平成14年6月28日
金融庁

金融税制に関する研究会(平成14年第5回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第5回)(平成14年5月30日(木)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

また、その際の議論も踏まえつつ、PDF「今後の金融税制のあり方について―『二元的所得税』をめぐる議論の論点整理を中心として―」(PDF:135KB)を取りまとめた。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 関・土居(内線3182)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙)

金融税制に関する研究会(平成14年第5回)議事要旨

1. 日時:

平成14年5月30日(木) 10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁特別会議室

3. 議事要旨

今回は、これまでの議論を整理した論点整理の案につき、事務局より説明がなされ、次いで自由討議を行った。

【委員より出された意見の概要】

(研究会における検討の目的)

  • 金融税制が経済財政諮問会議等で取り上げられているのは、現行の金融税制が経済活性化の阻害要因になっているのではないか、あるいはそこを改めることによって新しい展望が開けるのではないかという問題意識があるから。それに答える一つの議論としてこの二元的所得税が出てきた。そのようなことを踏まえ、当研究会では、二元的所得税をめぐる議論の論点整理を中心に金融税制のあり方全般を検討したということ。

(二元的所得税についての論点)

  • 二元的所得税は金融のグローバル化や複雑化が進展する中で、簡素な金融税制を構築し、金融市場の発展にも資するという問題意識から議論されていることからすると、総論賛成各論反対の議論に陥ることなく、大きな時代認識の下で議論する必要があるのではないか。

  • これから二元的所得税をある程度打ち出していくのであれば、答えなければいけない問題はいっぱいある。具体的に問題に答えず、イメージ的な雰囲気だけでは上手くいかないのではないか。

  • 二元的所得税を導入する時に、配当の二重課税という問題をどう整理するか。やはり二重課税の議論は避けて通れないのではないか。

  • 中立的な税制という意味では、法人、個人の双方に中立にしていく必要がある。法人の配当と内部留保と利子の課税上の取扱いを異なる扱いにしておいて、個人レベルだけで揃えてしまうと、資金の流れを大きく歪めてしまうことになる。そこまで含めた上での中立性というのを求めていかないといけないのではないか。

  • 二元的所得税を導入する場合、勤労所得との租税裁定を考えると資本所得に対する税率と勤労所得に対する最低税率を等しくすることが考えられるが、これはよく考えるとちょっとおかしい。勤労所得で最低税率の適用になっているような人がどういう租税裁定をするのか。最高税率がかかっているような人に租税裁定の余地が非常にあるわけで、本当は資本所得に対する税率と勤労所得に対する最高税率を等しくすることが考えられるのではないか。

  • 金融所得と個人の勤労所得の税率を揃えた上で、それを法人税の税率と合わせるという時に、仮に個人所得税の最低税率と合わせようとすると法人税の税率を引き下げざるを得ない。所得税の最高税率である37%で金融所得を源泉徴収するわけにはいかないが、片方で法人税率を20%まで引き下げるわけにもいかない。その問題にどう答えるか。

  • 損益通算拡大の議論があるが、単純に資産所得に対する損益通算を広げるということになるのか。人為上作り出されたロス等については閉じ込めて、他との通算を認めないことは課税理論としては当たり前の話であるし、経済理論としても当たり前。それについてどう整理するのか。

  • 仮に、資本の効率を上げようという方向で考えて行くと、損益通算の拡大や金融税制の簡素化が求められることとなろうが、これにより当面は税収が落ちる可能性がある。二元的所得税の検討に当たっては減税ありきといった立場が先に立つべきではないという意見と、資本効率を上げていくべきという意見、これらが両立をするのは難しいのではないか。

  • 源泉徴収は効率的かつ低コストな制度であり、廃止するわけにはいかない。その結果、源泉徴収が適用されるものとそうでないものが並存するが、この間の納税者の不平等というのは、極めて大きい。これに対しての答えは二元的所得税論者の中には何も無いのではないか。

(金融税制見直しの方向性)

  • 何らのコンセンサスもこの研究会で得られなかったのかというと、そうではない。つまり、金融商品の現状の課税が非常に好ましい状態になっているわけではなく、しかも単に投資家から見て好ましくないばかりか、金融機関から見ても商品開発等の阻害要因になっている、あるいは租税回避行為等の源泉になっている可能性がある。この点に関しては、コンセンサスがあったということをしっかりと主張して行くべきではないか。

  • 金融商品に対する課税の実態というものを踏まえると、現状が極めて複雑である。従って簡素化を図っていく必要がある。なおかつ、現状を踏まえた時に損益通算も必要がある。こういう点について共通のコンセンサスができたという点については、強く前面に出すという形にした方が望ましいのではないか。

  • 二元的所得税論についてのいろいろな批判はあるにしても、今の金融所得をもう少し整理して、特に雑所得について見直すべきだというぐらいであれば、コンセンサスは得られたと言っても良いのではないか。

  • 最低限のところだけでも、何かファースト・ステップみたいなところだけでも主張できないか。つまり二元的所得税という言葉を使わなくとも、リスク商品だけでも損益通算の範囲を拡大するとか、そういうところまで何か踏み込んだ一歩を、この研究会として出せれば良いのではないか。

  • 金融税制について、日本全体を考えて、資本の効率を上げようという考え方の下で、検討すべきは当然。ただ、その答えが二元的所得税を導入するということまでは、この会のコンセンサスではないのではないか。二元的所得税論を導入すべきということで、それを将来の目指すべき方向として当面の措置について考えるべきだという点までは当研究会ではコンセンサスとならなかったのではないか。

  • 各種の金融所得を、一括して同一所得とみなして同一の課税を行うと中立的というのは大きな間違い。リスクを勘案すると、同一の括りでは中立的ではなく、反対に歪みを生じさせる税制である。同じく発生時、実現時課税の問題も、全て発生時に課税するのでない限りは歪みを発生させてしまう。ただ一方で、実務的に、現場に居る方々の意見として、歪みは生じるかもしれないけれども執行コストが低減できるという議論をして行くというのが、おそらく答えになるのではないか。

  • 神田先生が提示されたように、株式譲渡益と投資信託やその他の金融所得を一元的に扱い、損益通算をしながら総合課税をしようという枠組みも考えられる(PDF5月14日政府税制調査会基礎問題小委員会資料参照)。その中に具体的に何を盛り込むかというのは柔軟に決まる話。現行の所得税法を余りいじらずに、それなりの方向性を出せるし、いろんな人が賛同できる。方向性としても間違ってない。どちらの方向にそれがさらに行くかは、その時にまた考えることができる。こういう考えが、最終的には一番通用するのではないか。

以上


PDF資料(PDF:258KB)

サイトマップ

ページの先頭に戻る