第127回自動車損害賠償責任保険審議会議事録

1. 日時 平成22年1月19日(火)10時00分~12時00分

2. 場所 中央合同庁舎第7号館西館12階 共用第2特別会議室

【山下会長】

それでは、時間がまいりましたので、ただいまより第127回自動車損害賠償責任保険審議会を開催いたします。本日はご多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

まず、今回新たに就任されました委員の方をご紹介申し上げたいと思います。

まず、櫻田委員でいらっしゃいます。

【櫻田委員】

櫻田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【山下会長】

杉山委員でいらっしゃいます。

【杉山委員】

杉山でございます。よろしくお願いいたします。

【山下会長】

野尻委員でいらっしゃいます。

【野尻委員】

野尻でございます。どうぞよろしくお願いします。

【山下会長】

萩尾委員でいらっしゃいます。

【萩尾委員】

萩尾でございます。

【山下会長】

よろしくお願いいたします。

なお、新たに就任されました山本委員におかれましては、本日は所用のためご欠席とされております。また、田中委員、西原委員、広重委員におかれましても、本日は所用のため欠席されております。高橋委員は後ほど見えられるかと思います。

さて、本日の議題といたしましては、お手元の議事次第にございますように、自動車損害賠償保障法に基づく諮問事項に対する審議となっているほか、報告事項が幾つかございます。

では、まず事務局より、資料の確認をお願いいたします。

【長谷川保険課長】

金融庁の保険課長の長谷川でございます。よろしくお願いいたします。

それでは資料の確認ですけれども、小さいクリップでとめました3枚紙2種類、それと、大きなダブルクリップでとめました資料1から8までございます。

それでは、議題の確認をさせていただきたいと思いますけれども、お手元の資料の議事次第に沿って簡単にご説明したいと思います。

議題は大きく3つございまして、1番目が諮問事項、(1)から(3)までございます。(1)は新設の損保会社の自賠責保険事業に係る認可を行うというものでございます。それに相当します資料が、資料1でございます。

(2)、(3)は共通でございまして、これはことし4月に施行されます保険法の規定を踏まえまして、約款等の改定を行うというものでございます。これに相当します資料が2と3でございます。

この(1)から(3)の諮問事項につきましては、議事次第をめくっていただいた2枚目に諮問文と答申案が付してございます。

2番目の議題が料率検証結果ということでございまして、これに相当します資料が資料4でございます。

3番目の議題が報告事項でございまして、(1)から(4)までございます。これに相当します資料が5から8というふうになります。

それから、あとの小さいクリップでとめました3枚紙でございますけれども、1枚目に昨年1月に当審議会で決定していただきました当審議会の公開ルールの紙、それから2枚目、3枚目は本日欠席の西原委員、それから田中特別委員から提出していただきました資料を配付してございます。

資料の不足があればお知らせいただきたいと思いますが、よろしいでございましょうか。

【山下会長】

よろしいでしょうか。

それでは、議事のほうへ移ってまいりますが、最初にお手元に、今ご紹介がありましたように、昨年の審議会で決定いたしました当審議会の公開ルールについてお配りしておりますが、本日すぐ後の議題1、諮問事項のうち、自賠責保険事業に係る認可につきましては、審議の中で個別会社の権利、利益等に係る個別情報を取り扱うおそれがあるということのため非公開とさせていただき、本件のご審議を行った後に会議を公開するということとさせていただきたいと思います。

そこで、まずは諮問事項の自賠責保険事業に係る認可につきまして、事務局よりご説明いただき、ご議論いただきたいと思います。

まず、事務局よりご説明をお願いいたします。

【長谷川保険課長】

議事次第の次に付しております諮問文の1でございます。イーデザイン損保という株式会社に対して、自賠責保険事業の認可を行うというものでございます。

資料1をあわせてごらんいただきたいと思います。資料1の表紙をめくっていただきまして1枚目にありますが、イーデザイン損保会社におきましては、平成21年6月8日をもって保険業法に基づく損害保険事業免許を取得したところでございますが、今般自賠責保険事業に参入したいとして、保険業法の規定に基づき基礎書類、事業方法書等々でございますけれども、の変更認可申請があったものでございます。

2枚目の2ページをちょっとごらんいただきたいと思いますけれども、イーデザイン損保会社の概要でございます。イーデザイン損保会社は、東京海上ホールディングスの子会社として設立されたものでございまして、インターネットによる自動車保険を提供する保険会社として、昨年6月に免許を取得した会社でございます。

1ページ目に戻っていただきまして、この認可の基準については、参考のところにありますように、マル1からマル3の審査基準がございますが、今般のイーデザイン損保会社の申請内容につきましては、既に自賠責保険事業を行っている他の保険会社と同一のものでありまして、参考に示しました審査基準マル1からマル3について満たしているものと認められるかと存じます。よって、事務局といたしましては、認可を行うということで当審議会にお諮りをする次第でございます。

【山下会長】

ただいまの説明に関しまして、ご質問、ご意見ございませんでしょうか。

ございませんでしょうか。

それでは、当該保険会社の自賠責保険事業に係る認可について、異議はないという結論でよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【山下会長】

ありがとうございました。それでは、ご異議ないということでございますので、そのようにさせていただきます。

それでは先ほど申しましたとおり、これから会議を公開いたしますので、事務局は傍聴者の方を会場へご案内願います。委員の皆様、少々お待ちください。

(傍聴者入室)

【山下会長】

それではよろしいでしょうか。審議を再開いたしたいと思います。

続きまして、自賠責保険普通保険約款の一部変更、及び自賠責共済規程の一部変更につきましてでございます。

まず、事務局よりご説明いただいた上で、ご議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【長谷川保険課長】

それでは、諮問文の2から5に相当する部分でございます。2は民間損保会社について、3から5は共済事業についてですけれども、いずれも、ことし4月に施行します保険法の規定を踏まえまして約款等の一部改定を行うというものについて認可をするというものでございます。

資料は2と3になりますが、資料2の1ページをごらんいただきたいというふうに思います。一番上の四角にございますように、現行商法の保険契約に関する規定につきましては、明治32年に商法が制定されて以降、約100年にわたって実質的な改正が行われてこなかったというところでございます。この間、社会経済情勢も大きく変化してきたことから見直しが行われまして、新たな法律として独立させた保険法が平成20年6月6日に公布されたところであり、本年4月1日に施行されることになっております。あわせて、保険法の施行に伴う関係整備法も公布されており、これにより自賠法の一部も改正されております。

この保険法の中身ですが、皆さんご案内だとは思いますけれども、簡単に振り返ってみたいと思いますが、この保険法の一番大きな柱は保険契約者等の保護でございます。左上の四角の箱の中にございますように、例えば契約締結時の告知義務につきましては、従来の自発的申告義務から質問応答義務に変更されるとか、あるいは保険給付の履行期についての規定が新設されまして、適正な保険金の支払いに必要な調査のための合理的な期間が経過したときから、保険会社は履行遅滞への責任を負うということになりました。

また、片面的強行規定というものが導入されまして、これら、今申し上げたような告知あるいは保険給付の履行期についてのルールについて、保険法の規定よりも保険契約者等に不利な内容の約款の定めをした場合については、これを無効とするということが明確化されました。

また、請求権代位について、これは保険会社が保険金を支払った場合、被保険者の有する請求権を代位取得するというものでありますけれども、これについては、この代位取得する保険会社の請求権金額について種々学説があったところですけれども、今回の保険法では、被保険者保護の観点から被保険者にとって最も有利な差額説が採用されたというところでございます。

また、保険金請求権の時効についても、従来の2年から3年に延長されたところであります。

このほか、被害者保護の観点から、責任保険における被害者優先権の確保ということで、被害者の先取特権の規定が新設されました。

また他方で、モラルリスクの防止の観点から重大事由解除の規定も新設されたところであります。

こうした規定は、民間損保会社の保険契約のみならず、共済契約にも適用されることが明確化されたところであります。このほか、下にありますように、自賠法についても所要の改正が行われました。

こうした保険法等の規定を踏まえまして、右側にありますように、自賠責保険の約款について所要の改正が今般行われたところであります。例えば、告知義務については質問応答義務であることが明確化されました。また、保険金の支払い時期につきましては、まず保険契約者にとりまして、保険金請求に必要な書類・証拠というものを具体的に明示いたしまして、履行期の起算点、すなわち保険金請求手続の完了日が明確化されました。

また他方で、保険会社においては、保険金の支払いに必要な確認事項を具体的に明示いたしまして、保険金請求手続完了日から原則として30日以内に確認を終えて、保険金を支払う旨が規定されました。また例外的に特別な照会・調査が必要な場合については、調査・照会内容に応じた履行期、例えば医療機関への照会であれば90日、警察等の捜査機関への照会であれば180日といったように、具体的な履行期を規定したところであります。そのほか、請求権代位ですとか先取特権についても、先ほど申し上げた保険法の規定を踏まえた所要の約款の改正が行われたところでございます。

1ページのところがこの概要でございまして、2ページ、3ページは、今申し上げたようなことがやや詳しく書いてございます。4ページ以下は、具体的な約款の新旧対照表になっております。

また、共済につきましては資料3に述べられておりますけれども、基本的に今ご説明した内容と同様の変更を行うものでございます。

今般のこの約款等の変更は、このように契約者、被害者の保護の充実を図る保険法の趣旨を踏まえたものでございまして、今回のこの自賠責保険普通保険約款の一部変更、それから自賠責共済規程の一部変更については認可ないし同意をして問題がないというふうに、事務局としては考えているところでございます。

以上でございます。

【山下会長】

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見ございませんでしょうか。

保険法の趣旨に基づいて約款を改定されるということだろうと思いますが、ご意見がもしないようでございましたら、諮問を受けました事項につきまして、この審議会として異議はないということでお認めするということでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【山下会長】

ありがとうございます。それでは、ご異議がないということで、そのように進めさせていただきたいと思います。

続きまして、議題2、料率検証結果についてご報告いただき、ご議論いただきたいと思います。

まず、実際に料率検証の作業を行った損害保険料率算出機構から、田山委員に概要をご説明いただき、その後、事務局から補足していただきたいと思います。それでは、田山委員、よろしくお願いいたします。

【田山委員】

損害保険料率機構の田山でございます。

それでは21年度の検証結果につきまして、資料4のほうでございますが、これに沿って説明させていただきます。

まず1ページをごらんいただきますと、自賠責保険・共済収支表というのがございます。この表では、自賠責事業を行っております全事業者の収入純保険料、支払保険金、収支残、損害率などにつきまして、過去の推移、それと今回の検証の対象年度であります21契約年度及び22契約年度の予測値を載せているところでございます。

表の一番左側の収入純保険料をごらんいただきますと、平成14年度以降、9,000億台でおおむね推移しておりましたけれども、平成20年度に6,469億円ということで大幅に減少しております。これは、20年4月の基準料率改定の際に純保険料率を36.3%引き下げた、このことによる減収でございます。今回の検証の対象であります21年度、22年度の収入純保険料は、21年度が5,995億円、その下の22年度が5,980億円ということになっております。

これに対しまして、この右側にございます支払保険金でございますけれども、21年度が8,317億円、22年度が8,266億円ということになっております。

以上の収入純保険料と支払保険金との差額が次の収支残の欄でございまして、当年度収支残というところをごらんいただきますと、21年度が2,322億円の赤字、22年度が2,286億円の赤字となっております。

また、一番右側に損害率という欄がございますが、これは支払保険金を収入純保険料で割った値でございますけれども、これが21年度では138.7%、22年度では138.2%ということになっております。

したがいまして、下の欄外の注3にございますように、平成20年4月の基準料率改定の際の予定損害率、これは133.8%ということになっておりましたけれども、これより若干損害率が上振れするというか悪化するという見込みになっているところでございます。

これが結果でございますけれども、それでは今回の検証結果につきまして、順次、その背景とか要因等についてご説明させていただきます。

それでは、次のページの2ページをごらんいただきたいと思います。まず2ページでございますが、ここに交通事故の発生状況というのが記載してございます。こちらの表は警察庁の交通事故統計によるものでございまして、交通事故の傾向を把握するための参考ということで添付しております。

初めに、左側の発生件数をごらんいただきますと、平成16年あたりが約95万2,000件とピークになっておりまして、その後、近年は減少傾向ということになっております。また、平成21年の見込みといたしましては、73万6,000件強ということになっております。同様に死者数、負傷者数、これにつきましても近年は減少傾向になっているということでございます。

次に3ページをごらんいただきたいと思います。3ページは、料率検証における主な予測要因についてのご説明ということになります。まず(1)の収入純保険料の前提となっております保有車両数、これにつきましては、過年度の保有車両数の動向を参考として出しておりまして、21年度、22年度ともに対前年比でマイナス0.1%ということで、若干の減少ということを見込んでおります。

次に、(2)の支払保険金の前提になるのが、マル1の事故率とマル2の平均支払保険金でございます。ここで言っております事故率というのは、これはあくまでも保険金支払いの対象になった事故率を意味しているところでございます。

まず、マル1の事故率でございますけれども、過年度の事故率の動向、及び先ほどご説明いたしました交通事故発生状況、これを参考として算出しております。表には死亡、後遺障害、傷害別の予測値というのを記載しておりますけれども、先に4ページのほうをごらんいただきたいと思います。この4ページでは、死亡、傷害、後遺障害の事故率の過去の実績値と、今後の見込みというのをグラフと表でお示ししております。

死亡の事故率の過年度の傾向といたしましては、15年度以降一貫して減少傾向でございます。そこで今後の見込みといたしましても、減少傾向が続くという予測としておりまして、21年度が0.00616%、22年度が0.00593%ということで予測しております。

また、傷害の事故率につきましても、15年度以降おおむね減少傾向での推移でございますので、今後も減少傾向が続くということで見込みまして、21年度が1.34365%、22年度が1.33520%ということで予測しております。

これに対しまして、後遺障害の事故率につきましては、過年度の動向としては、17年度以降増加傾向で推移しております。ただし、20年度の対前年比で見た増加割合にやや鈍化のきざしが見られるということから、この点を勘案いたしまして、21年度については若干の増加を見込みまして0.08741%とした上で、22年度は21年度と同率で推移するものということで予測してございます。

なお、過年度の動向におきまして、死亡及び傷害、これが減少傾向での推移となっているのに対して、後遺障害の事故率のみが増加傾向で推移している、この要因につきましては、これは十分な検証ができているというわけではございませんけれども、やはり一つは、被害者の方の請求意識が高まっているといったこととか、近年、保険会社におきましても請求案内をより充実させているということなどがその背景にあるのではないかということで考えております。

ここで、3ページのほうに戻っていただきたいと思いますが、マル1の事故率の表では、ただいまご説明した死亡、後遺障害、傷害別に、21年度及び22年度の予測事故率の値を記載しております。また、23年度以降につきましては、死亡、傷害についてはさらに減少傾向での予測としまして、後遺障害については21年度の水準が続くということで予測しているところでございます。

続きまして、この3ページのマル2の平均支払保険金でございますけれども、支払保険金に関する予測要因これといたしましては、賃金の上昇率といいますか変動率といいますか、治療費の変動率、上昇率、支払基準の改定による上昇率、これが主な要素となっているところでございます。

このうち、賃金上昇率につきましては、20年度の賃金指数、これが実績値として一番新しい指数でございまして、これがマイナス1.1%の減少となっております。また、21年度に入りましても、今までのところで見ますと、引き続き非常に厳しい状況が続いているということでございますので、21年度は20年度と同様にマイナス1.1%ということで見込みまして、その後につきましては、これは中長期な観点から据え置きということにしてございます。

また、治療費上昇率につきましても、過去5カ年の平均がほぼ横ばいということになっておりますので、21年度以降も据え置きということで見込んでおります。なお、治療費、休業損害、及び慰謝料の単価等を定めております支払基準の改定でございますけれども、これにつきましては過去の実績を踏まえまして保守的な見積もりということで、従来どおり22年度以降も1年置きに改定があるものというぐあいに仮定をした上で、22年度に0.67%の上昇、また22年度以降、1年置きの改定の上昇率を0.44%ということで見込んでいるところでございます。

続きまして、5ページをごらんいただきたいと思います。5ページのほうは自賠責保険・共済の支払件数、及び平均支払保険金の推移の表でございます。この表は3ページ、及び4ページの前提に基づきまして、自賠責保険・共済の支払件数、平均支払保険金を算出いたしまして、その推移を一覧表にしたものでございます。

この表のタイトルに、契約年度ということで書いておりますけれども、これは下の注2のほうにございますように、当該年度において契約を締結した車両が引き起こした事故による支払件数と平均支払保険金を集計しているものでございます。例えで言いますと、19年度の支払件数を見ますと、4,968件ということになっておりますけれども、死亡の保険支払いですね。これは、保険金の支払いが20年度以降に行われたものであっても、19年度に締結した契約に基づく支払いであれば、これはすべて19年度の値として集計していると、こういう意味でございます。

なお、20年度に基準料率の大幅な引き下げを実施したということから契約者の行動にかなりの影響かございまして、いわゆる継ぎ足し契約という契約でございますけれども、いわゆる料率の引き下げる直前に契約の満期が来る方は、引き下げまでの期間だけその年度つけて、その後は下がったほうで長いやつをつけると、こういう行動が起きまして、したがいまして、19年度の契約というのが相対的に少なくなって、その分が20年度にはね返って増加しているということになっております。これは一種の、基準料率の引き下げによる契約者の行動がちょっと変わったことによる異常値ということでございますので、全体の傾向として見る場合には、この影響がない18年度、それから21年度、22年度これを対比していただきますと、わかりやすいかと思います。

これで見ますと、死亡について言いますと、18年度が5,574件、これが21年度は4,864件、22年度4,709件、減少傾向になっております。これに対しまして、後遺障害の場合は、18年度が6万4,816件であるのに対しまして、21年度が7万1,339件、22年度が7万1,208件と増加しております。また、傷害につきましては、18年度の109万2,439件に対しまして21年度に108万9,986件、22年度に108万1,946件ということで、若干ではございますけれども減少傾向になっているということでございます。

他方、平均支払保険金と、これをごらんいただきますと、こちらは死亡、後遺障害、傷害のいずれもほぼ横ばいで推移しているというところでございます。

次に6ページをごらんいただきたいと思います。この6ページは自賠責保険・共済の支払保険金の総額の推移でございまして、この前の5ページの支払件数と平均支払保険金を掛け合わせて求めたものでございます。こちらにつきましても、先ほどと同様な理由で18年度と21、22年度、この比較でごらんいただきますと、同じような傾向でございまして、死亡及び傷害につきましては18年度対比で21年度、22年度は減少しておりますけれども、後遺障害では21年度、22年度のほうが増加しているということでございます。

なお、一番右の欄が合計ということになっておりますけれども、全体では、21年度は18年度に比較して若干の増加、22年度は若干の減少ということになっております。

この合計欄の21年度の8,317億円、22年度8,266億円というこの値が、先ほど冒頭の1ページの収支表でご説明いたしました支払保険金の21年度、22年度の、これの表の一番左下のほうでございますけれども、この値ということになっているということでございます。

続きまして、7ページのほうをごらんいただきたいと思います。7ページのほうは、ご参考として重度後遺障害の支払件数の推移というのをまとめてございます。集計の対象といたしましては、注1にございますように、現行の後遺障害等級表の別表第一に該当いたします介護を要する後遺障害と、それと別表第二の1級から3級までに該当する後遺障害でございまして、これらが労働能力喪失率100%とされる後遺障害でございます。なお、現行の等級表というのは14年度から実施したものでございまして、13年度以前は別表第一と別表第二に分かれておりませんでしたので、この表の上では、13年度以前のものは別表第二ということで集計してございます。

それぞれの等級の支払件数の合計が一番右の欄にございますが、重度後遺障害の支払件数は、近年若干の増加傾向ということになっているところがおわかりいただけるかと思います。

続きまして、8ページをごらんいただきたいと思います。8ページは自賠責保険、自賠責共済の運用益の発生と積立状況、これを参考として添付しているものでございます。詳細のほうは割愛させていただきますけれども、例えば、損害保険会社の例でごらんいただきますと、一番右の積立金残高というのがございますけれども、これが20年度末で2,480億円、これに税の軽減効果というのを勘案いたしますと、その下の括弧書きの3,882億円ということになっております。この累積運用益は、保険料の引き下げとか自賠責保険の収支調整の財源としてすべて活用されるというものでございます。

続きまして、9ページをごらんいただきたいと思います。9ページは自賠責保険の社費、共済経費の収支表でございまして、全事業者の社費の収支について、ご参考までに過去の実績を示したものでございます。自賠責保険におきましては、社費につきましてもノーロス・ノープロフィットの原則によりまして、累計収支残も考慮して収支が均衡するように料率が算出されているというところでございます。

最後の一番裏の10ページでございますけれども、今までご説明した内容のポイントをまとめたものとなっております。(1)にありますように、20年4月の基準料率改定における予定損害率は133.8%ということになっておりますけれども、(2)の表の本年度検証結果である21年度、22年度の損害率は、この予定損害率と比較して悪化しているという状況になっているところでございます。

この損害率の悪化というのは、改定時の見込みと比較してまとめて申し上げますと、収入純保険料のほうは、これは保有車両数の減少によって減少したということでございます。これに対して保険金の支払いにつきましては、やはり交通事故死傷者数の減少による支出の減少が見込まれるということでございますけれども、その中で後遺障害に関する支出の増加というのが見込まれるために、全体として支出のほうは純保険料収入の減少ほどには減らないというふうに見込まれる状況があるということで、これが悪化の要因となっているということでございます。

私からのご説明は以上でございます。

【山下会長】

ありがとうございます。

続きまして、事務局から補足をお願いいたします。

【長谷川保険課長】

今の資料4の10ページ、そのまま引き続いて補足説明させていただきます。

今般の基準料率検証における損害率につきましては、今のご説明にもありましたように、21年度が138.7%、22年度が138.2%となっておりまして、20年4月の基準料率改定時の予定損害率よりも若干悪化をしております。なお、20年度以前においても想定より若干収支が悪化をしております。

この乖離の主な要因となっているのが、ただいまのご説明にもありましたように、後遺障害の保険金支払いの増加にあるわけですが、後遺障害の保険金支払いの今後の動向については、交通事故自体は減少傾向にあることを考えますと不透明な面もございまして、さらなる見きわめや分析が必要というふうに考えております。

また、累計収支残は22年度においてマイナスとなる見込みとなっておりますけれども、一方で、この10ページの資料の(3)にありますように、運用益積立金残高が20年度末で約4,500億円ございますことから、両者を合わせますと22年度の時点においては、依然として2,000億円以上の残高が見込まれるところであります。

これらの点に加えまして、前回の料率改定からまだ2年足らずであるという点を踏まえますと、今回は料率改定の必要はないのではないかというふうに、事務局としては考えております。

以上でございます。

【山下会長】

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見をいただきたいと思います。

福田委員、どうぞ。

【福田委員】

お伺いしたいんですが、20年の料率改定のときに、累計収支残等を使って5年間で大体ゼロにする方向で赤字料率を組んだわけですけれども、先ほどの運用益等の残高があるとおっしゃいましたけれども、これだと5年で大丈夫なんでしょうか。現状の時点での見込み等はございますでしょうか。

【長谷川保険課長】

今回の料率検証結果をもとに非常にラフな試算をいたしますと、ただいま申し上げましたように、22年度末時点において累計収支残はマイナスの2,280億円となっております。一方、累積運用益残は20年度末時点では約4,500億円と申し上げましたが、21年度以降も毎年数百億円程度の運用益の発生が見込まれることから22年度末時点では5,000億円程度と想定をしております。そして、先ほどの累計収支残、マイナス2,280億円と合わせますと、残高としては約2,500億円強というふうに見込まれるのかなと思っております。

23年度以降につきましては、単年度収支としては、大体マイナスの約二千数百億円ぐらいの赤字というふうに見ておりまして、一方で、新規発生運用益が数百億円程度と見込まれることから、23年度末におきましても、累計収支残と累積運用益を合わせた残高はプラスの水準になるというふうに見込んでおります。

しかしながら、この24年度末以降になりますと、なかなかそこは厳しいものがあるんではないかというふうに考えておりますが、いずれにしてもさまざまな要因が勘案されますので、現時点で明確な見込みというものはちょっと持ち合わせていないというのが現状でございます。

【山下会長】

いかがでしょうか。

【福田委員】

ありがとうございました。

【山下会長】

堀田委員、どうぞ。

【堀田委員】

やはり後遺障害のところですね、気になるんですけれども、これだけ事故件数、事故率が上昇すると。先ほどご説明もあって、あるいはこれから調査しますとおっしゃっているんで、重ねて恐縮なんですけれども、被害者の意識が向上したんだというような話をされたように思いましたけれども、本当にそれだけの理由なのかという気がするのは、一方で、ちょっとうがった見方でもしかしたら気にさわられるかもしれませんけれども、この間、保険業界いろいろと支払いの問題を抱えて、支払基準が変わったというそういう側面は全くなかったのかと。ほかが全部減っているのに、ここだけふえているということの合理的説明というのは、やっぱりまだ解明されていないということであれば、この1年をかけてぜひそのあたりを解明していただけたらなと、これ要望ですけれども、よろしくお願いいたします

【山下会長】

田山委員、どうぞ。

【田山委員】

本当に後遺障害がふえている、相当ふえているというのは事実でございまして、ただ、支払基準が変わったとかそういうことはございません。これはもう従来と同じなんですけれども、結果としてふえているということで、中身を見ますと、これはこれからいろいろまた分析していかなきゃいけないと思っているんですけれども、今のところ見えているのは、いわゆる14級という等級がございますね。いわゆるむち打ち症のたぐいですけれども。これが増加しているほとんどなんですね。それ以外はそんなにふえていないということなんで、むち打ち症の認定の仕方がどうなのかとか、あるいは、いったんこちらで非該当としても、また異議申し立ての件数というのが非常にふえているのも事実なんですね。異議申し立てが来ても、それじゃ認定がふえているかというと、その結果としての認定率は別に上がっていないと、むしろ下がっているということなんで、その面から見ると、やはりいったん非該当になっても、言うことは言っておきたいという方がふえているのは確かだろうなという、その点では請求マインドが相当変わってきているのかなということはあるかと思います。

ただ、実態としては、認定の微妙なところが非常にふえているというところですので、この辺はもう少し精査しないといけないなというぐあいに思っているところでございます。

【山下会長】

堀田委員、よろしいでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。

ございませんでしょうか。

高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】

やはり想定より収支悪化の中で、その被害者の請求意識が高まっている点なんですけれども、私はこのトレンドは今後も続いていくと考えるのが正しいのではないかと思っております。

医学の進歩で死亡は減っても後遺障害を抱えていく人たちがふえていくという中で、東洋医学のほうに後遺症の方が頼っていく傾向が見られると思うんですね。それで支払基準等との関係でトラブルになっている例も、私の身近にもかなりございます。柔道整復師関係の診療基準も検討が必要と言われながら、進展しているかどうかがよくわからないということがございます。

それから、今後の収支を考える上で、これも以前から何度も申し上げていますけれども、国交省さんが自賠特会のほうに移管していたお金を、財務省との関係で一般会計に繰り入れている相当な金額があるわけですが、平成23年度末が迫ってくる中、政府全体の財政が大変になる中で、そのお金がどうなるかということに、国民として強い関心を持っているところです。これは払いすぎた保険料がたまったもので、交通事故のために使われるお金だと思います。

先々、保険収支が悪化していく中で役立てなければいけない部分というのもあると思うんですけれども、どのように今進行していて、今後の見通しはどうなのか、特会のお金だからということで切り込まれたときに、きちんと守れるのかどうかに関してお伺いしたいと思います。

2点、後遺障害の件、東洋医学との関係と、それから特会のお金です。

【山下会長】

萩尾委員、関係することについてでしょうか。

【萩尾委員】

関連してお答えがあるかと思うんで。私ども、日本自動車会議所の萩尾でございますけれども。

やはり自動車損害賠償保険の特別会計から一般会計に繰り入れている問題ですけれども、意見書が出ていますけど、ここにも幾つかございますけど、やはり23年度までに分割して返すという、もう期限も迫っておりますし、先ほどからお話も出ていますように、いずれにしても、非常に財政そのものが厳しくていよいよ危惧される状況にございます。

あるいは、保険収入というの、単年度ももう赤字になっていまして、先ほどお話が出ましたけれども、累計でもそうですね。見てもこのトレンドが続くとすれば、早晩、料率を検討して上げるという事態も想定されますし、ユーザーとしては非常にこの辺をはっきりしないと、料率をどうするかという問題についても大きな感情問題が残るだろうという感じです。ですから、申し上げたように23年度約束どおり、財政がいろいろあるとしても、特別会計でございますのでぜひそれを戻していただきたいというのが、私どもの。

それからもう一つは、被害者あるいは後遺症の、先ほども出ましたけれども、じゃどうするんだと。こういう問題について、どうしても財源がまた要るわけでございますんで、こういう問題にやっぱり集中して議論をする場が必要なんじゃないかなと。ある日突然、23年度はそういうお約束しましたけれども、諸般の事情によって引き続きとか、返せませんとかって急に今そういう話が出ても、非常に対応に苦慮するというような状況でございますんで、先ほどあわせてお話が出ましたんで、お考えがあれば伺おうと思います。

【山下会長】

それでは、まず後遺障害の点ですが、これは田山委員あるいは櫻田委員にお願いします。

【田山委員】

いわゆる東洋医学の件でございます、最初のご質問でございますけれども、これは確かに今の治療費に占める割合が非常に上昇しているのは確かなんですね。単価も高いですし、また、特に治療期間が長いというのが特色でございまして、相当治療費に占める東洋医学のウエートが上がっているというところは、これは私どもも問題だというぐあいに思っておりまして。ただ、上がっていること自体は、これはいわゆる必要かつ妥当であればこれはしようがないわけなんですね、ある意味では。ただ、それが本当にそうなのかというところを、もうちょっと中身を1年ぐらいかけてきちっと精査しないとまずいなという、そういう問題意識は私ども持っております。

【山下会長】

高橋委員、今の点でいかがですか。

【高橋委員】

これからやっていただくのであれば、きちんとスケジュール観を持って検討していただきたいと思いますし、検証以前に、やはり身近にあって相談を受けているトラブルの中に、保険会社の方が、もう最初から東洋医学、鍼灸院はだめですと言っているようなケースも出てきております。国民から不信感を持たれるところだと思いますので、何が支払われて何が支払われないのか、どういうケースがOKかということを、きちんと被害者の方が理解できるような形にしていただきたいというふうに思っております。

【山下会長】

石井委員。

【石井委員】

日本医師会の石井でございます。

昨年、医業類似行為についてはご指摘が福田委員のほうからあったと思います。それで、やはり治療とか傷害、いろいろな問題を討議するとすれば、僕は救急医療そのものも担当しておりますが、メディカルコントロールという概念がございまして、妥当性というのは、やはりいろいろなパフォーマンスとかいろいろなことを含めて、最終的にやっぱりメディカルチェックをすると。その時点でいろいろなことが検証されていくということが、やはりあるべきではないかということは考えております。

我々のほうのいろいろな会議でも、今の話題は議論されているところです。ただ、問題なのは、要するに一回診断書なり何なりがあった時点から後は、むしろメディカルサイドからだんだん別な方向に流れていくと、見えなくなっているという現実があります。ですから、これをきっちりと討議をするということであれば、これはやはりそういうものが我々にも見える状態で、一緒にご議論をするという作業が今後必要になるかなということは考えております。

以上でございます。

【山下会長】

では、この問題、大変複雑な要素が今のご議論の中からだけでも浮かび上がってくるんですが、関係の方面で、毎年問題指摘だけということでもこれはどうにもならないと思いますから、少し検討を深めていただきたいというふうに思います。

それで、特別会計の点は、これは国土交通省の八木課長のほうからご説明を。

【八木保障課長】

国土交通省の保障課長の八木でございます。

事実関係を申し上げますと、この審議会でもご指摘いただきまして、22年度予算編成の過程におきまして、私ども繰り返し、財務当局に対しては繰り戻しを要求をしておりましたが、ご承知のとおり財政状況が、これまでも厳しいと言われていたんですが、昨年末の状況でございますので、残念ながら繰り戻しは全くできなかったというのが22年度予算編成の結論でございます。

23年度ということで、萩尾委員のほうからありましたが、今の大臣覚書の期限が23年度でございますから、来年度に向けては、私ども一層一生懸命お願いをしてまいりたいと思っているところでございます。

以上です。

【山下会長】

萩尾委員。

【萩尾委員】

毎回同じようなお答えでお立場もよくわかるんですけれども、政権も変わったことですし、やっぱり目的をきちっとしたものを、目的がわからない形で使うという部分については、やっぱりユーザーとしては納得できないという感情が残ると思いますんでね。やっぱり毎年そういう形の中で、何となくもう少しありますねというような感じなんですけど、とどのつまりのところで急速に、その場で何の事前準備もなくやっぱりだめですというようなことになると、非常に立場としてはあるいはユーザーの感情としてはそういうことにはなりくいんで、何らかのアクション、いわゆるのれんに腕押しというような状況じゃなくて、何らかのアクションをもう具体的に考える時期に来ているんじゃないかというふうには思っておりますけれども。

【山下会長】

ほかにいかがでございましょうか。

戸川委員、どうぞ。

【戸川委員】

今、繰入金の戻しのことが話題になっていますけど、私はもちろん経済的には全く素人ですからよくわかりませんけれども、マスコミの発表とかいろいろ見ていますと、それどころの騒ぎじゃなくて、もっと大きな財布本体に手が突っ込まれようとしているんじゃないかというような状況に、今ちょっと思えてならないんですね。

例の事業仕分けという、いわゆる税金の無駄遣いをなくすということについての作業が、この間、菅財務相、新しい大臣が特別会計にも手を入れるんだということで宣言されていますので、本当に私はそれを戻すどころの騒ぎではないなというような気がしてならないんですけどね。

いずれにしても自賠責の特別会計というのは、いわゆる税金の無駄遣い云々の問題ではなくて、あくまでも契約者が払った保険料、これを運用してふやしたものだということで、そういった観点からすれば、これはそういった事業仕分けの対象になるべき筋の話ではないだろうなというふうに思うわけで、担当で当たる国交省さんとか金融庁さんはぜひそこのところを間違いないように、今からでも、先ほどお話がありましたように準備をしておかないといけないんじゃないかというふうに、本当に私は緊張感を持って考えているんですけれども。

自賠責保険というのはこの日本の制度というのは本当に私はすぐれたものだと、被害者の立場から常に思っているんですけれども、やはり被害者救済というのは大きな川のように、政権が変わったからとか景気が悪いからとかいうことで途切れたり、ふえたり減ったりということがあっては一番いけないんですね。とうとうと流れなければいけないということを考えていますと、この制度をあくまでも維持するためにも、まずはベースのその特別会計を守る。それからもう一つは、繰り入れてあるのを戻すというようなところに、それをアピールするためにも、政府の中にたくさんの議員さんが今入ってきておられるわけですから、そういった要路にぜひPRをして、具体的な行動を起こしていただきたいなというふうに思います。

以上です。

【山下会長】

石井委員、どうぞ。

【石井委員】

今の点で。地域医療の現場の立場から見ましても、もともと救急医療の救急車の運用とかそういう発想というものは、事故をどういうふうに対応するかということが始まりであったと、それが原点であったと思っています。その後、いろいろな保険制度、国民皆保険のほうの医療保険の充実とかそういうもので少し見えなくなっていますし、また疾病のすべてを救急車で搬送するという方向で今運用されていますが、やはり原点を踏まえれば、この国民、患者さんに対するいつでもどこでものセーフティーネットの原点は、やっぱりこの事故の救済、それの早期の治療ということにあったということをぜひ考えていただいて、今、地域医療もかなり大変な状況にあります。ということはまた国民、患者さんに不利益が出得る状況が非常に危惧されているということを考えれば、これはやっぱり社会のセーフティーネットとしてぜひ守っていただきたいと、そういうところはやはり広い合意の上で考えていければというように考えております。

以上でございます。

【山下会長】

この関係で、ほかにございませんでしょうか。

特別会計の問題は例年必ずご意見が出るんですが、本年も一段と切実なご意見が多々あったということで、関係のご当局に真剣にご努力いただきたいと私も思います。

ほかの点いかがでしょうか。

【戸川委員】

今、料率検証の話が出まして、この数字だけを見ますとグラフを見ますと、死亡者も減っている、後遺障害も減っている、負傷者も減っている、交通事故はどんどん減っていって、非常に平安な世の中が訪れるかのような印象をお話しされる、されてはいないんでしょうけれども、そういうふうに受け取る方も結局いらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、私たち被害者側から見ると、そういったことに安閑としていられないというところがあるんですね。

特に気になっているのは、年々、中でもふえている逆にふえているのが、65歳以上の高齢者が交通事故に巻き込まれて死んでいる人、今や日本の交通事故の死亡者の半分は高齢者という時代ですから、ますます高齢化が進むとこの問題は大きくなっていくと思います。

そういう意味で、全体で見ればこういう傾向があるんでしょうけれども、そのあたりのところをもう少し社会にアピールするためにも、高齢者の問題、そして高齢者とか小さな子供たちも含まれるんですけど、交通弱者と言われる、運転免許証を持っていない、歩くことしかできない人たちが事故に遭う率というのは、残念ながら日本というのは本当に悪いんですよ。世界で見ても本当にワースト、ワーストじゃないんですけど、先進国の中じゃワーストですよ。ヨーロッパから比べるとものすごく悪いです。そういう意味で、単純に字面だけを追い求めるのではなく、中身のほうをもう少し見直すように、今回の本論とは全く違う、料率の問題とは違うことを私も重々わかっていますけれども、考えていただきたいなと。

内閣府のほうで、ことしの春から第9次の交通安全計画というのがスタートするということを聞いていますけれども、当然国交省さんにもそういった内部に入って発言される機会がおありになるだろうと思いますので、そういった計画の中にもいわゆる交通弱者、歩行者の命を守れというような、私たちは会の運動として生活ゾーンにおける事故ゼロ運動というのをやっているんですけれども、こういうのを盛り込んで、事故も減った、死亡者も減った、だけど弱い者がいじめられているということのないような、そういう数字を将来は発表していただけるようなことをお願いしたいと思います。

ちょっとわきから、外れちゃって申しわけありませんけれども。

【山下会長】

ありがとうございました。

ほかに、料率検証の関係でいかがでしょうか。

高橋委員。

【高橋委員】

これは確認のための質問でございますが、支払基準の改定に関連してお伺いします。

死亡の場合の逸失利益の計算に関して、よく裁判で女性差別といいますか、子供でも女の子と男の子とで逸失利益の考え方が違っていて女性のほうが不利になっているとか、あるいは家事従事者に関して不利になっているとかが争われたりしていると思うんですけれども、それは支払基準とかあるいは業界のほうの査定要綱でそういうことが議論になったりしているのか、もう既にそういうことは制度としては全く大丈夫な状況になっているのかを教えていただきたいと思います。

【山下会長】

よろしいですか。

【田山委員】

私ども、いわゆる支払基準の中で女性がどうこうとかそういうことは一切ないかと理解しております。そういう意味では今、特に私どものほうとしてどこか支払基準を変えるという予定はございませんけれども、一応22年4月に一部支払基準が変わると。これは生命表が変わったことによる変更が主な点かと思いますけれども、今予定されているのはそれぐらいかと思っておりますけれども。

【山下会長】

八木課長、何かございますか。

【八木保障課長】

一般論でございますが、ご指摘の点については、これまでもいろいろな事案で、裁判例などを経て、そういう議論というのはされてきたと思います。私どもとしても、女性だからということで、それだけを理由に差を設けるということではいけないという考えを持っておりますが、ただ、実際に働いている方と主婦として家にいる方とで、算定の計算方法などに違いが出てくるということはあるのかなというふうには思っております。

それから、平均余命が男女で異なるという点は、これは科学的な事実に基づいてライプニッツ係数などを違えているという事実はございます。

以上です。

【高橋委員】

ありがとうございました。

その家事従事者の問題ですけれども、もう専業主婦でずっといる方は非常に少ないわけで、一時的に家事従事をしている、子供の保育とか介護で家にいる方々がいずれ働き出すということが家庭においても社会においても期待されている中で、家事従事者に関する逸失利益の考え方等は見直しの議論になり得るところだと思いますので、ぜひテイクノートしておいていただきたいと思います。

【山下会長】

ほかにいかがでしょうか。

特にございませんでしょうか。

それでは、もしないようでしたら、この料率検証に関する議論はこのあたりにさせていただきます。

今回の料率検証結果については、先ほどご説明がございましたように、収支が当初の想定より若干悪化しているものの、まだ前回の改定から2年を経た時点であって、制度の安定的な運営とか、複数年の契約を行っている契約者の間の負担の公平性という観点から、料率については中期的な安定も求められているのではないか。それから、累計収支残及び運用益残高の水準を見ると、今回直ちに料率改定が必要な状況にはないこと。ただし、後遺障害の事故率が増加傾向で推移していること等について、引き続き動向を注視していく必要があるのではないかと、そんなようなことがきょうのご議論で出てきたことかと思います。

それを踏まえれば、今回は基準料率を据え置くということが適当であるということではないかと、集約するとそういうことではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【山下会長】

よろしゅうございましょうか。

それでは、基準料率を据え置くことに異議がないということにさせて、進めさせていただきたいと思います。

それでは、続きまして議題3、報告事項でございます。まず第1に、自賠責診療報酬基準案につきまして、櫻田委員よりご報告をお願いいたします。

【櫻田委員】

それでは、ご報告申し上げます。損保協会の櫻田でございます。

自賠責保険の診療報酬基準案につきましては、損保協会といたしましては、昭和59年の自賠責審議会答申に基づいて診療報酬基準案の実施、普及に努めているところでございます。この基準案の実施状況につきましては、お手元の資料5にございますとおり、全国のうち45の都道府県で既に実施されております。すなわち、残る山梨と岡山の2県につきましても、現在、合意に向けて協議を継続しているところですが、残念ながらいまだ合意には至っていない状況であります。業界といたしましては、日本医師会はじめ、関係各位のご協力を得まして、診療報酬基準案の実施を進めてまいりたいと思っております。

なお、既に実施しております45の都道府県につきましても、地区の医師会との協議の場を継続しておりまして、一般の医師や事務職員の方にご参加いただいている自賠責研修会も実施しております。そうした中で自賠責制度へのご理解をいただきながら、良好な関係を維持しつつ、医療機関のご納得のもと基準案の普及に努めてきております。けれども、現時点でまだ、平均しますと約60%の医療機関でご採用いただいている状況にとどまっておりまして、なお一層の普及に向けた努力が必要だと思っております。

この普及に向けましては、医療機関が診療報酬基準案を採用いただきやすいような環境を整備していくということが必要であると考えておりまして、現在その対策を検討しているところでございます。いずれにいたしましても業界といたしましては、この基準案の普及に向けて引き続き努力してまいる所存でございます。

簡単でございますが、以上ご報告申し上げます。

【山下会長】

ありがとうございます。

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見等ございませんでしょうか。

石井委員。

【石井委員】

補足になるかと思いますが、日本医師会の立場でも、この基準案、日医新基準と我々は呼んでおりますが、の普及につきましては、この1年努力したつもりですが、残念ながら今のご報告のとおり、残った2県についての合意は得られなかったと、残念な状況だというふうに考えております。そのうち、岡山県に関しましてはかなり踏み込んだ話し合いが進行中であるというふうに理解しておりまして、また引き続き我々も側面から努力したいと思っております。

また、その普及率に関しましては、むしろこちらが非常に大きなテーマであると思っておりまして、妥当性ということを考えながら、自由診療枠であっても、こういう合意の中で運用されるようにということは引き続き努力したいと考えております。

以上でございます。

【山下会長】

ほかにいかがでしょうか。

福田委員。

【福田委員】

先ほどの柔整のほうの問題と関連してちょっとお伺いしたいんですけれども、あれは全部、完全自由診療というか、そもそもこういう医師会のような診療報酬基準であるとか保険の点数であるとか、そういうのはあれは存在するんでしょうか。それをちょっと教えていただきたいんですが。

【田山委員】

柔整については、そういう基準はございませんで、ほぼ自由診療ということで、そこが影響して単価が上がっているという面もあるんではないかというように思っておりますけれども、その辺はこれからの分析を待つところでございます。

【福田委員】

そうすると、被害者さんが行かなくなるまでは、ずっとずっと長く通っておられると、自由診療の点数に基づいてどんどん請求が来るということになりましょうか。

【田山委員】

そこは無制限ということではなくて、基準はやはり必要かつ妥当なという範囲でございますので、そこに該当しないと見ればそこは支払いからは除外するということもございます。

【山下会長】

ほかにいかがでしょうか。

それでは、ほかにございませんならば、この件につきましては、ただいまのご報告とご意見ということを伺ったということで議論を終わりまして、続きまして、平成22年度の運用益の使途につきましてご報告いただきたいと思います。民間保険会社、JA共済、自動車安全特別会計の順にご説明いただいて、その後、一括してご議論をいただきたいと思っております。

それでは、まず平成22年度民間保険会社の運用益の使途につきまして、櫻田委員よりご報告をお願いいたします。

【櫻田委員】

ご報告申し上げます。お手元の資料を見ていただきまして、ご説明申し上げたいと思います。

本拠出事業案につきましては、業界で検討いたしました内容を学識経験者の方を中心に構成しております委員の方、すなわち自賠責運用益使途選定委員会というものがございます、これにお諮りして了承いただいているものでございます。なお、本拠出事業案につきましては、今後、2月18日に開催予定の損保協会の理事会において最終了承を得る予定としております。

それでは、拠出事業案のポイントにつきまして簡単にご説明させていただきます。

まず、2010年度の拠出事業案の作成に当たりましては、これまでの自賠責審議会答申、あるいは審議会における皆様の委員のご意見、さらに2001年度の自賠法改正時の国会附帯決議等を踏まえまして、自動車事故の被害者対策を中心に充実させていくという基本方針をとっております。

さらに、既存事業につきましては、事業報告や検証、レポート等を踏まえて一層の事業の見直しを行いまして、必要な事業は充実させる一方で、それ以外の事業は縮減するということにしております。

また、2010年度は、この基本方針に加えまして自賠責保険をめぐる環境、今までも議論がございましたけれども、環境を踏まえつつ、持続的で安定的な被害者救済の実施ということを念頭に、これに資するよう努力して留意して検討を行ってまいりました。

個々の事業内容につきましては、項目が多いので説明は割愛させていただきますけれども、資料の1ページから5ページに記載されております支出先のうち、新規の事業といたしましては、1ページでいいますところ、Aの自動車事故防止対策では、マル5生活圏での事故対策とモデル事業の実施、先ほど委員からもご発言がございました、これを新規の事業に入れております。

それから、2ページの救急医療体制の整備という点につきましては、マル10救急ヘリコプターの導入病院のフライト医師、あるいは看護師等の養成費用の補助。さらに3ページのマル11マル12に載せてございます。

加えまして、Cの自動車事故被害者対策につきましては、マル4交通遺児への奨学金支給補助でございます。

今のは新規の事業でございますけれども、増額につきましても必要に応じて行っておりまして、例えば4ページの、マル12成年後見に関する法的問題の調査・研究の啓発事業、これにつきましては、2010年成年後見法学世界大会でその研究成果を報告すべく200万円の増額をいたしました。

これら新規や増額の合計額は5,349万円ほどになりますけれども、一方で、警察庁、消防庁を中心としまして、本来税で賄うべきというご意見もありましたので、これを踏まえまして、警察庁については2,500万円ほどの減額を実施、寄贈機器についても見直しを行いました。

その他、事業の見直しや効率化あるいは事業の期間終了に伴うマイナスを含めまして、終了したもの、減額の合計額が5,348万円であるため、差し引きました合計額は21億7,762万円ということでありまして、前年度と同数字になりました。

民間損保といたしましては、今後とも運用益の有効かつ適正な使途のあり方につきまして、引き続き検討を深めてまいりたいと思っております。

最後に、直近5年間の拠出事業支援額の推移表、それから2008年度の運用益拠出事業の報告書、これらを添付させていただいておりますので、ご参考としていただければと思います。

簡単でございますが、以上で2010年度の事業の内容説明とさせていただきます。

【山下会長】

ありがとうございました。

それでは引き続きまして、平成22年度JA共済の運用益の使途につきまして、杉山委員よりご報告をお願いいたします。

【杉山委員】

それでは、ご報告申し上げます。資料7という資料であります。平成22年度JA共済の運用益の使途についての資料であります。

JA共済における2010年度運用益拠出事業についてでありますけれども、1ページをお開きいただきまして、2010年度自賠責運用益拠出事業案をごらんいただきたいと思います。本拠出事業案につきましては、JA共済連といたしましても、先ほどの損保のほうと同じでございます。学識経験者、地域の代表からなります使途選定委員会にお諮りし、了承されたものでございます。今後、同様に2月本会理事会で決定する予定になっております。

JA共済におきましては、自動車事故被害者対策、あるいは事故防止対策が手薄にどうしてもなりがちな農村部、山村部を主な事業の領域としておりますが、それを背景にいたしまして、これまで自賠責の審議会答申やご意見等を踏まえ、これらの地域に必要な自動車事故被害者のための対策、あるいは事故防止対策を中心に取り組んできております。取り組みに当たりましては、既に実施している事業について、事業の遂行状況、それの経費対効果ということになりますが、審査等を厳格に行った上で、必要な事業は継続拡充する、その他の事業は縮減し効果的かつ効率的な実施に努めていきたいということを念頭にやってまいりました。

それでは、この資料7につきまして、ポイントのみの説明とさせていただきます。

まずページ1につきましては、Aとありまして、自動車事故防止対策であります。そのうちのマル7のところ、下から2つ目でありますけれども、幼児向け・高齢者向けの交通安全教室の実施、ここに多くの費用、経費をかけてございます。約3億ということであります。特に農村地域、やはり高齢者の事故が多くなっております。先ほどお話もございました。そういう観点からこの対応をしてまいっているわけでございます。前年と比べて700万減少しておりますが、これは資材の効率的な見直し等を行う中で捻出をしているということで、実質的には変わっておりません。

それから、マル8の交通安全フェアの協賛、これがゼロになっておりますけれども、これは開催の中止によるものでございます。2010年度の計画額、総額では、下にありますように4億220万円、前年よりかは2,260万円減少ということであります。

次に、ページ2であります。Bの救急医療体制の整備というところになります。マル2の救急ヘリ普及推進の支援についてというところであります。このところで750万円の増加をしております。これは、救急ヘリに搭乗する医師の養成研修費用、これの支援として750万円を増額しているということでございます。結果でありますけれども、ここにつきましてはこの増額を入れて10億1,300万円としております。

次に、自動車事故被害者対策であります。これはCのところでありますけれども、計画額、全体では3ページにありますが2億3,300万円ということで、前年より1,580万円増加をしております。新たに3ページのマル8のところ、交通遺児育英会への支援ということで、これを新しく、前年ゼロでありましたがこれを始めておるということでございます。要請に基づく支援ということになります。

それから、4ページでありますが、Dの後遺障害認定対策というところであります。ここはマル3マル4、この2つの課題につきまして終了いたしましたので、これを終えまして、その上のマル1マル2、新しく出ております。外傷性腱板断裂等の臨床的特徴に係る調査と、マル2の腰痛疾病等に対する調査、これを新たに新しくスタートさせまして、トータル金額では3,400万円同額ということになっております。

Eのところ、医療費支出適正化対策、これは前年と同様の内容で同額でございます。

トータルいたしますと、トータルで70万円増、ほぼ前年と同水準、17億4,220万円ということで実施をさせていただきたいというふうに考えております。

最後に、その後のページでありますが、これも直近5カ年の自賠責共済の運用益拠出額の推移、それから2008年度事業の実施状況、これを取りまとめたものでございます。参考としてごらんいただければというふうに思います。

報告は以上でございます。

【山下会長】

ありがとうございました。

それでは続きまして、平成22年度自動車安全特別会計の運用益の使途につきまして、国土交通省の八木保障課長よりご報告をお願いいたします。

【八木保障課長】

それでは、資料8に基づきましてご説明いたします。

まず資料、構成と概観をさせていただきますが、例年と同様でございますが、1ページに1.といたしまして、独立行政法人自動車事故対策機構、長いので以下NASVAと略称で申し上げますが、に対する助成をまとめております。

次の2ページでは2.といたしまして、NASVA以外に対する補助金をまとめております。この2.は、さらにこのページの被害者保護増進対策と、次の3ページの自動車事故発生防止対策に分けて整理しております。

最後に、これらを合計した予算額を4ページに掲げております。

皆様、既にご承知のことと思いますし、先ほどご議論もちょっとありましたが、平成22年度予算編成においては、厳しい財政状況等を反映いたしまして、既存の事業の必要性や効果について、行政刷新会議におきます事業仕分けをはじめとして見直しが行われたわけでございます。この流れの中で、特別会計である自動車安全特会についても政府内部で同様に厳しい精査が行われたところです。

この結果、今ご説明した全体構成の中では、3ページの自動車事故発生防止対策の部分について大きな見直しが行われました。後ほど詳しくご説明しますが、幾つかの事項について、特別会計の目的である自動車事故発生防止の目的に照らして、必ずしも事業の効果が見えにくい等の理由によって事業を取りやめることといたしたところでございます。他方で、従来はなかった事業であっても、かつてこの審議会でご意見が出た事項を含めまして、事故防止の観点から有効と考えられるものについては新たに採択をするなどの内容を組みかえることをさせていただきました。一方で、介護料の支給をはじめとする被害者保護増進対策については、基本的に昨年度の予算を継続いたしました。

以上が全体の概観でございます。

あと、かいつまんで個別の事項をご説明申し上げますが、1ページでございますけれども、(1)につきましては介護料について、受給者数の増加に対応して予算を微増させていただいております。その他は昨年同額でございます。

(2)の施設整備費補助金は、療護センターの医療機器の整備に対応して毎年予算が変わりますけれども、今回は千葉療護センターのMRIの更新を予定しておりまして、それに必要な3.8億円を計上しております。

(3)の運営費交付金ですが、これは独法制度の仕組みとして、毎年、経営の合理化努力によって少しずつ額を削減していくこととなっている経費でございます。今回も指導講習等からの自己収入の増加を見込んで、全体で約4億円を削減することとしております。もちろんこれは、療護センターの運営をはじめとする各事業のサービスレベルは維持した上で行うものでございます。

以上、合計いたしまして、NASVAへの助成全体としては109億円となっております。

次に、2ページの被害者保護増進対策ですが、これにつきましては、一番右側の欄をごらんいただければおわかりのとおり、ここに前年度との予算の差額が出ておりますが、基本的にゼロということで、前年度予算を継続いたしております。ただ、(2)だけは違うわけでございますが、これは民主党マニフェスト事項でありまして、文部科学省予算に盛り込まれた高等学校等就学支援金、いわゆる高校授業料の無償化の制度に実質的に包含されることになったことから、重複を避ける観点から今般廃止をするということとしたものでございます。このページにつきましては以上です。

次に、3ページの自動車事故発生防止対策です。先ほど申し上げましたように、ここについては、特会の趣旨に照らして、予算の効果が必ずしも見えにくい事業についてはこの際思い切って見直すことといたしました。

まず(1)ですが、この上の段は、オムニバスタウン整備総合対策事業などのいわゆる都市バスの活性化対策でございます。この部分は昨年11月の事業仕分けの対象となりました。仕分け人の方からは、バスの利便性の向上やそれによる交通の安全性向上、円滑化のため、本事業の必要性については評価をいただいたわけでございますが、自動車事故防止を主目的とする特会の趣旨との整合性について疑問が呈され、継続事業を除き廃止すべきとの評価になりました。これを反映して、前年度の13億円から6.2億円と、6.8億円の大幅な減額となりました。

また、同じく運送事業者向けの補助金である、飛びますけれども(5)とか(6)についても同様の理由から事業を取りやめるということになりました。

さらに、(3)の安全運転推進事業、それから(4)の交通安全教育普及事業についても同様の理由により、またこれらについては公募による事業なのですけれども、公募件数が少ないなどの点も勘案して、事業取りやめないし縮小することといたしたわけでございます。

このようにいろいろな項目について削減の方向で見直しをしたわけでございますが、一方で(1)の下の段、先進自動車(ASV)普及促進対策事業など、3つの事業を掲げてございますけれども、ここについては逆に予算をふやすことといたしました。

ASVについては、平成19年度に追突事故の被害軽減に有効な衝突被害軽減ブレーキに対する助成が設けられたわけでございますが、今回はこの予算額をふやすとともに、ふらつき、車線逸脱の警報、あるいは横滑り防止装置なども補助対象に加えました。また、いわゆるドライブレコーダー、あるいはデジタル式運行記録計の導入についても補助を行うことといたしました。

さらに、運送事業者が企業を挙げて安全運行の取り組みを促進してもらうことが事故防止上有効であることがわかってまいりましたので、外部専門家の活用による事故防止のためのコンサルティング等に対して、新たな補助制度を創設いたしました。

これによって、前年度予算額3.7億円から6.8億円と3.1億円の増額を、この部分については行っております。

(2)が残りますが、これは民間における事故分析を普及させることをねらいとして、これまで補助金を交付してきた予算でございますが、補助金を交付するよりも、国が民間に事故分析の調査をお願いしてその成果を広く普及するほうがよいだろうということで、別途調査を行うことといたしまして、補助金は廃止することとなったものでございます。

以上により、このページの補助金は全体として、直接事故防止に役立つ施策を中心に組みかえる形となりまして、合計額としては、バス活性化の減額が効きまして前年度比で5.1億円、27.7%の減となりました。

最後4ページでございますが、以上すべて合計しますと、前年度予算額145億3,000万円に対して、平成22年度は134億9,300万円、額で約10億円、10億円というのは、バスの減額の6億円とそれからNASVAの自助努力の4億円の合計に相当すると思いますが、になります。率でいきますと7.1%の減額ということになってございます。

以上でございます。

【山下会長】

ありがとうございました。

それでは、ただいまの3名の方々のご報告について……失礼しました、八木課長から補足のご説明です。

【八木保障課長】

失礼いたしました。

参考で、自動車損害賠償保障制度に係る最近の主な取組という資料を、縦長の1枚紙をつけさせておりますので、これをあわせてご説明させていただきます。

【山下会長】

資料8の一番下についておりますね。

【八木保障課長】

資料8の一番下に、「参考」とある資料です。

まず短期入院協力病院の拡充でございますが、これまでも逐次拡充をしてきたわけでございますが、引き続き取り組んでまいりたいと思います。ただ数をふやすだけではなくて、その病院のソーシャルワーカーの方などと意見交換を行って、本当に使い勝手がいい病院、そういう制度にしていくという取り組みをあわせて行ってまいりたいと思っております。

それから2番目は、私どもで作っております交通事故対策の小冊子でございますが、昨年作りまして、数十万部配布させていただきました。今年もさらに刷り増しをしまして、やってまいりたいというふうに思っております。

3番目ですが、親亡き後問題への対応につきましても、昨年21年3月報告書を取りまとめさせていただきましたが、本年度はこれを踏まえて、神奈川県と宮城県でモデル事業を実施しながら検討会を開催いたしました。この検討会を通じて、介護者に提供すべき情報の内容などについて検討を行っているところでございます。

4番目が、心のケアに係る環境の整備でございます。平成21年度から、被害者家族の精神的負担の実状、その軽減に向けた被害者団体の活動状況、地方公共団体による支援の実態などを把握するための調査を実施しております。

5番目ですが、保険法施行の対応でございます。これは先ほどご紹介というかご説明があったことでございます。

6番目が、支払基準の改正でございます。支払基準につきましては、最新の生命表による平均余命に合わせて支払基準のライプニッツ係数を、若干ではございますがふやすという方向で改定作業に取りかかってございます。

7番目が、ドライブレコーダーに係る補助制度の創設と事故対策の充実。これは先ほど予算のご説明の中で申し上げました、予算をふやす部分のご説明のことでございます。

8番、保険標章の多色化でございます。そこに絵がかいてありますけれども、原付などの無保険車の取り締まりを強化するために、保険標章、これは自賠責保険の期限を明示するためのステッカーでございますけれども、この視認性を高めることができるように、満期となる年ごとに色を変えるということで、具体化に向けて今検討を行っているところでございます。

以上でございます。

【山下会長】

ありがとうございます。

それでは、ただいまの3つのご報告につきまして、ご質問、ご意見などいただければと思います。

古笛委員。

【古笛委員】

まず、民間保険会社の運用益の使途の中で、成年後見に関する法的問題の調査・研究、ご支援いただいているという点なんですけれども、昨年来ずっと問題意識を持っているんですけれども、やはり自賠責保険から、あるいは自賠責保険を含めた賠償金が支払われたときに、本当に被害者のためにそれが使われているかという点で、一部の例ではあると思うんですけれども、そうではない実態もあるのではないかと。

そんなときに、特に重度障害者で先が長いというような場合には、やはりご家族だけに負担をかけるというのではなくて、社会としてそれを受けとめるために成年後見制度を活用するなり、あるいは場合によっては信託という方法も活用するなりということが必要だと思うので、ぜひこういった方面で、そうなると成年後見制度の運用ということになると裁判所とも協議とかが必要になるかと思うので、今後もまたそれを続けていただきたいなと思っています。

あと、JA共済の運用益の中にも出てきていましたし、それから先ほど来、後遺障害の件数が14級がふえたとか、東洋医学の施術費の問題だとかも全部絡んでくるんですけれども、むち打ち損傷とか頸椎疾患の調査研究というものについて、私たち賠償実務に携わる弁護士としても頭を抱えている問題ですので、JAさんのこの報告なんかは、自由に広くだれでもアクセスできるように、今後広報とかもご検討いただきたいというところと、それから、私も詳しくはありませんが、日本整形外科学会のほうでも外傷性頸部症候群なんかについても研究されているみたいなので、またそちらのほうとも一緒に、そういった研究も今後進めていただきたいなと思っています。

【山下会長】

ご意見ということでよろしいですか。

あるいは櫻田委員、杉山委員、何か補足は。

【櫻田委員】

貴重なご意見と承っております。

現在も、その方針にのっとって調査研究を支援しているつもりでございますし、先ほどご説明しましたように、2010年度は増額させていただいて、成年後見法学会世界会議のためのシンポジウムに向けて、微力ながらご支援させていただきたいと思っております。ありがとうございました。

【杉山委員】

問題認識、ご意見と同じであります。頸椎損傷について、大変昔から大きな課題でありまして、この研究成果につきましては、今この研究所でオープンにしているつもりでありますけれども、さらにその辺については充実を図ってまいりたいというふうに思います。

【山下会長】

北原委員。

【北原委員】

今話題になった成年後見制度に関する費用の使い方、あと、この上の心のケアの問題、あとは紛争処理センターのあり方について、ちょっと意見を聞いてほしいんです。

成年後見の問題というのは、親亡き後を含めた非常に長い人生の問題の解決のための話題でして、その目先のお金の使い方とかそんなものは非常に小さなことで、私からとったら親亡き後に自分の息子がどうなるんだという、非常に耐えられないぐらいの難しい課題を抱えておるわけです。そういうことに対して、やはり徹底的に情報を調べていただく。そして、どんな方法があるか。

しかも被害者の状況というのは、例えば同じ1級であってもものすごく違うんです。寝たきりの人もいるけれども、歩けるけれども暴力を振るってとても手がつけられないような人もいますし、多種多様なんですね。そういう暴力を振るうような人が施設に入ったって受け入れてもらえないとか、そういう問題も抱えておりますし、例えば、遷延性でたんの吸引をするような人たちが施設に入れるかとそういう問題もありますし、非常に多種多様な重度障害者の問題を抱えて、親は非常に困っている。あるいは、親じゃなくても配偶者に対しても同じことが言えるわけですから、余り親亡き後というと、親と子というふうに見えますけれども、そういう問題じゃなくて、介護者と介護を受ける人が抱える一生涯の問題なんです。

それに対して、やはり目先の事件解決というのは非常に短い、距離が短い問題じゃなくて一生涯という目で見てほしいということで、それに対してはこういう700万というお金は、21億に対して3%ぐらいですか、にすぎないんです。そういうことでもう少し、この辺に力を入れるような方向にかじを切ってほしい。

もう一つ、この心のケアという問題も、遺族の方も非常に心の痛みを抱えておりますが、重度障害者を抱えているような立場になりますと、障害者の子供を殺してしまいたいような気持ちになったりするんです。日常的に、連続的に介護をするというような負担は耐えられない苦痛があるんです。そういうことに対して、やはり心のケアという側面からでも、もう少しこういうところで力を注いでいただきたいということなんです。

そこで、今まで漫然と見ていたものなんですけれども、この紛争処理センターに大変多額なお金を使っておりまして、これは全体の4割なんです。この紛争処理センターで無料で事件の解決をしてあげるということになっております。ところが、交通事故の被害者は相手があるわけですから、障害に応じた損害、あるいは過失に見合った相手から受け取る賠償金、そういうものがあるわけ。いずれにしても、相手から受け取るものがあるんです。そういう方は、紛争処理センターに行かないで事件を解決する人はたくさん日本にいるわけですから、その人たちは通常の弁護士に頼んで、正当かどうかわからんけれども、それなりの報酬を払って事件を解決しているわけなんですね。

そうしますと、被害者が負担する負担の公平という点から見たときに、紛争処理センターではただだと。弁護士に払ったらお金がかかる。負担の公平という点から見たときに何かおかしいんです。ですから、紛争処理センターのあり方については、やっぱり見直しをしなきゃいけないんじゃないか。紛争処理センターにお金をたくさん使うよりは、今言った、このわずか700万とかそっちのほうに何倍もお金を振り向けたほうが、被害者が抱えている深刻な問題に対してより多くの救済ができると思うんです。

だから、今まで、去年まではこんなことをやってきたからと漫然と見るんではなく、やはり見直していただきたい。紛争処理センターのあり方って一体何なんだ。無料、無料という言葉というのは非常にまやかし性が多いんです。無料じゃないんです。弁護士がただでやっているわけじゃないのに、世間ではただで自分が面倒見てもらうというふうに思っちゃうんですね、短絡的に。だから、その辺のあり方の妥当性ということについては、やはり見直していただきたいと思うわけです。

以上です。

【山下会長】

櫻田委員、いかがでしょうか。

【櫻田委員】

多方面にわたるご意見、ありがとうございました。

成年後見に関する問題につきましては、単に足元の資金支出の問題ではなく、一生涯にわたる長期の支援ということを視野に入れて支援のあり方を考えるべきだというご指摘だと思います。そういった観点から見たときに700万円というのはいかがなものかというお話だったんですけれども、手前どもの運用益の拠出に関する基本方針というのは、この自賠責審議会のご意見も踏まえて、言ってみれば基本的に拠出金の性格から見て、どういうような事業にあるいはどういうような研究に支援するのがよろしいかということを、その基本に沿ってやっております。したがいまして、それから多く逸脱することはできないわけでございますが、冒頭申しましたように毎年見直しを行い、新規の事業について方針に沿っていると見ればそれに拠出をし、そうじゃないものは縮退するというようなことをやっております。

したがいまして、ドラスティックに大きく変えることはできませんが、今の委員のご意見にありましたように、成年後見についての調査研究というものの支援を、言ってみればことし初めて新規で出したものでございますので、今後さらに必要であるということのご意見が各方面から出れば、それに沿って私どもとしては来年度、再来年度、検討していきたいと思っております。

同様に、心のケアについても簡単な話じゃないというのは理解しておりますが、直接資金を被害者の方々にお届けするということでなく、制度としてあるいはノウハウとして、そういった苦しまれている方々を救うような仕組みとして、この例えばマニュアル作成とか研修会を実施しておりますので、そういった意味での、そういった観点からの支援というのが、やはり基本なんだろうと思っています。

そういう意味では、冒頭にご説明した、額として足りないというご意見はわかりますが、拠出の性格から言ってそういった支援をするというのが基本線だろうと思っております。

それから3番目に、紛争処理センターの有料化ということでございますけれども、これもご案内のとおりでございまして、紛争処理センターへの運用益の拠出は、平成12年、2000年6月の自賠責審議会で運用益の支出を充実すべきという指摘を踏まえて拠出するものでございます。それ以降、どのような実績があるかということですけれども、直近を見ますと、新規の照会が年間7,000件ほど来ております。したがいまして、そういった観点から見れば、被害者救済という観点から有益に機能していると思われますが、バランスの問題につきましてのご指摘については、関係各方面あるいはここでの委員のご意見も踏まえて、見直していくことは考えていかなきゃいけないと思っています。ただ、現時点においては、そういった過去の答申を踏まえてやっていること、それから実績もあるということから、これ自体は有意義なものであると考えております。

改めまして、全体のバランスにつきましては、基本方針に沿って毎年見直しておりますので、先ほどの委員のご意見についても、その妥当性等を各委員に諮りながら検討を進めていきたいと思っております。

以上、ご理解を賜りたいと思います。

【山下会長】

北原委員、よろしいでしょうか。

【北原委員】

私が先ほど、交通事故の被害者の場合に相手があって、相手から損害に見合うものあるいは過失に見合うものを受け取っているんだから、それは一般の市民、一般の世間の弁護士に頼んだ場合はそれなりの報酬を払うんだと。紛争処理センターはただだと、こういうことを言ったわけですが、そういうことについて、私は最近おかしいなと思ってきたんですが、弁護士会という存在があるわけですけれども、弁護士会のほうから見ても変だと思われないんでしょうか。その辺のことを、弁護士さんに関係のある方々の意見を聞いてみたいので、教えてください。

【山下会長】

古笛委員。

【古笛委員】

弁護士は私しか、きょうはたまたまいなかったので。

一つご意見としては十分あり得ると思います。時々やっぱりそれはご指摘のあるところで、やっぱり交通事故相談というのは、財団法人日弁連交通事故相談センターが無料相談をさせていただいていると。ただ、一般の相談は弁護士会が主催のほうは有料だというところで、同じ霞ヶ関のビルの3階で、右は有料で左は無料というのはどうかというご意見は一つあるかと思います。それが一つと。

片や、自賠責保険という中の保険のシステムの中で、加害者となり得る人たちの保険料で運用しているというところで、だからその意味ではほかと違うというところもあるし、じゃ、被害者の方が皆さん全部、紛争処理センターなり日弁連を利用されているかというとそうではないので、また、そのバランスなんかは今後検討はさせていただきたいと思っています。

本当に貴重なご意見、ありがとうございました。

【山下会長】

ひとまずこの件はそういうことでよろしいでしょうか。また各方面で、ご参考にしていただければと思います。

石井委員。

【石井委員】

立場は医療側で見ますと、こういう相談業務であるとかその妥当性ということを、事業を縮小したほうがいいのかどうかという議論は、ちょっとやっぱり慎重であるべきじゃないかなと思うんです。

というのは、やっぱりいろいろな権利とかそういうものの主張の中で、妥当性をやっぱり引き出すという作業は常にどこかでないと、個別のところで全部済ませようというのは、全国で見ると妥当性はなかなか追求しにくくなるのではないかなと思っています。

それで、もう一つは、やっぱりこの日本という国が、世界に車を輸出して車社会の光を非常に広める立場で運営されているということを考えれば、その影の部分に、いやこれをちょっと下げてこっちをこうすると、そういう議論ではなくて、これはやっぱり日本という国が世界に範を示すぐらいの考え方で、この国の交通事故というものをゼロにすると。また、万が一起きた場合の被害者のいろいろなセーフティーネットは十分つくっておくという議論から入るべきではないかなと、今の議論を聞いてちょっと感じます。

もちろん医療というものも、どなたもいらっしゃらないことを目指しながら我々はやっているわけで、矛盾する存在なんですが、結果として起きたことに関しては最善の医療を常に提供できる状態をセットアップすると。こういうことですから、先ほどのバスの運用であるとか教育の部分で予算が、投資対効果が見えにくいという議論があったというような話を聞きましたが、見えないところにまで手当てをするのが、やっぱりこの国の非常に大事なことではないかなと僕は感じます。

欧米を見れば、ノンステップバスなりそれから路面電車なり、それから自転車のレーンを都市においては整備して、ここの議論に外れているのは自転車対人という事故があった場合に、特に高齢者が巻き込まれやすいんですが、この救済が行われていないわけですね。そういうことを含めて、やはりそういうことをむしろ、いろいろ議論しながら広げていくと。結果として、こぼれる方をなくすというような方向性でご一緒に議論できればなと思います。

以上でございます。意見です。

【山下会長】

ほかにございませんでしょうか。

では、高橋委員、先に。

【高橋委員】

長年、委員をやらせていただいての感想ですが、年々細かく報告をしていただけるようになって、ことしは特に効率的、効果的に使うということで、それぞれの組織といいますか、JA、民間、それから国がめりはり予算をお組みになる努力をされたということは非常によくわかりました。

ただ、気になりますのは、3つの事業があるということで重複がないかということです。この場がやるべきことなのかもしれませんけれども、本当は一覧表なんかがあると、チェックがしやすいんですが。

例えば一例を申し上げますと、ドクターヘリに関しては、民間保険会社のところとJAさんのところから入っていて、同じNPO法人に出ているんですけれども、それぞれ同じ広報誌にお金が出ていたりとか、研究に関しての助成をやっているけれども、そういうところのすみ分けがきちんとできているのかどうかという点がやや気になります。ドクターヘリが悪いとかそういうことでは全くなくて、一例としてわかりやすかったので申し上げたのですけれども。

また、資金を拠出している先の財務状況とか運用状況、そういうことをきちんとチェックしているのかも気になりました。民間保険とJA共済のほうは、事業報告書にかなり細かくどういうチェックをしているのかが書いてあります。国のほうは書いていないので、お金を出した後、どういうふうにそれをチェックしているのかわからないのがことしの状況なので、その辺を報告していただきたいし、備考欄が真っ白な状況になっておりますので、来年はそうではなくお願いしたいと思っています。

それから、民間保険会社のほうは、監査とか検査とかいろいろな、現地に足を運んでおられるようなんですけれども、JAさんのほうはヒアリングとか調査報告書の提出にとどまっているようなものが多いと思うんですけれども、もし私の誤解があるといけませんので、お金の使い道のチェックをこういうふうにしているということがあれば、ぜひここでご披露いただきたいと思います。

【山下会長】

大分時間も押してまいりましたので、今のご質問の点については、それぞれ後ほどでもご説明いただけるんじゃないかと思いますので、それでよろしいでしょうか。

それでは、戸川委員、どうぞ。

【戸川委員】

高尚な議論の中でちょっと、多少やや我田引水的な話をさせていただこうと思います。

このいわゆる運用益事業は当然のことながら、事故防止とそれから被害者救済とあるんですが、残念ながら、交通事故の遺族に向けた直接的な支援というのはなかなかないんですね。そういう意味でちょっと提案をさせていただこうと思っているんですが、交通事故は車社会というのが爆発的に増殖した結果、生み出されたというか、インフラの整備や教育の問題いろいろなさまざまな問題があって、いわゆる国の施策がそこに追いつかなくて交通事故が発生しているというふうに考えれば、やはり国が生み出したやっぱり犠牲者の中の一つじゃないかなというふうに私は考えるんですね。

それと同時に、数の面で見ましても、戦後だけでも約70万人近い交通事故で亡くなった方がいるというし、それに倍するあるいは数倍の遺族というものが世の中にたくさんいるわけですね。

そういったときに、もう少し遺族に対してということを考えていただいてもいいのかなというふうなことでちょっと申し上げるわけですけれども、日本人というか、特に日本人は傾向が強いのかもわかりませんけれども、いわゆる畳の上で死ねなかった人間という者に対する、いわゆる弔い方というか慰霊の仕方として、事故現場というところを非常に大切にするんですね。これは大きく見れば、例えば大戦中の戦没者であるとか、原爆において亡くなった方の慰霊碑であるとか、比較的新しい……比較的というか、もう古くなりましたけれども、例の日航機の御巣鷹山の慰霊碑とか、この間は阪神・淡路大震災の慰霊場所のことがテレビで放映されておりましたけれども、こういう慰霊をする場所というものが、日本人は非常に気を使うというか求めている部分があるんです。

よく交通事故の現場に花が供えられているところを皆さんお見受けになることがあると思うんですけれども、これも最近はよく聞くんですけれども、近くの住民から撤去を求められるケースが非常に多くなったんですよ。これはやっぱり、非常に短い期間だったら我慢もしてくれるんでしょうけど、目の前に毎日それを置かれている立場というものも考えると、やはりわからないでもないというか、そういう社会の風潮もあるんじゃないかなと思います。

それからもう一つは、高速道路なんかで事故に遭ったときには、慰霊する場所は、例えばそこに花を置きたくても、高速道路に一般の市民が上るわけにもいかないというわけで、そういう意味でも悲しみを慰めるような場所というものが提供されていないんですね。

そんなことで、私は交通事故も国の施策のツケであるというふうに考えれば、交通事故の犠牲者を悼む慰霊碑のようなものを日本のどこかにつくるということを考えていただく、そろそろそういったことを検討していただいてもいい時期ではないかなというふうに思います。慰霊碑ができれば、当然、私たちはそこでもって、忘れてほしくないと思っている家族たちのことを、そこに行けばいつでも会えるんだというふうな希望を満たしてくれるということは間違いないんです。

それからもう一つは、社会にとりましても、交通事故がこんなに大きな災いを起こしているんだということを象徴して建てられるわけですから、こういう交通戦争を早くやめなきゃいけない、犠牲者を減らさなきゃいけない、こんなふうないわゆる国民的な誓いの場にもなるんじゃないかと思います。

去年、私はこの場でWHOで出ています世界道路交通犠牲者の日というのがあって、これを日本でもできないかというふうなことを申し上げました。残念ながら、政府レベルというか、こういった行政レベルでは実現はしていないわけですけれども、去年も全国でいろいろな団体がこれを実行しているんです。これはあちこちで分散してやるんですけれども、やっぱりシンボリックなものも私は絶対必要じゃないかなというふうなことを考えると、やはり国の中心である東京とかこういったところにきちんとした慰霊碑のようなものをつくって、それを中心に交通事故をなくす誓いの場というものを広げていきたいなというふうに思っているんですね。

もちろん費用の問題、今金がなくて困っている政府ですから、費用をわざわざここで捻出するということは大変難しい問題かもわかりません。しかし、交通事故はもちろん加害者も悪い、それから車をつくった人間だってという、そもそもいろいろなことを考えていくと、こういった民間の浄財というようなものを集める方法だってあるわけですので、ぜひこういったものを実現するためにもいろいろな知恵を出していただいて、何とか慰霊碑づくりということについての問題を国交省さんなりに牽引していただきたいなというふうに思っています。

以上です。よろしくお願いします。

【山下会長】

それでは、ご意見ということで伺ったということでよろしいでしょうか。

大体、予定の時刻がまいりまして、本日は、この運用益の使途につきましてさまざまなご意見をいただきました。各方面におかれましてはご参考にしていただければと思います。

本日予定しておりました議事はすべて終了いたしましたが、全体について、特段ご発言ございませんでしょうか。

もしないようでしたら、これで本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線3375、3772)


PDF自動車損害賠償責任保険審議会に対する意見書(田中委員、西原委員提出)(PDF:160K)

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