第33回金融機能強化審査会 議事要旨
1.日時
令和7年9月4日(木)9時30分~12時00分
2.開催場所
- 中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室
3.出席者
- 委員 松下 淳一(会長)
- 同 前田 博(会長代理)
- 同 有岡 律子
- 同 左三川 郁子
- 同 長谷川 勉
- 同 柚木 真美
- 以上のほか、石田監督局長、田部参事官、小野銀行第二課長、和田地域金融モニタリング参事官、松島地域金融監理官が出席した
4.議題
- 経営強化計画(豊和銀行・筑波銀行・東北銀行)の審議
5.議事内容
- 豊和銀行の権藤頭取より、新たな経営強化計画の概要について説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
- 24年3月期に計上されている国債等債券損4.31億円は処理済みか。信用コストが24年3月期に急増した理由はなにか。
⇒ 国債等評価損益については、含み損を抱えていた債券を売却・償却し、25年3月期は1.1億円程度となっている。債券のデュレーションは3年以下とし、金利変動によるリスクを抑えている。信用コストについては、予期せぬ大口倒産が2件発生し、合計で約4.7億円の損失処理を行った。
- 預金のデュレーションはどうなっているのか。有価証券のデュレーションとの関係をどう考えているか。
⇒ 普通預金が中心で、定期預金も1年物が多く、全体的に短期傾向。コア預金は長期的な安定資金と見なされているが、金利上昇により流動性が高まる可能性があり、今後の動向に注意が必要。
- 自己資本を下げた理由はなにか。
⇒ 8月1日に70億円の公的資金返済を実施し、自己資本比率は2.1%程度低下して8.5%程度になっている。リスクアセットとのバランスを考慮しており、資本配賦には問題はない。
- Vサポート先の信用コストは高いのか。
⇒ 一般的には大きな差はない。Vサポート先は業況の厳しい契約先が中心であるため、ダウンサイドリスクはあるものの、Vサポート先だから信用コストが高いということはない。
- 経営改善応援ファンドの損益状況はどうか。
⇒ Vサポートと同じように、基本的には業況の厳しい先へのご支援となる。利回りは2%以上を維持しており、収益性は良好である。
- 「課題解決提案シート」の経費負担などをはじめとして、Vサポートの経費は他に比べて高いのか。
⇒ 「課題解決提案シート」の作成には一定の手間・暇がかかるが、営業活動の効率化に大きく貢献している。「課題解決提案シート」により顧客との課題認識の共有が容易になり、ポイントを絞った提案が可能となることから、効果的な営業ツールになっている。
- Vサポートによって債務者区分のランクアップがあったという話だが、当該取組の効果をどう考えているか。また、その収益効果をどう評価しているか。
⇒ ランクアップは13〜15%程度と限定的だが、ステイが高く、ランクダウンを防ぐ効果があった。厳しい経営環境下でも債務者区分を維持できている点は、Vサポートによる支援の成果と評価できる。Vサポートでのビジネスモデルで一番大きなメリットはむしろ金利水準が維持できている点にあると考えており、他の地域銀行の貸出金利回り推移と比較しても高い水準の金利が確保できており、貸出金利息収入の増強に貢献していると評価している。
- 貸出金利回りは今後も維持できると考えるか。
⇒ 継続商流の構築と顧客との信頼関係の深化により、他行への乗り換えは起こりにくいと考えている。Vサポートによる支援が企業の成長に寄与しており、豊和銀行との関係性が強固になっていると考えている。
- Vサポートについて、業種による効果の違いはあるのか。Vサポートの業種選定において何か方針などはあるのか。収益性より信頼関係重視の姿勢という理解でよいか。
⇒ 製造業や建設業など物づくり系の業種では、サービス業よりも業績改善の対応に着手しやすく、成果につながりやすい傾向がある。他方、地域全体の繁栄を目指す中で、中小企業・小規模事業者の多様なニーズに対応するため、特定業種に偏らず、業種横断的なアプローチを重視している。地域になくてはならない金融機関として、地道な支援による信頼関係の構築を重視している。中小企業・小規模事業者との長期的な関係性の構築およびその関係性の発展が最大の武器であり、地域金融機関としての本質的な価値を追求している。
- 他行がVサポートのような取組を模倣することはできると思うか。
⇒ Vサポートは手間・暇がかかる業務。したがって、経営のコミッメント、ノウハウの蓄積、継続的な取り組みが必要だが、多様な収益機会のある大手銀行がこのような地道な手間のかかる支援に注力するとは考えにくく、差別化要因となっている。
- 24年3月期に計上されている国債等債券損4.31億円は処理済みか。信用コストが24年3月期に急増した理由はなにか。
- 筑波銀行の生田頭取より、新たな経営強化計画の概要について説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
- どのような仕組みで人材育成を進めるのか。
⇒ タレントマネジメントシステムなどを導入し、人事データを一元管理しながら人材ポートフォリオを構築していきたい。5年先、10年先を踏まえて人材育成に取り組んでいく。
- 「とことん支援」のポイントは人材育成だと思うが、具体的な取組内容はどのようなものか。実践経験を通じた育成はどう進めているか。
⇒ 人事指導役による臨店面談や支店長によるワン・オン・ワンミーティングを通じて、行員のモチベーションや不満を把握している。キャリアアップ支援の説明を徹底し、離職防止に努めながら人材を育てていくようにしている。店舗統廃合により、同年代や相談できる先輩がいる環境を整備。孤立を防ぎ、相談しやすい職場づくりが離職防止に効果を発揮している。トップも現場との距離を縮め、風通しの良い組織文化を醸成している。
- 「Rising Innovation」という中期計画の名称の意味はなにか。
⇒ 合併・公的資金注入・震災・コロナなどを経て、常に変革を続けてきた歴史を象徴する言葉。「筑波PRIDE」とともに、2番手行としての役割を自覚し、地域に根ざした支援を継続する姿勢を表している。
- 金利ある世界で預金の動きに変化はあるのか。
⇒ 当行では相続関連で年間約100億円が流出していると試算しており、相続者向けの金利優遇や相続センターの活用などで対策中。預金確保には商品戦略と行員による密接な顧客対応の両面から取り組んでいる。
- 店舗戦略の在り方と預金流出の関係についてもどう考えるか。
⇒ 店舗拠点数を147から70に統廃合したが、リテール専用店舗やキャッシュレス店舗を導入し、サービス維持と人員削減を両立している。引き続き預金流出防止を図りながら店舗戦略を進めたい。
- 相続による預金の流出という話があったが、逆にたんす預金を預金として回収する戦略はあるのか。
⇒ 年金アシスタント制度を活用し、富裕層や高齢者宅を訪問して資産管理を支援。年金定期預金などの特別金利商品を提案し、預金・投資信託・保険などへの誘導を行う。金利ある世界での資産運用の重要性を訴え、預金回収を促進している。
- リファイナンスによって貸出期間は長期化しているのか。
⇒ 全体として長期化しているわけではないが、キャッシュフロー内に返済額を収めることがリファイナンスの鉄則なので、返済負担軽減のために期間延長するケースは多いが、短期化するケースもある。
- 役務取引等利益が減少見通しなのはなぜか。
⇒ 実際には個人・法人ともに役務取引は増加しているが、団信保険料や保証料などの役務費用が膨らんでいるため、利益項目としては減少に見える。住宅ローン・消費者ローンの伸びによる貸出金利息の増加は別の項目で発生しているので、前向きな費用増加と言える。
- 信用コストはもっと積んでもよいのではないか。
⇒ 過去3年は突発破綻による信用コスト増加があった。それを除く過去の信用コストのアベレージと比較し、現在は金利上昇や物価上昇を考慮し通常の1.5倍(約22〜23億円)で計画。地銀平均の2倍以上の水準(10ベーシス)で保守的に見積もっており、過剰引当には注意しつつ、適切なリスク管理を行っている。
- どのような仕組みで人材育成を進めるのか。
- 東北銀行の佐藤頭取より、新たな経営強化計画の概要について説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
- 今期のその他有価証券評価損益(101億円)の要因について説明してほしい。
⇒ マイナス金利回避目的で購入した地方債・国債が、金利上昇により評価損を生んだ。平均残存期間は5.1年で、3年間で約500億円が償還予定。損切りによる再投資は体力的に困難と判断し、保有継続方針を採っている。なお、ポートフォリオの約90%が国内債で、外国債はマルチアセットファンドに少額含まれる程度。運用は基本的に国内債中心で構成されている。
- 現在の金利の見通しが変わった場合、どのような影響があるのか。
⇒ 年2回の利上げを前提にシミュレーション済み。金利変動と償還期間のバランスを見ながら、継続保有を基本方針としてリスク管理を行っている。
- シミュレーションやリスク管理の人材体制は十分か。
⇒ 中堅・若手の育成が課題。金利変動への対応経験が乏しく、シナリオ変更の柔軟性が不足している。経営陣が積極的に関与し、人材育成を進めている。
- SBIとの提携は経営計画に織り込まれているか。SBIとの提携で留意している点はなにか。
⇒ 現時点では収支計画に一切織り込んでおらず、共同店舗「SBIマネープラザ」の設置のみが決定事項。今後の展開は戦略的に選択する。有価証券運用を委託するということは現時点で考えていない。
- 脱炭素施策の見通しを教えてほしい。
⇒ 国のエネルギー政策に沿って、再エネ支援を収益の柱に育てる方針。リスク管理をしながら慎重に推進している。地元の中小事業者に対しては、再エネ診断を通じて現状と改善効果を提示し、動機づけを図っている。太陽光などの大規模事業ではなく、小規模でも地道に支援を続け、地域全体の脱炭素化を目指している。
- 債券中心の運用では、リスク分散は十分とは言えないのではないか。
⇒ 国内債がポートフォリオの約90%を占めており、株式やリートは少数。運用人材の制約もあり、金利リスク偏重の傾向があるが、今後は人材育成とともに多様化を検討していきたい。
- 信用リスク管理でどのような取組をしているのか。
⇒ 14億円の信用コストは、大口不良債権のほか、突発破綻という形で破綻した小口の貸出し先がかなり多かったことが要因。モニタリングや途上管理の甘さが要因と分析している。現在は経営陣が個別案件を毎月確認し、企業経営支援室による資金繰り管理も実施中で、現場との対話を重視し管理を行っている。
- 今期のその他有価証券評価損益(101億円)の要因について説明してほしい。
- その後、以上の議事について討議が行われた。主な意見は以下のとおり。
- (総論)
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- 金利ある世界、金利が動く世界に転じてきている中で、リスク管理体制を十分を十分に行っているのかという点を注視する必要がある。
- 「突発的な破綻」という言葉が3行中2行であったが、公的資金を入れている先であるからこそ、審査の十分制などについて金融庁はモニタリングを強化する必要があると思う。
- 人口減少地域においてどのようにダウンサイズしていくのかという姿勢が見えない。
- (経営強化計画(豊和銀行))
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- Vサポートは地道に継続しており、着実な取り組みとして評価できる。
- 「粘着質のある預金」という表現が印象的で、預金流出への耐性がある点は他行よりも自信を感じた。
- 若手行員でも提案ができるようなシートを整備しており、人材育成の仕組みが進んでいる印象を受けた。
- (経営強化計画(筑波銀行))
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- 経済基盤が比較的強いため、着実に進めれば問題ないと感じた。
- 中小企業向け貸出件数が計画の3倍に増加した点は、リスクを取った可能性もあり、評価には慎重さが必要。
- 不祥事回避に向けたガバナンス強化の宣言は前向きで評価できる。
- KPIの資料は整っていたが、当期純利益やROEとのつながりが見えにくく、資金返済計画との整合性に疑問が残った。
- タレントマネジメントシステムを導入しているが、具体的な育成成果が見えにくいように感じた。今後に期待する。
- (経営強化計画(東北銀行))
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- 脱炭素の方針はあるが、地域経済への具体的なアプローチが見えず、収益基盤が不明瞭で不安を感じた。
- 収益見通しはあるが、バランスシートの計画が不明で、貸出・預金の推移が見えなかった点が気になった。
- 運用の多様化が不足しており、金利リスク偏重のポートフォリオに懸念。リスク分散の検討を求めたい。
- 過去3年間の実績は評価できるが、今後3年間の計画の緻密さや実行可能性が見えにくい。
- 人材育成の重要性の認識は感じられるが、具体的な育成方針やノウハウの蓄積が不明瞭で課題が残る。
- 脱炭素支援をできるところからやっていくという方針は理解できるが、収益の柱となっていくまで3年間で成長できるのか不透明な部分が多い。
- 討議の結果、今回提出を受けた新たな経営強化計画(豊和銀行、筑波銀行、東北銀行)について、審査会として了承することとされた。
※本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。
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