「ソーシャルボンド検討会議」(第2回):議事録

1.日時:

令和3年4月13日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室


ソーシャルボンド検討会議(第2回)

令和3年4月13日


【北川座長】
 それでは、定刻になりましたので、ただいまよりソーシャルボンド検討会議、第2回会合を開催いたします。
 皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
 
 本日は、2021年度に入りました初回会合ということもあり、一部の委員の方の肩書等が変更になっておりますので、第1回に続きまして、本日時点での本検討会議委員リストを資料として用意いただいております。
本日の会合は、第1回と同様、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とし、一般傍聴はなしとさせていただいております。また、メディア関係の方々には、金融庁内の別室にて傍聴いただいております。

 議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 議事に移る前に2点ほど注意事項がございます。まず、御発言されない間は必ずミュート設定にし、ビデオもオフにしていただくようお願いいたします。御発言される際にはミュートを解除いただき、画面の表示をオンにしていただくということで、御発言が終わりましたら再びミュート設定、ビデオオフ設定にしていただくようにお願いいたします。

 次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上に、全員宛てにお名前または協会名などの組織名を御入力していただきたいと思います。そちらを確認して、その上で私が指名いたしますので、御自身のお名前を名のっていただければと思います。その上で御発言ください。他の会議の場合に、事務局のみにチャットを送られるようなこともあったと伺っておりますけれども、必ず全員宛てにお願いいたします。

 それでは、早速でございますけれども、議事に移ろうと思います。議事次第を御覧ください。

 本日は、まず事務局より、御議論いただきたい論点につきまして御説明いたします。その後、ANAホールディングス株式会社グループ経理・財務室財務企画・IR部担当部長の礒根秀和様と、次いで、BNPパリバ証券株式会社グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈様より御報告いただき、自由討議とさせていただきます。

 それでは、事務局の金融庁より、本日御議論いただきたい論点につきまして、説明をお願いいたします。

【中瀬ソーシャルボンド推進調整官】
 それでは、お手元の資料2事務局説明資料に沿って御説明させていただきます。資料2の1ページ目を御覧いただければと存じます。本日御議論いただきたい点、大きく2つございます。
 1つ目でございますけれども、前回の「第1回会合における議論を踏まえて更に御議論いただきたい論点」、それから、2つ目といたしまして、ICMA原則に沿いまして、残っていた3つの核と外部評価につきまして、ボリュームが少し多いところですけれども、今回の会合におきまして、委員の皆様より御意見を頂戴したいと考えております。
 資料中、各論それぞれガイドライン策定に向けての御議論いただきたい論点というスライドを入れております。事務局のほうで考えられる論点を例示させていただいております。こちらは後ほどの討議のところで、皆様より御意見いただきたく存じます。

 2ページ目でございます。まずガイドライン策定に向けての総論でございますけれども、この点、皆様より前回の会合におきまして意見いただいた点を記載させていただいております。おおむねコンセンサスをいただいた点を並べさせていただいております。
 まずガイドラインの位置づけでございますけれども、1つ目のポツの後段のところです。本ガイドラインは、上場企業をはじめといたします民間企業を主な対象とすることが適当ではないかという御意見、複数の委員の方から頂戴いたしました。
 また、本ガイドラインの発行体にとっての有用性でございますけれども、3つ目のポツのところです。民間の発行体としては何がソーシャルプロジェクトに該当するかという判断が難しいので、具体例を示してほしいという御意見を頂戴いたしました。
 次のボックスのところでございますけれども、ICMA原則、環境省グリーンボンドガイドラインとの整合性でございますが、この点は、多くの委員の皆様から整合的なものとすることが重要という御意見を頂戴いたしました。
 最後のボックスのところですが、検討の進め方につきまして、二段階の検討ということにいたしまして、まずはガイドラインの本文の策定を行い、その後、社会的成果に係る指標の例示等に向けた検討を行っていくということでよいのではないかという御意見を頂戴いたしました。

 3ページ目でございます。前回、各論の1:調達資金の使途について議論をいただきました。いろいろ御意見を頂戴いたしましたが、この点、今後、ガイドラインの案を事務局のほうで考えていくに当たりまして、さらに具体的なアイデア等をいただきたく、さらに御議論いただきたい論点を右側に並べさせていただいております。
 大きく3つに分けておりまして、社会的課題、ソーシャルプロジェクト、ソーシャルプロジェクトの対象となる人々ということで切っております。まず最初のボックスのところですけれども、社会的課題につきましては、複数の委員の方から、1つ目のポツの後段のところですけれども、日本の場合は、SDGsアクションプランを参考とすることができるのではないかといった御意見を頂戴いたしました。
 踏まえ、社会的課題として、アクションプラン全体を参照するですとか、また、一部参照するといったようなことが考えられるかと思いますけれども、右の青いところに記載していますけれども、ソーシャルボンドのソーシャルプロジェクトが対象とする社会的課題、これはどういった性格のものであるべきかなど、引き続き御議論をいただきたく存じます。
 次のボックスでございますけれども、ソーシャルプロジェクトについてでございます。最初のポツですけれども、ICMA原則で例示されている6つの事業区分につきまして、途上国を前提としている部分が大きいのではないかといった御意見、他方で、2つ目のところですけれども、ICMA原則はもともと途上国向けでありましたけれども、文章を読んでみますと、網羅性がありまして、先進国の課題にも対応できるようになっているのではないかといった御意見を頂戴いたしました。
 踏まえ、右の青いところでございますけれども、ICMA原則の事業区分の例示ですとか、内外の発行事例を踏まえまして、本ガイドラインにおきまして、ソーシャルプロジェクトをどのように示すべきか、御意見を頂戴したく考えております。

 4ページ目でございます。対象となる人々についてでございます。こちらは前回、委員の皆様からは、最初のポツのところですけれども、インパクト・ファイナンスの観点からは、誰が裨益するか分からなければ、インパクトの測定というのが難しい。他方で、コロナの問題ですとか、一般大衆に影響のある社会的課題というのは多くあるといった御意見ですとか、2つ目のポツでございますけれども、一般を対象とする場合には、特定のコミュニティ全体が課題に直面している場合ですとか、対象を絞るコストをかけるよりも優先して支援を行う必要がある場合があるのではないか。逆に言いますと、そういったケースに限られるのではないかといった御意見を頂戴いたしました。踏まえ、右の青いところですけれども、ICMA原則の例示ですとか、内外の発行事例を踏まえまして、ソーシャルプロジェクトの対象となる人々、今回策定するガイドラインでどのように示すべきか、この点も御意見いただきたいと考えてございます。
 
 5ページ目でございます。こちらは社会的課題として参照できると御意見いただきましたSDGsアクションプラン。こちらの位置づけについて記載したものでございます。

 6ページ目でございますけれども、こちらは直近、昨年12月に示されております「SDGsアクションプラン2021」の概要をつけてございます。SDGs実施指針で示されている8つの優先課題に沿いまして、具体的な取組等が示されており、そちらをサマライズした資料になってございます。

 7ページ目でございます。こちらは参考でございますけれども、左側にICMA原則のソーシャルプロジェクトの6事業区分、それから、その隣に事業区分の細目の例示を並べさせていただいたものでございます。先ほど、さらに御議論いただきたい論点として挙げさせていただきましたけれども、ICMAの6事業区分につきましては、かなり網羅性がある形で示されているというところかと思いますけれども、今回策定いたしますガイドラインにおきまして、どのようにプロジェクトを示すべきか。さらに御議論いただきたいと考えております。
 
 9ページ目を御覧いただければと思います。ここまでが前回御議論いただいた点、それから、さらに今回御議論いただきたい点でございまして、ここからが残っている各論、ICMA原則の3つの核と外部評価につきまして、ボリュームが大変多くて恐縮ですけれども、各論それぞれにつきまして、事務局が考える論点をつけさせていただいております。こちらにつきまして、討議のところで御意見をいただければと考えてございます。
 
 10ページ目でございます。各論2:プロジェクトの評価と選定のプロセスです。こちらのスライドは、ICMAの原則の該当部分の概要でございます。ICMA原則では、「すべき」ことと「望ましい」ことで構成されております。こちらのプロジェクトの評価と選定のプロセスにつきましては、「すべき」ことといたしまして、社会的目標ですとか、適格なソーシャルプロジェクトの事業区分に含まれると判断するプロセス、それから、適格性のクライテリアを定め、投資家に明確に伝えるべきといった規定がされているというところでございます。

 11ページ目でございます。こちら、環境省のグリーンボンドガイドラインの該当部分の抜粋をつけさせていただいております。ICMAのグリーンボンド原則とソーシャルボンド原則、ほぼ同じ構成を取っているというところでございまして、前回の会合では、環境省のグリーンボンドガイドラインとの整合性、これも重要だという御意見をいただいていたというところでございます。こういったことを踏まえまして、ソーシャルボンドのガイドラインにつきましては、環境省のグリーンボンドガイドラインの記載事項をベースに考えていくことができるのではないかと考えているところです。
 グリーンボンドガイドラインでは、こちらの各論2:プロジェクトの評価と選定のプロセスにつきましては、ICMA原則で示されている目標、判断する規準、それから、プロセスがどのようなものであるか。その例示も含めて、ICMA原則の内容を詳述、具体化したといったものになってございます。

 13ページ目でございます。こちらは参考まででございますけれども、国内のソーシャルボンドの発行体がどのようにこちらの目標ですとか規準、それから、プロセス等を設定しているか。具体的な事例を外部評価書などによりまして作成した参考資料でございます。

 15ページ目に、各論2:プロジェクトの評価と選定のプロセスにつきまして、事務局で考えました論点を例示させていただいております。基本的には、原則とグリーンボンドガイドラインを前提に考えていくということかと思っておりますけれども、例えば、投資家に説明します社会的目標ですとか、プロジェクトを評価、選定する際の規準、これについて投資家に説明するに当たりまして、何か留意すべき事項はあるかですとか、ガイドラインで例示するに当たりまして、どのような例示ができるかといった点を論点として挙げさせていただいているというところでございます。ほかにも検討すべき点があればぜひ御意見をいただきたいと考えてございます。

 17ページ目でございます。各論3:調達資金の管理でございます。こちらはICMA原則の該当部分の概要でございます。「すべき」ことといたしまして、1つ目のポツ、ソーシャルボンドの調達資金は適切な方法で追跡し、内部プロセスで証明すべき。2つ目でございますが、調達資金の残高はソーシャルプロジェクトの充当額と一致するよう定期的に調整されるべき。3つ目ですけれども、未充当資金の運用方法を投資家に知らせるべきなどと規定がされているところでございます。

 18ページ目に、環境省のグリーンボンドガイドラインの該当部分の抜粋をつけてございます。ガイドラインでは、資金管理の方法につきまして、具体的な例示をするなど、原則の内容について詳述、具体化がされております。

 ちょっと飛ばしまして、21ページ目に、各論3:調達資金の管理の論点を上げさせていただいております。グリーンとソーシャルで、資金管理など変わるものではないと基本的には想定しているところでございますけれども、ソーシャルボンドのガイドラインで何か留意すべき点があるか。もしあれば御意見をいただければと考えております。

 23ページ目でございます。各論4:レポーティングについてでございます。こちらはICMAの原則の該当部分の概要をつけております。
 「すべき」こととしまして、1つ目、発行体は資金使途に関する最新の情報を容易に入手可能な形で開示すべき。少なくとも年1回、重要な事象が生じた場合には随時開示すべきとされています。
 2つ目でございますが、開示事項としまして、各プロジェクトのリスト、プロジェクトの概要、充当された資金の額、期待される効果などが含まれるべきとされてございます。
 また、「望ましい」こととしまして、1つ目のポツですけれども、可能な場合には定量的なパフォーマンス指標を開示することを奨励といった形で規定がされてございます。

 24ページ目でございます。環境省のグリーンボンドガイドラインの抜粋でございます。発行体は、グリーンボンドによる調達した資金の使用に関する最新の情報を、発行後に一般に開示すべきですとか、少なくとも1年に1回及び大きな状況の変化があった場合には、資金の使用状況を開示すべきですとか、開示事項、方法につきましても、おおむね、ICMA原則の内容を踏まえた規定がされているといったものになってございます。
 
 25ページ目でございます。こちらは環境改善効果に係る指標・算定方法につきまして規定されたものでございます。青字部分ですけれども、適切な指標を用いるべきですとか、可能な場合には、定量的な指標を用いることが望ましいといった、原則の内容を踏まえた規定になってございます。

 また飛ばしまして、28ページ目でございます。こちらは、ICMA原則とは別に、ICMAで公表しております「インパクトレポーティングに係るガイダンス文書」におきまして、記載されている社会的成果の指標の示し方でございます。こちらのガイダンス文書におきましては、指標について、最終的に目指す目標・効果を一番下のインパクトとしまして、その因果関係をアウトプット、アウトカム、インパクトの3段階とするということが示されているものでございます。

 29ページ目でございます。こちらは「インパクトレポーティングに係るガイダンス文書」におきまして例示されている各事業等における指標でございます。作業中のリストということになっておりまして、網羅性があるものではないとされておりますけれども、参考までに仮訳をつけさせていただいております。

 32ページ目でございます。各論4:レポーティングの論点を例示させていただいております。ほかと同様、基本的にICMA原則、グリーンボンドガイドラインを前提にしていく方向で考えておりますけれども、今申し上げましたインパクト評価の考え方を踏まえまして、アウトプット、アウトカム、インパクトの3段階での開示を可能な限り行うよう促すといったことが考えられるか等を論点に挙げさせていただいております。

 続きまして、34ページ目でございます。各論5:外部評価(「External Review」)のICMA原則の該当部分の概要をつけております。ICMA原則では、外部評価は望ましい事項とされております。また、外部評価の形態として、セカンド・パーティー・オピニオン、検証、認証及びレーティングの4つの形態を示しております。

 35ページ目です。環境省グリーンボンドガイドラインの該当部分の抜粋をつけさせていただいております。外部評価につきましては、かなり細かく規定がされております。時間の関係で詳細は割愛させていただきますけれども、例えばこちらのスライドではレビューを活用することが特に有用と考えられる場合の例示ですとか、36ページでは、上のボックスでございますけれども、レビューを活用することができる事項の例を発行前と発行後に分けて例示しております。また、下のボックスでは、レビュー後は、結果に係る文書を開示すべきとの規定を設けております。

 37ページ目でございます。レビューを付与する外部機関が則るべき事項について、ここから規定をしてございます。プロフェッショナルとしての倫理規範的事項としまして、誠実性、公正性。公正性におきましては、利益相反を回避することですとか、発行体との第三者性の確保に係る規定などを設けております。

 38ページ目です。こちらはプロフェッショナルとしての能力及び正当な注意としまして、外部レビューの実施に当たりまして、その職務遂行能力の必要とされる水準の維持の規定などを設けています。

 39ページです。守秘義務、プロフェッショナルとしての行動について規定をしてございます。

 その次でございますけれども、外部評価機関の組織としての要件として、外部レビューを適切に実施するための十分な組織体制を有することなどを規定してございます。また、外部レビューの種類に応じてですけれども、評価すべき事項なども示してございます。

 40ページ目でございます。こちらは外部レビューの結果に係わる文章に含めるべき事項について規定してございます。青字の部分でございますけれども、外部レビューの目的、業務範囲、外部レビューを行う者の資格や専門的知見について、レビュー文書で示すべきですとか、どのような評価規準に照らして評価を行ったかと明確に示すべきですとか、評価する限界的事項も含め、外部レビューにはその結論、アウトプットを含むべきなどの規定がされているといったものになってございます。

 41ページ、42ページは、ICMAのほうで、原則とは別に、外部評価ガイドラインを策定しておりまして、その概要を参考までにつけさせていただいているものでございます。

 43ページ目でございます。各論5:外部評価の論点につきまして記載させていただいております。ほかと同様、原則、環境省のグリーンボンドガイドラインを前提に考えていくという方向でございますけれども、グリーンとの違いといたしまして、1つ目のところですけれども、ソーシャルの場合、多種多様で一律の評価軸を設定することが難しいといった特徴があるかと思います。こういったソーシャルプロジェクトに対しまして、
外部評価機関が果たすべき、期待されている役割についてどう考えるかというのを1つ目に挙げております。
 2つ目でございますけれども、必ずしも統一されていない評価機関間での外部評価規準等の情報開示の在り方につきまして論点に挙げさせていただいております。こういった点についてどのように留意すべきかといったところを御意見あればいただきたいと考えてございます。

 44、45ページは、今、御説明いたしました各論それぞれの御議論いただきたい論点をまとめたスライドを2つつけさせていただいております。

 事務局説明資料は以上でございまして、これとは別に参考資料をつけさせていただいておりまして、まず、海外におけますソーシャルボンド等の発行事例でございますけれども、こちらは前回の会合におきまして、海外の発行事例に関しまして、少し調査を行って御紹介させていただくということにさせていただいておりましたので、海外の発行事例のフレームワークですとか外部評価書をベースに関係者にも協力をいただきまして、作成したものでございます。

 評価書やフレームワークにおいて、ソーシャルプロジェクトの内容が詳述されていないものもございまして、こちらの資料でも一部不明瞭な点もあるかもしれませんが、御容赦いただけますと幸いに存じます。
ソーシャルボンドとサステナビビリティボンドの民間の事業会社ですとか金融機関の事例を調査して、ICMAの事業区分ごとに整理したものを2ページ目以降に並べてございます。
時間が押しましたので、すみません。簡単に御紹介だけさせていただきますけれども、御覧いただければ分かると思いますけれども、途上国に加えまして、先進国におけるプロジェクトもかなり多様なものが含まれているといったところが御覧いただけるかと思います。
 例えば、高齢者福祉ですとか医療に関わるプロジェクト、それから、地方の雇用ですとかインフラ整備に係るプロジェクト、女性活躍にかかるプロジェクト、こういったものが含まれてございます。
 それから、対象となる人々につきましても、情報として入れさせていただいておりますけれども、社会的弱者がやはり対象となるケースが多いというところでございますけれども、特定していないですとか、一般の人々を対象としているようなケースも相当程度あるように見受けられるところでございます。
 こちらなどを参考にしていただきまして、ソーシャルプロジェクトの御議論のところで御意見いただければと考えているところでございます。

 私からの説明は以上でございます。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 続きまして、ANAホールディングスの礒根部長より、資料5「ソーシャルボンドの発行を振り返って」につきまして、10分程度で御報告いただければと存じます。それでは、礒根様、よろしくお願いいたします。

【礒根委員】
 ありがとうございます。ANAホールディングスの礒根と申します。資料は、「ソーシャルボンドの発行を振り返って」と題して、資料をまとめさせていただきましたが、ソーシャルボンドの具体的な中身を書き忘れましたので、冒頭補足させていただきますと、我々が発行したのは2019年5月ですので、約2年前に37回債として出したものになります。期間は7年、金額は50億で発行しました。

 次の2ページ目の目次を御覧いただければと思いますが、本日お話しさせていただくのは、ソーシャルボンドの発行に至った経緯や、諸準備段階での様々な項目、特に適格プロジェクトの選定過程の説明に紙面を割いておりますが、細かい中身の説明というよりは、民間の発行体がどういった思考の過程を踏まえて発行に至っているか、その一つの例として御参考になればと思っております。
 その他、レポーティング内容と外部評価機関との関係も簡単に触れたいと思っています。最後に、ソーシャルボンド発行準備で悩んだことと、それらの解決策として、本検討会議で策定されるソーシャルボンドガイドラインに期待することを簡単に触れたいと思います。

 次のページ、3ページにお進みください。ソーシャルボンドの発行に至った経緯をまず簡単に述べさせていただきます。
 こちらに写真が4枚ありますが、当社グループは、ESG経営を中核に据えた中期経営戦略を策定しており、その中で、中期的な経営の重要課題、マテリアリティとして、環境、人権、ダイバーシティ&インクルージョン、地域創生の4項目を掲げております。
 左のところにも記載がありますが、環境への取組としまして、ソーシャルボンドを発行する約半年前の2018年10月に、エアラインとしては世界初となるグリーンボンドを発行しました。環境分野におけるリーディングエアライングループを目指すことを掲げておりまして、環境負荷の低減に取り組んでおり、その一環として、環境に配慮した建物、グリーンビルとして認められた、大田区にございます総合トレーニングセンター、我々はANA Blue Baseと呼んでおりますけれども、この建設費用に充当しました。
 そのグリーンボンド発行の後、すぐに、環境以外の3つのマテリアリティへの取組を資金使途とするソーシャルボンドの発行の検討を始めました。経営戦略に掲げているものから派生するプロジェクトを選ぶことが、結局はフレームワークを固めるときや、IRとして機関投資家様に説明する際に、戦略との一貫性が取れることに繋がります。

 次の4ページを御覧ください。こちらのスライドは、先ほどの4つのマテリアリティとその具体的な活動を書いておりますが、左から見ていただくと、ESGの観点で縦に並べておりますし、右端では、SDGs貢献領域との関係をまとめております。ソーシャルボンドでもありますので、ここの中段にあります5番の人権尊重社会の実現から、10番の就航地での社会貢献活動までの観点の中でソーシャルプロジェクトと言えるものがないか、検討いたしました。

 次のページを御覧ください。5ページです。投資計画も含めて、いろいろと社内のプロジェクトを精査した結果、適格プロジェクトの候補として、ここに記載しております3つのプロジェクトを抽出しました。
1つ目は、主力の航空事業において、お客様のダイバーシティに着目したユニバーサル対応、お客様へのユニバーサルなサービスの提供に関わる設備投資に関するものです。2つ目は、観光立国、訪日促進の観点と、地域創生、地域経済の活性化に着目いたしました、日本各地の魅力を発掘、発信に関するもの。3つ目に掲げておりますのは、これは新たな取組として、当時検討を始めていた、新しい移動手段を提供するもの。これらを候補として検討を進めました。
 非常に分かりにくいと思いますので、具体的な内容について、簡単に次のページ以降で御紹介いたします。

 6ページを御覧ください。1つ目で候補として挙げておりましたユニバーサル対応を説明したページになります。将来的な超高齢化社会を見据えて、ハード面、ソフト面、その両面で、バリアフリーの取組を推進するために、我々も専門的な知見を持っていらっしゃる他社と連携して、新しい技術を積極的に商品サービス開発に導入しております。
 また、オリンピックイヤーに近かったということもありまして、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、組織委員会が発行されていた東京2020アクセシビリティ・ガイドラインや、バリアフリー法に基づいて、飛行機をご利用いただく全てのシーンにおいて、具体的に、ここに真ん中に絵がありますけれども、具体的にはご旅行前から空港、機内に到着後まで、お客様の安全と利便性の向上を目指す取組でございます。特にハード面での対応については、次のページからの具体例を参照いただくというイメージしやすいと思います。

 7ページ目です。こちらはそれぞれのシーンごとに書いておりますが、まずはご旅行前の準備として、我々のホームページにおいて、アクセシビリティの向上と航空券予約システムの改修というのがあります。具体的には、機能例ということで、(1)から(5)にどういった機能を加えるかという具体的な記載がありますが、視覚や聴覚等、体に不自由なお客様にもストレスなくご利用いただけるような環境を構築するためのシステムの改修でございます。
 また、空港では、ここに写真も載っておりますが、搭乗手続から保安検査場、機内までの移動をスムーズにサポートする樹脂製車椅子、各種車椅子や歩行者などを用意いたしております。

 続いて8ページになります。右側にありますイメージ図を御覧いただくと理解しやすいと思いますが、まず車椅子を御利用のお客様や、座ったままでの手続を御希望されるお客様に配慮して、空港のチェックインカウンターやラウンジの受付にローカウンターを設置すると共に、ラウンジ内の通路幅を確保し、車椅子専用エリアを設置します。
 搭乗ゲートは、車椅子やベビーカーをご利用のお客様がスムーズにご搭乗いただけるように、ゲートの幅を少し広く、JRの駅にもあると思いますけれども、少し幅の広いものを用意することと、機内では、機内用の新型の車椅子も御用意して、車椅子で利用可能な化粧室を設置し、移動導線などのアクセシビリティ向上を図るというものでございます。

 具体例は以上となります。

 次、9ページです。以上のような世界トップレベルのユニバーサルサービスを目指すことを掲げており、ウェブサイト改修で20億から30億、空港内施設の改修で20億から30億の投資を見込んでおりますので、それらの設備投資の一部に資金を充当したいと考えました。これが資金使途の1つ目です。

 次のページ、10ページをご覧ください。2つ目は地域創生ということを考えました。日本の伝統的な文化や観光資源が世界から注目される一方で、国内では地方都市の人口減少や伝統産業の衰退が懸念されています。我々はグループとして、政府や地方自治体、NPOなどと連携し、安全・安心な観光地情報を発信することで、観光振興に結びつけ、交流人口の拡大により地域経済の活性化につながると考えております。
 さらに、航空輸送にとどまらない各種リソースを活用して、社会課題の解決と社会貢献活動を通じた地域創生にもグループとして取り組んでおります。どういう切り口でやろうかと悩んだのですが、地域創生の様々な取組の中で次のページに掲げているものが特徴的なものです。

 11ページを御覧ください。これもプレスリリースを貼りつけてありますので、少し文字が多くて、見えにくいと思うのですが、右側にも同じものを少し拡大して載せております。青い枠で囲っているところです。当社グループでは、2013年から、日本全国47都道府県を対象に3か月ごとに各地の食材、観光地などを発信しながら、単にホームページで発信するだけではなく、県産品の輸出協力等の分野で連携協定を締結するなど、各都道府県との連携を深めてまいりました。
 2017年からは、日本を8つの地域に分けて、それぞれ6か月ごとに特集しながら、まだ知られていない地域の魅力や資源を国内外に発信しております。「Tastes of JAPAN by ANA-Explore the regions」と題したこの取組の具体例を次のページに記載しております。

 12ページです。説明は割愛いたしますけれども、項番の1から6まで様々な取組をしております。継続的に一定程度、コストがかかるものとしては、項番2番にございます各地の特産品を使った食事の提供と、項番3番の各地のお酒の提供に伴う費用が主なものになってくるかなと思っておりまして、それをまとめたものが次の13ページでございます。
「Tastes of JAPAN」の取組として、特設サイトや機内番組の作成費用、それと、先ほどの特産品やお酒の仕入れ費用として大体10億円を見込み、これを資金使途の2つ目としました。
次のページが3つ目の話ですけれども、これは少し毛色が違うとは思います。実は移動手段として航空機を利用されるお客様は、世界人口のたった6%にすぎなくて、残りの94%の方は何かしらの理由で航空機をしたことがない、または利用できないというのが現状でございます。
 「ANA AVATAR」と我々は呼んでおりますけれども、そういった全ての方に、距離や身体的な制限、文化、時間など、あらゆる制限を超える瞬間移動手段として、「ANA AVATAR」というものを我々は考えておりました。
 アバターロボットと言う遠隔操作が可能なロボットに入って、見て、聞いて、感じてと、あたかもそこに自分自身が存在しているかのようなリアルタイムでコミュニケーションができる、あとは作業ができるというものが、これを通してできます。
 活用できる領域はたくさんありまして、次のページに具体例を載せております。15ページでございます。パソコンやスマートフォンからアクセスできるのですが、そのプラットフォームを通じて、あらゆる場所であらゆる役割を果たすことが可能になってまいります。ここにありますとおり、教育や医療、あとは釣り、スポーツという意味での釣りです。あとはスキルのシェア、伝承、旅行や、宇宙開発まで、用途は様々になります。
その他、海外の出張先から社内会議に参加したり、自宅にいながら百貨店のショッピングができたり、病院のベッドから水族館を見学したり、海外から日本のスポーツ観戦をしたりと、できることは様々でございます。自分自身の分身があらゆる場所で活躍できる社会を実現できるのではないかと考えました。実際にこの事業は、2020年4月から分社化して、アバターインという事業会社で活動しております。

 次の16ページですが、このアバターの研究開発費等に一部充当できるのではないかと考えたのが資金使途の3つ目です。
 
 これまでの説明をまとめたのが、17ページになりまして、この3つのプロジェクトをまとめると、大体100億強の資金使途がありますので、当初は100億円のソーシャルボンドの発行を検討しました。
 ただ、2つ目の候補の「Tastes of JAPAN」につきましては、概算として10億と見積もってはいたのですが、様々な仕入れの中でどれがこの「Tastes of JAPAN」の対象となるものか、会計データ等からこれだけピックアップすることがなかなか難しかったり、アイテム数が多岐にわたりますので、管理が非常に煩雑になるということと、作業負担の割に金額規模のインパクトも少ないということで、候補から外しました。
 3番目のアバターの話は、当時は事業構想自体は固まっていたものの、それに基づいた具体的な事業計画というものが非常に柔らかい段階で、地方自治体や様々な企業と実証実験を行っておりましたが、実際にどれだけの金額が出ていくのか不透明でしたので、これを資金使途と考えるのは時期尚早ということで、候補から外しました。結果的に、最初のユニバーサル対応のみとなったのですが、100億までは積み上がりませんので、発行額を50億に減額し、あとは投資額が確実にこの50億を超えるように、お客様対応だけではなく、従業員に対するユニバーサル対応としての設備投資も資金使途に加えました。その具体例は次のページでございます。

 18ページです。これも写真で見ていただくとイメージできると思うのですが、グループで独自のファシリティスタンダードを定めておりまして、7番の車椅子利用者の専用駐車場の設置であったり、5番の内部障害やLGBTにも配慮した多目的トイレを設置したり、1番の引き戸の出入口を設置するなど、国内の事業所の施設・設備を改修する資金にも充当し、確実に50億を上回る資金使途を確保しました。

 次のページの19ページで、レポーティングについて触れさせていただきたいと思います。
 インパクトレポーティングとしては、ICMAのガイダンスにもあるとおり、アウトプット、アウトカム、インパクトの3段階で設定しました。特にアウトカムの手法につきましては、ソーシャルボンドを発行したために、新たに取得する必要があるものとすると、レポーティングの負担が重くなりますので、通常から経営情報として取りまとめているような情報の中からプロジェクトとの関連性を考えた上で選びました。
 通常見ている数字であれば説明もしやすいので、この点でもやはり経営戦略の方向性と合致したプロジェクトを選ぶというのが一番大事かなと思っております。

 次は20ページです。外部評価機関との協議でございます。先ほどもございましたとおり、外部評価機関の対象範囲というのは、この1番から4番、特に入り口としての1番、対象となるプロジェクトがソーシャルボンド原則と適合しているかどうかの査定で、これが一番悩ましいところだと思っています。
 ここで気になるのが、先ほどのICMAのソーシャルボンド原則だけですと、対象プロジェクトがそれに該当するのかしないのか、その適合性の判断が外部評価機関の裁量に委ねられてしまうと、判断の幅が広いほど、様々な見方が出てしまいますし、それが実際、日本の社会的課題の解決に繋がっているかどうかも分かりにくいということです。

 それで、次の21ページですけれども、「発行準備を進めるにあたり悩んだこと」ということで、4つ、挙げさせていただいていますが、1つ目から3つ目までは、先ほどのICMAのソーシャルボンド原則だけでは、適格となるソーシャルプロジェクトの選別が難しいということに起因しています。社債を引き受けていただく証券会社や外部評価機関は、発行体の設備投資の中身を全部把握できるわけではございませんので、結局どういったものが該当しそうか、ピックアップするのは発行体自身であり、その発行体の社内の検討段階で複数の候補が挙がってこないと対象となるプロジェクトの投資額が積み上がらず、結局、発行体としてソーシャルボンドを発行しようという発想にもならないということになります。
 4つ目は、先ほどのレポーティングの話です。重複することもありますので、説明は割愛させていただきます。

 最後に、22ページ。こちらで本検討会議で策定するソーシャルボンドガイドラインに期待することを記載しています。民間の発行体としては、何度も同じことを言って申し訳ないのですが、適格となるソーシャルボンドの候補があることに気づくことが最も大事です。我々も3つほど選別して、結果的に1つに絞りましたが、可能な限り、多くのプロジェクトを選別して、そこから精査していく中でプロジェクトが厳選されていくという過程になります。
 そのため、ガイドラインでは、日本の社会的課題の解決につながるプロジェクトが例示されることが大事であると思っております。それが結果的にソーシャルボンド発行の裾野が拡大することにつながると思っております。
 当社は、先ほど冒頭申し上げましたとおり、50億という非常に少ない金額での発行でしたが、国内の一般事業会社としては初のソーシャルボンドであったこともあり、購入いただいた機関投資家の皆様から投資表明をいただきました。投資家としても非常に興味を持っている領域だと思いますので、日本でのソーシャルボンドの市場の拡大を発行体としても期待しております。

 長くなりましたが、以上です。

【北川座長】
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、BNPパリバ証券株式会社グローバルマーケット統括本部の中空副会長より、資料6「ソーシャルボンド市場動向と課題」につきまして、15分程度で御報告いただければと思います。中空様、よろしくお願いいたします。

【中空氏】
 ただいま御紹介にあずかりましたBNPパリバ証券、中空と申します。本日はこのような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
 声が若干ハウリングしているように聞こえるんですけど、大丈夫でしょうか。

【林委員】
 すみません。林ですけど、1か所、MX800というのがミュートになっていないように思いますので、ミュートにしていただいたらいいんじゃないかと思います。

【中空氏】
 ありがとうございます。よさそうです。では、進めさせていただきます。本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。私のほうで用意させていただきました資料は、「ソーシャルボンド市場動向と課題」ということになっております。10分から15分ぐらいでお話をさせていただきたいと思っています。
 実は今日、課題をいただいておりまして、内外のソーシャルボンド市場の直近の動向、あるいはソーシャルボンド市場の課題、それから、ソーシャルボンド市場の活性化に必要な事項は何かということを宿題としていただいたんですね。最初に現状、直近の動向がどうなっているのかというところから見ていこうと思っているのですが、実はこの資料をつくるときも、非常にソーシャルのところだけ取り上げるのは難しかったという現状がございます。
 なぜかと申しますと、全体的にサステナブルファイナンスとしての市場の捉え方が主になっておりまして、その中の一つとしてのソーシャルというものを取り上げると、非常に資料も少ないですし、とても難しいという現状がございます。
 そう考えると、ソーシャルボンドというのは、かなり特異なものになってきてしまったのかなと感じているところでございます。この委員会ではソーシャルボンドのマーケットをいかに大きくしていくかということを検討するということが趣旨だと分かっているのですが、と言いながら、マーケットの成長の仕方としては、ソーシャルボンドというのは何かしら困ったときに出てくるもので、常日頃から恒常的に出るものじゃないのかもしれないと私自身は今時点では考えている次第でございます。
 
 その辺に思いが至った理由を併せてお話をしたいと思っているのですが、まず2ページです。ここを御覧いただきたいのですが、左の上はセクター別のサステナブルファイナンスの発行量になっております。細かく何が除かれているかという違いによって、縦軸の目盛りが若干違っているとは思うのですけれども、右の上、地域別サステナブルファイナンス、やっぱり欧州が多いですねとか見ていただければと思います。左の下の図表ですが、商品別サステナブルファイナンスというのになっております。ここを御覧いただくと、ソーシャルボンドというのは、下から2つ目の青いものでございます。青いのが結構多いじゃないのと思っていただけると思うのですが、2020年の特徴的な出来事だったということだと言えると思います。
 2020年、御案内のとおり、コロナ債がソーシャルボンドとして分類されましたので、コロナによって影響が出たような発行体だとか、それに必要な資金調達というのはコロナ債を使っての発行になりました。投資家から見れば、EとかGだったら投資の手法が分かっているのだけど、Sというのは何に投資したらいいのか分からないと言っていた多くの人たちにとって、Sを発行する考え方を確立してくれたとも言えるのですよね。なので、2020年は、ソーシャルボンドのマーケットにとってはとてもメモリアルになったと結果的には思っています。
 しかし、ここは同じように、2020年は、ソーシャルよりもサステナビリティリンクローンとかリンクボンドのほうが大きく広がっていると見ていただけるのではないかと思うのですね。発行体側から見て得であるということもさることながら、リンクローン、リンクボンドというと、やはり発行するセクターをあまり選ばないということもありまして、発行もしやすかった。それから、投資サイドから見ても、何のために投資するのかというインセンティブづけになったと言えます。やはりプレミアムが取れないと投資できないということにもなりまして、ソーシャルボンド、グリーンボンドだからと言って、プレミアムが取れませんと、投資家側から見ても投資するインセンティブにならないのですよね。そうすると、リンクローン、リンクボンドであってもスプレッドが上乗せされてくるのであれば、投資対象となる、ということになります。結果、サステナブルファイナンスのマーケットの成長の仕方も、グリーンボンドとかソーシャルボンドそのものよりも、それ以外のところの伸びが大きいという現実になっているということでございます。
 ちなみに右下には年限別サステナブルファイナンスとありますが、ソーシャルだからといって必ずしも長くはありません。超長期というものではない、ということです。と言いながら、グリーンボンドとの違いを御覧いただければと思っております。

 さて、次のページに行きたいと思います。グローバルのソーシャルボンドマーケットということなんですが、やはり2020年はメモリアルな年でしたということがここでも確認できると思います。2020年はソーシャルボンドが出ていますよということが分かります。それから、左の下にあるのですけど、通貨別の内訳。残高ベースで見ると、大宗はユーロ建てになっておりまして、先ほどANAの方からソーシャルボンドの発行の説明をしていただきましたけれども、そういう意味でいくとまだまだ、円建ての債券が出てきてもいいよねと思います。
 それから、WAMですね。年限なんですけれど、ソーシャルボンドは12.5年程度、必ずしも長くないという言い方をしましたが、これは平均で取ると相対的には少し長めのものが出てきますということが分かります。
それから、右側を見ていただいて、上から3つまでのポツはありきたりの、ソーシャルボンドは何ですかという話が出ているだけなので飛ばしますが、4つ目を御覧いただきたいと思います。2020年にソーシャルボンドが拡大した背景はコロナ債、かつSSAによる債券発行が進んだことであると。欧州SSAのソーシャルボンドは、2019年の70億ユーロから、2020年には1,020億ユーロになっていますよということになります。なお、これは左の上のグローバルソーシャルボンドというのはSSAだけに特定したものでございますので、訂正していただきたいと思います。このように、コロナ禍での雇用維持を目途として、いっぱい発行されましたよね、ということなのです。
 2020年にソーシャルボンドを多く発行した例としては、EU、それから、フランスのCADESやUNEDIC、韓国であるということです。アメリカの場合はSSAではなくて、Fannie MaeやCiti Groupによる発行が多かったということになっています。
 こういうふうに特徴的になってきた理由なのですが、やっぱりSSAの発行が多いのですよね。なぜかというと、次のページ、4ページを御覧いただきたいのですが、やはりマーケットは未成熟でございます。未成熟のマーケットで、マーケットの出てきているものを買おう、買わせようと思ったら、やっぱり工夫していただかなきゃいけなかった。何かというと、ソーシャルボンドというのは、投資家の中で、私の中でもそうなのですが、プロジェクトがもうかるということにまだ結びついていないのです。グリーンプロジェクトなどは、それこそECBも、これからはグリーンに関わるコストをかけなければ、逆に、これから先、新たにコストがかかることになって、事業会社にとってもリスクなのですよと説明しています。それから、それを認めますと、金融機関にとってもリスクになりますよ。あるいはコストが急にかかることによって物価だって安定しなくなりますよということをECBも言い始めているわけなのですが、ソーシャルに関しては、果たしてどういうリスクが出てくるのか。それをマネタイズするにはどう考えたらいいのかというのは非常に難しいままになっています。しかも、資金使途とか、それから、それを対象にする人々とか、割とどうやって利益にしていいか分からないことが多いのが現状です。ここの4ページの下のほうに書きましたが、貧困層向けの資金など、いかに収益化するか難しいものが含まれています。なので、そこを補って投資をしてもらおうと思ったら、リスクを補うための工夫が必要になっているということになります。
 そもそも論として発行体に信用力が高いところでないと信用補完ができない、ということなのです。だから、SSA、や国の金融機関とか、もともと持っている信用力の高いところである銀行などが主な発行体になります。つまりは、銀行の信用力が高いからであるという話なのですが、そういう信用補完が何かしら必要になるのではないか、ということです。だから、今までは、少なくともそういった安定感があるところ、信用補完が期待できたところの債券発行が多くなっていた、ということだと考えています。

 次のページ、5ページは、日本国内の発行体です。先ほど冒頭に、金融庁の方からの御説明の中にも、それぞれどんなことでどんなことを目途に出してきたかというのが開示されていたと思うのです。日本の場合、右側にいろいろ書きましたが、住宅、道路、教育、健康、ヘルスケアみたいなところが多かったわけですね。それ以外には、国際協力的事象になっている。サムライ債も一部ですが、日本の円が余っていることを期待して出てきているものも散見されました。
 先ほど申し上げたように、信用補完が必要になってくる資金調達の仕方ですので、大学、銀行、それから、投資法人、事業会社などいろいろ広がっていくといえど、広がり方としては、やはり大学債、投資法人債とか、格付が高い、目途がはっきりしているもののほうから広がりやすいのではないかと想像しています。事業会社の発行も非常に待たれるところなのですが、いかにプロジェクトとしてマネタイズしていくかということの説明力を高めるかということと、加えて、どれだけプレミアムを載せられるか、が重要になってくと考えます。投資家にとっても魅力的なものとして仕立てることができるかというところにキーポイントが来るのだろうなと思っています。
 それができないのであれば、発行体には偏りが残ったままになるのであろうと思うのです。そのため、コロナなど不測の事態が起きたときに、その不測の事態に対して何とか資金調達をするときにSSAなど信用の高い発行体がソーシャルボンドを発行するということで成長していくのではないか、と実は私は予想しているところでございます。

 次のページ、6ページがまとめになってくるのですが、発行市場サイドの問題として、社会問題解決と収益化のバランスをいかに取るか、それを説明するか。そして、投資家にも納得してもらうか。ここが最大に難しいということになります。さらに銘柄のバリエーションをいかに増やすかということなのですが、セクターにばらつきがどうしても出てしまうのかなと思います。ここをならす必要があるのかないのか。ならすことが必要だと、いろんなバリエーションが出てきたほうが、いろんなセクターが出てきたほうが市場としてはいいのですけど、それをどうやってやるかは、最初の収益化のバランスをいかに取るかにかなりリンクしてくると思います。ですので、発展の仕方を考えることは非常に難しい。
 さらに信用力の低い発行体にも出してもらったほうがスプレッドも乗りやすくなり、投資家にとっては選択肢も広がってよいのですが、ソーシャルボンドを信用力の低いところにどうやって発行させるのか、発行を可能にするのか、を考える必要が出てきます。 一方、投資家サイドなのですが、やはりソーシャルボンドとして出来上がりのものを買おうと思ったら、評価の仕方、資金使途のチェック、第三者意見の適格性、これらにコミットメントが欲しいなと思うところだと思います。ESGスコア会社に対して、指定をしたらどうかとか、そういう議論はあると思うのですが、ソーシャルボンドの形成にもそうした検討があると望ましいなと思います。
あと、ソーシャルボンドか、グリーンボンドか、サステナブルボンドかということで、分ける必要があるのかないのかということも考えなきゃいけないと思います。ソーシャルボンド市場、それだけを取り立てて大きくしていく必要があるかどうかということですね。
 
 それから、最後にもう一つなのですが、たとえば、投資家に何かしらの投資ガイドライン、投資指針となるものを規制までいかずともルールとして出すかどうか、です。例えば、一定程度ESGのバランスを取ることが望ましいとか。つまり、Eだけじゃない、Gだけじゃない、Sもなきゃだめだ、というようなことを規制にいれてしまうのかどうか、です。 もし規制の中に入ってくれば、つまり、ESGのバランスを取りなさいよという文言が入ってくれば、Sは何を取らなきゃいけないかと投資家のほうでも真剣に考えると思うので、ソーシャルボンドは市場へのニーズは増えますし、その市場ニーズに合わせて市場そのものも拡大すると思います。しかし、それをする必要があるのかということですね。
 
 以上述べてきましたが、仮に、サステナブルというところで考えていいということであれば、私は、サステナブルボンドのほうに、より偏って、拡大していくマーケットになるのではないか、と考えます。そして、コロナ禍と同様に、何か問題が出てきたときには、SSAを中心にしたソーシャルボンドというのがまた発行されていくという、そういう、何というんでしょう。恒常的に大きくなるというよりは、景気に連動したような受皿になっていくというマーケットになるのかなと今は想像しています。
 でも、そうではなくて、ESGをアセットとしてちゃんと持ちなさいという規制ができたり、その中にもバランスが取れたほうが望ましいという規制ができてきたりすると、また大きく違ってくると思うのです。そういうものが全くなしでいくのであれば、ソーシャルボンド市場は偏りが残ったままになるのではないかと感じている次第です。これから先、この市場を拡大させましょう、ということを前提に議論するのであれば、プロジェクトや資金使途のマネタイズが難しい以上、私は適正な規制が必要になってきているのではないかと思っています。

 ということで、私からのプレゼンは取りあえずここで終えたいと思います。御清聴ありがとうございました。

【北川座長】
 お二人より貴重なお話ありがとうございました。
 それでは、これより皆様から御意見等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。今回、多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間といたしましては、恐縮ですが、長くても4、5分ぐらいということで、目安にしていただければと思います。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りの1分である旨のチャットが発言されている委員の皆様に送付されますので、発言時間の参考にしていただければと思います。それでは、御議論をお願いできればと思います。

 それでは、最初に、大和総研の熊谷様、お願いいたします。
 
【熊谷委員】
  熊谷でございます。ありがとうございます。初めに、短期間で前回の意見を取りまとめていただき、また、本日の議論が円滑に進むよう、詳細に整理していただいた金融庁の皆様に感謝を申し上げます。
 本日、スライドでお示しいただいた5つの各論。資料2の44から45ページでございますけれども、それぞれについて簡単に意見を申し述べさせていただきます。

 まず44ページの各論1の1、「社会的課題の示し方」というところであります。この社会的課題の性格については、国際的あるいは国・地域において、客観的に社会的課題として認識されていることが重要です。
 例えば、「国際的な社会的課題」は、条約や国際会議における宣言、また、「国・地域における社会的課題」は、政府・自治体等による戦略、学術団体・業界団体等の課題提言等の内容が考えられます。加えて、社会的課題は刻一刻と変化するため、その時点で社会的課題になっていることや、将来的に課題になると想定されることについても、発行体が貢献できるようなプロジェクトであれば、対象となる社会的課題に含まれるものと考えます。

 次に、課題、各論1の2の「ソーシャルプロジェクトの示し方」でございますけれども、これに関しては、「6つの事業区分に限定されるものではない」とするICMA原則との平仄を踏まえつつ、既存の区分に分類されないような課題、例えば我が国が直面している少子高齢化対応ですとか、社会インフラの老朽化対応、地震などの災害対策、「SDGsアクションプラン2021」に示されるような主な取組例などについて、より具体的に参考追記をすることが望ましいと考えます。

 次に、各論1の3、「対象となる人々の示し方」でございますけれども、「一般大衆」が対象となる社会的課題が多くあると認識しております。ICMA原則との平仄を取り、例示して、さらに「一般大衆を想定することができる」旨も示す。それとともに、「一般大衆」を対象とした場合でも、その中で、特にどのような状況、状態の人を想定しているのか、付記して、社会的課題と同様に、日本独自の課題に対する適切な対象を追記することが望ましいものと考えます。

 次に、45ページ、各論2の「プロジェクトの評価と選定のプロセス」でございますけれども、「社会的な目標」の示し方については、特定の社会的課題に対して、発行体としての戦略における位置づけ、実務上は、具体的に社会的便益として期待される効果を明示することが望ましいと考えます。また、「規準」の示し方において留意すべき事項としては、判断基準をより具体的にすることが望ましい、といった点が考えられます。
各論3、「調達資金の管理」でございますけれども、関係者の混乱を避けることからも、ICMA原則及び環境省グリーンボンドガイドラインの記載との平仄を取ることが最も重要です。

 各論の4、「レポーティング」でございますが、レポーティングにおいては、可能な限り3段階での開示を行うよう促すことが望ましいことは、方向性としては理解いたします。一方で、ソーシャルボンドの場合には、グリーンボンドのように、アウトプット、アウトカム及びインパクトを定量的に示しにくいということも事実でございます。
今後の省庁横断的なインパクト指標の作成と具体的な例示を期待しておりますけれども、いずれにしても、3段階での開示が具備されていないと、ソーシャルボンドとして認定されないような誤解を生じさせないことに留意する必要があります。

 最後に、各論5の「外部評価」でございますが、外部評価機関は、ソーシャル性の判断において、その評価軸を詳細に開示し、評価手法、適用基準と併せ、評価根拠についても明確に示すことが望ましいと考えます。一方で、評価機関による評価軸のばらつきは、ポリシーとして認められるべきものであり、投資家がそのばらつきを理解した上で、投資判断を行うようにしていただきたい。

 また、ガイドライン策定に当たり、マーケットの自主性が最大限尊重されるようお願いいたします。

 以上、簡単ではございますが、それぞれの各論について意見を申し述べさせていただきました。ありがとうございました。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、竹林様、お願いいたします。

【竹林委員】
 Sustainalyticsの竹林でございます。
 
 まず前回に引き続いて、各論1の資金使途のところでございます。事務局作成資料のほうでは、ソーシャルにおいてはパリ協定のような国際的に一貫性のあるゴールがないとの前提に立たれているという記載があったのかと思いますけれども、言及いただいているSDGsこそがパリ協定と並んで途上国、先進国を問わず、各国が共通して目指すゴールとして国際的に認識されているものでございますので、解決すべき社会課題を検討する際の入り口としては、適切なものなのだと思います。
 他方、SDGsアクションプランに関して、特にそこで挙げられている8つの優先課題は、御承知のとおり日本として注力すべきものを特定されているものでございますので、グローバルに事業活動を展開している企業様にとって、それらが等しく自社にとって優先的に解決すべき課題と認識されるべきものかどうかというのは別の議論であるという点は留意したほうがいいのかなと思います。
 また、これを国内の社会課題特定の参考ツールとして見た場合ですけれども、この8つの優先課題の取組事例を細かく見ていくと、社会課題として違和感ないものが挙げられている一方で、どちらかというと日本固有の産業課題と認識されるべきものも含まれている印象がございます。それらについては、前回もお話しさせていただきましたが、ターゲットポビュレーションの特定を特に精緻に行わないと、ビジネス・アズ・ユージュアルで対応されるべきプロジェクトとの違いが見いだせないものとなってしまう可能性があります。結果的に、ソーシャルボンドに係る国際的なプラクティスと乖離してしまわないかという懸念も生じると感じました。
仮に現在検討されているガイドラインにおいて、SDGsアクションプランについて言及される場合をイメージしますと、今申し上げたような一定のリミテーションがある点を踏まえて、具体的な活用方法、どういう形であれば参照情報として有用であるかのイメージが湧きやすい形で言及していただくのがよいかなと考えております。

 各論2以降についてですが、基本的にICMA原則及び環境省グリーンボンドガイドラインの内容を踏襲されていると理解していますが、特にソーシャルボンドにおいて議論しておくべき点として、各論2の「プロジェクト評価と選定のプロセス」での取組と、各論4の「レポーティング」における取組、この両者がきちんと整合的であるものとしておかなければならないという点を挙げさせていただきます。

 各論4の「アウトプット、アウトカム、インパクト」の考え方そのものにもちろん異論はないんですけれども、これらは当然ですが、レポーティングのために計測するものではなくて、ソーシャルプロジェクト実施によって目指していたものが正しく実現されているかをモニターするというのが一義的な目的だと思います。
 その意味で、計測されるべきアウトカム、インパクトはプロジェクト選定プロセスにおいて検討される社会的目標と当然整合的なものであるべきですし、同じくアウトプットもプロジェクト選定の基準等と矛盾なきものとするということが重要だろうなと思います。
 これらの点に関してあえて言及させていただいた背景といたしましては、やはりソーシャルプロジェクト特有の効果測定の難しさという点がありますよね。どうしても計測すべきものよりも計画可能なものに流れてしまう傾向というのがございます。実務上の難しさところを承知しつつも、それでも目指すべき方向性として言及しておくべきかなと考えた次第です。
 
 もう1点、「プロジェクトの評価選定プロセス」において、“取り組むソーシャルプロジェクトを発行体の包括的な戦略、方針の文脈の中で位置づけることが望ましい”とされている箇所がありますが、昨今の潮流として、発行体自身の掲げる戦略や方針との関連性について何らかのレビューを行うというのは、各評価機関のSPO等においてある程度、既に標準的なプラクティスになってきているという点をまずお伝えしたいと思います。
 ただ、事業会社のソーシャルボンドで対象とされるプロジェクトは、全社的な経営戦略や事業計画において言及されるような大規模なビジネスというよりも、どちらかというとそれらの付帯的活動として実践される社会配慮事業が対象となる場合も多いですよね。そういった場合においては、プロジェクトを事業戦略・計画の中で位置づけようとしても、粒度が合わなくて難しいという声も伺います。
 とはいえ、特にソーシャルについては必ずしも営利活動の文脈のみに位置付けなければいけないというものでもないと思います。例えば、従業員のジェンダー格差是正を掲げるソーシャルプロジェクトを対象としたボンドを発行しようとする企業は、全社的なダイバーシティ方針や行動計画を策定していることで自社の経営レベルのコミットメントを示すことができる場合もあるかと思います。ソーシャルプロジェクトのケース毎に、発行体はどういった戦略、方針との整合性を示すことが重要なのかといった点も、ガイドラインで示していただけると有用かなと思いました。
 
 最後、外部レビューについて、なかなか当事者としてコメントする難しさもありますが、ICMAのガイドラインで示されている内容と整合的な内容を明記していただくことについてはもちろん異論ございません。仮に留意すべき点があるとするならば、外部レビューと一括りに申し上げても、オピニオン、ベリフィケーション、レーティング評価等市場において求められている役割が幾分異なるところもございますので、その点を整理した議論も必要かなと考える次第です。

 私のほうから以上とさせていただきます。ありがとうございます。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、反田様、お願いいたします。

【反田委員】
 反田でございます。本日もよろしくお願いいたします。私からは、主に論点5の外部評価に関する事項について、前回に続きまして、投資家の立場として意見を申し上げたいと思います。

 まず外部評価機関による外部評価の意義ですけれども、こちらはソーシャルボンドとしての信頼性を担保することであると考えております。特にグリーンプロジェクトなどと比べまして、内容が多種多様で、一律の評価軸を設定することが難しいソーシャルプロジェクトに対しましては、外部評価の意義は相応に高いと考えております。
 
 また、外部評価の有益な点としては、そのように一律の評価軸を設定することが難しいプロジェクトに対して、グローバルスタンダードであるICMAのソーシャルボンド原則に適合した形で、ソーシャル面の観点から全体像がコンパクトに分かりやすく把握できるという点にございます。そのためにも利回りに影響が出ない範囲内であれば、外部機関からの評価や認証を受けているほうが好ましいことに間違いはございません。ただし、現段階では、外部評価や認証が必ずしも必要であるとは考えておらず、我々自身が発行体と直接コンタクトを取る中で、資金使途の妥当性やレポーティングの蓋然性を確認することができれば、外部評価がなくても、ソフトではございますが、ソーシャルボンドとして投資をしております。
 
 ソーシャル市場、特に国内の事業会社によるソーシャルボンド市場はまだ黎明期にあり、何よりもソーシャルボンドと銘打った債券を発行しやすい環境を整えることで、発行量を増やして、社会的認知を高めて、ソーシャルボンド市場の活性化を図っていくことが何よりも重要であると考えております。
 外部評価や認証の基準が過度に厳格になる場合、発行体のコスト増並びに投資家が利回りをギブアップすることにつながり得る可能性があると考えております。その結果として、投資家の裾野が広がらないということになりかねないため、現段階においては、「すべき」項目については緩やかな適用にとどめることも一案であると考えております。
 また、国内の事業会社によるソーシャルボンド市場は依然として小さいため、現在の外部評価機関の事例も少なく比較が難しいという課題も抱えており、これはソーシャルボンド市場の拡大によって解決されていく課題であると認識しております。
 そのほか、外部評価機関がソーシャルボンドとして認証や評価を与える際は、何らかの情報に基づいているはずでございます。外部評価機関だけがそのような情報を使用するのではなく、外部評価機関からも発行体に対して、透明性向上に資するような情報提供を促す役割も担っていただくことを期待しております。

 発言は以上になります。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、梶原様、お願いいたします。

【梶原委員】
 ありがとうございます。JCRの梶原でございます。私からは、大きく4つ発言させていただきたいと思います。

 まず最初は、竹林様からのお話にもありました、資金使途を見る上で、あるいはグリーンプロジェクトの適格性を判断する上でのSDGsアクションプランをどう考えるかというところです。ここについて、一定のインキュベーションが必要であろうということについて賛成いたします。
 というのも、やはりその3要素、社会、経済、環境の3要素からなっているところがございます。ですので、一部はグリーンボンドに対しての関連性が強く、もう一つは経済成長に資する事業、そして社会的課題に資する目標と3つに分かれるところがございますので、ソーシャルプロジェクトとしての適格性を見極めながらアクションプランを参照することが望ましいと考えます。ICMAではSDGsの169ターゲットとグリーンプロジェクト分類およびソーシャルプロジェクト分類を紐づけるマッピング表を公表していますので、参照していただくことも有効かと思います。

【油布審議官】
 恐れ入ります。すみません。音声が悪いようなので、1回、ビデオ、動画を落として、音声だけで話してみていただけますか。負荷を下げてみて、音が改善するかどうか。お願いします。

【梶原委員】
 今、SDGsの目標とターゲットは、経済、環境、そして、社会という3要素がありますので、社会の要素に着目して、SDGsアクションプランは参照したほうがいいのではないかというお話でした。
 
 次が12ページに、環境省様のグリーンボンドガイドラインのほうでも参照されていて、竹林様からも御指摘がございました。企業が包括的な目標、戦略等を考慮するという点です。こちらに関しましては、やはりここが特に事業会社様を見る中で、戦略、目標、特に、今進んでおられる企業さんですと、経営戦略の中にこういったESGあるいはサステナビリティの要素をインテグレートしているというところがありますので、企業価値向上に今回の資金使途がどのようにつながるのか、あるいは持続可能な成長を企業がしていく上でのヒントというのがここに入っていると思いますので、ぜひこれもソーシャルボンドのガイドラインに盛り込んでいただきたいと思っております。

 次がインパクトに関するガイドラインに盛り込む事項ということで、今、この3要素について、3段階のアウトプット、アウトカム、インパクトについて入れるべきかどうかという御議論でございます。グリーンボンドガイドラインに入っていないということではありますが、やはりグリーンボンドと違って、ソーシャルボンドというのは、特にアウトプット指標だけですと、今、29ページから例示されている例を見ていただいてもお分りいただけますとおり、社会的成果がどこにあるのかというのが分かりにくいと思いますので、ぜひこの3要素によるインパクトの捉え方をソーシャルボンドガイドラインでは考慮いただきたいと思っております。

 最後が中空様からの御指摘もありましたサステナビリティボンドとソーシャルボンドに関する関係性のところでございます。今回のガイドラインの議論の中には入っていないんですけれども、やはりこれまでソーシャルボンド、サステナビリティボンドをいろいろ評価させていただきまして、グリーンとソーシャルの両方の性質を備えた資金使途が多くあることを実感しました。
 例えばグリーンビルディングの中にヘルスケア施設があるとか、そういったケースです。あるいは都市開発において持続可能な都市の成長を考えると、どうしても環境と社会の両側面が入ってまいります。こういったサステナビリティプロジェクトも積極的に取り組むということをソーシャルボンドガイドラインでも何らか言及していただけますと、一般の事業会社様としては、資金の積上げが容易になるほか、企業の収益向上につながるかと思います。

 以上です。ありがとうございました。
 
【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、森様、お願いできますでしょうか。

【森委員】
 JICAの森でございます。私から4点指摘させていただきたいと思います。

 まず資金使途のところでございますけれども、ICMAの原則で示された社会課題とSDGsの関係というのは、ICMA自体は関連のマッピングをしているというところもございますので、大きなフレームワークとしては、日本政府のSDGsアクションプラン、これをよりどころにするアプローチというのは国際的な整合性というのは、枠組みとしては取れていると考えております。
 1点、ANAの礒根委員の御意見を伺いまして、非常に発行体の方々、これからも悩まれることは多いと思うのですが、そういう意味で、ガイダンスを発行された後、第2段階の取組として、ぜひ発行事例のグッドプラクティスというのをKPIと併せてつくっていかれるということが発行体の内部での議論を円滑化できるのではないかと考えます。
 
 2点目は、評価の選定プロセスになります。事務局の民間発行体の事例に記載されていますように、事業がもたらすポジティブな効果の規準だけではなく、ネガティブな影響が予見される場合のセーフガードポリシー、これも併せて示していくことが、投資家の方々の判断において重要になろうかと考えます。
我々途上国での公共事業をサポートする場合におきましても、環境、社会に対してのガイドラインを整備いたしまして、一般的あるいは特定の事業で考えられるネガティブな影響項目をリスト化して、事業選定時にスクリーニングを実施しております。ネガティブな影響があるという場合には、その低減をいかにするのか、その対策を定め、モニタリングしているということで、そういう試みも一つ重要かなと考えております。

 3点目は、レポーティングであります。今回、ICMAのソーシャルボンドのインパクトレポーティングガイダンスの文書に基づきまして、事務局は、グリーンボンドガイドラインに含まれていない、ロジックモデルによる開示を提案されたということは、グリーンよりも定量化が非常に難しいソーシャルの評価の在り方としては、全く適切なものとして我々は非常に歓迎したいと思っております。
我々も実際に事業をやりますときに、インパクト、すなわち目標に向けて、いかにプロジェクトのアウトカムをデザインするのかということを議論して、プロジェクトとインパクトの道筋を整理するというロジックモデルは有用だと認識しております。
 他方、これまで御指摘がありましたように、定量化するのは非常に難しい。特にアウトカム以降、外的要因も入ってくるところがございますので、なかなか容易ではございません。結果、定性的な説明も併用しながらステークホルダーの方々にも伝えているというところがございます。定量化自体は、努力目標としつつも、プロジェクト、このロジックモデルの考え方を、プロジェクトのデザイン、選定評価を行うということを推奨されたらいかがかと思います。
 さらに、開示ということが発行体の方の御負担になるということも想定されますので、既存の経営方針、業務実績の報告書で、そこは代替可能としていくという負担軽減策も併せて必要かなと考えます。

 最後の1点になります。グリーンボンドでは、外部評価の視点にばらつきが見られるのではないかと考えています。比較可能性にそれが影響を与えるのではないかと見ております。必ずしも、評価機関同士で評価の考え方を画一的に設定するということは適切とは思いませんが、ソーシャルボンドはグリーンボンド以上に、評価機関による評価の考え方に幅ができるため、評価規準の透明性の担保が、投資家の比較可能性上は重要かなと考えております。
 そのために、例えば信用格付機関が公表されているようなメソドロジーに類するものを外部評価の方々が公表し、評価の考え方に対する透明性を担保する。比較可能性を容易にするということも一つの方策と考えております。

 以上でございます。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、相原様、お願いいたします。

【相原委員】
 野村證券の相原でございます。よろしくお願いいたします。この検討会におきましては、今、債券のお話をされていらっしゃるというところでございますけれども、昨日、弊社が取り扱わせていただきました案件で、いわゆる新株予約権を利用しましたファイナンス手法、こちらを実施したところです。その資金使途がいわゆる医療機器の製造ということで、ソーシャルボンド原則、こちらの考え方を準用したエクイティの調達手法というものを使わせていただいたというところでございます。

 債券、いわゆる国内債のみならず、このような形でソーシャルボンド原則がエクイティの中でも投資家の中に広まってきているというところから考えますと、やはり規準というものはやっぱりしっかりした形でおつくりいただくのが、いわゆるマーケットの信頼性ということを維持するためにも非常に大事なのではないかなと考える次第でございます。
 
 そういった中で、今、各論ということで御提示いただきました内容でございますけれども、やはり各論のいわゆるソーシャルプロジェクトの示し方と、対象となる人々の考え方、こちらにつきましては、いわゆるICMAのソーシャルボンド原則に従ったような分類がマーケットの信頼性というものを維持する意味で非常に大事ではないかなと考えております。
 先ほどエクイティの事例を挙げさせていただきましたけれども、国内債のみならず、発行体からすれば、海外での資金調達ということも視野に入れた調達活動を実施しているというような状況でございます。このような中でございますと、やはり規準というものを設定することが必要だということでございます。
 ただ、先ほどございましたSDGsアクションプランですね。こちらにつきましては、日本国内におけます課題というものを非常に的確な形で抽出しているというように判断しております。ただ、こちらが、いわゆるICMAのソーシャルプロジェクトの範疇に入ってくるかどうかというところを確認した上で使うということであれば、このマーケットの信頼性で言うところが維持できるのではないかというのが私どもとしての考え方でございます。
 
 対象となる人々の示し方についても同様でございまして、あえて、今のICMAの定義しておりますような対象になる人々の考え方というところを拡大していく必要はないと考えております。
 ただ、やはり一般の人々というものにつきましては、一般の人々にどのようなメリットがあるのかというところについて、明示していくことは必要ではないかというように考えております。
 
 各論の中の御指摘いただきました点に関しまして、レポーティングの点で申し上げられればと考えておりますけれども、前回のミーティングで、私は、エンゲージメントという行動を投資家の方が取られてきているということを御案内させていただきましたが、やはり継続性というものがレポーティングの中に求められているというところです。発行後の事後的な情報提供というものがこのサステナブルファイナンスを支える意味では非常に大事ではないかと考えておりまして、こちらに提示されていますアウトプット、アウトカム、インパクトの3段階に対しての開示というところは、投資家に対しての情報提供として的確ではないかと考えております。
ただ、定性的な部分というものをあまり私どもとしても軽視するということではなく、定性的な内容に関しましても、投資家の方に対して開示して訴えていくということが必要ではないかと考えております。
 一方、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行ペースも早まってきているというところではございますので、やはり定量的な目標に対しても投資家の方の関心が高いということを考えますと、やはり定量的なアウトプットというものを出していくということは必要ではないかと考えております。

 それと、各論3に少し遡りますが、調達基金の管理ということで、これはグリーンボンドでもそうなのですけれども、再投資、いわゆるプロジェクトを売却した後に、そのお金をどう使うかということについてはあまりガイドラインというのは明確に定まっていないというところが一般的なところではないかと思います。この点について何か検討していく必要はないのかなというのが私どもとして持っている問題意識ではございます。
最後、論点5番の外部評価の点でございますけれども、やはりこういったサステナビリティファイナンスの横比較というところが非常に大事ではないかなと考えております。比較できるものが必要だということで、外部評価につきましては、先ほど外部評価についての捉え方を外部評価の機関さんのほうから開示してはどうかというお話があったんですけれども、やはり外部評価の取扱説明書みたいなものが付記されますと、投資家の方に対して使いやすくなるのではないかなということを考えた次第ではございます。

 すみません。野村證券からの意見は以上でございます。ありがとうございます。

【北川座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは、林様、お願いいたします。

【林委員】
  今日はありがとうございました。幾つかかぶる部分もありますので、少し割愛しながらお話ししたいというふうにも思います。

 まず各論1のところで、いろいろ書いてありますけれども、基本的には、社会課題、それから、ソーシャルプロジェクトの対象となる人々の示し方を考えるにあたり、基本的には、海外であろうと、日本であろうと一緒だと思っているんですが、この社会的課題というのは何ですかということを考えたときに、このSDGsのアクションプランにも通じるものがあると思います。つまり、人々の生活にとって必須であるのに、それにアクセスできない人たちのためにサービスを提供するということを念頭に置いて考えていくということだと思っています。
 先ほどの全日空さんのお話を本当に興味深く伺っていましたが、バリアフリーというもの、それから、アバターもぜひ今後検討していただきたいと思いますけれども、やはり社会的弱者と言われている人たちが、より生活を豊かにするために何ができるのかというのを民間の立場で、かつ、収益もちゃんと確保できるようなプロジェクトがあるのであれば、ソーシャルボンドを出せばいいと思っておりますが、ソーシャルボンドを出さなければいけないということは全くないと私は思っております。
 
 では、ソーシャルというのは何ですかという指針の一つとして、このSDGsアクションプランというのがあると思うんですが、これは皆様がおっしゃっているとおり、別にソーシャルだけではないので、例えばグリーンボンドの対象である環境の話ですとか、あるいはそもそも民間が関わるものではないと思われます外交問題ですとか、そういったものを取り除いていけば、おのずとその中に残るソーシャルというのが見えてくるのではないかと思っております。
 日本の特殊なものが仮にあったとしても、それは投資家にとって分かりやすいように説明していけばいいと思いますので、あえて、ICMAのソーシャルボンド原則から6つの事業区分以外に追加する必要はないのではないかと考えております。
 
 加えて、プロジェクトの評価、選定、管理、レポーティングと実際に発行する前、発行した後につきましても、やはり投資家にとってきちっとモニターできるようなものでなければいけないと考えます。したがいまして、選定する際に、もちろん社会的な意義があるかもしれませんけれども、選定する上で、きちっと目的、それから、規準、具体的なものが説明できるようなものを選んでいくということ、いわゆる具体性と考えてもいいのかもしれませんけれども、そういったものが必要だと考えております。
 
 ありとあらゆる存在が社会的な存在であることは間違いないわけですが、その中で、あえてソーシャルボンドと切り取るのであれば、そこには説明責任が当然伴うものだと考えております。その観点から参りますと、調達資金の管理、レポーティングというものについても同様にICMAの原則に従って、できるだけ説明責任があり、透明性の高いものを目指していくということではないかと思っております。
その中で、インパクトまでどうしても説明できないものも当然あるわけですが、例えばケーススタディを示すとか、投資家が見て、何のためにこの資金を使っているのかということが分かりやすいようにするということが発行体さんにとっては重要なことになると思っております。
 
 それから、最後に外部評価については、これもいろいろな見方があっていいというふうには思っております。とはいうものの、投資家が外部評価機関のコメントについて、どういう観点で評価したのかということが分かるように、先ほどから申し上げていることと同様に、透明性の高いものということが原則になるのではないかと思っております。
 
 結論から言いますと、ICMA原則に従いながら、もし地域の特性が仮にあるのであれば、それはきちっと説明すればいいということだと考えております。

 以上です。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、大石様、お願いいたします。

【大石委員】
 R&Iの大石です。よろしくお願いします。まず各論1です。社会的課題の示し方というところですけども、まずはやはりソーシャルボンド原則に沿った説明がなされるべきものなのかなと思います。やっぱり多様なものがソーシャルプロジェクトとしては考えられるので、例示されるカテゴリーに合致していればそれでいいよという、そういう発想ではなくて、やはり具体的にソーシャルプロジェクトを社会的課題の対象となる人々に、原則に沿った形でまず説明するということが大事なのかなと考えます。
 
 それから、各論1-2と3、プロジェクトの示し方、対象となる人々ですけども、2ですが、ワールドワイドで、地域を限定しないソーシャルプロジェクトの事例というのはあるだろうと。それから、我が国の固有のプロジェクトというのも恐らくあるでしょうということで、それを分けるというのも一つの方法かなと。それで対象となる人々をそれに紐づいて例示するという形でも分かりやすい面もあるかなと思います。これは一つの例ですね。
 それから、対象となる人々の示し方ですけども、一般の大衆という形になった場合は、広く対象とするわけですけれども、やはりその中で特定の富裕層とかそういったものが対象とならないような、分け隔てないという形のものが望ましいかなと思います。

 45ページの項目で各論2から5ですけれども、やはりグリーンボンド原則との平仄を合わせるというのがまず一番、基本のところかなと思います。その中で、プロジェクトの評価と選定のプロセスのところですけれども、社会的な目標については、発行体が解決しようとする社会的課題及び解決で生まれる便益を示すこと、これがまず大事と。それから、具体的には、発行体のサステナブル戦略の中で特定したマテリアリティと目標を示すというような形がいいのかなと。それから、基準は、目標が示されていれば、その目標の実現に値するプロジェクトということでいいのかなと思います。
 調達資金の使途は特に、ソーシャルもグリーンも同じで構わないと思います。

 それから、レポーティングですね。なかなかインパクトというのが、特に民間から見ると、発行体が自ら測定することが非常に難しいものが多いのかなと。物によってはどうしても自治体とか国といった統計的なものに左右されるようなデータというのもやはり多いのかなと思います。
 可能な限り、アウトプット、アウトカム、インパクトの3段階で開示をすることが望ましいとは思いますけれども、やはりアウトプット、アウトカム、あるいはアウトプット、インパクトというような形で、どちらか、多少は偏るかもしれませんが、可能な限りで開示するということで仕方がないかなとは思います。
 
【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、森澤様、お願いできますでしょうか。

【森澤委員】
 こんにちは。社会的課題としましては、これはもう当然ながらICMAのソーシャルボンド原則、こちらのほうにのっとった上で、SDGsアクションプランの8分野を例示するということ、これは事業会社さんが今後発行したいということに当たって、何か分かりやすいものが要るというのが今回作成に当たったということをお伺いしておりますので、このアクションプランという8分野について例示していけばいいのではないかと思います。
 
 そこの上で、日本固有の問題と言うと何なんですけれども、固有と言えるかどうかなんですが、女性の活躍、取締役会におけますジェンダーということは重要視すべきだと思いますので、今回、上場企業をはじめとする民間企業を対象とするということになっていますので、この発行体企業の取締役会について、そちらにつきましては、取締役会のジェンダーがどのようになっているかということ、ここを重視するということが望ましいと思うんですね。ここのところを少し言葉を添えていただくことによりまして、そういったソーシャルボンドを発行する発行体となる企業は、そういったジェンダーバランスを意識していただけるのではないかと思います。

 あと、評価であったり、プロジェクト選定、調達、それから、そういった部分におきましては、ICMAの対象、こちらはよく考えられているかと思いますので、これを基本にするということでいいと思います。

 レポーティングにつきましては、今回、事務局のほうがいろいろとつくっていただきましたアウトプット、アウトカム、インパクト、これはすごくよくできていると思いますので、こちらの3段階の開示ということを促すということは必要だと思います。どういうインパクトがあるのかということが示していけることができるならば、ソーシャルボンドの意味、それから、重要性ということが今後伝えていきやすいのではないかと思います。
 レポーティングにつきましては大変だとは思いますけれども、開示の負荷はあるかと思いますが、年に1回の簡易的なものであっても、少し開示をいただくということ、レポーティングをいただくということですね。そこは課題がある場合には早く気がつくということがありますので、このレポーティングの重要性ということを踏まえていただいて、レポーティングは、負荷はあるのですが、やはり開示していただくということですね。これを促していただければと思います。
 
 外部評価は、ICMAが書いていらっしゃるような外部評価が大変なように、多種多様で一律の評価が難しいのは当然ですので、こちらの中では外部評価も重ねていただくことで、いろんな一般化といいますか、規準づくりもできていくかと思いますので、外部評価は、評価機関の方が大変とは思いますけれども、こちらの部分を事例として出していただける範囲があれば出していただいていけばと思います。

 以上です。

【北川座長】
  ありがとうございました。

 それでは、水口先生、お願いいたします。

【水口委員】
 水口です。最初に礒根様と中空様から御報告いただきましたこと、ありがとうございました。大変興味深く拝聴いたしました。特に、中空様からの社会問題解決と収益化のバランスをいかに取るかという問題提起をいただきました。興味深いと思います。
 
 一方で、御発表の中にもありましたが、コロナ債ではソーシャルボンドが大変増えてきたということもございました。つまり、コロナのように、明確な課題、分かりやすい社会課題があれば、ソーシャルボンドというのは出せるのだなということがよく分かったということだと思います。その意味では、社会的な課題とは何なのかということを分かりやすく例示するということが重要だろうと思います。
 この社会的課題の示し方のところですが、これは例示ですので、ガイドラインの中での例示ですから、分かりやすく幅広に示して、ヒントを示すということでよいのではないかなと思います。具体的には、グローバルな社会課題と、国内あるいは日本固有の課題というのを並列して、両方掲げてよいのではないかと思います。
 また、特にSDGsなど、いろいろ参考にできるものはあると思いますが、日本に固有の課題もいろいろございますので、ここは考えて課題を、例えば、今、森澤さんからあったジェンダーの問題なども含めて、幅広に取り上げてよいのではないかという気がいたします。
 私の希望としては、例えば地域社会の疲弊に対する対策ということを一つ挙げていただきたいと思いますし、人権救済、人権被害の救済ですかね。ビジネスと人権の指導原則というものもありますので、その救済の問題、それから、ジャストトランジションに対する対策。一方で、サステナブルファイナンス全体の動向の中では、脱炭素化を進めていくという大きな方向がございます。脱炭素化を進めていく中で、なかなか産業界あるいは雇用の関係でも苦しい思いをされる方もおられると思いますので、ジャストトランジションを支えるような施策というのも重要な社会課題として挙げられるのではないか。こういった具体的なものをいろいろ挙げて、社会課題の例示の部分については、具体のものを見ながら、皆さんで、これは入る、これは入らないといった議論をしていくことが必要ではないかと思います。

 もう1点、インパクトについてですが、ICMAがガイダンス文書を出しているということは、インパクトを拾っていくということが、言わば、社会のトレンドであると考えられますので、後発でガイドラインをつくる以上、このインパクトをレポーティングに取り入れていくということは必要だろうと思います。「べきである」という事項にはなかなかしにくいと思いますので、皆様から御意見ありましたように、「望ましい」のほうとしてインパクトを入れて、ロジックモデルを示していくことが大事だと思います。
 これと関連して、竹林さんからもお話がありましたが、評価、選定の規準のところにもやはりインパクトを生み出す意図とか意思があるということは重要なポイントになろうかと思いますので、併せて入れておくといいのかなと思いました。

 私からは以上です。

【北川座長】
 ありがとうございました。

 それでは、有江様、お願いいたします。

 【有江委員】
 ありがとうございます。アムンディ・ジャパンの有江でございます。私からも簡単に述べさせていただきたいと思います。まずプロジェクトの例に関しましては、もうこれも先ほど来、お話がいろんな方から出ていますけれども、SDGsのアクションプランの8項目といったところを例として挙げられるというのは非常にいいかと思います。
 
 一方で、グッドプラクティスのシェアというところもやはりあったほうが、これから発行したいという方々の参考になるかと思います。今回御用意いただいた海外での発行事例というものを、かなり件数も多くまとめていただいていますし、例えば、ソーシャルボンドプリンシプルのケーススタディも2020年6月に出されていますけれども、こういったものを逐次更新していく。これはなかなか、ハードコピーにしてしまうと更新も難しいと思いますので、例えばウェブサイト等でこういった事例がありましたといったものを逐次更新していくということで今後追随したい、発行したいという方々の参考になるのかなと思いました。
 
 それから、これは今、水口さんから、あるいはその前の竹林さんからも御指摘いただきましたが、インパクトレポーティングのところ、各論4と、それから、各論2の整合性を取るというところが私も非常に大事であると思っております。今回御用意いただいた資料の中でも、29ページから31ページにきちんと全部英語で案が示されているものを日本語訳いただいておりますが、こういったものがあると非常にインパクトとしても分かりやすい、アウトプット、アウトカム、インパクトの関係が非常によく分かりやすいというところは非常に重要かと思います。

 あとは今回の議題のところではないのですけども、先ほどの中空さんから御提案ありました、これからソーシャルボンドをどんどん増やしていくという中では、Sにもっと注力してほしいというようなガイダンス等々があったほうがいいのかなというお話もありましたけれども、ソーシャルボンドを発行していても、結局、企業のやっていること自体がESGの観点から照らしてあまりふさわしくないなということであれば、これはソーシャルウォッシングと言うべきかどうかは分かりませんけれども、そのような判断は投資家のほうで下すべきことかと思っております。したがって、そこまでの強制力というものは持たす必要はないかなと個人的には思いました。

【北川座長】
  ありがとうございました。

 それでは、川北先生、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。

【川北委員】
 川北です。ソーシャルボンドの視点に関しましては、前回も申し上げましたように、国内とグローバルとでは多少違う、そういう意味で切り分けが重要になるだろうと思います。グローバルには、ICMAを基本にすることでいいし、国内の場合は、資料の6ページにありますように、SDGsのアクションプランがたたき台になるだろうと思いますが、ただし、留意点もあるように思います。というのは、様々なプロジェクトの間はもちろん、その対象となる人々は相当オーバーラップしているということです。
 例えば国内の問題として、地方の問題というのは非常に大きな、最大の課題の一つだと思いますけれども、地方を活性化し、産業を誘致していくということと、高齢者の問題とはオーバーラップする話です。地方というのは高齢者の比率が高いわけですから。事業、文化に関しまして、後継者の問題があるし、高齢者の場合は、地方に旅行するとよく分かりますが、医療の問題、移動つまり交通の問題、そういう課題があるということです。
 他方で、子供を産み育て、地方で勤務し、収入を得られる。そういう環境を整備しないと、地方の活性化というのはない。これは最終的には教育の問題とも関連していると思います。この点、ANAさんの例にありましたように、ネットですね。これを使うことで、DXの時代において地方にとって有利な環境ができつつある。これを利用しない手はないだろうと思います。
 それと、地方の活性化に関連して、日本でも生じていることですけれども、都市に人口が集中することによって貧困の問題を生んでいる。それにいかに対応していくのかということで、日本として地方を活性することによって、発展途上国への応用ができるのではないのかと思います。さらに言いますと、地方の太陽光の問題や風力発電の問題、これらは環境とも深く関連している。ということで、こういう相互の関連性を重視する必要性があると思います。

 それから、少し各論になります。プロジェクトの評価、選定ですね。これに関しては、ソーシャルへの対応が効率性とか環境とか、そういうものにネガティブな影響を与える可能性は否定できないと思います。地方で、産業を発展させるということは、その地方の環境に対して、マイナスの影響を与えることも十分にあり得る。ということで、評価に関しましては、メリットだけではなくて、デメリットも評価した上で、トータルとして望ましいのだということが必要になります。
 言い換えますと、ローカルな最適解を求めるのではなくて、グローバルな最適解を求める。そういう意味での評価が必要になってくると思います。それから、レポーティングに関しましては、これは基本的にグリーンと基本的に変わらないと思いますが、ICMAで示されている3段階評価というのは、いろんな方がおっしゃっていたように参考に値する。さらに定量的な評価だけではなくて、定性的な面も加えていいのかなと思いますし、このレポーティングをベースに投資家とその発行体の間の議論、対話というものも当然必要になってくると思います。

 最後に、外部評価に関しまして、これもグリーンとは基本的には変わらないと思うのですが、1点、強調すべきなのは、外部評価機関の利益相反の問題だろうと思います。例えばコンサルをしつつ、片方で評価機関として活躍するということは、これは当然避けるべき問題です。ここは十分に書いておく必要性があると思います。
 かつ、外部評価に対しましては、先ほどのところとダブるわけですけれども、ローカルな評価ではなくて、グローバルにこれが最適だという評価をぜひとも示してもらいたいと思います。

 私からは以上です。

【北川座長】
 ありがとうございました。
 
 ちょうど6時になりまして、全ての委員の方にお話しいただいたと思います。もちろんまだ御意見ある方もいらっしゃると思いますけども、後ほどまた追加の御発言、御意見等ありましたら、事務局のほうにお寄せいただきたいと思います。
 それでは、討議を一旦打ち切らせていただきたいと思います。
 
 それでは、最後に、事務局から御連絡等ありましたらお願いします。

【中瀬ソーシャルボンド推進調整官】
 次回の検討会議の日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえて、候補日時はお伝えしているところですが、事務局より、また別途正式に御案内をさせていただく予定でございます。

 事務局からは以上でございます。

【北川座長】
 どうもありがとうございました。次回会合では、準備が整いましたら、ぜひガイドラインの草案を示させていただき、御議論いただければと考えております。そういった意味で、本日は大変貴重な御意見を皆様からいただいて感謝いたします。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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