「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」(第3回)議事要旨

  1. 日時:令和7年6月11日(水曜日)15時30分~16時50分
  2. 会場:中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
  3. 議事:
    1. 開会
    2. 事務局説明
    3. 協議
    4. 閉会
  4. 出席者
    構成メンバー全員
  5. 議事概要:
    事務局による資料説明の後に行われた議論の要旨は、以下のとおり。

<総会前開示を実現するための方策の検討>

  1. (1)上場会社の取組の支援について(定款変更・勉強会)

    • 定款変更については、一般的に機関投資家は企業側のガバナンスがしっかりしたものであれば、反対しない。定款変更の理由について、単に、「柔軟に対応できるようにする。」といった曖昧な記載に留まることがあるので、「総会前開示のため」と変更の趣旨を明記いただくことが大事。
    • 資料8ページに、議決権行使基準日や決算期を変更するための定款変更について反対を懸念する声は聞かれないとあるが、定款変更の理由が総会前開示だけで本当に機関投資家に納得してもらえるのか強い疑問がある。実際に決算期を変更することになれば、会社の取引を含め全ての事業活動にも影響するため、実務上の負担は相当大きい。費用対効果という観点からも、開示だけのために議決権行使基準日や決算日を変更することは考えにくい。
    • 資料13ページの機関投資家のスチュワードシップ責任の考え方に同意。本来的には、任意のPR資料である統合報告書で十分とするだけでは、スチュワードシップ責任を果たしているとはいえず、法定開示書類である有報等を見ることを志向する方向性は重要と考える。一方、議決権行使において、政策保有株や気候変動リスクの確認は有報などの法定開示書類で行うと議決権行使基準に明確に定めている運用会社もある。決算説明会の資料などで軽く説明しておけば良いものではないので、企業と投資家は互いに、法定開示書類の重要性について理解を深める必要がある。
    • 資料13ページに「海外機関投資家の意見」としてICGNの見解が紹介されているが、あたかも海外機関投資家のコミュニティ全体の要望であるかのような誤解を招く。ICGNの意見と他の海外機関投資家の意見が同様かと言えば事実ではない。表現の修正が必要。
    • 有報の総会前開示ではなく、総会の開始時期を早めることの方が投資家にとってメリットがあると考えている会社もいる。また、機関投資家がエンゲージメントを行う観点で、法定開示書類である有報を見ることを志向すべきという記載について、現行法では株主総会のための情報提供は会社法に定められた事業報告等で行う事が大前提になっている中で、提案のように有報に決め打ちをするということに強い違和感がある。企業は法定開示以外にも様々な任意開示を行っており、法定開示の枠外の開示も含めてディスクロージャーの在り方を検討すべき。
    • 総会後倒し及び一体開示については、数社が検討の表明を出している。今後、金融庁で勉強会を立ち上げるとのことだが、結果のフィードバックがあると良い。
    • 総会の後倒しは、株主名簿を複数回確定するためのコスト増や取締役の選任時期が遅れること等による経営への影響が生じる点をご認識いただきたい。
  2. (2)上場会社に対する要請について

    • 大臣要請は、大きな効果があったと理解。企業の実務者の意識は随分変わった。今までは、議論の俎上にも上がらなかったが、3週間前開示についても、どうすれば実現出来るのかという、前向きの話も出来るようにもなっている。他方、現状の6月総会を前提とすると、3週間前開示の推進が6月末総会への開催日の集中につながる可能性があることを少し懸念している。
    • 大臣要請自体は良かったが、不意打ちだったため企業の戸惑いが多かったのではないか。
    • 大臣要請を受け、企業会員にアンケート調査を行ったので、その結果の概要を報告する。
      ※アンケート結果は後日公表される予定。
    • 大臣要請については様々な意見があると思うが、多くの企業に対応していただいていることは確かなので、対応していただいた企業についてマーケットや投資家にアピールし、市場全体で良い雰囲気を醸成していくことが重要。
    • 大臣要請に対応するため、企業からは決算業務に追加の工数が発生したと聞いている。企業側の努力で総会前開示を実現するのは限界があり、負荷軽減策を検討してほしい。
    • 5月の各社の株主総会では、個人株主から有報の総会前開示に関する質問が複数出ていた。総会前開示を行うことには賛成で、有報で注記などの細かい情報を把握できるので評価できるという声や、総会前開示に取り組むか否かという企業の姿勢を問う声などがあった。
  3. (3)ウェブサイトによる周知・啓発について

    • 個人投資家への配慮という点で、今後基準日変更が進んだ場合、同じ決算期の会社の中でも配当や議決権行使に係る基準日が複数に分かれて煩雑となるため、個人投資家への周知が必要。
    • 半期報告書の大株主の状況については中間会計期間の末日の状況を記載することとされているため、本配当を1月後倒しする際に中間配当も1月後倒しした場合、株主名簿の確定が1回増えてしまう等、定款を変更する会社からすると、意図しないことが発生しうる可能性がある。このため、半期報告書の記載基準を変える等、周辺ルールの改めての検証と、現状のまま臨むのであれば、注意すべき事項の周知が必要である。
  4. (4)制度面の対応について

    • コーポレートガバナンス・コードへの記載については賛同する。
    • コーポレートガバナンス・コードにおける明確化が必要。補充原則1―2の1「上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことに資すると考えられる情報については、必要に応じ適確に提供すべきである。」について、情報には有報が含まれることを明確化することや、「必要に応じ」を削除するといった改訂を行うと良いと思う。改訂を通じて、経営者に目線をしっかり持っていただくことが良いのではないか。
    • コーポレートガバナンス・コードへの記載を含めて資料33ページに記載されている6月2日に開催されたフォローアップ会議で示された方向性については、経済界からも強い反対意見を述べた。当日の会議では強い反対意見が出たにも拘わらず資料には何ら表現されていない事は恣意的で強い違和感を覚える。フォローアップ会議ありきではなく、またフォローアップ会議で示された方向性について複数の強い反対意見もあり出席メンバーが賛同しているわけではない点、改めて強調したい。
    • 資料40ページの4のa.に「コーポレートガバナンス・コードで総会前開示の重要性を明確化・要請」とあるが、「有価証券報告書の株主総会前開示」を進めるための効果に懐疑的で当該記載に反対である。
    • 書面交付請求が一体開示のハードルになっているという声が強い。資料34ページに個社の数字として書面交付請求率が0.45%とあるが、我々の調査中の数字では、書面交付請求をしている方の半数以上は証券取引のWeb口座を持っており、デジタルデバイドには該当しない。本当に電子的措置が使えない人は少ないのではないか。
    • 書面交付請求制度の見直しに関しては、定款自治に委ねる方法や制度自体の廃止もありうると思う。
    • 書面交付請求制度については対象者が少ないので、廃止を含めた検討が必要。
    • 株主総会プロセスの電子化(議決権行使の原則電子化、招集通知の電子化など)も大事。
    • 一体開示の議論については、企業の実務者との対話では、最大のネックは事業報告の作成も同時に行う必要がある点という意見が多かったので、早急に整備する必要があると思う。実際、平成30年の経産省の研究では、詳細を理解できていないところはあるが、一体開示が出来れば、有報と事業報告等の工程数で最大30%、作業日数で最大40%の負担減につながるとの試算が掲載されており、企業の現場もこのようなイメージを持っているのではないか。是非、早急に進めていくべきだと思う。
    • 開示書類の一本化については、会社法改正を是非検討いただきたい。EDINET特例の存在は重々承知しているが、原則一本化することを法制化することによって、3週間前の有報の開示が一層進むという結果が期待できる。
    • 開示書類の一本化について、法務省にはご検討をお願いしたい。
    • 一本化の条件として、有報に事業報告の記載事項が全て含まれていることとあるが、現状使われていないEDINET特例と同様であることを考えると実効性に乏しいのではないか。会社法の開示ルールを前提とせず、有報を提出すれば会社法の開示書類も提出したとみなされる制度を提案する。そのためには会社法の制度の見直しが不可欠。
    • 有報のスリム化は重要。企業が市場に開示することは大事だが、今の日本企業が勝負をするのはアジアであるところ、ライバルとの情報公開の粒度・負担を比較し、競争力を維持していくという観点からも考えていくことが大事ではないか。
    • 有報の記載事項の整理には賛成。また、開示する情報が増加する場合には不要な開示項目を削るというスクラップ&ビルドの視点が必要。

<今後の取組について>

  • 投資家から上場会社への「適切な情報開示の必要性を伝達」について、今までは、制度的な話と認識し、投資家から企業に必要性を直接的に話すということは行われてこなかったのではないか。政策保有株や気候変動の対話などもそうだったが、こういった話題は、大きな流れになると、投資家も一気に対話するようになると思う。今回の総会前開示も同じで、この連絡協議会での議論を受け、大きな流れになっていくのではないか。少なくとも私だけでも、今年の株主総会前に3社以上の大企業と面談で議論した。
  • アナリスト協会では、秋にかけて、総会前開示についてのセミナーを開催する予定としている。多くの投資家、企業の方に見ていただくことを目指しているが、関係省庁には、ご支援・ご協賛いただけるとありがたい。
  • 今回の株主総会でも、企業が、株主提案への対応で、昨年の監査役会等の活動や実効性を説明しようとすると、現状の事業報告書では足りず、有報で説明しなければならなくなったが、昨年の活動等が記載された有報は総会前には見られないといった大変な状況があった。このため、有報の総会前開示の必要性は、企業の実務者側も理解しつつあるのではないか。
  • 有報開示後の総会という方向性に賛同。
  • 本協議会で議論した結果は今後の資本市場にとって大事だと考えているので、是非、ウェブサイトにおいて今後の取組や進捗が分かるようにしていただきたい。
  • 本協議会は単なる情報共有の場ではなく具体的な課題や対応を検討する趣旨で設置されていると理解しており、丁寧に報告書を取りまとめて公表すべきである。報告書自体を連絡協議会では取りまとめずに、最終ページの部分だけを今後公表するとのことであるが、今回の事務局資料はメンバー全員の意見が適切に反映されているわけではない。連絡協議会で出た意見がどうだったかも含め、バランスよく適切に反映するよう事務局には丁寧な取りまとめをお願いしたい。本日の事務局資料の最終ページをそのまま公表することは、記載される事務局案について、あたかも連絡協議会のメンバー全員の合意が形成されたものとして閲覧者が誤解してしまうことを強く懸念しており容認できない。反対である。
  • たとえば経済界から何度も主張した本テーマを議論する真の目的について、事務局資料には何ら反映されていない。繰り返しで恐縮であるが、(1)株主総会の議決権行使にあたって有用な情報を提供すること、(2)実務負荷の軽減、の2つが本テーマを議論する真の目的と理解しており、有報の総会前開示自体が目的ではない点を改めて主張する。「本当に株主総会前に開示すべき情報は何なのか」の議論がなければ、実務負荷の軽減につながらず、投資家にとっての有用な情報の提供にもつながらない。こういったところを今後しっかりと検討すべきである。
  • 6月6日に開催された経済財政諮問会議や新しい資本主義実現会議における資料では、既に「有価証券報告書の株主総会前の開示の後押しにつながる制度横断的な検討」を行う旨が明記されている。今後当該記載が閣議決定され、政府全体の方針として明らかになると理解しているので、こうした事を受けて何かをまとめるということが大事。本連絡協議会は現時点において「有価証券報告書の株主総会前の開示」を取扱う唯一の会議体と理解しており、当該明記文言との関係性からも当該協議会で丁寧な報告書の取りまとめを行うべきである。
  • 機関投資家が議決権行使のために必要な事項について、有価証券報告書の記載事項の全てと言われてしまうと、実務が回らなくなる。株主総会前に投資家に有用な情報を提供するためにどうするかの議論については、金融商品取引法と会社法の制度横断的な議論が必要になる。
  • 資料40ページの4のb.に記載の「総会に係る規律の見直し」については、是非、法制審議会で議論いただきたいが、法制審議会だけで完結するものではない。本テーマも含め、有報の総会前開示を進めるためには金商法と会社法の制度横断的な議論の場が必要不可欠であり、今後誰がどこでどのような議論をしていくのかが見える必要がある。政府の中で調整頂けると理解しているが、今後どこの場で議論していくのか、事務局にはある程度の方向性をお示しいただきたい。
  • 総会前開示の実現方法として挙げている4つの方策は、どれも企業側のメリットが少なく、企業にとって総会前開示のための環境整備が十分にできていない。開示書類の一本化の提案は評価したいが、より持続的、かつ、現実的な解決策が必要。
  • 近年企業の開示負担は増え続ける一方で好ましくない状況。中長期的な経営戦略の立案にマイナスの影響も懸念される。開示の在り方全体をレビューする時期に来ており、企業開示をめぐる制度横断的な議論をする場の設定を強く希望する。個別の専門的な議論の場は有用であるが、企業開示全体を俯瞰し、全体の方向性を示すための横断的な会議体の設置が必要ではないかと考えており、金融庁に主導して欲しい。
  • 今後の議論として、東証の規則、例えばコーポレートガバナンス報告書なども含めた開示規制の在り方、四半期開示の在り方、任意開示の在り方の検討を通じて、企業開示の効率化につなげていけると良いと思う。
  • 総会前開示は、十数年も行うべきだと言われながら進んでいない論点。進まなかった理由は、企業が納得していなかったことにあると思う。まだ納得していない企業もいると思うが、そのような企業に対しても強制するということではなく、納得した企業から順番に取り組んでいただく形で良いと事務局としては考えている。
  • 各企業・各投資家が様々な考えを持っている中で、各取組を次につなげるために、今後はそれぞれの専門の場で議論することが望ましいと事務局としては考える。

<その他>

  • 資料7ページで「ニイタカ」、「ジョイフル」、「窪田製薬HD」の3社が先進的な事例として紹介されているが、時価総額が3兆円を超えるような大企業が同様の対応をできるか、実践可能性について強い疑問がある。当該3社の有価証券報告書等も拝見したが、そもそもの有価証券報告書の総ページ数はもとより、企業規模、従業員規模などの観点からも、プライム上場企業の時価総額の大きな企業とは状況が全く異なる。両者は同じ軸で検討すべきではない。企業経営上、欧米企業と同様に決算期末日と配当基準日を揃えるニーズが日本企業にも存在する事に留意が必要。
  • 近年の開示項目の拡充により、有報の作成負担は増しており、現行の提出期限での対応は限界に達しつつある。提出期限を現実的な時期に後倒しすることが望ましく、金商法を見直すべきではないか。また、その際には第1四半期決算短信と有報の作成時期が重複することで、開示実務の過剰な負担が発生するので、四半期決算短信の任意化を含めた開示全体の在り方を検討すべき。

以上

(参考)
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