平成13年5月18日
金融庁

金融税制に関する研究会(第6回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第6回)(平成13年4月20日(金)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

─なお、第7回は、平成13年5月22日(火)に開催する予定。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 濱田・斎藤(内線3181)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙1)

金融税制に関する研究会(第6回)議事要旨

1. 日時:

平成13年4月20日(金)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁会議室

3. 議事要旨

今回は、「金融の新潮流への対応」をテーマに、(1)資産流動化・集団投資スキーム(不動産流通税ほか)、(2)金融新技術(含むタックス・シェルター)について、委員からの意見発表および自由討議を行った。

(委員の意見発表の概要)

(1) 資産流動化・集団投資スキーム(不動産流通税ほか)

  • 金融商品等への投資に関して、投資信託、投資法人などの集団投資スキームを利用した場合やスキームを通じず原資産に直接投資した場合の課税の仕組みを比較すると、株式、公社債、不動産などいずれの投資対象についても、投資形態毎に課税の仕組みは区々となっている(別紙2ア参照)。

  • 例えば、同じ株式投資でも、投資信託を通じた場合は「配当:源泉分離20%、譲渡益:非課税」に対し、投資法人の場合及び直接投資した場合は「配当:源泉分離選択、譲渡益:課税」が原則となっている。投資対象が同一の場合は、例えば株式投資信託への課税方式を、原資産への課税方式(投資法人及び直接投資の場合の課税方式)に合わせるなど、同一の課税方式に統一した方が分かり易いとも考えられる。

  • もっとも、例えば、現行の株式投資信託への課税はインカムゲイン、キャピタルゲインを合算して20%の源泉分離課税で完了するなど、個人のリスク資産への投資を促進するような簡易かつ相対的に税率の低い課税方式となっており、一概に課税方式を統一すればよいというものでもない。

  • 法人が株式に直接投資した場合、受取配当の益金不算入措置がある一方、投資法人を経由して株式投資を行なった場合、投資法人及び投資を行なった法人自身において益金不算入措置が手当てされていないのは問題ではないか。

  • 特定目的会社と特定目的信託への支払配当損金算入要件について、両者の同族要件の規定内容に差異が存在(別紙2イ参照)。ほぼ同一の経済効果を持つスキームにおいて、損金算入要件の充足、未充足の食い違いが生じており、何らかの手当てが必要ではないか。

  • 資産流動化・集団投資スキームを利用して不動産投資あるいは不動産流動化を行なう場合の登録免許税及び不動産取得税について、13年度税制改正により一定の軽減措置が講じられらたものの、投資取引に係る流通税としては高率であるため、見直す必要があるのではないか。

  • 配当課税につき、二重課税を調整していない米国で株式市場が最も発展していることは興味深い。二重課税においては、1回目は当期課税であるが、2回目は分配時期をタックス・ペイヤーが選択できるため、結果的に二重課税の方がトータル・コストを低くすることができる可能性がある。こうした観点も含めて、日本においても、二重課税について議論していく必要があろう。

  • 日本においては、税法上の「法人」の定義について、商法など私法に依存しており、税の観点から法人を新たに定義し直すことが必要ではないか。

  • ファンド課税を横断的に取り扱うような制度整備が必要ではないか。すなわち、passive incomeあるいは分配率の観点に立って、SPC等のファンドにつき一重課税を認めるか否かの基準を定めてはどうか。

  • 個人の所得分類は現在、基本的に原資産に応じた税制を適用しているが、恣意的な分類となって適切でない場合もあり得るため、「金融所得」として括り直すなど方向感を持って骨格から作り直していく必要があるのではないか。

(2) 金融新技術(含むタックス・シェルター)

  • 1990年代に米国で課税逃れの金融商品が非常に発達した。現在、デリバティブを単純に利用したような商品はほとんどなく、複雑にネットワークを組み合わせ、国際的なストラクチャーを作るという手法がとられている。

  • 近年日本にも、米国において開発された課税逃れの手法がモディファイされて流入してきており、税執行当局はじめ関係者は十分情報を収集する必要がある。

  • 課税逃れの金融商品により利用者に不利益が生じないよう、金融機関、企業が十分注意するとともに、課税庁としても事前確認制度(ノーアクションレター制度)の整備等により、金融商品への課税の透明性を高める必要がある。

(自由討議)

  • ファンド課税の横断的な取り扱い、特にpassive incomeの取り扱いは、課税逃れとも関連するが、事前確認という手続を積み上げることにより、実務的に解決していくことが妥当と考えられる。

  • わが国においては、源泉徴収制度が網羅的に整備されており、効率的な徴税に寄与している。一方で、例えば株式キャピタルゲインは利益が上がるか損失を被るかが事後的にしか判らないため、事前徴収の源泉徴収には基本的に馴染まない。結局、リスクに応じた公平な税制を構築するとの観点にたてば、株式キャピタルゲインについては、損失の繰り越しという事後的な調整を行い、経済的な公平性を実質的に担保することが妥当なのではないか。

  • 資産流動化・集団投資スキームが整備されたにも拘わらず、利用がさほど活発でない背景として、税務事務負担も指摘可能。例えば、実務的な観点からすれば、信託財産課税のある特定目的信託や投資信託を利用した場合、SPCや投資法人と異なり全国に支店を有する受託者(信託銀行)が納税者となるため、地方税の申告手続が煩雑となり、場合によっては受託者の全支店で地方税申告を行なう必要が生じることが挙げられる。

  • 比較的小規模の対象資産を流動化する流動型スキームでは、小人数に売却した方が低コストで効率的なケースもあるが、このような場合に支払配当の損金算入要件をクリア出来ないケースもあるため、改善する必要がある。

  • SPCは、使途を債権流動化に限定するという制約(ムチ)の一方で、課税の優遇措置、最低資本金引下げという特典(アメ)を与えられている。また、信託方式も、SPC法の中で利用すれば、受益証券が有価証券化する(広く市場で流動化が可能)、集団的権利行使が行えるというメリットが付与されている。

  • 信託受益権が有価証券化した結果、税務上の優先劣後の取り扱い、減価償却の主体が明確化したという意義もある。

  • タックスシェルターの定義は法律上の観念ではない。課税の抜け穴探しをされないためにも法律上明示的に規定すべきではない。結局、新たな経済的行為を行なわないにも拘わらず税金が減額されるケースについて、個々にabusiveか否か、裁判所が判断していくしかないと考えられる。

  • 公正、中立、簡素という租税原則のうち簡素化のウエートを上げ、徴税コストを低減すべき。また、有価証券、不動産への投資を阻害する要因には税制とそれ以外の要因があるため、しっかり分けて整理する必要がある。

  • 所得税を中心とする場合、納税者番号制の整備等がなければ、簡素化にも限度があるのではないか。

以上


(別紙2)

(ア) 資産流動化・集団投資スキーム商品への課税

ビークル 課税関係
株式投資 投資信託 配当所得(源泉分離20%) 受益証券譲渡益非課税
投資法人 配当所得(源泉分離選択課税) 投資口譲渡益課税
スキーム外(直接投資) 配当所得(源泉分離選択課税) 株式譲渡益課税
公社債投資 投資信託 利子所得(源泉分離20%) 受益証券譲渡益非課税
投資法人 配当所得(源泉分離選択課税) 投資口譲渡益課税
スキーム外(直接投資) 利子所得(源泉分離課税20%) 公社債譲渡益非課税
不動産投資 投資信託 配当所得(総合課税) 受益証券譲渡益課税
投資法人 配当所得(源泉分離選択課税) 投資口譲渡益課税
スキーム外(直接投資) 不動産所得 不動産譲渡益課税

(イ) 特定目的会社・特定目的信託における支払配当の損金算入要件の概要

特定目的会社 特定目的信託
  • 1. 次のいずれかに該当するものであること

    • (1)その発行(公募に限る)をした特定社債権の発行価額の総額が1億円以上であるもの

    • (2)その発行した特定社債権が適格機関投資家のみによって引き受けられたもの

    • (3)その発行した優先出資証券が50人以上の者によってひきうけられたもの

    • (4)その発行した優先出資証券が適格機関投資家のみによって引き受けられたもの

  • 2. 事業年度終了時に同族会社に該当しないこと(「1.(1)又は(2)に該当する場合を除く」

  • 1. 次のいずれかに該当するものであること

    • (1)その発行者の発行に係る受益証券の募集が公募であり、且つ発行価額の総額が1億円以上であるもの

    • (2)その発行者の発行に係る受益証券が50人以上の者によって引き受けられたもの

    • (3)その発行者の発行に係る受益証券が適格機関投資家のみによって引き受けられたもの

  • 2. 計算期間終了時に同族特定信託に該当しないこと

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