知義務違反だったという問題があった。その間には変額保険とか色々なことがあったにも係わらず、上がってこなかったということがあるので少し心配している。現在、生命保険協会も非常に工夫していて、今の審査会では色々なものを扱っている。仲裁センターという外の組織で金融専門は設けていないということだが、今後、多種多様な金融機関が提携していった時にどこまで対応していただけるのかという不安もある。書類について、フリーローンとか変額保険問題でそれさえ出てくれば解決するというものが出てこないが、その辺の信頼性を金融ADRが確保して、初めて消費者は安心して金融ADRを利用できるのではないかと常々感じている。

    • 先ほど、橋本委員が言われた事業者団体の中でやると事業者に有利な結果が出るのではないかという消費者側の懸念もあるということだが、確かにPLセンターもなかなか事件が上がってこない。やはり事業者団体の中でやると事業者に有利な形の結果が出るのではないかということで、足踏みをして弁護士の斡旋の段階で留まったり、訴訟に行ったりしているわけだが、これはPLセンターの運営のあり方自体の問題ではないかと思っている。PLセンターの独立性、透明性、公正さとかが確保できるようになっているかというところに非常に問題があると思っている。事業者側の責任でやることが消費者側に不利になるということとは直接結びつかなくて、PLセンターの運営のあり方、基本的な姿勢の持ち方に問題があるのではないかと考えている。金融審議会の一番当初の時にも申し上げているが、やはり事業者の責任で、統一的、横断的な苦情・紛争処理の機関を設けられるべきだと思っている。移送ルールをいくら定めたとしても、多種多様な商品が色々なところで販売されるので、皆さんが一致協力して自分たちの責任で立ち上げられることが一番なのではないかと考える。

    • 先ほどの高橋委員のお話の中で、通帳の盗難紛失以外はできないのではないかという話があったが、決してそのようなことはない。当然、仲裁センターの弁護士の方々は、それ以外の案件を当然やれるだけの能力をお持ちの方々がたくさんいらっしゃるという印象を持っている。それは、大川先生の方から説明した方がよろしいのではないかと思う。

    • 仲裁センターの解決事例集という二冊の本があるが、その中にかなり解決の事例が載っている。私自身もスイスフランで投資した人の事件の仲裁判断を出しているが、弁護士の中には、先端的な事件を扱っている人は結構いる。弁護士会では、最終的な判断については主任の仲裁人がやるが、専門的な知識については補助者という扱いで若い先生が補うという仕組みができている。新しい案件が出てきたら対応できないのではないかという心配はまずないと思っている。当事者が、専門性が足りなくて不満で申し立てを取り下げたとか、あるいは申し立てに応じなかったというケースはない。それと手続きをどのように考えるのかということだが、裁判所と同じ様に白黒を付けると、この証拠が出て来ればこういう事実認定ができるという形の手続きを想定しておられるのか、それとも何らかの形で和解を目指すと、そのためにどういうふうに合意形成をするか、間に入った斡旋人なり調停人が積極的に調停案を出して当事者を説得すると、あるいは当事者でもって話し合いをしていく中でそれなりの解決案を見出していくという方法を取るのか、手続き自体の性格付けというのがあって、恐らく弁護士会でそういう違いが相当あると思う。最近の傾向としては、当事者が解決案を決めていき、間に入る斡旋人はどちらかというと争点整理とか進行についての整理というものを中心に行っている。当事者間でどうしても整理ができない場合には、第二東京弁護士会では、裁定案制度というものがあり、一種の非拘束的な仲裁判断出して当事者がそれに応じるかどうかは当事者の判断に任せるという手続きになっている。この資料が出て来ればこういう事実が認定でき、その認定に従ってこういう判断をするといった考え方ではないわけで、そこがここのモデルで想定している手続きと弁護士会が行っているあるいはこれから行おうとしている手続きの間の違いと考える。

    • そもそもモデルが想定しているような紛争あるいは紛争解決への類型と少し違った形で仲裁センターは運営しているということか。

    • 基本的に、モデルは裁判所モデルを意識した点が多い。弁護士会で行っているのはそういう方向よりもできるだけ当事者が決めていくという形で和解を成立させるという方向に変わってきている。モデルで議論されている手続きと弁護士会がこれから行こうとしている手続きの間に若干ずれがある。

    • 私もワーキンググループの時から参加していて、その頃の議論の中にもあったが、まさしく今のように紛争解決の機関の性格付けも二つあって、ミニ裁判所のような形で白黒を付けるものと、そこに行かなくても解決できるものを救うというか、拾うという意味合いで、結局本当のところはどうだったのかということを明らかにするのではなく、当事者に納得してもらうように努めるというものがある。特に、法律的なことが分かっている第三者的な人が間に入れば争点を整理でき、当事者がそれぞれ言っていることが矛盾したり、齟齬をきたしているようなところをほぐして整理するというところに主眼がある。その上で事実認定については、最終的には完全に一致しないところが出てくるかも知れないが、そういう言った言わないのところを離れて、これぐらいでかたをつけるというか、言い方が悪いかもしれないが、納得をすると、矛先を納めるというような性格を目指しているのが一つだと思っている。私は、ADRとしてはこの方がより現実的ではないかと当時から申し上げており、今もそう思っている。恐らく弁護士会の仲裁センターはそういう方向を志向しておられると思う。また、そうではなくもっと白黒をつけるんだというのを志向するところがあっても良いと思うし、その方が最終的には望ましいのかもしれないが、当面の現実的な選択としては、このようなあり方も一つなのではないかと思う。そうするとその拘束力を与えるとかルールでそれを定めるという方向性よりは、どのようにその客観性を保って納得がいくような合意形成を手続き上定めることができるのかというところに主眼があるのではないかと思う。

    • 私もADRについては、納得が重要という点で、井上先生の話に賛成である。やはりこの金融機関のADRとしての各業界ADRが、その最後の仲裁まで行くのかどうかという点では、消費者としたら業界団体の仲裁があってもいいと思うし、弁護士会の仲裁もあってもいいと思う。ただ消費者としては、「そこしか行けないよ」と言われるのが一番困るのであって、その最後の仲裁を受ける時に、何処の仲裁が良いのかという選択は消費者がしたい。もし、先物でトラブルにあった時にそこの仲裁センターしか使えないというのであれば消費者としては困るが、仲裁センターがいくつかあって、その中から選択する方が安心できる。

    • 自主規制機関あるいは業界型のADRの場合と弁護士会の仲裁センターの場合における手続きの違いは今まで出た話のとおりである。目的とかも先ほど多少話したので割愛する。あとは判断のあり方がどうかというところで、合意形成でいけるものも確かにある。そこは弁護士会の仲裁センターでも解決するし、司法型の調停あるいは即決和解で解決するものも実際問題としてあり、弁護士会の仲裁センターの事例報告にもある。問題は、なかなか合意形成ができない場合にどのように解決するかというところである。参画団体の中でもっとも強く片面的拘束力を定めているところは日本商品先物取引協会の斡旋調停手続きだと思うが、そのような強い規則があっても解決までの間になかなか一致点が見出せず、やっと妥決点にたどり着くということもある。先ほどコンプライアンスの話が出たが、国民生活審議会の方でも自主行動基準の整備をやっている。社内規則等を含めて判断をしていくかどうかという論点もある。このモデル案を作った時のパブリックコメントに、大阪の弁護士が、イギリスのオンブズマンを見てきたことを踏まえて意見を出されていたが、イギリスの場合は法令、自主規制機関規則等を全部取り入れた上で判断して、それを金融機関側は尊重する、あるいは基本的に受け入れるという形で解決されている。なかなか合意形成が難しい時に、そういうものを全体として判断してどういう決着が望ましいのかというところがある程度ないと、合意形成が無理だから裁判しかないかという話になってしまうので、その感覚の違いがあると思う。

    • 色々ご意見が出て今日まとめるのは難しいが、だいぶ論点は出てきたと思います。本日はこれぐらいにして今日出た意見をもとに次回更にご議論いただきたい。

  • 議事資料の公表について了承された。なお、資料2については、今日の議論を反映させた上で公表することとなった。

(以上)

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話03-3506-6000(内線3517)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。

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