「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」(第2回)議事録

日時:令和6年4月25日(木曜日)9時30分~11時35分
 
 【洲崎座長】  時間になりましたので、ただいまより、第2回損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議を開催いたします。皆様方には、お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 前回の有識者会議におきましては、保険金不正請求事案及び保険料調整行為事案の双方に関し、幅広く御意見をいただいたところです。本日の有識者会議におきましては、主に保険金不正請求事案で認められた課題について、前回御議論いただいた内容を踏まえつつ、御議論いただきたいと思います。
 
 前回申し上げましたように、本日の模様は、ウェブ上でライブ中継をさせていただいております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定です。
 
 それでは、議事を進めさせていただきます。冒頭申し上げましたように、本日は前回御議論いただいた事項のうち、保険金不正請求事案で認められた課題を中心に御議論をお願いしたいと思います。まず、事務局から事務局資料について説明をしていただきまして、その後、メンバーの皆様方から御意見等をいただきたいと思います。なお、山下メンバーにおかれましては、11時半を過ぎましたら退席されると伺っております。
 
 それでは、事務局からの説明をよろしくお願いいたします。
 
【三浦課長】  金融庁保険課長の三浦でございます。それでは、事務局説明資料と書かれました、今映っている資料、それに沿って本日の説明をいたします。
 
 それではまず、スライド2にあります相関図を御覧いただければと思います。こちらは今回のビッグモーター社による保険金不正請求事案における論点について、金融庁が検査や監督で把握した情報に基づき、全体像をお見せできればと試みたものであります。真ん中の四角が、保険代理店を営む企業として、今回の事案に沿って、保険代理店が自動車修理工場と中古車販売を手がけているものとしています。
 
 まず、点線で囲ってある保険代理店の構成要素というところを御覧ください。まずは兼業の要素について、ここではかつてビッグモーター社が修理工場と中古車販売を保険募集と兼ねていたということですが、このように保険契約者の利益を損ね得る事業を兼業するケースもございます。それが収益力や影響力の源泉となる大規模の要素と合わさって、不正な修理費の請求や過大な保険金支払いを許した簡易査定の実施にもつながっていた可能性があると考えております。
 
 次に、乗合の要素でございます。本来は、乗合によって顧客はより幅広い選択肢が与えられるというメリットがありますが、今回の事案においては、損保会社の営業部門による本業支援、灰色の③ですが、例えば入庫紹介の実績で、ある地域の店舗では特定の損保会社の商品しか顧客に提示しないといったようなことが行われており、結果として比較推奨がゆがめられていました。
 
 最後に、大規模の要素についてです。一般的に代理店の規模が大きくなればなるほど収益力も大きくなっていくだろうということであるため、代理店の保険会社に対する影響力も大きくなっていくということが考えられます。そうすれば、保険会社がそういった代理店を実効的に教育・管理・指導するということがなかなか難しくなり、その結果、業務品質が向上しないというおそれもあると考えています。そうした力のある大規模代理店には、先ほど述べた保険会社による本業支援も行われやすくなるとともに、規模を重視する代理店手数料ポイントも大きくなり、より代理店自身の挙績志向をさらに高めてしまうおそれがあると考えています。
 
 今般の事案においては、こうした要素が相互に関連し、代理店や損保会社において、顧客の利益よりも自社の利益を優先させる行為があった結果、不適切な保険募集が行われ、顧客本位の業務運営が実現されなかったのではないかと考えています。
 
 以上がこの相関図の説明で、次に、この相関図にある①から⑤の構成要素ごとに、前回の会議で有識者メンバーからいただいた御意見も踏まえて、今後の対応策も含め、本日御議論いただきたい論点等について御説明いたします。
 
 次、スライド3を御覧ください。まず、大規模代理店に対する監督についてでございます。ここで書かれていますとおり、保険業法全体の仕組みとしては、保険会社に対して、保険募集人、いわゆる代理店に対する適切な教育・管理・指導を求めるとともに、また、保険募集人においても自らの態勢整備を求めているところでございます。
 
 ただ、今般の事案においては、特定の保険代理店において適正な保険募集を行うための態勢が整備されていなかったほか、損保会社による当該代理店に対する適切な教育・管理・指導も行われていなかったというようなことが明らかになりました。また、私どもも、保険代理店に対して、ヒアリングとか苦情分析を中心としたモニタリングを行うにとどまっており、上記のような実態を十分に把握できていなかったというところが事実でございます。
 
 その結果、保険代理店においても、募集品質の向上がなかなか図られず、顧客に対して網羅的な重要事項の説明を行っていないなど不適切な募集行為が多数認められており、保険契約者等の保護の観点から重大な問題があったということでございます。
 
 この背景としては、損保業界において、保険代理店に販路を大きく依存しているため、大きな収益をもたらす一部の大規模な保険代理店の影響力が非常に大きくなるというような場合があります。こうした場合においては、仮にそうした代理店に対して損保会社が教育・管理・指導を実施しようとしても、反発があったり、それによる販売シェアの低下といった営業面での影響が懸念されることから、なかなか必要な教育・管理・指導が行えないという状況に陥るということも考えられます。
 
 それに加えて、代理店手数料ポイントについて、損保会社が業務品質を伴わない大規模な保険代理店に高いポイントを付与していたという実態を鑑みると、業務品質を適切かつ十分に評価していないおそれもあったということで、こういった仕組みが大規模の保険代理店に対して業務品質を軽視する不適切なインセンティブを与えていたおそれもあるというようなところでございます。
 
 次に、御議論いただきたい事項としてスライド4を御覧ください。こちらについては、先ほど申し上げましたとおり、なかなか特に大規模な保険代理店に対して、損保会社による教育・管理・指導がなかなか十分に行えないというような状況に陥る懸念もあることから、まず、利害関係のない第三者としての立場から、代理店の業務品質を公正かつ適正に評価する仕組みが必要と考えられるかという点でございます。
 
 2つ目、これまでの私ども当局による代理店に対する検査・監督については、人員の制約等もあって、一部の保険代理店に対するヒアリングや苦情分析にとどまっていました。このため、今般の事案を踏まえ、ほかのリソースや情報等を活用するといった効果的なモニタリング手法を検討することが考えられるかという点でございます。
 
 具体的には、例えば、中立的な立場の第三者が損保会社に代わって保険代理店の保険募集に関する態勢整備の状況等を評価・公表するとともに、詳細な評価結果を損保会社へ連携し、必要に応じその内容を当局に共有することによって、私どものモニタリングに活用するということも考えられるのではないかということです。その際に、現在、生保業界で実施されている第三者評価制度も参考とすることも考えられるかどうかというところでございます。
 
 次、4ポツは、保険募集人に対する品質向上の論点でございます。こちらは、保険募集人に対する適切な教育・管理・指導を確保する観点から、現在、損保協会さんで実施している損害保険募集人の試験制度や継続教育について、どのような改善が図られることが望ましいと考えられるかというような点でございます。現在、前回も少し説明がありましたが、損保協会では、不正請求を行った募集人は、例えば今後募集させないように改めて行政に対して通知を行うこともしています。募集人が直接関与していない場合でも、改めて募集人の適切性を確認するため、直近では再教育の仕組みを導入したという話もございます。こうした取組に加えて、さらに何かできることがあるかというようなことについても、御議論いただければと思っています。あと、その他に大規模な保険代理店の実効的な監督を行っていくためにどのような対応が考えられるかという話でございます。
 
 次に、スライド5を御覧ください。2つ目の点、代理店手数料ポイント制度でございます。こちらについては、そもそも手数料ポイント制度とは何かというところの説明から入らせていただきます。代理店手数料ポイント制度は、大手を中心とした損保会社が代理店に支払う代理店手数料を算出するために導入している制度でございます。仕組みや運用方法については、基本的には代理店委託契約に基づき、契約当事者間の民々の協議・合意により決定されているものであります。代理店手数料ポイントの評価体系は、一般的に、規模・増収率、収益性、業務品質といった観点から評価される構成になっており、こうした評価に基づき付与されるポイントの多寡によって代理店手数料の金額が変動するということで、下に書いたような式で決定されるというようなところでございます。それぞれ、規模・増収率、収益性、業務品質のポイントを加算してポイントが適用されることになっています。
 
 次に、6ページ目をお願いいたします。こちら、問題の背景・真因につきましては、先ほど申し上げたことと重なりますので簡単に申し上げますが、基本的には民民間の交渉で決定されるものではありますが、私ども金融庁として、規模・増収に偏らず、より業務品質をしっかりと反映させるように促してきたところではありました。
 
 しかしながら、今回の事案においては、特定の損保会社が登録取消要件に該当するような問題を抱えていた保険代理店であるビッグモーター社に対して、獲得可能なポイントの上限値が他の販売チャネルよりも高くなるディーラーに準じた取扱いとしており、かつ規模・増収の状況を中心的な判定要素として高いポイントを適用していたということでございました。また、同社に乗り合っていた他の保険会社においても、当該損保会社の水準に手数料ポイントをそろえる運用により、追随しているケースもありました。こうしたことを踏まえれば、代理店手数料ポイント制度の運用が、むしろ代理店に対して、業務品質を軽視する不適切なインセンティブを与え、不適切な保険募集を誘引していたのではないかといった懸念があります。
 
 これらを踏まえ、御議論いただきたい事項としては、まず、代理店手数料ポイント制度について、損保代理店の規模とか業績評価に偏ることなく、業務品質を適正に評価し、その評価を重視することが重要であり、損保会社に対し、そうした対応を促すためにどのような方策が考えられるかというところでございます。2つ目に、業務品質に係る評価においてはどのような内容が評価されるべきと考えるかという点でございます。現状の業務品質の中身につきましては、参考資料のスライド7に示されているので、そちらも適宜御覧いただければと思います。
 
 次は、本業支援等についてでございます。こちら、現在、保険会社は、保険代理店等からの物品の購入とか、保険代理店への職員の出向など、様々な形態での本業支援、または本業外支援、いろいろ行っているところ、ここでは「便宜供与」という言葉でお話ししようと思っていますが、いろいろな便宜供与を実施しているというところでございます。
 
 具体的な便宜供与は何があるのかということにつきましては、次のスライド8に、幾つか事例を私どもが調査させていただいてまとめさせていただいたものがございます。結構いっぱいあって、これでも一部なんですけれども、本当にこんなことやっているのかみたいなものもあれば、通常の取引先へのサービスの一環としてまあこのぐらいならあるだろうといったようなものから、様々あるということが見てとれると思います。全てが禁止されるべきというものでもないとは思っていますが、ただ、一般的な社会通念上これはどうなのだろう、というようなものも存在しています。
 
 1ページお戻りいただきまして、こうした状況下、今、スライド7の2ポツですけれども、今の我々の監督指針においては、こうした便宜供与について、特定の保険代理店に対する便宜供与が過度なものとなれば、過当競争の弊害を招きかねないというものとして、保険会社に適切な管理を求めているところでございます。また、現在の保険業法上、乗合代理店は保険募集時に顧客に対して複数の保険商品を比較推奨することなどが求められていますが、今般の事案において、損保会社が乗合代理店に対し積極的な便宜供与を行い、その特定の代理店がその見返りとして顧客に対して当該保険会社の商品を優先的に推奨すれば、顧客の適切な商品選択を阻害するおそれがあるというようなことも明らかになったところでございます。
 
 最後に、また、企業向けの保険、こちらはどちらかというと次回中心に議論する保険料調整行為等事案と強く関係しますが、企業向けの保険でも、便宜供与等の保険契約の内容以外の要素が、例えば顧客が決定する共同保険のシェア等に影響を及ぼす場合がある。これにより、よりよい保険条件を提示することでシェア獲得・拡大を目指すという適正な競争に対する損保会社の営業担当者の意欲が損なわれたということも価格調整行為の一因になったと考えています。
 
 それを踏まえまして、スライド9、御議論いただきたい事項に参ります。まず、1つ目としては、やはり便宜供与については、特定の保険代理店に対する過当競争の弊害の防止、今、監督指針で示されていることのみならず、顧客の適切な商品選択の機会を確保するという観点から、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものを防止することが考えられるかというようなところでございます。より具体的に申し上げますと、自社の保険商品の優先的取扱いを誘引するものとして、下にニギリとかノルマとか書いてありますが、このようなことについては防止をすることが考えられるか、というところでございます。また、損保会社のみならず保険代理店に対しても、保険会社にこうした便宜供与を求めることのないよう、私ども当局から求めることも考えられるかという点でございます。
 
 また、それ以外、ニギリとかノルマとかそういう以外のものであったとしても、便宜供与の価格、数量、頻度などの要素を総合的に勘案した上で、実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引すると考えられるものについては一定程度防止することも考えられるかどうかという点でございます。
 
 また、下から2つ目ですが、今後、防止すべき便宜供与に係る具体的な判断事項を策定した上で、具体的な態勢整備の内容を含めた各社の取組状況について定期的にフォローアップする仕組みを構築することを業界全体に対して求めていくことが重要であるが、そのほかに、実効性を高める観点からどのような対応が考えられるかというようなことでございます。
 
 次のスライド10では、今申し上げたことを簡単に図柄にしていて、一番下の濃い部分については、積極的に防止すべきではないかというところです。あと、一番上では、一般的な社会通念に即して妥当な範囲のものもあるでしょう。その間のところでどのように線を引いていくかというようなところについて、御議論ができればありがたいと考えています。
 
 次に、スライド11をお願いいたします。こちらは出向等についてでございます。まず、現状ですが、損保会社は保険代理店等に多くの社員を出向させているというような状況でございます。出向の状況についてはスライド11の下のほうに参考と書いてあるんですけれども、大手業者さんに聞いたところ、大体こういうような状況で、出向者数は約2,370人で、出向先は約1,520社、75%が保険代理店ということになっています。あと、下の2つとしては、10人以上出向させているケースもあれば、5年以上出向させているケース、多くの人数、長い年月出向させているケースも一定程度存在するというところでございます。
 
 1ポツに戻りますが、保険会社から保険代理店への出向自体は、一般的には、保険代理店の業務品質の向上に資するほか、保険会社にとっても、現場における顧客のニーズを発掘することで新しい商品・サービスの開発に生かせるなど、双方にとって利点があるものと考えています。
 
 また、業界における長年の慣行として、出向以外にも社員代行というケースがございます。これは、自社に、保険会社に在籍したまま、保険代理店におけるバックオフィス業務を代行する。バックオフィス業務とは、例えば見積書とか申込書の作成といった基本的なところから、システムの操作とか、場合によっては土日とか夜間の顧客対応等、そのようなものをイメージしていただければと思いますが、そういったものを代行する社員代行という形態の役務が提供されているケースもあるということでございます。
 
 他方、保険会社から代理店への出向等についても、これが過度なものであれば、ほかの便宜供与と同様に、顧客の適切な商品選択を阻害するおそれもあるのではないかと考えています。
 
 これを踏まえまして、スライド12、御議論いただきたい事項でございます。今般の事案を契機として、こうした出向や社員代行についても、保険業界における適正な競争を促進する観点から、保険代理店における業務品質の向上等という本来の目的に留意しつつも、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引する過度なものはやっぱり防止することが考えられるかというようなところでございます。
 
 3つ目のポツにありますとおり、また、出向先が兼業代理店の場合、特に出向後に保険会社と利益相反が生じ得る業務に従事する可能性もあるところ、保険会社における利益相反管理の観点から、これを防止することが考えられるかという点でございます。
 
 このほか、4つ目のポツ、実質的に自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものとして、以下の場合に該当する出向については防止することが考えられるかということで、1つ目として、社会通念に照らし、人数や期間が適切と認められない場合とか、あと、保険代理店から保険会社に支払う出向負担金の水準が、一般的な慣行に照らし一定程度低い場合などが考えられるのではないかという点でございます。
 
 また、社員代行についても、例えば無料かつ継続的に実施するなど、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引する、ないしは保険代理店の自立化に向けた動きを阻害するおそれがあるものについては、防止することが考えられるのではないかというふうなことです。
 
 下から2つ目、出向等についても、その他の便宜供与と同様に、防止すべき出向等に係る該当性の判断に関する具体的な基準を策定した上で、各社の具体的な態勢整備の内容を含めた取組状況を定期的にフォローアップする仕組みを構築することを業界全体に対して求めていくことが考えられるかという点でございます。
 
 次に、スライド13を御覧ください。こちらは入庫紹介の話でございます。入庫紹介、こちらは、顧客から自動車事故発生の連絡を受けた際に、その顧客に修理工場を紹介するというサービスがございます。この入庫紹介は、顧客に入庫・修理・支払いまでの迅速な損害サービスを提供する観点から、顧客、損保会社、修理工場にそれぞれメリットがある慣行であるとも言えます。一方、今般の事案では、入庫紹介の際に、その見返りとして、修理工場を兼業する保険代理店からの契約獲得を優先し、顧客の意向や要望を確認することなく多くの顧客に特定の修理工場を紹介していたほか、特定の修理工場で不正な修理費の請求を行われたにもかかわらず、顧客に対して当該修理工場への紹介を継続していたなど、自社の利益を優先するあまり、顧客の利益を損ねていたことが明らかになりました。
 
 それを踏まえ、御議論いただきたい事項としては、やはり顧客本位の業務運営を徹底する観点から、現在、損保協会さんにおかれてもガイドラインを改正していただいてはいますが、それに加えて、例えば以下のような取組をさらに実施することも考えられるのではないかという点でございます。具体例として挙げていますのが、顧客が修理工場を選択できることを明確に告げる、顧客に修理工場を紹介する際は、原則として複数社を紹介するとともに、それらを紹介する理由を説明する、顧客に紹介する修理工場の業務の適切性や品質を定期的に検証するとともに、入庫紹介を受けた顧客の意見等も踏まえ、その入庫紹介の適切性を確認するための態勢を整備する、といったようなことが考えられるのではないかという点でございます。
 
 次に、スライド14、比較推奨でございます。こちらについては、問題の背景・真因については、スライド7で触れましたとおり、いわゆる損保会社による便宜供与により代理店が適切に比較推奨を行わなかった場合、顧客の適切な商品選択が阻害される可能性があるというようなものでございます。現状の比較推奨の実態について、これは様々なケースがあると考えますが、私どもが公表情報等から調べた限りでは、例えば、自動車販売業等を兼業する乗合代理店においては、取扱保険会社を店頭やウェブサイトで示しつつも、特定の保険会社の商品や事務に精通しているといった理由から、会社としての、もしくは店舗ごとの推奨保険会社を定め、募集時には顧客に特段の希望がない限りは推奨保険会社の商品を提案するといったケースが複数見受けられたところでございます。
 
 こうしたことを前提に、御議論いただきたい事項に移りますが、乗合代理店が適切に比較推奨販売を行う態勢を整備するという観点から、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引する本業支援等を防止するといったほか、先般通りました金融サービスの提供及び利用環境整備等に関する法律、改正金サ法における誠実義務の規定も踏まえ、以下のような対応が考えられるかということで、2つ述べさせていただきます。
 
 比較推奨が可能となる態勢整備の確保ということで、1つ目が、保険募集人が顧客に対して比較推奨を行う場合においては、顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較または推奨提案し、比較に係る事項や提案の理由を分かりやすく説明することが求められることを明確化してはどうか。2つ目が、保険募集人の提案する保険商品がどのような商品群から選定された上で提案されているのか等について、顧客に対して情報提供をする。例えば、取り扱う保険商品の範囲、募集手数料に関する情報、乗り合っている保険会社のリストなどが考えられます。
 
 次に、顧客が保険契約の加入を検討するに当たり、自らの意向に適した商品を選択できるよう、自動車保険を選ぶ際のポイント等について分かりやすく記載されたガイドブック等を例えば損保協会さんなどにおいて作成・配布することが考えられるかというようなところでございます。また、そういったものを作る際には、どのような情報を顧客に提供することが有益と考えられるかという点でございます。
 
 次のページ、御覧ください。こちらは保険代理店の兼業や保険金支払態勢についてでございます。こちらは、一般的に自動車修理工場など本業に付随した保険金の支払いを受けることで利益を得られる事業がありますが、こちらを営む者には、保険会社に対して過大な修理費等の請求を行うインセンティブが働く場合があるというようなところでございます。
 
 こちらについては、スライド16のポンチ絵を見ながらのほうが分かりやすいかと思いますので、こちらのページを中心に説明させていただきます。先ほど申し上げたのは左下の赤い四角です。保険代理店を営む企業の中には、多くの保険金を受け取れば利益が増加する事業を営むというようなところもあります。今般の事案においては、自動車修理工場であるビッグモーター社にとっては、損傷の作出などによって過大な修理費を請求するインセンティブが働いていたと考えます。もちろん現在の監督指針で私どもが保険会社に求めているように、いわゆる適切な保険金等支払管理態勢を構築し適切に機能させていれば、仮に修理工場等から過大な修理費等の請求を受けたとしても、もちろん人間ですので100%完璧に防げるとまでは言いませんが、少なくとも今般の事案で見られたような行為は未然に防止されたはずだと考えます。
 
 しかしながら、今般の事案では、保険代理店が大規模な収益をもたらすなど、損保会社にとって非常に影響力の大きい存在であったことから、ちょうど上の箱にございますように、損保会社において過大な保険金を支払うことによる短期的な損失を甘受しても、当該代理店との長期的な関係の維持を優先するといった営業偏重のスタンスが支払管理部門も含めた社内に浸透していたということで、保険金等支払管理態勢が適切に機能しなくなっていたというような実態が見受けられました。そのため、過大な保険金の支払いであることを認識しながらも保険金を支払ってしまうことで、保険契約者にとって保険料の増加につながっていたおそれがあり、ひいては顧客本位の業務運営が阻害されていたのではないかと考えています。
 
 これを踏まえて、最後、スライド17になります。前回会議における議論を踏まえると、顧客利便の低下等の弊害を考えれば、兼業自体を禁止するのではなく、兼業に伴う弊害を適切に管理することが重要ではないかというご意見をいただきました。それを前提にすれば、例えば、保険代理店及び保険会社の双方において、以下のような態勢整備を求めることが考えられるか。すなわち、代理店においては、企業内における保険契約者の利益を損ねる事業の特定やその管理方針の策定・開示を行う。保険会社においては、現在の監督指針で求められている利益相反管理を同一金融グループ内だけではなく、保険代理店が保険契約者の利益や顧客本位の業務運営を損ね得る事業を兼業する場合があることが明らかになったので、こうした代理店との関係も踏まえた利益相反管理に係る方針をウェブサイト等で公表する、といったことも考えられるのではないかと思っています。
 
 2つ目として、保険代理店が過大な修理費等を請求するインセンティブを持っていたとしても、保険会社における保険金等支払管理態勢が適切に機能していれば、こうした過大な保険金が支払われることはなかったと考えられることから、不正請求に適切に対応できるよう、例えば以下に書いてありますとおり、適切な保険金等支払管理態勢の確保、営業部門と支払管理部門の不必要な情報連携の防止や、介入の排除、アジャスター等の専門家の適切な配置や活用など、更には不正な請求に関する適切な検証態勢の確保などが考えられます。
 
 最後に、保険会社における保険金の支払管理をめぐっては、近年、保険会社が経営の効率化を求める中、支払管理部門のコストは削減対象になりやすい、また、不払いを防止するとともに、早期の支払いを重視する観点から、支払いの正当性に疑問が残る事案であっても支払ってしまうことがあるといった指摘もございます。こうした点も踏まえ、保険会社の適切な保険金等支払管理態勢を整備する観点から、どのような対応が考えられるかという点でございます。
 
 事務局からの説明は以上でございます。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。それでは、メンバーの皆様方に御議論をいただければと思います。本日できるだけ多くのメンバーの皆様方に御発言いただく機会を確保する、また、議論を掘り下げていくため、できるだけ2度目の御発言の機会を設けたいという観点から、お一方当たり5分程度以内の御発言を目安にしていただければありがたく思います。
 
 また、御発言いただける方には、挙手をしていただくか、あるいはお名前の札を立てていただくということをしていただければ、できるだけ順番に私から御指名をさせていただきたいと思います。
 
 それでは、今御説明いただきました内容につきまして、メンバーの皆様方から御質問、御意見がございましたら、どなたからでもお出しいただければと思います。
 
 では、中出メンバー。
 
【中出メンバー】  最初になって恐縮です。中出です。今回の問題に関係するいろいろな論点について、今、当局の方から非常に分かりやすく御説明がございましたが、BM事件で私が最も重要であると考える点は、保険金請求という保険のまさに最も基本的部分で不正が生じていて、それが修理業という兼業の中でなされていたわけですが、大規模代理店でかつ乗合代理店であるなかで、保険会社サイドできちんと是正ができなかったということです。
 
また、さらにこういった不正は、本業の修理事業においてなされたことで、代理店としての募集業務上の不正ではないので、行政処分を行う面での難しさもあったように思っております。比較推奨義務など、募集面の義務違反に対して代理店を処分することはできるとしても、本件のような不正を直接当局がコントロールしていくことの難しさもあったのではないかと思っています。
 
 このように、兼業という状況において問題が出ていることを考え、まず、ポイントの5についてお話をしたいと思います。本件は、端的に言えば、BM社が自分のビジネス、自分の利益のために保険を悪用していたといえるもので、そこに重大な利益相反が存在しています。兼業の場合には、何らかの形の利益相反が発生する可能性があって、これは別に自動車修理の場合に限らなく、火災保険の住宅関連、あるいはペット保険におけるペットショップとの関係、銀行窓販、いろいろな業種において兼業における利益相反の可能性は存在すると思います。
 
 したがって、兼業から生じる利益相反の回避をきちんとしていくことが重要であると思います。資料の17ページでは、利益相反関係にある事業の特性とか、管理方針を開示・公表をしましょうという提案が改善策として挙げられています。これらの方法に異論はないですが、私は最も大切なことは、こういった利益相反をやってはならないという、明確に禁止する考え方が重要でないかと思います。すなわち、これは書かれてなくても当然のことなのかもしれませんが、本業の利益を上げるために保険を悪用するようなことはあってはならないことなので、明確に禁止をしていくことが重要であると思います。
 
 兼業自身を認めないとなりますと、利用者の利便性とか保険の普及の点から支障が生じると思いますので、兼業は認めるとしても、保険募集において兼業はデフォルトではなく、兼業をする場合には、それから発生する利益相反は禁止すること、そして、募集においては、それをどのように防いで態勢整備を図るかが重要で、その部分でもし問題があれば、募集上の違反がなくても当局が代理店に対して処分ができるようにすべきでないかと思います。要は、義務を明確化して、代理店自らがそれを遵守し、その遂行に対して牽制を働かせて、それを評価していくということです。
 
 こういうような考え方を中心にして、今度はポイントの1に移りますと、大規模代理店の制度については、基本は代理店が自ら態勢を構築すべきだと思いますので、第三者評価の制度はそれを補完するものであると思います。牽制したり補完する位置づけのものですので、両者を同時に並行して進めることが重要であると思います。
 
 領域は少し異なりますが、銀行代理店の場合には保険業法上、法令等遵守責任者を配置しなさいということになっています。大規模代理店についても、考えてみると、法令等遵守責任者を明確化させて、それを機能させ、できればそういう責任者には業界の試験等を受けさせて、仕組みが出来ていることを代理店が公表し、第三者はそれができているかを監視していくという方式が良いのでないかと思っています。いずれにせよ、第三者評価の仕組みを実効があってサステナブルなものにしていく必要があると思いますが、これは代理店の取組との二輪両輪でやっていくべきものなので、その全体を考えていくことが重要であると思います。
 
 それから、保険代理店と保険会社の関係ですが、本業支援等については、ポイント3に書かれている提案に賛成です。また、代理店手数料のポイント2についても、業務品質に係る評価部分を高めるということに賛同いたします。業務品質においては、法令遵守、それから、顧客保護、こういったことが非常に重要ですので、第三者の視点も入れて、業務品質の中身を検討していく必要があると思います。
 
 私が加えて重要であると考える点は、顧客保護に加えて、個人や企業を問わず、顧客のプロテクションギャップを解消して、保険市場を発展させていくという視点で、それも織り込むべきでないかと思います。日本は大きな社会課題を抱えていますので、顧客のリスクマネジメントを高度化して、保険をもっと活用し、浸透させていくことが極めて重要です。そういうことを提案できるかは代理店にかかっていますので、代理店の能力を高めて保険制度を広げていくということが重要であると思います。
 
 その点で考えますと、評価ポイントにおいて、例えば現在は挙績がかなりの部分、7割とか8割を占めるのではないかなと思いますが、挙績が重要になっていて、しかもその中に自賠責保険料も入っているわけです。ところが、自賠責保険はもともと全社同一の強制保険で、これからは自動車の数も減少していくとすると、まさにパイの取り合いをする領域にわざわざインセンティブをかけていくというのはどういうものなのかなと疑問をもちました。こういったポイントについても、保険市場をさらに発展していく、そのためにはどういう競争が重要なのかということを考えて、それをインセンティブに与えるということが重要でないかと思います。
 
 5分程度ということなので以上といたします。ありがとうございます。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。最初のほうで言われました、募集行為それ自体に違反はないけれども、代理店自身が保険の不正利用に用いられてしまうという、あまり想定していなかった事態なので、保険の不正利用行為、それ自体を理由として行政上の処分をするというようなことは法律も想定していないのではないかと思います。ですから、そういうことも含めて行政処分の対象になり得るということを考えてみるのは、一つの在り方かもしれないかなと思います。
 
 ほかにいかがでしょうか。では、永沢メンバー。
 
【永沢メンバー】  ありがとうございます。中出先生から、専門的な見地から、非常に分かりやすく問題の全体像をお話しいただきまして、本当にそのとおりだなと思って拝聴しておりました。
 
事務局から丁寧なご説明をいただき、問題の背景が理解できました。私は、基本的に金融庁の提案には賛成ですが、その上で、ご提示いただいた論点について、素人目線ですが、感想めいたことをお話しさせていただきたいと思います。
 
 まず、1番のところです。前回、私も生保協会で実施されている第三者評価制度をこちらでも導入したらどうかと提案させていただきましたが、後で考えてみますと、生保協会の取り組みは、顧客本位を頑張っている代理店が自ら手を挙げて、しかも自分でお金を払ってまでして認証を受けていただくという制度です。一方、こちらは、問題のある代理店を、どうしますかという問題があります。あちらの取り組みがそのままこちらでワークするのか、そこが大きな課題であろうと思えてきました。代理店のうち、一定以上の規模のところには強制的に第三者評価を受けてもらわなければならないということも考えられますが、どうやって強制できるのかとか、また、制度を運営していくにはそれなりの費用がかかりますが、それをどう賄っていくのかというのが大きな課題であろうと思います。
 
 それから、そもそも代理店は登録制ということ、今回の資料を拝見しまして初めて認識したわけですが、そうであるならば、代理店の業界団体に自主規制の機関の役割を担っていただいて、そこに当局の監督の補完をしていただくということが考えられないのかとも思いました。免許制と登録制とが混在している損保業界において、この辺は私は法律の専門家ではないのでよく分からないのですが、当局に、監督を全部やってくださいというのはとても無理な数であるように思い、業界団体に当局の補完的役割をお願いできないだろうかと思った次第です。
 
 それから、試験制度についても、証券業界の取り組みになりますが、内部管理者とか営業責任者といった資格制度も設けております。損保業界においても、そういった資格制度も導入されてはどうかと思いました。
 
 続いて、代理店手数料ポイント制度についてです。正直なところ、第一印象として、かなり違和感がありましたが、業界内で頑張っていただくためのシステムとして自然発生的に導入されてきているものということで、廃止ということも難しいと思いますが、一方、何らかの規制は考えるべきだとも思います。
 
 考えられる規制としては、2つあります。一つは、業務品質のウエートは例えば5割を下回ってはならないとかという規制です。もっとも、5割が適正かどうか分かりませんが、業務品質のウエイトをあまりにも低くしてはならないというような制限を入れるというのはありうるのではないでしょうか。
 
もう一つは業務品質の内容。項目の見直しです、参考資料を拝見しますと、保険会社のコスト削減に資するような項目が並んでいるように思いました。また、法令遵守だけではなく、お客様のためという視点、サービス向上という視点がやや欠けているように思えます。お客様の視点としては、顧客満足度というような主観的な項目だけでなく、客観的に顧客利益に繋がっているかどうかが測れるような項目を工夫していただいて入れていくことが必要ではないかと思います。ここは、規制で縛ってしまうと、各社横並びになってしまうおそれもあります。また、公正な競争を阻害していくことにもなる可能性もあり、単に規制すればいいというものではないとも思います。
 
 そこで思うに、遠回りにはなりますが、やはり消費者や市場に対して、どういうお金のやり取りが損害保険会社と代理店の間で行われているのかという情報を開示いただくことが、不適切な保険募集の防止や利益相反の抑制につながるのではないかと私は考えておるところです。
 
資料の後半に、保険商品の比較推奨という項目がありますが、比較推奨と言われても、一般の消費者には正直分からないところが多いと思いますが、このお金のやり取りに関しては、消費者も関心を持てるのではないでしょうか。あなたはこれを売って幾らもうけるんですかということは、消費者でもよく分かりますので、こういう情報を与えられますと、商品選択、保険会社の選択をするときにクリティカルシンキングができるということで、選択時の情報として助けになるのではないかと思います。
 
 それから、顧客本位の業務運営の原則について、損保業界においても各社、自主宣言されていますが、主要各社のホームページを確認させていただいたところ、4の手数料の明確化という項目は、外していらっしゃるんですね。もちろん、あの原則は金融商品の場合を想定して策定されたものですから、外されるのは仕方ないのかなと思いますが、前回も申しましたけれども、この4に該当する、手数料の透明化に関する項目を、損保業界自身で考えていただきたいとも思います。
 
 続いて本業支援のところですけれども、そもそも論ですが、私はこの本業支援という言葉の使い方が間違っていると思います。銀行業で本業支援という言葉を使いますが、経営難の融資先を支援して再建支援を行うという場合に使うのではないでしょうか。この言葉の使い方の見直しをされるべきではないでしょうか。また、社員代行という言葉も初めて知りましたが、運転代行のようで、この言葉も強い違和感があります。
 
 続いて、資料の10ページに3分類が示してある箇所です。一番上の一般的な社会通念に即して妥当な範囲の便宜供与かどうかというところですが、この境目が、時代と社会の変化とともに、徐々に上に上がってきていると思います。この境目を一律に固定して決めてしまうと、時代に合わなくなっていきますので、損保協会や、損害保険代理店の業界団体があると聞いておりますけれども、そういった業界団体に、代理店や損害保険会社の従業員からの通報の窓口を設置していただき、他社でこんなことをやっているとか、こんな働き方をさせられている、自主的なことだと言われているが実質は強いられているというような告発をどんどん上げてもらって、そうした通報を、第三者委員会のようなものを設置して、審理してもらって、改めるべきことが見つかれば、そこで新たにガイドラインをつくっていかれたらいいのではないでしょうか。通報については、公益通報者保護法の適用にならないこともあると思いますので、特別に保護するというような手当が必要かもしれません。
 
 続いて、保険金の支払いのところです。ポンチ絵を拝見しまして、保険会社において、営業部門と支払管理部門がきっちり分けられていくことが必要なのではないかと思いました。ここは、最後は社長につながっていく部門になるようですが、営業重視の会社の場合、支払管理部門のほうの評価が下がりがちになってしまうように思います。そこを誰が監視するかが大事になると思います。取締役会、とりわけ社外取締役の方に頑張っていただくしかないのかなとも思います。営業部門優位の評価になっていないのか等をチェックできる仕組みを、すでに入っているかもしれませんが、金融庁の監督指針などに入れることも検討していただくことが必要なのではないかと思います。
 
 最後になりますけれども、代理店を営む企業においては、先ほど申し上げましたような内部管理責任者試験制度みたいなものを設けて、一定規模のところについては、資格を取った人を配置することを義務付けしていかないと、任意にしておいたら進まないんだろうとも思います。人材のレベルアップ、代理店のレベルアップが必要なのではないかと、色々なお話を伺い感じております。
 
 私から以上です。ありがとうございました。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。私から個々的にコメントを申し上げると時間がなくなりますので、先にまず皆様方から御意見をいただければと思います。先ほど大村メンバーからお手が挙がっていましたので、増山メンバーはその次にということで、大村メンバーから、お願いいたします。
 
【大村メンバー】  ありがとうございます。私自身は、保険が、その商品自体またはそれに付随するサービスに基づいて選択される環境が整備されない限り、損保業界の健全な発展はあり得ないと思っております。現状、いろいろな立場の方からお話を聞くようにしておりますが、こと本業支援に関しては、若手社員の方がそれによって疲弊してしまっているのを感じますし、また、経営層の方からは、本業支援で物事が決まってしまうがゆえに、アンダーライティング力の強化や人材の育成、商品開発等に力を入れられないといった悩みが聞かれ、損保各社がそこにきちんと注力するためには適切性を欠く本業支援というものが徹底して排除されるような仕組みの確立が重要だと考えております。
 
そのためにも、ルールが明確であり、具体的な事例への当てはめにおいて個社ごとに解釈の違いが生じないこと、エンフォースメントが確立されており、ルールを破った者は確実に補足され相応の罰則が与えられることが必要なのでないかと思われます。
 
 後者のエンフォースメントの確保という観点からは、今回事務局の方にご用意いただいた課題への対応策の1点目、大規模代理店に対する監督ともつながってくるのですが、やはり関係する当事者の現在ーの状況に鑑みると、第三者評価といったものが重要になるのではないかと考えております。他方で永沢メンバーからも御指摘がありましたとおり、現在の生保協会の認定代理店制度の対象となる代理店と本件で問題となっている代理店とでは、その性質やインセンティブ構造が異なりますので、それをそのまま持ってくるということは難しいものと思われます。 この点については、方向性は二つあると考えておりまして、一つ目は、第三者評価を行う機関に権限を与える方向であり、当局からその権限の一部を移譲した上で、かかる機関を活用することが考えられるかと思われます。自主規制団体というのはそういうものであると理解しております。また、二つ目は、代理店側に手を挙げさせるようなインセンティブを導入する方向であり、認定されることが彼らにとっても利となるような形、一つの案としては、認定制度を代理店ポイント制度と連動させ、認定された代理店はポイントの算定において相当程度有利に扱われるような仕組みづくりを行うことが考えられるのではないかと思われます。ただ、いずれにしても第三者評価については、どこに設置し、誰が評価を担うのか、対象をどこまで広げるのか、財源は誰が負担するのかといったことを含め、もう少しきちんと検討の上、決定する必要があるのではないかと思っておりますし、また、評価の内容のつくり込みは非常に重要だと思っております。
 
 先ほど永沢メンバーからも御指摘がありましたが、現在代理店ポイント制度で使われている業務品質の項目には、正直、首をかしげざるを得ない項目が多い印象を受けております。ここに記載されているものが全てではないと理解しておりますが、業務品質というのであれば、苦情であったり、不祥事件であったりが、どの程度発生しているのかということは考慮されてしかるべきだと思われますし、顧客の意向把握や情報提供のためにどの程度の態勢が整備されているのか、自主点検であったり、内部監査がどの程度機能しているのかということも含めた上での評価であるべきで、それらが評価項目に入っていないと、評価される側においても納得感がなく、改善を促すことが難しいのではないかと思われます。そのため、新たに第三者評価制度をつくる際には、評価される側の代理店と共に、あるべき姿はどのようなものか、それをどういった項目で評価すべきかということを検討していただく必要があるのではないかと考えております。
 
 また、これは中出メンバーと永沢メンバーが言及されておりましたが、私も、本来的に態勢整備をすべきなのは大規模代理店自身であるというのは御指摘のとおりだと思っておりまして、その観点から一定以上の規模の代理店について法令等遵守責任者の配置を義務付けることに賛成でございます。また、大規模というのも一つの視点なのですが、それに加えて、乗合かどうかということも非常に重要な視点ではないかと考えております。やはり1つの商品のみを売ることと、複数の商品から選んで顧客にお勧めをすることとでは難しさの次元が全く異なりますので、乗合代理店において適正な保険募集が行われることを確保するためには、人数規模なのか乗り合っている社の数に応じてなのかといった点については今後検討の必要がありますが、一定の上乗せ規制が必要なのではないかと、より具体的には、責任者の配置を求め、態勢の整備状況を見ていく必要があるのではないかと考えております。
 
 事務局側でご用意いただいた本業支援に対する規制の方向性については、基本的に記載していただいている内容で違和感ございません。出向についてのみ1点述べさせていただくと、事務局側にご用意いただいた、御議論いただきたい事項のところで、業務品質の向上という本来の目的に留意しつつとの記載がございまして、そこはおっしゃるとおりなのですが、従前の保険会社によるディーラーに対する支援の実態を見ておりますと、ディーラー側は態勢整備を自分自身で行う気はまるでなく、保険会社側に全て丸投げし、保険会社側で出向者を永続的に出し続け、態勢整備義務を全て丸抱えしている形になっておりまして、かような支援は代理店の自立を阻害することにもなるため、本来の趣旨に反しているのではないかと考えております。そのため、業務品質に資する出向であれば須らく良いのではなく、最終的に態勢整備を自律的に行うべきなのは保険代理店であるという前提の下で、彼らの自立を促進するような形での支援がなされるべきだと思っております。したがって、10年でも20年でも永続的に人を出してあげますよということではなく、期間を決めて、きちんと彼らの自立を促すような形での支援づくりというものを保険会社のほうで行っていただきたいなと考えております。
 
 長くなりましたので、一旦、こちらまでとさせていただきます。
 
【洲崎座長】  御協力どうもありがとうございます。ご発言が少しずつ長めになっておりますので、最初に申しましたように、できれば5分以内でということでお願いします。
 
 それでは、先ほどお手が挙がっておりました増山メンバー、お願いいたします。
 
【増山メンバー】  ありがとうございます。私、前回も申し上げましたとおり、損保の営業、アンダーライティング、それから、契約者という3者の立場からというところなんですけれども、御提出いただいた資料とちょっとずれるかもしれないんですが、私はやっぱり相変わらず契約者の役割もすごく重要だなと思っています。今回この議論は代理店とか保険会社という、金融庁さんの監督下にある方の中の議論ではあるんですけれども、リスクという観点で考えると、この自動車のリスクって、リスクオーナーは個々の契約者なんですね。今回は契約者イコール被保険者という前提でお話をさせていただきますけれども、ということは最終的にリスクを負っていらっしゃるのも契約者ですし、判断するのも契約者です。そういう意味でやっぱりこの人たちの役割、目の利かせ方というのも非常に重要だろうと思います。
 
 リスクという意味で考えますと、自動車を運転される方は、事故の態様によっては億円単位の賠償責任を負う可能性がありますという意味では、個人の方が負い得るリスクとしては最大級のものの一つじゃないかと思っています。それのヘッジ方法としての保険を提案される募集人の方は、よくよく考えると、これはリスクマネジャーの役割と全く一緒で、私も企業のリスクマネジャーで、経営者に対してリスクをヘッジするということを提案するのに、会社にとってこういうリスクがありますというのを洗い出して、それを分析して、それから、ミティゲーションできるものはミティゲーションして、残ったリスクを保険にするのか、自家保有するのかという、こういうプロセスを踏まえて意思決定を経営者に促すという意味では、保険の募集人の方というのは、車を運転される方に対して同じことをされていらっしゃるんじゃないかと思うんです。
 
 これはもちろん程度の問題もありますけれども、そう考えますと、やはり募集人の方がやられている業務というのは非常にやっぱり高度だと思っていまして、単純に保険の商品を知っていればいいとか、こういうものがありますよということだけでなくて、やはりリスクマネジメントに踏み込んだレベルの高いものでなければならないということじゃないかなと思っています。ですので、今の資格制度というのがやはりちょっと簡単過ぎるんじゃないかという声もありますし、それから、その方々の評価、すなわち、代理店ポイント評価のところにつきましても、業務品質という言葉が先ほど来出ていますが、一体何が業務品質なのかと考えると、そういったきちんとリスクマネジメントのプロセスが個々の契約者に対してできているのかということなんじゃないかと思っています。
 
 では、それをどうやって測るんだというところは、実はリスクマネジャーは一体何のKPIで測られるんですかと、これはよく御質問いただくんですけれども、別に保険料を幾ら下げたとか保険金を幾らもらったとかそういう話ではなくて、非常に定性的なんですけれども、経営者がちゃんとリスクマネジャーを信頼していますかと、こういうことだと思います。これを募集人の方に置き換えるとどうなんだろうかと思いますと、契約者の方がその募集人に何年お付き合いしているんだろうかと。特に事故があったとき、保険事故があったときにちゃんと期待した保険サービスが受けられたのかというところで、要するに、その募集人の方がこの一つの契約をどのぐらいリテンションされているのかというところが一つのKPIになるんじゃないかなと思っています。
 
 こちらが一つの入り口管理のところで、もう一つ、出口管理のところで契約者の役割というところでお話をさせていただきますと、保険事故が起きたとき、実は保険契約者イコール被保険者で考えますと、何をしなければいけないかという損害の立証義務というのは本来、被保険者が負っていて、それを保険会社に提示をし、保険会社と協定して保険金を払ってもらうというのが建付けなわけですけれども、残念ながら個人の契約者の場合は、この事故を起こして自動車の修理代金が幾らであるかというのはなかなか知見を持っていらっしゃらないということなので、基本的には実務としてはもう修理工場さんに丸投げをしてしまいますというのが現状だと思っています。
 
 それを踏まえて、現状の自動車保険制度で考えますと、今、相手のある事故をされて自動車保険を使いますと、皆さん御存じのとおり、3等級下がりますというルールになっています。これが損害額が10万円だろうが、100万円だろうが、1,000万円だろうが、同じ3等級ダウンですと、同じなんですね。ですから、契約者からすると、一旦保険を使いますと決めた後は、あとは、損害額が幾らになって、保険会社が幾らで協定してくれるか、基本的にインタレストがないということになっています。一方で、同じ自動車保険でも10台以上のフリート契約になりますと、成績算定制度というのがありまして、当然もらった保険金というのは将来の自分の保険料に跳ね返ってくるということになりますから、契約者としても、この修理代金が適正か、この保険金を頂くのが適正なのかという契約者の目が入るということになると思います。
 
 ですので、個人の場合はどこまでそれができるのかという問題はありますけれども、例えば先ほどの10万、100万円、1,000万ではやっぱり事故の規模も全然違いますし、そういったところに契約者自身もなるべく合理的で経済的な損害額に抑えると、将来の自分の保険料にも跳ね返りが少ないというような、少しそういった制度面での改定を入れることによって、修理工場さんに対しても抑制効果が少しでも働くんじゃないかということで、ここもリスクマネジメントの向上という観点から資するのではないかと思う次第です。
 
 私からは以上です。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。では、山下メンバー。
 
【山下メンバー】   御指名ありがとうございます。山下でございます。
 
 まず、事務局の説明資料の2ページ目の相関図は、今回の保険金不正請求事案の各種課題とその相互関係をクリアに示すものとして大変分かりやすいものであると感じておりまして、うまくまとめてくださったことに、まず感謝申し上げます。ここで示された課題は多岐にわたるのですけれども、事務局の説明資料に書いてくださった検討課題とその検討の方向性について、私はおおむね違和感はありません。その上で、2点に絞って意見を申し上げます。
 
 第1に、大規模保険代理店に対する監督です。大規模代理店と所属保険会社との力関係に鑑みると、保険会社による適切な管理・指導が難しいという構造的な課題があり、また、金融庁当局による監督も、情報やリソースの限界から十分に行うことが難しいという課題があることは、既に前回も含めまして指摘されているとおりかと思います。
 
 保険代理店は、大規模なものに限っても相当数に上ると思いますし、その代理店の業態やビジネスモデルも多種多様で、自動車関係に限っても、ディーラーもあれば、修理工場もあれば、中古車販売業もあればというふうに多種多様です。また、事業環境の変化も早い時代です。そのため、監督上の課題は、代理店の業態によっても違いますし、それがどんどん変わっていくというような中で、政府による直接規制とエンフォースメントに限界があるということは避けられないのかなと思っています。
 
 そこでどうするかというときに、中立的立場の第三者が保険代理店を評価するというような仕組みを検討していくというのは、よい考えであるというふうに考えております。その際に、生命保険協会の第三者評価制度は参考になると思いますけれども、既に御指摘がありましたように、性質が異なる部分があることはそのとおりだと思います。生命保険協会の第三者評価制度は、業務品質をより向上させていくというものなのに対し、今回問題となっているのは、損害保険の保険代理店の管理・指導を徹底させるという話ですので、ちょっと性質が異なります。そうすると、全く同じ仕組みにすることはできませんので、例えば一定規模以上の代理店は定期的に評価を受けるような、そういった義務づけなども考えざるを得ないというふうに思いました。ただ、評価対象の代理店の数は膨大となり、評価側のリソースもかなりの規模が求められますので、そのような仕組みが構築可能かというところが検討課題になると認識しています。
 
 そうすると、要するに、費用対効果の問題が重要となります。ただ、費用対効果を考えるに当たっては、その効果としては、単に、評価を受けた個々の代理店の業務品質が向上するということだけを見るべきではないと考えています。例えば、評価機関において評価するときには、当然、基準が共通化されて、保険会社が個々に評価基準を考える必要がなくなりますし、実際に評価するのも保険会社自身ではなくなるので、その分のコスト削減は図れるという部分は、ありそうです。あるいは、事務局の説明資料で提案されているように、評価結果を当局と共有することで、当局に情報がもたらされ、当局の監督や業法等の規制内容の改善につながる、その結果として社会全体の利益につながるなど、幅広い効果があるのではないかとは思うので、その辺りも勘案しながら検討していくとよいのではないかと思っています。
 
 第2点目としては、代理店手数料ポイント制度についてです、代理店手数料の考慮要素は、代理店が何をすれば評価され、増収につながるのかを示すもので、代理店に適切なインセンティブを与えるためには極めて重要であると思っています。資料で示されました代理店手数料の計算例を見ますと、保険料に手数料率を掛けたものに代理店手数料ポイントを掛けるということになっています。代理店手数料ポイントの中で規模・増収等の評価割合が高いということなのであるとすれば、多数の保険契約を販売する大規模代理店は、もともと保険料に手数料率を掛けたものの部分で多額の手数料を得ることができる上に、規模が大きいということで代理店手数料ポイントによるプラスアルファがあると、ますます多額の手数料を得られるということになります。
 
 そうしている理由は、私は必ずしもよく分かっているわけではないのですが、ひとつの可能性として考えられるのは、保険会社が、大規模乗合代理店に他社の契約ではなくて自社の契約を多く販売してほしいために、規模とか増収率を高く評価して、プラスアルファを与えるような形にしているのかもしれないと思いました。
 
 仮にそうなのだとすると、第1に、大規模な代理店の影響力の大きさというものがそこに関わってきていますし、第2に、乗合代理店をめぐる保険会社間の競争の結果としてこうなっているということになりますので、ある意味では、自然な結果でこうなってしまったということになります。しかし、それが業務品質向上のインセンティブを減少させるという不適切な結果をもたらしかねないということだとすれば、規制上の介入がある程度必要になるというふうに考えます。
 
 では、具体的にどうするか。その方法として、まず思いつくのは、永沢メンバーからもちょっと出たかもしれませんが、業務品質評価割合の開示を求め、市場の評価を受けるということがまず考えられます。ただ、これは保険会社と代理店との間の報酬に関わる問題であり、そういった開示が適切ではないとか、あるいは市場による評価では不十分なのだとかという問題があるのであれば、当局による保険会社の監督の中で、手数料ポイントにおける業務品質評価割合に十分留意するということで監督指針にその旨を明記するとか、そういったことがあり得るように思います。
 
 私からは以上です。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。それでは、金岡メンバー、そして次に、嶋寺メンバー、続いて、滝沢メンバー、この順で御発言をお願いします。では、金岡メンバーからお願いいたします。
 
【金岡メンバー】  私が考えましたことは、3番の保険代理店に対する本業支援と便宜供与の点でございます。8ページに便宜供与の主な形態・事例を挙げていただきました。この中で、例えば④番のカテゴリーに属するものについては、保険会社が保険代理店の募集活動を支援するものが多く含まれていると思います。他方、例えば①番については、保険業にかかわらず、企業が営業活動を行う際にお取引先との関係で様々な便宜供与をする・されるという形態のものが出ていると考えます。
 
 この表の中身を見た上で、10ページにございます、どのような形で防止もしくは許容を求めるかということについての基準づくりについて意見を述べさせていただきます。一番見ていかなければいけないところは、事務局資料に書いていただきました、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するに該当するか否かという基準であると考えました。そして、実質的な該当性の判断基準については、ここに掲げていただいたとおりで私も賛成いたしますが、例えば先ほどの④のカテゴリーの支援につきましては、適切な保険募集のために必要な範囲の支援を認めるということはあってもよろしいと思います。
 
 適切な保険募集ということがどういうことであるかと申しますと、いろいろございますが、先ほど増山メンバーがおっしゃっていただいた御意見と私も同じでございまして、顧客の意向の確認のために必要な支援を保険会社がするということはあってもいいと思います。優先的な取扱いで自社の商品を契約していただくためにバイアスのかかった形での支援ではなく、本当にお客さんにとってその意向に沿った最適な保険商品を説明するために必要な範囲での支援については認めてもよろしいと思います。ただし、10ページの図で書いていただいたとおり、それが過度な範囲になった場合には、一定の規制をかける必要があります。その過度であるか否かというところについては、こちらの実質的な該当性の判断基準以外のところで、具体的にもっと適切なさらに追加すべき指標があるか否かというところはまだ私のほうでは思い浮かんでおりませんので、本日御意見を伺いながら検討していきたいと考えます。
 
 それから、もう1点ですが、最後のページの17ページの適切な保険金等支払管理態勢の確保について意見がございます。支払管理部門の評価基準も検討いただきたいと考えております。つまり、不正請求に対して適切な対応をしていただいた場合、約款に基づき適切な査定をしていただき、合理的な期間内に保険金の支払いを終えるという、一連の支払手続きにおいて支払管理部門が適切な業務を行い、その結果として保険金の支払いを受けたお客様から非常に満足の高い評価をいただいた場合には、その評価に見合う評価制度も入れていただきますと、こちらで提案していただいている提案内容を実現する一つの実効的な手段になるのではないかと考えております。
 
 私からは以上でございます。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして、嶋寺メンバー、お願いいたします。
 
【嶋寺メンバー】  既にどのメンバーからもコメントされておりますので、私からは2点に絞ってお話しさせてもらいたいと思います。
 
 1点目は、代理店の評価に関する部分でございます。第三者の目を入れていく必要があるというのはそのとおりですが、それは保険会社に委ねるということではなくて、金融庁の監督の目線を入れていくということが必要ということだと思います。一部の報道にあったような、業界内に評価機関を設立するとか、そのようなアイデアについては私は反対でございます。代理店の不祥事とかコンプライアンス上の課題というのは年々変わっていきますので、やはり金融庁の監督の目線を反映した形で評価の項目を見直していくようなことが必要だと思います。
 
 例えば業界内に何らかの評価機関をつくって、そこに外部の有識者が関与するということも一つ考えられるかもしれませんが、それではどうしても形式的に評価をして、結果を公表するだけということに終わってしまう。個別に代理店とか保険会社に改善を促していくというような権限までは持ちづらいと思いますので、やはり何らかの形で金融庁が関与するというようにしていく必要があると思います。
 
 ただ、これまでの議論にもあったとおり、金融庁のマンパワーの問題もあると思いますので、金融庁が直接監査をするということには限界があると思いますけれども、例えば金融庁から諮問を受けた会議体とか、金融庁から委嘱を受けた団体とか、そのような業界から独立をしたそういう組織を活用していくということが考えられるのかなと思います。そういう会議体とか組織の中で評価項目を議論して、その評価結果をまたそこにフィードバックを受けていく。さらに評価項目を見直していったり、あるいは個別に改善が必要なところに対しては、その組織から金融庁のほうに監督を促していくというようなことなどもしながら、金融庁自身ではなく、そういうリソースもうまく使いながら実現していくということは考えられるのかなと思っております。
 
 代理店評価という形で議論されていますけれども、評価をすることに意味があるのではなくて、問題がある代理店に改善を求めていくということが主眼だと思いますので、そういう意味では金融庁も関与した形での会議体とか組織とか、そういうような形で定期的に議論を行っていく。そうすると、保険会社としても、そこでの議論の結果という形で代理店に改善を求めていくということがやりやすくなってくるという部分があるのかなと思いました。
 
 もう1点は、保険金の適切な支払いに関する部分です。もちろん大規模災害のときなどは早期の保険金支払いにより被災者の生活再建につなげていく、そういう効果があるわけですが、それ以外の場面を考えた場合には、きちんと裏づけを確認して進めるべきで、それを行わずにルーズな査定を行うというのは、本来の保険制度の仕組みであったり、公平性といった観点から問題が大きいのではないかと思います。それを実現していくためには、もちろん支払部門が第一ではありますけれども、営業部門とか代理店とかも含めてその重要性を認識していくということが必要ではないかと思います。
 
 それがあくまでも前提にはなりますが、実際の保険会社の中での保険金の支払管理態勢に何らか反映していくということを考えた場合に、一つ考えられる対応としては、過去の保険金不払い問題を受けて、各社に保険金支払審査会が設けられていると思いますけれども、その機能を拡充していくということも考えられると思います。現在は各社の保険金支払審査会というのは、その設立の経緯もあって、免責とか無責とか契約の解除とか、保険金を支払わない場合のみを審議するという形になっていると思いますが、適正な保険金の支払いという観点からは、一定の範囲では保険金を支払うという判断をした事案についてもその判断が妥当であるかどうか議論するというようなことは考えられると思います。
 
 何を審査の対象にするかというのは最終的には各社の判断にはなってくると思いますけれども、例えばということで申し上げますと、約款解釈に争いがあるような事案であるにもかかわらず高額の保険金支払いを行うという判断をしたような事案を取り上げたりとか、あるいは、実務で遡及訂正とか取消再計上のような言葉を使って、保険事故が起きた後に、当初の引受けが適切でなかったという理由で営業部門の判断で契約内容を遡って修正するような形が行われることもあって、私はあまりこのような処理をすべきではないとふだんから言っている立場ではあるのですけれども、少なくともそういうイレギュラーな処理をするものに関しては、営業部門の判断で行うということではなくて、やはり会社の正式な保険金支払審査会という場で議論をして判断をしていくとか。そのような形で、恣意的な保険金の支払いとか、あるいは公平性に反する処理がされるおそれがあるような一定の類型を上げて審査会の審査の対象にしていく、こんなことも考えられるのかなと思った次第です。
 
 私からコメントは以上でございます。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。それでは、滝沢メンバー、お願いします。
 
【滝沢メンバー】  ありがとうございます。基本的に事務局から出していただいている検討の方向性に同意しております。既に話に出ていますけれども、大規模代理店に対する監督の部分については、基本的には代理店がコンプライアンス態勢整備義務をということを大前提として、やはり人員の制約、お客様から見たときの透明性、妥当性といったことを考慮すると、今やられているような生保協会で実施されているような第三者評価制度、こういったものが必ず必要になるのかなと思っております。既に御指摘がありましたように、建付けが違うということであったり、この評価機関の持たせるべき機能というところは今後議論が必要なのかなと思っておりますが、この方向性はこのままで検討するほうがよいのかなと思っております。
 
 実際16万店近く代理店があるという中でどのように実効性を高めるかというところですけれども、やはり販売力イコール市場への影響力ということを考えると、大規模代理店については義務化するといったことを検討するべきなのだろうと思っております。認定代理店であるということは、生保協会の出しているほうにおいては、誇りであり、お客様から選ばれる選択基準の一つともなろうかと思いますけれども、そういった市場からの圧力と市場からの必要性ということに加えて、やはり最低限の品質担保という意味では、大規模に関しては義務化するべきなのではないかと考えております。
 
 代理店手数料ポイント制度のところですけれども、前述しましたいわゆる業務品質評価制度というものが整備されてきた暁には、業務品質の評価体系にこれを組み入れる。どれぐらい評価基準に沿ったときに満たしている業務を提供できているのかというところで、ここに反映していくということがよろしいのではないかと思っております。
 
 代理店に対する本業支援のところですけれども、こちらも既に出ているように、本来あるべきリスクマネジメントの土俵での競争を妨げているものかなと思っておりまして、特に保険業と関連性の低い業務、こういったものは私は原則提供しないとしたほうがいいと思っております。もちろん通常の商取引を妨げるものではないですけれども、ここにあるようなニギリとかノルマというようなことはもう明確に排除するべきと思っておりますし、やはり大規模代理店さんと保険会社様の力関係を考えると、明確な判断基準がないと、なかなかそこは常識の範囲内で判断しましょうというのはまたなあなあになるというようなことがあるかなと思いますので、具体的な判断基準をきちんと整備していくというところに今後集中すべきなのかなと思っております。
 
 出向の部分ですけれども、代理店の業務品質を担保する、あるいはお客様のニーズを生かした新商品開発に生かす、こういったような正しい目的の出向というのは阻害するべきではないのかなと思っております。ただし、前提としては、書いてくださっているように、出向負担金が適正価格であるということ、社員代行のように無料で提供しているというようなケースはやはり除外するべきなのかなと思っております。実際的に営業企画機能とかコンプライアンス態勢整備とか、そういった保険代理店のコアな業務のところが保険会社様からの出向者によって占められる、実質的に依存しているというような態勢が長く続くということは、やはり代理店さんの自立・自走というところを阻害するということになりますので、どういったところに出向させているのか、そして言及がありましたように、その期間・人数・規模といったところが適正なものなのかというところは、常にモニタリングしていくべきところなのかなと思っております。
 
 入庫紹介ですけれども、お客様に選択肢を与えるということがやはり大事なのかなと思っています。保険会社様は、まさしくあるべきお客様サービスの一環として、良質な修理工場のリスト、こういったものを独自の評価基準によって整備されていると思いますので、こういったものをデータベース化してお客様に必ず提供する、こういったことが対応として可能なのかなと思っております。この修理工場の評価というところに、お客様からの評価、顧客満足度も入れ込むことによって、この選択肢というところは充実していくのかなと思いますし、お客様目線というところから見ても、そのような形での選択肢の提供ということは資するのかなと思っております。
 
 最後に、保険金支払管理のところですけれども、既に出ておりますように、この2つの部分を完全に分ける、独立性を保つ状態にできるということがもう大前提として必要なことなのかなと思っております。少し中長期的な取組になるかなとは思いますが、本来は、誰が判断しても、支払いというのは、支払い基準にのっとって判断すれば同じ結果になるわけでして、そこに営業の影響力が入らないようにするという意味では、ここをデータ化していく。そして、近年言われるような、AIを使って一定もう忖度の余地がない状態にしていくというようなことも中長期的な取組としては必要なのかなと思っております。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。一応本日御出席のメンバーに一通り御意見をいただけたと思います。この後は、これまでのメンバーの御意見、御発言等を踏まえてさらに御発言をいただければありがたいと思いますが、私も一言発言をさせてください。
 
 本日は、第三者評価機関に関してかなり発言をいただきました。最初に永沢メンバーから御指摘があったように、生保の第三者評価の仕組みというかその制度とは代理店側のインセンティブが明らかに違いますので、任意の第三者評価制度であれば、これに乗ってきてくれるかというとかなり疑わしいところありますね。生保の場合は、第三者評価機関による評価を受けて認証を得るということが、当代理店はこの認証を受けたんですよということでお客さんに対するアピールをするよい手段になると思うのですが、とりわけ自動車保険についてはそういう状況にはなくて、何もしなくてもお客さんが保険に入ってくれるという状況なので、認証を受けたからこの代理店から保険を買ってくれるということを期待することは難しいのかなと思います。
 
 そうすると、とりわけ大規模乗合代理店については、第三者評価を受けることを義務づけるということが考えられるわけですけれども、そうだとすると、全く任意の制度としてつくってもうまく働かないので、これも少し御意見があったかと思いますけれども、法律上の根拠のある自主規制機関として第三者評価をさせる。証券業の分野では、例えば日本証券業協会は自主規制機関ですけれども、これは金商法上の根拠のある自主規制機関だと思いますので、将来、法改正をするとすればそういうことも視野に入れていくことはできるのかなと感じました。
 
 それでは、本日はまだ残り30分ほどございますので、これまでの御意見等を踏まえて、さらに御意見、御質問等があればお出しいただければと思います。いかがでしょうか。
 
 それでは、中出メンバー、お願いします。
 
【中出メンバー】  2周目になりますので、二、三分で終わります。今、洲崎座長がお話しいただいた点に関してですが、まさに御指摘のとおりだと思います。嶋寺メンバーがお話ししたように、牽制力というか、力という部分が非常に重要で、そのバックには、ちゃんとやらないと罰則が来るとか行政処分があるから、評価を受けるようになるし、また、そういう制度があることで、態勢を整備しなければいけないとなると思います。15万店もの代理店がある中でごく一部しか実施しなくても、牽制が働けば効果が出てくると思います。
 
 今回の事案は、故意による事案ですので、故意のところを直すというのはなかなか厳しく、パワーがある牽制力を働かせないと難しいと思います。いきなりは難しく、将来的には法改正も必要なのかもしれませんが、考える着眼点としては、実効があがるかであり、牽制というところを重んじるべきでないかと思います。
 
 あと1つだけ、すみません。損害査定のところでも議論がございましたが、各社では独禁法の問題もありますので、修理費の工賃協定みたいなことをすることはできませんが、将来的には、妥当な損害額を出していくうえでのノウハウを業界で共有化していくようなことも必要でないかと思います。その場合には第三者のアジャスターや鑑定人の機能を高めて、それらの専門家のノウハウを高めることで適切な保険金と効率的な支払いをすすめることができれば、制度全体としてよくなると思いました。これも直ちには難しいと思いますが、保険会社が各自でやっている中では、営業からのプレッシャーのような話が出てきて、実際に、今回もいろいろな問題が出てきているわけですが、第三者的な制度をつくっていく、あるいは今既にありますので、それを応援していくことが一つの方向になるのではないかと思いました。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。では、永沢メンバー、お願いします。
 
【永沢メンバー】  ありがとうございます。ほかのメンバーの先生方から大変参考になるお話を伺い、うなずくことばかりでしたが、特に、増山メンバーから、契約者の役割が大事であるというご指摘、特に消費者の役割が大事というご指摘が印象に残りました。比較推奨ということが話題になっておりますが、何の情報が消費者の関心を引きつけるものなのかという視点や工夫も必要ではないでしょうか。自分にとって何が利益になるのか、インタレストという表現をなされましたけれども、そこをもうちょっと工夫していくことが必要であろうと思います。増山メンバーが先ほどリテンションというお話をされましたが、なるほどと思った次第です。こういった視点をもっと入れてもらって、そういった情報を比較推奨の場面で出していただくことが必要であり、良質な商品を育てる上で消費者の選択という行為が果たす役割は大きいと思いました。
 
 それからあとは、情報という意味では、滝沢メンバーのご指摘だったと思いますが、大規模代理店について、出向元に関する情報、たとえば、どこの社から何人来ていて、どこに配属されているといった情報も開示するというようなこともあっていいのではないかと思います。
 
代理店に渡す手数料について、以前、某保険会社の方に、証券では、手数料に関する情報開示をどんどんしていただいていますよと申しましたら、保険の場合、どの代理店にいくら渡すかは営業上の戦略であり、手の内は外部に見せられないんだよと教えていただいたことがありましたが、そうなんでしょうか。保険業界の扱う商品は、品質においてそう大きな差がつきにくい業界のようにも思うのですが、代理店への出向状況と併せて、その保険会社から手数料をどれだけ受け取っているかといった情報が提供されるようになれば、そういう情報を消費者が直ちには理解できなくても、そういう分析を専門にするジャーナリストの人たちがいますし、アナリストというような方たちが育ち、解析してくださるでしょうから、その結果として、消費者と事業者の間の、市場の情報の非対称というのも解消されていくんじゃないかなと思いました。
 
 以上でございます。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。では、増山メンバー。
 
【増山メンバー】  すみません、コメントいただきまして、ありがとうございます。お伺いしていると、やっぱりアイデアをミックスさせていくのもいいんじゃないかなと思います。やっぱり何名かの方がおっしゃられた開示というのも一つ大きいと思いますし、御提案しました例えば継続率みたいなものが開示されて、契約者がそれを比較できるような指標になるというのもあると思います。
 
 実際、今、永沢メンバーが御指摘いただいたとおり、比較推奨で一体、じゃ、契約者は何をもって評価すればいいか、これは非常に難しい問題です。損害保険の場合は、基本的に事故が起こらないほうがよろしいというのは当たり前の話でして、使わない方が本来ハッピーなんですけれども、実際不幸にして事故に遭われた方がその価値を享受する。商品の中でも非常に特殊なんだろうなと思っています。
 
 そういう意味では、これは実務の中で非常に私が昔から気にしているところは、先ほどの等級制度とも絡むんですが、少額事故の場合、「これ、保険使うと3等級下がっちゃうので、今回使いますか」というのは結構聞かれていると思うんですけれども、3等級下がるなら使わなくてもいいやという反応をされるお客さんもやっぱりいらっしゃると思うんですが、だったら、最初から免責にしとけばよかったんじゃないですかという話になるわけです。
 
 そこがやっぱり入り口の議論として、リスクマネジメントとして、じゃ、幾らならリテンションされますかと。もともとの話で、10万円ぐらいだったら自己負担しますよというような会話が募集人の方ときちんとされて、でも、こういう億円単位の事故はやっぱり満額カバーが必要だから賠償責任は無制限が必要ですよねとか、車両保険についても、これは物保険ですから、金額はそんなに大したことない、保険料が高い、そういうことだけで判断をするんじゃなくて、実際にもらい事故で、お金の問題だけじゃなくて、相手先が無保険だったとすれば、じゃあ、どうやって交渉してこれを回収しましょうかというようなトランザクションの問題が起きたり、そういう意味ではファイナンスだけじゃなくて、まさにオペレーションのところでも保険というのが役に立っていますよというところを十分に御理解いただくというのが最初にないと、買ったときに、もう適当に安いやつでやっといてというような方が契約者になられてしまうと、それはやっぱりまずいんじゃないかと。これは本当に大事な話なので、ちゃんと聞いてください。もし間違うと、あなたの家族は全員とても不幸になる可能性もありますよという、脅すわけではないですけれども、やっぱりそういうリスクのあるものに対して保険を売っているんだというところをもう少しやっぱり強調していくべきじゃないかなと思う次第です。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。ほかに。では、嶋寺メンバー。
 
【嶋寺メンバー】   先ほど座長のほうからも少しお話があった自主規制機関というところに絡んでなんですけれども、事前に一部報道でもあったので、私もその辺りも事前に検討していたのですが、どうしても証券業の世界とかになっていくと、前提が金融機関ということがあるので、やはり金融機関であればまさに自主規制機関がワークするということはあるのかもしれませんけれども、損保の代理店は、15万店あるとか、兼業が多いとか、そういう意味では、本業は金融機関と全く違う業種をやられているところにおいて、自主規制機関みたいなところが果たしてどこまでワークしていくのかなと。一定の権限があったとしても、コンプライアンスに従うためにコストをかけて対応していくというのは、やはり代理店にとっては収益に大きく影響があるというところもありますので、それを正当化する、それをやらないと資格を維持できないというだけのものでないと、なかなか変わっていかない部分があるのかなと思います。
 
 そういう意味では、中出メンバーからも話がありましたが、一定のパワーを持って規制の一環として行う。それがひいては代理店資格にもつながってくる、こういうようなところが見えてこないといけないので、なかなか自主規制機関の中でどこまで、もちろん制度のつくり方の問題かもしれませんけれども、損保の代理店ということを考えるとなかなかハードが高いのかなという、そんな印象を持ったところがございます。
 
 それからもう1点、いろいろと議論されている中でいうと、損保会社も非常に数が多いものですから、今回議論しているコンプライアンスに関する意識というのもやはり差があるのではないかなということを少し気にしているところです。そういう意味では、どうしてもここで一定の議論をしたところで、ルールが曖昧になってしまうと、抜け駆け的な形で行われてしまい、結局現場は何も変わらないということが非常に心配されるところです。
 
 今回この有識者会議が6月までということになっておりますけれども、やはりそこであまり細かく決め切るというのは難しいのかなと思いますので、それ以降も、例えば本業支援の在り方とか評価の項目、あるいは業務品質の問題、この辺りを何か議論する場があったほうが、実際の現場に落としていく、ルールに落としていくという意味ではいいのかなと考えたりもしたところです。その辺りも、6月の議論でこれで終わり、その後は業界で考えてくださいということではなくて、引き続き金融庁も関与し、何らかの外部の意見も入れていきながら、当面実効性がある制度にしていくところまでは見守っていく必要があるのかなというのが、今回は非常に歴史もある大きな問題だけに、そんなことを感じたところでございます。
 
 私からのコメントは以上です。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。私の先ほどの発言のうち、自主規制機関という部分がひょっとしたら誤解を招いたのかもしれないのですが、自主規制機関だからといって法律上の権限、パワーがないというわけではなくて、法律上の根拠のある自主規制機関に仕事を委嘱する以上は、当然、権限というか強制力もあるものとして考えておりました。ですから、嶋寺メンバーが想定されているのと私が想定しているものと、それほど違いがあるのかというと、あまりないのではないのかなという気がいたしております。
 
 では、大村メンバー。
 
【大村メンバー】  まさに洲崎座長がおっしゃるとおりで、自主規制団体の場合は、認可又は認定を受けて設立される法律上の位置付けを有する団体であり、当局の権限を一部委譲できる形になりますので、強制力が担保される可能性はあるのではないかと思っております。また、金融機関が本業ではない代理店に対してどこまで効力があるのかという点は、当該団体に対してどこまで権限を委譲するか次第ではないかと思っております。例えば登録手続等を含めて団体の方で担うということも案としてはあり得るかと思われますし、そういった意味では、兼業代理店に対してであっても一定強制力を持った枠組みとすることは可能なのではないかと思っております。
 
 また、6月で終わりにしてはいけないというのは、そのとおりだと思われます。有識者会議で規制の具体的な内容について詳細を決めることは難しく、ここでは、どういった指標でどういった着眼点で規制を設けるべきかについての大枠を議論し、それに基づいて、一定、業界なり何なりで具体的な案をつくった上で、それを当局なり有識者会議なりでモニタリングしていく仕組みが必要なのではないかと思っております。私自身は、先程申し上げましたとおり、エンフォースメントには徹底的にこだわるべきだと思っておりますので、規制をつくっただけで終わりではなく、それが確実に遂行されるような仕組みづくりが重要であり、どこがモニタリングをしていくのかということを含めた議論というのは続けていくべきだと思っております。
 
【洲崎座長】 ありがとうございました。まだもう少し時間がございますが、私のほうから少し皆様方に御意見を伺いたいことがございます。これは金融庁のほうで御用意いただいた資料でいうと14ページ、比較推奨に関してですけれども、この矢ばねのところで保険募集人による適切な比較推奨が可能となる態勢整備の確保とあって、①のところで、その提案理由等について説明することを求めるという案が挙がっているのですが、これは平成26年の保険業法改正で導入された乗合代理店の比較推奨の場合の説明内容からかなり踏み込んだ内容だと思います。
 
 現在のルールだと、なぜこの会社のこの商品を推奨するのか正直に理由を言えばいいということになっているのですね。我が代理店は、この保険会社と長年取引があって、この保険会社の保険をずっと売ってきたからこの保険の内容をよく知っている。だから、これを推奨するんですということでも問題はない。しかし、この①のような規制が導入されると、そのような説明では足りないということになってしまうようにも思います。
 
 平成26年改正のときに、推奨する理由を正直に言えばいいという規律にしたのは、それは多分、小規模な乗合代理店、つまり、形式的には一応いろいろな保険会社が乗り合っているんだけれども、基本的にはある保険会社の商品をずっと売ってきた代理店に対して、顧客から、「私は、この保険会社の保険に入りたいんです」と言ってこられたときにその保険会社に話をつなぐことができるように、一応形式的には乗り合っている。しかし、実質は、特定の保険会社の保険商品だけ売るという、そういう代理店もあるだろうということが想定されていたと思います。特に小規模代理店はそういうことが多いと思うのですが、そういう場合に、一々、あらゆる商品の中からこの商品があなたに一番いいのですよということを言わなくても保険募集ができるようにということで、事実を言えばいい、推奨する理由を正確に言えばいいということになったと思うのですが、この①のような規律があらゆる規模の保険乗合代理店に適用されるとなると、小規模代理店にはかなりの負担が生じてしまうようにも思えます。特に今回、小規模代理店は別に何か悪いことをしたわけではなくて、大規模乗合代理店のとばっちりみたいな感じで規律が強化されるようなことがあった場合に、、果たしてそれでよいのかというのは私はかなり気になっております。
 
 そうすると、こういう規律を導入するとしても、規模を限って、先ほどからも大規模代理店に限った規律があってもいいのではないかという、そういう御意見もあったかと思いますけれども、とりわけこの①については、そういうことを考えて、特にこれまで真っ当なお仕事をされてきた小規模代理店の方々の負担が大きくならないようにするということも考えたほうがいいのではないかと私は感じたのですが、この辺りについてメンバーの皆様方はどのようにお考えかについて御意見いただければと存じます。
 
 では、金岡メンバー、お願いします。
 
【金岡メンバー】  洲崎座長の御懸念はよく理解できました。小規模代理店も、お客様の立場に立って意向を確認して、そのお客様に一番合う保障を提供する募集人の方は、実はここの①番は実施されていると考えます。例えば先ほどノンフリート等級ダウンのお話が出ましたが、そのトラブルが起こる場合は、保険金の支払いにおいて、自己負担をすれば使わなくて済んだので3等級ダウンしなかったのではないかという類のトラブルもございますが、例えば、中古車を買うときに、前の車を中古車販売店に売って新しい中古車を買う場合、車両入替え手続きを失念して、トラブルで起こることがあります。また事故によって車両が全損となったとき、そのときの市場価格の補償ではなく、新車が買える価格の保険金を求めているお客さんの場合、新価特約が付加されていないことによるトラブルもあります。適正な募集活動を行っている代理店さんは、このようなお客さんの具体的なニーズをきちんと把握した上で、その理由を示して、保険料だけを見るのではなく、やはり事故が起こったときの補償を考えると、この自動車保険のこの特約つきでこの保険料でどうですかという御提案をされていると思います。したがいまして、大規模乗合代理店以外のところにこの規制をかけると大きな負担になるのではないかという御懸念は、該当する場合もあるかと思いますが、おおむね該当しないのではないかと考えております。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  では、永沢メンバー。

【永沢メンバー】  洲崎先生の御心配も、なるほどと思いました。代理店の中には、中小もあることを思いますと、一律に、顧客の最善の利益の法的義務をそのまますぐに求めることが可能かというと、それはすぐには難しいと思うという実情があるのでしょうか。それと併せて、保険と金融商品で行っている顧客本位の業務運営の原則の実践は、かなり違っているように感じていますが、保険商品において、顧客にとって最善の利益というのはどんなものなのかということを、まず議論していただきたいですし、そこができていないと思っております。消費者にも分かるように、保険における顧客本位とはどういうものかを十分に議論しないまま入れてしまうのは拙速、時期尚早なのではないかと思います。方向性としてはいいと思いますが、言葉だけが走ってしまうことが懸念されます。
 
 それからあと、繰り返しになりますが、先ほどの、代理店は保険会社から幾らもらうんですかということとか、その部分のお金のやり取りについて情報開示をいただければ、そこは消費者の判断の材料にもなるとは思います。
 
 確かに、増山メンバーからお話のあった、お客様の意向確認のときにチェックを入れるような一覧表を作って、最終的に提案できる商品はこれらですというようなことが行われて、消費者がその中から選ぶというようなことが行われれば、それはいいと思いますが、支払態勢のところまで含めてのことになりますから、そこまで代理店が品質を推せるのかなということに私はかなり懐疑的です。金融商品で実践しているような、客観的データに基づく比較推奨を保険で求めることは理想ですが、その前に、少しワーキンググループなどを設置されて、検討いただいたほうがよろしいのではないかと思います。ほかの業態の金融事業者に顧客の最善の利益を法的義務として入れているから、損害保険でもということについて、方向性は支持しますが、当事者である保険業界の中で少し時間をかけて議論をしていただいたほうがいいと思います。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  そうですね、これを仮に法規定の中に入れていくとすると、この有識者会議だけではちょっと難しいかなとも思いますので、もう少し時間はかかるのかなという気はいたします。ありがとうございます。
 
 では、中出メンバー。
 
【中出メンバー】  すみません、今の点なんですが、平成26年の改正で比較推奨の義務はあるわけですので、さらにそれをもっと高度化するかどうかといった点では、今回の提案は保険仲立人に対する責任のほうにちょっと近づけてきているのかなと感じました。実態的に見ても、大規模な乗合でたくさんの保険商品の中から選ぶというのは、実質的・機能的には保険仲立人、保険ブローカーに近いので、そういうレベルの大規模乗合代理店については、それが代理店であっても、ブローカー並みの高度な義務が求められると思います。代理店の場合には自分が扱っている保険会社の商品内という違いは出てきますが、募集における顧客視点という点からは同じような義務にしていくべきでないかという気がします。
 
 もっとも、こうした義務はまさにブローカーに対峙するような大規模なところに求められる義務で、零細のところで2社の乗合をやっているとか、そこまで適用するべきものとは違うのでないかという気がします。その点では、洲崎座長の懸念について賛同します。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。私は、先ほど金岡メンバーが御指摘いただいたように、意向把握義務、情報提供義務、これは乗合かどうか、規模が大きいかどうかにかかわらずかかってくる規制ですので、それに従って現在の小規模代理店も募集をされているんだろうと思います。そこが十分に機能していても、それに加えてこの推奨ルールが適用されるということになると、形式的には10社乗り合っていれば10社の保険商品をみんな検討して、その上でこの会社のものがいいのだというそこまでの準備をしなければいけなくなるかもしれません。そういうことになるおそれもあるとことも含めて、じっくり考える必要があるかなと思います。次回以降にでも御意見がございましたら、また言っていただければ、よろしいかと思います。
 
 まだ少し時間がございますので。では、嶋寺メンバー。
 
【嶋寺メンバー】  先ほどから問題になっています大規模代理店という議論ですけれども、何をもって大規模というのかという辺りが、何か規制を考えていく上でも悩ましい点かなと思います。どうしても自動車保険とかそういう一般的な商品を念頭に置きがちではありますけれども、損保は本当にいろいろな商品がありますので、実は保険料収入は多くなくても、特定の保険商品に関してはシェアが非常に大きいとかこういうところもあって、そこの活動をきちんと監督していくということは非常に重要なのかなと感じております。
 
 その関連で少し実務的な話を申し上げますと、乗合代理店の中には、今回のビッグモーターもそうですけれども、保険会社から問題点を指摘されたときに、きちんと保険会社の監査を受け入れないとか、社内調査をするように保険会社が求めたのにそれに応じないとか、そのような形で保険会社が何とか改善をしようとしても代理店側が動かない、こういう場面があると聞いております。場合によっては、非常にコンプライアンスにうるさい保険会社との契約を切ってしまって、別の保険会社をメインにしていく、こんな形である意味、保険会社の監査を逃れるとか、そのような形になっていくのは非常に問題が大きいと思います。
 
 先ほど申し上げたとおり、どうしても保険会社によって、コンプライアンスの考え方が違ったりするものですから、代理店のほうがコンプライアンスの緩い保険会社を選んでいく、こんなことは絶対あってはならないと強く思うところがございますので、その意味では、何がコンプライアンスで求められるかということについては、代理店側にもきちんと理解をしてもらう必要があることと、やはり保険会社あるいは当局からの監査とか調査に対しては、それをきちんと受け入れるということが最低限必要になってくると思います。それを受け入れないということであれば、代理店としての資格は維持できない、このぐらいの考え方をしていかないと、ブラックボックスになって何が行われているか分からないというのは、消費者にとっても保険業界全体にとっても一番よくない事象かなと感じております。実際の事例で幾つか触れているものの中で感じたところの問題意識をお伝えいたしました。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  ありがとうございました。では、山下メンバー。
 
【山下メンバー】  山下です。ありがとうございます。今まで出てきた話に何点かコメントしたいと思います。
 
 1点目として、代理店自身の責任で態勢構築義務があるというのは全くそのとおりだと思っております。ただ、今回問題となっているのは、その義務のエンフォースメントをどう図るかということだろうと思います。なので、代理店自身の責任で態勢をきちんと構築しないといけないんですよということは、それは強く押し出すべきであるというふうに思うのですが、他方でそれをちゃんと守ってくれるか、義務を果たしてくれるかというのはまた別の話ということになります。そこをなんとかするために、どういった仕組みが必要かという話が今回特に問題になっているのかなと思っております。その関係では、結局代理店が何をしているのかよく分からないという情報の非対称性の問題があるので、それを解消するためにモニタリングの仕組みが要りますということと、インセンティブのずれがあるので、インセンティブの一致を図る必要がありますということから、第三者評価とかそういう話になっているのだというふうに思っておりました。
 
 その第三者評価についてですが、自主規制機関の話が出て参りました。私はまだあまり具体的なイメージがついてないのですが、日本証券業協会とかの自主規制機関をイメージすればよいのでしょうか。もしそうだとすれば、自主規制ルール違反の制裁というのは、最も重いのは協会からの除名ということで、協会の構成員に対しては自主規制違反に対するサンクションを協会が課すことはできますが、構成員以外の者に対しては統制が及ばないので、こうした証券業協会の仕組みをそのまま持ってくると、代理店を構成員とする団体をつくらないと機能しないような気がしますが、それは実際上可能なのかどうかがよく分かっておりません。また今後、議論を深めていければよいかなと思っております。
 
 2点目として、代理店が法令遵守しないときの制裁として、資格を維持できないようにするという話もあるわけですが、これに関して考えておかなければならない点として、兼業の代理店であれば、資格を維持できなくても企業としては存続できたりするので、この制裁はどれほど効くのだろうか、あまり効かない場合もあるのではないか、ということが気になりました。つまり、保険会社であれば、本業である保険業の免許を止められると、それは企業として存続不可能ですけれども、あるいは専業の保険代理店であれば、登録を剥奪されると企業として存続できなくなりますけれども、兼業代理店であれば、保険代理店業とは別に本業があり、保険代理店としての事業を継続できなくても、本業の方が無事であれば、企業として存続できてしまうので、資格剥奪ということの制裁の意味というのは、考えていく必要があるのかなとは思いました。
 
 3点目として、洲崎座長から御指摘いただいた、提案商品が最適と考えた具体的理由を説明するというのは、これは確かに理論的には結構踏み込んだ話で、平成26年の保険業法改正のときには、あくまで顧客は自己責任で保険を選ぶという前提で、募集人の説明を聞いて、最終的に何がいいかというのは自分で考えるという枠組みでつくられたわけですけれども、そこをある程度修正し、商品選択の責任を代理店、募集人の側に一定程度課すものにするということを意味しますので、理論的にも興味深く、検討する必要があることだと思います。
 
 私個人の考えとしては、金サ法の改正がされたので、方向性として、これはあり得ると思っております。金サ法2条は、顧客の最善の利益を勘案しつつということになっておりますので、こういう方向性というのは、十分考えられることであると思います。また、中出メンバーからお話がありましたけれども、特に大規模な乗合代理店は、保険仲立人の機能を事実上代替している部分があると思うので、保険仲立人が日本の消費者向けの市場では全然普及しないという現状を踏まえると、保険仲立人ではなく保険代理店なのですけれども、こういう説明義務を課していくということは、一つの選択肢としてあり得るように思います。ただ、ここですぐ決められる話ではないということは全くそのとおりなので、今後いろいろ議論を深めていく必要があるものというふうに認識しております。
 
 長くなりましたけれども、以上です。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。では、もうお時間が来ておりますので、最後に、滝沢メンバー、お願いします。
 
【滝沢メンバー】  申し訳ありません。最後はお客様の選択であるとはいっても、やはりそこに商品を提供している代理店さんの責任というのは非常に重いと思っております。先ほど来、兼業であるからというようなところが少し出ているかなと思いますが、牽制機能が働く、働かない、保険収入の重要性という意味では兼業・専業の差はありますが、兼業であっても代理店は代理店であるので、兼業である、専業であるということによって求められる業務品質を変えるというところは、皆さんそういう意図で御発言はされてないとは思いますが、あってはならないことかなと思いますので、最後に付け加えさせていただきました。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】  どうもありがとうございました。まだまだ御議論が尽きないところではございますけれども、お時間が参りましたので、一通り御意見をいただいたということで本日の自由討議は以上で終わらせていただきたいと思います。多くの貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
 
 それでは最後に、事務局のほうから御連絡がございましたらお願いいたします。
 
【三浦課長】  それでは、事務的な御連絡になります。次回の本有識者会議は5月24日金曜日に開催させていただきたいと思っておりますが、改めまして事務局より御案内させていただきます。
 
 以上でございます。
 
【洲崎座長】  皆様、本日はお忙しい中御参加いただきまして、どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 
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