平成13年4月17日
金融庁

金融税制に関する研究会(第5回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第5回)(平成13年3月14日(水)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

─なお、第6回は、平成13年4月20日(金)に開催する予定。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 濱田・斎藤(内線3181)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


(別紙)

金融税制に関する研究会(第5回)議事要旨

1. 日時:

平成13年3月14日(水)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁会議室

3. 議事要旨

今回は、金融商品への課税のあり方(その2)として、公社債利子課税(課税玉問題、非居住者に対する源泉徴収<レポを含む>)および株式配当課税(二重課税、みなし配当課税)について、委員からの意見発表および自由討議を行った。

(委員の意見発表の概要)

  • 課税法人(金融機関等を除く内国法人)には、受取公社債利子に20%の源泉徴収が課されるが、利子計算期間の途中で売却する場合税額控除による調整ができないため、収益が実質的に2割目減りする。また、非課税法人(金融機関等)も、課税法人の保有玉(課税玉)を購入した場合、利払い時に源泉徴収されるため、市場での課税玉の取得を敬遠している。この結果、課税法人と非課税法人の間でマーケットが分断されている。そのため、租税回避措置を手当てした上で、課税法人(金融機関等を除く内国法人)への源泉徴収を撤廃してはどうか。

  • 非居住者に対する公社債利子の源泉徴収について、一括登録国債については、グローバル・カストディアンを経由した場合も非課税対象となされた(13年度税制改正)。ただし、その他の公社債については未だ手当てがなされておらず、租税回避措置を手当てした上で、一括登録国債と同様の措置を講じてはどうか。

  • レポ取引市場では、非居住者への15%源泉徴収が、非居住者にとって実質的な参入障壁の1つとなっており、源泉徴収を廃止すべきではないか。

  • 法人への二重課税問題について、現在、持株割合25%未満に係る受取配当金は、負債利子控除した後、80%が益金不算入という扱いであるが、長期・安定的に株式を保有するインセンティブを高める観点から100%益金不算入とすべきではないか。

  • 借入金で株式を取得している場合、借入れ法人については負債利子が損金算入される一方、貸出し法人では貸出利息が益金算入されることにより、マクロ的にみれば借入金の損金、益金はゼロサムとなっていると考えられ、結果的に、負債利子控除制度における利子控除部分が二重課税になっているのではないか。

  • 個人の二重課税排除措置が十分でない。改善策としては、例えば、(1)80%所得控除(法人と同様)、(2)50%所得控除(ドイツで本年導入)、(3)個人と法人の最高税率の差の10%を分離課税にして課税関係を終了させる、などが考えられる。インピュテーション方式は、理論的には正しいが、税執行上の困難さを考えれば好ましくないと思う。

  • みなし配当については、13年度税制改正の結果、問題が個人株主の公開買い付けの場合にほぼ限定されている。

(自由討議)

  • 公社債市場について、金融機関等と内国法人で分断されているとのことであるが、個人との関係ではどうか。個人は、公社債の保有・流通量が少ないので、問題はあまりないという判断か。

  • 個人保有の国債も課税玉扱いであるため、これを金融機関が買い取る際には、内国法人の場合と同様の問題が生じている。もっとも、ロットが非常に小さい一方で、利子の源泉徴収の還付手続等の事務が煩雑であるため、最終的には、買い取った金融機関はこれを証券会社に売却して処理している。マーケットの活性化の観点からは、内国法人の問題解決がより重要と考えられる。

  • 簡保等の非課税法人は、課税玉を保有しても源泉徴収が行われないため、最終的な取得者となるケースが多い。典型的なアービトラージ取引となっている。

  • 市場育成の観点から、非課税法人の対象を、指定金融機関にならって指定法人という枠に拡大し、市場に参加する可能性のある、あるいは参加したいと考えている事業法人を追加してはどうか。

  • 指定法人制とした場合、法人の線引きを如何に行なうかが難しいという指摘があるが、それならば、むしろ線引きはせず、全法人について公社債利子の源泉徴収を撤廃すれば、市場がより活性化するのではないか。

  • 金融市場を間接金融から直接金融中心へシフトさせたいのであれば、事業法人も、金融機関と対等に取引できる環境を整える必要があるのではないか。

  • 事業法人にも、公社債市場における資金運用のニーズはある。もっとも、企業によって財務運営の姿勢は異なり、バランスシートをスリム化し、手元には決済資金だけを保有する先もあれば、潤沢に余資を持って金融機関と変わらないような運用をしている先もある。また、時価会計導入に伴い、価格変動リスクをどれだけ取れるかという問題が新たに出てきた一方で、現下の経済情勢の下では設備投資を抑制しているため、長期運用が可能となっている側面もあり、企業によって資産運用スタンスは区々である。

  • 非居住者に対する源泉徴収の撤廃は、外国人投資家の公社債市場への参入余地を拡大する契機になるか否か。

  • 外国人投資家の立場からすると、低金利下でもあり、現時点では債券運用は旨みに乏しく保有額をあまり増やしたくないのが本音である。なお、外国人投資家は、昨年日本国債を買越しているが、課税問題(グローバル・カストディアン問題)が解決されるという前提で購入しており、速やかに実行することが重要である。

  • 源泉徴収制度をなくすことで金融機関等のコスト削減が出来れば、不良債権を処理する余地も生まれるのではないか。

  • 金融機関においては、源泉徴収事務はコンピュータ・システムに組み込まれており、源泉徴収を廃止したとしてもリストラの促進が期待できる訳ではない。一方、源泉徴収が廃止されて総合課税となると、例えば納税者番号制度が導入された場合、事務・システム面でのコスト負担はかなり大きくなると考えられる。

  • 公社債市場に事業法人や外国法人など様々な見方を持つ参加者が新規参入すると、市場全体の厚みが増し、公社債市場全体が安定感のあるものになるのではないか。

  • 外国人が日本国債を購入するか否かは、やはり利回りの影響が最も大きい。昨年買い越しの原因も、ドルベースでみた運用利回りが相対的に低くなかったからである。

  • 個人の二重課税については、配当額が少なく問題にならないケースが大半と考えられるが、これを改善した場合、個人投資家層を広げる効果はあるのか。そもそも、一般投資家はキャピタルゲイン目当てが多く、配当を重要なキャッシュフローとは考えていないのではないか。

  • 株式持ち合いの結果、法人間の配当二重課税が大きくなり、配当を低く抑えるという企業ファイナンスの歪みが生じたのではないか。反対に言えば、持ち合いが解消され企業のファイナンス形態が変化すると、配当が高くなり、二重課税の解消がより重要となってくるのではないか。根本的な問題は、株式持ち合いなど企業ファイナンスのあり方と考えられる。

  • 仮に税引き後利益が留保されることによって株価が上がると考えると、キャピタルゲインについても、一種の二重課税が生じたと考えられないか。

  • ドイツでは、それを理由に法人、金融機関等が1年以上保有した株式の譲渡益課税を撤廃した。但し、その背景には、ユーロ圏内における厳しい企業間競争の中で、持ち合いが根強いドイツ企業では大型M&Aによる再編が進まなかったため、これを促進するために行なったという事情がある。

  • 今後、高齢化社会を迎える中で、リスクキャピタルを誘い出すためには、株式譲渡益は全て非課税にすべき。

  • 今後、社会全体の成長が鈍化する中、成長力の高い企業は、従来どおり配当を抑制して内部留保を元に再生産すればいいが、成長力に乏しい成熟した企業はむしろ株主にキャッシュ(配当)で利益を還元することを迫られるのではないか。その場合、二重課税問題については、何らかの対応が必要となってくるのではないか。

  • 直接金融市場が過小であることが根本的な問題なので、本研究会の場では、持ち合い解消を促す税制、あるいは間接金融市場に資金が偏在する理由などについて議論してはどうか。

  • 負債利子控除について、借金と資産でトータルゼロの時、ゼロから生れる所得はゼロであり、マイナスの所得は生れない。従って、二重課税にはなっていないというのが国際的認識である。

  • 個人資産の6~7割が預貯金に集中している現状を踏まえれば、国債の保有者に占める金融機関の比率が高いのは当然のことである。諸外国と比べて異常なのは、預貯金への資金集中である。

  • 二重課税について全く調整していない米国が、最も株式市場が発達しており、個人投資家の比率も非常に高いことは不思議である。キャピタルゲイン課税のあり方が影響を与えているのかもしれない。

  • 米国や日本の場合、二重課税といってはいるが、当期二重課税ではないため、課税の繰り延べを出来る点で一重課税より実質的に有利であるなど、外形だけで判断できるほど簡単な問題ではない。また、二重課税であるがために、一重課税のドイツのようにキャピタルゲインを非課税にするという理屈が立たない。キャピタルゲインを非課税にするという議論は、キャピタルゲイン自体をどのように位置づけるかという問題に立ち戻って論じられるべきである。

  • 本格的に時価会計が導入されてくると、株式に係る配当、譲渡損益、時価評価に伴う損益をどのような形で課税するか、課税当局としても理論武装が必要になるのではないか。

  • 80%の益金不算入の理由が資産運用分ということであれば、あえて、20%の益金算入の理由は必ずしも無いのではないか。

  • グループ会社が持株会社から長期借入れを行なっても、特定利子に算入できない規定となっている。今後、連結納税制度で手当てできるかが不透明であり、問題が残るおそれがある。

  • コーポレート・ガバナンス等の観点から持ち合い解消を促すような税制が必要と考えられる一方、持ち合い解消が進むと、過半数出席という株主総会の設立要件を満たせず、総会が開催できなくなる懸念がある(個人株主等からの投票用紙の回収率は3割程度と言われている)などの問題点もあり、株式持合いのあり方については、多面的な検討が必要である。

以上

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