平成14年3月25日
金融庁

金融税制に関する研究会(平成14年第2回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第2回)(平成14年3月11日(月)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

なお、第3回は、平成14年4月11日(木)に開催する予定。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 関・土居(内線3182)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙)

金融税制に関する研究会(平成14年第2回)議事要旨

1. 日時:

平成14年3月11日(月) 14時00分~16時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁特別会議室

3. 議事要旨

今回は、前回に引続き、所得を勤労所得と資本所得に大別し、前者に累進税率を適用する一方で、後者には勤労所得よりも低い均一の税率を適用するという二元的所得税論につき、特別委員より発表がなされ、次いで委員からの意見及び自由討議を行った。

【発表の概要】

  • 二元的所得税というのは精緻な税理論に基づくものではなく、極めて技術的な政策論である。二元的所得税が導入されれば、現行税制の欠点が全てなくなるというよりは、いろいろな問題がミニマイズされる。現行税制のいろいろな問題点を解決するためのアプローチとして使うべき。

  • 北欧諸国と我が国では規模や背景が違うことから、北欧の二元的所得税をそのまま我が国で当てはめるわけにはいかない。我が国金融税制の当面の諸課題を解決する実際的かつ技術的な政策論として位置付けるべき。

  • 厳格な総合課税から二元的所得税に移行した北欧諸国と、金融所得非課税からやっと分離課税まで来た我が国との差異というものを、十分考えていく必要がある。

  • 多様な金融商品を一括りにして、同じ課税制度・税率にすることによって金融商品間、あるいは投資家の資産選択に対して中立性の確保ができるのではないか。

  • 譲渡益を全額課税する一方で譲渡損失も全額控除する。これがリスクシェア型税制であり、利益があった時には国に応分の負担をし、損失が出た時には国から返してもらうという税制が、リスクテイクを促進させる。逆に、勤労所得とは損益通算を隔離することにより、租税回避行為にかかるインセンティブを減少させることができる。

  • 金融所得について統一的に低い限界税率で分離課税を行うことによって、足の速い金融所得の国外逃避インセンティブを減少させることができる。

  • 執行にあたっては、特定の口座というものを通じて行う取引に限定して、その中で管理される所得は、キャピタルゲインや、利子・配当以外のリターンも含め一括計算した上で、源泉徴収を行うという形が将来的に考えられる。この特定の口座を活用していく形にすれば、この税制はもっと簡素になるのではないか。

  • 問題点は、(1)金融所得について申告分離と源泉分離のどちらを基本とすべきか、(2)金融所得を一括りにするといっても金融所得の定義・計算規定は依然として必要なのではないか、(3)個人事業主のように資本と労働の両方を使う人の所得をどう振り分けるか、(4)納税者番号制度や資料情報制度をどう整備するか、(5)配当の二重課税の問題をどう考えるか、(6)時価評価を可能な限り行っていく必要があるのではないか、といった点があるのではないか。

  • 納税者番号制度の導入を前提とするという言い方をすると、それがネックになってほとんど議論が進まないという状況がある。納税者番号制度を導入するか否かにかかわらず、二元的所得税を進めていき、納税者番号制度が導入された段階で、より二元的所得税の本来の趣旨に近い形に仕上げていくことにすれば良いのではないか。

  • 二元的所得税を考える場合の論点としては、(1)所得分類をどのように考えるか、(2)現行の実現原則(所得が発生した段階で課税するのではなく、実現した段階で課税するという考え方)を廃棄することができるのか、(3)どのような形で執行を行うことができるのか、という3つの点が重要である。

  • 第1の点は、現行の所得税のルールには二つの異なる切り分けの軸があることをどう考えるかという点である。国債のリターンなのか、あるいは株式のリターンなのかといった所得を生み出す金融資産に着目した分類と、株式の値上がり益や値下がり損のように、実際に譲渡し実現した時に譲渡所得として認識する、所得税の実現時期に由来する分類の二つであるが、いかなる提言をするにせよ、金融所得を括りだすということを考える場合には、資産を見ているのか、それともタイミングを見ているのかという基準を明らかにする必要がある。

  • 第2の点は、タイミングに関する実現原則を排除することができるのかという問題である。実現原則は残るということになれば、結局は譲渡所得とその他の所得との間の線引きは残るということになる。それであれば、譲渡するまでは所得を実現させないということが納税者にいくらでもできるので、損失だけ先に利用するとか、いろいろな操作が可能になる。

  • 第3の点は、個人、つまり人を捕まえることとするのか、それともお金を捕まえることとするのか、という点である。人を捕まえるというやり方の場合には納税者番号制度を入れて、納税者が情報の申告を完全に税務署に対して行うという方向になろうか。また、金を捕まえる、お金の流れを捕まえるという方向であれば、源泉徴収制度を拡大あるいは修正して、金融機関が個人の代わりに納税するということになるのではないか。

【委員より出された意見の概要】

  • 二元的所得税を突き詰めると、法人段階で課税し、個人段階での課税を廃止することにより、二重課税の調整を行うという考え方になるが、配当課税を廃止することは実際には難しいのではないか。その場合、二重課税の調整が問題になるが、調整はしないと割り切る代わりに低率で課税することが資本の効率的な運用にも役立つのではないか。また、合わせて、SPCのようなパススルー事業体に係る税制の整備がこれからの課題なのではないか。

  • 日本における二元的所得税の導入を考える場合、不動産信託等のように現物出資を通じて金融所得化することが容易であることを踏まえれば、不動産所得も金融所得に含めて考えるべきではないか。

  • 法人税率とその他の資本所得税率を同じ税率にすれば、法人税と個人が受け取る配当に対する所得課税との二重課税の調整が行い易いという点から、法人税率と資本に対する税率は同じ税率であるとすることが二元的所得税の一つの大きなポイント。また、勤労所得の第一段階の税率の適用を受ける人たちの租税裁定ということを考えれば、資本に対する税率と所得税の最低税率も同一の方が当然望ましいが、必ずしも、1%も差があってはいけないということでもないのではないか。

  • リスクを伴うものについては税率を低くする、できるだけゼロにすべきという議論が一方であって、もう一方で金融所得間における損益通算の容認によってリスクテイクを促進させるという考え方もあるが、損益通算の範囲を拡大する形でリスクテイクを促進させていくのか、あるいは引き続き、優遇措置を残していくと考えた方が良いのか。現在の経済状況の下では優遇税制は必要であるが、金融商品間の中立性を持った優遇税制というのが本来望ましいので、一定の範囲内での投資行動は全て非課税にするような括りが一番望ましいのではないか。

  • 経済をこれから活性化させていかなければならないという中で、リスクに中立な、あるいはリスクを負担できるような税制を作っていかなければならない。そのため、損益通算の範囲をどのようにしたら良いのかが重要な問題ではないか。

  • 損益通算の幅を広げれば広げるほど税収が落ちるので、今度は税率を少し上げるべきという議論が出てくることも考えられる。また、金融所得の損失を勤労所得からも引けるとしても良いと思うが、損失を引けるということは、利益が出た時は勤労所得に足していくことになる。引くのと足すのと両方パラレルにしなければならないのではないか。

  • 租税の3原則、中立、公平、簡素の中に経済効率は入っていないが、税制のあり方を考える時は、どのように経済活性化、あるいは資源の効率的な使い方につなげていくかという点が非常に重要なポイントになるのではないか。

  • 元本保証の金融商品は普通の所得と同じく扱い、リスクを伴う商品は完全に別の枠で考えるべき。そういったリスクを伴う商品の税率をゼロにするというのが一つのアイデアではないか。

  • リスクを取る税制を日本でも是非導入すべきではないか。実質上、株のキャピタルゲインだけしかリスクは見られておらず、投信はリスクというか損失面については手当てがされていない。銀行預金といえども、今後はペイオフに伴う損が出る可能性があるが、そういう意味で損を見る税制についてもポイントを当てるべきではないか。

  • 簡素な税制とする観点から、低い税率による源泉分離課税ができない商品は累進性のある総合課税にしてしまうといったアメとムチを通じて源泉分離課税を強烈に推進していくと良いのではないか。

  • 金融税制を考える場合に、高齢者に保有されている過半の金融資産をどう実際に活用していくかという視点が重要。リスク商品への課税のバランスをいじっただけで高齢者がリスクを取るようになるのか。所得税だけではなくて贈与税、相続税も視野に入れて金融税制を考えるべきではないか。

  • 所得計算にあたって時価評価(特に含み損益)を反映させるのは、個人の感覚から見れば非常に落ち着かないものではないか。

以上

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