平成14年3月13日
金融庁

金融税制に関する研究会(平成24年第2回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第1回)(平成14年2月27日(水)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 関・土居(内線3182)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙)

金融税制に関する研究会(平成14年第1回)議事要旨

1. 日時:

平成14年2月27日(水) 10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁庁議室

3. 議事要旨

まず金融庁総務企画局長より挨拶、事務局より平成14年度税制改正(金融庁関連)について説明した。

この後、所得を勤労所得と資本所得に大別し、前者に累進税率を適用する一方で、後者には勤労所得よりも低い均一の税率を適用するという二元的所得税論につき、特別委員より発表がなされ、次いで委員からの意見及び自由討議を行った。

【発表の概要】

北欧で二元的所得税が導入された背景は以下のようなものだったと考えられる。

  • 総合所得課税の下では、様々な貯蓄形態からの収益に対して首尾一貫した課税を行うことができないという事情がある。とりわけ法人留保利潤、持家、年金基金の3つの貯蓄形態に対する課税が非常に難しく、実際の総合所得課税の下では優遇される傾向にある。

  • それまでの総合所得課税の経験によると、資産所得間の実効税率の格差が、負債利子やキャピタル・ロスの控除によって大きな税収ロスを生じさせてきた。

  • 金融資本というものが、世界中を一瞬にして回るものになっている。そういった状況の中で、いわゆる「足の速い所得」である金融資産所得に対してはあまり高い税率で課税することができなくなっている。

  • 貯蓄の二重課税の緩和に関し、公平の基準を何で測るか。年間所得を公平の基準として測る限り、利子に対しても課税というのは当然なされるべきである。しかし、生涯所得を基準にして水平的公平を目指すと、利子に課税せず勤労所得にだけ課税する方が生涯所得の水平的公平に資する。その意味では、資本所得に課税はしても、勤労所得税率よりも低い税率を課する二元的所得税の方が、生涯所得基準の公平に接近することができるのではないか。

  • 投資家のポートフォリオ形成に与える歪みを軽減するという点で、かつてのスウェーデンのように限界税率の高い総合所得税の下では、ある貯蓄形態が優遇されると、他の貯蓄形態との格差が開くことで、投資家の資産選択が歪められる。

【委員より出された意見の概要】

  • 税制の所得再分配機能が後退しないか、もっと素朴な問題としては、金融所得に対する低率の課税が一般に理解されるか、ということに対し懸念がある。

  • 二元的所得税の場合に納税者番号制度は必要不可欠な条件なのかどうか。二元的所得税の移行に伴って、納税者番号制度は必ずしも必要な条件ではなく、源泉徴収制度をわざわざ捨てることはないのではないかと思う。

  • 二元的所得税というのは、既存の租税論の立場からするとかなり妥協的な性格を持っている、もう少し悪く言うと、色々な租税論の良いとこ取りであるが、現実的な政策論としては非常に参考になる。結局、二元的所得税のような形で落ち着かざるを得ないのではないか。

  • 北欧では総合所得税の徹底による弊害というものが議論の出発点になっているのに対し、日本の場合は総合所得税という大きな建前はあるものの、現実には金融関係についてはほとんど分離課税で、しかもその分離課税の詳細が金融商品毎にかなり違っているというような状況から出発して、それを整理統合する必要があるという形での二元的所得税論というのが台頭しているのではないか。

  • 北欧では利子の控除というのが広く認められて、キャピタル・ゲイン課税を様々な形で回避するために富裕個人が使っていたようである。日本のように個人の金融資産の過半が預貯金にあって、その預貯金利子に対しては20%の源泉徴収という形で所得税からいえばかなりの低率課税になっている国で、仮にニ元的所得税のような仕組みを入れても、それほど所得の再配分ということについて大きな悪影響というのはないのではないか。

  • 所得形態を基本的に二つ(通常所得とキャピタル・ゲイン)に分けているアメリカでも、いくつかの所得体系に分けているドイツ、フランス、イギリスでも、二元的所得税に動く傾向は無い。世界的に台頭しているという意見は全くの誤りである。

  • 二元的所得税論は、所得税型と消費税型の長所と欠点をただくっつけただけの中間的な形態であるというのが理論的な帰結であり、中間的なものを理論というのは間違っている。

  • 所得類型を法律上一つにしたら問題が解決するというのは実務を知らない理論。所得類型を一つにしたところで、個別の議論が出てくるはずである。

  • 損益通算について、二元的所得税であれば資産性所得の中での損益通算というのは今よりも幅広く認められるようになる。しかし逆に、低い税率で課税されている資産性所得で生じたロスを、高い税率で課税される勤労所得にチャージさせることに関しては理論矛盾。そういったことは否定されるのではないか。

  • 二元的と呼ぼうが五元的と呼ぼうが十元的と呼ぼうが、損益通算をどの範囲でどういう形で認めるかについてだけ方針を明らかにすれば、あとはそれほど大きな問題ではないのではないか。

  • ハイリスク・ハイリターン、ミドルリスク・ミドルリターン、ローリスク・ローリターンといろいろな金融商品がある。それらのリスクテイクを税で中立化するというのは非常に難しいことであるが、やはり基本的には損失をどのように認めるかということであり、金融所得というものを幅広く定義していくことによって中立化できるのではないか。そういったところに新しさがあるのではないか。

  • リスクテイクを促進していくという税制を考えていく時に、新しい事業体の課税方式というのをどう考えるのか。きちんとルールを作らなければ非常に事業をしずらくなっているということと同時に、一方では節税、脱税という日本にとって損失になることも生じてきている。

  • 現状は所得分類が複雑に入り組んでおり、実際に税が商品開発のネックになるということが極めて多くある。

  • 税が多種多様に分かれているということから徴税事務負担がかさみ、それがコストに跳ね返ってきており、また商品性のしがらみになっている。

  • 税務照会制度はあるが、実質的には回答されておらず、もう少しシステマチックに対応できるようにお願いしたい。

  • 日本の金融税制の場合、法人に対する金融税制と個人に対する金融税制が必ずしも同じようなスタンスではない。法人と個人のレベルを合わせることも考えるべき。

  • 税があまりに変わり過ぎる。このため、中長期的な予測が立たない。北欧では、税制改革を行った後は比較的安定してやっている。これは非常にいいことである。

  • 世界的にみると80年代以降、既存の税体系が多くの特別控除や例外措置に侵食され、税が経済に与える歪みというものが無視できなくなり、それで各種控除を吐き出して、税率を下げることが行われた。そういった流れの一つとして、二元的所得税があった。アメリカの場合には税収がGDPに占める割合が北欧ほど高くないことから、勤労所得税、資本所得税含めて、税体系全体としてフラット化した。一方、高福祉国家である北欧の場合はそれをやると、必要な税収を賄い切れない。そういう前提があって、勤労所得に対しては税率を変えず、歪みの大きい資本所得だけ税を下げるということになったのではないか。

以上


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