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第150回自動車損害賠償責任保険審議会議事録
1.日時:令和7年1月10日(金曜)14時00分~15時20分
2.場所:中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室 ※オンライン併用
【藤田会長】
それでは、時間が参りましたので、ただいまより第150回自動車損害賠償責任保険審議会を開始いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御参集いただきまして、御礼申し上げます。
今年度はオンライン併用の対面会議とさせていただきます。会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただいております。
議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページで後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
まず、今回より本審議会に参加されることになりました委員について御紹介申し上げたいと思います。
全国共済農業協同組合連合会代表理事専務の角野委員でいらっしゃいます。
【角野委員】
JA共済連の角野でございます。よろしくお願いいたします。
【藤田会長】
次に、日本損害保険協会自賠責保険特別委員会委員長の細島委員でいらっしゃいます。
【細島委員】
損保協会の細島でございます。よろしくお願いいたします。
【藤田会長】
NPO法人高次脳機能障害友の会ナナ理事長、外﨑特別委員でいらっしゃいます。よろしくお願いします。
ここで、カメラ撮りの方は御退出いただきますようお願いいたします。
(プレス退室)
【藤田会長】
続きまして、事務局からは、金融庁尾﨑審議官及び下井保険課長が出席しております。
尾﨑審議官、よろしければ一言御挨拶をお願いいたします。
【尾﨑審議官】
金融庁の尾﨑でございます。本日はお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。
既に皆様には御案内のところでございますけれども、自賠責保険は、自動車ユーザー等に加入が義務づけられている公共性の高い保険でございます。したがいまして、自賠責保険の基準料率の水準や運用益の使途につきましては、透明性を確保した議論が必要であり、本審議会はその意味でも重要な位置づけにあると認識しております。
本年度の自賠審では、昨年6月の審議会において御議論いただきました自賠責保険における経費の計算方法等につきまして、損保協会より第三者委員会での議論を踏まえた検討結果を報告いただくこととなっております。
委員の皆様方におかれましては既に御承知のこととは存じますけれども、契約者が負担する自賠責保険料は、法令上、「能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内でできる限り低いものでなければならない」とされておりまして、これはいわゆる「ノーロス・ノープロフィット」原則でございますけれども、自賠責保険の経費に関しましても、この「能率的な経営の下における適正な原価」が前提となっております。
本日は、こうした観点からも、深度ある御議論をお願いしたいと考えております。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【藤田会長】
ありがとうございました。
さて、本日の議題としては、自賠責保険料率の検証結果、自賠責保険における経費の計算方法等の報告がございます。また、料率については、後ほど変更の要否について御決定いただくことになります。
それでは、自賠責保険料率の検証結果について、まず実際に料率検証の作業を行った損害保険料率算出機構の川口特別委員に概要を御説明いただき、その後、事務局から補足していただきたいと思います。
川口特別委員、よろしくお願いいたします。
【川口委員】
損害保険料率算出機構の川口でございます。よろしくお願いいたします。それでは、令和6年度の検証結果につきまして、お手元の資料1に基づいて御説明させていただきます。
目次は飛ばしまして、1ページの自賠責保険・共済収支表を御覧ください。ここでは、全事業者の収入純保険料、支払保険金、収支残、損害率につきまして、過年度の実績値及び2024年度と2025年度契約の見込み数字を記載しております。
まず表の左端、収入純保険料を御覧いただきますと、2024年度は4,343億円、2025年度は4,348億円を見込んでおります。
次に、支払保険金ですが、2024年度は5,712億円、2025年度は5,650億円を見込んでおります。
次に、当年度収支残ですが、これは収入純保険料と支払保険金との差額であり、2024年度、2025年度はいずれも支払保険金が収入純保険料を上回る見込みであり、2024年度が1,369億円の赤字、2025年度が1,302億円の赤字となることを見込んでおります。
その結果、損害率は2024年度が131.5%、2025年度が130.0%の見込みとなります。
当年度収支につきましては、当面赤字が続く見通しとなりますが、これは、後ほど御説明する滞留資金を支払原資として活用することで、収支均等になるように料率を設定している結果であります。
欄外囲みの注6に記載のとおり、2023年4月に料率を引き下げた際に想定しておりました予定損害率は133.5%でした。損害率はおおむね当時想定されていた水準に収まっております。
以上が純保険料率の検証結果です。
2ページを御覧ください。2ページは、警察庁の交通事故統計に基づく事故件数等をお示ししております。交通事故の動向を把握するための参考資料という位置づけです。
まず、発生件数を御覧いただきますと、2004年をピークに、それ以降の事故件数は減少傾向にあります。死者数、負傷者数も同様です。ただし、2023年は対前年で発生件数が増加に転じております。これは新型コロナ感染拡大の影響がなくなってきた結果によるものと考えております。例えば、ここ数年の負傷者数の推移を御覧いただきますと、2020年が20.0%のマイナスと2桁の減少となっておりますが、これは新型コロナ感染拡大に伴う外出自粛要請があったこと等の影響によるものと考えられます。一方、2021年以降はその影響が徐々に解消されておりまして、2023年に至り、コロナ前と近い状況に戻ってきたことにより、2.5%の増加に転じたものと考えられます。
なお、2024年の発生件数及び負傷者数は、車両への事故防止軽減装置の装着が進んできたことや、交通安全に資する各種政府施策等により減少したものと考えられます。
続いて、3ページを御覧ください。料率検証における主な予測要因である収入純保険料関連、支払保険金関連について御説明いたします。
まず(1)の収入純保険料関連ですが、保険契約の対象となる車両保有台数について、2024年度と2025年度における台数を過年度の動向に基づいて予測しております。2024年度、2025年度はほぼ横ばいで推移するものと見込んでおります。
次に(2)の支払保険金関連ですが、これは事故率と平均支払保険金の要素に分けて予測しております。
まず①の事故率でありますが、事故率とは、保険金・共済金の支払対象となる事故の発生頻度を指し、事故件数を分子、自賠責保険・共済を付保している台数を分母として計算しております。2024年度、2025年度につきましては、過年度の動向に基づき、先ほど御説明した交通事故発生状況を参考にして予測しております。
4ページで事故率の推移をグラフと表でお示ししておりますので、先に4ページを御覧いただきたいと思います。ここにお示ししておりますのは、死亡、後遺障害、傷害別の事故率の推移であります。グラフの実線が実績値となりますが、2019年度から2022年度までの期間は、新型コロナ感染拡大の影響を受けまして一時的な事故減少があったことから、予測に際してはこの期間の事故率を補正しております。その上で、将来につきましては、事故防止軽減装置の普及等の効果により、コロナ前と同様の基調で減少傾向が続くものと予測しております。
恐縮でございますが、3ページにまた戻っていただきまして、(2)②の平均支払保険金について御説明いたします。平均支払保険金に影響を与える主な要因に、賃金、治療費、支払基準改定があります。このうち賃金は、被害者が亡くなられた場合等の逸失利益の算定や、入院・通院中の休業損害の算定において使用する基礎数字となっております。昨今、政府が賃金引上げを推進する方針を示し、企業側もこれに応えて賃上げを行う動きが進んでおりますことから、2024年度、2025年度も一定の賃金上昇があるものと想定しております。具体的な数値といたしましては、昨年7月に内閣府が公表しております中長期の経済財政に関する試算値で示されております賃金上昇率を見込んでおります。2026年度以降につきましては、現時点で利用可能な予測値がないため、据置きとしております。
次に、治療費上昇率につきましては、1日当たりの平均的治療費の過去実績の推移に基づいて予測しております。近年、入院・通院の日数が短くなる傾向にありまして、2024年度以降も僅かながら減少傾向が続くものと見込んでおります。
次に、支払基準改定による上昇率でございますが、支払基準は、自賠責保険・共済から支払われる治療費、休業損害、慰謝料の算定方法等について政府が定めている規程であります。その規程が定める逸失利益の算定方法におきましては、損害額の現在価値を算出する式の中で法定利率を使用することとされており、法定利率は法律上3年ごとに見直しがなされることになっておりますので、そのタイミングで支払基準も改定されて、支払保険金に影響が出ることを想定しております。2024年度と2025年度は、支払基準改定は予定されておりませんので、影響なしと見込んでおりますが、2026年度及び2029年度にそれぞれ改定が行われた場合については、堅めに前回の支払基準改定時と同程度の影響を見込んでおります。
続いて5ページを御覧ください。5ページは、支払件数と平均支払保険金につきまして、契約年度別の推移をお示ししております。契約年度別と申しますのは、当該年度に保険責任が開始した自賠責保険契約・共済におきまして、支払対象となる事故を集計したものであります。したがって、例えば2019年度あるいは2020年度に発生した事故でありましても、2018年度契約に基づいて支払われた案件につきましては、2018契約年度の数値として集計しております。この前提で御覧いただきますと、支払件数は、新型コロナ感染拡大の影響によりまして2020年度中に発生した事故が一時的に大きく減少したことを受けまして、2018年度及び2019年度の契約を中心に大きく減少しております。
続いて6ページを御覧ください。支払保険金総額につきまして契約年度別の推移をお示ししております。死亡、後遺障害、傷害の合計金額は右の網かけをした列のとおりでありまして、2024年度は5,712億円、2025年度は5,650億円を見込んでおります。
続いて7ページを御覧ください。御参考までに、重度後遺障害につきまして、障害等級別の支払件数の推移をお示ししております。重度後遺障害とは、労働能力の喪失率が100%となる後遺障害を指しております。具体的には、後遺障害等級表の別表第一に規定する介護を要する後遺障害と、別表第二の1級から3級までに該当する後遺障害の件数を集計しております。近年は件数が減少してきております。
続いて8ページを御覧ください。8ページは、運用益の発生と積立状況であります。自賠責保険・共済につきましては、事業者が保険料を収入したときから、事故が発生し、実際に保険金をお支払いしたときまでの間にタイムラグが存在しております。この間、事業者はこの資金を運用することで収益が発生することになります。自賠責保険・共済におきましては「ノーロス・ノープロフィット」の原則が採用されておりますので、事業者はこの運用益を運用益積立金として積み立てることによりまして、運用益が事業者の利益に帰属しない仕組みが取られております。運用益の積立金残高は、右端のK欄に記載のとおり、2023年度末で3,637億円となっております。
続いて9ページを御覧ください。表は滞留資金の推移を示しております。滞留資金とは、収入純保険料から支払保険金を差し引いた収支残の累計金額に運用益積立金残高を加えた金額を指します。
毎年、A欄の収入純保険料からB欄の支払保険金を差し引いた当年度収支残が発生いたしますが、これはC欄に記載のとおり、赤字の年度もあれば黒字の年度もあるというように変動しております。
累計収支残は、過去からの収支残の累計に当年度分を加えた金額ですが、個々の事業所ごとに、一般会計と区分して管理されております。累計収支残が赤字になった場合には、過去に積み立ててきた運用益積立金を取り崩して赤字補填を行う仕組みとなっており、こうすることで制度の安定が図られております。
F欄の累計収支残の赤字補填後の数字にG欄の運用益積立金残高を合算したものが、H欄の滞留資金となります。表の一番下、2023年度につきましては残高が6,585億円となっておりますが、滞留資金は保険収支の均衡を図るために使用しておりまして、料率算定の中に織り込むことで、これまでの料率引下げに反映されております。
具体的に御説明いたしますと、2022年度末の滞留資金7,594億円のうち7,239億円を2023年4月の引下げ改定において活用済みであります。事故と保険金支払いは、契約引受年度から数年間にわたって発生し続けますので、2023年度以降、当年度収支残は赤字が続き、これによって滞留資金も年々減少していく予定であります。実際に2023年度末の滞留資金は、2022年度末の残高よりも約1,000億円減少しております。
続いて10ページは表の注記になりますので飛ばしていただきまして、次の11ページを御覧ください。自賠責保険社費・共済経費の収支表は、自賠責保険・共済の運営に要した全事業者の社費・経費の収支の推移を示したものであります。2023年度は支出社費が増加しておりますが、これは、システム関係費用の増加のほか、人件費や物価が上昇したこと等の影響によるものと考えられます。2023年度は、単年度では149億円の赤字となっており、過去の赤字と合わせ、累計収支残は239億円の赤字となっております。
続いて12ページを御覧ください。12ページは、これまで御説明した内容のまとめです。
まず(1)の純保険料率水準の検証結果でありますが、2025年度契約は、収支残1,302億円の赤字、損害率が130.0%と見込まれます。2023年4月改定時に見込んでおりました予定損害率は133.5%でありましたので、これと比較いたしますと2.6%ほど収支が改善される結果となっております。
次に、滞留資金ですが、2023年度末時点で6,585億円となっておりますが、先ほど御説明のとおり、2022年度末の滞留資金7,594億円のうち7,239億円を2023年4月改定で純保険料率の引下げに織り込み済みであります。今後、滞留資金の残高は年々減少していく予定であります。
(2)の社費水準は、2023年度における収支残が149億円の赤字となっております。
以上が本年度の検証結果の御説明です。
続いて13ページを御覧ください。13ページは、これまで御説明してきた純保険料率水準の検証の流れの全体像をまとめたものです。説明は省略させていただきます。
続いて14ページは、2023年度における収入保険料と支出の構成割合を円グラフで表示したものでありまして、御参考としてお示ししております。
リトン・ベイシスというのは、契約年度ではなく、会計年度単位での収入・支出という意味でありまして、保険金につきましては、当該年度中に支払われた金額を集計しておりますので、過去に発生した事故の支払いも含まれております。
なお、社費における営業費といいますのは、主に保険・共済契約の計上あるいは管理等に関する情報システムや、事務経費等の費用を指しております。
私からの御説明は以上でございます。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、事務局から補足説明をお願いいたします。
【下井課長】
それでは、ただいまの資料1の12ページに沿いまして、事務局から補足説明をさせていただきます。
川口委員からも御説明がありましたとおり、今年度の検証結果としましては、支払保険金を収入純保険料で割った値であります損害率が令和7年(2025年)度に130.0%になる見込みとなってございます。令和5年(2023年)4月の前回基準料率改定時に見込んでおりました予定損害率が、改定時の滞留資金を5年間で活用することを前提とした133.5%でございましたので、その見込みとの比較で申し上げますと、乖離率は約2.6%程度となる見込みとなっております。当審議会で継続的に料率検証を行うようになりました昭和59年度以降に料率改定を行った年度における予定損害率と検証結果の乖離率の平均は10.7%でございます。これに照らしますと、今般の検証結果は、料率改定を行った年度の乖離率に比べて比較的小幅であると認められるところでございます。
乖離率が比較的小幅であることに加えまして、中長期的な料率の安定性や改定に要するコストなども踏まえ、令和7年4月以降の基準料率改定の必要性につき、委員の皆様に御議論をお願いしたいと考えてございます。
事務局からは以上でございます。
【藤田会長】
ありがとうございました。
それでは、ただいまの料率検証結果の報告と事務局からの補足説明に関しまして、御質問、御意見はございますでしょうか。
麦倉委員、お願いいたします。
【麦倉委員】
関東学院大学の麦倉です。御説明ありがとうございました。1点、私からは、拠出金に関しまして質問がございます。
8ページの注5に、「拠出金は、運用益事業(被害者救済対策、救急医療体制の整備等)の財源として拠出された実績額である」という記載がございます。当期取崩額の推移を拝見いたしますと、2014年に35億円であるのに対して、2023年は27億円と減少しているわけです。こちらは、単年度の事故が何件起こったかということで被害者支援の金額を計算されるのは適切ではなく、後遺障害を負った方たちにはその後も継続的な支援が必要となるわけです。この当期取崩額であるところの拠出金がどのように計算をされているのか、またこの保険料率の計算が被害者救済の予算に及ぼす間接的な影響というのはどのように評価されているのかというところをお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【藤田会長】
それでは、川口委員から回答をお願いいたします。
【川口委員】
御質問ありがとうございます。
資料の8ページの拠出金を御覧いただきますと、今お話しのとおり、金額としては減少しているというのは事実でございます。
私どもは、この自賠責保険の料率を算出するに当たりまして、この金額につきましては各事業者から報告を受けたものを集計しておりまして、実際に拠出金の支出につきまして幾らにするかという論議につきましては、別途行われているものと承知しております。
【藤田会長】
麦倉委員、ただいまの返答につきまして、追加して何か確認したいことはございますでしょうか。
【麦倉委員】
減少額が、被害者救済の予算というところにマイナスの影響が出ないように、検証を明らかにしていただけたらと思います。
以上です。
【藤田会長】
御意見ありがとうございました。
そのほか、御意見、御質問はございますでしょうか。
細川委員、お願いいたします。
【細川(秀)委員】
よろしいでしょうか。日本医師会の常任理事、細川でございます。発言の機会を与えていただきまして感謝するところでございます。
この報告事項の前に、少し日本医師会のほうの話をさせていただきたいと思います。昨年に引き続きまして、提示しておりました5つの問題点について、要望を発言させていただきたいと思います。
まず1つ目でございますが、物件事故における自賠責の支払いの検証について、2番目として、自賠責保険における柔道整復の施術費の適正化について、3つ目に関しては、支払限度額の120万円の検証について、あと4つ目として、社会保険利用についてでございます。この4つにつきましては、引き続き検証をお願いしたいと日本医師会としては考えております。
今回、特に5つ目としてはでございますけれども、自賠責診療報酬基準案、いわゆる新基準の制度化につきまして、推進に向けた動きがありましたので、御報告させていただきます。
新基準につきましては、昭和59年の当審議会の答申にありますとおり、全国的に浸透し、定着した段階で制度化を図ることを最終的な目的としているところでございます。しかしながら、全ての都道府県で新基準実施から約8年経過しておりますが、全国の浸透状況である移行率に関しては6割程度にとどまっており、普及に努めていく必要があります。
以上のような背景を踏まえて、昨年10月11日に新基準の制度化に向けて、日本医師会、日本損害保険協会、損害保険料率機構と共同の下に、都道府県医師会自賠責保険担当理事連絡協議会を開催いたしました。協議会では、新基準の再周知と実態調査への協力依頼などを主な議事として協議をいたしました。
実態調査に関しては、2023年度に自賠責に自由診療として請求の実績があった医療機関2万1,712件宛てに昨年10月にアンケート調査票をダイレクトメールにて送付し、取りまとめられているところでございます。実態調査で明らかになりましたのは、新基準の存在自体を知らない医療機関があること、新基準については診療現場でのトラブル回避機能があることなどのメリットが十分に御理解いただけていないことが分かりました。また、交通事故診療は事務的な負担が大きいため、レセプトコンピューターの標準的な導入など、周辺環境の整備が普及には必要であるということが分かってまいりました。
今後、さらに3者で課題を整理し、普及に向けて促進策を検討していきたいと考えております。将来的には制度化への具体的な検討を求めていきたいと思いますので、金融庁、国土交通省におかれましては、引き続き御理解、御協力を賜りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
日本医師会としての要望は以上でございます。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。最初の4点、すなわち物件事故に関する自賠責の支払いの検証、自賠責保険における柔道整復施術費の適正化、支払限度額120万円の検証、社会保険利用については、従来も同じ意見を表明されており、これについても引き続き検証をしてほしいという旨の要望を承りました。
また今回新たに、自賠責診療報酬基準案の普及に向けた実態調査の結果を御報告いただきました。新しい御報告ですので、この点に関しましては、金融庁及び国土交通省からもし何かありましたら御発言をお願いしたいと思います。
【下井課長】
金融庁でございます。新基準の制度化に向けた動きにつきましての御報告をいただきまして、ありがとうございます。
自賠責保険は、交通事故被害者の保護を目的とする制度でございますので、金融庁としましては、その制度化によって交通事故被害者が不利益を受けない枠組みとなるという形で引き続き検討を進めていただきたいと考えてございます。
【藤田会長】
国土交通省からはございますか。
【忍海邊保障制度参事】
国交省でございます。まず、御報告いただきありがとうございました。
国土交通省といたしましても、被害者保護の観点から、被害者に不利益を生じさせないということが非常に重要であると認識しております。引き続き、今後の御活動につきまして、情報を共有いただきながら、金融庁とも連携して対応してまいりたいと考えてございます。
【藤田会長】
細川委員、よろしいでしょうか。
【細川(秀)委員】
どうもありがとうございました。引き続き、3者で課題を整理しながら前に進んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。
それでは次に、オンラインで参加しておられます慶島委員、お願いいたします。
【慶島委員】
ありがとうございます。1点、質問ですが、この8ページの当期繰入額の計算の仕方ですが、長期予定利息が何でマイナスになるのかということで、私の考えているCプラスDマイナスEというのは、私のこの長期予定利息の理解不足だと思うのですが、なぜこれはCからDをマイナスしなければいけないのか。長期予定利息ですので、これはプラスになるのではないかと、この注意書きを見ていてもなかなか理解できないので、その辺りを少し御説明いただければと思います。
以上です。
【藤田会長】
この点は川口特別委員から、お願いいたします。
【川口委員】
御質問ありがとうございます。資料の8ページの当期繰入額にあります長期予定利息のところでございますが、実際のこの運用の金額、積立金残高を計算する式といたしましては、ここにありますように、CからDとEを差し引いた残額を繰入れしているということが事実としてございます。
なぜ長期予定利息を考慮するのかということでございますけれども、自賠責保険あるいは共済の契約というのは、1年契約以外に、最長5年まで契約がございます。この1年を超える5年契約等につきまして、どのように年度に配分するのかというテクニカルな話になってしまいますけれども、1年を超える部分に関しましては、発生する運用益分を保険料から控除しているため、その趣旨から減算しております。
【藤田会長】
慶島委員、ただいまの御説明でよろしいでしょうか。
【慶島委員】
了解しました。ありがとうございました。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。
そのほか、どの点でも、御意見、御質問はございますでしょうか。
そのほか、特に御意見はございませんでしょうか。
それでは、一通り御意見をお伺いしたということになるかと思いますが、この場で決めなければいけないこととして、料率を維持するかということがございます。明示的には、ただいまの御発言で御意見をいただいてはおりませんが、事務局からの御説明がありましたとおり、収支は当初の想定より若干よくなっているのですが、予定損害率と現状の損害率との乖離は比較的小幅にとどまっているということ、滞留資金の残高や制度の安定的な運営の側面等を鑑みると、今回直ちに料率改定が必要な状況にはないという御説明がありましたけれども、それを前提とした場合、今回は基準料率を改定せずに据え置くということにさせていただくことでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤田会長】
オンラインの方も、もし何か御異議があれば、チャットでコメントしていただければと思います。
特に異議の書き込みはないようですので、御了承いただいたものと扱わせていただきます。
それでは続きまして、自賠責保険における経費の計算方法等について御報告いただきます。
昨年6月に開催した審議会では、日本損害保険協会において、客観性・透明性を十分に確保した第三者委員会を設置の上、経費計算基準等について、経費計算基準の計算式が実態に即しているかという観点も含めて、業務実態に合っているか検証した上で、必要に応じて見直しを行うこと及び将来的に経費計算基準等を見直す場合の手続も導入すること、これらについて検討を行い、今回の審議会でその検討結果を日本損害保険協会から御報告いただくということを決定いたしております。
そこで、それを受けまして、今回、日本損害保険協会の細島委員から検討結果の御報告をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【細島委員】
損保協会の細島でございます。お手元の資料2、自賠責保険経費計算基準等見直しに関する報告に基づき御報告をいたします。
資料1ページを御覧ください。こちらは、昨年6月の本審議会における論議内容を記載しております。審議会事務局並びに損保協会より、自賠責保険の経費計算基準の検証と、必要に応じた見直し及び将来的に基準等を見直す場合の手続の導入を提案し、御了承いただきました。その後、損保協会において、客観性・透明性を確保した第三者委員会を立ち上げて検討を進めてきており、その検討結果について御報告させていただきます。
資料2ページを御覧ください。第三者委員会は、左下に記載のとおり、学識者や弁護士、会計専門家、消費者代表の5名の方に委員として御就任いただきました。委員会では、主な論議内容に記載のとおり、約半年間、全5回にわたって開催し、客観性・透明性の確保といった本委員会の設置趣旨や、経費計算基準の目的、保険会社や代理店における自賠責保険の業務フローを御確認いただき、その上で現行の経費計算基準や業務実態調査方法に関する網羅的な検証、課題の洗い出しを行い、第4回、第5回の委員会では、業務実態調査の集計結果やその主な増減理由、本見直しに伴う影響額の概算値、将来の基準等を見直すための手続について御議論をいただきました。これら計5回にわたる委員会での論議において、自賠責保険における経費・代理店手数料の算出方法、その算出の基礎数値の見直し案について、また将来基準等を見直すための手続案についての妥当性・適切性を御確認いただいたという経緯にございます。
続いて、資料3ページを御覧ください。今回の見直し内容について御説明いたします。今回の業務実態調査方法の概要を記載しております。現行の経費計算基準では、自賠責保険の業務に要する経費を積み上げ方式で算出しており、例えば現業部門の社員給与は、契約引受けや保険金支払い1件当たり処理分数に社員給与単価と取扱件数を乗じて計算しますが、処理分数は全社共通の基準値を用いています。この全社共通の基準値を今日的に見直すために、今般、業務実態調査を実施しておりますが、今日的な環境や業務内容の変化、客観性・透明性の観点から調査方法を見直しております。
具体的には、主な見直し内容欄を御覧ください。調査票については、デジタル化や外部委託の進展、法改正やコンプライアンスに関する取組等の業務変化を踏まえて、調査項目を見直しております。
実際の調査測定に当たっては、社会的責任のある調査であることを保険会社や代理店に対して徹底を図り、さらに保険会社の調査の一部に中立機関である損保料率算出機構に同行いただき、調査内容を精査することで透明性を確保しております。
また、各保険会社における調査結果の集計においては、外れ値等の判定に関して、集計者の恣意性が入らないよう、客観的な統計的ルールを決め、そのルールについて第三者委員会でも御確認いただくことなどによって客観性・透明性を確保しております。
資料4ページを御覧ください。次に、基準値以外の計算方法の見直しに関して御説明をいたします。
1つ目は、1件当たり処理分数の細分化でございます。現行基準では、それぞれ処理分数の異なる新契約と異動・解約の加重平均値を使用していたため、将来これらの件数ウエイトが変化する場合に備えて、細分化することを検討しましたが、論議結果欄に記載のとおり、費用対効果が小さいことや、後ほど御説明するとおり、将来基準等を見直すための手続を今回導入することで、少なくとも5年に1回は実態が反映されることから、細分化を行わないこととしました。
2つ目は、1人1分当たり給与額の計算方法についてです。現業部門の課長等の役職者も平均給与に含めておりましたが、サンプル調査の結果、役職者の実務関与時間が少ないことが判明したため、役職者を現業部門の平均給与算出には含めず、部長などと同じように、管理者の計算方法に含めることを検討しました。この見直し案に基づき、今回の実態調査結果も踏まえ、影響額を算出したところ、結果的に経費が増加する方向でした。サンプル調査に基づく見直しとしては、その影響額が大き過ぎることを踏まえ、今回は見直さないことといたしました。
3つ目は、外部委託費用についてです。現行基準では、外部委託費用を物件費として計上していますが、外部委託が将来的に進展してくると、物件費で計上する外部委託費用と1件当たり処理分数により計算する保険会社社員の人件費との重複が生じうるため、今回、物件費には計上しないように見直します。
4つ目は、保険種目共通の物件費等の賦課方法です。今日的な環境変化や実態に即す観点から、ソフトウェアの減価償却費について、種目固有経費は実額で把握し、種目共通経費は件数割合で配賦するように見直します。
資料5ページを御覧ください。今回の経費計算基準等の見直し結果でございます。自賠責保険に関する保険会社経費の約2,000億円のうち、今回の見直しで約120億円の減少となります。上段の米印に記載しておりますが、あくまでも2023年度決算に基づく概算値であり、自賠責保険料の基準料率改定時は、改定時点での支出社費の状況や物価動向も考慮して付加保険料を算出いたしますので、今回概算値が直接的に自賠責保険料改定の基礎数値となるわけではないことに御留意いただければ思います。
項目ごとに御説明いたしますので、表を御覧ください。まず人件費ですが、契約引受部門では、e-JIBAIのさらなる普及や、コロナ禍を境に非対面での代理店指導等のデジタル化が進展したことにより、1件当たり処理分数が前回の18.3分から14.0分と減少し、影響額としては280億円の減少となりました。
損害調査部門では、個情法改正による個人情報の取扱い厳格化等によって業務が増加した一方、基幹システムの刷新やデジタルツールによる効率化もあり、損害調査全体では若干の減少となりました。
部門共通の項目では、産休・育休や時短勤務の進展といった多様な働き方の普及により年間実働時間が減少したことで、1人1分当たり給与単価が増加し、結果として92億円の増加となりました。
次に物件費関連ですが、外部委託費用やソフトウェアの減価償却費は、計算方法を今日的に見直したことにより、それぞれ16億円、78億円の減少となりました。また、件数割換算係数は、種目共通経費を件数割合で配賦する際に、自賠責保険では相対的に営業活動等が少ないことを考慮して、自賠責保険の件数を圧縮して把握する係数です。現行の10分の1が昭和52年に定められたものであったことから、今回、実態調査を行った結果、約150億円の増加となりました。これらの結果、約120億円の減少となっております。
資料6ページを御覧ください。代理店手数料算出の基礎数値の見直し結果です。これらについても、今回、業務実態調査を行っております。まず、契約1件当たりの所要分数は21.0分と前回対比7.3分の減少となっております。これは、e-JIBAIシステムのさらなる普及や非対面での対応増加による効率化が主因でございます。
次に、契約1件当たりの所要経費ですが、自動車費や自動車関連費、事務所賃借料の増加を主因として増加しております。
なお、下段の*1に記載しておりますが、基準料率改定時に織り込む代理店手数料は、これらの業務実態調査の集計結果に加えて、料率改定時における直近の公的賃金統計や物価統計等を用いて算出することとなります。
資料7ページを御覧ください。将来、基準等を見直すための手続についてです。ここでは、将来の見直しプロセスを示しております。まず最初に、毎年、後ほど御説明する定量基準等に合致するか、損保協会で検証します。その際、合致した定量基準やその時点の環境変化に基づいて見直し範囲も検討します。その結果を1月の自賠責保険審議会に報告、論議の上、見直し要否を決定します。見直しが必要となった場合、具体的な見直し内容検討や業務実態調査を経て、翌年の自賠責保険審議会に報告することを想定しています。
続きまして、具体的な見直し基準について説明いたします。資料8ページを御覧ください。将来の見直し基準として、定量基準と定期基準の2つを設けます。
まず、定量基準についてですが、将来変化が想定されるもの、計測可能であるもの、自賠責経費に対する感応度が一定程度あると想定されるものの3つを項目選定の要件とし、この要件に基づいて、中段のとおり、キャッシュレス普及率と異動・解約非対面手続率を採用しております。いずれも24年11月以降順次導入されたもので、将来においては、普及による経費への影響が表内の右側のとおり見込まれるものでございます。定量基準として、いずれも40%を見直し是非を検討する目安として設定したいと考えております。また、今回設定した定量基準だけでなく、実務に大きく影響を与える事項があれば、それによる見直しの是非も検討することとします。
次に、定期基準についてです。定量基準に合致しない場合も、5年に1回は見直しを行うこととします。
資料9ページを御覧ください。今回の見直し案は、現時点での実効性・透明性・客観性を踏まえた最善の案として検討した結果ですが、今回の検討を経て、さらなる精緻化等の余地や課題も見えてきましたので、次回以降の見直し時の検討の観点としてまとめております。表に記載した項目につきましては、それぞれ次回見直し時までにさらなる検討・準備を進めてまいりたいと考えております。
最後に、資料10ページを御覧ください。今後のスケジュールについてです。保険会社経費につきましては、今回の見直し結果を反映した新経費計算基準を2024年度末決算から適用します。自賠責保険の料率改定につきましては、今回の見直しを反映した経費等を基にした収入社費の過不足のほかに、純保険料率の過不足等について、損保料率算出機構において検証し、検証結果を2026年1月の自賠責保険審議会に報告する予定です。仮に自賠責保険の料率改定を実施することとなった場合には、2026年4月から新料率・新代理店手数料率を適用する予定でございます。
なお、代理店手数料につきましては、今回見直しました基礎数値が次回料率改定時に使用されます。
御報告は以上でございます。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。それでは、ただいまの日本損害保険協会の説明に関しまして御質問、御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。
細川昭子委員、お願いします。
【細川(昭)委員】
弁護士の細川でございます。詳細に御説明いただきましてありがとうございました。また、ウェブサイトでこの第三者委員会の審議の内容について、各回の議事録を詳細に公表いただきましてありがとうございました。そういった議事録を拝見いたしまして、本日の御説明と併せて、客観性と透明性を確保することを大切にしつつ、限られた時間の中で詳細に御検討いただいた様子をよく理解できまして、私としましては、本日のこの現時点での見直し案について異存はございません。
また、将来見直すための手続についても賛同させていただきたいと思いますが、この資料8ページにある定量基準のところ、先ほどの御説明にもございましたが、今回選定したこの2項目にかかわらず、いろいろな大きく影響を与える事項があれば、見直しの是非を議論し、判断するというところが非常に大切と考えております。ですので、この点は、毎年こういった項目がないかというところをこの定量基準の2項目にかかわらず検討いただきたいと思います。
その上で1点御質問がございます。9ページに記載いただいています次回以降の見直しの検討観点ということで5項目挙げていただきまして、また資料の後ろのほうの参考資料の5ページから6ページにかけても、各項目についてより詳細に記載いただいていますが、これらの5項目のうち、特に重要と思われて、早期にこの辺りを検討して見直しにつなげる必要があると考えていらっしゃる項目について教えていただきたく、よろしくお願いいたします。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。定量基準についての御要望と、次回見直しの5項目のうちの特に重要と思われるものについて、それが何かということ、その内容についての御質問がありましたが、細島委員から、ご回答のほどよろしくお願いいたします。
【細島委員】
細島でございます。御意見をいただきましてありがとうございます。定量基準、今後の見直しにつきましては、おっしゃるとおり、どのような指標がよいのかというのを、引き続き、継続的に検討してまいりたいと考えております。
今後の見直しのポイントということでございますが、今回の見直し案は、現時点での実効性を踏まえて作成しておりまして、さらなる高度化の余地は残すものの、今日的な実態を反映したものと考えております。検討観点はいずれも重要と考えておりますが、特に5点目の「経費計算方法」に記載の点は、より経費実態を反映できる可能性があるという観点で重要性が高いものと考えております。御意見をいただきましてありがとうございます。
以上でございます。
【藤田会長】
よろしいでしょうか。
【細川(昭)委員】
ありがとうございます。私のほうも、議事録を拝見いたしましたところ、今御指摘のこの経費計算方法につきましては、「ノーロス・ノープロフィット」の観点からも、その適正な原価を把握するために、早期に精緻な計算方法について望む、そういう御意見も多かったものですから、この部分は可能な限り早期に実現に向けてお取り組みいただきたいと思います。その結果、もし影響が大きいということが判明した場合は、先ほど申し上げましたこの定量基準の項目にかかわらず、見直しの御検討をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
【藤田会長】
御要望いただいた形になりますが、日本損害保険協会として、よろしいでしょうか。
【細島委員】
承知しました。提示した検討観点につきましては、次回見直しを待たずに、本審議会後から損保協会内での検討に着手する予定でございます。現時点では、実効性の観点から難しいとした点について、どのような方法やデータを用いれば可能となるかのフィージビリティーの検討を進め、次回見直し時に反映できるよう準備を進めてまいりたいと存じます。
以上でございます。
【藤田会長】
ありがとうございました。
では、続きまして寺田委員、お願いいたします。
【寺田委員】
福島学院大学の寺田です。質問させていただきます。公共料金一般に比べると、「ノーロス・ノープロフィット」とはいえ、少し方針が曖昧ということは感じておりましたので、見直しのやり方を明らかにして決めていただいたことは評価したいと思います。
その上で、少し違和感のある部分が1か所あります。5ページの下のほうの物件費関連の一番下に、契約引受けで件数割換算係数というものがあります。それで、公共料金等、一般に規制部門と非規制部門の間に共通費があるときというのは、慎重にというのですかね、割り掛けは慎重に行うということが基本だと思います。今回、「10分の1」から「10分の2」に変えられているということは、自賠責以外の任意保険とか、それ以外の保険の共通費の割り掛け分を自賠責のほうに移し替えたという形だと思います。しかし、その他の保険のほうで特に規制とか何か資金を吐き出す仕組みがありませんので、結果的には、規制部門のほうに経費を乗せたといいますか、そちらで保険料を上げるか、あるいは引下げが遅れるかということになってしまうと思います。そのように考えると、「10分の2」という数字の根拠について、もう少し具体的な数字を示していただく必要があるのかなと思います。また、実際これは151億円分影響されるということで、影響額が非常に大きいです。査定全体を左右してしまいますので、その意味でももう少し詳細な説明があってしかるべきかと思いました。
以上です。
【藤田会長】
それでは、日本損害保険協会のほうから、ただいま御質問のあった点につきまして回答をお願いいたします。
【細島委員】
細島でございます。御指摘、御質問いただき、ありがとうございます。少し丁寧に御説明をさせていただきたいと思います。
このページにあります件数割換算係数とは、保険種目共通の物件費を契約件数割合で配賦する際に、自賠責保険におきましては、営業推進営業活動が少ないことなどを考慮しまして、自賠責保険の経費を単純な件数割で配賦するよりも、小さく認識する、圧縮して認識するために用いている係数でございます。昭和52年に「10分の1」と定められて以来見直しが行われていないことから、今回、実態調査をしたということでございます。
本係数を適用する費目は、交通費とか通信費、印刷費、雑費等でございまして、このうち雑費が金額的に最も大きいということでございますが、雑費には、事務委託、調査委託、不動産外注等、多くの支出内容が含まれており、統一的な調査は困難ということのため、交通費・通信費を代表的な費目として、1日当たりの交通・通信利用時間のうち、自賠責保険目的の時間を調査いたしました。自賠責保険に係る交通・通信利用としましては、ステッカー・証明書つづり交付・回収、書損回収のための代理店訪問や自賠責保険に係る照会対応、代理店指導のための電話などがあり、「10分の2」という結果は、実務と整合的な結果であることを確認しております。
今回の見直し結果は、現時点で取り得る最善の方策を用いたものと評価しておりますが、雑費に関しましては、その支出内容に応じた調査方法を検討しまして、次回見直し時により精緻な計算方法が採用できるよう第三者委員会でも論議されたところでございまして、引き続き検討を進めていきたいと考えております。
以上でございます。
【藤田会長】
寺田委員、よろしいでしょうか。
【寺田委員】
ありがとうございます。いわゆる個別費用比例方式で共通費を配賦したということなのだと思います。それ自体はよいと思いますし、かつ、個別費用といってもつかまえられないものはしようがないのですが、その場合でも、通信費と交通費に限ってやってみたら幾ら幾らだったという情報までは欲しいかなとは思います。
以上です。
【藤田会長】
日本損害保険協会様、今の数字につきましては、今すぐでなくても結構なのですが、入手可能なものでしょうか。
【細島委員】
お答えします。今回、具体的にコメントをさせていただきますと、調査課支社の社員を対象に最大5名程度選定しまして、1人当たりの交通・通信利用時間を調査したところ、交通利用は1日平均76分のうち自賠責保険目的のものは6分、通信利用は1日平均119分のうち自賠責保険目的のものは7分という結果でございまして、それがこの「10分の2」という数値の根拠となっております。
以上でございます。
【藤田会長】
よろしいですか。
【寺田委員】
「10分の2」が導かれていないように思いますが、そういう形で具体的に示していただくことが好ましいと思います。
以上です。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。
そのほか。では、金子委員、お願いします。
【金子委員】
自動車総連の金子です。ただいま説明いただいた経費計算基準等の見直しについては、詳細の部分まで見えるようにしていただいたということもありますので、特に異論があるわけではありません。むしろ、前回も発言しまして、今も議論になりましたけれども、将来的な見直しについて、定量基準、また定期基準を示していただいているということには感謝申し上げたいと思います。それと、デジタル環境の進展などによって、業務効率化とか経費低減といったものの対応も進めていただいているという御説明もいただきました。この点も感謝申し上げたいと思います。
その上で少し意見と要望を申し上げたいと思うのですけれども、これは労働組合だからというわけではないのですけれども、今後、物価上昇だとか、また労務費の上昇といったものも継続的に想定されるところでもありますので、そういった面は、今回の費用減とは逆の要因になるかもしれませんけれども、しっかり織り込むということをお願いしたいと思います。
また、こういったことを積み上げた結果、ユーザー側の視点に立ったときに、この保険料の算出をしてみたら驚くほど大きく上がったといったことが短期的にはないということもくれぐれもお願いしたいと思います。
加えて、効率化の観点で、もう少しだけ発言させていただきますと、これはこれまでも申し上げてきたところもあるのですけれども、保険証書のペーパーレス化についてなんです。これは、昨年の11月からスタートして、現場では非常に評価されているものだと認識しておりますけれども、まだ残念ながら、これは紙とペーパーレスの併用ということもありますし、まだ導入して間もないということもあるのかもしれませんので、まだまだ現場ではこの効率化といったところには至っていないと承知しております。また、このペーパーレス化をしていくことがさらに進んでいくと、例えば充電切れとか、スマホを忘れたとか、その証書を確認するすべをどうするのだとか、また新たな課題も出てくると思いますので、そういったことに対する確認をする側もしくはされる側、双方からの懸念についての対応もまた引き続き検討いただきたいと思っています。整備業者や保険会社、また警察や救急等々、そういった関係者とすぐ確認できるデータの一元管理の仕組みの構築、こういったこともぜひお願いしたいと思います。いずれにしても、業務効率化とか利便性向上には非常に寄与するものだと思いますので、ここでゴールとすることなく、完全ペーパーレス化に向けて、引き続きぜひ各方面と連携を取って、検討をお願いしたいと思います。
さらについでに言えば、それを実現していくために、警察の持つカメラ映像の共有とか、医療機関等とのネットワークの構築とか、このデジタル化をすることによってさらに可能な仕組みということもあり得る。これがさらなる利便性の向上、効率化にもつながると思いますので、そういった視点も踏まえながら、引き続きの検討をお願いしたいと思います。
以上です。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。
2点の御意見が、1点目はむしろ損害保険会社の業務についての改善の効率化の御要望かもしれませんけれども、ございましたので、もし日本損害保険協会のほうで何かレスポンスがありましたらお願いいたします。
【細島委員】
損保協会の細島でございます。御指摘いただきましたとおり、今後の物価動向等も踏まえてしっかり織り込んでいくということと併せて、お客様の利便性の向上、効率化、ここをしっかりやっていきたいと考えております。
御指摘いただきましたこの完全ペーパーレス、デジタル化ということに関しまして、損保協会といたしましても、将来的には証明書の完全ペーパーレス化を目指しておりますが、ペーパーレス化に当たりましては、自賠法の改正を含めた法的な整理や、業界データベースの安定稼働の確認、警察や運輸支局、車検事業者等における事務フローの整理等が必要となってきます。このため、引き続き関係者としっかり連携いたしまして、効率化、利便性の向上に資する取組を進めていきたいと考えております。
以上でございます。
【藤田会長】
よろしいでしょうか。
【金子委員】
はい。
【藤田会長】
それでは、唯根委員、お願いします。
【唯根委員】
ありがとうございます。唯根です。私は、第三者委員会の委員も務めさせていただきまして、今日のこの公表までの経過なのですけれども、先ほどの細かい「10分の2」を採用した経緯も、数値をこの半年間で莫大な項目について実態調査をしていただいて、それをまた分析して、私などが理解できるぐらいにかみ砕いてこうやってペーパーにしていただいたのですけれども、これまで本当に私自身、こちらの委員をさせていただきながら、計算方法のこの中身、こんなに細かい分数まで出してやってきていたのかというのも知らないままに務めていた、本当にお恥ずかしい立場だったなと感じたぐらい、今回、非常に全部洗い出しをしていただきました。ですので、私は今期限りなので、今後についてはこれを基にしてぜひ、先ほど細川委員が最初におっしゃっていたような見直しの視点、今はキャッシュレス普及率とか異動・解約の非対面手続率でこう出しておりますが、それ以外の面についてもぜひほかの委員の皆様からいろいろな視点で御意見を出していただいて、この審議会でぜひ審議していただきたいなと感じております。
本当にこの短期間でこれだけの情報量を処理できたというか、それこそ本当に損害保険協会だけでなく、金融庁のご担当者や料率機構の方々のご協力もあって、頑張って調査・分析されたと思いますので評価していただいたらいいなとも思いまして、一言言わせていただきました。
以上です。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。恐らく、特に何か御返答を求める必要はないと思いますので、御意見を承らせていただきました。
そのほか、どの点でも御意見、御質問等はございますでしょうか。
ほかに御意見、御質問はございませんか。
それでは、一通り御意見をお伺いできたと思いますので、議論はこの辺りまでにしたいと思います。
基本的には、今回の見直しについて、非常に積極的でポジティブな評価をいただいたと思っております。非常に長い間見直しもされなかったことからすると、非常に大きな前進だと思いますし、今後も定期的に見直していただけるということですので、ぜひ今後も検討を続けていただければと思います。
日本損害保険協会におかれましては、本日委員の皆様からいただいた御意見も参考にしつつ、今後の経費の計算方法の見直し等に十分生かしていただければと思います。本日報告いただいた見直しの方針に従って、経費計算基準を改定して、今年度から新基準にのっとった適正な経費処理を行っていただきたいと存じます。また、今後も「ノーロス・ノープロフィット」原則にのっとった経費となるよう、経費計算方法のさらなる精緻化の検討を継続していただくようにお願いいたします。
日本損害保険協会から何かございますでしょうか。
【細島委員】
ありがとうございます。本日いただいた委員の皆様からの御意見を踏まえまして、報告した内容に沿って、経費計算基準の見直しを行い、その上で、保険会社各社において、法令の趣旨にのっとった適正な対応を行ってまいります。
以上でございます。
【藤田会長】
どうもありがとうございました。
これで本日予定しておりました議事は全て終了いたしました。
全体につきまして、特に何か御意見、御発言があればこの際承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、最後に事務局から事務連絡がございますので、よろしくお願いいたします。
【下井課長】
次回の自賠責保険審議会でございますが、来週1月17日金曜日の午後3時から、本日と同様にオンライン併用の対面会議にて開催させていただきたいと考えてございます。委員の皆様におかれましては、可能な限り御出席賜りますようよろしくお願い申し上げます。
本日はどうもありがとうございました。
【藤田会長】
それでは、これで本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
以上
(参考)開催実績
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