第140回自動車損害賠償責任保険審議会議事録


1.日時:令和2年1月16日(木)10時00分~11時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館西館13階 共用第1特別会議室

【藤田会長】
  
 まだ若干時間に余裕があるのですが、全ての委員がお揃いになっていたので、ただいまより第140回自動車損害賠償責任保険審議会を開催いたします。本日はご多忙のところご参集いただきまして、改めて御礼申し上げます。
 お手元に当審議会のルールについてお配りしておりますが、それにのっとり、本日の審議は全て公開で進めさせていただきます。ただし、カメラでの撮影は冒頭のみ可とさせていただきます。

 まず、今回より本審議会に参加されることとなりました委員についてご紹介申し上げたいと思います。
 まず、緒方委員でいらっしゃいます。

【緒方委員】

 緒方でございます。本日はよろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 浜島委員でいらっしゃいます。

【浜島委員】

 浜島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 細川委員でいらっしゃいます。

【細川委員】

 細川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 山根委員でいらっしゃいます。

【山根委員】

 山根と申します。よろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 坂口特別委員でいらっしゃいます。

【坂口委員】

 坂口でございます。よろしくお願いします。

【藤田会長】

 寺田特別委員でいらっしゃいます。

【寺田委員】

 寺田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 続きまして、本日ご欠席の髙倉委員より、ご意見の代読の申し出がございました。髙倉委員からのご意見の代読、また、代読いただいた内容について、各委員からの質疑に対応いただく、全日本自動車産業労働組合総連合会の並木副事務局長でございます。

【並木副事務局長】

 本日はよろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 ここでカメラ撮りの方はご退室いただきますようお願いいたします。
(カメラ退室)

【藤田会長】

 さて、本日の議題としては、お手元の議事次第にありますように、自賠責保険料率の検証結果を受けた審議のほか、来年度の運用益の使途についての報告がございます。
 そこで、まず、事務局より資料の確認をお願いいたします。

【横尾課長】

 金融庁保険課長の横尾でございます。資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の配付資料でございますが、まずは配席図、次に、先ほど会長よりご紹介のありました当審議会の公開ルール、議事次第、委員名簿となっております。
 それでは、議事次第に沿って資料の確認をさせていただきます。
 議題1は、自賠責保険の基準料率についての検証結果の報告用のものでございまして、資料1でございます。
 議題2は報告事項で、先ほどありました運用益等の報告でございます。議事次第に記載しております3点についてご報告させていただくものでございまして、ご報告される団体に応じて資料2から資料4までございます。

 以上が本日の資料となります。過不足、ご不明な点などございましたら、お知らせください。大丈夫でございますか。
 ありがとうございます。私からは以上でございます。

【藤田会長】

 ありがとうございました。
 それでは、議題1、料率検証結果についてご報告いただき、ご議論いただきたいと思います。
 まず、実際に料率検証の作業を行った損害保険料率算出機構の江原特別委員に概要をご説明いただければと思います。その後、事務局からまた補足いただければと思います。
 それでは、江原特別委員、どうかよろしくお願いいたします。

【江原委員】

 江原でございます。よろしくお願いいたします。

 資料1に基づいて、ご説明をいたします。

 資料の説明の前に、今回の検証のまとめを申し上げますと、今回は、平成29年に改定をいたしましてから3度目の検証という位置づけでございます。近年の交通事故の減少を主な理由といたしまして、料率水準に大きな余剰が生じており、平成29年に改定をしたときの見込みと比べますと、約13ポイント程度の改善が見込まれる状況でございます。

 それでは、具体的に資料に沿ってご説明します。1ページをごらんいただきたいと思います。これは、純保険料率水準の検証結果でございます。純保険料率といいますのは、お支払いする保険金に関するものでございます。料率には他に経費にかかるものがございますけれども、この1ページは純保険料率水準についてのまとめでございます。構成としましては、2ページから6ページまでは1ページに至るまでの材料でございますので、純保険料率水準はこの1ページがサマリーでございます。今回の検証対象は、表の下2行に網掛けがついてございますが、令和元年度と2年度が検証対象の予測値でございます。平成29年に改定をいたしました際に、純保険料率は11%ほど下げました。表の「収入純保険料A」をごらんいただきますと、平成25年度から28年度まで、八千四百から六百億円となっております。平成29年の改定によって、「7,693億円」とありますが、1千億程度純保険料が下がったことを示しております。

 右の「支払保険金B」でございますが、これも昨今の事故の減少等によりまして、下2行の予測値といたしましては下がっております。引き算をしますと、C欄の「当年度収支残」は、例えば一番下の令和2年度で658億円程度の余剰が出るということでございます。割り算をしますと、一番右の「損害率」は91.5%となります。その右の注7に書いてございますけれども、前回の改定における予定損害率は105.9%で、100%を超える見込みを立てましたが、それに比べますと105.9%に対して91.5%ということで、大きく改善が見込まれる。これが純保険料率の検証結果でございます。

 2ページをごらんください。ここから先はしばらく1ページに至る材料でございます。2ページは一般統計で、警察庁資料等から取った数字でございます。
 交通事故の発生件数は、平成16年に「952,720件」という数字がございますけれども、ここをピークに下がり続けているということでございます。
 右にいきますと、亡くなられた方の数値が出ておりますけれども、ここも平成13年以降ずっと、1年除きまして下がり続けているということでございます。
 負傷者数も同じで、平成17年以降は下がり続けているということでございます。
 死者数のところ、一番下に「3,215人」という数字がございます。これはつい最近発表になりました数字でございますが、昭和23年だと思いますが、統計が始まって以来の最も低い数値になっております。

 3ページに移らせていただきます。こちらは主な予測要因でございまして、(1)の収入純保険料と、(2)のお支払いする保険金を、どのように予測しているかということでございます。収入は、自賠責保険の対象となる車両の保有台数の動向から、ほぼ横ばいで見ているということでございます。
 支払保険金については、①の事故率と、②の平均支払保険金の両面から予測するということでございます。①の事故率でございますが、これは自賠責の全契約件数に対して、どのくらいの率で事故が起こるかということでございます。こちらにつきましては、中段の表にございますが、死亡事故、後遺障害事故、傷害事故と分けて予測をしておりますが、先に4ページをごらんいただきたいと思います。

 4ページは左上が死亡事故、その下が後遺障害事故、右上が傷害事故でございまして、死亡事故と後遺障害事故は一貫して減少傾向を示しておりまして、予測も減少すると見ております。
 右上の傷害事故は、平成28年度にごくわずかに上昇しましたが、その後は下がり続けておりますので、こちらも減少すると見ております。
 右下に数字が出ておりまして、一番下、死亡の「0.00374%」とか、その右側、後遺障害の「0.05412%」とありますが、こちらの数字を3ページの事故率の表の令和2年度に引用しているといった関係でございます。

 3ページに再度戻っていただき、②の平均支払保険金は、ファクターとして、一番下の表にあります賃金、治療費、自賠責の支払基準を勘案しております。
 賃金上昇率につきましては、毎月勤労統計から予測しております。治療費上昇率につきましては、通院日数や入院日数が昨今、減少傾向にございますので、こうした傾向から予測しております。
 一番右の支払基準につきましては、治療費、休業損害、慰謝料といったものが定められておりますが、これはプラスで見ておりまして、この4月から法定利率が変わりますので、その影響や、平均余命、物価上昇率、賃金水準などを反映した影響で、1.26%上昇と予測しております。

 4ページを飛ばして、5ページをごらんください。この表は、いずれも3ページや4ページのファクターを使うと、この支払件数や平均支払保険金になるという位置づけでございます。支払件数は、死亡事故の令和元年度、2年度を見ていただきますと、減少傾向となっております。後遺障害事故、傷害事故についても同じでございます。
 一方で、平均支払保険金は、先ほど申したようなことで、死亡事故について2.3%、1.5%の上昇。後遺障害事故、傷害事故につきましても、わずかですが上昇傾向となっております。
 この死亡のところの一番下の行、「3,051」という支払件数と、平均支払保険金である2,494万円を掛け算しますと、約761億円になります。この掛け算の結果が、6ページの表の死亡事故の一番下、「761億円」につながっていく関係でございまして、後遺障害事故、傷害事故についても同じでございます。結果的には、死亡事故、後遺障害事故、傷害事故のいずれにおきましても、支払保険金の総額は減少傾向となっております。

 6ページの一番右側に、合計の保険金である「7,110億円」「7,050億円」という数字がございますけれども、この数字が1ページの支払保険金の額、B欄の一番下に引用されているという関係でございます。
 以上が、純保険料率水準の検証結果でございます。

 7ページはご参考です。重度後遺障害の支払件数についてですが、重度後遺障害というのは注1にございますが、労働能力喪失率が100%という大変重い状況になってしまうケースです。こういったケースは一番右の合計欄のとおり、傾向としてはほぼ減ってはいるものの、1,600名強の方々がそういった状況になっているということでございます。

 8ページをごらんください。純保険料は、収受してから保険金が支払われるまでの間に、保険会社、共済事業者の各社で運用されます。その状況を示している表でございます。結論としましては、一番右の一番下、運用益の積立金残高は、平成30年度末で1,830億円という状況でございます。
 表の中ほどに「当期繰入額」のFという欄がありますが、ほぼ毎年度300億円強の運用益が出る傾向で、想定内の動きでございます。

 引き続きまして9ページ、「滞留資金」という言葉になっておりますが、これは上に書いてございますが、運用益積立金で赤字を補填した後の累計収支残と運用益積立金残高の合計額です。基準料率を改定する場合には、このファンドも使いますというのが、2行目の意味でございます。
 一番下の平成30年度を見ていただくと、当年度収支残、C欄ですけれども、これは入りよりも出が少ないということで、478億円余ります。それから「累計収支残」という欄、F欄ですけれども、平成29年度に「2,221億円」という金額があります。これに平成30年度の「478億円」を加えますと、F欄の一番下、「2,699億円」になるということで、ここ1年、2年は収支残が増えております。これにG欄の「運用益積立金残高」を加えまして、一番右のH欄、「4,529億円」という金額が滞留していることを示しております。

 10ページに移らせてください。ここで初めてテーマが社費になります。こちらは保険会社や共済事業者の経費でございます。平成29年に改定したと冒頭申しましたが、それにより「収入社費A」欄は、平成29年度は若干の上昇を示しております。これは純保険料率は11%下げましたが、社費については引き上げの改定をしたということでございます。
 それを受けましてC欄の当年度収支残も平成28年度から29年度にかけて増加しておりますし、累計収支残もマイナスが減っているということでございます。平成29年4月からの5年間でこの累計収支残もゼロにするという想定で改定したということでございます。

 以上が純保険料率水準と社費水準のご説明でございまして、11ページはまとめでございます。(1)の純保険料率水準におきましては、一番右側ですが、令和2年度は、予定損害率105.9%に対して損害率は91.5%となり、13.6%の余剰が見込まれるということでございます。また、滞留資金はその下の「4,529億円」でございます。
 それから、(2)の社費水準は、10ページから引用した「62億円」という収支残がございます。こちらも単年度では収支残が出ている状況でございます。

 12ページは、今までふれてきた考え方のところですので、説明は割愛させていただきます。

 13ページは収入と支出の構成割合でございますけれども、ご参考までということでごらんいただければと思います。

 説明は以上でございます。

【藤田会長】

 ありがとうございました。
 では、横尾課長から補足をお願いいたします。

【横尾課長】

 事務局から補足説明させていただきます。

 ただいま、江原委員からのご説明があったところと重複しますけれども、資料11ページにありますように、今年度の検証結果といたしましては、近年の交通事故の減少等を背景にいたしまして、収支は令和元年度、2年度を見通すところ、黒字。それから、支払保険金を収入純保険料で割った値である損害率につきましては、令和元年度は92.5%、2年度は91.5%ということで、収入と支払いの関係でいいますと、収入のほうが多いことが見込まれます。
 また、平成29年4月の前回の基準料率改定時には、予定損害率を105.9%と見込んでおりました。11ページで申し上げますと、注のところでございます。これと今申し上げた令和元年度、2年度の予測の乖離を申し上げますと、収支は約13%程度改善する見込みであるということになります。

 また、運用益積立金残高等を考慮した滞留資金につきましては、平成30年度末の残高が4,529億円になるということで、足元よりも増加することになります。
 以上の点に加え、料率の安定性、それから、社費の収支状況等も踏まえまして、令和2年度4月以降の基準料率の改定の必要性について、委員の皆様にご議論をお願いしたいと考えております。

 なお、基準料率の改定を仮に行う場合には、先ほど申し上げました滞留資金を活用してということになりますが、その活用する期間の前提を置く必要があります。向こう何年かけて滞留資金を契約者に還元するかということでございます。従前より料率改定を行う際には、この期間は5年と前提を置いております。これは自賠責保険の契約期間の最長が5年でございますので、契約者間の公平性等を考慮して5年としているものでございます。今回の議論の中でも仮に改定が必要ということであれば、特段のご異論がなければ従前同様5年とすることが適当かと考えておりますが、もしこの点についても何かありましたら、ご議論をお願いしたいと思います。

 事務局からは以上でございます。

【藤田会長】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの料率検証結果の報告と補足説明に関しまして、ご質問、ご意見はございますか。

 長島委員、どうぞ。

【長島委員】

 長島です。
 負傷者数に関して、2ページ目、警察庁の資料を見ますと、平成15年度の118万をピークに以後、年々大幅に減少し、平成30年だと52万と半減しているように一見見えます。ところが、5ページ目の自賠責の支払件数を見ていただくと、一番右はじの「傷害」のところ、支払件数が平成23年、118万で、令和元年、104万と微減に過ぎません。つまり、実際の支払っている傷害者が100万人を超えているのだけれども、警察庁の統計はその半分しか把握できていないという実態です。

 その理由としては、警察庁の統計が人身事故による負傷者数をカウントしている。一方、自賠責は、人身事故ではなく物件事故扱いであっても支払いの対象としているということで、この物件事故扱いでの支払いが毎年どんどん増えているために、この大きな乖離が起こってしまっているというのが現状です。したがいまして、これが国の統計として、負傷者が半減していると捉えてしまうと、交通行政を行う上で現実との乖離が起こってしまう可能性があるということ。これを考えますと、国がきちんと負傷者数を捉えられるような工夫が必要だろうと思います。負傷があれば、全て物件ではなく人身事故として扱うのが理想かと思いますが、もしその辺で何か現場でハードルがあるということであれば、そのハードルを下げる工夫を行うことで、国が負傷者数を正しく捉える、半分しか捉えられないという状況は避けるべきだと思います。

 それから、人身事故と物件事故では行政処分が変わってしまうという、同じけがを負いながら行政処分が変わってしまうという不公平もありますので、ここのところはきちんと考えるべきだと思っております。その工夫を始めるべきだと提案いたします。

 2番目に、現在、自賠責の支払いの限度額が120万円になっておりますが、これが数十年間変わっておりません。この数十年の間に、物価にしても、平均給与にしても、あるいは医療費に関しても大きく変わっている。この時点で120万円という限度額が果たして妥当なのかという検討は行うべきではないかと提案いたします。すぐには難しいかもしれませんが、少なくとも検討すべきだと考えます。

 それから、3つ目ですけれども、自賠責の医療費の計算を行う場合に、新基準というものが47都道府県全てで採用されたということで、この制度化について検討を始めるべきだと提案いたします。

 それ以外に、昨年度の本審議会にて、被害者のできるだけ早期の回復を目指す、あるいは、医療費も抑制を目指すという意味では、柔道整復で行う場合の療養期間が長期化している。あるいは、金額が高額化しているという傾向が見られたために、それに対する対策をお願いしたところですけれども、その後何か経過がわかりましたら教えていただければと思います。

 もう一点、社会保険の利用が11%あるということで、昨年度もこの問題に関する対策をお願いしたところですけれども、その後の経過がありましたら教えていただければ幸いです。

 以上です。

【藤田会長】

 ありがとうございました。
 計5点のご質問があったかと思うのですが、各々、損保協会様と国土交通省さんから回答をいただけるかと思うのですが、まず、4つはおそらく損保協会様に関係すると思うので、緒方委員から回答をお願いいただけますか。

【緒方委員】

 緒方でございます。ご意見等ありがとうございました。

 まず、1つ目でございますが、物件事故の取扱いについてのご指摘を頂戴したところでございます。現在、私どもの保険金の支払いの実務といたしましては、物件事故でのお支払いをしているところも事実でございまして、たとえ物件事故での事故証明が出てきた場合でございましても、その受傷と治療についての因果関係がはっきりしている場合につきましては、その範囲において被害者救済も含めまして保険金のお支払いをしているというのが今のところの手続きでございます。一件一件をしっかり調査することで、適切な支払いをすることを行わせていただいているところでございます。

 加えまして、物件事故での事故届が出されているところについて、多くのケースにつきましては、当初それほどの症状はなかったのだけれども、念のため受診をしたとか、治療が早期に終わってしまった等の理由があるといったところも確認をし、問題がない限りにおきましては保険金の支払いをしているということでございます。今後につきましては、人身事故の届出についての私どもとしてのお客様への確認等は続けていく中で、より適切な支払いを続けてまいりたいと考えているところでございます。

 あと、早期の回復に向けた柔道整復師の施術についてのご指摘であったかと思いますが、これも被害者の方が早期に社会復帰をされる、回復をされるということは私ども損害保険会社としても望んでいることでございまして、そのための柔道整復師の施術についての保険金支払いにつきましては、それぞれ治療費が妥当であるのかというところについてしっかりと一件一件確認を取りながら、支払いに努めているところでございます。必要に応じまして、被害者の方にその治療の中身を確認させていただくとか、あるいは医療機関に対して施術の有効性も確認をさせていただきながら、適切な支払いに努めているということでございますので、今後につきましても引き続き適切な支払いを進めてまいりたいと考えているところでございます。

 それと、社会保険の適用に関するご指摘だったかと思いますが、この点につきましては、あくまでも被保険者、被害者の方の判断に基づいて社会保険の適用がなされているというのが私どもの考え方、立場でございます。従前、ご指摘をいただいたところも踏まえまして、現場への教育等も徹底しているところでありますので、社会保険の適用につきましては、被害者の方の適切な判断がなされるような手続きをしっかりと努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上で一旦お答えさせていただければと思います。

【藤田会長】

 では、江原参事官、よろしくお願いします。

【江原参事官】

 支払限度額についてご指摘をいただきましたので、私、国土交通省の江原からお答えさせていただきます。

 ごらんのとおり、支払限度額につきましては、自賠責保険が損害全体ではなくて基本部分を補償するといった性質を持つものであるという観点でありますとか、また、支払限度額によるカバー率、保険料率への影響を踏まえまして、例えば、傷害については120万円ということで設定されているところでございます。

 ただ、委員ご指摘のとおり、社会経済情勢の変化を踏まえて、今後、見直しが必要になる場面も当然あるものだろうとは考えております。具体的にはご指摘いただいた物価であるとか賃金、医療費の水準。また、通院日数が支払いの実際の金額には関わってくると思いますので、そういったものもしっかりと、例えば、金融庁さんでありますとか、損保協会、料率機構さんと引き続きしっかりと情報交換をしながら、そういったタイミングを見極めてまいりたいと考えております。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 長島委員、これでよろしいでしょうか。

【長島委員】

 人身と物件の扱いに関しましては、例えば、警察庁などともご相談して、できるだけ実態がきちんと国として把握できる方向に向かっていければと考えております。
 それから、早期回復を目指すための柔道整復あるいは社会保険の利用に関しては、引き続き、ぜひ検討していただければと思っております。また来年質問させていただこうと思っております。

 以上です。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。そのほかご意見、ご質問はございますか。
 中林委員、お願いします。

【中林委員】

 ご説明ありがとうございます。中林です。

 本日ご説明いただいた内容を踏まえますと、保険数理という観点から考えれば、損害率が非常に予定と乖離しているということであるとか、あとは社費の収支状況を見通して、なおかつ、滞留資金の状況などを考えますと、現状で考えれば料率の引き下げというのは自然な流れではないかと考えております。

 以上です。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 料率を引き下げる方向で考えてはどうかというご意見でした。そのほか、ご質問、ご意見はございますか。並木副事務局長、どうぞ。

【並木副事務局長】

 失礼いたします。髙倉の意見を預かっておりますので、代読をさせていただきたいと思います。

 現行料率で想定した予定損害率との乖離状況は、17年度以降、4年連続でマイナスであり、収支も黒字が見込まれています。黒字幅も拡大していることから、改定は妥当な判断であると考えます。料率を検討するにあたっては、令和2年4月1日より施行される自動車損害賠償責任保険の保険料等及び自動車損害賠償責任救済の共済金等の支払基準の一部を改正する告示による支払金保険料の増加や、令和元年10月の消費税増税による代理店手数料の増加など、一定の引上げ要素と変更の影響も勘案して設定すべきと考えます。

 また、過去の審議会でも発言させていただいておりますが、自賠責保険の保険料率は短期間での大幅な変更は望ましくなく、安定的に運営していくことが基本であると考えます。加えて、ノー・ロス、ノー・プロフィットの原則や、ユーザー負担軽減の観点なども踏まえ、中長期的な収支などにも十分配慮した料率設定に努めていただきたいと思っております。

 これまでも社費の削減の取組を行っておりますが、引き続きの削減に向け、契約手続きの簡素化や損害調査への警察情報の活用など、行政と業界が連携した取組によるさらなる効率化を考えていただきたい。特に消費税増税後、より政府も率先してキャッシュレスを推進している現状に対応すべく、現在、現金、小切手に限られている自賠責保険の振込方法について、クレジットカード払いなどを選択できるよう、振込方法の拡充も検討していただきたい。これらの活動を推進することはユーザー負担の軽減はもちろん、自賠責に係る全ての方の働き方改革にも寄与する重要な取組と考えます。

 以上でございます。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。そのほかご質問、ご意見ございますか。
 高松委員、どうぞ。

【髙松委員】

 ありがとうございます。髙松でございます。

 私もそれぞれ委員から発言があったとおり、現状の推移を見てまいりますと、次年度以降の料金の改定については妥当ではないかと思っています。ただ、先ほどもありましたとおり、保険料という性格上、現状直ちに踏まえて大きな変動ということになると、逆に上昇に転じた場合にはユーザーに過度な負担ということもありますので、長期安定的な推移が大変望ましいのだろうと思っていますので、トータル的なバランスを配慮いただく中で検証いただければいいのかと思います。

 以上です。

【藤田会長】

 はい。どうもありがとうございました。
 そのほかご意見、ご質問はございますか。
 唯根委員、どうぞ。

【唯根委員】

 ありがとうございます。唯根です。

 消費者の側から、先ほどの限度額の引き上げについては、死亡だけではなくて重度後遺障害の方々の救済の面で、負傷者に一律という部分も含めましてご検討いただく必要があるのではないかと思います。ご本人、被害者だけではなくて、ご家族の一生も含めての被害ということを感じておりますので、そのような部分も含めてぜひご検討いただいた上で、料率変更についてはご検討いただければ結構だと思っております。

 以上です。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 事務局側から、何かございますか。

【江原参事官】

 先生からご指摘いただきましたとおり、限度額につきましては、先ほど賃金であるとか、物価というのは指標的なところは申し上げましたけれども、実際に被害に遭われた方のさまざまなご実態であるとか、そういったものも広く含めて考えていくべきであると考えておりますので、ご指摘を踏まえまして先ほど申し上げたように関係者の皆様としっかりと協力しながらタイミングを見計らってまいりたいと思っております。また引き続きのご指導をいただければと思います。
 よろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 そのほか、ご意見、ご質問はございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、委員の皆様からのご意見は一通りお伺いできたと理解させていただきます。
 いただいたご意見の中では今後の料率のあり方については、令和2年度より保険収支に見合う料率水準とするということが妥当であるというご意見が、私の記憶だと4人の委員から出ておりました。
 それに反対する意見はなかったと理解しております。
 たしかに保険収支の状況を見た場合、交通事故の減少等により、損害率については92%程度と、前回の基準料率改定時の想定以上の黒字になっていること、保険契約者に還元するべき滞留資金の残高が増加傾向にあることを踏まえますと、令和2年度より自賠責保険の収入と収支を見合う料率水準とすることが妥当とも考えられます。
 いかがでございましょうか。そのような方向で結論を出させていただいてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【藤田会長】

 ありがとうございます。
 それでは、ご了承いただいたということで取り扱わせていただきます。

 併せて滞留資金の還元をどのような期間で行うかも決める必要がございます。先ほど事務局からご説明がありましたが、契約者間の公平等を考慮して、従来は5年という期間でこれを行ってまいりました。今回も同じように5年ということで決定することでよろしいでしょうか。あるいはこの点にご異議、ご異論はございますか。

 特にご異論がないようでしたら、従前どおり5年ということにさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、本日の1件目の議題はこれで終了させていただきます。
 
 具体的な基準料率引き下げという方向が出ましたので、損害保険料率算出機構におかれましては、速やかに新たな保険料率の案を作成いただき、来週行う自賠責保険審議会におきましてご説明いただければと思います。

 引き続きまして、2件目の議題です。令和2年度運用益の使途について、ご報告いただければと思います。国土交通省、日本損害保険協会、JA共済連の順でご説明いただき、その後、3件の報告について一括してご議論いただければと思います。
 まず、「令和2年度自動車安全特別会計の運用益の使途等について」、国土交通省の江原参事官よりご報告いただければと思います。

【江原参事官】

 ありがとうございます。

 それでは、資料2でご説明をさせていただきたいと思います。早速でございますが、1ページ目をごらんください。自動車安全特別会計の運用益活用事業でございますけれども、ご案内のとおり、大きく2種類ございまして、1つが「被害者の救済」。資料の左側です。右側の「自動車事故の防止」。この二本柱でございます。

 被害者支援につきましては、療護施設の設置・運営。また、在宅介護に入られた方々には介護料の支給でございますとか、短期入院・入所のご支援。また、介護者なき後を見すえた取組を平成30年度から始めておりまして、そういったものと、また、再生医療に向けた取組。主にこういったところを行っているところでございます。

 また、自動車事故の防止につきましては、この右側になりますけれど、事業用自動車に対する先進安全自動車の普及。また、自動車アセスメント事業といったところを行っているということでございまして、それぞれの昨年度の実績、本年度の実施状況、また、来年度の予算案につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。

 2ページ目をごらんいただきまして、これが昨年度の実績でございます。主だった項目についてご紹介させていただきますが、まず1つ目が左上、療護施設の関係でございます。平成30年度につきましては、空白地域、現在10カ所から、今年度11カ所になりましたけれども、まだまだ空白の地域が当時あったという認識から、小規模なものではございますが、新たな療護施設を設置するということで、平成30年度につきましては、この石川県の金沢脳神経外科病院で5床の患者の受け入れを開始いたしました。

 また、「介護者なき後を見すえた日常生活支援の充実」という右側でございますけれども、内容といたしましては介護者なき後に受け入れていただける施設を確保するという観点から、障害者支援施設、グループホームといった施設に対しましては機器導入、また、人材確保に関する補助を行うといった内容でございます。これが初年度でございましたけれども、23の事業者に対して補助を実施するということをいたしております。

 また、再生医療の関係でございます。今、例えば、脳損傷につきましても治験段階に入っていると承知しておりますけれども、今後も展開を見据えまして、調査事業、また、共同研究事業といったものを行っているということでございます。

 また、事故対策につきましては、自動車アセスメント事業でございますけれども、新たな項目を追加するということで、「衝突被害軽減ブレーキ(夜間(街灯あり)[対歩行者])といったものを追加することを平成30年度予算で実施しております。

 また、令和元年度の実施状況について、ご報告を申し上げます。3ページをごらんいただければと思います。

 まず、療護施設の関係につきましては、前年度に引き続き、空白地域への対策ということで、今度は四国でございます。松山市民病院は愛媛県でございますけれども、これは委託病床の委託先に決定いたしまして、今年度中に受け入れを開始する予定になっております。

 また、介護料につきましては、令和元年度は充実を図るという観点から、支給額の見直しを実施しております。

 また、介護者なき後を見すえた日常生活支援の充実につきましては、前年度の23事業者に対しまして、今年度は45の事業者に対して支援を行う予定になっております。

 また、再生医療につきましては、先ほど申し上げたような調査・研究事業を引き続き実施しております。

 また、自動車アセスメント事業につきましては、これも項目の追加ということで、「衝突被害軽減ブレーキ(夜間)」、今度は「街灯なし」でございます。前年度の「あり」に対して「なし」、「対歩行者」を追加するということで進めさせていただいております。

 また、来年度の予算案でございますけれども、順次申し上げますと、療護施設の関係につきましては、「一貫症例研究型委託病床」というものがございまして、これは事故直後から慢性期までの連続した治療、リハビリを行うことによって、高い脱却率、回復率を図る。こういった研究するための病床を現在、5床設置しておりますが、これを拡充するということで予算に計上しております。

 介護料の充実につきましては、支給額の見直しを行うとともに、ご要望の強かったパルスオキシメーターなどの機器を介護料の対象品目に含めるということで予算計上しております。
 介護者なき後の対策についても、これは引き続き実施をしていくということでございます。

 また、再生医療についても同様でございます。

 自動車アセスメント事業につきましては、項目の追加ということではなくて、交差点における衝突被害軽減ブレーキなどに関して、今後の追加を目指して調査研究を行うことが予算計上されております。

 また、これは令和2年度の予算ではなくて、令和元年度の補正予算というところになりますけれども、高齢運転者の安全対策が非常に重要な社会的な課題になっていると承知しておりますが、そのうち事業用自動車の安全運転サポート車の購入に対する補助といった制度が新設されることになっておりまして、これは運用益事業の一環として、約12億円計上されているものでございます。

 最後になりますけれども、5ページをお開きいただきまして、こういった事業を行う資金は特会の中の事故対策勘定の積立金からの支出とさせていただいております。ただ、この積立金に関しましては相当の額を一般会計に繰り入れ、お貸ししているような状況になっておりまして、これを毎年繰り戻していただくということで取り組んでおります。実績、また、来年度の予算について申し上げますと、5ページの資料の左側になりますけれども、平成30年度が23億円。令和元年度が37億円。令和2年度の予算案の中では40億円になっております。また、先ほど申し上げたサポカー補助の関係で、令和元年度の補正予算で措置されますけれども、これは支出に相当する額が補正予算の中で繰り戻しをされるという予算案になっておるということでございます。

 私からは以上でございます。

【藤田会長】

 続けて、損害保険協会から、ご説明をよろしくお願いいたします。

【緒方委員】

 日本損害保険協会の緒方でございます。
 私からは令和2年度の民間保険会社の運用益の使途について、ご報告を申し上げたいと思います。
 お手元の資料3をごらんいただければと思います。
 
 まず、この運用益の拠出事業の案につきましては、第三者委員で構成されております日本損害保険協会長の諮問機関でございます自賠責運用益使途選定委員会というところで審議、ご了承いただいているものでございます。
 2月20日に開催予定の日本損害保険協会理事会で最終決定する予定の案ということでございます。なお、この事業案の策定に当たりましては、これまでの自賠責保険審議会の答申あるいは今後の「自動車損害賠償保障制度のあり方に係る懇談会」で示された方向性等も踏まえまして、自動車事故の被害者対策を中心に取り組むとともに、交通事故の被害者を生まないための自動車事故防止対策に一層注力することを基本方針としているということでございます。
 
 それでは、ポイントについてご説明をさせていただきたいと思います。資料を開いていただいて1ページをごらんいただければと思います。
 まず、令和2年度の拠出予定の合計額で、右上に記載させていただいてございます。必要な事業を積み上げた結果ということでございますが、18億7,572万9,000円。前年度対比で、約2,156万円の増額となっているところでございます。それぞれの事業概要につきまして、拡充するものと減額をするもの、主なものにつきまして、その下段に記載させていただいてございます。それらについてご説明をさせていただければと思います。
 
 まず、拡充する主な事業でございますが、自動車事故防止対策の分野につきましては、ここに3つの新規事業の記載をさせていただきました。「運転者の健康管理を支援する「体調予報」システムに関する基礎的検討」、「高齢運転者向け認知機能検査の副作用とその緩和策の検討」、「自動車安全技術開発を担うエンジニアの育成モデルの研究」などを新規で実施させていただきたいと考えているところでございます。

 次に、自動車事故被害者対策の分野でございますけれども、脊髄損傷などの交通事故に起因して発生する割合の高い症状への対策を充実するというところでございます。具体的には、「脊髄損傷の再生医療に関する勉強会開催費用補助」を増額いたしたいと考えているところでございます。また、「高次脳機能障害当事者によるピアサポートの研究」を新規に実施してまいりたいと考えているところでございます。今後引き続きでございますけれども、適切な被害者支援のあり方を検討してまいりたいと考えているところでございます。

 次に、同じページの下段になりますけれども、減額する主な事業につきましてご説明を申し上げます。事業運営の効率化あるいは、これまでに示された運用益事業の方向性などを踏まえまして、ここに記載をさせていただいているとおり、「交通事故防止機器の寄贈」、「公的病院への救急医療機器購入費補助」、「交通事故無料相談事業支援」というところにつきまして減額をすることになっているところでございます。

 大変ざっくりではございますけれども、令和2年度の事業案の概要は、以上のとおりでございます。総額といたしましては、前年度対比で増額となってございますけれども、これは必要な事業を充実させる、また、個々の事業内容の精査・見直しも行うなど、こういったことを行いまして、各事業の積み上げを行った結果ということでございます。
 なお、詳細版ということで、2ページ以降につきましては、令和2年度の個々の拠出事業の内容を記載させていただいております。
 また、資料の13ページにつきましては、直近5年間の拠出額の推移を記載させていただきました。

 14ページ以降につきましては、平成30年度の運用益拠出事業の報告を添付しているところでございます。時間の関係からご説明は割愛させていただければと思いますが、資料の添付をご報告させていただきました。
 最後でございますが、民間損保といたしましては、本拠出が自動車事故の被害者の皆様への支援並びに事故防止対策に資するよう、今後とも自賠責保険運用益の有効かつ適正な拠出に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上、ご報告を申し上げます。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、JA共済の運用益の使途について、ご説明をお願いいたします。

【村山委員】

 それでは、資料4をお手元にお出しいただきたいと思います。令和2年度のJA共済の運用益の使途につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
 JA共済の村山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 なお、毎年度の運用益拠出事業の計画の策定にあたりましては、ただいまご説明のありました損保協会様と同様に、第三者委員からなる使途選定委員会にてご審議をいただきまして、ご了承をいただいているところであります。各施策の実施状況を踏まえまして、その効果や課題などの検証、そして、各施策の継続、また、新規取組や減額の方向性を整理しながら、より効果的、効率的な活用に努めているところでございます。また、これまでの当審議会におけるご意見も参考として取り組んできているところでございます。

 早速でございますが、資料の1ページをお開きいただきたいと思います。JA共済における令和2年度の取組は、1ページの上段に記載しておりますとおり、令和2年度の計画額の合計は12億7,785万円を予定しているところでございます。

 次に令和元年度からの主な変更点ですが、拡充施策といたしましては、重度脳損傷後の意識障害者と家族に関する研究支援を行っております。こちらにつきましては、交通事故等を原因として重度脳損傷後の意識障害者の家族の負担軽減を図る研究に対して支援するものでございます。当研究につきましては、令和元年度から3年間の研究支援としておりまして、意識障害者の家族の介護負担の軽減を図る支援方策を策定していくものでございます。令和2年についてはさらに深掘りをしていこうということで、要因探求を実施するということでの増額をするものでございます。当該研究の実施主体は筑波大学と連携をしているところでございます。

 次に主な減額の施策でございますけれども、救急医療体制の整備ということで、救急医療機器等の購入費補助につきまして、救急医療機器の整備が一定、農村部でも進んでいるということから減額をしてございます。
 最後に予算の推移につきましては、ページの下段に記載しておりますが、令和元年度と比較して1.7%の減少となっているところでございます。

 なお、2ページ以降に令和2年度の本運用益拠出事業の詳細と、8ページ以降に平成30年度の実施状況を取りまとめて記載させていただいていますので、ごらんいただければと思います。
 JA共済におきましても、国交省様、また、損保協会様とも連携を取りながら、重なることがあまりないようにそれぞれの分担を理解した上で取組を進めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 説明は以上でございます。

【藤田会長】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの三者の報告に関して、ご質問、ご意見はございますか。

【長島委員】

 長島です。
 まず、自動車安全特別会計運用益活用事業に関しましては、再生医療をぜひもっと充実させていただければと希望します。その理由は、脳及び脊髄損傷の急性期だけではなくて、慢性期に関しても効果があるという可能性が見えてまいりました。そうしますと、これは被害者はもちろん、ご家族に対して最大限の貢献ができると同時に、費用に関しても短期間では高額になりませんが、長期間で見れば、かなり逆に削減が期待できるという両面の効果がありますので、ぜひこれの充実をお願いいたします。

 次に、民間保険会社及びJA共済の運用益使途に関しまして、救急医療体制の整備を、少し減額という動きもあるようですが、逆にここはどんどん充実させていただきたいと思っています。その理由は、現在、医師の働き方改革を進めることになっていまして、特に救急の場面ではそのところの影響がかなり大きいということで、現場で、例えば、医師の、あるいは医療関係者の負担を減らすようなさまざまな設備等、あるいは人件費に関する費用負担は期待されているところですので、特に交通事故の医療に堅実に貢献しているようなところに対しては、公的医療機関に限らず、私立も含めてしっかりここのところはむしろ増額をお願いしたいと思います。

 以上です。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 国土交通省から何かございますか。

【江原参事官】

 再生医療につきまして、私どもの承知しているところでは、急性期の脊髄損傷については既に保険適用になっているものがあり、また、慢性期の脳損傷についても、今、治験段階にあると承知しております。私どもNASVAで運用しております千葉療護センターと札幌医大さんで共同研究させていただいていると、先ほど簡単に申し上げましたけれども、再生医療についての取組の1つとしては、そういったものがございまして、先生ご指摘のとおり、そういった取組を加速させていくことが被害からの回復とさまざまな社会的な効用につながっていくと考えております。研究の進捗状況に合わせてということにどうしてもなってくるかとは思うのですけれども、そういった状況をしっかりと注視させていただきながら、私どもとしてもしっかりとそれに対応した取組を進めていきたいと考えております。引き続きのご指導をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 救急医療体制につきまして、損保協会様あるいはJA共済様から何かございますか。

【緒方委員】

 損保協会の緒方でございます。ご意見ありがとうございます。

 委員からご指摘をいただいたところにつきましては、まさにそのとおりだと考えているところでございますけれども、現在のところで申し上げますと、救急救命センターを設置している病院の拠出というのも2009年度から行っているところでございます。そのほかの病院への拠出の拡大については、ご意見をいただいたところでございますけれども、財政的な観点と必要性の観点を、バランスを見てしっかりと論議させていただければと考えているところでございます。ご意見ありがとうございました。

【藤田会長】

 村山委員、どうぞ。

【村山委員】

 JA共済でございます。
 これまでの当審議会または「あり方懇」の中におきましても、本来、国の一般会計からやっていくべきではないのかといったご意見もある中で、また、特にJA共済の場合は我々の対象とする医療機関が厚生連ということがございまして、そちらに流れているのではないかというご指摘もいただく中で、その全体の取組は縮小していくべきではないかというご意見をいただいていると認識しており、その取組を行ってきたところでございます。

 ただ、一定の取組を通じてきちんとやってきた中でのいろいろな機器の配備を支援してきておりますので、そのあたりのところが進んできていると我々は認識をしているところでございます。まだ社会情勢または様々な医療環境の中で必要なものが出てきているのかどうか、そのようなものは同様に研究をさせていただきたいと思いますし、また、財源の問題もございますので、その対象等につきましても、損保協会様をはじめ、連携を図りながら検討をさせていただきたいと思います。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 浜島委員、お願いいたします。
 
【浜島委員】

 日本自動車会議所の浜島でございます。

 先ほど国土交通省の江原参事官から、令和2年度自動車安全特別会計の運用益の使途等につきましてご説明いただきました。日本自動車会議所では、自動車事故被害者救済事業の充実につきまして、自動車損害賠償保障制度を考える会とともに、これを推進しているところでございます。令和2年度も一昨年、昨年に続きまして、一般会計から自動車安全会計に40億余りが繰り戻されました。これは3年連続の繰り戻しでございまして、さらに増額ということでございまして、自動車事故対策勘定の積立の取り崩しの縮減を図るためと評価をさせていただいております。ご既承のとおり、この積立金につきましては、もともと自動車ユーザーが支払いをしました自賠責保険を原資としておりまして、その時々に必要とされる交通事故被害者の救済や事故防止対策に用いられてきたところでございます。とりわけ昨今では、社会的な課題ではございますけれども、在宅の家族介護者が高齢になるなど、介護の継続が困難な状況も見受けられるという状況でございます。このような被害者に対しても対策事業が必要であるところかと認識しているところでございます。

 このようなことからも昨年も話があったと思いますけれども、この積立金が枯渇することのないよう、一般会計に貸し出されました6,000億につきまして、国土交通大臣及び財務大臣の合意のとおり返済されることを引き続き我々としては求めていきたいと考えておりますので、特段のご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

【藤田会長】

 何かございますか。

【江原参事官】

 ただいまの浜島委員からご指摘をいただいた件でございますけれども、何より積立金というものは被害者救済、事故防止も究極的には被害者を出さないと、減らしていくことに貢献していくということであると思いますけれども、被害者救済のために使われる資金であると考えております。その意味で使途についてはまさに今ご指摘をいただいたように、さまざまな環境の変化、在宅介護をされているご家族の高齢化を考えて取組ということも非常に重要であると考えておりまして、先ほどご紹介をいたしましたような平成30年度からですけれども、介護者なき後の環境整備という事業も始めさせていただきました。ただ、まだいろいろと取り組むべき課題は多々あるのかと私どもも認識しておりますので、さまざまな関係する分野の知見をお持ちの方々にご協力をいただきながら、施策の充実を図ってまいりたいと考えております。

 また、その原資につきましても、一般会計からの繰り戻しは非常に重要だと思っておりますので、これも考える会の皆様のご支援もあってということでございますが、3年連続で実現をしております。一層進めていけるように引き続き尽力してまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 はい、山根委員。

【山根委員】

 いのちのミュージアムの山根と申します。何点かよろしくお願いします。

 今お聞きしておりまして、自賠責の運用益をそれぞれの皆様が考えてくださっていること。そして、いのちのミュージアムは、交通事故の当事者の団体でございまして、全国にいろいろなメンバーがあります。JAさんとか、あと民間保険会社さんとで相談事業があると思うのですけれども、JAさんも減額していくと。いろいろなところが減額していくのですけれども、実際、当事者のところ、障害を持たれている団体さんのところや、私たちみたいな死亡事故のところに相談がたくさんきているのです。皆さん、手弁当でやっています。

 毎年いろいろなところでお話をしているのですが、せっかくこういう予算があるのであれば、ぜひ連携をさせていただきたい。いろいろなところも相談者の人材育成が必要だと思うのですが、実際、私たち当事者が医師等と、また、当事者でない方たちが一緒にペアを組んで相談者のところへいくと、ほんとうに心うちをしっかり出していただけるということ。

 そして、警察庁でも被害者支援対策というのをやっていらっしゃるのですが、交通事故のほうが後になります。交通事故は大きな事故だったり、小さい事故とよく言われる、交差点の車対車の事故とか、見逃されていく事故がとても多いのです。

 重度障害の方たちの就労支援もほんとうに大変です。そこの辺もぜひ国交省が中心になって厚生労働省や医療の関係とか、あとは警察庁の被害者支援と連携していただく。

 それと、金融庁も、このように自賠責を皆さんが、一般の人たちがどのように使っているかという、ほんとうに知られていないです。皆さん、払ってはいらっしゃるのですが、このような委員会があって、何か事故が起きたときにどのように使っているのかというのを一般の方たちが知っていない。自賠責は入らない方もまだいらっしゃるので、その辺の認識をしていただくということ。

 あと、障害とか、事故に遭ったとき、家族に子供がいます。そのようなとき、文科省と連携をしていただく。ぜひ国交省が中心になって、いろいろな省庁との連携を取っていただくことがほんとうに必要ではないかと思っていますし、被害者支援ということで、救済ということで、事故防止も、車関係ももちろんですが、歩行者優先の、歩行者のことも考えていただいたり、あとは小さなお子さんを自転車の前と後ろに乗せて、それはとても危険ですね。ですが、生活をしていく中で車は持てない、そうなると電動自転車のほうが楽だということで、そのような事故も増えていたりしますので、ぜひその辺もいろいろなところと関係をしていただきたいし、相談事業に関してはぜひ私たちみたいな当事者の団体とうまく連携をさせていただければ、当事者が手弁当で当事者を支えているという観点になっていますし、介護するほうが高齢者になっているということで、その辺は地域フォーカスを使っていただく。今、地方と言ってはいけないのですけれども、そういう形で地域フォーカスの連携というのはどこの地方もすばらしいものがありますので、そこと連携していただいてやっていくということも必要なのかと思っています。

 以上です。よろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 国土交通省から何かございますか。

【江原参事官】

 今、山根委員から私どもが取り組むべき課題、まさにやっていこうかと、検討すべきだと考えていることをほぼ網羅的にお話しいただきましてありがとうございます。相談事業でありますとか、重度障害の方の就労支援でございますとか、さまざま課題はありますので、そういった分野も含めて政策の総ざらい的なことをやる時期に差し掛かっているかと思っております。

 また、もう一つ申し上げると、各省庁あるいは民間の団体の皆様との連携の強化を図っていかなければいけないかと思っておりますし、もう一点申し上げますと、私どもの反省といたしましては、今、さまざまな形で被害者の方の支援の取組が行われていると思っております。これから充実させていくことも重要ですけれども、今やっていることを皆様に知っていただくこともまた一つ重要ではないかと。

 例えば、私どもでは、「交通事故にあったときには」という冊子をいろいろなところに配布させていただいて、事故直後どのような対応をとっていけばよいのか、どのようなところで相談に乗っていただけるかということを周知させていただいておりますけれども、まだまだそのあたりの活動もしっかりやっていく必要があろうかと思っております。この点に関しましては、さまざまな分野、業種の方々のご支援、ご協力をいただきながら、広くやっていくことがポイントではないかと思っておりますので、引き続きのご指導とご協力をぜひお願いしたいと思っております。ありがとうございました。

【藤田会長】
 どうもありがとうございました。
 そのほかご意見、ご質問がございましたら、ぜひお寄せいただければと思います。
 はい、どうぞ。

【並木副事務局長】

 この件に関して髙倉から意見を預かっておりますので、報告をさせていただきたいと思います。既にご発言の委員と重複する部分もあると思いますが、ご容赦いただければと思います。

 自賠責保険制度は車社会のセーフティーネットであり、自動車ユーザーにとっても、自動車を使わない交通参加者にとっても安心して移動するための必要不可欠な制度であります。自動運転など自動車技術が進展する中で、より安心で持続可能な制度とするためにはどうすればよいか。関係の皆様とともに我々としても知恵を出してまいりたいと思います。

 運用益事業は自動車ユーザーが支払っている保険料の運用益で行われているものであり、その使途についてはこれまで同様、このような審議会を通じて精査をしていく必要があると思います。引き続き確実な効果検証を行った上で、関係者の意見を踏まえ、自動車事故被害者対策及び自動車事故防止対策の拡充、充実を図っていくべきだと考えます。

 現在、後づけできる踏み間違い加速抑制システムが発売、新規開発されるなど、技術も進展しており、交通事故減少に対して即効性のある、このような後づけできる事故防止効果の高い装置の普及等に向けた補助制度の充実や情報発信を強化・検討していただければ、なおよい取組になると考えます。自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れられた資金は、過去の自動車ユーザーにより積み立てられ、本来は平成13年の政府再保険廃止時に定められたとおり、自賠法に基づく自動車事故対策計画を実施するための運用益事業の原資として、自動車事故対策勘定の積立額が回復し、その運用益で安定的に運営を行えるようにすべきものです。運用益事業の安定的な運営のため、一般会計に繰り入れられている、約6,000億円を早期に特別会計へ繰り戻していただくよう、国交省から財務省へ働きかけをいただきたいと思っております。

 令和2年度も関係各位のご理解の下、3年連続での繰り戻しや繰り戻し額の増額が行われることとなり、感謝を申し上げます。制度の持続性を高めていくためにも、今年の取組も引き続き重要であると考えますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 国土交通省から何かございますか。

【江原参事官】

 今、お話しいただいた内容に関してでございますが、まさにそのとおりだと考えております。運用益事業の使い方については、本日、このような形でご報告をさせていただきましたし、また、毎年1回、自動車局長の私的懇談会ということでありますけれども、「あり方懇談会」というものをやっておりますので、そういった場でもいろいろなご意見をお聞きしながら精査をしていく。今お話にもありましたように、自動車ユーザーの方からお預かりしている貴重な財源を使わせていただくわけでございますので、そこはしっかりと効果のあるものを効率的に使う。こういった観点を採り入れていく必要があると考えております。また、繰り戻しについても引き続き財務省と協議をしてまいりたいと、しっかりとやりたいと思っております。

 また、一点、具体的なお話としては、後づけの安全装置でございますけれども、先ほどご紹介を申し上げました令和元年度の補正予算で措置された安全サポカーの補助制度の中で、65歳以上の方でございますけれども、支援ができることになっております。こういった取組が自動車事故の削減につながり、社会的な効用も発揮していく。それぞれの被害者を減らしていくことになると思いますので、周知というものをしっかりやっていくことは大事だと思っております。

 一点、付言させていただきますと、昨年、私ども国土交通大臣、赤羽大臣のところに遺族会の方々が要望に来ていただきました。その際に少しお話があったのは、サポカーの技術が進展していて、それはそれでよいことなのだけれど、あまり過信し過ぎると、要はサポカーであるから、安全装置がついているから安全なのであるということで油断すると、また事故の遠因になりかねないという話もありました。そういったさまざまなお話をお聞かせいただいておりますので、そういったこともいろいろな場で共有させていただきながら、ほんとうに必要な対策、ほんとうに効果があるようにどう取り組めばいいのかをしっかりと皆様とも共有させていただけるように、引き続きやらせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【藤田会長】

 どうもありがとうございました。
 そのほかご意見、ご質問はございますか。まだ若干時間がございますので、もしおありのようでしたら、ぜひこの際、お願いいたします。ございませんか。

 それでは、本日はさまざまなご意見をいただきましたが、これらのご意見は今後の運用益の使途を考える上で十分に参考とさせていただければと存じます。
 これで本日予定しておりました議事は全て終了いたしました。

 審議会全体につきまして何か特段のご意見があれば、この際承りたいと思いますが、いかがでしょうか。ご意見などございますか。
 ないようでしたら、最後に事務局より連絡事項がございますので、よろしくお願いいたします。

【横尾課長】

 先ほどの議論にありましたように、会長からもご指示いただきました損害保険料率算出機構において速やかに新たな基準料率の案を作成していただく必要が生じております。その作成いただいた暁には本審議会でこれをご説明いただき、新しい料率の水準についてご審議いただければと思います。そのための審議会といたしまして、来週22日、午前10時より、本日と同じこの会議室にて次回の自賠責審議会を開催させていただきたいと存じております。皆様におかれましては可能な限りご出席賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。

【藤田会長】

 それでは、これで本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

監督局保険課(内線:3375、3342)

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