第124回自動車損害賠償責任保険審議会 議事要旨

1. 日時

平成20年1月10日(木) 14時00分~16時00分

2. 場所

中央合同庁舎第7号館西館13階 共用第一特別会議室

3. 議題

  • (1)料率検証結果について

  • (2)報告事項

    • (a)保険料等充当交付金の終了について

    • (b)平成20年度自動車安全特別会計(旧自賠特会)の運用益の使途について

    • (c)平成20年度民間保険会社の運用益の使途について

    • (d)平成20年度JA共済の運用益の使途について

4. 議事概要

(1)  料率検証結果について

事務局より、平成19年度料率検証結果について報告がなされた。

  • 損害保険料率算出機構より報告のあった料率検証結果について、交通事故死者数及び交通事故負傷者数の減少により平成19、20年度の予定損害率は85.2%となっている。平成17年4月の基準料率改定の際には予定損害率106.9%とみていたため、その乖離率は▲20.3%と大きなものとなっている旨説明。

  • 保険料等充当交付金が平成19年度で終了することから、現行の基準料率が維持されれば契約者負担額は平成20年度に上昇する見込み。他方、損害率は当初見込みより良好に推移し、累積運用益等も当初見込みを上回る還元財源が生じる見込みとなっていることから、今般基準料率の改定を行うことで、契約者負担を軽減することが適当と考えている。

  • 累積運用益等の還元期間については、契約者への公平な分配、ノーロス・ノープロフィットの原則、基準料率の長期的な安定を考慮し、5年間で還元することが適当と考えられる。

【本件について出された委員の主な意見は以下のとおり】

  • 重度後遺障害者の数が損害につながってくるため、自賠法施行令別表第1の介護を要する後遺障害及び別表第2の後遺障害第1級~第3級の年間認定数は保険料算定にあたって参考にすべき基礎数字であることから、資料にデータとして盛り込むべき。

  • 自動車会社も乗員の保護、あるいは衝突した場合の歩行者や相手側の保護といったことを大変研究しており、そういった面の事故減少も期待され、今後更に累積収支残が積み重なっていくことが予測される。

  • 道路交通法が厳しくなり随分罰金を取られるようになった。国民がみんなで安心・安全ということを考えた結果、強制的な負担が減ることは国民にとって歓迎すべきこと。

  • 料率改定は、そもそも頻繁に行うものではなく、安定した料率水準を維持するということを考えれば、ファンドの還元期間は5年よりも長めにしていくことも考える必要がある。

  • 余り長めの還元期間となると、将来の見通しがかなりずれ込む可能性がある。

◎ 審議の結果、契約者負担を軽減するため、基準料率を下げるべきとされ、基準料率の改定については、累積運用益等を平成20年度から5年間で還元するということで新たな基準料率表を作成し、次回審議会に提示することとなった。

(2)  報告事項

  • (a)保険料等充当交付金の終了について

    国土交通省より、保険料等充当交付金の創設経緯、交付方法の考え方及び平成19年度を以て交付金が終了する旨説明がなされた。

    • 平成13年度末の政府再保険制度廃止の際の累積運用益約1兆9,400億円の20分の11、約1兆700億円をユーザー還元して保険料負担の軽減を図るために交付金制度を創設し、平成14年度から平成19年度までの6年間の保険契約について、保険料等充当交付金という形で交付することでユーザー負担額の引下げを行うこととした。

    • 交付金の交付方法については、当初3年間は厚めに交付し、従来のユーザー負担額維持に必要な交付金を交付することにより、急激な保険料負担額の増加を防止することとし、その後の3年間は段階的に交付金額の引下げを行った。

    • 平成19年度の第4四半期の契約に係る交付金の額が約75億円であり、これをもって保険料等充当交付金の交付が終了する。

    • 約1兆700億円については、保険料等充当交付金総額が約8,000億円強、従前の政府再保険の契約に係る赤字料率の分の支払いが約2,600億円強であり、合計で約1兆700億円の支払いを終了する。

  • (b)平成20年度自動車安全特別会計(旧自賠特会)の運用益の使途について

    国土交通省より、平成20年度自動車安全特別会計の運用益の使途について説明がなされた。

    • 独立行政法人自動車事故対策機構に対する助成には、自動車事故対策費補助金(自動車事故による重度後遺障害者に対する介護料の支給等に対する補助)、独立行政法人自動車事故対策機構施設整備費補助金(重度後遺障害者に専門的な治療を行う療護センターの医療機器の整備に対する補助)及び独立行政法人自動車事故対策機構運営費交付金(療護センターの運営や交通遺児に対する育成資金の貸付けに必要な経費等に対する補助)がある。

    • 自動車事故対策費補助金は、被害者保護増進対策及び自動車事故発生防止対策の2つがあり、予算全体のスリム化の中で、被害者保護増進対策では紛争処理機関が行う紛争処理業務が前年度と比較して増額となっており、自動車事故発生防止対策では、トラック事業の安全対策リーディングモデル創出事業を新設した。

    • 競争原理を活用し補助事業の効率性を高めていくため、自賠責保険・共済紛争処理機構や日弁連交通事故相談センターなど一部の法人を除き、原則公募制とした。なお、予算全体では約149億円の計上となっており、前年度と比較して約5億円の減少となっている。

  • 【本件について出された委員の主な意見は以下のとおり】

    • 平成13年度末の累積運用益のうち約9,000億円は全部残っているわけではなく、一般会計への繰入れがある。それがいつ戻されるのかという問題がある中で、予算としては減少せざるを得ないのかという点をご説明いただきたい。

    • 平成13年度末の政府再保険制度廃止の際の累積運用益約1兆9,400億円の20分の9、約9,000億円を基金として積み立て、その運用益で必要な事業費を出していく制度設計であったが、平成19年度末の見込みで一般会計に約5,000億円繰り入れている状況。安定的な自動車事故対策事業を実施するため、平成23年度までに財政状況等を踏まえながら、毎年度の返還額について財務省と国土交通省の間で毎年協議しているところ。平成20年度予算ベースでは事業費のほか人件費等を併せ約152億円の歳出を予定しており、その財源は、運用益等による歳入が約50億円のほか元本を約102億円取り崩して充てる予定。(国土交通省)

    • 事故防止策に係る費用が減少することは、これ自体が後退というイメージに受け止められかねない。自賠責制度は被害者救済ということでやっているわけであるから、減少部分を別の新規事業に振り向け、予算額を削ることがないようにしていただきたい。

    • 短期入院協力事業が20年度5千万円減っているが、ニーズがなくなっている、あるいは非常に行き届いているということなのか。また、療護センターの増設よりも協力病院をつくることによって代替していくほうが効率的であるということだが、療護センターにかわる協力病院の充実がどのくらい進んでいるのか。

    • 短期入院協力病院に指定した病院は、かなり施設が整っており施設整備に係るニーズが想定したほどではなかったため、20年度予算額は減少している。しかしながら、今後、実際のニーズ、実需があれば、それに合わせた形で変動していくとご理解頂きたい。また、短期入院協力病院は平成18年度に32しかなかったが、それを61に増やし各都道府県に必ず1つはあるようにした。(国土交通省)

    • 療護センターのサービスが悪いという声が患者の中からあり、そういった方々の声をリサーチし、フィードバックサイクルをもっとつくって、きめ細かいサービスをやっていただきたい。

    • 被害者救済を安定的に実施していくために、自賠責そのものに組み込んだ賦課金という形で十分な費用を充てていくという発想が、本格的に検討される時期にきているのではないかと思われる。

    • 地域の病院が救急から撤退するという傾向が非常に強くなってきている。医療機器だけ整備すれば、何とかやるだろうというのではもたない。

    • 公募制にされるというのは良いことと思うが、実際に公募しているということを、いろいろな方が分からなければ機能しない。

    • 資料に決算を入れていただき、非常にわかりやすくなったが、今後とも透明性を増していただきたい。被害者救済や事故防止の方にお金が使えるよう人件費や事務管理費の削減ということが、もう少し見えてくるとありがたい。独立行政法人自動車事故対策機構に対する助成についても人件費等及び随意契約についてもっと踏み込んでいただき、効率化を図っていただきたい。

  • (c)平成20年度民間保険会社の運用益の使途について

    (社)日本損害保険協会より平成20年度の民間保険会社の運用益拠出事業案について、説明がなされた。

    • 運用益拠出事業案については、これまでの自賠責審議会答申や審議会における意見及び自賠法改正時の国会付帯決議などを踏まえ、自動車事故の被害者対策を中心に充実させていくことを基本方針としている。

    • 既存事業については、事業報告などの検証を踏まえ一層の事業見直しを行い、新規事業については自動車事故防止対策及び自動車事故被害者対策を中心に模索した結果、全体支出額は約20億円(対前年度比▲1億円)となった。

    【本件について出された委員の主な意見は以下のとおり】

    • 自賠特会と、民間保険会社の運用益拠出事業の仕分けがもう少し明確になれば、それぞれどういう事業に重点的に執行するかということがよりはっきりする。国の一般会計と民間保険会社の運用益で拠出すべきものの中間に自賠特会が位置づけられているとすると、ドクターヘリなどについては自賠特会で何か取り組みがあってもいい。

    • ユーザーが求めている事業をやっていると思うが、その結果どういうことに貢献したのか一般のユーザーや消費者には見えていないため、これを国民に広く周知していただきたい。

    • 事故に遭った人はまず困るわけであるから、自賠責保険のポータルサイトがあってもいいのではないか。まずは、金融庁と国交省のホームページを、もう少し目立つ位置にするなど、自賠責保険に関して、きちんと一般の方々に周知することをやっていただきたい。

  • (d)平成20年度JA共済の運用益の使途について

    全国共済農業協同組合連合会より平成20年度JA共済の運用益の使途について、説明がなされた。

    • 共済の運用益積立金の活用については、民間保険会社と同様、まず将来の収支改善のための財源留保の上、自動車事故防止対策、救急医療、被害者対策等について効率的な活用に努めている。

    • 自動車事故対策については、幼児向け・高齢者向けの交通安全教室を継続して実施し、高齢者に対し反応能力低下の自覚を促していく。救急医療体制の整備については、事故被害者救済の観点から、救急医療機器等の購入助成を大きく増額。被害者対策については、新規事業として交通事故に関する有効な医療研究について支援することとした。

    【本件について出された委員の主な意見は以下のとおり】

    • 自賠責共済運用拠出額推移について、民間保険会社はおおむね安定して金額が推移しているが、JAは非常にでこぼこしている。

    • 高齢化社会になっていくと、高齢者の交通事故が多くなっていく。農村部において、高齢者がどうしても車に乗らざるを得ない環境をほかの方法で解決するということも、これからの課題として検討していただきたい。

以上

お問い合わせ先

金融庁TEL:03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線3375、3772)

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