「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」(第2回)議事要旨

  1. 日時:令和7年3月18日(火曜日)16時30分~17時45分
  2. 会場:中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室
  3. 議事:
    1. 開会
    2. 事務局説明
    3. 協議
    4. 閉会
  4. 出席者
    構成メンバー全員
  5. 議事概要:
    事務局による資料説明の後に行われた議論の要旨は、以下のとおり。
  1. (1)総会前開示の有用性と実現方法等

    • 日本の情報開示制度をグローバル水準にするためにも有報の総会前開示は進めるべき。今後、サステナビリティ情報が増える中で、作成者の負担軽減、監査・保証の品質の確保、株主が開示情報を見る時間の確保、この3つを達成するには、単純な有報の総会前開示だけではなく、総会の後倒しや開示の一本化が必要。
    • 総会前開示を進めていくためには、2つのアプローチが必要。1つは、経営者のアジェンダとすること。もう1つは、実務側の環境整備。
    • 実務側の環境整備については、事務局説明資料に記載されている好事例の公表、総覧できるサイトの作成、勉強会の開催、FAQの作成、相談窓口の設置などを進めていただきたい。やれることは直ぐにでも行うべきで、例えば、情報の集約などは、ファクトを集めるだけだと思うので、スモールスタートで構わないので速やかに対応すべき。
    • 残念ながら企業側からは取組の有用性について全く賛同を得られてないというのが実情である。たとえば事務局説明資料P.3において、取組の有用性の一例として、有報における中長期的経営計画の記載を挙げられているが、中長期的経営計画の公表は有報が出る前の決算発表時やIR説明会でなされるのが一般的であり、多くの投資家にとって有報で初めて知る情報ではない。有報で初めて中長期的経営計画を見る人は誰なのかという疑問があり、有用性の一例としてまったく腹落ちしない。企業側が腹落ちできる形で、有用性を示さなければ施策は進まないと考える。
    • 株主総会の判断に使われる法定開示書類に重要な書類が含まれていないのは課題と考えている。中長期経営計画の情報も、その重要な情報の1つと考えている。また、投資家側は、400社、500社といった数の投資先企業も見る必要があるため、重要な情報は1つの資料にまとめて開示いただく必要がある。このような投資家側の状況も含め、お互いの理解を深めていくべき。
    • 会社は通常決算発表の日又はその数日後に、非常に分かりやすいビジュアルなものを開示し、CEOやCFO等が説明する動画を作ったり、海外機関投資家向けにIRツアーを行ったりと、任意ではあるが、相当緻密に中計のあるべき姿をステークホルダーに示している。監査は受けていないが、上場企業が公に表明する点で非常に精緻にしている自負があり、実務家の努力にも目を向けていただきたい。
    • 外国では総会のかなり前に年次報告書を開示しているが、株主総会の制度上の位置付け・重みは、即ち決議事項や株主提案等を含め、外国と日本で全く異なることに留意しなければならない。このような法律的な建付けも含めて検討しないと問題は解決しない。単純に株主総会の開催時期や有価証券報告書の提出時期の話だけを切り出して、局所的な議論をすべきではない。法務省へのお願いとなるが、株主総会や個々の株主権限の在り方についても、今後の会社法改正の議論の中で検討いただきたい。会社法と金商法の制度横断的な議論をしていくことが最大の環境整備になると考える。
    • 有報の開示期限を緩和すべき。サステナビリティ情報など開示負担が大きくなるため、提出時期は現実的なものとすべき。その際、四半期決算短信の提出時期と被るため、四半期決算短信の提出義務を廃止して任意化する等、開示制度全般の検証が大事。総会前開示についてだけを取り上げることは拙速。
    • 有報の総会前開示は手段に過ぎず、目的はあくまでも企業と投資家の建設的な対話のさらなる充実である。そのもとで、投資家においては、自身の求める情報やその開示の有用性などを明確に示すことが必要である。
    • 企業側のメリットという観点では、四半期決算短信の任意化については、四半期開示の見直しの際に、企業の開示に対する意識の改善や充実した情報が開示されているという状況が確立されていれば検討する必要があるとされた経緯があったが、企業側の総会前開示が凡そ実現した暁には検討するべきではないか。
    • 会社法の改正に向けた動きとして、4月以降に法制審の部会で議論が進む見込み。会社法改正のテーマの1つとして株主総会の在り方もあるところ、この協議会での議論の内容については、法制審での議論でも活用したいと思う。
  2. (2)上場会社における取組の推進

    • 国内投資家に対する啓蒙のために活用可能な仕組みは、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの改訂で、総会前開示は後者と考える。有識者が集まり、コードの重要性について議論されて、その議論内容がコードの形で資本市場に伝わることは、国内投資家の啓蒙、経営層への周知に繋がる。
    • 経営者のアジェンダとするためには、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードを整備することが重要なメッセージとなり得る。さらに、東証から要請して社会に共有することも、他の取組で実績があり、効果的ではないか。
    • 「勉強会等を実施」という記載があるが、基準日をどうするかという実務レベルの課題把握のほか、経営トップに動いていただくという目線もあるので、レイヤーを分けて実施していくことも効果的ではないか。
    • 経営層や株式実務に負担を感じている方向けにセミナーや講演会を定期的に開催し、特に株主総会の議長を務める社長等向けに、好事例を示しながら発行会社にとってのメリットを周知する機会を設けることも可能と考えている。
    • コーポレートガバナンス・コードは企業にとっては決してソフトローではなく、とてもハードなものだと思っている。コンプライ・オア・エクスプレインを基本的な性格として挙げているが、実施状況はほぼコンプライのみであり、コンプライ・オア・コンプライというぐらいにハードな規律である。このようなもので企業側を事前開示に追い込むことは是非とも避けていただきたい。この点、事務局資料P.6の「多様な会社がそれぞれの事情を踏まえて総会前開示に取り組むことが可能となるよう環境整備を進めることが重要」の記載は極めて重要と認識している。決して実質的な強制に追い込むことがないようご配慮いただきたい。
    • 今の環境下においてコーポレートガバナンス・コードの改訂を進めるということは、海外の競合他社よりも重い負担がある中で、企業の自助努力だけでは成しえない取組になるかと思うため、課題を解決した上で検討すべきではないか。
  3. (3)基準日の柔軟化

    • 定款変更議案について投資家から反対される件は、あまり心配することはないのではないか。基準日の変更や決算期の変更に関して反対する投資家はいないと認識している。
    • 運用会社には、配当を取締役会決議事項とすることについて、原則反対としている会社、無条件の賛成としている会社、社外取締役の割合や株主総会の決議を排除しない場合といった基準を定めている会社などがあるが、結果を見てもほとんどの運用会社は賛成している印象である。基本的に大きな反対はされないのではないか。
    • ISSが、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社であれば賛成、そうでない場合は反対としている点は1つ課題かもしれない。
    • 今後、ソフトローでの議論などを通じて、投資家側の理解も進めば、定款変更のような問題はなおさら解消されるのではないか。投資家との対話において、総会前開示は株主や投資家にとって利便性しかないので、日本市場の更なる高度化につながる。
    • 株主名簿管理システムは、1つの基準日をベースにしていることもあり、各社が一斉に複数の基準日を設定するとなると影響は大きいが、本件が広く上場会社に共有され具体的なニーズが見えてくれば、それに応じて、段階的に基準日の柔軟化に対応できるよう整理していきたい。
    • 発行会社には、複数の時期の基準日が設定されることで、個人株主が混乱するといった心配があると思うが、信託銀行から、株主向けに案内をすることや基準日柔軟化の施策を発行会社に提案することも考えられる。
    • 後発事象について、事業報告書等の提出時期が後倒しになれば、修正後発事象の可能性が高くなり、影響が大きくなる。
  4. (4)有報の開示時期

    • 総会3週間前という数字があるが、他のページでは2週間前や数日前という数字も使われている。企業が真剣に受け止めようとする中で混乱が生じないよう、わかりやすい形で発信した方が検討を進めやすいと思う。
    • まずは2、3日前でも良いから総会前開示を行ってくれとなると、今の制度的な建付けは何も変わらないまま、有報の提出時期だけを早めてくれと言われているだけで、実質的な有用性があまりないまま、企業側の実務負担だけが今より重くなり、全く理解が得られないので避けていただきたい。要請することは企業に強制する方向に働きかけるものであり、賛同しかねる。
    • 有報が総会後に出ていたとしても、大抵の会社は株主総会で質問があった場合には当然答えるし、むしろ総会前の開示は間に合わないが、会社のことをより早く知っていただきたいと考えている。
    • 各社のIR活動として、中計の説明会は3月決算の企業であれば、大体5月中には終えているスケジュールのため、より早くわかりやすい情報をステークホルダーに提供できている。そのような状況にも配慮いただきたい。
  5. (5)一体開示・一体的開示

    • EDINET特例は、やりたいと思った企業が真っ先に使えるようすべき。例えば、この特例で対応した有報は事業報告を兼ねる必要があると思うが、これを踏まえた最新のフォーマットを用意するべき。
    • 最終的にはEDINET特例を使わないで済む仕組みがゴールだと考えており、事務局説明資料P.40にあるとおり有報提出会社については事業報告及び計算書類の提出を不要とするというルールに変える方が、シンプルで実務としてはスムーズになるのではないか。
    • 会社法の書類と有報を単に合体して1つの書類にすることが念頭に置かれているが、その場合、有報の中身が増えるとともに全体が金商法の規律となり、また、会社法の責任も及ぶことになるので、両方の規律が掛かる。実務が減るどころかむしろ増えるため、全くメリットがない。実務が減るということを示せるような工夫が必要。金商法と会社法の制度横断的な検討が必要不可欠である。
    • 監査役は、有報を直接的に監査するのではなく、開示体制の構築や運用状況を監視する役割とされており、外部の公認会計士の監査を参考にするべき。一体開示をした場合、開示資料のどの部分が会社法監査の対象になるか、利用者が判断することが難しいので、その場合に監査役の監査報告書がどのようなイメージで作成され、機能するかを検証するべき。
    • 一体開示をする場合は専用のフォーマットを使うことになるが、事業報告・計算書類等と有報を一本化するなどにより負担を軽減しなければ、海外の競合企業と比べて開示に過大なコストを払っていることになり、トップランナーの企業についていけないのではないか。
    • 総会の書面交付請求制度がネックという声がある。法務省の会社法改正に関する検討会において論点になっていたが、デジタルデバイドの問題なのか、何となく紙が良いから残っているのか。企業側からすると印刷スケジュールや運送コストなどの色々な実態上の悩みがあると認識している。
    • 実態として紙の招集通知を利用するのは数名の個人株主だけであるが、そのために印刷会社で電子提供措置の場合とは別の版を作って印刷することになり、思っている以上にコストが掛かる。
    • 世界観として、一体開示をすることで招集通知がほとんどアクセス通知と参考書類だけになり、それにより企業の負担が軽くなり、機関投資家も有報をしっかり見て検討する時間を確保できるようになれば、結果として皆が楽になるので、有用性があるということが共有された世界が実現して議論が進んでいくと思う。
    • 有報を出せば会社法上の書類は不要でアクセス通知だけで良いとなれば、発行会社からするとコストが下がり、機関投資家としても適切な議決権行使ができるので、コスト削減と実体的な有用性のメリットが実現されるのではないか。
    • 一体開示の場合の記載事項の整理についてもう少し分かりやすいものを示していただきたい。一体開示用のフォーマットについては、金融庁や法務省と連携しながら、作っていければと思っている。

以上

(参考)
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