「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」(第1回)議事要旨

1.日時:令和6年12月20日(金曜日)11時00分~13時00分

2.会場:中央合同庁舎第7号館 会議室

3.議事概要:
 事務局による資料説明の後に行われた議論の要旨は、以下のとおり。

(1)総会前開示について

  • 一気に多くの企業を動かすのは難しいので、賛同いただける企業を増やし、日本企業もグローバルに合わせていくという風にまとめていくのが国際的には重要。
  • 現状の有報の作成実務においても企業は精一杯のスケジュール感で対応しているというのが実情であり、今後、さらにサステナビリティ情報の開示と保証が導入されるところ、総会の開催時期を現状から動かさずに有報の提出を早めるのはなおさら不可能。総会前開示を実現するためには、有報の提出後となるように株主総会の時期を遅らせるしか方策はない。
  • 株主総会の開催時期は日本の実務慣行として社会の仕組みとしてガッチリ組み込まれている。制度的には絶対にやってはいけないという制約が何もない中で、何がネックとなって進まないのかをしっかり突き詰める必要がある。
  • 総会前開示ではなく、有報提出後に総会を開催するという意識で議論を進める必要がある。
  • 信頼性が担保された有報が利用者のニーズに合わせて適切なタイミングで開示されることが重要だと考えており、そのための環境整備を行うことは賛成。一方、国内には様々な日本企業があるところ、有用性についても様々なレベル感が存在するので、規模感を踏まえた検討が必要。
  • 総会は取締役の選任が行われる場所であり、企業と投資家にとって一番大事なイベントであるべき。その際の判断資料として提出される事業報告と計算書類が、有用性という観点で十分ではない。現状、議決権行使の判断において、事業報告や計算書類以外の任意の開示媒体などで判断することも多い。このような状況の妥当性については検討が必要。
  • 総会前の開示の不足という観点では、経営計画が盛り込まれており投資家にとって重要な情報である「対処すべき課題」について、事業報告では単年度の記載に留まっているが、有報では経営理念や中長期的経営計画の記載がある有用な開示内容となっている。
  • 事業報告には、サステナビリティ開示、政策保有株関係が無く、肝心のコーポレートガバナンスについては、取締役の活動状況の開示も無い。また、計算書類についても、キャッシュフローに関する情報や注記がないことが問題。注記がないため、国際会計基準では、日本でいう特別損益である「その他の営業費用」の内訳がなく、何故損が出ているのかが総会時点で分からない状態であった。ある会社では、営業利益の7割くらいの損が「その他の営業費用」で出ているのに説明が無かった。
  • 会社法監査の監査報告書にKAM(監査上の主要な検討事項)がないため、日本の監査が中途半端なのかとまで言う海外投資家もいる。

(2)上場会社における取組の推進

  • 経営陣が重要性を認識することが必要だが、併せて実施することのメリットやインセンティブをどのように示していくかが重要。例えば、有報を見た上で議決権を行使することで、総会や様々な場で議論が円滑に進み、エンゲージメントがより良くなるということがうまく伝わると良い。
  • 経営層は横を見ながらと動くところがあるため、制度そのものや各社の実施状況を広く周知いただくことで効果が出る。
  • 株主総会の開催時期を遅らせてまで有報を総会前に提出することの有用性について、企業側は「納得感がなく、メリットは何もない」という。制度的に可能であることを周知したとしても、余程良いことがないと実際に取組は進まない。
  • 取締役選任に係る議決権行使基準には、数期連続で業績が低迷している場合は反対するというものがあるが、例えば、開示が充実していて、損失が一時的な営業費用であることが分かれば、基準に抵触したとしても賛成することもできる。また、剰余金処分案についても、配当がなければ通常反対するが、例えば、設備投資が大きく必要であるという説明があれば賛成することもある。総会前開示は、このような議決権行使にも良い影響があるのではないか。

(3)基準日の柔軟化

  • 名簿管理や配当支払いのシステムについても基準日をベースに構築されているため、基準日を柔軟化する取組みが一斉に進むと、システムの大幅な再構築、人員確保・教育、体制面の組織の構築などが必要になるため、段階的な移行が必要になる。
  • 日本における総会の重みは諸外国と大きく異なる。日本の場合、個々の株主の権限が大きく、僅か300株で株主提案ができてしまう。実際に様々な提案がなされると総会の運営が実務的に厳しくなるが、そのような状況下で、総会の時期を思い切って変えるということは考えにくい。そのため、総会時期を後ろ倒しする際の負担軽減や、総会そのものの重みを軽くするという対応が求められるのではないか。
  • 総会前開示は投資家が望んでいることであるため、基準日の変更によって総会の開催が後ろ倒しされることは、投資家サイドとしては問題ない。また、海外では5か月、6か月後に総会を開催しているが、それに対して文句を言っている人は誰もいない。配当が、決算期末とずれることについては、コロナの時期に法務省から注意喚起していたところ、同様の対応を行えば良いのではないか。
  • 制度的に支障がないのは認識しており、ファーストペンギンになりそうな会社が踏み切れば世の中が変わるかもしれないが、簡単な話ではないと認識している。
  • 基準日をどこに置くかについて、資料P.13のとおり方策③と④の比較がある。方策④については、恐らく色々な制約で難しいということだが、エンプティボーディングの観点でも、国際的な比較も含めて、議論の対象としても良いのではないか。
  • 基準日について、議決権の基準日、配当の基準日、優待の基準日があり、一般的には決算と基準日をそろえるのが通常だが、総会の後ろ倒しと併せて配当金の支払時期も後ろに倒すかそのままにするかの議論がある。後ろ倒ししない場合、配当決議を取締役会に授権する必要があるが、一般的に、定款変更議案を総会に付議すると機関投資家はポリシーによっては総会で反対することがある。機関投資家のために動いたのに、機関投資家から反対されると元も子もないため、その手当も考えていく必要があるのではないか。

(4)有報の開示時期

  • グローバルでは、有報が総会前の判断材料として開示されていることが慣行となっている。海外から見ると、何故、日本だけ今の慣行で運営しているのかと見られる。
  • 現行スケジュールで有報を前倒しして開示することは難しい。別途、サステナビリティ情報開示に係る審議会にて、有報の提出時期自体を遅らせる議論もある中で、さらに有報の開示後に株主総会を開催するとなればいったいどこまで株主総会を後倒しするのか、実務上の落としどころは難しい。
  • 実務上、株主総会がある特定の日に開催されている状況から、開催日の分散のために決算の早期対応、招集通知の早期発送、総会開催日の前倒しの方向で進んできたが、今回は逆に、開催日の後倒しとなると、実務家としては結構混乱する。
  • 投資家側としては、招集通知を早めにして欲しい、総会日を集中しないで欲しいということは言ってきたが、総会そのものを早くして欲しいといったことはないと思う。招集通知の早期開示も、総会の集中開催の分散も、総会に関わる情報をしっかり分析する時間が欲しいということが主な理由である。

(5)一体開示・一体的開示

  • 開示の在り方について、金商法の開示、会社法の開示、東証規則の開示の一体開示をどのように進めるか検討するべき。
  • 一体開示は非常に重要。有報を総会前に出す大前提として、監査人から保証を受ける必要があるが、その際の監査期間が十分に設けられている必要がある。会社法開示と金商法開示の重複感は、現場でも言われているところ、例えば、有報を作成することで会社法上の事業報告に代替できるということまで議論を進めても良いのではないか。
  • 企業側からお話があるように、見る側としても開示書類が複数あると大変であり、一体開示を進めつつ、総会前開示を進めることがベストではないか。
  • サステナビリティ開示と保証が義務付けられる中で総会前開示を行うためには一体開示が必要。一体開示について、制度改正ではなく運用で出来ることについて周知することなどは協力したい。総会前開示の義務化だと厳しいと思うが、やりたい企業がやれる環境整備を進めていきたい。法律上も役員等の責任範囲の明確化が必要。
  • 法令上解決していくべき論点として、一体開示を行うとして、書面交付請求があった際にどうするのかという論点があり、これで数社断念したと聞いている。
  • 一体開示を進めることは賛成。EDINETへの早期提出による特例は、制度が分かりづらい。これをやると何をやらなくて良いのか、分かりにくいため、解釈をクリアにすることや仕組みを作ることで、やりたいと思った企業が、躊躇せず取組むようにすることが大事。
  • 一体開示のフォーマットのシステム化については、それほど難しい話ではないという感触。だが、どの会社も横並びを気にしており、今後、(一体開示の)ニーズが増えていくかどうか判断は難しい。
  • 事業報告にも必要最小限のルールベースのものとグラフや任意記載事項等を盛り込んで株主へのアピールを前面に押し出したSR化・カスタマイズ化されたものがあり、前者の場合は政府が作成した一体開示のひな形を見て移行できると思うが、後者の場合は一つ一つ時間を掛けて作り上げていくことになる。

以上

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