平成13年3月9日
金融庁

金融税制に関する研究会(第4回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第4回)(平成13年2月20日(火)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

─なお、第5回は、平成13年3月14日(水)に開催する予定。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 濱田・斎藤(内線3181)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙)

金融税制に関する研究会(第4回)議事要旨

1. 日時:

平成13年2月20日(火)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁会議室

3. 議事要旨

今回は、「金融商品への課税のあり方(その1)」として、株式譲渡益課税について、委員からの意見発表および自由討議を行った。

(委員の意見発表の概要)

  • 個人金融資産に占める株式の比率を諸外国(米英独仏)と比較すると、ここ数年諸外国では株式比率が上昇しているのに対し、わが国だけが低下傾向にある。企業、金融機関の持合い解消で市場に放出される株式が増加している状況下、個人株式投資家を育成するような政策が必要である。

  • 株式譲渡益課税について、制度面から国際比較をすると、諸外国では税率、他所得との損益通算、譲渡損失の繰越し、長期保有の優遇制度、個人の小額株式投資への優遇制度等が手当てされており(詳細は、別表参照)、わが国でも積極的に導入を検討すべきではないか。

  • 利子等に源泉分離が適用されているので、金融商品への課税の中立性の観点から、株式等譲渡益課税についても源泉分離選択課税を維持すべきはないか。

  • 個人投資家が申告分離よりも源泉分離を選択する傾向にあるのは、損得の問題というより、むしろ申告の手間が煩わしいためと考えられる。また、申告分離を選択しても、損益通算や譲渡損失の繰越が認められず、メリットが小さい点も影響しているのではないか。

  • 預貯金利子を含め全ての金融商品を総合課税または二元的所得課税(金融商品への課税を他所得から分離して課税)とし、確定申告するべきではないか。

  • 税率は、総合課税であれば累進税率を適用し、二元的所得課税であれば利子等も含めて例えば米国の税制のように20%程度に抑えるべきではないか。なお、株式は長期保有する場合、軽減税率を適用すべきではないか。

  • 申告分離を選択した場合には、諸外国と同様、譲渡損失の繰越を認めることが妥当ではないか。

  • 譲渡損失の繰越しや長期保有の場合の軽減税率など、諸外国の税制に匹敵するような株式譲渡益課税を導入し、個人投資家を、法人の持合い解消の受け皿としないと株式市場がもたないのではないか。

  • 株式だけ申告納税とすると、源泉分離で簡易な納税が可能な他の金融商品に比べて不利となるのではないか。

(自由討議)

  • 個人の株式投資は、投資信託を経由する場合もある。諸外国においては、個人の投資信託への投資についても、株式同様の優遇制度はあるのか。あるとすれば、わが国においても措置する必要はないか。

  • 長期保有の場合に優遇するよりは、税率そのものを軽減して対応すべきではないか。

  • 源泉分離において、みなし譲渡益課税を使用することに問題があるのではないか。

  • 株式売却時の所得が捕捉されて初めて、預貯金との公平性が議論の俎上に載るのではないか。所得の捕捉には、個人投資家は全て証券保管振替機構を利用するとか、各証券会社のシステムで小口投資家を名寄せするような体制を構築できないか。

  • 小額投資への非課税制度を導入すれば、かなりの個人投資家が申告の手間がなくなるのではないか。手間を理由に税制を歪めることは問題であるが、小口投資家優遇という政策目的にも適っており、検討の価値はあるのではないか。

  • 本人が自らの所得を把握するためには、納税番号制度の導入が必要である。

  • 譲渡損失の繰越について、繰越は無期限に認めてよいと考えるが、そもそもの損失額の把握を税当局は可能か。毎年確定申告しているならば認めてもよいと考えるか。損失の把握が難しい場合、把握するためにはどのようなシステム、体制を整えればよいか。

  • 入口段階では源泉徴収を義務付け(少額投資家についてはそれで納税終了とする)、一定額以上の所得を得た投資家のみ事後的に申告調整をさせれば、租税回避もなく、少額投資家も申告の煩わしさを回避できるのではないか。

  • 税を一度徴収して後日還付するのは、税当局の事務負担が大きいのではないか。

  • 課税の諸問題を全て解決しようとすると、結局納税者番号制に行き着くが、その実現が明確ではない段階では、源泉分離と申告分離を並列的に使用し、その適用も取引額で決めるなど、ある程度の割り切りが必要になるのではないか。

  • 現状、源泉分離が申告分離に比べて手続面等で有利となっている。申告分離に、譲渡損失の繰越及び長期保有に対する優遇措置などを与えるべきではないか。

  • 将来、申告分離に移行するとしても、他の金融商品との選択の観点からは問題が残る。株式譲渡益だけに申告を求めるのではなく、他の金融商品への課税方法との平仄も考慮する必要があるのではないか。

  • 申告分離課税に優遇税制を適用して申告移行のインセンティブとし、申告がかなり浸透した段階で申告一本化した方がスムーズにではないか。

  • 2年間の源泉分離選択制延長の間は過渡期であり、税制を途中で変更するメリットは殆どない。例えば、源泉分離のみなし譲渡益率(5.25%)を見直すのは混乱を生じさせるだけであり、採るべきではない。

  • 2年間とは言え、申告課税と源泉分離課税を現状のまま留め置くのはどうか。一定額以上については申告課税とし、小額投資家については、証券会社を複数利用していないとするなら、売買差益に対する源泉徴収を認めてはどうか。

  • 申告の場合、譲渡損失の繰越を認めるほか、損益通算を株式以外の所得とも可能としてインセンティブを付与する一方、一旦申告分離を選択したら源泉分離には戻れない扱いとする(譲渡損失の繰越を認めない)ことにより、最終的には申告一本化を図ってはどうか。

  • 申告一本化は有価証券取引税廃止との見合いで決着した話である。常識を超えるような不景気なので2年間延長したが、その後は予定通りに進めるのが本筋ではないか。株価下降局面で、直接金融から間接金融に資金シフトするのは健全なマーケットの動きであり、資金を無理に直接金融に引き戻そうとするのは問題ではないか。

  • 現在は、直接金融市場へのパイプを太くしておくことが必要であり、個人投資家その他の長期保有主体が育成されるよう、税制についても政策手段の一つとして、何らかの手当てを考える必要があるのではないか。

  • 時価会計の導入などを受け、機関投資家や銀行は株式を売却せざるを得ない状況にあり、その受け皿となる安定した株主として個人投資家を呼び込まないとわが国株式市場ひいては経済全体がひっくり返りかねないとの強い危機感を持っている。個人投資家については、せめて諸外国並みの優遇措置を導入すべきではないか。

  • 株式持合い解消による株価下落は、需給面からいえば当然の動きである。個人投資家へのインセンティブというが、下手をすると個人に損を転化するという議論にも聞こえかねない。税制だけで株式市場の問題を全て解決するのは難しいのではないか。むしろ、株価に焦点を当てるのであれば、自社株償却など資本効率を高めるような施策に対し、税制を利用すべきではないか。

  • 株価を押し上げることを目的とする税制は無理がある。直接金融へ個人投資家が流れない背景は、証券会社の販売姿勢への不信感などもあるのではないか。

  • 持合い解消株式を全て個人にはめ込むことは難しいし、すべきでもない。しかし、一定の後押しをする政策上の必要性はあるかもしれないので、どこまでなすべきかを明らかにするべきである。

  • 税執行上のインフラ整備状況等を踏まえると、税制により可能なことには限界がある。現行税制に問題があるのは事実であるが、それを解消していくためにも、申告分離に一本化するのが妥当な選択ではないか。

以上


(別表)

個人投資家の株式投資に係る税制の各国比較

日本 米国 英国 独国 仏国
所得税率 10, 20, 30, 37%
(4段階)
15, 28, 31, 39.6%
(5段階)
20, 23, 40%
(3段階)
税額算出式により課税所得算出。51~22.9%迄の税率(引下げの方向) 10.5, 24, 33, 43,48, 54%
(6段階)
納税者番号 なし あり なし なし なし
キャピタル・
ゲイン課税
申告分離課税と源泉分離課税の選択制
(1)申告分離
譲渡益に26%の税率で課税
(2)源泉分離
譲渡代金に1.05%の税率で課税
原則として総合課税。長期キャピタル・ゲインに対して優遇税率(20%。通常税率が15%の場合は10%)を適用 総合課税。10, 20, 40%の3段階の税率で課税。7,200£(約125.5万円)の非課税枠(2000年度現在)及び保有期間に応じた段階的控除制度あり 原則として非課税。但し、
(1) 営業用資産としての株式の譲渡
(2) 大口取引
(3) 保有期間1年以内の譲渡の場合には総合課税。(2002年から一部見直し)
申告分離課税。税率は26%(うち10%は社会保障諸税)。ただし、年間譲渡総額5万フラン(約84.1万円)までは非課税。
損益通算 キャピタル・ゲイン及びキャピタル・ロス間でのみ通算可能 年間3,000ドル(約35万円)を限度に他の所得との通算可能 キャピタル・ゲイン及びキャピタル・ロス間でのみ通算可能 (1)(2)は他の所得との通算可能。(3)は(3)から生じた損益内でのみ通算可能 キャピタル・ゲイン及びキャピタル・ロス間でのみ通算可能
キャピタル・ロスの取扱 翌年以降への繰越は認められない ロスが無くなるまで、無期限に繰越可能 ロスが無くなるまで、無期限に繰越可能 ロスが無くなるまで、無期限に繰越可能 5年間に限り繰越可能
株式投資優遇制度 なし なし
但し、IRA(注1)及び確定拠出型年金への拠出金に対する所得控除、運用益非課税などの優遇制度あり
ISA(注2)
ISA内の有価証券から生じる配当、利子及びキャピタル・ゲインは非課税。
年間預入限度額は7,000£(maxi ISA、約122万円)又は3,000£(mini ISA、約52.3万円)
(1) 貯蓄者控除制度
配当と利子の年間合計6,000DM(約33.8万円)までが非課税
(2) 財産形成制度
年間所得3.5万DM(197.3万円)以下の者に株式投資額の20%の奨励金(限度額800DM(約4.5万円))支給
PEA(注3)
PEA内で再投資される配当は非課税。キャピタル・ゲインは保有期間に応じて非課税等の優遇措置あり
(注1) IRA(Individual Retirement Account)= 個人退職(貯蓄)勘定
(注2) ISA(Individual Saving Account)= 個人貯蓄口座
(注3) PEA(Plan d'Epargne En Actions)= 株式貯蓄計画

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