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平成13年6月12日
金融庁
金融税制に関する研究会(第7回)の議事要旨について
金融税制に関する研究会(第7回)(平成13年5月22日(火)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。
─なお、第8回は、平成13年6月22日(金)に開催する予定。
お問い合わせ先
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 濱田・斎藤(内線3181)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。
金融税制に関する研究会(第7回)議事要旨
1. 日時:
平成13年5月22日(火)10時00分~12時00分
2. 場所:
中央合同庁舎4号館金融庁会議室
3. 議事要旨
今回は、「金融の国際化への対応」をテーマに、(1)金融に関連する企業税制(連結納税制度、持株会社税制、タックスヘイブン税制、海外関係子会社宛ローンに係る利子源泉税、ストック・オプション、確定拠出年金の従業員拠出非課税上限)、(2)税務執行体制(納税者番号制度、事前照会制度)について、委員からの意見発表および自由討議を行った。
(委員の意見発表の概要)
持株会社の設立に係る登録免許税については軽減措置が講じられたものの、いまだに負担は重い。軽減措置の恒久化、さらには、完全な非課税化を図る必要があるのではないか。
会社分割による不動産の所有権、抵当権の移転に関しても、多額の登録免許税が課されるが、見直しが必要ではないか。
連結納税制度について、米・仏との比較、及び日本における導入に当たって現在俎上に上っている検討内容をまとめてみた(資料1)。
連結納税制度は、企業グループ内の損益を通算することにより、組織変更や再編に対する税制の中立性を確保するものであり、企業経営の効率性向上、国際競争力の維持強化を図る必要から早期導入が望まれる。
連結ベースで資金管理を集中化・効率化するとともにクロス・ボーダーでの資金移動の柔軟性を確保することにより、グローバル・ベースでの資金管理が可能となる。その際問題となるのが海外関係子会社に貸付けを行った場合、利子源泉税が課され、コスト負担が生じることである。欧米諸国では免税になる場合が多く、我が国企業の競争力が相対的に大きく低下しているため、今後見直す必要があるのではないか。
グローバルな事業展開を行なった際の中立性やコスト面、利便性等を勘案すると、タックスヘイブンの利用価値は高い。これを有効活用するためにも、我が国のタックスヘイブンに係る税制のうち、他国企業との競争条件を劣後させている内容(例えば、欠損金の所得通算が認められない点、あるいは、タックスヘイブン対象国の基準設定の硬直性)について再検討する必要がある。
ストックオプションをインセンティブ報酬として用いれば、役員1人当たりの生産性が上がると共に企業統治の強化に役立つと考えられる。税制面でもインセンティブ報酬が100%非課税となるように仕組めばストックオプション制度がより浸透するのではないか。なお、現行の商法では、発行済株式数に占める割合について制限があり、発行の障壁になっていることも検討課題と考えられる。
日本においては、確定拠出型年金の従業員拠出限度額が低過ぎる。労働市場を流動化するためにはインセンティブを十分に与えるべく、限度額を引上げる必要がある。
日本では欠損法人が全法人の約7割を占める(バブル時のピークですら約5割)。今後、こうした欠損法人を含めて、如何に課税ベースを広げるかが問題となる。例えば、事業税の外形標準課税化等を推進すべきではないか。
納税者番号制度は、米国、北欧諸国等で導入されている一方(資料2)、独国、仏国、英国においては導入されていない。
納税者番号制度の導入に際し、重要な前提条件として、(1)二重付番がないこと、(2)全国一連番号で生涯変更がないこと、などが考えられるほか、(3)付番後、住所・氏名等の異動が正確に捕捉できること、(4)大多数の個人、法人を網羅していることも必要である(わが国においては、年金番号方式、住民基本台帳方式などが有力視されている、資料3、4)。
納税者番号制の導入時のコストについて、民間サイドと行政サイドともに多額の費用が見込まれるため、導入する際に同制度を如何に多岐に亘って利用し、トータル・コストを低減するかを検討しなければならない。
プライバシーの保護については、税務当局と納税者、税務当局と他の行政当局、納税者と資料提出義務者等、様々な当事者間について検討が必要だが、税法、行政機関個人情報保護法、個人情報保護法のなかでかなり整理されてきていると思う。
(自由討議)
連結納税制度の対象となる子会社については、同制度の早期導入のためにも、100%子会社に限定するとの考え方が示されたが、導入後は、例えば従業員持株会など例外的な株主は除外して考えてはどうか。
地方税については、現在連結納税制度の導入が検討されておらず、むしろ事業税を連結納税制度の導入を機に外形標準課税化しようとの意見が多いが、これでよいか。
電力、生保等の一部業種については、既に外形標準課税になっている。一部業種の特別扱いを一概に排除すべきということではないが、連結納税制度の議論の中で、再度検討してもよいのではないか。
外形標準課税について、赤字法人であっても課税対象とする総務省の提案は、広く薄く課税するという点でリーズナブル。なお、巨大な設備産業に税負担が偏る償却資産税については見直しが必要ではないか。
タックス・ヘイブン対象国について、例えば日本における実効税率の2分の1を下回る国に限定するなど、よりフレキシブルに設定する必要があるのではないか。
グループ全体の求心力を高めるためには、子会社の役員、従業員に対してその親会社や持株会社等の株式についてもストックオプションの対象としてはどうか。
金融商品については、(1)納税者番号制度を導入のうえ確定申告を義務づけるか、(2)全ての金融商品について源泉分離の可能性を残すか、いずれかの方式を選択するのが妥当ではないか。
納税者番号制度は、税の公平性の観点からすると非常に優れた制度である。導入時における民間のシステム開発等のコスト、徴税サイドのコストを十分勘案して、どのタイミングで導入するのが適当かを決断することが重要。また、その導入コストに対しては、税制面での優遇措置を導入すべきである。
納税者番号制度の導入は、理念として何ら反対するものではないし、源泉徴収が廃止されれば、副次的な効果として資金運用の利回りも改善する。もっとも、その導入コストを考えると二の足を踏んでしまうのが正直なところ。
ストックオプション制度に関して、子会社の役員・従業員に親会社のストックオプションを与えると、自社(子会社)よりも親会社の利益を最優先するインセンティブが働いてしまう。このため同制度導入の際には、当該子会社に限定したところ。現在、商法上の位置づけや企業統治の観点から整理がされつつあり、親会社の場合でも容認するか否か検討しているところ。
ストックオプション税制に特典を与えると、勤務先が株式を発行していない給与所得者(給与全額に課税される)との平仄が取れないのではないか。
ストックオプションがインセンティブ報酬の唯一の方法ではない。要は、わが国の1人当たりの生産性を上げるために、如何にインセンティブを与えられるかという目標に対し、何ができるかということを真剣に議論すべきである。
納税者番号制の導入には初期コストが掛かる、面倒くさいという意識が極めて強く、それはそれで理解できるが、一旦導入してしまえば長期的なコスト削減に繋がると考えられるし、手間もかからないのではないか。
諸外国の例をみても、納税者番号制を導入したからといって源泉徴収を全く止めてしまうことはあり得ない。一旦源泉徴収した上で、申告により返戻するというやり方が好ましいのではないか。
現在の事業税の外形標準課税の議論では、次にどの業界を狙い撃ちにするのか、それこそが地方自治だという曲解すら招きかねない。金融分野のみならず税体系の根幹にも係わるので、課税手法についてはより慎重に検討すべきではないか。
今後、高度な金融商品、サービスの提供や時価会計の導入などに伴い、金融機関が的確に税制を解釈するにはノーアクションレター制度が必要となる。行政側の恣意的な判断が入らないよう明確な解釈を示すことが、日本全体における税務コストの低減という観点から、極めてメリットがあるのではないか。
連結納税制度についての米・仏比較と日本における導入時の検討方向
米 国 | 仏 国 | 日本の検討方向 | |
---|---|---|---|
基本的な仕組み | 単一主体概念 | 個別主体概念 | 個別会社は、確定決算に基づき現行法にしたがって所得計算。その結果を親会社に合算し、連結所得計算で必要な調整を行い、損益通算して連結課税所得金額を算出。 |
連結対象法人 | 80% | 95% | 100% |
納税義務者 | 各社が総額につき支払義務。親会社は代理人。 | 親会社が納税義務。子会社は個別申告を限度とした義務。 | 親会社が代理人として納税義務。子会社は個別申告の場合の納付税額を限度に連帯納税義務。 |
申告書 | 親会社が連結納税申告書を作成・提出。子会社は個別申告書を親会社に提出。 | 子会社は個別申告書を作成・提出。親会社は連結納税申告書を作成・提出。 | 米国に同じ。 |
納税額(分担) | 合意による。 | 合意による。 | 個別申告した場合の税額を基準とするが任意選択。 |
適用要件 | 継続適用を要件に任意 | 5年毎に更新 | 米国に同じ。 |
対象とするグループ会社は強制加入。 | 対象とするグループ会社は継続適用を要件に任意 | 仏国に同じ。 | |
事業年度、会計方法 | 事業年度は統一。会計方法は統一不要 | ||
ペナルティー | 親会社に支払義務。但し、子会社に原因のあるものは親会社は支払請求。 | 親会社に支払義務。負担方法は親子会社間の契約による。 | 支払義務は親会社。当該行為を行った子会社も支払義務。 |
各種計算規定等 | すべて連結ベース | 連結ベースは限定的 | 個々の規定毎に個社ベースか連結ベースか適切なものを適用。 |
内部取引損益消去 | 原則消去 | 棚卸資産は簿価取引。贅沢資産は課税取引。 | 原則消去。但し、棚卸資産は例外的に任意。 |
売手側繰延 | |||
寄付行為は投資概念 | 連結により消去 | 内部取引に寄付金の概念なし | |
繰越欠損金等 | SRLY、子会社の繰越欠損金は当該子会社の連結納税参加後の利益に対してのみ相殺可能。脱退時には子会社に引き継がれる。 | 子会社の繰越欠損金を当年度の所得と相殺後、連結所得に加算。脱退時には親会社が控除。 | 米のSRLYに準拠。資産の含み損については範囲を限定して控除を制限。 |
投資修正 | 実施。 | 実施せず。 | ― |
加入・離脱 | 恣意的なものを排除する規定を設定。。離脱時に損金の二重排除を回避するための調整計算。 |
各国における納税者番号制の状況
国 名 | 番号の 種類 |
適用実務 | 付番者(数) | 人口(万人) (1998年現在) |
付番維持 管理機関 |
付番の 根拠法 |
実施年 |
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アメリカ | 社会保障番号 (9桁) |
税務、社会保険、年金等 | 約3億8,100万人(累積数) (1997年現在) |
約2億7,056 | 社会保険庁 | 社会保障法 | 1962年 |
カナダ | 社会保険番号 (9桁) |
税務、失業保険、年金等 | 約3,153万人(累積数) (1997年現在) |
3,030 | 人的資源開発省 | 失業保険法 | 1967年 |
デンマーク | 統一コード(10桁) | 税務、年金、住民管理、諸統計、教育等 | 全住民 | 530 | 内務省 中央個人登録局 |
個人登録に関する法律 | 1968年 |
スウェーデン | 統一コード(10桁) | 税務、社会保険、住民管理、諸統計、教育等 | 全住民 | 885 | 国税庁 | 人口登録制度に関する勅令・政令 | 1968年 |
ノルウェー | 統一コード (11桁) |
税務、社会保険、諸統計、教育、選挙等 | 全住民 | 443 | 登録庁 | 人口登録制度に関する法律 | 1970年 |
韓国 | 住民登録番号 (13桁) |
税務、社会保険、旅券の発給等 | 全住民 | 4,643 | 内務部 | 住民登録法 | 1993年 |
シンガポール | 統一コード (1文字8数字) |
税務、年金、車両登録等 | 全住民 | 387 | 内務省 国家登録局 |
国家登録法 | 1995年 |
イタリア | 統一コード (文字及び数字 の組合せ) |
税務、諸許認可等 | 約5,000万人 (1997年現在) |
5,852 | 財政省 | 納税者登録及び納税義務者の納税番号に関する大統領令 | 1977年 |
オーストラリア | 統一コード (9桁) |
税務、所得保障等 | 約1,250万人 (1996年現在) |
1,875 | 国税庁 | 1998年度税制改正法 | 1989年 |
主要国における納税者番号制度の概要
根拠規定 | 国民年金法施行規則(厚生省令) | 住民基本台帳法 | |||||||||||||||||||||||||||
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付番機関 | 社会保険庁 | 市町村 | |||||||||||||||||||||||||||
付番対象者 | 公的年金加入者等(外国人も含む) | 居住者(外国人を除く) | |||||||||||||||||||||||||||
保有情報 | 番号+氏名、生年月日、性別、住所、公的年金加入情報 (注)住所の変更は、本人の届け出による。 |
コード+氏名、住所、性別、生年月日等 | |||||||||||||||||||||||||||
他の行政機関に提供される情報 | なし | コード+氏名、住所、性別、生年月日 付随情報(変更年月日、変更理由) |
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番号カード | なし | 本人の申請により発行 (注)住民基本台帳カードの様式その他必要な事項は、自治省令において規定 |
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目的 | 公的年金の制度運営の一層の適正化
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プライバシー保護規定 | 個人情報保護法 |
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民間での利用 | 加入者本人に、他に利用されないよう注意を喚起 | 民間による利用を禁止 | |||||||||||||||||||||||||||
検討・実施状況 |
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納税者番号としての個人付番方式のメリット・デメリットの整理
年金番号方式 (基礎年金番号) |
住民基本台帳方式 (住民票コード) |
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法律上の根拠 | 国民年金法施行規則(厚生省令)に依っており法律上の根拠はない | 住民基本台帳法本則に規定あり |
対象範囲 | 公的年金加入者(含外国人)に限られる | 本邦居住者、但し外国人を除く |
民間の利用 | 特に規制なし | 現行法制上は民間利用禁止 |
異動情報とのリンケージ | 住所の変更は本人の届け出による | 住所変更・改姓等の異動情報を正確に把握可能 |
国民の抵抗感 | 年金という受益を伴う分野で利用されているため、比較的円滑に受け入れられる可能性あり | 各種行政サービスに利用できるICカード発行が予定されており、受け入れられる素地が醸成されつつある |